説明

生体情報モニターシステム及び時分割多重同期方法

【課題】小型無線端末と無線通信装置との偏波面の不一致による受信レベルの低下を回避でき、また、広範囲にわたって被験者の生体情報をモニターすることができる生体情報モニターシステムを得る。また、同期スロット前後の送受信切替処理を高速に行うことなく、時分割多重通信を用いた無線通信ができる生体情報モニターシステム及び時分割多重同期方法を得る。
【解決手段】被験者1の生体情報を取得して送信する小型無線端末10と、受信した無線信号を増幅して送信する中継装置30と、生体情報を取得する無線通信装置20とを備え、無線通信装置20は、所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナ21により受信する。また、複数のフレーム同期パターンを無線通信端末20が送信し、小型無線端末10は、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報モニターシステム及び時分割多重同期方法に関し、特に、無線通信を用いた生体情報モニターシステム及び時分割多重同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体情報モニターシステムは、例えば、「センサを用いて生体信号を検出する検出部と、検出された信号を無線で送信するために変調する変調回路とを有する送信機10と、前記検出信号を受信して復調する復調手段と、復調信号を生体信号モニタ装置20の生体信号入力部に伝送するコネクタ32を有する受信機30とを設け、前記受信機におけるコネクタ32を、各種生体信号モニタ装置20の共通化された生体信号入力部に接続可能な構成とする。」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、無線通信において、任意の方向に送受信が行えフェージングの影響を受けにくいダイバーシティアンテナとして、例えば、「ダイポールアンテナ2(直線偏波アンテナ)を下ケース1に収納し、パッチアンテナ4(円偏波アンテナ)を上ケース3に収納すると共に、下ケース1上に支持される上ケース3の起立姿勢を変更可能とした。これにより、空間ダイバーシティの効果に加えて偏波ダイバーシティの効果が期待でき、マルチパスの影響を受けにくくなる。また、パッチアンテナ4の向きを適宜調整することによって、ダイポールアンテナ2では送受信が行えない上方や下方との送受信をパッチアンテナ4に行わせることができる。」ものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、時分割多重通信により複数の送信機と無線通信を行う無線通信装置として、例えば、「復調部101より復調されたビット列がユニークワード検出器102に入り、ユニークワードが検出されると、検出信号103をカウンタ制御部104に送る。カウンタ制御部104ではカウンタ部105に送られてきたユニークワード信号のうち、規定の条件を満たすものだけをカウンタ部に送る。カウンタ部105ではカウンタ制御部104のチェックを通過したユニークワードが確認された場合、カウンタの値を規定の値にセットする。分離部106は復調部101から送られてきたデータをカウンタ部105の値を基に、規定のカウント値で切り出す。」ものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003?10138号公報(要約)
【特許文献2】特開2004?56281号公報(要約)
【特許文献3】特開平6?141009号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、被験者の筋電図、心電図、呼吸波形、脳波などをモニターするための生体信号及び被験者の体動状態をモニターするための加速度データなどの体動信号(以下、生体情報という)をモニターする場合、被験者(人体)の任意の箇所に電極等を介して取り付けられたセンサ等により生体信号等を取得し、取得した生体信号の情報を情報処理装置に集約し、適宜情報処理を行って生体情報をモニターする。
【0007】
このような生体情報モニターシステムにおいては、被験者の運動機能を損なうことなく生体情報を取得するため、無線通信により生体情報を情報処理装置に送信することが求められ、また、被験者に取り付けられるセンサ等及び無線端末は小型、軽量なものが求められている。
【0008】
しかしながら、センサを備えた小型・軽量な無線端末(以下、小型無線端末という)を被験者に装着した場合、小型無線端末の送信アンテナの偏波面は、被験者の動きにより不確定となるため、送信アンテナと受信アンテナとの偏波面不一致により受信レベルが低下する、という問題点があった。また、このような送信アンテナと受信アンテナとの偏波面に不一致が生じた場合、ダイバーシティにより、マルチパスフェージングの影響を低下させることができない、という問題点があった。
