燃料電池車両
【課題】構成に要する費用を削減し、大きさを小型化し、動作効率の低下を防止する。
【解決手段】電位の異なる第1〜第3ラインL1,L2,L3と、主電源の燃料電池スタック11と副電源のバッテリ12とが直列に接続された電池回路10aと、第1DC−DCコンバータ13とを備え、電池回路10aの両端は第1ラインL1と第3ラインL3とに接続され、燃料電池スタック11とバッテリ12との接続点は第2ラインL2に接続され、第1DC−DCコンバータ13の1次側は第2ラインL2と第3ラインL3とに、かつ、2次側は第1ラインL1と第3ラインL3とに接続され、主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、駆動モータインバータ15は第2ラインL2および第3ラインL3に接続されている。
【解決手段】電位の異なる第1〜第3ラインL1,L2,L3と、主電源の燃料電池スタック11と副電源のバッテリ12とが直列に接続された電池回路10aと、第1DC−DCコンバータ13とを備え、電池回路10aの両端は第1ラインL1と第3ラインL3とに接続され、燃料電池スタック11とバッテリ12との接続点は第2ラインL2に接続され、第1DC−DCコンバータ13の1次側は第2ラインL2と第3ラインL3とに、かつ、2次側は第1ラインL1と第3ラインL3とに接続され、主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、駆動モータインバータ15は第2ラインL2および第3ラインL3に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両駆動用電動機に電力供給を行なう2つの電源を備え、一方(例えば、燃料電池)を主電源として車両駆動用電動機の駆動装置(例えば、インバータ)に直接に接続し、他方(例えば、バッテリ)をアシスト用の副電源としてDC/DCコンバータを介して車両駆動用電動機の駆動装置に接続し、主電源と副電源との間の電力分担割合の調整をDC/DCコンバータによって副電源側で行なう車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車両では、主電源の電圧変動範囲と副電源の電圧変動範囲とに重なりが存在し、主電源の電圧が副電源の電圧よりも高くなる場合と、主電源の電圧が副電源の電圧よりも低くなる場合とが生じる。そして、DC/DCコンバータは、1次側に副電源が接続され、2次側に車両駆動用電動機の駆動装置が接続されて、双方向で昇降圧可能、つまり1次側から2次側に向かう方向および2次側から1次側に向かう方向の両方向の通電において電圧の昇圧および降圧が可能となるように、4つの動作毎に対応した4つのスイッチング素子(例えば、IGBTなど)を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−217759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る車両においては、DC−DCコンバータを双方向で昇降圧可能に構成するために、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して少なくとも4つのスイッチング素子(例えば、IGBTなど)が必要とされる。例えば車両駆動用電動機が複数相のモータであることに対応してDC−DCコンバータを複数相とした場合には、各相毎に双方向での昇降圧の4つの動作に対応したスイッチング素子が必要となって素子数が増大することになる。しかしながら、DC−DCコンバータにおいてスイッチング素子の素子数が増大すると、DC−DCコンバータの構成に要する費用が嵩み、DC−DCコンバータの大きさが増大して車両搭載性が損なわれ、導通損失が増大して効率が低下し、DC−DCコンバータの発熱が増大して冷却能力の増強が必要になるという問題が生じることから、構成に要する費用の削減および大きさの小型化および効率低下の防止が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、構成に要する費用を削減し、大きさを小型化し、動作効率の低下を防止することが可能な燃料電池車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る燃料電池車両は、電位の異なる第1ライン(例えば、実施の形態での第1ラインL1)および第2ライン(例えば、実施の形態での第2ラインL2)および第3ライン(例えば、実施の形態での第3ラインL3)と、主電源(例えば、実施の形態での燃料電池スタック11またはバッテリ12)と副電源(例えば、実施の形態でのバッテリ12または燃料電池スタック11)とが直列に接続されてなる電池回路(例えば、実施の形態での電池回路10a)と、DC−DCコンバータ(例えば、実施の形態での第1DC−DCコンバータ13)と、走行用モータ(例えば、実施の形態での駆動モータ22)と、該走行用モータの駆動装置(例えば、実施の形態での駆動モータインバータ15)とを備え、前記電池回路の両端は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、前記電池回路の前記主電源と前記副電源との接続点は前記第2ラインに接続され、前記DC−DCコンバータの1次側は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続され、前記DC−DCコンバータの2次側は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、前記主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、前記駆動装置は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燃料電池車両によれば、互いの電圧の大小関係が変化(反転)する主電源および副電源を備える電池回路での電圧分担割合の調整をDC−DCコンバータにより行なう場合に、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して4つのスイッチング素子が必要とされるDC−DCコンバータに比べて、より少ないスイッチング素子だけでDC−DCコンバータを構成することができる。これにより、DC−DCコンバータの構成に要する費用が嵩むことを防止し、DC−DCコンバータの大きさが増大して車両搭載性が損なわれてしまうことを防止し、導通損失が増大して効率が低下したり、発熱が増大して冷却能力の増強が必要になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る3相のチョークコイルの構成図である。
【図4】本発明の実施形態の第1変形例に係る3相のチョークコイルの構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックとバッテリの電流電圧特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの電圧(VFC)とバッテリの電圧(VB)との比と、スイッチングデューティー(DUTY)との対応関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの動作点とバッテリの動作点と第1DC−DCコンバータのスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における第1DC−DCコンバータのスイッチングデューティーの変化に応じた電源装置の動作モードの変化と燃料電池スタックおよびバッテリの電流および電圧の変化の一例とを示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(EVモード)での通電状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第1の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第2の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第3の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第1のFCモード)での通電状態を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第2のFCモード)での通電状態を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る駆動モータの回生時における電源装置の動作モード(回生モード)での通電状態を示す図である。
【図16】本発明の実施形態に係る駆動モータの回生時における電源装置の動作モード((回生+FCによるバッテリ充電)モード)での通電状態を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の電源システムの動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施形態の第2変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【図19】本発明の実施形態の第3変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【図20】本発明の実施形態の第3変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池車両について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による燃料電池車両1は、例えば図1,図2に示すように、電源装置10として、主電源をなす燃料電池スタック(FC)11と、副電源をなすバッテリ12と、第1DC−DCコンバータ13と、エアポンプインバータ(API)14とを備え、燃料電池スタック11とバッテリ12とは直列に接続されて電池回路10aが形成されている。
そして、燃料電池車両1は、電源装置10と、駆動モータインバータ15と、エアポンプ(AP)21と、駆動モータ22と、第2DC−DCコンバータ23と、空調機器24と、制御装置25と、出力電流センサ27と、相電流センサ28と、角度センサ29とを備えて構成されている。
【0010】
燃料電池スタック11は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0011】
燃料電池スタック11のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアポンプ21から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略)から供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0012】
なお、エアポンプ21は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池スタック11のカソードに供給する。このエアポンプ21を駆動するポンプ駆動用モータ(図示略)の回転数は、制御装置25から出力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどからなるエアポンプインバータ14により制御されている。
【0013】
なお、電源装置10ではバッテリ12の代わりに蓄電装置として、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどからなるキャパシタを備えてもよい。
【0014】
第1DC−DCコンバータ13は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路31と、3相のチョークコイル32と、第1および第2平滑コンデンサ33a,33bとを備えて構成されている。
【0015】
なお、第1DC−DCコンバータ13を簡略化して示す図1においては、3相のうち1相分のみのスイッチング素子とチョークコイル32のみを図示しているが、本実施の形態においても、図1に示すように、スイッチング素子とチョークコイル32とを3相で共通化してもよい。この場合には、3相のブリッジ回路31の代わりに、2つのスイッチング素子が直列に接続されてなるスイッチング回路を備え、3相のチョークコイル32の代わりに1相のチョークコイルを備えればよい。
【0016】
