説明

現像装置

【課題】画像欠陥(ゴースト)の発生や現像ローラへのトナー付着等を防止することができる現像装置、これを搭載したカラー画像形成装置、並びに2成分現像剤を提供することである。
【解決手段】現像装置100は、磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤を収容するハウジング110内に、現像剤を撹拌し搬送するための撹拌搬送手段122,124と、磁気スリーブ132および該磁気スリーブ132内に周方向に配列された複数の磁極を備え、現像剤を磁気スリーブ132の表面に保持して搬送するための磁気ローラ130と、該磁気ローラ130に所定の間隔で対向して配設され、磁気ローラ130に保持された現像剤中のトナーを静電的に付着させるための現像ローラ140とが収容されたものであり、非磁性トナーは、体積平均粒径が6〜11μmであり、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いる現像装置に関し、より詳しくは、磁気ローラに保持した現像剤中のトナーを現像ローラの表面に付着させ、該トナーを静電潜像に飛翔させることにより静電潜像を現像する非接触現像方式の現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を利用した画像形成装置には、種々の方式のものがある。例えば、一つの感光体上に複数のカラー画像を順次形成する1ドラム色重ね方式では、感光体上に正確にトナーを重ねることで色ズレの少ないカラー画像形成が可能で、カラーの高画質化に対応する技術として注目されてきた。
【0003】
また、近年では、各色のトナーにそれぞれ対応した複数の感光体上に各トナーの画像を形成し、転写部材の送りに同期させて各感光体からの画像を転写部材上に重ね合わせてカラー画像を形成するタンデム方式が注目されてきている。この方式は、高速性に優れるという利点があるものの、感光体、現像装置等の作像手段を各色毎に並べて配置しなければならないため、大型化するという欠点を有している。
【0004】
この対策として、感光体どうしの間隔を狭くして小型化された作像手段を配置した小型のタンデム型画像形成装置が提案されている。このような小型のタンデム型画像形成装置では、作像手段の幅方向のサイズを極力小さくするために、現像装置を縦型にするのが有利である。すなわち、現像装置を構成する現像ローラ、磁気ローラ、撹拌搬送手段等の各部材を、従来のように感光体に対して略水平方向に配置するのではなく、斜め上方向ないし上方向に配置するのがレイアウト上望ましい。
【0005】
しかしながら、2成分現像剤を用いる現像方式では、装置を小型化すると、感光体へのキャリアの付着、トナーの飛散等の不具合が生じるという問題がある。特に、現像装置を縦型にして小型化すると、現像剤の還流、すなわち撹拌搬送手段付近から現像ローラまでの現像剤の供給が複雑になり、感光体へのキャリアの付着やトナーの飛散が顕著になり、また装置の小型化には限界があった。
【0006】
このような感光体へのキャリア付着等の問題を解決する手段の一つとして、特許文献1〜3には、2成分現像剤を収容するハウジング内に、現像剤を撹拌し搬送する撹拌搬送手段と、現像剤を周表面に保持して搬送する磁気ローラと、該磁気ローラに所定の間隔で対向して配設され、前記磁気ローラに保持された現像剤中のトナーを静電的に付着させる現像ローラとが収容された現像装置、並びにこれを搭載した画像形成装置が提案されている(ハイブリッド現像方式)。この方式によれば、磁気ローラから少量のキャリアが現像ローラへ付着したとしても、このキャリアは感光体へ飛翔できず再び磁気ローラ側へ戻るので、感光体へのキャリア付着を抑制し、キャリアが減少するなどの問題も生じにくくなる。
【0007】
しかしながら、上記のようなハイブリッド現像方式では、現像に使用されなかった現像ローラ上の残トナーは、磁気ローラ表面の磁気ブラシで摺擦しながら掻き取られるので、残トナーが十分にクリーニングされずに現像ローラ上に残存してしまうことがある。このように残トナーのクリーニングが不十分であると、次の現像時に前の画像の一部が残像(ゴースト)として現れる現象(いわゆる履歴現象)が生じやすいという問題がある(図5参照)。また、現像後の残トナーを十分にクリーニングできなければ、現像ローラにトナーが付着して、トナーが感光体へ飛翔しなくなるという問題も生じる。
【特許文献1】特開平6−67546号公報(図1及び図2)
【特許文献2】特開2003−295613号公報
【特許文献3】米国特許第3929098号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、画像欠陥(ゴースト)の発生や現像ローラへのトナー付着等を防止することができる現像装置およびこれを搭載したカラー画像形成装置、並びに2成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の現像装置は、磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤を収容するハウジング内に、前記現像剤を撹拌し搬送するための撹拌搬送手段と、磁気スリーブおよび該磁気スリーブ内に周方向に配列された複数の磁極を備え、前記現像剤を前記磁気スリーブの表面に保持して搬送するための磁気ローラと、該磁気ローラに所定の間隔で対向して配設され、前記磁気ローラに保持された現像剤中のトナーを静電的に付着させるための現像ローラとが収容されている。前記非磁性トナーは、体積平均粒径が6〜11μmであり、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下である。
【0010】
本発明における前記磁性キャリアは、飽和磁化が35〜50emu/gであり、体積平均粒径が35〜50μmであるのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の現像装置は、前記磁気ローラの回転中心に原点を有する直交座標に関して、前記撹拌搬送手段が第I象限に配置され、前記現像ローラが第III象限に配置された縦型の現像装置であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非磁性トナーの体積平均粒径および小粒径側の粒度分布をハイブリッド現像方式に適した範囲に調整することにより、画像欠陥(ゴースト)の発生や現像ローラへのトナー付着等を防止し、良好な画像が得られる。4μm以下のトナー粒子は、現像ローラの表面に固着しやすい傾向にあるので、その割合が8個数%を超えると、画像欠陥(ゴースト)の発生や現像ローラへのトナーの付着等が生じやすくなる。また、トナーの体積平均粒径が6μm未満になると、トナーが現像ローラから感光体へ飛翔しにくくなり、画像濃度が低下するおそれがある。一方、トナーの体積平均粒径が11μmを超えると、画像の解像度が低下するおそれがある。
