燃料電池用コンプレッサの停止制御装置
【課題】電動コンプレッサの耐久性及び回転安定性を向上させる。
【解決手段】ガス動圧軸受144でロータシャフト143を支持するモータ145によって駆動され、燃料電池2のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサ14の停止制御装置であって、ロータシャフト143を正回転させる外力の付加を停止してロータシャフト143の回転を低下させる第1ブレーキ手段(S6)と、燃料電池2のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後に、ロータシャフト143を逆回転させる外力を付加してロータシャフト143の回転を低下させる第2ブレーキ手段(S8)と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】ガス動圧軸受144でロータシャフト143を支持するモータ145によって駆動され、燃料電池2のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサ14の停止制御装置であって、ロータシャフト143を正回転させる外力の付加を停止してロータシャフト143の回転を低下させる第1ブレーキ手段(S6)と、燃料電池2のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後に、ロータシャフト143を逆回転させる外力を付加してロータシャフト143の回転を低下させる第2ブレーキ手段(S8)と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用コンプレッサの停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンプレッサのモータとして、ロータシャフトをガス動圧軸受と磁気軸受とで支持するものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、低速回転時のガス動圧軸受とロータシャフトとの接触を回避して、モータの耐久性を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−92646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前述した従来のコンプレッサのモータでは、高速回転時にロータシャフトが磁気軸受の影響を受け、回転安定性が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、コンプレッサのモータの耐久性を確保しつつ、高速回転時の回転安定性も確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明は、ガス動圧軸受でロータシャフトを支持するモータによって駆動され、燃料電池のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサの停止制御装置である。本発明による燃料電池用コンプレッサの停止制御装置は、前記ロータシャフトを正回転させる外力の付加を停止するとともに、燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後は、ロータシャフトを逆回転させる外力を付加してロータシャフトの回転を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロータシャフトをガス動圧軸受のみによって支持しているので、高速回転時の回転安定性を確保できる。
【0009】
また、回転速度の低下にともなってロータシャフトとガス動圧軸受とが接触するが、アノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後は、ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して速やかにロータシャフトを停止させる。そのため、ガス動圧軸受とロータシャフトとの接触時間を短くできるとともに、急停止によってアノード電極とカソード電極との極間差圧が大きくなりすぎることもない。その結果、ガス動圧軸受及びロータシャフトの部分摩耗を抑制でき、モータの耐久性を確保できるとともに、電解質膜の劣化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】燃料電池システムの概略図である。
【図2】電動コンプレッサの縦断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】第1実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図6】第2実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図7】第2実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図8】第3実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図9】第3実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図10】第4実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図11】第5実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0013】
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0014】
このような燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1の概略図である。
【0016】
燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、燃料タンク3と、アノードガス供給通路4と、アノードガス排出通路5と、カソードガス供給通路6と、カソードガス排出通路7と、排気通路8と、DC−DCコンバータ9と、バッテリ10と、駆動モータ用インバータ11と、駆動モータ12と、コンプレッサ用インバータ13と、電動コンプレッサ14と、コントローラ15と、大気圧センサ16と、を備える。
【0017】
燃料電池スタック2は、積層された複数枚の燃料電池を含み、車両の駆動に必要な電力を発電する。
【0018】
燃料タンク3は、燃料電池スタック2に供給するアノードガスを高圧状態で貯蔵する。本実施形態ではアノードガスとして水素を使用している。
【0019】
アノードガス供給通路4は、一端部が燃料タンク3に接続され、他端部が燃料電池スタック2のアノードガス入口孔21に接続される。アノードガス供給通路4には、上流から順に、調圧弁41と、圧力センサ42と、が設けられる。
【0020】
調圧弁41は、燃料タンク3から供給されるアノードガスの圧力を減圧する。
【0021】
圧力センサ42は、燃料電池スタック2に供給されるアノードガスの圧力を検出する。
【0022】
アノードガス排出通路5は、一端部が燃料電池スタック2のアノードガス出口孔22に接続され、他端部がカソードガス排出通路7に挿入される。本実施形態では、このようにアノードガス排出通路5をカソードガス排出通路7に挿入させて、アノードオフガスをカソードオフガスと混合させた上で外気に排出している。また、アノードガス排出通路5には、遮断弁51が設けられる。
【0023】
遮断弁51は、カソードガス排出通路7に流入させるアノードオフガスの流量を調整する。
【0024】
カソードガス供給通路6は、一端部が外気取り入れ口を形成し、他端部が燃料電池スタック2のカソードガス入口孔23に接続される。
【0025】
カソードガス排出通路7は、一端部が燃料電池スタック2のカソードガス出口孔24に接続され、他端部が排気通路8に接続する。
【0026】
排気通路8は、一端部がカソードガス排出通路7と接続し、他端部が排気口を形成する。排気通路8には、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガス(以下「排ガス」という)中の水素濃度を検出する水素濃度センサ81が設けられる。
【0027】
DC−DCコンバータ9は、燃料電池スタック2に電気的に接続される。DC−DCコンバータ9は、燃料電池スタック2の出力電圧を駆動モータ12やコンプレッサモータに適した電圧まで降圧させる。
【0028】
バッテリ10は、DC−DCコンバータ9に電気的に接続される。バッテリ10は、アイドルストップ時など、燃料電池スタック2から電力が供給されないときや、車両の急加速時に必要な電力を蓄える。本実施形態ではバッテリ10として充放電可能なリチウムイオン電池などの二次電池を使用しているが、充放電可能であればキャパシタなどのその他の蓄電手段を使用しても良い。
【0029】