【0009】
また、小型無線端末を被験者に複数装着し、複数の小型無線端末と時分割多重接続(Time Division Multiple Access:以下、TDMAともいう)を用いて無線通信を行う場合、同期スロット前後の送受信切替処理を高速に行う必要があり、小型無線端末を簡易な構成として小型化・軽量化を図ることが困難である、という問題点があった。
【0010】
さらに、上述のような小型無線端末を用いた場合、送信アンテナも小型化する必要があり、アンテナ利得を高くすることが困難であり、また、搭載する電源(バッテリ)も小型化する必要があり、出力電源を高くすることが困難なため、通信距離が短くなり、広範囲にわたって被験者の生体情報をモニターすることができない、という問題点があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、被験者に装着された小型無線端末の送信アンテナと、受信アンテナとの偏波面の不一致による受信レベルの低下を軽減すると共に、スペースダイバーシティの効果によりマルチパスフェージングの影響を受けにくくすることができる生体情報モニターシステムを得るものである。
【0012】
第2の目的は、被験者に装着する小型無線端末を簡易な構成として小型化・軽量化し、高速処理ができない場合であっても、同期スロット前後の送受信切替処理を高速に行うことなく、時分割多重通信を用いた無線通信ができる生体情報モニターシステム及び時分割多重同期方法を得るものである。
【0013】
第3の目的は、被験者に装着された小型無線端末を小型化・軽量化し、無線通信距離が短い場合であっても、広範囲にわたって被験者の生体情報をモニターすることができる生体情報モニターシステムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る生体情報モニターシステムは、人体に装着され、前記人体の生体情報を取得して、取得した生体情報を送信する無線端末と、前記無線端末から送信された前記生体情報を受信する無線通信装置とを備えたものである。
【0015】
また、人体に装着され、前記人体の生体情報を取得して、取得した生体情報を送信する無線端末と、前記無線端末から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を増幅して送信する中継装置と、前記無線端末又は前記中継装置から送信された無線信号を受信して、前記生体情報を取得する無線通信装置とを備えたものである。
【0016】
また、前記中継装置は、前記無線通信端末が装着された人体に装着されるものである。
【0017】
また、前記無線通信装置は、所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナと、前記円偏波アンテナにより受信した無線信号が入力されるダイバーシティ受信回路とを備え、前記複数の円偏波アンテナは、スペースダイバーシティを構成するものである。
【0018】
また、前記中継装置は、所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナと、前記円偏波アンテナにより受信した無線信号が入力されるダイバーシティ受信回路とを備え、前記複数の円偏波アンテナは、スペースダイバーシティを構成するものである。
【0019】
また、前記ダイバーシティ受信回路は、前記複数の円偏波アンテナから入力された無線信号の内、受信強度の大きい信号を選択して出力するものである。
【0020】
また、前記ダイバーシティ受信回路は、前記複数の円偏波アンテナから入力された無線信号を合成して出力するものである。
【0021】
また、前記無線通信装置は、所定の時間長を有するフレームに複数のスロットを時分割で割り当てて、前記スロットが割り当てられた複数の前記無線端末と同期して時分割多重通信するものである。
【0022】
また、前記無線通信装置は、複数のフレーム同期パターンを前記フレームの所定のスロット間に挿入して送信し、前記無線端末から送信されたデータを前記フレーム同期パターンに同期して受信し、前記無線端末は、前記無線通信装置から送信された複数のフレーム同期パターンを受信し、受信した前記複数のフレーム同期パターンの内、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行うものである。
【0023】
また、前記無線端末は、前記複数のフレーム同期パターンの内、当該無線端末が割り当てられた前記スロットと隣接していないフレーム同期パターンに同期するものである。
