説明

画像処理回路のシミュレーション装置、画像処理回路のシミュレーション方法、画像処理回路の設計方法、及び画像処理回路のシミュレーションプログラム

【課題】目視による画像処理結果の効果の定性的及び定量的な評価を容易化できる画像処理回路のシミュレーション装置等を提供する。
【解決手段】画像処理回路の動作をシミュレーションする画像処理回路のシミュレーション装置1は、前記画像処理回路に対応する機能を具備する画像処理モジュールと、前記画像処理モジュールを実行し、1又は複数の入力画像に対して前記画像処理を行うモジュール実行手段63と、モジュール実行手段63で実行された画像処理モジュールによる前記画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行する結果グループ化実行手段66とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理回路のシミュレーション装置、画像処理回路のシミュレーション方法、画像処理回路の設計方法、及び画像処理回路シミュレーションプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の機能を実行できるソフトウェアシステムの機能評価、デバッグのために、種々の機能を実行させた結果をシミュレーションするプログラムが知られている。
例えば、特許文献1に記載のテストシーケンサーでは、管理モジュール及び実行モジュールを含んで構成され、テスト対象となるテストエグゼクティブに新たな機能を追加したり、機能の修正を行ったりしたときに、他の機能と干渉するかしないかを簡単にチェックできるものが提案されている。
【0003】
また、特許文献2に記載のソフトウェアテスト装置では、検証対象となるソフトウェアへの入力及び出力にインターフェースして、動作手順、設定内容等に応じた出力群を受け取って評価するものが提案されている。
また、特許文献3に記載のソフトウェアコンポーネントシステムでは、ソフトウェアコンポーネントの実行において、他のソフトウェアコンポーネントを実行する前の状態を表す事前条件定義情報、後の状態を表す事後条件定義情報をデータベース上に格納しておき、ソフトウェアコンポーネントのテストを正確に行うものが提案されている。
【0004】
さらに、特許文献4に記載の画質評価装置では、画像を取り込んで数値化した画像を微分し、ムラの輪郭部を顕在化して、階調値毎の面積を利用して求めた画質指数により、検査画面の画質を定量的に評価するものが提案されている。
さらに、特許文献5に記載の画質評価方法では、粒状性テストパターンを用いて、例えばコントラスト強度を判定して、装置間の画質の比較や経時的な画質の比較を行うものが提案されている。
さらに、特許文献6に記載の画質評価装置では、階調が連続的に変化するグラデーション画像を用いて、画像を定量的に評価するものが提案されている。
さらにまた、特許文献7に記載の画像処理装置では、対象物から検出した画像におけるベクトル成分のヒストグラムを計測することで、画像の統計的性質を評価するものが提案されている。
【0005】
ところで、プロジェクタ、FPD(Flat Panel Display)等の画像表示装置においては、入力画像データに対して画像処理を行って適切な表示画像の形成を行っているが、近年画像処理回路に要求される機能が拡大している。
そこで、色変換、解像度変換、ガンマ変換等の種々の画像処理を、画像処理単位でチップ化した部分画像処理回を組み合わせ、多機能の画像処理を行うことのできる画像処理回路を形成することが行われている。
そして、従来は、このような画像処理回路を設計するに際しては、部分画像処理回路を試作し、実際に組み合わせて画像処理回路を形成してこれを評価するという手法を採用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−53924号公報
【特許文献2】特開2006−48310号公報
【特許文献3】特開2006−91944号公報
【特許文献4】特開2000−215310号公報
【特許文献5】特開2000−278722号公報
【特許文献6】特開2003−16443号公報
【特許文献7】特開2003−196666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような部分画像処理回路の試作は、エラー検証に時間がかかるばかりでなく、試作コストが嵩むという問題がある。
また、実際に画像処理回路に組み込んで検証を行っても、機能拡大に伴い画像処理回路に組み込まれる部分画像処理回路も多数あり、画像処理におけるパラメーターの設定が効果的であるか否かを判断することが非常に困難であるという問題がある。
さらに、画像処理後毎のパラメーターを組み合わせたときに初めて露見するエラーもあり、これを検証することは非常に困難である。
また、一般に画像表示装置によって形成される表示画像は多数の画素から構成されているが、部分画像処理回路によって処理された結果を各画素について評価するのは難しく、前述した特許文献1乃至7を、画像処理装置による画像処理後の画像の画質の評価に適用することはできない。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、目視による画像処理結果の効果の定性的及び定量的な評価を容易化できる画像処理回路のシミュレーション装置、画像処理回路のシミュレーション方法、画像処理回路の設計方法、及び画像処理回路のシミュレーションプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、画像処理回路の動作をシミュレーションする画像処理回路のシミュレーション装置が、前記画像処理回路に対応する機能を具備する画像処理モジュールと、前記画像処理モジュールを実行し、1又は複数の入力画像に対して前記画像処理を行うモジュール実行手段と、前記モジュール実行手段で実行された画像処理モジュールによる前記画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行する結果グループ化実行手段とを含む。
【0010】
本態様によれば、1又は複数の入力画像に対する画像処理モジュールによる画像処理後の画像データをグループ化するようにしたので、画像処理の目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。さらに、本態様によれば、画像処理に適用されるパラメーターの変更による効果を、容易に把握できるという効果が得られる。
【0011】
(2)また本発明の他の態様では、前記結果グループ化実行手段は、元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報に基づいて前記グループ化を実行する。
【0012】
本態様によれば、入力画像と画像処理後の結果画像との差分情報に基づいてグループ化するようにしたので、画像処理の目視の効果に対応したグループ化を、簡素な演算処理で実現できるようになる。
【0013】
(3)また本発明の他の態様では、前記画像処理モジュールの画像処理結果のグループ化条件を設定する結果グループ化条件設定手段を含み、前記結果グループ化実行手段は、前記結果グループ化条件設定手段によって設定された前記グループ化条件に基づいて、入力画像の画像処理後の画像データ毎にグループ化を実行する。