【0013】
また、磁性キャリアの飽和磁化および体積平均粒径が上記範囲にあるときには、感光体へのキャリアの付着をより確実に防止し、また、キャリアの磁気ローラからの分離性を高め、さらに、現像ローラ上により均一なトナー薄層を形成することができる。
【0014】
さらに、本発明の現像装置は、撹拌搬送手段が第I象限に配置され、現像ローラが第III象限に配置された縦型の現像装置であるときには、画像形成装置を小型化することができるとともに、現像装置およびこの現像装置に取り付けられるトナーコンテナを画像形成装置の上部から容易に装脱着可能な構造とし、さらにジャム処理などの機構を簡素化することができる。
本発明の現像装置は、作像手段がほぼ水平方向に複数配列されたタンデム型カラー画像形成装置に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の現像装置およびこれを搭載したタンデム型カラー画像形成装置について詳細に説明する。
【0016】
本発明の現像装置は、上記したようなハイブリッド現像方式であり、磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤が収容される。この現像剤における非磁性トナーは、体積平均粒径が6〜11μmであり、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下である。また、磁性キャリアは、飽和磁化が35〜50emu/gであり、体積平均粒径が35〜50μmであるのが好ましい。
【0017】
トナーは、その粒径が大きすぎると解像度が低下する。一方、トナー粒径が小さいと現像ロールから感光体ドラムに飛翔しにくく、適正な画像濃度が得られない。したがって、トナーの体積平均粒径は上記範囲であるのがよい。また、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%を超えると、現像ロール表面にトナーが固着し、画像欠陥(ゴースト)や、濃度低下といった不具合を生じる。磁気ローラ表面の磁気ブラシをより精細にし、かつ、磁気ブラシによって十分な量のトナーを現像ローラに供給するためには、キャリアの体積平均粒径は上記範囲であるのがよい。
【0018】
トナーの体積平均粉径の測定方法は、コールターカウンターマルチサイザータイプIIE型(ベックマン・コールター社製)を用い、電界液(1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液)100〜150ml中に分散剤として界面活性剤を0.1〜5ml加え、さらに測定試料(トナー)を0.5〜50mg加える。試料を懸濁後、超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行い、コールターカウンターマルチサイザータイプIIE型により、アパチャーとして、100μmアパチャーを用いて2〜40μm粒子の粒度分布を測定した体積分布を求める。
【0019】
キャリアの体積平均粒径の測定方法は、図6に示すようなレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA−500)により求めることができる。測定方法としては、試料10gを測り取り、溶媒としてメタノールを100ml使用し、メタノールが入っているサンプルホルダーに試料を少しずつ入れ、撹拌する。サンプル溶液を超音波分散バス31で分散、撹拌しながら循環ポンプ32で循環し、レーザ照射部33にサンプル溶液を流し込む。次いで、光源としてHe−Neレーザ34を使用し、照射されたレーザのビーム径をビーム拡大器35で拡大してレーザ照射部33に照射し、回折光Mを集光レンズ36を通して検出器37で検出し、AD変換器39にて電気信号に変換して装置制御・演算部38で粒度分布を計算してデータを測定する。
【0020】
また、キャリアの飽和磁化は、振動試料型磁力計(VSM-P7-15型:東英工業製)を用いて、専用容器に試料を充填し秤量した後、サンプルホルダーにセットし3.98×105A/mの印可磁場の飽和磁化を測定する。
【0021】
現像に使用されなかった現像ローラ上の残トナーを磁気ローラ上に形成された現像剤の磁気ブラシで摺擦しながら掻き取るためには、高磁力キャリアを用いて摺擦力を高めるのが効果的であるが、本発明の現像装置においては、現像ローラ上の残トナーを除去しつつ、十分に帯電されたトナーを新たに現像ローラ上に付着させ、この現像ローラ上のトナー薄層を均一にするためにも低磁力キャリア、すなわち飽和磁化が上記範囲にあるキャリアを使用するのが好ましい。低磁力キャリアを使用することで、ソフトな磁気ブラシを形成することができ、現像ローラ上に均一なトナー薄層が形成される。一方、飽和磁化の高いキャリアを使用した場合、キャリアが磁気ローラから分離されにくくなり、近接する撹拌搬送手段(パドルミキサーなど)のピッチ紋が画像上に現れる不具合が発生するが、飽和磁化の低いキャリアを使用することによって、磁気拘束力が低減し磁気ローラからの分離が容易になるので、上記のようなミキサームラ(ピッチ紋)は発生しなくなる。
【0022】
また、低磁力キャリアの最大の問題点であるキャリア付着については、磁気ローラに形成された磁気ブラシから現像ローラ上へトナーを付着させ、トナー薄層を形成し、このトナーを感光体へ飛翔させるハイブリッド現像方式を用いることで、磁気ローラから少量のキャリアが現像ローラへ付着したとしても、感光体へは飛翔しない。すなわち、キャリア付着はキャリアの抵抗が低いときに感光体のベタ部に発生することが知られているが、本発明では、磁気ローラからトナーのみを現像ローラに付着させ、現像ローラにはキャリアが極力付着しないように、キャリアの体積抵抗率を108〜1012Ω・cm程度に設定し、かつ、現像ローラと感光体との間に空隙を設けて、トナーだけが飛翔するようにしている。万一、現像ローラにキャリアが少量付着しても感光体へは飛翔せずに再び磁気ローラへ戻る。結果として、現像剤の減少が起こらずに、現像剤を補給したり、付着キャリアを回収するなどの構造を必要としない。
