説明

熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器

【課題】低温熱収縮特性が良好で収縮応力値が1MPa以下である熱収縮性積層フィルムの提供。
【解決手段】 中間層とこの中間層の両面上に積層される表面層の少なくとも3層で構成され、ポリ乳酸系樹脂組成物を主成分として構成される表面層と、酢酸ビニルの含有率が25質量%以上60質量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として構成される中間層とで構成し、(a)80℃の温水中に10秒間浸漬した時の主収縮方向の収縮率が30%以上であり、主収縮方向と直行する方向の熱収縮率が10%以下であり、(b)収縮応力値の最大値が主収縮方向及び主収縮方向と直交方向のいずれの方向も1MPa以下であり、(c)30℃で30日間保存した時の主収縮方向の収縮率が1.5%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の樹脂を用いた熱収縮性積層フィルムに関し、特に低温熱収縮特性が良好で、かつ収縮応力値が1MPa以下となる熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた熱収縮ラベル、及び該ラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶、ペットボトル等の容器に充填された状態で販売されており、他商品との差異化や商品の視認性を向上させ商品価値を高める目的で、容器の外側に印刷を施した熱収縮性ラベルを装着することが多い。
【0003】
上記分野において、需要の増大が見込まれるペットボトルラベル用途等では、比較的短時間、かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られ、小さな自然収縮率を有する熱収縮性フィルムが要求されている。一方、最近のペットボトルラベル用途に用いられる熱収縮性フィルムにはペットボトルに装着されるシュリンクフィルムのラベリング工程における低温化のニーズが挙げられる。これは、現在主流となっている蒸気シュリンカーを用いて熱収縮性フィルムをシュリンクさせてラベリングする方法において、内容物の無菌充填や温度上昇による品質低下を回避するため、ラベリング時に蒸気シュリンカー内でできるだけ低温で収縮包装させたいためである。また、近年本用途では二酸化炭素排出量の削減の一環としてペットボトルの軽量化が図られており、ボトルの形状を最適化することで、約20〜30%の軽量化が実現されており、熱収縮性フィルムの収縮時における収縮応力の軽減が求められ始めている。
【0004】
熱収縮性ラベルの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略する場合がある)。系樹脂やポリスチレン(以下「PS」と略する場合がある。)系樹脂が用いられている。これらの樹脂で形成された延伸フィルムは、高い透明性や光沢性、剛性を有し、かつ優れた低温収縮特性を有することから、熱収縮性フィルムとして好適に使用することができる。
【0005】
一方、上記PET系樹脂やPS系樹脂はいずれも石油由来の樹脂であるため、石油枯渇問題から、熱収縮性ラベルの材料として石油由来樹脂の代替材料が求められているという実状がある。他方、最近の二酸化炭素排出量の問題から、少しでも環境に配慮された原料を用いた熱収縮性ラベルの開発の必要性が指摘されている。
【0006】
このような状況下、石油由来の代替樹脂の一例として、ポリ乳酸(以下「PLA」と略する場合がある。)系樹脂が知られている。このPLA系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とするいわゆる植物由来樹脂であり、化学工学的に量産可能であり、かつ透明性、剛性等に優れるという特徴を有する。さらに植物由来原料であるため二酸化炭素の排出抑制が可能となり、環境配慮型樹脂として注目を集めている。
【0007】
特許文献1には、屈折率が1.40以上1.55以下である樹脂を主成分とする(I)層と、少なくとも1種のポリ乳酸系樹脂を主成分とする(II)層の少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも1方向に延伸してなる熱収縮性積層フィルムにおいて、80℃の温水中に10秒浸漬した時の主収縮方向の収縮率を30%以上、主収縮方向と直交する方向の収縮率が10%以下となる熱収縮性フィルムが開示されている。特許文献1に記載されたフィルムは、少なくとも1方向に延伸してなるため、熱収縮時の収縮応力値が1MPa以上となることがほとんどである。
【0008】
また、従来の熱収縮性フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式であるテンター法あるいはチューブラー法における方式が主に採用されている。これは、主に再加熱時の温度と延伸倍率及び延伸速度等を調節することにより比較的容易に所望の熱収縮特性やフィルム物性を付与することができるからであると考えられる。
【0009】
一方、ラップフィルムなどの製造方法に主に用いられているインフレーション法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式である。一般的にインフレーション法はテンター法あるいはチューブラー法よりも条件設定範囲が比較的広く、また安定してできること、さらに製造設備の費用も安価であると思われる。
【0010】
一般にインフレーション法では、原料樹脂を融点(Tm)以上の温度に加熱し、環状ダイから円筒状に押出し、溶融円筒状の樹脂の内部にエアを吹き込んで膨らませてフィルムを作製するが、この際、エアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に延伸がなされている。しかし、この延伸時において、樹脂は高い温度領域にあり、弾性率や粘性が低いため、インフレーション成形したのみでは、熱収縮性歪の付与という点からは、実質未延伸のフィルムであり、若干の熱収縮性は発現するが、特に比較的低い温度(80℃程度)の収縮率(低温収縮性)が発現するような十分な配向きを持ったフィルムとは通常なりにくい。
