説明

画像処理装置、画像処理プログラム、画像処理方法及びその装置を有する画像処理システム並びにその装置を有する交通情報提供システム

【課題】車両の進行方向を予め設定しなくても、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して、効率良くかつ精度良く車両を認識する画像処理装置、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】画像処理装置1aは、中央線変移システム2a、2bが設置された道路11上の所定領域Rを撮像した撮像画像について、中央線変移の対象となる車線11b上の車両を認識する。あるフレームにおいて認識した車両の位置と、1つ前のフレームにおいて認識したこの車両の位置とに基づいて、この車両の走行方向を算出する。これを複数の車両について繰り返し、複数の車両の走行方向に基づいて上記車線11bにおける車両の進行方向を決定する。決定後は、現在のフレームの撮像画像の車線11bにおいて、1つ前のフレームにおいて認識した車両の位置を基準として、その進行方向に所定領域を設定し、その領域内において当該車両を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を撮像した撮像画像を処理して車両を認識する画像処理装置、プログラム、方法、及びその装置を有する画像処理システム、交通情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して車両を認識し、交通量や速度が計測することが行われている。例えば、特許文献1に記載の交通流計測処理装置では、フレーム毎に、カメラで撮像した撮像画像に基づいて複数のサンプル点における輝度を求め、これらの輝度情報に基づく空間微分処理を行って所定の閾値によって二値化した二値化画像を求め、この二値化画像に所定のマスクをかけ、マスク内のエッジに該当するサンプル点の分布から車頭の位置を求め、車両を認識している。
【0003】
このような交通量や速度の計測は、中央線変移システムが適用されている道路においても望まれている。中央線変移システムとは、道路の上り線と下り線を分離する中央線を時間帯に応じて変移させ、交通量の多い車線を増やすことにより、渋滞を緩和するシステムである。例えば、朝方のラッシュ時間帯は上り線の交通量が多く、夕方のラッシュ時間帯は逆に下り線の交通量が多い道路においては、朝方は上り線の車線数を増加させ、夕方は下り線の車線数を増加させることにより、渋滞の緩和を図っている。
【特許文献1】特開平5−307695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、あるフレームの撮像画像において一旦車両を認識すれば、次のフレームにおいてその車両が存在すると思われる領域は車両の進行方向に基づいてある程度予測できるので、前記交通流計測処理装置のように、毎フレーム、撮像画像のすべての領域に対して車両を認識すると、効率が悪い場合があるという問題点がある。
【0005】
このような問題点を解決する方法として、車両の進行方向を予め設定しておき、この進行方向に基づいて次のフレームにおいて車両が存在すると思われる領域を予測し、この領域内において車両を認識することが考えられる。しかしながら、車両の進行方向を予め設定しておくという手間がかかる。また、中央線変移システムが適用されている道路で車両を認識する場合には、中央線変移の対象となる車線では時間帯によって車両の進行方向が変わるので、この方法では車両を正しく認識できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、車両の進行方向を予め設定しなくても、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して、効率良くかつ精度良く車両を認識する画像処理装置、プログラム及び方法を提供することにある。また、中央線変移システムが適用されている道路においても、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して、効率良くかつ精度良く車両を認識する画像処理装置、プログラム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識手段と、前記認識手段が現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置と現在の撮像画像において認識した当該車両の位置とに基づいて、当該車両の走行方向を算出する算出手段と、前記算出手段が複数の車両について算出したこれらの車両の走行方向に基づいて前記所定の車線における車両の進行方向を決定する決定手段とを備える画像処理装置であって、前記認識手段は、前記決定手段が車両の進行方向を決定した後、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記決定した車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部とを含むことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
この発明によれば、複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得し、この撮像画像における当該道路の所定の車線において車両を認識する。あるフレームにおいて認識した車両の位置と、それより前(例えば、その1つ前)のフレームにおいて認識した当該車両の位置とに基づいて、当該車両の走行方向(当該車両が実際に走行した方向)を算出する。これを複数の車両について繰り返して、複数の車両の走行方向を算出し、これらの走行方向に基づいて上記所定の車線における車両の進行方向(上記所定の車線において車両が走行しなければならない方向)を決定する。車両の進行方向を決定すると、以降は、現在のフレームの撮像画像の上記所定の車線において、その前の(例えば、1つ前)のフレームにおいて認識した車両の位置を基準として、その進行方向に所定領域を設定し、その領域内において当該車両を認識する。従って、撮像画像の所定領域以外では当該車両を認識する必要がなくなるので、当該車両を効率良く認識することができる。また、複数の車両の走行方向に基づいて、上記所定の車線における車両の進行方向を決定しているので、予め車両の進行方向を設定しておく必要がなくなる。
【0009】
また、本発明の画像処理装置は、前記決定手段は、前記複数の車両の走行方向が一致している割合が第一閾値以上の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を前記一致している走行方向に決定することを特徴とする(請求項2)。
【0010】
この発明によれば、複数の車両の走行方向が一致している割合が第一閾値(例えば、95%)以上の場合にのみ、上記所定の車線における車両の進行方向をその一致している走行方向に決定する。従って、車両の進行方向を精度良く決定することができるので、車両を精度良く認識することができる。
【0011】
