説明

特定のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤を使用する肝疾患を治療する方法

マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することによって肝疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。また、本明細書に記載されるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することによって、肝疾患と関連した肝障害を低下させる方法が提供される。さらに、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することによって、高いレベルの肝臓酵素を低下させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.優先権の主張)
本願は、Alfred P. Spadaに対する2007年2月28日に出願された米国仮出願シリアル番号第60/904,322号および2007年6月26日に出願された第60/937,301号に対する優先権を主張する。上述の参照された出願の開示は、それらのすべての内容が全体として引用により組み込まれている。
【0002】
(2.分野)
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することによって肝疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
(3.背景)
肝疾患は、感染、損傷、薬物または毒性化合物への曝露、アルコール、食物中の不純物、および血中の正常な物質の異常な蓄積、自己免疫過程によって、または(ヘモクロマトーシス等の)遺伝的欠陥によって通常生じる、肝臓に対する急性または慢性の障害である。時には、損傷の実際の原因は公知ではないかもしれない。肝疾患は、疾患の期間に基づいて、急性または慢性の肝疾患として分類できる。急性肝炎および急性肝不全(ALF)等の急性肝疾患において、既往歴は、6ヶ月間を超過しない。より長い期間の肝疾患は、慢性肝疾患として分類される。
【0004】
一般的な肝疾患には、硬変症、肝線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝臓虚血再灌流傷害、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、ウイルス性およびアルコール性肝炎を含む肝炎が含まれる。ウイルス性肝炎の最も一般的な形態は、B型およびC型肝炎である(それぞれHBVおよびHCV)。慢性肝炎は結果的に、硬変症を生じ得る。慢性的なC型肝炎感染によって生じる硬変症は、米国において年間8,000〜12,000件の死因を占め、HCV感染は、肝臓移植についての主要な適応症である。
【0005】
アポトーシスとして公知の過程を通じての肝細胞の死滅は、すべての形態の肝疾患において一般的である。肝細胞のアポトーシスは、肝線維症および他の肝疾患と関連する。過度のアポトーシス肝細胞の予防は、急性および慢性肝疾患の治療における重要な構成要素である(Guicciardiらの文献(Gut, 2005: 54, 1024-1033)およびGhavamiらの文献(Med. Sci. Monit., 2005: 11(11): RA337-345)参照)。
【0006】
活性のある肝疾患の存在は、血中の高い酵素レベルの存在によってしばしば検出される。具体的には、臨床的に認可された正常範囲を上回るALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の血中レベルは、進行中の肝障害の指標であることが公知である。ALTおよびASTの血中レベルについての肝疾患患者の定型的なモニタリングは、医学的処置を行いながら肝疾患の進行を測定するために臨床的に使用される。認可された正常範囲内へ高いALTおよびASTが低下することは、進行中の肝障害の患者の重度の低下を反映する臨床的な証拠として採用される(Kim W. R.らの文献(Hepatology, 2008)、発行元のウェブサイト上で2008年2月20日にアクセスされた、オンラインで入手可能な認可された前刷り)。
【0007】
肝疾患が、世界規模で大きな患者集団に影響を及ぼしており、影響を受けた患者に悲劇的な効果を及ぼすという事実の点で、肝疾患を治療するための新たな有効な医薬を提供する必要性はなおも強い。
【発明の概要】
【0008】
(4.概要)
一態様において、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することによって多様な肝疾患を治療する方法が、本明細書に提供される。ある実施態様において、方法には、急性および/または慢性肝疾患の治療が含まれる。一実施態様において、肝疾患は、肝臓に対する損傷から結果的に生じる障害である。一実施態様において、肝臓に対する損傷は、アルコール、いくつかの薬物、食物中の不純物を含む毒素、および血中の正常な物質の異常な蓄積によって生じる。別の実施態様において、肝臓に対する損傷は、感染によってまたは自己免疫障害によって生じる。ある実施態様において、損傷の実際の原因は公知ではない。ある実施態様において、肝臓に対する損傷から結果的に生じる肝疾患には、脂肪肝、硬変症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、およびα1アンチトリプシン欠損症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0009】
一実施態様において、肝疾患には、硬変症、肝線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝臓虚血再灌流傷害、ウイルス性およびアルコール性肝炎を含む肝炎、ならびに原発性胆汁性肝硬変(PBC)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0010】
ある実施態様において、肝疾患は、二次性脂肪肝疾患以外のものである。ある実施態様において、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤は、マリマスタット以外のものである。
【0011】
ある実施態様において、肝疾患のための治療に失敗した患者のための肝疾患の治療のための方法が提供される。ある実施態様において、C型肝炎の治療のための方法が提供される。ある実施態様において、C型肝炎のための治療に失敗した患者のためのC型肝炎の治療のための方法が提供される。一実施態様において、本明細書に提供される方法は、慢性および/または急性肝疾患と関連した肝障害を低下させる。一実施態様において、本明細書に提供される方法は、高いレベルのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)等の高いレベルの肝臓酵素を低下させる。
【0012】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物を投与することによって、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞におけるC型肝炎ウイルスの複製を阻害する方法が、本明細書に提供される。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物を投与することによって、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者におけるHCVの複製を阻害する方法が、本明細書に提供される。
【0013】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のためのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤化合物は、
【化1】

および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される。
【0014】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化2】

または医薬として許容し得るその誘導体である。
【0015】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化3】

または医薬として許容し得るその誘導体である。
【0016】
また、本明細書に提供される治療的有効量の1つ以上の化合物と医薬的として許容し得る担体とを含有する医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、肝疾患の1つ以上の症状の予防、治療、または寛解において有用である。
【0017】
さらに、包装材料、肝疾患と関連した1つ以上の症状の治療、予防または寛解のために使用される、本明細書に提供される化合物または医薬として許容し得るその誘導体、および化合物または医薬として許容し得るその誘導体が、肝疾患の1つ以上の症状の治療、予防または寛解のために使用されることを示すラベルを含有する製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(5.好ましい実施態様の詳細な記述)
(5.1 定義)
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。すべての特許、出願、刊行された出願および他の刊行物は、それらのすべての内容が全体として引用により組み込まれている。本明細書の1つの用語について複数の定義がある場合、本章における定義は、別段の記載がない限り優勢である。
【0019】
本明細書で使用されるように、「対象」は、患者等のヒトを含む哺乳動物等の動物である。
【0020】
本明細書で使用されるように、生物活性は、化合物のインビボでの活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物のインビボでの投与の際に結果的に生じる生理学的反応を指す。従って、生物活性は、このような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬物動態学的挙動を包含する。生物活性は、このような活性について検査するよう設計されたインビトロでの系において観察できる。
【0021】
本明細書で使用されるように、化合物の医薬として許容し得る誘導体には、その塩、エステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和化合物、水和物またはプロドラッグが含まれる。このような誘導体は、このような誘導体化のための公知の方法を使用して、当業者によって容易に調製され得る。製造された化合物は、実質的な毒性効果を持たずに、動物またはヒトへ投与され得るものであり、医薬として活性がありまたはプロドラッグであるかのいずれかである。医薬として許容し得る塩には、これらに限定されるわけではないが、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、塩素、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-1'-イルメチルベンズイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン、ピペラジンならびにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のアミン塩;これらに限定されるわけではないが、リチウム、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属塩;これらに限定されるわけではないが、バリウム、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属塩;これらに限定されるわけではないが、亜鉛等の遷移金属塩;ならびにこれらに限定されるわけではないが、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸二ナトリウム等の無機塩が含まれ;ならびにまた、これらに限定されるわけではないが、塩酸塩および硫酸塩等の鉱酸の塩;ならびにこれらに限定されるわけではないが、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、メシル酸塩、およびフマル酸塩等の有機酸塩が含まれる。医薬として許容し得るエステルには、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、硫酸およびボロン酸を含むがそれらに限定されるわけではない酸性基のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルエステルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。医薬として許容し得る溶媒和化合物および水和物は、1分子以上の溶媒もしくは水との、または1〜約100、または1〜約10、または1〜約2、3もしくは4分子の溶媒もしくは水との1つの化合物の複合体である。
【0022】
本明細書で使用されるように、治療は、疾患または障害の1つ以上の症状が寛解しまたはそれに代わるものとして有益に変化するいずれかの方法を意味する。治療はまた、肝疾患を治療するための使用など、本明細書の組成物に関するいずれかの医薬的使用を包含する。
【0023】
本明細書で使用されるように、具体的な化合物または医薬組成物の投与による具体的な障害の症状の寛解は、組成物の投与に貢献し得または関係し得るもので、永久的にしろ一時的にしろ持続するまたは一過性であるいずれかの軽減を指す。
【0024】
本明細書で使用されるように、かつ別段の記載がなければ、「管理する」、「管理している」および「管理」という用語は、特定の疾患または障害を罹患したことのある患者における該疾患または障害の再発を予防し、および/または該疾患または障害を罹患したことのある患者が軽快中のままである時間を延長させることを包含する。用語は、疾患または障害の閾値、発達および/または期間を調節し、あるいは、疾患または障害に患者が反応する方法を変化させることを包含する。
【0025】
本明細書に提供される化合物が、キラル中心を含有し得ることは理解されるべきである。このようなキラル中心は、(R)もしくは(S)のいずれかの立体配置であり得、またはそれらの混合物であり得る。従って、本明細書に提供される化合物は、鏡像体的に純粋であり、または立体異性体のもしくはジアステレオマーの混合物であり得る。このように、当業者は、インビボでエピマー化を経験する化合物について、(R)形態にある1つの化合物の投与が、(S)形態にある該化合物の投与と等価であることを認識するであろう。
【0026】
本明細書で使用されるように、実質的に純粋なとは、このような純度を評価するために当業者によって使用される薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)等の標準的な分析方法によって決定される容易に検出可能な不純物がないように見えるよう十分均質であり、またはさらなる精製が、物質の酵素活性および生物活性等の物理的および化学的特性を検出可能に変化させないであろうように十分純粋であることを意味する。化学的に実質的に純粋な化合物を製造するための化合物の精製のための方法は、当業者に公知である。しかしながら、化学的に実質的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であり得る。このような場合、さらなる精製は、該化合物の比活性を増大させ得る。本開示は、このようなあり得る異性体、ならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態をすべて含むよう意味される。光学的に活性のある(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製され得、または逆相HPLC等の従来技術を使用して分離され得る。本明細書に記載される化合物が、幾何学的不斉のオレフィン二重結合または他の中心を含有する場合、および別段の指定がない限り、該化合物が、EおよびZ幾何異性体の両者を含むことが企図される。同様にまた、すべての互変異性体が含まれるよう企図される。
【0027】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法において使用される化合物は、「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者によって「純粋である」と認識されるであろうあるレベルの立体化学的純度を有する。ある実施態様において、「立体化学的に純粋な」は、代替的な異性体を実質的に含まない化合物を示す。具体的な実施態様において、該化合物は、他の異性体を85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%含まない。
【0028】
本明細書で使用されるように、「肝疾患のための治療法」は、市場において公知でありかつ市販されている、または肝疾患の治療のために開発中である薬物による治療を指す。例えば、C型肝炎の治療法は、HCV治療のために市販されている薬物による患者の治療を指す。いくつかの典型的な薬物は、後述の「組み合わせ治療法」に関する節に記載される。
【0029】
本明細書で使用されるように、「治療法に失敗した患者」は、後述の第4.3節に記載される患者集団を指しており、現に市販されている薬物を使用して肝疾患をすでに治療し、かつ、治療法に反応しなかったかまたは肝疾患が一時的に軽減したかのいずれかの患者を含む。
【0030】
本明細書で使用されるように、「肝障害」は、感染、損傷、薬物または毒性化合物への曝露、アルコール、食物中の不純物、および血中の正常な物質の異常な蓄積、自己免疫過程、移植と関連した移植片拒絶反応によって、または(ヘモクロマトーシス等の)遺伝的欠陥によって通常生じる、肝臓に対する急性または慢性の障害を指す。肝臓に対する障害は、炎症、肝組織の瘢痕化および線維症を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0031】
本明細書で使用されるように、「組み合わせで」という用語は、2つ以上の治療法の使用を指す(例えば、MMPおよびインターフェロン)。「組み合わせで」という用語の使用は、治療法(例えば、MMPおよびインターフェロン)が、障害を有する対象へ投与される順序を制限しない。第一の治療法(例えば、MMP阻害剤)は、障害を有する対象への第二の治療法(例えば、インターフェロン)の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時に、または後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与できる。
【0032】
本明細書で使用されるように、「相乗的な」という用語は、単一治療法としての2つの化合物の投与の相加効果よりも効果的な、MMP阻害剤とインターフェロン等の第二の薬物との組み合わせを指す。治療法の組み合わせ(例えば、MMPとインターフェロンとの組み合わせ)の相乗効果によって、障害を有する対象への1つ以上の該治療法のより低い薬用量の使用および/または該治療法のあまり頻繁ではない投与が可能となる。治療法(例えば、MMPおよびインターフェロン)のより低い薬用量を利用しおよび/または治療法をあまり頻繁ではなく投与する能力によって、障害の予防または治療における治療法の効能を低下させずに、対象への治療法の投与と関連した毒性が低下する。さらに、相乗効果の結果、障害の予防または治療における薬物の効能が改善されることが可能である。最終的に、治療法の組み合わせ(例えば、MMPとインターフェロンとの組み合わせ)の相乗効果は、いずれかの治療法単独の使用と関連した有害なまたは望ましくない副作用を回避し得または低下させ得る。
【0033】
本明細書で使用されるように、「他の薬物」または「第二の薬物」という用語は、本明細書に記載されるMMP阻害剤との組み合わせで肝疾患の治療のために使用できるいずれかの薬物または薬物の組み合わせを指す。ある実施態様において、他の薬物または第二の薬物は、抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、抗C型肝炎ウイルスポリメラーゼ阻害剤、抗C型肝炎ウイルスプロテアーゼ阻害剤またはそれらの組み合わせである。
【0034】
本明細書で使用されるように、「高いレベルの肝臓酵素」または「上昇したレベルの肝臓酵素」という用語は、血中の肝臓酵素について臨床的に許容される正常範囲を超過するレベルの血中肝臓酵素を指す。本明細書に提供される化合物は、血中で、高いレベルの肝臓酵素を、臨床的に許容される正常レベルの肝臓酵素まで低下させる。肝臓酵素のレベルを測定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書中に各々組み込まれているJeong S. Y.らの文献(肝疾患を有する患者由来の血清中細胞質アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの測定のためのサンドイッチELISA(Sandwich ELISA for measurement of cytosolic aspartate aminotransferase in sera from patients with liver diseases))(Clin Chem., 2003; 49(5):826 9)およびBurin des Roziers N.らの文献(血液ドナーにおける血清アラニンアミノトランスフェラーゼの測定のためのマイクロタイタープレートアッセイ(A microtiter plate assay for measurement of serum alanine aminotransferase in blood donors))(Transfusion., 1995; 35(4):331 4)参照)。
【0035】
(5.2 前記方法における使用のための化合物)
本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMP阻害剤)である。いくつかのMMP阻害剤は、文献中で報告されてきた。本明細書における方法における使用のためのある典型的なMMP阻害剤は、Fisherらの文献(Cancer Metastasis Rev., (2006) 25: 115-136)、Raoの文献(Current Pharmaceutical Design, 2005, 11, 295-322 295)、Benderらの文献(米国特許第5,932,595号)、Watanabeの文献(米国特許第6,207,698号および第6,831,178号)、Levinらの文献(米国特許第6,225,311号)、Purderらの文献(WO 2007/016390)およびAlwaynらの文献(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 291: G1011-G1019, 2006)によって記載される。これらの参考文献の内容は、全体として引用により本明細書中に組み込まれている。
【0036】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化4】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される。
【0037】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化5】

