物体の運動を検出するシステム
本発明は、物体(2)の運動を検出するシステム(1)に係る。当該システムは、物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップ(4)、及び、第1の細長い格子ストリップに交差する、別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップ(5)を有する。当該システムは更に、物体の運動を検出するよう、第1及び第2の細長い格子ストリップにおいて回折される1つ又はそれより多い光ビームを受けるよう配置される光学検出手段(6)を有する。本発明は更に、物体(2)の運動を検出する方法、及び物体加工又は検査システムに係る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の運動を検出するシステムに係る。より具体的には、本発明は、ウエハ又はプリント基板等である、物体の運動を光学的に検出するシステムに係る。本発明はまた、物体加工及び/又は検査システム、並びに物体の運動を検出する方法に係る。最後に、本発明は、対象の運動を検出することを目的とする格子に係る。
【背景技術】
【0002】
動いている物体の位置又配置変化の正確な測定は、多種の技術的応用において求められる。一例として、半導体産業において適用されるリソグラフィック投射ツール及びウエハ検査ツールは、半導体ウエハの位置変化に関する正確な情報を求める。他の使用分野には、プリント基板(PCB)産業がある。PCBの位置に関する情報は、PCB上の構成要素の取付け中、PCB上のパターンの印刷中、又はPCBの検査中に所望される。
【0003】
多種の光学測定システムは、対象の移動を測定するよう格子(グレーティング)を用いる。かかるシステムは、光源、光検出器、及び格子を有する光学検出手段を有する。光学検出手段は、格子の上方においてある距離を隔てて位置付けられる。システムによって測定され得る運動の種類(面内平行移動、面内回転、面外平行移動、面外回転)は、光学検出手段及び格子に依存する。
【0004】
単一面内平行移動を測定するよう、格子は、該平行移動の方向において周期的である格子パターンを有する。いずれの面内平行移動も測定するよう、かかる平行移動の方向におおいて周期的である格子パターンは、所望される。光源のスポット寸法と比較して平行移動が大きい適用に対して、格子によって覆われる範囲は、可能性のある平行移動の全領域にわたって平行移動を検出するよう、大きくあるべきである。このことは特に、いずれの面内平行移動も検出又は測定されるべきである状況に対して当てはまる。
【0005】
物体の平行移動を測定する大きな格子は、特定の用途に対して多くの面において不利であり得る。例えば、大きな格子は、格子パターンの高精度の周期性がより大きな範囲にわたって達成することが困難であるため、製造が困難であり得る。したがって、かかる格子のコストは、比較的高い。更には、大きな格子は、適用のシステムにおいて貴重な空間をとる。更には、複数の適用において、格子は、高加速度に対して露出され、温度変化がもたらす僅かな寸法変更の特徴(低熱膨張係数)を有するよう求められる。したがって、大きく且つ重い格子は望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、物体の運動を検出する向上されたシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【0007】
本発明は更に、前述された先行技術の不利点のうち少なくとも1つを低減又は削除する、物体の運動を検出するシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【0008】
本発明は更に、低減された寸法を有する格子の適用を可能にする、物体の運動を検出するシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体の運動を検出するシステムを与える。当該システムは、物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップ、及び、第1の細長い格子ストリップに交差する別個である実質的に固定された第2の細長い格子ストリップを有する。当該システムは更に、光学検出手段を有する。該光学検出手段は、物体の運動を検出するよう第1及び第2の細長い格子ストリップにおいて回折される1つ又はそれより多い光ビームを受けるよう配置される。
【0010】
本発明は更に、システムにおいて物体の運動を検出する方法を与える。該システムは、物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップ、及び、第1の細長い格子ストリップに交差する別個である実質的に固定された第2の細長い格子ストリップを有する。当該方法の適用に対するシステムは、光学検出手段を有する。当該方法は:
・ 第1又は第2の細長い格子ストリップに対して入射光ビームを与える段階、及び、
・ 対象の運動を検出するよう光学検出手段において第1及び第2の細長い格子ストリップから回折される1つ又はそれより多い光ビームを受ける段階、
を有する。
【0011】
出願人は、互いに交差する細長いストリップとして構成される別個の第1及び第2の格子を使用することで、運動は、互いに対する第1及び第2の格子の移動を検出又は測定することによって大きな面内平行移動領域を有する対象に対して検出され得る、と考える。小さなストリップのみが求められるため、かかるストリップは、先行技術による大きな格子と比較してより容易に製造され得、結果としてかかる格子ストリップは、より安価である。更には、格子ストリップによってとられる空間は、より少ない。望ましくは格子ストリップの長さが対象の平行移動領域と同等であるか、それより大きく、幅又は横方向寸法が望ましくは光ビームのスポット幅と実質的に同等である、ことは理解されるべきである。
【0012】
請求項2及び14において定義される本発明の実施例は、小さな光学検出手段を可能にするという利点を与える。
【0013】
請求項3において定義される本発明の実施例は、光学手段が固定されているため、システムがより複雑ではなく、光方向変更手段がシステムにおいて比較的容易に収容され得る、という利点を与える。
【0014】
請求項4において定義される本発明の実施例は、最適測定柔軟性という利点を有する。
【0015】
請求項5において定義される本発明の実施例は、一方又は両方の面内平行移動の対象の運動の検出又は測定を可能にする。
【0016】
請求項6及び15において定義される本発明の実施例は、対象の運動の方向の確定、及び光ビームにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0017】
請求項7において定義される本発明の実施例は、格子ストリップの向きが光ビームの経路に影響を与え得るため、システムにおける光学構成要素の量を削減又は低減し得る。
【0018】
請求項8において定義される本発明の実施例は、光学検出手段に対する大きな回転領域という利点を有する。特には、逆反射体による反射を使用して光ビームを干渉することは、光学検出器上に単一スポットを構成し、本願においてより詳述される通り、相の容易な検出を可能にする。
【0019】
請求項9において定義される本発明の実施例は、光ビームが、光学検出手段によって検出される前に、両方の細長い格子において回折され得るようにする。特には、透過型格子及び反射型格子の使用は、かかる格子が重畳する範囲を光ビームが通り得るようにする。
【0020】
請求項10において定義される本発明の実施例は、光学面内平行移動検出領域を有すると同時に格子ストリップの最小限の長さを可能にする。