ブリッジ回路31は、後述する3相の駆動モータインバータ15を構成する3相のブリッジ回路51と同等であって、例えば各相毎に対をなすハイ側およびロー側第1トランジスタAH,ALと、ハイ側およびロー側第2トランジスタBH,BLと、ハイ側およびロー側第3トランジスタCH,CLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタAH,BH,CHはコレクタが2次側正極端子P2に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタAL,BL,CLはエミッタが2次側負極端子N2に接続されてローサイドアームを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのコレクタに接続され、各トランジスタAH,AL,BH,BL,CH,CLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDAH,DAL,DBH,DBL,DCH,DCLが接続されている。
【0017】
そして、このブリッジ回路31は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとなる状態と、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとなる状態とが、交互に切り替えられる。
【0018】
第1平滑コンデンサ33aは1次側正極端子P1および負極端子Nに接続され、第2平滑コンデンサ33bは2次側正極端子P2および1次側正極端子P1に接続されている。
3相のチョークコイル32は、各チョークコイル32の一端がブリッジ回路31の各相毎のコレクタ−エミッタ間、つまり各トランジスタAH,ALのコレクタ−エミッタ間および各トランジスタBH,BLのコレクタ−エミッタ間および各トランジスタCH,CLのコレクタ−エミッタ間のそれぞれに接続され、各チョークコイル32の他端は互いに1次側正極端子P1に接続されている。
【0019】
3相のチョークコイル32は、例えば図3に示すように、単一の矩形のコア41にコモンモード巻きで巻回され、通電時に各チョークコイル32から発生する磁束の方向が同方向となるように設定されている。
そして、3相のうち何れか1相のチョークコイル32は、矩形のコア41をなす2対の対辺のうち一方の1対の対辺41aに分散して巻回され、3相のうち他の2相のチョークコイル32は、矩形のコア41をなす2対の対辺のうち他方の1対の対辺41bにぞれぞれ集中して巻回されている。
なお、3相の各チョークコイル32は、例えば図4に示すように、矩形のコア41をなす4辺のうち何れか3辺にぞれぞれ集中して巻回されてもよいし、他の巻線構造であってもよい。
【0020】
第1DC−DCコンバータ13は、例えば図2に示すように、電位の異なる3つの各ラインL1,L2,L3(例えば、L1の電位>L2の電位>L3の電位)に対して、1次側が第2ラインL2と第3ラインL3とに接続され、2次側が第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されている。つまり、第1ラインL1は2次側正極端子P2に接続され、第2ラインL2は1次側正極端子P1に接続され、第3ラインL3は負極端子Nに接続されている。
【0021】
この第1DC−DCコンバータ13は、1次側から2次側への昇圧動作時には、先ず、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとされ、1次側から入力される電流によってチョークコイル32が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
そして、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとされ、チョークコイル32に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生し、チョークコイル32に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧が1次側の入力電圧に上積みされて1次側の入力電圧よりも高い昇圧電圧が2次側に印加される。この切換動作に伴って発生する電圧変動は第1および第2平滑コンデンサ33a,33bにより平滑化され、昇圧電圧が2次側から出力される。
【0022】
一方、2次側から1次側への降圧動作時には、先ず、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとされ、2次側から入力される電流によってチョークコイル32が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
そして、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとされ、チョークコイル32に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。このチョークコイル32に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオン/オフの比率に応じて2次側の入力電圧が降圧された降圧電圧となり、降圧電圧が1次側に印加される。
【0023】
第1DC−DCコンバータ13は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えばPWM信号の1周期におけるハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンの比率として定義されるスイッチングデューティー(DUTY)に応じて、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHとローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLとのオン/オフを切り換える。
なお、スイッチングデューティー(DUTY)は、例えば、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオン時間THonとローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのオン時間TLonとにより、DUTY=THon/(THon+TLon)とされる。
また、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHと、ローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLとは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
【0024】
燃料電池スタック11は、正極側および負極側に配置されて制御装置25により断接(オン/オフ)が切り換えられるコンタクタ11aを介して、第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されている。
バッテリ12は、正極側および負極側に配置されて制御装置25により断接(オン/オフ)が切り換えられるコンタクタ12aと、正極側に配置されて制御装置25により動作が制御される電流制限回路12bとを介して、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されている。
【0025】
これにより、第1ラインL1と第3ラインL3との間で燃料電池スタック11とバッテリ12とは直列に接続されて電池回路10aが形成されている。
そして、第2ラインL2および第3ラインL3から負荷である駆動モータ22などに電力が出力されるようにして第2ラインL2と第3ラインL3とは駆動モータインバータ15に接続されている。
また、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されている。
【0026】
3相の駆動モータ22の駆動回路をなす駆動モータインバータ15は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路51と、平滑コンデンサ52とを備えて構成されている。
【0027】
ブリッジ回路51は、例えば第1DC−DCコンバータ13を構成する3相のブリッジ回路31と同等であって、例えば各相毎に対をなすハイ側およびロー側U相トランジスタUH,ULと、ハイ側およびロー側V相トランジスタVH,VLと、ハイ側およびロー側W相トランジスタWH,WLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタUH,VH,WHはコレクタが第1DC−DCコンバータ13の1次側正極端子P1に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタUL,VL,WLはエミッタが第1DC−DCコンバータ13の負極端子Nに接続されてローサイドアームを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタUH,VH,WHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタUL,VL,WLのコレクタに接続され、各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLが接続されている。
【0028】
この駆動モータインバータ15は、制御装置25から出力されてブリッジ回路51の各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えば駆動モータ22の駆動時には、各相毎に対をなす各トランジスタのオン(導通)/オフ(遮断)状態を切り替えることによって、電源装置10から出力される直流電力を3相交流電力に変換し、駆動モータ22の3相のステータ巻線(図示略)への通電を順次転流させることで、各相のステータ巻線に交流のU相電流IuおよびV相電流IvおよびW相電流Iwを通電する。一方、例えば駆動モータ22の回生時には、駆動モータ22から出力される3相交流電力を直流電力に変換して第1DC−DCコンバータ13に供給し、バッテリ12の充電および第1DC−DCコンバータ13に接続された負荷に対する給電などを行なう。
【0029】
なお、駆動モータ22は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、駆動モータインバータ15から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪側から駆動モータ22側に駆動力が伝達されると、駆動モータ22は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0030】
第2DC−DCコンバータ23は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、燃料電池車両に搭載される車両用補機の少なくとも一部(例えば、処理装置と、電磁バルブと、12V系負荷となど)が負荷として接続されている。
第2DC−DCコンバータ23は、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、制御装置25から出力される制御指令に応じたチョッピング動作により、第1ラインL1と第2ラインL2との間に印加される電圧を降圧して、第2DC−DCコンバータ23に接続された負荷に供給する。
【0031】
また、燃料電池車両に搭載される車両用補機の少なくとも一部をなす空調機器24は、例えば燃料電池車両に搭載されるヒータと、コンプレッサー用のモータおよび駆動回路(例えば、インバータなど)となどを備えて構成されている。
空調機器24は、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、第1ラインL1および第2ラインL2から電力が供給される。
【0032】
制御装置25は、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御するデューティー制御を行なうとともに、駆動モータインバータ15の電力変換動作を制御する。
制御装置25には、例えば、燃料電池スタック11の出力電流Ifcを検出する出力電流センサ27と、駆動モータインバータ15と駆動モータ22との間において3相の各相電流を検出する相電流センサ28と、駆動モータ22の回転子の回転角(つまり、所定の基準回転位置からの回転子の磁極の回転角度であって、駆動モータ22の回転軸の回転位置)を検出する角度センサ29との各センサから出力される検出信号が入力されている。
【0033】
制御装置25は、例えば、消費電力算出部61と、目標電力配分設定部62と、目標電流設定部63と、デューティー制御部64と、駆動モータ制御部65とを備えて構成されている。
