説明

燃料遮断弁

【課題】本願発明の目的は、例え燃料タンク内の燃料が大きく波だったとしても、貫通孔からケース部材内を介してキャニスタ側に流出する燃料をほとんどなくすことができる燃料遮断弁を提供すること。
【解決手段】燃料タンク内に連通する下部開口とキャニスタに連通する上部開口を有し、側方に貫通孔を有するケース部材と、前記ケース部材の上方を覆うキャップ部材と、前記ケース部材内に設けられ、上方に弁を有するフロートと、前記ケース部材の下方を覆う底部材と、を有し、前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を上方向から覆う第1の遮蔽部材と、前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を下方向から覆う第2の遮蔽部材とを設ける構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、燃料遮断弁、例えば自動車等の燃料タンク内の燃料蒸発ガスをキャニスタへ流出させてキャニスタの吸着剤に吸着させたり、或いは燃料油面上昇時に燃料タンク内の燃料がキャニスタへ流出することを防止する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、エンジンの燃焼室に供給するための燃料を貯留する燃料タンクが設けられる。この燃料タンクには、タンク内の燃料量の増減に見合う空気が出入りできるように通気系が設けられる。この通気系は、燃料タンク内とキャニスタとを連通し、燃料タンク内で発生する燃料蒸発ガスをキャニスタに送る機能を有するが、燃料がキャニスタに流出すると、キャニスタ本来の機能が不能になるため、燃料が満タンになった時等に通気系を遮断する満タン制御弁が燃料タンクに設けられる。
【0003】
また、燃料タンクには、燃料タンク内を常時大気に開放し燃料タンク内の圧力変動を調整するとともに、自動車が傾斜乃至横転した時に閉じる燃料漏れ防止弁も設けられるが、それぞれを別々に設けるとコスト高になるため、近時では両弁の機能を併せ持つ燃料遮断弁が多く用いられるようになっている。
【0004】
燃料遮断弁の一例を図10に示す。この燃料遮断弁1は、ケース部材2内に上部に弁体3を有するフロート4を収納し、その上方に上部開口5を、その下方には下部開口6を、その上方の周壁面に貫通孔7を備え、ケース部材2の上方外周壁に水平に形成されるフランジ8を燃料タンク9の上壁面に取り付ける形態で配置される。
【0005】
フロート4は、燃料タンク9内の燃料が下部開口6からケース部材2内に侵入すると上動する部材であり、その上面には弁体3を有する。燃料タンク9内への給油時等、燃料が下部開口6からケース部材2内に侵入すると、フロート4は上動し、上部開口5を閉鎖し、燃料が上部開口5の上方の連通路10を介して図示しないキャニスタに流出するのを防止する。
【0006】
前記燃料遮断弁1には、貫通孔7を覆って遮蔽板11が設けられる。この遮蔽板11は、給油時或いは車両走行時等に燃料タンク9内の燃料が激しく揺れた時、揺れた燃料が前記貫通孔7からケース部材2内に浸入し、前記上部開口5から流出する弊害を防止するためのもので、ケース部材2より大径の筒形状で、底部材12と一体に形成されており、前記貫通孔7との間に隙間を有して前記貫通孔7を覆っている(特許文献1参照)。
【0007】
ところで、上記した従来の遮蔽板11は、揺れた燃料が前記貫通孔7からケース部材2内に浸入するのを防止するそれなりの効果があるが、このような遮蔽板11で実験してみるとその効果が十分に発揮されない場合があることが判明した。
【0008】
その原因は次のようなことではないかと思われる。即ち、車両は、特に加減速を頻繁に繰り返すが、特にそのような運転時、車両用燃料タンク内の燃料は、車両の進行方向に対して前後に急速に移動し、その液面には上下方向の差が大きい波が多数発生することになる。そのように上下方向の差が大きい波が発生する場合、最も高く上がった燃料は、続いて下降するときに遮蔽板11の上方から遮蔽板11とケース部材2との間に浸入し(図10の矢印イ参照)、次いで浸入した燃料が貫通孔7からケース部材内に浸入したり、或いは、最も低く下がった燃料は、続いて上昇するときに遮蔽板11の下方から遮蔽板11とケース部材2との間に浸入し(図10の矢印ロ参照)、次いで浸入した燃料が貫通孔7からケース部材内に浸入するためと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−57327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の目的は、例え燃料タンク内の燃料が大きく波だったとしても、貫通孔からケース部材内を介してキャニスタ側に流出する燃料をほとんどなくすことができる燃料遮断弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願発明は以下の構成を採用する。