【0021】
請求項11において定義される本発明の実施例は、小さな格子ストリップがとる空間が少ないこと、並びに、該ストリップが例えば運動が検出されるべき対象の境界において、あるいは該境界の近くに配置され得る、という利点を有する。ストリップの横方向寸法は、望ましくは、5mm等である1乃至10mmの範囲にある。
【0022】
更には、本発明は、物体に対する物体位置決めテーブル(body positioning table)を収容する加工(processing)及び/又は検査チャンバを有する物体加工及び/又は検出システムを与える。第1の細長い格子ストリップと交差する第2の細長い格子ストリップは、該チャンバに対して実質的に固定されて取り付けられる。第1及び第2の細長い格子ストリップ及び光学検出手段は、物体位置決めテーブルの運動が検出され得るよう配置される。望ましくは、システムは、前述された方法によって運動を検出するよう配置される。
【0023】
かかる物体加工システムの例は、半導体ウエハに対するウエハ段階を有するリソグラフィック投射ツールを有する。物体検査システムの一例は、光学検査ツール、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等である、ウエハ検査ツールを有する。典型的には、かかるシステムは、複数軸であるレーザ干渉計に基づく位置測定システムを有する。本発明は、かかる複数軸の干渉計に基づくシステムに対するコスト効率の良い交換を可能にする。他の物体加工及び物体検査システムは、プリント基板上における構成要素の取付け又はパターンの印刷、及びかかる基板の検査に対するツールを夫々有する。適用は、用いられる光ビームの直径と比較して大きい対象の平行移動によって特徴付けられる。
【0024】
本発明は更に、少なくとも1つの方向において周期的である格子パターンを有する細長い格子ストリップを与える。該細長い格子ストリップは、15mmより小さい、望ましくは10又は5mmより小さい横方向寸法を有する。
【0025】
請求項18及び19において定義される本発明の実施例は、物体の両方の面内平行移動の検出又は測定を可能にする、という利点を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、本発明に従った望ましい実施例を概略的に図示する添付の図面を参照して更に説明される。本発明がかかる特定の望ましい実施例に制限されない、ことは理解される。
【0027】
図1乃至3は、表面3を有する物体2の運動を検出するシステム1の概略的な実施例を示す。方向x及びyは、物体2の表面3の平面における全ての平行移動を有する直交構成要素を定義する。z方向は、面外平行移動を有する直交構成要素を定義する。
【0028】
図中、実際には単一のビームが一式のビームを示し得る、ことは留意されるべきである。
【0029】
システム1は、物体2の運動を検出するよう、また望ましくは方向x,yのうち一方又は両方における物体2の移動を検出あるいは測定するよう、適合される。矢印mは、図4A乃至4Fを参照して詳述される通り、物体2の移動が検出又は測定され得る方向を定義する。この目的に対して、システム1は、物体2に対して結合される第1の細長い格子ストリップ4、及び第1の細長い格子ストリップに交差する別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップ5を有する。第2の格子ストリップ5は、システム1内において適切な位置において固定されて配置され得、また、基準格子として参照され得る。第1の格子ストリップ4及び第2の格子ストリップ5が垂直方向に交差する一方、該格子間においていずれの角度も適用され得る、ことは理解されるべきである。更には、物体に結合された格子ストリップ4と固定された格子ストリップ5との間におけるz方向において距離が与えられる、ことは理解されるべきである。
【0030】
別個の格子4,5を使用することによって、かかる格子は、たとえ物体2が大きな平面平行移動範囲を有する場合でも、ストリップ形状にされ得る。既存のシステムにおけるように物体2の全表面にわたる2つの方向における大きな横方向範囲を有する格子を使用しなければならない代わりに、比較的狭い格子ストリップ4,5は使用され得る。かかる格子ストリップ4,5の長さは、x,y方向における2つのへ面内平行移動範囲と略同等であり得、幅は、運動検出に対して用いられる光ビームのスポット寸法と略同等である。
【0031】
光学検出手段6は、第1及び第2の格子ストリップ4,5から回折される光ビームを検出するよう与えられる。例えばプラス一次及びマイナス一次回折を測定することによってかかる回折されるビームから、既知の方途において物体2の移動を検出し、望ましくは測定することは可能である。
【0032】
図1中、光学検出手段6は、矢印Bで示される通り、固定された第2の格子ストリップ5に沿う移動手段及び該格子ストリップ5に対する移動手段(図示せず)によって可動であり、光学検出手段6が第1の細長い格子ストリップ4及び第2の細長い格子ストリップ5の重畳範囲Oの上方に残るようにする。重畳範囲が比較的大きい(例えば100mm2)ため、移動手段は、光学検出手段6を動かし得、たとえ物体2が半導体ウエハ加工等において受ける著しい加速を有してその全面内範囲にわたって平行移動される場合でも、重畳範囲の上方に残るようにする。光学検出手段6が重畳範囲Oの上方に位置決めされる限り、光学検出手段6の実際の位置は、物体2の移動の測定の精度に影響を与えない。
【0033】
図1中の実施例では、第1の格子ストリップ4は反射型であり、第2の格子ストリップ5は透過型である。結果として、光学検出手段6は、第1及び第2の格子ストリップ4,5の回折される光ビームを受け得る。
【0034】
図2中、光学検出手段6は、第2の格子ストリップに対して固定される。1つ又はそれより多い光ビームLは、光学検出手段6からミラー又はプリズム等である方向変更手段7まで導かれ、方向手段7の上方において第1の格子ストリップ4が取り付けられる。方向変更手段7は、結合手段8によって物体2に対して結合される。第1の格子ストリップ4は透過型であり、第2の格子ストリップ5は反射型である。光学検出手段6を出る光ビームは、第1及び第2の格子4,5の重畳範囲Oに到達するよう方向変更手段7によって方向付けられ、かかる格子からの回折された光ビームは、物体2の運動を検出するよう光学検出手段6において受けられる。図2中の実施例は、光学検出手段6の運動に対する配置が省略され得る際に有利である。
【0035】
図3では、図1及び2中のシステムの組合せが示される。
【0036】
図4A乃至4Fは、第1の格子ストリップ4及び第2の格子ストリップ5の多種の種類を示す。矢印mは、ストリップ4,5の格子パターンPが周期的である方向を示し、結果として、第1の格子ストリップ4が結合される物体の面内平行移動が検出又は測定され得る方向を示す。故に、図4A及び4B中のストリップ4,5の格子パターンPは、夫々1つのみの面内方向y,xにおける運動検出を可能にし、図4C乃至4F中のストリップ4,5の格子パターンPは、面内方向x,yの両方における運動検出を可能にする。図4C中のストリップ4,5は各々、2つの異なって向けられる格子パターンP1,P2を有する一方、図4D乃至4F中のストリップ4,5の少なくとも一方は、x方向及びy方向の両方において周期的である、この場合では格子縞パターンの単一格子パターンPを有する。
【0037】
