説明

現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】現像剤担持体上に担持されて現像剤規制部材で規制された後の現像剤の一部がケース部材等に溜まることなく、出力画像上にホタル画像が生じることのない、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤規制部材23cを保持するとともに、現像剤搬送部材23b1の上方を覆うケース部材23rを備える。ケース部材23rは、現像剤搬送部材23b1に対向する現像剤規制部材23cの対向面23c1に続いて現像剤搬送部材23b1に対向する対向面23r1が所定位置まで円弧状に形成され、現像剤搬送部材23b1に対向する現像剤規制部材23cの対向面23c1と、現像剤搬送部材23b1に対向するケース部材23rの対向面23r1と、がなす角θが鈍角となるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置とそこに設置される現像装置及びプロセスカートリッジとに関し、特に、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤を用いた現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤(添加剤等を添加する場合も含むものとする。)を用いて現像工程をおこなう現像装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
2成分現像剤を用いた現像装置は、現像装置内におけるトナー消費に応じて、現像装置の一部に設けられたトナー補給口から現像装置内に適宜にトナーが補給される。補給されたトナーは、現像装置内の現像剤とともに、搬送スクリュ(スクリュオーガ)等の現像剤搬送部材によって撹拌・混合される。撹拌・混合された現像剤は、その一部が現像剤搬送部材によって現像ローラ(現像剤担持体)に供給される。現像ローラに担持された現像剤は、ドクターブレード(現像剤規制部材)によって適量に規制された後に、その2成分現像剤中のトナーが感光体ドラム(像担持体)との対向位置で感光体ドラム上の潜像に付着してトナー像を形成する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−249545号公報
【特許文献2】特開2005−148413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の現像装置は、現像ローラ上に担持されてドクターブレードで規制された後の現像剤の一部が、現像剤搬送部材による搬送経路に戻らずに、現像剤搬送部材の上方を覆うケース部材(上ケース)の一部に溜まってしまうことがあった。そして、ケース部材の一部に溜まった現像剤が徐々に圧縮された後に現像ローラ上に落下して、現像ローラ上に再び担持されて感光体ドラム上に付着することで、出力画像上にホタル画像(画像部において、中心部にトナーの核が生じてその周囲が白く抜けてしまう現象である。)が生じてしまうことがあった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、現像剤担持体上に担持されて現像剤規制部材で規制された後の現像剤の一部がケース部材等に溜まることなく、出力画像上にホタル画像が生じることのない、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決するために研究を重ねた結果、次の事項を知るに至った。
すなわち、現像剤担持体上に担持されて現像剤規制部材で規制された後の現像剤は、現像剤搬送部材に対向する現像剤規制部材の対向面や、現像剤搬送部材に対向するケース部材の対向面、に沿うように流動して現像剤搬送部材による搬送経路に戻される。したがって、現像剤搬送部材に対向する現像剤規制部材の対向面から現像剤搬送部材に対向するケース部材の対向面にかけての形状(現像剤規制部材の先端からケース部材の所定位置までの、現像剤搬送部材に対向する対向面の形状)が、緩やかでなく凹凸があるとその部分がデッドスペースになって現像剤が滞留しやすくなる。
【0008】
この発明は以上述べた事項に基づくものであり、すなわち、この発明の請求項1記載の発明にかかる現像装置は、現像剤を収容するとともに、像担持体上に形成される潜像を現像する現像装置であって、前記像担持体に対向するとともに、現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に対向するとともに、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、前記現像剤担持体に対向するとともに、現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤搬送部材と、前記現像剤規制部材を保持するとともに、前記現像剤搬送部材の上方を覆うケース部材と、を備え、前記ケース部材は、前記現像剤搬送部材に対向する前記現像剤規制部材の対向面に続いて前記現像剤搬送部材に対向する対向面が所定位置まで円弧状に形成され、前記現像剤搬送部材に対向する前記現像剤規制部材の対向面と、前記現像剤搬送部材に対向する前記ケース部材の対向面と、がなす角が鈍角となるように形成されたものである。
【0009】
また、請求項2記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記ケース部材の前記所定位置を、前記現像剤搬送部材の最上部を超えた位置としたものである。
【0010】
また、請求項3記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ケース部材は、その外面に冷却フィンを具備したものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記現像剤搬送部材は、現像剤を長手方向に搬送するように構成され、前記ケース部材は、前記現像剤搬送部材に対向する前記円弧状の対向面の曲率が、前記現像剤搬送部材の搬送方向上流側に比べて前記現像剤搬送部材の搬送方向下流側が小さくなるように形成されたものである。
【0012】
また、請求項5記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記現像剤搬送部材は、現像剤を長手方向に搬送するように構成され、前記現像剤搬送部材の下方であって前記現像剤担持体に対向する位置に配設されるとともに当該現像剤担持体から離脱された現像剤を搬送する第2現像剤搬送部材をさらに備えたものである。
【0013】
