説明

燃料供給制御装置及び内燃機関への燃料供給方法

【課題】内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる燃料供給制御装置及び内燃機関への燃料噴射方法を提供する。
【解決手段】ECU50は、CNGタンク41内のタンク燃圧微分値を取得し、タンク燃圧微分値に基づきCNGタンク41内の温度が安定しているか否かを判定する。そして、ECU50は、CNGタンク41内の温度が不安定であると判定した場合には内燃機関10へのCNGの供給を禁止し、CNGタンク41内の温度が安定していると判定した場合には内燃機関10へのCNGの供給を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される内燃機関にガス燃料を供給するための燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置及び内燃機関への燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第1のエネルギを利用して車両を走行させる第1走行モードと、第2のエネルギを利用して車両を走行させる第2走行モードとを有する車両の開発が進んでいる。こうした車両としては、バイフューエル内燃機関を搭載する車両、及びハイブリッド車両などが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の内燃機関は、LPG(液化石油ガス)などの液化ガス燃料(第1のエネルギ)及びガソリン(第2のエネルギ)を使用可能なバイフューエル内燃機関である。こうした内燃機関に燃料を供給するための燃料供給装置は、貯留容器内に貯留される液化ガス燃料を内燃機関に供給する燃料供給機構と、該燃料供給機構を介して貯留容器内の液化ガス燃料を循環させる循環機構とを備えている。
【0004】
液化ガス燃料を利用して内燃機関を駆動させる場合には、内燃機関から受熱した燃料供給機構内の液化ガス燃料が循環機構によって貯留容器内に戻される。そのため、貯留容器の温度及び圧力が徐々に上昇し、貯留容器内の圧力が所定の設定値以上になった場合には内燃機関に供給される燃料が液化ガス燃料からガソリンに切り替えられると共に循環機構が停止される。すると、内燃機関から受熱した燃料噴射機構内の液化ガス燃料の循環が停止される。その結果、貯留容器内の温度上昇が抑制され、貯留容器内の圧力が適正に維持される。
【0005】
また、バイフューエル内燃機関に使用可能な燃料としては、液化ガス燃料以外にCNG(圧縮天然ガス)などのガス燃料が知られている。こうしたガス燃料を内燃機関に供給する際の制御方法としては、例えば特許文献2に記載の方法が従来から提案されている。すなわち、内燃機関にガス燃料を噴射するための燃料噴射弁の近傍には、該燃料噴射弁に供給されたガス燃料の圧力及び温度を検出するための圧力センサ及び温度センサが設けられている。そして、各センサから出力される検出信号に基づき、燃料噴射弁の近傍でのガス燃料の圧力及び温度が取得され、該取得結果に基づき内燃機関にガス燃料が噴射される燃料噴射時間が補正される。つまり、内燃機関に噴射するガス燃料の噴射量が調整される。
【0006】
ところで、ガス燃料を用いて内燃機関を駆動させる車両においては、貯留容器内に貯留されるガス燃料の圧力や温度が一定値に落ち着かない不安定な状態になることがある。例えば、内燃機関の停止時に貯留容器内に外部の設備からガス燃料を充填させる場合、貯留容器内には外部の設備から高圧のガス燃料が供給されるため、貯留容器内ではガス燃料の供給に伴う断熱圧縮により、貯留容器内の温度が急激に上昇する。その結果、ガス燃料の充填直後の貯留容器内は、ガス燃料の流入出がなくても温度が一定値に落ち着かない不安定な状態となっている。
【0007】
このように貯留容器内の温度が不安定な状態であっても、特許文献2に記載の燃料供給機構のように温度センサを備えた構成である場合には、ガス燃料の温度によって内燃機関へのガス燃料の燃料噴射時間が適切に補正される。つまり、貯留容器内の温度の変動による内燃機関へのガス燃料の噴射量のばらつきが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−52560号公報
【特許文献2】特開平7−189811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では、燃料供給機構の製造コストの低減を目的として、ガス燃料の温度を検出するための温度センサを省略した構成の燃料供給機構の開発が進められている。こうした燃料供給機構においては、ガス燃料を貯留する貯留容器内の温度が不安定である場合、内燃機関へのガス燃料の燃料噴射時間を適切に補正することが困難となる。その結果、理論空燃比よりもガス燃料の割合が少ないリーン状態となり、ドライバビリティが低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる燃料供給制御装置及び内燃機関への燃料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、貯留容器内に貯留されるガス燃料を車載の内燃機関に噴射するための噴射弁と、前記貯留容器から前記噴射弁へのガス燃料の供給経路内の圧力を検出するための圧力センサとを備えた燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置であって、前記圧力センサからの検出信号に基づき、前記貯留容器内でのガス燃料の安定度を示す安定度情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された安定度情報に基づき前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記貯留容器内の温度が不安定であると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、前記貯留容器内の温度が安定していると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可する制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0012】
貯留容器から噴射弁へのガス燃料の供給経路内の圧力を検出するための圧力センサは、貯留容器内のガス燃料の残量を検出するために必須のセンサである。また、ガス燃料の温度変化量は、ガス燃料の圧力の変化量と比例関係にある。そこで、本発明では、圧力センサからの検出信号に基づいた安定度情報が、貯留容器内の温度の代わりとして取得される。こうして取得した安定度情報に基づき貯留容器内の温度、即ち貯留容器内に貯留されるガス燃料の温度が安定しているか否かが判定される。
【0013】
そして、ガス燃料を用いた内燃機関の駆動は、貯留容器内の温度が不安定であると判定された場合には禁止される一方、貯留容器内の温度が安定していると判定された場合には許可される。つまり、貯留容器内の温度が不安定である可能性がある場合には、貯留容器内に貯留されるガス燃料を内燃機関に供給することが禁止される。その一方で、ガス燃料が内燃機関に供給される場合とは、貯留容器内の温度が安定状態であることを示しており、この場合には、内燃機関に噴射される1サイクル当りのガス燃料の噴射量が適切に調整される。そのため、理論空燃比よりもガス燃料の割合が少ないリーン状態になる可能性を低くすることができ、ひいては内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の燃料供給制御装置において、前記制御手段は、前記内燃機関を始動させる場合に、前記判定手段による判定結果に基づき前記内燃機関へのガス燃料の供給の禁止又は許可することが好ましい。
