説明

燃料冷却装置

【課題】車両のソーク中において燃料冷却を行うことで、蒸発燃料が大気へ放出するのを防ぐとともに、走行中における燃料冷却に要する電力消費低減することが可能な燃料冷却装置を提供する。
【解決手段】燃料冷却装置は、燃料タンクと、燃料タンク内の燃料の冷却を行う冷却器と、を備える。冷却器は、車両の充電中において、外部電源から供給された電力により燃料タンクを冷却する。このようにすることで、車両のソーク中においても、蒸発燃料を大気へ放出するのを防ぐことができる。また、車両のソーク中に燃料温度を予め低温にすることで、走行中において燃料冷却に要する電力消費量を低減することができる。さらに、ソーク中において、バッテリを駆動電源とせず冷却処理を行うことで、燃料冷却装置は、バッテリの劣化を防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の冷却を行う燃料冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に装備される燃料タンクにおいては、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を低減するために、燃料タンク内の冷却が行われている。例えば、特許文献1には、燃料タンクから発生した蒸発燃料を冷却することで凝縮し、凝縮した燃料を燃料タンクへ戻す技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−73897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常のハイブリッド車両の場合、バッテリの容量が限られており、車両のソーク中において燃料冷却を行うことは困難である。また、バッテリ容量内で冷却を行っても、繰り返し冷却処理を行うことで、バッテリの劣化を招く。また、走行中において燃料冷却を行う場合、ハイブリッド車両は、走行に要する電力量に加え、燃料冷却に要する電力量が必要となり、走行中におけるバッテリ消費量が悪化してしまう。特許文献1には、上述の問題は、何ら検討されていない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車両のソーク中において燃料冷却を行うことで、蒸発燃料が大気へ放出するのを防ぐとともに、走行中における燃料冷却に要する電力消費を低減することが可能な燃料冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、外部電源からバッテリに充電した電力を動力として使用するハイブリッド車両に適用される燃料冷却装置であって、燃料タンクと、前記燃料タンク内の燃料の冷却を行う冷却器と、を備え、前記冷却器は、前記ハイブリッド車両の充電中において、外部電源から供給された電力により前記燃料タンクを冷却する。
【0007】
上記の燃料冷却装置は、外部電源からバッテリに充電した電力を動力として使用する、いわゆるプラグインハイブリッド車両に適用される。燃料冷却装置は、燃料タンクと、燃料タンク内の燃料の冷却を行う冷却器と、を備える。冷却器は、車両の充電中において、外部電源から供給された電力により燃料タンクを冷却する。このようにすることで、車両のソーク中においても、蒸発燃料を大気へ放出するのを防ぐことができる。また、車両のソーク中に燃料温度を予め低温にすることで、走行中において燃料冷却に要する電力消費量を低減することができる。さらに、ソーク中において、バッテリを駆動電源とせず冷却処理を行うことで、燃料冷却装置は、バッテリの劣化を防ぐことが可能となる。
【0008】
上記の燃料冷却装置の一態様は、前記燃料タンクに連通するキャニスタと、目標燃料温度に従って前記冷却器の駆動制御を行うとともに、エンジンとモータを兼用するHV走行中において、前記キャニスタが捕集した蒸発燃料のパージ制御を行う制御手段と、をさらに備え、前記制御手段は、ソーク中における前記バッテリのバッテリ残量に基づき、前記目標燃料温度を設定する。
【0009】