駆動モータ用インバータ11は、DC−DCコンバータ9及びバッテリ10に対してそれぞれ並列に電気的に接続される。駆動モータ用インバータ11は、DC−DCコンバータ9を介して燃料電池スタック2から供給される直流電流又はバッテリ10から供給される直流電流を任意の周波数の三相交流電流に変換して駆動モータ12に出力する。
【0030】
駆動モータ12は、駆動モータ用インバータ11に電気的に接続される。駆動モータ12は、駆動モータ用インバータ11から出力された三相交流電流によって作動し、車両を駆動させるトルクを発生する。
【0031】
コンプレッサ用インバータ13は、DC−DCコンバータ9及びバッテリ10に対してそれぞれ並列に電気的に接続される。コンプレッサ用インバータ13は、DC−DCコンバータ9を介して燃料電池スタック2から供給される直流電流又はバッテリ10から供給される直流電流を三相交流電流に変換して電動コンプレッサ14に出力する。
【0032】
電動コンプレッサ14は遠心式のコンプレッサであり、コンプレッサ部14aとモータ部14bとを備える。コンプレッサ部14aは、カソードガス供給通路6に設けられる。モータ部14bは、コンプレッサ用インバータ13に電気的に接続される。電動コンプレッサ14は、コンプレッサ用インバータ13から出力された三相交流電流によって作動し、外部から取り込んだ空気を圧縮して燃料電池スタック2に供給する。電動コンプレッサ14の詳細については図2及び図3を参照して後述する。
【0033】
コントローラ15は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ15には、前述した圧力センサ42や水素濃度センサ81の他にも燃料電池スタックの発電状態を検出する各種センサからの信号が入力される。
【0034】
コントローラ15は、これらの入力信号に基づいて駆動モータ用インバータ11及びコンプレッサ用インバータ13を制御して交流電流の周波数を連続的に変更し、駆動モータ12及び電動コンプレッサ14の回転速度を連続的に変更する。
【0035】
大気圧センサ16は、車外の大気圧を測定し、信号をコントローラ15に入力する。
【0036】
図2は、電動コンプレッサ14の縦断面図である。
【0037】
モータ部14bのモータハウジング141に内部には、ステータ142と、ロータシャフト143と、空気動圧軸受144と、を備えるモータ145が設けられる。
【0038】
ステータ142は、モータハウジング141の内周に固定される。ステータ142には三相交流電流が流れるコイルが巻かれている。
【0039】
ロータシャフト143は、空気動圧軸受144によってモータハウジング141に回転自在に支持される。ロータシャフト143には永久磁石が埋設されており、三相交流電流が印加されたときにステータ142が形成する回転磁界に同期して回転する。ロータシャフト143は、軸方向に延びる小径部143aと、小径部143aの一端部側に設けられる円板状の大径部143bと、を備える。
【0040】
空気動圧軸受144は、ロータシャフト143の小径部143aの両端をラジアル方向(径方向)から支持する一対のラジアル軸受144aと、ロータシャフト143の大径部143bの外縁部をアキシアル方向(軸方向)から支持するアキシアル軸受144bと、を備える。
【0041】
コンプレッサ部14aのコンプレッサハウジング146の内部には、ロータシャフト143の一端部に設けられてロータシャフト143と一体となって回転するインペラ147が配置される。インペラ147が回転することによって吸気口148からコンプレッサハウジング146の内部に流入してきた空気が圧縮され、吐出路149を通ってカソードガス供給通路6に吐出される。
【0042】
図3は、図2のIII-III線に沿う断面図であり、ラジアル軸受144aについて説明する図である。図3(A)は、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときの断面図であり、図3(B)は、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときに断面図である。
【0043】
ラジアル軸受144aは、モータハウジング141とロータシャフト143との間に複数のトップフォイル150を備える。トップフォイル150は、モータハウジング141の内周に、周方向に等間隔で設けられる。
【0044】
図3(A)に示すように、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときは、ロータシャフト143はトップフォイル150と接触した状態で回転する。
【0045】
一方で、図3(B)に示すように、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときは、ロータシャフト143とトップフォイル150との間に生じる動圧によって、ロータシャフト143がトップフォイル150から浮いた状態で回転する。つまり、ロータシャフト143はトップフォイル150と非接触状態で保持されて回転する。
【0046】
アキシアル軸受144bもほぼ同様の構造をしており、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときは、ロータシャフト143の大径部143bがアキシアル軸受144bのトップフォイルから浮いた状態で回転する。
【0047】
このように空気動圧軸受144は、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときにはトップフォイル150と接触した状態で回転する。そのため、電動コンプレッサ14の起動停止が繰り返されると、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗によってモータ145が劣化するという問題点がある。そこで本実施形態では、電動コンプレッサ14を停止させるときに、以下の停止制御を実施する。
【0048】
図4は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0049】
ステップS1において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の停止条件が成立しているか否かを判定する。コントローラ15は、燃料電池スタック2の発電を停止するとき(例えばアイドルストップを実施するときやキーオフされたとき)に電動コンプレッサ14の停止条件が成立していると判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の停止条件が成立していればステップS2に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の停止条件が成立していなければ今回の処理を終了する。
【0050】
ステップS2において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロより大きいか否かを判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロであればステップS3に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロより大きければステップS5に処理を移行する。
【0051】
ステップS3において、コントローラ15は、強制制動フラグを0にリセットする。
【0052】
ステップS4において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14のステータ142に対する三相交流電流の印加を停止する。
【0053】
ステップS5において、コントローラ15は、強制制動フラグが1にセットされているか否かを判定する。コントローラ15は、強制制動フラグが1にセットされていればステップS8に処理を移行する。一方で、強制制動フラグが0にセットされていればステップS6に処理を移行する。
【0054】
ステップS6において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14のステータ142に対する三相交流電流の印加を停止する。
【0055】
ステップS7において、コントローラ15は、アノードガス圧と大気圧との差圧が、電解質膜が破損するおそれのある所定の限界圧よりも低くなったか否かを判定する。コントローラ15は、差圧が限界圧より低ければステップS8に処理を以降する。一方で、差圧が限界圧より高ければ今回の処理を終了する。
【0056】
ステップS8において、コントローラ15は、三相交流電流の相回転方向を変更してステータ142が形成する回転磁界の向きを通常時に対して逆転させる。これにより、ロータシャフト143には、ロータシャフト143の回転を強制的に止める制動力が加わる。
【0057】
ステップS9において、コントローラ15は、強制制動フラグを1にセットする。
【0058】
図5は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0059】
