説明

爪の炎症性疾患の処置のためのキトサンの使用

キトサンベースの爪用製剤は、乾癬、アトピー性皮膚炎、および扁平苔癬などの爪の炎症性疾患を処置するのに有用である。キトサンは、通常、ヒドロキシプロピルキトサンなど、好ましくは水溶性の、アミノ多糖誘導体の形態である。製剤は、ネイルラッカー、スプレー、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、またはフォームであってよく、製剤の全重量に対して0.1重量%から25重量%までのキトサン、キトサン誘導体、またはそれらの塩の含量を有していてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬、扁平苔癬、およびアトピー性皮膚炎などの、爪の炎症性疾患の局所処置に有用な、薬物、または医療器具、または衛生製品、またはネイルラッカーの形態の化粧品を調製するための、キトサン、キトサン誘導体、または生理学的に許容できるそれらの塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、表皮の細胞における、細胞増殖の増大、グリコーゲンの蓄積、および不完全な分化を特徴とする、遺伝的に予め決定されている過剰増殖性の皮膚疾患である。乾癬における爪の関与は一般的であり、50%から56%の症例で報告されている。生涯にわたって、乾癬患者の80%から90%が、乾癬の爪の局在化に悩まされると推定されている(非特許文献1)。概して、爪乾癬患者の58%は、この状態は仕事の妨げになると考えており、52%は症状として疼痛を記載している。爪乾癬は成人および子供に発症する。様々な著者によると、子供では爪の関与は7%から39%の範囲に見出されている。若年性乾癬性関節炎を有する子供では、子供の80%が、乾癬の爪の徴候である点状凹窩を発症する。
【0003】
爪の関与が重症であっても、皮膚の乾癬が重症であることを意味しないこともあり、爪の変化のタイプは皮膚の病変のいかなる特定の分布に関連しない。乾癬の臨床徴候は、爪の表皮構造の関与の部位に相関し得る。爪における乾癬の主な特徴は、頻度の順序で:
1)点状凹窩:くぼみは、通常小型で浅い点状の凹窩であり、サイズ、深さ、および形状が変化し得る。これは近位のマトリクス(爪が形成される領域)の限局的な乾癬を起源とする。殆どのくぼみは表在性であり、広範囲である場合は色および蝕感において肉眼的な異常をもたらすことがあり、爪を脆弱にすることがある。組織学的には、くぼみは爪板の表層における欠損を表し、乾癬がより顕著になると、くぼみは拡大し、爪板に穴を生成することがある。
2)爪の変色:典型的な像は、爪のマトリクスが関与する場合は爪白斑(外観の白い爪)であり、または爪床が関与する場合はサーモン色である。爪床における乾癬は、卵形の、サーモン色の、様々なサイズの油性の点を生成する。
3)爪甲剥離症:これは爪床からの爪板の剥離である。これは油状の点が、内側または外側に下爪皮(爪板の下の部分)に影響を及ぼす場合に主に生じる。爪の界面下の空気および扁平細胞の蓄積の組合せによって、爪甲剥離症の爪は黄色がかった色を有する。
4)爪下角質増殖症:これは爪板の下の組織の肥厚である。これは扁平細胞の蓄積によって顕在化し、爪床乾癬におけるケラチン組成物の変化の現れである。
5)爪板の異常:これには、特に洗濯板状の爪を擬する親指上の、連続的な横の凹窩が含まれる。他の一般的な異常は、溶かしたロウの液滴に似ている隆起を有する爪の縦方向の隆起である。
6)爪下線状出血:これは、爪の疾患を有する乾癬患者の42%の手指爪に生じ、足指爪の6%に生じる。この徴候は、爪床における毛細血管の方向付け、および活動性の乾癬におけるこれら毛細血管の増殖および脆弱性を反映するものである。
【0004】
軟部組織の腫脹または慢性爪囲炎を有する近位の爪郭の乾癬のスケーリングが存在することもある。爪板に観察される変化は、疾患プロセスの位置および持続時間に依存する。病変は一過性のマトリクスの機能不全を反映することがあり、くぼみおよび横行性の溝など、範囲において限定されることがある。あるいは、これらは、疾患が持続的であることを表すことがあり、爪板の喪失または肥厚など、爪の異常の持続をもたらすことがある。美的外観の他に、乾癬の爪は脆弱であり、有痛であり、患者は日常生活の活動を妨げられる。
【0005】
爪乾癬の処置には、全身治療および/または局所治療が含まれる。全身治療には、強力なコルチコステロイド、ビタミンD類似体、レチノイドまたは免疫抑制薬が含まれ、患者が非常に重症な、全身性化した乾癬を表さなければ、その潜在的な毒性によって一般的に回避される。
【0006】
