説明

熱可塑性物品および改良されたマスターバッチを用いたその製法

本発明はプラスチック物品を製造する改善された方法およびそれから製造された物品に関する。本発明の方法は、第一の原料と第二の原料を別個の原料として供給する工程、溶融ブレンドを形成するために剪断力を加える工程、溶融ブレンドを成形する工程、および溶融ブレンドを固化する工程を含む。第一の原料はポリオレフィンを含む。第二の原料は少なくとも1種の粒子状鉱物充填剤と少なくとも1種の第二のポリオレフィンの混合物を含み、第二のポリオレフィンはISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きく、粒子状鉱物充填剤は混合物全体の約45〜85質量%であり、第二のポリオレフィンは混合物全体の約15〜55質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された熱可塑性物品およびその製法に関し、そして特定の態様においては、改良されたマスターバッチを用いて、射出成形機中にてブレンドされ、射出成形されたポリオレフィン物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの分野では、良好な機械的性質を有し、相対的に安価で、製造しやすい原料が継続して求められている。近年の原料物質の価格や原料を加工するためのエネルギー費の高騰により、現在市販されている多くのプラスチックが必要とする物理的、機械的ニーズを満足する魅力的な代替原料系を探る研究が激化してきた。たとえば、熱可塑性ポリオレフィンの分野では、加工前の配合(compounding)工程、特に出発原料への熱履歴(heat history)や加工に要するエネルギー消費、あるいはその両方への依存を少くする効果的な原料系の入手が魅力的である。
【0003】
この分野における原料の製造方法に関する文献の例としては、米国特許出願公開第2004/0048967号明細書、米国特許出願公開第2005/0070673号、米国特許出願公開第2005/0250890号明細書、米国特許出願公開第2005/0049346号明細書、米国特許第4,732,926号明細書、米国特許第5,130,076号明細書、米国特許第6,403,691号明細書、および米国特許第6,441,081号明細書、欧州特許出願公開第0987091号明細書、特開2004−168876号公報、国際公開第2004/031292号パンフレット、Verbraak, C.ら,“Screw Design in Injection Molding”,Polym. Eng. & Sci.,1989年,第29巻,第7号,p.479−487、Han,C.D.ら,“Morphology and Mechanical Properties of Injection Molded Specimens of Two−Phase Polymer Blends”,Journal of Applied Polymer Science,1977年,第21巻,p.353−370、および“EXACT Plastomers − High Performance Solutions for TPO Applications”,ExxonMobil Technical Bulletin,2005年5月がある。これらは全て引用によってここに明白に取り込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はプラスチック物品を製造するための改良された方法およびその方法により製造された物品に関する。概括的には、本発明は、個別の原料として、ポリオレフィン(たとえば、熱可塑性ポリオレフィン)を含有するまたは本質的にそれからなる第一の原料、および粒子状充填剤と第二のポリオレフィンとの混合物を含有する第二の原料を供給する工程、原料をブレンドし、溶融ブレンドを形成するために、原料を高温にした状態で、第一および第二の原料に剪断力を加える工程、溶融ブレンドを成形する工程、および溶融ブレンドを固化させる工程を含む改良された方法、およびその方法により製造された物品に関する。
【0005】
さらに具体的な態様においては、本方法は、第二の原料として、混合物全体の約45〜85質量%の少なくとも1つの粒子状鉱物充填剤、および混合物全体の約15〜55質量%の、ISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きい少なくとも1種の第二のポリオレフィンのマスターバッチ混合物を使用する。さらに、該方法はブレンド工程に先立って第一および第二の原料を一緒に配合する(compounding together)工程を実質的に含まない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】図1aは、本発明によって得ることができるミクロ構造を示す実例の顕微鏡写真である。
【図1b】図1bは、本発明によって得ることができるミクロ構造を示す実例の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明はプラスチック物品を製造するための改良された方法およびその方法から製造された物品に関する。概括的な態様において、本発明は、個別の原料として、第一のポリオレフィン(たとえば、熱可塑性ポリオレフィン、ポリプロピレン共重合体、あるいはポリプロピレン単独重合体、それらの任意の組み合わせなど)、粒子状充填剤と第二のポリオレフィン(たとえば、混合物全体の約45〜85質量%の少なくとも1つの粒子状鉱物充填剤と、混合物全体の約15〜55質量%の、ISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きい少なくとも1種の第二のポリオレフィンとの混合物)とのマスターバッチ混合物を含有する第二の原料を供給する工程、原料をブレンドし、溶融ブレンドを形成するために原料を高温にした状態で、原料に剪断力を加える工程、溶融ブレンドを成形する工程、および溶融ブレンドを固化させる工程を含む改良された方法およびその方法により製造された物品に関する。望ましくは、本方法は、ブレンド工程に先立って第一および第二の原料を一緒に配合する工程を含まず、特に、溶融ブレンド工程を含む事前配合工程を含まない。
【0008】