【0015】
外部の設備から液体燃料(ガソリンや液化ガス燃料)を貯留容器内に充填させる場合、該貯留容器内で断熱圧縮が発生しないため、充填に伴う貯留容器内の温度上昇はほとんど発生しない。つまり、内燃機関を始動させようとする場合、貯留容器内の温度が不安定になっている可能性は低い。
【0016】
これに対し、ガス燃料を貯留容器内に充填させる場合、貯留容器内ではガス燃料の供給に伴う断熱圧縮により、貯留容器内の温度が急激に上昇する。すなわち、ガス燃料の充填時には、貯留容器内の温度が不安定になっている可能性が高い。そこで、本発明では、内燃機関を始動させる場合には、取得した安定度情報に基づき、貯留容器内の温度が安定しているか否かが判定される。そのため、内燃機関の始動開始時には、内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の燃料供給制御装置は、前記内燃機関の停止中にガス燃料が前記貯留容器内に充填されたことを検知する検知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記検知手段によって前記貯留容器へのガス燃料の充填が検知された場合において、前記内燃機関の駆動開始を求める開始指令が入力されてからの経過時間が時間基準値以下であるときには、前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、その後、前記経過時間が前記時間基準値を超えたときには、前記判定手段による判定結果に基づいて前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止又は許可することが好ましい。
【0018】
内燃機関の停止中に外部の設備から貯留容器内にガス燃料が充填された場合には、貯留容器内の温度が不安定になっている可能性が高い。そして、貯留容器内では、貯留容器へのガス燃料の充填が完了してからある程度の時間が経過するまでの間、ガス燃料の温度が高温で保持される。その後は、燃料供給機構の設置される雰囲気温度などの影響により、時間の経過するに連れてガス燃料の温度が徐々に低下する。ガス燃料の温度が低下し始めてからの温度の単位時間あたりの変化量は、時間の経過と共に次第に少なくなる。そして、ガス燃料の温度が上記雰囲気温度に近づいてくると、貯留容器内の温度が安定状態になる。
【0019】
そこで、本発明では、内燃機関の停止中に貯留容器内へのガス燃料の充填が検知された場合には、開始指令が入力されてからの経過時間が時間基準値以下である間、判定手段による判定結果に関係なく、内燃機関へのガス燃料の供給が禁止される。これは、上述したように、ガス燃料の充填直後においては、貯留容器内でガス燃料が高温で保持されるため、判定手段によって貯留容器内の温度が安定していると誤判定される可能性があるためである。そのため、時間基準値を、高温のガス燃料の温度の低下が開始されたと判断できる時間に相当する値に設定することにより、貯留容器内の温度が不安定である状態での内燃機関へのガス燃料の供給が抑制される。したがって、内燃機関の始動開始時には、内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明は、貯留容器内に貯留されるガス燃料を車載の内燃機関に噴射するための噴射弁を備えた燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置であって、前記内燃機関の停止中にガス燃料が前記貯留容器内に充填されたことを検知する検知手段と、前記検知手段によって前記貯留容器へのガス燃料の充填が検知された場合に、前記内燃機関の駆動開始を求める開始指令が入力されてからの経過時間を、前記貯留容器内でのガス燃料の安定度を示す安定度情報として取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された経過時間に基づき、前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記貯留容器内の温度が不安定であると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、前記貯留容器内の温度が安定していると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可する制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0021】
内燃機関の停止中に貯留容器にガス燃料が充填されたとしても、貯留容器内の温度は、時間が経過すると安定状態になる。そこで、本発明では、内燃機関の停止中に貯留容器にガス燃料が充填された場合には、開始指令が入力されてからの経過時間が貯留容器内の温度の代わりに安定度情報として取得され、該経過時間に基づき貯留容器内の温度、即ち貯留容器内に貯留されるガス燃料の温度が安定しているか否かが判定される。そして、経過時間が時間基準値以下である場合には、貯留容器内の温度が未だ不安定であると判定され、内燃機関へのガス燃料の供給が禁止される。その後、経過時間が時間基準値を超えた場合には、貯留容器内の温度が安定したと判定され、内燃機関へのガス燃料の供給が許可される。したがって、内燃機関へのガス燃料の供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0022】
本発明の燃料供給制御装置において、前記制御手段は、前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止する場合には、ガス燃料以外の他のエネルギを用いた車両の走行制御を行うことが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、内燃機関へのガス燃料の供給が禁止される場合には、ガス燃料以外の他のエネルギを用いた車両の走行制御が行われる。したがって、内燃機関へのガス燃料の供給が禁止される場合であっても、車両の運転手の意図に沿って車両を走行させることができる。
【0024】
本発明の燃料供給制御装置において、前記他のエネルギとは、前記内燃機関を駆動させることが可能なガス燃料の代替燃料であり、前記制御手段は、前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止する場合には、代替燃料を前記内燃機関に供給させるべく代替燃料用の他の燃料供給機構を制御することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、内燃機関へのガス燃料の供給が禁止される場合には、内燃機関に代替燃料を供給することにより、内燃機関を駆動させることができる。