または医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される。
【0038】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化6】

または医薬として許容し得るその誘導体である。
【0039】
一実施態様において、本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、
【化7】

または医薬として許容し得るその誘導体である。
【0040】
一実施態様において、化合物は、
【化8】

または医薬として許容し得るその誘導体である。
【0041】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、0.001〜1000mg/kgの経口投与後の急性肝疾患のモデルにおいて効能を有する。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、0.01〜100mg/kgの経口投与後の急性肝疾患のモデルにおいて効能を有する。
【0042】
(5.3 治療の方法)
ある実施態様において、本明細書に提供される方法には、急性および/または慢性肝疾患の治療が含まれる。一実施態様において、方法は、急性肝疾患の治療のためのものである。一実施態様において、方法は、慢性肝疾患の治療のためのものである。一実施態様において、方法は、慢性および/または急性肝疾患と関連した肝障害を低下させるためのものである。具体的ないずれの理論とも結び付けられることなく、本明細書に提供される方法において使用されるMMP阻害剤が、TNF-αのシグナル伝達カスケードを阻害することによっていくぶん作用することが可能であると信じられている。従って、一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される化合物を投与することによってTNF-αのシグナル伝達カスケードを阻害するための方法である。
【0043】
一実施態様において、肝疾患は、肝臓に対する損傷から結果的に生じる障害である。一実施態様において、肝臓に対する損傷は、アルコール、いくつかの薬物、食物中の不純物を含む毒素、および血中の正常な物質の異常な蓄積によって生じる。別の実施態様において、肝臓に対する損傷は、感染によってまたは自己免疫障害によって生じる。ある実施態様において、損傷の実際の原因は公知ではない。
【0044】
一実施態様において、肝疾患には、硬変症、肝線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝臓虚血再灌流傷害、ウイルス性およびアルコール性肝炎を含む肝炎、ならびに原発性胆汁性肝硬変(PBC)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一実施態様において、肝疾患は、上昇した肝臓酵素(例えば、ALTおよびAST)、脂肪変性(脂肪肝)の結果としての進行中の肝障害の病理学的証拠、線維症および/または硬変症によって顕在化される。一実施態様において、NASHは、上昇した肝臓酵素(例えば、ALTおよびAST)、脂肪変性(脂肪肝)の病理学的証拠、線維症および/または硬変症によって顕在化される。
【0045】
ある実施態様において、非アルコール性脂肪肝疾患を含む脂肪肝(肝脂肪変性とも呼ばれる)の治療のための方法が本明細書に提供される。脂肪肝は、肝細胞の内側でのトリグリセリドの過度の蓄積として定義される。ある実施態様において、非アルコール性脂肪肝疾患を有する患者において、肝臓は、肝臓の総重量の約5%超を含有し、または肝小葉における肝細胞の30%超が脂肪沈着物を有する。非アルコール性脂肪肝の最も一般的な原因は、肥満、糖尿病、および高い血清トリグリセリドレベルである。他の原因には、栄養失調症、代謝の遺伝性障害(糖原病など)、および薬物(コルチコステロイド、テトラサイクリンおよびアスピリンなど)が含まれる。ある実施態様において、脂肪肝は症状を生じない。他の実施態様において、脂肪肝は結果として、黄疸(皮膚および眼の白色部の黄色がかった退色)、悪心、嘔吐、疼痛、および腹部圧痛を生じる。一実施態様において、本明細書に提供される方法は、非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状を治療する上で有用である。
【0046】
アルコールによって生じることのない肝臓の炎症を有する脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝炎またはNASHとして公知である。ある実施態様において、NASHは、非アルコール性脂肪肝疾患の起こり得る原因としての上述の原因のいずれかによって生じ得る。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、NASHの治療のための方法である。
【0047】
一実施態様において、本明細書に提供される方法は、ウイルス性およびアルコール性肝炎を含む肝炎または肝臓の炎症の治療のためのものである。ウイルス性肝炎は、急性または慢性であり得る。ある実施態様において、急性ウイルス性肝炎は、A、B、C、DまたはE型肝炎ウイルスによって生じる。他の実施態様において、急性ウイルス性肝炎は、BまたはC型肝炎ウイルスによって生じる。ある実施態様において、提供される方法は、慢性ウイルス性肝炎の治療のためのものである。一実施態様において、慢性ウイルス性肝炎は、BまたはC型肝炎ウイルスによって生じる。ある実施態様において、C型肝炎のための治療法に失敗したC型肝炎患者の治療のための方法が提供される。C型肝炎の治療の典型的な方法は、Straderらの文献(Hepatology, 39(4), 2004)によって記載される。
【0048】
ある実施態様において、患者は、HCV感染のための治療法または予防法を一度も受けていない。さらなる実施態様において、患者は、HCV感染のための治療法または予防法をすでに受けたことがある。例えば、ある実施態様において、患者は、HCV治療法に反応しなかった。当技術分野において公知のように、現行のインターフェロン治療法の下で、最大50%以上のHCV患者は、治療法に反応しない。ある実施態様において、患者は、治療法を受けたがHCV又はその1以上の症状に苦しみ続けている患者であり得る。ある実施態様において、患者は、治療法を受けたが、持続的な反応に到達し損なった患者であり得る。ある実施態様において、HCV感染のための治療法を受けたが失敗した患者は、治療法の12週間後に2log10超のHCV RNAレベルの低下を示す。治療法の12週間後に血清HCV RNAにおける2log10超の低下を示さなかった患者は、反応しない機会が97〜100%であると信じられている。
【0049】
ある実施態様において、患者は、HCV治療法と関連した1つ以上の有害な事象のために、該治療法を中止した患者である。ある実施態様において、患者は、現行の治療法が示されていない患者である。例えば、HCVのためのある治療法は、神経精神病学的事象と関連している。インターフェロン(IFN)-α+リバビリンは、高い割合の鬱病と関連している。鬱病の症状は、多くの医学的障害におけるより劣悪な結果と連関している。自殺、自殺的および殺人的思考、鬱病、薬物嗜癖/過剰量の再発、および攻撃的行動を含む生命を脅かすまたは致死的な神経精神病学的事象は、HCV治療法の間に先行する精神病学的障害を有するおよび有さない患者において生じてきた。インターフェロン誘発性鬱病は、慢性C型肝炎の治療にとっての、特に精神病学的障害を有する患者にとっての制限である。精神病学的副作用は、インターフェロン治療法と共通しており、HCV感染のための現行の治療法の中止の約10〜20%の原因である。
【0050】
従って、鬱病等の神経精神病学的事象の危険性が現行のHCV治療法による治療に禁忌を示す患者におけるC型肝炎を治療しまたは予防する方法が提供される。また、鬱病等の神経精神病学的事象または該事象の危険性が現行のHCV治療法による治療の中止を示す患者におけるC型肝炎を治療しまたは予防する方法が提供される。さらに、鬱病等の神経精神病学的事象または該事象の危険性が現行のHCV治療法の用量減少を示す患者におけるC型肝炎を治療しまたは予防する方法が提供される。
【0051】
また、現行の治療法は、インターフェロンもしくはリバビリン、またはその両者、またはインターフェロンもしくはリバビリンの投与のための医薬製剤のいずれかの他の構成要素に対して過敏である患者において禁忌である。現行の治療法は、ヘモグロビン症(例えば、重症型地中海貧血、鎌型赤血球貧血)を有する患者および現行の治療法の血液学的副作用由来の危険にある他の患者において必要を示されていない。一般的な血液学的副作用には、骨髄抑制、好中球減少症および血小板減少が含まれる。さらに、リバビリンは、赤血球細胞に対して毒性があり、溶血と関連している。従って、本明細書に提供される方法は、インターフェロンもしくはリバビリン、またはその両者に対して過敏である患者、ヘモグロビン症、例えば重症型地中海貧血患者および鎌型赤血球貧血患者、ならびに現行の治療法の血液学的副作用由来の危険にある他の患者において有用である。
【0052】
ある実施態様において、患者は、HCV治療法を受け、本明細書に提供される方法の投与の前に該治療法を中止している。さらなる実施態様において、患者は、治療法を受けたことがあり、かつ本発明に提供される方法の投与とともに該治療法を受け続ける。本明細書にある方法は、当業者の判断に従って、HCVのための他の治療法と同時投与できる。ある実施態様において、本明細書にある方法または組成物は、HCVのために用量を減少した他の治療法と同時投与できる。
【0053】
ある実施態様において、インターフェロンを使用する治療に対して不応性である患者を治療する方法が提供される。例えば、いくつかの実施態様において、該患者は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグ化インターフェロンα、インターフェロン+リバビリン、インターフェロンα+リバビリン、およびペグ化インターフェロンα+リバビリンからなる群から選択される1つ以上の薬物を使用する治療に反応し損なった患者であり得る。いくつかの実施態様において、該患者は、インターフェロン、インターフェロンα、ペグ化インターフェロンα、インターフェロン+リバビリン、インターフェロンα+リバビリン、およびペグ化インターフェロンα+リバビリンからなる群から選択される1つ以上の薬物を使用する治療にあまり反応しなかった患者であり得る。
【0054】
一実施態様において、慢性HCVインターフェロンは、上昇した肝臓酵素(例えばALT、AST)、持続的(例えば、6ヶ月超の)HCV RNAレベル、および/または肝臓障害、線維症、および/または硬変症の組織学的証拠によって顕在化される。一実施態様において、本明細書に提供される方法は、ALTおよびASTレベル等の高い肝臓酵素レベルを低下させる。肝臓酵素のレベルを測定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Jeong S. Y.らの文献(肝疾患を有する患者由来の血清中の細胞質アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの測定のためのサンドイッチELISA(Sandwich ELISA for measurement of cytosolic aspartate aminotransferase in sera from patients with liver diseases)(Clin Chem., 2003; 49(5):826 9))およびBurin des Roziers N.らの文献(血液ドナーにおける血清アラニンアミノトランスフェラーゼの測定のためのマイクロタイタープレートアッセイ(A microtiter plate assay for measurement of serum alanine aminotransferase in blood donors)(Transfusion., 1995; 35(4):331 4))を参照されたく、それらの各々は、すべての内容が全体として引用により本明細書中に組み込まれている)。一実施態様において、ALTもしくはAST等の高いレベルの1つ以上の肝臓酵素、または正常範囲を上回る高いレベルの肝臓酵素の総量は、約90%超または95%超低下する。一実施態様において、高いレベルのALTまたはASTなど、高いレベルの1つ以上の肝臓酵素、または高い肝臓酵素の総量は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%、少なくとも2%または少なくとも1%低下する。
【0055】
ある実施態様において、C型肝炎ウイルスに感染し、かつ正常な血清アミノトランスフェラーゼレベルを有する患者を治療する方法が、本明細書に提供される。HCV感染した初回血液ドナーおよび注射薬物ユーザーの最大60%が、正常レベルのALTを有することが報告されている(Straderらの文献(Hepatology, 39(4), 2004)参照)。一実施態様において、6ヶ月以上にわたって2回以上の測定で認可研究室での正常範囲にあると同定された場合、ヒトは、正常なALTレベルを有すると考えられる。正常なアミノトランスフェラーゼ値を有するものの生検が、症例の1〜10%における橋状の線維症または硬変症、およびより大きな割合での少なくとも門脈性の線維症を明らかにすることは、当技術分野で公知である(Straderらの文献(Hepatology, 39(4), 2004))。一実施態様において、本明細書に提供される化合物は、このような患者を治療する上で有用である。
【0056】
ある実施態様において、本明細書に提供される治療的有効量の化合物を投与することによって、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞におけるC型肝炎ウイルス(HCV)の複製を阻害する方法が、本明細書に提供される。ある実施態様において、該化合物の治療的有効量は、HCV複製における検出可能な低下を生じるのに十分な量である。一実施態様において、このような方法における使用のための化合物は、RO-113-0830である。HCV複製の検出のための方法は、当業者に公知であり、HCVレプリコンアッセイを含む。典型的なアッセイは、Pietschmann, T.らの文献(J. Virol. 76, 2002, 4008-4021)によって記載される。ある実施態様において、HCV複製は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%またはそれより多く阻害される。
【0057】
別の態様において、C型肝炎ウイルスに感染した患者におけるHCV複製を阻害する方法が、本明細書に提供される。方法は、本明細書に提供される有効量の化合物を患者へ投与する段階を包含する。一実施態様において、方法は、有効量のRO-113-0830を患者へ投与する段階を包含する。
【0058】
ある実施態様において、アルコール性肝炎の治療のための方法が提供される。アルコール性肝炎(脂肪性肝炎)は、脂肪肝と、散在性肝炎と、肝壊死、ある実施態様においては限局性壊死との組み合わせであり、すべては多様な程度の重度にある。
【0059】
一実施態様において、患者における肝線維症、小葉肝炎および/または門脈周囲橋状壊死を治療する方法が提供される。肝線維症は、ほとんどの種類の慢性肝疾患において生じるコラーゲンを含む細胞外マトリックスタンパク質の過度の蓄積である。ある実施態様において、進行した肝線維症は、硬変症および肝不全を結果的に生じる。一実施態様において、患者における肝線維症、小葉肝炎および/または門脈周囲橋状壊死のレベルを低下させる方法が提供される。線維症、小葉肝炎、および門脈周囲橋状壊死の程度における変化等の肝臓の組織構造を測定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、肝線維症についてのいくつかの非侵襲的検査は、Hepatology, 2006, 43(2):S113-S120に記載される。Hepatology, 2007, 45(1):242-249は、肝線維症の測定および治療を記載する。Wright M.らは、Gut. 2003; 52(4):574 9において、C型肝炎ウイルス感染における肝線維症の自然暦の測定および決定因子:横断的および縦断的研究(measurement and determinants of the natural history of liver fibrosis in hepatitis C virus infection: a cross sectional and longitudinal study)を記載する。これらの参考文献は各々、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書中に組み込まれている。ある実施態様において、肝線維症は、肝炎、化学的曝露、胆管閉塞、自己免疫疾患、肝臓、心臓および血管の障害からの血液の流出の閉塞、α1アンチトリプシン欠損症、高い血中ガラクトースレベル、高い血中チロシンレベル、糖原病、糖尿病、栄養失調症、ウィルソン病またはヘモクロマトーシスによって生じる。
【0060】
一実施態様において、線維組織の形成、類線維腫または線維変性である線維症のレベルは、約90%超低下する。一実施態様において、線維症のレベルは、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%または少なくとも2%低下する。
【0061】
一実施態様において、本明細書に提供される化合物は、線維形成のレベルを低下させる。肝線維形成は、線維症として公知の、肝臓における過剰量の細胞外マトリックス構成要素の沈着に至る過程である。肝線維形成は、慢性ウイルス性B型およびC型肝炎、アルコール性肝疾患、薬物誘発性肝疾患、ヘモクロマトーシス、自己免疫性肝炎、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝住血吸虫症およびその他等の多くの容態において観察される。一実施態様において、線維形成のレベルは、約90%超減少する。一実施態様において、線維形成のレベルは、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%または少なくとも2%低下する。
【0062】
一実施態様において、炎症細胞の病巣が小葉の類洞にも存在する場合、小葉肝炎のレベルは約99%または95%低下する。別の実施態様において、小葉肝炎のレベルは、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%、少なくとも2%または少なくとも1%低下する。さらに別の実施態様において、門脈周辺橋状壊死のレベルは約90%超低下する。さらに別の実施態様において、門脈周辺橋状壊死のレベルは、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%、少なくとも2%または少なくとも1%低下する。
【0063】
一実施態様において、硬変症の治療のための方法が本明細書に提供される。ある実施態様において、硬変症の症状には、門脈高血圧、異常な神経機能、腹水(腹腔における流体の蓄積)、男性における胸部肥大、喀血または吐血、指の湾曲(手掌のデュピュイトラン拘縮)、胆石、脱毛、痒、黄疸、腎不全、肝性脳症、筋肉損失、食欲不振、手掌の発赤、頬における唾液腺の肥大、精巣の縮小、皮膚における小さなくも状静脈、脱力、体重減少、くも状血管腫(多くの小さな分岐形成血管が広がる中心細動脈)、脳症、および固定姿勢保持困難(羽ばたき振戦)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。硬変症の症状は、重度および個体に応じて変動する。ある実施態様において、軽度の硬変症は、いずれの症状もまったく呈しないかもしれない。
【0064】
一実施態様において、硬変症の原因はC型肝炎である。他の実施態様において、硬変症の原因には、ある薬物の使用、化学的曝露、胆管閉塞、自己免疫疾患、肝臓からの血液の流出の閉塞(すなわち、バッド・キアリ症候群)、心臓および血管の障害、α1アンチトリプシン欠損症、高い血中ガラクトースレベル、高い血中チロシンレベル、糖原病、糖尿病、栄養失調症、非常に多い銅(ウィルソン病)または鉄(ヘモクロマトーシス)の遺伝性蓄積が含まれる。一実施態様において、硬変症の原因はアルコールの乱用である。
【0065】
一実施態様において、硬変症のレベルを低下させる方法が本明細書に提供される。一実施態様において、硬変症は、線維症および結節性再生を有しながら、正常な顕微鏡レベルの小葉構造を損失することによって病理学的に特徴付けられる。硬変症の程度を測定する方法は、当技術分野で周知である。一実施態様において、硬変症のレベルは約5〜100%低下する。一実施態様において、硬変症のレベルは、患者において少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低下する。
【0066】
ある実施態様において、硬変症の治療のための方法は、本明細書に提供されるMMP阻害剤の投与を包含し、但し、該MMP阻害剤はTMI-005以外である。