【0014】
本態様によれば、グループ化条件を設定できるようにしたので、所望の画像処理の目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。
【0015】
(4)また本発明の他の態様では、前記結果グループ化条件設定手段は、元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、前記差分情報の演算対象となる画素の指定方法、前記差分情報の集計方法、及び前記差分情報をグループ化する範囲の指定方法のうち、少なくとも1つを設定する。
【0016】
本態様によれば、演算方法、演算対象の画素の指定方法、集計方法及びグループ化する範囲のうち少なくとも1つを設定できるようにしたので、目的とする画像処理の目視による効果に対応した定性的及び定量的な評価を可能とすることができるようになる。
【0017】
(5)また本発明の他の態様では、前記演算方法は、前記差分情報の演算対象となる画素間の明度の差分、前記画素間の彩度及び色相の差分、前記画素間の色差、及び前記入力画像データと前記処理後画像データとに基づくエッジ値の差分の少なくとも1つを含む。
【0018】
本態様によれば、階調性、色均一性(色ムラ)やシャープネスといった一般的に行われる画像処理の目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。
【0019】
(6)また本発明の他の態様では、前記画像処理回路を構成する複数の部分画像処理回路のそれぞれに対応する機能を具備する複数の画像処理モジュールと、前記複数の画像処理モジュールのうち、実行する画像処理モジュールを選択するモジュール選択手段とを含み、前記モジュール実行手段が、前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行い、前記結果グループ化実行手段が、前記モジュール実行手段で実行された複数の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行する。
【0020】
本態様によれば、前述の効果に加えて、複数の画像処理が組み合わされる場合に、複数の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データについてグループ化するようにしたので、定性的及び定量的な画像処理の目視の効果を解析でき、各画像処理に適用されるパラメーターの最適な組み合わせを容易に見つけ出すことができるようになる。
【0021】
(7)また本発明の他の態様では、前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールの実行手順を設定するモジュール実行手順設定手段を含み、前記モジュール実行手段が、前記モジュール実行手順設定手段で設定された実行手順に従って、前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行う。
【0022】
本態様によれば、画像処理の順序を簡単に変更して複数の画像処理を組み合わせて得られる画像処理後の画像データをグループ化するようにしたので、所望の画像処理結果が得られる画像処理モジュールの選択、及び実行手順を容易に見つけることができ、エラー検証時間を短縮化でき、画像処理回路の製造コストの削減が可能となる。また、本態様によれば、画像処理回路を構成する部分画像処理回路の種類が増えたとしても、それぞれの実行順序や最適なパラメーターの選択が、確実、かつ、容易に行うことができ、これらのパラメーターの組み合わせに依存して露見するエラーの検証も容易化できる。
【0023】
(8)また本発明の他の態様では、前記複数の画像処理モジュールは、少なくとも、解像度変換モジュール、色変換モジュール、及びガンマ特性変換モジュールを含む。
【0024】
本態様によれば、種々ある画像処理のうち、解像度変換、色変換、ガンマ特性変換は、色変換処理、シャープネス処理、コントラスト処理を、各画像処理を実行するモジュール中に含むため、これらの画像処理の順番によって画像処理後の結果画像の画質に差が出る場合でも、最適な結果画像を得ることのできる画像処理モジュールの組み合わせを見出すことができるようになる。
【0025】
(9)また本発明の他の態様は、画像処理回路の動作をシミュレーションする画像処理回路のシミュレーション方法が、前記画像処理回路に対応する機能を具備する画像処理モジュールを実行し、1又は複数の入力画像に対して画像処理を行うステップと、前記1又は複数の入力画像について前記画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行するステップとを含む。
【0026】
本態様によれば、1又は複数の入力画像に対する画像処理モジュールによる画像処理後の画像データをグループ化するようにしたので、画像処理の目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。さらに、本態様によれば、画像処理に適用されるパラメーターの変更による効果を、容易に把握できるという効果が得られる。
【0027】
(10)また本発明の他の態様では、元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報に基づいて前記グループ化を実行する。
【0028】
本態様によれば、入力画像と画像処理後の結果画像との差分情報に基づいてグループ化するようにしたので、画像処理の目視の効果に対応したグループ化を、簡素な演算処理で実現できるようになる。
【0029】
(11)また本発明の他の態様では、前記画像処理モジュールの画像処理結果のグループ化条件を設定するステップを含み、設定された前記グループ化条件に基づいて、入力画像に対して前記画像処理が行われた画像データ毎にグループ化を実行する。
【0030】
本態様によれば、グループ化条件を設定できるようにしたので、所望の画像処理の効果について、目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。
【0031】
(12)また本発明の他の態様では、元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、前記差分情報の演算対象となる画素の指定方法、前記差分情報の集計方法、及び前記差分情報をグループ化する範囲の指定方法のうち、少なくとも1つを設定する。
【0032】
本態様によれば、演算方法、演算対象の画素の指定方法、集計方法及びグループ化する範囲のうち少なくとも1つを設定できるようにしたので、目的とする画像処理の目視による効果に対応した定性的及び定量的な評価を可能とすることができるようになる。
【0033】
(13)また本発明の他の態様では、前記画像処理回路を構成する複数の部分画像処理回路のそれぞれに対応する機能を具備する複数の画像処理モジュールのうち、実行する画像処理モジュールを選択するステップを含み、選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行い、複数の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行する。
【0034】