上記から解るように、溶融ブレンドを成形する工程は、成形品をつくるために開示されている数多くの技術の何れか1つ、あるいはそれらの組み合わせによって実施することができる。例示すれば、成形は吹込成形、射出成形、あるいはそれらの組み合わせによって行うことができる。一般には、そのような工程は適切な装置を用いて、特に溶融ブレンドが得られるよう高温で供給原料に剪断力を与えるのが有利である。例示すれば、典型的な実施方法は、スクリュー・バレルアセンブリーを有する装置を採用し、供給原料(たとえば、ここでは、第一および第二の原料の各々のペレット)は、たとえば、貯蔵容器から直接導入により、混合ホッパーを経て、スクリュー・バレルアセンブリーに供給される。原料は、スクリュー・バレルアセンブリーの内部をスクリューに沿って進むときに、分散混合、分配混合、あるいはその両方により混合される。第一および第二の原料のペレットの乾式混合のために、混合アームを採用してもよい。重量計量供給装置のような適当な供給装置を用いることができ、それは重量計量ブレンダー(たとえば、マグワイヤ社(Maguire)から入手可能)を備えるものでもよいし、備えないものでもよい。
【0009】
第一および第二の原料のペレットは、通常、お互いに同じような大きさに合わせられる。たとえば、第一の原料のペレットと第二の原料のペレットの両方の少なくとも50質量%(より具体的には少なくとも約65質量%)が実質的に同じ大きさである(すなわち、それぞれの最長の寸法がお互いの約15%の変動内にある)ことが望ましい。
【0010】
本発明の1つの態様においては、第一の原料の個々のペレットの平均体積が第二の原料の個々のペレットの平均体積より小さくなるように、第一の原料のペレットは概して第二の原料のペレットより小さな大きさにされる。平均体積は、100個のランダムに選択されたペレットの質量を測定し、その質量を原料の密度の100倍の量で割ることによって決定することができる。ただし、体積の単位はcmであり、質量の単位はgであり、そして密度の単位はg/cmである。
【0011】
望むときは、原料は、分散混合のための少なくとも1つの溝(undercut)、分配混合のために少なくとも1つのバイパスチャンネル、あるいはその両方を有する混合フライトにて処理することができる。所望のブレンドが得られたら、ブレンドされた原料は、所望により混合ノズルを通して装置から排出され、所望の物品の形状を決めるための成形型の壁と接触させられる。
【0012】
本発明に従う有用な加工条件の例は、限定するものではないが、米国仮出願第60/745,116号(代理人整理番号1062−058P1)(参照によってここに組込まれる。)に開示されている。限定するものではないが、実例として、ここで用いられるスクリュー・バレルアセンブリーは、所望の結果が得られるどのような寸法のものでもよい。ブレンド工程がスクリュー・バレルアセンブリー内部で行われる1つの方法では、スクリュー・バレルアセンブリーの直径に対する長さの比は約5/1より大で、さらに具体的には約10/1より大、また、さらに具体的には約15/1より大である(たとえば、約15/1〜25/1)。
【0013】
本教示によれば、スクリュー・バレルアセンブリー内でブレンドを行う際に考慮しなければならないもう1つのことは、適当な背圧(すなわち、スクリュー復帰(screw recovery)時にプラスチックにかかる圧力)、スクリューの圧縮比、あるいはその両方の選択である。例示にて一側面を説明すれば、ブレンド工程を通して、少なくとも約6バール、より具体的には少なくとも約10バール、または少なくとも約25バール(たとえば、約70バール)の背圧が第一、第二および第三の原料にかけられ、スクリューの圧縮比は約1/1より大(より具体的には、少なくとも約2/1、たとえば約2/1〜3.5/1あるいはそれより大(たとえば、約2.4/1))、あるいはそれら両方の組み合わせにて採用される。より高いそしてより低い値もまた可能である。
【0014】
スクリュー速度は、約20〜400rpm、より具体的には約50〜約250rpm、さらに具体的には約100〜約200rpm(たとえば、約160rpm)を、ブレンド工程を通して採用することが望ましい。
【0015】
ブレンド工程は、使用された特定の機械の任意の適当な溶融設定温度にて行うことができる。たとえば、約160〜約300℃、より具体的には約210〜約255℃、さらに具体的には約220〜約240℃の機械の溶融設定温度にて行うことができる。
【0016】
所望により、射出工程は、ブレンドを混合ノズル(たとえば、界面形成混合ノズル(interfacial surface generating mixing nozzle)のような静的混合装置を通過させることを含む。
【0017】
公知の様々なスクリューデザインを用いて良好な混合ができるが、高性能のデザインのものを用いることが殊に好ましい。高性能デザインの一つの特徴は、スクリューの長さに沿ってチャンネル寸法が可変である2あるいはそれ以上のチャンネルを有していることである。チャンネルの寸法が可変であることは、原料がチャンネルの間を流れることを強制し、改善された混合を与えることができる。たとえば、分配混合は、重合体溶融物の流れをカット、重ね合わせることにより行うことができるのに対し、分散混合は、重合体溶融物の流れを制限的チャンネルを通すことにより行うことができる。いくつかの高性能スクリューを例示すれば、エネルギー伝達(ET)スクリュー(Energy Transfer screw)、二重波スクリュー(double wave screw)、StratablendTMスクリュー、およびUniMixTMスクリューなどであるが、これらに限定されるものではない。二次的混合装置を採用して混合を改善することもできる。二次的混合装置はスクリューデザインに組み入れたり(動的混合装置)、スクリューの下流に組み入れてもよい(静的混合装置)。動的混合装置の例は、1つあるいはそれ以上のMaddock型混合機、ブリスター混合機(Blister mixers)、らせんダム混合機(spiral dam mixers)、ピン混合機(pin mixers)、および混合リング(mixing ring)よりなるが、これらに限定されるものではない。静的混合装置の例は、KenicsTM混合機、界面形成(ISG)混合機(Interfacial surface generater (ISG) mixers)、およびKochTM混合機よりなるが、これらに限定されるものではない。射出成形の場合は、そのような静的混合装置デザインがノズルに組み込むことができ、これらは混合ノズルと呼ばれる。
【0018】
上述の説明から明らかなように、出発原料の溶融ブレンドを含む配合操作は、所望により、装置への原料の供給に先立って行ってもよいが、特に好ましい実施方法は、そのような工程を省くことである。このように、本方法は、ブレンド工程に先立って第一および第二の原料を一緒に配合する工程を実質的に含んでいない。