【0067】
ある実施態様において、原発性単純性肝硬変(PBC)の治療のための方法が本明細書に提供される。原発性胆汁性硬変症は、肝臓の内側の胆管の炎症で始まる。該炎症は、肝臓の外へ胆汁が流れるのを遮断し、従って、胆汁が肝細胞中に残留し、または血流へとあふれ出る。炎症が、胆管から肝臓の残りの部分へ拡大するにつれ、瘢痕組織の格子形成は、肝臓を通じて発達する。一実施態様において、方法は、35〜60歳の女性におけるPBCの治療のためのものである。ある実施態様において、PBCは、自己免疫障害によって生じる。一実施態様において、原発性胆汁性硬変症は、関節リウマチ、皮膚硬化症、または自己免疫性甲状腺炎と関連して生じる。本明細書に提供される方法は、原発性胆汁性硬変症の1つ以上の症状を治療する上で有用である。
【0068】
一実施態様において、肝臓虚血再灌流傷害の治療のための方法が本明細書に提供される。虚血は、肝臓移植、心原性または血行力学的ショック、および外傷または腫瘍のための肝臓切除などのいくつかの病理学的容態に応じて、肝臓において生じ得る。血液循環が再度確立される場合(再灌流)、酸素濃度の急速な増大は、活性酸素種の産生に至り、それが順に、肝臓における虚血再灌流(IR)傷害を結果的に生じる、肝細胞に関する全身性障害(壊死およびアポトーシスの両者)を生じる。ある実施態様において、肝臓虚血再灌流傷害の治療のための方法は、本明細書に提供されるMMP阻害剤の投与を包含し、但し、該MMP阻害剤はONO-4817以外である。ある実施態様において、肝臓虚血再灌流傷害の治療のための方法は、RO-113-0830の投与を包含する。
【0069】
当業者に公知であるように、肝細胞の過度のアポトーシスは、肝線維症および他の肝疾患と連関する。従って、過度のアポトーシスの肝細胞予防または抑制は、急性および慢性肝疾患の治療における重要な構成要素である。アポトーシスは、主として2つのシグナル伝達経路、すなわち細胞死受容体仲介性の外因性経路またはミトコンドリア仲介性の内因性経路を介して生じる。外因性経路は、細胞死受容体と呼ばれるサイトカイン受容体(腫瘍壊死因子受容体1(TNF-R1)、Fas/CD95、および腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導性リガンド受容体1および2(TRAIL-R1およびTRAIL-R2など)のファミリーの、サイトカイン受容体のコグネイトリガンド(TNF-、Fasリガンド(FasL)/CD95L、TRAIL)による関与後の細胞膜で始まる。Guicciardiらの文献(Gut, 2005: 54, 1024-1033)およびGhavamiらの文献(Med. Sci. Monit., 2005: 11(11): RA337-345)を参照されたい。ある実施態様において、本明細書に提供されるMMP阻害剤は、アポトーシスを予防しまたは抑制することによって、肝細胞の障害を遮断する。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物は、α-Fasのシグナル伝達カスケードを阻害する。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物は、TNF-αによって開始されるシグナル伝達カスケードを阻害する。具体的ないずれの理論とも結びつけられることなく、ある実施態様において、本明細書に提供される化合物による肝細胞の過度のアポトーシスの予防または抑制が、急性および/または慢性の肝疾患と関連した肝障害を低下させる一因となると信じられている。
【0070】
(5.4 化合物の調製)
本明細書に提供される方法における使用のための化合物は、Benderらの文献(米国特許第5,932,595号)、ならびにWatanabeの文献(米国特許第6,207,698号および第6,831,178号)に記載される手法を含む定型的な合成方法を使用することによって調製できる。RO-113-0830の調製のための典型的な方法は、実施例1に記載されている。
【0071】
(5.5 医薬組成物の製剤)
本明細書に提供される医薬組成物は、肝疾患の1つ以上の症状の予防、治療、または寛解に有用である、本明細書に提供される治療的有効量の1つ以上の化合物と、医薬として許容し得る担体とを含有する。
【0072】
化合物は、経口投与のための溶液、懸濁液、錠剤、分散可能な錠剤、ピル、カプセル、散剤、徐放性製剤またはエリキシル剤等の適切な医薬調製物へ、または非経口投与のための滅菌済みの溶液もしくは懸濁液に、ならびに経皮パッチ調製物および乾燥散剤吸入器に製剤される。一実施態様において、上述の化合物は、当技術分野で周知の技術および手法を使用して医薬組成物へ製剤される(例えば、Remingtonの文献(Remingtonの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(第20版, Mack Publishing, Easton PA (2000)))参照)。
【0073】
組成物において、効果的な濃度の1つ以上の化合物または医薬として許容し得る誘導体は、適切な医薬担体または媒体と混合される。化合物は、上述のような製剤の前に、対応する塩、エステル、酸、塩基、溶媒和化合物、水和物またはプロドラッグとして誘導体化され得る。組成物における化合物の濃度は、投与に際して、肝疾患の1つ以上の症状を治療し、予防し、または寛解させる量の送達のために効果的である。
【0074】
一実施態様において、組成物は、単回の薬用量投与のために製剤される。組成物を製剤するために、化合物の重量画分は、治療された容態が軽減されまたは寛解するような効果的な濃度で、選択された媒体において溶解され、懸濁され、分散しまたはそれに代わるものとして混合される。本明細書に提供される化合物の投与に適した医薬担体または媒体には、投与の具体的な様式に適するべき、当業者に公知のいずれかのこのような担体が含まれる。
【0075】
さらに、化合物は、組成物における単独の医薬活性のある成分として製剤され得、または他の活性成分と組み合わせられ得る。また、腫瘍標的化リポソーム等の組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液は、医薬として許容し得る担体として適し得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム製剤は、当技術分野で公知のように調製され得る。簡潔には、多重膜リポソーム(MLV)等のリポソームは、フラスコ内で卵ホスファチジルコリンおよび脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)を乾燥させることによって形成され得る。二価の陽イオンを欠失するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)における、本明細書に提供される化合物の溶液を添加し、脂質薄膜が分散するまでフラスコを振盪する。結果として生じる小胞を洗浄して、被包されていない化合物を除去し、遠心分離によってペレットにした後、PBSにおいて再懸濁する。
【0076】
活性のある化合物は、治療される患者に望ましくない副作用を及ぼさない状態で治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で、医薬として許容し得る担体に含まれる。治療的有効濃度は、当技術分野で公知のインビトロおよびインビボでのシステムにおいて化合物を検査することによって経験的に決定され得、その後、ヒトのための薬用量についてそこから推定できる。
【0077】
医薬組成物における活性のある化合物の濃度は、活性のある化合物の吸収、不活性化および排出の割合、化合物の物理化学的特徴、投薬スケジュール、および投与される量、ならびに当業者に公知の他の因子に依存するであろう。例えば、送達される量は、肝疾患の1つ以上の症状を寛解させるのに十分である。
【0078】
一実施態様において、治療的有効薬用量は、約0.1ng/mLから約50〜100μg/mLの活性成分の血清濃度を生じるべきである。ある実施態様において、医薬組成物は、1日あたり体重1kgあたり約0.001mg〜約2000mgの薬用量を提供すべきである。単位医薬剤形は、単位剤形あたり、約1mg〜約1000mgおよび約10〜約500mgの必須活性成分または必須活性成分の組み合わせを提供するよう調製される。
【0079】
活性成分は、1回で投与され得、または複数の時間間隔で投与されるよう、より少量の多くの用量へ分割され得る。治療に関する精確な薬用量および期間が、治療中の疾患と相関関係にあるものであり、公知の検査プロトコールを使用して、またはインビボもしくはインビトロでの検査データからの推定によって経験的に決定され得ることは理解される。また、濃度および薬用量の値が、緩和されるべき容態の重度によって変動し得ることは、注意されるべきである。具体的な患者にとって、特定の薬用量投与計画が、個体の需要および組成物の投与を管理しまたは監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきであり、本明細書に示される濃度範囲が、典型的であるにすぎないものであり、特許請求される組成物の範囲または実施を制限するよう企図されるものではないことはさらに理解されるべきである。
【0080】
医薬として許容し得る誘導体には、酸、塩基、塩、エステル、水和物、溶媒和化合物およびプロドラッグの形態が含まれる。誘導体は、薬物動態学的特性が、対応する中性化合物を上回るよう選択される。
【0081】
従って、有効な濃度または量の本明細書に記載される1つ以上の化合物または医薬として許容し得るその誘導体は、全身性の、局所性のまたは局所的な投与に適した医薬担体または媒体と混合され、医薬組成物を形成する。化合物は、肝疾患の1つ以上の症状を寛解させるために、または肝疾患を治療しもしくは予防するために効果的な量で含まれる。組成物における活性のある化合物の濃度は、活性のある化合物の吸収、不活性化、排出の割合、投薬スケジュール、投与される量、具体的な製剤および当業者に公知の他の因子に依存するであろう。
【0082】
組成物は、経口的、非経口的、直腸内、局所性または局所的を含む適切な経路によって投与されるよう企図される。経口投与について、カプセルおよび錠剤が使用できる。組成物は、液体、半液体または固体の形態にあり、各経路の投与に適した様式で製剤される。一実施態様において、投与の形式には、非経口および経口の投与様式が含まれる。ある実施態様において、経口投与が熟慮される。
【0083】
非経口的、皮内的、皮下的、または局所性の適用に使用される溶液または懸濁液には、以下の構成要素、すなわち注入用水、塩類溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミドまたは他の合成溶媒等の滅菌済みの希釈剤;ベンジルアルコールおよびメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸および重亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝液;ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロース等の、浸透圧の調整のための薬物のいずれかが含まれ得る。非経口調製物は、ガラス製の、プラスチック製のもしくは他の適切な材料でできたアンプル、使い捨てシリンジまたは単回用量もしくは複数回用量のバイアルに封入できる。
【0084】
化合物が、不十分な溶解度を呈する場合、化合物を可溶化する方法が使用され得る。このような方法は、当業者に公知であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の共溶媒を使用すること、TWEEN(登録商標)等の界面活性剤を使用すること、または重炭酸ナトリウム水溶液における溶解を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0085】
化合物の混合または添加の際、結果として生じる混合物は、溶液、懸濁液、乳濁液またはそれらの類似物であり得る。結果として生じる混合物の形態は、企図される投与様式および選択された担体または媒体における化合物の溶解度を含む多くの因子に依存する。有効濃度は、治療される疾患、障害または容態の症状を寛解させるのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0086】
医薬組成物は、適切な量の化合物または医薬として許容し得るその誘導体を含有する錠剤、カプセル、ピル、散剤、顆粒、滅菌済み非経口溶液または懸濁液、および経口溶液または懸濁液、および油-水乳濁液等の単位剤形でのヒトおよび動物への投与のために提供される。医薬として治療活性のある化合物およびその誘導体は、単位剤形または複合剤形で製剤されおよび投与される。本明細書で使用される単位剤形は、ヒトおよび動物の患者に適した物理的に別々の単位を指し、当技術分野で公知のように個々に包装される。各単位用量は、必要とされる医薬的な担体、媒体または希釈剤と共に、所望の治療効果を生じるのに十分なあらかじめ決められた量の治療活性のある化合物を含有する。単位剤形の例には、アンプルおよびシリンジおよび個々に包装された錠剤またはカプセルが含まれる。単位剤形は、その分数または倍数で投与され得る。複合剤形は、分離した単位剤形で投与されるために単一容器に包装された複数の同一単位剤形である。複合剤形の例には、バイアル、錠剤もしくはカプセルの瓶またはパイント瓶もしくはガロン瓶がある。それゆえ、複合剤形は、包装において分離されていない複数の単位剤形である。
【0087】
また、持続放出性製剤が調製可能である。徐放性製剤の適切な例には、マトリックスが、成形された物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態にある、本明細書に提供される化合物を含有する固体疎水性重合体の半透性マトリックスが含まれる。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタマートとの共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)等の分解性乳酸-グリコール酸共重合体、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸がある。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸等の重合体が、100日間を超えて分子を放出できる場合、あるヒドロゲルは、タンパク質をより短い時間放出する。封入された化合物が、体内に長時間残留する場合、37℃での水分への曝露の結果として該化合物が変性し得または凝集し得、結果的に生物活性の損失および該化合物の構造における起こり得る変化を生じる。合理的な戦略は、関係する作用の機構に依存する安定化について考案できる。例えば、凝集機構が、チオ-ジスルフィド相互変化を通じた分子間S-S結合形成であることが発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を調節すること、適切な添加物を使用すること、および特定の重合体マトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0088】
非毒性担体由来の平衡が形成されながら、0.005%〜100%の範囲で活性成分を含有する剤形または組成物が調製され得る。経口投与用に、医薬として許容し得る非毒性組成物は、例えば医薬級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、滑石、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムまたはサッカリンナトリウム等の通常採用される賦形剤のいずれかを組み込むことによって形成される。このような組成物には、以下に限定されるわけではないが、インプラントならびに微小封入された送達システム、ならびにコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびその他等の生分解性、生体適合性の重合体等の溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、散剤および徐放性製剤が含まれる。これらの組成物の調製のための方法は、当業者に公知である。熟慮される組成物は、0.001〜100%の活性成分を、一実施態様においては、0.1〜85%または75〜95%の活性成分を含有し得る。
【0089】
活性のある化合物または医薬として許容し得る誘導体は、徐効製剤またはコーティング等の、身体からの迅速な排除から化合物を保護する担体とともに調製され得る。
【0090】
組成物には、特性の所望の組み合わせを得るための他の活性のある化合物が含まれ得る。また、本明細書に提供される化合物または本明細書に記載の医薬として許容し得るその誘導体は、肝疾患を治療する上で価値があるよう、一般的な技術分野で公知の別の薬理学的薬物とともに、治療または予防の目的のために有利に投与され得る。このような組み合わせ治療法が、本明細書に提供される治療の組成物および方法のさらなる態様を構成することは理解されるべきである。
【0091】
(5.5.1 経口投与のための組成物)
経口医薬剤形は、固体、ゲルまたは液体のいずれかである。固体剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、および混合散剤である。経口錠剤の種類には、圧縮され咀嚼できる菱形トローチ剤および、腸溶性であり得、糖衣であり得またはフィルムコーティングされ得る錠剤が含まれる。カプセルは、硬質または軟質のゼラチンカプセルであり得るのに対し、顆粒および散剤は、当業者に公知の他の成分の組み合わせとともに、非発泡性のまたは発泡性の形態で提供され得る。
【0092】
ある実施態様において、製剤は、カプセルまたは錠剤等の固体剤形である。錠剤、ピル、カプセル、トローチ剤およびそれらの類似物は、以下の成分、すなわち結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味料、および調味料のいずれか、または同様の性質の化合物を含有し得る。
【0093】
結合剤の例には、結晶セルロース、トラガカントガム、グルコース溶液、アカシア粘液、ゼラチン溶液、ショ糖およびデンプンペーストがある。潤滑剤には、滑石、デンプン、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、ヒカゲノカズラおよびステアリン酸が含まれる。希釈剤には、例えば乳糖、ショ糖、デンプン、カオリン、塩、マンニトールおよびリン酸二カルシウムが含まれる。流動促進剤には、コロイド状二酸化ケイ素が含まれるが、それに限定されるわけではない。崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、アガーおよびカルボキシメチルセルロースが含まれる。着色料には、例えば認可され保証された水溶性FDおよびC色素のいずれか、それらの混合物;ならびにアルミナ水和物において懸濁された水不溶性FDおよびC色素が含まれる。甘味料には、ショ糖、乳糖、マンニトールおよびサッカリン等の人工甘味料、ならびにスプレー乾燥したかなり多数の香料が含まれる。調味料には、果実等の植物から抽出された天然香料、ならびに以下に限定されるわけではないがペパーミントおよびサリチル酸メチル等の気持ちのよい感覚を生じる化合物の合成配合物が含まれる。湿潤剤には、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウラルエーテル(polyoxyethylene laural ether)が含まれる。催吐性コーティングには、脂肪酸、脂肪、ワックス、セラック、アンモニア処理したセラックおよび酢酸フタル酸セルロースが含まれる。フィルムコーティングには、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000および酢酸フタル酸セルロースが含まれる。
【0094】
経口投与が望ましい場合、化合物は、胃の酸性環境から該化合物を保護する組成物で提供され得る。例えば、組成物は、胃の中で該組成物の統合性を維持する腸溶性製剤中に製剤できる。また、組成物は、制酸薬またはこのような他の成分との組み合わせで製剤され得る。
【0095】
薬用量単位形態がカプセルである場合、単位剤形は、上述の種類の材料に加えて、脂肪油等の液体担体を含有できる。さらに、薬用量単位形態は、薬用量単位の物理的形態を修飾する他のさまざまな材料、例えば糖衣および他の腸溶性製剤を含有できる。また、化合物は、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハー、ふりかけ、チューインガムまたはそれらの類似物の構成要素として投与できる。シロップは、活性のある化合物に加えて、甘味料としてのショ糖ならびに、ある保存料、色素および着色料ならびに香料を含有し得る。
【0096】