また、本発明の画像処理装置は、前記所定の車線における交通量を検知する検知手段をさらに備え、前記決定手段は、第一期間内において前記検知手段が検知した交通量が第二閾値以上の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を決定することを特徴とする(請求項3)。
【0012】
この発明によれば、上記所定の車線において、認識した車両の台数を数えて第一期間内(例えば、5分間)における交通量を検知し、この交通量が第二閾値(例えば、100台)以上の場合にのみ、上記所定の車線における車両の進行方向を決定する。第二閾値以上の複数の車両の走行方向に基づいて車両の進行方向を決定すれば、精度が高いと考えられるからである。従って、車両の進行方向を精度良く決定することができるので、車両を精度良く認識することができる。
【0013】
また、前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であることを特徴とする(請求項4)。
【0014】
この発明によれば、複数の車両の走行方向に基づいて、中央線変移の対象となる車線における車両の進行方向を決定しているので、当該車線における車両の進行方向が時間帯によって変わっても、車両の進行方向を精度良く決定することができ、当該車両を精度良く認識することができる。
【0015】
また、本発明の画像処理装置は、前記所定の車線における交通量を検知する検知手段を備え、前記決定手段は、第二期間内において前記検知手段が検知した交通量が第三閾値未満の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を決定しなおすことを特徴とする(請求項5)。
【0016】
中央線変移システムでは、中央線変移の開始から所定期間、中央線変移の対象となる車線において車両の走行を禁止し、中央線変移の開始前にこの車線に存在していた車両、すなわち、中央線変移前の車両の進行方向に走行する車両をこの車線から完全に追い出す。そして、上記所定期間経過後に、中央線変移後の車両の進行方向に車両の走行を許可する。従って、上記所定期間中はこの車線の交通量が非常に少なくなるので(例えば、5分間に5台未満)、交通量が非常に少なくなったことを検出できれば、この前後で中央線が変移し、中央線変移の対象となる車線において車両の進行方向が変更されたと判断することができる。
【0017】
この発明によれば、中央線変移の対象となる車線において、認識した車両の台数を数えて第二期間(例えば、5分間)における交通量を検知し、この交通量が(例えば、5台)第三閾値未満の場合にのみ、当該車線において車両の進行方向が変更されたと判断し、車両の進行方向を決定しなおすので、中央線変移後に確実に当該車線における車両の進行方向を決定することができる。
【0018】
また、本発明の画像処理装置は、前記第二期間は、前記中央線変移の対象となる車線の一の端部から他の端部まで、車両が走行するのに要する期間であることを特徴とする(請求項6)。
【0019】
中央線変移の対象となる車線において車両の走行を禁止する上記の所定期間は、少なくとも、中央線変移の開始直前に中央線変移の対象となる車線に進入した車両がこの車線から出て行くまでに要する期間、すなわち、この車線の一端から他端まで車両が走行するのに要する期間以上となる。従って、この車線の一端から他端まで車両が走行するのに要する期間の交通量を検知し、交通量が非常に少なくなったことを検出できれば、この前後で中央線が変移したことを精度良く認識することができる。
【0020】
この発明によれば、中央線変移の対象となる車線の一端から他端まで車両が走行するのに要する期間内の交通量と第三閾値とを比較するので、この車線において中央線が変移したことを精度良く認識することができ、中央線変移後に確実にこの車線における車両の進行方向を決定することができる。
【0021】
また、本発明の画像処理装置は、複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識手段とを備える画像処理装置であって、前記認識手段は、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記所定の車線に沿った一の方向に第一の所定領域を設定するとともに、前記所定の車線に沿った他の方向に第二の所定領域を設定する設定部と、前記現在の撮像画像の前記第一及び第二の所定領域内において前記車両を認識する認識部とを含むことを特徴とする(請求項7)。
【0022】
この発明によれば、所定の車線における車両の進行方向を考慮せず、1つ前のフレームにおいて認識した車両の位置を基準として、車線に沿った両方向に2つの所定領域を設定し、その領域内において当該車両を認識する。従って、当該車線における車両の進行方向がわからなくても、上記2つの所定領域内において確実に当該車両を認識することができるとともに、所定領域外で当該車両を認識する必要がなくなり、当該車両を効率良く認識することができる。
【0023】
また、前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であることを特徴とする(請求項8)。
【0024】
また、本発明の画像処理装置は、複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する第一取得手段と、前記道路の所定の車線における車両の進行方向の情報を外部から取得する第二取得手段と、前記取得した撮像画像における前記所定の車線において車両を認識する認識手段とを備える画像処理装置であって、前記認識手段は、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部とを含むことを特徴とする(請求項9)。
【0025】
この発明によれば、所定の車線における車両の進行方向を、撮像画像に基づいて認識した車両の走行方向に基づいて決定する代わりに、外部から取得する。そして、1つ前のフレームにおいて認識した車両の位置を基準として、車両の進行方向に所定領域を設定し、その領域内において当該車両を認識する。従って、所定領域内において確実に当該車両を認識することができるとともに、所定領域外で当該車両を認識する必要がなくなり、当該車両を効率良く認識することができる。
【0026】
また、前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であり、前記第二取得手段は前記中央線変移システムから前記車両の進行方向の情報を取得することを特徴とする(請求項10)。
【0027】
また、本発明の画像処理装置は、中央線変移システムが適用された道路上を走行する車両を撮像した撮像画像と当該撮像画像の撮像時刻とを取得する取得手段と、前記道路の中央線変移の対象となる車線における車両の進行方向と時刻とを対応づけた対応情報を記憶する記憶手段と、前記取得した撮像画像における前記車線において車両を認識する認識手段とを備える画像処理装置であって、前記認識手段は、現在の撮像画像における前記車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記取得手段が前記現在より前の時点の撮像画像の撮像時刻と前記対応情報とに基づいて決定した車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部とを含むことを特徴とする(請求項11)。