【0019】
第一の原料については、一般的には、それはポリオレフィン、そしてより特別には2種以上のα−オレフィンコモノマー(たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン)を含む熱可塑性エラストマー、またはより具体的には熱可塑性ポリオレフィン(すなわち、ポリプロピレンと、ポリエチレン−プロピレン共重合体のような柔軟化成分を含むポリオレフィンアロイ)を含む。望ましくは、本方法にてここで採用されているように、第一の原料は、約70g/10分(ISO 1133条件M、230℃、2.16kg)未満のメルトフローレート(たとえば、約1〜約55g/10分、より具体的には約3〜約45g/10分、さらに具体的には約4g/10分〜約20g/10分)、(第一の原料の)約8質量%超のエチレン(たとえば、約12質量%超のエチレン)を含有すること、約30%超(たとえば、約50%超)の結晶化度を有すること、約−30℃未満のガラス転移温度および約0.92g/cm未満の密度を有すること、あるいはそれらの組み合わせで特徴づけられるポリプロピレン耐衝撃性共重合体を含む。第一の原料として使用される原料は、所望により、SBSまたはSBRゴムのようなブタジエン含有ゴムを実質的に含まない。適切な第一の原料の例は、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)から開発的ポリプロピレン樹脂としてDevelopmental Polypropylene Resin DC7003.00の名称で商業的に入手可能である。適切な第一の原料の別の例は、製造業者が高耐衝撃性リアクターTPOグレードと説明しているD143.00 Developmental TPOとしてダウ・ケミカル社から入手可能である。
【0020】
第一のポリオレフィンは、好ましくは、リアクターTPO、レオロジー制御TPOおよびそれらの組合わせからなる群から選択された熱可塑性ポリオレフィンを含む。
【0021】
最終的な全原料において、第一の原料は、通常、最終原料の約20質量%超、特に約35質量%超、より具体的には約40〜約98質量%(さらに具体的には約75〜約95質量%)の量で存在する。ポリプロピレン単独重合体またはランダムポリプロピレン共重合体を、ポリプロピレン耐衝撃性共重合体の代わりにまたはそれに加えて用いてもよい。当然のことながら、ここにおいて使用する重合体は、好ましくは、純粋な状態の重合体を用いてもよい。勿論、本教示は、重合体に、公知の適当な添加剤、たとえば透明剤/核剤、潤滑剤、スリップ剤、安定剤(たとえば、熱安定剤)、これらの組み合わせなどを含有させることも可能であると考えられる。
【0022】
次に、第二の原料について説明すると、第二の原料は、典型的には、本発明の教示によるマスターバッチ混合物を含み、その混合物は、粒子状充填剤と第二の熱可塑性物質、そして特に第二のポリオレフィンを含むか、あるいは(より具体的な態様では)本質的にこれらからなる。公知の数多くの代替可能な充填剤(たとえば、雲母、炭酸カルシウム、シリカ、粘土、木材、二酸化チタン)が使用できるが、好ましい充填剤は、タルク(たとえば、本質的に3MgO・4SiO・HOからなるもの)である。充填剤は、任意の適当なメジアン粒度、たとえば約10μm以下(たとえば、約7μm以下、あるいは約5μm以下でもよい、あるいは、多分、約3μm未満ですらよく(たとえば、約1μm未満))程度のメジアン粒度を有することができる。充填剤は、任意の適当な最大粒度、たとえば約50μm以下(たとえば、約30μm未満、より具体的には約15μm未満)程度であることができる。
【0023】
第二の原料については、充填剤は事前に(たとえば、溶融ブレンド工程により)第二の熱可塑性物質と配合しておくことが好ましい。第二の原料を調製するための配合または溶融ブレンド工程は、限定するものではないが、恐らく、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機または混練機を利用することができるであろう。充填剤は、一般には、第二の原料全体に均一に分布するように混合することが好ましい。そのとき、他でも記載されているように、第二の原料に1種あるいはそれ以上の添加剤を混合、含有させることもできる。また、この段階においてまたはそれに続いて、着色剤あるいは顔料を添加することも可能である。1つの実施方法として、第二のポリオレフィンに加えて、たとえばポリエチレン(たとえば、LLDPE)、ポリプロピレン単独重合体または生じる原料の性能特性を調整するための他の相溶性物質のような別の重合体を添加することも、また望ましい。このように、自明のことながら、第二の原料は、第一の原料と同じタイプの重合体、あるいは別の重合体もしくは複数の重合体の組み合わせを用いることも可能である。
【0024】
望ましくは、第二の原料の粘度(粘度は溶融状態(たとえばASTM D1084によって約177℃程度の温度で)で測定される。)は、得られるマスターバッチ混合物の粘度が第一の原料中のポリオレフィンの粘度より低くなるように十分に低い。
【0025】
本教示による特定の例においては、第二のポリオレフィンはポリオレフィンプラストマーであり、そして特にISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きい(より具体的には約250または500g/10分より大きい)ポリオレフィンプラストマーである。そのような原料は、望ましくは、少なくとも約80%、より具体的には少なくとも約100%の極限伸び(ASTM D638による)、および少なくとも約145psi(1MPa)、より具体的には少なくとも約200psi(1.3MPa)の引張強さ(ASTM D638による)を示す。適切なポリオレフィンプラストマーの特別の例は、ダウ・ケミカル社からAFFINITY GA1900およびAFFINITY GA1950の名称で入手可能である。
【0026】