【0024】
また、前記無線通信装置は、前記フレームの先頭及び前記フレームの中間に、それぞれ種類の異なるフレーム同期パターンを挿入するものである。
【0025】
また、本発明に係る時分割多重同期方法は、所定の時間長を有するフレームに複数のスロットを時分割で割り当てて、前記スロットが割り当てられた複数の無線端末と無線通信装置とが同期して通信する時分割多重同期方法であって、前記無線端末は、前記無線通信装置から送信された複数のフレーム同期パターンを受信し、受信した前記複数のフレーム同期パターンの内、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行い、前記無線通信装置は、複数のフレーム同期パターンを前記フレームの所定のスロット間に挿入して送信し、前記無線端末から送信されたデータを前記フレーム同期パターンに同期して受信するものである。
【0026】
また、前記無線端末は、前記複数のフレーム同期パターンの内、当該無線端末が割り当てられたスロットと隣接していないフレーム同期パターンに同期するものである。
【0027】
また、前記フレーム同期パターンは、前記フレームの先頭及び前記フレームの中間に挿入される2種類のフレーム同期パターンとするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、無線端末から送信された生体情報を、所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナにより受信することにより、人体に装着された無線端末と、無線通信装置との偏波面の不一致による受信レベルの低下を軽減すると共に、スペースダイバーシティの効果によりマルチパスフェージングの影響を受けにくくすることができる。
【0029】
また、複数のフレーム同期パターンを無線通信端末が送信し、このフレーム同期パターンを受信した無線端末が、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行うことにより、同期スロット前後の送受信切替処理を高速に行うことなく、時分割多重通信を用いた無線通信ができる。
【0030】
また、無線端末から送信された無線信号を中継装置により増幅して送信することにより、無線端末の通信距離が短い場合であっても、広範囲にわたって生体情報をモニターすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る生体情報モニターシステムの構成図である。図において、本実施の形態1に係る生体情報モニターシステムは、例えば、スポーツジム、リハビリ施設などで運動する被験者1の人体に装着され、生体情報を取得するセンサを有する無線端末である複数の小型無線端末10と、この複数の小型無線端末10とTDMA通信を行い、受信した情報を情報処理装置2へ出力する無線通信装置20とから構成される。さらに、無線通信装置20は、円偏波アンテナ21を複数備えている。
【0032】
図2は実施の形態1に係る小型無線端末の構成図である。図において、小型無線端末10は、被験者1の例えば、筋電図、心電図、呼吸波形、脳波などをモニターするための生体信号及び被験者1の体動状態をモニターするための加速度データなどの体動信号を検出するセンサ11と、センサ11で検出された信号をデジタル情報に変換した後、後述する動作により、所定の同期タイミングでデータ送信する電子回路(マイクロプロセッサ)などで構成されるデータ制御部12と、データ制御部12から入力された送信データを無線信号に変調し、アンテナ14を介して送信すると共に、無線通信装置20から受信したフレーム同期パターン(後述)を復調してデータ制御部12に入力する無線部13と、センサ11及びデータ制御部12に電力を供給するバッテリ15(例えば、ボタン電池)と、後述する2種類のフレーム同期パターンの内、当該小型無線端末10に対応するフレーム同期パターンを選択するスイッチ16(例えば、ディップスイッチ)とを備えている。この小型無線端末10を構成する、センサ11、データ制御部12、無線部13、アンテナ14、バッテリ15及びスイッチ16は、小型パッケージ(例えば、500円玉大の大きさ)に一体形成され、センサ11の電極等を被験者1の体表面(皮膚)に貼着する粘着テープなどにより、被験者1に装着される。また、この小型無線端末10のアンテナ14は、例えばモノポールアンテナ又はダイポールアンテナなどの直線偏波アンテナによりデータ送信を近距離(例えば、5m〜10m程度)で行うものであり、アンテナ利得及び出力電力は低いものである。
【0033】
