説明

画像処理装置および距離計測装置

【課題】撮影シーンに応じた立体表示を実現することが可能な技術を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、撮影領域における被写体までの距離計測を、撮影領域に設定された予備計測位置において行って、距離情報を取得する第1距離計測部12と、第1距離計測部12で取得された距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための本計測位置を撮影領域において設定する設定手段と、本計測位置において距離計測を行って、距離情報を取得する第2距離計測部13と、第1距離計測部12および第2距離計測部13で取得された距離情報に基づいて、視差情報を生成する視差情報生成部15と、視差情報に基づいて立体画像を生成する立体画像生成部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元の立体画像を視認可能な3次元テレビの普及が進んでいる。しかし、ハード面での普及が進む一方で、立体表示可能なソフト(コンテンツ)の量は依然として少ないため、立体画像を容易に作成可能な技術が望まれている。
【0003】
しかし、単純に複数台のカメラにより取得した画像を立体画像として用いると、表示ディスプレイの大きさ次第では、立体感に欠ける画像となる可能性がある。
【0004】
個々のディスプレイに適した立体感を得るには、視差の調整を行うことが重要である。一般的に、視差の調整を正確に行う手法としては、例えば特許文献1のように、2台のカメラによってステレオ撮影された2枚の画像相互間で対応点探索を行い、カメラから各被写体までの距離を計測した上で、計測された距離に応じて視差量を補正する手法が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記手法では、撮影対象となる被写体に応じた距離計測が行われていないため、撮影シーンに応じた立体表示を行うことが困難となっていた。例えば、撮影対象が物体(または人物)である場合、立体表示においては、撮影対象となる物体の形状を精度よく表現することが重要となるが、上記手法では、全ての被写体に対して距離計測を行い、視差量を補正することになるため、撮影対象となる物体の形状を精度よく表現し、撮影シーンに応じた立体表示を行うことができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、撮影シーンに応じた立体表示を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、画像処理装置であって、撮影領域における被写体までの距離計測を、前記撮影領域に設定された第1計測位置において行って、第1距離情報を取得する第1計測手段と、前記第1距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための第2計測位置を前記撮影領域において設定する設定手段と、前記第2計測位置において距離計測を行って、第2距離情報を取得する第2計測手段と、第1距離情報および第2距離情報に基づいて、視差情報を生成する視差情報生成手段と、前記視差情報に基づいて立体画像を生成する画像生成手段とを備える。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、前記第1距離情報に基づいて、前記第2計測位置を定めた複数の計測パターンの中から、1つの計測パターンを選択する。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったとき、当該第1計測位置の周辺に前記第2計測位置を設定する。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、前記第1計測位置を囲む閉領域において前記第2計測位置を設定し、前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域を比較的大きい領域とし、第1計測位置において計測された被写体までの距離が遠距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域を比較的小さい領域とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域内において前記第2計測位置を密に設定し、第1計測位置において計測された被写体までの距離が遠距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域内において前記第2計測位置を粗く設定する。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る画像処理装置において、前記被写体についてのステレオ画像を取得する画像取得手段をさらに備え、前記第1計測手段および前記第2計測手段は、前記ステレオ画像を用いて距離計測を行う。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置において、前記被写体についてのステレオ画像を取得する画像取得手段をさらに備え、前記画像取得手段は、第1ステレオ画像と、当該第1ステレオ画像よりも時間的に後に撮影された第2ステレオ画像とを取得し、前記第1計測手段は、前記第1ステレオ画像を用いて距離計測を行って、第1距離情報を取得し、前記第2計測手段は、前記第1ステレオ画像を用いた距離計測によって取得された第1距離情報に基づいて設定される第2計測位置において、前記第2ステレオ画像を用いた距離計測を行う。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る画像処理装置において、前記第2計測手段は、前記第2ステレオ画像を用いた距離計測を、前記第1計測位置においても行って、第1距離情報を新たに取得し、前記設定手段は、新たに取得された第1距離情報に基づいて、前記第2計測位置を再設定する。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項7または請求項8の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、前記第1ステレオ画像および前記第2ステレオ画像それぞれに含まれる時間的に前後するフレーム間で被写体の動きベクトルを算出し、当該動きベクトルに基づいて前記第1計測位置を変更する。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項6から請求項9のいずれかの発明に係る画像処理装置において、前記第1計測位置は、前記ステレオ画像に含まれる1の画像から抽出された被写体領域において、当該被写体領域の中心付近に設定される。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項6から請求項10のいずれかの発明に係る画像処理装置において、前記第1計測位置および前記第2計測位置の総数は、1の前記ステレオ画像を用いた距離計測において、所定数以下となるように設定される。