本教示による特定の例においては、第二のポリオレフィンはプロピレンエチレン共重合体であり、特にISO 1133(条件M)によって測定した230℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約10g/10分より大きい(そしてより具体的には約16または20g/10分より大きいプロピレンエチレン共重合体である。そのような原料は、望ましくは、少なくとも約35%、より具体的には少なくとも約55%の降伏点伸び(ASTM D638による)、および約145psi(1MPa)〜約1450psi(10MPa)、より具体的には約200psi(1.4MPa)〜約1000psi(6.9MPa)、さらに具体的には約290psi(2MPa)〜725psi(5MPa)の降伏点引張強さ(ASTM D638による)を示す。そのような原料は、望ましくは、約85ショアーA未満、好ましくは約80ショアーA未満、より好ましくは約75ショアーA未満の硬度(ASTM D−2240による)、および約100MPa未満、好ましくは約60MPa未満、より好ましくは約44MPa未満(たとえば約20〜35MPa)の曲げ弾性率(ASTM D−790Aによる)を示す。適切なポリプロピレンエチレン共重合体の特別の例は、VERSIFY(たとえばVERSIFY DE4300.01)の名称でダウ・ケミカル社から入手可能である。
【0027】
本教示による特定の例において、第二のポリオレフィンは、第一のポリオレフィンのエラストマー成分と相溶性である。したがって、第一の原料のエラストマー成分が第二の原料のポリオレフィンと単一相を形成する可能性がある。
【0028】
すでにお分かりのように、第二の原料は、効果的にマスターバッチとして、即ち、特定の例において「濃縮物」と看做すことができる。このように、別の観点から、濃縮物中の充填剤(たとえば、タルク)の量は、通常、濃縮物の約40質量%より多い量、たとえば濃縮物の約45〜約80質量%、より具体的には約60〜約75質量%である。たとえば、それぞれの原料の量は、充填剤が最終物質中に約40質量%未満、より具体的には約30質量%未満、さらに具体的には約20質量%未満の量で存在するように選択される。より具体的には、全充填剤含有量(たとえば本質的にタルクからなる充填剤のためのタルク含有量)は、最終原料の約2〜約25質量%(たとえば最終原料の約5〜約20質量%、より具体的には最終原料の最終原料の約8〜約15質量%)の範囲である。たとえば、最終原料中の典型的なタルク含有量は、約5.5質量%、約8質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%または約18質量%のような値を有することができる。さらには、最終物質中に1種あるいはそれ以上の添加剤が望まれる場合には、そのような添加剤(たとえば着色剤を含む。)は濃縮物に包含させることができる。
【0029】
本発明の1つの態様において、約20質量%以下(たとえば約15質量%以下)のタルク濃度は、タルクが最終原料の収縮または耐衝撃性に著しい影響を示さないような最終原料において達成することができる。そのような原料は、望ましくは、低温で(たとえば約−30℃または約−40℃で)延性があるであろう。
【0030】
1つの実施方法において、この第二の原料の粒子は、鉱物充填剤または微粉化重合体で被覆されまたは部分的に被覆されていてもよい。そのような被覆は、マスターバッチ粒子間の粘着を減少させることができるであろう。
【0031】
第一の原料、第二の原料あるいは両方に用いられるポリオレフィンは、プロピレンエチレン共重合体(ゴム変性していてもよい。)のような追加のポリオレフィンを含み得る。ポリオレフィンを含むか、あるいは本質的にポリオレフィンからなる適切な原料の例は、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)からC705−44NAあるいはC715−12NHPの商品番号で入手可能である。本教示に従い使用できる重合体の追加の具体例は、国際公開第03/040201号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0204017号明細書、および米国特許第6,525,157号明細書に開示されたものを含み、これらは全て引用によって取り込まれる。メタロセン触媒を用いて作られた重合体も、また、第一の原料、第二の原料あるいはその両方において使用することができる。そのような重合体は、第一および第二の原料に加えて、第三またはその他の原料として同様に含まれていてもよい。
【0032】
お分かりのように、「第一」および「第二」という原料の呼び名は、便宜的なものである。特に記載しない限り、これら用語の使用によって、他の原料が排除されると解釈されるべきではなく、また、加工工程のいかなる特別な順序の必要性を示唆する、とも解釈するべきではない。上記の第一および第二の原料に追加して、他の成分を採用してもよく、1種あるいはそれ以上の充填剤、強化剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、熱安定剤、核剤などの公知の成分を含むが、それらに限定されるものではない。
【0033】
第一、第二および所望により他の原料の2種あるいはそれ以上を、たとえば1つあるいはそれ以上の適当な容器に入れて、キットとして一緒に供給してもよいと考えられる。従って、そのようなキットも、それぞれ独立した成分原料と同様、本発明の範囲に包含される。
【0034】
本発明を使用して作られた物品は、最初にマスターバッチ中にあった充填剤粒子を含むであろう。これらの充填剤粒子は、ブレンド後、マスターバッチの重合体内にとどまっていてもよいし、第一のポリオレフィン中に分散してもよいし、それらの組合わせが生じてもよい。本発明の1つの態様において、もともと第二の原料(マスターバッチ)中にあった充填剤粒子の過半数(たとえば少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%)は、溶融ブレンドを固化する工程の完了の後に第一のポリオレフィン中に存在する。
【0035】
本教示によって得られる原料は、次の性質の少なくとも2つの(さらに具体的には、少なくとも3つ、4つあるいはすべての)、任意の組み合わせを有する。すなわち、密度が約0.85〜約1.25g/cm、より具体的には約0.88〜約1.10、さらに具体的には約0.89〜約1.06、曲げ弾性率が約600〜約2500MPa、より具体的に約700〜約1700MPa、さらに具体的には約800〜約1300MPa、引張強さ(降伏点)が少なくとも約8MPa、より具体的に少なくとも約12MPa、さらに具体的には少なくとも約16MPa、延性モード破壊(たとえば多軸落槍衝撃試験(装置化落槍衝撃試験))が試料の約60%超、より具体的には試料の約100%(−40℃、−30℃あるいは−20℃で)、あるいは平均収縮(たとえば、23℃で1時間もしくは24時間後の成形方向または横方向成形収縮、または80℃で30分後の後収縮、または両方)が約1.4%未満、より具体的には約1.1%未満、さらに具体的には約1.0%未満。
【0036】