時刻t1で電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15は電動コンプレッサ14への三相交流電流の印加を停止する。これにより、インペラ147が吐出路149からの圧力(背圧)を受けて電動コンプレッサ14の回転速度(ロータシャフト143の回転速度)が低下する。以下、この背圧による制動力のことを「背圧ブレーキ」という。
【0060】
アノードガス圧と大気圧との差圧が、電解質膜が劣化するおそれのある所定の限界圧より小さくなる時刻t2までは、この背圧ブレーキによって電動コンプレッサ14の回転速度を低下させる。
【0061】
時刻t2でアノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなると、コントローラ15は電動コンプレッサ14への三相交流電流の印加を再開する。このときコントローラ15は、三相交流電流の相回転方向を通常時とは変更させて、ステータ142が形成する回転磁界の向きを通常時に対して逆転させる。これにより、ロータシャフト143の回転を止める方向のトルクを発生させる。以下、このステータ142が形成する回転磁界の向きを逆転させることによる制動力のことを「電気ブレーキ」という。電気ブレーキをかけているときも、ロータシャフト143には背圧ブレーキがかかっている。
【0062】
このように時刻t2以降は、背圧ブレーキと電気ブレーキとによって電動コンプレッサ14の回転速度を低下させる。そのため、背圧ブレーキのみによって電動コンプレッサ14を停止させる場合と比較して、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。
【0063】
これにより、ロータシャフト143の回転速度の低下によってロータシャフト143とトップフォイル150が接触した後、短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。したがって、ロータシャフト143とトップフォイル150との摺動距離を短くできるので、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗を抑制することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、電動コンプレッサ14を停止するとき、背圧ブレーキと電気ブレーキとによってロータシャフト143の回転速度を低下させる。
【0065】
これにより、背圧ブレーキのみによって電動コンプレッサ14を停止させる場合と比較して、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。そのため、ロータシャフト143の回転速度の低下によってロータシャフト143とトップフォイル150が接触した後、短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。したがって、ロータシャフト143とトップフォイル150との摺動距離を短くできるので、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗を抑制することができる。その結果、電動コンプレッサ14の起動停止が頻繁に実施される状況下においても、電動コンプレッサ14の耐久性を確保できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったときに電気ブレーキをかける。
【0067】
ロータシャフト143に電気ブレーキをかけると、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。しかしながら、そのときのアノードガス圧が大気圧に対して高すぎると、電動コンプレッサ14の急停止に伴うカソードガス圧の低下によってアノード電極のガス圧とカソード電極のガス圧との差圧が大きくなりすぎてしまうことがある。そうすると、電解質膜が劣化する可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったとき、すなわちアノードガス圧が十分に低下したときに電気ブレーキをかけて電動コンプレッサ14を急停止させるので、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったときに回生を実施する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0070】
本実施形態では、背圧ブレーキで電動コンプレッサ14の回転速度を停止させているときに、インバータを制御して電動コンプレッサ14のモータ145をジェネレータとして機能させて回生を実施し、ロータシャフト143の回転を止める方向のトルクを発生させる。以下、この回生による制動力を「回生ブレーキ」という。
【0071】
図6は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0072】
ステップS1からステップS5、ステップS7及びステップS9の処理は第1実施形態と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0073】
ステップS21において、コントローラ15は、インバータを制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定の回生許可速度に制御する。
【0074】
ステップS22において、コントローラ15は、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも少ないか否かを判定する。コントローラ15は、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも少なければステップS7に処理を移行する。一方で、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも多ければステップS23に処理を移行する。
【0075】
ステップS23において、コントローラ15は、バッテリ10の電力を消費してバッテリ10の蓄電量を回生許可量まで低下させる。
【0076】
ステップS24において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度になっているか否かを判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度であればステップS24に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度より大きければ今回の処理を終了する。
【0077】
ステップS25において、コントローラ15は、インバータを制御して回生を実施し、バッテリ10を充電する。
【0078】
図7は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0079】
電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15はインバータを制御して電動コンプレッサ14のモータ145に印加する三相交流電流の周波数を制御し、電動コンプレッサ14の回転速度を所定の回生許可速度に維持する。そして、バッテリ10の蓄電量が所定の回生許可量になるまでバッテリ10の電力を消費する。
【0080】
時刻t21で、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度に維持され、かつ、バッテリ10の蓄電量が回生許可量に維持された状態で、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなると、コントローラ15は回生を実施する。
【0081】
これにより、時刻t21以降は、背圧ブレーキと回生ブレーキとによって電動コンプレッサ14の回転速度を速やかに低下させることができる。なお、本実施形態では、回生許可速度からの回生によってバッテリ10に充電される電力量が、バッテリ10の最大充電量から回生許可量を引いた電力量とほぼ等しくなるように、回生許可速度及び回生許可量を設定している。したがって、電動コンプレッサ14が停止するまでの間、確実に回生ブレーキによる制動力を得ることができる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、以下の効果を得ることができる。
【0083】
すなわち、回生ブレーキは、電気ブレーキと比較してロータシャフト143に対して極端な外力を加えることがないので、ブレーキ時にロータシャフト143を振動させることが少ない。そのため、電動コンプレッサ14の停止時におけるロータシャフト143とトップフォイル150との接触をより一層抑えることができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、電動コンプレッサ14の回転速度が所定のアイドル回転速度より小さくなったときに電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0085】
図8は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0086】