また、活性材料は、所望の作用を損なわない他の活性材料と、または制酸薬、H2遮断薬、および利尿薬等の、所望の作用を補充する材料と混合できる。活性成分は、本明細書に記載される化合物または医薬として許容し得るその誘導体である。より高い濃度、すなわち最大約98重量%の活性成分が含まれ得る。
【0097】
錠剤に含まれる医薬として許容し得る担体は、結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、調味料、および湿潤剤である。腸溶性製剤のため、腸溶錠は、胃酸の作用に耐性があり、中性またはアルカリ性の腸において溶解しまたは崩壊する。糖衣錠は、異なる層の医薬として許容し得る物質が適用される圧縮された錠剤である。フィルムコーティングされた錠剤は、重合体または他の適切なコーティングでコーティングされた圧縮された錠剤である。多重圧縮された錠剤は、すでに記述された医薬として許容し得る物質を利用する2回以上の圧縮周期によって製剤される圧縮された錠剤である。また、着色料は、上述の剤形において使用され得る。香料および甘味料は、圧縮された錠剤、糖衣錠、多重圧縮されおよび咀嚼可能な錠剤において使用される。香料および甘味料は、咀嚼可能な錠剤および菱形トローチ剤において特に有用である。
【0098】
液体の経口剤形には、水溶液、乳濁液、懸濁液、溶液および/または非発泡性顆粒から再構成された懸濁液ならびに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が含まれる。水溶液には、例えばエリキシル剤およびシロップが含まれる。乳濁液は、水中油または油中水のいずれかである。
【0099】
エリキシル剤は、透明で甘くした水アルコール調製物である。エリキシル剤に使用される医薬として許容し得る担体には、溶媒が含まれる。シロップは、糖、例えばショ糖の濃縮された水溶液であり、保存料を含有し得る。乳濁液は、1つの液体が別の液体を通じて小球の形態で分散した2相系である。乳濁液において使用される医薬として許容し得る担体は、非水性液体、乳化剤および保存料である。懸濁液は、医薬として許容し得る懸濁剤および保存料を使用する。液体経口剤形へ再構成されるために非発泡性顆粒において使用される医薬として許容し得る物質には、希釈剤、甘味料および湿潤剤が含まれる。液体経口剤形へ再構成されるために発泡性顆粒において使用される医薬として許容し得る物質には、有機酸および二酸化炭素源が含まれる。着色料および香料は、上述の剤形すべてにおいて使用される。
【0100】
溶媒には、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコールおよびシロップが含まれる。保存料の例には、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウムならびにアルコールが含まれる。乳濁液において利用される非水性液体の例には、鉱物油および綿実油が含まれる。乳化剤の例には、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の界面活性剤が含まれる。懸濁剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、ビーガム(Veegum)およびアカシアが含まれる。希釈剤には、乳糖およびショ糖が含まれる。甘味料には、ショ糖、シロップ、グリセリン、およびサッカリン等の人工甘味料が含まれる。湿潤剤には、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが含まれる。有機酸には、クエン酸および酒石酸が含まれる。二酸化炭素源には、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが含まれる。着色料には、認可され認定された水溶性FDおよびC色素のいずれか、ならびにそれらの混合物が含まれる。香料には、果実等の植物から抽出された天然香料、および気持ちのよい味覚を生じる化合物の合成配合物が含まれる。
【0101】
固体剤形のために、例えば炭酸プロピレン、植物油またはトリグリセリド中にある溶液または懸濁液は、ゼラチンカプセルに封入できる。このような溶液、ならびにその調製物および封入物は、米国特許第4,328,245号、第4,409,239号、および第4,410,545号に開示される。液体剤形のために、例えばポリエチレングリコール中にある溶液は、投与のために容易に測定されるよう、十分量の医薬として許容し得る液体担体、例えば水で希釈され得る。
【0102】
あるいは、液体または半固体の経口製剤は、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)およびこのような他の担体において活性のある化合物または塩を溶解しまたは分散させ、かつ硬質または軟質ゼラチンカプセルシェル中にこれらの溶液または懸濁液を封入することによって調製され得る。他の有用な製剤には、本明細書に提供される化合物を含有するもの、以下に限定されるわけではないが、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(350、550および750は、ポリエチレングリコールの概算平均分子量を指す)を含むジアルキル化モノまたはポリアルキレングリコール、ならびにブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸およびそのエステル等の1つ以上の抗酸化剤、ならびにジチオカルバマートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0103】
他の製剤には、医薬として許容し得るアセタールを含むアルコール水溶液が含まれるが、それに限定されるわけではない。これらの製剤において使用されるアルコールは、以下に限定されるわけではないが、プロピレングリコールおよびエタノールを含む1つ以上のヒドロキシル基を有する、医薬として許容し得る水混和性溶媒である。アセタールには、アセトアルデヒドジエチルアセタール等の低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタールが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0104】
すべての実施態様において、錠剤およびカプセル製剤は、活性成分の溶解を修飾しまたは持続させるために、当業者によって公知のとおりコーティングされ得る。従って、例えば、該錠剤およびカプセル製剤は、フェニルサリチラート、ワックスおよび酢酸フタル酸セルロース等の従来の腸消化性コーティングでコーティングされ得る。
【0105】
(5.5.2 注射物、溶液および乳濁液)
また、皮下的、筋肉内または静脈内のいずれかでの注射によって一般的に特徴付けられる非経口投与は、本明細書で熟慮される。注射物は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前の液体における溶液もしくは懸濁液に適した固体形態、または乳濁液のいずれかとして、従来の形態で調製できる。適切な賦形剤は例えば、水、塩類溶液、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。さらに、所望の場合、投与されるべき医薬組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解度増強剤、ならびにこのような他の薬物など、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリンなど、少量の非毒性補助物質を含有し得る。また、定常レベルの薬用量が維持されるような遅放性(slow-release)または徐放性の系の埋め込みは、本明細書で熟慮される。簡潔には、本明細書に提供される化合物は、固体内側マトリックス、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリテレフタル酸エチレン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲル等の親水性重合体、コラーゲン、架橋されたポリビニルアルコールならびに、外側重合体膜、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレンとの塩化ビニル共重合体によって取り囲まれている、架橋された部分的に加水分解された酢酸ポリビニル、イオノマーテレフタル酸ポリエチレン、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体、および体液において不溶性であるエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体において分散される。化合物は、放出速度制御段階において外側重合体膜を通じて拡散する。このような非経口組成物において含有される活性のある化合物の割合は、その固有の性質ならびに化合物の活性および患者の需要に非常に依存する。
【0106】
組成物の非経口投与には、静脈内、皮下および筋肉内投与が含まれる。非経口投与の調製物には、注射のために用意された滅菌済み溶液、使用直前に溶媒と組み合わされるよう用意された、皮下注射用錠剤を含む凍結乾燥散剤等の滅菌済み乾燥可溶性製剤、注射のために用意された滅菌済み懸濁液、使用直前に媒体と組み合わされるよう用意された滅菌済み乾燥不溶性製剤、および滅菌済み乳濁液が含まれる。溶液は、水性または非水性のいずれかであり得る。
【0107】
静脈内投与される場合、適切な担体には、生理学的塩類溶液またはリン酸緩衝塩類溶液(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールならびにそれらの混合物など、増粘剤および可溶化剤を含有する溶液が含まれる。
【0108】
非経口調製物において使用される医薬として許容し得る担体には、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張液、緩衝液、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、ならびに医薬として許容し得る他の物質が含まれる。
【0109】
水性媒体の例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロースおよび乳酸リンゲル注射液が含まれる。非水性非経口媒体には、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油およびピーナツ油が含まれる。静菌性または静真菌性濃度における抗菌剤は、フェノールまたはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む複数回用量の容器において包装された非経口調製物へ添加されなければならない。等張液には、塩化ナトリウムおよびデキストロースが含まれる。緩衝液には、リン酸塩およびクエン酸塩が含まれる。抗酸化剤には、重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔剤には、塩酸プロカインが含まれる。懸濁および分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。乳化剤には、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が含まれる。金属イオンの金属イオン封鎖剤またはキレート剤には、EDTAが含まれる。また、医薬担体には、水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸が含まれる。
【0110】
医薬として活性のある化合物の濃度は、注射が、所望の薬理学的効果を生じるための有効量を提供するよう調整される。実際の用量は、当技術分野で公知のように、患者または動物の齢、体重および容態に依存する。
【0111】
単位用量の非経口調製物は、アンプル、バイアルまたは針つきシリンジにおいて包装される。非経口投与のためのすべての調製物は、当技術分野で公知でありかつ実施されるように、滅菌済みでなければならない。
【0112】
実例として、活性のある化合物を含有する滅菌済みの水溶液の静脈内または動脈内注入は、効果的な様式の投与である。別の実施態様は、所望の薬理学的効果を生じるのに必要であるとして注射される活性のある材料を含有する滅菌済みの水性または油性の溶液または懸濁液である。
【0113】
注射物は、局所的および全身性の投与のために設計される。ある実施態様において、治療的有効薬用量は、治療される組織に対して、少なくとも約0.1〜90%(w/w)以上、または1%(w/w)超の濃度の活性のある化合物を含有するよう製剤される。活性成分は、1回で投与され得、または複数の時間間隔で投与されるよう、より少量の多くの用量へ分割され得る。治療に関する精確な薬用量および治療期間が、治療中の組織と相関関係にあるものであり、公知の検査プロトコールを使用して、またはインビボもしくはインビトロでの検査データからの推定によって経験的に決定され得ることは理解される。また、濃度および薬用量の値が、治療される個体の齢とともに変動し得ることは、注意されるべきである。具体的な患者にとって、特定の薬用量投与計画が、個体の需要および製剤の投与を管理しまたは監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきであり、本明細書に示される濃度範囲が、典型的であるにすぎないものであり、特許請求される製剤の範囲または実施を制限するよう企図されるものではないことはさらに理解されるべきである。
【0114】
化合物は、微粒子化されたもしくは他の適切な形態で懸濁され得、またはより可溶性の活性のある製剤を生じるためにもしくはプロドラッグを生じるために誘導体化され得る。結果として生じる混合物の形態は、企図される投与様式および選択された担体または媒体における化合物の溶解度を含む多くの因子に依存する。有効濃度は、治療される容態の症状を寛解させるのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0115】
(5.5.3 凍結乾燥した散剤)
また、溶液、乳濁液および他の混合物として投与のために再構成できる凍結乾燥した散剤は、本明細書の関心対象である。また、該散剤は、固体またはゲルとして再構成され得及び製剤され得る。
【0116】
滅菌済みの凍結乾燥した散剤は、適切な溶媒において、本明細書に提供される化合物または医薬として許容し得るその誘導体を溶解することによって調製される。溶媒は、散剤または散剤から調製される再構成された溶液の安定性または他の薬理学的構成要素を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤には、デキストロース、ソルビタル(sorbital)、果糖、トウモロコシシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、ショ糖または他の適切な薬物が含まれる。また、溶媒は、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはカリウム等の緩衝液、またはおよそ中性のpHで当業者に公知のこのような他の緩衝液を含有し得る。溶液のその後の濾過滅菌の後の当業者に公知の標準的な条件下での凍結乾燥によって、所望の製剤が提供される。一般的に、結果として生じる溶液は、凍結乾燥のためのバイアルへ配分されるであろう。各バイアルは、単回薬用量(10〜1000mgまたは100〜500mg)または複数回薬用量の化合物を含有するであろう。凍結乾燥した散剤は、約4℃〜室温等の適切な条件下で保存できる。
【0117】
注射のためにこの凍結乾燥した散剤を水で再構成すると、非経口投与において使用するための製剤が提供される。再構成のために、約1〜50mg、5〜35mgまたは約9〜30mgの凍結乾燥した散剤が、1mLの滅菌水または他の適切な担体につき添加される。精確な量は、選択された化合物に依存する。このような量は、経験的に決定できる。
【0118】
(5.5.4 局所性投与)
局所性混合物は、局所的および全身性の投与について記載されるように調製される。結果として生じる混合物は、溶液、懸濁液、乳濁液またはそれらの類似物であり得、クリーム、ゲル、軟膏、乳濁液、溶液、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、発泡剤、エアロゾル、灌流剤、スプレー、坐剤、包帯、皮膚パッチまたは局所性投与に適した他の製剤である。
【0119】
化合物または医薬として許容し得るその誘導体は、吸入によるなど、局所性適用のためのエアロゾルとして製剤され得る(例えば、炎症性疾患、特に喘息の治療のために有用なステロイドの送達のためのエアロゾルを記載する米国特許第4,044,126号、第4,414,209号、および第4,364,923号参照)。気道への投与のためのこれらの製剤は、噴霧器のためのエアロゾルもしくは溶液の形態で、または通気のための超微粒子散剤として、単独でまたは、乳糖等の不活性担体と組み合わせであり得る。このような場合、製剤の粒子の直径は、50ミクロン未満または10ミクロン未満であろう。
【0120】
化合物は、ゲル、クリーム、およびローションの形態での、眼などにおける皮膚および粘膜への局所性適用のためなどの局所的または局所性適用のために、ならびに眼への適用のためにまたは槽内もしくは脊柱管内適用のために製剤され得る。局所性適用は、経皮的送達のために、また眼もしくは粘膜への投与のために、または吸入治療法のために熟慮される。また、単独でありまたは医薬として許容し得る他の賦形剤との組み合わせにある活性のある化合物の経鼻溶液が投与できる。
【0121】
これらの溶液、特に眼科的使用のために企図されたものは、適切な塩を有する0.01〜10%等張性溶液、pH約5〜7として製剤され得る。
【0122】
(5.5.5 他の経路の投与のための組成物)
また、局所性適用、経皮パッチ、および直腸内投与等の他の経路の投与は、本明細書で熟慮される。
【0123】
例えば、直腸内投与のための医薬剤形は、全身性効果のための肛門坐剤、カプセルおよび錠剤である。本明細書で使用される肛門坐剤は、1つ以上の薬理学的にまたは治療的に活性のある成分を放出する体温で融解しまたは軟化する、直腸への挿入のための固体本体を意味する。肛門坐剤において利用される医薬として許容し得る物質は、融点を上昇させるための基剤または媒体および薬物である。基剤の例には、ココアバター(テオブロマ油)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)ならびに脂肪酸のモノ、ジおよびトリグリセリドの適切な混合物が含まれる。多様な基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上昇させるための薬物には、鯨蝋またはワックスが含まれる。肛門坐剤は、圧縮された方法によってまたは成形によってのいずれかで調製され得る。ある実施態様において、肛門坐剤の重量は、約2〜3gである。
【0124】
直腸内投与のための錠剤およびカプセルは、経口投与のための製剤と同一の、医薬として許容し得る物質を使用して、および該製剤のためのものと同一の方法によって製造される。
【0125】
(5.5.6 徐放性組成物)
本明細書に提供される化合物等の活性成分は、放出制御手段によって、または当業者に周知である送達装置によって投与できる。例には、各々が引用により本明細書に組み込まれている米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、第5,639,480号、第5,733,566号、第5,739,108号、第5,891,474号、第5,922,356号、第5,972,891号、第5,980,945号、第5,993,855号、第6,045,830号、第6,087,324号、第6,113,943号、第6,197,350号、第6,248,363号、第6,264,970号、第6,267,981号、第6,376,461号、第6,419,961号、第6,589,548号、第6,613,358号および第6,699,500号に記載されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。このような剤形は、変動する割合で所望の放出特性を提供するために、例えばヒドロプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせを使用して、1つ以上の活性成分の遅放性または放出制御を提供するために使用できる。本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の適切な放出制御製剤は、本明細書に提供される活性成分とともに使用するために容易に選択できる。従って、提供される組成物は、放出制御に適した錠剤、カプセル、ゲルキャップ(gelcap)、およびキャップレッツ等の、経口投与に適した単一の単位剤形を包含するが、それらに限定されるわけではない。
【0126】
すべての放出制御医薬製剤は、それらの制御されていない対応物によって達成されるものを上回って薬物治療法を改善する共通の目的を有する。理想的には、医学的治療における最適に設計された放出制御調製物の使用は、最小量の時間で容態を治癒させまたは制御するために採用されている最小の薬物を特徴とする。放出制御製剤の利点には、薬物の延長された活性、低下した投薬頻度、および増大した患者の服薬順守が含まれる。さらに、放出制御製剤は、作用の開始時または薬物の血中レベル等の他の特徴に影響を及ぼすよう使用でき、従って、(例えば、有害な)副作用の発生に影響を及ぼすことが可能である。
