説明

狭域通信システムの移動局装置

【課題】
複数のカードソケットを備える移動局装置において、任意のカードソケットにICカードを装着しても、有料道路における自動料金支払いサービスや他のICカードアプリケーションによるサービスの利用を可能にする。
【解決手段】
カードソケットに装着されたICカードの種別を識別し、自動料金支払い処理手段及び汎用カード処理手段と第1のカードソケット及び第2のカードソケットとの接続を組替えるカード識別/経路制御手段を具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される移動局装置と路上に設置される基地局装置との間で無線通信を行う狭域通信システムに係り、特に複数枚のICカードを取り扱うのに好適な移動局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性の向上、輸送効率の向上、快適性の向上を目指したサービスを実現するため、道路と車両を一体のシステムとした高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の開発が進められている。このシステムでは、路上に設置した基地局装置と車両に搭載した移動局装置との間で行う路車間通信を利用した様々なサービスの実現が検討されており、有料道路の通行料金の支払いを自動化する自動料金支払いシステムへの適用と共に、駐車場、ガソリンスタンド等での決済や情報提供サービスへの展開も図られようとしている。
図8に自動料金支払いシステムに利用される移動局装置の一従来例を示す。自動料金支払いシステムでは、無線通信と車両の属性情報を記憶する機能を移動局装置1に、通行券と決済の機能をICカード2に与え、移動局装置1のカードソケット104にICカード2が装着された状態で通行料金の支払いサービスの利用が可能になる。
【0003】
この移動局装置1において、通行料金の支払いに関する処理を行う自動料金支払手段103は、少なくとも、路車間通信手段102が提供する通信機能を利用して基地局装置とデータ通信を行う通信制御機能と、機器の認証やデータの秘匿、秘匿情報の保存等を行うためのセキュリティ機能とから構成されており、ICカード2と交換するデータや路車間で交換するデータ等は全てこのセキュリティ機能により保護される。このため移動局装置1では、カードソケット104に装着して利用可能なICカードが前記セキュリティ機能で取り扱えるアプリケーションに限定されており、駐車場、ガソリンスタンド等での決済サービスや情報提供サービスへの展開を図ろうとする場合に前記セキュリティ機能の導入を必須とし、セキュリティを必要としないような簡易なICカードアプリケーションの導入を困難としていた。
【0004】
この制限を排除し、様々なアプリケーションを搭載したICカードが取り扱える移動局装置を実現する手段として、カードソケットを2式用意し、一方のカードソケットでは前記セキュリティ機能を使用して装着されたICカードを制御するようにして有料道路の自動料金支払いサービスに対応するようにし、他方のカードソケットでは前記セキュリティ機能を使用しないで装着されたICカードを直接制御するようにして駐車場やガソリンスタンド等での決済や情報提供サービスに対応する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−62468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、カードソケットによって装着するICカードの種別が決まるので、間違ってICカードを装着するとサービスが利用できないと言う問題や、間違った際の再装着動作が利用者の利便性を損なうと言うなどの問題を生じる。自動料金支払いシステムでは、料金所をノンストップで通過しながら料金の支払いが可能なサービスを提供するが、カードが正しく装着されていないとゲートにより通過が阻止される。このことから料金所手前で誤装着に気づいた場合、運転中にカードの再装着を試みるという行為が運転を妨げる可能性もある。 解決しようとする問題点は、移動局装置の決められたカードソケットにICカードを装着しないとサービスが利用できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、任意のカードソケットにICカードを装着しても当該ICカードによるサービスの利用を可能にするため、有料道路における通行料金の支払いを主たる目的とした第1のアプリケーションを少なくとも搭載した第1のICカードと、有料道路における通行料金の支払い以外の用途に使用する第2のアプリケーションを搭載した第2のICカードと、車両に搭載され、第1のICカード及び第2のICカードを装着可能であって、路上に設置された基地局装置との間で無線通信を行う狭域通信システムの移動局装置において、基地局装置との間で無線通信を行うための路車間通信手段と、第1のICカードと路車間通信手段を利用し、基地局装置との間において有料道路の通行料金の支払いに係る通信処理を行う自動料金支払い処理手段と、第2のICカードと路車間通信手段を利用し、基地局装置との間において第2のアプリケーションの利用に係る通信処理を行う汎用カード処理手段と、第1のICカードもしくは第2のICカードが装着可能な第1のカードソケットと、第1のICカードもしくは第2のICカードが装着可能な第2のカードソケットと、自動料金支払い処理手段及び汎用カード処理手段と第1のカードソケット及び第2のカードソケットとの接続を組替えるカード識別/経路制御手段とを少なくとも具備し、カード識別/経路制御手段は、第1のカードソケットに装着されたカードと第2のカードソケットに装着されたカードの種別を識別し、第1のICカードと識別した場合には当該カードが装着されたカードソケットと自動料金支払い処理手段とを接続し、第2のICカードと識別した場合には当該ICカードが装着されたカードソケットと汎用カード処理手段とを接続するようにしたことを主要な特徴とする。