本発明は、車両に搭載された内燃機関に、貯留容器に貯留されるガス燃料を供給させるための内燃機関への燃料供給方法において、ガス燃料を前記内燃機関に噴射する噴射弁に対して前記貯留容器内のガス燃料を供給するための供給経路内の圧力を検出させ、該圧力に基づき前記貯留容器内におけるガス燃料の安定度を示す安定度情報を取得させる取得ステップと、前記取得ステップで取得した安定度情報に基づき、前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定させる判定ステップと、前記判定ステップで前記貯留容器内の温度が不安定であると判定した場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止させ、前記貯留容器内の温度が安定していると判定した場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可させる制御ステップと、を有することを要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、上記燃料供給制御装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の燃料供給制御装置を備える燃料供給装置の第1の実施形態を示すブロック図。
【図2】CNGタンク内の温度(実測値)、タンク燃圧、タンク燃圧微分値及び各フラグが変化する様子を示すタイミングチャート。
【図3】第1の実施形態のCNG供給判断処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図4】第1の実施形態のCNG残量取得処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図5】第2の実施形態のCNG供給判断処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について、図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、車両に搭載される内燃機関10は、ガス燃料の一例としてのCNG(圧縮天然ガス)及びCNGの代替燃料であるガソリンを燃料として利用可能なバイフューエル内燃機関である。そして、図示しない吸気口から吸入された空気を内燃機関10内に導くための経路には、空気の流動方向における上流側から下流側に向けて順に、エアクリーナ(図示略)、スロットルバルブ11、サージタンク12などが設けられている。また、サージタンク12に流入した空気は、内燃機関10の各気筒13に個別対応する吸気マニホールド14に分流される。そして、吸気マニホールド14内では燃料供給装置20によって供給された燃料(CNG又はガソリン)と空気とを混合した混合燃料が生成され、該混合燃料が気筒13内に供給される。
【0029】
次に、燃料供給装置20について説明する。
燃料供給装置20は、ガソリンタンク31に貯留されるガソリンを内燃機関10の各気筒13に供給するためのガソリン供給系(他の燃料供給機構)30と、貯留容器の一例としてのCNGタンク41に高圧で貯留されるCNGを内燃機関10の各気筒13に供給するためのCNG供給系(燃料供給機構)40とを備えている。
【0030】
ガソリン供給系30には、ガソリンタンク31内からガソリンを吸引する燃料ポンプ32と、該燃料ポンプ32から吐出された燃料が圧送されるガソリン用デリバリパイプ33とが設けられている。このガソリン用デリバリパイプ33には、内燃機関10の各気筒13に個別対応する各吸気マニホールド14内にガソリンを噴射するための複数のガソリン用インジェクタ34が連結されている。これら各ガソリン用インジェクタ34は、燃料供給制御装置としてのECU50によって、対応する各吸気マニホールド14内へのガソリンの噴射タイミング及び噴射時間(即ち、ガソリンの噴射量)が個別に調整される。
【0031】
CNG供給系40には、CNGタンク41に接続される高圧燃料配管(供給経路)42と、該高圧燃料配管42の下流端(図1では右端)に接続されるCNG用デリバリパイプ43とが設けられている。CNGタンク41と高圧燃料配管42との間には、ECU50によって開閉動作される常閉型の電磁弁を備えた元弁44が設けられている。この元弁44が閉弁状態である場合、CNGタンク41内は密閉状態となる。
【0032】
また、高圧燃料配管42において元弁44よりも下流側(図1では右側)には、高圧燃料配管42内の圧力を検出するための第1圧力センサ(圧力センサ)SE1と、ECU50によって開閉動作される遮断弁45とが設けられている。元弁44が開弁状態である場合、高圧燃料配管42内はCNGタンク41内と連通するため、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づき検出された圧力は、CNGタンク41内の圧力とほぼ一致する。また、元弁44及び遮断弁45が開弁状態である場合には、CNGタンク41内のCNGが高圧燃料配管42を介してCNG用デリバリパイプ43に供給される。一方、遮断弁45が閉弁状態になった場合には、CNG用デリバリパイプ43にCNGが供給されなくなる。
【0033】
また、高圧燃料配管42において遮断弁45よりも下流側には、CNGタンク41(即ち、上流側)から供給されるCNGの圧力、即ち燃圧を減圧させるためのレギュレータ46が設けられている。このレギュレータ46は、規定の燃圧のCNGがCNG用デリバリパイプ43に供給されるように作動する。
【0034】
CNG用デリバリパイプ43には、内燃機関10の各気筒13に個別対応する各吸気マニホールド14内にCNGを噴射するための複数のCNG用インジェクタ(噴射弁)47が連結されている。また、CNG用デリバリパイプ43には、該CNG用デリバリパイプ43内の圧力を検出するための第2圧力センサSE2が設けられている。そして、各CNG用インジェクタ47は、第2圧力センサSE2からの検出信号が入力されるECU50によって、対応する各吸気マニホールド14内へのCNGの噴射タイミング及び噴射時間(即ち、CNGの噴射量)が個別に制御される。
【0035】
次に、本実施形態の燃料供給装置20を制御するECU50について説明する。
ECU50は、CPU51、ROM52、RAM53及び不揮発性メモリ(記憶手段)54で構成されるデジタルコンピュータを備えている。ROM52には、CPU51が実行する各種制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM53には、車両の図示しないイグニッションスイッチがオンである間、適宜書き換えられる情報が一時記憶される。さらに、不揮発性メモリ54には、上記イグニッションスイッチがオフになっても消去されるべきではない各種の情報などが記憶される。
【0036】
ところで、本実施形態の燃料供給装置20は、基本的にはCNGを内燃機関10に供給するようになっている。しかし、CNGタンク41内の温度が一定値(例えば、CNGタンク41の設置環境の雰囲気温度)近傍に落ち着かない場合、即ちCNGタンク41内の温度が不安定な場合には、CNGを用いて内燃機関10を駆動させると、理論空燃比よりもCNGの割合が少ないリーン状態となり、ドライバビリティが低下してしまう。これは、本実施形態のCNG供給系40にはCNGタンク41からCNG用インジェクタ47へのCNGの供給経路上に温度センサを設けていないため、CNGの温度によってCNGの噴射量を調整できないためである。そのため、CNGの代替燃料としてガソリンを貯留するバイフューエル内燃機関を搭載する車両においては、CNGタンク41内の温度が不安定であると判定された場合には、CNGの代わりにガソリンを用いて内燃機関10を駆動させることが好ましい。
【0037】
なお、CNGタンク41内の温度が不安定になる場合としては、例えば、外部の設備からCNGタンク41内にCNGを充填させた場合が挙げられる。外部の設備からは、高圧のCNGがCNGタンク41内に充填される。その結果、CNGタンク41内ではCNGの充填に伴う断熱圧縮が発生し、CNGタンク41内の温度が急激に上昇する。そのため、CNGタンク41内の温度が不安定となる。