【0127】
ほとんどの放出制御製剤は、所望の治療効果を迅速に生じるある量の薬物(活性成分)を最初に放出し、延長された時間にわたってこのレベルの治療的または予防的効果を維持するよう他の量の薬物を徐々にかつ持続的に放出するよう設計される。身体においてこの定常レベルの薬物を維持するために、薬物は、代謝されており身体から排出されている薬物の量を置換するであろう速度で、剤形から放出されなければならない。活性成分の放出制御は、pH、温度、酵素、水、または他の生理学的な条件もしくは化合物を含むがそれらに限定されるわけではない多様な条件によって刺激されることができる。
【0128】
ある実施態様において、薬物は、静脈内注入、埋め込み可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の様式の投与を使用して投与され得る。一実施態様において、ポンプが使用され得る(Seftonの文献(CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987))、Buchwaldらの文献(Surgery 88:507 (1980))、Saudekらの文献(N. Engl. J. Med. 321:574 (1989))参照)。別の実施態様において、重合体材料が使用されることができる。さらに別の実施態様において、放出制御系は、当業者によって決定される適切な部位で患者に配置されることができ、すなわち、従って全身性用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodsonの文献(放出制御の医学的応用第2巻(Medical Applications of Controlled Release, vol. 2), pp. 115-138 (1984)参照)。他の放出制御の系は、Langerの文献(Science 249:1527-1533 (1990))による総説において論議される。活性成分は、固体内側マトリックス、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリテレフタル酸エチレン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲル等の親水性重合体、コラーゲン、架橋されたポリビニルアルコールならびに、外側重合体膜、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレンとの塩化ビニル共重合体によって取り囲まれている、架橋された部分的に加水分解された酢酸ポリビニル、イオノマーテレフタル酸ポリエチレン、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体、および体液において不溶性であるエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体において分散されることが可能である。次に、活性成分は、放出速度制御段階において外側重合体膜を通じて拡散する。このような非経口組成物における活性成分の割合は、その固有の性質および患者の需要に非常に依存する。
【0129】
(5.5.7 標的化製剤)
また、本明細書に提供される化合物、または医薬として許容し得るその誘導体は、治療されるべき患者の身体の具体的な組織、受容体、または他の領域を標的とするよう製剤され得る。このような多くの標的指向化方法は、当業者に周知である。このような標的化方法はすべて、本組成物における使用のために、本明細書で熟慮される。標的化方法に関する制限のない例については、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号および第5,709,874号を参照されたい。
【0130】
また、一実施態様において、腫瘍標的化リポソーム等の組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液は、医薬として許容し得る担体として適し得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム製剤は、米国特許第4,522,811号において記載されるように調製され得る。簡潔には、多重膜リポソーム(MLV)等のリポソームは、フラスコ内で卵ホスファチジルコリンおよび脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)を乾燥させることによって形成され得る。二価の陽イオンを欠失するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)における、本明細書に提供される化合物の溶液を添加し、脂質薄膜が分散するまでフラスコを振盪する。結果として生じる小胞を洗浄して、被包されていない化合物を除去し、遠心分離によってペレットにした後、PBSにおいて再懸濁する。
【0131】
(5.5.8 薬用量および単位剤形)
ヒトの治療において、医師は、予防的または治癒的治療に従って、ならびに齢、体重、疾患の段階および治療されるべき患者に特異的な他の因子に従って、ほとんど適宜考慮する薬量学的量を決定するであろう。一般的には、用量は、成人1名に対して1日あたり約1〜約1000mgであり、または成人1名に対して1日あたり約5〜約250mgでありもしくは1日あたり約10〜50mgである。ある実施態様において、用量は、成人1名につき1日あたり約5〜約400mgであり、または1日あたり25〜200mgである。また、1日あたり約50〜約500mgの用量率が熟慮される。
【0132】
ある実施態様において、肝疾患または1つ以上のその症状の予防または治療において有効であろう化合物または組成物の量は、疾患または容態の性質および重度、ならびに活性成分が投与される経路とともに変動するであろう。また、頻度および薬用量は、投与される特定の治療法(例えば、治療用または予防用薬物)、障害、疾患、または容態の重度、投与の経路、ならびに患者の齢、体重、反応、および過去の病歴に応じた、各患者に固有の因子に従って変動するであろう。効果的な用量は、インビトロ又は動物モデル検査系に由来する用量反応曲線から推定され得る。
【0133】
組成物の典型的な用量には、患者または試料重量1kgあたりmgまたはμgの量のMMP阻害剤が含まれる(例えば、約10μg/kg〜約50mg/kg、約100μg/kg〜約25mg/kg、または約100μg/kg〜約10mg/kg)。ある実施態様において、患者へ投与される薬用量は、0.20mg/患者の体重kg〜2.00mg/kg、または0.30mg/kg〜1.50mg/kgである。
【0134】
ある実施態様において、本明細書に記載される容態についての本明細書に記載されるMMP阻害剤に関する推奨1日量範囲は、1日あたり約0.1〜約1000mgの範囲内にあり、1日1回の単回用量として、または1日を通じての分割された用量として付与される。一実施態様において、1日量は、等しく分割された用量で1日2回投与される。より具体的には、1日量の範囲は、1日あたり約10〜約200mg、より具体的には1日あたり約10〜約150mg、またはさらにより具体的には1日あたり約25〜100mgであるべきである。当業者に明らかであろうように、いくつかの場合において、本明細書に開示される範囲外で薬用量の活性成分を使用することは必要であり得る。さらに、臨床医または治療する医師が、患者の反応に関連して、治療法をどのようにおよびいつ中断し、調整し、または終止するかを知っているであろうことは留意される。
【0135】
異なる治療的有効量は、当業者に容易に公知であろうように、異なる疾患および容態に適用可能であり得る。また、同様に、このような障害を予防し、管理し、治療しまたは寛解させるのに十分だが、本明細書に記載される化合物と関連した有害な効果を生じるのに不十分な、または該効果を低下させるのに十分な量は、上述の薬用量および用量頻度スケジュールによって包含される。さらに、患者が、本明細書に記載される化合物の複数の薬用量を投与される場合、薬用量がすべて同一である必要があるとは限らない。例えば、患者へ投与される薬用量は、化合物の予防的または治療的効果を改善するよう増大され得、または具体的な患者が経験している1つ以上の副作用を低下させるために減少され得る。
【0136】
一実施態様において、患者において障害または1つ以上のその症状を予防し、治療し、管理し、または寛解させるために投与される、本明細書に記載される化合物の薬用量は、患者の体重の0.1mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、または15mg/kg以上である。別の実施態様において、患者において障害または1つ以上のその症状を予防し、治療し、管理し、または寛解させるために投与される、本明細書に提供される化合物の薬用量は、0.1〜200mg、0.1〜100mg、0.1〜50mg、0.1〜25mg、0.1〜20mg、0.1〜15mg、0.1〜10mg、0.1〜7.5mg、0.1〜5mg、0.1〜2.5mg、0.25〜20mg、0.25〜15mg、0.25〜12mg、0.25〜10mg、0.25〜7.5mg、0.25〜5mg、0.5〜2.5mg、1〜20mg、1〜15mg、1〜12mg、1〜10mg、1〜7.5mg、1〜5mg、または1〜2.5mgの単位用量である。
【0137】
ある実施態様において、治療または予防は、本明細書に提供されるMMP阻害剤および/またはカスパーゼ阻害剤の1回以上の負荷用量の後の1回以上の維持用量で開始できる。このような実施態様において、負荷用量は、例えば、1日あたり約60〜約400mg、または1日あたり約100〜約200mgを1日〜5週間であり得る。負荷用量の後に、1回以上の維持用量が続くことができる。別の実施態様において、各維持用量は、独立して、1日あたり約0.1〜約200mgであり得、一実施態様において、1日あたり約5〜約150mgであり得、別の実施態様において、1日あたり約10〜約80mgであり得、別の実施態様において、1日あたり約10〜約200mgであり得、別の実施態様において1日あたり約25〜約150mgであり得、またはさらに別の実施態様において、1日あたり約25〜約80mgであり得る。維持用量は、毎日投与でき、単回用量として、または分割された用量として投与できる。
【0138】
ある実施態様において、本明細書に提供されるMMP阻害剤の用量は、患者の血液または血清における活性成分の定常状態濃度に到達するよう投与できる。定常状態濃度は、当業者に利用可能な技術に従った測定によって決定でき、または身長、体重および齢等の患者の身体特徴に基づき得る。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物の十分量は、患者の血液または血清における約300〜約4000ng/mL、約400〜約1600ng/mL、または約600〜約1200ng/mLの定常状態濃度に到達するよう投与される。負荷する用量は、約1200〜約8000ng/mL、または約2000〜約4000ng/mLの定常状態の血液または血清の濃度に1〜5日間到達するよう投与できる。維持用量は、約300〜約4000ng/mL、約400〜約1600ng/mL、または約600〜約1200ng/mLの患者の血液または血清における定常状態濃度に到達するよう投与できる。
【0139】
ある実施態様において、同一の化合物の投与は反復され得、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間、または6ヶ月間分離され得る。他の実施態様において、同一の予防薬または治療薬の投与は反復され得、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間、または6ヶ月間分離され得る。
【0140】
ある態様において、投与に適した形態にある化合物または医薬として許容し得るその誘導体を含む単位薬用量が、本明細書に提供される。このような形態は、上述に詳細に記載される。ある実施態様において、単位薬用量は、1〜1000mg、5〜250mgまたは10〜50mgの活性成分を含む。具体的な実施態様において、単位薬用量は、約1、5、10、25、50、100、125、250、500または1000mgの活性成分を含む。このような単位薬用量は、当業者に熟知された技術に従って調製できる。
【0141】
(5.5.9 製造品)
化合物または医薬として許容し得る誘導体は、包装材料、肝疾患と関連した1つ以上の症状の治療、予防または寛解のために使用される、本明細書に提供される化合物または医薬として許容し得るその誘導体、および化合物または医薬として許容し得るその誘導体が、肝疾患の1つ以上の症状の治療、予防または寛解のために使用されることを示すラベルを含有する製造品として包装できる。
【0142】
本明細書に提供される製造品は、包装材料を含有する。医薬製品を包装する上で使用するための包装材料は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号および第5,033,252号を参照されたい。医薬包装材料の例には、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶、ならびに選択された製剤と投与および治療の企図された様式とに適した包装材料が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本明細書に提供される化合物および組成物に関する多様な製剤が熟慮される。
【0143】
(5.6 化合物の活性の評価)
化合物の生物活性は、当業者に公知の方法によって示されることができる。例えば、Neil Kaplowitzは、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれているAmerican Association for the Study of Liver Diseases(2006)によって刊行された肝損傷における機構および新生治療薬(Mechanisms in Liver Injury and Emerging Therapeutics)において急性肝損傷のためのマウスモデルをすでに記載した。
【0144】
TNF-αは、慢性HCVおよび急性肝不全等の多様な急性および慢性肝疾患において肝損傷を誘導する上で関係するサイトカインである。TNF-α誘発性損傷に対する薬理学的薬物を検査するための典型的なインビボモデルは、マウスにおける肝損傷のTNF-α/D-Galモデルである。このモデルにおいて、マウスはTNF-α/D-Galで処置され、化合物は、肝障害から保護する該化合物の能力を評価するために投与される。化合物は、TNF-α/D-Galによる処置の前、処置時または処置後のいずれかで投与された後、約6時間追跡される。このモデルが6時間後まで持続できることは、化合物処置によって生じる改善された生存を決定するために使用される変量である。
【0145】
複数の結果測定が本評価のために使用される。これらのうちの1つは、血中の肝臓酵素ALTのレベルの測定値である。高いALTレベルは、多様な肝疾患を罹患している患者の血液において定型的に観察される。ALT測定値は、患者における肝疾患の程度についての非常に一般的かつ関連性のある臨床検査値である。第二の測定は、肝障害の肉眼での組織学的評価を包含する。肝障害の程度は、訓練された観察者によって調製され顕微鏡で評価される肝臓試料を検討することによって等級分けできる。ある実施態様において、肝損傷は、死亡を生じるものとして十分に重症であり得る。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、これらのパラメータによって決定されるように、TNF-α/D-Gal誘発性肝損傷から保護する。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、これらのパラメータによって決定されるように、Fas誘発性肝損傷から保護する。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物は、胆管結紮における肝損傷および肝線維症の低下を示す。
【0146】
肝損傷に関する他のモデルには、肝損傷のLPS/D-Galモデル、α-Fas誘発性肝損傷モデルおよびCon Aモデルが含まれる。また、これらのモデルは、ヒトの疾患と関連性がある。3つのモデルはすべて、互いに相補的である。
【0147】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物は、HCVレプリコンアッセイにおけるHCV複製の阻害を示す。
【0148】
(6.組み合わせ治療法)
ある実施態様において、本明細書に提供されるMMP阻害剤は、肝疾患を治療することが公知の1つ以上の第二の薬物との組み合わせで投与される。第二の薬物の薬用量は、当技術分野で公知の組み合わせ治療法において使用されるべきものである。ある実施態様において、B型またはC型肝炎等の肝疾患を予防しまたは治療するのに使用されたまたは現行で使用されているものよりも低い薬用量が、本明細書に提供される組み合わせ治療法において使用される。第二の薬物の推奨される薬用量は、当業者の知識から得られることができる。臨床上の使用のために認可される該第二の薬物について、推奨される薬用量は、例えばそれらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれているSchiffの文献(Schiffの肝疾患第10版(Schiff s Diseases of the Liver 10th edition)((2006), Lippincott, Williams and Wilkins))、Hardmanらの文献(1996, GoodmanおよびGilmanの治療薬の基礎の薬理学的基礎第9版(Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th Ed)(Mc-Graw-Hill, New York))、医師用卓上参考書第57版(Physician's Desk Reference (PDR) 57th Ed.)(2003, Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJ)に記載される。
【0149】
多様な実施態様において、治療法(例えば、本明細書に提供される化合物および第二の薬物)は、5分未満離れて、30分未満離れて、1時間離れて、約1時間離れて、約1〜約2時間離れて、約2〜約3時間離れて、約3〜約4時間離れて、約4〜約5時間離れて、約5〜約6時間離れて、約6〜約7時間離れて、約7〜約8時間離れて、約8〜約9時間離れて、約9〜約10時間離れて、約10〜約11時間離れて、約11〜約12時間離れて、約12〜約18時間離れて、18〜24時間離れて、24〜36時間離れて、36〜48時間離れて、48〜52時間離れて、52〜60時間離れて、60〜72時間離れて、72〜84時間離れて、84〜96時間離れて、または96〜120時間離れて投与される。ある実施態様において、2つ以上の治療法は、患者の同一の訪問内に投与される。
【0150】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物および第二の薬物は、周期的に投与される。周期的治療法は、ある時間の第一の治療法(例えば、第一の予防薬または治療薬)の投与、次いで、ある時間の第二の治療法(例えば、第二の予防薬または治療薬)の投与、次いで、ある時間の第三の治療法(例えば、第三の予防薬または治療薬)の投与など、および薬物の1つに対する耐性の発達を低下させるための、薬物のうちの1つの副作用を回避しまたは低下させるための、および/または治療の効能を改善するためのこの連続的な投与を反復すること、すなわち周期を包含する。
【0151】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物および第二の薬物は、患者、例えばヒトなどの哺乳動物へ、本明細書に提供される化合物が他の薬物とともに作用して、別の方法で投与された場合よりも大きな利益を提供できるよう、連続してかつある時間間隔内で投与される。例えば、活性のある第二の薬物は、同時にまたは異なる時点でいずれかの順序で連続して投与できるが、同時に投与されない場合、該化合物および該第二の薬物は、所望の治療的または予防的効果を提供するよう、時間的に十分に近接して投与されるべきである。一実施態様において、本明細書に提供される化合物および活性のある第二の薬物は、重複する時点で該化合物および該第二の薬物の効果を発揮する。活性のある第二の薬物は各々、適切な形態でかつ適切な経路によって別個に投与できる。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物は、活性のある第二の薬物の投与の前、投与と同時にまたは投与後に投与される。
