熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、活性エステル樹脂、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
【課題】の硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供する。
【解決手段】ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とする。
【解決手段】ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性、低誘電正接を発現し、かつ、溶剤溶解性に優れた性能を有する熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びこれに用いる活性エステル樹脂、並びに、該熱硬化性樹脂組成物半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも多層プリント基板絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。しかしながら、信号の高速化、高周波数化に伴って、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を得ることが困難となりつつある。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対しても、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化体を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。これらの低誘電率・低誘電正接を実現可能な材料として、フェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
然し乍ら、電子部品における高周波化や小型化の傾向から多層プリント基板絶縁材料にも極めて高度な耐熱性が求められているところ、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、アリールエステル構造の導入により硬化物の架橋密度が低下してしまい、硬化物の耐熱性が十分でないものであった。このように耐熱性と低誘電率・低誘電正接とは両立が困難なものであった。
【0005】
一方、前記した半導体や多層プリント基板の分野に用いられる絶縁材料は、ダイオキシン問題に代表とする環境問題への対応が不可欠となっており、近年、添加系のハロゲン系難燃剤を用いることなく、樹脂自体に難燃効果を持たせた所謂ハロゲンフリーの難燃システムの要求が高まっている。ところが、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、誘電特性は良好になるものの、その分子構造内に燃焼しやすいペンダント状の芳香族炭化水素基が多く含まれることになる為、硬化物の難燃性に劣り、前記したハロゲンフリーの難燃システムを構築することが出来ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−82348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂用硬化剤として、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格として有し、かつ、その末端に活性エステル構造部位を導入することにより、その硬化物において、低誘電率、低誘電正接を有しつつ、かつ、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
本発明は、更に、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有することを特徴とする新規活性エステル樹脂に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料に関する。
【0009】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグに関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得られるビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のGPCチャート図である。
【図2】図2は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルである。
【図3】図3は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のトリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルである。
【図4】図4は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のGPCチャート図である。
【図5】図5は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のFT−IRチャート図である。
【図6】図6は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のFD−MSのスペクトルである。
【図7】図7は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のトリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)のGPCチャート図である。
【図9】図9は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)のFD−MSのスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)の13C−NMRチャート図である。
【図11】図11は、実施例6で得られた活性エステル樹脂(B−6)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いる活性エステル樹脂(A)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有するものである。本発明では、アリールカルボニルオキシ基の導入により、硬化物に低誘電率、低誘電正接といった優れた誘電特性を与えることができると共に、分子主骨格にポリアリーレンオキシ構造を有することから、優れた耐熱性及び難燃性を兼備させることができる。本来、アリールカルボニルオキシ基を樹脂構造中に有する活性エステル樹脂は、該アリールカルボニルオキシ基に起因して耐熱性や難燃性が低下するところ、本発明ではこのような耐熱性や難燃性の低下が殆ど認められないのは、特筆すべき点である。
【0013】
前記した活性エステル樹脂(A)は、特に、硬化物の耐熱性に優れる点から、その軟化点が60〜170℃の範囲、特に70〜160℃の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
また、前記活性エステル樹脂(A)は、後述するとおり、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とするフェノール性水酸基含有樹脂のフェノール性水酸基に、活性エステル化剤(a1−2)を反応させて製造することができ、前記アリールカルボニルオキシ基はこの反応によって形成されるものである。よって、該前記活性エステル樹脂(A)中に一部未反応のフェノール性水酸基が残存していてもよく、この場合、前記活性エステル樹脂(A)中には、ポリアリーレンオキシ構造の芳香核に置換するアリールカルボニルオキシ基とフェノール性水酸基とが併存することになる。本発明では、硬化物の誘電率や誘電正接を低減できる点から、前記活性エステル樹脂(A)中のポリアリーレンオキシ構造の芳香核に置換するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基中、アリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となる範囲であることが好ましい。また、特に活性エステル樹脂(A)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。なお、アリールカルボニルオキシ基の存在割合は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とするフェノール性水酸基含有樹脂のフェノール性水酸基と活性エステル化剤(a1−2)との反応が定量的に進行することから、フェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)のモル比に等しい値となる。
【0015】
ここで、活性エステル樹脂(A)の主骨格を構成するポリアリーレンオキサイド構造は、具体的には、ポリナフチレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造などのナフチレンオキサイド系構造、並びに、ポリフェニレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリフェニレンオキサイド構造などのフェニレンオキサイド系構造が挙げられる。これらのなかでも特に本発明ではナフチレンオキサイド系構造を有するものが、難燃効果が一層顕著なものとなる他、誘電正接も低くなる点から好ましい。更に、難燃効果の点から中でもポリナフチレンオキサイド構造或いはメチル基含有ポリナフチレンオキシサイド構造が好ましく、特にポリナフチレンオキサイド構造であることが好ましい。
【0016】
また、前記活性エステル樹脂(A)は、具体的には、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【0017】
【化1】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるもの(以下、これを「活性エステル樹脂(a1)」と略記する。)、又は、
【0018】
前記活性エステル樹脂(A)が、下記構造式2
【0019】
【化2】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【0020】
【化3】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【0021】
【化4】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2においてYの少なくとも一つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)で表される樹脂構造を有するもの(以下、これを「活性エステル樹脂(a2)」と略記する。)であることが、硬化物における難燃性、耐熱性、及び誘電特性に優れたものとなる点から好ましい。
【0022】
ここで、前記活性エステル樹脂(a1)について詳述するに、該活性エステル樹脂(a1)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、その分子末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該構造の芳香核に、下記構造式(1)
【0023】
【化5】
[構造式(1)中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]
で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有するフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)を、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物などの活性エステル化剤(a1−2)と反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0024】
ここで、前記した通り、該前記活性エステル樹脂(a1)中には、一部フェノール性水酸基が残存していてもよいが、原料のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基の40%以上がアリールカルボニルオキシ化されていることが硬化物の誘電特性の点から好ましい。また、特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましく、一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。なお、アリールカルボニルオキシ化の割合は、前記した通り、原料のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と活性エステル化剤(a1−2)との反応が定量的に進行することから、フェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)のモル比に等しい値となる。
【0025】
ここで用いるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、具体的には、ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜1.0モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が70〜200℃の範囲であることが好ましい。即ち、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が1.0以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。なお、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)における、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合とは、前記した通り、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
【0026】
また、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、その軟化点が70〜200℃の範囲とすることにより、最終的に得られる活性エステル樹脂(a1)の有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来にない難燃性能を発現させることができる。
【0027】
このようにフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、軟化点が高く、また、その割に前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が低いことを特徴としている。ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長くなり、優れた溶剤溶解性を発現すると共に、回路基板用途における高度な難燃性能にも対応することが可能となる。
【0028】
前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、活性エステル樹脂とした際の硬化後の誘電特性や耐湿性の改善効果に優れ、かつ、流動性に優れる点から、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の水酸基当量が100〜220g/eq.の範囲、特に120〜220g/eq.の範囲にあるものが好ましい。
【0029】
上記したフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、前記した通り、ポリナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキサイド構造として有するものが優れた難燃効果を発現し、また、誘電正接も低くなる点から好ましく、具体的には、下記一般式(1’)
【0030】
【化6】
で表される構造単位(I)を繰り返し単位とし、その両末端にフェノール性水酸基を有する軟化点70〜200℃のフェノール性水酸基含有樹脂であることが有機溶剤への溶解性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れた硬化物を与えることができる点から好ましい。
【0031】
ここで上記一般式(1’)中、Xは水素原子又は下記一般式(2)
【0032】
【化7】
で表される構造部位(II)であり、かつ、前記一般式(1’)及び一般式(2’)中のRは下記一般式(3)
【0033】
【化8】
で表される構造部位(α’)であり、一般式(3)中のnは1又は2であり、また、一般式(2’)及び一般式(3)中のpの値は0〜3の整数である。但し、前記フェノール性水酸基含有樹脂(B’)は、その分子構造中、前記構造部位(α’)をナフタレン環1個あたり0.1〜1.0個となる割合で有するものである。
【0034】
なお、上記一般式(1’)においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。また、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中、前記構造部位(α’)の存在割合がナフタレン骨格1個に対して1.0個以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。ここで、ナフタレン骨格に対する構造部位(α’)の存在割合は、前述した通り、その製造方法におけるジヒドロキシナフタレン1モルに対するアラルキル化剤のモル数に相当する。
【0035】
フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、ジヒドロキシ芳香族化合物と、アラルキル化剤とを、酸触媒の存在下に反応させる方法により製造することができる。
【0036】
具体的には、ジヒドロキシ芳香族化合物と、前記アラルキル化剤とを酸触媒の存在に反応させることにより、ポリアリーレン構造を主骨格としてその両末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該ポリアリーレン構造の芳香核上にアラルキル基がペンダント状に結合した構造のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)を得ることができる。
【0037】