ステップS1からステップS5、ステップS8及びステップS9の処理は第1実施形態と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0087】
ステップS31において、コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となるようにアノードガス及びカソードガスの供給量を制御する。具体的には、調圧弁41の開度を制御するとともに、コンプレッサ用インバータ13を制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定のアイドル回転速度に制御する。なお、ここでいうアイドル運転状態とは、燃料電池スタック2を駆動するために必要な補機類が消費する電力のみを発電する状態のことをいう。
【0088】
ステップS32において、コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となったか否かを判定する。具体的には、燃料電池スタック2の発電電圧が所定のアイドル電圧になったか否かを判定する。コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となっていればステップS8に処理を移行する。一方で、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となっていなければ今回の処理を終了する。
【0089】
図9は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0090】
電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15は調圧弁41の開度を制御するとともに、コンプレッサ用インバータ13を制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定のアイドル回転速度に制御して、燃料電池スタック2をアイドル運転状態とする。そして、時刻t31で燃料電池スタック2がアイドル運転状態になると、電気ブレーキをかけて電動コンプレッサ14を停止させる。
【0091】
ここで、電動コンプレッサ14は加速度と同じ減速加速度で回転速度を低下させることができるが、遠心式の場合には急減速させるとサージ領域に入ってしまうおそれがある。そのため、減速加速度を最大加速度よりも小さくする傾向にある。
【0092】
しかしながら、アイドル運転状態のときの発電量は、定格発電量と比べて非常に小さく、アノードガス圧及びカソードガス圧も小さくなる。そのため、電気ブレーキをかける前の電動コンプレッサ14の吐出圧が十分に低く、急減速させてもサージ領域に入るおそれがほとんどない。
【0093】
したがって、本実施形態によれば、最大加速度と同じ減速加速度の電気ブレーキをかけることができる。そのため、第1実施形態よりも短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。また、アイドル運転状態のときには、差圧も限界圧より小さくなっているので、電解質膜を劣化させることもない。
【0094】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態は、排気通路8を流れる排気中の水素濃度が所定濃度より低くなってから電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0095】
図10は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0096】
ステップS41において、コントローラ15は、排気通路8を流れる排気中の水素濃度が、引火のおそれがない濃度(以下「可燃限界濃度」という)よりも低いか否かを判定する。コントローラ15は、水素濃度が可燃限界濃度よりも低ければステップS8に処理を移行する。一方で、水素濃度が可燃限界濃度よりも高ければ今回の処理を終了する。
【0097】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他に、水素濃度の高い排気を車外に排出するのを抑制できる。
【0098】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本発明の第5実施形態は、遮断弁51を閉じた後に電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0099】
図11は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0100】
ステップS51において、コントローラ15は、遮断弁51を閉じる。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、電動コンプレッサ14からの空気の供給が止まる前に遮断弁51を閉じるので、排気通路8へのアノードオフガスの流入を防止することができる。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる他に、水素濃度の高い排気を車外に排出するのを抑制できる。
【0102】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0103】
例えば、本実施形態ではロータシャフト143を逆回転させる外力として電気ブレーキ及び回生ブレーキを適用したが、物理的な接触によってロータシャフト143を逆回転させる外力を付加しても良い。
【0104】
また、流体軸受の媒体は空気に限らず気体(ガス)であれば良い。
【符号の説明】
【0105】
2 燃料電池スタック(燃料電池)
5 アノードガス排出通路
7 カソードガス排出通路
8 排気通路(カソードガス排出通路)
10 バッテリ(蓄電手段)
14 電動コンプレッサ(燃料電池用コンプレッサ)
51 遮断弁(開閉弁)
81 水素濃度センサ
142 ステータ
143 ロータシャフト
144 空気動圧軸受(ガス動圧軸受)
145 モータ
S6 第1ブレーキ手段
S8 第2ブレーキ手段
S21 第1ブレーキ手段
S25 第2ブレーキ手段
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用コンプレッサの停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンプレッサのモータとして、ロータシャフトをガス動圧軸受と磁気軸受とで支持するものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、低速回転時のガス動圧軸受とロータシャフトとの接触を回避して、モータの耐久性を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−92646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前述した従来のコンプレッサのモータでは、高速回転時にロータシャフトが磁気軸受の影響を受け、回転安定性が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、コンプレッサのモータの耐久性を確保しつつ、高速回転時の回転安定性も確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明は、ガス動圧軸受でロータシャフトを支持するモータによって駆動され、燃料電池のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサの停止制御装置である。本発明による燃料電池用コンプレッサの停止制御装置は、前記ロータシャフトを正回転させる外力の付加を停止するとともに、燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後は、ロータシャフトを逆回転させる外力を付加してロータシャフトの回転を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロータシャフトをガス動圧軸受のみによって支持しているので、高速回転時の回転安定性を確保できる。
【0009】
また、回転速度の低下にともなってロータシャフトとガス動圧軸受とが接触するが、アノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後は、ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して速やかにロータシャフトを停止させる。そのため、ガス動圧軸受とロータシャフトとの接触時間を短くできるとともに、急停止によってアノード電極とカソード電極との極間差圧が大きくなりすぎることもない。その結果、ガス動圧軸受及びロータシャフトの部分摩耗を抑制でき、モータの耐久性を確保できるとともに、電解質膜の劣化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】燃料電池システムの概略図である。
