説明

物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造

【課題】フラットパネルディスプレイの大型ガラス基板などを搬送するローラコンベアにおける物品搬送ローラ支持用シャフトを、ベアリング装置のベアリング内輪に隙間嵌めして取付けても、シャフトとベアリング内輪との間に滑りを生じることがないようにした回転支持構造を提供する。
【解決手段】物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造10は、ローラ搬送装置における回転シャフト16の軸方向端部17とベアリング装置20によって構成されていて、ベアリング装置20におけるベアリング内輪30は、ベアリング外輪26の軸方向端面26Aよりも突出した延長部32を有し、この延長部32に設けられたセットボルト36によって、延長部32と回転シャフト16の軸方向端部17とを締め付け固定した構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いられる大型薄板ガラス基板などの物品を搬送するローラコンベアにおける、物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような、大型薄板ガラス基板を搬送するローラコンベアは、軸方向両端部をロールベアリングあるいはローラベアリングで回転シャフトを回転自在に支持し、回転シャフトには、シャフト径よりも大きな外径を有する複数の樹脂ローラを取り付け、その外径とガラス基板の下側面が接触状態で回転シャフトを回転駆動することによって、ガラス基板を搬送させるものである。
【0003】
上記回転シャフトは、ロールベアリングあるいはローラベアリングにおけるローリング内輪の内径に挿入されるものであるが、その固定手段は次のように複数種類用いられている。
【0004】
回転シャフトとベアリング内輪の内径との間に微小の隙間を設けて回転シャフトを挿入する手段としては、いわゆる隙間嵌めの方法と、隙間嵌めをした後に、ベアリング内輪の軸方向端面位置に留め輪を設ける方法とがある。
【0005】
又、回転シャフトとベアリング内輪の内径との間に隙間がない場合として、ベアリング内輪に回転シャフトを圧入する方法、回転シャフトの軸方向端面に中心に設けたねじ孔にボルトを螺合して、ベアリング内輪を回転シャフトに固定する方法、回転シャフトの端部外周にねじ山を設けて、これにナットを螺合させることによって、ベアリング内輪を回転シャフトに固定する方法、がある。
【0006】
上記隙間嵌め及び隙間嵌め後に留め輪によってベアリング内輪を回転シャフトに固定する方法は、組み立て作業性は良いが、両者間に滑りが生じ易く、これが発塵の原因となり、クリーンルーム内での使用が困難となる。
【0007】
これに対して、ベアリング内輪に回転シャフトを圧入したり、更には回転シャフトの軸方向端面にボルトを螺合する方法あるいは端部外周にナットを螺合する方法のいずれも、発塵の問題はないが、組み立て作業が煩雑であり、組み立てコストが増大すると共に、回転シャフト群をローラコンベアのフレームに取り付ける際に、柔軟性がなく、組み立て誤差を吸収することが困難であるという問題点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、回転シャフトを、ベアリング内輪に隙間嵌めにより取り付けた場合であっても、両者間に滑りが生じることなく、従って発塵を抑制できるようにした物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ベアリング内輪をベアリング外輪に対して一定割合の範囲に、軸方向に延長して延長部を設け、この延長部にセットボルトを螺合して回転シャフトに固定することによって、駆動中に両者間の滑りを抑制できることを見出した。又、このようにすることによって、回転シャフト群をローラコンベアのフレームに取り付ける際に組み立て誤差を吸収できることがわかった。
【0010】
即ち、以下の実施例によって上記課題を解決することができる。
【0011】
(1)支持部材に固定されたベアリング外輪と、このベアリング外輪の内側にベアリングボール又はベアリングローラを介して回転自在に支持されたベアリング内輪と、を有してなり、前記ベアリング内輪の内径に、物品搬送ローラを支持するシャフトの軸方向端部を隙間嵌めにより取り付けて、前記シャフトを回転自在に支持してなる物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造であって、前記ベアリング内輪は、前記ベアリング外輪の一方の軸方向端面よりも軸方向に突出した延長部を一体的に備え、前記ベアリング内輪の内径dが、d≧20mmのとき、前記延長部の軸方向の幅Lが、L≧5mmとされ、前記延長部にはセットボルトねじ孔が設けられ、前記セットボルトねじ孔に螺合されるセットボルトにより前記延長部が前記シャフトに締付け固定されていることを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造である。