上記の燃料冷却装置は、キャニスタと、制御手段と、をさらに備える。制御手段は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって実現される。制御手段は、車両のHV走行中においてパージを実行する制御を行う。さらに、制御手段は、燃料温度の目標温度である所定の目標燃料温度に従って、走行中において、冷却器の駆動制御を行う。制御手段は、上述の目標燃料温度を車両のソーク中におけるバッテリ残量に基づき設定する。上記の燃料冷却装置を搭載するハイブリッド車両は、ソーク中において、バッテリの充電を行う。しかし、バッテリの充電が十分でない場合に再び車両を始動させた場合、車両は、EV走行からHV走行へ切り替えるタイミングが早くなる。即ち、この場合、パージが可能となるまでの時間が短くなる。従って、制御手段は、バッテリ残量に基づき目標燃料温度を設定する。即ち、制御手段は、バッテリ残量に基づき燃料冷却する度合を決定する。このようにすることで、燃料冷却装置は、バッテリ残量に応じて適切にパージ制御を行うことができるとともに、効率よく燃料冷却を行うことができる。
【0010】
好適には、前記制御手段は、前記バッテリ残量が多いほど前記目標燃料温度を低く設定する。このようにすることで、燃料冷却装置は、ソーク中の充電量が少なく、EV走行が短いと予測される場合には、燃料冷却の目標燃料温度を高く設定し、消費電力を低減することができる。また、燃料冷却装置は、ソーク中の充電量が多く、EV走行が長い場合において、目標燃料温度を低く設定し、蒸発燃料を大気へ放出することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る燃料冷却装置について説明する。第1実施形態に係る燃料冷却装置は、プラグインハイブリッド車両に好適に適用される。
【0013】
(概略構成)
図1は、第1実施形態に係る燃料冷却装置の概略構成の一例を示すブロック図である。燃料冷却装置100は、燃料タンク10と、冷却器8と、バッテリ101と、外部電源9と、を含む。
【0014】
燃料タンク10は、給油口58から給油される燃料3を貯蔵している。この燃料3は、図示しないエンジンの燃焼に供する。ここで給油される燃料3は、例えばガソリン又はアルコール、あるいはその混合燃料である。燃料タンク10は、その内部に温度センサ7が設置されている。温度センサ7は、燃料3の温度(以後、「燃料温度」と呼ぶ。)を計測するセンサである。温度センサ7は、計測した燃料温度の検出値を冷却駆動部15へ送信する。
【0015】
冷却器8は、電気により冷気を発生させ、燃料タンク10内の燃料3の冷却(以後、「冷却処理」と呼ぶ。)を行う装置である。冷却器8は、冷却駆動部15と、ホース6と、冷却部5と、冷媒4と、を有する。
【0016】
冷却駆動部15は、冷媒4を冷却し、ホース6を介して冷却部5へ冷却された冷媒を循環させる要素である。冷却駆動部15は、後述する外部電源9から供給される電気により駆動が可能である。また、車両の走行中において、冷却駆動部15は、後述するバッテリ101から電気の供給を受けて駆動する。
【0017】
冷却部5は、燃料タンク10内の燃料3を冷却するための部材(容器)であり、燃料タンク10の底面に設置される。冷却部5は、内部に冷媒4を収容する。
【0018】
冷媒4は、冷却器8内、即ち冷却駆動部15及び冷却部5内を循環する液状または気体状の媒体である。そして冷却駆動部15と冷却部5とを接続するホース6を介して、冷媒4は冷却駆動部15で発生した冷気を冷却部5へ運ぶ。
【0019】
バッテリ101は、ハイブリッド車両が備えるモータを駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。また、バッテリ101は、外部電源9から供給された電気、または走行によりモータで発生した電気の充電を行う。したがって、バッテリ101は、モータの駆動用電源として機能するとともに、冷却器8の駆動用電源として機能する。バッテリ101に残存している充電量を、以後「バッテリ残量」とも呼ぶ。
【0020】
外部電源9は、冷却器8へ電気を供給するためのプラグであり、主に車両の駐車中(ソーク中)にコンセントに差し込むことにより電気を車内へ供給することが可能となる。