【0012】
請求項1に係る発明では、燃料タンク内に連通する下部開口とキャニスタに連通する上部開口を有し、側方に貫通孔を有するケース部材と、前記ケース部材の上方を覆うキャップ部材と、前記ケース部材内に設けられ、上方に弁を有するフロートと、前記ケース部材の下方を覆う底部材と、を有し、前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を上方向から覆う第1の遮蔽部材と、前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を下方向から覆う第2の遮蔽部材とを設ける構成を特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、更に、前記第1の遮蔽部材は前記キャップ部材に設け、前記第2の遮蔽部材は前記底部材に設ける構成を特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、更に、前記第1の遮蔽部材と前記第2の遮蔽部材とは、側面視で重なる構成を特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、更に、前記キャップ部材には、前記第1の遮蔽部材の内側に前記ケース部材と係合する係合部材が設けられる構成を特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、更に、前記第2の遮蔽部材は、前記係合部材に外方から当接し、前記係合部材を内方へ押圧する構成を特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明では、更に、前記キャップ部材と前記ケース部材、及び前記ケース部材と前記底部材とは、いずれもスナップフィット係合である構成を特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明では、更に、前記貫通孔は、車両の進行方向に略直交する方向に、対向して設けられる構成を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、貫通孔との間に隙間を有して貫通孔を上方向から覆う第1の遮蔽部材と、同じく貫通孔との間に隙間を有して貫通孔を下方向から覆う第2の遮蔽部材とを設けることにより、横方向から貫通孔に浸入しようとする燃料(図10の矢印ハ参照)は勿論のこと、上下方向から貫通孔に浸入しようとする燃料(図10の矢印イ、ロ参照)をも確実に阻止することができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、第1の遮蔽部材をキャップ部材に設け、第2の遮蔽部材を底部材に設けることにより、請求項1に係る発明の効果に加え、それぞれの遮蔽部材の形成を容易に行うことができる。なお、それぞれの遮蔽部材は、キャップ部材または底部材に対し、一体成形で形成しても或いは別体のものとして形成してもよい。
【0021】
請求項3に係る発明では、第1の遮蔽部材と第2の遮蔽部材とは、側面視で重なるように形成することにより、請求項1または2に係る発明の効果に加え、それぞれの遮蔽部材の長さを必要最小限にすることができ、部品コストの高騰をおさえることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、キャップ部材に、第1の遮蔽部材の内側にケース部材と係合する係合部材を設けることにより、請求項1乃至3に係る発明の効果に加え、キャップ部材とケース部材の係合を容易にすることができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、第2の遮蔽部材を、係合部材に外方から当接して係合部材を内方へ押圧することにより、請求項4に係る発明の効果に加え、係合部材が燃料の膨潤等により外方へ拡がる弊害を防止することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