画像処理装置
【課題】画像処理の性能を向上させる。
【解決手段】
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する。
【解決手段】
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル化された画像(指紋、印影、図形、文字など)の解析や認識等のための画像処理を画像処理装置(すなわち、電子計算機、電子交換機、通信制御装置、ICカード、画像認識装置、画像照合装置、画像検査装置などにおけるハードウェア及び/又はソフトウェア)により行う場合、性能向上(照合精度向上、処理量削減,データ量削減)のための画像処理の手段を1つ以上備える画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象とする画像の例として、画像が指紋の場合を説明する。指紋は、指の隆線の紋様である。なお、谷線(隆線と隆線の間)は隆線で定まるので、隆線の代わりに谷線の描く紋様を指紋として用いてもよい。指紋として扱う線を指紋線と呼ぶ。本人確認のための指紋の入力装置は、撮像装置(例えば、CCD(電荷結合素子)カメラ)から入力する方式として、プリズム方式(例えば、非特許文献1参照)、及びホログラム方式(例えば、非特許文献2参照)などがある。
【0003】
撮像装置から入力されたアナログ情報の指紋画像は、A/D(アナログ/ディジタル)変換器により、ディジタル化された指紋の濃淡画像に変換される。この指紋の濃淡画像は、画像メモリの画素のアドレスである座標(X,Y)と、画像メモリの各画素アドレスの構成要素である画素の輝度により表される。X軸、Y軸の設定方法は任意である。指紋の凹凸を直接に二値画像に変換して、指紋画像としてもよい。
【0004】
指紋の濃淡画像は、平滑化や隆線の方向などにより補正を行える。指紋の特徴を表す特徴点としては、端点、分岐点、交差点がある。ディジタル化された指紋の濃淡画像の特徴点は、指紋画像を二値化し、更に細線化して、特徴点を表す画素の範囲(例えば、特徴点を中心とする3×3個の画素集合)のパターンと同じパターンが細線化画像に存在することにより検出できる(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
指紋の照合において、あらかじめ照合のための情報をメモリに登録しておく指紋を登録指紋(登録画像または登録指紋画像)、登録指紋との一致性を照合する指紋を検査指紋(検査画像または検査指紋画像)と呼ぶ。登録指紋と検査指紋の照合方式として、特徴点を用いる方式、隆線の方向を用いる方式、及び登録指紋と検査指紋の原画像同士のパターンマッチングによる方式などが知られている。細線化画像同士のパターンマッチングによる方式として、特許文献1には、登録指紋の細線化画像と検査指紋の細線化画像の重ね合わせによる照合方式が記述されている。
【0006】
平滑化は、指紋画像の雑音の影響を減らすための処理であり、例えば、任意の画素の近傍画素の値を用いる局所加重平均フィルタがあり、非特許文献4などに述べられている。
【0007】
二値画像の細線化は、線の対象とする種類の画素について、大部分(大部分とは、半分以上から全部までの意味とし、理想的には全部)の線幅を1画素とすることであり、対象とする種類の画素は、黒画素又は白画素のいずれか一方を選択できるが、黒画素として以後記述する。濃淡画像を二値化して、二値画像の細線化を行う方式として、黒画素の集合内で、外側にある黒画素を、黒画素の連結性(4連結又は8連結)を保持して順次に削除して行くヒルディッチ(Hilditch)の細線化方式などがある(例えば、非特許文献5、6、7参照)。非特許文献8においても濃淡画像又は二値画像の細線化方式が述べられている。
【0008】
濃淡画像を二値化して、二値画像にする方式は、例えば非特許文献9などに述べられている。二値化の方法として、P一タイル法が知られており、これは、二値化した後の対象画素(黒画素と白画素のいずれか一方)の全体の画素数に対する割合が、あらかじめ定めた値と等しくなるように、二値化のしきい値を定める方法であるが(例えば、非特許文献10参照)、この方法は、画像を部分領域に分割して二値化する場合には直接に適用できない。
【0009】
指紋の入力では、検査指紋と登録指紋で、位置ずれ(回転および平行移動)が生じるので、検査指紋と登録指紋の照合では、両指紋についての位置合わせが必要となる。位置合わせ方式(回転と平行移動)としては、隆線方向を用いる方式、代表特徴点と周辺特徴点による方式、平行移動のみを可能な範囲について試行錯誤し、最も一致数の多い場合を最終設定位置とする方式などが知られている。位置合わせのときに必要な座標変換や幾何学的変換の公式は、例えば、非特許文献11に述べられている。
【0010】
照合のときの位置合わせにおいて、指紋画像の近似的中心点を求めることが有用である。特許文献2では、隆線の勾配が急な方向を逐次に探索して中心点を求める方式が述べられている。非特許文献12においては、長方形の各辺の平行線との交点数を用いて、逐次に中心位置に接近する方式が述べられている。非特許文献13においては、走査線ごとに通過する隆線数を計数して線数の分布を求めている。
【0011】
非特許文献14では、登録指紋の細線化画像(又は細め処理を行った画像)から取得した黒画素と検査指紋の二値画像(又は細め処理を行った画像)の照合による方式を提案しており、その方式では、二値画像同士で照合を行う方式よりも処理量及びメモリ量が削減されている。
【0012】
登録情報のメモリヘの保存では、記憶量をできるだけ少なくする必要がある。本発明では、細め処理された二値画像(線図形)を登録情報として記憶する必要がある。線図形の記憶方法として、非特許文献15が知られているが、指紋のような複雑な場合への適用は困難である。
【0013】
【特許文献1】特開昭63−132386号公報、「指紋照合方法」.
【特許文献2】特公昭58−55548号公報、「図形中心位置決定方法」.
【非特許文献1】清水ほか著「プリズムを用いた指紋情報検出方法−全反射法と光路分離法の比較−」、電子通信学会論文誌、Vol.J68−D、No.3、pp.414−415(1985年).
【非特許文献2】井垣ほか著「ホログラフィック指紋センサを用いた個人照合装置」、電子情報通信学会技術研究報告、PRU87−31、pp.27−33、(1987年).