より具体的には、本教示によって得られる原料は、試料の約60%超、より具体的には約100%(−40℃、−30℃あるいは−20℃で)の延性モード破壊(たとえば、多軸落槍衝撃試験(装置化落槍衝撃試験))および少なくとも約15J/m、より具体的には少なくとも約20J/m、さらに具体的には少なくとも約30J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強さ(−20℃における)、および、所望により次の性質の少なくとも1つの任意の組み合わせを有する。すなわち、密度が約0.85〜約1.25、より具体的には約0.88〜約1.10g/cm、さらに具体的には約0.89〜約1.06g/cm、曲げ弾性率が約600〜約2500MPa、より具体的に約700〜約1700MPa、さらに具体的には約800〜約1300MPa、引張強さ(降伏点)が少なくとも約8MPa、より具体的に少なくとも約12MPa、さらに具体的には少なくとも約16MPa、あるいは所望により収縮が1.4%未満、より具体的には約1.1%未満、さらに具体的には1.0%未満。
【0037】
別段の記載がない限り、「メルトフローレート」は、ISO 1133によって、230℃の試験温度および2.16kgの荷重を規定する条件Mを使用して、決定される。この試験条件は、耐衝撃性ポリプロピレン等のポリプロピレンに一般に使用される。これらの値は「メルトフローレート」または「MFR」と呼ばれる。別段の記載がない限り、「メルトインデックス」は、ISO 1133によって、190℃の試験温度および2.16kgの荷重を規定する条件Dを使用して、決定される。この試験条件は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンおよびポリオレフィンプラストマーのようなポリエチレンに一般に使用される。これらの値において行なわれた測定は「メルトインデックス」または「MI」と呼ばれる。多軸あるいは装置化落槍衝撃(IDI)エネルギー(Instrumented Dart Impact Energy)測定は、ASTM D3763に従う。例示で説明すれば、多軸落槍衝撃試験(装置化落槍衝撃試験)は、MTS810高速機器にて2000ポンドロードセルを用いて行われる。全試料は直径約4インチ、厚さ約0.125インチのディスクである。約13mmのチップを用いて、ディスクを約6.7メートル/秒で激突させる。約3インチの試験領域を残し、外側の0.5インチはネジで固定している。延性破壊(ここでは、記号「D」で表示)は、プラスチック部の中心を通り抜ける無傷の穴を残してその穴を描き出し、放射上に伸びる亀裂がないことは裸眼で観察される。その試験は、延性破壊のパーセントを得るために、10個の試験片について繰り返す。
【0038】
密度の測定は、ISO 1183(A法)による。ノッチ付きアイゾット衝撃測定はISO 180(1A法)に従う。結晶度パーセントは、ASTM D3417に従い、示差走査熱量測定法にて測定する。ミリグラム量の重合体サンプルをアルミニウムDSC皿に封入する。サンプルを、1分あたり25cmの窒素パージを伴うDSCセルに入れて、−100℃に冷却する。標準的な熱履歴は、サンプルを10℃/分で225℃まで加熱して確立する。然る後、サンプルを−100℃まで(10℃/分で)冷却し、10℃/分で225℃まで再加熱する。二回目の走査時に観察された融解熱を記録する(ΔH観察)。観察された融解熱は、ポリプロピレンサンプルの質量を基準として、次の式によって質量%の結晶化度に関係づけられる。
結晶化度%=ΔH観察/ΔHイソタクチックPP×100
ここで、イソタクチックポリプロピレンの融解熱は、ビー・ワンデルリッヒ(B. Wunderlich),高分子物理(Macromolecular Physics),第3巻,結晶融解(Crystal Melting),アカデミック・プレス(Acedemic Press),ニューヨーク(New York),1980年,p.48にて報告されているように重合体1グラムあたり165ジュールである。
【0039】
ガラス転移温度(T)は、圧縮成形エラストマーのサンプルにて測定され、Rheometrics社製の動的機械分光計(Dynamic Mechanical Spectrometer)を用いて、温度傾斜を実施する。ガラス転移温度は、tanδピークでの温度であると定義される。固相状態試験は、液体窒素環境下、ねじれ固定具(torsion fixture)を用いて動的モードにおいて行われる。温度傾斜率は3℃/分、1ラジアン/秒の振動数で、初期歪は0.1である。平均サンプル寸法は、長さ45.0mm、幅12.6mm、厚さ3.2mmである。
【0040】
別段の記載がない限り、曲げ弾性率はISO 178により測定する。引張強さ(降伏点)は、ISO 527−1/2により測定する。収縮は、ISO 294により、150mm×150mm×3mmのプラークを使用して、測定する。ブルックフィールド粘度はISO 2555によって測定される。
【0041】
特に図1を参照すれば、本教示から得られる原料は、一般に、ポリオレフィンのマトリックス中に分散した多数のゴム粒子を示すであろう。粒子の体積加重平均直径は約0.5〜約5μmの範囲にあり、より具体的には約1〜約3μmの範囲にあるであろう。充填剤は、原料全体にわたって分布しており、そしてマトリックス中に存在し、ゴム粒子中に存在し、マトリックスおよびゴム粒子の間の界面に存在し、またはそれらの組合わせで存在すると考えられる。さらに、ゴム粒子の少なくとも約20体積%(より具体的には少なくとも約35体積%)は、約1〜3μmの範囲内(たとえば約1.5〜約2.7μmの範囲内)の直径を有すると考えられる。ラメラ形態もまた考えられる。
【0042】
ゴムドメインサイズの解析には、画像解析を有する原子間力顕微鏡法(AFM)あるいは透過電子顕微鏡法(TEM)を用いることができる。たとえば、AFMは、ゴム形態の画像を描出するために使うことができ、射出成形したバーをサンプリングして、流れ方向に沿ってバーの中心を観察する。たとえば、サンプリングは、重合体のガラス転移温度より低い温度(たとえば−100℃)において極低温ウルトラミクロトーム(たとえばライカ社(Leica)Ultracut S/FCS)を使用して行なうことができる。AFM画像は、Tapping ModeTM(ビーコ・インスツルメンツ社(Veeco Instruments, Inc.)(カリフォルニア州サンタバーバラ)の商標)を使用して得ることができ、それにおいては、片持ち梁が共振周波数で振動し、フィードバック制御が一定のタッピング振幅に調節する。画像はビーコ・インスツルメンツ社Nanoscopeソフトウェア5.12b46版を使用して処理された。画像解析は、平均粒度および粒度分布を得るために、ライカQwinソフトウェアを使用して行なうことができる。このソフトウェアは、粒度分布の平面断面補正(plane section correction)を使用しなかった。そのような補正は使用されてもよく、より大きな粒度分布をもたらすであろう。
