説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】処理パフォーマンスの低下やコストの増加を招くことなく、倍率色収差補正及びノイズ低減を行う。
【解決手段】フォーマット変換回路209〜211は、R、G1、G2、およびBの色成分のベイヤー配列から成る第1の画像データに対して、G1およびG2の色成分を区別して用いて偽色抑圧処理を施して、第1の画像データをRおよびBの色成分と輝度成分とから成る第2の画像データに変換し、画像バッファ領域220に記憶する。倍率色収差補正回路216〜218は、画像バッファ領域220に記憶される第2の画像データを読み出し、倍率色収差補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの倍率色収差補正を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、結像光学系に起因する倍率色収差を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される技術は、倍率色収差を補正するために、先ずベイヤー配列のカラーフィルタを持つ撮像素子で撮像された映像信号を、R(赤)成分、G(緑)成分、B(青)成分に色分離する。そして、R成分が存在しない画素は隣接するR成分の画素から画素値を補間することで補間R成分が生成され、B成分が存在しない画素は隣接するB成分の画素から画素値を補間することで補間B成分が生成される。その後、倍率色収差補正回路は、補間R成分の各画素値をそれぞれがG成分を基準としたときに本来あるべき位置の画素値と置き換えることで倍率色収差を補正する。また、本来あるべき位置の画素値を置き換える先の画素の画素位置が1画素未満のずれを持っている場合は、周辺のR成分の画素値から1画素未満のずれを補間することで置き換える画素値が計算される。補間B成分についても同様の置き換えを行い、G成分に対して補間R成分と補間B成分との画素位置を補正することにより、倍率色収差が補正される。
【0003】
倍率色収差が補正されたR成分、B成分、G成分はその後、ガンマ補正やアパーチャ補正等の画質調整処理が行われた後、輝度成分と色差成分とに変換される。色差成分が生成される際は、ナイキスト周波数付近のエイリアシングが偽色信号として画像に表れないように偽色抑圧処理が施される。
【0004】
また従来から、画像信号を複数の周波数帯域に分割して、周波数帯域毎に処理された画像信号を再び周波数合成することでノイズを低減する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示される技術は、ステップ1〜ステップnのn個の周波数帯域毎にエッジ成分を保存しながらノイズ成分を低減することにより、広帯域なエッジ成分を保存しつつノイズ成分だけを低減している。
【0005】
以上の第1、第2の特許文献に開示される技術を適用し、倍率色収差補正を行ってガンマ補正やアパーチャ補正等の画質調整処理を行った後、偽色抑圧処理を行いつつノイズ低減処理を行って輝度成分と色差成分とを出力することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−015946号公報
【特許文献2】特開2008−015741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように想定した技術では、DRAM等で構成されるメモリに帯域制限された画像信号を多数のプレーンで記憶する必要があり、さらに各プレーンの画像信号を周波数成分毎に記憶する必要がある。そのため、連写撮影等、高速性が求められる処理の場合には単位時間当たりのメモリアクセス量が増大し、メモリアクセス帯域の上限に達すると処理パフォーマンスの低下を招く。また、必要なメモリ容量が増加することで、画像処理装置のコストを増大させることにもなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、処理パフォーマンスの低下やコストの増加を招くことなく、倍率色収差補正及びノイズ低減を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置は、R、G1、G2、およびBの色成分のベイヤー配列から成る第1の画像データに対して、G1およびG2の色成分を区別して用いて偽色抑圧処理を施して、前記第1の画像データをRおよびBの色成分と輝度成分とから成る第2の画像データに変換する第1の変換手段と、前記第2の画像データを記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、前記記憶媒体に記憶される前記第2の画像データを読み出し、前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行う補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理パフォーマンスの低下やコストの増加を招くことなく、倍率色収差補正及びノイズ低減を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】ベイヤー配列のカラーフィルタの構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態における信号処理回路の構成を詳細に示す図である。