【0023】
低磁力のキャリアについては、フェライトキャリアの不純物を増加させることで製造でき、最近では特開平11−202559号公報にあげられているようなSnを含む組成で構成されるものも示されている。なお、35emu/g以下の飽和磁化のキャリアにおいては、不純物の量が増加し、また焼成条件を絞る必要があるため、十分なフェライト反応が得られない。結果として、キャリア表面の凸凹が増加しやすくなり、キャリア表面を覆うコート材でコートする際の量産性が不安定となり、電気抵抗にもバラツキが生じるため、実使用が困難いった問題がある。
【0024】
本発明における非磁性トナーは、結着樹脂、着色剤などで構成されている。結着樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用するのがよい。
【0025】
着色剤としては、特に限定されるものではないが、例えばブラック、マゼンタ、シアンおよびイエローの顔料などが挙げられる。これらの着色剤は結着樹脂100質量部に対して、通常2〜20質量部、好ましくは5〜15質量部の割合で配合される。
【0026】
ブラック系着色剤としては、例えばアセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラックが挙げられる。
【0027】
マゼンタ系着色剤としては、例えばカラーインデックスに記されているC.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57、C.Iピグメントレッド49、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベシック(Basic)レッド10、C.I.ディスパーズ(Disperse)レッド15等が挙げられる。
【0028】
シアン系着色剤としては、例えばカラーインデックスに記されているC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15−1、C.Iピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー25等が挙げられる。
【0029】
イエロー系着色剤としては、例えばナフトールイエローS等のニトロ系顔料、ハンザイエロー5G、ハンザイエロー3G、ハンザイエローG、ベンジジンイエローG、バルカンファストイエロー5Gなどのアゾ系顔料または黄色酸化鉄、黄土等の無機顔料等があげられる。また、カラーインデックスに記されているC.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー16、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー21等が挙げられる。
【0030】
トナーには、本発明の効果を害しない範囲でその他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば電荷制御剤、ワックスなどが挙げられる。電荷制御剤としては、公知の電荷制御剤を使用できる。正帯電性電荷制御剤としては、例えばニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、有機金属化合物等を使用でき、負帯電性電荷制御剤としては、例えばオキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等を使用できる。ワックスとしては、例えば合成ポリエチレンワックス、合成ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、エステル系ワックス、テフロン(登録商標)系ワックス等が挙げられる。
【0031】
また、トナーには、必要に応じて無機酸化物などの外添剤を外添してもよい。この外添剤としては、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、チタン酸ストロンチウムなどが使用できる。外添剤の体積平均径は、0.001〜1.0μm、好ましくは0.005〜0.3μmであるのがよい。外添剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.1〜2.0質量部の範囲であるのが好ましい。外添剤とトナーとの混合は、例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリタイザー等を用いて行うことができる。
【0032】
次に、本発明におけるトナーの製造方法について説明する。まず、結着樹脂に対して、所定量の着色剤、必要に応じてワックス、電荷制御剤、電荷調整樹脂等を添加し、ヘンシェルミキサー等の混合装置で混合する。ついで、この混合物を二軸押出機等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕する。ついで、気流式ミル等の粉砕機で微粉砕した後、風力分級機等を用いて分級して体積平均粒径6〜11で、かつ、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下のトナーを得る。得られた得られたトナーには、必要に応じて所定量の外添剤を外添してもよい。
【0033】
本発明における磁性キャリアは、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属及びそれらの合金、あるいは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライトなどのソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物およびこれらの混合物等の磁性体材料を焼結、アトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子を使用することができる。また、該磁性体粒子の表面をスチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂で被覆してもよい。また、上記キャリアとして磁性体分散型樹脂を使用することもできる。この場合、用いる磁性体としては上記磁性体材料が使用でき、結着樹脂としては、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0034】
