説明

燃料供給装置のバルブユニット

【課題】エンジンの燃料供給装置における、より磨耗が少なく新しいバルブユニットを提供すること。
【解決手段】本発明は、凹部(14)内で定圧安全弁(15)を受容する鋼製の本体(11)を有するエンジンの燃料供給装置のバルブユニット(23)に関する。このとき、前記定圧安全弁(15)は、ばね要素(19)が衝突する作動要素(20)を有しており、前記作動要素は、前記定圧安全弁(15)のボールバルブ(21)を、前記定圧安全弁(15)のバルブシート(24)に対して押圧する。前記定圧安全弁の前記バルブシート(24)は、鋼製の単独のカートリッジ(25)から形成されており、前記単独のカートリッジ(25)における鋼の焼戻し温度は、前記本体(11)の鋼の焼戻し温度よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1もしくは請求項6もしくは請求項9のおいて書き部分に記載されたエンジンにおける燃料供給装置のバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、特に重油で駆動される船舶用ディーゼルエンジンのシリンダは、燃料を自由に使用できないといけないので、燃料供給装置が用いられる。エンジンの燃料供給装置は、エンジンのシリンダに配設された噴射弁とも称されるインジェクタを備えており、燃料は、当該インジェクタを用いてシリンダ内に噴射され得る。エンジンの燃料供給装置は、エンジンのシリンダ内に噴射される燃料をインジェクタの方向に送るために、インジェクタに加えて、少なくとも1つの燃料ポンプを備えている。
【0003】
燃料供給装置のインジェクタと燃料供給装置の燃料ポンプとの間には、図1に示された、先行技術から知られているバルブユニット10が位置している。図1に示したバルブユニット10は、すでに言及したように、燃料供給装置の燃料ポンプとインジェクタとの間に位置しており、鋼から成る本体11を備えている。このとき、本体11の第1の凹部12内には、燃料送出弁13が位置しており、本体11の第2の凹部14内には、定圧安全弁15が位置している。本体11の第1の連結領域16には、図示されていない燃料ポンプが連結可能であり、本体11の第2の連結領域17には、やはり図示されていない燃料噴射弁もしくはインジェクタが連結可能である。
【0004】
定圧安全弁15は、バルブユニット10の、燃料噴射弁もしくはインジェクタに接続される燃料ライン18における燃料の最低圧力を維持するために用いられる。
【0005】
図1に示した先行技術によれば、バルブユニット10の定圧安全弁15は、ばね要素19が衝突する作動要素20を有しており、作動要素20は、定圧安全弁15のボールバルブ21を、バルブユニット10の本体11によって供給されるバルブシート22に対して押圧する。
【0006】
図1に示された、先行技術から知られたバルブユニット10の場合、本体11は鋼で形成されている。定圧安全弁15のボールバルブ21もやはり、鋼で形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の点に鑑み、本発明の課題は、エンジンの燃料供給装置における、より磨耗が少なく新しいバルブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、本課題は、請求項1に記載のバルブユニットによって解決される。当該態様では、定圧安全弁のバルブシートは、鋼による単独のカートリッジから構成されている。このとき、単独のカートリッジにおける鋼の焼戻し温度は、本体の鋼の焼戻し温度よりも高い。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、本課題は、請求項6に記載のバルブユニットによって解決される。当該態様では、バルブシートの粗さRaは、0.8よりも小さい。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、本課題は、請求項9に記載のバルブユニットによって解決される。当該態様では、ボールバルブは、鋼よりも強度が大きく、鋼よりも比重の小さい材料から形成されている。
【0011】
本発明の全部で3つの態様を、単独で、2つの態様を任意に組み合わせて、又は、3つ全ての態様を組み合わせて、バルブユニットに適用することによって、当該バルブユニットの磨耗を先行技術に比して明らかに減少させることができる。これによって、バルブユニットの寿命を延長し、それに伴い、燃料供給装置の保全間隔を延長することが可能となる。さらに、先行技術に基づいて構成されたバルブユニットを、修理の際に、本発明に係るバルブユニットに改造することができる。
【0012】
本発明のさらなる構成は、従属請求項及び以下の明細書部分から明らかとなる。本発明の実施例については、以下に図を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンの燃料供給装置における、先行技術から知られたバルブユニットを示す図である。
【図2】エンジンの燃料供給装置における、本発明に係るバルブユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、エンジン、特に重油で駆動される船舶用ディーゼルエンジンの燃料供給装置における、本発明に係るバルブユニット23を示している。不必要な重複を避けるために、図2の本発明に係るバルブユニット23について、図1の先行技術から知られたバルブユニット10と同じアセンブリには同じ参照符号を用いることとする。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1の態様によると、定圧安全弁15のボールバルブ21のためのバルブシート24は、本体11と同様に鋼で形成された単独のカートリッジ25によって供給される。単独のカートリッジ25における鋼のいわゆる焼戻し温度は、本体11の鋼の焼戻し温度よりも高い。焼戻し温度とは、熱処理の温度であり、当該熱処理において、本体11の鋼材料と単独のカートリッジ25の鋼材料とは、所望のカートリッジのためのあらゆる特性に対して集中的に影響を与えるために、集中的に加熱される。鋼材料の焼戻しに関する詳細は、当業者によく知られているので、ここでは詳細な説明は行わない。
【0016】
単独のカートリッジ25における鋼の焼戻し温度は、定圧安全弁15の領域における燃料の最高動作温度よりも高い。カートリッジ25の鋼の焼戻し温度は、定圧安全弁15の領域における燃料の最高動作温度よりも、好適には少なくとも200℃、特に好適には少なくとも250℃高い。本体11の鋼の焼戻し温度は、定圧安全弁15の領域における燃料の最高動作温度にほぼ等しい。
【実施例2】
【0017】