局所治療は、主に爪基部に適用するためのものである。この部位で爪郭の乾癬が処置されてもよく、限定された範囲まで根底をなすマトリクスを通して浸透してもよい。乾癬の爪の横行性の隆起には、近位の爪郭の炎症に付随するものもある。これを低減すれば、マトリクスの機能は正常に向けて戻り、爪の隆起は低減する。爪甲剥離症が存在する場合は、爪板を分離点に向けて切り戻さなければならない。
【0007】
乾癬で用いられる局所生成物は以下の通りである:
1.コルチコステロイド:フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン塩、プロピオン酸クロベタゾールが、当技術分野では知られている。これらは全て、閉塞性の薬物療法のもとで適用され、遠位指節骨のジストロフィーなどの副作用が報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。
2.カルシポトリオール:いくつかの文献の報告によると(非特許文献4)、局所のカルシポトリオールは、爪乾癬の処置として有用であり得る。この治療の限界は閉塞性の薬物療法が必要であることによって表されるが、閉塞性の薬物療法は患者にとって厄介であり、腎機能およびカルシウム代謝の機能障害による重症の全身性の副作用の危険性があり、したがってこの薬物は、例えば子供には勧められない。
3.シクロスポリン:局所のシクロスポリンを、数カ月間閉塞性の薬物治療のもとで10%油性調製物を適用して、1名の対象に用い、臨床的に有益であった(非特許文献5)。
4.レチノイド:タザロテンクリームの閉塞的な薬物療法のもとで局所使用し、臨床的な有益性がもたらされた(非特許文献6)。
【0008】
当技術分野における爪乾癬の局所処置は全て、閉塞性の薬物療法が必要であることを特徴としているが、閉塞性の薬物療法は患者にとって厄介であり、患者の生活の質を損ない、実際には夜の時間においてのみ適用され得る。したがって、使用が簡単であり、十分に安全で患者が慢性的に用いることができる、新規で効果的な治療薬に対する、強い満たされていない必要性が存在する。
【0009】
扁平苔癬は、やはり、おそらくは全身性の関与にしばしば付随する免疫の不均衡のために、遺伝的な罹患性の証拠のある、皮膚の炎症疾患である(非特許文献1)。
【0010】
扁平苔癬は、以下の臨床上の亜型に表れることによって、爪板に関与することがある:
1)典型的な扁平苔癬
2)20本の爪のジストロフィー
3)爪の突発性の萎縮症
爪郭疾患が存在する場合、これは、近位の爪のマトリクスが関与し、爪板の変化がその後すぐに起こる可能性があることを示している。爪は、徐々に疾患のプロセスを反映し、縦方向の赤色線は爪板の菲薄化を示し、最も脆弱な場合には、遠位の剥離に発展する。次の段階は、完全な剥離である。潰瘍化、出血性のびらん、および瘢痕が現れることがある。くぼみも近位の爪のマトリクスの扁平苔癬の徴候である。扁平苔癬がもっぱら爪床に関与することはまれであり、爪床の疾患の特徴には、角質増殖および爪甲剥離症が含まれる。
【0011】
予後は、マトリクスの関与および瘢痕の程度による。爪のマトリクスおよび爪床が完全に関与すると、爪板の完全な喪失、および瘢痕を伴う永久的な萎縮がもたらされる。処置は、経口のコルチコステロイド、レチノイド、およびアザチオプリンを含む対症療法である。重症の、非瘢痕型は、強力なコルチコステロイドでの局所処置が役立つことがある。
【0012】
もちろん、爪の炎症性疾患は、治療的処置に対してはっきりと反応しない慢性の状態である。したがって、皮膚に関すると、理想的な処置は一生続くものであり、患者の人生に1年あたり2回またはそれを超える治療サイクルとして実践されるものである。
【0013】
キトサン誘導体は、皮膚用の様々な調製物におけるその使用に関して当技術分野では知られている、甲殻類の外骨格から抽出されるキチンに由来するアミノ多糖である。特許文献1は、タンパク質またはペプチドを分離するための担体として有用な微粒子の成分としてキトサンを開示しており、特許文献2は、有効成分としてパラフィン蝋を含む皮膚のマッサージのためのパック組成物の成分としてキトサンを報告しており、特許文献3は、ボツリヌス毒素のゲル様またはスポンジ状の調製物の成分として、しわ治療薬を得るためのキトサンの使用を教示している。特許文献4は、空洞充填性の創傷包帯に有用なヒドロゲルの成分としてキトサン誘導体を報告している。特許文献5は、多孔性のスポンジ状の触感を有する担体シートの成分として、脱アセチル化度の高いキトサンの組成物を教示している。特許文献6は、ナノサイズの繊維の網状構造の形態のキトサンを含む組成物を開示している。