説明

燃料電池システム

【課題】バッテリから出力される電力を負荷に対して効率よく伝達することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】制御ユニット80は、EV走行すべき旨の指令が入力されたと判断するとリレー20をOFFにし、燃料電池40とインバータ50との間の接続を切断する。そして、制御ユニット80は、SOCセンサ65から供給されるSOC情報に基づき、バッテリ60の出力電圧を検出する。そして、制御ユニット80は、検出したバッテリ60の出力電圧をもとに、コンバータ効率とインバータ効率とを考慮して当該時点における最適な動作電圧を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスの電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池システムが知られている。かかる燃料電池システムは高効率、クリーンな発電手段であるため、二輪車や自動車などの駆動動力源として大きな期待を集めている。
【0003】
この燃料電池は出力電力の応答性が低くなる場合があるため、かかる弊害を防止する手段として燃料電池とバッテリとを並列に接続して電源を構成する技術が提案されている。例えば下記特許文献1には、燃料電池に対してトラクションモータなどの負荷をインバータを介して接続するとともに、該燃料電池に対して並列に、バッテリをDC/DCコンバータを介して接続する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−118981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成では、EV走行などバッテリのみを利用して負荷を駆動する場合であっても、常にインバータの効率が最大となるように、DC/DCコンバータの出力電圧(すなわちシステムの動作電圧)を制御し、DC/DCコンバータの効率は何ら考慮されていなかった。このため、バッテリから出力される電力が負荷に対して最も効率よく伝達されているとは言い難い状況にあった。
【0006】
本発明は以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、バッテリなどの蓄電装置から出力される電力を負荷に対して効率よく伝達することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、電圧変換装置と、前記電圧変換装置を介して前記燃料電池と並列に接続された蓄電装置と、少なくとも前記燃料電池または前記蓄電装置から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置と、前記電圧変換装置の電圧変換効率と前記電力変換装置の電力変換効率とに基づいて、当該システムの動作電圧を決定する決定手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、電力変換装置(インバータなど)による電力変換効率だけでなく、電圧変換装置(DC/DCコンバータなど)による電圧変換効率をも考慮して、当該システムの動作電圧を決定するため、蓄電装置(バッテリなど)から出力される電力を負荷に対して効率よく電圧することが可能となる。
【0009】
ここで、上記構成にあっては、前記決定手段は、前記蓄電装置のみを電力源とすべき指令を受けた場合に当該システムの動作電圧を決定し、決定された動作電圧に応じて前記電圧変換装置による電圧変換動作を制御する電圧変換制御手段をさらに具備する態様が好ましい。
【0010】
また、上記構成にあっては、前記蓄電装置の蓄電状態を検出するセンサをさらに備え、前記決定手段は、検出された前記蓄電装置の蓄電状態と、前記電圧変換装置の電圧変換効率と、前記電力変換装置の電力変換効率とに基づいて、当該システムの動作電圧を決定する態様がさらに好ましい。
【0011】
さらに、上記構成にあっては、前記燃料電池と前記電力変換装置との接続経路に介挿されたスイッチング素子と、前記蓄電装置のみを電力源とすべき指令を受けた場合に、前記スイッチング素子によって前記燃料電池と前記電力変換装置との間の電気的接続を切断するスイッチング制御手段とをさらに具備する態様が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、バッテリなどの蓄電装置から出力される電力を負荷に対して効率よく伝達することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
A.本実施形態
(1)実施形態の構成
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム100を搭載した車両の概略構成である。
なお、以下の説明では、車両の一例として燃料電池自動車(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)を想定するが、電気自動車やハイブリッド自動車にも適用可能である。また、車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)にも適用可能である。
【0015】
この車両は、車輪95L、95Rに連結されたトラクションモータ90を駆動力源として走行する。トラクションモータ90の電源は、電源システム1である。電源システム1から出力される直流は、インバータ50で三相交流に変換され、トラクションモータ90に供給される。トラクションモータ90は制動時に発電機としても機能することができる。
【0016】
電源システム1は、燃料電池40、バッテリ60、DC/DCコンバータ30、インバータ50などから構成される。
燃料電池40は、供給される反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)から電力を発生する手段であり、固体高分子型、燐酸型、熔融炭酸塩型など種々のタイプの燃料電池を利用することができる。燃料電池40は、MEAなどを備えた複数の単セルを直列に積層したスタック構造を有している。この燃料電池40の出力電圧(以下、FC電圧)及び出力電流(以下、FC電流)は、それぞれ電圧センサ及び電流センサ(いずれも図示略)によって検出される。燃料電池40の燃料極(アノード)には、燃料ガス供給源10から水素ガスなどの燃料ガスが供給される一方、酸素極(カソード)には、酸化ガス供給源70から空気などの酸化ガスが供給される。