【非特許文献3】笹川ほか著「低品質画像への対応能力を高めた個人確認用指紋照合装置」、電子情報通信学会論文誌,Vol.J72−D−ll,No.5,pp.707−714(1990年).
【非特許文献4】高木・下田(監修)「画像解析ハンドブック」、pp.538−548、東京大学出版会(1991年).
【非特許文献5】田村(監修)「コンピュータ画像処理入門」、総研出版、pp.80−83(1985年).
【非特許文献6】田村著「多面的画像処理とそのソフトウェア・システムに関する研究」、電子技術総合研究所研究報告,pp.25−64、835号(1984年2月)
【非特許文献7】森ほか著「画像認識の基礎[1]」、pp.65−71、オーム社(1986年).
【非特許文献8】小林著「画像の細線化と特徴点抽出」、信学技報、PRU90−149、pp.33−38(1991年).
【非特許文献9】森ほか著「画像認識の基礎[1]」、PP.37−47、オーム社(1986年).
【非特許文献10】高木・下田(監修)「画像解析ハンドブック(東京大学出版会、1991年発行)」の503ページの記述.
【非特許文献11】プラストックほか著、郡山訳「コンピュータグラフィックス」、pp.84−88、マグロウヒルブック(1987年).
【非特許文献12】伊藤ほか著「中心点に着目した指紋画像の一分類法」、信学技報、PRU89−79、pp.15−22(1989年).
【非特許文献13】「指紋照合における基準点抽出に関する一検討」、昭和62年電子情報通信学会情報・システム部門全国大会、No.125.
【非特許文献14】小林著「指紋画像の照合方式の考察」、信学技報、PRU91−45、電子情報通信学会、pp.25−30(1991年7月).
【非特許文献15】フリーマンのチェーン符号による方法(例えば安居院・中嶋著「画像情報処理」、pp.113−114、森北出版(1991年).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
画像の解析や認識の性能を向上するために、処理量の削減、認識精度の向上、及び登録情報量の削減を図る。
例えば、従来、指紋画像の照合で、処理量の大きい処理は、指紋線の復元、細線化、及び照合の位置合わせである。画像の特徴点(端点、分岐点、交差点)による照合方式では、指紋線の復元のための処理量が大きく、かつ特徴点が不明確な場合や特徴点数が少ない場合の照合が困難である。登録指紋と検査指紋の原画像同士のパターンマッチングによる照合方式では、押捺時の指紋の隆線の幅には、指の圧力や乾燥状態により変動があるために、誤識別が発生しやすく、しかも、登録情報の格納のための記憶量が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする二値画像の2つの画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する手段を備えることを特徴としている。
【0016】
また、請求項2に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、分割された部分位置合わせ区間ごとに順次に照合処理を行って最終判定が最初に一致と判定できたときに、残った部分位置合わせ区間における照合は行わずに、両画像は一致と判定する手段を備えることを特徴としている。
【0017】
また、請求項3に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、各部分位置合わせ区間内の1つの移動位置についての照合で、一方の画像の対象画素の集合を連続に分離して順次に他方の画像の対象画素との一致性を調べる場合に、各分離された対象画素集合のチェック終了ごとに、該分離された対象画素集合ごとの一致度チェック条件により途中までの一致の度合いを判定し、不一致であるときは、該移動位置での照合は不一致であると判定し、該移動位置についての残りの部分についての照合を放棄する手段を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4に記載の構成にあっては、二値画像である登録画像と検査画像に対して、登録画像に細め処理を行った画像から登録情報を作成する手段と、検査画像の黒画素数の全体画素数に対する比率を黒画素比率規定条件内に設定する手段と、登録情報と検査画像の一致の度合いが一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段と、登録情報と検査画像の不一致の度合いが不一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段を備え、照合における一致性の判定として、一致の度合いが一致度規定条件内にあり、かつ不一致の度合いが不一致度規定条件内にあることを、登録画像と検査画像の一致性判定で合格するために必要な条件とする手段を備えることを特徴としている。
【0019】
また、請求項5に記載の構成にあっては、二値画像である検査画像と登録画像について、検査画像の黒画素と登録画像の黒画素を比較する照合処理手段の実行中に、登録画像の任意のアドレスAが黒画素であり、検査画像のアドレスAは白画素のときに、検査画像のアドレスAの近傍の規定範囲のアドレスを調べて黒画素があるときは、登録画像のアドレスAの黒画素は検査画像の黒画素と近似的に一致と判定し、かつ、以後の該検査画像と該登録画像の照合において、検査画像の近似的に一致と判定した黒画素が、登録画像のアドレスA以外の黒画素と重複して一致と判定することを排除する手段を備えることを特徴としている。
【0020】
また、請求項6に記載の構成にあっては、複数の画像を入力して保持する手段を備え、任意の2つの画像の照合を行う手段を備え、入力された複数の画像について、規定の組み合わせで順次に2つを選択して一方を登録画像、他方を検査画像として照合を行って一致の度合いを記憶して行き,最も一致の度合いが良好と判定できたときの登録画像を、入力された複数の画像の内の登録画像として選択する手段を備えることを特徴としている。
【0021】
また、請求項7に記載の構成にあっては、任意数N個(N≧2)の登録画像の中から、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を発見するための照合処理を実行する場合に、登録画像と検査画像の位置合わせ区間については、元の位置合わせ区間はすべての分割範囲の和集合であるように分離し、1つの検査画像とN個の登録画像の照合を、位置合わせの各分割範囲について行うことを、1つの検査画像と一致する1つの登録画像が発見できるまで順次に行う手段を備えることを特徴としている。
