説明

燃料電池システムおよびその制御方法

【課題】システム運転停止後に燃料電池の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを防止して燃料電池における触媒劣化を抑制する燃料電池システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池12と、燃料電池12への燃料および酸化ガスの供給を制御するとともに、燃料電池12に電気的に接続されるDC/DCコンバータ72に電圧指令を与えて駆動することにより燃料電池12の出力電圧FCが開放端電圧OCVよりも低い高電位回避電圧V1を超えないように抑制する高電位回避制御を実行するコントローラ90とを備える。コントローラ90は、入力されるシステム運転停止指令に応じて燃料電池12への水素および空気の供給を停止した後、高電位回避制御を所定時間t1だけ実行するようDC/DCコンバータ72の駆動を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよびその制御方法に係り、特に、DC/DCコンバータによって燃料電池の出力電圧を制御する燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料としての水素と酸化ガスとしての空気中の酸素とを電気化学反応させて発電させる燃料電池が知られている。燃料電池は、地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素を排出しないクリーンな発電装置であり、モータを動力源とする電動車両の電源装置として期待されている。
【0003】
一般に、燃料電池は、それぞれが発電能力を有する多数の燃料電池セルが直列接続で積層されたセルスタックとして構成される。燃料電池セルは、例えば固体高分子型の電解質膜を両側からアノード側電極およびカソード側電極で挟持し、さらにその両側から水素流路および空気流路が形成された2枚のセパレータで挟持して構成されている。
【0004】
上記各電極は、それぞれ、電解質膜に接触して設けられる触媒層と、この触媒層の表面に形成されるガス拡散層とを有している。触媒層は、例えば白金系の金属触媒を担持するカーボン粉末を主成分として形成される。また、ガス拡散層は、通気性と電気導電性とを有している。
【0005】
このように構成される燃料電池セルでは、アノード側電極に供給される水素が触媒層による活性化作用によって電子を放出して水素イオン(すなわちプロトン)となる。水素イオンは、湿潤状態で良好なイオン伝導性を発揮する電解質膜を透過してカソード側へ移動する。また、水素イオン化する際に放出される電子が各燃料電池セルのアノード側電極から取り出されて集電され、燃料電池スタックの発電電力として出力されることになる。一方、カソード電極に供給される空気中の酸素は、触媒層の活性化作用によってスタック外部から各燃料電池セルのカソード側電極に還流してきた電子を取り込んで酸素イオンとなる。そして、酸素イオンが電解質膜を透過してきた水素イオンと電気化学結合することによって水が生成される。この生成水は、各燃料電池セルから排出される空気と一緒にマニホールドを介して燃料電池スタックから排出される。
【0006】
上記のような発電機能を有する燃料電池において、最大出力可能電圧である開放端電圧(OCV(Open Circuit Voltage))の状態が持続されると、白金触媒が溶出して劣化することが知られている。そのため、燃料電池は、開放端電圧よりも低い使用上限電圧以下で発電運転させるように燃料電池への水素および空気の供給を調節または停止すること等が行われる。
【0007】
ここで、燃料電池システムを搭載した車両においては、ユーザのスイッチ操作に応じて燃料電池システムの運転を停止させるとき、燃料電池への水素および空気の供給を停止すると共に、燃料電池からの出力電圧を変換または制御するための電力用機器類をシャットダウンすることが考えられる。そうした場合、システム運転中は上記のように開放端電圧よりも低い上限電圧以下に制御されていたとしても、システム運転停止後に燃料電池内に残存する水素および空気によって発電が継続されて、各燃料電池セルの起電力が開放端電圧へと上昇してしまうことが問題となる。
【0008】
例えば、特許文献1では、通常の停止運転を終了した後に、燃料電池に水素のみを供給し、燃料電池内の空気極に残存する酸素を消費させて燃料電池の電圧を低下させる燃料電池システムが開示されている。これにより、燃料電池を高電位無負荷状態で放置することによる劣化を防止することが可能で、無駄に排出する水素量を抑えて燃費の低下を防止できると記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、燃料電池を発電運転状態と運転休止状態との間で切り替えて間欠運転させる際、発電休止状態にあるときに燃料電池に電気的に接続されたDC/DCコンバータの作動によって燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い高電位回避電圧に維持されるよう制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−100820号公報