【0008】
また本発明は、任意のカードソケットにICカードを装着しても当該ICカードによるサービスの利用を可能にするため、前記カード識別/経路制御手段は、前記第1のカードソケットまたは前記第2のカードソケットに装着されたカードから当該カードに格納されたアプリケーション識別子を読み取るように動作し、読み取ったアプリケーション識別子の内容が前記第1のアプリケーションを指示する識別子と一致する場合には当該カードの種別を前記第1のICカードと識別するようにし、一致しない場合には当該カードの種別を前記第2のICカードと識別するようにしたことを主要な特徴とする。
【0009】
また本発明は、任意のカードソケットにICカードを装着しても当該ICカードによるサービスの利用を可能にするため、前記カード識別/経路制御手段において、前記第1のカードソケットに装着されたカードの識別結果と、前記第2のカードソケットに装着されたカードの識別結果を比較し、比較結果が一致しかつカードの種別が前記第1のICカードである場合には、いずれか一方のICカードを前記自動料金支払い処理手段に接続するようにしたことを主要な特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記カード識別/経路制御手段において、任意のカードソケットにICカードを装着しても当該ICカードによるサービスの利用を可能にするため、前記第1のカードソケットに装着されたカードの識別結果と、前記第2のカードソケットに装着されたカードの識別結果を比較し、比較結果が一致した場合には、同種のカードが装着されたことを示す状態通知を行うようにしたことを主要な特徴とする。
【0011】
本発明の狭域無線システムの移動局装置は、前記カード識別/経路制御手段において、前記第1のカードソケットに装着されたカードの種別と前記第2のカードソケットに装着されたカードの種別とを識別し、前記第1のICカードと識別した場合には当該カードが装着されたカードソケットと前記自動料金支払い処理手段とを接続し、前記第2のICカードと識別した場合には当該ICカードが装着されたカードソケットと前記汎用カード処理手段とを接続するように前記自動料金支払い処理手段及び前記汎用カード処理手段と前記第1のカードソケット及び前記第2のカードソケットとの接続を組替えるように制御する。これにより、任意のカードソケットにICカードを装着しても前記第1のアプリケーションによる自動料金支払いサービスや前記第2のアプリケーションによるサービスが利用できるようになり、カードの誤装着を解消できる。また、これにより運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【0012】
また本発明の狭域無線システムの移動局装置は、カード識別/経路制御手段において、ICカードに搭載されるアプリケーションを特定するためのアプリケーション識別子を利用し、前記第1のアプリケーションを識別するためのアプリケーション識別子がカードに格納されている場合には当該カードを第1のICカードと識別し、カード内にアプリケーション識別子が存在しない場合には当該カードを第2のICカードと識別するので、第2のICカードとしては多様なアプリケーションを搭載したICカードを利用する事ができる。また、アクセス制限のないアプリケーション識別子を利用するので、ICカードに搭載されたアプリケーション毎固有のセキュリティ等の機能への対応を必要としない。このことから、処理に時間を要する暗号等の処理が省略でき、識別時間を短縮する効果も得られる。
【0013】
また本発明の狭域無線システムの移動局装置は、カード識別/経路制御手段において、ICカードの種別を識別した結果を比較することで、当該カードが前記第1のICカードであることの識別と同種のカードであることの検知を行い、いずれか一方のICカードを前記自動料金支払い処理手段に接続するので、同種のカードが装着された場合でも料金所における自動料金支払いサービスは利用可能になる。よって、運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【0014】