【0022】
また、請求項8に記載の構成にあっては、2つの二値画像について、登録画像に対する登録処理手段の実行中に、登録画像の登録情報と、該登録画像の輝度を反転した画像である反転登録画像の登録情報を登録しておく手段を備え、次に、照合処理手段の実行中に、検査画像と登録画像による登録情報とを照合し、該検査画像の輝度を反転した画像である反転検査画像と、反転登録画像による登録情報とを照合し、これら2つの照合結果が、共に合格であることを、登録画像と検査画像は一致であると判定するために必要な条件とする手段を備えることを特徴としている。
【0023】
〔作用〕
画像処理の性能向上のための画像の品質向上は、二値化された画像の歪補正の手段(請求項5を参照)、黒画素の比率の一定化と一致の度合い及び不一致の度合いを照合の条件とすることによる手段(請求項4を参照)、入力された1つ以上の画像の相互の照合により得られる最良の画像を登録する手段(請求項6参照)、を選択的に利用することより解決する。
【0024】
画像処理の性能向上のための照合の処理量の削減は、部分位置合わせ区間を最初からm個(m≧1,mはあらかじめ定めた定数)まで照合して、その間の最大の一致の度合いが規定値以下のときは、不一致と判定する手段(請求項1を参照)、照合の一致性の判定を部分位置合わせ区間ごとに順次に行い、一致と判定できたときには全体でも一致と判定し、以後の部分位置合わせ区間については照合は行わない手段(請求項2を参照)、照合の一致性の判定を部分位置合わせ区間ごとに順次に行い、部分位置合わせ区間内の途中で一致の度合いが規定以上でないと判定できたときには、その部分位置合わせ区間内の残りの部分についての照合は行わないで次の部分位置合わせ区間の処理に行く手段(請求項3を参照)、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を任意数の登録画像の中から発見する処理を行う場合の照合処理量を削減するために位置合わせ区間を分割範囲に分割して照合を行うことを各登録画像との照合に順次に適用する手段(請求項7を参照)、を必要に応じて選択的に用いることにより、解決する。
【0025】
画像処理の性能向上のために照合で不一致の度合い(不一致部分率)の計算を不要としたい場合には、反転画像の情報も反転登録情報とし、照合時には反転登録画像登録情報と反転検査画像との照合も行う手段により解決する(請求項8を参照)。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、請求項と実施の形態で述べた1つ以上の手段を選択して適用することにより、画像処理の性能を向上できる効果がある。
【0027】
請求項1とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、最初からm番目(m=1,2,…)までの部分位置合わせ区間について照合した段階で、全体の位置合わせ区間の照合が不一致であると判定できる場合があるので、照合の処理量を削減できる効果がある。
請求項2とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、部分位置合わせ区間を単位とする照合で、全体での照合も一致と判定できる場合があるので、照合の処理量を削減できる効果がある。
【0028】
請求項3とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、部分位置合わせ区間内での1つの移動位置についての不一致判定を、登録情報の黒画素集合の途中までの照合で放棄できる場合があり、かつこのチェックは黒画素集合の分割の境界だけで行えばよいのでチェックによるオーバヘッドもなく、照合の処理量を削減できる効果がある。
請求項4において示した手段を実行する装置では、入力される濃淡画像の変動に対して、検査画像の黒画素の比率を一定化できるので、照合の判定の確実性を高める効果がある。
【0029】
請求項5とその実施の形態で記述した照合手段では、画像の歪による変動に対して、登録画像の黒画素の近傍の情報もチェックするので、画像の線の歪変動に対処できる効果がある。
請求項6とその実施の形態で記述した登録処理に係わる手段では、複数の入力画像の内から、登録画像としたときに最良の画像を選択できるので、照合のときの一致性を向上できる効果がある。
【0030】
請求項7とその実施の形態で記述した照合処理に係わる手段では、位置合わせの移動範囲を分割範囲に分割して照合を行うことを、各登録画像との照合に順次に適用することにより、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を、任意数の登録画像の中から発見する処理を行う照合処理量を、削減できる効果がある。
請求項8において示した手段を選択する場合では、不一致部分率の計算を省略できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
実施の形態として、画像が指紋(指紋画像と呼ぶことがある)である場合を述べる。図1は、指紋の識別システムの一構成例である。画像入力装置2から入力された指紋は、画像処理装置1において処理される。画像処理装置1は、ディジタル化された指紋の濃淡画像、二値画像、及び各種の処理を行った画像を必要時に格納するための画像メモリ4、1つ以上のCPUである中央処理装置5、及びプログラム、データ、データの集合であるファイルなどの情報の記憶のためのメモリ6を備えている。メモリ6に特性の異なる記憶装置(例えば、半導体メモリと磁気ディスク)が混在する場合には、それらの相互間における情報の移動は、必要に応じてハードウェアやソフトウェアで行うものとする。
【0032】
画像メモリ4とメモリ6は、格納情報による区分であり、同じ記憶装置で実現してもよい。画像入力装置2は、撮像装置7を備えている。A/D変換器3は、アナログ情報をディジタル情報に変換する(ここで、直接にディジタル画像が得られる種類の画像入力装置を用いる場合は、A/D変換器は不要である)。ディジタル化された指紋の濃淡画像である指紋画像を格納する画像メモリ4における画素アドレスは、X座標とY座標により(X,Y)と表す。画素アドレス(X,Y)を、画素(X,Y)、もしくは、単に、(X,Y)と表すことがある。1つの画像を格納する画像メモリ4の部分を画面と呼ぶ。画像メモリ4は、1つ以上の画面を持つことができる。画素アドレスを、単に、アドレスと呼ぶことがある。