【0034】
消費電力算出部61は、電源装置10から電力が供給される負荷(例えば、電源装置10の外部の負荷である駆動モータ22および空調機器24および車両用補機など、および、電源装置10の内部の負荷であるエアポンプインバータ14など)の総消費電力を算出する。
【0035】
目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCとなどに基づき、電源装置10の電池回路10aを形成する燃料電池スタック11とバッテリ12との電力配分、つまり消費電力算出部61により算出された総消費電力を燃料電池スタック11から出力される電力とバッテリ12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分を設定する。
【0036】
例えば駆動モータ22の駆動時における電力配分は、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(つまり、PWM信号の1周期におけるハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンの比率)に応じた値となり、スイッチングデューティー(DUTY)は燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)とにより以下に示すように記述される。
【0037】
DUTY(%)=100×VFC/(VFC+VB)
【0038】
これにより、以下に示すようにスイッチングデューティー(DUTY)によって燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との比が記述される。
【0039】
VB/VFC=(100−DUTY)/DUTY
【0040】
燃料電池スタック11の電圧(VFC)と、バッテリ12の電圧(VB)とは、例えば図5に示すように、それぞれ燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)および電力(つまり、電圧VFCと出力電流Ifcとの積)と、バッテリ12の電流(Ib)および電力(つまり、電圧VBと電流Ibとの積)と所定の対応関係を有する。
これにより、例えば図6に示すように、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比がスイッチングデューティー(DUTY)により連続的に変化するように記述される。
なお、図5,図6に示すように、本発明においては、燃料電池スタック11の電流電圧特性とバッテリ12の電流電圧特性とは交差し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)するように設定されている。
つまり、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)しても、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比がスイッチングデューティー(DUTY)により連続的に変化するようになっている。
【0041】
また、目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の回生時においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCと、駆動モータ22の回生電力となどに基づき、燃料電池スタック11と駆動モータインバータ15との電力供給側の電力配分、および、バッテリ12と負荷(例えば、空調機器24および車両用補機およびエアポンプインバータ14など)との電力受給側の電力配分を設定する。
【0042】
目標電流設定部63は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、スイッチングデューティー(DUTY)により、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比が記述されることから、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点と第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、燃料電池スタック11の出力電流Ifcに対する目標電流を取得する。
【0043】
この所定マップは、例えば図7に示すように、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーの複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(D(1),…,D(k),…)と、負荷の総消費電力の複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(P(1),…,P(k),…)とを備えている。
そして、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーの複数の値毎に対して設定された対応関係では、スイッチングデューティーに応じた比率で燃料電池スタック11の動作点の増大に伴いバッテリ12の動作点が増大傾向に変化するように設定されている。
また、負荷の総消費電力の複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係では、燃料電池スタック11の動作点に応じた電力とバッテリ12の動作点に応じた電力との和が負荷の総消費電力と等しくなるような動作点の組み合わせが設定されている。
【0044】
目標電流設定部63は、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、消費電力算出部61により算出された負荷の総消費電力に応じた対応関係P(k)と目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じた第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた対応関係D(k)との交点を燃料電池スタック11およびバッテリ12の動作点とし、この動作点に応じた燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)を目標電流として出力する。
【0045】
また、目標電流設定部63は、例えば駆動モータ22の回生時においては、目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じて、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流として零あるいは正の値を出力する。
【0046】
デューティー制御部64は、燃料電池スタック11とバッテリ12との実際の電力配分(実電力配分)が目標電力配分設定部62により設定された電力配分(目標電力配分)に一致するようにして、例えば出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値が目標電流設定部63から出力される燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流に一致するようにして、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
デューティー制御部64は、例えば、電流偏差算出部71と、フィードバック処理部72と、PWM信号生成部73とを備えて構成されている。
【0047】
電流偏差算出部71は、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値と、目標電流設定部63から出力される燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流との電流偏差を算出して出力する。
フィードバック処理部72は、例えばPID(比例積分微分)動作により、電流偏差算出部71から出力される電流偏差を制御増幅して電圧指令値を算出する。
【0048】
PWM信号生成部73は、フィードバック処理部72から出力される電圧指令値に応じた出力電流Ifcを燃料電池スタック11から出力するために、第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力する。
【0049】
駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)を行なう。駆動モータ制御部65は、運転者のアクセル操作および駆動モータ22の回転数などに基づくトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧Vu,Vv,Vwを算出し、各相出力電圧Vu,Vv,Vwに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51へゲート信号であるPWM信号を入力する。そして、実際に駆動モータインバータ15から駆動モータ22に供給される各相電流Iu,Iv,Iwの検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるように制御を行なう。
【0050】
また、駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の回生時においては、角度センサ29から出力される駆動モータ22の回転子の回転角θmの出力波形に基づいて同期がとられたパルスに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させ、駆動モータ制御部65から出力される3相交流電力を直流電力に変換する。このとき、駆動モータ制御部65は、ブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号のデューティーに応じた回生電圧のフィードバック制御を行ない、所定の電圧値を駆動モータインバータ15の1次側つまり第1DC−DCコンバータ13の1次側正極端子P1と負極端子Nとの間に出力する。
【0051】
つまり、制御装置25は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流と一致するようにしてフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御することにより、例えば図8に示すように、電源装置10の動作モードを連続的に制御する。
【0052】
例えば第1DC−DCコンバータ13の昇圧比が2〜3程度の値となる状態で、スイッチングデューティーが最大となる電源装置10の動作モードは、例えば図9(A),(B)に示すように、バッテリ12の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されるEVモードとなる。
【0053】
そして、EVモードからスイッチングデューティーが低下傾向に変化することに伴い、電源装置10の動作モードは、例えば図10(A),(B)〜図12(A),(B)に示すように、順次、第1〜第3の(FC+バッテリ)モードに推移する。
第1の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されると共に燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)よりも大きくなる。
第2の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されると共に燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)とエアポンプインバータ14に通電される電流(IAP)との和に等しくなる。
第3の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12および燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)よりも小さくなる。
【0054】
これに伴い、例えば図8に示すように、バッテリ12の電流(Ib)が減少傾向に変化し、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)及び目標電流は増大傾向に変化する。そして、駆動モータインバータ15の1次側の入力電圧はほぼ一定に維持されつつ、バッテリ12の電圧(VB)は増大傾向に変化し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)は減少傾向に変化して、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)する。