【特許文献2】特開2008−218398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1では、システム運転停止後に水素のみを供給して燃料電池内に残存する酸素を消費して燃料電池の電圧を低下させるとしか記載されておらず、残存酸素を消費させる際に生じる発電によって燃料電池の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを如何にして抑制するのかについての具体的な記述は全くなされていない。
【0012】
また、特許文献2は、燃料電池の間欠運転中に燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い高電位回避電圧に維持されることには有効であるものの、燃料電池を含むシステムの運転停止後に燃料電池の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを抑制するための解決策を提示していない。
【0013】
本発明の目的は、燃料電池を含むシステムの運転が停止された後に燃料電池の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを防止して燃料電池における触媒劣化を抑制する燃料電池システムおよびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料および酸化ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を制御するとともに、燃料電池に電気的に接続されるDC/DCコンバータに電圧指令を与えて駆動することにより燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い前記電圧指令に対応する高電位回避電圧を超えないように抑制する高電位回避制御を実行する制御装置と、を備える燃料電池システムであって、制御装置は、入力されるシステム運転停止指令に応じて燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を停止した後、高電位回避制御を所定時間だけ実行するようDC/DCコンバータの駆動を継続するものである。
【0015】
本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御装置は、前記システム運転停止後の高電位回避制御の間に、コンバータに対する電圧指令を前記高電位回避電圧に対応する第1の値から第1の値よりも低い第2の値へ降下させる制御を実行してもよい。
【0016】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、燃料電池により発電された電力を充電可能な蓄電装置を更に備え、制御装置は、コンバータに対する電圧指令の第1の値から第2の値への降下レートを蓄電装置の充電可能電力を監視しながら決定するのが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサを更に備え、前記所定時間は、システム運転停止時から、電圧センサによる検出値が前記電圧指令に対応する高電位回避電圧から降下し始めるまでの時間であってもよいし、あるいは、前記所定時間は、システム運転停止後に燃料電池内に残存する燃料と酸化ガスとの電気化学反応による発電によって生じる出力電圧が前記高電位回避電圧を超えない程度まで酸化ガスが消費されるまでに要する予め設定された時間であってもよい。
【0018】
本発明に係る燃料電池の制御方法は、燃料および酸化ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を制御するとともに、燃料電池に電気的に接続されるDC/DCコンバータに電圧指令を与えて駆動することにより燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い前記電圧指令に対応する高電位回避電圧を超えないように抑制する高電位回避制御を実行する制御装置と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、システム運転停止指令の入力に応じて燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を停止するステップと、システム運転停止後に高電位回避制御を所定時間だけ実行するようDC/DCコンバータの駆動を継続する高電位回避制御継続ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る燃料電池システムおよびその制御方法によれば、燃料電池システムの運転停止後に、DC/DCコンバータの駆動を継続することにより、燃料電池の電圧を開放端電圧よりも低い高電位回避電圧を超えないように制御する高電位回避制御を所定時間だけ実行することで、システム運転停止後に燃料電池の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを防止することができ、燃料電池の触媒劣化を抑制できる。
【0020】
また、本発明に係る燃料電池システムおよびその制御方法において、システム運転停止後の高電位回避制御の間に、コンバータに対する電圧指令を前記高電位回避電圧に対応する第1の値から第1の値よりも低い第2の値へ降下させる制御を実行すれば、燃料電池での発電が促進されて残存する酸素の消費を早めることができ、システム運転停止後のDC/DCコンバータの駆動時間を短縮することができる。これにより、システム運転停止後からDC/DCコンバータのシャットダウンおよび燃料電池システムに含まれるシステムメインリレーの開路までの時間をできるだけ短くして、車両の高圧安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である燃料電池システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、燃料電池セルの分解斜視図である。