【0038】
そこで次に、内燃機関10の停止中にCNGがCNGタンク41内に充填された後に内燃機関10を駆動させる場合の作用の一例について、図2に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0039】
図2に示すように、第1のタイミングt1で上記イグニッションスイッチがオンからオフになると、内燃機関10の駆動が停止される。そして、その後の内燃機関10の停止中の第2のタイミングt2でCNGタンク41内にCNGが外部の設備から充填されると、CNGタンク41内の圧力が急激に上昇し、CNGタンク41内の温度が不安定になる。この状態では、元弁44が閉弁状態であるため、CNGタンク41内の温度は、CNGタンク41内の圧力の急激な上昇に対応して高温になる。
【0040】
CNGの充填が完了した後の第3のタイミングt3でイグニッションスイッチがオンになると、元弁44が開弁状態となる。すると、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づき高圧燃料配管42においてレギュレータ46よりもCNGタンク41側の圧力が検出される。この圧力は、元弁44が開弁状態であるため、CNGタンク41内の圧力、即ちタンク燃圧Ptと見なしてもよい。そして、このようにして取得されたタンク燃圧Ptと、前回のイグニッションスイッチがオフになった時点のタンク燃圧(以下、「前回タンク燃圧」ともいう。)との比較に基づき、内燃機関10の停止中にCNGの充填が行われたことが検知される。
【0041】
このように内燃機関10の停止中にガス燃料が充填されたことが検知された場合には、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される。その結果、内燃機関10は、該内燃機関10が備える各気筒13内にガソリンが供給されることにより駆動する。このようにCNGの内燃機関10への供給が禁止される期間では、遮断弁45が閉弁状態となり、高圧燃料配管42側からCNG用デリバリパイプ43にCNGが供給されない。
【0042】
また、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される間、即ちCNGが消費されない間では、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づき取得されるタンク燃圧Ptの変動度合は、CNGタンク41内の温度の変化度合とほぼ比例する。つまり、タンク燃圧Ptの単位時間あたりの変化量を示すタンク燃圧微分値(安定度情報)DPtを監視することにより、CNGタンク41内の温度が安定しているか否かの判定が可能となる。
【0043】
しかし、CNGタンク41内へのCNGの充填直後においては、図2から明らかなように、CNGタンク41内の温度は、ほとんど変化せず、高温で保持される。この場合、タンク燃圧Ptは高圧で保持される。そのため、内燃機関10の駆動開始直後からタンク燃圧微分値DPtに基づきCNGタンク41内の温度が安定したか否かを判定したとすると、CNGタンク41内の温度が未だ不安定であるにも拘わらず、CNGタンク41内の温度が安定したと誤判定される可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、内燃機関10の駆動が開始された第3のタイミングt3から時間基準値T1thに相当する時間が経過するまでは、タンク燃圧微分値DPtを取得することなく、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される。そして、第3のタイミングt3から時間基準値T1thに相当する時間が経過した第4のタイミングt4以降では、タンク燃圧微分値DPtが取得され、該タンク燃圧微分値DPtに基づきCNGタンク41内の温度が安定しているか否かが判定される。具体的には、タンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth未満であるか否かが判定される。
【0045】
そして、タンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth以上である第5のタイミングt5では、CNGタンク41内の温度が未だ不安定であると判定される。そのため、内燃機関10に供給される燃料のガソリンからCNGへの切り替えが禁止される。
【0046】
しかし、タンク燃圧微分値DPtは、時間が経過するに連れて徐々に小さくなる。これは、CNGタンク41内の温度がCNGタンク41の設置雰囲気の温度に徐々に近づいていくためである。そして、タンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth未満となる第6のタイミングt6が経過すると、CNGタンク41内の温度が安定していると判定される。すると、内燃機関10に供給される燃料のガソリンからCNGへの切り替えが許可される。その後、CNGを内燃機関10に供給するための他の条件(例えば、アイドリング中であること)が成立すると、内燃機関10に供給される燃料がガソリンからCNGに切り替えられる。
【0047】
次に、本実施形態のECU50が実行する各種制御処理ルーチンのうち、上記作用を得る際に実行される処理ルーチンについて、図3及び図4に示すフローチャートと、図2に示すタイミングチャートとを参照して説明する。なお、図3は内燃機関10へのCNGの供給を禁止又は許可するためのCNG供給判断処理ルーチンを説明するフローチャートであり、図4はCNGの残量を取得するためのCNG残量取得処理ルーチンを説明するフローチャートである。
【0048】
まず始めに、CNG供給判断処理ルーチンについて、図3に示すフローチャートと図2に示すタイミングチャートとを参照して説明する。
さて、CNG供給判断処理ルーチンは、内燃機関10の駆動開始を求める開始指令がECU50に入力されたことを契機に、即ち上記イグニッションスイッチがオフからオンになったタイミングで開始される。そして、CNG供給判断処理ルーチンにおいて、ECU50は、CNGタンク41内のCNGを高圧燃料配管42内に流出させるべく元弁44を開弁状態にする(ステップS10)。続いて、ECU50は、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づきタンク燃圧Ptを取得する(ステップS11)。このステップS11は、元弁44が完全に開弁状態になるのを待ってから実行させることが好ましい。CNGタンク41内の圧力は、CNGタンク41内に貯留されるCNGの残量に応じた値となる。つまり、ステップS11で取得されたタンク燃圧Ptは、CNGタンク41内に貯留されるCNGの残量に相当する残量相当値に相当する。
【0049】
そして、ECU50は、ステップS11で取得したタンク燃圧Ptを用いて、内燃機関10の停止中にCNGがCNGタンク41に充填されたか否かを判定する(ステップS12)。詳しくは後述するが、不揮発性メモリ54には、前回にイグニッションスイッチがオフになった際におけるタンク燃圧である前回タンク燃圧が記憶されている。そこで、ECU50は、不揮発性メモリ54から読み出した前回タンク燃圧と、ステップS11で取得した最新のタンク燃圧Ptとを比較し、該比較結果からCNGが充填されたか否かを判定する。例えば、図2に示すように、ECU50は、最新のタンク燃圧Ptから前回タンク燃圧を減算した減算値ΔPtが、CNGが充填されたか否かの判断基準として設定された充填判断値Ptth以上であるか否かを判定する。そして、ECU50は、減算値ΔPtが充填判断値Ptth未満である場合にはCNGが充填されていないと判定し、減算値ΔPtが充填判断値Ptth以上である場合にはCNGが充填されたと判定する。したがって、本実施形態では、ECU50が、内燃機関10の停止中にCNGがCNGタンク41内に充填されたことを検知する検知手段として機能する。