【図2】電動コンプレッサの縦断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】第1実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図6】第2実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図7】第2実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図8】第3実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図9】第3実施形態による電動コンプレッサの停止制御の動作について説明する図である。
【図10】第4実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【図11】第5実施形態による電動コンプレッサの停止制御について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0013】
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0014】
このような燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム1の概略図である。
【0016】
燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、燃料タンク3と、アノードガス供給通路4と、アノードガス排出通路5と、カソードガス供給通路6と、カソードガス排出通路7と、排気通路8と、DC−DCコンバータ9と、バッテリ10と、駆動モータ用インバータ11と、駆動モータ12と、コンプレッサ用インバータ13と、電動コンプレッサ14と、コントローラ15と、大気圧センサ16と、を備える。
【0017】
燃料電池スタック2は、積層された複数枚の燃料電池を含み、車両の駆動に必要な電力を発電する。
【0018】
燃料タンク3は、燃料電池スタック2に供給するアノードガスを高圧状態で貯蔵する。本実施形態ではアノードガスとして水素を使用している。
【0019】
アノードガス供給通路4は、一端部が燃料タンク3に接続され、他端部が燃料電池スタック2のアノードガス入口孔21に接続される。アノードガス供給通路4には、上流から順に、調圧弁41と、圧力センサ42と、が設けられる。
【0020】
調圧弁41は、燃料タンク3から供給されるアノードガスの圧力を減圧する。
【0021】
圧力センサ42は、燃料電池スタック2に供給されるアノードガスの圧力を検出する。
【0022】
アノードガス排出通路5は、一端部が燃料電池スタック2のアノードガス出口孔22に接続され、他端部がカソードガス排出通路7に挿入される。本実施形態では、このようにアノードガス排出通路5をカソードガス排出通路7に挿入させて、アノードオフガスをカソードオフガスと混合させた上で外気に排出している。また、アノードガス排出通路5には、遮断弁51が設けられる。
【0023】
遮断弁51は、カソードガス排出通路7に流入させるアノードオフガスの流量を調整する。
【0024】
カソードガス供給通路6は、一端部が外気取り入れ口を形成し、他端部が燃料電池スタック2のカソードガス入口孔23に接続される。
【0025】
カソードガス排出通路7は、一端部が燃料電池スタック2のカソードガス出口孔24に接続され、他端部が排気通路8に接続する。
【0026】
排気通路8は、一端部がカソードガス排出通路7と接続し、他端部が排気口を形成する。排気通路8には、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガス(以下「排ガス」という)中の水素濃度を検出する水素濃度センサ81が設けられる。
【0027】
DC−DCコンバータ9は、燃料電池スタック2に電気的に接続される。DC−DCコンバータ9は、燃料電池スタック2の出力電圧を駆動モータ12やコンプレッサモータに適した電圧まで降圧させる。
【0028】
バッテリ10は、DC−DCコンバータ9に電気的に接続される。バッテリ10は、アイドルストップ時など、燃料電池スタック2から電力が供給されないときや、車両の急加速時に必要な電力を蓄える。本実施形態ではバッテリ10として充放電可能なリチウムイオン電池などの二次電池を使用しているが、充放電可能であればキャパシタなどのその他の蓄電手段を使用しても良い。
【0029】
駆動モータ用インバータ11は、DC−DCコンバータ9及びバッテリ10に対してそれぞれ並列に電気的に接続される。駆動モータ用インバータ11は、DC−DCコンバータ9を介して燃料電池スタック2から供給される直流電流又はバッテリ10から供給される直流電流を任意の周波数の三相交流電流に変換して駆動モータ12に出力する。
【0030】
駆動モータ12は、駆動モータ用インバータ11に電気的に接続される。駆動モータ12は、駆動モータ用インバータ11から出力された三相交流電流によって作動し、車両を駆動させるトルクを発生する。
【0031】
コンプレッサ用インバータ13は、DC−DCコンバータ9及びバッテリ10に対してそれぞれ並列に電気的に接続される。コンプレッサ用インバータ13は、DC−DCコンバータ9を介して燃料電池スタック2から供給される直流電流又はバッテリ10から供給される直流電流を三相交流電流に変換して電動コンプレッサ14に出力する。
【0032】
電動コンプレッサ14は遠心式のコンプレッサであり、コンプレッサ部14aとモータ部14bとを備える。コンプレッサ部14aは、カソードガス供給通路6に設けられる。モータ部14bは、コンプレッサ用インバータ13に電気的に接続される。電動コンプレッサ14は、コンプレッサ用インバータ13から出力された三相交流電流によって作動し、外部から取り込んだ空気を圧縮して燃料電池スタック2に供給する。電動コンプレッサ14の詳細については図2及び図3を参照して後述する。
【0033】
コントローラ15は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ15には、前述した圧力センサ42や水素濃度センサ81の他にも燃料電池スタックの発電状態を検出する各種センサからの信号が入力される。
【0034】
コントローラ15は、これらの入力信号に基づいて駆動モータ用インバータ11及びコンプレッサ用インバータ13を制御して交流電流の周波数を連続的に変更し、駆動モータ12及び電動コンプレッサ14の回転速度を連続的に変更する。
【0035】
大気圧センサ16は、車外の大気圧を測定し、信号をコントローラ15に入力する。
【0036】
図2は、電動コンプレッサ14の縦断面図である。
【0037】
モータ部14bのモータハウジング141に内部には、ステータ142と、ロータシャフト143と、空気動圧軸受144と、を備えるモータ145が設けられる。
【0038】
ステータ142は、モータハウジング141の内周に固定される。ステータ142には三相交流電流が流れるコイルが巻かれている。
【0039】
ロータシャフト143は、空気動圧軸受144によってモータハウジング141に回転自在に支持される。ロータシャフト143には永久磁石が埋設されており、三相交流電流が印加されたときにステータ142が形成する回転磁界に同期して回転する。ロータシャフト143は、軸方向に延びる小径部143aと、小径部143aの一端部側に設けられる円板状の大径部143bと、を備える。
【0040】
空気動圧軸受144は、ロータシャフト143の小径部143aの両端をラジアル方向(径方向)から支持する一対のラジアル軸受144aと、ロータシャフト143の大径部143bの外縁部をアキシアル方向(軸方向)から支持するアキシアル軸受144bと、を備える。
【0041】
コンプレッサ部14aのコンプレッサハウジング146の内部には、ロータシャフト143の一端部に設けられてロータシャフト143と一体となって回転するインペラ147が配置される。インペラ147が回転することによって吸気口148からコンプレッサハウジング146の内部に流入してきた空気が圧縮され、吐出路149を通ってカソードガス供給通路6に吐出される。
【0042】
図3は、図2のIII-III線に沿う断面図であり、ラジアル軸受144aについて説明する図である。図3(A)は、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときの断面図であり、図3(B)は、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときに断面図である。
【0043】
ラジアル軸受144aは、モータハウジング141とロータシャフト143との間に複数のトップフォイル150を備える。トップフォイル150は、モータハウジング141の内周に、周方向に等間隔で設けられる。
【0044】
図3(A)に示すように、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときは、ロータシャフト143はトップフォイル150と接触した状態で回転する。