ここで、前記ジヒドロキシ芳香族化合物と、前記アラルキル化剤との反応割合は、モル基準で、反応割合(ジヒドロキシ芳香族化合物/アラルキル化剤)が1/0.1〜1/1.0となる範囲であることが最終的に得られる活性エステル樹脂の難燃性と耐熱性とのバランスが良好なものとなる点から好ましい。
【0038】
ここで使用し得るジヒドロキシ芳香族化合物は、例えば、カテコール、レゾルシノール、及びハイドロキノン等の2価フェノール、並びに、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特に、最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物の難燃性が一層良好なものとなり、また、該硬化物の誘電正接も低くなって誘電特性が良好になる点からジヒドロキシナフタレン、中でも1,6−ジヒドロキシナフタレン又は2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0039】
次に、前記アラルキル化剤は、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、o−メチルベンジルクロライド、m−メチルベンジルクロライド、p−メチルベンジルクロライド、p−エチルベンジルクロライド、p−イソプロピルベンジルクロライド、p−tert−ブチルベンジルクロライド、p−フェニルベンジルクロライド、5−クロロメチルアセナフチレン、2−ナフチルメチルクロライド、1−クロロメチル−2−ナフタレン及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルクロライド、並びにα,α−ジメチルベンジルクロライド等;ベンジルメチルエーテル、o−メチルベンジルメチルエーテル、m−メチルベンジルメチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル、p−エチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルイソブチルエーテル、ベンジルn−ブチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル及びその核置換異性体等;ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、p−tert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルカルビノール及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルアルコール、及びα,α−ジメチルベンジルアルコール等;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、特にベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、及びベンジルアルコールが、最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物において難燃効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
【0041】
ここで、ジヒドロキシ芳香族化合物とアラルキル化剤との反応において使用し得る酸触媒は、例えばリン酸、硫酸、塩酸などの無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第2錫、塩化第2鉄、ジエチル硫酸などのフリーデルクラフツ触媒が挙げられる。
【0042】
また、上記した酸触媒の使用量は、目標とする変性率などにより適宜選択することができるが、例えば無機酸や有機酸の場合はジヒドロキシ芳香族化合物100質量部に対し、0.001〜5.0質量部、好ましくは0.01〜3.0質量部なる範囲であり、フリーデルクラフツ触媒の場合はジヒドロキシ芳香族化合物1モルに対し、0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.0モルとなる範囲であることが好ましい。
【0043】
前記ジヒドロキシ芳香族化合物とアラルキル化剤との反応は、分子量が高くなり軟化点の調整が容易となる点から有機溶媒を使用することが好ましい。
【0044】
また、前記反応は、具体的には、有機溶媒存在下にジヒドロキシ芳香族化合物、アラルキル化剤、及び前記酸触媒を溶解させ、まず、100〜140℃の温度条件で全反応時間の1/2〜2/3となる時間反応させた後、次いで、140〜180℃に昇温させて反応させる方法が得られるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の軟化点が高くなる点から好ましい。
【0045】
他方、前記活性エステル化剤(a1−2)として用いられる芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物は、具体的には、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられるが、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基との反応性が良好なものとなる点から安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが好ましい。
【0046】
ここで、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と前記活性エステル化剤(a1−2)とを反応させる方法としては、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
【0047】
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
【0048】
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と、活性エステル化剤(a1−2)とを混合し、前記アルカリ触媒又はその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0〜30質量%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0049】
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
【0050】
このようにして得られる活性エステル樹脂(a1)は、その軟化点が60〜170℃であることが、有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来になり難燃性能を発現させることができる点から好ましい。
【0051】
更に、前記活性エステル樹脂(a1)は、その前駆体であるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の製造の際、ジヒドロキシ芳香族化合物を原料としてポリアリーレンオキサイド構造を形成させることが望ましく、この場合、フェノール性水酸基は直鎖状分子構造の両末端に出現する為、主に2官能性の活性エステル樹脂として得られる。然し乍ら、該樹脂成分中には、部分的にポリナフチレンオキサイド構造中のナフタレン環に、他のヒドロキシナフタレン環が直接結合によって結合した分子構造を持つ多官能フェノール性水酸基含有樹脂を活性エステル化したものも含まれ得る。よって、この場合、前記活性エステル樹脂(a1)は、多官能性の活性エステル樹脂として得られる。ここで、前記活性エステル樹脂(a1)を回路基板用途へ適用する際には該樹脂中の官能基濃度をより一層低くして硬化後の誘電特性や耐湿性の改善を図ることが好ましく、その一方で、前記活性エステル樹脂(a1)中の分子量が小さい場合には、有機溶剤への溶解性に劣り回路基板用ワニスへの適用が困難なものとなる点から、前記活性エステル樹脂(a1)は、その樹脂構造中に有するエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした当量数が、200〜290g/eq.の範囲であることが好ましい。
【0052】
次に、活性エステル樹脂(a2)は、前記した通り、下記構造式2
【0053】
【化9】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【0054】
【化10】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【0055】
【化11】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2においてYの少なくとも一つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)で表される構造を有するものである。
【0056】
ここで、活性エステル樹脂(a2)中の前記構造式2−3で表される構造の存在割合は、全てのYに対して40%以上となる範囲であることが誘電特性の点から好ましいが、前記活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から、なかでも40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接が一層低くなる点からは80%以上であることが好ましい。なお、活性エステル樹脂(a2)は、後述するとおり、原料となるフェノール性水酸基含有樹脂と活性エステル化剤(a1−2)とを反応させて製造することができるが、前記した構造式2−3で表される構造の存在割合とは、該フェノール性水酸基含有樹脂中のフェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)の反応割合(モル比)である。
【0057】
上記構造式2で表される活性エステル樹脂(a2)のなかでも、前記した通り、ナフタレン構造中のオキシ基との結合位置が1,6位、2,7位のもの、また、前記他のアリーレン構造がフェニレン基である場合には、該フェニレン基中のオキシ基との結合位置が1,3位のものが好ましい。また、Ar3は、フェニル基であることが好ましい・
従って、前記活性エステル樹脂(a2)のうち好ましいものとして、例えば、ナフタレン構造中のオキシ基との結合位置が1,6位であるものは下記の構造式E−1〜E−17で表される活性エステル樹脂が挙げられる。
【0058】
【0059】
【化12】
【0060】
次に、たとえば、オキシ基との結合位置が2,7位の活性エステル樹脂(a2)としては、下記構造式E−18〜E−21のものが挙げられる。
【0061】
【化13】
【0062】
更に、ナフタレン構造のオキシ基との結合位置が1,6位であって、かつ、該オキシ基を介して結合する他のアリーレン構造が1,3位に結合位置を有するフェニレン基である場合の活性エステル樹脂(a2)は、下記構造式E−22〜E−25のものが挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
なお、上記構造式E−1〜E−25において「Bz」は水素原子又はベンゾイル基を表し、1分子あたりBzの少なくとも1はベンゾイル基である。本発明では、特に「Bz」の40%以上がベンゾイル基であることが、硬化物の誘電率、誘電正接がより低くなる点から好ましく、特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。
【0065】
前記活性エステル樹脂(a2)は上記した各化合物を単独で用いてもよいが、複数の混合物として用いても良い。
【0066】
以上詳述した活性エステル樹脂(a2)は、前記した通り、ナフタレン構造が酸素原子を介して他のナフタレン構造と結合した構造を有するものであることが硬化物の難燃性が一層良好になる他、耐熱性も良好なものとなる点から好ましい。かかる活性エステル樹脂は、具体的には、例えば下記構造式3で表すことができる。
【0067】
【化15】
ここで構造式3中、R2はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を、Bzは水素原子又はベンゾイル基を表し、n又はmはそれぞれ0〜2の整数であって、n又はmの何れか一方は1以上の整数であり、R3は水素原子又は下記構造式3−2
【0068】
【化16】
(R2はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を、Bzは水素原子又はベンゾイル基を表し、pは1又は2の整数を表す。)を表す。但し、上記構造式3において全芳香核の総数は2〜8である。なお、上記一般式3においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。また、上記構造式3及び構造式3−2におけるBzの少なくとも1つはベンゾイル基であり、特に、活性エステル樹脂(a2)1分子あたりBzの40%以上がベンゾイル基であることが、硬化物の誘電率、誘電正接がより低くなる点から好ましい。特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。
【0069】
前記構造式3の中でもR2は水素原子であることが好ましく、その具体例は前記構造式E−1〜E−21のものが挙げられる。更に、それらのなかでも前記構造式E−18〜E−21で表されるオキシ基との結合位置が2,7位のものが難燃効果や耐熱性に優れる点から好ましく、特に、構造式E−18、構造式E−19、及び構造式E−20の混合物として用いることが流動性と難燃性とのバランスに優れる点から好ましい。また、上記構造式3における全芳香核の総数は3〜6であることが難燃効果、耐熱性及び流動性のバランスに優れる点から特に好ましい。
【0070】
以上詳述した活性エステル樹脂(a2)は、例えば、2価乃至4価の多価ヒドロキシナフタレン、或いは、2価乃至4価の多価ヒドロキシナフタレンと2価又は3価の多価ヒドロキシベンゼンとの混合物を酸触媒の存在下に反応させたのち、低分子量体を有機溶媒で繰り返し抽出し、得られたフェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させることにより得ることができるが、本発明では、塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得、更にこれを活性エステル化することによって製造することが活性エステル樹脂(a2)の生産性に優れる点から好ましい。特に、本発明ではジヒドロキシナフタレン、或いは、ジヒドロキシナフタレンとジヒドロキシベンゼンとの混合物(以下、これらを「2官能性フェノール」と略記する。)を塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得、更にこれを活性エステル化することによって製造することが活性エステル樹脂(a2)の生産性に優れる点から好ましい。
【0071】
即ち、後者の製造方法は、ジヒドロキシナフタレン、或いは、ジヒドロキシナフタレンとジヒドロキシベンゼンとの混合物を塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得る工程(以下、この工程を「工程1」と略記する。)、ついで、該フェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させて活性エステル化する工程(以下、この工程を「工程2」と略記する。)から構成される。
【0072】
ここで、工程1において使用し得る前記ジヒドロキシナフタレンは、例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、及び2,7−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特にフェノール性水酸基が結合している芳香核において該フェノール性水酸基に隣接する位置に配向性を有するものが好ましく、具体的には1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。更に、特に製造が容易である点から1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタレンが得られるエポキシ樹脂(B)の流動性と難燃性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0073】
前記ジヒドロキシベンゼンとしては、ナフタレン環に2個の水酸基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,5−ジヒドロキシベンゼン、2,3,5−トリメチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン、5−フェニル−1,3−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。これらの中でも特にフェノール性水酸基が結合している芳香核において該フェノール性水酸基に隣接する位置に配向性を有するものが好ましく、具体的には、1,3−ジヒドロキシベンゼン、5−フェニル−1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。なかでも特に塩基性触媒下での反応性に優れる点から1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0074】
これらの中でも特にジヒドロキシナフタレンを単独で用いることが得られる活性エステル樹脂の硬化物の難燃性及び耐熱性の効果が顕著なものとなる点から好ましい。一方、ジヒドロキシナフタレンおよびジヒドロキベンゼンとの混合物を用いた場合、活性エステル樹脂(a2)の流動性に優れる点から好ましい。
【0075】
工程1において反応触媒として用いられる塩基性触媒は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物が挙げられる。これらの塩基性触媒は単独または2種以上を併用して用いることもできる。
【0076】
また、前記塩基性触媒の使用量は、該塩基性触媒の種類や目標とする反応率などにより、適宜選択すればよいが、例えば前記塩基性触媒としてアルカリ金属水酸化物を用いる場合の場合は2官能性フェノールのフェノール性水酸基1モルに対し、0.0.1〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.1使用するのが好ましい。
【0077】
ここで特筆すべきは、通常、2官能性フェノールをポリエール化する場合、パラトルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの酸触媒が用いられているが、この場合、重合度が制御できず、融点が非常に高いか、あるいは分解点まで溶融しないような高分子量体となってしまい、高流動性が要求される電子部品材料への適用が困難なものであった。これに対し、本発明では塩基性触媒を反応触媒として用いることによって、驚くべきことに反応生成物が何等高分子量化することなく、総核体数が2〜8、好ましくは3〜6のフェノール性水酸基含有樹脂が得られる点にある。従って、本発明の活性エステル樹脂は優れた難燃性と高流動性とを兼備した材料となる。
