説明

現像装置、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】回収搬送路と供給搬送路とを分離した構成で、連れ回りと現像剤担持量不足との両方の発生を防止することができる現像装置、並びにこの現像装置を備えた画像形成装置、およびプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】現像装置5は、現像スリーブ51と、供給スクリュと、回収スクリュ54とを有し、供給スクリュ53を配置した供給搬送路と、回収スクリュ54を配置した回収搬送路54aとを仕切る仕切り部材57を挟んで、回収スクリュ54は供給スクリュよりも上方に配置されており、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gを供給搬送路に落下させる剤落下口71が仕切り部材57に設けられており、剤落下口71の開口形状が、台形形状であって、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等に用いられる現像装置並びにこれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トナーと磁性キャリアとを含む二成分の現像剤を用いた現像装置が広く用いられている。この種の現像装置では、内部に複数の磁極を備え、表面が回転する現像剤担持体の表面上に現像剤を担持し、潜像担持体と対向する現像領域で潜像担持体の表面上の潜像に現像剤中のトナーを供給することで潜像担持体上の潜像を現像するものが広く用いられている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1及び2に記載の現像装置では、現像剤担持体の回転軸に平行な方向に現像剤を搬送する複数の現像剤搬送部材を備える。そして、現像剤搬送部材を配置した現像剤搬送路内で現像剤を循環させつつ、循環する現像剤の一部を現像剤担持体の表面に供給し、現像領域を通過した現像剤は現像剤担持体の表面から現像剤搬送路内に回収し、他の現像剤とともに循環させる。また、現像領域ではトナーが消費されるため、そのトナー消費に応じて現像装置の一部に設けられたトナー補給口から現像剤搬送路内に適宜にトナーが補給される。補給されたトナーは、現像剤搬送路内の現像剤とともに現像剤搬送部材によって搬送されつつ、撹拌・混合される。
【0003】
特許文献1及び2には、現像剤搬送路のうち、現像剤を供給搬送部材によって搬送しつつ現像剤担持体に供給する供給搬送路と、現像剤を回収搬送部材によって搬送しつつ現像領域を通過した現像剤担持体表面上の現像剤を回収する回収搬送路とが形成された現像装置が記載されている。これらの現像装置では、供給搬送路と回収搬送路とは、軸線方向に直交する断面における端部が現像剤担持体の表面と対向する仕切り部材によって空間的に仕切られている。このように、供給搬送路と回収搬送路とを分離した現像装置は、現像領域を通過してトナー濃度が低下した現像剤が現像に用いられないため、潜像担持体上で潜像が現像されたトナー像の濃度偏差を小さくすることができる。
また、特許文献1及び2に記載の現像装置は、供給搬送路と回収搬送路との少なくとも一部が上下方向で重なるように、回収搬送部材を供給搬送部材よりも上方に配置している。供給搬送路と回収搬送路との少なくとも一部が上下方向で重なるように配置することで、供給搬送路と回収搬送路とを水平方向に並べて配置する構成に比べて、現像装置の水平方向の幅を小さくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回収搬送部材を供給搬送部材よりも上方に配置し、供給搬送路と回収搬送路との少なくとも一部が上下方向で重なる現像装置では、次のような問題が生じることがあった。すなわち、回収搬送路における搬送方向下流側端部近傍と対向する位置の現像剤担持体では、現像剤担持体の表面から分離しなかった現像剤や、回収搬送路から再付着した現像剤のように、現像領域を通過してトナー濃度が低下した現像剤が、仕切り部材の端部と現像剤担持体との隙間を通過する連れ回りが生じることがあった。これは以下の理由による。
現像領域を通過した現像剤担持体の表面上から離脱した現像剤は自重によって、回収搬送路内に落下し、さらに、回収搬送部材によって搬送力を付与される領域まで到達することで、他の現像剤と共に現像剤搬送路内を循環する。ここで、回収搬送部材は供給搬送部材よりも上方に配置されているため、仕切り部材の回収搬送路側の壁面は、水平面または傾斜面からなる仕切り部材における上面となり、仕切り部材の供給搬送路側の壁面は仕切り部材における下面となる。このような現像装置では、回収搬送路における回収搬送部材の搬送方向下流側端部となる位置の仕切り部材に回収搬送路と供給搬送路とを連通する開口部が設けられている。この開口部は、回収搬送路における回収搬送部材の搬送方向下流側端部に到達した現像剤を供給搬送路における供給搬送部材の搬送方向上流側端部近傍に落下させる現像剤落下口となる。従来の現像装置では、現像剤落下口の開口形状が、開口長さ(回収搬送部材の搬送方向に平行な方向の長さ)及び開口幅(回収搬送部材の搬送方向に直交する方向の長さ)が一様な長方形であった。
また、回収搬送路と供給搬送路と分離した現像装置では、回収搬送路内では回収搬送部材によって現像剤を搬送しつつ、現像剤担持体から離脱した現像剤が現像剤担持体の回転軸に平行な方向の全域に渡って供給される。このため、回収搬送路内では、回収搬送部材の搬送方向下流側ほど現像剤の量が多くなり、回収搬送搬送路における現像剤落下口の手前の位置で現像剤の量が最も多くなる。そして、現像剤の流動性が悪化すると、現像剤落下口の手前の位置における現像剤の嵩が上昇し、回収搬送路内の現像剤が現像剤担持体の表面に接触する。回収搬送路内の現像剤は現像剤担持体の表面に接触すると、現像剤担持体の表面に再付着し、これにより、トナー濃度が低下した現像剤が仕切り部材の端部と現像剤担持体との隙間を通過する連れ回りが生じる。また、回収搬送路内の現像剤が現像剤担持体の表面に接触していると、現像剤担持体から離脱しようとする現像剤が、回収搬送路内の現像剤に阻まれて、現像剤担持体から離脱できず、連れ回りが生じることもある。
連れ回りが発生し、現像領域を通過した現像剤が仕切り部材の端部と現像剤担持体との隙間を通過すると、供給搬送路から供給される現像剤ともに現像領域に到達し、トナー像の濃度ムラの原因となる。
【0005】
このような問題を解決するために、現像剤落下口の開口長さを長くしたところ、現像剤の流動性が悪化した状態であっても連れ回りの発生を防止することができた。しかし、現像剤の流動性が良好な状態では、回収搬送路において、従来よりも上流側の位置から現像剤の落下が開始されるため、現像剤落下口における下流側端部まで十分な量の現像剤を搬送することが出来なかった。供給搬送路では、現像剤落下口における下流側端部が供給搬送部材の搬送方向上流側端部となる。このため、回収搬送路側で十分な量の現像剤を現像剤落下口における下流側端部まで搬送出来ないと、現像剤落下口を通過して供給搬送路に現像剤が供給される際に、供給搬送路における搬送方向上流側端部まで十分な量の現像剤を供給することができなくなる。このように、供給された現像剤の量が不十分となる供給搬送路内の領域と対向する現像剤担持体の表面では、担持する現像剤の量が不十分となる現像剤担持量不足が発生する。