図3は実施の形態1に係る無線通信装置の構成図である。図において、無線通信装置20は、複数の円偏波アンテナ21と、円偏波アンテナ21を送受信で共用するためのアンテナ共用器22と、小型無線端末10へ送信するフレーム同期パターン(後述)を変調して円偏波アンテナ21を介して送信を行う送信回路23と、小型無線端末10から受信した送信データを受信すると共に、受信したデータを復調して出力するダイバーシティ受信回路24と、後述する動作により、2種類のフレーム同期パターンを出力し、当該フレーム同期パターンを受信した小型無線端末10から所定のタイミングで送信された送信データを受信することにより、複数の小型無線端末10と同期してTDMA通信を行い、受信した生体情報を情報処理装置2へ入力する時分割多重接続装置25とから構成されている。尚、この生体情報が入力された情報処理装置2(例えば、パーソナルコンピュータ)は、入力された生体情報を処理して、各種生体信号及び体動信号の数値データ又は図形データとしてディスプレイ等に表示させる。
【0034】
円偏波アンテナ21は、例えばパッチアンテナを用いて、誘電体基板の片面に略正方形のパッチ電極と給電用のマイクロストリップラインとを設け、かつ誘電体基板の他面のほぼ全面に接地導体を設けて、給電線及びマイクロストリップラインを介してパッチ電極に高周波信号を給電する円偏波アンテナである。尚、この円偏波アンテナ21は、右旋円偏波又は左旋円偏波の何れの円偏波を用いても良い。
【0035】
また、この円偏波アンテナ21は、無線通信装置20に複数設けられ、スペースダイバシティを構成する。複数本の円偏波アンテナ21からの受信信号を利用してスペースダイバーシティ受信を構成する場合、ある円偏波アンテナ21の受信レベルが低くても他の円偏波アンテナ21の受信レベルが高ければ、より大きなダイバーシティ改善効果を得ることができる。そのため、各円偏波アンテナ21−1,21−2,…21−nでそれぞれ受信する受信波の相関が低くなるように各円偏波アンテナ21を配置する。この複数の円偏波アンテナ21によって受信された信号波がダイバーシティ受信回路24へ送られ、受信強度の大きい信号波が選択されるか、あるいは各信号波が合成された上で受信される。
【0036】
以上のような構成による小型無線端末10と無線通信装置20との通信の動作を次に説明する。
【0037】
まず、従来の時分割多重同期方法について説明する。
図4は従来の時分割多重同期方法に係るフレーム構成を示す図、図5は従来の時分割多重同期方法に係る各スロットの送信タイミングを示す図である。図4に示すように、所定の時間長を有する一つのフレームを時分割して複数のスロット(ここでは、8スロットとする)で構成し、各スロットに割り当てられた送信端末が当該スロットと同期してデータ送信を行うことにより、複数の送信端末から送信されたデータを受信することを可能としている。このようなスロットの同期タイミングは、図5に示すように、データを受信する無線通信装置から、フレーム毎にフレーム同期パターン(以下、同期パターンともいう)を送信し、この同期パターンを受信した送信端末a〜hは、フレーム同期カウンタを補正して、当該送信端末に対応するスロットのタイミングで送信を開始する。このように、複数の送信端末が、同期パターンを受信した後、対応するスロットタイミングで送信を行うことにより、1つのフレームを構成するスロット数に応じた数の送信端末との通信を可能とする。
【0038】
しかしながら、図5に示すように、スロット1に対応する送信端末aは、上述のように、同期パターンを受信した直後に送信をする必要があり、また、スロット8に対応する送信端末hは、送信を終了した直後に同期パターンの受信をする必要があり、送受信の切り替えの高速性が要求される。一方、送受信の切り替えの高速性を要求しない方法として、同期パターンの前後にガードビットを付加する方法があるが、この場合、データ伝送効率を大幅に低下させることとなる。このような送受信の切り替えの高速性が要求されない本実施の形態1における時分割多重同期方法を図6及び図7により説明する。
【0039】
図6は実施の形態1に係るフレーム構成を示す図、図7は実施の形態1に係る各スロットの送信タイミングを示す図である。ここでは、例えば8台の小型無線端末10−1〜10−8と無線通信装置20とが同一の周波数帯で通信する場合について説明する。図6に示すように、一つのフレームを8スロットで構成し、一つのフレームの中に、2種類のフレーム同期パターンを配置する。フレームの先頭に第1の同期パターン100、フレームの中間(スロット4とスロット5の間)に第2の同期パターン200を配置する。このようなフレーム構成において、各小型無線端末10は、それぞれの対応スロットが割り当てられている。
【0040】