【0050】
図3のフローチャートに戻り、CNGがCNGタンク41内に充填されたと判定した場合(ステップS12:YES)、ECU50は、上記イグニッションスイッチがオンになってからの経過時間T1が予め設定された時間基準値T1thを超えたか否かを判定する(ステップS13)。上述したように、CNGタンク41内にCNGが充填された直後においてはCNGタンク41内の温度が高温で保持され、ある程度の時間が経過した後ではCNGタンク41内の温度が徐々に低下していく(図2参照)。そこで、本実施形態では、時間基準値T1thは、CNGタンク41内へのCNG充填後においてCNGタンク41内の温度低下が開始されるようになってからステップS13の判定結果がYES(肯定)となるように、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0051】
経過時間T1が時間基準値T1th以下である場合(ステップS13:NO)、ECU50は、経過フラグFLG1をオフにセットし(ステップS14)、その処理を前述したステップS13に移行する。経過フラグFLG1がオンであるかオフであるかは、不揮発性メモリ54に記憶される。一方、経過時間T1が時間基準値T1thを超えた場合(ステップS13:YES)、ECU50は、経過フラグFLG1をオンにセットし(ステップS15)、その処理を次のステップS16に移行する。
【0052】
ステップS16において、ECU50は、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づきタンク燃圧Ptを取得する。続いて、ECU50は、ステップS16で取得したタンク燃圧Ptを時間微分したタンク燃圧微分値DPtを、CNGタンク41内でのCNGの安定度を示す安定度情報として取得する(ステップS17)。したがって、本実施形態では、ECU50が、取得手段としても機能する。また、ステップS17が、取得ステップに相当する。
【0053】
そして、ECU50は、ステップS17で取得したタンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth未満であるか否かを判定する(ステップS18)。この判断基準値DPtthは、CNGタンク41内の温度が安定しているか否かの判断基準として設定された基準値である。したがって、本実施形態では、ECU50が、ステップS17で取得したタンク燃圧微分値DPtに基づきCNGタンク41内の温度が安定しているか否かを判定する判定手段としても機能する。また、ステップS18が、判定ステップに相当する。
【0054】
タンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth以上である場合(ステップS18:NO)、ECU50は、CNGタンク41内の温度が不安定であると判断し、内燃機関10へのCNGの供給を禁止すべく安定フラグFLG2をオフにセットし(ステップS19)、その処理を前述したステップS16に移行する。一方、タンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth未満である場合(ステップS18:YES)、ECU50は、CNGタンク41内の温度が安定したと判断し、内燃機関10へのCNGの供給を許可すべく安定フラグFLG2をオンにセットする(ステップS20)。なお、安定フラグFLG2がオンであるかオフであるかは、不揮発性メモリ54に記憶される。
【0055】
そして、ECU50は、内燃機関10に供給する燃料のガソリンからCNGへの切り替えを許可し(ステップS21)、CNG供給判断処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ECU50が、CNGタンク41内の温度が不安定であると判定された場合には内燃機関10へのCNGの供給を禁止し、CNGタンク41内の温度が安定していると判定された場合には内燃機関10へのCNGの供給を許可する制御手段としても機能する。また、ステップS19,S20,S21により、制御ステップが構成される。
【0056】
その一方で、内燃機関10の停止中にCNGタンク41内へのCNGの充填が行われていないと判定された場合(ステップS12:NO)、ECU50は、経過フラグFLG1がオンであるか否かを判定する(ステップS22)。経過フラグFLG1がオフである場合(ステップS22:NO)、ECU50は、その処理を前述したステップS13に移行する。一方、経過フラグFLG1がオンである場合(ステップS22:YES)、ECU50は、安定フラグFLG2がオンであるか否かを判定する(ステップS23)。安定フラグFLG2がオフである場合(ステップS23:NO)、ECU50は、その処理を前述したステップS16に移行する。一方、安定フラグFLG2がオンである場合(ステップS23:YES)、ECU50は、その処理を前述したステップS21に移行する。つまり、上記イグニッションスイッチがオンになった場合において各フラグFLG1,FLG2が共にオンである場合、内燃機関10には、ガソリンが供給されることなく、最初からCNGが供給されることもあり得る。
【0057】
次に、CNG残量取得処理ルーチンについて、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、CNG残量取得処理ルーチンは、上記イグニッションスイッチがオンになると実行される処理ルーチンである。そして、CNG残量取得処理ルーチンにおいて、ECU50は、内燃機関10にCNGが供給中であるか否かを判定する(ステップS30)。ガソリンが供給中である場合(ステップS30:NO)、ECU50は、CNGが供給されるようになるまでステップS30の判定処理を繰り返し実行する。
【0058】
一方、CNGが供給中である場合(ステップS30:YES)、ECU50は、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づきタンク燃圧Ptを取得する(ステップS31)。そして、ECU50は、ステップS31で取得したタンク燃圧Ptに基づきCNGタンク41内におけるCNGの残量を算出し、該算出結果を車両の運転手が視認できるように表示させるCNG残量表示処理を行う(ステップS32)。
【0059】