現像剤担持量不足が発生すると、現像時に現像剤担持体から所定量のトナーを潜像担持体に供給することができなくなり、トナー濃度が薄くなって、トナー像の濃度ムラの原因となる。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、回収搬送路と供給搬送路とを分離した構成で、連れ回りと現像剤担持量不足との両方の発生を防止することができる現像装置、並びにこの現像装置を備えた画像形成装置、およびプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、内部に備えた複数の磁極により磁性キャリアとトナーとからなる現像剤を表面上に担持し、その表面が回転して潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面上の潜像にトナーを供給する現像剤担持体と、該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する供給搬送部材と、該現像領域を通過後の該現像剤担持体上から該現像剤を受け渡され、該現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って搬送する回収搬送部材とを有し、該供給搬送部材を配置した空間である供給搬送路と、該回収搬送部材を配置した空間である回収搬送路とを仕切る仕切り部材の、該軸線方向に直交する断面における端部は該現像剤担持体の表面と対向し、該回収搬送部材は該仕切り部材を挟んで該供給搬送部材よりも上方に配置され、該回収搬送路における該回収搬送部材の搬送方向下流側端部に到達した現像剤を該供給搬送路に落下させる現像剤落下口が該仕切り部材に設けられた現像装置において、上記現像剤落下口の開口形状が、上記回収搬送路における上記回収搬送部材の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記現像剤落下口の開口形状が台形形状であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の現像装置において、上記現像剤落下口における上記現像剤担持体側が台形形状の長辺であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の現像装置において、上記トナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にあるトナーであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、少なくとも潜像担持体と、該潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、該潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する画像形成装置において、該現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、少なくとも上記潜像担持体と上記現像装置とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて装置本体から着脱可能としたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置における少なくとも該潜像担持体と該現像手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して着脱可能にしたプロセスカートリッジにおいて、上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、現像剤落下口の開口形状が、回収搬送路における回収搬送部材の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状である。このような形状では、現像剤落下口における下流側の開口幅よりも、現像剤落下口における上流側の開口幅は狭くなる。このような現像剤落下口について開口長さを長くすることで、現像剤の流動性が悪化して、現像剤落下口近傍における現像剤の嵩が上昇しても、開口長さを長くした分、回収搬送路内における上流側から過剰な量の現像剤の落下を開始することができる。これにより、現像剤の嵩の上昇を抑制し、連れ回りの発生を防止することが可能となる。また、現像剤落下口における上流側の開口幅は狭くなっているため、現像剤の流動性が良好で嵩が小さい状態であっても、現像剤が現像剤落下口における上流側で一度に落下することを抑制し、現像剤落下口における下流側端部まで十分な量の現像剤を搬送することができる。十分な量の現像剤を現像剤落下口における下流側端部まで搬送することで、供給搬送路の上流側端部に供給される現像剤が不十分となることがなく、現像剤担持量不足の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連れ回りと現像剤担持量不足との両方の発生を防止することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の現像装置の上面説明図。
【図2】本実施形態に係る複写機の概略構成図。
【図3】本実施形態の作像装置の概略構成図。
【図4】本実施形態の現像装置の断面説明図。
【図5】本実施形態の現像装置の斜視説明図。
【図6】本実施形態の現像装置の長手方向の説明図、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は断面説明図。
【図7】現像装置内における現像剤の長手方向における現像剤の堆積の様子を示す断面図。
【図8】現像装置内における現像剤の長手方向の動きを示す模式図。
【図9】剤落下口の開口長さが短い従来の現像装置における現像剤の流動性が普通の状態の説明図。
【図10】剤落下口の開口長さが短い従来の現像装置における現像剤の流動性が悪い状態の説明図。
【図11】剤落下口が長方形で開口長さが長い現像装置における現像剤の流動性が良い状態の説明図。
【図12】実験2で用いた現像装置の剤落下口の説明図、(a)は、現像スリーブ側が短辺、(b)は、現像スリーブ側が長辺。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機(以下、複写機500という)に適用した実施形態について説明する。
図2は、複写機500の概略構成図である。複写機500は、画像形成装置の本体部としてのプリンタ部100の上方に、原稿読込部4及び原稿搬送部3を備え、プリンタ部100の下方に給紙部7を備える。原稿搬送部3は、原稿読込部4に原稿を搬送し、原稿読込部4は搬送されてきた原稿の画像情報を読み込む。給紙部7は、転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙カセット26、給紙カセット26内の記録媒体Pをプリンタ部100に向けて送り出す給紙ローラ27を備える。図2中の一点鎖線は、複写機500内での記録媒体Pの搬送経路を示す。
【0012】
プリンタ部100の上部は、出力画像が形成された記録媒体Pが積載される排紙トレイ30となっている。プリンタ部100は、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像を形成する四つの作像部6(Y,M,C,K)と、中間転写ユニット10とを備える。各作像部6(Y,M,C,K)は、各色トナー像が形成される像担持体としてのドラム状の感光体1(Y,M,C,K)、及び、各感光体(Y,M,C,K)の表面上に形成された静電潜像を現像する現像装置5(Y,M,C,K)を備える。
中間転写ユニット10は、各感光体1(Y,M,C,K)の表面上に形成された各色トナー像が重ねて転写され、表面上でカラートナー像が形成される中間転写ベルト8、及び、各感光体1(Y,M,C,K)の表面上に形成されたトナー像を中間転写ベルト8に転写する一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)を備える。
また、プリンタ部100は、中間転写ベルト8上のカラートナー像を記録媒体P上に転写するための二次転写バイアスローラ19、給紙ローラ27によって送り出された記録媒体Pを中間転写ベルト8と二次転写バイアスローラ19とが対向する二次転写ニップに搬送するタイミングを調整するレジストローラ対28を備える。
さらに、プリンタ部100は、二次転写ニップの上方に記録媒体P上の未定着トナー像を定着する定着装置20を備える。
また、プリンタ部100内の排紙トレイ30の下方、且つ、中間転写ユニット10の上方には、各現像装置5(Y,M,C,K)に供給する各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを収容する各色のトナー容器11(Y,M,C,K)が配置されている。
【0013】
図3は、中間転写ベルト8に対向するように配置された四つの作像部6(Y,M,C,K)のうちの一つの拡大説明図である。四つの作像部6(Y,M,C,K)は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる以外は、その構成・動作がほぼ同様であるので、以下の説明では、対応する色を示す符号Y、M、C、Kを適宜省略して説明する。