本態様によれば、前述の効果に加えて、複数の画像処理が組み合わされる場合に、複数の画像処理モジュールの画像処理結果についてグループ化するようにしたので、定性的及び定量的な画像処理の目視の効果を解析でき、各画像処理に適用されるパラメーターの最適な組み合わせを容易に見つけ出すことができるようになる。
【0035】
(14)また本発明の他の態様は、画像処理回路の設計方法が、上記記載の画像処理回路のシミュレーション方法を実施して、画像処理モジュールの組み合わせを求めた後、前記画像処理回路における部分画像処理回路の組み合わせを決定する。
【0036】
本態様によれば、画像処理の順序を簡単に変更して複数の画像処理を組み合わせて得られる画像処理の結果をグループ化するようにしたので、所望の画像処理結果が得られる画像処理モジュールの選択、及び実行手順を容易に見つけることができ、エラー検証時間を短縮化でき、画像処理回路の製造コストの削減が可能となる。また、本態様によれば、画像処理回路を構成する部分画像処理回路の種類が増えたとしても、それぞれの実行順序や最適なパラメーターの選択が、確実、かつ、容易に行うことができ、これらのパラメーターの組み合わせに依存して露見するエラーの検証も容易化できる。
【0037】
(15)また本発明の他の態様は、画像処理回路のシミュレーションプログラムが、上記のいずれか記載の画像処理回路のシミュレーション方法を、コンピューターに実行させる。
【0038】
本態様によれば、目視による画像処理結果の効果の定性的及び定量的な評価を容易化できる画像処理回路のシミュレーションプログラムを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態に係るシミュレーション装置の構成例のブロック図。
【図2】図1のディスプレイ上に表示される画面の一例を示す図。
【図3】メモリー上に書き込まれる画像処理モジュールの選択及び実行手順の説明図。
【図4】ディスプレイ上に表示される結果グループ化条件設定画面の一例を示す図。
【図5】本実施形態におけるシミュレーション装置の処理例のフローチャート。
【図6】本実施形態における結果グループ化条件設定処理の処理例のフローチャート。
【図7】本実施形態における結果グループ化処理の処理例のフローチャート。
【図8】図8(A)〜図8(E)はパラメーターファイルの一例を示す図。
【図9】図9(A)〜図9(C)は図8(A)〜図8(E)のパラメーターの説明図。
【図10】本実施形態の動作例の説明図。
【図11】本実施形態におけるシミュレーション装置の効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するのに必須の構成要件であるとは限らない。
【0041】
図1に、本発明の実施の一形態に係るシミュレーション装置の構成例のブロック図を示す。
【0042】
シミュレーション装置1は、演算処理装置2及びメモリー3を備えたコンピューターとして構成される。即ち、演算処理装置2が、メモリー3に蓄積されたプログラムを読み出してメモリー3に蓄積されたプログラム及びデータを用いて処理を実行することで、画像処理回路の動作のシミュレーションを実現する。或いは、演算処理装置2が、専用のハードウェア回路により、メモリー3に蓄積されたデータに対する演算処理を行うことで、画像処理回路の動作のシミュレーションを実現する。このシミュレーション装置1は、複数の部分画像処理回路を組み合わせて構成される画像処理回路の動作をシミュレーションすることができる。
メモリー3内には、本実施形態に係る画像処理回路シミュレーションを実行するためのプログラム、及び、複数の画像処理モジュールが格納されている。各画像処理モジュールは、コンピューター上で実行可能なソフトウェア(プログラム)であり、各部分画像処理回路に対応する機能を具備している。
シミュレーション装置1の入力側には、図示を略したが、スキャナー、デジタルカメラ、ハードディスク装置等の画像データ出力装置が接続され、各機器から画像処理結果後の画像を評価するための評価用の入力画像データVIDEOが入力されるようになっている。
【0043】
一方、シミュレーション装置1の出力側には、記録媒体としてのハードディスク装置4及び画像表示装置としてのディスプレイ5が接続されている。
ハードディスク装置4には、シミュレーション装置1で選択した画像処理モジュールや、その実行手順、及び各画像処理モジュールで画像処理を行った結果データ(結果画像データ等)が記憶される。
また、ディスプレイ5には、画像処理モジュールの画像処理を行った結果画像データに基づいて、表示画像が形成される。
【0044】
演算処理装置2は、モジュール管理手段6、出力手段7、及び書込手段8を備えて構成され、これらの各機能的手段6〜8は、演算処理装置2のOS(Operating System)上で実行されるプログラム群として構成されている。
【0045】
図2に、図1のディスプレイ5上に表示される画面の一例を示す。
【0046】
モジュール管理手段6、出力手段7、及び書込手段8は、メモリー3に格納されていて、シミュレーション装置1の起動中、ディスプレイ5上に表示された所定のアイコンを選択すると起動するようになっている。そして、図2に示されるような画面G1を表示させることにより、操作者に入力を促し、この操作者の入力に基づく選択結果により、画像処理モジュールの選択、画像処理モジュールに適用されるパラメーターの選択及び実行手順の設定を行う。
【0047】
画面G1においてデフォルトで表示されるモジュール名は、メモリー3に予め格納された画像処理モジュールを読み出して表示している。新たな画像処理モジュールを読み出すには、画面G1上の右下の読出ボタンG8をクリックし、選択画面上で選択することにより、新たな画像処理モジュールを読み出すことができるようになっている。
なお、画像処理モジュールは、画像処理の対象となる画像表示装置で行う画像処理すべてを網羅することが望ましいが、特に、RGB色空間からYuv色空間への変換処理、及び色空間変換処理の逆変換処理や、ガンマ特性変換、高解像度から低解像度の変換処理等が例示できる。
これらの画像処理は、モジュール内処理でシャープネス処理、コントラスト処理、色変換処理を行う点で共通しており、画像処理の順番によっては、画像処理の結果画像において、お互いの処理が干渉しあい、部分的な欠点や画像全体の色ムラが強調されるといった現象が生じることがある。
【0048】
モジュール管理手段6は、画像処理モジュールの選択と、選択された画像処理モジュールの実行手順の設定、画像処理モジュールの実行、画像処理結果である画像処理モジュールによる画像処理が行われた後の画像データのグループ化の条件(グループ化条件、結果グループ化条件)の設定、及び画像処理結果のグループ化を行う部分であり、モジュール選択手段61、モジュール実行手順設定手段62、モジュール実行手段63、パラメーター選択手段64、結果グループ化条件設定手段65、及び結果グループ化実行手段66を備えて構成される。ここで、画像データ(画像処理結果)のグループ化とは、複数のグループのいずれかに当該画像処理結果を振り分ける動作をいう。
【0049】
モジュール選択手段61は、画像処理モジュールの選択を行う部分であり、図2に示されるように、ディスプレイ5上に操作者の選択を促す画面G1を表示させ、操作者が画面G1上で選択した画像処理モジュールを、実行する画像処理モジュールとして選択する。
【0050】