【0055】
そして、第3の(FC+バッテリ)モードからスイッチングデューティーが最小まで低下傾向に変化することに伴い、電源装置10の動作モードは、例えば図13(A),(B)〜図14(A),(B)に示すように、順次、第1,第2のFCモードに推移する。
第1のFCモードでは、燃料電池スタック11の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給される。
第2のFCモードでは、燃料電池スタック11の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14およびバッテリ12に供給されてバッテリ12が充電される。
これに伴い、例えば図8に示すように、バッテリ12の電流(Ib)が零から負の値へと減少傾向に変化し、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)及び目標電流は増大傾向に変化する。そして、駆動モータインバータ15の1次側の入力電圧はほぼ一定に維持されつつ、バッテリ12の電圧(VB)は増大傾向に変化し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)は減少傾向に変化する。
【0056】
また、制御装置25は、例えば駆動モータ22の回生時においては、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流(零あるいは正の値)と一致するようにしてフィードバック制御を行なう。とともに、回生電圧のフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が零とされる電源装置10の動作モードは、例えば図15(A),(B)に示すように、駆動モータインバータ15の回生電力によりバッテリ12が充電される回生モードとなる。
また、例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が正の値とされる電源装置10の動作モードは、例えば図16(A),(B)に示すように、駆動モータインバータ15の回生電力および燃料電池スタック11の出力がエアポンプインバータ14およびバッテリ12に供給されてバッテリ12が充電される(回生+FCによるバッテリ充電)モードとなる。
【0057】
なお、制御装置25は、例えば、燃料電池車両の運転状態や、燃料電池スタック11のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11の発電状態などに基づき、燃料電池スタック11に対する発電指令として、燃料電池スタック11へ供給される反応ガスの圧力および流量に対する指令値を出力し、燃料電池スタック11の発電状態を制御する。なお、燃料電池スタック11の発電状態は、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池スタック11の電圧VFCや、燃料電池スタック11の出力電流Ifcや、燃料電池スタック11の内部温度などである。
【0058】
また、制御装置25は、燃料電池スタック11の発電状態などに応じてコンタクタ11aのオン/オフを切り換え、燃料電池スタック11と第2ラインL2および第3ラインL3との接続を制御する。
また、制御装置25は、バッテリ12の残容量SOCなどに応じてコンタクタ12aおよび電流制限回路12bのオン/オフを切り換え、バッテリ12と第1ラインL1および第2ラインL2との接続を制御する。
【0059】
本発明の実施形態による燃料電池車両1は上記構成を備えており、次に、燃料電池車両1の動作、特に、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0060】
先ず、例えば図17に示すステップS01においては、電源装置10から電力が供給される負荷(例えば、駆動モータ22および空調機器24および車両用補機など)の総消費電力を算出する。
次に、ステップS02においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCとなどに基づき、電源装置10の電池回路10aを形成する燃料電池スタック11とバッテリ12との電力配分を設定する。この電力配分は、負荷の総消費電力を燃料電池スタック11から出力される電力とバッテリ12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分であって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた値となる。
【0061】
次に、ステップS03においては、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点と第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、燃料電池スタック11の出力電流Ifcに対する目標電流を取得する。
【0062】
次に、ステップS04においては、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値を取得する。
次に、ステップS05においては、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値と目標電流との電流偏差を、例えばPID(比例積分微分)動作などにより制御増幅して電圧指令値を算出する。
【0063】
次に、ステップS06においては、電圧指令値に応じた出力電流Ifcを燃料電池スタック11から出力するために、第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成する。
【0064】
次に、ステップS07においては、PWM信号に応じて第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動し、リターンに進む。
【0065】
上述したように、本発明の実施形態による燃料電池車両1によれば、互いの電圧の大小関係が変化(反転)する主電源(例えば、燃料電池スタック(FC)11)および副電源(例えば、バッテリ12)を備える電池回路10aでの電圧分担割合の調整を第1DC−DCコンバータ13により行なう場合に、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して4つのスイッチング素子が必要とされるDC−DCコンバータに比べて、より少ないスイッチング素子(つまり各相毎に2つのスイッチング素子)だけで第1DC−DCコンバータ13を構成することができる。これにより、第1DC−DCコンバータ13の構成に要する費用が嵩むことを防止し、第1DC−DCコンバータ13の大きさが増大して車両搭載性が損なわれてしまうことを防止し、導通損失が増大して効率が低下したり、発熱が増大して冷却能力の増強が必要になることを防止することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されているとしたが、これに限定されず、例えば、図18に示すように第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3に接続されてもよい。
また、燃料電池スタック11に反応ガスを供給するポンプ(例えば、エアポンプ21など)および冷媒を供給するポンプ(図示略)のうち少なくとも1つのポンプの駆動回路が、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されてもよいし、第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3に接続されてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、燃料電池車両1に搭載される車両用補機の少なくとも一部(例えば、第2DC−DCコンバータ23とは独立した空調機器24など、および、第2DC−DCコンバータ23に接続される負荷(処理装置と、電磁バルブと、12V系負荷となど))は、直接あるいは第2DC−DCコンバータ23を介して、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されるとしたが、これに限定されず、例えば図19に示すように第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されてもよい。
【0068】
なお、上述した実施の形態においては、バッテリ12は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、燃料電池スタック11は第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されるとしたが、これに限定されず、バッテリ12を主電源とし、燃料電池スタック11を副電源として、燃料電池スタック11は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、バッテリ12は第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されてもよい。さらに、この場合には、例えば図20に示すように、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよい。
【0069】
なお、上述した実施の形態においては、制御装置25は燃料電池スタック11とバッテリ12との実電力配分が目標電力配分に一致するようにして、例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)のフィードバック制御を行なうことで、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御するとしたが、これに限定されず、バッテリ12の電流(Ib)が目標値に一致するようにしてフィードバック制御を行なってもよい。
また、電流の代わりに、燃料電池スタック11の電圧(VFC)またはバッテリ12の電圧(VB)の検出値が目標値に一致するようにしてフィードバック制御をおこなってもよいし、燃料電池スタック11とバッテリ12との出力比が目標値に一致するようにしてスイッチングデューティーをフィードバック制御してもよい。
【0070】
なお、上述した実施の形態においては、第1DC−DCコンバータ13は、ハイサイドアームのオフかつローサイドアームのオンの状態と、ハイサイドアームのオンかつローサイドアームのオフの状態とを交互に切り換えるとしたが、これに限定されない。例えば1次側から2次側への昇圧動作時には、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフに維持された状態でローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのオンとオフとを交互に切り換えてもよい。また、例えば1次側から2次側への回生動作時には、ローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフに維持された状態でハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンとオフとを交互に切り換えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料電池車両
10 電源装置
10a 電池回路
11 燃料電池スタック(主電源)
12 バッテリ(副電源)
13 第1DC−DCコンバータ(DC−DCコンバータ)
14 エアポンプインバータ
15 駆動モータインバータ
21 エアポンプ
22 駆動モータ(走行用モータ)
23 第2DC−DCコンバータ
24 空調機器