図3に示すように、作像部6は、感光体1の周囲に現像装置5以外に、感光体クリーニング装置2、潤滑剤塗布装置41、及び、帯電装置40等を備える。また、作像部6を構成する、感光体1、現像装置5、感光体クリーニング装置2、潤滑剤塗布装置41、及び、帯電装置40は、それぞれ複写機500本体に対して着脱可能となっている。そして、それぞれが寿命に達したときに新品のものに交換される。本実施形態の複写機500では、作像部6を構成する、感光体1、現像装置5、感光体クリーニング装置2、潤滑剤塗布装置41、及び、帯電装置40をそれぞれ単独のユニットとしたが、これらを一体化して複写機500から着脱自在に設置されるプロセスカートリッジとすることもできる。このように、作像部6をプロセスカートリッジとすることで、作像部のメンテナンスをおこなう際の作業性が向上する。
【0014】
以下、本実施形態の複写機500における通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿搬送部3の原稿台に原稿がセットされた状態で、不図示のスタートボタンが押されると、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
【0015】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0016】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、不図示の露光部に送信される。そして、露光部からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光Lが、それぞれ、対応する感光体1(Y,M,C,K)表面に向けて発せられる。
【0017】
一方、四つの感光体1(Y,M,C,K)は、不図示の駆動部によって、図2及び図3中の時計方向にそれぞれ回転駆動される。そして、各感光体1(Y,M,C,K)の表面は、帯電装置40の帯電ローラ4aとの対向位置で、一様に帯電される(帯電工程)。こうして、感光体1(Y,M,C,K)の表面上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体1(Y,M,C,K)表面は、レーザ光Lの照射位置に達する。
露光部において、四つの光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応してそれぞれ射出された各レーザ光Lは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過して、各感光体1(Y,M,C,K)の表面に照射される(露光工程)。
【0018】
イエロー成分に対応したレーザ光Lは、図2中の紙面左側から一番目のイエロー用感光体1Y表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光Lは、高速回転するポリゴンミラーにより、イエロー用感光体1Yの回転軸方向(主走査方向)に走査され、複数の光学素子を介してイエロー用感光体1Y表面に照射される。こうして、帯電装置40によって帯電された後のイエロー用感光体1Yの表面上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0019】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光Lは、図2中の紙面左から二番目のマゼンタ用感光体1M表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光Lは、図2中の紙面左から三番目のシアン用感光体1C表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光Lは、図2中の紙面左から四番目のブラック用感光体1K表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0020】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体1(Y,M,C,K)表面は、それぞれ、現像装置5との対向位置に達する。そして、各色トナーとキャリアとからなる現像剤を収容する現像装置5(Y,M,C,K)から感光体1(Y,M,C,K)の表面上に各色トナーが供給されて、感光体1(Y,M,C,K)上の潜像が現像される(現像工程)。
現像装置5との対向位置を通過した後の感光体1(Y,M,C,K)表面は、それぞれ、中間転写ベルト8との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト8の内周面に当接するように一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)が設置されている。この一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)には、トナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト8を挟んで感光体1(Y,M,C,K)と一次転写バイアスローラ9(Y,M,C,K)とが対向する一次転写ニップで、各感光体1(Y,M,C,K)上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に、上順次重ねて転写される(一次転写工程)。これにより、中間転写ベルト8の表面上にカラートナー像が形成される。
【0021】
一次転写ニップを通過した後の感光体1表面には、僅かながら転写残トナーが残っており、転写残トナーを担持したまま、感光体クリーニング装置2との対向位置に達する。そして、感光体クリーニング装置2との対向位置で、感光体1上に残存する未転写トナーがクリーニングブレード2aによって回収される(感光体クリーニング工程)。
感光体クリーニング装置2との対向位置を通過した感光体1の表面は不図示の除電部との対向位置に達し、この対向位置で感光体1の表面上の残留電位が除去される。
このようにして、感光体1上における一連の作像プロセスが終了する。
【0022】
一方、四つの感光体1(Y,M,C,K)上の各色トナー像が重ねて転写され、カラートナー像を担持する中間転写ベルト8は、図2中の反時計方向に表面移動して、二次転写バイアスローラ19との対向位置に達する。この位置では、二次転写バックアップローラ12が、二次転写バイアスローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで二次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト8上に形成されたカラートナー像は、この二次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト8には、記録媒体Pに転写されなかった転写残トナーが残存する。
【0023】
ニ次転写ニップを通過した中間転写ベルト8表面は、不図示の中間転写ベルトクリーニング装置との対向位置に達する。この対向位置で、中間転写ベルト8上に付着した転写残トナーが不図示の中間転写ベルトクリーニング装置に回収されることで初期状態に復帰する。このようにして、中間転写ベルト8上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0024】
上述したニ次転写ニップに搬送される記録媒体Pは、給紙部7からレジストローラ対28等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部7内の給紙カセット26には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図2中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対28に達した記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラートナー像がニ次転写ニップに到達するタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、記録媒体Pが二次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラートナー像が転写される。
【0025】
ニ次転写ニップでカラートナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとによって形成される定着ニップにて、熱と圧力とにより記録媒体Pの表面に転写されたカラートナー像が記録媒体P上に定着される。
