説明

熱風循環型乾燥装置

【課題】所定の熱風の生成量を制御することが可能で、且つ、熱風の清浄化において失われる熱損失の削減を図ることが可能となる熱風循環型乾燥装置を提供する。
【解決手段】熱源手段10と、送風手段20と、熱風清浄手段30と、乾燥室40とを有し、熱源手段10は、熱源となるヒーター14と、熱源のヒーターが配備された部位における熱風の経路の開口面積を制御する熱風制御板16とを有し、熱風清浄手段30の有する熱風清浄のためのろ過フィルターを格納する筐体30−1、及び筐体30−1の上蓋30−2の内側が、断熱板36を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を熱風により乾燥する熱風の生成に係り、詳しくは、所定の熱風の生成量を制御することが可能で、且つ、熱風の循環経路において失われる熱損失の削減を図ることが可能となる熱風循環型乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等のガラス基板の連続洗浄工程において用いられる熱風循環型乾燥装置は、連続した処理工程の洗浄装置、リンス装置の次に設置され、リンス後に搬送されてきたガラス基板を清浄に乾燥させる機能を有する。図1は、熱風循環型乾燥装置の装置構成を示すブロック図である。図1において、熱風循環型乾燥装置100は、熱源手段10、送風手段20、熱風清浄手段30、及び、乾燥室40を有し、矢印方向に熱風が循環し、乾燥室40内に搬入されるリンス後のガラス基板を乾燥している。
【0003】
ところで従来の熱源手段10は、短時間で所定の温度の熱風を生成するため、熱源となるヒーターは、昇温効果を高めるため、収納可能な最小限の形状を有する収納箱に設置される構成となっていた。このため、一定の大きさのガラス基板が一定の速度で搬送される場合には、熱風の生成効率は最大に保たれるが、ガラス基板の大きさの変更や、処理速度の変更が生じた場合は、熱風の生成(温度立上時間調整、熱風循環量調整)の制御ができないため、予測した最悪条件において機能を維持していく事が可能なように安全係数を大きくする必要があり、生成効率が悪くなる問題がある。
【0004】
図3aは、従来の熱風清浄手段の構造を示す躯体構造図である。図3aにおいて、熱風清浄手段30は、筐体30−1と上蓋30−2とを有している。筐体30−1は、熱風を清浄にするヘパフィルターを収納するため方形の箱型構造をしており、上部は、ヘパフィルターを挿入するため開放され、下部は、ヘパフィルターを通過して清浄化された熱風が乾燥室10に吹き込むよう、矢印方向に中空となっている。
【0005】
筐体30−1を構成する壁部は、断熱材38をステンレス(SUS)板32で覆った構造をしている。上蓋30−2は、同様に、断熱材38をSUS板32で覆った構造をし、筐体30−1の壁部との接触部分は熱風の漏れを防ぐためのパッキン34を具備している。
このような構造においては、断熱材38による断熱効果により、熱風の温度降下を阻止することができるものの、断熱材として使用されるグラスウールなどからの発塵を防ぎ清浄性を保つため断熱材を囲んでいるSUS板32自身が加熱されてしまうため、内壁側より外壁側への熱伝導が起こる。伝わった熱はそこで外壁表面からの放熱による熱損失が発生する問題がある。
【0006】
特許文献1には、熱風整流室と乾燥室とが、第1の開度調整手段により開度調整される多数個の通気孔を有する第1の仕切り板により区画され、乾燥室と蒸気発生室とが、第2の開度調整手段により開度調整される多数個の通気孔を有する第2の仕切り板により区画され、中空木材の上流側の端面位置に乾燥室仕切り部材を設けて、乾燥室内を整流空間及び乾燥空間に区分し、乾燥室仕切り部材に、整流空間から中空木材の中空部に熱風を送る多数個の中空部送り孔と、整流空間から乾燥空間内に中空部送り孔より少量の熱風を送る多数個の外周送り孔とを設けた中空木材の乾燥装置の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−47855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、所定の熱風の生成量を制御することが可能で、且つ、熱風の循環経路において失われる熱損失の削減を図ることが可能となる熱風循環型乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱風循環型乾燥装置は、被乾燥物の処理工程において用いられる熱風循環型乾燥装置であって、熱源手段と、送風手段と、熱風清浄手段と、乾燥室とを有し、熱源手段は、熱源となるヒーターと、熱源のヒーターが配備された部位における熱風の経路の開口面積を制御する手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の循環型熱風乾燥装置の開口面積を制御する手段は、熱風の経路内に設置された熱風制御板と熱風制御板を駆動して熱風の経路の開口面積を制御するための駆動部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の循環型熱風乾燥装置の熱風制御板は、支持点を中心に90度の範囲で回転するか、経路内を上下又は左右方向へ平行移動することを特徴とする。
【0012】
本発明の循環型熱風乾燥装置の熱風制御板の可動手段は、電動式モータ又はエアーシリンダを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の循環型熱風乾燥装置の熱風清浄手段は、熱風清浄のためのろ過フィルターと、ろ過フィルターを格納する筐体とを有し、筐体の一部は、ろ過フィルターを出し入れできる可動する面構造を有し、筐体の内側が、断熱板を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の循環型熱風乾燥装置の断熱板は、フッ素樹脂(PTFE)、ガラスエポキシ、又は、セラミックスのいずれかで成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の熱風の生成量を制御することが可能で、且つ、熱風の清浄化において失われる熱損失の削減を図ることが可能となる熱風循環型乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】熱風循環型乾燥装置の装置構成を示すブロック図。
【図2】本発明による熱源手段の構成を示す構成図。