【図4】R間引き回路の構成を詳細に示す図である。
【図5】RB間引き回路における間引き方法の選択処理を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態における信号処理回路の構成を詳細に示す図である。
【図7】比較例における信号処理回路の構成を詳細に示す図である。
【図8】第3の実施形態におけるシステム制御回路の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。図1において、101は、レンズや絞り等からなる結像光学系であり、フォーカス調節や露出調節を行う。102は、光学像を電気信号に変換するCCD等の撮像素子である。103は、撮像素子102からのアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換回路である。104は、A/D変換回路103から出力された画像データ(デジタル画像信号)に対して結像光学系の収差補正やノイズ低減等の処理を施す信号処理回路である。105は、メモリ(DRAM)106との間で画像データの書き込み/読み出しを行うメモリ制御回路である。107は、画像処理装置全体の動作を制御するシステム制御回路である。
【0014】
撮像素子102の結像面には、画素毎に図2に示すようなベイヤー配列のカラーフィルタが配置され、各画素はカラーフィルタの色に応じた画素値を出力する。なお、この図2では、Rフィルタの水平方向であってBフィルタの垂直方向に位置するGフィルタをG1フィルタ、Rフィルタの垂直方向であってBフィルタの水平方向に位置するGフィルタをG2フィルタとする。
【0015】
図3は、第1の実施形態における信号処理回路104の構成を詳細に示す図である。図3において、201は、A/D変換された画像データ(第1の画像データ)を入力とする周波数分解回路である。202は、周波数合成回路であり、ここから出力された画像データはメモリ106に記憶される。220は、信号処理回路104が使用する画像バッファ領域であり、図1のメモリ106内で確保される領域である。203〜205は、ローパスフィルタ回路(LFP)である。206〜208は、ダウンサンプリング回路である。209〜211は、R/G1/G2/B(R成分、G1成分、G2成分、B成分)の画像データをY/R/B(Y成分、R成分、B成分)の画像データ(第2の画像データ)に変換するフォーマット変換回路である。さらにフォーマット変換回路209〜211は偽色抑圧処理を行う。なお、画像バッファ領域220は記憶媒体の適用例となる構成であり、フォーマット変換回路209〜211は第1の変換手段の適用例となる構成である。
【0016】
偽色抑圧処理は、例えば次のような方法で実現される。即ち、撮像素子102に結像された光学像の空間方向の相関により、画素毎に(R−G1)成分もしくは(R−G2)成分のうち、相関が高いほうが選択されて(R−Ga1)成分とされる。またG1成分とG2成分を同じG成分とし、画素毎にこのG成分から補間されたGb成分が生成され、(R−Gb)成分が生成される。さらに彩度によって、画素毎に(R−Ga1)成分もしくは(R−Gb)成分が選択されてCr成分とされる。Cb成分も同様にして生成される。これにより、画素毎に偽色が抑圧された色差信号であるCr成分、Cb成分が生成される。なお、Cr成分およびCb成分は、(R−Ga1)成分と(R−Gb)成分を重み付け加算した値としても良いし、(R−Ga1)成分の値をそのまま用いても良い。また、輝度信号であるY成分は、撮像素子102に結像された光学像の空間方向の相関に応じて補間されたR成分、G成分、B成分を用いて、例えば次の演算により生成される。
Y=33R+0.59G+0.11B
【0017】
フォーマット変換回路209〜211は、輝度信号であるY成分、色差信号であるCr成分、Cb成分を基に、Y成分としてY、R成分として(Cr+Y)、B成分として(Cb+Y)を生成し、Y/R/Bの画像データを出力する。
【0018】