25 制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両駆動用電動機に電力供給を行なう2つの電源を備え、一方(例えば、燃料電池)を主電源として車両駆動用電動機の駆動装置(例えば、インバータ)に直接に接続し、他方(例えば、バッテリ)をアシスト用の副電源としてDC/DCコンバータを介して車両駆動用電動機の駆動装置に接続し、主電源と副電源との間の電力分担割合の調整をDC/DCコンバータによって副電源側で行なう車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車両では、主電源の電圧変動範囲と副電源の電圧変動範囲とに重なりが存在し、主電源の電圧が副電源の電圧よりも高くなる場合と、主電源の電圧が副電源の電圧よりも低くなる場合とが生じる。そして、DC/DCコンバータは、1次側に副電源が接続され、2次側に車両駆動用電動機の駆動装置が接続されて、双方向で昇降圧可能、つまり1次側から2次側に向かう方向および2次側から1次側に向かう方向の両方向の通電において電圧の昇圧および降圧が可能となるように、4つの動作毎に対応した4つのスイッチング素子(例えば、IGBTなど)を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−217759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る車両においては、DC−DCコンバータを双方向で昇降圧可能に構成するために、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して少なくとも4つのスイッチング素子(例えば、IGBTなど)が必要とされる。例えば車両駆動用電動機が複数相のモータであることに対応してDC−DCコンバータを複数相とした場合には、各相毎に双方向での昇降圧の4つの動作に対応したスイッチング素子が必要となって素子数が増大することになる。しかしながら、DC−DCコンバータにおいてスイッチング素子の素子数が増大すると、DC−DCコンバータの構成に要する費用が嵩み、DC−DCコンバータの大きさが増大して車両搭載性が損なわれ、導通損失が増大して効率が低下し、DC−DCコンバータの発熱が増大して冷却能力の増強が必要になるという問題が生じることから、構成に要する費用の削減および大きさの小型化および効率低下の防止が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、構成に要する費用を削減し、大きさを小型化し、動作効率の低下を防止することが可能な燃料電池車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る燃料電池車両は、電位の異なる第1ライン(例えば、実施の形態での第1ラインL1)および第2ライン(例えば、実施の形態での第2ラインL2)および第3ライン(例えば、実施の形態での第3ラインL3)と、主電源(例えば、実施の形態での燃料電池スタック11またはバッテリ12)と副電源(例えば、実施の形態でのバッテリ12または燃料電池スタック11)とが直列に接続されてなる電池回路(例えば、実施の形態での電池回路10a)と、DC−DCコンバータ(例えば、実施の形態での第1DC−DCコンバータ13)と、走行用モータ(例えば、実施の形態での駆動モータ22)と、該走行用モータの駆動装置(例えば、実施の形態での駆動モータインバータ15)とを備え、前記電池回路の両端は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、前記電池回路の前記主電源と前記副電源との接続点は前記第2ラインに接続され、前記DC−DCコンバータの1次側は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続され、前記DC−DCコンバータの2次側は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、前記主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、前記駆動装置は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燃料電池車両によれば、互いの電圧の大小関係が変化(反転)する主電源および副電源を備える電池回路での電圧分担割合の調整をDC−DCコンバータにより行なう場合に、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して4つのスイッチング素子が必要とされるDC−DCコンバータに比べて、より少ないスイッチング素子だけでDC−DCコンバータを構成することができる。これにより、DC−DCコンバータの構成に要する費用が嵩むことを防止し、DC−DCコンバータの大きさが増大して車両搭載性が損なわれてしまうことを防止し、導通損失が増大して効率が低下したり、発熱が増大して冷却能力の増強が必要になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る3相のチョークコイルの構成図である。
【図4】本発明の実施形態の第1変形例に係る3相のチョークコイルの構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックとバッテリの電流電圧特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの電圧(VFC)とバッテリの電圧(VB)との比と、スイッチングデューティー(DUTY)との対応関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの動作点とバッテリの動作点と第1DC−DCコンバータのスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における第1DC−DCコンバータのスイッチングデューティーの変化に応じた電源装置の動作モードの変化と燃料電池スタックおよびバッテリの電流および電圧の変化の一例とを示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(EVモード)での通電状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第1の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第2の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第3の(FC+バッテリ)モード)での通電状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第1のFCモード)での通電状態を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る駆動モータの駆動時における電源装置の動作モード(第2のFCモード)での通電状態を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る駆動モータの回生時における電源装置の動作モード(回生モード)での通電状態を示す図である。
【図16】本発明の実施形態に係る駆動モータの回生時における電源装置の動作モード((回生+FCによるバッテリ充電)モード)での通電状態を示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の電源システムの動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施形態の第2変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【図19】本発明の実施形態の第3変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【図20】本発明の実施形態の第3変形例に係る燃料電池車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池車両について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による燃料電池車両1は、例えば図1,図2に示すように、電源装置10として、主電源をなす燃料電池スタック(FC)11と、副電源をなすバッテリ12と、第1DC−DCコンバータ13と、エアポンプインバータ(API)14とを備え、燃料電池スタック11とバッテリ12とは直列に接続されて電池回路10aが形成されている。
そして、燃料電池車両1は、電源装置10と、駆動モータインバータ15と、エアポンプ(AP)21と、駆動モータ22と、第2DC−DCコンバータ23と、空調機器24と、制御装置25と、出力電流センサ27と、相電流センサ28と、角度センサ29とを備えて構成されている。
【0010】
燃料電池スタック11は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0011】
燃料電池スタック11のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアポンプ21から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略)から供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0012】
なお、エアポンプ21は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池スタック11のカソードに供給する。このエアポンプ21を駆動するポンプ駆動用モータ(図示略)の回転数は、制御装置25から出力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどからなるエアポンプインバータ14により制御されている。
【0013】
なお、電源装置10ではバッテリ12の代わりに蓄電装置として、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどからなるキャパシタを備えてもよい。
【0014】
第1DC−DCコンバータ13は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路31と、3相のチョークコイル32と、第1および第2平滑コンデンサ33a,33bとを備えて構成されている。
【0015】
なお、第1DC−DCコンバータ13を簡略化して示す図1においては、3相のうち1相分のみのスイッチング素子とチョークコイル32のみを図示しているが、本実施の形態においても、図1に示すように、スイッチング素子とチョークコイル32とを3相で共通化してもよい。この場合には、3相のブリッジ回路31の代わりに、2つのスイッチング素子が直列に接続されてなるスイッチング回路を備え、3相のチョークコイル32の代わりに1相のチョークコイルを備えればよい。
【0016】
ブリッジ回路31は、後述する3相の駆動モータインバータ15を構成する3相のブリッジ回路51と同等であって、例えば各相毎に対をなすハイ側およびロー側第1トランジスタAH,ALと、ハイ側およびロー側第2トランジスタBH,BLと、ハイ側およびロー側第3トランジスタCH,CLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタAH,BH,CHはコレクタが2次側正極端子P2に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタAL,BL,CLはエミッタが2次側負極端子N2に接続されてローサイドアームを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのコレクタに接続され、各トランジスタAH,AL,BH,BL,CH,CLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDAH,DAL,DBH,DBL,DCH,DCLが接続されている。
【0017】
そして、このブリッジ回路31は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとなる状態と、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとなる状態とが、交互に切り替えられる。
【0018】
第1平滑コンデンサ33aは1次側正極端子P1および負極端子Nに接続され、第2平滑コンデンサ33bは2次側正極端子P2および1次側正極端子P1に接続されている。
3相のチョークコイル32は、各チョークコイル32の一端がブリッジ回路31の各相毎のコレクタ−エミッタ間、つまり各トランジスタAH,ALのコレクタ−エミッタ間および各トランジスタBH,BLのコレクタ−エミッタ間および各トランジスタCH,CLのコレクタ−エミッタ間のそれぞれに接続され、各チョークコイル32の他端は互いに1次側正極端子P1に接続されている。
【0019】
3相のチョークコイル32は、例えば図3に示すように、単一の矩形のコア41にコモンモード巻きで巻回され、通電時に各チョークコイル32から発生する磁束の方向が同方向となるように設定されている。