【0043】
本発明の物品については、数多くの用途が発見されている。それらの中には、ポリオレフィン系原料、特に熱可塑性ポリオレフィンを用いられる用途がある。たとえば、ここの教示により製造された原料は、輸送車両における、バンパー、ダッシュボード、外装トリム、グリル、サイドスカート、スポイラー、エアダム、クラッド、内装トリムパネル、ひざボルスター、計器パネル、ハンドル等の内外装部品として魅力的な用途が見いだされる。これらの物品は、成形ができ、ここの教示による原料によって本質的に構成されている。それらは、また、アセンブリーの一部であってもよい。たとえば、本教示により製造された成形品は、溶接、接着ボンド、ファスナーあるいはそれらの任意の組み合わせなどによって他の構造物にラミネートすることもできる。その物品は、また、外側被覆(overmolded)あるいは共射出成形されたアセンブリーの一部とすることもできる。
【0044】
ここで適切に使用される接着剤系の例としては、限定されるものではないが、シアンアクリレート、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等である。特に魅力的な接着剤としては、米国特許第6,710,145号明細書米国特許第第6,713,579号明細書、米国特許第第6,713,578号明細書、米国特許第第6,730,759号明細書、米国特許第第6,949,603号明細書、米国特許第第6,806,330号明細書、および米国特許出願公開第2005/0004332号明細書および米国特許出願公開第2005/0137370号明細書(これらは、すべて引用によりこの明細書に明白に組み込まれる。)に開示されているような有機ホウ素/アミン錯体が挙げられる。
【0045】
この物品は、同様に、二次的工程で適切に処理してその性質を改良することもできる。例示すると、限定するものではないが、被覆、あるいはその他の方法で表面処理することができる。たとえば、1つの態様において、ある物体の表面を、他の物体へ装着する前に、所望により、予備的に処理することができる。この任意的処理としては、洗浄、脱脂、プラズマ被覆、コロナ放電処理、他の表面処理による被覆、接着剤での被覆、あるいはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。1つの態様においては、物体を、たとえば、米国特許第5,298,587号明細書、米国特許第5,320,875号明細書、米国特許第5,433,786号明細書および米国特許第5,494,712号明細書(すべて引用によりこの明細書に組み込まれる。)に記載されたカーボン・シリカ系プラズマ析出コーティング(carbon-silica based deposited coating)をすることができる。他の表面処理、たとえば、米国特許第5,837,958号明細書(引用によってこの明細書に組み込まれる。)に記載されているような公知の技術によるプラズマ表面処理も、また、採用することができる。金型内装飾(In-mold decoration)も、また、採用できる。
【実施例】
【0046】
次の実施例は、本発明の種々の態様を説明するものである。示された値は、概略値であり、本発明を限定するものと看做されるべきではない。本明細書中に開示したように、処理パラメーターの変更も可能である。さらに、示された結果も、同様に、(たとえば、記載された値の±10%あるいはそれ以上の範囲で)変化してもよい。
【0047】
表1は、充填剤とともに配合するために、第二の原料において使用することができる数種のポリオレフィンを掲載している。Affinity GA1900およびAffinity GA1950は使用することができるポリオレフィンプラストマーの例である。
他の類似の原料を使用してもよく、たとえば、約0.87の密度を有し、また8,000〜17,000cpsの177℃でブルックフィールド粘度によって測定した低い粘度を有するエチレンオクテンプラストマーを使用してもよい。Affinity GA1900およびAffinity GA1950のメルトインデックスは、それぞれ約1000および500g/10分である(ISO 1133条件D(190℃/2.16kg)を使用して測定)。Versify DE4300.01は、ダウ・プラスチック社(Dow Plastics)で製造された開発的エラストマーであり、ポリプロピレンエチレン共重合体である。Versify DE4300.01は、約25の典型的なメルトフローレートを有する。
【0048】
表2に示されるように、タルクおよびAffinity GA1900を含むマスターバッチの試料は、ZSK−25二軸スクリュー押出機で200〜450rpmのスクリュー速度で作られる。これらの試料のタルクの濃度は、40質量%〜80質量%である。さらなるマスターバッチ試料は表3に示されており、それらの試料においては、Affinity GA1900またはVersify DE4300.01のいずれかがタルクとともに配合されている。
【0049】
第一の原料として使用することができる1つのポリオレフィンは耐衝撃性ポリプロピレンである。表4は、ダウ・プラスチック社から入手可能な5種の実例となる耐衝撃性ポリプロピレン、すなわち、DC7003、XUR−258、D143.00開発的TPO、C705−44NAおよびC715−12NHPを掲載している。これらのポリプロピレンはすべて、ポリプロピレン単独重合体に相当する高剛性相およびエラストマーエチレン共重合体に相当する柔軟相を含む。
【0050】
耐衝撃性ポリプロピレンは、MB8またはMB9のいずれかとともに、射出成形機のホッパーに供給される。射出成形機に供給する前に、耐衝撃性ポリプロピレンとマスターバッチは手によって乾燥ブレンドされる。これらの試料の組成を表5に示す。対照試料1はポリプロピレンDC7003のみを含む。実施例2、3、4は、それぞれ6%、8%、10%のMB8、および94%、92%、90%のポリプロピレンDC7003を含む。実施例5は、8%のMB9および92%のポリプロピレンDC7003を含む。これらの試料はすべて、射出成形機に供給する前には、耐衝撃性ポリプロピレンとマスターバッチの溶融ブレンドをしないで調製される。射出成形に使用される機械は、直径25mmのスクリューおよび約20の長さ/直径比(L/D)を有するDemag/Ergotech 80−200である。そのスクリューは耐衝撃性ポリプロピレンを成形するための標準的なスクリューであり、混合セクションを有しない。スクリューの圧縮比は2〜3の範囲にある。試験試料は、3mmのプラーク用または引張および屈曲試験片用のいずれかのためにインサート(inserts)を使用して成形される。この明細書の他のところで教示したような方法を使用する他の機械とともに、この射出成形機のためのプロセス条件は、次のとおりである。