このようなフレーム構成において、図7に示すように、各小型無線端末10は、2種類の同期パターンの内、割り当てられたスロットと隣接していない同期パターンと同期する。即ち、第1の同期パターン100と隣接するスロット1及び8に対応する小型無線端末10−1及び10−8は、第2の同期パターン200と同期し、第2の同期パターン200と隣接するスロット4及び5に対応する小型無線端末10−4及び10−5は、第2の同期パターン100と同期する。尚、2種類の同期パターンと隣接していないスロットが割り当てられた小型無線端末10は、任意の同期パターンと同期する。ここでは、スロット1,2,3及び8が第2の同期パターン200と同期し、スロット4,5,6及び7が第1の同期パターン100と同期する。尚、同期パターンは、スイッチ16により、第1又は第2の同期パターンの切り替えが可能であり、切り替えた同期パターンに応じたスロットが対応付けられる。このような同期パターンを受信した小型無線端末10の動作を図8に基いて次に説明する。
【0041】
図8は実施の形態1に係る小型無線端末の送信動作を示すフローチャートである。ここでは、スロット1に対応する小型無線端末10−1の動作について説明する。尚、他の小型無線端末10においても、対応するスロット及び同期パターンが異なるのみで、同様の動作を行う。
【0042】
まず、小型無線端末10−1の電源が投入されると、センサ11により検出された生体情報が、データ制御部12に逐次入力される。データ制御部12は、無線部13を受信モードに切り替える(S1)。無線部13は、無線通信装置20から送信される同期パターンの読み込みを開始して、受信した受信信号を復調してデータ制御部12へ入力する(S2)。データ制御部12は、入力された受信信号が、第2の同期パターン200であるか否かを判断し、第2の同期パターン200が検出されるまで受信動作を繰り返す(S3)。第2の同期パターン200を検出したとき、フレーム同期カウンタを補正してフレーム同期を確立する(S4)。
【0043】
次に、データ制御部12は、当該小型無線端末10に対応するスロット番号(スロット1)に基づき、第2の同期パターン200の受信から当該スロット1までの時間をタイマー値として設定し(S5)、設定したタイマー値が経過するまでスリープモードに切り替えて待機する(S6,S7)。データ制御部12は、設定したタイマーのタイムアップにより送信タイミングを判断して、無線部13を送信モードに切り替えて(S8)、規定されたフォーマットに従って、センサ11から入力された生体情報をデータ送信する(S9)と共に、当該スロット1の送信時間をタイマー値として設定し、タイムアップにより送信完了を判断する(S10)。送信完了を判断したデータ制御部12は、スリープモードに切り替え(S11)、当該スロット1完了から第2の同期パターン200までの時間をタイマー値として設定して、次回の第2の同期パターン200の受信タイミングまで待機する(S12)。次に、データ制御部12は、設定したタイマーのタイムアップにより受信開始タイミングを判断したとき、手順S1に戻り、上述した動作を繰り返す。
【0044】
このような動作を、小型無線端末10−1〜10−8が行うことにより、図7に示すように、1つのフレームにつき8つのスロットにより、TDMA通信を行うことが可能となり、且つ、各小型無線端末10は、同期パターンを受信後、データ送信を開始するまでの時間及びデータ送信の完了後から同期パターンを受信するまでの時間に、少なくとも1スロット分以上の時間が空くこととなる。また、このようなフレーム構成とすることで、1フレーム当たり、同期パターン一つ分のデータ量が増加するのみであり、データ伝送効率を大幅に低下させることもない。
【0045】
尚、上記説明では、同期パターンの検出判断(手順S3)において、一度でも当該同期パターンを検出した場合に、同期パターンの検出判断を行ったが、データ制御部12に後方保護回路を実装し、所定の回数(例えば、8回)連続して同期パターンを受信したときに、同期パターンの検出を判断しても良い。これにより、ノイズなどによる誤作動を防止することができる。さらに、データ制御部12に前方保護回路を実装し、所定の回数(例えば、8回)連続して同期パターンが受信できないときに、同期外れを判断しても良い。これにより、瞬時的な受信不良による誤判断を防止することができる。
【0046】
また、上記説明では、8台の小型無線端末10と無線通信装置20とが同一の周波数帯で通信する場合について説明したが、複数の周波数帯を用いて、TDMA通信を行っても良い。例えば、2つの周波数帯を用いることにより、被験者1に16個の小型無線端末10を装着して通信を行うことが可能である。また、上記説明では、1フレームを8スロットで構成した場合を説明したが、これに限らず、他のスロット数としても良い。