【0021】
なお、図1に示す燃料冷却装置100の構成は一例であり、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、冷却部5は、燃料タンク10の内部に配置されていてもよい。
【0022】
(冷却処理方法)
以上のように燃料冷却装置100を構成することにより、燃料冷却装置100は、燃料冷却装置100を搭載した車両(以後、「搭載車両」と呼ぶ。)がソーク中であっても、燃料タンク10内の燃料3を冷却することができる。具体的には、燃料冷却装置100は、搭載車両のソーク中において、冷却器8を外部電源9から供給される電気により駆動させ、燃料タンク10を冷却する。これにより、車両ソーク中において燃料温度は上昇しないため、燃料冷却装置100は、車両ソーク中においても、蒸発燃料(エバポガス)の発生を抑制することができる。
【0023】
また、車両ソーク中において燃料温度を所定温度以下に抑えることで、燃料冷却装置100は、結果として、搭載車両の走行中においても燃料冷却に係る電力消費を低減することができる。即ち、燃料冷却装置100は、搭載車両の走行開始時において、冷却処理により燃料温度を既に所定値以下に抑えている。従って、燃料冷却装置100は、走行中にのみ冷却処理を行う場合と比較して、燃料温度を走行中に大幅に下げる必要がなくなり、冷却処理に要する消費電力を低減することができる。
【0024】
これについて図2に示す具体例を用いて説明する。図2は、時間変化に伴う搭載車両のバッテリ消費量及び燃料温度の変化のグラフの一例を示す。図2中の実線のグラフ70及び71が第1実施形態における変化のグラフ、即ち搭載車両のソーク中においても燃料冷却を行う場合に対応するグラフを示し、破線のグラフ70x及び71xが搭載車両の走行中のみ燃料冷却を行う場合(以後、「比較例」と呼ぶ。)に対応するグラフを示す。なお、図2における時刻t1は、搭載車両がソーク中から走行中へ切り替わる時刻、即ち搭載車両が走行を開始する時刻を示し、時刻t2は、搭載車両が走行中からソーク中へ切り替わる時刻、即ち搭載車両が走行を停止する時刻を示す。
【0025】
まず、第1実施形態に係る燃料冷却装置100は、時刻t1までの搭載車両のソーク中において、冷却処理を行う。これにより、燃料冷却装置100は、燃料温度を、所定温度(以下、「第1の温度」と呼ぶ。)以下に抑える(グラフ71参照)。第1の温度は、例えば、エバポガスが発生しない温度に設定され、図2では30℃に設定されている。これにより、燃料冷却装置100は、エバポガスの発生を抑制し、搭載車両のソーク中において、図示しないキャニスタがエバポガスにより飽和するのを防ぐことができる。また、第1実施形態において、燃料冷却装置100は、外部電源9から供給された電気により冷却処理を行う。従って、冷却処理を行う場合と、冷却処理を行わない場合とにおいて、バッテリ消費量は変わらない(グラフ70、70x参照)。即ち、燃料冷却装置100は、冷却処理において、バッテリ101を使用しない。これにより、燃料冷却装置100は、冷却処理によるバッテリ101の電池劣化を防ぐことができる。一方、比較例の場合、燃料温度は、外気温等の影響を受け、エバポガスが発生する温度に推移する(グラフ71x参照)。
【0026】
次に、搭載車両の走行中である時刻t1から時刻t2までの期間において、燃料冷却装置100は、外部電源9から供給された電気を用いて冷却処理を行うことができない。よって、燃料冷却装置100は、冷却処理を停止し、燃料温度が第1の温度に達した場合に再び冷却処理を開始する。このとき、燃料冷却装置100は、バッテリ101を電源として冷却処理を行う。しかし、燃料冷却装置100は、搭載車両のソーク中において既に燃料温度を第1の温度(図2では30℃)以下に抑えている。従って、燃料冷却装置100は、走行中において、冷却処理に要するバッテリ消費量を低減することができる。また、搭載車両は、プラグインハイブリッド車両であるため、バッテリ残量が所定の充電量B1(以後、「第1の充電量B1」と呼ぶ。)より多い場合にはモータによる走行(EV走行)を行い、バッテリ残量が第1の充電量B1以下の場合にはエンジンとモータとを兼用したハイブリッド走行(HV走行)を行う。第1の充電量B1は、各搭載車両に対し適正な値が設定される。従って、第1実施形態における搭載車両は、冷却処理に要するバッテリ消費量を低減することで、バッテリ101の電力をEV走行に費やすことができ、燃費を向上させることができる。