また、請求項6記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記現像剤担持体は、その周囲に複数の磁極が形成され、前記複数の磁極のうち前記現像剤規制部材に対向する位置に形成される磁極の法線方向の磁束密度が80〜120mTになるように形成されたものである。
【0014】
また、この発明の請求項7記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたものである。
【0015】
また、この発明の請求項8記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0016】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるユニットと定義する。
【0017】
また、本願において、「円弧状」とは、現像剤搬送部材(又は、現像装置の内部)側からみて凹状に形成された曲面であって略円弧状も含むものと定義する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、現像剤規制部材の先端からケース部材の所定位置までの、現像剤搬送部材に対向する対向面の形状を最適化しているために、現像剤担持体上に担持されて現像剤規制部材で規制された後の現像剤の一部がケース部材等に溜まることなく、出力画像上にホタル画像が生じることのない、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0020】
まず、図1にて、実施の形態における画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
書込み部2A〜2Dは、画像情報に基いて帯電工程後の感光体ドラム21(像担持体)に静電潜像を書き込むための装置である。書込み部2A〜2Dは、ポリゴンミラー3A〜3Dや光学素子4A〜4D等を用いた光走査装置である。なお、書込み部として、光走査装置の替わりにLEDアレイを用いることもできる。
給紙部61は、記録紙、OHP等の記録媒体Pを格納して、画像形成時には記録媒体Pを転写ベルト30に向けて給送する。
【0021】
転写ベルト30は、記録媒体Pをその表面に静電的に吸着させて搬送して感光体ドラム21上に形成されたトナー像を記録媒体P上に転写するための無端状ベルトであって、その外周面上に吸着ローラ64とベルトクリーナ65とを設けている。
転写ベルト30を介して感光体ドラム21に対向する転写ローラ24は、芯金と芯金を被覆する導電性弾性層とを有する。転写ローラ24の導電性弾性層は、ポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を中抵抗に調整した弾性体である。
【0022】
定着部66は、加熱ローラ68および加圧ローラ67を有し、記録媒体P上のトナー像を圧力と熱とによって記録媒体Pに定着させる。
転写ベルト30に沿って縦方向に配設された4つのプロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKは、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成するためのものである。
【0023】
各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BK上には、キャリア(磁性キャリア)と各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)のトナー(トナー粒子)とを現像装置23に供給する剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKが設置されている。
プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BK、及び、剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKは、転写ベルト30を回転支軸を中心に開放して装置本体1から着脱することができる。
【0024】
本実施の形態における画像形成装置は、複写機及びプリンタとして機能する複合型の画像形成装置である。複写機として機能する場合には、スキャナから読み込まれた画像情報に対してA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理が施されて書込みデータに変換される。プリンタとして機能する場合には、コンピュータ等から送信されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施されて書込みデータに変換される。
【0025】
画像形成時には、書込み部2A〜2Dからプロセスカートリッジ20BK、20M、20C、20Yに対して、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの画像情報に応じた露光光がそれぞれ照射される。すなわち、各光源から発せられた露光光(レーザ光)がポリゴンミラー3A〜3D、光学素子4A〜4D等を通過して、各感光体ドラム21上に照射される。これによって、各プロセスカートリッジ20BK、20M、20C、20Yの感光体ドラム21(像担持体)上に、露光光に応じたトナー像が形成される。そして、このトナー像が、記録媒体Pに転写されることになる。
【0026】
給紙部61から給送された記録媒体Pは、レジストローラ63の位置で一旦タイミングを合わせて、転写ベルト30の位置に搬送される。転写ベルト30の送入位置に配設された吸着ローラ64は、電圧の印加によって送入された記録媒体Pを転写ベルト30に吸着させる。転写ベルト30の矢印方向の走行にともない移動する記録媒体Pは、各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKの位置を順次通過して各色のトナー像が重ねて転写される。
【0027】
カラーのトナー像が転写された記録媒体Pは、転写ベルト30から分離して定着部66に達する。記録媒体P上のトナー像は、加熱ローラ68及び加圧ローラ67に挟まれつつ加熱されることで記録媒体P上に定着される。一方、記録媒体Pが分離した後の転写ベルト30表面は、その後にベルトクリーナ65の位置に達して、その表面に付着したトナー等の汚れがクリーニングされる。
【0028】
次に、画像形成装置におけるプロセスカートリッジ及び剤カートリッジについて詳述する。
なお、各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKはほぼ同一構造であって、各剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKもほぼ同一構造であるために、図2にてプロセスカートリッジ及び剤カートリッジは符号のアルファベット(Y、C、M、BK)を除して図示する。また、書込み部は符号のアルファベット(A〜D)を除して図示する。