【0033】
画像メモリ4の各画面は、画素で構成され、その全部の画素アドレスの範囲を0≦X≦Xh、0≦Y≦Yhとすると、この画素アドレスの範囲内で更に指定された処理範囲が処理の対象となる。画素アドレスや画素数を含む計算により、画素アドレスや画素数に小数点以下の数が発生する場合には、小数点以下を切り捨て、四捨五入、又は切り上げのいずれかにより処理する。画素の値は輝度で表わされる。輝度のどの部分が隆線となるかは、画像入力装置2の処理方式と画像処理装置1における画像の処理とに依存し、いずれの場合でも隆線に対応する輝度の特性を画像処理装置1に事前に設定しておくことにより処理が可能である。
【0034】
1つ以上の画素の集合を画素集合と呼ぶ。指紋の識別において、画像処理装置1のメモリ6に登録するために画像入力装置2から入力される指紋の画像を登録指紋(登録画像または登録指紋画像)、検査のために画像入力装置2から入力される指紋の画像を検査指紋(検査画像または検査指紋画像)と呼ぶ。黒画素と白画素に二値化された画像において、指紋線としては、黒画素と白画素のいずれか一方を対象画素の種類として選定でき、それらの内のいずれかが隆線と谷線にそれぞれ対応していればよい。本実施の形態では、黒画素を指紋線として扱う。
【0035】
細線化は、大部分の線幅が1画素となるようにする処理のことであるが、本実施の形態では、元の二値画像の黒画素による画像に含まれるように黒画素集合の線幅を部分的又は全体的に細めることを細め処理と呼び、細め処理の結果得られる画像を細め画像と呼ぶ。したがって、細線化は、本実施の形態における細め処理の1つの形態である。なお、線幅は、任意の線の縁の点を定めたときに、その線内を通って他の縁に達する最小距離(画素数)と定義する。したがって、線幅は、線の縁の位置ごとに定まる。
【0036】
図2(a)は、画像メモリ4に格納される画像のデータの状況を示している。画像10の画面には、画像入力装置2から入力された画像から得られてディジタル化された画像(二値画像又は濃淡画像)を格納する。画像11の画面には、例えば入力時の画像を格納しておき、画像10の処理に利用できる。処理手段の選定により、画像11が不要な場合もあり、その場合には、画像メモリ4は、画像10だけでよい。画像メモリ4からメモリ6に画像を転写してメモリ6で画像処理を行ってもよい。図2(b)は、メモリ6に格納されるデータ等の状況を示しており、プログラム及びデータ12には、本実施の形態を実現するためのプログラム及びデータを格納し、登録情報13には、登録指紋画像の登録情報をファイルに格納して保存する。
【0037】
画像の画素には、輝度があり、輝度に対応した値を定めておく。画素アドレス(X,Y)における輝度をf(X,Y)で表す。画像入力方式に依存して、画像メモリ4に設定された濃淡画像を二値化して得られる場合と、画像メモリ4に直接に二値画像が設定される場合とがある。
【0038】
濃淡画像は、画素の輝度が複数存在する画像であり、その輝度の変動範囲は任意の濃淡画像を本発明の対象とすることができるが、説明の便宜上、本実施の形態では、数値例を記述する場合には、輝度は0から255までとし、輝度0が最も輝度が低い状態(黒)であり、輝度255が最も輝度が高い状態(白)であり、黒と白の輝度の中間値も連続して存在しえるとする。
【0039】
二値画像は、黒画素と白画素のみで表わされるが、黒画素と白画素のそれぞれの輝度に対応した値を定めておくものとする。黒画素が輝度の高い部分であるか低い部分であるかは、対象とする画像とその入力方法などにより定まるものであり、いずれの場合に対応させてもよい。本実施の形態では、輝度の値を考慮する必要のある場合(例えば、輝度に関連した数値例の記述)には、二値画像では、黒画素の輝度は0、白画素の輝度は255の場合を例として記述する。
【0040】
画像メモリ4に格納する画像の論理的な原点及び座標軸は、物理的な画像メモリ4の画素の位置と独立に定めることができる。X軸とY軸の設定は自由であるが、説明の便宜上、X方向は左から右(すなわち、Xの増加方向)に水平方向、Y方向は上から下(すなわち、Yの増加方向)に垂直方向とする。
1つ以上の画素の集合を画素集合と呼ぶ。図3(a)は3×3画素(すなわち、3×3個の画素)による画素集合(3×3画素集合)の例であり、図3(b)は4×4画素による画素集合(4×4画素集合)の例、図3(c)は4×3画素による画素集合(4×3画素集合)の例である。
図3(a)において、画素{Pl,P3,P5,P7}をP0の4近傍画素と呼び、画素{P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8}をP0の8近傍画素と呼ぶ。
【0041】
本発明の実施の形態で、除算は、分母が0でないときにだけ行うこととする。主な用語と記法の定義を次に示す。ただし、これらの記法の一部は、実施の形態に現れない場合もある。
[m]:任意の数mの小数点以下切り捨てを表す。
||:任意の2つの数のそのままの値による連結を表す。例えば、1||0||1=101である。
〜:任意の2つの数(または記号)について、a〜bは、aからbまでの意味とし、かつ、a,bは共に該範囲に含まれることとする。
f(X,Y):画素のアドレス(X,Y)における輝度である。
【0042】
FA:指紋領域である。指紋境界は、指紋領域内として扱う。
(XC,YC):指紋の近似的中心点のアドレスである。
(XRC,YRC):登録指紋の近似的中心点のアドレスである。
(XTC,YTC):検査指紋の近似的中心点のアドレスである。
Rth:登録指紋画像(濃淡画像又は二値画像)から得られる登録指紋二値画像(第1画像)に、少なくとも細め処理を行うことにより得られた登録指紋変更画像である。
【0043】
Tth:検査指紋画像(濃淡画像又は二値画像)から得られる検査指紋二値画像(第2画像)に、少なくとも黒画素の比率の調整または細め処理を行った検査指紋変更画像である。
RA:登録指紋変更画像Rthにおける指紋領域内にある全部の黒画素のアドレス(X,Y)の集合である。RAは、RT(0)、RB(0)、及び非使用指紋領域内黒画素の和集合である。
【0044】
RT(0):RT(0)は、RAの部分集合である。RT(0)は,RAの小領域として、1つ以上の任意の数の分離した画素集合の領域を指定できる。
