説明

燃料電池車両

【課題】蓄電装置の冷却や暖機を効率的に行うことができる燃料電池車両を提供する。
【解決手段】高圧バッテリ20を収納する蓄電装置収納空間Sbと、燃料電池10を収納する燃料電池収納空間Sfcと、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを結ぶ主配管31,32と、蓄電装置収納空間Sbと燃料電池収納空間Sfcとを結ぶ副配管33と、主配管31,32と副配管33の分岐点に設けられた三方弁34と、燃料電池10の温度Tfcを検出する温度センサ52と、車室内Scの温度Tcを検出する温度センサ51と、制御装置50とを備える。制御装置50は、高圧バッテリ20の暖機時に燃料電池10の温度Tfcと車室内Scの温度Tcとを比較し、高い温度の方を蓄電装置収納空間Sbと接続する暖機制御と、高圧バッテリ20の冷却時に、低い温度の方を蓄電装置収納空間Sbと接続する冷却制御とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の冷却や暖機を行う燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車などは、燃料電池スタックをアシストするための充電電力を放電したり、走行モータ等からの回生電力を充電する高電圧の蓄電装置を備えたものが一般に採用されている。この種の蓄電装置は、温度が低過ぎると所望の放電量が得られず、一方温度が高過ぎると劣化の原因となるなどの問題がある。このため、温度が低過ぎる場合には暖機を行い、温度が高過ぎる場合には冷却を行うことが望ましい。
【0003】
このような蓄電装置を暖機および冷却する手段としては、キャビン内(車室内)の空調に利用したエアを流路を介して、電池が収納されるケース内に導入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−252467号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、キャビン内(車室内)の空気を導入するだけなので、蓄電装置の暖機や冷却をより効率的に行うことができないという課題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、蓄電装置の冷却や暖機をさらに効率的に行うことができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池および蓄電装置を搭載した燃料電池車両において、前記蓄電装置を収納する蓄電装置収納空間と、前記燃料電池を収納する燃料電池収納空間と、車室内と前記蓄電装置収納空間とを結ぶ第1経路と、前記蓄電装置収納空間と前記燃料電池収納空間とを結ぶ第2経路と、前記第1経路および前記第2経路を接続・遮断する弁機構と、前記燃料電池の温度を検出する燃料電池温度検出装置と、前記車室内の温度を検出する車室内温度検出装置と、前記弁機構を制御し、前記蓄電装置の暖機時に前記燃料電池の温度と前記車室内の温度とを比較し、高い温度の方を前記蓄電装置収納空間と接続する暖機制御と、前記蓄電装置の冷却時に、前記燃料電池の温度と前記車室内の温度とを比較し、低い温度の方を前記蓄電装置収納空間と接続する冷却制御との少なくともどちらか一方を備えた制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、車室内と蓄電装置収納空間とを結ぶ第1経路と、蓄電装置収納空間と燃料電池収納空間とを結ぶ第2経路とを設けて、蓄電装置の暖機時には、車室内と燃料電池収納空間のうちの温度が高い方の空気を蓄電装置収納空間に導入することにより、蓄電装置の暖機をより効率的に行うことができ、また、蓄電装置の冷却時には、車室内と燃料電池収納空間のうちの温度が低い方の空気を蓄電装置収納空間に導入することにより、蓄電装置の冷却をより効率的に行うことができる。
【0009】
このように、暖機時や冷却時に空気の導入もとを複数から選択できるので、蓄電装置の温度調節をより決め細やかに制御することが可能になる。
【0010】
また、前記第1経路および前記第2経路は、前記車室内と前記蓄電装置収納空間とを接続する主配管と、前記主配管から分岐して前記燃料電池収納空間と接続する副配管からなり、前記弁機構は、前記主配管と前記副配管との分岐点に設けられることを特徴とする。
【0011】
これによれば、分岐点に弁(例えば、三方弁)をひとつ設けるだけでよいので、燃料電池車両のシステム構成を簡略化することが可能になる。
【0012】
また、前記蓄電装置の温度が異常である場合、前記弁機構を制御して前記車室内側を閉塞させることを特徴とする。
【0013】
これによれば、蓄電装置の温度が異常である場合つまり蓄電装置からガスが発生している場合には、蓄電装置から発生したガスが車室内に入り込むのを防止できる。