定着装置20を通過した記録媒体Pは、排紙ローラ対25のローラ間を経て、プリンタ部100の外に出力画像として排出される。排紙ローラ対25によってプリンタ部100外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、排紙トレイ30上に順次スタックされる。このようにして、複写機500における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0026】
次に現像装置5について説明する。
図4は、本実施形態の現像装置5の断面説明図であり、図5は、現像装置5の上部ケーシングを取外した状態の斜視説明図である。
現像装置5は、感光体1に対向する現像剤担持体としての現像ローラ50、供給搬送部材としての供給スクリュ53、回収搬送部材としての回収スクリュ54、ドクタブレード52、及び、仕切り部材57を備える。供給スクリュ53及び回収スクリュ54は、回転軸に螺旋状の羽部を設けたスクリュ部材であり、回転することにより、その回転軸の軸方向に現像剤を搬送する。
現像装置5のケーシング内の空間のうち、供給スクリュ53が配置された供給搬送路53aと、回収スクリュ54が配置された回収搬送路54aとは仕切り部材57によって空間的に仕切られている。また、仕切り部材57は、軸線方向に直交する断面(図4で説明図を示す断面)における端部が現像ローラ50の表面に対向し、近接して配置されることにより、現像ローラ50の表面上から現像剤Gの離脱を促す分離板としても機能する。
現像ローラ50は、内部に固設された複数の磁石からなるマグネットローラ55と、マグネットローラ55の周囲を回転する現像スリーブ51とから構成される。本実施形態のマグネットローラ55は、複数の磁極として、第一磁極P1(N極)、第二磁極P2(S極)、第三磁極P3(N極)、第四磁極P4(N極)、及び、第五磁極P5(S極)の5つの磁極が設けられている。なお、図4中のP1〜P5は、各磁極によって形成される磁場の現像スリーブ51の表面上における法線方向磁束密度(絶対値)の分布を示している。
【0027】
図6は、現像装置5の長手方向の説明図であり、図6(a)は、上部ケーシングを取外した状態の現像装置5を図4及び図5中の矢印A方向から見た現像装置5の上面図、図6(b)は、図4及び図5中の矢印B方向から見た現像装置5の正面図である。また、図6(c)は、現像装置5を図4中の矢印C方向から見たときの、供給スクリュ53及び回収スクリュ54が配置された位置の近傍における現像装置5の断面説明図である。
【0028】
現像装置5は、トナーとキャリアとからなる二成分の現像剤G(添加剤等を添加する場合も含む)を収容しており、現像剤Gのトナー濃度を検知するための不図示のトナー濃度センサを備えている。また、図6中の矢印G3及びG4で示すように、現像剤Gを長手方向(現像スリーブ51の回転軸方向)に搬送して循環経路を形成する現像剤搬送部材として、供給スクリュ53及び回収スクリュ54を備える。また、現像装置5では、供給スクリュ53と回収スクリュ54とを上下方向に配置し、供給スクリュ53と回収スクリュ54との間に配置された仕切り部材57によって供給搬送路53aと回収搬送路54aとが形成されている。
また、感光体1と現像ローラ50との対向部である現像領域に対して、現像スリーブ51の表面移動方向上流側で、現像スリーブ51の表面上に担持されて現像領域に向かう現像剤量を規制する、現像剤規制部材であるドクタブレード52が現像ローラ50の下方に配置されている。
【0029】
現像装置5では、二成分の現像剤Gを用いているため、現像装置5内におけるトナー消費に応じて、現像装置5の一部に設けられたトナー補給口59から現像装置5内に適宜にトナーが補給される。補給されたトナーは、現像装置5内の現像剤Gとともに、現像剤搬送部材である回収スクリュ54及び供給スクリュ53によって搬送されつつ、撹拌・混合される。このように、現像剤搬送部材によって撹拌・混合された現像剤Gは、その一部が現像剤担持体である現像スリーブ51の表面に供給され、その表面に担持される。現像スリーブ51の表面に担持された現像剤Gは、現像スリーブ51の下方に設置されたドクタブレード52によって適量に規制された後に、現像領域に到達する。現像領域では、現像スリーブ51の表面上の現像剤G中のトナーが感光体1の表面上の潜像に付着する。現像ローラを構成する現像スリーブ51の内部には複数の磁石が固設されたマグネットローラ55があり、このマグネットローラ55は、現像ローラ50の周囲に磁場を形成する複数の磁極(P1〜P5)を備えている。
【0030】
本実施形態の現像装置5内には、ポリエステル樹脂を主成分とするトナー(平均粒径5.8[μm])と磁性微粒子であるキャリア(平均粒径35[μm])とを、トナー濃度が7[wt%]となるように均一混合した現像剤Gが充填されている。そして、並列に配置された供給スクリュ53と回収スクリュ54とを600〜800[rpm]で回転させることによって、現像剤Gの搬送とトナー補給口59から補給されるトナーの撹拌とを同時に行い、トナーとキャリアとの均一混合と帯電付与を行っている。
【0031】
均一混合された現像剤Gは現像スリーブ51に近接して平行に設けられた供給スクリュ53に搬送されながら、現像スリーブ51に内包されたマグネットローラ55の第四磁極P4及び第五磁極P5の磁力によって、図4中の矢印G1で示すように現像スリーブ51の外周表面に受け渡される。現像スリーブ51の表面に受け渡された現像剤Gは、現像スリーブ51が図4中矢印に示すように、反時計回り方向に回転することによって現像領域に到達する。現像装置5では、現像スリーブ51に不図示の高圧電源から電圧が印加されることにより、現像領域における現像スリーブ51と感光体1との間に現像電界が形成される。この現像電界によって、感光体1の表面上の潜像に現像スリーブ51の表面上の現像剤G中のトナーが供給され、感光体1上の潜像が現像される。
現像領域を通過した後の現像スリーブ51の表面上の現像剤Gは、現像スリーブ51の回転に伴って現像装置5内の回収搬送路54aに回収されるようになっている。詳しくは、現像スリーブ51の表面から離脱した現像剤Gは、仕切り部材57の上面に落下して滑り落ち、回収スクリュ54で回収されるようになっている。
【0032】
図7は、現像装置5内における現像剤Gの長手方向における現像剤の堆積の様子を示す断面図であり、図8は、現像装置5内における現像剤Gの長手方向における現像剤の堆積の様子を示す模式図である。図7及び図8中の矢印G3〜G7が現像装置5内での現像剤Gの流れを示しており、図中の斜線部は、現像装置5内における現像剤Gの堆積の様子を示している。
図中の矢印G3は、供給スクリュ53の回転によって搬送される現像剤Gの流れを示しており、図中の矢印G4は、回収スクリュ54の回転によって搬送される現像剤Gの流れを示している。また、図中の複数の矢印G5は、現像スリーブ51の表面上に汲み上げられた現像剤の挙動を示している。
【0033】
図7に示すように、仕切り部材57は、現像装置5の長手方向の両端に供給搬送路53aと回収搬送路54aとを連通する開口部である剤落下口71及び剤持上げ口72がそれぞれ設けられている。
現像装置5内では、供給搬送路53aにおける供給スクリュ53の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gは、図中矢印G7で示すように、仕切り部材57に設けられた開口部のうちの剤持上げ口72を通って回収搬送路54aにおける搬送方向上流側端部に受け渡される。一方、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gは、図中の矢印G6で示すように、仕切り部材57に設けられた開口部のうちの剤落下口71を通って供給搬送路53aにおける搬送方向上流側端部に受け渡される。
【0034】
このように、現像装置5の長手方向の端部の領域(図6中の落下領域5a及び持上げ領域5b)では、上段の回収搬送路54aと下段の供給搬送路53aとが上下に連通している。そして、落下領域5aでは剤落下口71を通じて上段から下段へ、持上げ領域5bでは剤持上げ口72を通じて下段から上段へ現像剤Gが搬送されるようになっている。