【図3】図3は、システム運転停止後の燃料電池の出力電圧の経時的な変化状態を示すグラフである。
【図4】図4は、システム運転停止後の燃料電池の出力電圧の経時的な変化状態を示す別のグラフである。
【図5】図5は、システム運転停止後の燃料電池の出力電圧の経時的な変化状態を示すさらに別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0023】
図1は、本願の一実施形態である燃料電池システム10が燃料電池車両の車載電源システムとして用いられている例を示すシステム概略構成図である。燃料電池システム10は、燃料および酸化ガスの供給を受けて発電する燃料電池スタック(燃料電池)12と、酸化ガスとしての空気中の酸素を燃料電池スタック12に供給するための空気供給系30と、燃料としての水素を燃料電池スタック12に供給するための水素供給系50と、電力の充放電を制御するための電力系70と、システム全体を統括制御するコントローラ(制御装置)90とを備える。
【0024】
燃料電池スタック12は、多数の燃料電池セルを電気的に直列接続した状態で積層してなる固体高分子電解質膜型セルスタックである。燃料電池スタック12では、燃料極(アノード極)においてH2 → 2H++2e-で表される酸化反応が生じ、空気極(カソード極)において(1/2)O2+2H++2e- → H2Oで表される還元反応が生じる。そして、燃料電池スタック12全体としては、H2+(1/2)O2 → H2Oで表される電気化学反応が生じることになる。
【0025】
燃料電池スタック12は、システムメインリレー14を介して電力系70に電気的に接続されている。このシステムメインリレー14は、コントローラ90からの指令を受けてオン・オフ制御される。また、燃料電池スタック12と電力系70とを接続する電力ラインには、燃料電池スタック12の出力電圧(以下、「FC電圧」という場合がある)を検出するための電圧センサ16と、燃料電池スタック12の出力電流(以下、「FC電流」という場合がある)を検出するための電流センサ18が設置されている。
【0026】
空気供給系30は、燃料電池スタック12の空気極に供給される空気が流れる空気供給通路32と、燃料電池スタック12から排出される空気が流れる空気排出通路34とを有している。空気供給通路32には、エアフィルタ36を介して大気中から空気を取り込むエアコンプレッサ38と、エアコンプレッサ38により圧縮加圧される空気を適度に加湿するための加湿器40と、燃料電池スタック12への空気供給を遮断するための遮断弁42とが設けられている。一方、空気排出通路34には、燃料電池スタック12からの空気の排出を遮断するための遮断弁44と、空気供給圧を調整するための調圧弁46とが設けられている。また、空気排出通路34は加湿器40を貫通して設けられており、燃料電池スタック12から空気と一緒に排出された生成水が加湿器40内を流れる際に回収されて、空気供給通路32を介して供給される空気の加湿に利用されるように構成されている。
【0027】
水素供給系50は、例えば高圧水素タンクなどからなる水素供給源52と、水素供給源52から燃料電池スタック12の燃料極に供給される水素ガスが流れる水素供給通路54と、燃料電池スタック12から排出される水素オフガスが流れる水素排出通路56と、水素排出通路56から分岐して水素供給通路54に接続される循環通路58と、燃料電池スタック12から排出された水素オフガスを水素排出通路56から循環通路58を介して水素供給通路54へ循環供給するための循環ポンプ60と、を含んで構成されている。
【0028】
水素供給源52から燃料電池スタック12に接続する水素供給通路54には、水素ガス供給方向の上流側から順に、水素供給源52からの水素ガスの流出を遮断する遮断弁61、水素供給源52から噴出する水素ガスを適度に減圧する調圧弁62、燃料電池スタック12への水素供給量を制御するインジェクタ63、燃料電池スタック12への水素ガス供給を遮断するための遮断弁64、および、燃料電池スタック12に供給される水素ガスの圧力を検出する圧力センサ65が設置されている。一方、水素排出通路56には、水素オフガス排出方向の上流側から順に、燃料電池スタック12からの水素オフガス排出を遮断するための遮断弁66と、水素オフガスをシステム外に排出する際に開弁される水素オフガス排出用遮断弁67とが設置されている。
【0029】
上記空気供給系30および水素供給系50に含まれる遮断弁42,44,61,64,66,67には、コントローラ90からの指令を受けて開弁または閉弁する電磁弁などが好適に用いられる。また、調圧弁46,62は、その上流側の一次圧力を予め設定した二次圧に調圧する装置であり、例えば一次圧を減圧する機械式の減圧弁などが好適に用いられる。さらに、インジェクタ63は、電磁駆動力により開閉可能な弁体を有する電磁式の開閉弁などにより好適に構成され、弁体の開度または開弁時間が制御されることによって通過する水素ガス流量および水素ガス圧を調整できるようになっている。
【0030】