操作者による画面G1での選択は、画面G1の左側に表示されたチェックボックスG2を、キーボード、マウス等の入力デバイスでチェックすることにより行われる。
また、チェックボックスG2の右側のボックスG3は、結果画像データの出力、結果画像の表示出力の有無を設定するものであり、このボックスG3をマウスクリックすると、例えば、ボックスG3が白、青、赤等に変化し、白の場合(図2中白のボックス)には、結果画像及び結果画像データ(結果データ)を出力せず、青の場合(図2中右下がり斜線のボックス)には、結果画像をディスプレイ5に表示せず、結果画像データのみをハードディスク装置4に出力し、赤の場合(図2中左下がり斜線のボックス)には、結果画像をディスプレイ5上に表示し、かつ結果画像データをハードディスク装置4に出力するといった設定を行うことができるようになっている。
【0051】
モジュール実行手順設定手段62は、モジュール選択手段61で選択された画像処理モジュールの実行手順を設定する部分である。このモジュール実行手順設定手段62は、図2に示される画面G1上で操作対象となる画像処理モジュールを操作者に選択させる。操作者に選択された画像処理モジュールは、画面G1上では矩形G4に囲まれた状態で表示される。操作者は、画面G1の下部にある実行手順変更ボタンG5、G6をマウスクリックすることにより、選択された画像処理モジュールを上下させて画像処理モジュールの順序を変更することで実行手順を変更できるようになっている。そして、このようにして設定された画像処理モジュールの選択及び実行手順は、メモリー3上に書き込まれる。
【0052】
図3に、メモリー3上に書き込まれる画像処理モジュールの選択及び実行手順の説明図を示す。
【0053】
メモリー3上への書き込みは、例えば、図3に示されるように、テーブルT1として書き込まれる。このテーブルT1は、選択されたモジュール名、実行の有無、画像出力の有無、画像データ出力(データ出力)の有無が記録され、それに付随して各画像処理モジュールで用いるパラメーター名が記録される。
なお、パラメーターとは、各画像処理モジュールの実行時の動作パラメーター値であり、例えば、曲線ガンマ値変換モジュールであればγ=2.2等の値が格納されている。このパラメーターは、モジュール管理手段6とともに、メモリー3に格納されている。
【0054】
モジュール実行手段63は、モジュール選択手段61により選択された画像処理モジュールを、モジュール実行手順設定手段62により設定された実行手順に基づいて、画像処理モジュールを順次実行していく部分であり、入力される評価用の1又は複数種類の入力画像データVIDEOに対して、それぞれ、選択された画像処理モジュールによる画像処理を順次実行する。
【0055】
具体的には、モジュール実行手段63は、前述した図3に示されるテーブルT1の上位から画像処理モジュールを実行していき、その際、テーブルT1中の実行の有無及びパラメーターを参照しながら、メモリー3中に格納された画像処理モジュールを検索し、検索された画像処理モジュールによる画像処理を行う。本実施形態では、画像処理モジュールの実行は、図2における実行ボタンG7をクリックすることにより行われ、操作者が実行ボタンG7を1回クリックする毎に、1つの画像処理モジュールが実行される。
このモジュール実行手段63による画像処理の結果画像データは、出力手段7に出力される。
【0056】
パラメーター選択手段64は、モジュール実行手段63で実行される画像処理モジュールのパラメーターの選択を行う部分であり、図2に示されるように、ディスプレイ5上に操作者の選択を促す画面G1を表示させ、操作者が画面G1上で選択したパラメーターファイルを、選択した画像処理モジュールのパラメーターとして選択する。
【0057】
結果グループ化条件設定手段65は、モジュール実行手段63により実行された一連の画像処理モジュールによる画像処理後の画像データ(画像処理結果)をグループ化するための条件を設定する部分であり、図2に示される画面G1において、操作者が、結果グループ化条件設定ボタンG9をマウスクリックすることにより、ディスプレイ5上に結果グループ化条件設定画面G20が表示される。
【0058】
本実施形態では、複数の入力画像に対する一連の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データをグループ化することで、処理結果の解析処理を実現し、処理結果の目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となる上に、画像処理の検証を効率化できるようになる。本実施形態では、一連の画像処理モジュールの処理結果を解析するために、複数の入力画像のそれぞれについて、元の入力画像の画像データと一連の画像処理モジュールの処理結果の画像データ(処理後画像データ)との差分情報を求め、この差分情報をグループ化する。このグループ化された差分情報は、例えばヒストグラムの生成に供される。
【0059】
図4に、ディスプレイ5上に表示される結果グループ化条件設定画面G20の一例を示す。
【0060】
この結果グループ化条件設定画面G20は、操作者に結果グループ化条件の設定を促し、結果グループ化条件設定手段65は、この操作者の入力に基づく設定結果により、結果グループ化条件の設定を行う。
結果グループ化条件設定画面G20での設定は、予め設けられた複数種類の演算方法からいずれか1つを指定するラジオボタンG21、差分情報の演算対象となる画素を指定するラジオボタンG22、差分情報の集計方法を指定するラジオボタンG23をマウスクリックすることで行われ、テキストフィールドG24で、集計された差分情報をグループ化する範囲(グループ化する際の刻み情報)が指定される。このテキストフィールドG24は、例えばコンボボックスで構成されていてもよい。
【0061】
ラジオボタンG21では、元の入力画像と画像処理後の画像との間のCIELUV色空間におけるLの差分ΔL、元の入力画像と画像処理後の画像との間のCIELUV色空間におけるuの差分Δu、元の入力画像と画像処理後の画像との間のCIELUV色空間におけるvの差分Δv、元の入力画像と画像処理後の画像との間のCIELUV色空間における色差ΔEuv、又は元の入力画像と画像処理後の画像との間のエッジ値の差分ΔEdgeのいずれかを指定できるようになっている。なお、ラジオボタンG21では、CIELUV色空間以外の色空間の差分情報を指定できるようになっていてもよい。
【0062】
ラジオボタンG22では、ラジオボタンG21で指定された演算方法を、入力画像を構成する各画素とこれに対応する画像処理後の出力画像を構成する各画素との間で行うか、入力画像を構成する画素のうち所与のサンプリング画素とこれに対応する画像処理後の出力画像を構成するサンプリング画素との間で行うかを指定できるようになっている。なお、ラジオボタンG22では、ラジオボタンG21で指定された演算方法を、これら以外の画素間で演算するように指定できるようになっていてもよい。
【0063】
ラジオボタンG23では、ラジオボタンG21、G22で指定された各画像間の演算結果のうち最大値を取得するか、ラジオボタンG21、G22で指定された各画像間の演算結果の平均値を取得するかを指定できるようになっている。なお、ラジオボタンG23では、ラジオボタンG21、G22で指定された各画像間の演算結果を別の方法で集計できるようにしてもよい。
【0064】