【0078】
工程1における反応は、用いるジヒドロキシナフタレンやジヒドロキベンゼンの特性に応じて、無溶媒下または均一溶液を形成する可溶性溶媒下に行うことができる。無溶媒下で行えば、溶剤回収工程などが不必要となるため好ましいが、反応を安定的に進行させるためには溶媒存在下で行うのが好ましい。
【0079】
また、工程1における反応は、たとえば無溶媒下または前記可溶性溶媒の存在下に、前記2官能性フェノールに前記塩基性触媒を溶解させ、100〜300℃、好ましくは150〜250℃程度の温度条件で行うことができる。反応時間は特に限定されないが、前記温度条件を1〜10時間維持できる範囲であることが好ましい。更に、工程1の反応において、反応中に生成する水を系外に分留管などを用いて留去することが反応を速やかに進行し生産性が向上する点から好ましい。
【0080】
次いで、工程2は、このようにして得られたフェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させることにより得る方法である。
【0081】
前記活性エステル化剤(a1−2)として用いられる芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物は、具体的には、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられるが、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基との反応性が良好なものとなる点から安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが好ましい。
【0082】
ここで、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と前記活性エステル化剤(a1−2)とを反応させる方法としては、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
【0083】
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
【0084】
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と、活性エステル化剤(a1−2)とを混合し、前記アルカリ触媒又はその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0〜30質量%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0085】
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
【0086】
以上詳述した前記活性エステル樹脂(a2)は、その樹脂構造中に有するエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした当量数が、200〜290g/eq.の範囲であることが、有機溶剤への溶解性及び硬化物の耐熱性に優れたものとなる点から好ましい。
【0087】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いるエポキシ樹脂(B)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点から、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0088】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性及び硬化物の諸物性が良好なものとなる点から前記活性エステル樹脂(A)中のエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8〜1.2当量となる割合であることが好ましい。
【0089】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)に加え、エポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。ここで用いることのできるエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが難燃効果の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましい。
【0091】
上記したエポキシ樹脂用硬化剤を併用する場合、その使用量は誘電特性の点から10〜50%の範囲であることが好ましい。
【0092】
また必要に応じて本発明の熱硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特にビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、ジメチルアミノピリジンやイミダゾールが好ましい。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0093】
以上詳述した本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0094】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0095】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0096】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0097】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0098】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0099】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0100】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0101】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0102】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0103】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0104】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0105】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0106】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0107】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0108】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0109】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0110】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0111】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0112】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0113】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0114】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0115】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0116】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0117】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0118】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、熱硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0119】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0120】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の熱硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0121】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性から硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
【0122】
ここで、本発明の回路基板は、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して製造されるものである。具体的には、例えば硬質プリント配線基板を製造するには、前記有機溶剤を含むワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤を配合してワニス化し、これを補強基材に含浸し、半硬化させることによって製造される本発明のプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる熱硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
【0123】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び有機溶剤を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0124】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該熱硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0125】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び無機充填剤等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、熱硬化性樹脂組成物中、無機質充填材を70〜95質量%となる割合で配合することにより、本発明の半導体封止材料となる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法が挙げられる。
【0126】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0127】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0128】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0129】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
【0130】
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0131】
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0132】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0133】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0134】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0135】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0136】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0137】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該熱硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0138】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0139】
本発明の硬化物を得る方法としては、例えば、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【0140】
従って、本発明によれば、ハロゲン系難燃剤を使用しなくても高度な難燃性を発現する環境性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、これらの硬化物における優れた誘電特性は、高周波デバイスの高速演算速度化を実現できる。また、該フェノール性水酸基含有樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
【実施例】
【0141】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、GPC測定、13C−NMR、FD−MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0142】
1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠した。
2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠した。
3)GPC:
・装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」により下記の条件下に測定した。
カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL+G2000HXL
+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
4)13C−NMR:日本電子株式会社製「NMR GSX270」により測定した。
5)FD−MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
【0143】
合成例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレンを160g(1.0モル)、ベンジルアルコール25g(0.25モル)、キシレン160g、パラトルエンスルホン酸・1水和物2gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した(同時に留去するキシレンは系内に戻す)。その後、150℃に昇温し、生成する水とキシレンを系外に留去しながら3時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して中和した後、水分およびキシレンを減圧下除去してフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)を178g得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)は褐色固体であり、水酸基当量は178グラム/当量、軟化点は130℃であった。得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャートを図1に示す。
【0144】
フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のMS(図2)及び13C−NMRによる構造解析を行うと共に、更に、トリメチルシリル化法によるMS(図3)の測定に用いるため、フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)をトリメチルシリル化し、次いで、MSより以下のa.〜f.のピークを確認した。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルを図2に、トリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルを図3に示した。
【0145】
a.2,7−ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク(M+=250)、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク(M+=340)。
従って2,7−ジヒドロキシナフタレン1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0146】
b.2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体のピーク(M+=302)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=446)。
従って、b.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテル化合物であることを確認した。
【0147】
c.2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体のピーク(M+=444)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=588)及び3個付加したピーク(M+=660)。
従って、c.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の3量体化合物であることを確認した。
【0148】
d.2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体のピーク(M+=586)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=730)及び3個付加したピーク(M+=802)。