【0011】
また、インフレーション法では、上記したようにエアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に同時に延伸がなされるため、フィルムの主収縮方向と主収縮方向と垂直の方向の熱収縮率の調整が困難となる場合が多く、主収縮方向と主収縮方向と垂直の方向の熱収縮率はほぼ同値をとるのが一般的である。
【0012】
特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層、及びポリ乳酸を主成分とする層を積層してなる食品包装用ストレッチシュリンクフィルムが提案されている。具体的にはポリ乳酸として、D体量が4質量%であり、重量平均分子量が約20万の材料が使用され、フィルムの全厚さ中に閉めるポリ乳酸を主成分とする層の厚さが25%以上となるように多層インフレーション成形装置にて、ブローアップ比6倍でフィルムを得ている実施例が示されており、120℃における熱収縮率がフィルムの縦方向が30%以上、横方向の収縮率が40%以上となるフィルムが開示されている。本フィルムはオーバーラップシュリンク包装用とには好適なフィルムであるが、両方向とも熱収縮率が発現するため、本用途の収縮包装用途においては決して好適な特性を有しているものではない。
【特許文献1】特開2008−023801号公報
【特許文献2】特開2002−019053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、熱収縮特性に優れた熱収縮性フィルム、特に低温熱収縮特性が良好で、かつ収縮応力値が1MPa以下となる熱収縮性フィルム、該フィルムを用いた熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明らは、鋭意検討を重ねた結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする中間層上にポリ乳酸系樹脂組成物を主成分とする表面層を積層させることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、中間層とこの中間層の両面上に積層される表面層の少なくとも3層で構成される積層フィルムであって、前記表面層はポリ乳酸系樹脂組成物[(A)成分]を主成分として構成され、前記中間層は酢酸ビニルの含有率が25質量%以上60質量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体[(B)成分]を主成分として構成され、かつ、以下の(a)から(c)の条件を満たすことを特徴とする熱収縮性積層フィルムにより達成される。
(a)80℃の温水中に10秒間浸漬した時の主収縮方向の収縮率が30%以上であり、主収縮方向と直交する方向の収縮率が10%以下
(b)収縮応力値の最大値が主収縮方向及び主収縮方向と直交する方向でのいずれの方向も1MPa以下
(c)30℃で30日間保存した時の主収縮方向の収縮率が1.5%以下
【0015】
本発明の熱収縮性積層フィルムは、前記(A)成分がD−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂組成物であることが好ましい。
【0016】
本発明の熱収縮性積層フィルムは、中間層が前記(B)成分と、MFRが10〜100g/10分である高密度ポリエチレン[(C)成分]との混合樹脂組成物からなり、前記(B)成分と前記(C)成分との質量比が(B)/(C)=95/5〜80/20であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の熱収縮性積層フィルムは、インフレーション成形法で得られることが好ましい。
【0018】
また、本発明の課題は、前記本発明の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル、該ラベルを装着した容器により達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、環境負荷が少なく、熱収縮特性、特に低温熱収縮特性が良好であり、かつ適度な収縮応力を有する、熱収縮性ラベルに好適な熱収縮性積層フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、インフレーション法により得られるため、安定かつ製造コストで熱収縮性多層フィルムを提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、環境負荷が少なく、収縮仕上がりの良好な熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の熱収縮性積層フィルム、熱収縮性ラベル、及び該ラベルを装着した容器(以下、それぞれ「本発明のフィルム」、「本発明のラベル」及び「本発明の容器」という。)を詳細に説明する。
【0022】
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上かつ100質量%以下を占める成分である。
【0023】
また、本明細書において「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
【0024】
また、本明細書において「中間層の両面上に表面層」とは、中間層の両面に直接表面層が積層される場合のほか、中間層と表面層の間に第三の層(例えば接着層)を介在させ、この第三の層上に表面層を積層させた状態をも意味する。
【0025】
[熱収縮性積層フィルム]
本発明のフィルムは、中間層とこの中間層の両面上に積層される表面層の少なくとも3層で構成される積層フィルムであって、前記表面層がポリ乳酸系樹脂組成物[(A)成分]を主成分として構成され、前記中間層は酢酸ビニルの含有率が25質量%以上60質量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体[(B)成分]を主成分として構成される。
