説明

熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板

【課題】 ハロゲンやアンチモン化合物を実質的に含まないで難燃規格UL94V−0を達成する材料および、外形打ち抜き加工時に層間剥離がおきにくい積層板を提供すること。
【解決手段】 (a)エポキシ樹脂と、(b)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物からなる熱硬化性樹脂と、(c)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物とを必須成分として含有する変性エポキシ樹脂100重量部に対し無機充填剤を5〜250重量部添加してなる熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線板用絶縁材料、特にガラス基材エポキシ樹脂電気配線板用絶縁材料に適したエポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電気配線板用積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の種類は、拡大の一途を辿っており、コンピューター関連ばかりでなく、自動制御機器、通信機器、事務用機器なども、小型軽量化が望まれている。これらの機器に使用されているプリント配線板は、4〜10層が中心であり、高密度実装に対応するために、ファインパターン化はもちろん薄型化が図られている。このプリント配線板に要求される項目には、吸湿耐熱性、信頼性等が挙げられる。したがって、プリント配線板に用いられる樹脂にも高Tg、高耐熱性、低吸水性が必要である。この要求に対応するために、エポキシ樹脂の改良や、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂等が使用されている。また、これらの電気絶縁材料は、ガラス基材エポキシ樹脂電気配線板用絶縁材料に代表されるように安全性の面から高い難燃性が求められ、ハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物またはリン系難燃剤等を併用して難燃化がはかられてきた。しかしながら、近年、環境汚染や毒性の面から使用物質規制の動きが高まってきており、なかでもダイオキシン等の有機ハロゲン物質の毒性、発がん性が問題となっており、ハロゲン含有物質の低減、削減が強く求められている。また、アンチモンの発がん性の問題から、アンチモン化合物についても低減、削減の要求がたかまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、ハロゲンおよびアンチモン化合物を実質的に含まないで難燃規格UL94V−0を達成する材料を提供するものである。さらに、ベンゾオキサジン環を有する樹脂は、骨格がリジッドであり、靭性がないため、外形打ち抜き加工時に層間剥離が発生しやすいという問題があったが、本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂とジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物からなる熱硬化性樹脂とフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物からなる変性エポキシ樹脂100重量部に対し無機充填剤を5〜250重量部添加することにより、前記課題を達成可能であることを見いだした。特にエポキシ樹脂がオキサゾリジノン環を分子骨格に含むエポキシ樹脂、またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、外形打ち抜き加工時に発生する層間剥離を抑えられることを見い出し本発明に至った。すなわち本発明は、(a)エポキシ樹脂と、(b)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物からなる熱硬化性樹脂と、(c)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物とを必須成分として含有する変性エポキシ樹脂100重量部に対し無機充填剤を5〜250重量部添加してなる熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いた電気配線板用積層板に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ハロゲンやアンチモン化合物を配合することなく難燃性UL94V−0を達成する材料の提供が可能である。また、外形打ち抜き加工時に発生する層間剥離を抑制した積層板の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に使用するエポキシ樹脂(a)としては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、ビスフェノールAノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、環状脂肪族エポキシ、複素環式エポキシ、ジグリシジルエステル系エポキシ等があげられ特に制限がなく、単独または数種類加えるなど使用目的にあわせて選択可能である。特に、オキサゾリジノン環を分子骨格に含むエポキシ樹脂、またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用した場合、外形打ち抜き加工時に発生する層間剥離を低減可能であり好ましい。オキサゾリジノン環を分子骨格に含むエポキシ樹脂は、式(1)で示される構造のエポキシ樹脂である。(但し、式中Rは各種の多官能イソシアネート化合物よりイソシアネート基を除いた構造である。平均n=0〜2の正数)
【0007】
【化1】


用いられるイソシアネート化合物は、ポリメチレン・ポリフェニル・ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1、5−ジイソシアネート等の2官能および多官能イソシアネート化合物およびその多量体や、アルコールやフェノールによりマスクされたブロックイソシアネートおよびウレタン化合物などが挙げられるがこれらに限定されず、また使用するイソシアネート化合物は2種以上組合わせてもよい。好ましくは2官能イソシアネート化合物であり、これは官能基数が多すぎた場合には貯蔵安定性が低下するためである。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を分子中に有するエポキシ樹脂で、式(2)で示されるエポキシ樹脂である。
【化2】


オキサゾリン環を分子骨格に含むエポキシ樹脂は旭チバ(株)から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は大日本インク(株)からそれぞれ市販されている。
【0008】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(b)としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応により硬化する樹脂であれば特に限定されるものではなく、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルマリンおよび一級アミンから次式により合成される。
【化3】