【0152】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物および活性のある第二の薬物は、約3週間未満、2週間ごとに約1回、10日間ごとに約1回または毎週約1回の周期で投与される。1つの周期は、周期ごとに約90分間、周期ごとに約1時間、周期ごとに約45分間の注入による、本明細書に提供される化合物および第二の薬物の投与を含み得る。各周期は、少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止を含むことができる。投与される周期の数は、約1〜約12周期、より典型的には約2〜約10周期、およびより典型的には約2〜約8周期である。
【0153】
ある実施態様において、同一の薬物の投与は反復され得、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間、または6ヶ月間分離され得る。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物および第二の薬物は、約2〜4日間離れて、約4〜6日間離れて、約1週間離れて、約1〜2週間離れて、又は2週間超離れて投与される。
【0154】
他の実施態様において、治療のコースは、患者へ同時に投与され、すなわち、第二の薬物の個々の用量は、本明細書に提供される化合物が、活性のある第二の薬物とともに作用できるような時間間隔内でなおも別個に投与される。例えば、1つの構成要素は、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与できる他の構成要素との組み合わせで1週間につき1回投与できる。言い換えれば、投与法は、治療薬が同時にまたは同日中に投与されない場合でさえ、並行して実施される。
【0155】
第二の薬物は、付加的にまたは本明細書に提供される化合物と共同して作用できる。一実施態様において、本明細書に提供される化合物は、同一の医薬組成物における1つ以上の第二の薬物と同時に投与される。別の実施態様において、本明細書に提供される化合物は、別個の医薬組成物における1つ以上の第二の薬物と同時に投与される。なおも別の実施態様において、本明細書に提供される化合物は、第二の薬物の投与の前又は投与後に投与される。また、同一の又は異なる投与経路、例えば経口および非経口による、本明細書に提供される化合物および第二の薬物の投与が熟慮される。ある実施態様において、本明細書に提供される化合物が、毒性を含むがそれには限定されない有害な副作用を潜在的に生じる第二の薬物と同時に投与される場合、活性のある第二の薬物は、有害な副作用が顕在化する閾値を下回る用量で有利に投与できる。
【0156】
ある実施態様において、本明細書に提供される化合物は、1つの第二の薬物との組み合わせで投与される。さらなる実施態様において、第二の薬物は、2つの第二の薬物との組み合わせで投与される。なおもさらなる実施態様において、第二の薬物は、2つ以上の第二の薬物との組み合わせで投与される。
【0157】
組み合わせ治療法において、有効薬用量の2つ以上の薬物がともに投与されるのに対し、交代治療法または連続段階的治療法においては、有効薬用量の各薬物がひと続きにまたは連続して投与される。付与される薬用量は、薬物の吸収、不活性化および排出率ならびに当業者に公知の他の因子に依存するであろう。また、薬用量の値が、緩和されるべき容態の重度とともに変動するであろうことは留意されるべきである。いずれかの具体的な患者について、特異的な投薬法およびスケジュールが、個体の需要および組成物の投与を管理しまたは監督する者の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであることは、さらに理解されるべきである。
【0158】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、イントロンA、ペグインターフェロンα-2a(ペガシスR)、ペグインターフェロンα-2a+リバビリン(ペガシスおよびコペグス、例えば、Hoofnagleらの文献(N. enel. J. Med. 355:23)参照)、ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル、エムトリシタビン(FTC)、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(Val-LdC)、エルブシタビン(L-Fd4C)、クレブジン、ラシビル、BAM205、NOV-205(BAM205)、HepeX-B、アムドキソビル(DAPD)、ANA380(LB80380)、プラデフォビル(レモフォビル)、EHT899、プラデフォビル、ザダキシン(チモシンα)、UT231-B、EP-HBS、HBVコア、MIV210、SpecifEx-HepB、ペンタセプト(L-3'-FD4C)、ベイ41-4109INTM-191またはVX-950(テラプレビル)等の他の薬物との組み合わせでの、本明細書に記載されるMMP阻害剤の投与を包含する。
【0159】
ある実施態様において、第二の薬物は、以下から選択される:
【0160】
プロテーゼ阻害剤:例には、メディビルHCVプロテアーゼ阻害剤(メディビル/トボテック);ITMN-191(InterMune)、SCH503034(シェリング)およびVX950(ヴェルテックス)が含まれる。プロテアーゼ阻害剤のさらなる例には、基質ベースのNS3プロテアーゼ阻害剤(Attwoodらの文献(抗ウイルスペプチド誘導体(Antiviral peptide derivatives)(PCT WO 98/22496, 1998))、Attwoodらの文献(Antiviral Chemistry and Chemotherapy, 1999, 10, 259-273)、Attwoodらの文献(抗ウイルス薬としてのアミノ酸誘導体の調製および使用(Preparation and use of amino acid derivatives as anti-viral agents))(独国特許刊行物DE19914474)、αケトアミドおよびヒドラジノ尿素、ならびにボロン酸またはリン酸塩等の求電子剤において終結する阻害剤(Llinas-Brunetらの文献(C型肝炎阻害剤ペプチド類似体(Hepatitis C inhibitor peptide analogues)(PCT WO99/07734)))を含む、Tungらの文献(セリンプロテアーゼ、特にC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼの阻害剤(Inhibitors of serine proteases, particularly hepatitis C virus NS3 protease)(PCT WO98/17679))、RD3-4082およびRD3-4078(前者は14炭素鎖を有するアミドにおいて置換され、後者はパラ-フェノキシフェニル基を加工する)を含む2,4,6-トリヒドロキシ-3-ニトロベンズアミド誘導体等の非基質ベースのNS3プロテアーゼ阻害剤(Sudo K.らの文献(Biochemical and Biophysical Research Communications, 1997, 238, 643-647)、Sudo K.らの文献(Antiviral Chemistry and Chemotherapy, 1998, 9, 186))、およびフェナントレンキノンでありHCVプロテアーゼ阻害剤であるSch 68631(Chu M.らの文献(Tetrahedron Letters 37: 7229-7232, 1996))が含まれる。
【0161】
真菌ペニシリウム・グリセオフルヴァムから単離されたSCH351633は、プロテーゼ阻害剤として同定された(Chu M.らの文献(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 9: 1949-1952))。ヒルから単離されたエグリンcは、ストレプトミセス・グリセウスプロテアーゼAおよびB、α-キモトリプシン、キマーゼおよびサブチリシン等のいくつかのセリンプロテアーゼの有力な阻害剤である(Qasim M.A.らの文献(Biochemistry 36:1598-1607, 1997))。
【0162】
HCVの治療のためのプロテアーゼ阻害剤を開示する米国特許には、例えば、HCVエンドペプチダーゼ2を阻害するための1種類のシステインプロテアーゼ阻害剤を開示するSpruceらに対する米国特許第6,004,933号、C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼの合成阻害剤を開示するZhangらに対する米国特許第5,990,276号、Reyesらに対する米国特許第5,538,865号、Corvas International社に対するWO02/008251、ならびにShering Corporationに対する米国特許第7,169,760号、US2005/176648、WO02/08187およびWO02/008256が含まれる。HCV阻害剤トリペプチドは、Boehringer Ingelheimに対する米国特許第6,534,523号、第6,410,531号、および第6,420,380号、ならびにBristol Myers Squibbに対するWO02/060926に開示される。HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのジアリールペプチドは、Schering Corporationに対するWO02/48172および米国特許第6,911,428において開示される。HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのイミダゾレイジノン(imidazoleidinone)は、Schering Corporationに対するWO02/08198および米国特許第6,838,475号ならびにBristol Myers Squibbに対するWO02/48157および米国特許第6,727,366号に開示される。また、Vertex Pharmaceuticalsに対する米国特許第7,109,172号、第6,909,000号、第6,617,390号、第6,608,067号、第6,265,380号および国際公開WO98/17679、ならびにBristol Myers Squibbに対するWO02/48116は、HCVプロテアーゼ阻害剤を開示する。HCVプロテアーゼ阻害剤のさらなる例は、InterMune社に対する米国特許第7,153,848号、第7,138,376号、第7,135,462号、第7,132,504号、第7,112,601号、および米国公開2007/0010455、2006/0276511、2006/0257980、2006/0258720、2006/0252715において開示される。
【0163】
NS3/4A融合タンパク質およびNS5A/5B基質(Sudo K.らの文献(Antiviral Research, 1996, 32, 9-18))、特に、長いアルキル鎖RD4 6205およびRD4 6193で置換された融合されたシンナモイル部分を有する化合物RD-1-6250を使用する逆相HPLCアッセイにおいて関連性のある阻害を示すチアゾリジン誘導体;
【0164】
Kakiuchi N.らの文献(J. EBS Letters 421, 217-220)、Takeshita N.らの文献(Analytical Biochemistry, 1997, 247, 242- 246)において同定されたチアゾリジンおよびベンズアニリド;
【0165】
ストレプトミセス菌種Sch68631(Chu M.らの文献(Tetrahedron Letters, 1996, 37, 7229- 7232))および真菌ペニシリウム・グリセオフルヴァムから単離され、シンチレーション近接アッセイにおいて活性を示すSch351633(Chu M.らの文献(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 9, 1949-1952))の発酵培養ブロスから単離されたSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーアッセイにおいてプロテアーゼに対する活性を有するフェナントレンキノン;
【0166】
ヘリカーゼ阻害剤(Diana G.D.らの文献(C型肝炎の治療のための化合物、組成物および方法(Compounds, compositions and methods for treatment of hepatitis C))(米国特許第5,633,358号))、Diana G.D.らの文献(ピペリジン誘導体、その医薬組成物およびC型肝炎の治療におけるそれらの使用(Piperidine derivatives, pharmaceutical compositions thereof and their use in the treatment of hepatitis C)(PCT WO97/36554));
【0167】
ヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤およびグリオトキシン(Ferrari R.らの文献(Journal of Virology, 1999, 73, 1649-1654))、ならびに天然産物セルレニン(Lohmann V.らの文献(Virology, 1998, 249, 108-118));
【0168】
Sirna-034ならびに国際特許公開WO/03/070750およびWO2005/012525および米国特許公開US2004/0209831において記載されるその他のものなど、短鎖干渉性RNA(siRNA)ベースの抗ウイルス薬を含む干渉性RNA(iRNA)ベースの抗ウイルス薬;
【0169】
ウイルスの5'非コード領域(NCR)における配列鎖と相補的なアンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(S-ODN)(Alt M.らの文献(Hepatology, 1995, 22, 707-717))、またはNCRの3'末端とHCV RNAの中心コード領域に配置されるヌクレオチド371〜388とを含むヌクレオチド326〜348(Alt M.らの文献(Archives of Virology, 1997, 142, 589-599)、Galderisi U.らの文献(Journal of Cellular Physiology, 1999, 181, 251-257));
【0170】
IRES依存性翻訳の阻害剤(Ikeda N.らの文献(C型肝炎の予防および治療のための薬物(Agent for the prevention and treatment of hepatitis C)(日本国特許公開JP-08268890))、Kai Y.らの文献(ウイルス疾患の予防および治療(Prevention and treatment of viral diseases)(日本国特許公開JP-1010 1591)));
【0171】
ヌクレアーゼ耐性リボザイム(Maccjak, D. J.らの文献(Hepatology 1999, 30, 要約995))ならびにBarberらに対する米国特許第6,043,077号、ならびにDraperらに対する米国特許第5,869,253号および第5,610,054号に開示されるものなどのリボザイム;ならびに
【0172】
国際公開WO01/90121およびWO 01/92282、WO 01/32153、WO 01/60315、WO 02/057425、WO 02/057287、WO 02/18404、WO 01/79246、WO 02/32920ならびにWO 02/48165において記載されるヌクレオシドアナログ。C型肝炎ウイルスを処置するために第二の薬物として使用できるヌクレオシドアナログの使用を開示するある米国特許および特許出願には、Merck & Co.社による米国特許第7,202,224号、第7,125,855号、第7,105,499号および第6,777,395号、RocheによるUS 2006/0040890、US 2005/0038240、US 2004/0121980、米国特許第6,846,810号、第6,784,166号および第6,660,721号、Pharmasset社によるUS 2005/0009737、US 2005/0009737、米国特許第7,094,770号および第6,927,291号が含まれる。
【0173】
Emory Universityに対する「2'-フルオロヌクレオシド(2'- Fluoronucleosides)」という表題のPCT公開WO99/43691は、HCVを治療するためのある2'-フルオロヌクレオシドの使用を開示する。
【0174】
1-アミノ-アルキルシクロヘキサン(Goldらに対する米国特許第6,034,134号)、アルキル脂質(Chojkierらに対する米国特許第5,922,757号)、ビタミンEおよび他の抗酸化剤(Chojkierらに対する米国特許第5,922,757号)、スクアレン、アマンタジン、胆汁酸(Ozekiらに対する米国特許第5,846,964号)、N-(ホスホノアセチル)-L-アスパラギン酸(Dianaらに対する米国特許第5,830,905号)、ベンゼンジカルボキサミド(Dianaらに対する米国特許第5,633,388号)、ポリアデニル酸誘導体(Wangらに対する米国特許第5,496,546号)、2',3'-ジデドキシイノシン(Yarchoanらに対する米国特許第5,026,687号)、ベンズイミダゾール(Colacinoらに対する米国特許第5,891,874号)、植物抽出物(Tsaiらに対する米国特許第5,837,257号、Omerらに対する米国特許第5,725,859号、および米国特許第6,056,961号)、ならびにピペリデン(Dianaらに対する米国特許第5,830,905号)を含む他の種々の化合物。
【0175】
C型肝炎ウイルスの治療のために目下、臨床前の又は臨床的な開発中の他の化合物は、本明細書に提供される化合物との組み合わせで使用できる。ある実施態様において、本明細書に記載されるMMP阻害剤との組み合わせで使用できる化合物には、Schering-Ploughによるインターロイキン10、InternuronによるIP-501、Vertexによるメリメボジブ(VX-497)、Endo Labs SolvayによるAMANTADINE(登録商標)(シンメトレル)、RPIによるHEPTAZYME(登録商標)、XTLによるXTL-002、ChironによるHCV/MF59、NABIによるCIVACIR(登録商標)(C型肝炎免疫グロブリン)、ICN/RibapharmによるLEVOVIRIN(登録商標)、ICN/RibapharmによるVIRAMIDINE(登録商標)、Sci CloneによるZADAXIN(登録商標)(チモシンα1)、Sci Cloneによるチモシン+ペグ化インターフェロン、MaximによるCEPLENE(登録商標)(二塩酸ヒスタミン)、Vertex/Eli LillyによるVX950/LY570310、Isis Pharmaceutical/ElanによるISIS14803、AKROS PharmaによるJTK003、Boehringer IngelheimによるBILN-2061、RocheによるCellCept(ミコフェノラートモフェチル)、Tularikによるβチューブリン阻害剤T67、InnogeneticsによるE2指向性治療用ワクチン、Fujisawa Healthcare社によるFK788、ViroPharma/WyethによるIdB1016(シリフォス、経口シリビンホスファチジルコリンフィトソーム(phosphatdylcholine phytosome))、ViroPharma/WyethによるRNA複製阻害剤(VP50406)、Intercellによる治療用ワクチン、Epimmune/Genencorによる治療用ワクチン、AnadysによるIRES阻害剤、AnadysによるANA245およびANA246、Avantによる免疫療法(Therapore)、Corvas/Scheringによるプロテアーゼ阻害剤、Vertexによるヘリカーゼ阻害剤、Trimerisによる融合阻害剤、CellExSysによるT細胞療法、Biocrystによるポリメラーゼ阻害剤、PTC Therapeuticsによる標的化RNA化学物質、Immtech社による二価の陽イオン、Agouronによるプロテアーゼ阻害剤、Chiron/Medivirによるプロテアーゼ阻害剤、AVI BioPharmaによるアンチセンス療法、Hybridonによるアンチセンス療法、Aethlon Medicalによる血液精製装置、Merixによる治療用ワクチン、Bristol-Myers Squibb/Axysによるプロテアーゼ阻害剤、Tripepによる治療用ワクチンChron-VacC、United TherapeuticsによるUT231B、Genelabs Technologiesによるプロテアーゼ、ヘリカーゼおよびポリメラーゼの阻害剤、ImmusolによるIRES阻害剤、Rigel PharmaceuticalsによるR803、InterMuneによるINFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン1)、ViragenによるOMNIFERON(登録商標)(天然インターフェロン)、Human Genome SciencesによるALBUFERON(登録商標)、Ares-SeronoによるREBIF(登録商標)(インターフェロンβ1a)、BioMedicineによるωインターフェロン、InterMuneによるインターフェロンγ、インターフェロンτ、およびインターフェロンγ1bが含まれる。