バレル温度(ノズルから供給口まで):190〜230℃(たとえば210)
190〜230℃(たとえば210)
170〜210℃(たとえば190)
150〜190℃(たとえば170)
40〜95℃(たとえば70)
金型温度(Tool Temperature):35〜50℃/35〜50℃(たとえば40℃/40℃)
投与速度(Dosing Speed):150〜190rpm(たとえば170rpm)
背圧:40〜100バール(たとえば70バール)
投与ストローク(Dosing Stroke):70〜80mm(たとえば74.5mm)
スクリュー・バック:73〜83mm(たとえば77.5mm)(約3mmの減圧(decompression))
スイッチオーバー・ポイント:8〜12mm(たとえば10mm)
保持圧力:引張試験片については450〜550バール(たとえば491バール)
3mmプラークについては300〜400バール(たとえば350バール)
保圧時間:30〜50秒(たとえば40秒)
射出速度:25〜50mm/秒(たとえば35mm/秒)
冷却時間:10〜20秒(たとえば13秒)
全サイクル時間:±60秒(ISO標準に従って)
【0051】
対照試料C6は、ポリプロピレンXUR−258を単独で射出成形することによって調製される。実施例7〜16は、ポリプロピレンXUR−258をMB4またはMB5とともに、表6に示される濃度に従って、射出成形することによって調製される。射出成形機のホッパーに供給する前には、ポリプロピレンXUR−258とMB4またはMB5との溶融ブレンドはない。
【0052】
実施例4のAFM顕微鏡写真を図1に示す。これらの顕微鏡写真は、より硬いポリプロピレンである連続相およびより柔軟な相の離散粒子(暗い粒子)を示しており、それは、耐衝撃性ポリプロピレンからのエラストマー重合体およびAffinity GA1900を含み、それらは相溶性であるように見える。タルクの明るい粒子もこのAFM顕微鏡写真に観察することができる。柔軟な粒子の平均画分粒度(average fraction particle size)は約1.65のμmである。この相は原料全体の約28%に相当する。
【0053】
図1のAFM顕微鏡写真は、また、原料が射出成形された後、過半数のタルク粒子は射出成形品のポリプロピレン相に存在する可能性が高いことを示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
前に議論したように、好ましくは、本発明の方法は、ブレンド工程に先立つ第一、第二および任意の第三またはその他の原料を一緒に配合する工程を実質的に含まず、具体的には、原料の溶融ブレンド工程を含む配合工程を含まない。おわかりのように、そのような要求は、原料の融点未満で乾燥ブレンドする工程を採用することによって達成される。たとえば、原料をスクリュー・バレルアセンブリー内に導入する前に原料のペレットを(たとえば、ホッパー内の混合アームにより)乾燥混合することができる。(上述した)重量計量供給装置のような適当な供給装置が所望により使用できる。
【0062】
以上から分かるように、本教示は、成形装置に導入する前に(たとえば射出成形機のホッパーに導入する前に)配合される既存の原料に匹敵するかまたは既存の原料よりよい性能特性を特徴とする、成形熱可塑性樹脂物品の製造を可能にする。有利なことに、その原料は、あらかじめ配合されたブレンドで作られた物品と比較して、実質的に最小限にされた熱履歴を有する物品に加工される。
【0063】
本発明の特徴は、例証された実施態様の唯一の文脈において記載されたものかもしれないが、そのような特徴は、他の実施態様の1つまたはそれ以上の他の特徴と組み合わせて、種々応用することができる。ここにおける固有の構造物の加工とその操作は、また本発明による方法を構成するものであることも上記の記載から明白なことである。
【0064】
特に記載しない限り、ここで記載された種々の実施態様の寸法および形状は、本発明を制限するものではなく、他の寸法や形状が可能である。複数の構造成分あるいは工程は、単一の統合的な構造あるいは工程にしてもよい。また、逆に、単一の統合的な構造あるいは工程は、別々の複数の構成要素あるいは工程に分けられてもよい。しかしながら、機能を単一の構成要素あるいは工程に統合することも可能である。さらに、「1つの」または「1種の」要素あるいは工程という記載は、追加的要素あるいは工程を排除することを意味するものではない。
【0065】
範囲に関する「約」または「おおよそ」の使用は、範囲の両端に適用される。したがって、「約20〜30」は、少なくとも特定された端の点を含んで「約20〜約30」を意図するものである。
【0066】
上記の記載は、例示説明を意図したものであり、制限的に解釈されるべきではない。記載された実施例に加えて、多くの応用、多くの実施態様が、上記説明を読む当業者にとっては明白であることであろう。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲に準拠して、特許請求の範囲が享受するすべての均等の範囲とともに決定されるべきである。特許出願および公開を含む全ての論文および文献の記載は、全ての目的のために引用によって組み込まれる。次の特許請求の範囲における、ここで開示された主題の如何なる側面についての不記載も、当該主題の権利放棄ではなく、また、発明者が当該主題を開示した発明の主題の一部と考えなかったと看做すべきものでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一のポリオレフィンを含む第一の原料、および少なくとも1種の粒子状鉱物充填剤と少なくとも1種の第二のポリオレフィンとの混合物を含む第二の原料を、別個の原料として、供給する工程、
b)原料をブレンドし、溶融ブレンドを形成するために、原料を高温にした状態で第一および第二の原料に剪断力を加える工程、
c)溶融ブレンドを成形する工程、および
d)溶融ブレンドを固化する工程
を含む成形品を作る方法であって、
第二のポリオレフィンは、ISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きく、