ストリップ4,5の細長い方向における長さLは、望ましくは物体2の全移動領域を覆い、30cm又は50cm等である5乃至100cmであり得る。細長い格子ストリップ4,5の幅Wは、望ましくは光学検出手段6に対する光ビームの直径を超えるが、格子によって覆われる範囲を可能な限り小さくすることが有利であるため、適度に可能な限り小さく維持されるべきである。一例として、ストリップ4,5の横断方向における幅Wは、10mmより小さく、例えば5mmである。格子パターンPの周期は、100nm乃至50mであり、例えば2mである。格子ストリップ4,5の複数の周期のみが図示される。周期的なパターンは、例えば、ガラス基板においてパターンをエッチングすることによって得られ得る。
【0038】
図5及び6は、それぞれ1つ及び2つの方向x,yにおける物体2の運動を検出する図1中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示される。
【0039】
図5において、入射光ビームLは、透過型の第2の格子ストリップ5を介して回折され、反射型の第1の格子ストリップ4において回折される。第2の肯定された格子ストリップ5は、別個の構成要素であり、光学検出手段6の一部ではない。回折される光ビームは、その後、キューブコーナー等である逆反射体9によって第1の格子ストリップ4に向かって戻されるよう方向を変えられる。コーナープリズム又はキャッツアイ反射体も使用され得る、ことは理解されるべきである。逆反射体9は、格子4の面内及び面外回転、並びに光学検出手段6の回転に対して補正し得る。かかる光ビームは、回折され、第2の格子ストリップ5を介して反射し戻され、光学検出手段6によって受けられる。第1の格子ストリップ4は、物体に対して結合され、結果的に、物体の運動は、光ビームのシフトをもたらし、光学検出手段は、光ビームを受けるよう第2の格子ストリップに沿って可動であるよう配置される。
【0040】
図6は、両方の面内平行移動の検出を可能にする移動検出又は測定システム1を可能にする他の例を示す。2つの光学検出手段6は、使用され、夫々の第2の格子ストリップ5に沿って可動である。第1の格子ストリップ4に対して、格子模様の格子パターンPは、使用され、物体2の側部における空間が低減されるようにする。図4C乃至4F中に示される両方の面内平行移動の検出を可能にする格子ストリップ4,5及び他の種類の格子ストリップも用いられ得る、ことは理解されるべきである。
【0041】
図7乃至11は、一方の方向x又はyにおける物体2の運動を検出する図3中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。図12は、2つの方向x,yにおける物体2の運動を検出する図2中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示される。
【0042】
図7において、光ビームLは、方向変更手段7を用いて第1及び第2の細長い格子ストリップ4,5に対して方向付けられる。格子ストリップ4,5はいずれも反射型である。光学検出手段6において、ストリップ4,5の重畳範囲において回折される光ビームは受けられ、第1の格子ストリップ4が結合される物体2の移動は、矢印mに沿う移動に対して検出又は測定され得る。
【0043】
図8は、パターン間において位相差を有する矢印mに沿った同一の方向において周期的である4つのパターンP1乃至P4を有する第2の格子ストリップ5を除いて、図7中のシステムと同様であるシステム1の一例を示す。光ビームL1乃至L4は、格子パターンP1乃至P4の各々に向かって方向付けられ、パターンP1乃至P4の各々に対する複数の回折されるビームは、光学検出手段において受けられる。この実施例は、対象2の運動の方向、即ち矢印m又は−mに沿う運動の方向の確定、及び、入射光ビームLにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0044】
図9及び10は、図7及び8中のシステム1に類似するシステム1を示す。しかしながら、方向変更手段7を適用する代わりに、第1の細長い反射型格子ストリップ4は、図9中の光ビームL及び図10中の光ビームL1,L2,L3が第2の格子ストリップ5に向かって適切に回折されるよう選択される角度下に位置付けられる。結果として、別個の方向変更手段7は、もはや必要とされない。図10において、第1の格子ストリップ4は更に、パターン間において位相差を有する矢印mに沿った同一の方向において周期的である3つの格子パターンP1乃至P3を有する。結果として、物体2の運動の方向、即ち矢印m又は−mに沿う運動の方向の確定、及び、入射光ビームLにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0045】
図11は、システム1を示す。該システム1において、第1の細長い格子ストリップ4は、プリズム7の上部上に適用され、逆反射体9は、固定された光学検出手段6の近くに適用される。入射光ビームLは、第1の格子ストリップ4によって回折されること無く、第2の格子ストリップ5に向かってプリズム7によって反射される。第2の格子ストリップ5における回折の後のみ、回折された光ビームは、第1の格子ストリップ4において回折される。
【0046】
図12は、矢印mに沿う両方の面内平行移動の移動検出及び測定を可能にするシステム1を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示され、また、図4A乃至4C中に示される格子の種類及び配置、又は両方の面内方向における検出を可能にする他の格子は、適用され得る。
【0047】
図13は、物体2がチャンバ12におけるテーブル11上に位置付けられる、物体加工又は物体検査システム10を示す。第1の格子ストリップ4は、物体2に対して結合される。一例として、物体2は、加工又は検査を目的として、x−y平面において平行移動するよう配置されるウエハチャック11上に置かれるウエハである。第2の格子ストリップ5は、チャンバ12に対して固定して取り付けられ、チャンバ12は、加工手段又は検査手段(図示せず)に対して物体2へのアクセスを可能にする。
【0048】
原理上、第2の格子ストリップ5及び対応する検出手段6は、可動チャンバ12に対して結合され得、第1の格子ストリップ4は、安定しているテーブル11に対して結合される、ことが留意される。
【0049】
明らかに、物体2の移動を検出又は測定するシステム1は、冗長しており(redundant)、それは複数の適用に対しては有利であり得る。例えば、物体2が剛性な物体ではない場合、この冗長性(redundancy)は有利であり得る。物体が温度変化により膨張し、物体移動が物体の両側上において測定される場合、物体の膨張は、その移動と共に確定され得る。あるいは、物体が制限された剛性により作動下において(under actuation)変形する場合、該変形は、冗長測定(redundant measurements)を用いて確定され得る。測定された変形はまた、測定された位置を是正するよう使用され得、データは、変形が排除されるよう物体上に力を加え得るアクチュエータ(図示せず)を制御するよう使用され得る。
【0050】
他の実施例は、透過型のみ又は反射型のみの格子ストリップを使用する実施例を含めて、出願人によって構想されている、ことが理解されるべきである。更には、図8及び10中の位相段階的格子パターン(phase stepped grating patterns)が3つ又は4つより多いパターンPを有し得る、ことは理解されるべきである。既知のオフセット及び振幅を有する正弦波信号の位相が確定される場合、少なくとも3つの測定は所望される。正弦波信号の3つのサンプルは、信号の位相、振幅、及びオフセットを確定するよう使用され得る。3つ又はそれより多いサンプルを使用することで、振幅を知ることなく位相の確定が可能であり、電源変動に対する低減された感度は、得られる。更には、第1の格子ストリップ4と第2の格子ストリップ5との間における距離は、既知の干渉計を使用して測定又は検出され得る。