【0014】
また、前記蓄電装置に空気を導入するファンを備え、異常時は前記ファンの流量を通常時に比べ増量することを特徴とする。
【0015】
これによれば、蓄電装置から発生したガスを迅速に排出することが可能になる。
【0016】
また、前記燃料電池収納空間内に水素センサを備え、前記水素センサによって所定濃度以上の水素が検出されたときに前記弁機構を制御して前記車室内側を閉塞させることを特徴とする。
【0017】
これによれば、水素が車室内に入り込むのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄電装置の冷却や暖機をさらに効率的に行うことができる燃料電池車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の燃料電池自動車の全体構成図である。
【図2】本実施形態の燃料電池自動車を燃料電池の前方側からみたときの概略図である。
【図3】本実施形態の燃料電池自動車の制御を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の燃料電池自動車の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の燃料電池自動車Vについて図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、車室内Scの前側にフロントシートS,S(図2参照)、後側にリアシート(不図示)を備えたタイプの車両を例に挙げて説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池自動車(燃料電池車両)Vは、燃料電池10を収納する燃料電池収納空間Sfc、高圧バッテリ20を収納する蓄電装置収納空間Sb、主配管31,32、副配管33、三方弁34、ファン40、制御装置50、温度センサ51,52、水素センサ53などで構成されている。
【0022】
燃料電池10は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)からなり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)を導電性のセパレータで挟持してなる単セル(いずれも図示せず)が複数積層され、電気的に直列に接続された構造を有している。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)が、触媒を含むアノードおよびカソード等で挟持されて構成されている。アノードに対向するセパレータ(不図示)には、水素(燃料ガス)が通流するアノード流路が形成され、カソードに対向するセパレータ(不図示)には、空気(酸化剤ガス)が通流するカソード流路が形成されている。
【0023】
このような燃料電池10では、後記する水素タンク11からアノードに水素が供給され、図示しないエアコンプレッサからカソードに酸素を含む空気が供給されると、アノードおよびカソードに含まれる触媒上で電極反応が起こり、燃料電池10が発電可能な状態となる。発電電力は、高圧バッテリ20、走行モータ(図示せず)、エアコンプレッサ(図示せず)などに供給される。
【0024】
また、燃料電池10は、燃料電池自動車Vのフロアパネル1の下側、つまりフロアパネル1を挟んで車室内Scとは反対側に設けられた燃料電池収納空間Sfc内に配置されている。なお、フロアパネル1は、車室内Scと車室外Saとを区画する隔壁であり、主に車室内Scの床面を構成している。また、フロアパネル1は、そのリア側において、車室外Saの後輪と後輪との間に横置きに配置された水素タンク11のタンク形状に沿うように上側に向けて凸状に形成された湾曲部1bを有している。
【0025】
図2に示すように、燃料電池10は、フロアパネル1の左右のフロントシートSとフロントシートSとの間に形成された凸状のセンタコンソール1a内に配置されている。
【0026】
燃料電池収納空間Sfcは、燃料電池10の上方の隔壁を構成するセンタコンソール1aの一部である上パネル1a1、左右側方の隔壁を構成するセンタコンソール1aの一部である側パネル1a2,1a3、下方の隔壁を構成する底パネル2、後方の隔壁を構成する後パネル3(図1参照)、によって燃料電池10の周囲を取り囲むようにして構成されている。なお、燃料電池10の前方は、燃料電池自動車Vのボンネット側に開放している(図1参照)。
【0027】
図1に戻って、高圧バッテリ20(蓄電装置)は、燃料電池自動車Vに搭載される燃料電池10をアシストするため充電電力を放電したり、燃料電池10の発電電力や走行モータ等からの回生電力を充電する。この高圧バッテリ20は、例えばリチウムイオン型のものであり、複数の単電池を電気的に直列に接続した組電池を備えている。なお、蓄電装置として高圧バッテリ20に替えて、キャパシタなどであってもよい。また、リチウムイオン型の二次電池に替えて、ニッケル水素型などの二次電池であってもよい。