RT(0)をサブテンプレートと呼ぶ。サブテンプレートを抽出する画像の部分をサブテンプレート部分と呼ぶことがある。サブテンプレートは、画像の位置合わせに用いる(図4参照)。
【0045】
RB(0):RB(0)は、RAの部分集合であり、1つ以上の任意の数の分離した画素集合の領域を指定できる。RB(0)を非サブテンプレートと呼ぶ。非サブテンプレートを抽出する画像の部分を非サブテンプレート部分と呼ぶことがある。非サブテンプレートは、画像の位置合わせに用いない。RT(0)とRB(0)は重複しないように設定する(図4参照)。
【0046】
RT(S):登録指紋変更画像の座標軸を、任意に定めた点を中心にS度回転させたときのサブテンプレートRT(0)の黒画素のアドレス(X,Y)の集合である。
RT(S,H,V):登録指紋変更画像の座標軸を、任意の点(例えば、登録指紋の近似的中心点)を中心にS度回転後、水平移動H、垂直移動Vを行った後の座標軸におけるサブテンプレートRT(0)のアドレスの集合である。RT(0,0,0)=RT(0)、RT(S,0,0)=RT(S)である。(なお、移動位置を指定するS,H,Vの一組の値により、登録指紋変更画像を座標変換により移動した1つのパターンが定まる。)
【0047】
RB(S,H,V):登録指紋変更画像の座標軸を、任意の点(例えば、登録指紋の近似的中心点)を中心にS度回転後、水平移動H、垂直移動Vを行った後の座標軸における非サブテンプレートRB(0)のアドレスの集合である。RB(0,0,0)=RB(0)、RB(S,0,0)=RB(S)である。
Nlm:サブテンプレート一致黒画素数であり、登録指紋変更画像のサブテンプレートの黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とで一致した黒画素数を表す。
【0048】
Nlc:サブテンプレート総黒画素数であり、登録指紋変更画像のサブテンプレートの総黒画素数を表す。
N2m:非サブテンプレート一致黒画素数であり、登録指紋変更画像の非サブテンプレートの黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とで一致した黒画素数を表す。
N2c:非サブテンプレート総黒画素数であり、登録指紋変更画像の非サブテンプレートの総黒画素数を表す。
Nm:Nlm又はN2mを表す。カウンタNmは、Nmの計算のための計数器の値である。
Nc:Nlc又はN2cを表す。カウンタNcは、Ncの計算のための計数器の値である。
【0049】
部分領域:画像を複数の部分に分割したときの個々の領域である。
区間[a,b]:任意の値a,bについて、aからbまでの両端を含む区間を表す。
位置合わせ区間:2つの画像の位置合わせのために画像を移動する範囲(各方向別の移動区間の集合)を表し、{回転移動区間,水平移動区間,垂直移動区間}で構成される。
【0050】
部分位置合わせ区間:位置合わせ区間を1つ以上の部分集合に分けたときの個々の位置合わせ区間である。全体の位置合わせ区間は、1つ以上の部分位置合わせ区間の和集合である。
移動位置:1組の{回転移動位置,水平移動位置、垂直移動位置}で表される位置である。
登録指紋(登録画像):登録指紋画像、または登録指紋変更画像。
検査指紋(検査画像):検査指紋画像、または検査指紋変更画像。
しきい値:評価値としきい値の大小の比較により何らかの判定を行うための定数値。評価値ごとにしきい値の定め方は異なる。
【0051】
図4は、画像メモリ4における画像10において、指紋境界により定まる指紋領域と、サブテンプレートRT(0)を抽出する部分及び非サブテンプレートRB(0)を抽出する部分の関係の例を表している。例1〜例3は、サブテンプレート部分と非サブテンプレート部分の例である。
【0052】
指紋画像の処理を行うための手段を以下に述べる。なお、各手段の手順におけるステップで、その次に行う処理の記述がない場合は、直後のステップに進むものとする。各手段で用いる定数は、画像処理装置1及び画像入力装置2における種々の条件を考慮して、静的または動的に適切な値を設定することとする。各ステップとそれらが連動した処理の実現は、処理の内容が同じであれば、変形可能である。
【0053】
(1)画像入力装置から画像メモリヘの入力確定契機の設定手段
画像入力装置2から画像メモリ4に入力される画像10は、撮像装置7の対象物(すなわち、対象が指紋の場合には、画像入力装置2に入力する指)の移動により変化するため、画像メモリ4の画像10を確定する契機を定める必要がある。このための処理の方法には、
(a)画像入力装置2から画像処理装置1に対して、信号により画像の確定契機を通知する方法、
(b)利用者が、画像処理装置1に画像の確定契機を指示する方法、又は、
(c)画像処理装置1が、画像の確定契機を、画像メモリ4の画像10の状態を調べて定める方法、
がある。ここでは、(c)の方法の例を示す。
【0054】
指紋の濃淡画像が正しく入力された状態では、輝度平均値は、一定の範囲の値になり、かつこの状態が連続するときに安定した画像が得られる。このことを利用して、入力を確定する画像の品質を高めるために、画像のあらかじめ定めた画素集合(例えば、画像の全領域、又は1つ以上の部分領域)について輝度平均値を求めて、該輝度平均値が規定条件内にあるときに、該画像は有効な画像であると判定し、このことを連続して規定回数以上確認できたときに最後に仮に固定した画像メモリ4の画像を確定する。
以上のことに基づく画像入力確定契機の設定手段の例を手順INに示す。
【0055】
(手順lN)
ステップIN1:
カウンタFaを0に初期化する。
ステップIN2:
画像入力処理を開始し、画像メモリの画像を仮に固定する。
ステップIN3:
画像の規定領域内について規定領域輝度平均値Eavを求め、この規定領域輝度平均値が規定条件内であれば有効な画像であると判定してステップIN4に行き、規定条件外であれば無効な画像であると判定してステップIN1に行く。ここで、
規定領域輝度平均値Eav=(規定領域内の画素の輝度の和)/(規定領域内の全画素数)であり、
Eavの規定条件は、EL≦Eav≦EHである。
EL,EHは定数であり、対象とする画像が入力された場合の輝度の変動範囲を考慮して定める。
【0056】
なお、規定領域が複数あるときは、個々の規定領域について規定領域輝度平均値が規定条件内であるかどうかを調べて、有効な規定領域数がしきい値以上であるときに有効な画像であると判定する。