【0019】
また、請求項12の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、撮影領域における中心付近の第1計測位置における距離が、他の第1計測位置における距離に比べて近距離であった場合、撮影領域の中心付近において第2計測位置を密に設定し、撮影領域の端付近において、第2計測位置を粗く設定する。
【0020】
また、請求項13の発明は、請求項6から請求項11のいずれかの発明に係る画像処理装置において、前記設定手段は、前記ステレオ画像に含まれる1の画像を用いて被写体の距離情報を推定し、推定された距離情報を反映して、第2計測位置を変更する。
【0021】
また、請求項14の発明は、距離計測装置であって、撮影領域における被写体までの距離計測を、前記撮影領域に設定された第1計測位置において行って、第1距離情報を取得する第1計測手段と、前記第1距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための第2計測位置を前記撮影領域において設定する設定手段と、前記第2計測位置において距離計測を行って、第2距離情報を取得する第2計測手段とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、撮影シーンに応じた立体表示を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の外観構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の外観構成を示す図である。
【図3】撮像装置によって取得された2枚の画像を示す図である。
【図4】撮像装置の内部構成を示す図である。
【図5】撮像装置の機能ブロック図である。
【図6】立体画像が生成される様子を示す図である。
【図7】立体画像が生成される様子を示す図である。
【図8】撮像装置の動作に関するフローチャートである。
【図9】撮影領域において設定された予備計測位置を示す図である。
【図10】本計測位置の計測パターンを示す図である。
【図11】本計測位置の計測パターンを示す図である。
【図12】本計測位置の計測パターンを示す図である。
【図13】本計測位置の計測パターンを示す図である。
【図14】本計測位置の計測パターンを示す図である。
【図15】画像を構成する画素を分割して、サブピクセルを設定する様子を示す図である。
【図16】撮影領域において設定された予備計測位置を示す図である。
【図17】予備計測位置における計測結果を示す図である。
【図18】設定された本計測位置を示す図である。
【図19】粗領域および密領域の設定例を示す図である。
【図20】第1距離計測および第2距離計測の際に実行される動作のフローチャートである。
【図21】第5実施形態に係る撮像装置において実行される、第1距離計測および第2距離計測の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
<1.第1実施形態>
[1−1.外観構成]
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1Aの外観構成を示す図である。図3は、撮像装置1Aによって取得された2枚の画像を示す図である。
【0026】
図1に示されるように、撮像装置1Aは、互いに基線長L分だけ離れて配置された主撮像部MCと副撮像部(補助撮像部)SCとを有している。このように、2つの撮像部MC,SCを有する撮像装置1Aは、被写体をステレオ撮影するステレオカメラとして機能する。
【0027】
主撮像部MCおよび副撮像部SCからは、同じ精度の画像が取得される態様であってもよく、異なる精度の画像が取得される態様であってもよい。ここでは、例えば、主撮像部MCとして、ハイビジョン放送対応レンズ(HDTVレンズ)を有した比較的高解像度の画像を取得可能なカメラユニットを用い、副撮像部SCとして、比較的低解像度の画像を取得するマイクロカメラユニット(MCU)を用いるものとする。
【0028】
このような撮像部MC,SCを有する撮像装置1Aからは、例えば、図3に示されるような2枚の画像(「ステレオ画像」とも称する)MG,SGが取得されることになる。2つの撮像部MC,SCは、同じ被写体(主被写体PSおよび背景BG)を撮像しているが、副撮像部SCの光軸は、基線長L分だけ主撮像部MCの光軸から離れているので、副撮像部SCで得られた画像(「参照画像」または「サブ画像」とも称する)SGと主撮像部MCで得られた画像(「基準画像」または「メイン画像」とも称する)MGとの間には視差に伴う差が生じる。
【0029】
撮像装置1Aは、2つの撮像部MC,SCそれぞれによって、同じタイミングで異なる視点から撮影される2枚の画像MG,SGを用いることにより、2枚の画像相互間の対応点における視差を測定することができ、当該視差に基づいて、対応点における被写体と撮像装置1Aとの距離に関する情報(距離情報)を取得することができる。
【0030】
本実施形態の撮像装置1Aでは、距離情報の取得に際し、最初に予備的に距離情報の取得が行われ、その後、予備的な距離情報の取得結果に基づいて、追加してさらに距離情報の取得が行われる。詳細は、後述する。
【0031】
なお、撮像装置1Aにおいては、主撮像部MCおよび副撮像部SCの配列方向は、図1のように、水平面に対して垂直な方向(「縦方向」とも称する)であってもよく、図2のように、水平面に対して平行な方向(「横方向」とも称する)であってよい。2つの撮像部MC,SCを縦方向に配列することによれば、従来のカムコーダの形態を利用してコンパクトな構成とすることができる。
【0032】
[1−2.内部構成]
次に、撮像装置1Aの内部構成について説明する。図4は、撮像装置1Aの内部構成を示す図である。
【0033】
図4に示されるように、撮像装置1Aは、2つの撮像部MC,SCと、画像処理部3と、液晶ディスプレイ等で構成される表示部4と、ボタン等の操作部5とを有している。
【0034】
主撮像部MCおよび副撮像部SCは、CCDまたはCMOS等の撮像素子を有し、同一の被写体に関する2つの画像信号(ここでは「画像」と略称している)を生成する。主撮像部MCおよび副撮像部SCから出力される画像および撮影条件を含むデータは、データ線LNを介して画像処理部3に入力される。
【0035】
画像処理部3は、2つの撮像部MC,SCからのデータを受信するインターフェース(I/F)31と記憶装置32と全体制御部33とを備える。
【0036】
記憶装置32は、例えばメモリカード等で構成され、2つの撮像部MC,SCによって取得された基準画像MGおよび参照画像SGを記憶する。