【0045】
一方で、図3(B)に示すように、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときは、ロータシャフト143とトップフォイル150との間に生じる動圧によって、ロータシャフト143がトップフォイル150から浮いた状態で回転する。つまり、ロータシャフト143はトップフォイル150と非接触状態で保持されて回転する。
【0046】
アキシアル軸受144bもほぼ同様の構造をしており、ロータシャフト143が所定回転速度以上で回転しているときは、ロータシャフト143の大径部143bがアキシアル軸受144bのトップフォイルから浮いた状態で回転する。
【0047】
このように空気動圧軸受144は、ロータシャフト143が所定回転速度未満で回転しているときにはトップフォイル150と接触した状態で回転する。そのため、電動コンプレッサ14の起動停止が繰り返されると、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗によってモータ145が劣化するという問題点がある。そこで本実施形態では、電動コンプレッサ14を停止させるときに、以下の停止制御を実施する。
【0048】
図4は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0049】
ステップS1において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の停止条件が成立しているか否かを判定する。コントローラ15は、燃料電池スタック2の発電を停止するとき(例えばアイドルストップを実施するときやキーオフされたとき)に電動コンプレッサ14の停止条件が成立していると判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の停止条件が成立していればステップS2に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の停止条件が成立していなければ今回の処理を終了する。
【0050】
ステップS2において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロより大きいか否かを判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロであればステップS3に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の回転速度がゼロより大きければステップS5に処理を移行する。
【0051】
ステップS3において、コントローラ15は、強制制動フラグを0にリセットする。
【0052】
ステップS4において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14のステータ142に対する三相交流電流の印加を停止する。
【0053】
ステップS5において、コントローラ15は、強制制動フラグが1にセットされているか否かを判定する。コントローラ15は、強制制動フラグが1にセットされていればステップS8に処理を移行する。一方で、強制制動フラグが0にセットされていればステップS6に処理を移行する。
【0054】
ステップS6において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14のステータ142に対する三相交流電流の印加を停止する。
【0055】
ステップS7において、コントローラ15は、アノードガス圧と大気圧との差圧が、電解質膜が破損するおそれのある所定の限界圧よりも低くなったか否かを判定する。コントローラ15は、差圧が限界圧より低ければステップS8に処理を以降する。一方で、差圧が限界圧より高ければ今回の処理を終了する。
【0056】
ステップS8において、コントローラ15は、三相交流電流の相回転方向を変更してステータ142が形成する回転磁界の向きを通常時に対して逆転させる。これにより、ロータシャフト143には、ロータシャフト143の回転を強制的に止める制動力が加わる。
【0057】
ステップS9において、コントローラ15は、強制制動フラグを1にセットする。
【0058】
図5は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0059】
時刻t1で電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15は電動コンプレッサ14への三相交流電流の印加を停止する。これにより、インペラ147が吐出路149からの圧力(背圧)を受けて電動コンプレッサ14の回転速度(ロータシャフト143の回転速度)が低下する。以下、この背圧による制動力のことを「背圧ブレーキ」という。
【0060】
アノードガス圧と大気圧との差圧が、電解質膜が劣化するおそれのある所定の限界圧より小さくなる時刻t2までは、この背圧ブレーキによって電動コンプレッサ14の回転速度を低下させる。
【0061】
時刻t2でアノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなると、コントローラ15は電動コンプレッサ14への三相交流電流の印加を再開する。このときコントローラ15は、三相交流電流の相回転方向を通常時とは変更させて、ステータ142が形成する回転磁界の向きを通常時に対して逆転させる。これにより、ロータシャフト143の回転を止める方向のトルクを発生させる。以下、このステータ142が形成する回転磁界の向きを逆転させることによる制動力のことを「電気ブレーキ」という。電気ブレーキをかけているときも、ロータシャフト143には背圧ブレーキがかかっている。
【0062】
このように時刻t2以降は、背圧ブレーキと電気ブレーキとによって電動コンプレッサ14の回転速度を低下させる。そのため、背圧ブレーキのみによって電動コンプレッサ14を停止させる場合と比較して、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。
【0063】
これにより、ロータシャフト143の回転速度の低下によってロータシャフト143とトップフォイル150が接触した後、短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。したがって、ロータシャフト143とトップフォイル150との摺動距離を短くできるので、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗を抑制することができる。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、電動コンプレッサ14を停止するとき、背圧ブレーキと電気ブレーキとによってロータシャフト143の回転速度を低下させる。
【0065】
これにより、背圧ブレーキのみによって電動コンプレッサ14を停止させる場合と比較して、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。そのため、ロータシャフト143の回転速度の低下によってロータシャフト143とトップフォイル150が接触した後、短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。したがって、ロータシャフト143とトップフォイル150との摺動距離を短くできるので、ロータシャフト143やトップフォイル150の部分摩耗を抑制することができる。その結果、電動コンプレッサ14の起動停止が頻繁に実施される状況下においても、電動コンプレッサ14の耐久性を確保できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったときに電気ブレーキをかける。
【0067】
ロータシャフト143に電気ブレーキをかけると、電動コンプレッサ14を速やかに停止させることができる。しかしながら、そのときのアノードガス圧が大気圧に対して高すぎると、電動コンプレッサ14の急停止に伴うカソードガス圧の低下によってアノード電極のガス圧とカソード電極のガス圧との差圧が大きくなりすぎてしまうことがある。そうすると、電解質膜が劣化する可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったとき、すなわちアノードガス圧が十分に低下したときに電気ブレーキをかけて電動コンプレッサ14を急停止させるので、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなったときに回生を実施する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0070】
本実施形態では、背圧ブレーキで電動コンプレッサ14の回転速度を停止させているときに、インバータを制御して電動コンプレッサ14のモータ145をジェネレータとして機能させて回生を実施し、ロータシャフト143の回転を止める方向のトルクを発生させる。以下、この回生による制動力を「回生ブレーキ」という。
【0071】