また本発明の狭域無線システムの移動局装置は、カード識別/経路制御手段において、ICカードの種別を識別した結果を比較することで、当該カードの識別と同種のカードであることの検知を行うので、利用者にいずれか一方のサービスが利用できない状態にあることを認識させることや、利用できないサービスの種別を認識させることが可能になる。よって、利用者は、利用できると思い込んでいたサービスの一部が利用できない状況にあることを認識することにより、誤装着を事前に解消する機会を得ることが可能になる。また、これにより運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の狭域無線システムの移動局装置によれば、任意のカードソケットにICカードを装着しても前記第1のアプリケーションによる自動料金支払いサービスや前記第2のアプリケーションによるサービスが利用できるようになり、カードの誤装着を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
複数のカードソケットを備えた移動局装置において任意のカードソケットにICカードを装着してもサービスの利用を可能にすると言う目的を、カードソケットに装着されたICカードの種別を識別し、自動料金支払い処理手段及び汎用カード処理手段と第1のカードソケット及び第2のカードソケットとの接続を組替えるカード識別/経路制御手段を移動局装置に具備させることにより実現した。
以下本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
以下本発明の実施例1について説明する。
図1は本発明の移動局装置の実施例1を示す図である。図2は本発明の移動局装置を構成するカード識別/経路制御手段105が管理する管理テーブルの一実施例を示す図である。図3はカード識別/経路制御手段105における制御手順の一実施例を示した図である。図5はカード識別検出処理S1の詳細な手順の一実施例を示した図である。図6は経路制御処理S2の詳細な手順の一実施例を示した図である。
【0018】
図1において、1は移動局装置、2は第1のICカード、3は第2のICカードである。また、101から111は移動局装置1を構成する構成要素であり、101はアンテナ、102は路車間通信手段、103は自動料金支払い処理手段、104は第1のカードソケット、 105はカード識別/経路制御手段、106は汎用カード処理手段、107は第1のスイッチ、108は第2のスイッチ、109は第3のスイッチ、110 第2のカードソケット、111は情報伝達手段である。
【0019】
第1のICカード2は、有料道路における通行料金の支払いを主たる目的とした第1のアプリケーションを少なくとも搭載する。第2のICカード3は、有料道路における通行料金の支払い以外の例えば駐車場やガソリンスタンドなどにおける決済等の用途に使用する第2のアプリケーションを搭載する。移動局装置1は路上に設置された基地局装置との間で無線通信を行い、第1のICカード2や、第2のICカード3に搭載されたアプリケーションによって提供されるサービスを利用するための装置である。この移動局装置1は、少なくとも、アンテナ101、路車間通信手段102、自動料金支払い処理手段103、汎用カード処理手段106、カード識別/経路制御手段105、第1のカードソケット104、 第2のカードソケット110、第1のスイッチ107、第2のスイッチ108、第3のスイッチ109、情報伝達手段111で構成する。以下、本実施例の移動局装置1の動作について説明する。
【0020】
路車間通信手段102は、アンテナ101を介して図示せざる基地局装置とデータ通信を行うための通信機能を備え、自動料金支払い処理手段103や汎用カード手段106にその機能を提供する。自動料金支払い処理手段103は、有料道路における通行料金の支払いに関する処理を行うために、少なくとも、路車間通信手段102が提供する通信機能を利用して基地局装置とデータ通信を行う通信制御機能と、機器の認証やデータの秘匿、秘匿情報の保存等を行うためのセキュリティ機能とから構成されており、第1のスイッチ107を介して接続されるICカードと交換するデータや路車間で交換するデータ等は全てこのセキュリティ機能により保護される。汎用カード処理手段106は、例えば、駐車場やガソリンスタンドなどの決済等に関する処理を行うために、少なくとも、路車間通信手段102が提供する通信機能を利用して基地局装置とデータ通信を行う通信制御機能と、第3のスイッチ109を介して接続されるICカードと交換するデータを路車間通信手段102側へ透過する機能で構成され、基地局装置からの前記ICカードの遠隔操作を可能としている。
【0021】
第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110には、第1のICカードもしくは第2のICカードが装着可能となっており、第1のカードソケット104にカードが装着されているか否かを指示する第1の状態信号C1はカード識別/経路制御手段105と接続しており、装着されたICカードの信号線は第1のスイッチ107、第2のスイッチ108及び第3のスイッチ109の一方の入力へと接続する。また、第2のカードソケット110にカードが接続されているか否かを指示する第2の状態信号C2はカード識別/経路制御手段105と接続しており、装着されたICカードの信号線は第1のスイッチ107、第2のスイッチ108及び第3のスイッチ109の他方の入力へと接続する。情報伝達手段111は、カード識別/経路制御手段105から出力される指示信号C8に応じて、例えば、光、文字、画像、音、音声等の伝達手段を利用して、当該移動局装置1の利用者に対して適切な情報を伝達する。