【0026】
<ポリ乳酸系樹脂組成物[(A)成分]>
本発明のフィルムにおいて、表面層はポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に(A)成分という。)で構成される。表面層を(A)成分で構成することで、室温時におけるフィルムの剛性を向上させ被包装物に熱収縮性フィルムを装着する際の倒れ込み等の不具合の発生を抑え、また(耐溶剤性を付与できるため)製袋時にTHFなどの溶剤によるシール方式を採用することが可能となるため好ましい。また、(A)成分を用いることにより、ガラス転移温度が製膜押出温度から室温までの間に存在するため、例えば溶融状態からの延伸加工時に、ガラス転移温度近傍で延伸変形が止まり、ガラス転移温度よりも高い温度で受けた収縮歪を緩和させずに残すことが可能となるため、インフレーション法において好適な低温での収縮特性(低温収縮特性)を付与することが可能となる。
【0027】
(A)成分は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体を用いることができる。(A)成分のD−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)との構造比は、本来一般的な組成としてはL体:D体=100:0〜90:10、又はL体:D体=0:100〜10:90であることが好ましく、L体:D体=100:0〜94:6、又はL体:D体=0:100〜6:94であることがより好ましく、L体:D体=99.5:0.5〜94:6、又はL体:D体=0.5:99.5〜6:94であることが特に好ましい。D体とL体の構成比がこの範囲内であれば得られるフィルムの耐熱性が高く、用途が限定されることがない。
【0028】
但し、低温熱収縮特性の付与という観点から言えば、(A)成分中のポリ乳酸の結晶性は低い方が好ましく、L体:D体=50:50〜94:6、又はL体:D体=50:50〜6:94の方が低温熱収縮特性を発現させやすく好ましい。
【0029】
(A)成分は、L体とD体の共重合比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数のポリ乳酸系樹脂のL体とD体のホモポリマーと、L体とD体の共重合体とをブレンドすることにより、低温熱収縮特性と耐熱性の発現のバランスをとることができる。
【0030】
(A)成分の重合法としては、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸又はD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する(A)成分を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状ニ量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する(A)成分を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、所望の組成や結晶性を有する(A)成分を得ることができる。
【0031】
さらに、本実施形態に用いられる(A)成分は、本発明の性能を損なわない範囲、すなわち、ポリ乳酸系樹脂が組成物全体に対して90質量%以上含有され得るような範囲内であれば、少量の共重合成分として乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、非脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、非脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物を使用することもできる。
【0032】
ポリ乳酸系樹脂乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2 官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0033】
ポリ乳酸系樹脂に共重合可能な脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、及び、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0034】
ポリ乳酸系樹脂に共重合可能な非脂肪族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
【0035】
また、ポリ乳酸系樹脂に共重合可能な脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0036】
ポリ乳酸系樹脂に共重合可能な非脂肪族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0037】
乳酸と共重合させるα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、非脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、非脂肪族ジオールとの共重合比は、乳酸/α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、非脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、又は非脂肪族ジオール=90/10〜10/90の範囲であることが好ましく、より好ましくは80/20〜20/80であり、さらに好ましくは30/70〜70/30である。共重合比が上記範囲内であれば、機械特性や透明性などの物性バランスの良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