特許文献7は、長時間薬物を保持する規則的な層状構造を有するキトサンの、多層のエアギャップシートを開示しており、特許文献8は、皮膚に適用するための薬物における分散安定化剤または乳化剤として用いることができる両親媒性のキトサン誘導体を教示している。特許文献9は、アトピー性皮膚炎、湿疹、および乾癬を含む炎症性皮膚疾患を処置するための組成物を調製するための、キトサンがコンジュゲートしたリノール酸、およびキトサンがコンジュゲートしたビタミンAを開示している。さらに、特許文献10は、爪の真菌感染症を処置するための抗真菌薬を含む、ネイルラッカーのフィルム形成成分として、水溶性キトサン誘導体の使用を報告しており、特許文献11は、フィルム形成剤として用いられるヒドロキシプロピルキトサンと組み合わせたトクサ(Equisetum)属からの1つの薬草の抽出物をベースにした爪の再構成組成物を開示している。フィルム形成剤としてのキトサンの使用は、特許文献12および特許文献13にも開示されている。特許文献14は、炎症または過敏症を防止または低減するための、10000Da未満の分子量を有するキトサンオリゴマーの使用を開示している。
【0014】
当技術分野は知られている参照のどれも、爪の炎症性疾患におけるキトサンまたはアミノ多糖キトサンのいかなる活性を報告しておらず、キトサンは、現在まで様々な疾患における有効成分の担体として、または真菌感染症におけるフィルム形成剤として用いられていた。
【0015】
現在、驚くべきことに、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/またはこれらの生理学的に許容できる塩は、乾癬、扁平苔癬、円形脱毛症、およびアトピー性皮膚炎などの爪の炎症性疾患の局所処置に有用であることが見出されている。キトサンおよびアミノ多糖キトサンは、ケラチン構造に浸透し、炎症性疾患の間に角化の欠損が起こっている爪のマトリクスに到達し、そのレベルの炎症を低減し、したがって健康で滑らかな爪の成長を可能にする。爪表面上に慢性的に適用すると、キトサンまたはその誘導体を含むネイルラッカーはくぼみの、および剥離の低減または消失をもたらし、したがって爪の脆弱性を低くし、痛みを低減する。
【0016】
キトサン、および/またはアミノ多糖キトサンなどのキトサン誘導体をベースにするネイルラッカーは使用が簡単であり、十分に安全であって患者による慢性的な適用を可能にする。さらに、ネイルラッカーは、爪の炎症に対して活性である他の薬剤を含むことができ、したがって、その活性を強力にし、爪表面に対する持続性の接着を可能にし、爪に対する持続性の放出に適しており、閉塞性の薬物療法を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】韓国特許出願公開第20020084672号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第20020048534号明細書
【特許文献3】特開2005−306746号公報
【特許文献4】国際公開第05/055924号パンフレット
【特許文献5】特開2004−231604号公報
【特許文献6】国際公開第03/042251号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/057983号パンフレット
【特許文献8】特開平11−060605号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/043963号明細書
【特許文献10】欧州特許第1303249号明細書
【特許文献11】国際公開第04/112814号パンフレット
【特許文献12】国際公開第06/111426号パンフレット
【特許文献13】国際公開第07/042682号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/051376号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】BaranおよびDawber「Diseases of the nails and their management」、Baranら編集、第3版、Blackwell Science、2001年における、de Berker、BaranおよびDawber:the nail in dermatological disease
【非特許文献2】DefferおよびGoette、Archives of dermatology、1987年、123巻、571〜572頁
【非特許文献3】Requenaら、Archives of dermatology、1990年、126巻、1013〜1014頁
【非特許文献4】Kokelyら、1994年、J. Dermatol. Tretment、5巻、149〜150頁