【0047】
以上のように、本実施の形態1においては、複数の円偏波アンテナ21をそれぞれ相関が小さくなるように配置して、スペースダイバーシティを構成することにより、偏波面の不一致による受信レベルの低下を軽減できるとともにスペースダイバーシティの効果によりマルチパスフェージングの影響を受けにくくなり、良好な受信状態を確保できる。
【0048】
また、無線通信装置20は、フレームの先頭に第1の同期パターン100を配置し、フレームの中間に第2の同期パターン200を配置して小型無線端末10に送信し、小型無線端末10から送信されたデータをフレーム同期パターンに同期して受信し、小型無線端末10は、無線通信装置20から送信された2種類のフレーム同期パターンを受信し、受信したフレーム同期パターンの内、当該小型無線端末10が割り当てられたスロットと隣接していないフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行うことにより、同期パターンを受信後、データ送信を開始するまでの時間及びデータ送信の完了後から同期パターンを受信するまでの時間に、少なくとも1スロット分以上の時間が空くこととなり、同期スロット前後の送受信切替処理を高速に行うことなく、時分割多重通信を用いた無線通信ができる。また、データ伝送効率を大幅に低下させることなく、送受信切り替え時間を確保することができる。さらに、高速処理の必要がなく、安価なデバイスを使用できることから小型無線端末10の低価格化も期待できる。
【0049】
尚、本実施の形態では、アンテナ共用器22を用いて、受信ダイバーシティー及び送信ダイバーシティーとして構成した場合を説明したが、本発明はこれに限らず、受信又は送信の何れかの円偏波アンテナを用いてダイバーシティを構成しても良い。
【0050】
また、本実施の形態では、小型無線端末10のアンテナ14は、直線偏波アンテナを用いた場合を説明したが、本発明はこれに限らず、アンテナ14を円偏波アンテナとしても良い。これにより、受信側の無線通信装置20のアンテナを直線偏波アンテナとしても、偏波面不一致による受信レベルの低下を軽減することができる。
【0051】
実施の形態2.
上記実施の形態1で説明したように、小型無線端末10は、近距離(例えば、5m〜10m程度)で行うものであり、アンテナ利得及び出力電力は低いものである。従って、例えば陸上競技場内などで広範囲にわたって運動する被験者1の生体情報をモニターすることができない。このため、本実施の形態2では、上記実施の形態1の構成に加え、被験者1に装着された中継装置30を備え、この中継装置30により無線信号の中継を行い、通信エリアの拡大を図るものである。
【0052】
図9は実施の形態2に係る生体情報モニターシステムの構成図である。図において、本実施の形態2に係る生体情報モニターシステムは、例えば、陸上競技場のトラックなどを運動する被験者1に装着され、生体情報を取得するセンサ11を有する複数の小型無線端末10と、被験者1にベルト3により着脱自在に装着され、複数の小型無線端末10から送信された無線信号を増幅して再送信する中継装置30と、中継装置30から送信された無線信号を受信して、受信した情報を情報処理装置2へ出力する無線通信装置20とから構成される。尚、小型無線端末10、無線通信装置20及び情報処理装置2の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0053】
図10は実施の形態2に係る中継装置の構成図である。図において、中継装置30は、小型無線端末10から送信された信号を受信する受信アンテナ31と、受信アンテナ31を介して受信した受信信号を増幅して出力する増幅器32と、この増幅器32で増幅された送信信号を送信する送信アンテナ35と、増幅器32の出力電力及び増幅利得を制御する制御部33と、中継装置30の各機器に電力を供給するバッテリ34とから構成される。この中継装置30の各構成機器は、一つの筐体内に収容され、ベルト3を介して被験者1に装着される。尚、受信アンテナ31及び送信アンテナ35は、可能な限り利得の高いものを使用し、また、円偏波又は直線偏波の何れを用いても良い。
【0054】
以上のような構成により、本実施の形態2においては、小型無線端末10から送信された無線信号は、中継装置30により増幅されて無線通信装置20へ送信されるので、被験者1に装着された小型無線端末10のアンテナ14を小型化し、アンテナ利得及び出力電力は低いものであっても、小型無線端末10と無線通信装置20との通信エリアを十分確保することができ、小型無線端末10で取得した生体情報を遠方でモニターすることが可能となる。また、小型無線端末10は、送信パワーを上げる必要がなくなり消費電力の低減も期待できる。