図6は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0072】
ステップS1からステップS5、ステップS7及びステップS9の処理は第1実施形態と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0073】
ステップS21において、コントローラ15は、インバータを制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定の回生許可速度に制御する。
【0074】
ステップS22において、コントローラ15は、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも少ないか否かを判定する。コントローラ15は、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも少なければステップS7に処理を移行する。一方で、バッテリ10の蓄電量が回生許可量よりも多ければステップS23に処理を移行する。
【0075】
ステップS23において、コントローラ15は、バッテリ10の電力を消費してバッテリ10の蓄電量を回生許可量まで低下させる。
【0076】
ステップS24において、コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度になっているか否かを判定する。コントローラ15は、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度であればステップS24に処理を移行する。一方で、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度より大きければ今回の処理を終了する。
【0077】
ステップS25において、コントローラ15は、インバータを制御して回生を実施し、バッテリ10を充電する。
【0078】
図7は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0079】
電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15はインバータを制御して電動コンプレッサ14のモータ145に印加する三相交流電流の周波数を制御し、電動コンプレッサ14の回転速度を所定の回生許可速度に維持する。そして、バッテリ10の蓄電量が所定の回生許可量になるまでバッテリ10の電力を消費する。
【0080】
時刻t21で、電動コンプレッサ14の回転速度が回生許可速度に維持され、かつ、バッテリ10の蓄電量が回生許可量に維持された状態で、アノードガス圧と大気圧との差圧が所定の限界圧より小さくなると、コントローラ15は回生を実施する。
【0081】
これにより、時刻t21以降は、背圧ブレーキと回生ブレーキとによって電動コンプレッサ14の回転速度を速やかに低下させることができる。なお、本実施形態では、回生許可速度からの回生によってバッテリ10に充電される電力量が、バッテリ10の最大充電量から回生許可量を引いた電力量とほぼ等しくなるように、回生許可速度及び回生許可量を設定している。したがって、電動コンプレッサ14が停止するまでの間、確実に回生ブレーキによる制動力を得ることができる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、以下の効果を得ることができる。
【0083】
すなわち、回生ブレーキは、電気ブレーキと比較してロータシャフト143に対して極端な外力を加えることがないので、ブレーキ時にロータシャフト143を振動させることが少ない。そのため、電動コンプレッサ14の停止時におけるロータシャフト143とトップフォイル150との接触をより一層抑えることができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、電動コンプレッサ14の回転速度が所定のアイドル回転速度より小さくなったときに電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0085】
図8は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0086】
ステップS1からステップS5、ステップS8及びステップS9の処理は第1実施形態と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0087】
ステップS31において、コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となるようにアノードガス及びカソードガスの供給量を制御する。具体的には、調圧弁41の開度を制御するとともに、コンプレッサ用インバータ13を制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定のアイドル回転速度に制御する。なお、ここでいうアイドル運転状態とは、燃料電池スタック2を駆動するために必要な補機類が消費する電力のみを発電する状態のことをいう。
【0088】
ステップS32において、コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となったか否かを判定する。具体的には、燃料電池スタック2の発電電圧が所定のアイドル電圧になったか否かを判定する。コントローラ15は、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となっていればステップS8に処理を移行する。一方で、燃料電池スタック2がアイドル運転状態となっていなければ今回の処理を終了する。
【0089】
図9は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御の動作について説明する図である。
【0090】
電動コンプレッサ14の停止条件が成立すると、コントローラ15は調圧弁41の開度を制御するとともに、コンプレッサ用インバータ13を制御して電動コンプレッサ14の回転速度を所定のアイドル回転速度に制御して、燃料電池スタック2をアイドル運転状態とする。そして、時刻t31で燃料電池スタック2がアイドル運転状態になると、電気ブレーキをかけて電動コンプレッサ14を停止させる。
【0091】
ここで、電動コンプレッサ14は加速度と同じ減速加速度で回転速度を低下させることができるが、遠心式の場合には急減速させるとサージ領域に入ってしまうおそれがある。そのため、減速加速度を最大加速度よりも小さくする傾向にある。
【0092】
しかしながら、アイドル運転状態のときの発電量は、定格発電量と比べて非常に小さく、アノードガス圧及びカソードガス圧も小さくなる。そのため、電気ブレーキをかける前の電動コンプレッサ14の吐出圧が十分に低く、急減速させてもサージ領域に入るおそれがほとんどない。
【0093】
したがって、本実施形態によれば、最大加速度と同じ減速加速度の電気ブレーキをかけることができる。そのため、第1実施形態よりも短い時間でロータシャフト143を停止させることができる。また、アイドル運転状態のときには、差圧も限界圧より小さくなっているので、電解質膜を劣化させることもない。
【0094】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態は、排気通路8を流れる排気中の水素濃度が所定濃度より低くなってから電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0095】
図10は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0096】
ステップS41において、コントローラ15は、排気通路8を流れる排気中の水素濃度が、引火のおそれがない濃度(以下「可燃限界濃度」という)よりも低いか否かを判定する。コントローラ15は、水素濃度が可燃限界濃度よりも低ければステップS8に処理を移行する。一方で、水素濃度が可燃限界濃度よりも高ければ今回の処理を終了する。
【0097】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他に、水素濃度の高い排気を車外に排出するのを抑制できる。
【0098】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本発明の第5実施形態は、遮断弁51を閉じた後に電気ブレーキをかける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0099】
図11は、本実施形態による電動コンプレッサ14の停止制御について説明するフローチャートである。コントローラ15は、本ルーチンを所定の演算周期(例えば10ms)で実行する。
【0100】
ステップS51において、コントローラ15は、遮断弁51を閉じる。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、電動コンプレッサ14からの空気の供給が止まる前に遮断弁51を閉じるので、排気通路8へのアノードオフガスの流入を防止することができる。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる他に、水素濃度の高い排気を車外に排出するのを抑制できる。