【0027】
一方、比較例の場合、走行開始時の時刻t1における燃料温度は、搭載車両のソーク中に冷却処理を行った場合と比較して高温である(グラフ70x、70参照)。よって、この場合、走行中において高温の燃料温度を第1の温度以下にするため、比較例に係る車両は、走行中におけるバッテリ消費量が第1実施形態と比べて大きい。結果として、比較例に係る車両は、バッテリ101の充電量を冷却処理に多く費やすことになり、その分、EV走行を継続できず、HV走行へ早期に切りかえることになる。
【0028】
そして、搭載車両が再びソーク中となる時刻t2以後において、第1実施形態に係る燃料冷却装置100は、再び外部電源9から供給された電気を用いて冷却処理を行う。これにより、再び搭載車両が走行を開始する場合に、燃料冷却装置100は、冷却処理に要するバッテリ消費量を低減することができる。
【0029】
(処理フロー)
次に、フローチャートを用いて第1実施形態に係る処理の手順について説明する。図3は、冷却処理に係る処理手順を表すフローチャートである。この処理は、搭載車両が外部電源9より充電を開始後、ECU60によって実行される。
【0030】
まず、ECU60は、外部電源9の電力で冷却処理を行う(ステップS1)。これにより、ECU60は、搭載車両のソーク中においてエバポガスの発生を抑えることができる。また、ECU60は、冷却処理にバッテリ101を使用しないため、冷却処理に起因するバッテリ101の電池劣化を防ぐことができる。次に、ECU60は、搭載車両が走行を開始したか否か確認する(ステップS2)。即ち、搭載車両は発進後においてEV走行を行うため、ECU60は、搭載車両がEV走行を開始したか確認する。そして、走行を開始しない場合(ステップS2;No)、ECU60は、継続して外部電源9から電力の供給を受け、冷却処理を行う(ステップS1)。
【0031】
一方、搭載車両が走行を開始した場合(ステップS2;Yes)、ECU60は、搭載車両のEV走行中において、燃料温度が第1の温度より低いか否か確認する(ステップS3)。そして、燃料温度が第1の温度より低い場合(ステップS3;Yes)、ECU60は冷却処理をする必要がないと判断し、ステップS5へ処理を進める。一方、燃料温度が第1の温度に達している場合(ステップS3;No)、ECU60は、バッテリ101の電力で冷却処理を行う(ステップS4)。これにより、ECU60は、EV走行中において、エバポガスの発生を抑制する。なお、ECU60は、ステップS1において車両のソーク中に冷却処理を行っていたため、結果としてステップS4の冷却処理に要する電気消費量を低減することができる。
【0032】
次に、ECU60は、EV走行中において、バッテリ残量が第1の充電量B1以下であるか否か判定する(ステップS5)。そして、バッテリ残量が第1の充電量B1より大きい場合(ステップS5;No)、ECU60は継続してEV走行を行い、必要に応じて冷却処理を行う(ステップS3、ステップS4)。
【0033】
一方、バッテリ残量が第1の充電量B1以下であると判定した場合(ステップS5;Yes)、ECU60は、EV走行からHV走行へ変更する(ステップS6)。HV走行中において、エンジンは間欠運転を行うため、ECU60は、HV走行中においてエバポガスのパージを行う。ECU60は、以上の処理を実行することで、搭載車両のソーク中及びEV走行中においてエバポガスを大気へ放出するのを防ぐことができ、かつ走行中の冷却処理に要する電気消費量を低減することができる。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る燃料冷却装置について説明する。上述の搭載車両において、バッテリ101の充電を十分に行う前に、ユーザが再び搭載車両の走行を開始する場合がある。