2成分現像剤中のトナー濃度は1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%であるのがよい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎるおそれがある。一方、トナー濃度が20質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや記録紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがある。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態にかかる縦型の現像装置を搭載したタンデム型カラー画像形成装置を示す概略断面図である。
【0036】
画像形成装置2内には、ブラック用作像手段3、シアン用作像手段4、マゼンタ用作像手段5およびイエロー用作像手段6が、水平方向に図1において左から右に向かってこの順に配列されている。これらの作像手段3,4,5,6は、それぞれ、感光体ドラム10、帯電器12、露光装置(厳密には露光装置の一部である半導体レーザあるいはLEDヘッド)14、後に詳述する現像装置100、転写装置16、クリーニング装置18などの作像エレメントを備えている。なお、図1においては、図示の簡略化のため、上記作像エレメントの符号は、ブラック用作像手段3においてのみ付してある。各作像手段3,4,5,6の現像装置100には、それぞれ、対応する色のトナーを補給するためのトナーコンテナ100Aが装着されている。
【0037】
作像手段3,4,5,6の下側には、搬送ベルト機構20が配設されている。搬送ベルト機構20は、駆動ローラ20Aと、被駆動ローラ20Bと、駆動ローラ20A及び被駆動ローラ20B間に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト20Cとを備えている。搬送ベルト20Cの上側の移動面20aは、作像手段3,4,5,6における感光体ドラム10と転写装置16との間を通ってほぼ水平横方向に延在し、かつ記録紙の搬送面を形成している。搬送ベルト20Cは、駆動ローラ20A及び被駆動ローラ20Bにより、図1において反時計方向に回転移動する(図2における矢印参照)。
【0038】
搬送ベルト機構20の下方には、給紙カセット22が配設されている。搬送ベルト機構20の下流側には定着装置24、排出ローラ26、排紙トレイ28などが配設されている。給紙カセット22から送り出された記録紙は、搬送ベルト機構20により感光体ドラム10と転写装置16との間に搬送される。記録紙には、カラー画像に対応した色のトナーが順次に転写され、定着装置24により定着された後、排出ローラ26により排紙トレイ28に排出される。
【0039】
次に、上記タンデム型カラー画像形成装置に備えられた現像装置100を含む作像手段3,4,5,6について詳細に説明する。なお、作像手段3,4,5,6の構成は相互に実質的に同じであるので、以下、これらを代表して、ブラック用作像手段3について説明する。
【0040】
図2および図3に示すように、作像手段3は、感光体ドラム10、帯電器12、露光装置14、現像装置100、転写装置16、クリーニング装置18などの作像エレメントを備えている。タンデム型画像形成装置においては、感光体ドラム10の周囲に配置する帯電器12、露光装置14、現像装置100、転写装置16、クリーニング装置18などの作像エレメントなどをコンパクトに設計することが重要であり、このために本実施形態においては現像装置100をほぼ縦型にレイアウトしている。
【0041】
感光体ドラム10における感光材料として、正帯電有機感光体(正OPC)、a−si感光体などを用いることができる。正OPCを用いた場合、オゾンなどの発生が少なく、帯電が安定しており、特に単層構造の正OPCは、長期にわたって使用して膜厚が変化した場合においても、感光特性に変化が少なく画質も安定するため、長寿命のシステムには好適である。そして正OPCを長寿命のシステムに用いる場合、膜厚を20μmから40μm程度に設定するのが好ましい。膜厚が20μm未満の場合には、膜厚が減少して10μm程度になったとき、絶縁破壊によって黒点の発生が目立ってくる。また、膜厚を40μmを越えるように設定した場合には、感度が低下し、画像濃度低下の要因となる。
【0042】
露光装置14は、半導体レーザもしくはLEDヘッドを用いることができる。感光材料として正OPCを用いた場合には、770nm付近の波長が有効であり、a−si感光体の場合には685nm付近の波長が有効である。本発明の実施形態においては、感光材料として正OPCを用い、露光装置14としてLEDヘッドを用いている。
【0043】
本発明の現像装置100は、合成樹脂等を用いて形成することができるハウジング110を備えている。ハウジング110における感光体ドラム10と対向する端面は開口している。ハウジング110内には、磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤と、該現像剤を撹拌し搬送する撹拌搬送手段120と、現像剤を周表面に磁気的に吸引保持して搬送する磁気ローラ130と、該磁気ローラ130及び感光体ドラム10の各々の周表面に対し所定の間隔で対向して配設され、トナーのみを静電的に付着させる現像ローラ140とが収容されている。
【0044】
磁気ローラ130は、アルミニウムなどの非磁性材料からなる円筒状の磁気スリーブ132と、該磁気スリーブ132内に複数の磁極N1、S1、N2、N3、S2をこの順に周方向に配列した静止永久磁石134とを備えている。磁気スリーブ132の周表面には2成分現像剤が磁気的に吸引保持されて磁気ブラシが形成され、磁気スリーブ132の回転により2成分現像剤が搬送される。この磁気ローラ130には、第1の直流電源装置136によって所定の直流バイアス電圧が印加されるよう構成されている。
【0045】
現像ローラ140は、導電性材料などからなる円筒状部材(スリーブ)により構成されている。スリーブの材質としては、均一な導電体であればよく、アルミニウム、ステンレス鋼、周表面を導電性樹脂で被覆したものなどが適用できる。スリーブの表面抵抗は、現像性と現像リークを考慮して決定される。現像ローラ140の周表面と正OPCの周表面との隙間は約250μmに設定されている。この空間にはワイヤー電極等は用いない。この現像ローラ140には、第2の直流電源装置142によって所定の直流バイアス電圧が印加されると共に、交流電源装置144によって交流バイアス電圧が重畳して印加されるよう構成されている。