212〜214は、RBの解像度を落とすRB間引き回路(R間引き回路+B間引き回路)である。図4は、R間引き回路の構成を詳細に示す図である。図4において、401は水平方向のローパスフィルタ回路である。ここでローパスフィルタ回路401は、例えば伝達関数H(z)=1/2(1+Z-1)で実現することが可能である。402はローパスフィルタ回路401の有無を選択するセレクタ回路である。403は水平方向間引き回路である。後述するようにシステム制御回路107は間引きの位相として偶数位相か奇数位相かを選択し、水平方向間引き回路403は、選択された間引きの位相でR成分の画像データに対する間引き処理を行う。B間引き回路もR間引き回路と同様の構成である。また、後述するようにシステム制御回路107は、周波数帯域毎にローパスフィルタ回路401の使用の有無を選択する。なお、RB間引き回路212〜214は間引き手段の適用例となる構成である。
【0019】
結果として、周波数分解回路201は、周波数帯域毎に帯域制限されたY成分とRB成分との2プレーン(2面)から成るY/RBの画像データを画像バッファ領域220に出力する(Y/RB−2〜Y/RB−4)。また、帯域制限されない画像データはベイヤー配列の画像データのまま出力される(Bayer−1)。
【0020】
周波数合成回路202は、周波数帯域毎に倍率色収差補正回路215〜218により倍率色収差補正を行う。Bayer−1に対しては、倍率色収差補正回路215は、R補間やB補間を行った後に倍率色収差補正を行う。Y/RB2〜4に対しては、倍率色収差補正回路216〜218は、図4に示すように、RB間引き回路212〜214で選択された間引きの位相に応じて、補間の位相を選択する。即ち、間引きの位相が偶数位相である場合、補間の位相も偶数位相が選択され、間引きの位相が奇数位相である場合、補間の位相も奇数位相が選択される。また、Y/RB2〜4に対しては、倍率色収差補正回路216〜218は、G成分の代わりにY成分を基準にしてR成分、B成分の倍率色収差補正を行う。
【0021】
R補間及びB補間において、本実施形態では、R成分及びB成分を補間する画素値を周辺画素の平均値で生成しているが、その他の従来から知られている技術を用いてもよい。例えば、G成分の高周波成分を用いて、R成分及びB成分の解像度を向上させるという技術が知られている。G成分をY成分に置き換えて当該技術を適用すれば、RB間引きでR成分及びB成分の水平解像度が落ちても、倍率色収差の補正時に解像度劣化を回復させることができる。さらにBayer−1に対しても当該技術でR補間及びB補間を適用してもよい。
【0022】
なお、倍率色収差補正は公知の方法を適用すればよい。例えば、不図示の補正データ記憶用メモリに、結像光学系101の状態(ズーム位置、フォーカス位置、絞り値等)および像高別に、Y成分(あるいはG成分)の結像位置に対するR成分の結像位置のズレを記憶しておく。倍率色収差補正回路215〜218は、撮像素子102が映像信号を生成したときの結像光学系101の状態、および、補正対象とする着目画素の像高に対応する、着目画素におけるR成分の結像位置のズレ量を読み出す。そして、倍率色収差補正回路215〜218は、そのズレ量に対応する位置におけるR成分の値を、その位置の周辺画素におけるR成分の値から補間して求め、着目画素におけるR成分の値とする。これをB成分においても同様に行う。
【0023】
ノイズ低減回路219は、Cr成分をフォーマット変換回路209〜211の逆変換により(R−Y)で生成する。またノイズ低減回路219は、同様にCb成分を(B−Y)で生成する。ノイズ低減の処理自体は、輝度成分と色差成分とで別々に施される。そして、画素ごと、およびY/Cr/Cb成分ごとに、ノイズ低減が施された各周波数帯域のY/Cr/Cb成分のうち、被写体のエッジ情報などに応じていずれかの周波数帯域のY/Cr/Cb成分が選択され、出力画像として生成される。
【0024】
図5は、RB間引き回路212〜214における間引き方法の選択処理を示すフローチャートである。ステップS101において、システム制御回路107は、RB間引き回路212〜214におけるローパスフィルタ回路401の使用の有無を選択する。ステップS102において、システム制御回路107は、RB間引き回路212〜214における間引き位相を選択する。ステップS103において、システム制御回路107は、ステップS102で選択した間引き位相に応じて、倍率色収差補正回路216〜218におけるR補間、B補間の位相を選択する。
【0025】