、キャップ部材とケース部材、及びケース部材と底部材とを、いずれもスナップフィット係合によって係合することにより、請求項1乃至5に係る発明の効果に加え、キャップ部材とケース部材と底部材との取り付けを短時間で且つ容易に行うことができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、貫通孔を、車両の進行方向に略直交する方向に対向して設けることにより、請求項1乃至6に係る発明の効果に加え、車両の加減速により車両用燃料タンク内で頻繁に生じる車両の進行方向に発生し且つ上下方向の差が大きい燃料の波に対し、貫通孔の位置をともに遠くにすることができ、貫通孔から浸入しようとする燃料をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】燃料遮断弁の全体側面図
【図2】燃料遮断弁の全体断面図
【図3】図1のA−A線での断面図
【図4】キャップ部材の側面図
【図5】キャップ部材の底面図
【図6】ケース部材の側面図
【図7】フロートの側面図
【図8】底部材の側面図
【図9】底部材の底面図
【図10】従来の燃料遮断弁の全体断面図
【実施例】
【0027】
図1に燃料遮断弁の全体側面図を示し、図2に燃料遮断弁の全体断面図を示し、図3に図1のA−A線での断面図を示し、図4乃至図9にケース部材、キャップ部材及び底部材の側面図等を示す。本願発明の燃料遮断弁は、上記した燃料漏れ防止弁でも、或いは満タン制御弁の機能を併せ持つものであってもよい。また、どのような用途に用いられるものでもよいが、以下においては、自動車用のものについて説明する。
【0028】
燃料遮断弁20は、ケース部材30、ケース部材30内に配置されるフロート45、弁体46、キャップ部材50及び底部材60等を有する。
【0029】
ケース部材30は、大径の下部開口31を有する下方開放の円筒状の樹脂製部材であり、内部空間32を有する。ケース部材30の上壁33の中央には、その外周にシール部材であるOリング34aが嵌合されるOリング溝34を有する小径の管状体35が立設され、その管状体35内には、内部空間32に連通する前記下部開口31より小径の上部開口36を有する。また、上部開口36の下端部には、後記の弁体46が当接する弁座37が形成される。
【0030】
前記上部開口36は、後記の連通路52に連通され、燃料タンク25内の燃料蒸発ガスを、前記内部空間32及び上部開口36を経て連通路52より図示しないキャニスタに排出したり、或いは大気をその逆の経路で燃料タンク25内に導入する。
【0031】
ケース部材30の側面には、複数の貫通孔39がケース部材30の内外を貫通する形態で設けられる。この実施例では2個の例を示す。2個の貫通孔39は、図3に示すようにケース部材30の中心を通る水平線(図3で中心を通る上下方向の線)より偏心した位置に対向する位置であって、且つ上下方向(図3の紙面に直交する方向)ではほぼ同じ高さ位置に設けられる。
【0032】
2個の貫通孔39を結ぶ線を、車両の進行方向に略直交する方向にすることにより、車両の加減速により車両用燃料タンク内で頻繁に生じる車両の進行方向で発生し且つ上下方向の差が大きい燃料の波に対し、2個の貫通孔39の位置がともに遠くになり、貫通孔39から浸入しようとする燃料がより少なくなるため好ましい。
【0033】
なお、満タン制御弁の機能を有するもので、貫通孔39にその機能を持たせようとすれば、図10のもののように貫通孔7の大きさをある程度大きくし、満タン位置に合わせて上下方向の位置を決めればよいが、実施例のものの満タン位置は、燃料遮断弁20の下部開口31より下方位置に想定しており、貫通孔39は比較的小さく、且つ上方に設けている。本願発明の燃料遮断弁20は、満タン制御弁の機能を有しないものであってもよい。また、貫通孔39は、1個でもよく、3個以上の複数個であってもよく、その位置も上下方向の位置はほぼ同じにされるが、水平方向の位置は等間隔であっても等間隔でなくてもよい。
【0034】
ケース部材30の外側面の上方には、断面三角状(図2、図6参照)の複数個、この例では3個の係止片40が略等間隔に形成されており、これら係止片40は、後記キャップ部材50の係合口55aに所謂スナップフィット係合によりワンタッチで係合される。更に、ケース部材30の外側面の下方には、係止手段41が形成される。この係止手段41は、図6に示すように前記係止片40の下方位置に複数個、例えば係止片40と同じ3個が略等間隔に設けられる。