【非特許文献5】Tosti A.、Dermatologica、1990年、180巻、110頁
【非特許文献6】Bianchiら、Br J Dermatol.、2003年、149巻、207〜9頁
【非特許文献7】Baran R.、Br J Dermatol、2004年、150巻、568〜569頁
【非特許文献8】Parrishら、J Am Acad Dermatol、2005年、53巻、745〜476頁
【非特許文献9】FinlayおよびKhan、Clinical and Experimental Dermatology、1994年、19巻、210〜216頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩の、乾癬、扁平苔癬、およびアトピー性皮膚炎などの爪の炎症性疾患の局所処置のための使用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例7に記載の組成物で処理している間の、爪乾癬患者28名における、生活の質(DLQIスコア)の時間経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましいアミノ多糖キトサンは水溶性であり、分子量が50000Daを超え、好ましくは100000Daから500000Daであり、その中でも、ヒドロキシプロピルキトサンなどのヒドロキシアルキルキトサン、およびカルボキシアルキルキトサンが特に好ましい。キトサンまたはアミノ多糖キトサンの含量が0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.2重量%から5重量%、最も好ましくは0.3重量%から2.0重量%の、溶液、エマルジョン、コロイド、または懸濁液の形態の、キトサンまたはアミノ多糖キトサンをベースとしたネイルラッカーは、脆弱性、疼痛、およびくぼみを低減し、爪の美容上の外観を改善することによって、乾癬の爪局在化などの爪の炎症性疾患を有する患者の爪のジストロフィーを大幅に改善するのに適する。
【0022】
薬剤組成物は、適合性の賦形剤および薬学的に許容できる担体を用いて、従来の技術に従って調製され、相補的な、またはどんな場合でも有用な活性を有する、他の有効成分を組み合わせて含むことができる。本発明に従って調製されるこれらの組成物の例には、爪に適用するための溶液、エマルジョン、懸濁液、コロイドが含まれる。
【0023】
本発明による組成物は、コルチコステロイド、免疫抑制薬、抗乾癬薬、角質溶解薬、レチノイド、植物抽出物からの有効薬剤を1つまたは複数含むことができ、乾癬、アトピー性皮膚炎、および扁平苔癬などの爪の炎症性疾患を処置するのに適する。
【0024】
本発明による組成物に含まれ得るコルチコステロイドの例には、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾンまたはそのジプロピオン酸塩、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾンまたはそのジプロピオン酸塩、ベタメタゾンおよびその塩(例えば、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ナトリウムベタメタゾン、リン酸ナトリウムおよび酢酸塩ベタメタゾン、ならびに吉草酸ベタメタゾンを含む)、クロベタゾールまたはそのプロピオン酸塩、ピバル酸クロコルトロン、ヒドロコルチゾンおよびその塩(例えば、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ナトリウムヒドロコルチゾン、コハク酸ナトリウムヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンテブタート、および吉草酸ヒドロコルチゾンを含む)、酢酸コルチゾン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、およびそれらの塩(例えば、酢酸塩およびリン酸ナトリウム)、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニソロンおよびそれらの塩(例えば、酢酸塩、コハク酸ナトリウム)、フロン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニソロンおよびその塩(例えば、酢酸塩、ジエチルアミノアセテート、リン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、テブタート、トリメチルアセテート)、プレドニソン、トリアムシノロンおよびその誘導体(例えば、アセトニド、ベネトニド、ジアセテート、ヘキサアセトニド)が含まれる。