【0037】
全体制御部33は、プロセッサとして動作するCPU34と、情報を一時的に記憶するRAM35と、プログラム等を記憶するROM36とを有し、撮像装置1Aの各部を統括的に制御する。全体制御部33は、ROM36内のプログラムを読み出してCPU34で実行することによって、各種機能を実現する。
【0038】
次に、撮像装置1Aで実現される機能について説明する。図5は、撮像装置1Aの機能ブロック図である。図6および図7は、立体画像が生成される様子を示す図である。
【0039】
図5に示されるように、撮像装置1Aは、撮影情報取得部11、第1距離計測部12、第2距離計測部13、カメラ情報記憶部14、視差情報生成部15、および立体画像生成部16を有している。なお、図5における、撮影情報取得部11、第1距離計測部12、第2距離計測部13、視差情報生成部15、および立体画像生成部16は、全体制御部33においてプログラムを実行することによって実現される機能を機能ブロックとして表したものである。
【0040】
撮影情報取得部11は、主撮像部MCおよび副撮像部SCからステレオ画像(基準画像および参照画像)および撮影倍率等の撮影条件を含むデータを取得する。そして、撮影情報取得部11は、ステレオ画像を第1距離計測部12に出力する。
【0041】
第1距離計測部12および第2距離計測部13では、撮像装置1Aから被写体までの距離の計測が行われる。撮像装置1Aから被写体までの距離の計測手法としては、ここでは、ステレオ計測による手法が第1距離計測部12および第2距離計測部13において採用される。
【0042】
具体的には、第1距離計測部12(第2距離計測部13)は、基準画像MGおよび参照画像SGの相互間において、被写体上の対応点を特定して、対応点間の距離、すなわち対応点における被写体の視差を測定する。そして、第1距離計測部12は、2枚の画像の対応点における視差および三角測量の原理を利用して、対応点における被写体の3次元位置情報を算出する。そしてさらに、第1距離計測部12は、撮像装置1Aの位置と対応点における被写体の3次元位置情報とを用いて、対応点における被写体と撮像装置1Aとの距離情報を取得する。なお、3次元位置情報の算出は、カメラ情報記憶部14に記憶された主撮像部MCおよび副撮像部SCの位置および姿勢等の既知のカメラ情報(カメラパラメータ)をも用いて行われる。
【0043】
本実施形態では、距離情報の取得に際し、第1距離計測部12において予備的に距離計測(「予備計測」とも称する)が行われ、第2距離計測部13では、当該予備計測の結果に基づいて、計測位置を追加して効率的に本計測が行われる。詳細は、後述する。
【0044】
視差情報生成部15(図5)は、第1距離計測部12および第2距離計測部13において取得された距離情報に基づいて、距離情報に応じた視差を取得し、視差情報を生成する。
【0045】
立体画像生成部16は、視差情報生成部15で生成された視差情報に基づいて、基準画像をずらすことによって、立体画像を生成する。立体画像の生成手法としては、例えば、立体画像を構成する左目用画像および右目用画像のうち、どちらか一方の画像として基準画像MGを用い、他方の画像を新たに生成する手法を採用することができる。
【0046】
当該手法では、図6に示されるように、例えば、基準画像MG1を左目用画像LG1としてそのまま用いた場合、立体画像生成部16は、視差情報に従って、基準画像MG1を水平方向(矢印YPの方向)に視差の値分ずらすことによって右目用画像RG1を生成する。左目用画像および右目用画像のうち、一方の画像として基準画像MGを用いることによれば、新たに生成する画像を1つにすることができるので、立体画像の生成処理を軽減することができる。
【0047】
また、立体画像の生成手法としては、例えば、左目用画像および右目用画像の両方の画像を新たに生成する手法を採用してもよい。当該手法では、図7に示されるように、基準画像MG1を水平方向に視差の値の半分ずつずらすことによって、左目用画像LG2および右目用画像RG2が生成される。当該手法によれば、基準画像MG1のずらし量を減らすことができるので、左目用画像および右目用画像においてオクルージョン領域を減らすことができ、より違和感のない立体画像を生成することができる。
【0048】
[1−3.動作]
次に、撮像装置1Aの動作について説明する。図8は、撮像装置1Aの動作に関するフローチャートである。図9は、撮影領域において設定された予備計測位置を示す図である。図10〜図14は、本計測位置の計測パターンを示す図である。
【0049】
図8に示されるように、まず、ステップSP11では、撮影情報取得部11が、主撮像部MCおよび副撮像部SCからステレオ画像を取得する。
【0050】
ステップSP12では、第1距離計測部12によって、撮像装置1Aから被写体までの距離計測が予備的に行われる。ステップSP12で行われる距離の予備計測は、主撮像部MC(または副撮像部SC)によって撮影可能な撮影領域内において、予め定められた位置(計測位置)において行われる。
【0051】
具体的には、図9に示されるように、予備計測では、予備計測を行う位置(「予備計測位置」とも称する)QPが、撮影領域において所定間隔ごとに一様に設定される。なお、図9では、撮影領域を表す基準画像MGを微小領域に区分けして、予備計測位置を微小領域単位で簡単化して示しているが、当該微小領域の構成単位は、基準画像MGを構成する1画素であってもよく、複数の画素によって構成される領域であってもよい。
【0052】
次のステップSP13では、予備計測の結果に基づいて、第2距離計測(本計測)を行う際の計測位置(「本計測位置」とも称する)が設定される。計測位置の設定は、例えば、計測位置を定めた複数のパターンの中から、1つの計測パターンを選択して決定するようにしてもよい。
【0053】
複数の計測パターンとしては、例えば、図10〜図14に示される各計測パターンを採用することができ、これらの計測パターンに関するデータは予め撮像装置1A内に格納されている。
【0054】
図10の計測パターンPT10は、撮影領域の中心付近に計測位置RPを多く設定し、中心付近において密な距離計測を実現するパターンである。図11の計測パターンPT11は、撮影領域の下段部および上段部よりも中段部に計測位置RPを多く設定し、中段領域において密な距離計測を実現するパターンである。当該計測パターンPT11は、撮影領域の下段部に道路が存在し、上段部に空が存在するようなシーン向けの計測パターンである。図12の計測パターンPT12は、複数の予備計測位置のうち、被写体までの距離が最も近い予備計測位置を中心にして拡大した領域のみにおいて、計測位置RPを設定するパターンである。図13の計測パターンPT13は、撮影領域中の下段部において計測位置RPを多く設定し、下段領域において密な距離計測を実現するパターンである。図14の計測パターンPT14は、撮影領域において左右方向に行くほど計測位置RPを少なく設定し、左右の端領域において粗い距離計測を実現するパターンである。