従って、d.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の4量体化合物であることを確認した。
【0149】
e .2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体のピーク(M+=729)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=873)及び3個付加したピーク(M+=944)及び4個付加したピーク(M+=1016)。
従って、e.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の5量体化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2モル核脱水して生成した構造の5量体化合物であることを確認した。
【0150】
f .b〜eのそれぞれにベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク。
従ってb〜eのそれぞれに1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0151】
合成例2
ベンジルアルコール54g(0.5モル)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、フェノール性水酸基含有樹脂(A−2)を207g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A−2)は褐色固体であり、水酸基当量は166グラム/当量、軟化点は110℃であった。
【0152】
合成例3
反応温度を150℃3時間とし、ベンジルアルコール108g(1.0モル)に変え、キシレン160gを添加しなかった以外は合成例1と同様に反応を行い、フェノール性水酸基含有樹脂(A−3)を240g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A−3)は褐色固体であり、水酸基当量は160グラム/当量、軟化点は77℃であった。
【0153】
合成例4
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160g(1.0モル)を仕込み、窒素を吹き込みつつ攪拌しながら200℃に加熱し、溶融させた。溶融後、48%水酸化カリウム水溶液23g(0.2モル)を添加した。その後、分留管を用いて48%水酸化カリウム水溶液由来の水および生成する水を抜き出した後、更に5時間反応させた。反応終了後、更にメチルイソブチルケトン1000gを加え、溶解後、分液ロートに移した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)150gを得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)は褐色固体であり、水酸基当量は120g/eq、融点は179℃であった。図4のGPCチャートより未反応の原料(2,7−ジヒドロキシナフタレン)の残存率はGPCによる面積比で64%であることを確認した。
図5に示すFT−IRチャートの結果より、原料(2,7−ジヒドロキシナフタレン)と比較して芳香族エーテル由来の吸収(1250cm−1)が新たに生成したことが確認され、水酸基同士が脱水エーテル化反応したことが推定された。
図6に示すMSチャートの結果より、2,7−ジヒドキシナフタレンが3分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体構造(Mw:444)および5分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体構造(Mw:728)を確認した。
【0154】
更に図7に示すトリメチルシリル化法によるMSより2,7−ジヒドロキシナフタレン3量構造(Mw:444)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が2個(M+=588)、3個(M+=660)付いたピークを確認した。
更に2,7−ジヒドキシナフタレンが5分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン5量構造(Mw:728)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が3個(M+=945)、4個(M+=1018)付いたピークを確認した。
以上より、フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)は、原料の2,7−ジヒドロキシナフタレンの含有率がGPCによる面積比で全体の64%であり、その他は、下記構造式
【0155】
【化17】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物、
下記構造式
【0156】
【化18】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1分子核脱水して生成した3量体化合物、及び下記構造式
【0157】
【化19】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2分子核脱水して生成した5量体化合物となっていることが解析された。
【0158】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)178g(フェノール性水酸基の量:1モル)とメチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。]816gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液189.0gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(B−1)を得た。この活性エステル樹脂(B−1)の官能基当量は仕込み比より272グラム/当量、軟化点は125℃であった。またフェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。得られた活性エステル樹脂(B−1)のGPCチャートを図8に示す。MSスペクトル(図9)からフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)に含まれるそれぞれの化合物に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応する化合物のピークを活性エステル樹脂(B−1)に確認した。13C−NMR(図10)の165ppmピークよりエステル基由来のカルボニルの炭素の生成を確認した。
【0159】
実施例2
フェノール性水酸基含有樹脂(A−2)166g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−2)を得た。この活性エステル樹脂(B−2)の官能基当量は仕込み比より260グラム/当量、軟化点は105℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0160】
実施例3
フェノール性水酸基含有樹脂(A−3)160g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−3)を得た。この活性エステル樹脂(B−3)の官能基当量は仕込み比より254グラム/当量、軟化点は70℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0161】
実施例4
フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)120g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−4)を得た。この活性エステル樹脂(B−4)の官能基当量は仕込み比より214グラム/当量、軟化点は150℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0162】
実施例5
塩化ベンゾイル70.3g(0.50モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−5)を得た。この活性エステル樹脂(B−5)の官能基当量は仕込み比より230グラム/当量、軟化点は128℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は50%であった。
【0163】
実施例6
塩化ベンゾイル140.5g(1.00モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−6)を得た。この活性エステル樹脂(B−6)の官能基当量は仕込み比より282グラム/当量、軟化点は125℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は100%であった。得られた活性エステル樹脂(B−6)のGPCチャートを図11に示す。
【0164】
比較例1
フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)をフェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD−2131」)105gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(A−3)を188g得た。この活性エステル樹脂(B−7)の官能基当量は仕込み比より199グラム/当量であった。
【0165】
実施例7〜12及び比較例2〜5(熱硬化性樹脂組成物の調整及び物性評価)
下記の表1記載の配合に従い組成物を調整した。ここで、エポキシ樹脂は、DIC(株)製「N−770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:183g/eq)を用い、硬化剤として活性エスエル樹脂(B−1)〜(B−7)、並びにフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)及び(A−4)、DIC(株)製「TD−2131」(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:105g/eq.)を用いた。また、各組成物を調整するにあたり、硬化触媒としてジメチルアミノピリジン0.5phrを加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性、誘電特性及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0166】
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、厚さ0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。
<溶剤溶解性試験>
配合した不揮発分(N.V.)が58質量%のメチルエチルケトン溶液を0℃で60日間保管後の外観で判定。
【0167】
【表1】
【0168】
表1の脚注:
B−1:実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)
B−2:実施例2で得られた活性エステル樹脂(B−2)
B−3:実施例3で得られた活性エステル樹脂(B−3)
B−4:実施例4で得られた活性エステル樹脂(B−4)
B−5:実施例5で得られた活性エステル樹脂(B−5)
B−6:実施例6で得られた活性エステル樹脂(B−6)
B−7:比較例1で得られた活性エステル樹脂(B−7)
N−770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「N−770」、エポキシ当量:183g/eq.)
TD−2131:フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD−2131」水酸基当量:105g/eq.)
A−1:合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)
A−4:合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
なお、「自消」で示した評価結果は、V−1に要求される難燃性(ΣF≦250秒且つFmax≦30秒)は満たさないが、燃焼(炎のクランプ到達)には至らず消火したレベルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性、低誘電正接を発現し、かつ、溶剤溶解性に優れた性能を有する熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びこれに用いる活性エステル樹脂、並びに、該熱硬化性樹脂組成物半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも多層プリント基板絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。しかしながら、信号の高速化、高周波数化に伴って、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を得ることが困難となりつつある。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対しても、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化体を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。これらの低誘電率・低誘電正接を実現可能な材料として、フェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
然し乍ら、電子部品における高周波化や小型化の傾向から多層プリント基板絶縁材料にも極めて高度な耐熱性が求められているところ、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、アリールエステル構造の導入により硬化物の架橋密度が低下してしまい、硬化物の耐熱性が十分でないものであった。このように耐熱性と低誘電率・低誘電正接とは両立が困難なものであった。
【0005】
一方、前記した半導体や多層プリント基板の分野に用いられる絶縁材料は、ダイオキシン問題に代表とする環境問題への対応が不可欠となっており、近年、添加系のハロゲン系難燃剤を用いることなく、樹脂自体に難燃効果を持たせた所謂ハロゲンフリーの難燃システムの要求が高まっている。ところが、前記したフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をアリールエステル化して得られる活性エステル化合物は、誘電特性は良好になるものの、その分子構造内に燃焼しやすいペンダント状の芳香族炭化水素基が多く含まれることになる為、硬化物の難燃性に劣り、前記したハロゲンフリーの難燃システムを構築することが出来ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−82348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂用硬化剤として、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格として有し、かつ、その末端に活性エステル構造部位を導入することにより、その硬化物において、低誘電率、低誘電正接を有しつつ、かつ、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
本発明は、更に、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有することを特徴とする新規活性エステル樹脂に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料に関する。
【0009】
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグに関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板に関する。
本発明は、更に、上記熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得られるビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、これらの性能を発現させる活性エステル樹脂、前記組成物から得られる半導体封止材料、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のGPCチャート図である。
【図2】図2は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルである。
【図3】図3は、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のトリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルである。
【図4】図4は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のGPCチャート図である。
【図5】図5は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のFT−IRチャート図である。
【図6】図6は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のFD−MSのスペクトルである。
【図7】図7は、合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)のトリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)のGPCチャート図である。
【図9】図9は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)のFD−MSのスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)の13C−NMRチャート図である。