【0046】
ハウジング110内には、磁気ローラ130と隣接する位置に第1の現像剤撹拌室112が設けられ、更に第1の現像剤撹拌室112と隔壁113によって仕切られた第2の現像剤撹拌室114が設けられている。第1及び第2の現像剤撹拌室112,114は、磁気ローラ130の軸方向両端部において相互に連通され、全体として無端状の循環搬送路が形成される。この循環搬送路は、ハウジング110内の現像室を構成する。第1の現像剤撹拌室112は、磁気ローラ130と平行に磁気ローラ130に沿って直線状に延在する。第2の現像剤撹拌室114は、隔壁113を挟んで第1の現像剤撹拌室112と平行に直線状に延在する。
【0047】
撹拌搬送手段120は、第1の回転螺旋羽根部材122と、第2の回転螺旋羽根部材124とからなる。第1の回転螺旋羽根部材122は、第1の現像剤撹拌室112および磁気ローラ130に沿って直線状に延在するよう第1の現像剤撹拌室112内に回転自在に配設され、第2の回転螺旋羽根部材124は、第2の現像剤撹拌室114に沿って直線状に延在するよう第2の現像剤撹拌室114内に回転自在に配設されている。ハウジング110内にはまた、磁気ローラ130の周表面に保持された現像剤の層厚を規制する層厚規制ブレード117が設けられている。
【0048】
上記現像装置100において、磁気ローラ130の回転中心O(換言すれば、磁気スリーブ132の回転中心O)に原点を有する直交座標(直交するx軸およびy軸からなる仮想の平面座標)に関して、第1の回転螺旋羽根部材122および第2の回転螺旋羽根部材124は第I象限に配置され、現像ローラ140は第III象限に配置されている。第1の回転螺旋羽根部材122および第2の回転螺旋羽根部材124は、ほぼ水平方向に並設されている。これに伴い、第1の現像剤撹拌室112および第2の現像剤撹拌室114は、第I象限に、ほぼ水平方向に並設されている。
【0049】
ハウジング110の下方(ハウジング110の下面と、ベルト機構20の上側の移動面20aとの間)には、空間領域Sが、第IV象限に形成されるか、又は、第IV象限から第III象限にまたがって形成されるが、本実施形態では、図示のように第IV象限から第III象限にまたがって形成されている。感光体ドラム10、帯電器12、LEDヘッド14、転写装置16及びクリーニング装置18は第III象限に配置されている。
【0050】
上記のように現像装置100が縦型の構造を有していることにより、現像装置100の下方に空間領域Sを形成することが可能となり、画像形成装置の小型化の達成に大きく貢献する。すなわち、図1および図4に示すように、ブラック用作像手段3における現像装置100の下方に形成された空間領域Sには、隣接するシアン用作像手段4における感光体ドラム10、帯電器12、LEDヘッド14、転写装置16およびクリーニング装置18が配置される。同様にして、シアン用作像手段4における現像装置100の下方に形成された空間領域Sには、隣接するマゼンタ用作像手段5における感光体ドラム10、帯電器12、LEDヘッド14、転写装置16およびクリーニング装置18が配置される。さらに、マゼンタ用作像手段5における現像装置100の下方に形成された空間領域Sには、隣接するイエロー用作像手段6における感光体ドラム10、帯電器12、LEDヘッド14、転写装置16およびクリーニング装置18が配置される。このようにして、縦型の現像装置100を備えた作像手段3,4,5,6を水平方向に無駄な空間を可能な限り有効利用して配列することができるので、タンデム型カラー画像形成装置の縦方向及び横方向寸法を短縮して全体の構成をコンパクトにすることができる。
【0051】
作像手段3,4,5,6の各々において、トナーコンテナ100Aは、現像装置100の上部、すなわちハウジング110の上部に配置することができる。これにより、内蔵されたトナー撹拌搬送手段によりトナー補給口から自由落下させることができ、交換時には画像形成装置本体2の上方から取り外し、再度上方から装着するという、単純な構成が可能になる。また、トナーコンテナ100Aと同様に、現像装置100も上方に取り外し、再度上方から装着することが可能であり、異常時やメンテナンス時などに際し、離脱及び装着操作を容易に遂行できる。現像装置100の構成も全体として単純化される。
【0052】
図3に示すように、静止永久磁石134の磁極は、複数の磁極N1、S1、N2、N3、S2がこの順に周方向に配列されて構成されている。磁極N2とN3は、相互に同極である一対の磁極(反発極)を構成している。すなわち、静止永久磁石134は、現像ローラ140に最接近した位置にある磁極N1、第1の回転螺旋羽根部材122により撹拌搬送された2成分現像剤を受け取って保持し、磁気スリーブ132の周表面に形成された磁気ブラシの高さを規制する層厚規制ブレード117によって穂切りを行う穂切り領域に位置する穂切り磁極N3、最接近磁極N1へ穂切りされた磁気ブラシを搬送する搬送磁極S2、最接近磁極N1から磁気ブラシを受け取る搬送磁極S1、搬送磁極S1から磁気ブラシを受け取って第1の現像剤撹拌室112内に搬送する搬送磁極N2により構成される。
【0053】
そして本発明においては、磁気スリーブ132の半径方向外側において、相互に同極である一対の磁極(反発極)N2とN3間に生ずる反発磁力によって該一対の磁極N2とN3間に形成される垂直磁力の値が最も低い領域(以下、この領域を「最低磁力領域」と称することとする)を形成すると共に該最低磁力領域を、第I象限におけるθ=35°〜60°の角度範囲内に位置付けるのが好ましい。ここで、第I象限における角度θとは、最低磁力領域と原点Oとを結ぶ直線がx軸となす角度をいう。なお、最低磁力領域の垂直磁力は、現像装置100の構成(磁気ローラ130の直径、静止永久磁石134の配置、静止永久磁石134の磁力など)により異なることはいうまでもない。例えば、1mT(ミリテスラ)以下の場合もあるし、3mT以下の場合もあるが、理想的には、0テスラ、あるいは可能な限り0テスラに近い値であることが好ましい。
【0054】
感光体ドラム10、現像装置100における現像ローラ140、磁気ローラ130、第1の回転螺旋羽根部材122及び第2の回転螺旋羽根部材124は、それぞれ図示しない駆動手段により図2,3に示す矢印方向に回転駆動される。静電潜像担持体である正OPCは、帯電器12により400Vに帯電される。その後、LEDヘッドにより770nmの波長で露光を行うと、露光後の電位(最大露光後の感光体の電位)は70Vに設定される。第1及び第2の回転螺旋羽根部材122及び124を回転駆動することにより、現像剤を攪拌してトナーを適正なレベルに帯電させる。