続いて、ECU50は、上記イグニッションスイッチがオフになったか否かを判定する(ステップS33)。上記イグニッションスイッチがオンである場合(ステップS33:NO)、ECU50は、その処理を前述したステップS30に移行する。一方、上記イグニッションスイッチがオフになった場合(ステップS33:YES)、ECU50は、ステップS31で取得したタンク燃圧Ptを前回タンク燃圧として不揮発性メモリ54に記憶させる(ステップS34)。その後、ECU50は、CNG残量取得処理ルーチンを終了する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)CNGタンク41のタンク燃圧Ptに基づきCNGタンク41内の温度、即ちCNGタンク41内に貯留されるCNGの温度が安定しているか否かが判定される。そして、CNGを用いた内燃機関10の駆動は、CNGタンク41内の温度が不安定であると判定された場合には禁止される一方、CNGタンク41内の温度が安定していると判定された場合には許可される。そのため、CNGが内燃機関10に供給される場合とは、CNGタンク41内の温度が安定状態であることを示している。その結果、内燃機関10に噴射される1サイクル当りのCNGの噴射量が適切に調整され、理論空燃比よりもCNGの割合が少ないリーン状態になる可能性を低くすることができる。したがって、CNGタンク41内の温度が不安定であると判定された場合にはCNGが内燃機関10に供給されない分、内燃機関10へのCNGの供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0061】
(2)第1圧力センサSE1は、CNGタンク41内のCNGの残量を検出するために必須のセンサである。また、CNGタンク41内でCNGの流入出がない場合、CNGタンク41内の温度変化量は、タンク燃圧Ptの変化量、即ちタンク燃圧微分値DPtと比例関係にある。そこで、本実施形態では、第1圧力センサSE1からの検出信号に基づいたタンク燃圧微分値DPtが安定度情報として取得される。そして、このタンク燃圧微分値DPtを用いて、CNGタンク41内の温度が安定しているか否かが判定される。そのため、安定度情報を取得するための専用のセンサ(例えば、CNGタンク41内の温度を検出するためのセンサ)を第1圧力センサSE1とは別途設ける場合と比較して、CNG供給系40の部品点数の増加を抑制することができる。また、バイフューエル内燃機関を備えた車両においては、CNGタンク41内の温度を検出するための温度センサを設けなくても、CNGタンク41内の温度の不安定さに起因した車両のドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0062】
(3)液体燃料(ガソリンや液化ガス燃料)を貯留容器内に充填させる場合には、該貯留容器内で断熱圧縮が発生しないため、充填に伴う貯留容器内の温度上昇はほとんど発生しない。つまり、内燃機関10を始動させようとする場合、貯留容器内の温度が不安定になっている可能性は低い。これに対し、外部の設備からCNGをCNGタンク41内に充填させると、該CNGタンク41内の温度が急激に上昇する。すなわち、CNGの充填時には、CNGタンク41内の温度が不安定になっている可能性が高い。そこで、本実施形態では、内燃機関10を始動させる場合には、CNGタンク41内の温度が安定しているか否かが判定される。そのため、内燃機関10の始動開始時には、内燃機関10へのCNGの供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0063】
(4)内燃機関10の停止中にCNGがCNGタンク41内に充填された場合には、イグニッションスイッチがオンになってからの経過時間T1が時間基準値T1th以下である間、タンク燃圧微分値DPtの大きさに関係なく、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される。これは、上述したように、CNGの充填直後においては、CNGタンク41内の温度が高温で保持されるため、CNGタンク41内の温度が安定していると誤判定される可能性があるためである。そこで、本実施形態では、時間基準値T1thを、高温のCNGの温度の低下が開始されたと判断できる時間に相当する値に設定した。これにより、内部の温度が不安定であるCNGタンク41からCNGが内燃機関10に供給される可能性を低減させることができる。したがって、内燃機関10の始動開始時には、内燃機関10へのCNGの供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0064】
(5)また、もし仮に上記ステップS13の判定処理を省略したとすると、イグニッションスイッチがオンになった時点で、内燃機関10にはCNGが供給される。そして、その後にタンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth以上になったことを契機に、内燃機関10に供給される燃料がCNGからガソリンに切り替えられる。また、その後にタンク燃圧微分値DPtが判断基準値DPtth未満になると、内燃機関10に供給される燃料がCNGからガソリンに切り替えられる。つまり、上記ステップS13の判定処理を省略すると、内燃機関10に供給される燃料が頻繁に切り替えられる。この点、本実施形態では、上記ステップS13の判定処理を行うことにより、内燃機関10に供給される燃料が頻繁に切り替えられることを抑制することができる。
【0065】
(6)本実施形態では、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される場合には、CNG以外の他のエネルギを用いた車両の走行制御が行われる。したがって、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される場合であっても、車両の運転手の意図に沿って車両を走行させることができる。
【0066】
(7)より詳しくは、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される場合には、内燃機関10にガソリンを供給することにより、内燃機関10を駆動させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5に従って説明する。なお、第2の実施形態は、安定度情報として取得するパラメータが第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0067】
本実施形態のECU50がCNG供給判断処理ルーチンについて、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、CNG供給判断処理ルーチンは、上記イグニッションスイッチがオフからオンになったタイミングで開始される。そして、CNG供給判断処理ルーチンにおいて、ECU50は、上記ステップS10,S11,S12と同等の各処理を順次行う。そして、内燃機関10の停止中にCNGタンク41内にCNGが充填されたと判定された場合(ステップS12:YES)、ECU50は、上記イグニッションスイッチがオンになってからの経過時間T2を安定度情報として取得し、該経過時間T2が時間基準値T2thを超えたか否かを判定する(ステップS13−1)。この点で、本実施形態では、ECU50が、取得手段及び判定手段としても機能する。
【0068】
CNGの充填によってCNGタンク41内の温度が高温となったとしても、CNGタンク41内の温度は、時間の経過と共に低下し、一定値(雰囲気温度に相当する値)近傍で安定する。そこで、本実施形態では、時間基準値T2thは、CNGタンク41内のCNGが安定状態であるか否かの判定基準として設定されている。つまり、本実施形態の時間基準値T2thは、上記第1の実施形態での時間基準値T1thと比較して大きな値に設定される。
【0069】