【0022】
カード識別/経路制御手段105は、第1の状態信号C1及び第2の状態信号C2の状態を監視して、カードがソケットに装着されたことやソケットからカードが抜取られたことを検出するための監視を行う。この第1の状態信号C1もしくは第2の状態信号C2によってカードの装着を検知した場合には、検出した側のカードソケットに装着されたICカードの信号線を導くように第3のスイッチ制御信号C5で第3のスイッチ109を操作する。例えば、第1のカードソケット104にカードが装着された場合には、第1のカードソケット104から導かれる信号線が第3のスイッチ109を介してカード識別/経路制御手段105へと接続される。次にカード識別/経路制御手段105は、接続した信号線を利用して当該カードの種別を識別する。ICカードの種別を識別する方法としては、例えば、ICカードに格納するアプリケーションに対して一意に割当てられるアプリケーション識別子を利用して、以下のようにして識別を行う。
【0023】
有料道路における通行料金の支払いを目的とし、自動料金支払い処理手段103のセキュリティ機能が取り扱える第1のアプリケーションに割当てられたアプリケーション識別子(以下、AID1と記す)は一つである。これに対し、通行料金の支払い以外の例えば駐車場やガソリンスタンドなどにおける決済等の用途に使用する第2のアプリケーションには、サービス内容や決済方法等により異なる複数のアプリケーション識別子(アプリケーション)が属することになる。よって、第1のアプリケーションに割当てられたアプリケーション識別子がカードに格納されているか否かを判定基準として、カード内に当該識別子が存在するカードを第1のICカード2とし、存在しないカードを第2のICカード3として識別することで、カードの種別が識別可能になる。このアプリケーション識別子は、ICカードに搭載されるアプリケーションを特定するための識別子であり、アクセスが制限される情報ではなく、ISO7816等で開示される標準の通信手順で認識可能である。したがって、アプリケーション識別子を利用すると、カード識別/経路制御手段105はセキュリティ等のアプリケーション固有の機能を利用することなくカードの種別を識別することができるようになる。さらに、セキュリティ等のアプリケーション固有の機能を利用しないことから、処理に時間を要する暗号等の処理が省略できることになり、識別時間の短縮と言う利点もある。
【0024】
カード識別/経路制御手段105はカードの種別を識別すると、自動料金支払い処理手段103及び汎用カード処理手段106と第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110との接続を組替える経路制御を行う。例えば、第1のカードソケット104に装着されたカードを第1のICカードと識別した場合には、第1のカードソケット104に装着された第1のICカード2の信号線を自動料金支払い処理手段103へと導くように、第1のスイッチ制御信号C3で第1のスイッチ107を制御する。この際、第1のICカードの信号線が同時に汎用カード処理手段106にも接続されてしまうと、信号の衝突等により通信文に誤りが発生し正しく通信できなくなる可能性がある。本実施例では、このような障害を回避するため、例えば、第2のスイッチ制御信号C4で第2のスイッチ108を制御して、汎用カード処理手段106と第2のカードソケット110を接続するようにする。
【0025】
次に、カード識別/経路制御手段105の手順の一例について、図3を用いて説明する。本実施例の手順を実施するためにカード識別/経路制御手段105は、例えば、図2に示すような管理テーブルMTを利用する。この管理テーブルMTは、第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110の状態を管理するためのテーブルであり、状態変数、カード種別変数で各ソケットを管理する。この管理テーブルMTでは、ソケット1の状態変数で第1の状態信号C1の値が参照でき、ソケット2の状態変数で第2の状態信号C2の値が参照できる。ソケット1のカード種別変数Type1及びソケット2のカード種別変数Type2は値の代入が可能な変数であり、例えば、カード内に格納されるアプリケーションが第1のアプリケーションであることを示す値(以下、AP1と記す)、カード内に格納されるアプリケーションが第2のアプリケーションであることを示す値(以下、AP2と記す)、カード種別の識別が未完了の状態にあることを示す値(以下、NULLと記す)を格納する。
【0026】