テキストフィールドG24では、ラジオボタンG21、G22で指定された演算結果をラジオボタンG23で指定された集計方法で取得した値を、どのグループにグループ化するかを指定できるようになっている。例えば、テキストフィールドG24に「1.0」が指定されると、取得した値に応じて、一連の画像処理モジュールにより処理結果が、「0.0」〜「1.0」、「1.0」〜「2.0」、「2.0」〜「3.0」、・・・のいずれかにグループ化される。例えば、テキストフィールドG24に「1.0」が指定され、取得した値が「5.5」のとき、「5.0」〜「6.0」のグループにグループ化されることになる。
【0065】
なお、図4の結果グループ化条件設定画面G20において、ボタンG25をマウスクリックすることで、ラジオボタンG21〜G23、テキストフィールドG24で指定された方法が結果グループ化条件として設定され、結果グループ化条件設定処理が終了する。一方、結果グループ化条件設定画面G20において、ボタンG26をマウスクリックすることで、ラジオボタンG21〜G23、テキストフィールドG24で指定された方法が結果グループ化条件として設定されることなく、結果グループ化条件設定処理が終了する。
【0066】
図1において、出力手段7は、モジュール実行手段63における画像処理モジュールによる入力画像データVIDEOの画像処理の結果や、グループ化された結果を出力する部分であり、結果表示部71及び結果書込部72を備える。
結果表示部71は、画像処理モジュールによる入力画像データVIDEOの画像処理結果を、ディスプレイ5上に表示する部分であり、表示するかしないかは、図3におけるテーブルT1の画像出力の有無の欄に基づいて判断する。また、結果表示部71は、結果グループ化実行手段66によりグループ化された処理結果を、例えばヒストグラムとしてディスプレイ5に表示する部分でもある。
結果書込部72は、画像処理モジュールによる入力画像データVIDEOの画像処理結果を、結果画像データとしてハードディスク装置4に書き込む部分であり、書き込むか否かは、図3におけるテーブルT1のデータ出力の有無の欄に基づいて判断する。また、結果表示部71は、結果グループ化実行手段66によりグループ化された処理結果を、ハードディスク装置4に書き込む部分でもある。
【0067】
書込手段8は、モジュール管理手段6で設定された画像処理モジュールの実行手順や結果グループ化条件設定手段65により設定された結果グループ化条件をハードディスク装置4に書き込む部分であり、結果グループ化条件書込手段81を備える。書込手段8は、操作者が画面G1の右下の書込ボタンG10をマウス等でクリックすることにより、図2に示される画面G1上で設定した画像処理モジュールの実行手順をテーブルT1としてハードディスク装置4に書き込む。或いは、書込手段8の結果グループ化条件書込手段81は、操作者が画面G1の右下の書込ボタンG10をマウス等でクリックすることにより、図3に示される結果グループ化条件設定画面G20上で設定した結果グループ化条件をハードディスク装置4に書き込む。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5に、本実施形態におけるシミュレーション装置1の処理例のフローチャートを示す。例えば演算処理装置2は、メモリー3に記憶された図4に示す処理例に対応したプログラムを読み込み該プログラムに対応した処理を実行することで、図4に示す処理を行うことができる。この場合、演算処理装置2を構成する各手段の機能は、メモリー3から読み込んだプログラムを実行する演算処理装置2により実現される。
【0069】
モジュール管理手段6は、起動すると、図2に示される画面G1をディスプレイ5上に表示させ、操作者に画像処理モジュールの選択と、選択した画像処理モジュールが実行する画像処理に適用されるパラメーターの選択とを促す。
操作者がマウス等でチェックボックスG2をクリックして実行する画像処理モジュールを選択すると、モジュール選択手段61は、テーブルT1の選択された画像処理モジュールの実行を「有」として、実行する画像処理モジュールの選択を行う(ステップS1)。
続いて、操作者がマウス等で読出ボタンG8をクリックして画像処理モジュール毎に画像処理に適用されるパラメーターが記録されているパラメーターファイルを選択すると、パラメーター選択手段64は、画像処理モジュール毎に、対応するパラメーターファイルの選択を行う(ステップS2)。パラメーター選択手段64は、画面G1において画像処理モジュール毎にパラメーターの選択を促し、パラメーターが設定されたパラメーターファイルを画像処理モジュール毎に操作者が選択すると、画像処理モジュール毎に選択したパラメーターを設定していく。
【0070】
次に、モジュール実行手順設定手段62は、矩形G4によって操作者が選択した画像処理モジュールについて実行手順変更ボタンG5、G6を押して変更した実行手順に従って、テーブルT1内の実行手順を変更し、選択した画像処理モジュールの実行手順を設定する(ステップS3)。
そして、モジュール実行手順設定手段62は、図2の画面G1上で操作者がマウス等をクリックして設定したボックスG3の状態に基づいて、テーブルT1の結果画像の出力の有無、及び結果画像データの出力の有無を設定する(ステップS4)。
なお、本実施形態では、モジュール実行手順設定手段62による実行手順の設定を先に、結果画像又は結果画像データの出力の有無の設定を後に行っていたが、これに限らず先に結果画像又は結果画像データの出力設定を先に行ってもよい。
【0071】
以上のように画像処理モジュール及びこれに対応するパラメーターファイルの選択及び実行手順の設定が終了したら、書込手段8は、操作者が画面G1上の書込ボタンG10をクリックするか否かを監視し(ステップS5)、クリックされた画面G1上で設定されたテーブルT1をハードディスク装置4に書き込み記録保存する(ステップS6)。
なお、操作者による実行手順の書き込みは、本実施形態ではこのタイミングで行っているが、実際には、モジュール実行手段63によるすべての画像処理モジュールの実行処理後、又はモジュール実行手段63の実行中のいずれのタイミングでも可能とすることができる。
【0072】
次に、結果グループ化条件設定手段65は、操作者が画面G1上の結果グループ化条件設定ボタンG9をクリックすることで開始される結果グループ化条件設定処理を行う(ステップS7)。
なお、操作者による結果グループ条件設定処理は、本実施形態ではこのタイミングで行っているが、実際には、モジュール実行手段63によるすべての画像処理モジュールの実行処理前、又はモジュール実行手段63の実行中のいずれのタイミングでも可能とすることができる。
【0073】
図6に、本実施形態における結果グループ化条件設定処理の処理例のフローチャートを示す。例えば演算処理装置2は、メモリー3に記憶された図6に示す処理例に対応したプログラムを読み込み該プログラムに対応した処理を実行することで、図6に示す処理を行うことができる。図6の処理は、結果グループ化条件設定手段65により実行される。
【0074】
結果グループ化条件設定手段65は、操作者が画面G1上の結果グループ化条件設定ボタンG9をクリックするか否かを監視し(ステップS20)、クリックされるとディスプレイ5上に図4に示される結果グループ化条件設定画面G20を表示させ、結果グループ化条件の設定を促す。
【0075】