【0017】
燃料ガス供給源10は、例えば水素タンクや様々な弁などから構成され、弁開度やON/OFF時間などを調整することにより、燃料電池40に供給する燃料ガス量を制御する。
酸化ガス供給源70は、例えばエアコンプレッサやエアコンプレッサを駆動するモータ、インバータなどから構成され、該モータの回転数などを調整することにより、燃料電池40に供給する酸化ガス量を調整する。
【0018】
バッテリ(蓄電装置)60は、充放電可能な二次電池であり、例えばニッケル水素バッテリなどにより構成されている。もちろん、バッテリ60の代わりに二次電池以外の充放電可能な蓄電器(例えばキャパシタ)を設けても良い。このバッテリ60は、DC/DCコンバータ30を介して燃料電池40と並列に接続されている。バッテリ60には、当該バッテリの充電状態を検出するSOCセンサ(センサ)65が設けられている。SOCセンサ65は、制御ユニット80から与えられる指示に従ってバッテリ60の充電状態を検出し、検出結果をSOC情報として制御ユニット80に出力する。
【0019】
DC/DCコンバータ(電圧変換装置)30は、例えば4つのパワー・トランジスタと専用のドライブ回路(いずれも図示略)によって構成されたフルブリッジ・コンバータである。DC/DCコンバータ30は、バッテリ60から入力されたDC電圧を昇圧または降圧してインバータ50側に出力する機能、燃料電池40またはトラクションモータ90から入力されたDC電圧を昇圧または降圧してバッテリ60側に出力する機能を備えている。このDC/DCコンバータ30の機能により、バッテリ60の充放電が実現される。なお、バッテリ60とDC/DCコンバータ30の間には、車両補機(例えば照明機器)やFC補機(例えば燃料ガス用のポンプ)などの補機類が接続されている。
【0020】
インバータ(電力変換装置)50は、例えばパルス幅変調方式のPWMインバータであり、制御ユニット80から与えられる制御指令に応じて燃料電池40またはバッテリ60から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、トラクションモータ90へ供給する。インバータ50と燃料電池40との間には、リレー(スイッチング素子)20が介挿されている。制御ユニット(スイッチング制御手段)80は、リレー20のON、OFFを切り換えることで、インバータ50と燃料電池40との間の接続、切断を制御する。
【0021】
トラクションモータ(負荷)90は、車輪95L、95Rを駆動するためのモータ(すなわち移動体の動力源)であり、かかるモータの回転数はインバータ50によって制御される。本実施形態では、インバータ50に接続される負荷としてトラクションモータ90を例示したが、これに限定する趣旨ではなく、あらゆる電子機器(負荷)に適用可能である。
【0022】
制御ユニット80は、CPU、ROM、RAMなどにより構成され、SOCセンサ65や、燃料電池40の出力電圧、出力電流を検出する電圧センサ、電流センサ、アクセルペダルなどから入力される各センサ信号に基づき当該システム各部を中枢的に制御する。
【0023】
また、制御ユニット(決定手段)80は、EV走行をする際、燃料電池システム100の効率が最適となるように、インバータ50の電力変換効率(以下、インバータ効率)とDC/DCコンバータ30の電圧変換効率(以下、コンバータ効率)に基づいて当該システムの動作点(=動作電圧)を決定する。そして、制御ユニット(電圧変換制御手段)80は、DC/DCコンバータ30の出力電圧が決定した動作電圧に一致するようにDC/DCコンバータ30の動作を制御する。このように、インバータ効率だけでなく、コンバータ効率をも考慮して動作電圧を決定することで、バッテリ60から出力される電力を負荷に対して効率よく伝達することが可能となる。以下、その理由を説明する。
【0024】
図2は、動作電圧とインバータ効率との関係を例示した図であり、図3は、入出力電圧差とコンバータ効率との関係を例示した図である。なお、図3に示す入出力電圧差とは、DC/DCコンバータ30の入力電圧と出力電圧との間の電圧差をいう。
図2に示すように、インバータ効率は、設定される動作電圧が大きくなるにつれ、高くなる(図2に示す動作電圧V1、V2参照)。これに対し、コンバータ効率は、図3に示すように、入出力電圧差が大きくなるにつれ、低くなる(図3に示す入出力電圧差Vdif1、Vdif2参照)。
【0025】
ここで、図4及び図5は、EV走行時における動作電圧の決定方法を説明するための図であり、図4は従来技術に係る構成、図5は本実施形態に係る構成を示す。なお、図4及び図5に示す燃料電池システムについて、図1と対応する構成要素には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0026】
図4及び図5に示すように、EV走行の際には、バッテリ60の出力電力がDC/DCコンバータ30を介してインバータ50に供給される。
従来技術においては、インバータ効率のみを考慮して動作電圧を決定していたため、必ずしもバッテリ60の出力電力が最も効率よくトラクションモータ90に伝達されるとは限らなかった。具体的には、図2に示すように設定される動作電圧が大きければ大きいほど、インバータ効率は高くなるため、従来は動作電圧を燃料電池40のOCV(Open Circuit Voltage)近傍(例えば400V)に設定していた。しかしながら、コンバータ効率は、図3に示すようにDC/DCコンバータ30の入出力電圧差が大きくなるにつれ、低くなる。コンバータ効率の観点からは、DC/DCコンバータ30の入出力電圧はできるだけ小さいほうが望ましいが、インバータ効率のみを考慮して動作電圧を決定すると、図4に示すようにインバータ50での電力損失は小さくなるものの(図4に示す電力損失;「1」)、DC/DCコンバータ30での電力損失は大きくなってしまい(図4に示す電力損失;「4」)、最終的にはシステム効率(=到達電力/出力電力)が低下してしまう場合があった(図4に示す到達電力;「5」)。