ステップS1では、管理テーブルMTの状態変数とカード種別変数を参照し、カードが装着された状態にありカード種別の識別が未完了の場合に識別を行い、その結果をカード種別変数に登録する。ステップS2では、管理テーブルMTのカード種別変数から接続先を判定し、第1のスイッチ107及び第2のスイッチ108を制御する。ステップS3では、管理テーブルMTの状態変数で参照される第1の状態信号C1及び第2の状態信号C2の状態変化を監視し、状態が変化してカードがソケットに装着されたことやソケットからカードが抜取られたことが検出されると処理をステップS1に移行する。以上の処理手順によれば、カードの装着や抜取りによってカードソケットの状態変化が発生する度に、カード種別の識別と接続先の制御を行うことが可能になる。また、本実施例では、状態変化を検出する前にカード種別の識別処理(ステップS1)と経路制御処理(ステップS2)を一度実施するので、例えば、移動局装置1が活性化された時点で既にカードソケットにカードが装着されたままになっていたとしても、正しく自動料金支払い処理手段103及び汎用カード処理手段106と第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110との接続を組替える事も可能になる。
【0027】
次に、ステップS1で行うカード種別の識別処理に関する詳細な手順の一例について、図5を用いて説明する。カード種別の識別処理S1では、先ず第1のカードソケット104に関する検査を行うため、ステップS101において管理テーブルMTの状態変数から第1の状態信号C1を参照する。第1の状態信号C1の値が「未装着」を示す場合にはステップS103に処理を移行する。ステップS103では、カード種別の識別が未完了であることを示すためにソケット1のカード種別変数Type1に「NULL」を代入して第1のカードソケット104に関する検査を完了とし、ステップS107へ移行する。また、ステップS101において、第1の状態信号C1の値が「装着」を示す場合にはステップS102に処理を移行する。ステップS102では、ソケット1のカード種別変数Type1の値を検査し、値が「NULL」を示す場合には処理をステップS104へと移行する。ステップS104では、第1のカードソケットに装着されたカード種別を識別するために、第3のスイッチ制御信号C5で第3のスイッチ109を操作し、第1のカードソケット104から導かれる信号線がカード識別/経路制御手段105へと接続されようにし、当該カードのアプリケーション識別子を検査する。検査結果が第1のアプリケーションに割当てられたアプリケーション識別子と一致する場合には、ソケット1のカード種別変数Type1に「AP1」を代入し、一致しない場合には「AP2」を代入して、第1のカードソケット104に関する検査を完了とし、ステップS107へ移行する。なお、ステップS102において、ソケット1のカード種別変数Type1の値が「NULL」でない場合には、カード種別の識別が完了しているので第1のカードソケット104に関する検査を完と了し、ステップS107へ移行する。
【0028】
ステップS107では、第2のカードソケット110に関する検査を行うため、管理テーブルMTの状態変数から第2の状態信号C2を参照する。第2の状態信号C2の値が「未装着」を示す場合にはステップS109に処理を移行する。ステップS109では、カード種別の識別が未完了であることを示すためにソケット2のカード種別変数Type2に「NULL」を代入して第1のカードソケット104に関する検査を完了とし、ステップS1のカード種別の識別処理を終了する。また、ステップS107において、第2の状態信号C2の値が「装着」を示す場合にはステップS108に処理を移行する。ステップS108では、ソケット2のカード種別変数Type2の値を検査し、値が「NULL」を示す場合には処理をステップS110へと移行する。ステップS110では、第2のカードソケットに装着されたカード種別を識別するために、第3のスイッチ制御信号C5で第3のスイッチ109を操作し、第2のカードソケット110から導かれる信号線がカード識別/経路制御手段105へと接続されようにし、当該カードのアプリケーション識別子を検査する。検査結果が第1のアプリケーションに割当てられたアプリケーション識別子と一致する場合には、ソケット2のカード種別変数Type2に「AP1」を代入し、一致しない場合には「AP2」を代入して、第2のカードソケット110に関する検査を完了とし、ステップS1のカード種別の識別処理を終了する。なお、ステップS108において、ソケット2のカード種別変数Type2の値が「NULL」でない場合には、カード種別の識別が完了しているので第2のカードソケット104に関する検査を完了とし、ステップS1のカード種別の識別処理を終了する。以上のことから、第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110に装着されたカードの種別は識別可能になる。なお、本実施例のカード種別の識別処理S1では第1のカードソケット104から第2のカードソケット110の順で説明を行ったが、処理の順番が入れ替わっても問題ない事は自明である。
【0029】