【0028】
この発明によれば、中央線変移の対象となる車線における車両の進行方向を、撮像画像に基づいて認識した車両の走行方向に基づいて決定する代わりに、予め記憶しておいた当該車線における車両の進行方向と時刻とを対応付けた対応情報と、1つ前のフレームの撮像画像の撮像時刻とを照らし合わせて、この撮像画像における車両の進行方向を決定する。そして、この撮像画像において認識した車両の位置を基準として、決定した車両の進行方向に所定領域を設定し、その領域内において当該車両を認識する。従って、所定領域内において確実に当該車両を認識することができるとともに、所定領域外で当該車両を認識する必要がなくなり、当該車両を効率良く認識することができる。
【0029】
また、本発明の画像処理システムは、道路上を走行する車両を撮像する撮像手段と、上記の画像処理装置とを備えるものである(請求項12)。
【0030】
また、本発明の交通情報提供システムは、上記の画像処理装置と、交通情報を算出して提供する交通情報算出装置とを備える交通情報提供システムであって、前記画像処理装置は、前記認識手段が認識した前記所定の車線における車両の認識結果と前記決定手段が決定した前記所定の車線における車両の進行方向とを出力する手段を備え、前記交通情報算出装置は、前記認識結果と前記車両の進行方向とを取得する手段と、取得した前記認識結果と前記車両の進行方向とに基づいて、前記所定の車線のおける交通情報を算出する手段とを備えることを特徴とする(請求項13)。
【0031】
この発明によれば、上記の画像処理装置から取得した所定車線における車両の認識結果と車両の進行方向とに基づいて当該車線における交通情報を算出するので、上り線における交通量等の交通情報と下り線における交通量等の交通情報を精度良く算出することができる。
【0032】
また、本発明の画像処理プログラム及び画像処理方法は、上記の画像処理装置と同一の発明にかかるプログラム及び方法である(請求項14、15)。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明の画像処理装置、プログラム及び方法によれば、車両の進行方向を予め設定しなくても、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して、効率良くかつ精度良く車両を認識することができる。また、中央線変移システムが適用されている道路においても、道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を処理して、効率良くかつ精度良く車両を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
実施の形態1:
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る画像処理装置、画像処理システムを含む交通情報提供システムの概要を示す模式図である。交通情報提供システムは、画像処理システム1、中央線変移システム2a、2b、車両感知器3a、3b、光ビーコンなどの路側装置4、交通信号機5a、5b、交通管制センター(図示せず)などを含む。交通信号機5aには、通信回線(図示せず)を通じて画像処理システム1、車両感知器3a、3b、路側装置4が接続してあり、交通信号機5bには、通信回線(図示せず)を通じて画像処理システム1、車両感知器3a、3bが接続してある。交通管制センターには、通信回線(図示せず)を通じて中央線変移システム2a、2b、交通信号機5a、5bが接続してある。
【0035】
画像処理システム1は、画像処理装置1a、撮像装置1b、設置ポール1cなどを含む。撮像装置1bは、道路11上の車両を撮像するためのカメラであり、視野が道路11上の所定領域Rに設定されるように、所定の伏角をもって道路11脇の設置ポール1cの上部に取り付けられている。画像処理装置1aは、撮像装置1bで撮像して得られた撮像画像を処理して車両の認識などを行う装置であり、設置ポール1cの側部に取り付けられている。なお、設置ポール1cの代わりに、信号機、歩道橋等を流用しても良い。画像処理装置1aは、車両の認識結果などの情報を、通信回線を通じて交通信号機5a、5bに送信する。所定領域Rは、道路11の第一車線11a、第二車線11b、第三車線11cのすべての車線にまたがるように設けられている。
【0036】
中央線変移システム2a及び2bは、第二車線11bを中央線変移の対象とするものである。中央線変移システム2aは、中央線変移装置2aa、アーム2abなどを含む。中央線変移装置2aaは、交差点12aから道路11に進入する車両に対して中央線であることを示すための標識を備えており、時間帯に応じてアーム2abに沿って移動し、第一車線11aと第二車線11bとを区切る白線13a又は第二車線11bと第三車線11cとを区切る白線13bに中央線を変移させる。交差点12aから道路11に侵入する車両が走行可能な車線は、この標識が白線13a上にある場合には第一車線11aのみとなり、この標識が白線13b上にある場合には第一車線11aと第二車線11bの2車線になる。
【0037】
同様に、中央線変移システム2bは、中央線変移装置2ba、アーム2bbなどを含む。中央線変移装置2baは、交差点12bから道路11に侵入する車両に対して中央線であることを示すための標識を備えており、時間帯に応じてアーム2bbに沿って移動し、白線13a又は白線13bに中央線を変移させる。交差点12bから道路11に侵入する車両が走行可能な車線は、この標識が白線13a上にある場合には第二車線11bと第三車線11cの2車線となり、この標識が白線上13bにある場合には第三車線11cのみとなる。なお、中央線変移システム2a、2bともに、通信回線を通じて交通管制センターからの指令を取得することができ、上記の中央線を変移させる時間帯は、この指令に応じて変更可能となっている。
【0038】
ここで、中央線変移システム2a、2bが中央線を変移させる手順について説明する。図2は、中央線変移システム2a、2bが中央線を変移させる手順を説明するための図であり、中央線を白線13aから白線13bに変移させる場合について説明している。図2(a)は、中央線の変移前の状態を示しており、中央線変移装置2aa、2baは、ともに白線13a上にある。まず、図2(b)に示すように、中央線変移装置2baのみを白線13b上に移動させ、交差点12bから第二車線11bに車両が進入しないようにする。交差点12aから第二車線11bにも車両が進入できないので、中央線変移装置2aa、2baは所定時間(以降、この所定時間を車両走行禁止期間という)が経過するまでこのままの位置を保持し、中央線変移装置2baが白線13b上に移動する直前に第二車線11bに進入した車両が当該車線から退出するのを待つ。車両走行禁止期間が経過すると、中央線変移装置2aaを白線13b上に移動させ、中央線の白線13aから白線13bへの変移が完了する。逆に、中央線を白線13bから白線13aに変移させる場合には、先に中央線変移装置2aaを白線13a上に移動させ、車両走行禁止期間が経過した後、中央線変移装置2baを白線13b上に移動させる。