電力系70は、DC/DCコンバータ72、バッテリ74、インバータ76、交流モータ78、及び補機類80を含む。燃料電池システム10は、DC/DCコンバータ72とインバータ76とが並列に燃料電池スタック12に接続するパラレルハイブリッドシステムとして構成されている。DC/DCコンバータ72は、バッテリ74から供給される直流電圧を昇圧してインバータ76に出力する機能と、燃料電池スタック12が発電した直流電力、又は回生制動により交流モータ78が回収した回生電力を降圧してバッテリ74に充電する機能とを有する。DC/DCコンバータ72のこれらの機能により、バッテリ74の充放電が制御される。また、コントローラ90からの電圧指令を受けてDC/DCコンバータ72の出力電圧が制御されることにより、燃料電池スタック12の運転ポイント(FC電圧、FC電流)が制御されるようになっている。
【0031】
バッテリ74は、余剰電力の貯蔵源、回生制動時の回生エネルギー貯蔵源、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギーバッファとして機能する。バッテリ74としては、例えばリチウム二次電池等の二次電池が好適に用いられる。ただし、バッテリに代えて、内部での化学反応を伴わずに蓄電可能なキャパシタが蓄電装置として用いられてもよい。バッテリ74には、SOC(State of charge)を検出するためのSOCセンサ75が取り付けられている。詳細には、SOCセンサ75は、バッテリ電流を検出する電流センサで構成されることができ、コントローラ90はその電流センサの検出値を積算することによってバッテリ74の残容量を監視することができる。また、図示していないが、バッテリ74の温度を検出する温度センサが設けられており、その検出値であるバッテリ温度もコントローラ90へと出力されるよう構成されている。
【0032】
インバータ76は、例えばパルス幅変調制御方式や矩形波制御方式で駆動されるインバータであり、コントローラ90からのスイッチング指令に従って内部の電力用スイッチング素子(例えばIGBT等)がオン・オフ制御されることで、燃料電池スタック12又はバッテリ74から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換して、交流モータ78の回転トルクを制御する。交流モータ78は、例えば三相同期型の交流モータであり、燃料電池車両の動力源を構成する。
【0033】
補機類80は、燃料電池システム10内の各部に配置されている各モータ(例えば、ポンプ類などの動力源)や、これらのモータを駆動するためのインバータ類、更には各種の車載補機類(例えば、エアコンプレッサ、インジェクタ、冷却水循環ポンプ、ラジエータなど)を総称するものである。
【0034】
コントローラ90は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インタフェースを備えるコンピュータシステムであり、燃料電池システム10の各部を制御する。例えば、コントローラ90は、ユーザ操作によりイグニッションスイッチ(図示せず)から出力される起動信号IGを受信すると、燃料電池システム10の運転を開始し、アクセルセンサから出力されるアクセル開度信号ACCや、車速センサから出力される車速信号VCなどを基に、システム全体の要求電力を求める。システム全体の要求電力は、車両走行電力と補機電力との合計値である。
【0035】
ここで、補機電力には、車載補機類(エアコンプレッサ、水素ポンプ、及び冷却水循環ポンプ等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、及び懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配設される装置(空調装置、照明器具、及びオーディオ等)で消費される電力などが含まれる。
【0036】
そして、コントローラ90は、燃料電池スタック12とバッテリ74とのそれぞれの出力電力の配分を決定し、燃料電池スタック12の発電量が目標電力に一致するように、空気供給系30及び水素供給系50を制御するとともに、DC/DCコンバータ72を制御して、燃料電池スタック12の出力電圧を調整することにより、燃料電池スタック12の運転ポイント(FC電圧、FC電流)を制御する。更に、コントローラ90は、アクセル開度に応じた目標トルクが得られるように、例えば、スイッチング指令として、U相、V相、及びW相の各交流電圧指令値をインバータ76に出力し、交流モータ78の出力トルク及び回転数を制御する。
【0037】
図2は燃料電池スタック12を構成する燃料電池セル20の分解斜視図である。燃料電池セル20は、固体高分子電解質膜22と、アノード側電極23と、カソード側電極24と、セパレータ25,26とから構成されている。アノード側電極23及びカソード側電極24は、高分子電解質膜22を両側から挟持してサンドイッチ構造をなす拡散電極である。ガス不透過の導電性部材から構成されるセパレータ25,26は、このサンドイッチ構造をさらに両側から挟持しつつ、アノード側電極23及びカソード側電極24との間にそれぞれ水素及び空気の流路を形成する。
【0038】
セパレータ25には、水素流路となる断面凹状の複数の溝27が互いに平行に形成されている。また、セパレータ26には、空気流路となる断面凹状の複数の溝28が互いに平行に且つ上記水素流路用溝27に対して直交する方向に延伸形成されている。なお、セパレータ25,26は隣接する燃料電池セルと共通化されていることから、セパレータ25の水素流路形成面とは反対側の表面には空気流路用溝28が形成され、セパレータ26の空気流路形成面とは反対側の表面には水素流路用溝27が形成されている。