【0029】
図2は、装置本体1に設置されたプロセスカートリッジ20及び剤カートリッジ28を示す拡大図である。図3は、プロセスカートリッジ20に設置された現像装置23を示す拡大図である。図4は、現像装置23における循環経路を図3に示す矢印X方向から長手方向にみた断面図である。図5は、図4の現像装置23における循環経路のY1−Y1断面を示す断面図である。図6は、図4の現像装置23における循環経路のY2−Y2断面を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、プロセスカートリッジ20は、像担持体としての感光体ドラム21、帯電部22、現像装置23(現像部)、クリーニング部25が一体化されたものであって、プレミックス現像方式(キャリアの補給・排出を適宜におこなう現像方式である。)が採用されている。
像担持体としての感光体ドラム21は、負帯電の有機感光体であって、不図示の回転駆動機構によって反時計方向に回転駆動される。
【0031】
帯電部22は、芯金上に、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成した弾性を有する帯電ローラである。帯電部22の中抵抗層の材質としては、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いることもできる。
クリーニング部25は、感光体ドラム21に摺接するクリーニングブラシ(又は、クリーニングブレード)が設置されていて、感光体ドラム21上の未転写トナーを機械的に除去・回収する。
【0032】
現像装置23は、現像剤担持体としての2つの現像ローラ23a1、23a2が感光体ドラム21に近接するように配置されていて、双方の対向部分には感光体ドラム21と磁気ブラシとが接触する現像領域が形成される。現像装置23内には、トナーTとキャリアCとからなる現像剤G(2成分現像剤)が収容されている。そして、現像装置23は、感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する(トナー像を形成する。)。なお、現像装置23の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0033】
ここで、本実施の形態における現像装置23は、プレミックス現像方式のものであって、現像装置23内に適宜に新品のキャリアC(現像剤G)が剤カートリッジ28から供給されるとともに、劣化した現像剤Gが現像装置23の外部に設置された剤貯留容器70に向けて排出される。
図2を参照して、剤カートリッジ28は、その内部に現像装置23内に供給するための現像剤G(トナーT及びキャリアC)を収容している。そして、剤カートリッジ28は、現像装置23に新品のトナーTを供給するトナーカートリッジとして機能するとともに、現像装置23に新品のキャリアCを供給する供給手段として機能する。具体的に、現像装置23に設置された磁気センサ26(図4を参照できる。)によって検知されるトナー濃度(現像剤G中のトナーの割合である。)の情報に基いて、シャッタ機構80の開閉動作をおこなって、剤カートリッジ28から現像装置23内に向けて現像剤Gを適宜に供給する。
なお、本実施の形態では、剤カートリッジ28の現像剤Gにおける、キャリアCに対するトナーTの混合率(トナー濃度)が比較的高く設定されている。
供給管29は、剤カートリッジ28から供給される現像剤G(トナーT及びキャリアC)を現像装置23内に確実に導くためのものである。すなわち、剤カートリッジ28から排出された現像剤Gは、供給管29を介して、現像装置23内に供給される。
【0034】
次に、感光体ドラム21上でおこなわれる作像プロセスについて説明する。
図2を参照して、感光体ドラム21が反時計方向に回転駆動されると、まず、帯電部22の位置で感光体ドラム21の表面が一様に帯電される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、露光光Lの照射位置に達して、書込み部2による露光工程がおこなわれる。すなわち、露光光Lの照射によって感光体ドラム21上を画像情報に応じて選択的に除電することで、照射されなかった非画像部の電位との差(電位コントラスト)を発生させて静電潜像を形成する。なお、この露光工程は、感光体ドラム21の感光層中で電荷発生物質が光を受けて電荷を発生して、このうち正孔が感光体ドラム21表面の帯電電荷と打ち消しあうものである。
【0035】
その後、潜像が形成された感光体ドラム21表面は、現像装置23との対向位置に達する。感光体ドラム21上の静電潜像は、現像ローラ23a1、23a2上の磁気ブラシと接触して、磁気ブラシ中の負帯電されたトナーTが付着されて可視化される。
詳しくは、上方の現像ローラ23a1の磁極による磁力で汲み上げられた現像剤Gは、現像剤規制部材としてのドクターブレード23cによって適量化された後に、感光体ドラム21との対向部である現像領域(2つの現像ローラ23a1、23a2と感光体ドラム21との対向領域である。)に搬送される。現像領域において穂立ちされたキャリアCが感光体ドラム21を摺擦する。このとき、キャリアCに混合されているトナーTは、キャリアCとの摩擦によって負帯電されている。これに対して、キャリアCは正帯電されている。不図示の電源部から現像ローラ23a1、23a2に対して、所定の現像バイアスが印加される。これによって、現像ローラ23a1、23a2と感光体ドラム21との間に電界が形成されて、負帯電されたトナーTが電界によって感光体ドラム21上の画像部にのみ選択的に付着してトナー像を形成する。
【0036】
その後、トナー像が形成された感光体ドラム21表面は、転写ベルト30及び転写ローラ24との対向位置に達する。そして、このタイミングに合わせてその対向位置に搬送された記録媒体P上に、感光体ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写ローラ24には、所定の電圧が印加されている。
その後、トナー像が転写された記録媒体Pは、定着部66を通過して、排出ローラ69から装置外部に排出される。
【0037】
一方、転写工程時に記録媒体Pに転写されずに感光体ドラム21上に残留したトナーT(未転写トナー)は、感光体ドラム21上に付着したままクリーニング部25との対向部に達する。そして、感光体ドラム21上の未転写トナーは、クリーニング部25で除去・回収される。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0038】