そして、3相のうち何れか1相のチョークコイル32は、矩形のコア41をなす2対の対辺のうち一方の1対の対辺41aに分散して巻回され、3相のうち他の2相のチョークコイル32は、矩形のコア41をなす2対の対辺のうち他方の1対の対辺41bにぞれぞれ集中して巻回されている。
なお、3相の各チョークコイル32は、例えば図4に示すように、矩形のコア41をなす4辺のうち何れか3辺にぞれぞれ集中して巻回されてもよいし、他の巻線構造であってもよい。
【0020】
第1DC−DCコンバータ13は、例えば図2に示すように、電位の異なる3つの各ラインL1,L2,L3(例えば、L1の電位>L2の電位>L3の電位)に対して、1次側が第2ラインL2と第3ラインL3とに接続され、2次側が第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されている。つまり、第1ラインL1は2次側正極端子P2に接続され、第2ラインL2は1次側正極端子P1に接続され、第3ラインL3は負極端子Nに接続されている。
【0021】
この第1DC−DCコンバータ13は、1次側から2次側への昇圧動作時には、先ず、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとされ、1次側から入力される電流によってチョークコイル32が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
そして、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとされ、チョークコイル32に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生し、チョークコイル32に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧が1次側の入力電圧に上積みされて1次側の入力電圧よりも高い昇圧電圧が2次側に印加される。この切換動作に伴って発生する電圧変動は第1および第2平滑コンデンサ33a,33bにより平滑化され、昇圧電圧が2次側から出力される。
【0022】
一方、2次側から1次側への降圧動作時には、先ず、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオンとされ、2次側から入力される電流によってチョークコイル32が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
そして、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオンかつローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフとされ、チョークコイル32に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル32の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。このチョークコイル32に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオン/オフの比率に応じて2次側の入力電圧が降圧された降圧電圧となり、降圧電圧が1次側に印加される。
【0023】
第1DC−DCコンバータ13は、制御装置25から出力されて各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えばPWM信号の1周期におけるハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンの比率として定義されるスイッチングデューティー(DUTY)に応じて、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHとローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLとのオン/オフを切り換える。
なお、スイッチングデューティー(DUTY)は、例えば、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオン時間THonとローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのオン時間TLonとにより、DUTY=THon/(THon+TLon)とされる。
また、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHと、ローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLとは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
【0024】
燃料電池スタック11は、正極側および負極側に配置されて制御装置25により断接(オン/オフ)が切り換えられるコンタクタ11aを介して、第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されている。
バッテリ12は、正極側および負極側に配置されて制御装置25により断接(オン/オフ)が切り換えられるコンタクタ12aと、正極側に配置されて制御装置25により動作が制御される電流制限回路12bとを介して、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されている。
【0025】
これにより、第1ラインL1と第3ラインL3との間で燃料電池スタック11とバッテリ12とは直列に接続されて電池回路10aが形成されている。
そして、第2ラインL2および第3ラインL3から負荷である駆動モータ22などに電力が出力されるようにして第2ラインL2と第3ラインL3とは駆動モータインバータ15に接続されている。
また、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されている。
【0026】
3相の駆動モータ22の駆動回路をなす駆動モータインバータ15は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相のブリッジ回路51と、平滑コンデンサ52とを備えて構成されている。
【0027】
ブリッジ回路51は、例えば第1DC−DCコンバータ13を構成する3相のブリッジ回路31と同等であって、例えば各相毎に対をなすハイ側およびロー側U相トランジスタUH,ULと、ハイ側およびロー側V相トランジスタVH,VLと、ハイ側およびロー側W相トランジスタWH,WLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタUH,VH,WHはコレクタが第1DC−DCコンバータ13の1次側正極端子P1に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタUL,VL,WLはエミッタが第1DC−DCコンバータ13の負極端子Nに接続されてローサイドアームを構成している。そして、各相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタUH,VH,WHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタUL,VL,WLのコレクタに接続され、各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLが接続されている。
【0028】
この駆動モータインバータ15は、制御装置25から出力されてブリッジ回路51の各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、例えば駆動モータ22の駆動時には、各相毎に対をなす各トランジスタのオン(導通)/オフ(遮断)状態を切り替えることによって、電源装置10から出力される直流電力を3相交流電力に変換し、駆動モータ22の3相のステータ巻線(図示略)への通電を順次転流させることで、各相のステータ巻線に交流のU相電流IuおよびV相電流IvおよびW相電流Iwを通電する。一方、例えば駆動モータ22の回生時には、駆動モータ22から出力される3相交流電力を直流電力に変換して第1DC−DCコンバータ13に供給し、バッテリ12の充電および第1DC−DCコンバータ13に接続された負荷に対する給電などを行なう。
【0029】
なお、駆動モータ22は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、駆動モータインバータ15から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪側から駆動モータ22側に駆動力が伝達されると、駆動モータ22は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0030】
第2DC−DCコンバータ23は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、燃料電池車両に搭載される車両用補機の少なくとも一部(例えば、処理装置と、電磁バルブと、12V系負荷となど)が負荷として接続されている。
第2DC−DCコンバータ23は、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、制御装置25から出力される制御指令に応じたチョッピング動作により、第1ラインL1と第2ラインL2との間に印加される電圧を降圧して、第2DC−DCコンバータ23に接続された負荷に供給する。
【0031】
また、燃料電池車両に搭載される車両用補機の少なくとも一部をなす空調機器24は、例えば燃料電池車両に搭載されるヒータと、コンプレッサー用のモータおよび駆動回路(例えば、インバータなど)となどを備えて構成されている。
空調機器24は、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、第1ラインL1および第2ラインL2から電力が供給される。
【0032】
制御装置25は、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御するデューティー制御を行なうとともに、駆動モータインバータ15の電力変換動作を制御する。
制御装置25には、例えば、燃料電池スタック11の出力電流Ifcを検出する出力電流センサ27と、駆動モータインバータ15と駆動モータ22との間において3相の各相電流を検出する相電流センサ28と、駆動モータ22の回転子の回転角(つまり、所定の基準回転位置からの回転子の磁極の回転角度であって、駆動モータ22の回転軸の回転位置)を検出する角度センサ29との各センサから出力される検出信号が入力されている。
【0033】
制御装置25は、例えば、消費電力算出部61と、目標電力配分設定部62と、目標電流設定部63と、デューティー制御部64と、駆動モータ制御部65とを備えて構成されている。
【0034】
消費電力算出部61は、電源装置10から電力が供給される負荷(例えば、電源装置10の外部の負荷である駆動モータ22および空調機器24および車両用補機など、および、電源装置10の内部の負荷であるエアポンプインバータ14など)の総消費電力を算出する。
【0035】
目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCとなどに基づき、電源装置10の電池回路10aを形成する燃料電池スタック11とバッテリ12との電力配分、つまり消費電力算出部61により算出された総消費電力を燃料電池スタック11から出力される電力とバッテリ12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分を設定する。
【0036】
例えば駆動モータ22の駆動時における電力配分は、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(つまり、PWM信号の1周期におけるハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンの比率)に応じた値となり、スイッチングデューティー(DUTY)は燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)とにより以下に示すように記述される。
【0037】
DUTY(%)=100×VFC/(VFC+VB)
【0038】
これにより、以下に示すようにスイッチングデューティー(DUTY)によって燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との比が記述される。
【0039】