【0051】
請求項において、括弧内の参照符号は、請求項を制限するものとして解釈されるべきではない。「有する」という後は、請求項において列記される要素又は段階以外の要素又は段階の存在を除外しない。単数形で示される要素は、その複数の存在を除外しない。特定の措置が相互に異なる従属請求項において挙げられるという単なる事実は、かかる措置の組合せが有利に使用され得ないということを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図2】本発明の第2の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図3】本発明の第3の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図4】図4A乃至4Fは、第1及び第2の格子ストリップの多種の種類を図示する。
【図5】1つの方向において対象の運動を検出する図1中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図6】2つの方向において対象の運動を検出する図1中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図7】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図8】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図9】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図10】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図11】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図12】2つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図13】本発明の一実施例に従う対象の運動を検出するシステムを有する物体加工システムを図示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の運動を検出するシステムに係る。より具体的には、本発明は、ウエハ又はプリント基板等である、物体の運動を光学的に検出するシステムに係る。本発明はまた、物体加工及び/又は検査システム、並びに物体の運動を検出する方法に係る。最後に、本発明は、対象の運動を検出することを目的とする格子に係る。
【背景技術】
【0002】
動いている物体の位置又配置変化の正確な測定は、多種の技術的応用において求められる。一例として、半導体産業において適用されるリソグラフィック投射ツール及びウエハ検査ツールは、半導体ウエハの位置変化に関する正確な情報を求める。他の使用分野には、プリント基板(PCB)産業がある。PCBの位置に関する情報は、PCB上の構成要素の取付け中、PCB上のパターンの印刷中、又はPCBの検査中に所望される。
【0003】
多種の光学測定システムは、対象の移動を測定するよう格子(グレーティング)を用いる。かかるシステムは、光源、光検出器、及び格子を有する光学検出手段を有する。光学検出手段は、格子の上方においてある距離を隔てて位置付けられる。システムによって測定され得る運動の種類(面内平行移動、面内回転、面外平行移動、面外回転)は、光学検出手段及び格子に依存する。
【0004】
単一面内平行移動を測定するよう、格子は、該平行移動の方向において周期的である格子パターンを有する。いずれの面内平行移動も測定するよう、かかる平行移動の方向におおいて周期的である格子パターンは、所望される。光源のスポット寸法と比較して平行移動が大きい適用に対して、格子によって覆われる範囲は、可能性のある平行移動の全領域にわたって平行移動を検出するよう、大きくあるべきである。このことは特に、いずれの面内平行移動も検出又は測定されるべきである状況に対して当てはまる。
【0005】
物体の平行移動を測定する大きな格子は、特定の用途に対して多くの面において不利であり得る。例えば、大きな格子は、格子パターンの高精度の周期性がより大きな範囲にわたって達成することが困難であるため、製造が困難であり得る。したがって、かかる格子のコストは、比較的高い。更には、大きな格子は、適用のシステムにおいて貴重な空間をとる。更には、複数の適用において、格子は、高加速度に対して露出され、温度変化がもたらす僅かな寸法変更の特徴(低熱膨張係数)を有するよう求められる。したがって、大きく且つ重い格子は望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、物体の運動を検出する向上されたシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【0007】
本発明は更に、前述された先行技術の不利点のうち少なくとも1つを低減又は削除する、物体の運動を検出するシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【0008】
本発明は更に、低減された寸法を有する格子の適用を可能にする、物体の運動を検出するシステム及び方法を与える、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体の運動を検出するシステムを与える。当該システムは、物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップ、及び、第1の細長い格子ストリップに交差する別個である実質的に固定された第2の細長い格子ストリップを有する。当該システムは更に、光学検出手段を有する。該光学検出手段は、物体の運動を検出するよう第1及び第2の細長い格子ストリップにおいて回折される1つ又はそれより多い光ビームを受けるよう配置される。
【0010】
本発明は更に、システムにおいて物体の運動を検出する方法を与える。該システムは、物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップ、及び、第1の細長い格子ストリップに交差する別個である実質的に固定された第2の細長い格子ストリップを有する。当該方法の適用に対するシステムは、光学検出手段を有する。当該方法は:
・ 第1又は第2の細長い格子ストリップに対して入射光ビームを与える段階、及び、
・ 対象の運動を検出するよう光学検出手段において第1及び第2の細長い格子ストリップから回折される1つ又はそれより多い光ビームを受ける段階、
を有する。
【0011】
出願人は、互いに交差する細長いストリップとして構成される別個の第1及び第2の格子を使用することで、運動は、互いに対する第1及び第2の格子の移動を検出又は測定することによって大きな面内平行移動領域を有する対象に対して検出され得る、と考える。小さなストリップのみが求められるため、かかるストリップは、先行技術による大きな格子と比較してより容易に製造され得、結果としてかかる格子ストリップは、より安価である。更には、格子ストリップによってとられる空間は、より少ない。望ましくは格子ストリップの長さが対象の平行移動領域と同等であるか、それより大きく、幅又は横方向寸法が望ましくは光ビームのスポット幅と実質的に同等である、ことは理解されるべきである。
【0012】
請求項2及び14において定義される本発明の実施例は、小さな光学検出手段を可能にするという利点を与える。
【0013】
請求項3において定義される本発明の実施例は、光学手段が固定されているため、システムがより複雑ではなく、光方向変更手段がシステムにおいて比較的容易に収容され得る、という利点を与える。