【図11】図11は、実施例6で得られた活性エステル樹脂(B−6)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いる活性エステル樹脂(A)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有するものである。本発明では、アリールカルボニルオキシ基の導入により、硬化物に低誘電率、低誘電正接といった優れた誘電特性を与えることができると共に、分子主骨格にポリアリーレンオキシ構造を有することから、優れた耐熱性及び難燃性を兼備させることができる。本来、アリールカルボニルオキシ基を樹脂構造中に有する活性エステル樹脂は、該アリールカルボニルオキシ基に起因して耐熱性や難燃性が低下するところ、本発明ではこのような耐熱性や難燃性の低下が殆ど認められないのは、特筆すべき点である。
【0013】
前記した活性エステル樹脂(A)は、特に、硬化物の耐熱性に優れる点から、その軟化点が60〜170℃の範囲、特に70〜160℃の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
また、前記活性エステル樹脂(A)は、後述するとおり、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とするフェノール性水酸基含有樹脂のフェノール性水酸基に、活性エステル化剤(a1−2)を反応させて製造することができ、前記アリールカルボニルオキシ基はこの反応によって形成されるものである。よって、該前記活性エステル樹脂(A)中に一部未反応のフェノール性水酸基が残存していてもよく、この場合、前記活性エステル樹脂(A)中には、ポリアリーレンオキシ構造の芳香核に置換するアリールカルボニルオキシ基とフェノール性水酸基とが併存することになる。本発明では、硬化物の誘電率や誘電正接を低減できる点から、前記活性エステル樹脂(A)中のポリアリーレンオキシ構造の芳香核に置換するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基中、アリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となる範囲であることが好ましい。また、特に活性エステル樹脂(A)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。なお、アリールカルボニルオキシ基の存在割合は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とするフェノール性水酸基含有樹脂のフェノール性水酸基と活性エステル化剤(a1−2)との反応が定量的に進行することから、フェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)のモル比に等しい値となる。
【0015】
ここで、活性エステル樹脂(A)の主骨格を構成するポリアリーレンオキサイド構造は、具体的には、ポリナフチレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造などのナフチレンオキサイド系構造、並びに、ポリフェニレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリフェニレンオキサイド構造などのフェニレンオキサイド系構造が挙げられる。これらのなかでも特に本発明ではナフチレンオキサイド系構造を有するものが、難燃効果が一層顕著なものとなる他、誘電正接も低くなる点から好ましい。更に、難燃効果の点から中でもポリナフチレンオキサイド構造或いはメチル基含有ポリナフチレンオキシサイド構造が好ましく、特にポリナフチレンオキサイド構造であることが好ましい。
【0016】
また、前記活性エステル樹脂(A)は、具体的には、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【0017】
【化1】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるもの(以下、これを「活性エステル樹脂(a1)」と略記する。)、又は、
【0018】
前記活性エステル樹脂(A)が、下記構造式2
【0019】
【化2】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【0020】
【化3】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【0021】
【化4】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2においてYの少なくとも一つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)で表される樹脂構造を有するもの(以下、これを「活性エステル樹脂(a2)」と略記する。)であることが、硬化物における難燃性、耐熱性、及び誘電特性に優れたものとなる点から好ましい。
【0022】
ここで、前記活性エステル樹脂(a1)について詳述するに、該活性エステル樹脂(a1)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、その分子末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該構造の芳香核に、下記構造式(1)
【0023】
【化5】
[構造式(1)中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]
で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有するフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)を、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物などの活性エステル化剤(a1−2)と反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0024】
ここで、前記した通り、該前記活性エステル樹脂(a1)中には、一部フェノール性水酸基が残存していてもよいが、原料のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基の40%以上がアリールカルボニルオキシ化されていることが硬化物の誘電特性の点から好ましい。また、特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましく、一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。なお、アリールカルボニルオキシ化の割合は、前記した通り、原料のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と活性エステル化剤(a1−2)との反応が定量的に進行することから、フェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)のモル比に等しい値となる。
【0025】
ここで用いるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、具体的には、ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜1.0モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が70〜200℃の範囲であることが好ましい。即ち、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が1.0以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。なお、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)における、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合とは、前記した通り、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
【0026】
また、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、その軟化点が70〜200℃の範囲とすることにより、最終的に得られる活性エステル樹脂(a1)の有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来にない難燃性能を発現させることができる。
【0027】
このようにフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、軟化点が高く、また、その割に前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が低いことを特徴としている。ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長くなり、優れた溶剤溶解性を発現すると共に、回路基板用途における高度な難燃性能にも対応することが可能となる。
【0028】
前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、活性エステル樹脂とした際の硬化後の誘電特性や耐湿性の改善効果に優れ、かつ、流動性に優れる点から、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の水酸基当量が100〜220g/eq.の範囲、特に120〜220g/eq.の範囲にあるものが好ましい。
【0029】
上記したフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、前記した通り、ポリナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキサイド構造として有するものが優れた難燃効果を発現し、また、誘電正接も低くなる点から好ましく、具体的には、下記一般式(1’)
【0030】
【化6】
で表される構造単位(I)を繰り返し単位とし、その両末端にフェノール性水酸基を有する軟化点70〜200℃のフェノール性水酸基含有樹脂であることが有機溶剤への溶解性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れた硬化物を与えることができる点から好ましい。
【0031】
ここで上記一般式(1’)中、Xは水素原子又は下記一般式(2)
【0032】
【化7】
で表される構造部位(II)であり、かつ、前記一般式(1’)及び一般式(2’)中のRは下記一般式(3)
【0033】
【化8】
で表される構造部位(α’)であり、一般式(3)中のnは1又は2であり、また、一般式(2’)及び一般式(3)中のpの値は0〜3の整数である。但し、前記フェノール性水酸基含有樹脂(B’)は、その分子構造中、前記構造部位(α’)をナフタレン環1個あたり0.1〜1.0個となる割合で有するものである。
【0034】
なお、上記一般式(1’)においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。また、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中、前記構造部位(α’)の存在割合がナフタレン骨格1個に対して1.0個以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。ここで、ナフタレン骨格に対する構造部位(α’)の存在割合は、前述した通り、その製造方法におけるジヒドロキシナフタレン1モルに対するアラルキル化剤のモル数に相当する。
【0035】
フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)は、ジヒドロキシ芳香族化合物と、アラルキル化剤とを、酸触媒の存在下に反応させる方法により製造することができる。
【0036】
具体的には、ジヒドロキシ芳香族化合物と、前記アラルキル化剤とを酸触媒の存在に反応させることにより、ポリアリーレン構造を主骨格としてその両末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該ポリアリーレン構造の芳香核上にアラルキル基がペンダント状に結合した構造のフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)を得ることができる。
【0037】
ここで、前記ジヒドロキシ芳香族化合物と、前記アラルキル化剤との反応割合は、モル基準で、反応割合(ジヒドロキシ芳香族化合物/アラルキル化剤)が1/0.1〜1/1.0となる範囲であることが最終的に得られる活性エステル樹脂の難燃性と耐熱性とのバランスが良好なものとなる点から好ましい。
【0038】
ここで使用し得るジヒドロキシ芳香族化合物は、例えば、カテコール、レゾルシノール、及びハイドロキノン等の2価フェノール、並びに、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特に、最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物の難燃性が一層良好なものとなり、また、該硬化物の誘電正接も低くなって誘電特性が良好になる点からジヒドロキシナフタレン、中でも1,6−ジヒドロキシナフタレン又は2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0039】
次に、前記アラルキル化剤は、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、o−メチルベンジルクロライド、m−メチルベンジルクロライド、p−メチルベンジルクロライド、p−エチルベンジルクロライド、p−イソプロピルベンジルクロライド、p−tert−ブチルベンジルクロライド、p−フェニルベンジルクロライド、5−クロロメチルアセナフチレン、2−ナフチルメチルクロライド、1−クロロメチル−2−ナフタレン及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルクロライド、並びにα,α−ジメチルベンジルクロライド等;ベンジルメチルエーテル、o−メチルベンジルメチルエーテル、m−メチルベンジルメチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル、p−エチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルイソブチルエーテル、ベンジルn−ブチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル及びその核置換異性体等;ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、p−tert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルカルビノール及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルアルコール、及びα,α−ジメチルベンジルアルコール等;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、特にベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、及びベンジルアルコールが、最終的に得られる活性エステル樹脂の硬化物において難燃効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
【0041】
ここで、ジヒドロキシ芳香族化合物とアラルキル化剤との反応において使用し得る酸触媒は、例えばリン酸、硫酸、塩酸などの無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第2錫、塩化第2鉄、ジエチル硫酸などのフリーデルクラフツ触媒が挙げられる。
【0042】
また、上記した酸触媒の使用量は、目標とする変性率などにより適宜選択することができるが、例えば無機酸や有機酸の場合はジヒドロキシ芳香族化合物100質量部に対し、0.001〜5.0質量部、好ましくは0.01〜3.0質量部なる範囲であり、フリーデルクラフツ触媒の場合はジヒドロキシ芳香族化合物1モルに対し、0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.0モルとなる範囲であることが好ましい。
【0043】
前記ジヒドロキシ芳香族化合物とアラルキル化剤との反応は、分子量が高くなり軟化点の調整が容易となる点から有機溶媒を使用することが好ましい。
【0044】
また、前記反応は、具体的には、有機溶媒存在下にジヒドロキシ芳香族化合物、アラルキル化剤、及び前記酸触媒を溶解させ、まず、100〜140℃の温度条件で全反応時間の1/2〜2/3となる時間反応させた後、次いで、140〜180℃に昇温させて反応させる方法が得られるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の軟化点が高くなる点から好ましい。
【0045】
他方、前記活性エステル化剤(a1−2)として用いられる芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物は、具体的には、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられるが、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基との反応性が良好なものとなる点から安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが好ましい。
【0046】
ここで、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と前記活性エステル化剤(a1−2)とを反応させる方法としては、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
【0047】
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
【0048】
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と、活性エステル化剤(a1−2)とを混合し、前記アルカリ触媒又はその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0〜30質量%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0049】
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