図6(c)に示すように、回収スクリュ54の落下領域5a近傍には回収逆巻きスクリュ部54cが設けられており、回収スクリュ54の搬送方向下流側端部の軸受部に現像剤Gが進入することを防止している。また、供給スクリュ53の持上げ領域5b近傍には供給逆巻きスクリュ部53cが設けられており、その上流側の持上げ口72の直下には、パドル羽53bが設けられている。供給逆巻きスクリュ部53cによって、供給スクリュ53の搬送方向下流側端部の軸受部に現像剤Gが進入することを防止している。また、供給逆巻きスクリュ部53c及びパドル羽53bによって、搬送方向に対して直交する上方への搬送能力を持たせている。
【0035】
図8では、現像スリーブ51への現像剤Gの供給及び回収を模式的に示す都合上、供給搬送路53aと回収搬送路54aとの間にある程度の距離があるように描かれている。しかしながら、供給搬送路53aと回収搬送路54aとは図4及び図7等で示すように、で示すように板状の仕切り部材57によって仕切られており、その開口部である剤持上げ口72及び剤落下口71は板状の仕切り部材57を表から裏に貫通する貫通口である。
【0036】
図8に示すように、回収搬送路54aに対して下方にある供給搬送路53a内の現像剤Gは供給スクリュ53によって長手方向に搬送されつつ、供給スクリュ53の回転と、汲み上げ磁極としての第五磁極P5の磁力とによって現像スリーブ51の表面に汲み上げられる。現像スリーブ51の表面に汲み上げられた後、現像領域を通過した現像スリーブ51の表面上の現像剤Gは、隣り合う同極性(N極)の磁極である第三磁極P3と第四磁極P4とによって構成される剤離れ磁極の磁力による作用と、仕切り部材57の分離板としての作用とによって、現像スリーブ51の表面上から離脱され、回収搬送路54a内に送られる。
【0037】
供給搬送路53aに対して上方にある回収搬送路54a内の回収スクリュ54は、剤離れ磁極の位置で現像スリーブ51から離脱した現像剤Gを長手方向(供給スクリュ53による搬送方向とは逆方向)に搬送する。
供給スクリュ53による現像剤搬送路である供給搬送路53aの下流側と、回収スクリュ54による現像剤搬送路である回収搬送路54aの上流側とは剤持上げ口72を介して連通している。そして、供給搬送路53aの下流側端部に達した現像剤Gは、その位置に留まり後から搬送されてくる現像剤Gによって押し上げられ、回収搬送路54aの上流側端部に到達する。
【0038】
また、回収搬送路54aの上流側端部には、トナー補給口59が設けられており、新品のトナーがトナー容器11から不図示のトナー補給装置を介して適宜に補給される。また、供給搬送路53aの上流側側端部と回収搬送路54aの下流側端部とは剤落下口71を介して連通している。そして、回収搬送路54aの下流側端部に達した現像剤Gは、剤落下口71を自重落下して供給搬送路53aの上流側端部に受け渡される。
【0039】
現像装置5は、上述したように、供給スクリュ53と回収スクリュ54とが図示した方向で回転し、同時に現像スリーブ51に内包したマグネットローラ55の磁気吸引力で現像スリーブ51に引き寄せる。さらに、現像スリーブ51を感光体1に対する所定の速度比で回転させることで、現像領域に対して連続的に現像剤Gの汲み上げ供給を行っている。現像スリーブ51からの現像剤Gの離脱は第三磁極P3と第四磁極P4とで構成される剤離れ磁極にて反発磁気力を作り本区間に運ばれた現像剤Gは、剤離れ磁極で法線方向と回転接線方向との合成方向にリリースされ、図4中の矢印G2で示すように、仕切り部材57上に自重落下し、回収スクリュ54によって搬送される領域に回収される。
【0040】
現像装置5では、現像スリーブ51から離脱した現像剤Gは、仕切り部材57の上面の傾斜に従って自重搬送され、回収スクリュ54によって搬送力を付与される領域に回収されるようになっている。このとき、回収搬送路54a内の現像剤Gは、図7及び図8に示すように、搬送方向下流側ほど高くなるように、長手方向に渡って斜めに傾斜している。これは、現像装置5が、現像スリーブ51に対して現像剤Gを供給する供給搬送路53aと、現像スリーブ51から離脱する現像剤Gの回収搬送路54aとを分離し、現像領域を通過した現像剤Gを全て回収搬送路54aに回収する、所謂、一方向循環システムであるためである。
【0041】
また、現像装置5が一方向循環システムであるため、供給スクリュ53の搬送方向下流側ほど現像剤Gの搬送量が減少し、供給搬送路53a内でも現像剤の堆積状態が斜めになる。
ここで、供給スクリュ53の径、ピッチと回転数から求まる現像剤搬送量能力をWmとし、現像スリーブ51上の現像剤搬送量をWsとしたときに、Wm>Wsの関係が成り立つ場合に、現像剤Gが現像スリーブ51上に一様に搬送されるようになる。この条件が成立しないと供給スクリュ53の下流側において現像剤Gが不足してしまい、現像スリーブ51への現像剤Gの供給が不可能となってしまう。
また、同様に現像スリーブ51から回収スクリュ54へ現像剤を回収するが、嵩が高くなることにより回収されない現像剤が仕切り部材57と現像スリーブ51の隙間から供給スクリュ側へ入り込み、供給スクリュ53にて十分に攪拌される事なく再び現像ニップへ供給されてしまう。即ち供給スクリュ53及び回収スクリュ54の回転数を現像スリーブ51上の現像剤搬送量を上回るように設定する必要が有り、必然的にスクリュは高回転に設定になっている。
【0042】
本実施形態の現像装置5のように、複数の搬送部材が上下方向に並設された現像装置は、複数の搬送部材が水平方向に並設された現像装置に比べて、現像装置5を水平方向にコンパクト化することができる。そのために、図2に示す複写機500のように、複数の現像装置5が水平方向に並設されるタンデム型のカラー画像形成装置では装置全体の水平方向の小型化を図ることができる。
また、現像装置5のように、複数の搬送部材を上下方向に並設して、現像スリーブ51に対して現像剤Gを供給する供給搬送路53aと、現像スリーブ51から離脱する現像剤Gの回収搬送路54aとを分離した構成は、現像剤担持体に現像剤を供給した現像剤搬送路で、現像領域を通過した後の現像剤担持体表面上の現像剤を回収する現像装置に比べて、現像スリーブ51上に担持されて現像に供する現像剤G中に現像領域通過後のものが含まれにくいために、潜像担持体上に形成するトナー像の濃度偏差を小さくすることができる。
【0043】
また、本実施形態の現像装置5のように、ドクタブレード52が現像スリーブ51の下方に配設された現像装置を備えた画像形成装置は、現像剤規制部材が現像剤担持体の上方に配設された現像装置を備えたものに比べて、画像形成装置の下方に配設された給紙部(用紙収容部)から排紙トレイまでの用紙搬送経路の長さを短くできる。このために、タンデム型のカラー画像形成装置におけるファーストプリント時間を短くすることができる。さらに、用紙搬送経路を比較的短くしても、排紙トレイを画像形成装置の上方に配設するレイアウトを容易にとることができるために、水平方向のサイズが小型化されたタンデム型のカラー画像形成装置に多く用いられている。
【0044】
上述したように、現像装置5では、現像スリーブ51から離脱した現像剤Gは、仕切り部材57の上面の傾斜に従って自重搬送され、回収スクリュ54によって搬送力を付与される領域に回収されるようになっている。このとき、回収搬送路54a内の現像剤Gは、図7及び図8に示すように、搬送方向下流側ほど高くなるように、長手方向に渡って斜めに傾斜している。これは、現像装置5が、現像スリーブ51に対して現像剤Gを供給する供給搬送路53aと、現像スリーブ51から離脱する現像剤Gの回収搬送路54aとを分離した、所謂、一方向循環システムであるためである。
回収搬送路54aの搬送方向下流側は、特に現像剤Gの嵩が高くなり易く、仕切り部材57の上面で多量に滞留し易い。そして、この滞留した現像剤Gが現像スリーブ51から落下してくる現像剤Gの回収を阻んだり、現この滞留した現像剤Gが現像スリーブ51の表面に再付着したりすることがある。現像スリーブ51からの現像剤Gの回収を阻んだり、滞留した現像剤Gが現像スリーブ51に再付着したりすると、現像領域を通過した後にトナーの供給がなされていない現像剤Gが仕切り部材57を挟んで下方にある供給搬送路53aへ到達する、所謂、連れ回りが生じる。
【0045】
連れ回りが生じると、現像領域を通過した後のトナー濃度が低下した現像剤Gが、現像スリーブ51に担持されたままの状態となり、供給搬送路53aから新たな現像剤が供給されることで、濃度の濃い(所定のトナー濃度の)現像剤と、トナー濃度の薄い現像剤とが混在した状態となる。これにより、供給スクリュ53のスクリュピッチに応じた濃度ムラ画像が発生することがあった。