【0014】
請求項4において定義される本発明の実施例は、最適測定柔軟性という利点を有する。
【0015】
請求項5において定義される本発明の実施例は、一方又は両方の面内平行移動の対象の運動の検出又は測定を可能にする。
【0016】
請求項6及び15において定義される本発明の実施例は、対象の運動の方向の確定、及び光ビームにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0017】
請求項7において定義される本発明の実施例は、格子ストリップの向きが光ビームの経路に影響を与え得るため、システムにおける光学構成要素の量を削減又は低減し得る。
【0018】
請求項8において定義される本発明の実施例は、光学検出手段に対する大きな回転領域という利点を有する。特には、逆反射体による反射を使用して光ビームを干渉することは、光学検出器上に単一スポットを構成し、本願においてより詳述される通り、相の容易な検出を可能にする。
【0019】
請求項9において定義される本発明の実施例は、光ビームが、光学検出手段によって検出される前に、両方の細長い格子において回折され得るようにする。特には、透過型格子及び反射型格子の使用は、かかる格子が重畳する範囲を光ビームが通り得るようにする。
【0020】
請求項10において定義される本発明の実施例は、光学面内平行移動検出領域を有すると同時に格子ストリップの最小限の長さを可能にする。
【0021】
請求項11において定義される本発明の実施例は、小さな格子ストリップがとる空間が少ないこと、並びに、該ストリップが例えば運動が検出されるべき対象の境界において、あるいは該境界の近くに配置され得る、という利点を有する。ストリップの横方向寸法は、望ましくは、5mm等である1乃至10mmの範囲にある。
【0022】
更には、本発明は、物体に対する物体位置決めテーブル(body positioning table)を収容する加工(processing)及び/又は検査チャンバを有する物体加工及び/又は検出システムを与える。第1の細長い格子ストリップと交差する第2の細長い格子ストリップは、該チャンバに対して実質的に固定されて取り付けられる。第1及び第2の細長い格子ストリップ及び光学検出手段は、物体位置決めテーブルの運動が検出され得るよう配置される。望ましくは、システムは、前述された方法によって運動を検出するよう配置される。
【0023】
かかる物体加工システムの例は、半導体ウエハに対するウエハ段階を有するリソグラフィック投射ツールを有する。物体検査システムの一例は、光学検査ツール、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等である、ウエハ検査ツールを有する。典型的には、かかるシステムは、複数軸であるレーザ干渉計に基づく位置測定システムを有する。本発明は、かかる複数軸の干渉計に基づくシステムに対するコスト効率の良い交換を可能にする。他の物体加工及び物体検査システムは、プリント基板上における構成要素の取付け又はパターンの印刷、及びかかる基板の検査に対するツールを夫々有する。適用は、用いられる光ビームの直径と比較して大きい対象の平行移動によって特徴付けられる。
【0024】
本発明は更に、少なくとも1つの方向において周期的である格子パターンを有する細長い格子ストリップを与える。該細長い格子ストリップは、15mmより小さい、望ましくは10又は5mmより小さい横方向寸法を有する。
【0025】
請求項18及び19において定義される本発明の実施例は、物体の両方の面内平行移動の検出又は測定を可能にする、という利点を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、本発明に従った望ましい実施例を概略的に図示する添付の図面を参照して更に説明される。本発明がかかる特定の望ましい実施例に制限されない、ことは理解される。
【0027】
図1乃至3は、表面3を有する物体2の運動を検出するシステム1の概略的な実施例を示す。方向x及びyは、物体2の表面3の平面における全ての平行移動を有する直交構成要素を定義する。z方向は、面外平行移動を有する直交構成要素を定義する。
【0028】
図中、実際には単一のビームが一式のビームを示し得る、ことは留意されるべきである。
【0029】
システム1は、物体2の運動を検出するよう、また望ましくは方向x,yのうち一方又は両方における物体2の移動を検出あるいは測定するよう、適合される。矢印mは、図4A乃至4Fを参照して詳述される通り、物体2の移動が検出又は測定され得る方向を定義する。この目的に対して、システム1は、物体2に対して結合される第1の細長い格子ストリップ4、及び第1の細長い格子ストリップに交差する別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップ5を有する。第2の格子ストリップ5は、システム1内において適切な位置において固定されて配置され得、また、基準格子として参照され得る。第1の格子ストリップ4及び第2の格子ストリップ5が垂直方向に交差する一方、該格子間においていずれの角度も適用され得る、ことは理解されるべきである。更には、物体に結合された格子ストリップ4と固定された格子ストリップ5との間におけるz方向において距離が与えられる、ことは理解されるべきである。
【0030】
別個の格子4,5を使用することによって、かかる格子は、たとえ物体2が大きな平面平行移動範囲を有する場合でも、ストリップ形状にされ得る。既存のシステムにおけるように物体2の全表面にわたる2つの方向における大きな横方向範囲を有する格子を使用しなければならない代わりに、比較的狭い格子ストリップ4,5は使用され得る。かかる格子ストリップ4,5の長さは、x,y方向における2つのへ面内平行移動範囲と略同等であり得、幅は、運動検出に対して用いられる光ビームのスポット寸法と略同等である。
【0031】
光学検出手段6は、第1及び第2の格子ストリップ4,5から回折される光ビームを検出するよう与えられる。例えばプラス一次及びマイナス一次回折を測定することによってかかる回折されるビームから、既知の方途において物体2の移動を検出し、望ましくは測定することは可能である。
【0032】
図1中、光学検出手段6は、矢印Bで示される通り、固定された第2の格子ストリップ5に沿う移動手段及び該格子ストリップ5に対する移動手段(図示せず)によって可動であり、光学検出手段6が第1の細長い格子ストリップ4及び第2の細長い格子ストリップ5の重畳範囲Oの上方に残るようにする。重畳範囲が比較的大きい(例えば100mm2)ため、移動手段は、光学検出手段6を動かし得、たとえ物体2が半導体ウエハ加工等において受ける著しい加速を有してその全面内範囲にわたって平行移動される場合でも、重畳範囲の上方に残るようにする。光学検出手段6が重畳範囲Oの上方に位置決めされる限り、光学検出手段6の実際の位置は、物体2の移動の測定の精度に影響を与えない。
【0033】
図1中の実施例では、第1の格子ストリップ4は反射型であり、第2の格子ストリップ5は透過型である。結果として、光学検出手段6は、第1及び第2の格子ストリップ4,5の回折される光ビームを受け得る。
【0034】
図2中、光学検出手段6は、第2の格子ストリップに対して固定される。1つ又はそれより多い光ビームLは、光学検出手段6からミラー又はプリズム等である方向変更手段7まで導かれ、方向手段7の上方において第1の格子ストリップ4が取り付けられる。方向変更手段7は、結合手段8によって物体2に対して結合される。第1の格子ストリップ4は透過型であり、第2の格子ストリップ5は反射型である。光学検出手段6を出る光ビームは、第1及び第2の格子4,5の重畳範囲Oに到達するよう方向変更手段7によって方向付けられ、かかる格子からの回折された光ビームは、物体2の運動を検出するよう光学検出手段6において受けられる。図2中の実施例は、光学検出手段6の運動に対する配置が省略され得る際に有利である。
