説明

熱可塑性ポリマー系を選択的に加熱するためのマイクロ波エネルギーの使用

マイクロ波感受性ポリマー領域を含む熱可塑性材料を加工するための方法を開示し、この方法は、前記マイクロ波感受性ポリマー領域をマイクロ波に暴露すること(この暴露の結果、前記ポリマー領域の温度が上昇する)および前記熱可塑性材料を加工することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第60/809,520号、同第60/809,526号および同第60/809,568号(それぞれが2006年5月31に出願され、それぞれが本明細書に参照として取り入れられている)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、熱可塑性ポリマー系を選択的に加熱するためのマイクロ波エネルギーの使用に関する。前記ポリマー系は、マイクロ波エネルギーに対して元々感応性である場合もあり、適切なマイクロ波感応性添加剤を前記ポリマーに配合すること又は前記ポリマーの骨格上に構成要素として組み込むことによって変性される場合もある。
【背景技術】
【0003】
典型的に、熱可塑性ポリマーペレットは、商業的価値のあるパーツを作るために、一次変換プロセス、例えば押出又は射出成形、において溶融、再造形および冷却しなければならない。場合により、商業的価値のあるパーツを獲得するために、さらなる加熱、再造形および冷却を伴う二次加工プロセス、例えば熱成形、が必要とされる。一次プロセスと二次プロセスの両方において、熱エネルギーが熱可塑性物質に印加され、その後、再造形を行った後に解除される。
【0004】
熱可塑性ポリマー系のための従来の加熱メカニズムは、多くの場合、接触又は放射熱源に依存する。赤外線と一般に呼ばれる、放射エネルギーは、1から10μmの範囲の波長を有し、ならびに利用可能なエネルギーの半分が熱として放散される前に吸収材料の約1から2μmの深さに浸透する。熱伝達プロセスは、伝導プロセス(固体材料の場合)、又は溶融材料の場合には伝導、対流および機械混合の組み合わせによって継続する。同様に、接触加熱は、材料の「バルク」を加熱するために高温接触表面からの伝導(又は伝導、対流および混合の組み合わせ)に依存する。
【0005】
伝導熱伝達プロセスに付随する熱伝導率(RHT)は、一般に、次の関係によって記述することができる:RHT=f(A,Ct,デルタT)(式中、Aは、熱伝達に利用可能な面積であり、Ctは、その材料の熱拡散率であり、およびデルタTは、利用可能な温度駆動力でであり、これは、加熱される材料の温度が上昇するにつれて時間に伴って低減する)。未変性熱可塑性物質の熱拡散率、Ct、は、本質的に低く、そのために従来の放射又は接触加熱システムにおける熱伝達を妨げている。さらに、熱伝導プロセスは、加熱されるパーツ(例えば、シート材料)の表面がその加熱されるパーツの中心より実質的に高温となる、望ましくない温度勾配を生じさせることがあり、これは、加熱されるパーツの厚みの分布に非常に依存する。
【0006】
対照として、マイクロ波は、赤外の波長と比較して大きい、約12.2cmの波長を有する。マイクロ波は、利用可能なエネルギーが熱として放散される前に、赤外又は放射エネルギーと比較してはるかに大きい深度、典型的には数センチメートル、吸収材料の中に浸透することができる。マイクロ波吸収材料では、マイクロ波エネルギーは、その材料へのマイクロ波の浸透の結果としてその材料を「体積」加熱するために利用される。しかし、材料が良好なマイクロ波吸収体でない場合、それは、本質的にマイクロ波エネルギー「透過性」である。
【0007】
マイクロ波加熱に付随する一部の潜在的な問題としては、むらのある加熱および熱暴走が挙げられる。むらのある加熱は、そのパーツへのマイクロ波エネルギーのむらのある分配に起因することが多く、例えば、従来の家庭用電子レンジでは、回転台を用いて加熱する品物を支えることによってある程度克服することができる。熱暴走は、上で略述したむらのある加熱と、温度の関数としての誘電損率の変化との組み合わせによるものであると考えてよい。
【0008】
マイクロ波エネルギーは、平面構造、例えば、濡れた生地を乾燥させるために使用されている。水は、マイクロ波感受性であり、十分な期間にわたって十分なマイクロ波エネルギーに暴露されると蒸発する。しかし、生地は、典型的に、マイクロ波透過性であり、その結果、本質的にその材料の唯一のマイクロ波感受性成分である水にマイクロ波が集中することとなる。マイクロ波エネルギーは、以下の参照文献にあるように、他の材料を加熱するためにも使用されている。
【0009】
特許文献1には、食品容器において内層として使用される、酸化鉄、炭酸カルシウム、水、ケイ酸アルミニウム、エチレングリコールおよびミネラルスピリットを含有するポリマーコーティングが開示されている。そのコーティング層をマイクロ波エネルギーにより加熱し、それによって容器内の食品をきつね色に焼いたり、その表面に焦げ目をつけたりすることができる。
【0010】
特許文献2には、マイクロ波感受性材料および玩具における蓄熱体としてのそれらの使用が開示されている。開示されているマイクロ波感受性材料は、フェライトおよびフェライト合金、炭素、ポリエステル、アルミニウムおよび金属塩を含んでいる。特許文献3には、熱可塑性基体に結合させるために使用される、カーボンブラックを含有するポリマーのストリップが開示されている。
【0011】
特許文献4には、電磁放射の影響を受けて急速に加熱され得るポリマー組成物、ならびに関連用途および加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,519,196号
【特許文献2】米国特許第5,070,223号
【特許文献3】米国特許第5,338,611号
【特許文献4】WO 2004048463 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ポリマー材料を加熱するためのマイクロ波の使用の主要な制約は、多くの有用なポリマーの低いマイクロ波受容力である。従って、ポリマーの低いマイクロ波受容力は、そうしたポリマー系を加熱するために高い電力又は長い照射時間を必要とする。特にマイクロ波吸収用に設計されるポリマーでは、多くの場合、それらのマイクロ波特性と機械的又は熱的特性のどちらをとるかの妥協があり、すなわち、機械的特性と熱的特性は、多くの場合、望ましいとはいえない。
【0014】
従って、マイクロ波エネルギーを使用するポリマーの急速な体積加熱を助長するプロセスおよびポリマー材料が必要とされている。加えて、ポリマーの造形又はさらなる加工を助長するために、ポリマー材料のそのバルク材料を流動できるようにするのに十分な部分だけを加熱又は溶融する能力を有するプロセスおよびポリマー材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの態様において、本明細書に開示する実施形態は、マイクロ波感受性ポリマー領域を含む熱可塑性材料を加工するための方法に関し、この方法は、前記マイクロ波感受性ポリマー領域をマイクロ波に暴露すること(この暴露の結果、前記ポリマー領域の温度が上昇する)および前記熱可塑性材料を加工することを含む。
【0016】
他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に記載する実施形態において有用なマイクロ波加熱装置を図解する。
【0018】
【図2】マイクロ波感受性層が組み込まれている多層シートの1つの実施形態を図解する。
【0019】
【図3】マイクロ波加熱/冷却曲線と赤外線加熱/冷却曲線の比較図であり、これは、パルスマイクロ波加熱又はそのパーツの中で相対的に高温の領域と低温の領域を生じさせる他の手段の使用から生ずる、そのポリマー系における「ヒートシンク」の概念から生ずる、冷却サイクル時間減少および潜在的エネルギー低減を例証する。