VB/VFC=(100−DUTY)/DUTY
【0040】
燃料電池スタック11の電圧(VFC)と、バッテリ12の電圧(VB)とは、例えば図5に示すように、それぞれ燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)および電力(つまり、電圧VFCと出力電流Ifcとの積)と、バッテリ12の電流(Ib)および電力(つまり、電圧VBと電流Ibとの積)と所定の対応関係を有する。
これにより、例えば図6に示すように、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比がスイッチングデューティー(DUTY)により連続的に変化するように記述される。
なお、図5,図6に示すように、本発明においては、燃料電池スタック11の電流電圧特性とバッテリ12の電流電圧特性とは交差し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)するように設定されている。
つまり、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)しても、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比がスイッチングデューティー(DUTY)により連続的に変化するようになっている。
【0041】
また、目標電力配分設定部62は、例えば駆動モータ22の回生時においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCと、駆動モータ22の回生電力となどに基づき、燃料電池スタック11と駆動モータインバータ15との電力供給側の電力配分、および、バッテリ12と負荷(例えば、空調機器24および車両用補機およびエアポンプインバータ14など)との電力受給側の電力配分を設定する。
【0042】
目標電流設定部63は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、スイッチングデューティー(DUTY)により、燃料電池スタック11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比が記述されることから、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点と第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、燃料電池スタック11の出力電流Ifcに対する目標電流を取得する。
【0043】
この所定マップは、例えば図7に示すように、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーの複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(D(1),…,D(k),…)と、負荷の総消費電力の複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係(P(1),…,P(k),…)とを備えている。
そして、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーの複数の値毎に対して設定された対応関係では、スイッチングデューティーに応じた比率で燃料電池スタック11の動作点の増大に伴いバッテリ12の動作点が増大傾向に変化するように設定されている。
また、負荷の総消費電力の複数の値毎に対して設定された燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点との対応関係では、燃料電池スタック11の動作点に応じた電力とバッテリ12の動作点に応じた電力との和が負荷の総消費電力と等しくなるような動作点の組み合わせが設定されている。
【0044】
目標電流設定部63は、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点とを直交座標とする2次元座標上において、消費電力算出部61により算出された負荷の総消費電力に応じた対応関係P(k)と目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じた第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた対応関係D(k)との交点を燃料電池スタック11およびバッテリ12の動作点とし、この動作点に応じた燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)を目標電流として出力する。
【0045】
また、目標電流設定部63は、例えば駆動モータ22の回生時においては、目標電力配分設定部62により設定された電力配分に応じて、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流として零あるいは正の値を出力する。
【0046】
デューティー制御部64は、燃料電池スタック11とバッテリ12との実際の電力配分(実電力配分)が目標電力配分設定部62により設定された電力配分(目標電力配分)に一致するようにして、例えば出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値が目標電流設定部63から出力される燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流に一致するようにして、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
デューティー制御部64は、例えば、電流偏差算出部71と、フィードバック処理部72と、PWM信号生成部73とを備えて構成されている。
【0047】
電流偏差算出部71は、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値と、目標電流設定部63から出力される燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流との電流偏差を算出して出力する。
フィードバック処理部72は、例えばPID(比例積分微分)動作により、電流偏差算出部71から出力される電流偏差を制御増幅して電圧指令値を算出する。
【0048】
PWM信号生成部73は、フィードバック処理部72から出力される電圧指令値に応じた出力電流Ifcを燃料電池スタック11から出力するために、第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力する。
【0049】
駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)を行なう。駆動モータ制御部65は、運転者のアクセル操作および駆動モータ22の回転数などに基づくトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧Vu,Vv,Vwを算出し、各相出力電圧Vu,Vv,Vwに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51へゲート信号であるPWM信号を入力する。そして、実際に駆動モータインバータ15から駆動モータ22に供給される各相電流Iu,Iv,Iwの検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるように制御を行なう。
【0050】
また、駆動モータ制御部65は、例えば駆動モータ22の回生時においては、角度センサ29から出力される駆動モータ22の回転子の回転角θmの出力波形に基づいて同期がとられたパルスに応じて駆動モータインバータ15のブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させ、駆動モータ制御部65から出力される3相交流電力を直流電力に変換する。このとき、駆動モータ制御部65は、ブリッジ回路51の各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号のデューティーに応じた回生電圧のフィードバック制御を行ない、所定の電圧値を駆動モータインバータ15の1次側つまり第1DC−DCコンバータ13の1次側正極端子P1と負極端子Nとの間に出力する。
【0051】
つまり、制御装置25は、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流と一致するようにしてフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御することにより、例えば図8に示すように、電源装置10の動作モードを連続的に制御する。
【0052】
例えば第1DC−DCコンバータ13の昇圧比が2〜3程度の値となる状態で、スイッチングデューティーが最大となる電源装置10の動作モードは、例えば図9(A),(B)に示すように、バッテリ12の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されるEVモードとなる。
【0053】
そして、EVモードからスイッチングデューティーが低下傾向に変化することに伴い、電源装置10の動作モードは、例えば図10(A),(B)〜図12(A),(B)に示すように、順次、第1〜第3の(FC+バッテリ)モードに推移する。
第1の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されると共に燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)よりも大きくなる。
第2の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されると共に燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)とエアポンプインバータ14に通電される電流(IAP)との和に等しくなる。
第3の(FC+バッテリ)モードでは、バッテリ12および燃料電池スタック11の出力が駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給されてバッテリ12の電流(Ib)が燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)よりも小さくなる。
【0054】
これに伴い、例えば図8に示すように、バッテリ12の電流(Ib)が減少傾向に変化し、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)及び目標電流は増大傾向に変化する。そして、駆動モータインバータ15の1次側の入力電圧はほぼ一定に維持されつつ、バッテリ12の電圧(VB)は増大傾向に変化し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)は減少傾向に変化して、燃料電池スタック11の電圧(VFC)とバッテリ12の電圧(VB)との大小関係が変化(つまり反転)する。
【0055】
そして、第3の(FC+バッテリ)モードからスイッチングデューティーが最小まで低下傾向に変化することに伴い、電源装置10の動作モードは、例えば図13(A),(B)〜図14(A),(B)に示すように、順次、第1,第2のFCモードに推移する。
第1のFCモードでは、燃料電池スタック11の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14に供給される。
第2のFCモードでは、燃料電池スタック11の出力のみが駆動モータインバータ15およびエアポンプインバータ14およびバッテリ12に供給されてバッテリ12が充電される。
これに伴い、例えば図8に示すように、バッテリ12の電流(Ib)が零から負の値へと減少傾向に変化し、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)及び目標電流は増大傾向に変化する。そして、駆動モータインバータ15の1次側の入力電圧はほぼ一定に維持されつつ、バッテリ12の電圧(VB)は増大傾向に変化し、燃料電池スタック11の電圧(VFC)は減少傾向に変化する。
【0056】
また、制御装置25は、例えば駆動モータ22の回生時においては、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流(零あるいは正の値)と一致するようにしてフィードバック制御を行なう。とともに、回生電圧のフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が零とされる電源装置10の動作モードは、例えば図15(A),(B)に示すように、駆動モータインバータ15の回生電力によりバッテリ12が充電される回生モードとなる。