【0035】
図3では、図1及び2中のシステムの組合せが示される。
【0036】
図4A乃至4Fは、第1の格子ストリップ4及び第2の格子ストリップ5の多種の種類を示す。矢印mは、ストリップ4,5の格子パターンPが周期的である方向を示し、結果として、第1の格子ストリップ4が結合される物体の面内平行移動が検出又は測定され得る方向を示す。故に、図4A及び4B中のストリップ4,5の格子パターンPは、夫々1つのみの面内方向y,xにおける運動検出を可能にし、図4C乃至4F中のストリップ4,5の格子パターンPは、面内方向x,yの両方における運動検出を可能にする。図4C中のストリップ4,5は各々、2つの異なって向けられる格子パターンP1,P2を有する一方、図4D乃至4F中のストリップ4,5の少なくとも一方は、x方向及びy方向の両方において周期的である、この場合では格子縞パターンの単一格子パターンPを有する。
【0037】
ストリップ4,5の細長い方向における長さLは、望ましくは物体2の全移動領域を覆い、30cm又は50cm等である5乃至100cmであり得る。細長い格子ストリップ4,5の幅Wは、望ましくは光学検出手段6に対する光ビームの直径を超えるが、格子によって覆われる範囲を可能な限り小さくすることが有利であるため、適度に可能な限り小さく維持されるべきである。一例として、ストリップ4,5の横断方向における幅Wは、10mmより小さく、例えば5mmである。格子パターンPの周期は、100nm乃至50mであり、例えば2mである。格子ストリップ4,5の複数の周期のみが図示される。周期的なパターンは、例えば、ガラス基板においてパターンをエッチングすることによって得られ得る。
【0038】
図5及び6は、それぞれ1つ及び2つの方向x,yにおける物体2の運動を検出する図1中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示される。
【0039】
図5において、入射光ビームLは、透過型の第2の格子ストリップ5を介して回折され、反射型の第1の格子ストリップ4において回折される。第2の肯定された格子ストリップ5は、別個の構成要素であり、光学検出手段6の一部ではない。回折される光ビームは、その後、キューブコーナー等である逆反射体9によって第1の格子ストリップ4に向かって戻されるよう方向を変えられる。コーナープリズム又はキャッツアイ反射体も使用され得る、ことは理解されるべきである。逆反射体9は、格子4の面内及び面外回転、並びに光学検出手段6の回転に対して補正し得る。かかる光ビームは、回折され、第2の格子ストリップ5を介して反射し戻され、光学検出手段6によって受けられる。第1の格子ストリップ4は、物体に対して結合され、結果的に、物体の運動は、光ビームのシフトをもたらし、光学検出手段は、光ビームを受けるよう第2の格子ストリップに沿って可動であるよう配置される。
【0040】
図6は、両方の面内平行移動の検出を可能にする移動検出又は測定システム1を可能にする他の例を示す。2つの光学検出手段6は、使用され、夫々の第2の格子ストリップ5に沿って可動である。第1の格子ストリップ4に対して、格子模様の格子パターンPは、使用され、物体2の側部における空間が低減されるようにする。図4C乃至4F中に示される両方の面内平行移動の検出を可能にする格子ストリップ4,5及び他の種類の格子ストリップも用いられ得る、ことは理解されるべきである。
【0041】
図7乃至11は、一方の方向x又はyにおける物体2の運動を検出する図3中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。図12は、2つの方向x,yにおける物体2の運動を検出する図2中の実施例に従うシステム1の概略的な例を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示される。
【0042】
図7において、光ビームLは、方向変更手段7を用いて第1及び第2の細長い格子ストリップ4,5に対して方向付けられる。格子ストリップ4,5はいずれも反射型である。光学検出手段6において、ストリップ4,5の重畳範囲において回折される光ビームは受けられ、第1の格子ストリップ4が結合される物体2の移動は、矢印mに沿う移動に対して検出又は測定され得る。
【0043】
図8は、パターン間において位相差を有する矢印mに沿った同一の方向において周期的である4つのパターンP1乃至P4を有する第2の格子ストリップ5を除いて、図7中のシステムと同様であるシステム1の一例を示す。光ビームL1乃至L4は、格子パターンP1乃至P4の各々に向かって方向付けられ、パターンP1乃至P4の各々に対する複数の回折されるビームは、光学検出手段において受けられる。この実施例は、対象2の運動の方向、即ち矢印m又は−mに沿う運動の方向の確定、及び、入射光ビームLにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0044】
図9及び10は、図7及び8中のシステム1に類似するシステム1を示す。しかしながら、方向変更手段7を適用する代わりに、第1の細長い反射型格子ストリップ4は、図9中の光ビームL及び図10中の光ビームL1,L2,L3が第2の格子ストリップ5に向かって適切に回折されるよう選択される角度下に位置付けられる。結果として、別個の方向変更手段7は、もはや必要とされない。図10において、第1の格子ストリップ4は更に、パターン間において位相差を有する矢印mに沿った同一の方向において周期的である3つの格子パターンP1乃至P3を有する。結果として、物体2の運動の方向、即ち矢印m又は−mに沿う運動の方向の確定、及び、入射光ビームLにおける電源変動に対する低減された感度を可能にする。
【0045】
図11は、システム1を示す。該システム1において、第1の細長い格子ストリップ4は、プリズム7の上部上に適用され、逆反射体9は、固定された光学検出手段6の近くに適用される。入射光ビームLは、第1の格子ストリップ4によって回折されること無く、第2の格子ストリップ5に向かってプリズム7によって反射される。第2の格子ストリップ5における回折の後のみ、回折された光ビームは、第1の格子ストリップ4において回折される。
【0046】
図12は、矢印mに沿う両方の面内平行移動の移動検出及び測定を可能にするシステム1を示す。同一又は同様の構成要素は、同一の参照符号によって示され、また、図4A乃至4C中に示される格子の種類及び配置、又は両方の面内方向における検出を可能にする他の格子は、適用され得る。
【0047】
図13は、物体2がチャンバ12におけるテーブル11上に位置付けられる、物体加工又は物体検査システム10を示す。第1の格子ストリップ4は、物体2に対して結合される。一例として、物体2は、加工又は検査を目的として、x−y平面において平行移動するよう配置されるウエハチャック11上に置かれるウエハである。第2の格子ストリップ5は、チャンバ12に対して固定して取り付けられ、チャンバ12は、加工手段又は検査手段(図示せず)に対して物体2へのアクセスを可能にする。
【0048】
原理上、第2の格子ストリップ5及び対応する検出手段6は、可動チャンバ12に対して結合され得、第1の格子ストリップ4は、安定しているテーブル11に対して結合される、ことが留意される。
【0049】