【0050】
このようにして得られる活性エステル樹脂(a1)は、その軟化点が60〜170℃であることが、有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来になり難燃性能を発現させることができる点から好ましい。
【0051】
更に、前記活性エステル樹脂(a1)は、その前駆体であるフェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)の製造の際、ジヒドロキシ芳香族化合物を原料としてポリアリーレンオキサイド構造を形成させることが望ましく、この場合、フェノール性水酸基は直鎖状分子構造の両末端に出現する為、主に2官能性の活性エステル樹脂として得られる。然し乍ら、該樹脂成分中には、部分的にポリナフチレンオキサイド構造中のナフタレン環に、他のヒドロキシナフタレン環が直接結合によって結合した分子構造を持つ多官能フェノール性水酸基含有樹脂を活性エステル化したものも含まれ得る。よって、この場合、前記活性エステル樹脂(a1)は、多官能性の活性エステル樹脂として得られる。ここで、前記活性エステル樹脂(a1)を回路基板用途へ適用する際には該樹脂中の官能基濃度をより一層低くして硬化後の誘電特性や耐湿性の改善を図ることが好ましく、その一方で、前記活性エステル樹脂(a1)中の分子量が小さい場合には、有機溶剤への溶解性に劣り回路基板用ワニスへの適用が困難なものとなる点から、前記活性エステル樹脂(a1)は、その樹脂構造中に有するエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした当量数が、200〜290g/eq.の範囲であることが好ましい。
【0052】
次に、活性エステル樹脂(a2)は、前記した通り、下記構造式2
【0053】
【化9】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【0054】
【化10】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【0055】
【化11】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2においてYの少なくとも一つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)で表される構造を有するものである。
【0056】
ここで、活性エステル樹脂(a2)中の前記構造式2−3で表される構造の存在割合は、全てのYに対して40%以上となる範囲であることが誘電特性の点から好ましいが、前記活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から、なかでも40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接が一層低くなる点からは80%以上であることが好ましい。なお、活性エステル樹脂(a2)は、後述するとおり、原料となるフェノール性水酸基含有樹脂と活性エステル化剤(a1−2)とを反応させて製造することができるが、前記した構造式2−3で表される構造の存在割合とは、該フェノール性水酸基含有樹脂中のフェノール性水酸基に対する活性エステル化剤(a1−2)の反応割合(モル比)である。
【0057】
上記構造式2で表される活性エステル樹脂(a2)のなかでも、前記した通り、ナフタレン構造中のオキシ基との結合位置が1,6位、2,7位のもの、また、前記他のアリーレン構造がフェニレン基である場合には、該フェニレン基中のオキシ基との結合位置が1,3位のものが好ましい。また、Ar3は、フェニル基であることが好ましい・
従って、前記活性エステル樹脂(a2)のうち好ましいものとして、例えば、ナフタレン構造中のオキシ基との結合位置が1,6位であるものは下記の構造式E−1〜E−17で表される活性エステル樹脂が挙げられる。
【0058】
【0059】
【化12】
【0060】
次に、たとえば、オキシ基との結合位置が2,7位の活性エステル樹脂(a2)としては、下記構造式E−18〜E−21のものが挙げられる。
【0061】
【化13】
【0062】
更に、ナフタレン構造のオキシ基との結合位置が1,6位であって、かつ、該オキシ基を介して結合する他のアリーレン構造が1,3位に結合位置を有するフェニレン基である場合の活性エステル樹脂(a2)は、下記構造式E−22〜E−25のものが挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
なお、上記構造式E−1〜E−25において「Bz」は水素原子又はベンゾイル基を表し、1分子あたりBzの少なくとも1はベンゾイル基である。本発明では、特に「Bz」の40%以上がベンゾイル基であることが、硬化物の誘電率、誘電正接がより低くなる点から好ましく、特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。
【0065】
前記活性エステル樹脂(a2)は上記した各化合物を単独で用いてもよいが、複数の混合物として用いても良い。
【0066】
以上詳述した活性エステル樹脂(a2)は、前記した通り、ナフタレン構造が酸素原子を介して他のナフタレン構造と結合した構造を有するものであることが硬化物の難燃性が一層良好になる他、耐熱性も良好なものとなる点から好ましい。かかる活性エステル樹脂は、具体的には、例えば下記構造式3で表すことができる。
【0067】
【化15】
ここで構造式3中、R2はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を、Bzは水素原子又はベンゾイル基を表し、n又はmはそれぞれ0〜2の整数であって、n又はmの何れか一方は1以上の整数であり、R3は水素原子又は下記構造式3−2
【0068】
【化16】
(R2はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を、Bzは水素原子又はベンゾイル基を表し、pは1又は2の整数を表す。)を表す。但し、上記構造式3において全芳香核の総数は2〜8である。なお、上記一般式3においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。また、上記構造式3及び構造式3−2におけるBzの少なくとも1つはベンゾイル基であり、特に、活性エステル樹脂(a2)1分子あたりBzの40%以上がベンゾイル基であることが、硬化物の誘電率、誘電正接がより低くなる点から好ましい。特に活性エステル樹脂(a2)の耐熱性が良好となる点から40〜80%の範囲であることが好ましい。一方、誘電率、誘電正接がより一層低くなる点から80%以上であることが好ましい。
【0069】
前記構造式3の中でもR2は水素原子であることが好ましく、その具体例は前記構造式E−1〜E−21のものが挙げられる。更に、それらのなかでも前記構造式E−18〜E−21で表されるオキシ基との結合位置が2,7位のものが難燃効果や耐熱性に優れる点から好ましく、特に、構造式E−18、構造式E−19、及び構造式E−20の混合物として用いることが流動性と難燃性とのバランスに優れる点から好ましい。また、上記構造式3における全芳香核の総数は3〜6であることが難燃効果、耐熱性及び流動性のバランスに優れる点から特に好ましい。
【0070】
以上詳述した活性エステル樹脂(a2)は、例えば、2価乃至4価の多価ヒドロキシナフタレン、或いは、2価乃至4価の多価ヒドロキシナフタレンと2価又は3価の多価ヒドロキシベンゼンとの混合物を酸触媒の存在下に反応させたのち、低分子量体を有機溶媒で繰り返し抽出し、得られたフェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させることにより得ることができるが、本発明では、塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得、更にこれを活性エステル化することによって製造することが活性エステル樹脂(a2)の生産性に優れる点から好ましい。特に、本発明ではジヒドロキシナフタレン、或いは、ジヒドロキシナフタレンとジヒドロキシベンゼンとの混合物(以下、これらを「2官能性フェノール」と略記する。)を塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得、更にこれを活性エステル化することによって製造することが活性エステル樹脂(a2)の生産性に優れる点から好ましい。
【0071】
即ち、後者の製造方法は、ジヒドロキシナフタレン、或いは、ジヒドロキシナフタレンとジヒドロキシベンゼンとの混合物を塩基性触媒の存在下に反応させてフェノール性水酸基含有樹脂を得る工程(以下、この工程を「工程1」と略記する。)、ついで、該フェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させて活性エステル化する工程(以下、この工程を「工程2」と略記する。)から構成される。
【0072】
ここで、工程1において使用し得る前記ジヒドロキシナフタレンは、例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、及び2,7−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特にフェノール性水酸基が結合している芳香核において該フェノール性水酸基に隣接する位置に配向性を有するものが好ましく、具体的には1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。更に、特に製造が容易である点から1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタレンが得られるエポキシ樹脂(B)の流動性と難燃性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0073】
前記ジヒドロキシベンゼンとしては、ナフタレン環に2個の水酸基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,5−ジヒドロキシベンゼン、2,3,5−トリメチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン、5−フェニル−1,3−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。これらの中でも特にフェノール性水酸基が結合している芳香核において該フェノール性水酸基に隣接する位置に配向性を有するものが好ましく、具体的には、1,3−ジヒドロキシベンゼン、5−フェニル−1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。なかでも特に塩基性触媒下での反応性に優れる点から1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0074】
これらの中でも特にジヒドロキシナフタレンを単独で用いることが得られる活性エステル樹脂の硬化物の難燃性及び耐熱性の効果が顕著なものとなる点から好ましい。一方、ジヒドロキシナフタレンおよびジヒドロキベンゼンとの混合物を用いた場合、活性エステル樹脂(a2)の流動性に優れる点から好ましい。
【0075】
工程1において反応触媒として用いられる塩基性触媒は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、トリフェニルホスフィンなどのリン系化合物が挙げられる。これらの塩基性触媒は単独または2種以上を併用して用いることもできる。
【0076】
また、前記塩基性触媒の使用量は、該塩基性触媒の種類や目標とする反応率などにより、適宜選択すればよいが、例えば前記塩基性触媒としてアルカリ金属水酸化物を用いる場合の場合は2官能性フェノールのフェノール性水酸基1モルに対し、0.0.1〜1.0モル、好ましくは0.01〜0.1使用するのが好ましい。
【0077】
ここで特筆すべきは、通常、2官能性フェノールをポリエール化する場合、パラトルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの酸触媒が用いられているが、この場合、重合度が制御できず、融点が非常に高いか、あるいは分解点まで溶融しないような高分子量体となってしまい、高流動性が要求される電子部品材料への適用が困難なものであった。これに対し、本発明では塩基性触媒を反応触媒として用いることによって、驚くべきことに反応生成物が何等高分子量化することなく、総核体数が2〜8、好ましくは3〜6のフェノール性水酸基含有樹脂が得られる点にある。従って、本発明の活性エステル樹脂は優れた難燃性と高流動性とを兼備した材料となる。
【0078】
工程1における反応は、用いるジヒドロキシナフタレンやジヒドロキベンゼンの特性に応じて、無溶媒下または均一溶液を形成する可溶性溶媒下に行うことができる。無溶媒下で行えば、溶剤回収工程などが不必要となるため好ましいが、反応を安定的に進行させるためには溶媒存在下で行うのが好ましい。
【0079】
また、工程1における反応は、たとえば無溶媒下または前記可溶性溶媒の存在下に、前記2官能性フェノールに前記塩基性触媒を溶解させ、100〜300℃、好ましくは150〜250℃程度の温度条件で行うことができる。反応時間は特に限定されないが、前記温度条件を1〜10時間維持できる範囲であることが好ましい。更に、工程1の反応において、反応中に生成する水を系外に分留管などを用いて留去することが反応を速やかに進行し生産性が向上する点から好ましい。
【0080】
次いで、工程2は、このようにして得られたフェノール性水酸基含有樹脂を前記活性エステル化剤(a1−2)と反応させることにより得る方法である。
【0081】
前記活性エステル化剤(a1−2)として用いられる芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸塩化物は、具体的には、安息香酸、或いは、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられるが、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)中のフェノール性水酸基との反応性が良好なものとなる点から安息香酸塩化物又はアルキル安息香酸塩基物であることが好ましい。
【0082】
ここで、前記フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と前記活性エステル化剤(a1−2)とを反応させる方法としては、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
【0083】
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
【0084】
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、フェノール性水酸基含有樹脂(a1−1)と、活性エステル化剤(a1−2)とを混合し、前記アルカリ触媒又はその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0〜30質量%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0085】
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
【0086】
以上詳述した前記活性エステル樹脂(a2)は、その樹脂構造中に有するエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした当量数が、200〜290g/eq.の範囲であることが、有機溶剤への溶解性及び硬化物の耐熱性に優れたものとなる点から好ましい。
【0087】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いるエポキシ樹脂(B)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点から、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0088】
本発明の熱硬化性樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性及び硬化物の諸物性が良好なものとなる点から前記活性エステル樹脂(A)中のエステルを構成するカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の両者を官能基とした1当量に対して、前記エポキシ樹脂(B)中のエポキシ基が0.8〜1.2当量となる割合であることが好ましい。
【0089】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)に加え、エポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。ここで用いることのできるエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが難燃効果の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましい。
【0091】
上記したエポキシ樹脂用硬化剤を併用する場合、その使用量は誘電特性の点から10〜50%の範囲であることが好ましい。
【0092】
また必要に応じて本発明の熱硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特にビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、ジメチルアミノピリジンやイミダゾールが好ましい。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0093】