第二の原料は、(i)混合物全体の約45〜85質量%の少なくとも1種の粒子状鉱物充填剤と(ii)混合物全体の約15〜55質量%の少なくとも1種の第二のポリオレフィンとの混合物を含み、
該方法はブレンド工程の前に第一および第二の原料を一緒に配合する工程を実質的に含まない、方法。
【請求項2】
第一の原料の第一のポリオレフィンが熱可塑性ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該方法は、ブレンド工程の前に、第一、第二、および任意の他の原料を一緒に配合する工程を実質的に含まないことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
得られる成形品において所望の色を達成するためにカラーコンセントレートを供給する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも第一および第二の原料とブレンドするための粉砕再生材料を供給する工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶融ブレンドを成形する工程が、成形型のキャビティーの中に溶融ブレンドを射出成形することを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第一の原料の熱可塑性ポリオレフィンは、約70g/10分未満の(ISO 1133の条件M、230℃、2.16kgにおける)メルトフローレート、(第一の原料の)約8質量%超のエチレンを含有すること、約40%超の結晶化度を有すること、またはそれらの任意の組合わせで特徴づけられるポリプロピレン耐衝撃性共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給する工程が第一および第二の原料を乾式ブレンドすることを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも第一および第二の原料がペレットとして供給されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第一の原料のペレットと第二の原料のペレットの両方の少なくとも約50質量%が、実質的に同じ体積であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第一の原料および第二の原料に、熱安定剤、紫外線安定剤、離型剤、核剤、潤滑剤、スリップ剤、着色剤またはそれらの任意の組合わせから選択された少なくとも1種の添加剤を添加することをさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
粒子状鉱物充填剤がタルクであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
粒子状鉱物充填剤が混合物全体の約70質量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第二のポリオレフィンがエチレンオクテン共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第一のポリオレフィンが、(第一の原料の)約8質量%超のエチレンを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
タルクのメジアン粒径が約3μm未満であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第二の原料の粒子の平均体積が第一の原料の粒子サイズの平均体積より大きいことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第二のポリオレフィンは、第一のポリオレフィンのエラストマー成分と相溶性であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
第二の原料の粒子が、鉱物充填剤または微粉化ポリマーで被覆されまたは部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
射出成形品の収縮が約1.4%未満であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
第一のポリオレフィンが、リアクターTPO、レオロジー制御TPOおよびそれらの組合わせからなる群から選択される熱可塑性ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
もともと第二の原料の中にあった充填剤粒子の過半数が、溶融ブレンドを固化する工程の完了の後に第一のポリオレフィンの中に存在することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法に使用されるキットであって、該キットが、別個の包装で、
(i)第一のポリオレフィン、
(ii)少なくとも1種の粒子状鉱物充填剤、および
(iii)ISO 1133(条件D)によって測定した190℃/2.16kgにおけるメルトインデックスが約150g/10分より大きい第二のポリオレフィン
を含むことを特徴とするキット。
【請求項24】
第一のポリオレフィンが(第一の原料の)約8質量%超のエチレンを含み、鉱物充填剤がタルクを含み、そして第二のポリオレフィンがエチレンオクテン共重合体を含むことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項25】
第一および第二のポリオレフィンとは異なるポリオレフィンを、別個の包装で、さらに含む請求項23または24に記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法によって作られた製品。
【請求項27】
請求項26に記載の製品の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【公表番号】特表2009−542475(P2009−542475A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518473(P2009−518473)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/071902
【国際公開番号】WO2008/002841
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】