次に、ステップS2で行う経路制御処理に関する詳細な手順の一例について、図6を用いて説明する。経路制御処理S2では、先ず第1のカードソケット104に装着されたカードの接続先を制御するため、ステップS201において管理テーブルMTからソケット1のカード種別変数Type1を参照する。ソケット1のカード種別変数Type1の値が「NULL」と一致する場合には、カード種別の識別ができないので接続先の制御は行わず、第1のカードソケット104に関する接続先の制御を完了しステップS207へ移行する。また、ステップS201において、ソケット1のカード種別変数Type1の値が「NULL」と一致しない場合にはステップS202に処理を移行する。ステップS202では、管理テーブルMTからソケット1のカード種別変数Type1の値を参照し、その値が「AP1」を示す場合には、第1のカードソケット104に装着されたカードが第1のICカード2と判定できるので処理をステップS203へと移行する。ステップS203では、第1のカードソケット104に装着された第1のICカード2の信号線を自動料金支払い処理手段103へと導くように、第1のスイッチ制御信号C3で第1のスイッチ107を制御する。ステップS204は、第1のICカード2の信号線が同時に汎用カード処理手段106にも接続されないようにするための例であり、第2のスイッチ制御信号C4で第2のスイッチ108を制御して、汎用カード処理手段106と第2のカードソケット110を接続するようにする。また、ステップS202において、ソケット1のカード種別変数Type1の値が「AP2」を示す場合には、第1のカードソケット104に装着されたカードが第2のICカード3と判定できるので処理をステップS205へと移行する。ステップS205では、第1のカードソケット104に装着された第2のICカード3の信号線を汎用カード処理手段106へと導くように、第2のスイッチ制御信号C4で第2のスイッチ108を制御する。ステップS206は、第2のICカード3の信号線が同時に自動料金支払い処理手段103にも接続されないようにするための例であり、第1のスイッチ制御信号C3で第1のスイッチ107を制御して、自動料金支払い処理手段103と第2のカードソケット110を接続するようにする。以上の処理により第1のカードソケット104に装着されたカードの接続先の制御は完了となる。
【0030】
ステップS207では、第2のカードソケット110に装着されたカードの接続先を制御するため、管理テーブルMTからソケット2のカード種別変数Type2を参照する。ソケット2のカード種別変数Type2の値が「NULL」と一致する場合には、カード種別の識別ができないので接続先の制御は行わず、第2のカードソケット110に関する接続先の制御を完了し、ステップS2の経路制御処理を終了する。また、ステップS207において、ソケット2のカード種別変数Type2の値が「NULL」と一致しない場合にはステップS208に処理を移行する。ステップS208では、管理テーブルMTからソケット2のカード種別変数Type2の値を参照し、その値が「AP1」を示す場合には、第2のカードソケット110に装着されたカードが第1のICカード2と判定できるので処理をステップS209へと移行する。ステップS209では、第2のカードソケット110に装着された第1のICカード2の信号線を自動料金支払い処理手段103へと導くように、第1のスイッチ制御信号C3で第1のスイッチ107を制御する。ステップS210は、第1のICカード2の信号線が同時に汎用カード処理手段106にも接続されないようにするための例であり、第2のスイッチ制御信号C4で第2のスイッチ108を制御して、汎用カード処理手段106と第1のカードソケット104を接続するようにする。また、ステップS208において、ソケット2のカード種別変数Type2の値が「AP2」を示す場合には、第2のカードソケット110に装着されたカードが第2のICカード3と判定できるので処理をステップS211へと移行する。ステップS211では、第2のカードソケット110に装着された第2のICカード3の信号線を汎用カード処理手段106へと導くように、第2のスイッチ制御信号C4で第1のスイッチ108を制御する。ステップS212は、第2のICカード3の信号線が同時に自動料金支払い処理手段103にも接続されないようにするための例であり、第1のスイッチ制御信号C3で第1のスイッチ107を制御して、自動料金支払い処理手段103と第1のカードソケット104を接続するようにする。以上の処理により第2のカードソケット104に装着されたカードの接続先の制御は完了となり、ステップS2の経路制御処理は終了する。以上のことから、第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110に装着されたカードの種別に応じて、接続先を任意に選択する制御が可能になる。なお、本実施例の経路制御処理S2では、第1のカードソケット104から第2のカードソケット110の順で説明を行ったが、処理の順番が入れ替わっても問題ない事は自明である。
【0031】
本実施例によれば、カード識別/経路制御手段105によって、第1のカードソケット104に装着されたカードの種別と第2のカードソケット110に装着されたカードの種別とを識別し、第1のICカード2と識別した場合には当該カードが装着されたカードソケットと自動料金支払い処理手段103とを接続し、第2のICカード3と識別した場合には当該ICカードが装着されたカードソケットと前記汎用カード処理手段106とを接続するように、自動料金支払い処理手段103及び汎用カード処理手段106と第1のカードソケット104及び第2のカードソケット110との接続を組替えるように制御することが可能になる。これにより、任意のカードソケットにICカードを装着しても第1のアプリケーションによる自動料金支払いサービスや第2のアプリケーションによるサービスが利用できルようになり、カードの誤装着を解消できる。また、これにより運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【0032】