【0020】
【図4】マイクロ波加熱システムにおける三層シート系の熱応答についてのモデリング結果を提示する。
【0021】
【図5】マイクロ波加熱システムにおける三層シート系の熱応答についてのモデリング結果を提示する。
【0022】
【図6】従来の放射加熱システムにおける三層シート系の熱応答についてのモデリング結果を提示する。
【0023】
【図7】従来の放射加熱システムにおける三層シート系の熱応答についてのモデリング結果を提示する。
【0024】
【図8】シート厚および所望の加熱時間に基づいて所要電力を計算する、三層シート系の熱応答についてのモデリング結果を提示する。
【0025】
【図9】多層シートの選択的マイクロ波加熱を取り入れている熱成形プロセスの1つの実施形態を例証する。
【0026】
【図10】マイクロ波感受性添加剤を有するおよび有さないPPおよびABSについてのアイゾット衝撃データを提示する。
【0027】
【図11】本明細書に記載する実施形態において有用なポリプロピレンシートのマイクロ波加熱についての時間−温度応答を提示する。
【0028】
【図12】ゼオライトA、マイクロ波受容性添加剤、を含有する幾つかのポリマーについての測定加熱速度をマイクロ波電力の関数として提示する。
【0029】
【図13】選択的マイクロ波加熱で実現することができる均一な加熱の例証となる、マイクロ波加熱装置において加熱しながら測定したシートのサンプルについての温度プロフィールを提示する。
【0030】
【図14】選択的マイクロ波加熱で実現することができる均一な加熱の例証となる、マイクロ波加熱装置において加熱しながら測定したA/B/Aシートサンドイッチサンプルについての温度プロフィールを提示する。
【0031】
【図15】マイクロ波感受性材料の芯層を含む三層シートの2つのPPサンプルについて測定した加熱特性を提示する。
【0032】
【図16】図15における2つのPPサンプルのうちの一方についての加熱プロフィールの温度スナップショットを提示し、このスナップショットは、加熱プロセスに入って20分過ぎたところで撮った。
【0033】
【図17】図1で図解したものに類似したマイクロ波加熱/熱成形装置を使用して加熱したPPサンプルについての加熱プロフィールの温度スナップショットを提示する。
【0034】
【図18】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【0035】
【図19】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【0036】
【図20】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【0037】
【図21】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【0038】
【図22】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【0039】
【図23】本明細書に記載する実施形態に従って、マイクロ波感受性ポリマーシートを固定速度でマイクロ波キャビティーに通す、動的加工を施した様々なサンプルについてのマイクロ波加熱結果を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1つの態様において、本明細書に記載する実施形態は、マイクロ波エネルギーの印加によってポリマーを急速および制御可能に加熱できるようにすることができるマイクロ波受容性成分が、ポリマー骨格上に組み込まれている、又はポリマーマトリックスに高分子もしくは非高分子添加剤として配合されている、ポリマーに関する。他の態様において、本明細書に記載する実施形態は、マイクロ波受容性成分が組み込まれているポリマーの加工方法に関する。
【0041】
代替加熱法、例えば、放射、対流又は接触加熱法と比較して、マイクロ波エネルギーの使用は、非常に急速な体積加熱を生じさせ得る。マイクロ波エネルギーの使用により、従来の加熱システムの2つの基本的制限:パーツの表面からの熱エネルギーの移動のポリマーの熱伝導率への依存;およびポリマー表面の最大許容温度(そしてまた、これが、最大利用可能温度駆動力を決める)、を克服することができる。
【0042】
ポリマーは、その化学組成に基づき、元々、マイクロ波受容性である場合がある。あるいは、マイクロ波受容性添加剤とマイクロ波非受容性、すなわち「透過性」、であるベースポリマーとを併せることにより、マイクロ波感受性ポリマー組成物を作ることができる。本発明の実施形態において有用な、適するベースポリマー、マイクロ波受容性ポリマーおよびマイクロ波受容性添加剤は、下で説明する。結果として生ずるマイクロ波受容性又はマイクロ波感受性ポリマーは、マイクロ波エネルギーを放射、対流又は接触加熱の代わりに用いることにより、又はそれらと併用することにより、加熱することができる。その後、その加熱されたポリマーを、例えば有用な物品を作るための一次変換プロセス又は二次加工プロセスにおいて、混合する、トラスファー成形する、造形する、型打ちする、射出する、二次成形する、成形する、押出す、又は別様にさらに加工することができる。
【0043】
多数の材料をマイクロ波吸収によって加熱することができる。これは、双極子加熱メカニズムによって達成することができ、ならびに永久双極子および/又は電荷の誘導移動を伴う(それらは、その材料を通って移動する振動電磁波と共振して振動しようとするからである)。従って、その材料は、分子の振動によって加熱され、その後、隣接原子および分子への熱の粘性伝達(viscous transfer)によって加熱される。他の材料は、電磁波の電場がその材料内の電流の流れを刺激するので、オーム(抵抗)加熱によって熱くなることができる。さらに他のマイクロ波加熱メカニズムとしては、マックスウェル・ワグナーメカニズムおよび磁気加熱メカニズムが挙げられる。任意の材料がマイクロ波電場の存在下で熱くなる程度は、その誘電損率(損失正接又は複素誘電率とも呼ばれる)によって定義され、これは、要するに、その材料と電磁波との相互作用の強さの測度である。極めて重大なこととして、この加熱はバルク効果であり、すなわち、この材料は、有効に「体積」加熱され、従って、適切なパーツ設計によりパーツにおける所望の温度分布を実現することができる。
【0044】
例えば、熱成形用に設計された共押出シートの場合、マイクロ波感受性芯層は、そのシートを内側から外側へと加熱することができ、その結果、より低温の、より望ましいシート表面温度を得ることができる。一部の実施形態において、マイクロ波加熱は、シート表面を含むシートの温度プロフィールの正確な制御を可能にする。シート温度プロフィール(幅、厚および/又は長さによる)の制御により、結果として得られるパーツの結果として得られる厚又はポリマー分布の制御が可能となり得る。例えば、より低温の外皮温度により、金型による接触および押しのけに起因する結果としての材料分布を変えることができる。
【0045】
マイクロ波受容性添加剤
マイクロ波受容体、すなわち、マイクロ波感受性ポリマーを作るためにベース熱可塑性ポリマーとブレンドする、また反応することができる添加剤、としては、導電性又は磁性材料、例えば、数ある中でも、金属、金属塩、金属酸化物、ゼオライト、炭素、水和鉱物、金属化合物の水和塩、ポリマー受容性材料、粘土、シリケート、セラミック、スルフィド、チタネート、カーバイド、硫黄、無機固体酸又は塩、ポリマー酸もしくは塩、無機もしくはポリマーイオン交換樹脂、マイクロ波受容性化合物で変性された粘土、分子もしくはポリマーマイクロ波受容体を含有する無機又はポリマー物質、有機導体、又はポリマー材料に受容性および選択的加熱をもたらすことができるマイクロ波受容体として有効であり得る他の化合物を挙げることができる。
【0046】