【0039】
車両感知器3aは、感知部3aa1、3aa2、3aa3及びアーム3abなどを含む。感知部3aa1、3aa2、3aa3は、それぞれ第一車線11a、第二車線11b、第三車線11cを走行する車両を感知する。車両感知器3aは、これらの感知部の感知結果の情報を、通信回線を通じて交通信号機5a、5bに送信する。
【0040】
同様に、車両感知器3bは、感知部3ba1、3ba2、3ba3及びアーム3bbなどを含む。感知部3ba1、3ba2、3ba3は、それぞれ第一車線11a、第二車線11b、第三車線11cを走行する車両を感知する。車両感知器3bは、これらの感知部の感知結果の情報を、通信回線を通じて交通信号機5a、5bに送信する。
【0041】
路側装置4は、通信部4a1、4a2、4a3及びアーム4bなどを含む。通信部4a1、4a2、4a3は、それぞれ第一車線11a、第二車線11b、第三車線11cを走行する車両と無線による双方向通信を行う。これらの通信部の通信エリアを車両が通過する際に、当該車両に搭載された車載装置から通信部に対して当該車載装置の識別コードを含むアップリンク情報が送信されるとともに、通信部から当該車載装置に対して交通情報を含むダウンリンク情報が送信される。ダウンリンク情報は、路側装置4が交通信号機5aから通信回線を通じて取得している。また、受信したアップリンク情報は、路側装置4が通信回線を通じて交通信号機5aに送信する。
【0042】
交通信号機5aは、交通信号制御機5aaと信号灯器5abと信号柱5acなどを含む。交通信号制御機5aaは、信号柱5acの上部に取り付けられた信号灯器5abの各信号灯の点灯及び滅灯を制御する。また、交通信号制御機5aaは、画像処理システム1から車両の認識結果などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから車両の感知結果の情報を取得し、路側装置4からアップリンク情報を取得し、これらの取得した情報を交通管制センターに送信する。また、交通信号制御機5aaは、交通管制センターからダウンリンク情報を取得し、この情報を路側装置4に送信する。
【0043】
同様に、交通信号機5bは、交通信号制御機5baと信号灯器5bbと信号柱5bcなどを含む。交通信号制御機5baは、信号柱5bcの上部に取り付けられた信号灯器5bbの各信号灯の点灯及び滅灯を制御する。また、交通信号制御機5baは、画像処理システム1から車両の認識結果などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから車両の感知結果の情報を取得し、これらの取得した情報を交通管制センターに送信する。
【0044】
図3は画像処理システム1の構成を示すブロック図である。撮像装置1bは撮像して得られた撮像画像を映像信号(アナログ信号)としてインタフェース(I/F)部1a1へ出力する。インタフェース部1a1は、取得した映像信号をA/D変換部1a2へ出力し、A/D変換部1a2は、入力された映像信号をデジタル信号に変換し、処理部1a7の制御のもと、変換されたデジタル信号を画像データとして画像メモリ1a3へ記憶する。
【0045】
処理部1a7は、RAM1a4に記憶されたコンピュータプログラムPGを実行することにより、以下の処理を行う。すなわち、処理部1a7は、インタフェース部1a1を介して撮像装置1bから入力された撮像画像を画像データとして、撮像装置1bのフレームレート(撮像時点の間隔、例えば、1秒間に30フレーム)と同期して、1フレーム単位(例えば、480×640画素)で画像メモリ1a3に記憶する。また、処理部1a7は後述する車両の認識処理を行い、車両の認識結果に基づいて、各車線における交通量、平均走行速度などを算出する。
【0046】
記憶部1a5は、コンピュータプログラムPGを処理部1a7で実行することにより得られた車両の認識結果の情報を各フレームに対応して記憶する。また、記憶部1a5は、各車線における車両の進行方向(車両が走行しなければならない方向)を記憶する。また、記憶部1a5は、各車線における交通量、平均走行速度などの情報を記憶する。
【0047】
通信部1a6は、通信回線(図示せず)に接続され、記憶部1a5に記憶された車両の認識結果の情報、交通量、平均走行速度などの情報、各車線における車両の進行方向の情報を、通信回線を介して交通信号機5a、5bに送信する。
【0048】
次に、画像処理装置1aの車両の認識処理の手順について説明する。図4は画像処理装置1aの車両の認識処理の手順を示すフローチャートである。車両の認識処理は、所定時間(例えば、撮像装置1bのフレームレートと同じ33msec)毎に行われる。画像処理装置1aは、起動時には、第一車線11aにおける車両の進行方向として、交差点12aから交差点12bへの方向を、第二車線11bにおける車両の進行方向として、交差点12aから交差点12bへの方向と交差点12bから交差点12aへの方向の両方向を、第三車線11cにおける車両の進行方向として、交差点12bから交差点12aへの方向を、それぞれ記憶部1a5に記憶している。第二車線11bにおける車両の進行方向を両方向としているのは、第二車線11bが中央線変移の対象となっており、車両の進行方向がどちらの方向か不明だからである。
【0049】
まず、画像処理装置1aは、撮像画像を画像メモリ1a3から読み出し、処理対象の車線を順に選択する(S1)。図5は、撮像画像における各車線の領域と各車線における車両の進行方向の例を示す図である。撮像画像における各車線の領域は、左から順に第三車線11cの領域PRc、第二車線11bの領域PRb、第一車線11aの領域PRaとなっており、各車線における車両の進行方向は、左から順に上向き、上向きと下向きの両方向、下向きとなっている。
【0050】
画像処理装置1aは、全車線、すなわち、3車線すべての処理が終了している場合は(S2でYES)、認識処理を終了する。全車線の処理が終了していない場合は(S2でNO)、画像処理装置1aは、S1で選択した車線において、車両が存在しているか否かを判定する。具体的には、撮像画像の当該車線の領域において、エッジ処理や背景差分処理、時間差分処理などにより車両を検出する。画像処理装置1aは、車両が存在している場合には(S3でYES)、記憶部1a5に記憶された当該車線における車両の進行方向を読み出して、両方向であるか否かを判定し、両方向である場合には(S4でYES)、両方向に車両を追跡する(S5)。S5の処理は車両ごとに行う。図6は、第二車線11bにおける車両の進行方向が両方向である場合の当該車線の領域PRbにおける車両の追跡処理を説明するための図である。図6(a)は、1フレーム前に認識した車両の車頭位置Hbを示している。まず、図6(b)に示すように、車頭位置Hbを基準として、両方向に2つの追跡領域T1及びT2を設定する。領域PRbにおいて、x軸を右向きに、y軸を下向きにとると、例えば、追跡領域T1は、車頭位置Hbの中心のy方向の位置y0から、車両が本処理の周期(33msec)の間に想定速度(例えば、時速60km/h)で走行する距離を撮像画像上に変換した長さlだけ−y方向に離れたy方向の位置y1を求め、このy1から−y方向にα、+y方向にβの中にある斜線部分の領域に設定する。また、例えば、追跡領域T2は、y0から長さlだけ+y方向に離れたy方向の位置y2を求め、このy2から+y方向にα、−y方向にβの中にある斜線部分の領域に設定する。次に、図6(c)に示すように、追跡領域T1、T2において、車両を認識する。車両を認識することができた場合には、この車両を1フレーム前の車両と同一であると判断する。従って、領域PRbのすべてにおいて車両を認識する必要がなくなるため、効率良く車両を認識することができる。