また、カード識別/経路制御手段において、ICカードに搭載されるアプリケーションを特定するためのアプリケーション識別子を利用し、前記第1のアプリケーションを識別するためのアプリケーション識別子がカードに格納されている場合には当該カードを第1のICカードと識別し、カード内にアプリケーション識別子が存在しない場合には当該カードを第2のICカードと識別するので、第2のICカードとしては多様なアプリケーションを搭載したICカードを利用する事ができる。また、アクセス制限のないアプリケーション識別子を利用するので、ICカードに搭載されたアプリケーション毎固有のセキュリティ等の機能への対応を必要としない。このことから、処理に時間を要する暗号等の処理が省略でき、識別時間を短縮する効果も得られる。
【実施例2】
【0033】
以下本発明の実施例2について説明する。
図4は本発明の移動局装置1を構成するカード識別/経路制御手段105における制御手順の他の実施の形態である実施例2を示した図である。図7は誤装着判定処理S4の詳細な手順の一実施例を示した図である。その他は実施例1と同様である。
【0034】
本実施例は、前記カード種別検出処理S1から前記経路制御処理S2へ処理を移行する過程に誤装着判定処理S4を設け、同種のカードがカードソケットに装着された場合の処理を行う。この誤装着判定処理S4に関する詳細な手順の一例について、図7を用いて説明する。誤装着判定処理S4では、先ずステップ401において、管理テーブルMTからソケット1のカード種別変数Type1とソケット2のカード種別変数Type2を参照し値を比較する。値が一致しない場合は、同種のカードの装着はないと判定できるので処理は行わずステップS4の誤装着判定処理を終了する。値が一致した場合には、同種のカードが装着されていると判定できるので、次にそのカードの種別を判定するための処理ステップ402へ移行する。ステップS402では、例えば、ソケット1のカード種別変数Type1の値を「AP1」と比較し、装着されたカードが前記第1のICカード2であることを判定する処理を行い、前記第1のICカード2と判定された場合にはステップS404へ移行し、できなかった場合にはステップS403へ移行する。ステップS403では、例えば、ソケット1のカード種別変数Type1の値を「AP2」と比較し、装着されたカードが前記第2のICカード3であることを判定する処理を行い、前記第2のICカード3と判定された場合にはステップS404へ移行し、できなかった場合には両ソケットにカード装着されてない状態としてステップS406へ移行する。以上の処理により、同種のカードがカードソケットに装着されたことと、そのカードの種別を特定することが可能になる。
【0035】
ステップS404、ステップS405、ステップS406は、いずれもカードの誤装着に関する情報を利用者に伝達するための処理であり、ステップS404では前記第1のICカード2が両方のソケットに装着されたことを示す信号を生成し、ステップS405では前記第2のICカード3が両方のソケットに装着されたことを示す信号を生成し、ステップS406では両方のソケットにカードが装着されていないことを示す信号を生成する。これらの生成された信号は、指示信号C8として情報伝達手段111へ渡される。情報伝達手段111は指示信号C8で渡された内容に応じてカードの装着状態を当該移動局装置1の利用者に対して通知する。この際の通知方法は様々であり、例えば、光、文字、画像、音、音声等の伝達手段を利用し、同種のカードがカードソケットに装着されたことのみの通知や、カードの種別を特定した通知が可能である。
【0036】
なお、ステップS404では、前記第1のICカード2が両方のソケットに装着された状態にあることが判定できるので、例えば、管理テーブルMTを操作して、いずれか一方のカードを自動料金支払い処理手段103と接続するようにし、誤装着の状態にあっても料金所における自動料金支払いサービスの利用を可能にすることもできる。
【0037】
本実施例によれば、カード識別/経路制御手段において、ICカードの種別を識別した結果を比較することで、当該カードの識別と同種のカードであることの検知を行うので、利用者にいずれか一方のサービスが利用できない状態にあることを認識させることや、利用できないサービスの種別を認識させることが可能になる。よって、利用者は、利用できると思い込んでいたサービスの一部が利用できない状況にあることを認識することにより、誤装着を事前に解消する機会を得ることが可能になる。また、これにより運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【0038】