回収搬送路54aの搬送方向下流側で現像剤Gの嵩が高くなる現象は、画像形成装置の経時使用によって現像剤Gの流動性が悪化した場合に、仕切り部材57の上面で現像剤Gが留まって堆積し易くなるため、顕著になる。また、現像装置5内の現像剤Gのトナー濃度が上昇した場合も、現像剤Gの流動性が低下するため、回収搬送路54aの搬送方向下流側で現像剤Gの嵩が高くなる現象が顕著になる。
【0046】
また、一方向循環システムの現像装置では、現像剤搬送スクリュの搬送方向における現像剤Gの嵩偏差により、供給スクリュ53側では現像スリーブ51への現像剤の汲み上げが不十分となる汲上不良が発生しやすく、回収スクリュ54側では現像スリーブ51から離脱した現像剤Gが回収しきれず現像スリーブ51に再付着する連れ回りが発生する。汲み上げ不良や連れ回りは、主に現像剤Gの搬送性が悪くなり、現像剤Gの嵩が現像スリーブ51の長手方向(回転軸の軸方向)で偏差が大きくなることで発生する。
連れ回りの発生箇所は、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部近傍であり、ここは回収スクリュ54が搬送している現像剤Gに加えて現像スリーブ51から回収された現像剤Gの分が増すことから、最も現像剤量が多くなる部分である。このため、現像剤Gの流動性が低下すると、仕切り部材57の上面を現像剤が落ちにくくなり、さらに流動性が悪化することで、現像剤Gが仕切り部材57の表面上を落ちず、再び現像スリーブ51表面に付着することで連れ回りが発生する。このため、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部近傍の現像剤Gの流れを良くすることで、現像剤Gの現像スリーブ51の長手方向での嵩の偏差を小さくするこが求められる。
【0047】
特許文献1及び2には、現像剤担持体の回転軸の軸方向における現像剤搬送路内の現像剤の嵩偏差を改善する構成が記載されている。しかし、これらの文献では、現像剤を現像剤担持体に供給する供給搬送部材が現像剤担持体の上側に設置されており、現像剤担持体から現像剤を回収搬送路に回収する場合は下側への現像剤の移動であるので、現像剤担持体への再付着は起こり難い。しかし、本実施形態の現像装置5のように、現像剤担持体の下側から現像剤を供給する構成では、現像剤担持体への現像剤供給位置よりも現像剤回収位置が上側になってしまうために現像剤担持体から現像剤を回収する回収搬送路への離脱を促し、分離板として機能する仕切り部材を配置している。仕切り部材上の現像剤の状態によっては、現像剤担持体への再付着が発生しやすくなってしまう。特に本実施形態の現像装置5のように、各現像剤搬送路の下流で現像剤の滞留が発生し、現像剤の嵩が大きくなっている部分、特に、回収搬送路の下流の現像剤の嵩が大きくなっている部分において連れ回りが発生しないようにすることが求められる。
【0048】
次に、本実施形態の現像装置5の特徴部について説明する。
図1は、本実施形態の現像装置5の上部ケーシングを取外した状態を図4及び図5中の矢印A方向から見た現像装置5の上面説明図である。図1では、説明の都合上、回収スクリュ54の搬送方向下流側端部近傍の表記を省略している。
図1に示すように、現像装置5では、現像剤落下口である剤落下口71の開口形状が、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる台形形状となっている。
【0049】
[実験1]
実験1として、剤落下口71の開口形状が異なる現像装置5を、imagio MP C5000の改造機に搭載し、流動性が変化した状態を再現するために、現像剤Gのトナー濃度が5[wt%]、7[wt%]、10[wt%]の現像剤を用いて、異常画像の発生状況で確認した。なお、一般的にはトナー濃度が高いほど現像剤の流動性が悪化することが分かっている。このため、上述した実施形態よりもトナー濃度が低い5[wt%]の現像剤Gは流動性が良い状態となり、上述した実施形態と同じトナー濃度である7[wt%]の現像剤Gは流動性が普通の状態となる。そして、上述した実施形態よりもトナー濃度が高い10[wt%]の現像剤Gは流動性が悪い状態となる。
異常画像の発生状況の評価方法は、それぞれの現像装置5を用いて、各開口部条件において画像面積率が5[%]の画像を100枚印刷したあとに、全ベタ画像を5枚印刷し、その全ベタ画像に異常がないかを確認した。
剤落下口71の開口形状は、長方形のものと、本実施形態の現像装置5と同様に台形のものとを用意した。剤落下口71の開口形状が長方形のものと台形のものとは、短手方向(回収スクリュ54の回転軸の軸線方向に直交する方向)の開口部の長さである開口幅を共に10[mm]とした。
長手方向(回収スクリュ54の回転軸の軸線方向)の開口部の長さである開口長さとしては、長方形のものでは、10[mm]、20[mm]、30[mm]のものを作成し、台形のものは、対辺のうち長辺を30[mm]、短辺を10[mm]とした。ここで、開口長さは、現像スリーブ51の表面上の現像剤Gを担持し得る領域における回収スクリュ54の搬送方向下流側の端部となる現像スリーブ端部51eから、剤落下口71における回収スクリュ54の搬送方向上流側の端部までの長さである。図1では、長手方向における剤落下口71の搬送方向下流側端部と、現像スリーブ端部51eとの位置は一致しているように見えるが、実験に用いた装置においては、剤落下口71の搬送方向下流側端部は、現像スリーブ端部51eよりもさらに搬送方向下流側に位置する。
このように剤落下口71の開口形状が異なる4種類の現像装置5を用意し、異常画像(連れ回りや現像剤担持不足である枯渇に起因する濃度ムラ)を確認した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
図9は、剤落下口71の開口形状が長方形で、その開口長さの長さが短い(10[mm])現像装置5を用いた場合に、現像剤Gの流動性が普通の状態(トナー濃度が7[wt%])の説明図である。
図10は、剤落下口71の開口形状が長方形で、その開口長さが短い現像装置5(図9と同様の現像装置)を用いた場合に、現像剤Gの流動性が悪い状態(トナー濃度が10[wt%])の説明図である。
図11は、剤落下口71の開口形状が長方形で、その開口長さが長い(20[mm]または30[mm])現像装置5を用いた場合に、現像剤Gの流動性が良い状態(トナー濃度が5[wt%])の説明図である。
【0052】
表1の結果より、開口長さが長くなるほど、連れ回り余裕度は向上している。実験1の状態は、開口長さが10[mm]の長方形でもトナー濃度が7[wt%]ときは、図9のように現像剤Gの嵩に異常がなく、連れ回りも枯渇も生じなかった。しかし、開口長さが短い現像装置5では、現像剤Gのトナー濃度大きくなった場合、図10に示すように現像剤Gの嵩が大きくなり、図10中の領域αで示す回収搬送路54aの下流側では、現像剤Gが現像スリーブ51に接触してしまい、その部分では現像スリーブ51の表面から離脱した現像剤が、現像スリーブ51に再付着して連れ回り画像が発生する。
一方、表1に示すように、開口長さが長い現像装置5では、現像剤Gのトナー濃度大きくなった場合も連れ回り画像は発生していない。
しかし、開口長さが長い現像装置5では、トナー濃度が低い場合は現像剤の嵩も小さくなることから、図11中の領域βで示すように、現像スリーブ端部51eと対向する位置まで現像剤Gが行き渡らなくなる。この位置まで現像剤Gが行き渡らないと、剤落下口71の下方にある供給搬送路53aにおける現像スリーブ端部51eと対向する位置にも現像剤Gが行き渡らないため、現像スリーブ51に十分な現像剤Gが供給されない現象(枯渇)が発生しまった。
【0053】
これに対して、本実施形態の現像装置5のように、開口形状を台形形状とした現像装置5は、連れ回りや枯渇が発生しないかった。これは、以下の理由による。
すなわち、現像剤Gの嵩が大きくなると、回収した現像剤Gが現像スリーブ51の表面に接触しやすい回収搬送路54aの搬送方向下流側では、仕切り部材57の現像スリーブ51に近い位置まで現像剤Gが到達する。剤落下口71が台形形状の構成では、仕切り部材57における現像スリーブ51に近い位置での開口長さが長くなったことで、現像剤Gの嵩が大きくなったときに、開口長さが10[mm]の長方形のものよりも上流側で剤落下口71による現像剤Gの落下を開始することができる。これにより、現像剤Gの嵩が大きくなったときの連れ回りの発生を防止することができる。