【0055】
なお、計測パターンPT10〜PT14を示す各図10〜14では、撮影領域内の計測パターンと被写体とが同時に示されているが、これは、計測位置RPと被写体との関係を把握し易くするために示したものであり、各図に描かれた被写体は計測パターンを示すものではない。
【0056】
複数の計測パターンPT10〜PT14の中から1つの計測パターンを選択する手法としては、例えば、次のような手法を採用することができる。具体的には、各計測パターンPT10〜PT14において計測位置が密である領域を近距離領域とし、計測位置が粗である領域を遠距離領域として各計測パターンPT10〜PT14を遠近分布で表現する。そして、計測パターンPT10〜PT14の各遠近分布の中から、予備計測によって得られた撮影領域内の遠近分布に合うものを選択する。
【0057】
予備計測によって得られた撮影領域内の遠近分布が、どの計測パターンPT10〜PT14の遠近分布に合うかについての選択は、例えば、予備計測の結果に基づいて、被写体までの距離が近距離である予備計測位置を近距離計測位置として特定した上で、当該近距離計測位置と、各計測パターンPT10〜PT14における近距離領域とを照合して、近距離領域内にどれぐらいの数の近距離計測位置が含まれるかを基準にして行われる。すなわち、近距離領域内に近距離計測位置を最も多く含む計測パターンが選択されることになる。
【0058】
なお、ここでいう近距離とは、或る閾値以下の距離をいい、遠距離とは、当該閾値よりも大きい距離をいう。また、本計測位置は、予備計測に対して距離計測を追加して行うための計測位置であるとも表現される。
【0059】
このようにステップSP13では、複数の計測パターンの中から、1つの計測パターンが選択され、本計測位置が設定される。
【0060】
ステップSP14では、設定された本計測位置において、第2距離計測が行われる。なお、本実施形態では、第2距離計測は、第1距離計測と同様、ステレオ画像を用いたステレオ計測によって行われるので、本計測位置のうち、予備計測位置と重複する位置では、第2距離計測を行わなくてもよい。
【0061】
ステップSP15では、視差情報生成部15によって、第1距離計測および第2距離計測で取得された距離情報に基づいて、視差情報が生成される。
【0062】
視差情報の生成に際して、撮影領域において距離計測によって距離情報が取得されていない位置(未取得位置)の距離情報は、周辺の距離情報を用いて算出される。特に第2距離計測において計測位置が粗く設定された領域における未取得位置の距離情報は、第1距離計測および第2距離計測によって既に取得されている距離情報を用いて算出されることになる。
【0063】
未取得位置の距離情報は、例えば、未取得位置周辺の計測位置における距離情報を補間して算出することができる。なお、補間演算は、未取得位置の被写体が存在する3次元空間を考慮して、3次元で行ってもよく、或いは2次元画像(例えば基準画像MG)上の平面空間で行ってもよい。また、予め用意した補間テーブルを参照して補間演算を行ってもよい。
【0064】
そして、ステップSP16では、立体画像生成部16によって、視差情報に基づいて、基準画像から立体画像が生成される。生成された立体画像は、撮像装置1Aの表示部4において表示される。また、撮像装置1Aは、生成した立体画像を外部に出力してもよい。
【0065】
[1−4.対応点探索処理]
ここで、ステップSP12およびステップSP14において、距離計測の際に実行される対応点の探索処理について説明する。図15は、画像を構成する画素を分割して、サブピクセルを設定する様子を示す図である。なお、図15は、基準画像MGの一部を拡大した図であり、当該図15には、画像内の1つの画素NPを横方向に3分割して、単位画素あたり、3つのサブピクセルBPを設定する様子が示されている。
【0066】
なお、上述のように、本実施形態の撮像装置1Aでは、主撮像部MCおよび副撮像部SCからは、異なる精度の画像が取得される態様であるため、一般的な対応点探索を実施するだけでは、正確に対応点を特定できない可能性が高い。そこで、撮像装置1Aでは、対応点の特定を精度良く行うために、対応点の探索数を増やして対応点探索処理を実行する。詳細は、後述する。
【0067】
対応点の探索手法としては、例えば、基準画像MGにおいて探索窓(ウインドウ)を設定し、当該探索窓に対応する参照画像SG上の領域を求めることによって、対応点を特定する手法を採用することができる。
【0068】
具体的には、基準画像MGにおいて、計測位置として設定された領域(計測領域)に含まれる画素、または計測位置として設定された画素を注目点とし、当該注目点を中心とする探索窓(ウインドウ)を設定し、当該探索窓を参照画像SG上でシフトさせつつ、相関値を算出する。そして、当該相関値に基づいて、参照画像SG上での探索窓の対応位置を取得し、探索窓の注目点に対する参照画像SG上の対応点を特定する。このような対応点の特定は、第1距離計測および第2距離計測において、計測位置として設定された画素(計測対象画素)ごとに行われる。
【0069】
なお、相関値の算出方法としては、例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)法、SSD(Sum of Squared intensity Difference)法(2乗残差法)、NCC(Normalized cross Correlation)法(正規化相互相関法)等の比較する画像間の画素の輝度値を用いて相関値を算出する方法を用いてもよい。また、相関値の算出方法として、例えば、位相限定相関法(POC法)、位相差解析法(PSA法)等の比較する画像間の位相情報を用いて相関値を算出する方法を用いてもよい。
【0070】
また、基準画像MGを取得する主撮像部MCがズーム撮影機能を有している場合において、基準画像MGがズーム撮影機能を利用して撮影されたときは、ユーザ(使用者)は、被写体の形状を精度良く表した立体画像の生成を希望していると考えられる。しかし、主撮像部MCがズーム撮影機能を有している場合において、ズーム撮影機能を利用して基準画像MGを撮影したとき等、基準画像MGと参照画像SGとでは、互いに共通する領域における画像の解像度が異なるため、距離計測の計測点数が少なくなり得る。
【0071】
そこで、撮像装置1Aでは、基準画像MGおよび参照画像SGのうち、どちらかの画像における各画素をサブピクセルに分割して(図15参照)、対応点の特定が行われる。
【0072】
具体的には、参照画像SGにおいて、基準画像MGと同じ領域を切り出したときに、切り出された画像が、基準画像MGに比べて解像度の少ない画像であるとする。
【0073】