また、カード識別/経路制御手段105において、I Cカードの種別を識別した結果を比較することで、当該カードが前記第1のICカードであることの識別と同種のカードであることの検知を行い、いずれか一方のICカードを前記自動料金支払い処理手段に接続するので、同種のカードが装着された場合でも料金所における自動料金支払いサービスは利用可能になる。よって、運転中にカードの再装着を試みるという行為も抑止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】移動局装置の構成の一実施例を示した図である。
【図2】移動局装置のカード識別/経路制御手段105が管理する管理テーブルの一実施例を示した図である。
【図3】移動局装置のカード識別/経路制御手段105における制御手順の一実施例を示した図である。
【図4】移動局装置のカード識別/経路制御手段105における制御手順の他の一実施例を示した図である。
【図5】カード識別検出処理S1の詳細な手順の一実施例を示した図である。
【図6】経路制御処理S2の詳細な手順の一実施例を示した図である。
【図7】誤装着判定処理S4の詳細な手順の一実施例を示した図である。
【図8】従来技術による自動料金支払いシステムの移動局装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…移動局装置
2…第1のICカード
3…第2のICカード
101…アンテナ
102…路車間通信手段
103…自動料金支払い処理手段
104…第1のカードソケット
105…カード識別/経路制御手段
106…汎用カード処理手段
107…第1のスイッチ
108…第2のスイッチ
109…第3のスイッチ
110…第2のカードソケット
111…情報伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料道路における通行料金の支払いを主たる目的とした第1のアプリケーションを少なくとも搭載した第1のICカードと、有料道路における通行料金の支払い以外の用途に使用する第2のアプリケーションを搭載した第2のICカードと、車両に搭載され第1のICカード及び第2のICカードを装着可能であって、路上に設置された基地局装置との間で無線通信を行う狭域通信システムの移動局装置において、
基地局装置との間で無線通信を行うための路車間通信手段と、
第1のICカードと路車間通信手段を利用し、基地局装置との間において有料道路の通行料金の支払いに係る通信処理を行う自動料金支払い処理手段と、
第2のICカードと路車間通信手段を利用し、基地局装置との間において第2のアプリケーションの利用に係る通信処理を行う汎用カード処理手段と、
第1のICカード、もしくは第2のICカードが装着可能な第1のカードソケットと、
第1のICカード、もしくは第2のICカードが装着可能な第2のカードソケットと、
自動料金支払い処理手段及び汎用カード処理手段と、第1のカードソケット及び第2のカードソケットとの接続を組替えるカード識別/経路制御手段と、を具備し、
カード識別/経路制御手段は、第1のカードソケットまたは第2のカードソケットに装着されたカードの種別を識別し、第1のICカードと識別した場合には当該カードが装着されたカードソケットと自動料金支払い処理手段とを接続し、第2のICカードと識別した場合には当該ICカードが装着されたカードソケットと汎用カード処理手段とを接続するようにして、自動料金支払い処理手段及び汎用カード処理手段と第1のカードソケット及び第2のカードソケットとの接続を組替えることを特徴とする狭域通信システムの移動局装置。
【請求項2】
請求項1記載のカード識別/経路制御手段は、
前記第1のカードソケットまたは前記第2のカードソケットに装着されたカードから当該カードに格納されたアプリケーション識別子を読み取るように動作し、読み取ったアプリケーション識別子の内容が、前記第1のアプリケーションを指示する識別子と一致する場合には当該カードの種別を前記第1のICカードと識別するようにし、一致しない場合には当該カードの種別を前記第2のICカードと識別するようにしたことを特徴とする狭域通信システムの移動局装置。
【請求項3】
請求項1記載のカード識別/経路制御手段は、
前記第1のカードソケットに装着されたカードの識別結果と、前記第2のカードソケットに装着されたカードの識別結果を比較し、比較結果が一致しかつカードの種別が前記第1のICカードである場合には、いずれか一方のICカードを前記自動料金支払い処理手段に接続するようにしたことを特徴とする狭域通信システムの移動局装置。
【請求項4】
請求項1記載のカード識別/経路制御手段は、
前記第1のカードソケットに装着されたカードの識別結果と、前記第2のカードソケットに装着されたカードの識別結果を比較し、比較結果が一致した場合には、少なくとも同種のカードが装着されたことを示す状態通知を行うようにしたことを特徴とする狭域通信システムの移動局装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−195689(P2006−195689A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5840(P2005−5840)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】