以上詳述した本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0094】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0095】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0096】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0097】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0098】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0099】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0100】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0101】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0102】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0103】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0104】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0105】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0106】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0107】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0108】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0109】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0110】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0111】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0112】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0113】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0114】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0115】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0116】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0117】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、熱硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0118】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、熱硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0119】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0120】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の活性エステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の熱硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0121】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性から硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
【0122】
ここで、本発明の回路基板は、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して製造されるものである。具体的には、例えば硬質プリント配線基板を製造するには、前記有機溶剤を含むワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤を配合してワニス化し、これを補強基材に含浸し、半硬化させることによって製造される本発明のプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる熱硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
【0123】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び有機溶剤を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0124】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該熱硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0125】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を製造するには、活性エステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)、及び無機充填剤等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、熱硬化性樹脂組成物中、無機質充填材を70〜95質量%となる割合で配合することにより、本発明の半導体封止材料となる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法が挙げられる。
【0126】
本発明の熱硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0127】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0128】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0129】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の熱硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
【0130】
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0131】
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0132】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0133】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0134】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0135】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0136】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0137】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該熱硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0138】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記熱硬化性樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0139】
本発明の硬化物を得る方法としては、例えば、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【0140】
従って、本発明によれば、ハロゲン系難燃剤を使用しなくても高度な難燃性を発現する環境性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、これらの硬化物における優れた誘電特性は、高周波デバイスの高速演算速度化を実現できる。また、該フェノール性水酸基含有樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
【実施例】
【0141】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、GPC測定、13C−NMR、FD−MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0142】
1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠した。
2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠した。
3)GPC:
・装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」により下記の条件下に測定した。
カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL+G2000HXL
+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
4)13C−NMR:日本電子株式会社製「NMR GSX270」により測定した。
5)FD−MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
【0143】
合成例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレンを160g(1.0モル)、ベンジルアルコール25g(0.25モル)、キシレン160g、パラトルエンスルホン酸・1水和物2gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した(同時に留去するキシレンは系内に戻す)。その後、150℃に昇温し、生成する水とキシレンを系外に留去しながら3時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加して中和した後、水分およびキシレンを減圧下除去してフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)を178g得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)は褐色固体であり、水酸基当量は178グラム/当量、軟化点は130℃であった。得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャートを図1に示す。
【0144】
フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のMS(図2)及び13C−NMRによる構造解析を行うと共に、更に、トリメチルシリル化法によるMS(図3)の測定に用いるため、フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)をトリメチルシリル化し、次いで、MSより以下のa.〜f.のピークを確認した。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルを図2に、トリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルを図3に示した。
【0145】
a.2,7−ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク(M+=250)、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク(M+=340)。
従って2,7−ジヒドロキシナフタレン1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0146】
b.2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体のピーク(M+=302)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=446)。
従って、b.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテル化合物であることを確認した。
【0147】
c.2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体のピーク(M+=444)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=588)及び3個付加したピーク(M+=660)。
従って、c.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の3量体化合物であることを確認した。
【0148】
d.2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体のピーク(M+=586)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=730)及び3個付加したピーク(M+=802)。
従って、d.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の4量体化合物であることを確認した。
【0149】
e .2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体のピーク(M+=729)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=873)及び3個付加したピーク(M+=944)及び4個付加したピーク(M+=1016)。
従って、e.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の5量体化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2モル核脱水して生成した構造の5量体化合物であることを確認した。
【0150】
f .b〜eのそれぞれにベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク。
従ってb〜eのそれぞれに1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
【0151】
合成例2
ベンジルアルコール54g(0.5モル)に変えた以外は合成例1と同様に反応し、フェノール性水酸基含有樹脂(A−2)を207g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A−2)は褐色固体であり、水酸基当量は166グラム/当量、軟化点は110℃であった。
【0152】
合成例3
反応温度を150℃3時間とし、ベンジルアルコール108g(1.0モル)に変え、キシレン160gを添加しなかった以外は合成例1と同様に反応を行い、フェノール性水酸基含有樹脂(A−3)を240g得た。このフェノール性水酸基含有樹脂(A−3)は褐色固体であり、水酸基当量は160グラム/当量、軟化点は77℃であった。
【0153】
合成例4
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160g(1.0モル)を仕込み、窒素を吹き込みつつ攪拌しながら200℃に加熱し、溶融させた。溶融後、48%水酸化カリウム水溶液23g(0.2モル)を添加した。その後、分留管を用いて48%水酸化カリウム水溶液由来の水および生成する水を抜き出した後、更に5時間反応させた。反応終了後、更にメチルイソブチルケトン1000gを加え、溶解後、分液ロートに移した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)150gを得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)は褐色固体であり、水酸基当量は120g/eq、融点は179℃であった。図4のGPCチャートより未反応の原料(2,7−ジヒドロキシナフタレン)の残存率はGPCによる面積比で64%であることを確認した。
図5に示すFT−IRチャートの結果より、原料(2,7−ジヒドロキシナフタレン)と比較して芳香族エーテル由来の吸収(1250cm−1)が新たに生成したことが確認され、水酸基同士が脱水エーテル化反応したことが推定された。
図6に示すMSチャートの結果より、2,7−ジヒドキシナフタレンが3分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体構造(Mw:444)および5分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体構造(Mw:728)を確認した。
【0154】
更に図7に示すトリメチルシリル化法によるMSより2,7−ジヒドロキシナフタレン3量構造(Mw:444)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が2個(M+=588)、3個(M+=660)付いたピークを確認した。
更に2,7−ジヒドキシナフタレンが5分子間脱水して生成した2,7−ジヒドロキシナフタレン5量構造(Mw:728)に、トリメチルシリル基分の分子量(Mw:72)が3個(M+=945)、4個(M+=1018)付いたピークを確認した。
以上より、フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)は、原料の2,7−ジヒドロキシナフタレンの含有率がGPCによる面積比で全体の64%であり、その他は、下記構造式
【0155】
【化17】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物、
下記構造式
【0156】
【化18】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1分子核脱水して生成した3量体化合物、及び下記構造式
【0157】
【化19】
で表される2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2分子核脱水して生成した5量体化合物となっていることが解析された。