【0035】
各係止手段41は、断面三角状(図2、図6参照)の係止部41a及び保持部41bを有する。そして、係止部41aは、後記底部材60の係合口63aに係合される。保持部41bは、係止部41aの下方に形成される外方に突出し、側面視矩形状の膨出部分であり、その内部には上下方向に貫通した断面矩形状で、後記の底部材60の係合板状体63が嵌合する貫通穴41cを有する。
【0036】
また、ケース部材30内には、内壁面に沿って垂直方向に複数のリブ38が等間隔に設けられており、該リブ38は、ケース部材30の内壁面と後記のフロート45の外周面との間に空間を確保し、燃料蒸発ガス等の通路を形成するとともに、その先端でフロート45の上下動をガイドする。
【0037】
ケース部材30の内部空間32にはフロート45が収納される。フロート45は、樹脂製で下方開放の概略中空円筒状の部材であり、その上面中央部には、断面テーパ状で先端が円弧状の弁体46が上方に伸びる形態でフロート45と一体に成形される。その外周部は、ケース部材30の内側面に設けられる垂直なリブ38に沿って上下動可能にされ、フロート45の上動時、前記弁体46は、弁座37に当接し、前記上部開口36を閉鎖する。
【0038】
フロート45と後記の底部材60との間には、スプリング47が介在される。スプリング47は、それ自体ではフロート45を上動する力はないが、ケース部材30内に燃料が侵入したとき燃料による浮力とともにフロート45を素早く上動する力として作用する。
【0039】
ケース部材30の上方には、樹脂製のキャップ部材50が係合される。このキャップ部材50は、フランジ部51及び連通路52等を有する。フランジ部51は、キャップ部材の本体をなし、略水平状の部分であり、その外周下端部51aは、燃料タンク25の上壁面に設けられるタンク開口25aにケース部材30を挿入する形態でタンク開口25aの上面近傍に熱溶着等により取り付けられる。
【0040】
フランジ部51の中央部には、筒状空間53が上方に伸びる形態で形成され、この筒状空間53の上方側部から連通路52が略水平に延設される。そして、この連通路52は、図示しない他の管部材を介して図示しないキャニスタに連通される。前記筒状空間53の内径は、管状体35の外径より若干大きく形成されており、筒状空間53には、図2に示すようにケース部材30の管状体35がOリング溝34にOリング34aを取り付けた状態で嵌合される。
【0041】
また、フランジ部51の下面であって、前記外周下端部51aの内側には、外側から内側に向かって第1の遮蔽部材54及びケース係合部材55がほぼ同心円状に垂下する形態で一体に形成される。
【0042】
前記第1の遮蔽部材54は、図3及び図5に示すように同一円を略半分に切った2個の半円弧状の部材であり、それぞれの端部には上下方向の切り溝54a、54aを有する。この第1の遮蔽部材54の上下方向の長さは、ケース部材30とキャップ部材50とが組み付けられた時、図1に示すように側面視でケース部材30の貫通孔39を完全に覆う長さとする。
【0043】
そして、図3に示すように両端の切り溝54a、54aは、2個の貫通孔39からできるだけ離れるように、2個の切り溝54a、54aを結ぶ線が2個の貫通孔39を結ぶ線に直交する位置に設ける。なお、切り溝54aがないと第1の遮蔽部材54の下端に燃料が達すると第1の遮蔽部材54内は密封され通気不能になるため切り溝54aに相当するものは必要となる。そのため、切り溝54aは1個でも3個以上でもよく、1個の場合には、図3の右側のみにすると2個の貫通孔39からできるだけ離れることになるため好ましい。このように、前記第1の遮蔽部材54は、貫通孔39との間に隙間を有して貫通孔39を上方から完全に覆うことになり、図10で矢印イで示す上方からの燃料が貫通孔39から内部空間32に侵入する弊害を確実に防止することができる。
【0044】
前記ケース係合部材55は、請求項での係合部材に相当し、前記第1の遮蔽部材54の内側に設けられ、図3及び図5に示すように同一円を略3個に切り、それぞれの間の円弧を取り除いた残り3個の円弧状の部材であり、図3に示すように2個の貫通孔39を結ぶ線上にはケース係合部材55がないように配置される。ケース係合部材55をこのように配置することにより、2個の貫通孔39が塞がれることはない。ケース係合部材55の上下方向の長さは、見栄えを考慮し、前記第1の遮蔽部材54の上下方向の長さより短くしている。
【0045】