以上説明したように、倍率色収差補正を行うためには、R成分およびB成分が必要であり、偽色抑圧処理を行うためには、G1成分およびG2成分を区別して用いる必要がある。そこで、本実施形態における画像処理装置は、G1成分およびG2成分を区別して用いる必要がある偽色抑圧処理をはじめに行いつつ、R/G1/G2/Bの画像データをY/R/Bの画像データへ変換し、画像バッファ領域220に記憶させる。これにより、複数の周波数帯域に分解した画像データを、R/G1/G2/Bの画像データとした場合に比較して、画像バッファ領域220のメモリ容量を削減することができる。ここで、画像バッファ領域220に記憶させる画像データを、Y/Cr/Cbの画像データとせずにY/R/Bの画像データとしたのは、後段でR成分およびB成分を用いて倍率色収差補正を行うためである。さらに、本実施形態では、RB間引き回路212〜214を用いることにより、画像バッファ領域220に必要とされるメモリ容量の更なる削減を実現している。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る画像処理装置の構成は、図1に示した構成と同様であるが、信号処理回路104の詳細な構成が第1の実施形態と異なる。
【0027】
図6は、第2の実施形態における信号処理回路104の構成を詳細に示す図である。図6において、周波数合成回路302は、図3の周波数合成回路202と同様の構成である。また、図6の画像バッファ領域318は、図3の画像バッファ領域220と同様の構成である。301は周波数分解回路である。303はローパスフィルタ回路であり、306はダウンサンプリング回路であり、それぞれは、図3のローパスフィルタ回路203〜205、ダウンサンプリング回路206〜208と同様の構成である。また、309はフォーマット変換回路であり、図3のフォーマット変換回路209〜211と同様の回路である。但し、図3に示すように、第1の実施形態では3つの回路が必要であったものが、第2の実施形態では図6に示すように1つの回路でまかなえ、回路規模が小さい。
【0028】
ローパスフィルタ回路304、305はローパスフィルタ回路303と同様の回路である。但し、ローパスフィルタ回路303は扱う画像データのフォーマットがR/G1/G2/Bの4プレーンに対し、ローパスフィルタ回路304、305は扱う画像データのフォーマットがY/R/Bの3プレーンであり、回路規模が小さい。また同様に、ダウンサンプリング回路307、308は、ダウンサンプリング回路306と同様の回路であるが、扱うプレーン数が4プレーンと3プレーンとで異なるので、回路規模が小さい。310〜312はRB間引き回路であり、図3のRB間引き回路212〜214と同様の回路である。本実施形態においては、周波数帯域毎にRB間引き回路310〜213が存在するので、図3と同様に、周波数帯域毎にR成分及びB成分のフィルタリングや間引き位相を選択することができる。
【0029】
ここで、本発明の第1、第2の実施形態との比較例について説明する。本比較例に係る画像処理装置の構成は、図1に示した構成と同様であるが、信号処理回路104の詳細な構成が第1の実施形態と異なる。
【0030】
図7は、本比較例に係る画像処理装置における信号処理回路104の構成を詳細に示す図である。2001は周波数分解回路である。2003〜2005は水平方向と垂直方向とのローパスフィルタ回路である。ここでローパスフィルタ回路2003〜2005は水平方向及び垂直方向のいずれも、例えば伝達関数H(z)=1/2(1+Z-1)で実現することが可能である。2006〜2008は、水平方向と垂直方向とのダウンサンプリング回路である。ダウンサンプリングされる位相は、水平方向は左右2画素のうちの左側の画素、垂直方向は上下2画素のうちの上側の画素とする。2014は画像バッファ領域であり、DRAM等で構成される。周波数分解回路2001は、ベイヤー配列の画像データを入力とし、帯域制限されていない画像データ(Bayer−1)と、第3の画像データとしての、帯域制限されている赤成分、緑成分、青成分の画像データ(R/G1/G2/B−2〜R/G1/G2/B−4)とを画像バッファ領域2014に出力する。なお、周波数分解回路2001は第2の変換手段の適用例となる構成である。
【0031】
R/G1/G2/B−2の画像データは、ローパスフィルタ回路2003により水平方向及び垂直方向に1/2に帯域制限され、画素数もダウンサンプリング回路2006により水平方向及び垂直方向に1/2に間引かれている。入力される画像データはベイヤー配列であり、R、G1、G2、Bの各色フィルタ成分が水平方向及び垂直方向に元々1/2の解像度なので、ダウンサンプリング後の画像データはR成分、G1成分、G2成分、B成分の1プレーン毎に記憶される。
【0032】
R/G1/G2/B−3の画像データは、さらにローパスフィルタ回路2004により水平方向及び垂直方向に1/2に帯域制限され、画素数もダウンサンプリング回路2007により水平方向及び垂直方向に1/2に間引かれている。
【0033】
R/G1/G2/B−4の画像データは、さらにローパスフィルタ回路2005により水平方向及び垂直方向に1/2に帯域制限され、画素数もダウンサンプリング回路2008により水平方向及び垂直方向に1/2に間引かれている。
【0034】