一方、現像剤Gの流動性が良く、現像剤の嵩が小さい状態では、台形形状の剤落下口71の上流側端部近傍では、仕切り部材57の現像スリーブ51に近い位置まで現像剤Gが到達しにくく、剤落下口71による現像剤Gの落下を抑制できる。また、台形形状であることで開口幅が搬送方向上流側ほど狭くなる斜めであることで、剤落下口71における上流側ですべての現像剤が落ちてしまわず、図1に示すように、現像スリーブ端部51eの位置まで適量の現像剤Gを運ぶことができる。これにより、現像剤の枯渇の発生も防止することができる。
【0054】
現像装置5では、回収スクリュ54の回転軸の位置から現像スリーブ51側に剤落下口71の開口部を設けることで、回収スクリュ54の回転軸を挟んで現像スリーブ51とは反対側の半分で、現像剤Gを落下させずに搬送できるので、回収搬送路54aの搬送方向下流側端部まで現像剤Gを搬送することができる。
【0055】
従来の現像装置5では、トナー濃度が高くなるなどの現像剤Gの嵩が大きくなった場合には、回収搬送路54aにおける搬送方向下流側端部近傍の現像剤Gの嵩が多くなり、仕切り部材57の上端から溢れるような現象となることある。そして、この溢れた現像剤Gが現像スリーブ51に再付着して、連れ回りが発生する。これに対して、本実施形態の現像装置5のように、剤落下口71を台形形状とすることで、現像剤Gの嵩が大きくなっても、剤落下口71から供給搬送路53aに現像剤Gが落ちることで、連れ回りを防ぐことができる。
【0056】
[実験2]
実験2として、剤落下口71が同じ大きさの台形で、図12(a)で示すように、対辺のうち現像スリーブ51側が短辺(10[mm])のものと、図12(b)で示すように、現像スリーブ51側が長辺(30[mm])のものとを作成し、実験1と同様の実験を行って、異常画像の発生状況を確認した。
この結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示すように、剤落下口71の現像スリーブ51側が短辺のものでは、現像剤の流動性が良いときに枯渇が生じた。これは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、現像スリーブ51側が短辺となる構成では、仕切り部材57に設けた剤落下口71における現像スリーブ51から遠い側が長辺となる。このような構成では、現像剤Gの流動性が高く現像剤の嵩が小さい状態でも、台形形状の剤落下口71の上流側端部から剤落下口71による現像剤Gの落下が開始され、剤落下口71における下流側端部まで十分な量の現像剤Gを搬送することができず、供給搬送路53aの上流側端部に受け渡される現像剤Gが不足して枯渇が生じる。
【0059】
また、本実施形態の現像装置5では、図4に示すように供給スクリュ53を回収スクリュ54の斜め下方に設けている。このような現像装置5では、剤落下口71は、仕切り部材57における回収スクリュ54の回転軸の鉛直下方近傍が、幅方向における現像スリーブ51から遠い側の端部となる。そして、幅方向における剤落下口71の現像スリーブ51側の端部は、仕切り部材57における上端部に近い位置となる。剤落下口71の現像スリーブ51側の端部は、現像剤Gの流動性が良く嵩が小さい状態では現像剤が到達し難い位置であるため、図12(b)に示すように、剤落下口71の現像スリーブ51側の端部の開口長さを30[mm]とすることで、上流側の位置から現像剤Gの落下が開始されることを抑制し、剤落下口71における下流側端部まで十分な量の現像剤Gを搬送することが可能となった。一方、現像剤Gの流動性が悪化し、回収搬送路54aの下流側で現像剤Gの嵩が大きくなり、その高さが、剤落下口71の現像スリーブ51側の端部まで到達するような状態では、剤落下口71の現像スリーブ51側の端部の開口長さを30[mm]とすることで、上流側で現像剤Gが剤落下口71に到達する。これにより、上流側で現像剤Gの落下が開始されるため、現像剤Gの嵩の上昇を防止し、連れ回りの発生を防止することが可能となる。
【0060】
これに対し、図12(a)に示すように、剤落下口71の現像スリーブ51側の端部の開口長さを10[mm]とすると、回収スクリュ54の回転軸の鉛直下方近傍における剤落下口71の開口長さが30[mm]となる。この位置は、現像剤Gの嵩が大きい状態であっても小さい状態であっても、現像剤Gが存在するため、現像剤Gの流動性が良い状態で、上流側の位置から現像剤の落下が開始され、枯渇が生じている。
【0061】
剤落下口71の台形形状について、対辺のうち現像スリーブ51側を長辺とすると、現像スリーブ51から離脱した現像剤Gが仕切り部材57の上面上を下りてくる。しかし、長辺が長すぎると、現像スリーブ51から離脱した現像剤Gが剤落下口71からそのまま供給搬送路53aに落下してしまい、トナー濃度が低下した現像剤Gが供給搬送路53a内に混入することで、濃度ムラの原因となる可能性がある。このため、剤落下口71の台形形状の長辺の長さは、現像剤Gの嵩が大きくなる回収搬送路54aの下流側における現像スリーブ端部51eから50[mm]以上では、濃度ムラなどが発生してしまうので望ましくない。
【0062】
以上、本実施形態の現像装置5は、現像ローラ50と、供給スクリュ53と、回収スクリュ54とを有する。現像ローラ50は、内部に備えたマグネットローラ55の複数の磁極により磁性キャリアとトナーとからなる現像剤Gを、表面を構成する現像スリーブ51上に担持し、現像スリーブ51が回転して潜像担持体である感光体1と対向する現像領域で感光体1の表面上の潜像にトナーを供給する現像剤担持体である。供給スクリュ53は、現像スリーブ51の回転軸の軸線方向に沿って現像剤Gを搬送し、現像スリーブ51に現像剤Gを供給する供給搬送部材である。回収スクリュ54は、現像領域を通過後の現像スリーブ51上から現像剤Gを受け渡され、この現像剤Gを現像スリーブ51の回転軸の軸線方向に沿って搬送する回収搬送部材である。供給スクリュ53を配置した空間である供給搬送路53aと、回収スクリュ54を配置した空間である回収搬送路54aとを仕切る仕切り部材57の、軸線方向に直交する断面における端部は現像スリーブ51の表面と対向し、回収スクリュ54は仕切り部材57を挟んで供給スクリュ53よりも上方に配置されている。さらに、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側端部に到達した現像剤Gを供給搬送路53aに落下させる現像剤落下口である剤落下口71が仕切り部材57に設けられている。このような現像装置5において、剤落下口71の開口形状が、台形形状であって、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状である。このような形状では、剤落下口71における下流側の開口幅よりも、剤落下口71における上流側の開口幅は狭くなる。このような剤落下口71について開口長さを長くすることで、現像剤Gの流動性が悪化して、剤落下口71近傍における現像剤Gの嵩が上昇しても、開口長さを長くした分、回収搬送路54a内における上流側から過剰な量の現像剤Gの落下を開始することができる。これにより、現像剤Gの嵩の上昇を抑制し、連れ回りの発生を防止することが可能となる。また、剤落下口71における上流側の開口幅は狭くなっているため、現像剤Gの流動性が良好で嵩が小さい状態であっても、現像剤Gが剤落下口71における上流側で一度に落下することを抑制し、剤落下口71における下流側端部まで十分な量の現像剤Gを搬送することができる。十分な量の現像剤Gを剤落下口71における下流側端部まで搬送することで、供給搬送路53aの上流側端部に供給される現像剤Gが不十分となることがなく、現像剤担持量不足である枯渇の発生を防止することができる。
【0063】
また、現像装置5では、剤落下口71における現像スリーブ51側が台形形状の長辺となっている。これにより、現像スリーブ51に近い位置で、回収搬送路54a内における上流側から過剰な量の現像剤Gの落下を開始することができる。これにより、現像スリーブ51に近い位置での現像剤Gの嵩の上昇を抑制し、連れ回りの発生を防止することが可能となる。