【0027】
これに対し、本実施形態では、インバータ効率のみならず、コンバータ効率をも考慮して動作電圧を決定する。この結果、図5に示すように、インバータ50での電力損失は従来よりも大きくなるものの(図5に示す電力損失;「2」)、DC/DCコンバータ30での電力損失は従来よりも小さくなり(図5に示す電力損失;「2」)、最終的にはシステム効率を向上させることが可能となる(図5に示す到達電力;「6」)。なお、決定した動作電圧が燃料電池40のOCV近傍(例えば400V)よりも低い場合(例えば350V)、燃料電池40とインバータ50とを接続したままでは(図4参照)、残留ガスの影響などにより燃料電池40が発電し、動作電圧が上昇してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、燃料電池40とインバータ50との間にリレー20を設け、リレー20をOFFすることで燃料電池40の不要な発電を防止している。
以下、本実施形態の動作について説明する。
【0028】
(2)実施形態の動作
図6は、制御ユニット80によって間欠的に実行される走行制御処理を示すフローチャートである。
制御ユニット80は、各種センサなどから入力されるセンサ信号に基づき、EV走行すべき旨の指令(バッテリ60のみを電力源とすべき旨の指令)が入力されたか否かを判断する(ステップS10)。制御ユニット80は、かかる指令が入力されたと判断すると(ステップS10;YES)、制御ユニット80は、リレー20をOFFにし、燃料電池40とインバータ50との間の接続を切断する(ステップS20)。そして、制御ユニット80は、SOCセンサ65から供給されるSOC情報に基づき、当該時点におけるバッテリ60の充電状態(出力電圧)を検出する(ステップS30)。周知のとおり、バッテリ60の出力電圧は、使用状況(使用時間など)に応じて時々刻々と変化する。最適な動作電圧は、バッテリ60の出力電圧に応じて変化するため、ここでは当該時点におけるバッテリ60の充電状態(出力電圧)を検出する。
【0029】
そして、制御ユニット80は、検出したバッテリ60の出力電圧をもとに、コンバータ効率とインバータ効率とを考慮して当該時点における最適な(すなわちシステム効率のもっとも高い)動作電圧を決定する(ステップS40)。制御ユニット80は、このように決定した動作電圧に基づき、DC/DCコンバータ30の昇降圧動作を制御する(ステップS50)。以上説明した一連の処理が行われることにより、バッテリ60から出力される電力を負荷に対して効率よく伝達することが可能となる。
【0030】
B.変形例
<変形例1>
上述した本実施形態では、燃料電池40とインバータ50との間にリレー20を設け、EV走行の際にはリレー20をOFFすることで燃料電池40の不要な発電を防止したが、該発電を防止することができるのであればどのような方法を採用しても良い。
【0031】
<変形例2>
また、本実施形態では、電力源としてバッテリ60のみを利用する場合(EV走行時)について説明したが、電力源としてバッテリ60と他の電源(燃料電池40を含む)を利用する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】動作電圧とインバータ効率との関係を例示した図である。
【図3】入出力電圧差とコンバータ効率との関係を例示した図である。
【図4】従来におけるEV走行時の動作電圧の決定方法を説明するための図である。
【図5】本発明におけるEV走行時の動作電圧の決定方法を説明するための図である。
【図6】走行制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
100・・・燃料電池システム、20・・・リレー、30・・・DC/DCコンバータ、40・・・燃料電池、50・・・インバータ、60・・・バッテリ、65・・・SOCセンサ、80・・・制御ユニット、90・・・トラクションモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
電圧変換装置と、
前記電圧変換装置を介して前記燃料電池と並列に接続された蓄電装置と、
少なくとも前記燃料電池または前記蓄電装置から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置と、
前記電圧変換装置の電圧変換効率と前記電力変換装置の電力変換効率とに基づいて、当該システムの動作電圧を決定する決定手段と
を具備することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記決定手段は、前記蓄電装置のみを電力源とすべき指令を受けた場合に当該システムの動作電圧を決定し、
決定された動作電圧に応じて前記電圧変換装置による電圧変換動作を制御する電圧変換制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記蓄電装置の蓄電状態を検出するセンサをさらに備え、
前記決定手段は、検出された前記蓄電装置の蓄電状態と、前記電圧変換装置の電圧変換効率と、前記電力変換装置の電力変換効率とに基づいて、当該システムの動作電圧を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池と前記電力変換装置との接続経路に介挿されたスイッチング素子と、
前記蓄電装置のみを電力源とすべき指令を受けた場合に、前記スイッチング素子によって前記燃料電池と前記電力変換装置との間の電気的接続を切断するスイッチング制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−226594(P2008−226594A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61842(P2007−61842)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】