そして、経過時間T2が時間基準値T2th以下である場合(ステップS13−1:NO)、ECU50は、CNGタンク41内の温度が不安定である可能性があると判定し、上記ステップS14と同等の処理を行う。一方、経過時間T2が時間基準値T2thを超えた場合(ステップS13−1:YES)、ECU50は、CNGタンク41内の温度が安定していると判定し、上記ステップS15,S21と同等の各処理を順次行い、CNG供給判断処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ECU50が、制御手段としても機能する。
【0070】
その一方で、内燃機関10の停止中にCNGタンク41内へのCNGの充填が行われていないと判定された場合(ステップS12:NO)、ECU50は、上記ステップS22と同等の判定処理を行う。そして、ECU50は、経過フラグFLG1がオフである場合(ステップS22:NO)にはその処理をステップS13−1に移行し、経過フラグFLG1がオンである場合(ステップS22:YES)にはその処理をステップS21に移行する。
【0071】
本実施形態では、内燃機関10の停止中にCNGがCNGタンク41内に充填された場合、上記イグニッションスイッチがオンされてからの経過時間T2が取得される。そして、この経過時間T2が時間基準値T2th以下である場合には、CNGタンク41内の温度が未だ不安定であると判定され、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される。つまり、内燃機関10にはガソリンが供給される。そして、経過時間T2が時間基準値T2thを超えると、CNGタンク41内の温度が安定状態になる。その結果、内燃機関10に供給される燃料のガソリンからCNGへの切り替えが許可される。その後、CNGを内燃機関10に供給するための他の条件(例えば、アイドリング中であること)が成立すると、内燃機関10に供給される燃料がガソリンからCNGに切り替えられる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、上記第1の実施形態における効果(3)(6)(7)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(8)本実施形態では、内燃機関10の停止中にCNGタンク41にガス燃料が充填された場合には、経過時間T2が取得される。そして、この経過時間T2が時間基準値T2th以下である場合には、CNGタンク41内の温度が未だ不安定であると判定され、内燃機関10へのCNGの供給が禁止される。その後、経過時間T2が時間基準値T2thを超えた場合には、CNGタンク41内の温度が安定していると判定され、内燃機関10へのCNGの供給が許可される。したがって、内燃機関10へのCNGの供給に伴うドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0073】
(9)本実施形態では、第1圧力センサSE1を用いることなく、内燃機関10へのCNG供給を許可するタイミングを設定することができる。
なお、上記各実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0074】
・各実施形態において、内燃機関10の停止中にCNGの充填が行われたか否かを、第1圧力センサSE1を用いないで検知するようにしてもよい。例えば、外部の設備からCNG供給用の配管が車両に接続されたか否かを検知するためのスイッチを設け、該スイッチからの検出信号に基づきCNGが充填されたか否かを判定するようにしてもよい。このように構成すると、イグニッションスイッチがオフになった際に、その時点のタンク燃圧Ptを不揮発性メモリ54に記憶させなくてもよい。
【0075】
・CNGの充填によるCNGタンク41内の温度の急激な上昇後においては、CNGタンク41の設置環境の雰囲気温度が低温であるほど、CNGタンク41内の温度低下の開始タイミングが早くなると考えられる。そこで、各実施形態では、CNGタンク41の設置環境の雰囲気温度が低温である場合には高温である場合よりも、時間基準値T1th,T2thを短い時間に設定してもよい。
【0076】
・CNGの充填量が多いほど充填直後のCNGタンク41内の温度が高温になっていると考えられる。そこで、各実施形態では、CNGの充填量が多い場合には少ない場合よりも、時間基準値T1th,T2thを長い時間に設定してもよい。
【0077】
・各実施形態において、時間基準値T1th,T2thを、予め設定された一定値としてもよい。
・第1の実施形態において、内燃機関10の停止中にCNGの充填が行われた時刻を取得可能である場合には、CNGの充填終了後からの経過時間(「充填後経過時間」ともいう。)を取得し、ステップS13では、該充填後経過時間が時間基準値T1thを超えたか否かを判定するようにしてもよい。
【0078】
・また、第1の実施形態において、CNGの充填量に応じて判断基準値DPtthの大きさを変更してもよい。
・各実施形態において、ステップS22の判定処理を省略してもよい。また、第1の実施形態では、ステップS22だけではなく、ステップS23の判定処理を省略してもよい。
【0079】
・第1の実施形態において、内燃機関10の停止中にCNGの充填が行われなかった場合(ステップS12:NO)には、各フラグFLG1,FLG2のオン・オフに関係なく、ステップS16の処理を行うようにしてもよい。
【0080】
・各実施形態において、CNG供給系40は、複数のCNGタンク41を備えた構成であってもよい。
・各実施形態において、ガス燃料は、CNG以外の他のガス燃料(水素ガスなど)であってもよい。そして、代替燃料としては、ガス燃料が供給される内燃機関で燃焼可能な燃料であることが好ましい。例えば、ガス燃料が水素ガスである場合、代替燃料としてはガソリンが挙げられる。また、ガス燃料がジメチルエーテル(DME)である場合、代替燃料としては軽油が挙げられる。
【0081】
・本発明の燃料供給制御装置を搭載した車両を、駆動源として内燃機関10とモータとを備えたハイブリッド車両に具体化してもよい。この場合、ガス燃料の他のエネルギは、ガソリンに代表される代替燃料の代わりに、車両に搭載されるバッテリに蓄電される電力となる。そして、内燃機関10へのガス燃料の供給が禁止される間は、バッテリの電力を車載のモータに供給し、該モータの駆動によって車両を走行させるようにしてもよい。
【0082】
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記内燃機関の駆動が停止された時点での前記貯留容器内のガス燃料の残量に相当する残量相当値が記憶される記憶手段をさらに有し、
前記検知手段は、前記記憶手段に記憶される残量相当値と、前記内燃機関の始動開始を求める開始指令が入力された時点での前記貯留容器内のガス燃料の残量相当値との比較に基づき、前記貯留容器へのガス燃料の充填を検知することを特徴とする燃料供給制御装置。
【0083】
(ロ)安定度情報は、ガス燃料の圧力値の単位時間あたりの変化量であり、
前記判定手段は、
前記取得手段によって取得された圧力値の単位時間あたりの変化量が、前記貯留容器内の温度が安定状態であるか否かの判断基準として設定された基準値以下である場合には前記貯留容器内の温度が安定していると判定し、
圧力値の単位時間あたりの変化量が前記基準値を超える場合には前記貯留容器内の温度が不安定であると判定することを特徴とする燃料供給制御装置。
【0084】
(ハ)貯留容器内に貯留されるガス燃料を車載の内燃機関に供給するための燃料供給機構と、該燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置とを備えた燃料供給装置であって、