上記の添加剤のいずれかを別々に使用して、又は併用して、所望の選択的加熱効果をもたらすことができる。一部の実施形態において、マイクロ波受容性添加剤は、電磁エネルギーに対して狭帯域応答を示すことができる。他の実施形態において、マイクロ波受容性添加剤は、広い周波数帯域にわたる照射によって加熱することができる。1つの実施形態において、前記添加剤は、1MHzから300GHz又はそれ以上の周波数範囲にわたって受容性を有すると考えることができる。他の実施形態において、前記添加剤は、0.1から30GHz又はそれ以上、他の実施形態では400MHzから3GHz、および他の実施形態では1MHzから13GHz又はそれ以上の周波数範囲で加熱することができる。さらに他の実施形態において、前記添加剤は、1から5GHzの周波数範囲で加熱することができる。
【0047】
上で説明した一部のマイクロ波受容性添加剤、例えば、ゼオライトおよび粘土は、緊密に結合した水を含有する場合がある。これらの材料は、加熱するとその添加剤から放出され得る過剰な吸着水を含む場合もある。一部の実施形態において、マイクロ波感受性添加剤は、ポリマーと併せる前に乾燥させることができる。一部の実施形態において、マイクロ波受容性添加剤は、例えばベント式押出システムの使用により、ポリマーと併せ、水を除去することができる。他の実施形態では、水が結合しているマイクロ波受容性添加剤を含有するポリマーのパーツ又はシートを、マイクロ波装置においてそのシートを加工する前に、乾燥させることができる。このようにして、過剰な水に起因する望ましくない気泡形成を最小にする又は回避することができる。
【0048】
ポリマー
よりマイクロ波感受性のポリマーを作るために1つ又はそれ以上のマイクロ波受容性添加剤と併せることができるポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ乳酸およびポリラクチドポリマー、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、ポリイミド、スチレン無水マレイン酸(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PEKおよびPEKK)、エチレンビニルアルコールコポリマー、ならびにこれらのコポリマー又は混合物から選択される樹脂が挙げられる。ある実施形態において、マイクロ波受容性添加剤と併せることができるポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、スチレンコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態において、マイクロ波受容体と併せることができるポリマーとしては、アクリロニトリル系ポリマー、ヒドロキシル基含有ポリマー、アクリル系又はアクリレート系ポリマー、無水マレイン酸含有又は無水マレイン酸変性ポリマー、アセテート系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリケトン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ならびにポリウレタン系ポリマーが挙げられる。
【0049】
一部の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、多層構造に不連続層(又は幾つかの層)として、その(又はそれらの)不連続層を後続の二次加工の前に優先的に加熱することができるように、組み込むことができる。その後、熱エネルギーは、これらの層から、本質的にマイクロ波エネルギー「透過性」であり得る隣接ポリマー層へと伝導され、その結果、従来の加熱システムでより急速にそのポリマー構造全体が必要二次加工温度に到達できる。
【0050】
ある実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、100重量部のポリマーにつき0.1から200重量部のマイクロ波受容性添加剤を併せることによって作ることができる。他の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、100重量部のポリマーにつき1から100重量部、さらに他の実施形態では2から50重量部、およびさらに他の実施形態では3から30重量部のマイクロ波受容性添加剤を併せることによって作ることができる。
【0051】
ある実施形態において、マイクロ波受容性添加剤の含有量は、マイクロ波感受性ポリマーの0.1から25重量%を含む。他の実施形態において、マイクロ波受容性添加剤の含有量は、マイクロ波感受性ポリマーの1から20重量%、およびさらに他の実施形態では2から15重量%を含む。
【0052】
一部の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、粉末、顆粒、小粒、不均質削片、液体、シート、又はゲルの形態であり得る。マイクロ波感受性ポリマーは、結晶質、半結晶質、又は非晶質であり得る。一部の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、着色剤、補強用又は増量用フィラー、および他の機能性添加剤、例えば難燃剤又はナノ複合材を含んでもよい。
【0053】
マイクロ波加熱装置
上で説明したマイクロ波感受性ポリマー材料は、さらなる加工のためにマイクロ波加熱装置を使用して加熱することができる。以下、図1を参照して、本明細書に開示するプロセスの実施形態に従って使用することができるマイクロ波加熱装置10を説明する。マイクロ波加熱装置10の構成要素としては、チューニングピストン11、EHチューナー12、整合用絞り板13、導波管14、ホーン15、マイクロ波チョーク17および下側可動ピストン18が挙げられる。ポリマーシートは、サンプル送りスロット19によってサンプルを送り込み、それらのサンプルを共鳴キャビティー20に通すことにより、マイクロ波加熱装置10によって加工することができる。加熱装置20の動作変数をチューニングして、共鳴キャビティー20において定常波を生じさせることができる。
【0054】
一部の実施形態において、一部の実施形態において使用するマイクロ波加熱装置は、ポリマーを急速におよび均一に加熱することができ、ならびにそのマイクロ波感受性ポリマーの性質(受容体タイプ、受容体濃度、マトリックスタイプなど)および加工する材料の形態(厚、形状など)に合わせることができる。本明細書において用いる場合、急速な加熱は、一部の実施形態では、そのシートの少なくとも一部分の毎秒少なくとも5℃、他の実施形態では毎秒少なくとも10℃、他の実施形態では毎秒少なくとも20℃、他の実施形態では少なくとも30℃、およびさらに他の実施形態では50℃の速度での加熱を指すことができる。本明細書において用いる場合、均一な加熱は、シートの加熱又はシートの少なくとも選択部分の加熱を指ことができ、この場合、加熱部分は、一部の実施形態では10℃又はそれ以下、他の実施形態では7.5℃又はそれ以下、他の実施形態では5℃又はそれ以下、他の実施形態では4℃又はそれ以下、およびさらに他の実施形態では3℃又はそれ以下の最大温度変化を有する。従来の赤外線加熱と比較すると、本明細書に開示するマイクロ波加熱装置の様々な実施形態によって生じる加熱速度および温度変化は、サイクル時間の点での利点をもたらすことができ、過剰な熱暴露に起因するポリマーに対する有害効果の低減をもたらすことができ、ならびに加工改善をもたらすことができる。
【0055】
装置10は、様々な電力源(図示せず)を含むことができ、ホーン15は、均一なエネルギー密度を行き渡らせることができ、ならびに絞り板13およびEHチューナー12は、放射される波長を緻密にチューニングすることができる。このように、マイクロ波放射器は、粒状ポリマーを効率的に加熱するように調整することができる。数ある変数の中でも、加工するポリマーシートの温度をモニターするために、分析測定装置(図示せず)を含むこともできる。シートの加熱に関して説明したが、他のマイクロ波加熱装置およびプロセスも、本明細書に記載するマイクロ波感受性ポリマーとともに使用することができる。