(A)成分は、重量(質量)平均分子量が50,000以上、好ましくは100,000以上であり、かつ400,000以下、好ましくは300,000以下の範囲であることが望ましい。(A)成分の重合平均分子量が上記範囲内であれば、機械物性や耐熱性の実用物性を確保するとともに、適度な溶融粘度であるため良好な成形加工性を確保することができる。
【0039】
(A)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重:21.18N)は0.2g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、20g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは3g/10分以下である。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激にあがることがなく成形加工性に優れ、例えばインフレーション成形ではバブルの安定性を得ることが可能となるため好ましい。
【0040】
(A)成分は、市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができ、例えば、商品名「レイシア」シリーズ(三井化学(株)製)、商品名「Nature Works」シリーズ(Nature Works LLC製))、商品名「U’zシリーズ」(豊田自動車(株)製)等を挙げることができる。
【0041】
(A)成分には、さらに諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、無機充填剤、着色剤、顔料等を添加することもできる。
【0042】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体[(B)成分]>
次に、本発明の中間層で用いられるエチレン−酢酸ビニルン共重合体について説明する。本発明の中間層で用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有率が25質量%以上60質量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体である(以下、単に(B)成分という。)。本発明のフィルムにおける中間層は、成形加工時の製膜安定性(例えば、インフレーション成形におけるバブル安定性)や得られる積層フィルムの熱収縮率を調整する機能を担っている。
【0043】
本発明における(B)成分は、酢酸ビニル含有率が25質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、60質量%以下、好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であることが重要である。酢酸ビニル含有率が25質量%以上であれば、結晶性が低いため得られるフィルム全体の透明性や低温収縮性が損なわれることがないため好ましい。一方、酢酸ビニル含有率が60質量%以下であれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体単体の耐ブロッキング特性が良好であり、ハンドリング性に優れるため好ましい。
【0044】
また(B)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)は、0.2g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上であり、10g/10分以下、好まくは8.0g/10分以下、さらに好ましくは5g/10分以下である。かかる範囲内であれば、押出加工性は安定し、例えばインフレーション成形でも製膜安定性が得られるため好ましい。
【0045】
本発明の(B)成分は、酢酸ビニル含有率が25質量%以上である市販されているエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることができる。このようなエチレンー酢酸ビニル共重合体としては、例えば、商品名「エバフレックス」シリーズ(三井・デュポンポリケミカル(株)製)、商品名「ノバテックEVA」シリーズ(日本ポリエチ(株)製)、商品名「NUCコポリマー」シリーズ(日本ユニカー(株)製)等が挙げられる。
【0046】
また、本発明における中間層は、上記したように成形加工時の製膜安定性(例えば、インフレーション成形におけるバブル安定性)や得られる積層フィルムの熱収縮率を調整する機能を担っており、主収縮方向と直交する方向(以下、「直交方向」ともいう。)の熱収縮率を軽減するためには、MFRが10g/10分以上100g/10分以下である高密度ポリエチレン(以下「(C)成分」という。)を含有する混合樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0047】
上記混合樹脂組成物を中間層に配した場合、溶融状態の混合樹脂組成物が溶融変形しながら冷却される際に、(C)成分が縦方向(機械方向)に変形しながら結晶化する。一般にインフレーション成形法では、原料樹脂を融点以上の温度に加熱し、環状ダイから円筒状に押出し、溶融円筒にエアを吹き込んでバブル状に膨らませてフィルム化するが、この際、エアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に延伸される。この延伸は、樹脂の温度が高い状態の時には縦方向(機械方向)が支配的であり、樹脂の温度がエアにより冷却されるにつれて横方向(機械方向に垂直な方向)が支配的となる。そのため、例えばインフレーション成形法で製膜した場合、(C)成分が縦方向(機械方向)に伸ばされた状態で結晶化し、その後に横方向(機械方向に垂直な方向)に延伸がなされる。そのため、主収縮方向と直交方向(機械方向)の熱収縮時には、(C)成分は収縮を抑制する一方、主収縮方向の収縮時には、(C)成分は結晶化してから延伸がなされるため、収縮の抑制にはならない。このような理由から、(C)成分を含むことにより、フィルムの主収縮方向の熱収縮率の軽減は必要最小限に軽減され、かつ、直交方向の熱収縮率は高密度ポリエチレンの融点まで軽減することが可能となる。