前記燃料供給機構は、前記貯留容器内に貯留されるガス燃料を前記内燃機関に噴射するための噴射弁と、前記貯留容器から前記噴射弁へのガス燃料の供給経路内の圧力を検出するための圧力センサとを備え、
前記燃料供給制御装置は、
前記圧力センサからの検出信号に基づき前記貯留容器内でのガス燃料の安定度を示す安定度情報を取得し、
該取得した安定度情報に基づき前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定し、
前記貯留容器内の温度が不安定であると判定した場合には、前記燃料供給機構による前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、
前記貯留容器内の温度が安定していると判定した場合には、前記燃料供給機構による前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可することを特徴とする燃料供給装置。
【符号の説明】
【0085】
10…内燃機関、30…他の燃料供給機構の一例としてのガソリン供給系、40…燃料供給機構の一例としてのCNG供給系、41…燃料容器の一例としてのCNGタンク、42…供給経路を構成する高圧燃料配管、47…噴射弁の一例としてのCNG用インジェクタ、50…燃料供給制御装置の一例としてのECU(取得手段、判定手段、制御手段、検知手段)、54…記憶手段の一例としての不揮発性メモリ、DPt…安定度情報の一例としてのタンク燃圧微分値、DPtth…基準値の一例としての判断基準値、Pt…残量相当値の一例としてのタンク燃圧、SE1…圧力センサの一例としての第1圧力センサ、T1…経過時間、T2…安定度情報の一例としての経過時間、T1th,T2th…時間基準値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留容器内に貯留されるガス燃料を車載の内燃機関に噴射するための噴射弁と、前記貯留容器から前記噴射弁へのガス燃料の供給経路内の圧力を検出するための圧力センサとを備えた燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置であって、
前記圧力センサからの検出信号に基づき、前記貯留容器内でのガス燃料の安定度を示す安定度情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された安定度情報に基づき前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記貯留容器内の温度が不安定であると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、前記貯留容器内の温度が安定していると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可する制御手段と、を備えることを特徴とする燃料供給制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記内燃機関を始動させる場合に、前記判定手段による判定結果に基づき前記内燃機関へのガス燃料の供給の禁止又は許可することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関の停止中にガス燃料が前記貯留容器内に充填されたことを検知する検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記検知手段によって前記貯留容器へのガス燃料の充填が検知された場合において、前記内燃機関の駆動開始を求める開始指令が入力されてからの経過時間が時間基準値以下であるときには、前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、
その後、前記経過時間が前記時間基準値を超えたときには、前記判定手段による判定結果に基づいて前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止又は許可することを特徴とする請求項2に記載の燃料供給制御装置。
【請求項4】
貯留容器内に貯留されるガス燃料を車載の内燃機関に噴射するための噴射弁を備えた燃料供給機構を制御する燃料供給制御装置であって、
前記内燃機関の停止中にガス燃料が前記貯留容器内に充填されたことを検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記貯留容器へのガス燃料の充填が検知された場合に、前記内燃機関の駆動開始を求める開始指令が入力されてからの経過時間を、前記貯留容器内でのガス燃料の安定度を示す安定度情報として取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された経過時間に基づき、前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記貯留容器内の温度が不安定であると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止し、前記貯留容器内の温度が安定していると判定された場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可する制御手段と、を備えることを特徴とする燃料供給制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止する場合には、ガス燃料以外の他のエネルギを用いた車両の走行制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の燃料供給制御装置。
【請求項6】
前記他のエネルギとは、前記内燃機関を駆動させることが可能なガス燃料の代替燃料であり、
前記制御手段は、
前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止する場合には、代替燃料を前記内燃機関に供給させるべく代替燃料用の他の燃料供給機構を制御することを特徴とする請求項5に記載の燃料供給制御装置。
【請求項7】
車両に搭載された内燃機関に、貯留容器に貯留されるガス燃料を供給させるための内燃機関への燃料供給方法において、
ガス燃料を前記内燃機関に噴射する噴射弁に対して前記貯留容器内のガス燃料を供給するための供給経路内の圧力を検出させ、該圧力に基づき前記貯留容器内におけるガス燃料の安定度を示す安定度情報を取得させる取得ステップと、
前記取得ステップで取得した安定度情報に基づき、前記貯留容器内の温度が安定しているか否かを判定させる判定ステップと、
前記判定ステップで前記貯留容器内の温度が不安定であると判定した場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を禁止させ、前記貯留容器内の温度が安定していると判定した場合には前記内燃機関へのガス燃料の供給を許可させる制御ステップと、を有することを特徴とする内燃機関への燃料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−251443(P2012−251443A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122822(P2011−122822)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】