【0158】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)178g(フェノール性水酸基の量:1モル)とメチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。]816gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、塩化ベンゾイル126.5g(0.90モル)を仕込みその後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液189.0gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているMIBK相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のPHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し、続いて減圧脱水でMIBKを除去し、活性エステル樹脂(B−1)を得た。この活性エステル樹脂(B−1)の官能基当量は仕込み比より272グラム/当量、軟化点は125℃であった。またフェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。得られた活性エステル樹脂(B−1)のGPCチャートを図8に示す。MSスペクトル(図9)からフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)に含まれるそれぞれの化合物に塩化ベンゾイルが脱塩酸を伴い反応する化合物のピークを活性エステル樹脂(B−1)に確認した。13C−NMR(図10)の165ppmピークよりエステル基由来のカルボニルの炭素の生成を確認した。
【0159】
実施例2
フェノール性水酸基含有樹脂(A−2)166g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−2)を得た。この活性エステル樹脂(B−2)の官能基当量は仕込み比より260グラム/当量、軟化点は105℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0160】
実施例3
フェノール性水酸基含有樹脂(A−3)160g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−3)を得た。この活性エステル樹脂(B−3)の官能基当量は仕込み比より254グラム/当量、軟化点は70℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0161】
実施例4
フェノール性水酸基含有樹脂(A−4)120g(フェノール性水酸基の量:1モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−4)を得た。この活性エステル樹脂(B−4)の官能基当量は仕込み比より214グラム/当量、軟化点は150℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は90%であった。
【0162】
実施例5
塩化ベンゾイル70.3g(0.50モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−5)を得た。この活性エステル樹脂(B−5)の官能基当量は仕込み比より230グラム/当量、軟化点は128℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は50%であった。
【0163】
実施例6
塩化ベンゾイル140.5g(1.00モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(B−6)を得た。この活性エステル樹脂(B−6)の官能基当量は仕込み比より282グラム/当量、軟化点は125℃、フェノール性水酸基に対するフェニルカルボニルオキシ化率は100%であった。得られた活性エステル樹脂(B−6)のGPCチャートを図11に示す。
【0164】
比較例1
フェノール性水酸基含有樹脂(A−1)をフェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD−2131」)105gに変えた以外は実施例1と同様に反応し、活性エステル樹脂(A−3)を188g得た。この活性エステル樹脂(B−7)の官能基当量は仕込み比より199グラム/当量であった。
【0165】
実施例7〜12及び比較例2〜5(熱硬化性樹脂組成物の調整及び物性評価)
下記の表1記載の配合に従い組成物を調整した。ここで、エポキシ樹脂は、DIC(株)製「N−770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:183g/eq)を用い、硬化剤として活性エスエル樹脂(B−1)〜(B−7)、並びにフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)及び(A−4)、DIC(株)製「TD−2131」(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:105g/eq.)を用いた。また、各組成物を調整するにあたり、硬化触媒としてジメチルアミノピリジン0.5phrを加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性、誘電特性及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0166】
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、厚さ0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。
<溶剤溶解性試験>
配合した不揮発分(N.V.)が58質量%のメチルエチルケトン溶液を0℃で60日間保管後の外観で判定。
【0167】
【表1】
【0168】
表1の脚注:
B−1:実施例1で得られた活性エステル樹脂(B−1)
B−2:実施例2で得られた活性エステル樹脂(B−2)
B−3:実施例3で得られた活性エステル樹脂(B−3)
B−4:実施例4で得られた活性エステル樹脂(B−4)
B−5:実施例5で得られた活性エステル樹脂(B−5)
B−6:実施例6で得られた活性エステル樹脂(B−6)
B−7:比較例1で得られた活性エステル樹脂(B−7)
N−770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「N−770」、エポキシ当量:183g/eq.)
TD−2131:フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD−2131」水酸基当量:105g/eq.)
A−1:合成例1で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−1)
A−4:合成例4で得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A−4)
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
なお、「自消」で示した評価結果は、V−1に要求される難燃性(ΣF≦250秒且つFmax≦30秒)は満たさないが、燃焼(炎のクランプ到達)には至らず消火したレベルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エステル樹脂(A)が、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エステル樹脂(A)がポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基を有しており、かつ、該官能基中のアリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記活性エステル樹脂(A)が、ナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキシ構造として有するものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記活性エステル樹脂(A)が、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【化1】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記活性エステル樹脂(A)が、下記構造式2
【化2】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【化3】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【化4】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2におけるYの少なくとも1つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)
で表される樹脂構造を有するものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エステル樹脂(A)が、その樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基から成る群から選択される官能基を有し、かつ、前記活性エステル樹脂(A)中の該官能基の全ての含有量が、官能基当量200〜300g/eqの範囲となる割合である請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つ記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項10】
ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項11】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基を有しており、かつ、該官能基中のアリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となるものである請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項12】
ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【化5】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にある請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項13】
下記構造式2
【化6】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【化7】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【化8】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2におけるYの少なくとも1つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)
で表される樹脂構造を有する請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項14】
請求項1〜7の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料。
【請求項15】
請求項1〜7の何れか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグ。
【請求項16】
請求項1〜7の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板。
【請求項17】
請求項1〜7の何れか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることを特徴とするビルドアップフィルム。
【請求項1】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有する活性エステル樹脂(A)、及びエポキシ樹脂(B)を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エステル樹脂(A)が、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エステル樹脂(A)がポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基を有しており、かつ、該官能基中のアリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となるものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記活性エステル樹脂(A)が、ナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキシ構造として有するものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記活性エステル樹脂(A)が、ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【化1】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記活性エステル樹脂(A)が、下記構造式2
【化2】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【化3】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【化4】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2におけるYの少なくとも1つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)
で表される樹脂構造を有するものである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エステル樹脂(A)が、その樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基から成る群から選択される官能基を有し、かつ、前記活性エステル樹脂(A)中の該官能基の全ての含有量が、官能基当量200〜300g/eqの範囲となる割合である請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つ記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項10】
ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にあるものである請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項11】
ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基からなる群から選択される官能基を有しており、かつ、該官能基中のアリールカルボニルオキシ基の存在割合が40%以上となるものである請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項12】
ポリアリーレンオキシ構造を繰り返し単位とする主骨格を有し、かつ、該構造の芳香核に、アリールカルボニルオキシ基、及び下記構造式1
【化5】
[構造式1中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、かつ、その軟化点が60〜170℃の範囲にある請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項13】
下記構造式2
【化6】
(構造式2中、X1はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつn又はmの何れか一方は1以上であり、X2は水素原子又は下記構造式2−2
【化7】
で表される構造部位を表し、前記構造式2及び構造式2−2中のYは水素原子又は下記構造式2−3
【化8】
で表される構造部位を表し、構造式2及び構造式2−2中のAr2は、それぞれ独立的にナフチレン基、フェニレン基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基を置換基として有するナフチレン基若しくはフェニレン基を表し、構造式2−2中のpは1又は2の整数であり、構造式2−3中のAr3は、フェニル基、ナフチル基、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニル基若しくはナフチル基を表す。ここで、構造式2式中の全芳香核数は2〜8であり、なお、上記構造式2及び構造式2−2におけるYの少なくとも1つは上記構造式2−3で表される構造であり、上記構造式2においてナフタレン構造部位への結合位置は該ナフタレン構造部位を構成する2つのベンゼン環の何れであってもよい。)
で表される樹脂構造を有する請求項9記載の活性エステル樹脂。
【請求項14】
請求項1〜7の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物における前記活性エステル樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)に加え、更に無機質充填材(C)を組成物中70〜95質量%となる割合で含有する熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする半導体封止材料。
【請求項15】
請求項1〜7の何れか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることによって得られるプリプレグ。
【請求項16】
請求項1〜7の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板。
【請求項17】
請求項1〜7の何れか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることを特徴とするビルドアップフィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−12534(P2012−12534A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151982(P2010−151982)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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