【0056】
マイクロ波加熱装置において用いるマイクロ波放射器についての電力定格は、加熱するポリマー試験片の組成、サイズ又は厚、ならびに所望の温度に依存し得る。電力定格は、変数、例えば、加熱ステージの上流又は下流で行われる操作についてのサイクル時間に基づいて選択することもできる。ある実施形態では、可変電源を利用することができ、それによってプロセス自由度、例えば、パーツサイズ又は組成(マイクロ波受容性添加剤の量又はタイプ)を変化させる、もしくは材料組成の小さな局所的な相違に対処する能力、又は所望の温度、が得られる。
【0057】
用途
本明細書に開示する実施形態は、電磁エネルギーを使用して、熱可塑性材料の体積の一部分(後続の二次成形技術でその材料を加工可能にするために十分な部分)を選択的に加熱することによる、熱可塑性材料の効率的変換に関する。本明細書において用いる場合、加工可能とは、熱可塑性物質の少なくとも一部分の、そのバルクプラスチックを混合する、トラスファー成形する、造形する、型打ちする、射出する、押出すなどして製品を作るために十分な溶融状態又は軟化の備えを意味する。熱可塑性基体の加熱は、その基体の全体積に浸透するおよびマイクロ波感受性領域に優先的に吸収される能力を有する電磁エネルギー、例えばマイクロ波、への暴露によって達成することができる。
【0058】
マイクロ波放射線を印加することにより、ポリマー試験片の体積、バルク又はパーツの所定領域で局部的に熱を発生させることができる。従って、他の領域が、使用する放射線を透過する非吸収材料から成り得るとき、印加するエネルギーの量を注意深く制御および濃縮することができる。例えば、未処理のポリプロピレンおよびポリエチレンは、マイクロ波放射線透過性である。マイクロ波を受容する材料を使用することにより、使用するエネルギーを低減することができ、サイクル時間を短縮することができ、ならびに最終材料の機械的特性および他の特性を様々な要求および用途に合わせることおよび最適にすることができる。
【0059】
マイクロ波感受性材料の中の部位は、電磁エネルギーの吸収に好適である場合もあり、又は好適でない場合もある。好適に吸収する部位は、電磁エネルギーの影響を受けて容易におよび急速に熱くなる。言い換えれば、その基体の体積の指定部分だけが、その材料の他の領域と比べて強く電磁エネルギーによる影響を受ける。
【0060】
このように、電磁エネルギーは、その基体の一定領域のみと相互作用し、電磁エネルギーが存在するときにはその温度が上昇する。その後、熱伝導および他のそうしたメカニズムのために、そのバルク材料の中の隣接領域の加熱が発生する。そのバルク材料は体積加熱されるので、従来の加熱技術と比較して、より急速にその材料を加工可能な状態に変換することができる。さらに、そのバルク材料全体が表面伝導により加熱(赤外線加熱)された材料は、通常存在するより少ない熱エネルギーを含有し得るため、エネルギーをかなり節約することができる。例えば、赤外線加熱は、大気への有意なエネルギー損失を生ずる結果となり、ならびに赤外線加熱では、パーツの表面からそのパーツの中心への許容可能な熱伝達率をもたらし、その中心温度を加工に必要な温度に上昇させるために、そのパーツの表面温度が所望のバルク温度より有意に高くなければならない。対照的に、マイクロ波感受性ポリマーの温度の加工温度への急速な体積加熱を生じさせるマイクロ波選択的加熱は、特に、マイクロ波透過性表面層を含むような場合、有意に低いポリマー表面温度を生じさせる結果となり得る。エネルギーを、それを必要とする場所、すなわちマイクロ波感受性ポリマー、に主としてエネルギーを伝達するマイクロ波加熱は、系から喪失されるエネルギーがより少ない傾向も有る。マイクロ波加熱は、結果的に、従来のプロセスのサイクル時間も相当節約することができる。マイクロ波加熱メカニズムが(熱伝導とは対照的に)そのバルク全体にわたって急速に発生するためばかりでなく、そのパーツの総エネルギー含有量が少ないため、加熱時間を低減することができる。材料の非加熱領域が、隣接する加熱領域の熱を抜き取るヒートシンクとしての役割を有効に果たして、そのバルク材料の総冷却速度を増させるので、冷却サイクルも低減することができる。
【0061】
本発明のマイクロ波感受性ポリマーは、一次変換プロセス又は二次加工プロセス中に使用することができる。例えば、一部の実施形態において、本マイクロ波感受性ポリマーは、フィルム、発泡体、異形材、配合ペレット、繊維、織および不織布、成形パーツ、複合材又は1つ又はそれ以上のポリマー材料から製造された他の物品をはじめとするポリマー物品の二次加工中で使用することができる。他の実施形態において、本マイクロ波感受性ポリマーは、従来のプロセス、例えば、数ある中でも、シート押出、共押出、発泡押出、射出成形、発泡成形、ブロー成形、射出延伸ブロー成形および熱成形の際に使用することができる。
【0062】
上で説明したように、本明細書に開示するマイクロ波感受性ポリマーは、後続の加工、例えば、混合、トラスファー成形、造形、型打ち、射出、二次成形、成形、押出、又は別様のさらなる加工、のために、加熱することができる。一部の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、例えば、冷蔵庫ライナーを成形するためなどの、厚手シート熱成形プロセスにおいて有用であり得る。他の実施形態において、本明細書に開示するマイクロ波感受性ポリマーは、例えば、エアレイドバインダー繊維の加工のために有用であり得る。他の実施形態において、本明細書に開示するマイクロ波感受性ポリマーは、例えば、ブロー成形ボトルを作るためなど、ブロー成形プロセスにおいて有用であり得る。
【0063】
他の実施形態において、本明細書に開示するマイクロ波感受性ポリマーは、加工するポリマーを完全に溶融しない用途において有用である。例えば、マイクロ波感受性ポリマーを選択的に加熱することができる(そのポリマーの選択部分のみを装置に通して加熱し、それによって、熱エネルギーを、二次成形、成形又は型打ちプロセスなどによりさらに加工する部分のみに集中させることができる)。これは、加工中に処理する材料の構造完全性を強化することができ、サイクル時間を低減することができ、ならびにその材料を所望の形状に加工するために必要なエネルギーを低減することができる。
【0064】
他の実施形態において、本明細書に開示するマイクロ波感受性ポリマーは、エンボスシートにおいて有用であり得る。従来の赤外線熱成形では、投入した熱は、シートの表面を通過するはずであり、多くの場合、そのエンボス構造又は表面細部の維持力を低減する。上で説明したような加熱サイクルの低減に加えて、マイクロ波感受性ポリマーは、そのシートに付与されるエネルギー足跡の低減により、加工中のエンボス構造の維持力を増大させることができる。例えば、熱成形用に設計された共押出シートの場合、マイクロ波感受性芯層は、そのシートを内側から外側へと加熱することができ、その結果、より低温の、より望ましいシート表面温度を得ることができる。
【0065】
他の実施形態において、選択的加熱により、マイクロ波非感受性層が間に散在しているポリマーのマイクロ波感受性層の使用が可能になり得る。積層ポリマーは、以下のことに備えることができる:最適な温度プロファイリング;ポリマーの加工中のパルスマイクロ波エネルギーの使用;パーツの特定領域の加熱に対処するマイクロ波放射器の選択的配置;および1つ又はそれ以上の熱可塑性パーツ又は層のマイクロ波感受性の効力により優先的又は選択的加熱に備えることができる他の具現化。
【0066】