【0048】
中間層に(C)成分を含有させ、上記の機能を発揮させるためには、(B)成分と(C)成分との質量比は、(B)成分/(C)成分=95/5〜80/20であり、好ましくは95/5〜85/15であることが望ましい。
【0049】
(C)成分は、市販されている商品名「ノバテックHD」(日本ポリエチ(株)製)、「サンテックHD」(旭化成ケミカルズ(株)製)、「ハイゼックス」(三井化学(株)製)等が挙げられる。
【0050】
本発明のフィルムの中間層は、(B)成分を主成分として含有するが、(B)成分及び(C)成分以外に、上記した(A)成分を本発明の主旨を超えない範囲で混入してもかまわない。例えばトリミングロス等から発生する本発明のフィルムをリサイクル樹脂として中間層に添加できる、得られるフィルム全体における弾性率等の特性を向上できる、材料コストを軽減できる等の観点からは有効な手段となる。(A)成分を中間層に混合する場合の混合質量比は、(B)/(A)=99〜50/1〜50、好ましくは99〜70/1〜30、さらに好ましくは95〜80/5〜20である。
【0051】
本発明のフィルムは、(B)成分を主成分とする中間層(以下「M層」と略すことがある。)と、この中間層の両面上に積層される、(A)成分を主成分とする表面層(以下「S層」と略すことがある。)の少なくとも3層で構成される積層フィルムであるが、本発明の主旨を超えない範囲で、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層(以下「P層」と略すことがある。)を適宜導入してもかまわない。また、S層は、S層以外にM層に同様の層を有してもかまわない。また、M層は、S層との間に少なくとも1層有していればよく、2層以上有していてもかまわない。例えば、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)、(S層)/(M層)/(S層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成を代表的に挙げることができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては、同一であっても異なっていてもかまわない。
【0052】
本発明において好適な積層構成は、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成である。この層構成を採用することにより、本発明の目的である良好な熱収縮特性と適度な収縮応力を具備する熱収縮性フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
【0053】
本発明のフィルムは、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が30%以上、好ましくは35%以上であり、70%以下、好ましくは50%以下である。フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が上記範囲内であれば、例えば製膜方法として、インフレーション法のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工を用いても安定した製膜加工性が得られ、また好適な低温収縮性などの熱収縮特性や透明性を比較的容易に付与できるため好ましい。これらのことから該厚み比は、安定した製膜加工性をより重視する場合には、好ましくは50〜70%、インフレーション法のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工で大きな熱収縮率をより重視する場合には、好ましくは30〜50%である。ここで、該中間層が上記したように積層構成中に2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。なお、本発明のフィルムの全体の厚みは、特に制限されるものではないが、35〜60μm程度、代表的には35〜50μm程度の範囲にある。
【0054】
<条件(a)>
本発明のフィルムは、80℃温水中で10秒間浸漬した時の主収縮方向の熱収縮率が30%以上であり、かつ直交方向の収縮率が10%以下であることが重要である。この熱収縮率はペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒から十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。
【0055】
現在、ペットボトルのラベル装着用途に工業的にもっとも多く用いられている収縮加工機は、収縮加工を行う加工媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。熱収縮性フィルムは、この収縮加工機を用いた場合に、熱による被覆対象物への影響を考慮し、できる限り低い温度で十分熱収縮し、被覆対象物に密着可能であることが要求される。
【0056】
このような工業生産性も考慮し、上記条件における主収縮方向の熱収縮率が30%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に被覆対象物に充分密着することができる。好ましくは、80℃温水中で10秒浸漬した時の主収縮方向の熱収縮率は35%以上、より好ましくは40%以上であり、かつ85%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である。
【0057】