ステップIN4:
Faに1を加算する。
ステップIN5:
Faは規定値Fatかどうかを調べ、規定値であれば、ステップIN6に行く。規定値未満であれば、ステップIN2に行く。定数Fatの値は、入力される画像が安定するまでの最短の回数を考慮して設定する。
【0057】
ステップIN6:
画像メモリの画像を確定する。(手順IN終り)
図5は、画像の入力と有効性を連続して確認して、画像を確定する手順INの流れ図の概略である。
【0058】
(2)画像変換手段
画像入力装置2から画像処理装置1に入力される画像について、処理対象とする画素数は、認識精度を落とさない範囲で、少ないほうが性能の向上を図れる。
例えば、画像メモリの画素数が、処理対象とする画素数よりも大きい場合(数値例としては、画像メモリ4の画素数が、640×480画素(X=0〜639,Y=0〜479)であり、処理対象とする画素数が256×240画素(X=0〜255,Y=0〜239)であるような場合)には、画像を画像メモリ4に入力してから入力対象とする画像の範囲を調べ、画像の部分集合を抽出して仮画像とし、更に、仮画像から必要な処理対象とする画素数に合った小画像を抽出して、小画像を新たに通常の処理対象の画像とする。このための画像変換手段の例を、手順ETに示す。
【0059】
(画像変換手順ET)
ステップET1(小画像のX方向の範囲抽出):
ステップETla〜ステップETldを実行する。
ステップETla(黒画素の存在する仮画像左端のX座票を決定):
KaをX方向の増加幅とする(例えば、Ka=1)。
u=0,Ka,2Ka,3Ka,…,の順に、仮画像左端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0060】
X=u,のときのY方向で抽出したY座標(Y=0,Ja,2Ja,…)の輝度の合計値GA(u)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像左端のX座標とする。例えば、画像入力のない状態では、画像はすべて高い輝度を有する場合とすると、JaをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、ここで、GA(u)<GAであることを確認できたとき、このときのuを仮画像左端のX座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GA(u+Ka)<GAである条件を追加してもよい。)定数GAは、二値化したときに黒画素があることのしきい値であり、Y方向で抽出した画素の輝度の合計値が、黒画素が含まれていると見なせる最小の値に近い値となるように、輝度を考慮して定める。
【0061】
ステップET1b(黒画素の存在する仮画像右端のX座標を決定):
v=Xh,Xh−Ka,Xh−2Ka,Xh−3Ka,…,の順に、仮画像右端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0062】
X=v,のときのY方向で抽出したY座標(Y=0,Ja,2Ja,…)の輝度の合計値GA(v)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのvを仮画像右端のX座標とする。例えばJaをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GA(v)<GAであることを確認できたときに、そのときのvの値を仮画像右端のX座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GA(v−Ka)<GAである条件を追加してもよい。)
【0063】
ステップETlc(仮画像の左端と右端に対する中点のX座標のWxを決定):
仮画像の左端と右端に対する中点のX座標のWxを、次の式により決定する。
Wx=(u+v)/2
【0064】
ステップET1d(小画像を抽出するための開始X座標を決定)
小画像の開始X座標Xaを、
Xa=Wx−XL/2
により定める。XLは、小画像のX方向の画素数である。ここで、小画像領域の大きさを一定化するために、Xa<0のときは、Xa=0とし、Xa+XL−1>Xhのときは、Xa=Xh−XLとする。
【0065】
ステップET2(小画像のY方向の範囲抽出):
ここでは、ステップET2a〜ステップET2dで、ステップET1と同様な処理をY方向に対して行い、小画像のY座標範囲を求める。
ステップET2a(黒画素の存在する仮画像上端のY座標を決定):
KbをY方向の増加幅とする(例えば、Kb=1)。
u=0,Kb,2Kb,3Kb,…,の順に、仮画像上端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0066】
Y=u,のときのX方向で抽出したX座標(Y=0,Jb,2Jb,…)の輝度の合計値GB(u)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像左端のX座標とする。例えば、JbをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GB(u)<GBであることを確認できたとき、このときのuを仮画像上端のY座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GB(u+Kb)<GBであることを条件として追加してもよい。)ここで、GBは、黒画素があることのしきい値であり、X方向で抽出した画素の輝度の合計値が、黒画素が含まれていると見なせる最小の値に近い値となるように、輝度を考慮して定める。
【0067】
ステップET2b(黒画素の存在する仮画像下端のY座標を決定):
v=Yh,Yh−Kb,Yh−2Kb,Yh−3Kb,…,の順に、仮画像下端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0068】
Y=v,のときのX方向で抽出したX座標(X=0,Jb,2Jb,…)の輝度の合計値GB(v)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像下端のX座標とする。例えば、JbをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GB(v)<GBであることを確認できたときに、そのときのvの値を仮画像下端のY座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GB(v−Kb)<GBである条件を追加してもよい。)