結果グループ化条件設定手段65は、図4に示されるような結果グループ化条件設定画面G20において、操作者がラジオボタンG21〜G23やテキストフィールドG24で選択し、ボタンG25をクリックすることで、ラジオボタンG21〜G23及びテキストフィールドG24で設定した結果グループ化条件を設定する(ステップS21)。
【0076】
以上のように結果グループ化条件の設定が終了したら、結果グループ化条件書込手段81は、操作者が画面G1上の書込ボタンG10又は図示しない専用の書込ボタンをクリックするか否かを監視し(ステップS22)、クリックされた結果グループ化条件設定画面G20上で設定された結果グループ化条件に対応する結果グループ化条件設定情報をハードディスク装置4に書き込み記録保存する(ステップS23)。
【0077】
次に、図5に示すように、モジュール実行手段63は、テーブルT1で設定された順番に従って選択された画像処理モジュールを実行する。
まず、モジュール実行手段63は、テーブルT1の第1行目の記載に基づいて、入力画像データVIDEOの読み込みを行う(ステップS8)。
続いて、モジュール実行手段63は、テーブルT1の第3行目(第2行目は実行せず)に記載されたパラメーターファイル名に基づいて、パラメーターを読み出し(ステップS9)、同行の画像処理モジュール名に基づいて、メモリー3内を検索して該当する画像処理モジュールを取得する(ステップS10)。
モジュール実行手段63は、検索した画像処理モジュールを実行し、入力画像データVIDEOに画像処理を施す(ステップS11)。
【0078】
画像処理モジュールによる画像処理が終了したら、出力手段7の結果表示部71は、当該画像処理モジュールのテーブルT1の結果画像出力の有無を判定し(ステップS12)、「有」が設定されていたら、ディスプレイ5上に画像処理の結果画像を表示する(ステップS13)。
また、出力手段7の結果書込部72は、同様に、テーブルT1のデータ出力の有無を判定し(ステップS14)、「有」に設定されていたら、結果画像データをハードディスク装置4に書き込み、記憶保存する(ステップS15)。
【0079】
続いて、モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行が終了すると、結果グループ化実行手段66は、結果グループ化処理を行う(ステップS16)。
なお、操作者による結果グループ化処理は、本実施形態ではこのタイミングで行っているが、実際には、各画像処理モジュールの実行後であれば、結果表示処理中又は結果保存処理中のいずれのタイミングでも可能とすることができる。
【0080】
図7に、本実施形態における結果グループ化処理の処理例のフローチャートを示す。例えば演算処理装置2は、メモリー3に記憶された図7に示す処理例に対応したプログラムを読み込み、該プログラムに対応した処理を実行することで図7に示す処理を行うことができる。図7の処理は、結果グループ化実行手段66により実行される。
【0081】
結果グループ化実行手段63は、モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行状況を監視しており、モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行が全画素について終了したか否かを判定する(ステップS30)。
モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行が全画素について終了していないとき、結果グループ化実行手段66は、結果グループ化条件設定手段65により設定された結果グループ化条件のうち演算方法とその演算対象の指定画素の情報に従って、入力画像の画素値と結果画像の画素値に対して指定された演算を行う(ステップS31)。結果グループ化実行手段66は、入力画像の画素値と結果画像の画素値とを用いて、図4の結果グループ化条件設定画面G20上のラジオボタンG21、G22で指定されるように入力画像と結果画像との差分情報を公知の演算方法により求める。
【0082】
次に、結果グループ化実行手段66により求められた演算結果は、結果書込部72によりハードディスク装置4に書き込まれて保存され(ステップS32)、再び、結果グループ化実行手段66が、モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行状況の監視を継続する(ステップS30)。
【0083】
モジュール実行手段63による画像処理モジュールの実行が全画素について終了したとき、結果グループ化実行手段66は、結果グループ化条件設定手段65により設定された結果グループ化条件のうち集計方法と範囲の情報に従って、結果グループ化処理を行う(ステップS33)。結果グループ化実行手段66は、1つの入力画像に行われた一連の画像処理モジュールによる実行結果毎に、その入力画像の画素値と結果画像の画素値とを用いて求められた演算結果を、図4の結果グループ化条件設定画面G20上のラジオボタンG23及びテキストフィールドG24で指定されるような集計方法と範囲に従ってグループ化を行う。
【0084】
この結果グループ化実行手段66により実行される結果グループ化処理としては、一連の画像処理結果を、予め設けられた複数のグループのうちのいずれかに振り分けて保存させたりしてもよいし、グループ毎にカウンター値が設けられる複数のグループのうち該当するグループのカウンター値をインクリメントして更新するようにしてもよい。
【0085】
以降、図5に示すように、モジュール実行手段63は、次に実行すべき画像処理モジュールがあるか否かをテーブルT1から判定し(ステップS17)、あればステップS9からを繰り返し、なければシミュレーションを終了する(エンド)。
【0086】
ここで、本実施形態の動作例について説明する。
【0087】
図8(A)〜図8(E)に、パラメーターファイルの一例を示す。図8(A)〜図8(E)は、画像処理モジュールが色変換処理(画像処理)を行う場合に、RGBのうちR成分の色変換処理に適用されるパラメーターファイルの一例を模式的に表す。
図9(A)〜図9(C)に、図8(A)〜図8(E)のパラメーターの説明図を示す。図9(A)は、図8(A)のパラメーターの説明図を表し、図9(B)は、図8(D)のパラメーターの説明図を表し、図9(C)は、図8(E)のパラメーターの説明図を表す。
図10に、本実施形態の動作例の説明図を示す。
【0088】
図8(A)〜図8(E)のそれぞれには、R成分の画素値xに対する補正量yが離散的に設定され、画像処理モジュールは、設定されない画素値に対しては、公知の補間処理によって補正量を求めることができるようになっている。従って、例えば図9(A)〜図9(C)は、補正前後の画素値が等しくなる基準線P1〜P3を基準にすると、それぞれ異なる色変換処理を行う。
【0089】
本実施形態では、例えば1又は複数の入力画像を構成する入力画像毎に、前述の色変換処理を含む1又は複数の画像処理の実行順序を変更しながら、各画像処理のパラメーターを複数の種類設定することで、複数の結果画像が得られる。そして、図10に示すように、結果画像毎に入力画像IMGinとの差分情報を演算して数値化し、演算結果をグループ化して、例えば画像処理結果が異なる結果画像IMGO、IMGOをそれぞれ別のグループにグループ化することで、目視による画像処理結果の効果の定性的及び定量的な評価を容易化できるようになる。