【0055】
さらに、ベルト3を介して、中継装置30を被験者1に装着することにより、被験者1の肢体の運動機能を損なうことなく生体情報を取得することができると共に、広範囲にわたって被験者1の生体情報をモニターすることができる。
【0056】
尚、本実施の形態では、一つの受信アンテナ31により、小型無線端末10から送信された無線信号を受信する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば図11に示すように、ダイバーシティ受信回路36を備え、複数の受信アンテナ31により、スペースダイバーシティを構成し、ダイバーシティ受信回路36により、受信強度の大きい信号波を選択するか、又は各信号波を合成した上で増幅器32へ入力しても良い。
【0057】
また、本実施の形態では、増幅器32により受信アンテナ31を介して受信した受信信号を増幅して出力する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、受信後、周波数変換して、無線通信装置20へ再送信する構成としても良い。
【0058】
さらに、中継装置30に、上記実施の形態1で説明した時分割多重接続装置25を備えて、各小型無線端末10と中継装置30とがTDMA通信を行い、受信した情報を無線通信装置20へ再送信する構成としても良い。
【0059】
また、本実施の形態では、ベルト3を用いて中継装置30を被験者1に装着する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、中継装置30を被験者1に装着すれば良く。例えば、リュック等を用いて被験者1に装着しても良い。
【0060】
さらに、本実施の形態では、中継装置30を被験者1に装着する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、中継装置30が小型無線端末10の通信範囲内にあれば良い。例えば、陸上競技場内を広範囲で移動しない、砲丸投げなどの投擲競技を行う被験者1の近傍に中継装置30を設置し、スタンド席などの遠隔地に無線通信装置20を設置して生体情報をモニターしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1に係る生体情報モニターシステムの構成図である。
【図2】実施の形態1に係る小型無線端末の構成図である。
【図3】実施の形態1に係る無線通信装置の構成図である。
【図4】従来の時分割多重同期方法に係るフレーム構成を示す図である。
【図5】従来の時分割多重同期方法に係る各スロットの送信タイミングを示す図である。
【図6】実施の形態1に係るフレーム構成を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る各スロットの送信タイミングを示す図である。
【図8】実施の形態1に係る小型無線端末の送信動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2に係る生体情報モニターシステムの構成図である。
【図10】実施の形態2に係る中継装置の構成図である。
【図11】実施の形態2に係る複数の受信アンテナを備えた中継装置の構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 被験者、2 情報処理装置、3 ベルト、10 小型無線端末、11 センサ、12 データ制御部、13 無線部、14 アンテナ、15 バッテリ、16 スイッチ、20 無線通信装置、21 円偏波アンテナ、22 アンテナ共用器、23 送信回路、24 ダイバーシティ受信回路、25 時分割多重接続装置、30 中継装置、31 受信アンテナ、32 増幅器、33 制御部、34 バッテリ、35 送信アンテナ、36 ダイバーシティ受信回路、100 第1の同期パターン、200 第2の同期パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着され、前記人体の生体情報を取得して、取得した生体情報を送信する無線端末と、
前記無線端末から送信された前記生体情報を受信する無線通信装置と
を備えたことを特徴とする生体情報モニターシステム。
【請求項2】
人体に装着され、前記人体の生体情報を取得して、取得した生体情報を送信する無線端末と、
前記無線端末から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を増幅して送信する中継装置と、
前記無線端末又は前記中継装置から送信された無線信号を受信して、前記生体情報を取得する無線通信装置と