(但し、式中のR1はアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基またはアルキル基もしくはアルコキシル基で置換されたフェニル基である。)
【0009】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、多官能フェノール、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂があげられる。多官能フェノールとしてはカテコール、ヒドロキノン、レゾルシノールがあげられる。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびその位置異性体、ビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールAがあげられる。またフェノール樹脂としてはレゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ベンゾグアナミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエン等があげられる。一級アミンとしては、具体的にはメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、置換アニリン等があげられる。ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、フェノール性水酸基を有する化合物と一級アミンとの等モル混合物を70℃以上に加熱したホルムアルデヒド中に添加して、70〜110℃、好ましくは90〜100℃で20〜120分反応させ、その後120℃以下の温度で減圧乾燥することにより合成することができる。
【0010】
本発明のフェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との重縮合物である変性フェノール樹脂(c)を得るために用いられるフェノール類としては、フェノールまたはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの多価フェノール類や、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、アミノフェノール、フェニルフェノールなどがあげられ1種類または2種以上の併用も可能である。好ましくはフェノールとビスフェノールAの組合せ、または、フェノールとアルキルフェノールを組合せである。この場合にはフェノールを単独で使用した場合より反応性が抑制され成形性にすぐれ、ビスフェノールAやアルキルフェノールを単独で使用した場合より難燃性に優れ好ましい。また、トリアジン環を有する化合物としては、メラミンまたはベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのグアナミン誘導体、シアヌル酸またはメチルシアヌレート、エチルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体や、イソシアヌル酸またはメチルイソシアヌレート、エチルシアヌレートなどのイソシアヌル酸誘導体などがあげられる。好ましくは耐熱性や難燃性が良好になり低価格なメラミンが適しており、トリアジン環を有する化合物の種類、使用量を目的に合わせて選定し窒素含有量を調整し難燃性、反応性、耐熱性の最適化が可能である。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキシメチレン等が挙げられこれらに限定されるものではないが、取扱いの容易さから、ホルムアルデヒドが好ましく、特にホルマリン、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0011】
本発明で使用する変性フェノール樹脂の合成方法としては、まずフェノール類とアルデヒド類とトリアジン環を有する化合物とを塩基性あるいは酸性触媒化で反応させる。この時系のpHは特に限定されるものではないがトリアジン環を含む化合物の多くが塩基性溶液に容易に溶解することから、塩基性触媒下で反応させることが好ましく、さらにはアミン類の使用が好ましい。また、各原料の反応順序も特に制限はなく、フェノール類、アルデヒド類をまず反応させてからトリアジン環を有する化合物を加えても、逆にトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類を反応させてからフェノール類を加えても、同時にすべての原料を加えて反応させてもよい。このとき、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比は特に限定されるものではないが0.2〜1.5で、好ましくは0.4〜0.8である。またフェノール類に対するトリアジン環を有する化合物との重量比は10〜98:90〜2で好ましくは50〜95:50〜5である。フェノール類の重量比が10%未満では樹脂化することが困難となり、98%を越えると充分な難燃効果が得ることができなくなる。また触媒として特に限定されるものではないが代表的なものとして水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物およびこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等、そして塩酸、硫酸、スルホン酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、あるいは酢酸亜鉛などの2価金属塩等がある。金属などの無機物が触媒残として残ることは好ましくないことから、塩基性の触媒としてはアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用することが好ましい。触媒の添加量としてはフェノール100重量部に対し0.1〜1重量部が用いられる。
【0012】
また反応制御の面から反応をメチルエチルケトン等の各種溶剤の存在化で行ってもよい。次に必要に応じて中和、水洗して塩類などの不純物を除去する。ただし触媒にアミン類を使用した場合は行わないことが好ましい。反応は、70〜90℃にて2〜4時間実施し、反応終了後、未反応のアルデヒド類、フェノール類、溶剤等を常圧蒸留、真空蒸留等の常法にしたがって除去する。この時、未反応のアルデヒド類とメチロール類を除去することが好ましく、未反応のアルデヒド類とメチロール基を実質的に含まない樹脂組成物を得るためには120℃以上の加熱処理を追加で実施する必要がある。このときノボラック樹脂を得るときの常法にしたがい充分に加熱、蒸留することが好ましい。特に限定されるわけではないが、またこのとき未反応官能性のフェノール単量体を2%以下にすることが好ましい。さらに、本発明の変性フェノール樹脂を数種組み合わせたり、他のフェノール類のノボラック樹脂と併用して硬化剤として使用することにより単独では得られない成形性や難燃性、耐熱性を得ることが可能であり目的に応じ併用してもよい。
【0013】