【0090】
このようにして、それぞれが適用されるパラメーターを異ならせることが可能な画像処理モジュールの組み合わせを種々シミュレーションして、最適な画像処理結果となるような画像処理モジュールの選択、及び実行手順を求め、部分画像処理回路を実装する画像処理回路の設計を行う。
具体的には、画像処理モジュールの実行手順と同じような画像処理手順となるように、画像処理回路における部分画像処理回路に実装レイアウトを設計すればよい。
【0091】
また、本実施形態では、次のような効果も得ることができる。
【0092】
図11に、本実施形態におけるシミュレーション装置1の効果の説明図を示す。図11において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0093】
本実施形態におけるシミュレーション装置1では、例えば、図11に示されるように、モジュール管理手段6によってModule1〜ModuleN(Nは2以上の自然数)の一連の画像処理モジュールを順次実行させることが可能となり、各画像処理モジュールで中間出力画像をディスプレイ5上に表示させることにより、どの画像処理モジュールの処理で画質の劣化が生じたかどうかを簡単に確認できる。なお、図11において、各Module1〜ModuleNに付随する管理情報とは、前述した画面G1で設定したモジュール実行の有無、結果画像出力の有無、結果画像データの有無、パラメーターファイルを意味する。
【0094】
そして、例えば、図11において、Module2の画像処理結果を評価するに際し、Module2の前、後のそれぞれで中間画像を出力するようにしておき、Module2による画像処理を行った場合、画像処理前では問題なかったものが、画像処理後では、所定の領域の部分に横線状の画質劣化が生じていることを操作者がディスプレイ5上で簡単に確認することが可能となる。
なお、画像処理による画質の劣化は、局所的に生じるものばかりではなく、画面全体に生じる色ムラや、高解像度から低解像度への変換時に生じるジャギーやブロックノイズ、画面全体のぼやけとして現れることがあり、これらの画質劣化は、目視の比較により評価することができる。
【0095】
また、画像処理モジュールの組み合わせを、画面G1上で操作者が自由に設定できるため、多数ある画像処理モジュールの選択と、画像処理の順番を簡単に変更してシミュレーションを行うことができるため、最適な画像処理モジュールの組み合わせを容易にかつ短時間で見出しやすくなる。
さらに、結果書込部72がハードディスク装置4に結果画像データを書き込むことが可能となっているため、入力画像データVIDEOとの比較評価を、コンピューター上で公知の評価ソフトウェアを実行することにより、行うことも可能である。比較評価の方法としては、例えば、各画素の輝度、色ムラ等を数値化して対比し、統計的処理を行って一定の閾値を超えるような変化をしていれば、画質劣化とみなし、それを超えなければ画質劣化はないと判定するような方法を採用することができる。
【0096】
なお、本実施形態における画像処理モジュールが実行する画像処理として、例えば画面全体に一律にガンマ曲線を異ならせる色変換処理を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理モジュールが実行する画像処理として、画面を分割した領域毎にガンマ曲線を異ならせる色ムラ補正処理を採用し、光学系の色ムラを補正する目標画像を入力画像とし、結果画像のサンプリング画素間のΔEuvの最大値が小さくなるようなパラメーターの組み合わせを求め、色ムラ補正の効果が得られる画像処理モジュールの組み合わせを見つけるようにしてもよい。
或いは、例えば、画像処理モジュールが実行する画像処理として、3次元ルックアップテーブル変換処理を採用し、グラデーション画像を入力画像とし、結果画像の各画素のエッジ値を求め、その最大値が小さくなるようなパラメーターの組み合わせを求め、コントラスト強調やエッジ強調の際に擬似輪郭の発生を低減できる画像処理モジュールの組み合わせを見つけるようにしてもよい。
【0097】
なお、本実施形態では、結果グループ化条件の設定処理を、図4に示すように、元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、この差分情報の演算対象となる画素の指定方法、上記の差分情報の集計方法、及び上記の差分情報をグループ化する範囲の指定方法を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、元の入力画像の入力画像データと処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、この差分情報の演算対象となる画素の指定方法、上記の差分情報の集計方法、及び上記の差分情報をグループ化する範囲の指定方法うち、少なくとも1つを、結果グループ化条件の設定処理において設定するようにしてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、差分情報を演算する演算方法として、差分情報の演算対象となる画素間の明度の差分、画素間の彩度及び色相の差分、画素間の色差、及び入力画像データと画像処理後の画像データとに基づくエッジ値の差分を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。差分情報を演算する演算方法として、例えば差分情報の演算対象となる画素間の明度の差分、画素間の彩度及び色相の差分、画素間の色差、及び入力画像データと画像処理後の画像データとに基づくエッジ値の差分の少なくとも1つを含んでいればよい。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像処理の順序を簡単に変更して複数の画像処理の組み合わせを簡単にシミュレーションできるようにしたので、所望の画像処理結果が得られる画像処理モジュールの選択、及び実行手順を容易に見つけることができ、これに対応した画像処理回路の提供ができるようになる。その結果、エラー検証時間を短縮化でき、画像処理回路の製造コストの削減が可能となる。
また、画像処理回路を構成する部分画像処理回路の種類が増えたとしても、それぞれの実行順序や最適なパラメーターの選択が、確実、かつ、容易に行うことができ、これらのパラメーターの組み合わせに依存して露見するエラーの検証も容易化できる。なお、画素数が増大したとしても、画像処理の実行順序や最適なパラメーターの選択が、確実、かつ、容易にできることには変わりない。
【0100】
さらに、一連の画像処理後の結果画像をグループ化することにより、目視による効果の定性的及び定量的な評価が容易となり、結果画像の検証をより効率化できるようになる。
また、一連の画像処理の追加及び削除、各画像処理に適用されるパラメーターの変更があったとしても上記の評価が容易となり、拡張性に富む画像処理の評価が可能となる。
さらに、多種多様な画像に対して画像処理を行い、その画像処理結果をグループ化することで、各画像処理に適用されるパラメーターの変更による効果を、容易に把握できるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0101】
1…シミュレーション装置、 2…演算処理装置、 3…メモリー、
4…ハードディスク装置、 5…ディスプレイ、 6…モジュール管理手段、