【0051】
画像処理装置1aは、過去、所定時間(例えば、5分間。以下、この所定時間を第一期間という)内にS5で追跡することができた車両の台数に基づいて、両方向それぞれの累積追跡台数を算出する(S6)。ここで、累積追跡台数とは、両方向のそれぞれにおいて、S5で追跡することができた車両の台数の累積値をいう。なお、1台の車両が道路11上の所定領域Rを通過するまでに、当該車両は数回撮像されるので、撮像画像から当該車両が数回認識されることになるが、S5ですべて同一の車両と判断されるため、追跡することができた車両の台数は1台になる。
【0052】
画像処理装置1aは、両方向それぞれの累積追跡台数の合計値が所定数(例えば、100台)以上であるか否かを判定し、所定数以上である場合には(S7でYES)、追跡方向に偏りがあるか否かを判定する。すわなち、両方向それぞれの累積追跡台数の合計値に対する上方向の割合と下方向の割合をそれぞれ求め、いずれかの割合が所定の割合(例えば、95%)以上である場合には、偏りがあると判定する。その結果、偏りがある場合には(S8でYES)、大部分の車両の走行方向(車両が実際に走行した方向)が一致していると判断し、当該車線11bにおける車両の進行方向を所定の割合以上となっている方向に設定して、記憶部1a5に記憶し(S9)、設定した車両の進行方向を交通信号機5a、5bに送信する(S10)。このように、画像処理装置1aは、両方向それぞれの累積追跡台数の合計値が所定数以上であり、かつ、上方向又は下方向の累積追跡台数の割合が所定の割合以上の場合にのみ、車両の進行方向を決定するので、精度良く車両の進行方向を決定することができる。
【0053】
画像処理装置1aは、両方向それぞれの累積追跡台数の合計値が所定数未満である場合(S7でNO)、追跡方向に偏りがない場合(S8でNO)には、S1以降の処理を続ける。
【0054】
画像処理装置1aは、S1で選択した車線における車両の進行方向が両方向でない場合には(S4でNO)、記憶部1a5に記憶された当該車線における車両の進行方向を読み出して、その方向に車両を追跡する(S11)。S11の処理も車両ごとに行う。図7は、第二車線11bにおける車両の進行方向が上方向である場合の当該車線の領域PRbにおける車両の追跡処理を説明するための図である。図6と異なっている点は、追跡領域T1のみ設定する点である。図7(a)は、1フレーム前に認識した車両の車頭位置Hbを示している。まず、図7(b)に示すように、追跡領域T1を、車頭位置Hbの中心のy方向の位置y0から長さlだけ−y方向に離れたy方向の位置y1を求め、このy1から−y方向にα、+y方向にβの中にある斜線部分の領域に設定する。次に、図7(c)に示すように、追跡領域T1において、車両を認識する。車両を認識することができた場合には、この車両を1フレーム前の車両と同一であると判断する。従って、領域PRbのすべてにおいて車両を認識する必要がなくなり、かつ、車両の進行方向の追跡領域T1でのみ車両を認識するため、効率良く車両を認識することができる。第一車線11aにおける車両の進行方向は上方向であるので、当該車線の領域PRaにおける車両の追跡処理も同様である。
【0055】
一方、図8は、第二車線11bにおける車両の進行方向が下方向である場合の当該車線の領域PRbにおける車両の追跡処理を説明するための図である。図6と異なっている点は、追跡領域T2のみ設定する点である。図8(a)は、1フレーム前に認識した車両の車頭位置Hbを示している。まず、図8(b)に示すように、追跡領域T2を、車頭位置Hbの中心のy方向の位置y0から長さlだけ+y方向に離れたy方向の位置y2を求め、このy2から+y方向にα、−y方向にβの中にある斜線部分の領域に設定する。次に、図8(c)に示すように、追跡領域T2において、車両を認識する。車両を認識することができた場合には、この車両を1フレーム前の車両と同一であると判断する。従って、領域PRbのすべてにおいて車両を認識する必要がなくなり、かつ、車両の進行方向の追跡領域T2でのみ車両を認識するため、効率良く車両を認識することができる。第三車線11cにおける車両の進行方向は下方向であるので、当該車線の領域PRcにおける車両の追跡処理も同様である。
【0056】
画像処理装置1aは、S1で選択した車線において、車両が存在していなかった場合には(S3でYES)、所定時間(例えば、5分間。以下、この所定時間を第二期間という)における当該車線の交通量(当該車線においてS4又はS11で追跡することができた車両の台数)が所定数(例えば、5台)未満であるか否かを判定する。その結果、所定数未満である場合には(S12でYES)、当該車線において車両の進行方向が変更されたと判断して、車両の進行方向を上方向と下方向の両方向に設定する(S13)。
【0057】
ここで、第二期間における当該車線の交通量が所定数未満である場合に、当該車線において車両の進行方向が変更されたと判断するのは、次のような理由による。上述の通り、車両走行禁止期間中は第二車線11bに車両が進入できなくなるので、第二期間における第二車線11bの交通量は非常に少なくなる。従って、上記第二期間における当該車線の交通量が非常に少なくなったことを検出できれば、この前後で中央線が変移したと判断することができ、ひいては当該車線において車両の進行方向が変更されたと判断することができる。
【0058】
なお、第二期間は、上述のように固定値でも良いし、第二車線11bの一方の端部から他方の端部まで車両が走行するのに要する時間であっても良い。車両走行禁止期間は、少なくとも、中央線変移の開始直前に第二車線11bに進入した車両がこの車線から出て行くまでに要する時間、すなわち、第二車線11bの一方の端部から他方の端部まで車両が走行するのに要する時間以上となるように設定されるからである。この場合、所定時間は、例えば、道路11の長さを想定速度(例えば、60km/h)で割ることにより求めることができる。
【0059】
画像処理装置1aは、当該車線における車両の進行方向を決定しなおすために、両方向における累積追跡台数をクリアし(S14)、S1以降の処理を続ける。
【0060】
画像処理装置1aは、所定時間における当該車線の交通量が所定数より大きい場合には(S12でNO)、S1以降の処理を続ける。
【0061】