この場合、バッテリ101を十分に行った場合に比べ、搭載車両は、EV走行による走行距離は短くなり、HV走行への切り替わりが早くなる。一方、HV走行において、搭載車両は、エンジンの間欠運転を行うため、パージを行うことが可能である。そこで、第2実施形態に係る燃料冷却装置は、ソーク中におけるバッテリ残量に基づき、冷却処理の目標値である燃料3の目標温度(以後、「目標燃料温度」と呼ぶ。)を変更する。このようにすることで、第2実施形態に係る燃料冷却装置は、車両ソーク中にバッテリ101の充電を十分に行っていない場合であっても、パージを適切に実行するとともに、電力消費を低減することが可能となる。
【0035】
(概略構成)
図4は、第2実施形態に係る燃料冷却装置の概略構成の一例を示すブロック図である。第2実施形態に係る燃料冷却装置200は、図1に示す第1実施形態に係る燃料冷却装置100の構成に加えて、キャニスタ26と、タンク内圧センサ12と、ECU60と、を含む。
【0036】
キャニスタ26は、エバポ通路20を介して、燃料タンク10から供給される燃料3のエバポガスを吸着する。詳しくは、キャニスタ26内の吸着材にエバポガスが吸着される。キャニスタ26は、さらにパージ通路34及び大気通路54に接続し、大気通路54から供給される大気を受け入れるとともに、パージ通路34によりエバポガスを図示しないサージタンクへ供給する。
【0037】
燃料タンク10には、燃料タンク10内の圧力(以後、「タンク内圧」と呼ぶ。)を測定するためのタンク内圧センサ12が設置されている。タンク内圧センサ12は、大気圧に対する相対圧としてタンク内圧を検出し、その検出値に応じた出力を発生するセンサである。タンク内圧センサ12は、検出した圧力に対応する検出信号S3をECU60に供給する。
【0038】
エバポ通路20は、燃料タンク10とキャニスタ26とを連結する通路である。エバポ通路20上には、封鎖弁28が設置されている。封鎖弁28は、エバポ通路20を封鎖する弁である。封鎖弁28の閉弁状態において、エバポガスは、燃料タンク10からキャニスタ26へ供給されない。そして、封鎖弁28は、燃料タンク10の内圧が所定値P(以後、「開弁圧P」と呼ぶ。)以上に達した場合に開弁する。封鎖弁28の開弁状態において、エバポガスは、エバポ通路20を介して燃料タンク10からキャニスタ26へ供給される。
【0039】
ECU60は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備える。ECU60は、必要に応じ、キャニスタ26のエバポガスのパージを行う。具体的には、パージ通路34上の図示しないパージ弁をECU60が開くと、吸気負圧に起因して大気通路54からキャニスタ26内に大気が流入し、パージ通路34からサージタンクへの空気の流れが発生する。これにより、キャニスタ26内の活性炭に吸着したエバポガスが離脱し、サージタンクへ送られる。そして、キャニスタ26から離脱したエバポガスは、図示しないサージタンクで貯蔵され、エンジンの燃料として利用されることになる。また、ECU60は、後述するように、冷却駆動部15から送信される燃料温度の検出信号S2と、タンク内圧センサ12から送信されるタンク内圧の検出信号S3と、バッテリ101から供給されるバッテリ残量の検出信号S4と、に基づき、冷却駆動部15に対し制御信号S1を送信することで冷却器8の駆動制御を行う。従って、ECU60は、本発明における制御手段として機能する。
【0040】
(制御方法)
次に、第2実施形態においてECU60が行う制御について述べる。上述の第1実施形態において示したように、燃料冷却装置200は、ソーク中において冷却処理を行うことで、走行中におけるバッテリ消費量を低減することができる。一方、バッテリ101の充電を十分に行う前に再び搭載車両が走行を行う場合(以後、「充電未完了時」と呼ぶ。)と、ソーク時間が十分にあり、バッテリ101の充電量が十分にある状態で搭載車両が走行を行う場合(以後、「充電完了時」と呼ぶ。)と、において、搭載車両がEV走行からHV走行へ切り替えるタイミングが異なる。
【0041】