【0102】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0103】
例えば、本実施形態ではロータシャフト143を逆回転させる外力として電気ブレーキ及び回生ブレーキを適用したが、物理的な接触によってロータシャフト143を逆回転させる外力を付加しても良い。
【0104】
また、流体軸受の媒体は空気に限らず気体(ガス)であれば良い。
【符号の説明】
【0105】
2 燃料電池スタック(燃料電池)
5 アノードガス排出通路
7 カソードガス排出通路
8 排気通路(カソードガス排出通路)
10 バッテリ(蓄電手段)
14 電動コンプレッサ(燃料電池用コンプレッサ)
51 遮断弁(開閉弁)
81 水素濃度センサ
142 ステータ
143 ロータシャフト
144 空気動圧軸受(ガス動圧軸受)
145 モータ
S6 第1ブレーキ手段
S8 第2ブレーキ手段
S21 第1ブレーキ手段
S25 第2ブレーキ手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス動圧軸受でロータシャフトを支持するモータによって駆動され、燃料電池のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサの停止制御装置であって、
前記ロータシャフトを正回転させる外力の付加を停止して前記ロータシャフトの回転を低下させる第1ブレーキ手段と、
前記燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後に、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる第2ブレーキ手段と、
を備えることを特徴とする燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項2】
前記第2ブレーキ手段は、
前記モータのステータが形成する回転磁界を前記ロータシャフトが正回転しているときとは逆転させて、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項3】
前記燃料電池及び前記モータに電気的に接続される充放電可能な蓄電手段を備え、
前記第2ブレーキ手段は、
前記モータをジェネレータとして機能させて回生を実施することで、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項4】
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記蓄電手段に充電可能な電力量が回生による発電電力量以上となるように、前記蓄電手段の蓄電量を調整する
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項5】
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記燃料電池スタックがアイドル運転状態となるように、前記アノードガス及びカソードガスの供給量を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項6】
前記カソード電極から排出されたカソードオフガスが流れるカソードガス排出通路と、
前記カソードガス排出通路に挿入されて、そのカソードガス排出通路内に前記アノード電極から排出されたアノードオフガスを流入させるアノードガス排出通路と、
前記アノードガス排出通路の挿入部よりも下流のカソードガス排出通路に設けられて、カソードガス排出通路内の水素濃度を検出する水素濃度センサと、
を備え、
前記第2ブレーキ手段は、
前記燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなり、かつ、前記濃度センサによって検出した水素濃度が所定濃度よりも低くなった後に、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項7】
前記カソード電極から排出されたカソードオフガスが流れるカソードガス排出通路と、
前記カソードガス排出通路に挿入されて、そのカソードガス排出通路内に前記アノード電極から排出されたアノードオフガスを流入させるアノードガス排出通路と、
前記アノードガス排出通路に設けられて、前記カソードガス排出通路内に流入させるアノードガス量を調節する開閉弁と、
を備え、
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記開閉弁を全閉とする
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項1】
ガス動圧軸受でロータシャフトを支持するモータによって駆動され、燃料電池のカソード電極にカソードガスを供給する燃料電池用コンプレッサの停止制御装置であって、
前記ロータシャフトを正回転させる外力の付加を停止して前記ロータシャフトの回転を低下させる第1ブレーキ手段と、
前記燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなった後に、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる第2ブレーキ手段と、
を備えることを特徴とする燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項2】
前記第2ブレーキ手段は、
前記モータのステータが形成する回転磁界を前記ロータシャフトが正回転しているときとは逆転させて、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項3】
前記燃料電池及び前記モータに電気的に接続される充放電可能な蓄電手段を備え、
前記第2ブレーキ手段は、
前記モータをジェネレータとして機能させて回生を実施することで、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項4】
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記蓄電手段に充電可能な電力量が回生による発電電力量以上となるように、前記蓄電手段の蓄電量を調整する
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項5】
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記燃料電池スタックがアイドル運転状態となるように、前記アノードガス及びカソードガスの供給量を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項6】
前記カソード電極から排出されたカソードオフガスが流れるカソードガス排出通路と、
前記カソードガス排出通路に挿入されて、そのカソードガス排出通路内に前記アノード電極から排出されたアノードオフガスを流入させるアノードガス排出通路と、
前記アノードガス排出通路の挿入部よりも下流のカソードガス排出通路に設けられて、カソードガス排出通路内の水素濃度を検出する水素濃度センサと、
を備え、
前記第2ブレーキ手段は、
前記燃料電池のアノード電極に供給されるアノードガスの圧力と大気圧との差圧が所定圧よりも小さくなり、かつ、前記濃度センサによって検出した水素濃度が所定濃度よりも低くなった後に、前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加して前記ロータシャフトの回転を低下させる
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【請求項7】
前記カソード電極から排出されたカソードオフガスが流れるカソードガス排出通路と、
前記カソードガス排出通路に挿入されて、そのカソードガス排出通路内に前記アノード電極から排出されたアノードオフガスを流入させるアノードガス排出通路と、
前記アノードガス排出通路に設けられて、前記カソードガス排出通路内に流入させるアノードガス量を調節する開閉弁と、
を備え、
前記ロータシャフトを逆回転させる外力を付加する前に、前記開閉弁を全閉とする
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池用コンプレッサの停止制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−270700(P2010−270700A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124070(P2009−124070)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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