次に、交通信号機5a、5bの計測データ収集処理の手順について説明する。交通信号機5a、5bは、画像処理装置1aから取得した第二車線11bにおける車両の進行方向の情報を参照し、この進行方向が交差点12aから交差点12bへの向きである場合には、交通信号機5aは、画像処理装置1aから第一車線11a及び第二車線11bにおける交通量、平均走行速度などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから第一車線11a及び第二車線11bにおける感知結果の情報を取得し、交通信号機5bは、画像処理装置1aから第三車線11cにおける交通量、平均走行速度などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから第三車線11cにおける感知結果の情報を取得し、それぞれ交通管制センターに送信する。
【0062】
一方、進行方向が交差点12bから交差点12aへの向きである場合には、交通信号機5aは、画像処理装置1aから第一車線11aにおける交通量、平均走行速度などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから第一車線11aにおける感知結果の情報を取得し、交通信号機5bは、画像処理装置1aから第二車線11b及び第三車線11cにおける交通量、平均走行速度などの情報を取得し、車両感知器3a、3bから第二車線11b及び第三車線11cにおける感知結果の情報を取得し、それぞれ交通管制センターに送信する。
【0063】
次に、交通管制センターの交通情報の算出及び提供処理の手順について説明する。交通管制センターは、交通信号機5a、5bから第二車線11bが交差点12aから交差点12bへの向きにおける計測データを取得した場合には、第一車線11a、第二車線11bにおいては交差点12aから交差点12bへの向きでの渋滞情報などの交通情報を算出し、第三車線11cにおいては交差点12bから交差点12aへの向きでの渋滞情報などの交通情報を算出する。そして、交通管制センターは、第一車線11a、第二車線11bの交通情報を含むダウンリンク情報を、交通信号機5aを経由して、路側装置4の通信部4a1、4a2から車両に提供し、第三車線11cの交通情報を含むダウンリンク情報を、交通信号機5aを経由して、路側装置4の通信部4a3から車両に提供する。
【0064】
一方、交通管制センターは、交通信号機5a、5bから第二車線11bが交差点12bから交差点12aへの向きにおける計測データを取得した場合には、第一車線11aにおいては交差点12aから交差点12bへの向きでの渋滞情報などの交通情報を算出し、第二車線11b、第三車線11cにおいては交差点12bから交差点12aへの向きでの渋滞情報などの交通情報を算出する。そして、交通管制センターは、第一車線11aの交通情報を含むダウンリンク情報を、交通信号機5aを経由して、路側装置4の通信部4a1から車両に提供し、第二車線11b、第三車線11cの交通情報を含むダウンリンク情報を、交通信号機5aを経由して、路側装置4の通信部4a2、4a3から車両に提供する。
【0065】
以上のように、交通管制センターは、中央線変移の対象となっている第二車線11bにおける車両の進行方向を考慮して、当該車線における交通情報を算出するので、交差点12aから交差点12bへの向きの交通情報及び交差点12bから12aへの向きの交通情報を精度良く算出することができる。
【0066】
また、交通管制センターは、交差点12aから交差点12bへの方向の交通情報を、当該方向に走行する車両にのみ提供し、交差点12bから交差点12aへの方向の交通情報を、当該方向に走行する車両にのみ提供するので、車両のドライバに必要な交通情報のみを効率よく提供することができる。
【0067】
上述の実施の形態においては、画像処理装置1aは、すべての車線において車両の進行方向を決定する構成であったが、これに限定されるものではなく、中央線変移の対象となっている車線でのみ車両の進行方向を決定する構成であっても良い。
【0068】
なお、上述の実施の形態においては、中央線変移システムが適用された道路上を走行する車両を認識する構成であったが、これに限定されるものではなく、中央線変移システムが適用されない道路上を走行する車両を認識する構成であっても良い。
【0069】
実施の形態2:
上述の実施の形態1においては、すべての車線あるいは中央線変移の対象となっている車線において車両の進行方向を決定する構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、中央線変移システムから中央線変移の対象となっている車線における車両の進行方向を取得する構成であっても良い。
【0070】
実施の形態2においては、画像処理システム1は、中央線変移システム2a、2bと通信回線を通じて接続しており、中央線変移システム2a、2bから中央線変移の対象となっている第二車線11bにおける車両の進行方向の情報を常時取得する。
【0071】
画像処理装置1aは、第一車線11aにおける車両の進行方向として、交差点12aから交差点12bへの向きを、第三車線11cにおける車両の進行方向として、交差点12bから交差点12aへの向きを、記憶部1a5に記憶している。また、中央線変移システム2a、2bから第二車線11bにおける車両の進行方向の情報を取得すると、記憶部1a5に記憶する。
【0072】
画像処理装置1aは、次の手順で車両の認識処理を行う。まず、画像処理装置1aは、撮像画像を画像メモリ1a3から読み出し、処理対象の車線を順に選択する。全車線、すなわち、3車線すべての処理が終了している場合は、画像処理装置1aは、認識処理を終了する。全車線の処理が終了していない場合は、画像処理装置1aは、選択した車線において、車両が存在しているか否かを判定する。車両が存在している場合には、記憶部1a5から当該車線における車両の進行方向を読み出し、この方向に車両を追跡する。この車両の追跡については、実施の形態1と同じである。従って、撮像画像の第二車線11bの領域すべてにおいて車両を認識する必要がなくなり、かつ、車両の進行方向の追跡領域でのみ車両を認識するため、効率良く車両を認識することができる。
【0073】
なお、上述の実施の形態2においては、中央線変移システムが適用された道路上を走行する車両を認識する構成であったが、これに限定されるものではなく、中央線変移システムが適用されない道路上を走行する車両を認識する構成であっても良い。この場合、画像処理システム1は、各車線の進行方向の情報を外部(例えば、交通管制センターや交通信号機)から常時取得すれば良い。
【0074】
実施の形態3:
上述の実施の形態1においては、すべての車線あるいは中央線変移の対象となっている車線において車両の進行方向を決定する構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、時刻と当該車線における車両の進行方向を対応付けた対応情報を予め記憶しておき、撮像画像の撮像時刻とこの対応情報とから当該車線における車両の進行方向を決定する構成であっても良い。
【0075】