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、直交方向の熱収縮率は80℃温水中で10秒間浸漬したときは10%以下であることが重要であり、好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下である。直交方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の直交方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じ易かったりすることなく、特に角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生しにくく好ましい。
【0058】
上記した熱収縮率は、主に表面層と中間層の厚み構成比と延伸倍率やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)、及び延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所望の範囲に調整できる。例えば、熱収縮率を増量したい場合には、より低温での熱収縮性歪を大きくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げたり、外面冷却における冷却ブロアー量を増量したり、内面冷却を併用するなどの冷却効率を適宜調整すればよい。逆に、熱収縮率を減少したい場合には、より低温での熱収縮歪を小さくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を下げたり、外面冷却における冷却ブロアー量を下げたり内面冷却を弱くするなどの冷却効率を適宜調整すればよい。
【0059】
<条件(b)>
また本発明のフィルムは、収縮応力値の最大値が主収縮方向及び直交方向のいずれの方向も1MPa以下であることが重要である。ここで、本発明における収縮応力とは、以下の測定方法によって求められる応力値を指す。すなわち、熱応力歪み測定装置(TMA)(例えば、セイコー電子工業(株)製、TMA/SS150C)とこれに連動した記録装置を用いて測定を行う。試料を断面積が0.2〜0.5mmの範囲になるようにサンプル幅を3mmに切り出し、チャック間が5cmの長さとなるように両端を挟み込み、TMAにセットし、試料に初期荷重をかけ、30℃に保ちながら30℃から160℃までの温度範囲を走査速度が3℃/分となるように測定する。ここで試料より発生する応力を記録計で記録し、試料断面積から応力値を算出する。
【0060】
本発明のフィルムは、熱応力歪測定(TMA)による収縮応力の最大値が縦方向及び横方向それぞれ1MPa以下であるが、好ましくはそれぞれが0.2MPa以上0.95MPa以下、より好ましくは0.4MPa以上0.9MPa以下の範囲である。かかる範囲内に収縮応力を調整することで、熱収縮時に適度な収縮応力を有するフィルムとなるため、収縮包装時に該包装物を変形させることが無く好ましい。尚、収縮応力の温度分布は幅広いものの方が、収縮包装の温度条件を更に幅広く設定することできるため好ましい。
【0061】
上記した収縮応力は、主に表面層と中間層の厚み構成と延伸倍率やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)及び延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所定の範囲に調整することができる。例えば、収縮応力を増加したい場合には、低温での熱収縮歪を大きくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げたり、外面冷却における冷却ブロアー量の増加や内面冷却を併用するなどの冷却効率を適宜調整すればよい。逆に、収縮応力を減少させたい場合には、より低温での熱収縮歪を小さくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を下げたり、外面冷却における冷却ブロアー量の減少や内面冷却を弱くするなどの冷却効率を適宜調整すればよい。
【0062】
<条件(c)>
本発明のフィルムは、30℃で30日間保存した時の自然収縮率が3.0%以下であることが重要であり、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%であれば、熱収縮性積層フィルムを長期保存後に使用した場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。
【0063】
自然収縮率を上記の範囲にするには、主に両表面層と中間層の厚み構成、ブローアップ比(バブルの直径/ダイ直径)、冷却条件などの温度条件などをバランスよく調整することが必要である。例えば自然収縮率が所望の値よりも大きい場合には冷却ブロア量を抑制したり、内面冷却を弱くしたりするなどして冷却効率を適宜調整したりすれば良い。
【0064】
本発明のフィルムは、例えばフィルムの裏面に印刷された印刷面を表面から視認されるような用途においては、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合、ヘーズ値は好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。ヘーズ値が15%以下であれば、熱収縮性ラベルとして用いた場合良好なディスプレー効果を奏することができる。
【0065】
次に、本発明のフィルムの製造方法について説明する。本発明のフィルムの製造方法としては、公知の各種の製造方法が適用でき、本発明の主旨を越えなければ特に制限されるものではない。フィルムの積層方法としては、例えば、共押出積層法、ラミネーション法、ドライラミネーション法などを挙げることができる。これらのうち、本発明のフィルムは、溶融接着する共押出積層法が好適に用いられる。具体的には、積層数に応じた複数の押出機を用いて溶融押出し、フィードブロックやマルチマニホールドなどにより溶融樹脂を展開、積層化する方法である。
【0066】