以下、現像装置23の構成・動作について詳述する。
図3を参照して、現像装置23は、現像剤担持体としての現像ローラ23a1、23a2、搬送スクリュ23b1〜23b3(オーガスクリュ)、現像剤規制部材としてのドクターブレード23c、キャリア捕集ローラ23k、スクレーパ23m、排出スクリュ23n、ケース部材としての上ケース23r、等で構成されている。また、現像装置23内には、現像剤Gを搬送して循環経路を形成する3つの現像剤搬送部B1〜B3が形成されている。
【0039】
現像剤担持体としての現像ローラ23a1、23a2は、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂等の非磁性体を円筒形に形成してなるスリーブが不図示の回転駆動機構によって時計方向に回転されるように構成されている。現像ローラ23a1、23a2のスリーブ内には、スリーブの周面に現像剤Gの穂立ちを生じるように磁界を形成するマグネットが固設されている。マグネットから発せられる法線方向磁力線に沿うように、現像剤G中のキャリアCがスリーブ上にチェーン状に穂立ちする。このチェーン状に穂立ちしたキャリアCに帯電したトナーTが付着されて、磁気ブラシが形成される。磁気ブラシは、スリーブの回転によってスリーブと同方向(時計方向)に移送される。
【0040】
詳しくは、現像ローラ23a1、23a2の周囲には、それぞれ、スリーブ内のマグネットによって、複数の磁極が形成されている。第1の現像ローラ23a1の周囲には、第1現像剤搬送部B1に収容された現像剤を汲上げるための汲上げ磁極、ドクターブレード23cに対向する位置に形成されたドクタ対向磁極、感光体ドラム21との対向領域に形成された主磁極、第2の現像ローラ23a2との対向位置まで現像剤を搬送するための搬送磁極、等が形成されている。第2の現像ローラ23a2の周囲には、第1の現像ローラ23a1上の現像剤を受け取るための受取り磁極、感光体ドラム21との対向領域に形成された主磁極、キャリア捕集ローラ23kとの対向位置に形成された捕集ローラ対向磁極、第2現像剤搬送部B2に向けて現像剤を離脱させるための剤離れ磁極(剤離れ極)、等が形成されている。
【0041】
現像剤規制部材としてのドクターブレード23cは、現像領域の上流側に設置されていて、第1の現像ローラ23a1上に担持された現像剤を適量に規制する。本実施の形態におけるドクターブレード23cは、SUS316やXM7等の非磁性金属材料で形成された板厚が2mm程度の板状部材である。なお、ドクターブレード23cの対向面23c側に、SUS430等の磁性金属材料で形成された板厚が0.3mm程度の薄板を設置することもできる。
【0042】
3つの搬送スクリュ23b1〜23b3は、軸部上に螺旋状にスクリュ部が形成されたものであって、現像装置23内に収容された現像剤Gを長手方向(図2の紙面垂直方向である。)に循環しながら撹拌・混合する。
現像剤搬送部材としての第1搬送スクリュ23b1は、第1現像剤搬送部B1であって現像ローラ23a1に対向する位置に配設されていて、現像剤Gを水平方向に搬送する(図4の白矢印に示す左方向の搬送である。)とともに、現像ローラ23a1上に現像剤23aを供給する。換言すると、第1搬送スクリュ23b1は、現像ローラ23a1に対向するとともに、現像ローラ23a1に現像剤Gを長手方向(現像ローラ23a1の回転軸方向である。)に搬送しながら供給する。
【0043】
第2現像剤搬送部材としての第2搬送スクリュ23b2は、第2現像剤搬送部B2に設置されている。第2搬送スクリュ23b2は、第1搬送スクリュ23b1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配設されている。そして、現像ローラ23a2から離脱した現像剤G(現像工程後に剤離れ極によって現像ローラ23a2上から強制的に離脱された現像剤Gある。)を水平方向に搬送する(図4の白矢印に示す左方向の搬送である。)。換言すると、第2搬送スクリュ23b2は、第1現像剤搬送部B1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配設されるとともに、現像ローラ23a2から離脱された現像剤Gを長手方向に搬送する。
第1搬送スクリュ23b1及び第2搬送スクリュ23b2は、現像ローラ23a1、23a2や感光体ドラム21と同様に、回転軸がほぼ水平になるように配設されている。
【0044】
第3現像剤搬送部材としての第3搬送スクリュ23b3は、第3現像剤搬送部B3に設置されている。第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路の下流側と、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側と、を直線的に結ぶように、水平方向に対して斜めに配設されている(図4を参照できる。)。そして、第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2によって搬送された現像剤Gを第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側に搬送するとともに、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の下流側から落下経路23fを介して循環される現像剤Gを第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側に搬送する(図4の白矢印に示す右斜め上方への搬送である。)。換言すると、第3搬送スクリュ23b3は、第2現像剤搬送部B2によって搬送された現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送するとともに、第1現像剤搬送部B1の下流側に達した現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送する。
【0045】
なお、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路(第1現像剤搬送部B1)と、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路(第2現像剤搬送部B2)と、第3搬送スクリュ23b3による搬送経路(第3現像剤搬送部B3)と、は壁部によって隔絶されている。
図4を参照して、第2現像剤搬送部B2の下流側と、第3現像剤搬送部B3の上流側と、は第1中継部23gを介して連通している。また、第3現像剤搬送部B3の下流側と、第1現像剤搬送部B1の上流側と、は第2中継部23hを介して連通している。また、第1現像剤搬送部B1の下流側と、第3現像剤搬送部B3の上流側と、は落下経路23fを介して連通している。