2002は周波数合成回路である。2009〜2012は倍率色収差補正回路である。2013は偽色抑圧及びノイズ低減回路である。周波数合成回路2002は、周波数帯域毎に倍率色収差補正回路2009〜2012により倍率色収差補正を行う。Bayer−1に対しては、倍率色収差補正回路2009は、R補間やB補間を行った後に倍率色収差補正を行う。R/G1/G2/B2〜4に対しては、R成分とB成分との同時化がすでに終了しているので、R補間及びB補間の処理はスキップされる。この後の偽色抑圧処理でG1とG2との差分情報が必要なので、G成分はG1成分とG2成分とで偽色抑圧及びノイズ低減回路2013に出力される。
【0035】
偽色抑圧及びノイズ低減回路2013は、色差成分の偽色抑圧処理を行う。ここでは、周波数成分毎に色成分が生成されるが、この段階で、周波数成分毎にエッジ成分が検出され、ノイズ低減処理が行われる。生成された各色成分はその後合成され、Cr成分、Cb成分の色差信号として出力される。Cr成分、Cb成分の色差信号についてはそれぞれ、水平方向の解像度が1/2に落とされて1プレーンの色差信号CrCbとして出力される。また、輝度成分については特許文献3に開示される方法でノイズ低減処理が行われることにより、1プレーンの輝度信号Yとして出力される。
【0036】
本比較例に係る画像処理装置においては、DRAM等で構成される画像バッファ領域2014に帯域制限された画像データをR/G1/G2/Bの4プレーンで記憶する必要があり、さらに、それら4プレーンの画像データを周波数帯域毎に記憶する必要がある。そのため、連写撮影等、要求される処理速度に高速性が求められる場合には単位時間当たりのメモリアクセス量が増大し、メモリアクセス帯域の上限に達すると処理パフォーマンスの低下を招く。また必要なメモリ容量が増加し、画像処理装置のコストを増大させる。
【0037】
これに対し、第1、第2の実施形態においては、周波数帯域毎に帯域制限された、Y成分とRB成分との2プレーンから成るY/RBの画像データが画像バッファ領域に出力される。従って、必要なメモリ容量を小さくすることができ、コストダウンを図ることが可能である。また、単位時間当たりのメモリアクセス量を減らすこともできるので、処理パフォーマンスの低下を防ぐことができる。
【0038】
以上のように、第1、第2の実施形態によれば、処理パフォーマンスの低下やコスト増を招くことなく倍率色収差補正処理及びノイズ低減処理を行うことが可能となる。特に、第2の実施形態によれば、小さい回路規模で実現することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る画像処理装置の構成は、図1に示した構成と同様であるが、信号処理回路104の詳細な構成が第1の実施形態と異なる。
【0040】
本実施形態における信号処理回路104は、第1又は第2の実施形態における信号処理回路104の動作モードと、上記比較例における信号処理回路104の動作モードとを有している。そして、システム制御回路107は必要なメモリ帯域を判断して2つの動作モードを切り替える。
【0041】
上述したとおり、第1又は第2の実施形態によれば、処理パフォーマンスの低下やコスト増を招くことなく倍率色収差補正処理及びノイズ低減処理を行うことができる(ハイパフォーマンスモード(第1のモード))。また、比較例によれば、画像バッファ領域で色成分解像度を落とさないのでより高画質な画像データを生成することができる(高画質モード(第2のモード))。
【0042】
以下では、メモリ帯域の制限でパフォーマンスが低下してしまうような場合を、例えば1000万画素程度の静止画を秒間10コマに至るような高速連写で撮影するような場合を例に挙げて説明するが、本発明はそのような場合に限定されるものではない。例えば、ハイビジョン動画記録時やその他の処理が並列している場合等、その他の原因で使用できるメモリ帯域が限定される場合でも適応可能である。
【0043】
図8は、第3の実施形態におけるシステム制御回路107の処理を示すフローチャートである。ステップS201において、システム制御回路107は、高速連写モードであるか否かを判断する。高速連写モードであれば、システム制御回路107はハイパフォーマンスモードを選択して、秒間10コマ等、必要なパフォーマンスが確保できるようにする。一方、高速連写モードでなければ、ステップS203において、システム制御回路107は高画質モードを選択する。
【0044】
本実施形態によれば、倍率色収差補正処理及びノイズ低減処理を行う際に、画質及びパフォーマンスが最適になるように動作モードを選択することができる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0045】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0046】