また、3個のケース係合部材55の内径は、ケース部材30の外径より若干大きく形成されているとともに、3個のケース係合部材55のそれぞれには、上端部近傍に1個の矩形状の係合口55aが設けられ、ケース部材30とキャップ部材50とが組み付けられた時、ケース部材30の外側面に設けられる3個の係止片40が係合する。なお、ケース係合部材55の側面視の状態を図1及び図4に破線で示す。
【0046】
ケース部材30の底部には、下部開口31を覆う形態で底部材60が取り付けられる。底部材60は、金属製或いは樹脂製のいずれでもよいが、以下においては金属製のものとして説明する。この底部材60には、図9に示すように燃料等が内部空間32に侵入するための複数の底部開口61が設けられる。この底部開口61は、給油時或いは自動車が傾斜状態にあったり横転した時等に内部空間32に燃料を侵入させるためのもので、給油時等に内部空間32に侵入する燃料によりフロート45を上動させ、フロート45の上部に設けられる弁体46により上部開口36を閉鎖し、燃料がキャニスタに流出するのを防止する。
【0047】
底部材60は、板部材により形成され、その外周端には、3個の第2の遮蔽部材62及び3個の係合板状体63が切り起こしにより一体に形成される。
【0048】
前記第2の遮蔽部材62は、図3及び図9に示すように同一円を略6個に切り、それぞれの間の円弧を取り除いた残り3個の円弧状の部材であり、それぞれ上方に向かって立設する。この第2の遮蔽部材62の上下方向の長さは、ケース部材30と底部材60とが組み付けられた時、図1に示すように側面視でケース部材30の貫通孔39を完全に覆う長さとする。このように、前記第2の遮蔽部材62は、貫通孔39との間に隙間を有して貫通孔39を下方から完全に覆うことになり、図10で矢印ロで示す下方からの燃料が貫通孔39から内部空間32に侵入する弊害を確実に防止することができる。
【0049】
3個の第2の遮蔽部材62の内径は、キャップ部材50の3個のケース係合部材55の外径と同じか或いは若干小さくされており、ケース部材30と底部材60とが組み付けられた時、図1及び図3に示すように1個の第2の遮蔽部材62の上方で且つ左右端の内面は、隣合う2個のケース係合部材55のそれぞれの下方で且つ左右端の外面に当接し、それぞれのケース係合部材55を押圧する。なお、「内方へ押圧する」には、第2の遮蔽部材62とケース係合部材55とが単に当接状態にあるものを含む。
【0050】
図3で両部材の当接箇所を符号Pで示す。このような構造とすることにより、ケース係合部材55を樹脂製とする場合、燃料の膨潤等によりケース係合部材55が外方へ拡がる弊害が防止できる。第2の遮蔽部材62の上端を若干外側に広げておけば、ケース部材30と底部材60との組み付けが容易になってよい。
【0051】
前記3個の係合板状体63は、3個の第2の遮蔽部材62の間にそれぞれ形成される縦に長い矩形状の部材で、その上方には係合口63aを有する。そして、ケース部材30と底部材60との組み付け時、前記3個の係合板状体63は、ケース部材30の3個の保持部41bの貫通穴41cのそれぞれに下方から上方に向かって挿入され、その後、係合板状体63の係合口63aは、ケース部材30の係止部41aに係合される。
【0052】
ケース部材30とキャップ部材50と底部材60の組み付けは次のように行われる。まず、ケース部材30の内部空間32にフロート45とスプリング47を収納し、管状体35のOリング溝34にOリング34aを嵌合してケース部材30を底部材60の上に載せる。その場合、ケース部材30の3個の保持部41bの貫通穴41cと、底部材60の3個の係合板状体63の位置を合わせる。
【0053】
そして、ケース部材30を押し下げる。すると、底部材60の3個の係合板状体63は、ケース部材30の3個の貫通穴41cに挿入する。構わずケース部材30を押し下げると押し下げ終了直前に係合板状体63の係合口63aは、ケース部材30の係止部41aに係合する。このようにケース部材30と底部材60とは、所謂スナップフィット係合によりワンタッチで容易に係合される。そしてケース部材30と底部材60とが係合されると、底部材60の第2の遮蔽部材62は、ケース部材30の貫通孔39を間に隙間を有して完全に覆い、図10で矢印ロで示す下方からの燃料を完全に遮蔽する。
【0054】