【0046】
このような構成により、3つの現像剤搬送部B1〜B3(搬送スクリュ23b1〜23b3)によって、現像装置23において現像剤Gを長手方向に循環させる循環経路が形成されることになる。ここで、現像装置23が稼動されると、装置内に収容された現像剤は図4中の斜線で示すような状態で流動する。図4を参照して、第1現像剤搬送部B1において、下流側における現像剤の剤面が上流側の剤面に比べて低くなっているのは、搬送中の現像剤の一部が現像ローラ23a1に供給されているためである。すなわち、現像ローラ23a1に供給されなかった現像剤は、落下経路23fを介して第3現像剤搬送部B3の上流側に移動することになる。
なお、第3現像剤搬送部B3には磁気センサ26(トナー濃度センサ)が設置されている。そして、磁気センサ26によって検知されるトナー濃度の情報に基いて、剤カートリッジ28から現像装置23内に向けて所定のトナー濃度の現像剤Gが供給される。本実施の形態では、現像装置23内の現像剤Gのトナー濃度が4〜7重量%になるように制御されている。
【0047】
ここで、図4及び図5を参照して、第1現像剤搬送部B1の壁部には、現像装置23内に収容された現像剤Gの一部を外部(剤貯溜容器70)に排出するための排出口23d(排出手段)が設けられている。詳しくは、排出口23dは、剤カートリッジ28から現像装置23内に現像剤Gが供給されて装置内の現像剤量が増加してその位置に搬送される現像剤の剤面(上面)が所定高さを超えたときに、その余剰分の現像剤Gを剤貯留容器70に向けて排出するためのものである。すなわち、余剰分の現像剤Gは、排出口23dの下部の高さを超えて、排出口23dから排出されて排出経路71を経由して剤貯留容器70に向けて重力落下していく。このように、トナーTの母体樹脂や外添剤によって汚染されて劣化したキャリアが自動的に現像部の外部に排出されるので、経時においても画像品質の劣化を抑止することができる。
なお、図2、図4等では図示を省略しているが、排出経路71中には、排出口23dから排出された現像剤を水平方向に搬送するための排出スクリュ23nが設置されている(図3を参照できる。)。
【0048】
また、現像装置23における現像剤の循環経路において、上述した排出口23d(排出手段)が配設された位置を通過せずに現像剤Gの一部を循環経路の上流側に戻すためのバイパス経路が形成されている。具体的には、図4及び図6を参照して、第1現像剤搬送部B1であって、排出口23dの上流側(排出口23dに比較的近接した位置である。)に、開口23eが設けられている。そして、この開口23eがバイパス経路の入口となって、バイパス経路の出口が第3搬送スクリュ23b3による搬送経路中(長手方向中央近傍である。)に配設されている。
【0049】
このように、現像装置23における現像剤の循環経路にバイパス経路を設けることで、現像装置内の現像剤に波状の偏り等が生じても、排出口23dから排出される現像剤量にバラツキが生じて、必要量を超えた現像剤が現像装置23から排出される不具合を抑止することができる。
【0050】
図7は、現像装置23における現像剤の循環経路において、現像剤に波状の偏りが生じた状態を示す図である。このように、現像剤の循環経路では、高低差の大きな波状の偏りが生じる場合がある。このような波状の偏りは、現像装置23の稼動を開始した直後(再起動直後)に顕著にあらわれる。そして、このような波状の偏りが生じた場合には、従来は、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤(図7中の高さH2の現像剤である。)のすべてが排出口23dから排出されてしまっていた。このようにして排出されてしまう現像剤は本来的に排出を予定していないものであるために、このような現象が繰り返し生じると現像装置23内の現像剤量が不足してしまい、現像剤の劣化状態が不安定になったりトナーの帯電量が低下したりして、出力画像上に画像濃度低下等の不具合が生じてしまうことになる。
【0051】
これに対して、本実施の形態では、排出口23dの上流側にバイパス経路に通じる開口23eを設けているために、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤の一部が排出口23dから排出されることなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることになる。これにより、排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合を抑止することができる。
【0052】
ここで、バイパス経路における開口23eの下部の高さが、排出口23dの下部の高さよりも高さH1だけ高くなるように構成されている。
これにより、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤のうち、高さ(H2−H1)分の現像剤は排出口23dから排出されることなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることになる。これにより、排出手段の本来の機能を維持しつつ、排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合を確実に抑止することができる。ここで、排出口23dと開口23eとの長手方向の距離Wは、なるべく短い方が好ましい。
【0053】
ここで、図3を参照して(図2、図4等では図示を省略している。)、本実施の形態では、第2の現像ローラ23a2の下方(回転方向下流側)であって、感光体ドラム21に対向する位置に、キャリア捕集ローラ23kが設置されている。さらに、キャリア捕集ローラ23kに当接する位置に、スクレーパ23mが設置されている。
キャリア捕集ローラ23kは、ステンレス等からなる円筒体内に所定の磁界を形成するマグネットが固設されたものであって、現像装置23内から移動(飛翔)して感光体ドラム21に付着したキャリアを捕集するためのものである。キャリア捕集ローラ23kは、図3の反時計方向に回転駆動される。キャリア捕集ローラ23kによって捕集されて担持されたキャリアは、そのほとんどが第2の現像ローラ23a2との対向位置で現像ローラ23a2上に移行して、現像ローラ23a2の剤離れ極(剤離れ磁極)の位置で現像ローラ23a2から離脱して第2現像剤搬送部B2内に回収される。一方、現像ローラ23a2上に移行せずにキャリア捕集ローラ23k上に残留・担持されたキャリアは、スクレーパ23mによって機械的に掻き取られて、第2現像剤搬送部B2内に回収される。このように、キャリア捕集ローラ23kを設置することで、感光体ドラム21上に付着したキャリアを現像装置23内に回収できるために、異常画像(ホタル画像、白抜け画像)の発生が抑止されるとともに、現像装置23内のキャリアが不足する不具合が抑止される。