【0012】
(2)(1)において、前記ベアリング内輪の、前記延長部を含む軸方向の幅がWのとき、W/dが、0.8≦W/d≦1.0とされたことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【0013】
(3)(1)又は(2)において、前記ベアリング内輪の内径dと、前記シャフトにおける前記内径に嵌合される部分の外径Dとの差d−Dが、0<d−D≦0.15mmとされたことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【0014】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記ベアリング外輪及びベアリング内輪における、前記延長部と反対側の端面が面一に構成されていることを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記セットボルトの外周と前記延長部の外周との交線部分に、ボルト緩み防止手段を施したことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、回転シャフトが隙間嵌めされたベアリング外輪が、ベアリング外輪の一方の軸方向端面よりも軸方向に突出した延長部とされ、且つ、ここでセットボルトによって延長部が回転シャフトに固定されるので、運転中に回転シャフトとベアリング内輪との間に滑りが発生することを抑制できると共に、回転シャフト群をローラコンベアのフレームに取り付ける際に組み立て誤差を吸収することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造について詳細に説明する。
【0018】
この実施形態に係る回転支持構造10は、ローラ搬送装置12に適用されたものである。
【0019】
このローラ搬送装置12は、モータ及び歯車列からなる駆動装置14と、この駆動装置14によって回転される水平に配置された複数の回転シャフト16と、この回転シャフト16の軸方向一定間隔に配置され、回転シャフト16よりも直径の大きい物品搬送ローラ18と、回転シャフト16の軸方向両端を回転自在に支持するベアリング装置20、22とを有してなり、物品搬送ローラ18上を、例えばガラス基板24を搬送するものである。
【0020】
回転支持構造10は、回転シャフト16の軸方向端部とベアリング装置20とによって構成されている。
【0021】
図2に拡大して示されるように、ベアリング装置20は支持部材(図示省略)に固定されたベアリング外輪26と、このベアリング外輪26の内側にベアリングボール(又はベアリングローラ)28を介して回転自在に支持されたベアリング内輪30と、を有してなりベアリング内輪30の内径30Aに回転シャフト16の軸方向端部17を、隙間嵌めによって取り付けて回転シャフト16を回転自在に支持したものである。
【0022】
ベアリング内輪30は、ベアリング外輪26の一方の軸方向端面(図2において左側端面)26Aよりも軸方向に突出した延長部32を一体的に備えている。
【0023】
この延長部32には、セットボルトねじ孔34が設けられ、このセットボルトねじ孔34に螺合されるセットボルト36によって、延長部32は、前記回転シャフトに締め付け固定されている。図2の符号38は、セットボルト36の外周と延長部32の交線部分に設けられたボルト緩み防止手段としての接着剤を示す。
【0024】
ここで、ベアリング内輪30における延長部32と反対側の軸方向端面30Bは、ベアリング外輪26における、延長部32と反対側の軸方向端面30Bとは相互に面一となるように構成されている。
【0025】
延長部32の、軸方向の幅(突出量)Lが、L≧5mm、且つ、ベアリング外輪26の軸方向の幅がW、ベアリング内輪30の延長部32を含む軸方向の幅がW、内径30Aの大きさ(直径)dのとき、W/dが、0.8≦W/d≦1.0とされている。
【0026】
又、回転シャフト16の、ベアリング内輪30における内径30Aに嵌合される際の両者の隙間は、回転シャフト16の軸方向端部17近傍における外径をDとしたとき、0<d−D≦0.15mmとされている。
【0027】
本発明者が耐久試験を行ったところ、d=20mm、ベアリング内輪の幅と内径の比が0.35及び0.45の場合、上記範囲において回転シャフト16を内径に隙間嵌めした条件で、ベアリング内輪と回転シャフトとの間に滑りが発生して、回転シャフトが削れてパーティフルが発生した(表1参照)。
【0028】
【表1】

【0029】