また、例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の目標電流が正の値とされる電源装置10の動作モードは、例えば図16(A),(B)に示すように、駆動モータインバータ15の回生電力および燃料電池スタック11の出力がエアポンプインバータ14およびバッテリ12に供給されてバッテリ12が充電される(回生+FCによるバッテリ充電)モードとなる。
【0057】
なお、制御装置25は、例えば、燃料電池車両の運転状態や、燃料電池スタック11のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池スタック11の発電状態などに基づき、燃料電池スタック11に対する発電指令として、燃料電池スタック11へ供給される反応ガスの圧力および流量に対する指令値を出力し、燃料電池スタック11の発電状態を制御する。なお、燃料電池スタック11の発電状態は、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池スタック11の電圧VFCや、燃料電池スタック11の出力電流Ifcや、燃料電池スタック11の内部温度などである。
【0058】
また、制御装置25は、燃料電池スタック11の発電状態などに応じてコンタクタ11aのオン/オフを切り換え、燃料電池スタック11と第2ラインL2および第3ラインL3との接続を制御する。
また、制御装置25は、バッテリ12の残容量SOCなどに応じてコンタクタ12aおよび電流制限回路12bのオン/オフを切り換え、バッテリ12と第1ラインL1および第2ラインL2との接続を制御する。
【0059】
本発明の実施形態による燃料電池車両1は上記構成を備えており、次に、燃料電池車両1の動作、特に、燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)の検出値が目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なう。ことによって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0060】
先ず、例えば図17に示すステップS01においては、電源装置10から電力が供給される負荷(例えば、駆動モータ22および空調機器24および車両用補機など)の総消費電力を算出する。
次に、ステップS02においては、燃料電池スタック11の状態(例えば、発電指令に応じた燃料電池スタック11の状態変化の変化率など)と、バッテリ12の残容量SOCとなどに基づき、電源装置10の電池回路10aを形成する燃料電池スタック11とバッテリ12との電力配分を設定する。この電力配分は、負荷の総消費電力を燃料電池スタック11から出力される電力とバッテリ12から出力される電力とを加算して得た値とする際の配分であって、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーに応じた値となる。
【0061】
次に、ステップS03においては、例えば駆動モータ22の駆動時においては、燃料電池スタック11の動作点とバッテリ12の動作点と第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーと負荷の総消費電力との対応関係を示す所定マップを参照して、燃料電池スタック11の出力電流Ifcに対する目標電流を取得する。
【0062】
次に、ステップS04においては、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値を取得する。
次に、ステップS05においては、出力電流センサ27から出力される燃料電池スタック11の出力電流Ifcの検出値と目標電流との電流偏差を、例えばPID(比例積分微分)動作などにより制御増幅して電圧指令値を算出する。
【0063】
次に、ステップS06においては、電圧指令値に応じた出力電流Ifcを燃料電池スタック11から出力するために、第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成する。
【0064】
次に、ステップS07においては、PWM信号に応じて第1DC−DCコンバータ13のハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHおよびローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLをオン/オフ駆動し、リターンに進む。
【0065】
上述したように、本発明の実施形態による燃料電池車両1によれば、互いの電圧の大小関係が変化(反転)する主電源(例えば、燃料電池スタック(FC)11)および副電源(例えば、バッテリ12)を備える電池回路10aでの電圧分担割合の調整を第1DC−DCコンバータ13により行なう場合に、双方向での昇降圧の4つの動作毎に対応して4つのスイッチング素子が必要とされるDC−DCコンバータに比べて、より少ないスイッチング素子(つまり各相毎に2つのスイッチング素子)だけで第1DC−DCコンバータ13を構成することができる。これにより、第1DC−DCコンバータ13の構成に要する費用が嵩むことを防止し、第1DC−DCコンバータ13の大きさが増大して車両搭載性が損なわれてしまうことを防止し、導通損失が増大して効率が低下したり、発熱が増大して冷却能力の増強が必要になることを防止することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されているとしたが、これに限定されず、例えば、図18に示すように第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3に接続されてもよい。
また、燃料電池スタック11に反応ガスを供給するポンプ(例えば、エアポンプ21など)および冷媒を供給するポンプ(図示略)のうち少なくとも1つのポンプの駆動回路が、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されてもよいし、第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3に接続されてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、燃料電池車両1に搭載される車両用補機の少なくとも一部(例えば、第2DC−DCコンバータ23とは独立した空調機器24など、および、第2DC−DCコンバータ23に接続される負荷(処理装置と、電磁バルブと、12V系負荷となど))は、直接あるいは第2DC−DCコンバータ23を介して、第1ラインL1と第2ラインL2とに接続されるとしたが、これに限定されず、例えば図19に示すように第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されてもよいし、第1ラインL1と第3ラインL3とに接続されてもよい。
【0068】
なお、上述した実施の形態においては、バッテリ12は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、燃料電池スタック11は第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されるとしたが、これに限定されず、バッテリ12を主電源とし、燃料電池スタック11を副電源として、燃料電池スタック11は第1ラインL1と第2ラインL2とに接続され、バッテリ12は第2ラインL2と第3ラインL3とに接続されてもよい。さらに、この場合には、例えば図20に示すように、エアポンプ21の駆動回路であるエアポンプインバータ14は第2ラインL2と第3ラインL3に接続されてもよい。
【0069】
なお、上述した実施の形態においては、制御装置25は燃料電池スタック11とバッテリ12との実電力配分が目標電力配分に一致するようにして、例えば燃料電池スタック11の電流(出力電流Ifc)のフィードバック制御を行なうことで、第1DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御するとしたが、これに限定されず、バッテリ12の電流(Ib)が目標値に一致するようにしてフィードバック制御を行なってもよい。
また、電流の代わりに、燃料電池スタック11の電圧(VFC)またはバッテリ12の電圧(VB)の検出値が目標値に一致するようにしてフィードバック制御をおこなってもよいし、燃料電池スタック11とバッテリ12との出力比が目標値に一致するようにしてスイッチングデューティーをフィードバック制御してもよい。
【0070】
なお、上述した実施の形態においては、第1DC−DCコンバータ13は、ハイサイドアームのオフかつローサイドアームのオンの状態と、ハイサイドアームのオンかつローサイドアームのオフの状態とを交互に切り換えるとしたが、これに限定されない。例えば1次側から2次側への昇圧動作時には、ハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHがオフに維持された状態でローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLのオンとオフとを交互に切り換えてもよい。また、例えば1次側から2次側への回生動作時には、ローサイドアームの各トランジスタAL,BL,CLがオフに維持された状態でハイサイドアームの各トランジスタAH,BH,CHのオンとオフとを交互に切り換えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料電池車両
10 電源装置
10a 電池回路
11 燃料電池スタック(主電源)
12 バッテリ(副電源)
13 第1DC−DCコンバータ(DC−DCコンバータ)
14 エアポンプインバータ
15 駆動モータインバータ
21 エアポンプ
22 駆動モータ(走行用モータ)
23 第2DC−DCコンバータ
24 空調機器
25 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位の異なる第1ラインおよび第2ラインおよび第3ラインと、
主電源と副電源とが直列に接続されてなる電池回路と、
DC−DCコンバータと、走行用モータと、該走行用モータの駆動装置とを備え、
前記電池回路の両端は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記電池回路の前記主電源と前記副電源との接続点は前記第2ラインに接続され、
前記DC−DCコンバータの1次側は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記DC−DCコンバータの2次側は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、
前記駆動装置は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続されていることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項1】
電位の異なる第1ラインおよび第2ラインおよび第3ラインと、
主電源と副電源とが直列に接続されてなる電池回路と、
DC−DCコンバータと、走行用モータと、該走行用モータの駆動装置とを備え、
前記電池回路の両端は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記電池回路の前記主電源と前記副電源との接続点は前記第2ラインに接続され、
前記DC−DCコンバータの1次側は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記DC−DCコンバータの2次側は前記第1ラインと前記第3ラインとに接続され、
前記主電源の電流電圧特性と前記副電源の電流電圧特性とは交差し、
前記駆動装置は前記第2ラインと前記第3ラインとに接続されていることを特徴とする燃料電池車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−160590(P2011−160590A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21403(P2010−21403)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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