【0054】
なお、本実施の形態では、現像ローラ23a1、23a2の外径が30mm、現像ローラ23a1、23a2の外周面上の線速が748mm/秒、キャリア捕集ローラ23kの外径が16mm、キャリア捕集ローラ23kの外周面上の線速が10.6mm/秒、プロセス線速(感光体ドラム21の外周面上の線速、及び、記録媒体Pの搬送速度である。)が440mm/秒、程度に設定されている。
また、本実施の形態において用いられるキャリアCは、粒径が55μm、飽和磁化が96emu/g、程度のものである。さらに、本実施の形態において用いられるトナーTは、粒径が6.8μm程度のものである。
【0055】
以下、図3及び図8にて、本実施の形態において特徴的な、現像装置23の構成・動作について詳述する。
図3を参照して、第1搬送スクリュ13b1の上方を覆うケース部材としての上ケース23rは、ドクターブレード23cを保持するように構成されている。詳しくは、ドクターブレード23cには、長手方向両端部と長手方向中央部とに、上ケース23rに対向する面に貫通する長穴(不図示である。)が形成されている。そして、この長穴を介してドクターブレード23c上から上ケース23rに形成された雌ネジ部にネジが螺合されて、ドクターブレード23cが上ケース23rに保持される。ここで、上述した長穴は、ドクターギャップ(ドクターブレード23cと現像ローラ23a1とのギャップである。)を調整するためのものである。また、本実施の形態では、上ケース23rが、アルミニウムにて形成されている。
【0056】
ここで、上ケース23r(ケース部材)は、第1搬送スクリュ23b1に対向するドクターブレード23cの対向面23c1に続いて第1搬送スクリュ23b1に対向する対向面23r1(図3の2点鎖線で示す領域である。)が所定位置まで円弧状に形成されている。さらに、第1搬送スクリュ23b1に対向するドクターブレード23cの対向面23c1と、第1搬送スクリュ23b1に対向する上ケース23rの対向面23r1と、がなす角θ(双方の対向面23c1、23r1が接する位置における角度である。)が鈍角となるように形成されている。
このように、第1搬送スクリュ23b1に対向するドクターブレード23cの対向面23c1から第1搬送スクリュ23b1に対向する上ケース23rの対向面23r1にかけての形状(ドクターブレード23cの先端から上ケース23rの所定位置までの、第1搬送スクリュ23b1に対向する対向面23c1、23r1の形状)は、現像剤が滞留するようなデッドスペースのない、緩やかで凹凸のない形状になる。したがって、現像ローラ23a1上に担持されてドクターブレード23cで規制された後の現像剤Gは、ドクターブレード23cの対向面23c1から上ケース23rの対向面23r1に沿うように、滞留することなくスムーズに流動して、第1現像剤搬送部B1に戻されることになる(図3又は図8(A)の太破線矢印方向の移動である。)。これにより、デッドスペースに現像剤が滞留・圧縮されることによってホタル画像が生じる不具合を未然に抑止することができる。
【0057】
図9にて、従来の現像装置の問題点を整理する。
図9(A)に示すように、ドクターブレード23cの先端からケース部材230rにかけて、そこを沿って現像剤がスムーズに流動するのを妨げるような部分Aがある場合には、その部分Aがデッドスペースとなって現像剤の滞留が生じてしまう。そして、デッドスペースAに滞留した現像剤が徐々に圧縮された後に現像ローラ23a1上に落下して、現像ローラ23a1上に再び担持されて感光体ドラム21上に付着することで、図9(B)に示すように、出力画像上にホタル画像PH(画像部において、中心部にトナーの核が生じてその周囲が白く抜けてしまう現象である。)が生じてしまう。
これに対して、本実施の形態では、第1搬送スクリュ23b1に対向する対向面において、ドクターブレード23cの先端から上ケース23rの所定位置までの形状を最適化しているために、ドクターブレード23cで規制された後の現像剤Gの一部が滞留するデッドスペースを形成することなく、出力画像上にホタル画像PHが生じる不具合を抑止することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態における現像装置23のように、現像剤搬送部材(第1搬送スクリュ23b1)が現像剤を長手方向に搬送するものである場合には、上ケース23rの対向面23r1を円弧状に形成するとともに、ドクターブレード23cの対向面23c1と上ケース23rの対向面23r1とがなす角θを鈍角に形成することで、第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側における現像剤の減少量を小さくすることができる。
詳しくは、先に図4にて説明したように、第1搬送スクリュ23b1は現像剤を長手方向に搬送しながら現像ローラ23a1に現像剤を供給するために、第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側における現像剤の剤量(剤高さ)は搬送方向上流側のものに比べて少なくなる。そして、図9(A)に示すように、ドクターブレード23cの先端からケース部材230rにかけて、そこを沿って現像剤がスムーズに流動するのを妨げるようなデッドスペースAがある場合には、その部分Aで現像剤の滞留が生じてしまうために、第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側における現像剤の剤量(剤高さ)がさらに少なくなってしまう。このような場合には、第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側において現像ローラ23a1に供給される現像剤量が不足してしまい、出力画像上の画像濃度が低下してしまったり、出力画像上に第1搬送スクリュ23a1のスクリュピッチに対応した画像濃度ムラ(ピッチムラ)が生じたりしてしまう。
これに対して、本実施の形態では、第1搬送スクリュ23b1に対向する対向面において、ドクターブレード23cの先端から上ケース23rの所定位置までの形状を最適化しているために、ドクターブレード23cで規制された後の現像剤Gの一部が滞留するデッドスペースを形成することなく、出力画像上に画像濃度低下や画像濃度ムラが生じる不具合を抑止することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、第1搬送スクリュ23b1に対向する対向面において、ドクターブレード23cの先端から上ケース23rの所定位置までの形状を最適化しているために、ドクターブレード23cで規制された後の現像剤Gが滞留することなく、第1現像剤搬送部B1に向けてスムーズに流動して戻されることになる。したがって、対向面23c1、23r1に沿って流動する現像剤Gに対するダメージが低減されて、現像剤Gが劣化しにくくなる。