【図3】従来、及び本発明の熱風清浄手段の構造を示す躯体構造図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
本発明の実施の形態について、図1における熱風循環型乾燥装置100の熱源手段10及び熱風清浄手段30を基に、以下に詳しく説明する。図2は、本発明による熱源手段の構成を示す構成図である。図2において、熱源手段10は、熱風生成室12、ヒーター14、熱風制御板16、及び駆動部18を有している。
【0018】
熱風生成室12の上部は、乾燥室40にパイプにより接続され、横部の一方は、ヒーター14が設置され、他方は、送風手段20の循環ブロアー22にパイプにより接続されている。熱風制御板16は、ヒーター14の上部で、且つ、熱風生成室12と乾燥室40との接続位置と、循環ブロアー22との接続位置との中間の位置より、乾燥室40との接続位置に近い所定の場所に設置され、駆動部18により可動されて、熱風の通路の開口面積を制御する。
【0019】
熱風制御板16は、駆動部18により、熱風生成室12の壁面の近傍に具備される熱風制御板16の支持点(図示せず)を中心に90度の範囲で回転し、熱風の通路の開口面積を制御しても良く、経路内を上下又は左右方向へ平行移動して、熱風の通路の開口面積を制御しても良い。また、駆動部18は、電動式モータにより熱風制御板16を可動しても良く、エアーシリンダにより可動しても良い。
【0020】
これにより、熱風生成室12のヒーター14により所定の温度に温められたエアーは、循環ブロアー22により熱風となって熱風清浄手段30へ送られる。熱風清浄手段30へ送られた熱風は、熱風清浄手段30に設置されたヘパフィルターを通過して清浄化され、熱風清浄手段30の底部の通風孔39から乾燥室40へ送られる。乾燥室40へ送られた清浄化された熱風は、乾燥室40に搬入されてきたリンス後のガラス基板を乾燥した後、熱風生成室12へ送られ、再び、ヒーター14により所定の温度に温められて循環を繰り返す。
【0021】
例えばガラス基板の連続洗浄工程において、乾燥室40へ連続して搬入されるガラス基板の大きさは、変更されることがあり、それに応じて搬送速度も変更されることがある。このため、熱風制御板16が駆動部18により可動されて熱風の通路を制御することにより、乾燥室40における熱風の乾燥能力を適宜制御できるため、これらの変更に随時対応することが可能となる。
【0022】
図3bは、本発明の熱風清浄手段の構造を示す躯体構造図である。図3bにおいて、熱風清浄手段30の筐体30−1を構成する壁部が、ステンレス(SUS)板32による中空の壁を構成し、その内側と下側に断熱板36を有し、上蓋30−2の外側がSUS板32、内側が断熱板36で成る構造をしているところが、図3aとは異なる点である。この配置は、循環している熱風の温度が、SUS板32からの伝熱により放熱し低下することを抑えるため、内側の露出ができるだけ無い構造としたものである。
【0023】
これにより、清浄性を保つためのSUS板32からの放熱による熱損失が減少し、熱風は、熱風清浄手段30における温度降下が低減されて乾燥室40へ送られることにより、乾燥室40での乾燥能力を高く維持することが可能となる。断熱板36は、フッ素樹脂(PTFE)、ガラスエポキシ、又は、セラミックスのいずれかであることが望ましい。また、断熱板36の取り付けは、ネジ止め、又は、接着のいずれでも良い。断熱板36の突合せ部に生じる隙間には、エポキシ、又は、シリコンゴム等の充填材を塗布することが望ましい。またへパフィルターを出し入れできる構造であれば、上蓋30−2以外の筐体のいずれの箇所であっても良い。
【0024】
以上説明したように本発明によれば、所定の熱風の生成量を制御することが可能となり、且つ、熱風の清浄化において失われる熱損失の削減を図ることが可能となる熱風循環型乾燥装置を提供することができる。これにより、連続洗浄工程におけるガラス基板の大きさや、処理速度の変更に対応して運転を継続することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
10 熱源手段
12 熱風生成室
14 ヒーター
16 熱風制御板
18 駆動部
20 送風手段
22 循環ブロアー
30 熱風清浄手段
30−1 筐体
30−2 上蓋
32 ステンレス(SUS)板
34 パッキン
36 断熱板
38 断熱材
39 通風孔
40 乾燥室
100 熱風循環型乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物の処理工程において用いられる熱風循環型乾燥装置であって、
熱源手段と、送風手段と、熱風清浄手段と、乾燥室とを有し、
前記熱源手段は、熱源となるヒーターと、前記熱源のヒーターが配備された部位における熱風の経路の開口面積を制御する手段を有することを特徴とする熱風循環型乾燥装置。
【請求項2】
前記開口面積を制御する手段は、前記熱風の経路内に設置された熱風制御板と前記熱風制御板を駆動して前記熱風の経路の開口面積を制御するための駆動部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱風循環型乾燥装置。
【請求項3】
前記熱風制御板は、支持点を中心に90度の範囲で回転するか、経路内を上下又は左右方向へ平行移動することを特徴とする請求項1に記載の熱風循環型乾燥装置。
【請求項4】
前記熱風制御板の可動手段は、電動式モータ又はエアーシリンダを有することを特徴とする請求項1に記載の熱風循環型乾燥装置。
【請求項5】
前記熱風清浄手段は、熱風清浄のためのろ過フィルターと、前記ろ過フィルターを格納する筐体とを有し、前記筐体の一部は、前記ろ過フィルターを出し入れできる可動する面構造を有し、前記筐体の内側が、断熱板を有することを特徴とする請求項1に記載の熱風循環型乾燥装置。
【請求項6】
前記断熱板は、フッ素樹脂(PTFE)、ガラスエポキシ、又は、セラミックスのいずれかで成ることを特徴とする請求項1に記載の熱風循環型乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−196922(P2010−196922A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39900(P2009−39900)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】