本発明の主目的の一つである熱収縮性を付与するための方法としては、通常用いられるテンター法やチューブラー法などの溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方法も適用可能である。本発明においては、上記した積層樹脂構成を採用することにより、溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアー(空気)を吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式である、いわゆるインフレーション成形法でも熱収縮性に優れた熱収縮性積層フィルムが得られることが見出されたものである。
【0067】
インフレーション成形法では、環状ダイより溶融樹脂を引き取り、薄膜化する過程で冷却効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する。この配向の度合いは、用いる樹脂の溶融粘度と冷却過程における固化速度あるいは結晶化速度の相違やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)及びバブル形状等によって主に変化するものと考えられる。
【0068】
本発明においては、インフレーション成形する際に、冷風などの媒体で冷却量を調整しながら溶融円筒内に、一定量のエアを入れて加圧量を調整し、ブローアップ比を2以上、好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上であり、10以下、好ましくは8以下とする。続いてフィルムの引取り速度を調整することによって環状ダイから円筒状に押出された樹脂の変形倍率がフィルム全体で10〜100倍程度、好適には20〜50倍に調整することが好ましい。ここで、変形倍率とは、環状ダイのリップギャップを得られるフィルムの厚みで除した値のことである。例えば、環状ダイのリップギャップが1mm(1000μm)で、得られるフィルムの厚みが50μmの場合の変形倍率は、20倍となる。また環状ダイのリップギャップが2mmで、得られるフィルムの厚みが50μmの場合の変形倍率は40倍となる。該変形倍率の計算には、ブローアップ比の影響を受けないものとする。その際の冷却方法としては、円筒状のフィルムの外面から内面側から冷却する方法、円筒状のフィルムの外面側と内面側の両面から同時に冷却する方法のどちらを採用してもかまわない。
【0069】
[熱収縮性ラベル、該ラベルを装着した容器]
本発明のフィルムは、フィルムの熱収縮特性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層、その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、惣菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない綺麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品又は容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【実施例】
【0070】
以下に本発明のフィルム、ラベル及び容器の内容を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
【0071】
(1)熱収縮率
得られたフィルムから縦方向および横方向からそれぞれ長さ140mm×幅10mmの短冊状にフィルムを切り出し、その中間に長さ100mm間隔の標線を記入した試験片を、80℃のオイルバスに10秒間浸漬し、取り出した後の標線間の長さを測定し、オイルバス浸漬前後の標線間の長さから収縮率を%値で求めた。なお、測定は各10回行い、その平均値を算出し、少数第一位を四捨五入した値を記載した。
【0072】
(2)収縮応力
セイコー電子工業(株)製の熱応力歪測定装置(TMA)、TMA/SS150Cにより測定した。測定条件はサンプル幅3mm、チャック間5mm、昇温スピード3℃/min、荷重9.8kN/mで行った。
【0073】
(3)自然収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横1000mmの大きさに切り取り、30℃ の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
【0074】
(4)ヘーズ値
JISK7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定した。
【0075】
(5)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルム両端を10mm重ねてテトロヒドロフラン(THF)溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5 リットルの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70℃から85℃までの範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
○:収縮は十分であるが、所々シワ、アバタ又は格子目の歪みが生じている。
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる。又は、収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
【0076】
(実施例1)
乳酸系樹脂組成物である(A)成分として、NW4060(Nature Works LLC社製:Nature Works:D体含有量=2%、MFR=3.0g/10分)(以下、A−1と略する)100質量部に、アルミナシリカ0.1質量部を押出設定温度180〜200℃で溶融混練した樹脂組成物からなる両表面層を厚みが各々12.5μmとなるように、また、酢酸ビニル含有量が25%以上となるエチレン−酢酸ビニル共重合体である(B)成分として、EV360(三井・デュポンポリケミカル製:エバフレックス、酢酸ビニル含有量=25wt%、MFR=2.0g/10分)(以下、B−1と略する)からなる中間層を厚みが25μmとなるように、それぞれ別々の押出機から合流させ、環状三層ダイ温度200℃、リップギャップ1.0mm、ブローアップ比5.2、引取り速度=3.0m/min、外冷風温度=25℃、外冷周波数=36Hzで共押出インフレーション成形して、総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