次いで、ケース部材30の上部にキャップ部材50を置き、ケース部材30の上方に設けられる3個の係止片40と、キャップ部材50のケース係合部材55に設けられる係合口55aとの位置を合わせ、キャップ部材50を押し下げる。すると、キャップ部材50の筒状空間53内にケース部材30の管状体35が嵌入するとともに、キャップ部材50のケース係合部材55の外側に底部材60の第2の遮蔽部材62が当接する形態で嵌合する。構わずキャップ部材50を押し下げと、筒状空間53内に管状体35が入り込み、ケース係合部材55の外側に第2の遮蔽部材62がケース係合部材55に外側から当接する形態で嵌合するようになり、押し下げ終了直前にケース部材30の係止片40がケース係合部材55の係合口55aに係合する。
【0055】
このようにケース部材30とキャップ部材50とは、所謂スナップフィット係合によりワンタッチで容易に係合される。そしてケース部材30とキャップ部材50とが係合されると、キャップ部材50の第1の遮蔽部材54は、ケース部材30の貫通孔39との間に隙間を有して完全に覆い、図10で矢印イで示す上方からの燃料を完全に遮蔽する。そして、前記第1の遮蔽部材54と第2の遮蔽部材62とは側面視で重なり、いずれも隙間を持って貫通孔39を覆う。ケース部材30に対するキャップ部材50と底部材60との組み付けは逆であってもよい。
【0056】
なお、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。例えば、キャップ部材はケース部材と一体に形成され、全体でケース部材を形成していてもよい。
【符号の説明】
【0057】
20 燃料遮断弁 25 燃料タンク
25a タンク開口 30 ケース部材
31 下部開口 32 内部空間
33 上壁 34 Oリング溝
34a Oリング 35 管状体
36 上部開口 37 弁座
38 リブ 39 貫通孔
40 係止片 41 係止手段
41a 係止部 41b 保持部
41c 貫通穴 45 フロート
46 弁体 47 スプリング
50 キャップ部材 51 フランジ部
51a 外周下端部 52 連通路
53 筒状空間 54 第1の遮蔽部材
54a 切り溝 55 ケース係合部材
55a 係合口 60 底部材
61 底部開口 62 第2の遮蔽部材
63 係合板状体 63a 係合口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に連通する下部開口とキャニスタに連通する上部開口を有し、側方に貫通孔を有するケース部材と、
前記ケース部材の上方を覆うキャップ部材と、
前記ケース部材内に設けられ、上方に弁を有するフロートと、
前記ケース部材の下方を覆う底部材と、を有し、
前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を上方向から覆う第1の遮蔽部材と、前記貫通孔との間に隙間を有して前記貫通孔を下方向から覆う第2の遮蔽部材とを設けることを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
前記第1の遮蔽部材は前記キャップ部材に設け、前記第2の遮蔽部材は前記底部材に設けることを特徴とする請求項1に記載の燃料遮断弁。
【請求項3】
前記第1の遮蔽部材と前記第2の遮蔽部材とは、側面視で重なることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料遮断弁。
【請求項4】
前記キャップ部材には、前記第1の遮蔽部材の内側に前記ケース部材と係合する係合部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料遮断弁。
【請求項5】
前記第2の遮蔽部材は、前記係合部材に外方から当接し、前記係合部材を内方へ押圧することを特徴とする請求項4に記載の燃料遮断弁。
【請求項6】
前記キャップ部材と前記ケース部材、及び前記ケース部材と前記底部材とは、いずれもスナップフィット係合であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の燃料遮断弁。
【請求項7】
前記貫通孔は、車両の進行方向に略直交する方向に、対向して設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−188845(P2010−188845A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34788(P2009−34788)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】