【0028】
また、高圧バッテリ20には、電流センサ21、温度センサ22が設けられている。電流センサ21は、高圧バッテリ20の充放電時における電流値を測定して、高圧バッテリ20の異常を検出するものである。温度センサ22は、高圧バッテリ20の温度を測定して、高圧バッテリ20の異常を検出するものである。高圧バッテリ20の異常は、電流センサ21と温度センサ22のいずれか一方に基づいて判断してもよく、あるいは双方を組み合わせて判断してもよい。
【0029】
なお、本実施形態における高圧バッテリ20の異常とは、高圧バッテリ20の内部からガスが発生していることを意味している。ちなみに、このガスは、リチウムイオン型の蓄電装置であれば、一酸化炭素であり、ニッケル水素型の蓄電装置であれば、水素である。
【0030】
蓄電装置収納空間Sbは、燃料電池収納空間Sfcの後方に設けられ、高圧バッテリ20の前方の隔壁を構成する前パネル4、後方の隔壁を構成する後パネル5、下方の隔壁を構成する底パネル6、側方の隔壁を構成する側パネル(不図示)などで構成されている。なお、高圧バッテリ20の上方の隔壁は、フロアパネル1の一部によって構成されている。
【0031】
主配管31,32は、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを連通させる流路を構成し、車室内Scが、主配管31、三方弁34および主配管32を介して蓄電装置収納空間Sbと接続されるように構成されている。
【0032】
副配管33は、その一端が三方弁34と接続され、他端が燃料電池収納空間Sfcと接続されている。すなわち、副配管33は、主配管31,32から分岐して燃料電池収納空間Sfcに接続されている。
【0033】
また、副配管33は、蛇行路33aを有しており、図1の矢印Aで示すように、燃料電池収納空間Sfcから蓄電装置収納空間Sbに水が浸入するのを防止することができ、高圧バッテリ20に対する防水処理を不要にできる。これにより、燃料電池自動車V(車両)の軽量化、コストの低減、レイアウト性の向上が可能となる。
【0034】
三方弁34(弁機構)は、制御装置50によって制御され、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを接続する位置と、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとを接続する位置とに切り換えができる弁で構成されている。
【0035】
なお、主配管31の車室内Scから空気を取り込む取込口31aは、例えば、図示しないリアシート後方のリアトレイに設けられている。ただし、取込口31aは、車室内Scの後部に限定されるものではなく、前部や中央部など適宜変更することができる。
【0036】
また、主配管31,32は、例えば、リアシートの背面部(不図示)の後方を通り、さらにリアシートの座面部(不図示)の下方を通り、フロアパネル1を貫通して蓄電装置収納空間Sbと接続されている。
【0037】
副配管33は、例えば、リアシートの座面部(不図示)の下方を通り、フロアパネル1を貫通して、燃料電池収納空間Sfcの上パネル1a1(図2参照)に接続されている。ちなみに、暖かい空気は上方に移動し易いので、副配管33を上パネル1a1に接続することにより、燃料電池収納空間Sfc内の暖かい空気を、副配管33を介して蓄電装置収納空間Sbに導入し易くなる。
【0038】
なお、副配管33の燃料電池収納空間Sfcとの接続部は、上パネル1a1に限定されるものではなく、暖かい空気を取り込み易い位置であれば、後パネルの上端部などであってもよい。また、主配管31,32および副配管33の配置は、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとの接続、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとの接続を選択的に切り替えることができるものであれば、種々変更することができる。
【0039】
ファン40は、蓄電装置収納空間Sb内の高圧バッテリ20に空気を導入するためのものであり、その上流側が排気管41を介して蓄電装置収納空間Sbと接続され、下流側が排気管42を介して外部(車室外Sa)と連通している。また、排気管42の排気口42aは、フロアパネル1の湾曲部1b内を上方に延びて形成され、湾曲部1bの比較的高い場所に位置している。このように排気口42aを高い位置に設けることにより、排気口42aからの水の浸入を抑制することができる。
【0040】