シート押出の一例として、マイクロ波感受性層を多層シートに組み込むことができる。例えば、図2は、マイクロ波感受性層が組み込まれている多層シートの1つの実施形態の図解である。マイクロ波感受性層Bは、シート芯を構成し、これに、マイクロ波加熱に対して感受性でない外層Aが結合している。マイクロ波感受性芯層の組み込みは、シートの後続、例えば、シート熱成形中の加工を助長することができる。一部の実施形態では、マイクロ波選択性ポリマーの使用により、厚手シート熱成形、選択的延伸性、およびシートの急速、均一加熱を可能にすることによって、シート熱成形を助長することができる。
【0067】
本明細書に開示する積層シートは、2つ又はそれ以上の層を含むことができ、その1つ又はそれ以上の層が、マイクロ波感受性ポリマー組成物を含む、又はそれらから作られたものであり得る。例えば、積層シートは、3、4、5、6、...、1000まで又はそれより多くの層を含むことができる。一部の実施形態において、個々の層は、0.1μmから25mmの平均厚を有することができ、シートの総厚は、100μmから25mmの範囲であり得る。
【0068】
図2には三層シートとして示すが、他の実施形態では、マイクロ波感受性ポリマーが、ポリマー構造内の単数又は多数の領域を構成する場合がある。例えば、マイクロ波感受性ポリマーは、2つ又はそれ以上の層を有するシートにおいて不連続層を構成する場合がある。他の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、より大きな構造の特定領域を構成する場合があり、さらなる加工のためにそれらの領域を選択的に加熱することができる。さらに他の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、サイドバイサイド繊維構造の1面を構成する場合がある。さらに他の実施形態において、マイクロ波感受性ポリマーは、芯/鞘繊維構造の芯又は鞘を構成する場合がある。
【0069】
発泡押出プロセスでは、例えば、マイクロ波感受性層を組み込むことにより、発泡体芯および固体非感受性外皮を選択的に加熱できるようにすることができ、それによって、より短い加熱サイクル、その上、発泡体構造の気泡破壊の防止を可能にする。他の実施形態では、それぞれの層に異なる濃度のマイクロ波吸収性化学種を組み込むことにより、それぞれの層を差別的に加熱できるようにすることができ、従って、任意の後続、例えば熱成形の二次加工段階の最適化を可能にすることができる。他の実施形態では、マイクロ波感受性層の組み込みにより、ポストフォームシートの選択的発泡を可能にすることができる。
【0070】
他の実施形態、例えば、射出成形又は射出延伸ブロー成形では、マイクロ波感受性層の組み込むみにより、ポリマーの内部冷却に起因して、より短いサイクルを可能にすることができ、この場合は、非感受性部分又はパーツがヒートシンクとしての役割を果たし、その結果、低減された冷却時間をもたらすことができる。射出成形することができる溶融および半溶融材料の混合物を生じさせるパルスマイクロ波エネルギーの使用によって、射出成形を助長することもでき、この場合、前記半溶融材料は、そのパーツの後続の冷却中にヒートシンクとしての役割を果たす。射出延伸ブロー成形は、最終製品の機械的特性を改善することができるという、マイクロ波選択的加熱の結果として生ずる最適化熱勾配の恩恵も受けることができる。
【0071】
図3は、従来の加熱サイクルと比較して、本発明の1つの実施形態に従って得ることができる冷却の低減を例証するものである。加熱サイクルおよびエネルギー必要量を低減することができる、ポリマーの急速な加熱に加えて、マイクロ波感受性の芯を有するシート、ペレット又は繊維も、同様に、加熱して冷却サイクルの低減を生じさせる可能性がある。図3に示すように、赤外線の加熱/冷却曲線「IR」とマイクロ波加熱/冷却曲線「MW」を比較すると、芯ポリマーを加熱して、エネルギーを外側の非感受性層に伝導することができる。成形温度「MT」へと十分に加熱したら、そのパーツを成形すること、射出することなどができる。より温かい芯から非感受性ポリマーへの継続的な伝導に起因して、そのパーツは、従来の加熱後のパーツ冷却より早く離型温度へと冷却し、その結果、サイクル時間減少「dt」が生じる。曲線IRと曲線MWの間の面積dEは、マイクロ波感受性の芯を有するポリマーをマイクロ波加熱することによって達成することができる低減熱負荷量を表す。
【0072】
一部の実施形態では、マイクロ波感受性層および非マイクロ波感受性層を含有する、積層熱可塑性シートを熱成形の前に選択的に加熱することができる。他の実施形態では、熱可塑性材料の積層又は共押出ペレットを、例えば射出成形プロセスにおける、後続の加工の前に、選択的に加熱することができる。これらは、上で説明した「内部ヒートシンク」の存在のために冷却を加速させる結果となり、および従って、上で説明した積層シートの場合と同様にサイクル時間を減少させることができる。
【0073】
他の実施形態において、後続の加工の前に、パルスマイクロ波エネルギーを使用して、非溶融ポリマーの層が間に散在している溶融ポリマーの「スライス」、すなわち不連続領域、を作ることができる。上で説明した積層シートの場合と同様に、これも冷却を加速させる結果となり、および従って、サイクル時間を減少させることができる。
【0074】
他の実施形態では、1つ又はそれ以上のマイクロ波放射器の選択的配置により、後続の加工の前にシート又は他の熱可塑性パーツの特定領域を選択的に加熱することができる。これは、シートの特定領域を深絞りしなければならない熱成形プロセスにおいて、特に有用であり得る。
【0075】
他の実施形態におけるプロセスは、マイクロ波感受性成分を含有する二成分バインダー繊維(特定のポリプロピレン繊維、又はマイクロ波感受性物質、例えば無水マレイン酸グラフトもしくは他の極性化学種を含有する繊維の場合)とセルロース系繊維とを含有する衛生製品において使用されるものなどの、吸収性の芯の選択的加熱および圧密を利用することができる。例えば、繊維形成プロセスでは、ポリマー繊維の部分的溶融およびセルロース繊維の加熱をそれらの固有水分含有量によって行うために十分なエネルギーを有するマイクロ波加熱装置に平面材料を通すことができる。その後、それらの繊維をポリマー繊維とセルロースの一体化網目構造の中の吸収性の芯に圧密することができる。あるいは、前記構成品は、工業用布であってもよく、この場合、マイクロ波感受性繊維は、カバードヤーンのような織又は不織構造を互いに結合させるために使用され得る。
【0076】
他の実施形態におけるプロセスは、一方がマイクロ波エネルギー受容性であり、他方が透過性である、2つのポリマーのブレンドを、マイクロ波受容性ドメインを選択的に加熱することができるような方法で使用することができる。それぞれのポリマーの相対比率、相形態、マイクロ波感受性成分の濃度、および印加する電力を用いて、マイクロ波感受性相の加熱速度および従って、その複合材全体の加熱速度を制御することができる。
【0077】
他の実施形態では、選択的加熱により、透過性ポリマーマトリックス中のマイクロ波受容性強化部材の使用が可能となり得る。前記強化部材は、連続メッシュ又はネット、職又は不織布、連続フィラメント又は不連続、ステープルファイバーの形態をとる場合がある。前記強化部材も実際にはポリマー性である場合があり、又は他の非ポリマー性、マイクロ波感受性材料、例えば、炭素又は金属である場合もある。
【0078】
他の実施形態において、マイクロ波受容性ポリマーは、固体外皮および発泡体芯を含む三層(又はそれ以上の層の)発泡体構造(例えば、シート)の外皮および/又は芯において使用することができる。それぞれの層中のマイクロ波受容性成分の濃度は変えることができ、ならびにマイクロ波電力は、それぞれの層の急速な加熱と、後続の加工の直前のその構造全体にわたる所望の温度分布、両方を実現するように選択することができる。これは、時期尚早の発泡体気泡破壊を伴わずに所望の熱成形温度プロフィールを実現するために赤外線加熱プロセスにおいて必要とされる非常に緩やかな加熱の必要をなくすことができる。