【0055】
第1の現像剤撹拌室112内の2成分現像剤は、磁気スリーブ132の周表面に保持される。磁気スリーブ132の周表面に保持された現像剤は、層厚規正ブレード117を通過することにより所定の厚さに形成される。このようにして磁気スリーブ132の周表面に保持された現像剤は、一定の厚さで現像ロール140の周表面に接触する。磁気スリーブ132には第1の直流電源装置136によって所定の直流バイアス電圧V1が印加されており、現像ローラ140には第2の直流電源装置142によって所定の直流バイアス電圧V2が印加されているので、磁気スリーブ132と現像ローラ140の電位差(V1−V2)によって現像ローラ140の周表面にトナーのみが吸着され薄層が形成される。磁気スリーブ132の直流バイアス電圧V1を400V、現像ローラ140の直流バイアス電圧V2を100〜150Vに設定することで、現像ローラ140の周表面に約1.0〜1.5mg/cm2のトナー層が形成される。このときの現像剤の帯電量は約10〜20μC/gが適正である。帯電量が10μC/g未満であるとトナー飛散が目立ち、20μC/gを越えると薄層形成されたトナーが感光体ドラム10の周表面へ飛翔しにくくなる。
【0056】
現像ローラ140の周表面に付着されたトナーは、現像ローラ140に直流と交流が重畳されたバイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム10の周表面に形成された静電潜像に飛翔して現像することができる。なお、トナーの飛散を防ぐために、現像ローラ140への交流バイアス電圧の印加は現像の直前に行う。具体的には、第2の直流電源装置142によって所定の直流バイアス電圧V2が印加されている現像ローラ140に対し、現像の直前において、交流電源装置144により現像ローラ140に所定の交流バイアス電圧を重畳して印加する。交流バイアス電圧(ピークツーピーク電圧)Vp−p=1.5KV、周波数f=3.0KHzに設定することで、画像濃度・ドット再現・カブリ除去のバランスをとることができる。また、デューティ比(DUTY比)を30%に設定することにより現像ゴーストを抑制することができる。
【0057】
現像ローラ140のトナー層の表面越しの電位を測定すると、約320Vとなっており、320V−70V(最大露光後の感光体の電位)=250Vが実質の現像の実行単位であるといえる。磁気スリーブ132の周表面と現像ローラ140の周表面との隙間は400μmに設定されている。層厚規正ブレード117と磁気スリーブ132の周表面との隙間は、磁性キャリアの粒径に応じて調整されるが、例えば体積平均粒径35μmの磁性キャリアと、非磁性トナー10%の2成分現像剤においては、磁気ブラシが現像ローラ140の周表面に接触するよう、400〜500μmに設定している。磁気スリーブ132の周表面と現像ローラ140の周表面との隙間が狭すぎると、二成分現像剤が磁気スリーブ132及び現像ローラ140の間を通過できずに溢れてしまう。他方、該隙間が広すぎると、二成分現像剤が現像ローラ140の周表面に接触できず、現像ローラ140のトナーを回収することが困難となる。したがって、この状態で現像動作を繰り返すと、次第に現像ローラ140の周表面にトナーが固着してしまい、感光体ドラム10へトナーが飛翔できなくなってしまう。これらの問題は、前記隙間を400〜500μmに設定することで低減できる。
【0058】
磁性材料からなる層厚規正ブレード117は、磁気ローラ130の静止永久磁石134に配設された穂切り磁極N3に対し、半径方向外方において実質的に対向するよう配置されているので、磁気ローラ130と層厚規正ブレード117との間に磁界が形成される。このような構成により、磁気スリーブ132の周表面に形成される磁気ブラシの搬送性を絞り、更に、磁気スリーブ132の表面にローレット加工あるいはブラスト処理を施すことにより搬送性を高めることにより、磁気スリーブ132と層厚規正ブレード117との間のギャップマージンを緩和することが可能になる。
【0059】
第1の現像剤撹拌室112内の2成分現像剤は、回転する磁気スリーブ132の周表面に吸着されて汲み上げられ、磁気ブラシとされる。磁気スリーブ132及び層厚規制ブレード117間の隙間を通過した磁気ブラシは、現像ローラ140との隙間を通過する間に、非磁性トナーのみが現像ローラ140に供給される。非磁性トナーのみが現像ローラ140に供給された磁気ブラシは、磁気スリーブ132の周表面に吸着された状態で第1の現像剤撹拌室112に搬送され、磁気スリーブ132の周表面から引き剥がされて第1の現像剤撹拌室112内に戻される。第1の現像剤撹拌室112内に戻された2成分現像剤は、第1の現像剤撹拌室112及び第2の現像剤撹拌室114に沿って、それぞれ第1及び第2の回転螺旋羽根部材122及び124により他の2成分現像剤と共に撹拌搬送される。現像室内のトナー量が不足した場合には、トナーコンテナ100Aから周知のとおりにしてトナーが補給される。多くの記録紙にカラー画像を記録するためには、このような工程を繰り返し行う必要がある。
【0060】
ところで、磁気スリーブ132の周表面から磁気ブラシを引き剥がすには、真下(重力の方向)に向けて引き剥がすのが最も容易であるが、現像装置100が横長となって画像形成装置のコンパクト化に大きく影響し、望ましくない。先に述べたように、本実施形態における現像装置100においては、画像形成装置のコンパクト化を促進するため、第1及び第2の回転螺旋羽根部材122及び124は第I象限に配置され、現像ローラ140は第III象限に配置されている。このため、磁気スリーブ132において、現像ローラ140に対しトナーのみを供給した磁気ブラシは、これを、磁気スリーブ132の周表面において、下方から水平位置よりも上方に、具体的には、第III象限及び第IV象限から第I象限まで持ち上げて引き剥がす必要がある。
【0061】