従って、第2実施形態において、ECU60は、搭載車両のソーク中におけるバッテリ残量に基づき、目標燃料温度を設定する。そして、ECU60は、走行中において、設定した目標燃料温度に基づき冷却処理を実行する。また、ECU60は、搭載車両がEV走行からHV走行へ切り替わった場合には、パージを行う。このようにすることで、燃料冷却装置200は、車両ソーク中のバッテリ残量に基づきパージを適切に実行するとともに、電力消費を低減することが可能となる。
【0042】
より具体的には、ECU60は、充電未完了時において、搭載車両が早期にHV走行に切り替わることでパージが実行可能になると判断し、走行時における目標燃料温度を高めにして冷却処理を行う。即ち、ECU60は、充電未完了時において、ソーク中におけるバッテリ残量から車両が早期にHV走行に切り替わることを予測し、エバポガスが発生してもHV走行においてパージが可能と判断する。そして、ECU60は、走行中における目標燃料温度を高めにし、燃料3の冷却を抑える。これにより、燃料冷却装置200は、充電未完了時において、冷却処理に要する消費電力を抑えることができる。
【0043】
一方、ECU60は、充電完了時においては、搭載車両がEV走行をしばらく継続すると判断し、走行時における目標燃料温度を低めにして冷却処理を行う。即ち、ECU60は、充電完了時において、ソーク中におけるバッテリ残量から車両がEV走行を暫く継続することを予測し、エバポガスの発生を抑える必要があると判断する。そして、ECU60は、走行中における目標燃料温度を低めにし、充電未完了時に比べ燃料3の冷却を強くする。これにより、搭載車両は、EV走行中において、エバポガスが大気へ放出されるのを防ぐことができる。具体的な目標燃料温度の設定方法については、例えば、各バッテリ残量に対応する、設定すべき目標燃料温度を予め実験または計算等により計測または算出しておき、ECU60が予めマップとして保持しておく。そして、ECU60は、車両発進時において、検出したバッテリ残量から目標燃料温度を上述のマップから取得する。
【0044】
次に、図5を用いて第2実施形態の具体例を示す。図5は、バッテリ残量、燃料温度、及びタンク内圧の時間経過に伴う変化のグラフの一例を示す。図5中の実線のグラフ75x、76x及び77xが、充電完了時に対応する変化のグラフを示し、破線のグラフ75y、76y及び77yが、充電未完了時に対応する変化のグラフを示す。図5において、時刻t0が、充電完了時の搭載車両がソークを開始した時刻を示し、時刻t1が、充電未完了時の搭載車両がソークを開始した時刻を示し、時刻t2が、搭載車両がEV走行を開始した時刻を示し、時刻t3が、充電未完了時の搭載車両がHV走行を開始した時刻を示し、時刻t4が、充電完了時の搭載車両がHV走行を開始した時刻を示す。
【0045】
充電完了時において、搭載車両は、時刻t0から時刻t2までにおいて、ソーク中に充電を行う。これにより、搭載車両は、ソーク中において、バッテリ101の充電量を最大容量まで蓄積する(グラフ75x参照)。一方、充電未完了時の搭載車両は、時刻t0以後の時刻t1から時刻t2までにおいて、ソーク中に充電を行う。この場合、搭載車両は、充電量を最大容量まで蓄積することができていない(グラフ75y参照)。また、充電未完了時及び充電完了時において、燃料冷却装置200は、ソーク中において、外部電源9から供給された電気により冷却処理を行う。これにより、ソーク時間に応じて、それぞれ燃料温度とタンク内圧が下がる(グラフ76x、76y、77x、77y参照)。
【0046】
次に、時刻t2において、搭載車両はバッテリ101を駆動電源としてEV走行を開始する。このとき、ECU60は、ソーク中(厳密には、車両発進直前時)のバッテリ残量に応じて目標燃料温度を設定する。そして、時刻t2以後、ECU60は、設定した目標燃料温度に応じてバッテリ101を電源とした冷却処理を行う。具体的には、充電完了時におけるECU60は、目標燃料温度を低く設定し、充電未完了時におけるECU60は、目標燃料温度を高く設定する。これにより、充電未完了時の搭載車両は、冷却処理に要する消費電力を抑えることができる。また、充電完了時の搭載車両は、EV走行中において、エバポガスが大気へ放出されるのを防ぐことができる。