このようにファン42は、蓄電装置収納空間Sbに対して下流側に位置しており、ファン42が作動することにより、車室内Scおよび蓄電装置収納空間Sbの空気、または燃料電池収納空間Sfcおよび蓄電装置収納空間Sbの空気が吸引され、排気管41,42を介して車室外Saに排出されるようになっている。
【0041】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などがケース内に収納されて構成され、電流センサ21、三方弁34、温度センサ22,51,52、水素センサ53などと接続されている。
【0042】
なお、温度センサ51は、車室内温度検出装置に相当し、車室内Scの温度Tcを検出するものである。
【0043】
温度センサ52は、燃料電池温度検出装置に相当し、燃料電池10の温度Tfcを検出するものである。なお、温度センサ52は、燃料電池10のアノード出口温度やカソードの出口温度、冷媒の温度を検出するものであってもよく、燃料電池10の温度を直接に検出するものであってもよい。また、温度センサ52は、燃料電池10の温度Tfcに限定されるものではなく、燃料電池収納空間Sfcの温度であってもよい。
【0044】
水素センサ53は、燃料電池収納空間Sfc内の水素濃度を検出するものであり、燃料電池収納空間Sfc内の上部に設けられている。
【0045】
また、制御装置50は、高圧バッテリ20の暖機時に燃料電池10の温度Tfcと車室内Scの温度Tcとを比較し、高い温度の方を蓄電装置収納空間Sbと接続する暖機制御と、高圧バッテリ20の冷却時に、燃料電池10の温度Tfcと車室内Scの温度Tcとを比較し、低い温度の方を蓄電装置収納空間Sbと接続する冷却制御と、を備えている。
【0046】
なお、制御装置50の位置は、車室内Scに設けられていてもよく、高圧バッテリ20とともに蓄電装置収納空間Sb内に設けられていてもよい。
【0047】
次に、本実施形態の燃料電池自動車における動作について図3および図4を参照して説明する。なお、イグニッションスイッチがオフ(IG−OFF)の場合には、制御装置50によって三方弁34が制御されて、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとが接続されている。
【0048】
運転者によってイグニッションスイッチがオン(ON)されると、ステップS10において、制御装置50は、電流センサ21によって高圧バッテリ20に充放電される際の電流値を監視し、温度センサ22によって高圧バッテリ20の温度Tbを監視する。
【0049】
そして、ステップS20に進み、制御装置50は、高圧バッテリ20が異常発熱しているか否かを判断する。つまり、高圧バッテリ20の温度が異常に高く(高圧バッテリ20の温度が通常の使用範囲を超えて)上昇している場合には、高圧バッテリ20からガスが発生している(発生するおそれがある)と判断する。また、電流センサ21の電流値が通常の使用範囲を超えている場合も、高圧バッテリ20が異常発熱して、高圧バッテリ20からガスが発生している(発生するおそれがある)と判断する。
【0050】
ステップS20において、制御装置50は、高圧バッテリ20が異常発熱してガスが発生していると判断した場合には(Yes)、ステップS30に進み、三方弁34を制御して、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとの接続を遮断する。同時に、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとが接続される。
【0051】
そして、ステップS40に進み、制御装置50は、ファン40が正常に作動しているかどうかを確認する。なお、ファン40の回転異常は、例えば、ファン40からのパルス信号を検出し、そのパルス信号が所定の閾値より低いかどうかによって判断できる。
【0052】
ステップS40において、制御措置50は、ファン40が正常であると判断した場合には(Yes)、ステップS50に進み、ファン40を全開で駆動する。すなわち、ファン40の回転速度を通常時における回転速度に比べて増加させて、蓄電装置収納空間Sb内に供給する空気の流量を増量させる。なお、燃料電池自動車Vの始動時において、ファン40が停止している場合には、ファン40を停止状態から全開状態にする。これにより、蓄電装置収納空間Sb内のガスが直ちに排気管41,42を通って車室外Saに排出される。
【0053】
また、ステップS40において、制御装置50は、ファン40が正常に作動していないと判断した場合には(No)、ステップS50をスキップし、リターンする。
【0054】
なお、ファン40が正常に作動していない場合(S40、No)、警告ランプ、警告音などを作動させて、運転者に警告を促すようにしてもよい。また、高圧バッテリ20に対する充放電を制限するようにしてもよい。
【0055】