実施例1において、(B)成分として用いたB−1からEV40LX(三井・デュポンポリケミカル製:エバフレックス、酢酸ビニル含有量=41wt%、MFR=2.0g/10分)(以下、B−2と略する)とし、ブローアップ比5.0とした以外は同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
実施例1において、中間層を(B)成分として、B−1が90質量%、(C)成分として高密度ポリエチレンであるHJ490(日本ポリエチ製:ノバテックHD、MFR=20g/10分)(以下、C−1と略する)が10質量%となるようにし
た以外は同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
実施例1において、中間層を、B−1が90質量%、A−1が10質量%となるようにした以外は同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0080】
(実施例5)
実施例4において、B−1とA−1の質量割合をB−1/A−1=80質量%/20質量%となるようにした以外は、同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
実施例1において、(B)成分として、LV540(日本ポリエチ製:ノバテックEVA、酢酸ビニル含有量=20wt%、MFR=2.5g/10分)(以下、B−3と略する)とした以外は同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0082】
(比較例2)
実施例1において、中間層に(B)成分とした用いたB−1から両表面層に用いたA−1に変更し、実質的に単層フィルムとした以外は同様にして総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0083】
(比較例3)
実施例3と同様の構成にて、2種3層のマルチタイプのTダイから、ダイ温度200℃、リップギャップ1.0mm、で総厚みが200μm(50μm/100μm/50μm)となるように、キャスト温度=60℃で原シートを採取した。次いで、テンター設備を用い、予熱=80℃、延伸=80℃、熱処理温度=80℃でラインスピード=3m/minで横に4倍延伸を施し、総厚み50μm(12.5μm/25.0μm/12.5μm)の熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より、本発明で規定する熱収縮性積層フィルムは、特に低温熱収縮特性が良好で且つ収縮応力値が1MPa以下となる熱収縮性フィルムであることがわかる。また、インフレーション成形でも製造可能であることが確認できる(実施例1〜5)。これに対して、(B)成分の酢酸ビニル含有量が20%の場合(比較例1)、熱収縮性が乏しく包装仕上がり時にシワが残り問題があることが確認できる。また、乳酸系樹脂組成物を主成分とする両表面層を有さない層構成の場合(比較例2)には主収縮方向と垂直方向の熱収縮率が大きく、収縮後の格子目の歪みが多く、縦ひけが大きく問題があることが確認できる。また、テンター設備を用いて延伸した場合(比較例3)、同組成でも収縮応力値が1MPa以上となることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と該中間層の両面上に積層される表面層の少なくとも3層で構成される積層フィルムであって、前記表面層はポリ乳酸系樹脂組成物[(A)成分]を主成分として構成され、前記中間層は酢酸ビニルの含有率が25質量%以上60質量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体[(B)成分]を主成分として構成され、かつ、以下の(a)から(c)の条件を満たすことを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
(a)80℃の温水中に10秒間浸漬した時の主収縮方向の収縮率が30%以上であり、主収縮方向と直交する方向の収縮率が10%以下
(b)収縮応力値の最大値が主収縮方向及び主収縮方向と直交する方向のいずれの方向も1MPa以下
(c)30℃で30日間保存した時の主収縮方向の収縮率が3.0%以下
【請求項2】
前記(A)成分がD−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂組成物である請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記中間層が、前記(B)成分と、メルトフローレート(MFR)が10g/10分以上100g/10分以下である高密度ポリエチレン[(C)成分]との混合樹脂組成物で構成され、前記(B)成分と前記(C)成分との質量比が(B)/(C)=95/5〜80/20である請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
インフレーション成形法で得られる請求項1から3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項6】
請求項5に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2010−64283(P2010−64283A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230329(P2008−230329)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】