7…出力手段、 8…書込手段、 61…モジュール選択手段、
62…モジュール実行手順設定手段、 63…モジュール実行手段、
64…パラメーター選択手段、 65…結果グループ化条件設定手段、
66…結果グループ化実行手段、 71…結果表示部、 72…結果書込部、
81…結果グループ化条件書込手段、 G1…画面、 G2…チェックボックス、
G3,G25,G26…ボタン、 G4…矩形、 G5,G6…実行手順変更ボタン、
G7…実行ボタン、 G8…読出ボタン、 G9…結果グループ化条件設定ボタン、
G10…書込ボタン、 G20…結果グループ化条件設定画面、
G21,G22,G23…ラジオボタン、 G24…テキストフィールド、
P1〜P3…基準線、 T1…テーブル、 VIDEO…入力画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理回路の動作をシミュレーションする画像処理回路のシミュレーション装置であって、
前記画像処理回路に対応する機能を具備する画像処理モジュールと、
前記画像処理モジュールを実行し、1又は複数の入力画像に対して前記画像処理を行うモジュール実行手段と、
前記モジュール実行手段で実行された画像処理モジュールによる前記画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行する結果グループ化実行手段とを含むことを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記結果グループ化実行手段は、
元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報に基づいて前記グループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記画像処理モジュールの画像処理結果のグループ化条件を設定する結果グループ化条件設定手段を含み、
前記結果グループ化実行手段は、
前記結果グループ化条件設定手段によって設定された前記グループ化条件に基づいて、入力画像の画像処理後の画像データ毎にグループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記結果グループ化条件設定手段は、
元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、前記差分情報の演算対象となる画素の指定方法、前記差分情報の集計方法、及び前記差分情報をグループ化する範囲の指定方法のうち、少なくとも1つを設定することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記演算方法は、
前記差分情報の演算対象となる画素間の明度の差分、前記画素間の彩度及び色相の差分、前記画素間の色差、及び前記入力画像データと前記処理後画像データとに基づくエッジ値の差分の少なくとも1つを含むことを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記画像処理回路を構成する複数の部分画像処理回路のそれぞれに対応する機能を具備する複数の画像処理モジュールと、
前記複数の画像処理モジュールのうち、実行する画像処理モジュールを選択するモジュール選択手段とを含み、
前記モジュール実行手段が、
前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行い、
前記結果グループ化実行手段が、
前記モジュール実行手段で実行された複数の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールの実行手順を設定するモジュール実行手順設定手段を含み、
前記モジュール実行手段が、
前記モジュール実行手順設定手段で設定された実行手順に従って、前記モジュール選択手段で選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行うことを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記複数の画像処理モジュールは、少なくとも、解像度変換モジュール、色変換モジュール、及びガンマ特性変換モジュールを含むことを特徴とする画像処理回路のシミュレーション装置。
【請求項9】
画像処理回路の動作をシミュレーションする画像処理回路のシミュレーション方法であって、
前記画像処理回路に対応する機能を具備する画像処理モジュールを実行し、1又は複数の入力画像に対して画像処理を行うステップと、
前記1又は複数の入力画像について前記画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行するステップとを含むことを特徴とする画像処理回路のシミュレーション方法。
【請求項10】
請求項9において、
元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報に基づいて前記グループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記画像処理モジュールの画像処理結果のグループ化条件を設定するステップを含み、
設定された前記グループ化条件に基づいて、入力画像に対して前記画像処理が行われた画像データ毎にグループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション方法。
【請求項12】
請求項11において、
元の入力画像の入力画像データと該入力画像データに対して前記画像処理モジュールによる画像処理が行われた処理後画像データとの差分情報を演算する演算方法、前記差分情報の演算対象となる画素の指定方法、前記差分情報の集計方法、及び前記差分情報をグループ化する範囲の指定方法のうち、少なくとも1つを設定することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかにおいて、
前記画像処理回路を構成する複数の部分画像処理回路のそれぞれに対応する機能を具備する複数の画像処理モジュールのうち、実行する画像処理モジュールを選択するステップを含み、
選択された画像処理モジュールを順次実行し、入力される画像データの画像処理を行い、複数の画像処理モジュールによる画像処理が行われた画像データに対してグループ化を実行することを特徴とする画像処理回路のシミュレーション方法。
【請求項14】
画像処理回路の設計方法であって、
請求項13記載の画像処理回路のシミュレーション方法を実施して、画像処理モジュールの組み合わせを求めた後、
前記画像処理回路における部分画像処理回路の組み合わせを決定することを特徴とする画像処理回路の設計方法。
【請求項15】
請求項9乃至13のいずれか記載の画像処理回路のシミュレーション方法を、コンピューターに実行させることを特徴とする画像処理回路のシミュレーションプログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−198068(P2010−198068A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38956(P2009−38956)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】