このような場合において、基準画像MGを基準にして参照画像SGに対して対応点探索を実施するときは、参照画像SGにおける画素をサブピクセルに分割してサブピクセル単位で対応点探索を実施する。一方、参照画像SGを基準にして基準画像MGに対して対応点探索を実施するときは、参照画像SG上の計測点を増やすために、参照画像SGの画素をサブピクセルに分割する。そして、参照画像SG上の注目点をサブピクセル単位で設定して、対応点探索数を増やして、対応点探索を実施する。
【0074】
このように、画素をサブピクセルに分割して、対応点の特定処理を行うことによれば、距離計測の計測位置を増やすことができるので、使用者が撮影対象とした主被写体を、高精細に表現した立体画像を生成することが可能になる。
【0075】
以上のように、撮像装置1Aは、撮影領域における被写体までの距離計測を、撮影領域に設定された予備計測位置において行って、距離情報を取得する第1距離計測部12と、第1距離計測部12で取得された距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための本計測位置を撮影領域において設定する設定手段と、本計測位置において距離計測を行って、距離情報を取得する第2距離計測部13と、第1距離計測部12および第2距離計測部13で取得された距離情報に基づいて、視差情報を生成する視差情報生成部15と、視差情報に基づいて立体画像を生成する立体画像生成部16とを備えている。
【0076】
このような撮像装置1Aによれば、撮影シーンに応じた距離計測を行うことができるので、撮影シーンに応じた立体表示を実現することが可能になる。また、このように予備計測の結果を利用して、本計測位置を設定することによれば、無駄な計測位置において距離計測を行うことなく、撮影シーンに即した立体画像を効率的に生成することが可能になる。
【0077】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る撮像装置1Bでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。なお、撮像装置1Bは、上記相違点以外は、撮像装置1Aとほぼ同様の構造および機能(図1〜5参照)を有しており、共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0078】
上述のように、本実施形態の撮像装置1Bでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。図16は、撮影領域において設定された予備計測位置QPを示す図である。
【0079】
具体的には、撮像装置1Bの予備計測は、図16に示されるように、撮影領域の中心付近に予備計測位置QPを多く設定して行われる。すなわち、撮影領域の中心付近では密に予備計測が行われ、中心から離れるに従って粗い予備計測が行われる。
【0080】
そして、予備計測の結果、粗い予備計測を行った領域において、被写体までの距離が近距離である予備計測位置(近距離計測位置)が検出されたときは、当該予備計測位置の周辺に計測位置を多数設定して、本計測を行う。
【0081】
このように、撮像装置1Bでは、粗い予備計測を行った領域において、近距離の被写体が検出されたときは、本計測において、当該近距離の被写体が存在すると想定される領域において計測位置を追加設定し、密な距離計測を行う。
【0082】
これによれば、撮影領域の中から、近距離の被写体に関する距離情報を効率的に取得することが可能になるとともに、近距離の被写体を高精細に表現した立体画像を生成することが可能になる。
【0083】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る撮像装置1Cでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。なお、撮像装置1Cは、上記相違点以外は、撮像装置1Aとほぼ同様の構造および機能(図1〜5参照)を有しており、共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0084】
上述のように、本実施形態の撮像装置1Cでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。図17は、予備計測位置における計測結果を示す図である。図18は、設定された本計測位置を示す図である。図19は、粗領域および密領域の設定例を示す図である。
【0085】
具体的には、撮像装置1Cの予備計測は、第1実施形態と同様(図9参照)、予備計測位置QPを、基準画像MG内において所定間隔ごとに一様に設定して行われる。
【0086】
そして、本計測を行う本計測位置は、各予備計測位置を基準にして、予備計測位置ごとの距離情報を反映して設定される。
【0087】
具体的には、まず、予備計測位置ごとに予備計測位置を囲む閉領域(「本計測領域」とも称する)が設定される。本計測領域の大きさは、設定される本計測領域の基準となる予備計測位置の距離情報に基づいて決定される。より詳細には、被写体までの距離が近距離の予備計測位置(近距離計測位置)については、本計測領域が相対的に大きく設定され、被写体までの距離が遠距離の予備計測位置(遠距離計測位置)については、本計測領域が相対的に小さく設定される。
【0088】
そして、近距離計測位置に基づく本計測領域内には、本計測位置を密に設定し、遠距離計測位置に基づく本計測領域内には、本計測位置を粗く設定して、第2距離計測が行われる。
【0089】
例えば、撮影領域に設定された予備計測位置QPにおいて予備計測が行われた結果、図17のように、黒く塗りつぶされた黒丸で表される近距離計測位置FPと、白抜きの白丸で表される遠距離計測位置WPとが検出されたとする。この場合、図18に示されるように、近距離計測位置の周辺には、大きな本計測領域が設定されるとともに、当該本計測領域内には、本計測位置HPが密に設定される。なお、図18において、本計測領域内の本計測位置は、黒く塗りつぶされた黒三角で表される。一方、遠距離計測位置の周辺には、小さな本計測領域が設定されて、当該本計測領域内では、本計測位置が粗く設定されるが、図18では、対比を容易にするため、遠距離計測位置に基づいて設定される本計測位置を不図示としている。
【0090】
本計測位置の粗密の設定に際して、予備計測で得られた距離情報を粗領域および密領域の大きさに反映させない場合、粗領域LR(斜線ハッチング領域)および密領域MRは、図19のように設定されることになる。この場合、本来、密に計測位置を設定して距離情報を取得したい近距離の領域が遠距離側に含まれてしまう可能性が高くなり、滑らかな形状を計測することが困難になる。
【0091】
これに対して、本実施形態のように、粗領域に対して密領域を大きく設定することにより、近距離の被写体が存在する可能性が高い領域に対して優先的に本計測位置を割り当てることによれば、近距離の被写体の形状を正確に表現した立体画像を生成することが可能になる。