【0069】
ステップET2c(仮画像の上端と下端に対する中点のY座標のWyを決定):
仮画像の上端と下端に対する中点のY座標のWyを、次の式により決定する。
Wy=(u+v)/2
ステップET2d(小画像を抽出するための開始Y座標を決定):
小画像の開始Y座標Ybを、
Yb=Wy−YL/2
により定める。YLは、小画像のY方向の画素数である。ここで、小画像領域の大きさを一定化するために、Yb<0のときは、Yb=0とし、Yb+YL−1>Yhのときは、Yb=Yh−YLとする。
【0070】
ステップET3(処理対象画素を抽出):
X=Xa+XL−1まで、かつ、Y=Ybから
Y=Yb+YL−1まで
の範囲を処理対象の小画像とする。
ステップET4(小画像を、通常の画像とする):
小画像の範囲を、通常の画像として扱うための変換を必要に応じて行う。
例えば、原点の設定、画像の設定場所等の変換である。(ステップET終り)
【0071】
図6は画像の処理範囲の変換の説明図の一例であり、画像メモリに設定された画像と、仮画像、小画像の例を示している。なお、手順ETにおいて、X方向またはY方向の一方のみを実行し、他方は固定の範囲とすることも可能である。画像メモリの画像をそのまま処理対象の画像とする場合には、手順ETによる変換は不要である。
【0072】
(3)平滑化手段
平滑化は、指紋画像の雑音の影響を減らすための処理である。平滑化の処理は、公知の方法を用いることができる。例えば、おのおのの画素の近傍画素の値を用いる局所加重平均フィルタなどを用いることができる。
画像メモリ4に直接に二値画像を入力できる場合には、平滑化は省略できる。二値画像を平滑化したときには、画像は濃淡画像となるので、再度、二値化を行う必要がある。
【0073】
(4)二値化手段と背景分離手段
二値化は、濃淡画像を二値画像に変換する処理である。背景分離は、画像メモリ4における画像10の指紋画像の有効な範囲を明確化する処理である。二値化と背景分離を行う手順の例を手順Bに述べる。手順Bの入力情報は、入力画像情報である。手順Bの出力情報は、出力画像の二値画像、及び指紋境界情報である。画像メモリ4に直接に二値画像を入力できる種類の画像入力装置を用いる場合には、二値化(ステップB1)は省略して、背景分離だけを実行する。その反対に、二値化だけ必要であって、背景分離が不要な場合は、ステップB1のみを実行すればよい。
【0074】
(手順B)
Kを部分領域のX方向の長さを表す定数とする。
部分領域のY方向の長さは、部分領域のX方向の長さと異なってもよいが、以下では簡単のために等しい場合を記述する。
L=(Xh+1)/K
とする。ここでは、Lが整数となるようにKを選択する。一般的には、部分領域の長さを、部分領域ごとに可変とすることが可能である。次に、
【0075】
Kmax=((Xh+1)/K)−1
とする。画像10について、部分領域を一意に識別するための部分領域アドレスを各部分領域の先頭の画素アドレスとする。任意の画素アドレス(X,Y)は、部分領域アドレスJ(M,N)では、M=[X/K]、かつN=[Y/K]である。したがって、部分領域アドレスJ(M,N)に対応する画素アドレス(X,Y)は、
X=K・M,(M=0,1,2,…,Kmax)
Y=K・N,(N=0,1,2,…,Kmax)
により求まる。
【0076】
ステップB1(二値化):
ステップB1a:
M=0,1,2,…,Kmax
N=0,1,2,…,Kmax
について、以下の処理を行う。各部分領域J(M,N)ごとに、個々の部分領域ごとに、部分領域内のすべての画素の輝度平均値Bav(M,N)を、
Bav(M,N)=(部分領域内の画素の輝度の和)/(部分領域内の画素数)
により求める。ここで、
X=K・M(M=0〜Kmax)
Y=K・N(N=0〜Kmax)
における(M,N)は、画像10の範囲を対象とする。
【0077】
すなわち、画像の範囲が、
0≦X≦Xh
0≦Y≦Yh
のときは、
M=0〜[Xh/K]
N=0〜〔Yh/K]
の範囲を対象とする。このとき、
画像10の部分領域の総数=([Xh/K]+1)・([Yh/K〕+1)となる。また、
全体の画像の輝度平均値=(全体の画像の輝度の和)/(全体の画像の画素数)である。
【0078】
ステップBlb:
部分領域の境界により生じる不連続性を減らすために、部分領域相互間の変換を行う。すなわち、
M=1〜([Xh/K]−1)
N=1〜([Yh/K]−1)
について、
Cav(M,N)=(A0・Bav(M,N)+A1・Bav(M+1,N)+A2・Bav(M+1,N−1)+A3・Bav(M,N−1)+A4・Bav(M−1,N−1)+A5・Bav(M−1,N)+A6・Bav(M−1,N+1)+A7・Bav(M,N+1)+A8・Bav(M+1,N+1))/(A0+A1+A2+A3+A4+A5+A6+A7+A8)とする。
【0079】
A0,Al,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8は定数であり、部分領域の相互の関係を考慮して定める。例えば、
A0=Al=A2=A3=A4=A5=A6=A7=A8=1とすることができる。
各(M,N)についてのCav(M,N)は、メモリの作業域に格納しておく。
次に、
M=1〜([Xh/K]−1)
N=1〜([Yh/K]−1)について、
Bav(M,N)=Cav(M,N)とすることにより、各部分領域の輝度平均値Bav(M,N)を、部分領域(M,N)の相互の関係により、変更することができる。
【0080】
図7は、部分領域(M,N)とその部分領域の輝度平均値Bav(M,N)との関係の一例である。ここで、部分領域の相互の関係による部分領域輝度平均値の変更方法は、上記の方法に限定されない。例えば、相互関係として用いる部分領域の数を増加したり、減少したり、又は、上述のCav(M,N)の式を変形したりすることが可能である。
【0081】
ステップB1c:
(a)各部分領域について、Bav(X,Y)を求めた部分領域の画素(X,Y)の輝度f(X,Y)について、二値化のしきい値Tを、
T:部分領域輝度平均値+D+Da
ここで、Dは部分領域輝度平均値の補正のための定数である(例えば、D=0とする)。Daは変数(初期値は例えば、Da=0)であり、後述する。
【0082】
このときの部分領域(M,N)についての(X,Y),すなわち,