【0060】
ここで、本実施の形態では、上述した上ケース23rの所定位置(円弧状の対向面23r1の終端位置である。)が、第1搬送スクリュ23b1の最上部を超えた位置になるように構成している。すなわち、図3及び図8を参照して、ケース23rの円弧状の対向面23r1の終端が、1点鎖線で示す位置よりも図の左側(現像ローラ23a1から遠ざかる方向である。)に配設されている。
このような構成により、ケース23rの円弧状の対向面23r1に沿って流動する現像剤G(ドクターブレード23cによって規制された後の現像剤である。)は、第1現像剤搬送部B1の奥側(現像ローラ23a1から遠ざかる方向である。)に戻されることになり、その後に第1搬送スクリュ23b1の回転方向(図の反時計方向の回転である。)に沿って充分に撹拌・混合されながら長手方向に搬送されることになる。したがって、上述したホタル画像の発生や現像剤の劣化を軽減する効果に加えて、上述した第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側における現像剤の減少量を小さくする効果がより確実に発揮されることになる。
【0061】
また、本実施の形態では、図3及び図8を参照して、上ケース23rの外面に複数の冷却フィン23r2を設置している。
これにより、上ケース23rの放熱性が高められて、上ケース23rの温度上昇が低減されるために、ケース23rの対向面23r1に沿って流動する現像剤Gの熱劣化を低減することができる。
【0062】
また、本実施の形態における上ケース23rは、円弧状の対向面23r1の曲率が、第1現像剤搬送部B1の搬送方向上流側に比べて第1現像剤搬送部B1の搬送方向下流側が小さくなるように形成されている。すなわち、図8(A)に示す搬送方向上流側における上ケース23rの対向面23r1の曲率は、図8(B)に示す搬送方向下流側における上ケース23rの対向面23r1の曲率よりも、大きく設定されている。具体的には、上ケース23rの対向面23r1の曲率が、上流側から下流側に向かうにつれて、漸減するように構成することもできるし、段階的に小さくなうように構成することもできる。
このような構成により、第1現像剤搬送部B1の長手方向(搬送方向)の現像剤の剤量の変化に合わせて、上ケース23rの対向面23r1に沿って流動する現像剤が長手方向にわたってバランスよくコントロールされることになる。すなわち、現像剤の剤量が少ない下流側と、現像剤の剤量が多い上流側と、で上ケース23rの対向面23r1の曲率を可変することで、長手方向にわたって上ケース23rの対向面23r1に沿う現像剤の流動性が均一になるように調整している。これにより、先に説明した効果が長手方向にわたって確実に発揮されることになる。
【0063】
また、本実施の形態における現像装置23は、第1の現像ローラ23a1の周囲に形成される複数の磁極のうち、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)に対向する位置に形成されたドクタ対向磁極の法線方向の磁束密度が80〜120mTになるように形成されている。
これにより、現像装置23の駆動トルクをそれほど上昇させることなく、ドクターブレード23cの上流側にて第1の現像ローラ23a1上に担持される現像剤の量(保持量)を充分に確保することができる。すなわち、ドクターブレード23cの位置で現像剤にそれほど大きなストレスを与えることなく、現像装置23内の現像剤量のバランスを崩すことなくドクターブレード23cとのギャップを通過する現像剤量を充分に確保して出力画像の画質を安定化することができる。
【0064】
図10は、本実施の形態における現像装置23において、第1現像ローラ23a1のドクタ対向磁極の磁力と、飽和現像剤重量及び駆動トルクと、の関係を示すグラフである。図10において、横軸は第1現像ローラ23a1のドクタ対向磁極の磁力(法線方向の磁束密度)を示し、左縦軸は現像装置23内の飽和現像剤重量(ドクターブレード23cの上流側にて第1の現像ローラ23a1上に担持される現像剤の保持量にほぼ比例する。)を示し、右縦軸は現像装置23の駆動トルク(ドクターブレード23cの位置で現像剤にかかるストレスの大きさにほぼ比例する。)を示す。そして、図10において、実線グラフはドクタ対向磁極の磁力と飽和現像剤重量との関係を示し、破線グラフはドクタ対向磁極の磁力と駆動トルクとの関係を示す。図10を参照して、ドクタ対向磁極の法線方向の磁束密度が80mT未満であると、ドクターブレード23cの上流側にて第1の現像ローラ23a1上に担持される現像剤の保持量が不足してしまい、出力画像の画質が悪化してしまう。ドクタ対向磁極の法線方向の磁束密度が80mT以上であると、ドクターブレード23cの上流側にて第1の現像ローラ23a1上に担持される現像剤の保持量が比例的に増加するとともに充分に確保され、磁束密度が120mTを超えると現像剤の保持量は飽和する。また、ドクターブレード23cの位置で現像剤にかかるストレスは、磁束密度が120mTを超えても、ドクタ対向磁極の磁力の増加にともないほぼ比例的に増加してしまう。これらのことから、ドクタ対向磁極の法線方向の磁束密度を上述した範囲に設定することが好ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態では、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)の先端から上ケース23r(ケース部材)の所定位置までの、第1搬送スクリュ23b1(現像剤搬送部材)に対向する対向面23c1、23r1の形状を最適化しているために、現像ローラ23a1(現像剤担持体)上に担持されてドクターブレード23cで規制された後の現像剤Gの一部が上ケース23r等に溜まることなく、出力画像上にホタル画像が生じる不具合が抑止される。
【0066】
なお、本実施の形態では、現像剤搬送部B1〜B3が3つ設置された現像装置23に対して本発明を適用したが、現像剤搬送部が2つ以下又は4つ以上設置された現像装置に対しても本発明を適用することができる。その場合も、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、第3搬送スクリュ23b3を水平方向に対して斜めに配設したが、第3搬送スクリュ23b3を水平に配設することもできる。