【0092】
なお、密領域および粗領域の大きさは、距離情報に対応した粗領域および密領域の大きさを表すテーブルを予め保持し、当該テーブルを用いて設定するようにしてもよい。
【0093】
このように、撮像装置1Cでは、撮影領域において粗く一様に行う予備計測によって、近距離計測位置が存在した場合は、当該近距離計測位置の周辺に大きな本計測領域が追加して設定され、当該本計測領域において密な距離計測が行われる。
【0094】
これによれば、撮影領域の中から、近距離の被写体に関する距離情報を効率的に取得することが可能になるとともに、近距離の被写体を高精細に表現した立体画像を生成することが可能になる。
【0095】
<4.第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る撮像装置1Dでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。なお、撮像装置1Dは、上記相違点以外は、撮像装置1Aとほぼ同様の構造および機能(図1〜5参照)を有しており、共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
上述のように、本実施形態の撮像装置1Dでは、計測位置の設定手法が、第1実施形態の撮像装置1Aとは異なる。図20は、第1距離計測および第2距離計測の際に実行される動作のフローチャートである。
【0097】
撮像装置1Dの予備計測は、基準画像MG(または参照画像SG)の中から物体領域を抽出し、抽出した物体の中心付近の代表点を予備計測位置に設定して行われる。そして、代表点における予備計測によって、被写体までの距離が近距離である予備計測位置(近距離計測位置)が特定された場合、当該予備計測位置の周辺に本計測位置を追加で密に設定して本計測を行う。
【0098】
より詳細には、図20に示されるように、ステップSP21において基準画像MGから物体領域の抽出が行われる。物体領域の抽出手法としては、平均値シフト法、グラフカット法等、一般的な領域抽出手法が用いられる。
【0099】
ステップSP22では、抽出された物体領域の中心付近において、代表点が設定される。近距離の物体と遠距離の物体とが重なっている可能性の高い物体の境界付近では、対応点探索処理の精度が低下するため、このように物体領域の境界を避けて物体領域の中心付近に代表点を設定することによれば、第2距離計測の際に実行される対応点探索処理の精度を向上させることができる。
【0100】
次のステップSP23では、設定された代表点を予備計測位置として、第1距離計測(予備計測)が行われる。
【0101】
ステップSP24では、予備計測の結果に基づいて、本計測を行うか否かの判定が行われる。
【0102】
具体的には、物体領域が大きく、かつ当該物体領域の代表点における距離が近距離である場合は、物体領域内に密に本計測位置を設定して、第2距離計測を行う動作工程(ステップSP25)に移行させる。
【0103】
一方、物体領域が小さい場合は、密に計測位置を設定して細かく対応点探索を行っても、対応点探索処理の精度が低いと考えられることから、第2距離計測を回避し、代表点における距離情報を当該物体領域の距離情報とする。また、代表点における距離が遠距離である場合も、第2距離計測を回避し、代表点における距離情報を当該物体領域の距離情報とする。
【0104】
このように、撮像装置1Dでは、取得された画像から物体領域を抽出し、抽出された物体に代表点を設定して、当該代表点において予備計測を行う。そして、予備計測結果および物体領域の大きさに基づいて、第2距離計測を行うか否かを判定する。これによれば、効率的に距離情報を取得することが可能になるとともに、近距離の比較的大きい物体の形状を正確に表現した立体画像を生成することができる。
【0105】
また、代表点における距離が遠距離である場合に、代表点における距離情報を当該物体領域の距離情報とする(物体領域内は、代表点における距離情報で埋める)ことによれば、遠距離の物体領域内において立体感が生じるのを防ぐことができるので、違和感の少ない立体画像を生成することが可能になる。
【0106】
なお、ここでは、基準画像MGの中から物体領域を抽出する場合について例示したが、抽出される対象は、物体のみならず人体等を含む被写体であればよく、撮像装置1Dでは、基準画像MGから被写体領域の抽出が行われるとも表現できる。
【0107】
<5.第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る撮像装置1Eでは、第1距離計測と第2距離計測とがそれぞれ、異なるタイミングで取得される画像に対して行われる。なお、撮像装置1Eは、撮像装置1Aとほぼ同様の構造および機能(図1〜5参照)を有しており、共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0108】
上述のように、本実施形態の撮像装置1Eでは、第1距離計測と第2距離計測とがそれぞれ、異なるタイミングで取得される画像に対して行われる。図21は、撮像装置1Eにおいて実行される、第1距離計測および第2距離計測の動作フローチャートである。
【0109】
具体的には、図21に示されるように、ステップSP31では、撮影情報取得部11によって、ステレオ画像が取得される。
【0110】
次のステップSP32では、第1距離計測部12による第1距離計測が終了したか否かが判定される。第1距離計測が終了している場合は、動作工程は、ステップSP35に移行される。ステップSP35に移行した場合の処理内容は、後述する。
【0111】
一方、第1距離計測が終了していない場合は、動作工程は、ステップSP33に移行される。
【0112】
ステップSP33では、第1距離計測が行われる。本実施形態の第1距離計測は、上記第1実施形態から第4実施形態で示される計測手法のいずれかを採用して行われる。
【0113】
ステップSP34では、第1距離計測の結果に基づいて、本計測位置が設定される。本計測位置の設定手法としては、ステップSP33の第1距離計測で採用した実施形態の設定手法が採用される。
【0114】
本計測位置の設定が終了すると、動作工程は、ステップSP31に移行され、再びステレオ画像の取得が実行される。
【0115】
新たなステレオ画像が取得されると、動作工程は、ステップSP32を経て、ステップSP35へと移行される。
【0116】
ステップSP35では、ステップSP34で設定された本計測位置において、新たに取得されたステレオ画像を用いた第2距離計測が行われる。また、当該第2距離計測では、予備計測位置においても、新たに取得されたステレオ画像を用いて距離計測が行われる。
【0117】