104:信号処理回路、107:システム制御回路、201、301:周波数分解回路、202、302:周波数合成回路、220、318:画像バッファ領域、203〜205、303〜305:ローパスフィルタ回路、206〜208、306〜308:ダウンサンプリング回路、209〜211、309:フォーマット変換回路、212〜214、310〜312:RB間引き回路、215〜218、313〜316:倍率色収差補正回路、219、317:ノイズ低減回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R、G1、G2、およびBの色成分のベイヤー配列から成る第1の画像データに対して、G1およびG2の色成分を区別して用いて偽色抑圧処理を施して、前記第1の画像データをRおよびBの色成分と輝度成分とから成る第2の画像データに変換する第1の変換手段と、
前記第2の画像データを記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、
前記記憶媒体に記憶される前記第2の画像データを読み出し、前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行う補正手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の画像データのRおよびBの色成分を間引いて、前記第2の画像データのRおよびBの色成分を輝度成分より低い解像度とする間引き手段を更に有し、
前記第1の記憶手段は、前記間引き手段によりRおよびBの色成分が間引かれた前記第2の画像データを前記記憶媒体に記憶することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記間引き手段は、前記第2の画像データのRおよびBの色成分を水平方向に1/2に間引くことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記第2の画像データのRおよびBの色成分の解像度を輝度成分と同じ解像度にした後、前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の変換手段は、複数の周波数帯域毎に前記第2の画像データを出力し、前記補正手段は、前記複数の周波数帯域毎の前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の画像データをR、G1、G2、およびBの色成分から成る第3の画像データに変換する第2の変換手段と、
前記第3の画像データを前記記憶媒体に記憶する第2の記憶手段とを更に有し、
前記補正手段は、前記記憶媒体から前記第2の画像データを読み出して倍率色収差補正を行う第1のモードと、前記記憶媒体から前記第3の画像データを読み出して倍率色収差補正を行う第2のモードとを切り替えて実行することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、要求される処理速度に応じて、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替えて実行することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
R、G1、G2、およびBの色成分のベイヤー配列から成る第1の画像データに対して、G1およびG2の色成分を区別して用いて偽色抑圧処理を施して、前記第1の画像データをRおよびBの色成分と輝度成分とから成る第2の画像データに変換する変換ステップと、
前記第2の画像データを記憶媒体に記憶する記憶ステップと、
前記記憶媒体に記憶される前記第2の画像データを読み出し、前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行う補正ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
R、G1、G2、およびBの色成分のベイヤー配列から成る第1の画像データに対して、G1およびG2の色成分を区別して用いて偽色抑圧処理を施して、前記第1の画像データをRおよびBの色成分と輝度成分とから成る第2の画像データに変換する変換ステップと、
前記第2の画像データを記憶媒体に記憶する記憶ステップと、
前記記憶媒体に記憶される前記第2の画像データを読み出し、前記第2の画像データのRおよびBの色成分に対して倍率色収差補正を行う補正ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129801(P2012−129801A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279543(P2010−279543)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】