磁気スリーブ132の周表面から磁気ブラシを引き剥がすには、相互に同極性の永久磁石を内部に固定配置し、上述した最低磁力領域を形成すればよい。しかしながら、水平位置まで磁気ブラシを引き上げると、反発磁力による最低磁力領域が存在したとしても、この最低磁力領域が上記水平位置に近ければ、磁気ブラシが現像室(第1の現像剤撹拌室112)に戻り切れず、その一部である磁性キャリア及び/又は非磁性トナーが現像室から下方(第IV象限)に漏れてしまうことになる。これに対し、最低磁力領域を第II象限に近い位置に設置した場合には、磁気ブラシが剥がれ切れずにそのまま、磁気スリーブ132の周表面と層厚規制ブレード117との間の隙間を通過してしまい、同じ磁気ブラシが磁気スリーブ132の周表面上に存在し続ける、いわゆる分離不良という、望ましくない状態となる。このような分離不良が生じると、数枚の記録紙に現像を施しただけで、画像濃度は極端に低下してしまう。
【0062】
本発明においては、磁気ローラ130に内蔵された静止永久磁石134に相互に同極である一対の磁極N2とN3を備え、磁極N2とN3間に生ずる反発磁力によって該一対の磁極N2とN3間に形成される、垂直磁力の値が最も低い領域、すなわち最低磁力領域を第I象限における35°〜60°の角度範囲内に位置付けることにより、上述したような、現像剤の分離不良と、現像室から下方(第IV象限)への漏れ、という二つの望ましくない現象を同時に解消することができる。すなわち、現像過程において、非磁性トナーのみが現像ローラ140に供給された磁気ブラシは、磁気スリーブ132の周表面に吸着された状態で現像室である第1の現像剤撹拌室112に搬送され、上記0テスラとなる領域において磁気スリーブ132の周表面から引き剥がされて第1の現像剤撹拌室112内に戻される。上記最低磁力領域を第I象限における35°〜60°の角度範囲内に位置付けているので、磁気ブラシは現像室(第1の現像剤撹拌室112)に確実に戻ることができ、その一部である磁性キャリア及び/又は非磁性トナーが現像室から下方(第IV象限)に漏れることが回避される。また、磁気ブラシは、磁気スリーブ132の周表面に吸着された状態で第I象限における35°〜60°の角度範囲を通過する間に引き剥がされるので、磁気スリーブ132の周表面と層厚規制ブレード117との間の隙間を通過して同じ磁気ブラシが磁気スリーブ132の周表面上に存在し続ける、いわゆる分離不良という不具合も解消される。
【0063】
なお、図示の実施形態において、相互に同極である一対の磁極N2とN3は、いずれも第I象限に配置されているが、これに限定されるものではない。要するに、磁極N2とN3間(反発磁力間)に形成される上記最低磁力領域を第I象限における35°〜60°の角度範囲内に位置付けることが重要であって、相互に同極である一対の磁極N2とN3の周方向位置は、個々の現像装置に応じて適宜の位置に設定すればよい。
【0064】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
平均粒径および飽和磁化が表1に示す値のキャリアに、体積平均粒径が表1に示す値のトナーを10質量%調合し、ボールミルで混合して2成分現像剤をそれぞれ得た。これらの現像剤を用いて画像形成実験を行った。実験に用いたトナーおよびキャリアの詳細、評価に用いた装置、並びに評価方法を以下に示す。結果を表1に示す。
【0066】
<トナーの製造方法>
以下に、トナー及びキャリアの詳細について記載する。なお、部は「質量部」を表わす。
【0067】
(結着樹脂の製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.0mol、テレフタル酸4.5mol、無水トリメリット酸0.5molと酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、230℃で8時間かけて反応させ、軟化点120℃のポリエステル樹脂を得た。
【0068】
(配合組成)
上記で製造したポリエステル樹脂:100部
カルナバワックス (品番:C1会社名:加藤洋行)10部
カーボンブラック (品番:MA100 会社名:三菱化学)4部
4級アンモニウム塩 (品番:FCA201PS会社名:藤倉化成)3部
【0069】
上記配合組成の混合物をヘンシェルミキサーで混合後、ロールミルで溶融混練し、冷却後ジェットミルで微粉砕した。得られた微粉砕品を、分級条件を変化させて分級しトナー粒子を得た。なお、一回の分級で所望する粒度分布を有するトナーが得られない場合は繰り返し分級を行ってトナー粒子を得た。更に、得られたトナー粒子に下記に示される外添材料をヘンシェルミキサーにて4分間混合し、試料No. 1〜10のトナーを得た。
トナー粒子 100部
疎水性シリカ微粒子 1.0部
酸化チタン微粒子(品番:CR−EL、会社名:石原産業)0.5部
【0070】
上記疎水性シリカ微粒子は以下の方法で作製した。
【0071】
日本ニューマチック工業社製ジェットミルIDS−2型を用いて、日本アエロジル社製RA−200Hを所望の比表面積になるように解砕・調整した。得られたシリカ微粒子100質量部を密閉型ヘンシェルに入れ、γ−アミノプロピルトリエトキシシランとジメチルシリコーンオイルの等量部を混合した疎水化処理剤20質量部をスプレーで上から均一に塗布し、さらに混合させながら110℃で2時間反応させ疎水化処理し、その後、副反応生成物を減圧除去し、200℃で1時間加熱し、所望のシリカを得た。
【0072】
現像剤は、パウダーテック社製樹脂コートフェライトキャリア(試料No. 1〜10の特性を有するサンプル品)に上記によって得られたトナーを10%調合してボールミルで30分間混合し作製した。得られたトナーを用いて、京セラ株式会社製プリンタFS−C5016Nにて評価を行った。
【0073】
<評価方法>
(1)現像ゴースト:図5に示すような画像パターンを印字した際の画像履歴のレベルを目視で確認した。
○:履歴なし
△:2周目に履歴が若干ある
×:2枚目以降にも履歴が存在する
(2)1dot再現性:1dot及び1dotライン部分を10倍以上のルーペで確認し、問題なく確認できた場合には表中に「○」を記載し、できない場合には表中に「×」を記載した。
【表1】

【0074】
表1に示すように、試料No.7〜9では、現像ゴーストが発生したり、または1dot再現性が悪かった。これに対して、試料No.1〜6および10では、現像ゴーストが発生せず、かつ1dot再現性も良好であった。しかし、このような試験結果となった原因は、キャリアの体積平均粒径や飽和磁化、さらにトナーの体積平均粒径だけでは説明できない。
【0075】
そこで、本発明者は上記原因を分析していく過程で、トナーが現像ローラに固着することに起因していることを突き止めた。さらに、固着トナーについて分析を進めていくと、トナー中の小粒径トナー、特に4μm以下のトナーが現像ローラに固着しやすい傾向にあることが判明した。
【0076】