添加剤としては、無機充填剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライトやハイドロタルサイト等の無機水和物、クレー、タルク、ワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、ガラス粉などの汎用無機充填剤や、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛などのB、Sn系充填剤や、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、または、赤リンなどの無機リン系材料や、銅や亜鉛などの硝酸塩などを限定なく目的に応じて使用可能であり、またこれら無機充填剤をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などによりコートまたは処理して使用することにより有機成分との接着性や、耐熱性、温湿度に対する安定性や安全性が増し好ましい。
【0014】
また、非ハロゲン材料のみを使用して目標の難燃性を達成するためには、本発明のエポキシ樹脂組成物においてもトリアジン環の含有率つまり難燃化に効果のあるN含有率は、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物とフェノ−ル類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物に含まれるN量から、樹脂固形分中の5重量%程度までが限界であり、難燃性UL94V−1またはUL94V−0達成のためには、他の特性や成形性を無視して特殊なエポキシ樹脂を使用するか、フェノール樹脂組成物を極端に増量しないかぎり不可能である。そのため、難燃性UL94V−1またはUL94V−0達成のためには添加物による難燃補助作用が必要である。そのため、変性エポキシ樹脂100重量部に対し、無機充填剤を5重量部以上添加して可燃性物質の存在率を減少させることが好ましく、さらに難燃性UL94V−0達成のためには無機充填剤として無機水和物を30重量部以上使用することが好ましい。しかしながら、無機充填剤の添加重が250重量部を超えると、得られるエポキシ樹脂組成物は金属箔との接着性が著しく低下すると同時に、耐熱性や加工性、絶縁性などが目標を達成できない上、不織布や織布基材等と複合成形する際に欠陥なしに成形することが不可能となるため250重量部以下が好ましい。これらの成分のほかに、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤などを配合することができる。
【0015】
上記樹脂組成物を用いてプリプレグを作製する際に使用する織布および不織布の基材としては、紙、コットンリンターのような天然繊維基材、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、アクリルのような有機合成繊維基材、ガラス、アスベストのような無機繊維基材が使用される。耐燃性の見地から、ガラス繊維基材が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラスなどを使用した織布や短繊維を有機バインダーで接着したガラス不織布、さらに、ガラス繊維とセルロース繊維とを混抄したものがある。これらを配合したワニスは従来と同様に、織布や不織布などの基材に含浸させてプリプレグを製造し、プリプレグを重ねあわせその両面に銅箔を構成後、加圧、加熱プレスすることにより、銅張り積層板を製造することが出来る。
【0016】
本発明は、芳香族成分が多く熱分解がしにくく、難燃性に優れたジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を使用し、さらに、硬化剤として難燃性を高めるNを含有するトリアジン環を有したフェノール樹脂組成物を使用するため、安定した状態で分子構造中にNを多量に取り込み、さらに難燃性を高める作用を有する添加物として無機物を添加併用することにより、これらの難燃作用や作用温度域の異なる難燃剤の併用により、各々の難燃剤を単独で使用した場合に比較して相乗効果を得ることが可能となり安定かつ難燃性、および他特性バランスのすぐれたエポキシ樹脂組成物を得ることが可能である。さらに、式(1)に示したようなオキサゾリジノン環を含むエポキシ樹脂は、耐熱性、難燃性にすぐれ、構造上から可撓性、耐熱性が良好なオキサゾリン環を有するとともに、平均n=0〜2と反応点のOH基が少ないため、可撓性、靭性を合わせもつため、外形打ち抜き時の層間剥離の低減に効果がある。また、ジシクロペンタジエン型エポキシを使用することにより、層間の接着性が向上し、外形打ち抜き時の層間剥離の低減に効果がある。
【実施例】
【0017】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。以下、部は「重量部」を、%は「重量%」を示すものとする。
実施例1〜5、比較例1〜2
〔1〕ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂の合成
(1)フェノールノボラックの合成
フェノール1.9Kg、ホルマリン(37%水溶液)1.15Kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引続き、内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノールおよび水を除去した。得られた樹脂は軟化点89℃(環球法)、3核体以上/2核体比=89/11(ゲル浸透クロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。以下得られた樹脂を(A1)と略記する。
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
上記により合成したフェノールノボラック樹脂1.7Kg(ヒドロキシル基16mol)をアニリン1.49Kg(16mol)と80℃で5時間撹絆し、均一な混合溶液を調整した。5リットルフラスコ中に、ホルマリン1.62Kgを仕込み90℃に加熱し、ここヘノボラック/アニリン混合溶液を30分間かけて少しずつ添加した。添加終了後30分間、還流温度に保ち、然る後に100℃で2時間6666.1Pa以下に減圧して縮合水を除去し、反応しうるヒドロキシル基の95%がジヒドロベンゾオキサジン化された熱硬化性樹脂を得た。以下得られた樹脂を(B1)と略記する。
【0018】
〔2〕変性フェノール樹脂組成物の合成例
フェノール94部に41.5%ホルマリン29部、およびトリエチルアミン0.47部を加え80℃にて3時間反応させた。メラミンを19部加えさらに1時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら120℃まで昇温し、温度を保持したまま2時間反応させた。次に常圧下にて水を除去しながら180℃まで昇温し、減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点136℃のフェノールとメラミンの反応物であるフェノール樹脂組成物を得た。以下得られた樹脂を(C1)と略記する。フェノールとメラミンの重量比率、未反応ホルムアルデヒド量、メチロール基の存在の有無、および未反応フェノールモノマー量を求め結果を表1に示した。
【表1】