【0079】
一部の実施形態では、熱可塑性ポリマーマトリックス(例えば、熱可塑性シート)内のゼオライト、無機水和物、又はポリマー水和物の形態でのマイクロ波受容性成分を使用することができる。前記ゼオライトは、そのゼオライト構造内に水を含有することがあり、マイクロ波エネルギーを用いて加熱することができ、そしてその後、その熱可塑性マトリックスを再造形することができる。例えば、シートの場合、そのシートを容器にすることができる。その後、その造形容器を再加熱し、その水和した添加剤から水を蒸気として放出させることができ、この水蒸気は、その熱可塑性マトリックスを発泡体に発泡させる発泡剤としての役割を果たすことができる。
【0080】
他の実施形態において、食品の無菌包装処理の際に使用される包装用シートの外皮層に対する、その外皮層を選択的に加熱するための、マイクロ波受容性材料の使用は、過酸化水素又は蒸気滅菌の必要をなくすことができる。
【0081】
実施例
一部の実施形態において、本マイクロ波感受性ポリマーは、多層構造の中に、不連続層(又は幾つかの層)として、それらのマイクロ波感受性層を後続の二次加工又は加工の前に優先的に加熱することができるように、組み込むことができる。その後、熱エネルギーは、これらの層から、本質的にマイクロ波エネルギー「透過性」である隣接ポリマー層へと伝導され、その結果、そのポリマー構造全体が、従来の加熱システムでより急速に必要二次加工温度に到達できる。一部の実施形態では、半結晶質材料、例えばポリオレフィン又はポリアミドを熱成形する際に、A/B/A構造が有用であり得る。
【0082】
以下の実施例は、多層構造についてのモデリング予測および実験結果、ならびに射出成形中のパルスマイクロ波エネルギーについてのサイクル時間の例を含む。
【実施例1】
【0083】
マイクロ波選択的加熱プロセスのモデリング
図4から7を参照して、A層が本質的にマイクロ波エネルギー透過性であり得、およびB層がマイクロ波エネルギー感受性であり得る、図2に示すものに類似した三層A/B/Aシート系のマイクロ波加熱および放射加熱のモデリングからの結果を示す。この多層A/B/A構造をマイクロ波エネルギーによって加熱して、B層を優先的に加熱することができる。その後、熱エネルギーは、A層に伝導され得る。
【0084】
例えば、図1に関して上で説明したマイクロ波加熱装置を使用して、ポリマーシートを加熱することができる。この又は同様の方法でのA/B/A構造の加熱は、従来の放射又は接触加熱と比較すると、シートの断面を通して「逆の」温度プロフィールを生じさせるので、熱成形の際に有用であり得る。この逆の温度プロフィールは、図4および5と図6および7を比較することによって、より良好に例証することができ、この場合、マイクロ波加熱についてはA層のほうがB層より低温であり、放射加熱では最外層が一番温かい。
【0085】
図4および5において例証されるように、マイクロ波加熱は、図4および5において例証されるような中間、マイクロ波感受性層の加熱を生じさせる。その後、その熱が外層に伝導される。このシミュレーションのために、シートをマイクロ波エネルギーに20秒間暴露して、芯の温度を160℃までにした。最上層は、マイクロ波電源を切った10秒後にピーク温度に達する。約30秒の全パルス時間の後、伝導によりシート全体が約160℃になり、その多層シートの厚さにわたっての温度差は、約20度未満である。
【0086】
図6および7において例証されるように、放射加熱は、最上層を熱に暴露し、その後、その熱は、より下の層に伝達される。シートのより下の部分への伝導は、芯の温度を160℃までにするために有意な時間量、150秒、を必要とし得る。約170秒でシート全体が160℃に達し、最上層と最下層の間には約70℃の温度差がある。
【0087】
上記のシミュレーションの結果は、マイクロ波加熱が、より早い加熱サイクル、およびサンプルを通してより均一な温度分布を生じさせることを示している。マイクロ波加熱と放射加熱を比較したときに観察されるもう1つの違いは、加熱後のサンプルの応答である。マイクロ波加熱の場合、図4および5において例証されるように、電源切断状態への応答が即時であり、溶融領域を含む。対照的に、放射加熱の場合、図6および7において例証されるように、電源切断状態への即時応答は、達成がより困難であり、溶融領域を含まない。
【0088】
図4から7において例証されるように、選択的マイクロ波加熱は、B層より低温であるA層をもたらすことができ、ならびにA層におけるより高い溶融強度、および従って、広い加工領域をもたらすことができる。この多層構造は、マイクロ波感受性ポリマーのそれぞれの層の数、位置および厚さ、それぞれに含まれるマイクロ波感受性添加剤の比率、ならびに印加する電力レベルを変えることにより、熱成形のためにそのシート全体を通して最適な温度プロフィールをもたらすように特別に設計することもできる。このようにして、必要な加熱時間を最小にするのに十分な「温度駆動力」を確保するために必要な、放射加熱システムにはつきものの非常に高い温度にそのシートの表面を暴露することなく、シート全体を熱成形に望ましい温度に急速に加熱することができる。積層構造の選択的加熱の概念は、二次成形段階および後続の冷却段階中のより高温の(マイクロ波加熱)層からより低温の(マイクロ波透過性)層への熱エネルギーの伝導のために、二次成形後の冷却加速も助長することができる。それらのマイクロ波透過性層は、本質的に、そのポリマー構造内の「内部ヒートシンク」としての役割を果たすことができる。
【実施例2】
【0089】
加熱サイクル時間低減
上記の結果を生ずるために使用したモデルは、マイクロ波感受性ポリマーが熱成形サイクル、特に、加熱サイクルに対して及ぼすことができる効果を推定するためにも使用することができる。積層シート(厚さの60%が、マイクロ波感受性の芯Bである、A/B/Aポリプロピレンシート)を代表的な熱成形温度に加熱するために必要な時間を概算した:指定時間内に指定厚のシートを加熱するために必要なワット数を計算した。その結果を図8に提示する。これらの結果は、所要電力約100kWが、3秒という少ない加熱サイクル時間を生じさせ得ることを示しており、これはサイクル時間の有意な低減と言うことができる。厚手シート(10mm又はそれ以上)については、従来の加熱システムで達成されるものに匹敵する300秒のサイクル時間を、それより低い所要電力で達成することができる。
【0090】
表1では、シートごとに、マイクロ波加熱システムについて概算したサイクル時間を、従来の熱成形加熱システムと比較する。さらに、A/B/A積層ポリプロピレンシートについては、B層が、マイクロ波感受性であり、そのシート厚の約60%である。マイクロ波加熱は、図4において図解し、上で説明したものに類似した、12−セルマイクロ波加熱システムによって行うことができる。選択的加熱は、結果として、加熱サイクル時間の90%又はそれ以上の低減を生じさせることができ、その加熱に必要なエネルギーを75%低減することができる。
【表1】

【0091】
マイクロ波感受性ポリマー層(単数又は複数)を含有するシートの選択的加熱は、図9に示すものに類似したプロセスで行うことができる。シート素材102をマイクロ波アレイ104に送ることができ、そこでそのシートを所望の温度に加熱することができる。その後、その加熱された素材を、その温度で、低電力IR放射器を有する熱成形機金型台106に進め、その後、二次成形し、冷却し、射出して108、成形パーツ110にすることができる。
【0092】
図9の上のほうの部分は、選択的加熱を用いるシートの熱成形の一例について必要な上で述べた段階と対応する概算時間、およびこのプロセス全体にわたっての概算ポリマー温度を例証するものである。図9に示す時間−温度プロットについてのシートは、マイクロ波感受性ポリプロピレンの内芯層を有する6mm厚のポリプロピレンシート(A/B/A=1.5mm/3mm/1.5mm)であった。マイクロ波加熱アレイは、22kWの電力設定でのものであった。