【0025】
本発明による組成物に含まれ得る免疫抑制薬の例には、シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス、およびシロリムスが含まれる。
【0026】
本発明による組成物に含まれ得る抗乾癬薬の例には、アントラセン誘導体(ジスラノールなど)、ソラレン(トリオキサレン、またはメトキサレンなど)、ビタミンD3類似体(カルシトリオール、カルシポトリオール、またはタカルシトールなど)、レチノイド(レチノール酸、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、およびアシトレチン、タザロテンなど)、フマル酸およびそのエステル(例えば、モノメチルエステル、ジメチルエステル)が含まれる。
【0027】
角質溶解薬は、皮膚の外側角質層を除去するのに、すなわち死んだ皮膚細胞の角質層からの除去を促進するのに有用な皮膚剥離剤である。本発明による組成物に含まれ得る角質溶解薬の例には、サリチル酸、過酸化ベンゾイルが含まれる。
【0028】
本発明による組成物は、ブラシによって、またはプレートアプリケーターによって、またはスプレーによって爪表面上に適用される。
【実施例】
【0029】
本発明の薬剤組成物および使用を、以下の実施例によってさらに十分に記載する。しかし、このような実施例は限定的なものではなく、例示によって示されることに留意すべきである。
【0030】
(実施例1)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製する。
1.純水 21.0%
2.エタノール 73.0%
3.酢酸エチル 4.0%
4.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 1.0%
5.セトステアリルアルコール 1.0%
【0031】
調製
スターラー付き密封容器を用いて製剤を調製する。この容器に、エタノール、脱イオン水、および酢酸エチルを加えて混合液を形成する。その後、セトステアリルアルコールを加える。最後に、ヒドロキシプロピルキトサンを加え、得られた混合液を24時間または溶解するまで撹拌する。得られた組成物は、長時間貯蔵した後でも澄明で均一な外観を有する。さらに、爪上に適用した場合、液体は、爪表面に強力に接着することができる、無光沢で、非粘着性で、弾性のフィルムを形成することができる。
【0032】
(実施例2)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製する。
1.純水 29.375%
2.エタノール 96° 70.0%
3.ブデソニド 0.025%
4.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 0.5%
5.Peg−40 硬化ヒマシ油 0.1%
【0033】
調製
製剤を、最終成分としてヒドロキシプロピルキトサンを加え、24時間または溶解するまで撹拌することによって、実施例1および3の通りに調製する。
【0034】
(実施例3)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製する。
1.プロピレングリコール 13.0%
2.イソプロパノール 82.497%
3.カルシトリオール 0.003%
4.酢酸エチル 4.0%
5.キトサン 0.5%
【0035】
調製
キトサンをプロピレングリコールに溶解し、次いでイソプロパノールに予め溶解したカルシトリオールを加える。次いで、酢酸エチルを加え、得られた混合液を溶解するまで撹拌する。
【0036】
(実施例4)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製した。
1.純水 29.35%
2.エタノール 96° 70.0%
3.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 0.50%
4.ベタメタゾン−17−吉草酸塩 0.05%
4.PEG−40 硬化ヒマシ油 1.00%
【0037】
調製
スターラーが備えられている適切な密封容器を用いて製剤を調製した。この容器に、エタノール、ベタメタゾン−17−吉草酸塩、およびPEG−40 硬化ヒマシ油を加えた。混合液を撹拌し、次いで水を加えた。短時間撹拌した後、ヒドロキシプロピルキトサンを加えた。混合液を24時間、ヒドロキシプロピルキトサンが完全に分散するまで撹拌した。得られた組成物は、透明な無色の液体であり、典型的なアルコール臭がある。
【0038】