明らかに、物体2の移動を検出又は測定するシステム1は、冗長しており(redundant)、それは複数の適用に対しては有利であり得る。例えば、物体2が剛性な物体ではない場合、この冗長性(redundancy)は有利であり得る。物体が温度変化により膨張し、物体移動が物体の両側上において測定される場合、物体の膨張は、その移動と共に確定され得る。あるいは、物体が制限された剛性により作動下において(under actuation)変形する場合、該変形は、冗長測定(redundant measurements)を用いて確定され得る。測定された変形はまた、測定された位置を是正するよう使用され得、データは、変形が排除されるよう物体上に力を加え得るアクチュエータ(図示せず)を制御するよう使用され得る。
【0050】
他の実施例は、透過型のみ又は反射型のみの格子ストリップを使用する実施例を含めて、出願人によって構想されている、ことが理解されるべきである。更には、図8及び10中の位相段階的格子パターン(phase stepped grating patterns)が3つ又は4つより多いパターンPを有し得る、ことは理解されるべきである。既知のオフセット及び振幅を有する正弦波信号の位相が確定される場合、少なくとも3つの測定は所望される。正弦波信号の3つのサンプルは、信号の位相、振幅、及びオフセットを確定するよう使用され得る。3つ又はそれより多いサンプルを使用することで、振幅を知ることなく位相の確定が可能であり、電源変動に対する低減された感度は、得られる。更には、第1の格子ストリップ4と第2の格子ストリップ5との間における距離は、既知の干渉計を使用して測定又は検出され得る。
【0051】
請求項において、括弧内の参照符号は、請求項を制限するものとして解釈されるべきではない。「有する」という後は、請求項において列記される要素又は段階以外の要素又は段階の存在を除外しない。単数形で示される要素は、その複数の存在を除外しない。特定の措置が相互に異なる従属請求項において挙げられるという単なる事実は、かかる措置の組合せが有利に使用され得ないということを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図2】本発明の第2の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図3】本発明の第3の実施例に従う対象の運動検出に対するシステムの概略図である。
【図4】図4A乃至4Fは、第1及び第2の格子ストリップの多種の種類を図示する。
【図5】1つの方向において対象の運動を検出する図1中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図6】2つの方向において対象の運動を検出する図1中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図7】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図8】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図9】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図10】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図11】1つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図12】2つの方向において対象の運動を検出する図2中の実施例に従うシステムの概略的な例を図示する。
【図13】本発明の一実施例に従う対象の運動を検出するシステムを有する物体加工システムを図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の運動を検出するシステムであって、
前記物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップと、
該第1の細長い格子ストリップに交差する、別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップと、
を有し、
更には、前記物体の運動を検出するために前記第1及び第2の細長い格子ストリップにおいて回折される1つ又はそれより多い光ビームを受けるよう配置される光学検出手段を有する、
システム。
【請求項2】
前記固定された第2の細長い格子ストリップに対して前記光学検出手段を動かすよう配置される運搬手段を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記光学検出手段は、当該システム内において実質的に固定して配置され、
当該システムは更に、光方向変更手段を有し、前記光学検出手段が前記光ビームを受け得るようにする、
請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記光学検出手段は、第1の固定検出手段と、第2の可動検出手段とを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップは、望ましくは直交する、1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップの少なくとも一方は、望ましくは直交する、1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有し、前記ストリップの一方は、前記パターン間における位相差を有する同一の方向において周期的である少なくとも2つの格子パターンを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の細長い格子ストリップを有する第1の平面の法線は、前記第2の細長い格子ストリップを有する第2の平面の法線と角度を成す、
請求項1記載のシステム。
【請求項8】
入射光ビームを実質的に対向する方向へと方向変更する逆反射手段を更に有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、透過型及び/又は反射型格子を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、夫々第1の方向及び第2の方向において延在し、該第1の方向及び第2の方向は、互いに対して垂直である、
請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、10mmより小さい横方向寸法を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項12】
物体加工及び/又は検査システムであって、
該物体に対する物体位置決めテーブルを収容する加工及び/又は検査チャンバを有し、
第1の細長い格子ストリップは、前記物体位置決めテーブル上に取り付けられ、前記第1の細長い格子ストリップに交差する第2の細長い格子ストリップは、前記チャンバに対して実質的に固定されて取り付けられ、前記第1及び第2の細長い格子ストリップ及び光学検出手段は、前記物体位置決めテーブルの運動が検出され得るよう配置される、
物体加工及び/又は検査システム。
【請求項13】
システムにおいて物体の運動を検出する方法であって、
前記システムは、前記物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップと、該第1の細長い格子ストリップに交差する別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップと、光学検出手段とを有し、
当該方法は:
・ 前記第1又は第2の細長い格子ストリップに対して入射光ビームを与える段階と、
・ 対象の運動を検出するよう前記光学検出手段において前記第1及び第2の細長い格子ストリップから回折される1つ又はそれより多い光ビームを受ける段階と、