さらに、本実施の形態では、排出口23dを第1現像剤搬送部B1の壁部に設けたが、排出口23dをその他の現像剤搬送部B2、B3の壁部に設けることもできる。
【0067】
また、本実施の形態では、剤カートリッジ28から現像装置23に向けて現像剤G(トナーT及びキャリアC)を供給したが、カートリッジからキャリアCのみを現像装置23に向けて供給することもできる。その場合、トナーのみが収容されたトナーカートリッジを剤カートリッジ(キャリアカートリッジ)とは別に設置して、磁気センサ26の検知結果に基いてトナーカートリッジに収容されたトナーを現像装置23に向けて適宜に補給することになる。さらに、キャリアの補給をおこなわずにカートリッジからトナーのみを供給する、プレミックス現像方式ではない現像装置に対しても本発明を適用することができる。そして、これらのような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、作像部の一部がプロセスカートリッジ20で構成される画像形成装置に対して、本発明を適用した。しかし、本発明の適用はこれに限定されることなく、作像部がプロセスカートリッジ化されていない画像形成装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。具体的に、現像装置23が単体で画像形成装置本体に着脱されるユニットして構成されている場合であっても、当然に本発明を適用することができる。
さらに、本実施の形態では、現像ローラ23a1、23a2が2つ設置された現像装置23に対して本発明を適用したが、現像ローラが1つ又は3つ以上設置された現像装置に対しても当然に本発明を適用することができる。その場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、上下方向に搬送スクリュ23b1、23b2が設置された現像装置に対して本発明を適用したが、複数の搬送スクリュが水平方向に設置された現像装置(特許文献2等参照)や、現像剤を長手方向に搬送する第1搬送スクリュ23b1の代わりに現像剤を短手方向に搬送するパドル状の現像剤搬送部材が設置された現像装置、等に対しても本発明を適用することができる。その場合も、本実施の形態と同様に構成された上ケース及びドクターブレードを用いることで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置に設置されたプロセスカートリッジを示す拡大図である。
【図3】現像装置を示す拡大図である。
【図4】現像装置における循環経路を長手方向にみた断面図である。
【図5】図4の循環経路におけるY1−Y1断面を示す断面図である。
【図6】図4の循環経路におけるY2−Y2断面を示す断面図である。
【図7】図4の循環経路において現像剤に波状の偏りが生じた状態を示す図である。
【図8】ドクターブレード及びケース部材の近傍を示す拡大図である。
【図9】(A)従来の現像装置の要部を示す拡大図と、(B)ホタル画像を示す概略図と、である。
【図10】ドクタ対向磁極の磁力と、飽和現像剤重量及び駆動トルクと、の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20、20Y、20C、20M、20BK プロセスカートリッジ、
21 感光体ドラム(像担持体)、
23 現像装置(現像部)、
23a1、23a2 現像ローラ(現像剤担持体)、
23b1 第1搬送スクリュ(現像剤搬送部材)、
23b2 第2搬送スクリュ(第2現像剤搬送部材)、
23b3 第3搬送スクリュ(第3現像剤搬送部材)、
23c ドクターブレード(現像剤規制部材)、
23c1 対向面、
23r 上ケース(ケース部材)、
23r1 対向面、 23r2 冷却フィン、
23d 排出口、
G 現像剤(2成分現像剤)、 T トナー、 C キャリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容するとともに、像担持体上に形成される潜像を現像する現像装置であって、
前記像担持体に対向するとともに、現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に対向するとともに、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、
前記現像剤担持体に対向するとともに、現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤搬送部材と、
前記現像剤規制部材を保持するとともに、前記現像剤搬送部材の上方を覆うケース部材と、
を備え、
前記ケース部材は、前記現像剤搬送部材に対向する前記現像剤規制部材の対向面に続いて前記現像剤搬送部材に対向する対向面が所定位置まで円弧状に形成され、
前記現像剤搬送部材に対向する前記現像剤規制部材の対向面と、前記現像剤搬送部材に対向する前記ケース部材の対向面と、がなす角が鈍角となるように形成されたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記ケース部材の前記所定位置は、前記現像剤搬送部材の最上部を超えた位置であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、その外面に冷却フィンを具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤搬送部材は、現像剤を長手方向に搬送するように構成され、
前記ケース部材は、前記現像剤搬送部材に対向する前記円弧状の対向面の曲率が、前記現像剤搬送部材の搬送方向上流側に比べて前記現像剤搬送部材の搬送方向下流側が小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤搬送部材は、現像剤を長手方向に搬送するように構成され、
前記現像剤搬送部材の下方であって前記現像剤担持体に対向する位置に配設されるとともに当該現像剤担持体から離脱された現像剤を搬送する第2現像剤搬送部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、その周囲に複数の磁極が形成され、前記複数の磁極のうち前記現像剤規制部材に対向する位置に形成される磁極の法線方向の磁束密度が80〜120mTになるように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−265600(P2009−265600A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247985(P2008−247985)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】