(実施例5)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製した。
1.純水 29.0%
2.エタノール 96° 60.0%
3.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 0.5%
4.シクロスポリン 5.0%
5.尿素 5.0%
6.ポリエチレンリコール(Polyethylenlycol)400 0.5%
【0039】
調製
スターラーが備えられている適切な密封容器を用いて製剤を調製した。この容器に、水、エタノールを加え、短時間撹拌した後シクロスポリンを加えた。すぐに完全に溶解した。次いで尿素を加え、溶解後ポリエチレングリコール400を加えた。10分間撹拌後、ヒドロキシプロピルキトサンを加えた。ヒドロキシプロピルキトサンが完全に溶解するまで、混合液を8時間撹拌した。得られた組成物は、長時間貯蔵した後でも、透明な無色の液体であった。
【0040】
さらに、液体は、爪表面に強力に接着することができる無光沢で、非粘着性で、弾性のフィルムを形成することができた。
【0041】
(実施例6)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製した。
1.純水 19.45%
2.プロピレングリコール 10.00%
2.イソプロパノール 70.00%
3.キトサン 0.50%
4.ジプロピオン酸ベクロメタゾン 0.05%
【0042】
調製
キトサンおよびジプロピオン酸ベクロメタゾンをプロピレングリコールに溶解し、次いで他の成分を加え、溶解するまで混合液を撹拌することによって製剤を調製した。得られた液体は、皮膚表面に強力に接着することができる弾性のフィルムを形成することができた。
【0043】
(実施例7)
以下の重量/重量%組成を有するネイルラッカーを調製した。
1.純水 52.0%
2.エタノール 36.5%
3.ジエチレングリコールモノメチルエーテル 0.5%
4.メチルスルホニルメタン(DMSO2) 5.0%
5.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 1.0%
6.スギナ(Equisetum arvense)グリコール抽出液 5.0%
【0044】
調製
スターラーが備えられている適切な密封容器を用いて製剤を調製した。この容器に、エタノール、脱イオン水、およびジエチレングリコールモノメチルエーテルを加えて混合液を形成した。その後、これらが溶解した後、スギナのグリコール抽出液およびメチルスルホニルメタンを加えた。最後に、ヒドロキシプロピルキトサンを加え、得られた混合液を、24時間または溶解するまで撹拌した。得られたネイルラッカー組成物は、透明で均一な外観であり、長時間貯蔵した後でも黄色がかった色であった。さらに、ラッカーは、爪に強力に接着することができる、無光沢で、非粘着性で、可塑性のフィルムを形成することができた。適用した場合、水分および空気透過性のラッカーは発熱せず、または隣接する皮膚もしくは爪周囲の爪床に刺激を生じなかった。
【0045】
(実施例8)
爪乾癬を有する患者に対して、実施例7によるネイルラッカーの有効性および安全プロフィールを評価するための、オープンの対照臨床試験を行った。関与した患者は、爪乾癬に罹患し、両側の対称的な病変を有する、18歳から75歳の年齢(平均46.5歳)の女性20人および男性10人であった。爪の変化は、試験に包含される前の6カ月〜2年に明らかであり、以下の臨床上の特徴があった:くぼみの存在=15%、爪甲剥離症の存在=9%、爪白斑の存在=6%。NAPSIスコア(非特許文献7; 非特許文献8による爪乾癬重症度指標)によって測定した、爪乾癬の重症度は、2から5であった。実施例7によるネイルラッカーを、患者は左手の手指爪上に連続24週間、1日1回適用した。全処置期間の間、患者は、他の全身的または局所的な抗乾癬処置をとらなかった。最後に、冷光灯で研究者が臨床試験によって治療の有効性を判定し、右の手指爪と比較した。24週間の処置の終わりに、処置した指爪の結果は18症例で「優れている」、5症例で「良好である」、5症例で「なし」と判定され、非処置の手はベースラインに比べて改変なしであった。残りの2症例は、経過観察に行方不明であった。また、処置された手に関する10個の単純な質問の、確証された生活の質のアンケート(非特許文献9)である、皮膚科の生活の質指数(DLQI)によって測定する患者の生活の質も、ベースラインに比べて処置の終わりに非常に改善されているという結果であった(図1)。試験の間、有害事象は起きず、実施例7による生成物の耐容性は、患者の100%によって最適であると判定された。患者の判定は、処置の心地よさ、および生成物の感覚受容性の特質両方に関して、いつでも非常に満足であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の炎症性疾患の処置のための、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項2】