また、ECU60は、充電未完了時及び充電完了時において、タンク内圧が開弁圧Pに達する時刻と、バッテリ残量が第1の充電量B1になる時刻とが同時刻になるような目標燃料温度を設定するのが好ましい。即ち、封鎖弁28が開弁し、キャニスタ26へエバポガスが供給される時刻と、HV走行になり、パージを実行可能な時刻と、が同時刻になるように、ECU60は、冷却処理を行うことが好ましい。これにより、ECU60は、HV走行へ切り替わる前に封鎖弁28が開弁することに起因するキャニスタ26のエバポガスによる飽和を確実に防ぎ、かつ、冷却処理に要する消費電力を抑えることができる。そして、充電未完了時の搭載車両は、時刻t3までEV走行を行うとともに、設定した目標燃料温度に基づき冷却処理を行う。同様に、充電完了時の搭載車両は、時刻t4までEV走行を行うとともに、設定した目標燃料温度に基づき冷却処理を行う。
【0047】
そして、充電未完了時の搭載車両は、時刻t3において、バッテリ残量が第1の充電量B1になり、HV走行へ切り替える(グラフ75y参照)。そして、時刻t3とほぼ同時刻に、燃料温度の上昇に伴いタンク内圧が開弁圧Pに達することにより封鎖弁28が開弁する(グラフ77y参照)。そして、ECU60は、パージを実行する。これにより、搭載車両は、キャニスタ26へ供給されたエバポガスをエンジン燃料として消費する。また、ECU60は、目標燃料温度を高めに設定したことにより、タンク内圧の上昇を緩やかにしか抑えることができず、タンク内圧は開弁圧Pに早期に達する。しかし、バッテリ残量も早期に第1の充電量B1に達し、HV走行になるため、ECU60は、燃料タンク10からキャニスタ26へ供給されたエバポガスを適切にパージすることができる。また、ECU60は、目標燃料温度を高めに設定したことにより、冷却処理に要する消費電力を低減することもできる。
【0048】
一方、充電完了時の搭載車両は、時刻t4において、バッテリ残量が第1の充電量B1になり、HV走行へ切り替える(グラフ75x参照)。そして、時刻t4とほぼ同時刻に、タンク内圧が開弁圧Pに達することにより、封鎖弁28が開弁する(グラフ77x参照)。これにより、燃料タンク10内のエバポガスは、キャニスタ26へ供給される。ここで、ECU60は、搭載車両がHV走行によりエンジンを稼働していることから、パージを実行する。これにより、搭載車両は、EV走行中において、エバポガスが大気へ放出されるのを防ぐことができる。
【0049】
なお、上述の説明では、ECU60は、走行中における冷却処理の目標値として目標燃料温度を設定した。しかし、本発明が適用可能な例はこれに限られない。例えば、ECU60は、冷却処理の目標値としてタンク内圧の目標値を設定してもよい。この場合、ECU60は、車両ソーク中におけるバッテリ残量に基づきタンク内圧の目標値を設定する。そして、ECU60は、設定したタンク内圧の目標値に基づき、走行中において冷却処理を行う。
【0050】
(処理フロー)
次に、フローチャートを用いて第2実施形態に係る処理の手順について説明する。図6は、ECU60が行う制御の処理手順を表すフローチャートである。この処理は、搭載車両が外部電源9より充電を開始した後、ECU60によって実行される。
【0051】
まず、ECU60は、第1実施形態と同様に、搭載車両のソーク中において、外部電源9の電力で冷却処理を行う(ステップS101、ステップS102)。これにより、ECU60は、搭載車両のソーク中においてエバポガスの発生を抑えることができる。また、ECU60は、冷却処理にバッテリ101を使用しないため、冷却処理によるバッテリ101の電池劣化を防ぐことができる。
【0052】