実施の形態3においては、画像処理装置1aは、第一車線11aにおける車両の進行方向として、交差点12aから交差点12bへの向きを、第三車線11cにおける車両の進行方向として、交差点12bから交差点12aへの向きを、記憶部1a5に記憶している。また、時刻と第二車線11bにおける車両の進行方向を対応付けた対応情報を記憶部1a5に記憶している。
【0076】
図9は、対応情報の例を説明するための図である。対応情報は、日種、開始時刻、終了時刻、車両の進行方向の4項目から構成されている。項番には、1から順に整数が格納される。日種には、項番、平日、土曜、休日、特異日の4種類が格納される。開始時刻及び終了時刻には24時間表記の時刻が格納される。車両の進行方向には、上(交差点12aから交差点12bへの向き)、下(交差点12bから交差点12aへの向き)が格納される。例えば、項番1のデータは、平日の00:00から12:00までは第二車線11bにおける車両の進行方向は上方向であることを示している。また、項番2のデータは、平日の12:00から24:00までは第二車線11bにおける車両の進行方向は下方向であることを示している。また、項番9のデータは、特異日の00:00から24:00まで、すなわち、1日中、第二車線11bにおける車両の進行方向は下方向であることを示している。
【0077】
画像処理装置1aは、次の手順で車両の認識処理を行う。まず、画像処理装置1aは、撮像画像を画像メモリ1a3から読み出し、処理対象の車線を順に選択する。全車線、すなわち、3車線すべての処理が終了している場合は、画像処理装置1aは、認識処理を終了する。全車線の処理が終了していない場合は、画像処理装置1aは、選択した車線において、車両が存在しているか否かを判定する。車両が存在している場合には、当該車線が第一車線11aあるいは第三車線11cであれば、記憶部1a5から車両の進行方向を読み出し、この方向に車両を追跡する。当該車線が第二車線11bであれば、記憶部1a5から対応情報を読み出し、撮像画像の撮像時刻及び日種、すなわち、現時点の時刻及び日種(フレームレートに同期して車両の認識処理をしている場合は、撮像画像の撮像時刻は現時点の時刻にほぼ一致する)に該当するデータを参照し、車両の進行方向を決定し、この方向に車両を追跡する。例えば、現時点の時刻及び日種が土曜の12:34であれば、対応情報の項番4のデータが該当するため、車両の進行方向を上方向(交差点12aから交差点12bへの向き)に決定する。従って、撮像画像の第二車線11bの領域すべてにおいて車両を認識する必要がなくなり、かつ、車両の進行方向の追跡領域でのみ車両を認識するため、効率良く車両を認識することができる。
【0078】
上述の実施の形態においては、対応情報は、日種と開始時刻・終了時刻の組合せに対して車両の進行方向を設定する構成であったが、これに限定されるものではなく、1日ごとに開始時刻・終了時刻の組合せに対して車両の進行方向を設定する構成であっても良い。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る画像処理装置、画像処理システムを含む交通情報提供システムの概要を示す模式図である。
【図2】中央線変移システムが中央線を変移させる手順を説明するための図である。
【図3】画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図4】画像処理装置の車両の認識処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】撮像画像における車線の領域と各車線における車両の進行方向の例を示す図である。
【図6】第二車線における車両の進行方向が両方向である場合の当該車線の領域における車両の追跡処理を説明するための図である。
【図7】第二車線における車両の進行方向が上方向である場合の当該車線の領域における車両の追跡処理を説明するための図である。
【図8】第二車線における車両の進行方向が下方向である場合の当該車線の領域における車両の追跡処理を説明するための図である。
【図9】対応情報の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
1 画像処理システム
1a 画像処理装置
1a1 インタフェース部
1a2 A/D変換部
1a3 画像メモリ
1a4 RAM
1a5 記憶部
1a6 通信部
1a7 処理部
1b 撮像装置
1c 設置ポール
2a、2b 中央線変移システム
2aa、2ba 中央線変移装置
2ab、2bb アーム
3a、3b 車両感知器
3aa1、3aa2、3aa3、3ba1、3ba2、3ba3 感知部
3ab、3bb アーム
4 路側装置
4a1、4a2、4a3 通信部
4b アーム
5a、5b 交通信号機
5aa、5ba 交通信号制御機
5ab、5bb 信号灯器
5ac、5bc 信号柱
11 道路
11a 道路の第一車線
11b 道路の第二車線
11c 道路の第三車線
12a、12b 交差点
13a 第一車線と第二車線とを区切る白線
13b 第二車線と第三車線とを区切る白線
R 道路上の所定領域
PRa 撮像画像における第一車線の領域
PRb 撮像画像における第二車線の領域
PRc 撮像画像における第三車線の領域
Hb 車頭位置
T1、T2 追跡領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、
前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識手段と、
前記認識手段が現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置と現在の撮像画像において認識した当該車両の位置とに基づいて、当該車両の走行方向を算出する算出手段と、
前記算出手段が複数の車両について算出したこれらの車両の走行方向に基づいて前記所定の車線における車両の進行方向を決定する決定手段と
を備える画像処理装置であって、
前記認識手段は、
前記決定手段が車両の進行方向を決定した後、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記決定した車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、
前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部と
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記複数の車両の走行方向が一致している割合が第一閾値以上の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を前記一致している走行方向に決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記所定の車線における交通量を検知する検知手段をさらに備え、
前記決定手段は、第一期間内において前記検知手段が検知した交通量が第二閾値以上の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、