次に、延長部の軸方向の幅を5mm未満とした場合は、セットボルトが取り付け不能であり、ベアリング内輪とシャフトとの滑りが発生した。
【0030】
延長部の幅を5mmとし、このとき、ベアリング内輪の幅を7mm且つ、d=20mmとしたとして、W/d=12:20=0.6のとき、セットボルトの緩みが大きく発生した。
【0031】
更に、表1に示されるように、ベアリング内輪の幅(延長部32)の幅を、W/dが0.65、0.70、0.75となるように順次大きくして耐久試験をしたところ、セットボルトの緩みが表1に示されるように中または小となり、更に、0.80としたところ、セットボルトに緩みが発生しなかった。
【0032】
又、W/dの値を0.05ずつ、1.00まで段階的に増大したところ、セットボルトの緩みは生じなかった。
【0033】
/d=1.00を上限としたのは、ベアリング内輪の幅をこれ以上大きくすると製造が困難となるからである。又、d=20mmとしたのは、大型ガラス基板を搬送する際の回転シャフトの剛性から、20mm以上必要だからである。
【0034】
図2に示される実施形態では、ボルト緩み防止手段として接着剤38を用いているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば図3に示される本発明の第2実施形態のように、セットボルト40に、緩み防止ナット42を螺合させて、回転シャフト16を締め付けた状態のセットボルト40を延長部32に締め付け固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の例に係る回転支持構造を用いたローラコンベアの一部を示す正面図
【図2】同回転支持構造におけるベアリング装置を拡大して示す断面図
【図3】同ベアリング装置の他の実施形態の例の要部を示す断面図
【符号の説明】
【0036】
10…回転支持構造
12…ローラ搬送装置
14…駆動装置
16…回転シャフト
17…軸方向端部
18…物品搬送ローラ
20、22…ベアリング装置
24…ガラス基板
26…ベアリング外輪
26A、26B、30B…軸方向端面
28…ベアリングボール
30…ベアリング内輪
30A…内径
32…延長部
34…セットボルトねじ孔
36、40…セットボルト
38…接着剤
42…緩み防止ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に固定されたベアリング外輪と、このベアリング外輪の内側にベアリングボール又はベアリングローラを介して回転自在に支持されたベアリング内輪と、を有してなり、
前記ベアリング内輪の内径に、物品搬送ローラを支持するシャフトの軸方向端部を隙間嵌めにより取り付けて、前記シャフトを回転自在に支持してなる物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造であって、
前記ベアリング内輪は、前記ベアリング外輪の一方の軸方向端面よりも軸方向に突出した延長部を一体的に備え、
前記ベアリング内輪の内径dが、d≧20mmのとき、前記延長部の軸方向の幅Lが、L≧5mmとされ、
前記延長部にはセットボルトねじ孔が設けられ、
前記セットボルトねじ孔に螺合されるセットボルトにより前記延長部が前記シャフトに締付け固定されていることを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベアリング内輪の、前記延長部を含む軸方向の幅がWのとき、W/dが、0.8≦W/d≦1.0とされたことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ベアリング内輪の内径dと、前記シャフトにおける前記内径に嵌合される部分の外径Dとの差d−Dが、0<d−D≦0.15mmとされたことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記ベアリング外輪及びベアリング内輪における、前記延長部と反対側の端面が面一に構成されていることを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記セットボルトの外周と前記延長部の外周との交線部分に、ボルト緩み防止手段を施したことを特徴とする物品搬送ローラ支持用シャフトの回転支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−208892(P2008−208892A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45282(P2007−45282)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(592053778)株式会社日本設計工業 (18)
【Fターム(参考)】