すなわち、上記試料No. 1〜10で使用した各トナーの4μm以下の個数割合を調べると、表2に示す通りであった。表2には、表1と同じ現像ゴーストおよび1dot再現性の評価結果も示した。
【表2】

【0077】
表2において、4μm以下のトナーの個数割合と、現像ゴーストおよび1dot再現性の評価結果とを対比すると、4μm以下の個数割合が8%以下であるとき、現像ゴーストが発生せず、かつ1dot再現性も良好であることがわかった。
【0078】
すなわち、試料No. 7,8では、4μm以下のトナー量が10%であったが、磁気ブラシによる現像ローラ上のトナー掻き取りが不十分となり、現像ゴースト現象が発生した。
【0079】
試料No. 9では、トナーの体積平均粒径が14μmであり(表1)、かつ4μm以下のトナー量が5%であるため、トナー散りが多く1dotの再現性が著しく悪くなった。
【0080】
試料No. 10は、トナーの体積平均粒径が5μmであるために、初期の画像濃度が1.0を下回るなど、画像濃度が薄くなった。これは、トナーの粒径が小さいため、現像ロールから感光体へ飛翔しにくいためである。
【0081】
以上の試験結果から、磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤を使用するハイブリッド現像方式においては、非磁性トナーは、体積平均粒径が6〜11μmであり、かつ4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下であるのが、画像欠陥(ゴースト)の発生や現像ローラへのトナー付着等を防止するうえで好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態にかかるタンデム型カラー画像形成装置を示す概略図である。
【図2】図1に示すタンデム型カラー画像形成装置に備えられているブラック用作像手段を示す概略図である。
【図3】図2に示すブラック用作像手段に備えられている現像装置を示す概略図である。
【図4】図1に示すタンデム型カラー画像形成装置に備えられているブラック用作像手段およびシアン用作像手段を示す概略図である。
【図5】現像時に生じることがある画像欠陥(ゴースト)を示す模式図である。
【図6】レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置の測定原理を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0083】
2 画像形成装置本体
3 ブラック用作像手段
4 シアン用作像手段
5 マゼンタ用作像手段
6 イエロー用作像手段
10 感光体ドラム
12 帯電器
14 LEDヘッド
16 転写装置
18 クリーニング装置
31 超音波分散バス
32 循環ポンプ
33 レーザー照射部
34 He−Neレーザー
35 ビーム拡大器
36 集光レンズ
37 検出器
38 装置制御・演算部
100 現像装置
110 ハウジング
112 第1の現像剤撹拌室
113 隔壁
114 第2の現像剤撹拌室
117 層厚規制ブレード
120 撹拌搬送手段
122 第1の回転螺旋羽根部材
124 第2の回転螺旋羽根部材
130 磁気ローラ
132 磁気スリーブ
134 静止永久磁石
140 現像ローラ
N1、S1、N2、N3、S2 磁極
S ハウジングの下方における空間領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キャリアおよび非磁性トナーからなる2成分現像剤を収容するハウジング内に、
前記現像剤を撹拌し搬送するための撹拌搬送手段と、
磁気スリーブおよび該磁気スリーブ内に周方向に配列された複数の磁極を備え、前記現像剤を前記磁気スリーブの表面に保持して搬送するための磁気ローラと、
該磁気ローラに所定の間隔で対向して配設され、前記磁気ローラに保持された現像剤中のトナーを静電的に付着させるための現像ローラとが収容された現像装置であって、
前記非磁性トナーは、体積平均粒径が6〜11μmであり、4μm以下のトナー粒子の割合が8個数%以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁性キャリアは、飽和磁化が35〜50emu/gであり、体積平均粒径が35〜50μmである請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
キャリアは、体積抵抗率が108〜1012Ω・cmである請求項1記載の現像装置。
【請求項4】
前記非磁性トナーは、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤およびワックスからなり、かつアルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素およびチタン酸ストロンチウムから選ばれる外添剤が外添されている請求項1記載の現像装置。
【請求項5】
前記2成分現像剤中のトナー濃度が1〜20質量%である請求項1記載の現像装置。
【請求項6】
前記磁気ローラの回転中心に原点を有する直交座標に関して、前記撹拌搬送手段が第I象限に配置され、前記現像ローラが第III象限に配置された請求項1記載の現像装置。
【請求項7】
第III象限に、前記現像ローラから空隙を設けて感光体が配置されている請求項6記載の現像装置。
【請求項8】
第IV象限、または第IV象限から第III象限にまたがって空間領域Sが形成されている請求項6記載の現像装置。
【請求項9】
前記空間領域Sに、隣接する他の現像装置の第III象限に配置された感光体が位置する請求項8記載の現像装置。
【請求項10】
前記磁気ローラは、磁気スリーブと、該磁気スリーブ内に周方向に沿って複数の磁極N1、S1、N2、N3、S2をこの順に配列した静止永久磁石とからなり、一対の磁極N2とN3間に生ずる反発磁力によって該一対の磁極N2とN3間に形成される垂直磁力の値が最も低い領域が第I象限におけるθ=35°〜60°の角度範囲内に位置付けられる請求項6記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−65317(P2006−65317A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218860(P2005−218860)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】