【0093】
図9における時間−温度プロットは、マイクロ波感受性ポリプロピレンについての有意に減少された加熱時間、約30秒、を例証している。対照的に、従来の熱成形/加熱プロセスを用いると、ポリプロピレンについては約200秒、およびポリスチレンについては85秒かかる(それぞれ、同様の厚さ)と推定される。マイクロ波感受性ポリマーについてのこの加熱時間の有意な減少は、その加熱時間減少の結果として生ずるサイクル時間減少のために、より低いパーツコストをもたらすことができる。
【0094】
表2では、射出成形システムに関してパルスマイクロ波加熱システムについて概算したサイクル時間(例えば、上記の図5におけるもの)を、従来の射出成形加熱システムと比較する。マイクロ波感受性ポリマーをマイクロ波エネルギーのパルスで加熱し、非受容性および受容性ポリマーを含有するペレットを溶融し、その後、その溶融物をキャビティーに射出する。受容性ポリマーから非受容性ポリマーへの熱の伝導のために、そのペレット/溶融物は、内部ヒートシンクを有し、これが冷却サイクル時間を向上させる。このサイクル時間低減は、より厚いパーツについては60%、より小さいパーツについては約25%と概算された。
【表2】

【実施例3】
【0095】
マイクロ波感受性ポリマーの加熱試験
ゼオライトAおよび酸化鉄(Fe)を、選択的加熱プロセスにおいて評価した。これら2つの添加剤を選択するために用いた基準としては、それらの添加剤の有効性(マイクロ波エネルギーに対する応答)、コストおよび必要負荷量、環境、健康および安全性の懸念が挙げられた。ポリマー特性(粒径、形態および他の特性に基づく)に対してこれらの添加剤が有すると予測される影響も考慮した。例えば、図10は、ゼオライトAがPPおよびABSに対して有し得るアイゾッド衝撃の増加の例証となる実験室データを提示するものである。
【0096】
選択した添加剤を、様々な厚(3、6および10mm)のポリマーシートにおいて4つの負荷レベル(約3、6、10および14容量%)で使用した。この場合のポリマーとしては、ABS、HIPS、PPおよび導電性TPOが挙げられた。その後、それらのポリマーシートのマイクロ波加熱を、上で説明した図1に示すものに類似した装置で試験した(マイクロ波加熱装置20は、構成要素、例えば、チューニングピストン21、EHチューナー22、整合用絞り板23、導波管24、ホーン25、マイクロ波チョーク27、下側可動ピストン28、およびサンプル送りスロット29を含む)。シートは、サンプル送りスロットによってそれらのサンプルを送り込むことにより、マイクロ波加熱装置によって加工した。この試験装置は、ポリマーを急速および均一に加熱することができ、ならびに材料の性質および形態(受容体タイプ、受容体濃度、マトリックスタイプ、ならびにサンプルの厚および形状)に合わせることができた。この試験装置は、2.54GHz可変電源、および均一なエネルギー密度を行き渡らせるホーンへのWG9A導波管接続を含んでいた。絞り板およびEHチューナーは、放射される波長の緻密なチューニングを可能にした。数ある変数の中でも、加工するポリマーシートの温度をモニターするために、分析測定装置(図示せず)も提供された。
【0097】
以下、図11を参照して、1100ワットの電力設定で前記マイクロ波加熱装置を使用して、6容量%のゼオライトAを有する6mm厚のポリプロピレンシートを加熱し、そのシートの温度を時間の関数として測定した。そのシートは、約17秒で室温から約155℃に上昇した。これは、急速な加熱サイクルを示している。
【0098】
図12を参照して、ゼオライトAを含有する幾つかのサンプルについてのマイクロ波電力の関数としての測定加熱速度を示す。表3に記載する8つのサンプルを作製した。これらのサンプルを一定マイクロ波電力で加熱して、そのサンプルの温度の上昇を測定した。中等度の高電力設定で、サンプル1、3および7は、急速な加熱速度(毎秒約7℃より大きい)を示し、サンプル2、6および8は、中等度の加熱速度(毎秒2から6℃)を示し、ならびにサンプル4および5は、遅い加熱速度(毎秒2℃未満)を示した。
【表3】

【0099】
図13を参照して、動作中のマイクロ波加熱装置で加熱中のサンプルについて測定した温度プロフィールを示す。そのサンプルは、ナイロンストリップ、6mm厚、幅85mmおよび長さ500mmであった。そのサンプルは、500Wの電力設定で、400mm/分の速度で、その装置を通って移動した。図13は、その加熱の結果として生じた安定化温度プロフィールの時宜を得たスナップショットを提示するものであり、選択的マイクロ波加熱で実現することができる均一な加熱の例証となる。
【0100】
図14を参照して、マイクロ波加熱装置において加熱中のA/B/Aサンドイッチサンプルについて測定した温度プロフィールを示す。A層は、マイクロ波に対して非受容性であり、B層は受容性であった。実験結果により、積層の概念が、上で説明したようなE場モデリングによって予測されたものに類似した、均一の加熱バンドをもたらすことが確認された。
【0101】
図15を参照して、マイクロ波エネルギー透過性のポリマーの外層に結合しているマイクロ波感受性材料の芯層を含む三層シートの2つの3mmのPPサンプルについて測定した加熱特性を示す。両方のサンプルについて、芯層は、10重量%のゼオライトAを含有した。サンプル9は、最上層(外皮)を有し、これに対してサンプル10は、最上層を有さなかった。これらのサンプルを500Wの電力設定でマイクロ波エネルギーに暴露した。最上層を有するサンプル9は、最上層を有さないサンプル10よりはるかに遅く熱くなった。図16は、試験開始から2分後のサンプル9の加熱の時間−温度スナップショットを提示するものであり、熱伝導が、熱をマイクロ波感受性層から外層へと伝達する場合に外層がどれほど遅れるかのさらなる例証となる。このように、外層は、低溶融強度の芯のための担体としての役割を果たすことができる。
【0102】
以下、図17を参照して、マイクロ波加熱装置および図1において図解したようなものに類似した熱成形ステーションを使用するポリプロピレンサンプル(芯材中に14%ゼオライトAを有する4mm厚の20/60/20共押出PP材料)の加熱の温度スナップショットを例証する。このプロピレンシートは、14重量%のマイクロ波受容性添加剤(ゼオライトA)を含有する。これを、1.5キロワットの電力定格を有するマイクロ波加熱装置において、そのポリマーシートを3mm/秒の速度でそのマイクロ波加熱装置に通して加熱する。マイクロ波エネルギーをそのシートの中央部のみに向け、成形すべきそのシートのその部分を選択的に加熱した。図17でわかるように、加熱された区画の全域で温度プロフィールは摂氏4度しか変化しなかった。これは、所望の成形パーツを作るためのサンプル幅全体にわたる十分に均一な加熱の例証となる。
【実施例4】
【0103】
以下、図18から23を参照して、図1において図解したものに類似したマイクロ波加熱装置におけるマイクロ波感受性ポリマーサンプルの動的加熱についての結果を示す。3から14重量%の範囲のゼオライト(ゼオライトA)負荷量を有する単層および共押出ポリプロピレンシート(20/60/20 共押出構造)ポリプロピレンシート(PP D114)を、シートが共鳴キャビティーを経由して10mm/秒の速度で送られるマイクロ波加熱装置において加熱した。加熱段階の後、そのアプリケータを経由する送り速度と同じ搬送速度で、そのシートを金型に進めた。この金型は、アプリケータから300mm離れた位置にあった。マイクロ波発生器の電力レベルを変化させ、結果として生ずるポリマーシート温度を測定した。1)共鳴キャビティー内で、2)ポリマーがそのキャビティーを出たとき、および3)金型の位置で、温度を測定した。様々なサンプルについての温度対電力レベルの結果を図18(共押出PPサンプル)および図19から22に提示する。追加の単層サンプルを毎秒5mmの速度で加熱した。それらの結果を図23に提示する。