一方、ステップS20において、制御装置50は、高圧バッテリ20が異常発熱していないと判断した場合には(No)、ステップS110に進み、水素センサ53によって燃料電池収納空間Sfc内の水素濃度を監視する。
【0056】
そして、ステップS120に進み、制御装置50は、所定値(所定濃度)以上の水素を検出したか否かを判断する。制御装置50は、所定値以上の水素を検出したと判断した場合には(S120、Yes)、ステップS130に進み、三方弁34を制御して、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとの接続を遮断する。同時に、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとが接続される。
【0057】
そして、ステップS140に進み、制御装置50は、前記と同様にして、ファン40が正常に作動しているか否かを判断し、ファン40が正常に作動している場合には(Yes)、ファン40を全開に駆動する。これにより、燃料電池収納空間Sfc内の水素が、副配管33、主配管32を通って蓄電装置収納空間Sbに導入され、さらに排気管41,42を通って車室外Saに排出される。
【0058】
なお、燃料電池収納空間Sfc内の水素は、その全量が排気管41,42を通して排出される必要はなく、一部が燃料電池収納空間Sfcの前方の開口から排出されるようにしてもよい。
【0059】
また、ステップS140において、制御装置50は、ファン40が正常に作動していないと判断した場合には(No)、ステップS150をスキップして、リターンする。
【0060】
なお、ファン40が正常に作動していない場合(S140、No)、前記したように、警告ランプ、警告音などを作動させて、運転者に警告を促すようにしてもよい。また、燃料電池自動車Vの走行を停止させるようにしてもよい。
【0061】
一方、ステップS120において、制御装置50は、所定値以上の水素を検出していないと判断した場合には(No)、図4に示すステップS210に進み、温度センサ52によって高圧バッテリ20の温度Tbを監視する。
【0062】
そして、ステップS220に進み、制御装置50は、ステップS210で検出した温度Tbに基づいて高圧バッテリ20の冷却が必要であるか否かを判断する。ステップS220において、制御装置50は、冷却が必要でないと判断した場合には(No)、ステップS230に進み、ステップS210で検出した温度Tbに基づいて高圧バッテリ20の暖機が必要であるか否かを判断する。
【0063】
ステップS230において、制御装置50は、暖機が必要であると判断した場合には(Yes)、ステップS240に進み、車室内Scの温度Tcと燃料電池10の温度Tfcとを比較して、車室内Scの温度Tcが燃料電池10の温度Tfcより高いか否かを判断する。
【0064】
ステップS240において、制御装置50は、車室内Scの温度Tcが燃料電池10の温度Tfcよりも高いと判断した場合には、ステップS250に進み、三方弁34を制御して、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを接続する。同時に、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとの接続が遮断される。そして、ファン40を作動させることで、温度の高い方つまり車室内Scの空気が蓄電装置収納空間Sb内に導入され、高圧バッテリ20が暖機される。
【0065】
また、ステップS240において、制御装置50は、燃料電池10の温度Tfcが車室内Scの温度Tc以上であると判断した場合には(No)、ステップS260に進み、三方弁34を制御して、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとを接続する。同時に、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとの接続が遮断される。そして、ファン40を作動させることにより、温度の高い方つまり燃料電池収納空間Sfc内の空気が蓄電装置収納空間Sb内に導入され、高圧バッテリ20が暖機される。
【0066】
なお、高圧バッテリ20の暖機が必要な場合とは、例えば、燃料電池自動車Vが低温環境下で使用されて、高圧バッテリ20の温度が低温状態(例えば、10℃以下)で起動されたときである。また、ステップS240〜S260が、制御装置50の暖機制御に相当する。
【0067】
一方、ステップS230において、制御装置50は、高圧バッテリ20の暖機が必要でないと判断した場合には(No)、図3のフローのステップS10に戻る。
【0068】
また、ステップS220において、制御装置50は、高圧バッテリ20の冷却が必要であると判断した場合には(Yes)、ステップS260に進み、車室内Scの温度Tcと燃料電池10の温度Tfcとを比較して、燃料電池10の温度Tfcが車室内Scの温度Tcより低いか否かを判断する。