ステップSP36では、第2距離計測の結果に基づいて、予備計測位置における距離情報が変化したか否かが判定される。予備計測位置における距離情報が変化したか否かは、過去に取得されたステレオ画像を用いた第1距離計測または第2距離計測の計測結果と、現在のステレオ画像を用いた第2距離計測の計測結果とを比較して行われる。
【0118】
ステップSP36において、距離情報が変化してないと判定された場合、動作工程は、ステップSP31に移行され、次のステレオ画像が取得される。一方、距離情報が変化したと判定された場合、動作工程は、ステップSP37に移行される。
【0119】
ステップSP37では、本計測位置の変更(再設定)が行われる。例えば、或る予備計測位置において計測される距離が、近距離から遠距離へと変化した場合は、当該予備計測位置の周囲に設定した本計測位置を本計測の対象から除外する処理が行われる。一方、或る予備計測位置において計測される距離が、遠距離から近距離へと変化した場合は、当該予備計測位置の周辺に新たな本計測位置を設定する処理が行われる。
【0120】
ステップSP37が終了すると、動作工程は、ステップSP31に移行され、新たに取得されるステレオ画像を用いて、新たな本計測位置において第2距離計測が行われる。
【0121】
このように、撮像装置1Eでは、最初に取得されるステレオ画像に対して、第1距離計測が行われ、第1距離計測の結果に基づいて本計測位置が設定される。そして、設定された本計測位置に基づいて、順次に取得されるステレオ画像ごとに第2距離計測が行われる。これによれば、過去に行われた第2距離計測の計測位置の情報を用いて、次のステレオ画像に対する第2距離計測が行われるので、順次に取得されるステレオ画像ごとに本計測位置を全て設定する処理を省略することができ、処理量を低減することが可能になる。
【0122】
<6.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0123】
例えば、上記各実施形態の第1距離計測では、距離計測の手法として、ステレオ計測による手法が採用されていたが、これに限定されず、例えば、TOF(Time of Flight)手法またはレーザ光を用いて距離計測を行う手法を採用してもよい。
【0124】
また、上記各実施形態における、予備計測位置および本計測位置の設定に際して、他の情報を反映させてもよい。
【0125】
例えば、2次元画像(例えば基準画像MG)から被写体の距離情報を推定し、当該推定距離情報を反映させて、予備計測位置または本計測位置を変更してもよい。或いは、2次元画像における色情報に基づいて、色ごとに領域分割を行い、色および領域の大きさに応じて、予備計測位置または本計測位置を変更するようにしてもよい。
【0126】
また、上記第1実施形態から第5実施形態において、一組のステレオ画像に対する第1距離計測および第2距離計測において設定される計測位置は、その総数が固定数以下となるように設定されることが好ましい。ここで、上記固定数は、順次に取得されるステレオ画像の取得間隔以内に、各計測位置において距離計測を行って立体画像の生成を行うことが可能な計測位置の数である。
【0127】
これによれば、順次に取得される各ステレオ画像に対して立体画像を確実に生成することが可能になる。
【0128】
また、上記各実施形態では、或る閾値以下の距離を近距離と称し、当該閾値よりも大きい距離を遠距離と称していたが、これに限定されず、取得される画像(例えば基準画像MG)内における被写体の相対的な位置関係から、近距離および遠距離を定めてもよい。
【0129】
また、上記各実施形態における視差情報生成部15では、視差情報の生成に際して、次のような処理を実行してもよい。
【0130】
具体的には、予備計測位置の周辺に本計測位置を設定して、本計測を行った場合において、隣接する計測位置(予備計測位置と本計測位置、または本計測位置同士)における距離の差分が、所定の閾値よりも小さいときは、隣接する当該計測位置同士を統合して視差情報を生成してもよい。なお、隣接する当該計測位置の距離情報としては、例えば、隣接する計測位置間の平均値を用いればよい。
【0131】
これによれば、同じ被写体において微小な立体感が生じるのを防ぐことができるので、違和感の少ない立体画像を生成することが可能になる。
【0132】
また、隣接する当該計測位置同士を統合して視差情報を生成する上述の処理において、計測位置における距離が遠距離であるときは、隣接する当該計測位置の距離情報として、既定値を用いてもよい。
【0133】
これによれば、遠方の同じ被写体において微小な立体感が生じるのを防ぐことができるので、違和感の少ない立体画像を生成することが可能になる。
【0134】
また、計測位置を密に設定して距離計測を行った領域(例えば、図10,16における中心部分、または図13における下段部分等)における距離情報が遠距離の情報であった場合、データの間引き処理によって密の計測データから粗い計測データを生成し、当該粗い計測データを用いて視差情報を生成してもよい。
【0135】
これによれば、遠距離の被写体において立体感が生じるのを防ぐことができるので、違和感の少ない立体画像を生成することが可能になる。
【0136】
また、上記第5実施形態におけるステップSP37では、本計測位置の変更が行われているが、さらに予備計測位置をも変更してもよい。例えば、現在のフレームと過去のフレームとの間でマッチング処理を行って動きベクトル(オプティカルフロー)を求め、求められた動きベクトルに基づいて被写体の位置ズレ量を推定し、当該位置ズレ量に応じて予備計測位置を移動させてもよい。
【0137】
また、上記第1実施形態では、本計測位置を定めた複数の計測パターンの中から、1つの計測パターンを選択していたが、本計測位置の設定方針を複数有するようにして、複数の設定方針から選択された1の設定方針に沿って、本計測位置を設定する態様であってもよい。
【0138】
本計測位置の設定方針としては、例えば、撮影領域の中心付近に本計測位置を密に設定し、撮影領域の端付近では、本計測位置を粗に設定する方針が想定される。当該方針に沿って本計測位置が設定されると、図10に示されるような計測位置の配置となる。なお、当該設定方針は、例えば、撮影領域における中心付近の予備計測位置における距離が、他の予備計測位置における距離に比べて近距離であった場合に選択される。
【0139】
また、本計測位置の別の設定方針としては、例えば、撮影領域の下段部および上段部よりも中段部において本計測位置を密に設定する方針が想定される。当該方針に沿って本計測位置が設定されると、図11に示されるような計測位置の配置となる。なお、当該設定方針は、例えば、撮影領域における中段部の予備計測位置の距離が全般的に近距離であった場合に選択される。
【0140】