【0176】
ある実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、現行で利用可能でありまたは現行で開発中であるC型肝炎の治療法との組み合わせでまたは交替で投与できる。一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、Intron A(登録商標)(インターフェロンα2b)およびPegasys(登録商標)(ペグインターフェロンα2a)等の抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、Roferon A(登録商標)(組換えインターフェロンα2a)、Infergen(登録商標)(共通インターフェロン;インターフェロンアルファコン1)、PEG-Intron(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2b)およびPegagsys(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2a)との組み合わせで又は交替で投与できる。
【0177】
一実施態様において、抗C型肝炎ウイルスインターフェロンは、インファージェン、IL-29(PEG-インターフェロンλ)、R7025(マキシα)、ベレロフォン、経口インターフェロンα、BLX-883(ロクテロン)、ωインターフェロン、マルチフェロン、メドューサインターフェロン、アルブフェロンまたはREBIF(登録商標)である。
【0178】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、リバビリン、ビラミジン、NM283(バロピシタビン)、R7128/PSI-6130、R1626、HCV-796またはR1479等の抗C型肝炎ウイルスポリメラーゼ阻害剤との組み合わせでまたは交替で投与できる。
【0179】
ある実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、リバビリンならびにIntron A(登録商標)(インターフェロンα2b)およびPegasys(登録商標)(ペグインターフェロンα2a)等の抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、Roferon A(登録商標)(組換えインターフェロンα2a)、Infergen(登録商標)(共通インターフェロン;インターフェロンアルファコン1)、PEG-Intron(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2b)およびPegagsys(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2a)との組み合わせで投与できる。
【0180】
ある実施態様において、RO-113-0830は、Intron A(登録商標)(インターフェロンα2b)およびPegasys(登録商標)(ペグインターフェロンα2a)等の抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、Roferon A(登録商標)(組換えインターフェロンα2a)、Infergen(登録商標)(共通インターフェロン;インターフェロンアルファコン1)、PEG-Intron(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2b)およびPegagsys(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2a)との組み合わせで投与される。ある実施態様において、RO-113-0830は、リババリンとの組み合わせで投与される。ある実施態様において、RO-113-0830は、リババリンならびにIntron A(登録商標)(インターフェロンα2b)およびPegasys(登録商標)(ペグインターフェロンα2a)等の抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、Roferon A(登録商標)(組換えインターフェロンα2a)、Infergen(登録商標)(共通インターフェロン;インターフェロンアルファコン1)、PEG-Intron(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2b)およびPegagsys(登録商標)(ペグ化インターフェロンα2a)との組み合わせで投与される。
【0181】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、ITMN-191、SCH503034、VX950(テラプレビル)またはメジビルHCVプロテアーゼ阻害剤等の抗C型肝炎ウイルスポリメラーゼ阻害剤との組み合わせでまたは交替で投与できる。
【0182】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、TG4040、PeviPROTM、CGI-5005、HCV/MF59、GV1001、IC41またはINNO0101(E1)等の抗C型肝炎ウイルスワクチンとの組み合わせでまたは交替で投与できる。
【0183】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、AB68またはXTL-6865(旧HepX-C)等の抗C型肝炎ウイルスモノクローナル抗体、またはシカビル等の抗C型肝炎ウイルスポリクローナル抗体との組み合わせで又は交替で投与できる。
【0184】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、Zadaxin(登録商標)(チマルファシン)、NOV-205またはオグルファニド等の抗C型肝炎ウイルス免疫調節薬との組み合わせでまたは交替で投与できる。
【0185】
一実施態様において、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、ネキサバル、ドキソルビシン、PI-88、アマンタジン、JBK-122、VGX-410C、MX-3253(セグロシビル)、サバス(BIVN-401またはビロスタット)、PF-03491390(旧IDN-6556)、G126270、UT-231B、DEBIO-025、EMZ702、ACH-0137171、MitoQ、ANA975、AVI-975、AVI-4065、バビツキシナブ(タルバシン)、アリニア(ニトラゾキサニド)またはPYN17との組み合わせでまたは交替で投与できる。
【0186】
HBVの薬物耐性バリアントが、抗ウイルス薬による長期処置後に出現し得ることは認識されてきた。薬物耐性は、最も典型的にはHBV、DNAポリメラーゼの場合、ウイルスの生活環において使用される酵素をコードする遺伝子の変異によって最も典型的に生じる。近年、HBV感染に対する薬物の効能が、第一の薬物によって生じるものとは異なる変異を誘導する第二の、およびおそらくは第三の抗ウイルス化合物との組み合わせでまたは交替で化合物を投与することによって長期化され、増大し、または回復することが可能であることが示されてきた。あるいは、薬物の薬物動態、体内分布または他のパラメータは、このような組み合わせまたは交替治療法によって変化することができる。一般的に、組み合わせ治療法は、ウイルスに及ぼす複数の同時のストレスを誘導するので、交替治療法よりも典型的に好ましい。
【0187】
本明細書に提供される化合物の抗B型肝炎ウイルス活性は、組み合わせでまたは交替でこれらの2つ以上の化合物を投与することによって亢進できる。あるいは、例えば、本明細書に提供される1つ以上の化合物は、好ましくは実質的に(-)-光学異性体(「FTC」、WO92/14743参照)の形態にあるエンテシビル、シス-2-ヒドロキシメチル-5-(5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン等の他の公知の抗B型肝炎ウイルス薬;シス-2-ヒドロキシメチル-5-(シトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(3TC)の(-)-鏡像体;米国特許第5,444,063号および第5,684,010号に記載されるβ-D-1,3-ジオキソランプリンヌクレオシド;β-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、β-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、およびβ-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)等のβ-D-ジオキソランヌクレオシド、L-FDDC(5-フルオロ-3'-チア-2',3'-ジデオキシシチジン)、3'-フルオロ修飾されたβ-2'-デオキシリボヌクレオシド5'-三リン酸、カルボビル、インターフェロン、ペンシクロビルおよびファムシクロビルのL-鏡像体、L-FMAU、ファムシクロビル、ペンシクロビル、BMS-200475、ビスポムPMEA(アデフォビル、ジピボキシル);ロブカビル、ガンシクロビル、リババリン、INTM-191、VX-950(テラプレビル)、または2.2.15細胞において15μmol未満のEC50を呈する他の化合物;あるいはそれらのプロドラッグまたは医薬として許容し得る塩との組み合わせ又は交替で投与できる。抗HBV薬に関する他のいくつかの例は、それらのすべての内容が全体として引用により組み込まれている米国出願公開第20050080034号において提供される。
【0188】
別の実施態様において、本明細書に提供される化合物は、インターフェロン、インターロイキン、またはB型肝炎複製を発現し若しくは制御する遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むがそれらに限定されるわけではないタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはγグロブリン等の生物材料を含む、免疫調節薬またはウイルス複製に関する医薬として活性のある他の修飾薬との組み合わせでまたは交替で投与される。
【0189】
患者に対する治療を提供する交替のいずれかの方法が使用できる。交替パターンに関する制限のない例には、有効量の1つの薬物の1〜6週間の投与後の、有効量の第二の薬物の1〜6週間の投与が含まれる。交替スケジュールは、無治療の期間を含むことができる。組み合わせ治療法には一般的に、有効比の薬用量の活性のある2つ以上の薬物の同時投与が含まれる。
【0190】
また、本明細書に提供される化合物は、二次感染の治療のために投与される抗生物質、他の抗ウイルス化合物、抗真菌薬または他の医薬との組み合わせで投与できる。
【0191】
前述の詳細な記述および付随する例が、単に実例となるものであり、主題の範囲における制限として取られるべきではないことは理解される。開示された実施態様に対する多様な変化および修飾は、当業者に明らかであろう。本明細書に提供される化学的構造、置換体、誘導体、中間体、合成、製剤および/または使用方法と関連するものを含むがそれらに限定されるわけではないこのような変化および修飾は、本明細書の精神および範囲から逸脱することなく実施され得る。本明細書で引用される米国特許および刊行物は、引用により組み込まれている。
【実施例】
【0192】
(7.実施例)
(7.1 RO-113-0830の調製)
米国特許第5,932,595号に記載されるとおり調製できる2,7-ジオキサ-スピロ[3.5]ノナン-1-オン(10.8g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(95mL)に溶解し、(N,N-ジメチルホルムアミド(19mL)における4-(4-クロロフェノキシ)チオフェノール(15.83g、66.8mmol)の溶液へ水素化ナトリウム粉末(2.14g、89.2mmol)を0℃で添加し、30分間撹拌することによって生じた)4-(4-クロロフェノキシ)チオフェノールを含有する溶液へ、10〜15分間かけてゆっくりと添加した後、さらに15分間撹拌する。結果として生じるスラリーを40℃に加熱し、5分間撹拌し、第三級ブタノール(2mL)を添加し、混合物を室温へ20分間かけて冷却する。N,N-ジメチルホルムアミドの大部分を真空下で除去し、pHを9.2に調整し、結果として生じたスラリーを30%のジエチルエーテル-ヘキサン(120mL)で希釈し、濾過する。フィルターケーキをさらなる量のエーテルで洗浄し(3回70mL)、2Nの水性塩酸でpH3.5に酸性化し、塩化メチレンへ抽出する(4×350mL)。組み合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空濃縮する。最小量の塩化メチレン-ヘキサンから固体残渣を再結晶化すると、純粋な4-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニルチオメチル]テトラヒドロピラン-4-カルボン酸を生じる。
【0193】
(7.2 RO-113-0830のインビボでの評価)
肝障害の十分に確立された2つのモデルにおいて雄C57B1/6マウス(Simonsen Labs)を使用して、RO-113-0830のインビボでの効能を評価した。少なくとも3日間、マウスを順化させた。
【0194】
肝損傷のTNF-αモデルにおいて、D-ガラクトサミン(D-Gln)(800mg/kg)およびTNF-α(20または40μg/kg)を腹腔内注射した。侵襲30分前に胃管栄養法によってRO-113-0830(0.001〜30mg/kg)を経口投与した。6時間後、ネンブタール(50mg/kg腹腔内注射)を使用して動物を麻酔し、心穿刺によって血液を採取した。Sigma-Aldrich製のキットを使用して、血漿ALT活性を決定した。RO-113-0830は、TNF-αモデルにおいて血漿ALT活性を用量依存的に低下させた。4つの研究からの平均ED50 は、0.26±0.08mg/kgであった。
【0195】
TNF-αモデルにおける生存に関する有益性を決定するために、D-ガラクトサミン(D-Gln)(800mg/kg)およびTNF-α(20または40μg/kg)を腹腔内注射し、侵襲後24時間マウスを生存させた。ネンブタール125mg/kgの腹腔内注射によって、すべての病的マウスを安楽死させた。3つの研究からの平均24時間生存率は、TNF-α/D-GlnコントロールマウスおよびRO-113-0830処置したマウスにおいて、それぞれ27±7.3%および55±7.6%(p=0.003)であった。
【0196】
肝障害のFas駆動モデルにおいて、Fas(Jo-2)に対して活性化する抗体を静脈内投与した。6時間後、ネンブタール(50mg/kg腹腔内注射)を使用して動物を麻酔し、心穿刺によって血液を採取した。Sigma-Aldrich製のキットを使用して、血漿ALT活性を決定した。RO-113-0830(10mg/kg;経口)は、血漿ALT活性におけるFas誘導性亢進を、2つの研究において平均50%有意に低下させた(各研究においてp<0.05)。
【0197】
これらの研究の結果は、ある実施態様において、RO-113-0830が、肝疾患に関与する2つの重要な炎症促進性サイトカインの存在下で保護的であることを示す。コントロール動物に対する血漿ALTレベルの低下によって、肝障害および炎症の低下を決定した。ALTは、肝障害の臨床的に関連性のあるマーカーであり、患者において進行中の肝障害および炎症の程度を評価するために定型的に使用される。さらに、RO-113-0830は、TNF-αの投与後の生存有益性を示した。
【0198】
(7.3 レプリコンアッセイにおけるHCV複製の阻害)
3つの細胞培養適応性変異を有する全長のHCVレプリコンを含有するHuh7ヒト肝細胞癌細胞系(21-5細胞系)(Pietschmann, T.らの文献(J. Virol. 76, 2002, 4008-4021)参照)を本研究で使用して、RO-113-0830が細胞におけるHCV RNAレプリコンの複製を阻害する能力を実証した。上述のPietschmann, T.らによって記載されるとおり、アッセイを実施した。
【0199】
6半対数濃度でのRO-113-0830の効果を各々四つ組で、HCV RNAレプリコン抗ウイルス評価アッセイにおいて検討した。ポジティブコントロール化合物として、ヒトインターフェロンα2bを各実行に含んだ。細胞数(細胞毒性)または抗ウイルス活性の分析のために供された96ウェルプレートへ、ET系のサブコンフルエントな培養物を播種し、翌日、適切なウェルへ薬物を添加した。細胞がなおもサブコンフルエントである場合、細胞を72時間後に処理した。HCV RNAレプリコンレベルおよび、宿主細胞リボソームRNA(rRNA)レベルによって示される細胞数を減少させる薬物の毒性濃度を、TaqMan RT-PCRによって評価した。EC50(ウイルス複製50%阻害濃度)、IC50(細胞生存率を50%低下させる濃度)およびSI50(選択指数:IC50/EC50)の値を算出した。
【0200】
RO113-0830は、70nMの濃度で50%阻害(EC50)に到達するHCV複製を用量依存的に阻害した。本アッセイにおける細胞毒性についてのIC50は、約25μmであり、従って、約350の選択指数(IC50/EC50)に到達した。これらのデータは、ある実施態様において、RO113-0830が、細胞の生存率に強い影響を与えない用量で、C型肝炎ウイルス複製の強力な阻害を達成することを示す。
【0201】
(7.4 胆管結紮モデルにおけるインビトロでの研究)
胆管結紮モデルは、肝線維症に関する十分に特徴付けられたモデルである。簡潔には、6〜8週齢のC57/BL6野生型マウスを胆管結紮(BDL)へ14日間供した。擬似手術した野生型マウスをコントロールとして使用した。RO113-0830またはCMC(カルボキシメチルセルロース)のいずれかを胃管栄養法によって、10mg/体重kgの用量で1日1回投与した。TUNELアッセイおよび活性化されたカスパーゼ3/7についての免疫蛍光によって、肝細胞アポトーシスを定量化した。組織病理学および胆汁梗塞の定量化によって肝損傷を評価した。シリウスレッド染色および定量的な形態計測によって、肝線維症を評価した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、コラーゲン1α(I)およびα平滑筋アクチンについてのmRNA転写産物を測定した。
【0202】
BDLの14日後、RO113-0830で処置した野生型マウスは、媒体で処置した動物と比較して、TUNELにおいて3倍の低下を、カスパーゼ3/7陽性肝細胞において5倍の低下(p<0.01)を示した。また、RO113-0830で処置したBDL野生型動物由来の肝臓の組織学的検討は、媒体で処置したBDLマウスと比較して、胆汁梗塞数における70%超の低下を示した。星状細胞の活性化についてのマーカーであるα平滑筋アクチンおよびコラーゲンIについての肝転写産物は、擬似手術したコントロールと比較して、14日間処置したBDLマウスにおいて6倍および8倍増大した。これらの転写産物についてのmRNAは、媒体処置したBDL動物に対してRO113-0830処置したBDL動物において60%超減少した。また、肝コラーゲンのシリウスレッド染色は、RO113-0830で処置したBDL野生型マウスにおいて3倍低下した。最後に、また、BDLの14日後の全体的な動物生存数は、活性のある薬物を受容した群において有意に増大した(p<0.05)。これらのデータは、ある実施態様において、肝損傷および肝線維症が、MMP阻害剤であるRO113-0830による処置で低下することを示す。
【0203】
上述の実施態様は、単に実例となるよう企図されるものであり、当業者は、定型的な実験、特定の化合物、材料および手法に関する多くの等価物のみを使用して認識するであろうし、または確認できるであろう。このような等価物はすべて、主張される主題の範囲内にあるものと考えられ、付記される特許請求の範囲によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、硬変症、原発性胆汁性肝硬変、肝臓虚血再灌流傷害、ウイルス性B型肝炎、ウイルス性C型肝炎およびアルコール性肝炎から選択される肝疾患を治療する方法であって、
【化1】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択され、但し、該MMP阻害剤がONO-4817である場合、該肝疾患が肝臓虚血再灌流傷害以外のものである、前記方法。
【請求項2】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化2】