【0069】
ステップS260において、制御装置50は、燃料電池10の温度Tfcが車室内Scの温度Tcより低いと判断した場合には(Yes)、ステップS270に進み、三方弁34を制御して、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとを接続する。同時に、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとの接続が遮断される。そして、ファン40を作動させることで、温度の低い方つまり燃料電池収納空間Sfc内の空気が蓄電装置収納空間Sb内に導入され、高圧バッテリ20が冷却される。
【0070】
また、ステップS260において、制御装置50は、車室内Scの温度Tcが燃料電池10の温度Tfc以下であると判断した場合には(No)、ステップS280に進み、三方弁34を制御して、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを接続する。同時に、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとの接続が遮断される。そして、ファン40を作動させることで、温度の低い方つまり車室内Scの空気が蓄電装置収納空間Sb内に導入され、高圧バッテリ20が冷却される。
【0071】
なお、高圧バッテリ20の冷却が必要な場合とは、例えば、燃料電池自動車Vが高温環境下で使用されている場合、高圧バッテリ20に対する充放電が頻繁に行われている場合などである。また、ステップS260〜S280が、制御装置50の冷却制御に相当する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池自動車Vによれば、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを結ぶ第1経路(主配管31,32)と、蓄電装置収納空間Sbと燃料電池収納空間Sfcとを結ぶ第2経路(副配管33)とを設けて、高圧バッテリ20の暖機時には、車室内Scと燃料電池収納空間Sfcのうちの温度が高い方を蓄電装置収納空間Sbと接続することにより、高圧バッテリ20の暖機を効率的に行うことができる。また、高圧バッテリ20の冷却時には、車室内Scと燃料電池収納空間Sfcのうちの温度が低い方を蓄電装置収納空間Sbと接続することにより、高圧バッテリ20の冷却を効率的に行うことができる。
【0073】
このように、高圧バッテリ20の暖機時または冷却時に、空気(風)の導入もとを複数から選択できるので、高圧バッテリ20の温度調節を決め細やかに行うことが可能になる。例えば、高圧バッテリ20の暖機時には、高圧バッテリ20の暖機時間を短縮することが可能になる。また、高圧バッテリ20の冷却時には、高圧バッテリ20の冷却を迅速に行うことができ、高圧バッテリ20に対する熱による劣化を抑制することが可能になる。
【0074】
また、本実施形態によれば、車室内Sc、燃料電池収納空間Sfcおよび蓄電装置収納空間Sbの接続・遮断機構を、主配管31,32と副配管33とで構成することにより、分岐点に三方弁34をひとつ設けるだけでよく、燃料電池自動車Vのシステム構成を簡略化することが可能になる。
【0075】
また、本実施形態によれば、高圧バッテリ20の温度Tbが異常である場合、三方弁34を制御して車室内Sc側を閉塞させることにより、高圧バッテリ20から発生したガスが車室内に入り込むのを防止できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、高圧バッテリ20を冷却するファン40を設けて、異常時はファン40の流量を通常時に比べ増量することにより、高圧バッテリ20から発生したガスを迅速に車外に排出することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態によれば、燃料電池収納空間Sfc内に水素センサ53を設けて、水素センサ53によって所定値(所定水素濃度)以上の水素が検出されたときに三方弁34を制御して車室内Sc側を閉塞させることにより、水素が車室内Scに入り込むのを防止できる。
【0078】
なお、前記した実施形態では、第1経路を主配管31,32とし、主配管31,32から分岐した副配管33を第2経路とし、分岐点に三方弁34を設けた構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを接続する配管(第1経路)と、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとを接続する配管(第2経路)とを別々に設けて、各配管(第1経路、第2経路)に遮断弁(弁機構)を設ける構成であってもよい。