【0039】
アノード側電極23は、白金系の金属触媒(Pt,Pt−Fe,Pt−Cr,Pt−Ni,Pt−Ruなど)を担持するカーボン粉末を主成分とし、固体高分子電解質膜22に接する触媒層23aと、触媒層23aの表面に形成され、通気性と電子導電性とを併せ持つガス拡散層23bとを有する。同様に、カソード側電極24は、触媒層24aとガス拡散層24bとを有する。例えば、触媒層23a,24aは、白金、又は白金と他の金属からなる合金を担持したカーボン粉を適当な有機溶媒に分散させ、電解質溶液を適量添加してペースト化し、高分子電解質膜22上にスクリーン印刷して形成されている。また、ガス拡散層23b、24bは、例えば、炭素繊維から成る糸で織成したカーボンクロス、カーボンペーパー、又はカーボンフェルトにより形成されている。高分子電解質膜22は、固体高分子材料、例えば、フッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を発揮する。
【0040】
次に、上記構成からなる燃料電池システム10の動作について説明する。
ユーザによりイグニッションスイッチがオン操作されると、コントローラ90に起動信号IGが入力される。これにより、コントローラ90は、システムメインリレー14を閉路させると共に、燃料電池スタック12に水素および空気を供給して燃料電池システム10の運転を開始する。
【0041】
燃料電池システム10では、運転負荷に応じて、燃料電池スタック12の運転モードを間欠的に切り替える間欠運転を行うことにより発電効率の向上が図られている。例えば、燃料電池システム10は、発電効率の低い低負荷領域では、燃料電池スタック12の発電指令値をゼロに設定して運転制御し、車両走行に要する電力やシステム運用上必要な電力をバッテリ74からの電力によって賄う(以下、「第1の運転モード」という)。一方、発電効率の高い高負荷領域では、アクセル開度や車速などを基に燃料電池スタック12の発電指令値を算出して運転制御し、車両走行に要する電力やシステム運用上必要な電力を燃料電池スタック12による発電電力のみによって又は燃料電池スタック12による発電電力とバッテリ74からの電力とによって賄う(以下、「第2の運転モード」という)。
【0042】
ただし、いずれの運転モードにおいても、通常運転時における燃料電池スタック12の出力電圧は、原則として、使用上限電圧V1と使用下限電圧V2との間の運転範囲に制限される。使用上限電圧V1としては、燃料電池スタック12の開放端電圧よりも低電位であって触媒層23a,24aに含まれている白金触媒が溶出しない程度の電圧範囲であるという条件を満たす電圧であることが好ましい。このように燃料電池スタック12の出力電圧を使用上限電圧V1以下に制御し、燃料電池スタック12の触媒劣化を防止することを高電位回避制御ということとする。また、使用上限電圧V1を高電位回避電圧という場合がある。使用上限電圧V1は、例えば1つの燃料電池セル20あたりの電圧が最大出力電圧の90%程度になるように設定するのが好適である。
【0043】
使用下限電圧V2としては、各燃料電池セルのセル電圧が還元領域に低下しない程度の電圧範囲であるという条件を満たす電圧であることが好ましい。燃料電池スタック12を酸化領域にて連続運転し続けると、カソード側電極24の触媒層24aに含まれる白金触媒の表面に酸化皮膜が形成されることにより白金触媒の有効面積が減少する。すると、活性電圧が増大するので、燃料電池スタック12のI−V特性が低下する。触媒活性化処理を実施することにより、酸化皮膜を還元し、白金触媒から酸化皮膜を除去することで、I−V特性を回復させることができるが、セル電圧を酸化領域と還元領域との間で頻繁に遷移させると、燃料電池スタック12の耐久性が低下する。また、セル電圧を還元領域にまで下げた後に、要求負荷の増大に応じてセル電圧を酸化領域まで引き上げると、白金触媒を担持するカーボンが酸化する場合がある。このような事情を勘案し、通常運転時における燃料電池スタック12の出力電圧を使用下限電圧V2以上に制御することで、燃料電池スタック12の耐久性低下を抑制することができる。使用下限電圧V2は、例えば1つの燃料電池セル20あたりの電圧が最大出力電圧の80%程度になるように設定するのが好適である。
【0044】
第1の運転モードでは、コントローラ90は、発電指令値をゼロに設定し、燃料電池スタック12への反応ガス供給を停止するとともに、DC/DCコンバータ72への電圧指令値を使用上限電圧V1に設定する。反応ガス供給を停止した後においても、燃料電池スタック12内部に残存している未反応の水素および酸素が使用上限電圧V1を維持できるだけのエネルギーを有しているので暫くは微量な発電が継続され、燃料電池スタック12の出力電圧が使用上限電圧V1を維持し続ける。
【0045】
この発電期間中に発電された電力は、補機類80で消費されるが、補機類80で消費しきれない場合にはバッテリ74に充電される。そして、燃料電池スタック12に残存する水素および酸素が発電に供されて減少していくことで、燃料電池スタック12の出力電圧をもはや使用上限電圧V1に維持することができなくなって発電停止へと至り、その後は燃料電池スタック12の出力電圧が次第に低下していく。
【0046】