前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記所定の車線における交通量を検知する検知手段を備え、
前記決定手段は、第二期間内において前記検知手段が検知した交通量が第三閾値未満の場合にのみ、前記所定の車線における車両の進行方向を決定しなおすことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第二期間は、前記中央線変移の対象となる車線の一の端部から他の端部まで、車両が走行するのに要する期間であることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得手段と、
前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識手段と
を備える画像処理装置であって、
前記認識手段は、
現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記所定の車線に沿った一の方向に第一の所定領域を設定するとともに、前記所定の車線に沿った他の方向に第二の所定領域を設定する設定部と、
前記現在の撮像画像の前記第一及び第二の所定領域内において前記車両を認識する認識部と
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、
前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する第一取得手段と、
前記道路の所定の車線における車両の進行方向の情報を外部から取得する第二取得手段と、
前記取得した撮像画像における前記所定の車線において車両を認識する認識手段と
を備える画像処理装置であって、
前記認識手段は、
現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、
前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部と
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記道路は中央線変移システムが適用された道路であり、
前記所定の車線は中央線変移の対象となる車線であり、
前記第二取得手段は前記中央線変移システムから前記車両の進行方向の情報を取得することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
中央線変移システムが適用された道路上を走行する車両を撮像した撮像画像と当該撮像画像の撮像時刻とを取得する取得手段と、
前記道路の中央線変移の対象となる車線における車両の進行方向と時刻とを対応づけた対応情報を記憶する記憶手段と、
前記取得した撮像画像における前記車線において車両を認識する認識手段と
を備える画像処理装置であって、
前記認識手段は、
現在の撮像画像における前記車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識した車両の位置を基準として、前記取得手段が前記現在より前の時点の撮像画像の撮像時刻と前記対応情報とに基づいて決定した車両の進行方向に所定領域を設定する設定部と、
前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する認識部と
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
道路上を走行する車両を撮像する撮像手段と、
請求項1乃至11のいずれかに記載の画像処理装置と
を備える画像処理システム。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置と、
交通情報を算出して提供する交通情報算出装置と
を備える交通情報提供システムであって、
前記画像処理装置は、前記認識手段が認識した前記所定の車線における車両の認識結果と前記決定手段が決定した前記所定の車線における車両の進行方向とを出力する手段を備え、
前記交通情報算出装置は、
前記認識結果と前記車両の進行方向とを取得する手段と、
取得した前記認識結果と前記車両の進行方向とに基づいて、前記所定の車線における交通情報を算出する手段と
を備えることを特徴とする交通情報提供システム。
【請求項14】
複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得手順と、
前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識手順と、
前記認識手順で現在より前の時点の撮像画像において認識された車両の位置と現在の撮像画像において認識された当該車両の位置とに基づいて、当該車両の走行方向を算出する算出手順と、
前記算出手順で複数の車両について算出されたこれらの車両の走行方向に基づいて前記所定の車線における車両の進行方向を決定する決定手順と
を備える画像処理プログラムであって、
前記認識手順は、
前記決定手順において車両の進行方向が決定された後、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識された車両の位置を基準として、前記決定された車両の進行方向に所定領域を設定する手順と、
前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識する手順と
を含むことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項15】
複数の車線を有する道路上を走行する車両を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、
前記取得した撮像画像における前記道路の所定の車線において車両を認識する認識ステップと、
前記認識ステップで現在より前の時点の撮像画像において認識された車両の位置と現在の撮像画像において認識された当該車両の位置とに基づいて、当該車両の走行方向を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで複数の車両について算出されたこれらの車両の走行方向に基づいて前記所定の車線における車両の進行方向を決定する決定ステップと
を備える画像処理方法であって、
前記認識ステップは、
前記決定ステップにおいて車両の進行方向が決定された後、現在の撮像画像における前記所定の車線において、現在より前の時点の撮像画像において認識された車両の位置を基準として、前記決定された車両の進行方向に所定領域を設定するステップと、
前記現在の撮像画像の前記所定領域内において前記車両を認識するステップと
を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−181364(P2008−181364A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14715(P2007−14715)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】