また、上記各実施形態では、撮像装置1A〜1Eにおいて立体画像が生成される場合について例示したが、これに限定されない。具体的には、一般的なコンピュータによって構成される画像処理装置において、上記撮像装置1A〜1Eの画像処理部3を実現してもよい。この場合、1組のステレオ画像は、画像処理装置としての当該コンピュータに対して、外部から入力されることになる。
【0141】
また、第1距離計測部12と第2距離計測部13とを有する撮像装置1A〜1Eは、被写体までの距離を計測する距離計測装置とも称せられる。
【符号の説明】
【0142】
1A〜1E 撮像装置
3 画像処理部
11 撮影情報取得部
12 第1距離計測部
13 第2距離計測部
14 カメラ情報記憶部
15 視差情報生成部
16 立体画像生成部
BG 背景
PS 主被写体
MG,MG1 基準画像
PT10〜PT14 計測パターン
RP 計測位置
HP 本計測位置
QP 予備計測位置
FP 近距離計測位置
MR 密領域
LR 粗領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影領域における被写体までの距離計測を、前記撮影領域に設定された第1計測位置において行って、第1距離情報を取得する第1計測手段と、
前記第1距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための第2計測位置を前記撮影領域において設定する設定手段と、
前記第2計測位置において距離計測を行って、第2距離情報を取得する第2計測手段と、
第1距離情報および第2距離情報に基づいて、視差情報を生成する視差情報生成手段と、
前記視差情報に基づいて立体画像を生成する画像生成手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記第1距離情報に基づいて、前記第2計測位置を定めた複数の計測パターンの中から、1つの計測パターンを選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったとき、当該第1計測位置の周辺に前記第2計測位置を設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記第1計測位置を囲む閉領域において前記第2計測位置を設定し、
前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域を比較的大きい領域とし、第1計測位置において計測された被写体までの距離が遠距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域を比較的小さい領域とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定手段は、第1計測位置において計測された被写体までの距離が近距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域内において前記第2計測位置を密に設定し、第1計測位置において計測された被写体までの距離が遠距離であったときは、当該第1計測位置に関する閉領域内において前記第2計測位置を粗く設定する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記被写体についてのステレオ画像を取得する画像取得手段をさらに備え、
前記第1計測手段および前記第2計測手段は、前記ステレオ画像を用いて距離計測を行う請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記被写体についてのステレオ画像を取得する画像取得手段をさらに備え、
前記画像取得手段は、第1ステレオ画像と、当該第1ステレオ画像よりも時間的に後に撮影された第2ステレオ画像とを取得し、
前記第1計測手段は、前記第1ステレオ画像を用いて距離計測を行って、第1距離情報を取得し、
前記第2計測手段は、前記第1ステレオ画像を用いた距離計測によって取得された第1距離情報に基づいて設定される第2計測位置において、前記第2ステレオ画像を用いた距離計測を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第2計測手段は、前記第2ステレオ画像を用いた距離計測を、前記第1計測位置においても行って、第1距離情報を新たに取得し、
前記設定手段は、新たに取得された第1距離情報に基づいて、前記第2計測位置を再設定する請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記第1ステレオ画像および前記第2ステレオ画像それぞれに含まれる時間的に前後するフレーム間で被写体の動きベクトルを算出し、当該動きベクトルに基づいて前記第1計測位置を変更する請求項7または請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1計測位置は、前記ステレオ画像に含まれる1の画像から抽出された被写体領域において、当該被写体領域の中心付近に設定される請求項6から請求項9のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1計測位置および前記第2計測位置の総数は、1の前記ステレオ画像を用いた距離計測において、所定数以下となるように設定される請求項6から請求項10のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記設定手段は、撮影領域における中心付近の第1計測位置における距離が、他の第1計測位置における距離に比べて近距離であった場合、撮影領域の中心付近において第2計測位置を密に設定し、撮影領域の端付近において、第2計測位置を粗く設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記設定手段は、前記ステレオ画像に含まれる1の画像を用いて被写体の距離情報を推定し、推定された距離情報を反映して、第2計測位置を変更する請求項6から請求項11のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項14】
撮影領域における被写体までの距離計測を、前記撮影領域に設定された第1計測位置において行って、第1距離情報を取得する第1計測手段と、
前記第1距離情報に基づいて、撮影領域における被写体までの距離計測を追加して行うための第2計測位置を前記撮影領域において設定する設定手段と、
前記第2計測位置において距離計測を行って、第2距離情報を取得する第2計測手段と、
を備える距離計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−107971(P2012−107971A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256576(P2010−256576)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】