燃料電池スタック12の出力電圧が使用下限電圧V2まで低下すると、空気供給系30を駆動し、燃料電池スタック12に酸素(空気)を補給する。燃料電池スタック12は、酸素の補給を受けて発電するので、燃料電池スタック12の出力電圧は上昇に転じる。燃料電池スタック12の出力電圧が所定電圧まで昇圧した段階で、酸素補給を終了する。このように、発電停止期間中では、燃料電池スタック12の出力電圧が使用下限電圧V2まで低下する度に酸化ガスが適宜補給され、出力電圧が使用下限電圧V2を下回らないように制御される。
【0047】
第2の運転モードでは、コントローラ90は、要求負荷に応じて発電指令値を算出し、燃料電池スタック12への水素および空気供給を制御するとともに、DC/DCコンバータ72を介して燃料電池スタック12の運転ポイントを制御する。このとき、DC/DCコンバータ72への電圧指令値は、使用上限電圧V1と使用下限電圧V2との間の運転範囲に制限される。
【0048】
続いて、上記のように間欠運転される燃料電池システム10のシステム運転停止について説明する。
ユーザによりイグニッションスイッチがオフ操作されると、燃料電池システム10では、コントローラ90に起動信号IGの解除、すなわちシステム運転停止指令が入力される。この入力を受けてコントローラ90は、空気供給系30のエアコンプレッサ30の駆動停止および遮断弁42,44の閉弁を行って燃料電池スタック12への空気供給を停止すると共に、水素供給系50についても同様に循環ポンプ60の作動停止および遮断弁61,62,64等の遮断弁の閉弁を行って燃料電池スタック12への水素供給を停止し、また、インバータ76のシャットダウン、車載補機類に含まれる各種ポンプやモータの作動停止等を実行して、DC/DCコンバータ72およびシステムメインリレー14を除くシステム全体の運転を停止させる。
【0049】
このとき、燃料電池スタック12への水素および酸素の供給停止と同時に、DC/DCコンバータ72およびインバータ76をシャットダウンすると共にシステムメインリレー14を開路してしまうと、上述した第1の運転モードの場合と同様に、燃料電池スタック12内に残存する水素および酸素によって微量な発電が継続することによって燃料電池スタックの出力電圧が開放端電圧へと上昇してしまうことになる。
【0050】
そこで、本実施形態の燃料電池システム10では、ユーザ操作によるシステム運転停止指令を受けた後も、上記と同様の高電位回避制御を所定時間だけ実行するようDC/DCコンバータ72の駆動を継続させることとする。
【0051】
図3は、システム停止指令後の燃料電池スタック12の出力電圧(FC電圧)の推移を示すグラフである。横軸は時間であり、時間ゼロはユーザ操作によりシステム運転停止指令があったときに相当する。
【0052】
なお、図3において、DC/DCコンバータ72への電圧指令を示す一点鎖線とFC電圧を示す実線とが若干ずれて示されているが、これはFC電圧がDC/DCコンバータ72の電圧指令値に維持されている様子を見やすくするためであって実際には一致した状態にあり、また、図3中に示される点線はシステム運転停止後に高電位回避制御を実行しない場合におけるFC電圧の変化状態を示している(図4,5についても同様)。
【0053】
ユーザ操作によるシステム運転停止指令があるときは、車両が停車状態にあるか、または、停車状態に近い極低速走行状態にあるのが通常であるから、燃料電池スタック12は低負荷領域の運転モードである第1の運転モードで制御されている。そのため、コントローラ90は、DC/DCコンバータ72に対する電圧指令値を使用上限電圧V1のまま維持して駆動を継続することになる。ただし、システム運転停止指令時に例外的にDC/DCコンバータ72の電圧指令値が使用上限電圧V1に設定されていない場合には、そのとき改めて上記電圧指令値が使用上限電圧V1に設定されて、その電圧指令値に基づいてDC/DCコンバータ72の駆動が継続される。
【0054】
燃料電池スタック12への水素および酸素の供給が停止された後も、燃料電池スタック12内に残存する水素と酸素との電気化学反応によって微量の発電が継続するが、上記電圧指令に基づくDC/DCコンバータ72の駆動によって燃料電池スタック12の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのが抑制されて、使用上限電圧V1に維持される。そして、燃料電池スタック12内に残存する酸素が発電により消費されて減少してくると、燃料電池スタック12の出力電圧をもはや使用上限電圧V1に維持することができなくなって発電停止へと至り、その後は上記出力電圧が使用上限電圧V1から降下し始める。
【0055】
なお、この発電期間中に燃料電池スタック12から出力される発電電力は、バッテリ74に充電されるが、SOCとの関係でバッテリ74に充電できないときには補機類の一部(例えば、冷却水循環ポンプ等)を駆動させて消費させてもよい。
【0056】
このように燃料電池スタック12の出力電圧が降下し始めたのを電圧センサ16による検出値から判定されたとき、すなわちシステム運転停止指令から所定時間t1を経過したタイミングで、コントローラ90はDC/DCコンバータ72をシャットダウンすると共に、システムメインリレー14を開路させる。その後しばらくして燃料電池スタック12の出力電圧はゼロとなる。
【0057】
このように本実施形態の燃料電池システム10では、システム運転停止指令後もDC/DCコンバータ72の駆動を継続することにより、燃料電池スタック12の出力電圧が使用上限電圧V1を超えないように制御する高電位回避制御を所定時間t1だけ実行することで、システム運転停止後に燃料電池スタック12の出力電圧が開放端電圧へと上昇するのを防止することができ、燃料電池スタック12の触媒劣化を抑制できる。