【0079】
この場合、高圧バッテリ20が異常に発熱した場合や所定濃度以上の水素が発生した場合において、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを遮断するときには(S30、S130)、主配管の遮断弁を閉弁し、副配管の遮断弁を開弁する。また、高圧バッテリ20の暖機時や冷却時に、燃料電池収納空間Sfcと蓄電装置収納空間Sbとを連通させるときには(S260、S280)、主配管の遮断弁を閉弁し、副配管の遮断弁を開弁する。また、高圧バッテリ20の暖機時や冷却時に、車室内Scと蓄電装置収納空間Sbとを連通させるときには(S250、S270)、主配管の遮断弁を開弁し、副配管の遮断弁を閉弁する。
【0080】
また、本実施形態では、高圧バッテリ20の暖機および冷却を行う場合を例に挙げて説明したが、高圧バッテリ20の暖機のみを備えた構成であってもよく、あるいは高圧バッテリ20の冷却のみを備えた構成であってもよい。
【0081】
また、図示していないが、ファン40が正常でない(停止している)場合において、燃料電池収納空間Sfcの前方のボンネット内の前部に位置するラジエータファン(燃料電池10内を循環する冷媒を放熱させるラジエータとともに設けられたファン)で発生する空気(風)を燃料電池収納空間Sfc内に取り込んで、燃料電池収納空間Sfc内の水素を、副配管33、主配管32、蓄電装置収納空間Sb、排気管41,42を介して車室外Saに排出してもよく、また、蓄電装置収納空間Sb内のガスを、燃料電池収納空間Sfc、副配管33、主配管32を介して導入した空気とともに排気管41,42から車室外Saに排出してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 燃料電池
20 高圧バッテリ(蓄電装置)
31,32 主配管
33 副配管
34 三方弁(弁機構)
40 ファン
50 制御装置
51 温度センサ(車室内温度検出装置)
52 温度センサ(燃料電池温度検出装置)
53 水素センサ
Sb 蓄電装置収納空間
Sc 車室内
Sfc 燃料電池収納空間
V 燃料電池自動車(燃料電池車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池および蓄電装置を搭載した燃料電池車両において、
前記蓄電装置を収納する蓄電装置収納空間と、
前記燃料電池を収納する燃料電池収納空間と、
車室内と前記蓄電装置収納空間とを結ぶ第1経路と、
前記蓄電装置収納空間と前記燃料電池収納空間とを結ぶ第2経路と、
前記第1経路および前記第2経路を接続・遮断する弁機構と、
前記燃料電池の温度を検出する燃料電池温度検出装置と、
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出装置と、
前記弁機構を制御し、前記蓄電装置の暖機時に前記燃料電池の温度と前記車室内の温度とを比較し、高い温度の方を前記蓄電装置収納空間と接続する暖機制御と、前記蓄電装置の冷却時に、前記燃料電池の温度と前記車室内の温度とを比較し、低い温度の方を前記蓄電装置収納空間と接続する冷却制御との少なくともどちらか一方を備えた制御装置と、
を備えたことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記第1経路および前記第2経路は、前記車室内と前記蓄電装置収納空間とを接続する主配管と、前記主配管から分岐して前記燃料電池収納空間と接続する副配管からなり、
前記弁機構は、前記主配管と前記副配管との分岐点に設けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記蓄電装置の温度が異常である場合、前記弁機構を制御して前記車室内側を閉塞させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記蓄電装置に空気を導入するファンを備え、異常時は前記ファンの流量を通常時に比べ増量することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池車両。
【請求項5】
前記燃料電池収納空間内に水素センサを備え、
前記水素センサによって所定濃度以上の水素が検出されたときに前記弁機構を制御して前記車室内側を閉塞させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−231923(P2010−231923A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75781(P2009−75781)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】