好ましくは本発明の第1の態様と組み合わせて適用される第2の態様によると、本発明の第1の態様では単独のカートリッジ25によって供給されるボールバルブ21のためのバルブシート24の粗さRaは、0.8μmよりも小さい。定圧安全弁15のボールバルブ21のためのバルブシート24の粗さRaが、0.2μm〜0.6μm、特に0.3μm〜0.5μmである実施形態が好ましい。ボールバルブ21のためのバルブシート24の粗さRaは、ほぼ0.4μmであることが好ましい。
【実施例3】
【0018】
本発明の第1の態様及び/又は第2の態様と組み合わせて適用される第3の態様によると、定圧安全弁15のボールバルブ21は、特別な材料、すなわち鋼よりも強度が大きいが、比重は小さい材料から形成されている。ボールバルブ21がセラミックス材料から形成されている変型例が、特に好ましい。
【0019】
本発明の3つの態様全ては、共に1つのバルブユニットに適用されるような発明の変型例が、特に好ましい。これによって、定圧安全弁15の領域における当該バルブユニットの磨耗を、先行技術に対して減少させることができる。
【0020】
本発明は、新しい部材への適用だけではなく、既存の部材の改造にも適している。したがって、すでに実際に使用されている図1のバルブユニット10を、図2の本発明に係るバルブユニット23に改造することが可能である。そのためには単独のカートリッジ25が作動要素20、ボールバルブ21、及び定圧安全弁15のばね要素19と共に凹部14に受容されるように、定圧安全弁15の受容に用いられる凹部14をただ拡大すれば良いだけである。
【0021】
本発明のさらなる好適な構成では、本体11は、燃料噴射弁もしくはインジェクタのための第2の連結領域において、0.01mm〜0.05mmの範囲で面が収縮し、それによって、本体11と、燃料噴射弁もしくはインジェクタとの間の高圧領域において、より確実に密封されるようになる。
【符号の説明】
【0022】
10 バルブユニット、11 本体、12,14 凹部、13 燃料送出弁、15 定圧安全弁、16,17 連結領域、18 燃料ライン、19 ばね要素、20 作動要素、21 ボールバルブ、23 バルブユニット、
24 バルブシート、
25 カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部内で定圧安全弁を受容する鋼製の本体を有するエンジンの燃料供給装置のバルブユニットであって、
前記定圧安全弁は、ばね要素が衝突する作動要素を有しており、前記作動要素は、前記定圧安全弁のボールバルブを、前記定圧安全弁のバルブシートに対して押圧するバルブユニットにおいて、
前記定圧安全弁の前記バルブシート(24)は、鋼製の単独のカートリッジ(25)から構成されており、
前記単独のカートリッジ(25)における鋼の焼戻し温度は、前記本体(11)の鋼の焼戻し温度よりも高いことを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記個別のカートリッジ(25)の鋼の焼戻し温度が、前記定圧安全弁の領域における燃料の最高動作温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記個別のカートリッジ(25)の鋼の焼戻し温度が、前記定圧安全弁の領域における燃料の最高動作温度よりも、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃高いことを特徴とする請求項2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記本体(11)の鋼の焼戻し温度が、前記定圧安全弁の領域における燃料の最高作動温度にほぼ等しいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブユニット。
【請求項5】
請求項6もしくは7または両方に記載の特徴、及び/又は、請求項9もしくは10または両方に記載の特徴、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブユニット。
【請求項6】
凹部内で定圧安全弁を受容する鋼製の本体を有するエンジンの燃料供給装置のバルブユニットであって、
前記定圧安全弁は、ばね要素が衝突する作動要素を有しており、
前記作動要素は、前記定圧安全弁のボールバルブを前記定圧安全弁のバルブシートに対して押圧するバルブユニットにおいて、
前記バルブシート(24)の粗さRaは、0.8よりも小さいことを特徴とするバルブユニット。
【請求項7】
前記バルブシート(24)の粗さRaは、0.2〜0.6、特に0.3〜0.5であることを特徴とする請求項6に記載のバルブユニット。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項あるいは複数項に記載の特徴、及び/又は、請求項9もしくは10または両方に記載の特徴、を有することを特徴とする請求項6又は7に記載のバルブユニット。
【請求項9】
凹部内で定圧安全弁を受容する鋼製の本体を有するエンジンの燃料供給装置のバルブユニットであって、
前記定圧安全弁は、ばね要素が衝突する作動要素を有しており、
前記作動要素は、前記定圧安全弁のボールバルブを前記定圧安全弁のバルブシートに対して押圧するバルブユニットにおいて、
前記ボールバルブ(21)は、鋼よりも強度が大きく、鋼よりも比重が小さい材料で形成されていることを特徴とするバルブユニット。
【請求項10】
前記ボールバルブ(21)が、セラミックス材料から形成されていることを特徴とする請求項9に記載のバルブユニット。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項あるいは複数項に記載の特徴、及び/又は、請求項6もしくは7または両方に記載の特徴、を有することを特徴とする請求項9又は10に記載のバルブユニット。
【請求項12】
前記カートリッジ(25)が、前記作動要素(20)、前記ボールバルブ(21)、及び前記ばね要素(19)と共に、前記本体(11)の前記凹部(14)内に位置していることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のバルブユニット。
【請求項13】
前記本体(11)が、さらに個別の凹部(12)において、燃料送出弁(13)を受容することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のバルブユニット。
【請求項14】
前記本体(11)は、燃料ポンプのために第1の連結領域(16)を有し、燃料噴射弁もしくはインジェクタのために第2の連結領域(17)を有することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242738(P2010−242738A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253093(P2009−253093)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(500334036)エムアーエヌ・ディーゼル・エスエー (78)
【Fターム(参考)】