水溶性であることを特徴とする、請求項1に記載のアミノ多糖キトサン。
【請求項3】
50000Daを超える分子量を有することを特徴とする、請求項2に記載のアミノ多糖キトサン。
【請求項4】
100000Daから500000Daまでの分子量を有することを特徴とする、請求項2に記載のアミノ多糖キトサン。
【請求項5】
ヒドロキシアルキルキトサンであることを特徴とする、請求項2に記載のアミノ多糖キトサン。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルキトサンであることを特徴とする、請求項5に記載のヒドロキシアルキルキトサン。
【請求項7】
カルボキシアルキルキトサンであることを特徴とする、請求項2に記載のアミノ多糖キトサン。
【請求項8】
前記爪の炎症性疾患は、爪乾癬、扁平苔癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症から選択されることを特徴とする、前記請求項1から7のいずれか一項に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項9】
1つまたは複数の有効成分と組み合わせて投与することを特徴とする、前記請求項1から8のいずれかに一項に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項10】
前記有効成分は、コルチコステロイド、角質溶解薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗乾癬薬、免疫抑制薬、防腐薬、保湿薬、および/または爪強化薬から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項11】
前記有効成分は、ベタメタゾン、ブデソニド、クロベタゾールおよびそれらの塩;サリチル酸、安息香酸およびそれらの塩;スギナまたはハルパゴフィツムプロクムベンス(Harpagophyton procumbens)からの植物抽出物;ジクロフェナク、アスピリン、ケトプロフェン;カルシポトリオール、カルシトリオール;トレチノイン、アシトレチン、タザロテン;シクロスポリンから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項12】
局所投与されることを特徴とする、前記請求項1から11のいずれか一項に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項13】
自由に、または半密封的薬物適用もしくは密封的薬物適用のもとに爪表面に適用されることを特徴とする、請求項12に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項14】
局所製剤によって投与されることを特徴とする、請求項12に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項15】
前記製剤は、ネイルラッカー、スプレー、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、またはフォームであることを特徴とする、請求項14に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項16】
前記製剤は、製剤の全重量に対して0.1重量%から25重量%までの、好ましくは0.3重量%から10重量%までの、より好ましくは0.5重量%から5重量%までのキトサン、アミノ多糖キトサン、および/またはそれらの塩の含量を有することを特徴とする、請求項14に記載の、キトサン、アミノ多糖キトサン、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−518139(P2010−518139A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549396(P2009−549396)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051479
【国際公開番号】WO2008/098871
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】