および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が:
【化3】

または医薬として許容し得るその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が:
【化4】

または医薬として許容し得るその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が:
【化5】

または医薬として許容し得るその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記肝疾患が急性肝疾患である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記肝疾患が慢性肝疾患である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、前記肝疾患のための他の薬物療法ですでにあらかじめ治療された患者へ投与される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、前記肝疾患のための他の薬物療法で治療されている患者へ投与される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、前記肝疾患のための治療に失敗したものである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記肝疾患が、アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、硬変症および原発性胆汁性肝硬変から選択される、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記肝疾患がウイルス性B型肝炎である、請求項1〜10のいずれか記載の方法。
【請求項13】
前記肝疾患がウイルス性C型肝炎である、請求項1〜10のいずれか記載の方法。
【請求項14】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、C型肝炎のための治療に失敗した患者へ投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
疾患がアルコール性肝炎である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記肝疾患が非アルコール性脂肪肝疾患である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記肝疾患が非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が肝線維症である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
肝線維症が、肝炎、化学的曝露、胆管閉塞、自己免疫疾患、肝臓からの血液の流出の閉塞、心臓および血管の障害、α1抗トリプシン欠乏、高い血中ガラクトースレベル、高い血中チロシンレベル、糖原病、糖尿病、栄養失調症、ウィルソン病またはヘモクロマトーシスによって生じる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が硬変症である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
硬変症がアルコールの乱用によって生じる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
硬変症が、肝炎、化学的曝露、胆管閉塞、自己免疫疾患、肝臓からの血液の流出の閉塞、心臓および血管の障害、α1抗トリプシン欠乏、高い血中ガラクトースレベル、高い血中チロシンレベル、糖原病、糖尿病、栄養失調症、ウィルソン病またはヘモクロマトーシスによって生じる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が原発性胆汁性肝硬変である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記疾患が肝臓虚血再灌流傷害である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、高いレベルの肝臓酵素を低下させるための方法であって、該マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化6】

XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される、前記方法。
【請求項26】
前記肝臓酵素が、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
高いレベルの肝臓酵素が、約100%ないし約1%低下する、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
高いレベルの肝臓酵素が、少なくとも99%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%、少なくとも2%または少なくとも1%低下する、請求項25または26記載の方法。
【請求項29】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化7】

または医薬として許容し得るその誘導体である、請求項25〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、TNF-αのシグナル伝達カスケードを阻害する方法であって、該マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化8】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される、前記方法。
【請求項31】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化9】

または医薬として許容し得るその誘導体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、肝疾患と関連した肝障害を低下させる方法であって、該マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化10】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される、前記方法。
【請求項33】
マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、α-Fasのシグナル伝達カスケードを阻害する方法であって、該マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化11】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択される、前記方法。
【請求項34】
【化12】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、肝細胞における過度のアポトーシスを抑制する方法。
【請求項35】
【化13】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を投与することを含む、C型肝炎ウイルスに感染した細胞におけるC型肝炎ウイルスの複製を阻害する方法。
【請求項36】
【化14】


XL784および医薬として許容し得るそれらの誘導体から選択されるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤を、C型肝炎ウイルスに感染した患者へ投与することを含む、前記患者におけるC型肝炎ウイルスの複製を阻害する方法。
【請求項37】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤が、
【化15】

である、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
治療的有効量の第二の薬剤を投与することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項39】
前記第二の薬剤が、抗C型肝炎ウイルスインターフェロン、リバビリンまたはそれらの組み合わせから選択される、請求項38記載の方法。

【公表番号】特表2010−520200(P2010−520200A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551713(P2009−551713)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/002591
【国際公開番号】WO2008/106166
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(509241650)クオナトウス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】