【0104】
もう1つの例として、冷蔵庫ライナーへのシートの熱成形は、ポリマーに剛性と靭性の良好なバランス、十分に高い低温対衝撃特性、良好なESCR、および良好な耐熱性を有することを求める。加えて、そのポリマーは、良好な溶融強度および限定された垂れを有する、深絞り加工領域を有さねばならない。逆の温度プロフィールの結果として熱成形中に改善された溶融強度および低減された垂れを有する前記A/B/Aポリマーは、冷蔵庫ライナーおよび同様厚手シート用途のためのTPOシートの熱成形を可能にする。
【0105】
本発明の実施形態は、熱可塑性材料の急速な体積加熱に備えるものである。実施形態は、熱可塑性構造の不連続パーツ、例えば、ラミネート又は共押出多層構造における個々の層などの選択的加熱に備えるものである。他の実施形態は、加熱されたマイクロ波受容性材料の領域と非加熱のマイクロ波受容性材料の領域を生じさせるパルスマイクロ波エネルギーに備えるものである。一部の実施形態は、パーツの特定領域の加熱に対処するマイクロ波放射器の選択的配置に備えるものである。他の実施形態において、特に、一方又は両方の外層からのポリマーへの放射熱の遅い伝導伝達と比較して、高い浸透効率を有する選択的マイクロ波加熱は、芯層および外皮層をほぼ同時に加熱することができる。
【0106】
本明細書に開示する実施形態は、熱可塑性ポリマー材料の選択的マイクロ波加熱に利用することができる。ポリマー加工に関して、この技術は、設計者および加工者に多くの利点を提供し、この利点としては:選択的で急速な加熱;加熱/冷却サイクル時間減少(高速);高いエネルギー効率および他の環境的利点、例えば放出物低減(有毒ガスの排出がない乾式プロセスであるため)および再循環可能性増大(自己強化型単一素材成分のより広範な使用を可能にすることによる);自己強化型パーツにおける特性の保存(戻りのリスク低減);生産性増大;パーツ品質および強度改善;ならびに熱プロセスにおける停留時間減少に起因する熱劣化の最小化を含み、および従ってポリマー形成の際に熱安定化添加剤を減少させることができる。
【0107】
有利なことに、本明細書に開示する実施形態は、加熱時間の減少、総二次加工サイクル時間の減少および従って、ピースパーツコストの低減をもたらすことができる。本明細書に開示する実施形態は、加工されることとなる材料の中に「ヒートシンク」を導入することにより、選択的加熱の使用の結果として冷却時間減少をもたらすこともできる。加えて、体積加熱は、「表面」又は「接触」加熱の必要をなくし、従って、高いポリマー表面温度の潜在的に有害な影響をなくすことができる。体積加熱は、シート厚全体にわたる望ましくない温度勾配もなくす。
【0108】
有利なことに、本明細書に開示する実施形態は、低減される総サイクル時間および低減されるシステムエネルギー必要量により、改善された生産性ももたらすことができる。本明細書に開示する実施形態は、すべての熱可塑性材料に最適な熱成形条件を提供する、および特に、そうしなければ許容できないほどの狭い加工領域を有する厚手熱可塑性ポリオレフィンシートを熱成形できるようにする、注文どおりの熱プロファイリングも提供することができる。
【0109】
本開示は、限られた数の実施形態を含むが、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることは、本開示の恩恵に浴する当業者には理解される。従って、本範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波感受性ポリマー領域を含む熱可塑性材料を加工するための方法であって、
マイクロ波加熱装置において該マイクロ波感受性ポリマー領域をマイクロ波に暴露して、該マイクロ波感受性ポリマー領域の温度を上昇させる工程;および
該熱可塑性材料を加工する工程
を含む方法。
【請求項2】
1MHzから300GHzの範囲の周波数を有するマイクロ波を発生させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロ波加熱装置をチューニングすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
実質的にマイクロ波エネルギー透過性である熱可塑性材料と少なくとも1つのマイクロ波受容性添加剤とを混合して、マイクロ波感受性ポリマー作ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ波感受性添加剤を水和することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多層複合材に前記マイクロ波感受性ポリマーを1つの層として配置することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記多層複合材が、前記マイクロ波感受性ポリマー層と少なくとも1つのマイクロ波透過性層とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性材料が、2又はそれ以上の層を含む積層シートとして形成され、および1つ又はそれ以上の層が、前記マイクロ波感受性ポリマー領域により構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記積層シートが、100μmから25mmの総厚を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記積層シートを作ることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記積層シートを乾燥させること、前記積層シートをベント式押出機において二次成形すること、前記マイクロ波受容性添加剤を乾燥させること、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
作られた積層シートを冷蔵庫の構成要素として使用することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性材料の加工が、その熱可塑性材料の混合、トラスファー成形、造形、型打ち、射出、二次成形、成形および押出のうちの少なくとも1つ、ならびにそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂の加工が、溶融加工技術を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融加工技術が、射出成形法、押出、押出−ブロー成形、トランスファー成形、ブロー成形、射出−発泡成形、熱成形、シート押出、共押出、発泡押出、発泡成形、射出延伸ブロー成形、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加工が、結果として、フィルム、発泡体、異形材、配合ペレット、繊維、織布、不織布、糸、成形パーツ、複合材、およびラミネートのうちの少なくとも1つを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記織又は不織布が、セルロース系繊維をさらに含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公表番号】特表2009−538760(P2009−538760A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513269(P2009−513269)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/012817
【国際公開番号】WO2007/143015
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】