【0058】
なお、上記において所定時間t1は、電圧センサ16の検出値に基づいて燃料電池スタック12の出力電圧が降下し始めたのを確認したときとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、燃料電池スタック12への酸素供給を停止したときにスタック内に残存する酸素量はスタック内の空気流路容積から決まってくるものであり、残存する酸素が消費されて発電停止に至るまでに要する時間は燃料電池スタック12の固有の値として実験等から予め把握しておくことができるものである。したがって、コントローラ90は、上記所定時間t1をROMに予め記憶させておき、システム停止指令を受けてからタイマを作動させて所定時間t1が経過したときに、DC/DCコンバータ72のシャットダウン等を行ってもよい。
【0059】
図4は、システム運転停止後に実行される別の高電位回避制御におけるFC電圧の推移を示すグラフである。この別の高電位回避制御では、システム運転停止後の高電位回避制御においてコントローラ90は、DC/DCコンバータ72への電圧指令を上記使用上限電圧V1(第1の値)から上記使用下限電圧V2(第2の値)へと降下させる。このようにDC/DCコンバータ72の電圧指令値を低下させることで、これに追随して燃料電池スタック12での発電が促進されて残存する酸素の消費を早めることができ、図3に示す所定時間t1よりも短い時間t2で発電停止に至らせることができ、システム運転停止後のDC/DCコンバータ72の駆動時間を短縮することができる。その結果、システム運転停止後からDC/DCコンバータ72のシャットダウンおよびシステムメインリレー14の開路までの時間をできるだけ短くすることができ、車両の高圧安全性をより良好なものにできる。
【0060】
ただし、この場合には、燃料電池スタック12から出力される発電電力がバッテリ74の充電可能電力に対して過大となり、バッテリ74にダメージを与えるおそれがある。そこで、これを回避するためにコントローラ90は、バッテリ74のSOCや入力制限Winに基づいてバッテリ充電可能電力を監視しながら、上記発電電力がバッテリ充電電力を超えないように電圧指令値V1からV2への降下レートを決定する。図4では電圧指令値V1からV2への降下レートが一定であるものとして示しているが、降下当初が急勾配で次第に緩やか降下する曲線状に降下レートが設定されてもよい。
【0061】
コントローラ90は、DC/DCコンバータ72への電圧指令値を使用下限電圧V2まで一旦降下させた後、使用上限電圧V1まで上昇させてからDC/DCコンバータ72を駆動停止させる。このときの電圧指令の上昇は、燃料電池スタック12から出力される発電電力を抑える方向に作用することから、その上昇レートは急勾配または垂直(図5参照)であってもよい。
【0062】
図5は、システム運転停止後に実行される更に別の高電位回避制御におけるFC電圧の推移を示すグラフである。この高電位回避制御では、DC/DCコンバータ72に対する電圧指令を一旦降下させる点で図4に示される高電位回避制御に類似する。ただし、図4では電圧指令が略三角状に降下および上昇しているのに対して、図5では電圧指令が電圧値V2まで降下した後に所定時間t4だけその電圧値V2に維持されてから使用上限電圧V1に復帰するというように電圧指令が略台形状に変化している点で異なっている。この場合、電圧値V2を燃料電池セルの還元領域の電圧範囲に設定すれば、上記所定時間t4の間に白金触媒から酸化皮膜を除去する触媒活性化処理をシステム運転停止時ごとに実施することができ、燃料電池スタック12の触媒機能を維持するのに有効である。
【0063】
なお、上記においては燃料電池スタックが間欠運転を行う燃料電池システムを例に説明したが、これに限定されるものではなく、高電圧回避制御は実行されるが間欠運転されない燃料電池システムに適用されてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、燃料電池システム10が燃料電池車両に搭載されるものとして説明したが、本発明に係る燃料電池システムはこの用途に限定されるものではない。例えば、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池車両以外の移動体(ロボット、船舶、航空機等)や産業機械(建設機械、農業機械等)の電力源として搭載されてもよいし、あるいは、住宅やビル等の発電設備(定置用発電システム)として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 燃料電池システム、12 燃料電池スタック、14 システムメインリレー、16 電圧センサ、18 電流センサ、20 燃料電池セル、22 固体高分子電解質膜、23 アノード側電極、24 カソード側電極、25,26 セパレータ、30 空気供給系、30 エアコンプレッサ、32 空気供給通路、34 空気排出通路、36 エアフィルタ、38 エアコンプレッサ、40 加湿器、42,44,61,64,66,67 遮断弁、46,62 調圧弁、50 水素供給系、52 水素供給源、54 水素供給通路、56 水素排出通路、58 循環通路、60 循環ポンプ、63 インジェクタ、65 圧力センサ、70 電力系、72 DC/DCコンバータ、74 バッテリ、75 SOCセンサ、76 インバータ、78 交流モータ、80 補機類、90 コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料および酸化ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、
燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を制御するとともに、燃料電池に電気的に接続されるDC/DCコンバータに電圧指令を与えて駆動することにより燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い前記電圧指令に対応する高電位回避電圧を超えないように抑制する高電位回避制御を実行する制御装置と、を備える燃料電池システムであって、
制御装置は、入力されるシステム運転停止指令に応じて燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を停止した後、高電位回避制御を所定時間だけ実行するようDC/DCコンバータの駆動を継続する、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
制御装置は、前記システム運転停止後の高電位回避制御の間に、コンバータに対する電圧指令を前記高電位回避電圧に対応する第1の値から第1の値よりも低い第2の値へ降下させる制御を実行することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池により発電された電力を充電可能な蓄電装置を更に備え、制御装置は、コンバータに対する電圧指令の第1の値から第2の値への降下レートを蓄電装置の充電可能電力を監視しながら決定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサを更に備え、前記所定時間は、システム運転停止時から、電圧センサによる検出値が前記電圧指令に対応する高電位回避電圧から降下し始めるまでの時間であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記所定時間は、システム運転停止後に燃料電池内に残存する燃料と酸化ガスとの電気化学反応による発電によって生じる出力電圧が前記高電位回避電圧を超えない程度まで酸化ガスが消費されるまでに要する予め設定された時間であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
燃料および酸化ガスの供給を受けて発電する燃料電池と、燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を制御するとともに、燃料電池に電気的に接続されるDC/DCコンバータに電圧指令を与えて駆動することにより燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い前記電圧指令に対応する高電位回避電圧を超えないように抑制する高電位回避制御を実行する制御装置と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
システム運転停止指令に応じて燃料電池への燃料および酸化ガスの供給を停止するステップと、
システム運転停止後に高電位回避制御を所定時間だけ実行するようDC/DCコンバータの駆動を継続する高電位回避制御継続ステップと、を含む燃料電池システムの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記高電位回避制御継続ステップでは、システム運転停止後の高電位回避制御の間に、コンバータに対する電圧指令を前記高電位回避電圧に対応する第1の値から第1の値よりも低い第2の値へ降下させる制御を実行することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記高電位回避制御継続ステップでは、システムに包含されて燃料電池による発電電力を充電できる蓄電装置の充電可能電力を監視しながら、コンバータに対する電圧指令の第1の値から第2の値への降下レートを決定することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記高電位回避制御継続ステップでの所定時間は、システム運転停止時から、燃料電池の出力電圧を検出する電圧センサの検出値が前記電圧指令に対応する高電位回避電圧から降下し始めるまでの時間であることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項10】
請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記高電位回避制御継続ステップでの所定時間は、システム運転停止後に燃料電池内に残存する燃料と酸化ガスとの電気化学反応による発電によって生じる出力電圧が前記高電位回避電圧を超えない程度まで酸化ガスが消費されるまでに要する予め設定された時間であることを特徴とする燃料電池システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−272449(P2010−272449A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125017(P2009−125017)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】