また、本実施形態の現像装置5は、図4に示すように、仕切り部材57は斜めに配置され、仕切り部材57の回収搬送路54a側の壁面は現像スリーブ51側ほど高い位置となる。よって、仕切り部材57の幅方向における現像スリーブ51に近い側ほど、現像剤Gの嵩が小さい状態では現像剤Gが到達し難い位置となり、連れ回りが生じるほどに現像剤Gの嵩が大きくなった状態では、仕切り部材57の幅方向全域に現像剤Gが到達した状態となる。
このため、仕切り部材57の幅方向における現像スリーブ51に近い側ほど、現像剤Gの流動性が良く嵩が小さい状態では現像剤Gが到達し難い位置で、且つ、流動性が悪化して嵩が大きくなった状態では現像剤Gが到達する位置となる。このような位置に、剤落下口71における台形形状の長辺を設定することで、現像剤Gの嵩が大きくなった状態では、剤落下口71の上流側端部から現像剤Gが剤落下口71に到達し、現像剤Gの落下が開始されるため、現像剤Gの嵩の上昇を防止し、連れ回りの発生を防止することが可能となる。一方、現像剤Gの流動性が良好で嵩が小さい状態では、剤落下口71の上流側端部には現像剤Gが到達し難く、上流側の位置から現像剤Gの落下が開始されることを抑制し、剤落下口71における下流側端部まで十分な量の現像剤Gを搬送することが可能となった。十分な量の現像剤Gを剤落下口71における下流側端部まで搬送することで、供給搬送路53aの上流側端部に供給される現像剤Gが不十分となることがなく、現像剤担持量不足としての現像剤の枯渇の発生を防止することができる。
本実施形態の現像装置5では、剤落下口71の形状を台形としているが、その形状としては、回収搬送路54aにおける回収スクリュ54の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状であって、その上流側端部が、現像剤Gの流動性が良く嵩が小さい状態では現像剤Gが到達し難い位置で、且つ、流動性が悪化して嵩が大きくなった状態では現像剤Gが到達する位置となればよい。例えば、本実施形態では、現像装置5の剤落下口71の短辺における上流側端部と長辺における上流側端部とを直線で結ぶことで剤落下口71が台形形状となっているが、この直線を曲線とする形状であってもよい。
【0064】
また、現像装置5では、現像剤Gを構成するトナーとして、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にあるトナーを用いる。このようなトナーを用いることにより、流動性を確保できる現像剤を提供することができ、汲み上げ不良や連れ回りによる異常画像のない安定した画像を提供することができる。
【0065】
また、本実施形態の複写機500は、潜像を担持する潜像担持体である感光体1と、感光体1を帯電する帯電手段である帯電装置40と、感光体1上の潜像を現像する現像手段と、感光体1に残留する転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段である感光体クリーニング装置2とを備える画像形成装置であり、複写機500が備える現像手段として、現像装置5のように現像剤の連れ回りと現像剤担持不足との両方の発生を防止できる現像装置を用いることにより、画像濃度が安定し、良好な画像形成を行うことができる。
【0066】
また、複写機500として、少なくとも各色の感光体1と各色の現像装置5とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて、各色毎のプロセスカートリッジとして装置本体から着脱可能としたことで、寿命や故障による交換が必要なカートリッジのみを交換できるので、ユーザーにとってコストがかからず、安定した画像を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態の複写機500が備える作像部6は、潜像を担持する潜像担持体である感光体1と、感光体1上の潜像を現像する現像手段とを備える複写機500における少なくとも感光体1と現像手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて複写機500本体に対して着脱可能にしたプロセスカートリッジである。安定した画像濃度の現像を行うことができる現像装置5の複写機500に対する交換性が高まる。
【符号の説明】
【0068】
1 感光体
2 感光体クリーニング装置
3 原稿搬送部
4 原稿読込部
5 現像装置
6 作像部
8 中間転写ベルト
10 中間転写ユニット
20 定着装置
50 現像ローラ
51 現像スリーブ
51e 現像スリーブ端部
52 ドクタブレード
53 供給スクリュ
53a 供給搬送路
54 回収スクリュ
54a 回収搬送路
55 マグネットローラ
57 仕切り部材
59 トナー補給口
71 剤落下口
72 剤持上げ口
100 プリンタ部
500 複写機
G 現像剤
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2010‐197539号公報
【特許文献2】特開2009‐192554号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に備えた複数の磁極により磁性キャリアとトナーとからなる現像剤を表面上に担持し、その表面が回転して潜像担持体と対向する現像領域で該潜像担持体の表面上の潜像にトナーを供給する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する供給搬送部材と、
該現像領域を通過後の該現像剤担持体上から該現像剤を受け渡され、該現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って搬送する回収搬送部材とを有し、
該供給搬送部材を配置した空間である供給搬送路と、該回収搬送部材を配置した空間である回収搬送路とを仕切る仕切り部材の、該軸線方向に直交する断面における端部は該現像剤担持体の表面と対向し、
該回収搬送部材は該仕切り部材を挟んで該供給搬送部材よりも上方に配置され、
該回収搬送路における該回収搬送部材の搬送方向下流側端部に到達した現像剤を該供給搬送路に落下させる現像剤落下口が該仕切り部材に設けられた現像装置において、
上記現像剤落下口の開口形状が、上記回収搬送路における上記回収搬送部材の搬送方向下流側ほど開口幅が広くなる形状であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記現像剤落下口の開口形状が台形形状であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2の現像装置において、
上記現像剤落下口における上記現像剤担持体側が台形形状の長辺であることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の現像装置において、
上記トナーは、形状係数SF−1が100〜180の範囲にあり、形状係数SF−2が100〜180の範囲にあるトナーであることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
少なくとも潜像担持体と、
該潜像担持体表面を帯電させるための帯電手段と、
該潜像担持体上に静電潜像を形成するための潜像形成手段と、
該静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段とを有する画像形成装置において、
該現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
少なくとも上記潜像担持体と上記現像装置とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて装置本体から着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを備える画像形成装置における少なくとも該潜像担持体と該現像手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して着脱可能にしたプロセスカートリッジにおいて、
上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−181286(P2012−181286A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43371(P2011−43371)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】