を有する、
方法。
【請求項14】
前記固定される第2の細長い格子ストリップに沿って前記光学手段を動かす段階を更に有する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップのうち少なくとも一方は、望ましくは直交する1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有し、前記ストリップの一方は、前記パターン間における位相差を有する同一の方向において周期的である少なくとも2つの格子パターンを有し、
更には、前記格子パターンの各々に対して入射光ビームを与え、前記光学検出手段において前記格子パターンから回折される対応する光ビームを受ける段階、を有する、
請求項13記載の方法。
【請求項16】
細長い格子ストリップであって、
少なくとも1つの方向において周期的である格子パターンを有し、
前記細長い格子ストリップは、15mmより小さい横方向寸法を有する、
細長い格子ストリップ。
【請求項17】
前記格子ストリップは、細長い方向において周期的である第1の格子パターンと、前記横方向寸法の方向において周期的である第2の格子パターンとを有する、
請求項17記載の細長い格子ストリップ。
【請求項18】
前記格子ストリップは、前記細長い方向及び前記横方向寸法の方向のいずれにおいても周期的である単一格子パターンを有する、
請求項17記載の細長い格子ストリップ。
【請求項1】
物体の運動を検出するシステムであって、
前記物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップと、
該第1の細長い格子ストリップに交差する、別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップと、
を有し、
更には、前記物体の運動を検出するために前記第1及び第2の細長い格子ストリップにおいて回折される1つ又はそれより多い光ビームを受けるよう配置される光学検出手段を有する、
システム。
【請求項2】
前記固定された第2の細長い格子ストリップに対して前記光学検出手段を動かすよう配置される運搬手段を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記光学検出手段は、当該システム内において実質的に固定して配置され、
当該システムは更に、光方向変更手段を有し、前記光学検出手段が前記光ビームを受け得るようにする、
請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記光学検出手段は、第1の固定検出手段と、第2の可動検出手段とを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップは、望ましくは直交する、1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップの少なくとも一方は、望ましくは直交する、1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有し、前記ストリップの一方は、前記パターン間における位相差を有する同一の方向において周期的である少なくとも2つの格子パターンを有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の細長い格子ストリップを有する第1の平面の法線は、前記第2の細長い格子ストリップを有する第2の平面の法線と角度を成す、
請求項1記載のシステム。
【請求項8】
入射光ビームを実質的に対向する方向へと方向変更する逆反射手段を更に有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、透過型及び/又は反射型格子を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、夫々第1の方向及び第2の方向において延在し、該第1の方向及び第2の方向は、互いに対して垂直である、
請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の格子ストリップ及び前記第2の格子ストリップは、10mmより小さい横方向寸法を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項12】
物体加工及び/又は検査システムであって、
該物体に対する物体位置決めテーブルを収容する加工及び/又は検査チャンバを有し、
第1の細長い格子ストリップは、前記物体位置決めテーブル上に取り付けられ、前記第1の細長い格子ストリップに交差する第2の細長い格子ストリップは、前記チャンバに対して実質的に固定されて取り付けられ、前記第1及び第2の細長い格子ストリップ及び光学検出手段は、前記物体位置決めテーブルの運動が検出され得るよう配置される、
物体加工及び/又は検査システム。
【請求項13】
システムにおいて物体の運動を検出する方法であって、
前記システムは、前記物体に対して結合される第1の細長い格子ストリップと、該第1の細長い格子ストリップに交差する別個の実質的に固定された第2の細長い格子ストリップと、光学検出手段とを有し、
当該方法は:
・ 前記第1又は第2の細長い格子ストリップに対して入射光ビームを与える段階と、
・ 対象の運動を検出するよう前記光学検出手段において前記第1及び第2の細長い格子ストリップから回折される1つ又はそれより多い光ビームを受ける段階と、
を有する、
方法。
【請求項14】
前記固定される第2の細長い格子ストリップに沿って前記光学手段を動かす段階を更に有する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の細長い格子ストリップのうち少なくとも一方は、望ましくは直交する1つ又はそれより多い方向において周期的である格子パターンを有し、前記ストリップの一方は、前記パターン間における位相差を有する同一の方向において周期的である少なくとも2つの格子パターンを有し、
更には、前記格子パターンの各々に対して入射光ビームを与え、前記光学検出手段において前記格子パターンから回折される対応する光ビームを受ける段階、を有する、
請求項13記載の方法。
【請求項16】
細長い格子ストリップであって、
少なくとも1つの方向において周期的である格子パターンを有し、
前記細長い格子ストリップは、15mmより小さい横方向寸法を有する、
細長い格子ストリップ。
【請求項17】
前記格子ストリップは、細長い方向において周期的である第1の格子パターンと、前記横方向寸法の方向において周期的である第2の格子パターンとを有する、
請求項17記載の細長い格子ストリップ。
【請求項18】
前記格子ストリップは、前記細長い方向及び前記横方向寸法の方向のいずれにおいても周期的である単一格子パターンを有する、
請求項17記載の細長い格子ストリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−509156(P2009−509156A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531837(P2008−531837)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053267
【国際公開番号】WO2007/034379
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053267
【国際公開番号】WO2007/034379
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]