を備えたことを特徴とする生体情報モニターシステム。
【請求項3】
前記中継装置は、前記無線通信端末が装着された人体に装着されることを特徴とする請求項2記載の生体情報モニターシステム。
【請求項4】
前記無線通信装置は、
所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナと、
前記円偏波アンテナにより受信した無線信号が入力されるダイバーシティ受信回路と
を備え、
前記複数の円偏波アンテナは、スペースダイバーシティを構成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の生体情報モニターシステム。
【請求項5】
前記中継装置は、
所定の間隔を隔てて配置される複数の円偏波アンテナと、
前記円偏波アンテナにより受信した無線信号が入力されるダイバーシティ受信回路と
を備え、
前記複数の円偏波アンテナは、スペースダイバーシティを構成することを特徴とする請求項2、3又は請求項2、3に従属する請求項4の何れかに記載の生体情報モニターシステム。
【請求項6】
前記ダイバーシティ受信回路は、前記複数の円偏波アンテナから入力された無線信号の内、受信強度の大きい信号を選択して出力することを特徴とする請求項4又は5記載の生体情報モニターシステム。
【請求項7】
前記ダイバーシティ受信回路は、前記複数の円偏波アンテナから入力された無線信号を合成して出力することを特徴とする請求項4又は5記載の生体情報モニターシステム。
【請求項8】
前記無線通信装置は、
所定の時間長を有するフレームに複数のスロットを時分割で割り当てて、前記スロットが割り当てられた複数の前記無線端末と同期して時分割多重通信することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の生体情報モニターシステム。
【請求項9】
前記無線通信装置は、複数のフレーム同期パターンを前記フレームの所定のスロット間に挿入して送信し、前記無線端末から送信されたデータを前記フレーム同期パターンに同期して受信し、
前記無線端末は、前記無線通信装置から送信された複数のフレーム同期パターンを受信し、受信した前記複数のフレーム同期パターンの内、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行うことを特徴とする請求項8記載の生体情報モニターシステム。
【請求項10】
前記無線端末は、前記複数のフレーム同期パターンの内、当該無線端末が割り当てられた前記スロットと隣接していないフレーム同期パターンに同期することを特徴とする請求項8又は9記載の生体情報モニターシステム。
【請求項11】
前記無線通信装置は、前記フレームの先頭及び前記フレームの中間に、それぞれ種類の異なるフレーム同期パターンを挿入することを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載の生体情報モニターシステム。
【請求項12】
所定の時間長を有するフレームに複数のスロットを時分割で割り当てて、前記スロットが割り当てられた複数の無線端末と無線通信装置とが同期して通信する時分割多重同期方法であって、
前記無線端末は、前記無線通信装置から送信された複数のフレーム同期パターンを受信し、受信した前記複数のフレーム同期パターンの内、予め定められたフレーム同期パターンと同期してデータ送信を行い、
前記無線通信装置は、複数のフレーム同期パターンを前記フレームの所定のスロット間に挿入して送信し、前記無線端末から送信されたデータを前記フレーム同期パターンに同期して受信することを特徴とする時分割多重同期方法。
【請求項13】
前記無線端末は、前記複数のフレーム同期パターンの内、当該無線端末が割り当てられたスロットと隣接していないフレーム同期パターンに同期することを特徴とする請求項12記載の時分割多重同期方法。
【請求項14】
前記フレーム同期パターンは、前記フレームの先頭及び前記フレームの中間に挿入される2種類のフレーム同期パターンとすることを特徴とする請求項12又は13記載の時分割多重同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−54798(P2008−54798A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233221(P2006−233221)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(391006773)株式会社沖電気コミュニケーションシステムズ (16)
【Fターム(参考)】