そして、搭載車両が走行を開始した場合(ステップS102;Yes)、ECU60は、ソーク中のバッテリ残量に基づいて目標燃料温度を設定する(ステップS103)。具体的には、ECU60は、ソーク中のバッテリ残量が多い程、目標燃料温度を低く設定する。即ち、ECU60は、ソーク中バッテリ残量が多い場合、EV走行を行う期間が長いと判断し目標燃料温度を低く設定する。一方、ソーク中のバッテリ残量が少ない場合、ECU60は目標燃料温度を高く設定する。そして、ECU60は、EV走行中において、設定した目標燃料温度に基づき冷却処理を行う(ステップS104)。具体的には、例えば燃料温度が目標燃料温度より高い場合、ECU60は、冷却処理を行い、燃料温度を目標燃料温度以下にする。これにより、ECU60は、ソーク中のバッテリ残量が多い場合には、EV走行中においてエバポガスが大気へ放出されるのを防ぐことができ、ソーク中のバッテリ残量が少ない場合には、走行中の冷却処理に要する消費電力を抑えることができる。
【0053】
そして、ECU60は、EV走行中において、バッテリ残量が第1の充電量B1以下であるか否か判定する(ステップS105)。そして、バッテリ残量が第1の充電量B1より大きい場合(ステップS105;No)、ECU60は、ステップS104の冷却処理を継続する。一方、バッテリ残量が第1の充電量B1以下である場合(ステップS105;Yes)、ECU60は、EV走行からHV走行へ切り替え、パージを行う(ステップS106)。これにより、搭載車両は、キャニスタ26に捕集されたエバポガスをエンジン燃料として消費することができる。従って、ECU60がステップS103において目標燃料温度を高く設定した場合であっても、搭載車両は、ソーク中のバッテリ残量が少ないため、早期にEV走行からHV走行へ切り替わる。即ち、この場合においても、搭載車両は、走行中に発生したエバポガスを適切に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係る燃料冷却装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態における、時間経過に伴うバッテリ消費量及び燃料温度の変化のグラフの一例を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る処理手順を表すフローチャートの一例である。
【図4】第2実施形態に係る燃料冷却装置の概略構成を示す図である。
【図5】第2実施形態における、時間経過に伴うバッテリ残量、燃料温度、及びタンク内圧の変化のグラフの一例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る処理手順を表すフローチャートの一例である。
【符号の説明】
【0055】
3 燃料
7 温度センサ
8 冷却器
10 燃料タンク
15 冷却駆動部
26 キャニスタ
28 封鎖弁
60 ECU
100、200 燃料冷却装置
101 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からバッテリに充電した電力を動力として使用するハイブリッド車両に適用される燃料冷却装置であって、
燃料タンクと、
前記燃料タンク内の燃料の冷却を行う冷却器と、を備え、
前記冷却器は、前記ハイブリッド車両の充電中において、外部電源から供給された電力により前記燃料タンクを冷却することを特徴とする燃料冷却装置。
【請求項2】
前記燃料タンクに連通するキャニスタと、
目標燃料温度に従って前記冷却器の駆動制御を行うとともに、エンジンとモータを兼用するHV走行中において、前記キャニスタが捕集した蒸発燃料のパージ制御を行う制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、車両ソーク中における前記バッテリのバッテリ残量に基づき、前記目標燃料温度を設定する請求項1に記載の燃料冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記バッテリ残量が多いほど前記目標燃料温度を低く設定する請求項2に記載の燃料冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281312(P2009−281312A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135260(P2008−135260)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】