【0019】
〔3〕その他の配合物エポキシ樹脂
(a)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DEN430 ダウケミカル(株)製商品名)
エポキシ当量170〜180g/eq、常温で液状(b)オキサゾリジノン環を含むエポキシ樹脂(AER4152 旭チバ(株)製商品名)
エポキシ当量330〜360g/eq、イソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートn=0.15〜0.25(c)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(EVA−7200H、大日本インキ(株)製商品名)
エポキシ当量280〜290g/eq無機充填剤・水酸化アルミニウム(CL−303 住友化学(株)製商品名)
電子材料用に一般的に用いられている残留イオン等の少ないもので、粒径が3〜5μmのものを使用した。
【0020】
〔4〕積層板の作製
表2に示した固形分配合の樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解させ、溶液の不揮発分を65〜75%になるようにメチルエチルケトンで調整した。しかる後、各々の混合溶液をガラスクロス(0.2mm厚)に含浸させ、160℃で4分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その両面に18μmの銅箔を重ね、180℃、圧4MPaにて100分間加熱加圧成形して厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。
【0021】
以上作製した両面銅箔張積層板について外形打ち抜き加工時に発生する層間剥離の発生量、耐燃性、耐湿耐熱性、Tgを調べた。その結果を表2に示す。なお、試験方法は以下の通りとした。
外形打ち抜き加工時発生層間剥離量:作製した両面銅張り積層板の銅はくをエッチングにより除去し、試料とし、DIN金型を使用し、層間剥離量を実測して求めた。
耐燃焼性:UL94に準拠する。
はんだ耐熱性:121℃、2130hPaのプレッシャークッカー処理装置内に6時間保持後の試験片(50mm×50mmの片面半銅付き)を、260℃に加熱されたはんだ槽に30秒間沈め、ふくれ及びミーズリングの発生の有無を肉眼にて観察した。表中の各記号は、○:変化なし、△:ミーズリングまたは目浮き発生、×:ふくれ発生を意味する。
ガラス転移温度(Tg):JIS−C−6481に規定されるTMA法に従って測定した。なお、昇温速度10℃/分で試料がガラス転移温度以上になるまで加熱し、一旦室温まで冷却してから再度昇温速度10℃/分で昇温したときの寸法変化量を測定し、温度−寸法カーブからガラス転移温度を求めた。得られた積層板の特性を表2に示す。
【0022】
【表2】


表2に示す結果から明らかなように、本発明により、ハロゲンやアンチモン化合物をを実質的に含まないで難燃性UL94V−0達成可能であることが確認できた。また、エポキシ樹脂がオキサゾリン環を分子骨格に含むエポキシ樹脂、またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が外形打ち抜き加工時に発生する層間剥離を抑えられることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂と、(b)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物からなる熱硬化性樹脂と、(c)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物とを必須成分として含有する変性エポキシ樹脂100重量部に対し無機充填剤を5〜250重量部添加してなる熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(a)エポキシ樹脂がオキサゾリジノン環を骨格に含むエポキシ樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
使用するすべての材料がハロゲンおよびアンチモン化合物を実質的に含まないものである請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸乾燥してなるプリプレグ。
【請求項6】
請求項5記載のプリプレグの片面または両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる電気配線板用積層板。

【公開番号】特開2010−138400(P2010−138400A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6898(P2010−6898)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願平11−307511の分割
【原出願日】平成11年10月28日(1999.10.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】