K・M≦X≦K・(M+1)−1
K・N≦Y≦K・(N+1)−1
の範囲の(X,Y)について輝度f(X,Y)が、
f(X,Y)≧Tのとき、(X,Y)を白画素に設定する(ただし、白と黒を反転するときは黒画素に設定する)。
f(X,Y)<Tのとき、(X,Y)を黒画素に設定する(ただし、白と黒を反転するときは白画素に設定する)。
【0083】
以上が、部分領域輝度平均値をしきい値の要素とする二値化の手段である。部分領域内に輝度が高い画素がかなりの数で存在し、かつ、輝度変化が少ない部分領域では、輝度平均値が高い値となるために、二値化した結果として、その部分領域内の多くの画素が黒画素になることがある。この対策として、輝度平均値が高く、かつ輝度変化が微少な部分領域は、上述の二値化しきい値でなく、あらかじめ定めた規定のしきい値で二値化する。このための具体的な手順を以下に示す。
【0084】
原画像(濃淡画像)の各部分領域ごとに、
Bav(・,・)≦Bm
のときは、前述の輝度平均値をしきい値とする二値化を行う。
Bav(・,・)>Bm
(Bmは輝度平均値が高い値かどうかを判定するための値であり、例えば、輝度の180〜255を輝度が高いとみなす場合には、Bm=180)のときは、任意の1つの部分領域内の各画素について、
G=|(部分領域の輝度平均値)−(部分領域内の各画素の輝度)|
のGの値の最大値をGmaxとして、その値を求め、その結果、Gmax≦Bsmallの場合(Bsmallは、輝度変化幅の上限である。例えば、0〜9までの輝度変化を輝度変化が微少と見なすときは、Bsma11=10とする。)、その部分領域の画素は輝度変化が少ないと見なせるので、その部分領域は規定の二値化しきい値T=Bg(例えば、Bgは、全体の画像の輝度平均値、又は固定の値)で二値化する。
この手順を原画像のすべての部分領域について、反復する。図8は、輝度が微少変動な部分領域における二値化処理の概略の流れ図の一例である。
【0085】
次の処理として、画像の入力時の状況により、画像の輝度状態が異なるので、部分領域の黒画素についての全画素に対する比率を求め、規定範囲外のときは、Daの値を変更して、再度、二値化する処理を、規定回数(1回以上)反復する。二値化のしきい値を最適化する手順は、次のとおりである。全有効部分領域黒画素比率Rbwを、
Rbw=(すべての部分領域内の黒画素数)/(すべての部分領域内の総画素数)
とする。
【0086】
Rbw1≦Rbw≦Rbw2
のときは、黒画素比率が正常なため、二値化を終了できる。
Rbw>Rbw2
のときは、黒画素数を減らすために、Tを減少させる。すなわち、Daを(Da−Da1)で置き換える。
Rbw<Rbw1
のときは、黒画素数を増加するために、Tを増加させる。すなわち、Daを(Da+Da1)で置き換える。
【0087】
Rbw1とRbw2は、黒画素比率の一定化のための定数であり、例えば、黒画素比率を40%〜45%の間の値にしたいときは、Rbw1=0.40,Rbw2=0.45とする。ここで、Da1は、二値化のしきい値の増減のための定数である(例えば、Da1=1)。二値化で、黒画素の比率を求め、規定範囲外のときは、二値化のしきい値Tの値を変更して二値化する処理を規定回数反復する。規定回数反復しても黒画素の比率が規定範囲外のときは、例えば、処理を打ち切って、画像入力の最初から処理を行う。
【0088】
ここで、Da1は、黒画素比率が規定範囲になるための処理時間を短縮し、かつ黒画素比率が規定範囲内になる確率を高めるために、異なる値を複数利用することができる。図9は、部分領域に分割された二値画像について、二値化の黒画素比率を一定化するための処理の一例であり、Daを変化させるための定数群として、Da1,Da2,Da3,(例えば、Da1=3,Da2=2,Da3=1)を用いている。Dai,(i=1,2,…)は、任意の個数の定数で構成することができ、適当にこの定数群の個数と値を設定することにより、Rbwの値が規定範囲に収束する可能性と収束速度を向上できる。なお、図9におけるAlp,A2p,A3p,Alm,A2m,A3mは、処理の選択のために処理途中で動的に変更されるパラメータである。
【0089】
ステップB2(有効部分領域の表示):
ステップB1の結果により得られた二値画像に対して、部分領域輝度平均値を再度求める。次に、
部分領域アドレスIMN=([X/K],[Y/K])
(部分領域アドレスは,各部分領域の先頭アドレスである)
X=K・M,(M=0,1,2,…,Kmax)
Y=K・N,(N=0,1,2,…,Kmax)
について、部分領域輝度平均処理手段により求めた輝度平均値Bav(X,Y)により、各部分領域ごとに、有効か無効かを判定する。
【0090】
すなわち,BL≦Bav(X,Y)≦BH
であるときに、その部分領域が有効部分領域であると判定し、有効部分領域テーブルY(M,N)に有効表示を設定する。
Y(M,N)={1:有効部分領域のとき。0:無効部分領域のとき。}
ここで、BL及びBHは、有効部分領域と無効部分領域を区分するための定数である。
【0091】
ステップB3(有効部分領域の数の検査):
Y(M,N)により、YT=有効部分領域の数を計数し、YT≧YC(YCは、例えば、部分領域総数×しきい比率定数値とする。)であるときは、ステップB4に行く。YT<YCであるときは、有効部分領域数不足と見なして、本手順を異常で終了する。
【0092】
ステップB4(部分領域単位の指紋境界の左端):
部分領域指紋境界情報を{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}で表す。各N=NTの値について、ML≦M≦MRが部分領域単位の指紋領域である。
このステップでは、部分領域単位に、指紋境界の左端MLを求める。N=0から開始して、N=NT,(NT=0〜Kmax)について、次の処理を行う。左端(M=0)からMの増加方向について、順次に有効部分領域テーブルGの要素G(M,N)における1(有効部分領域表示)を探索し、1がKc個以上(Kcは、部分領域の指紋境界を判定するための、1以上の定数)連続する部分の最初のMの値MLをそのときのNについての指紋領域の左端とする。M=0〜Kmaxで1(有効領域表示)が連続してKc個以上発見できないときは、そのNの値は、すべてのMについて非指紋領域であり、非指紋領域のNTでは、ML=MR=−1とする。
【0093】
ステップB5(部分領域ごとの指紋境界の右端)
このステップでは、部分領域単位に、指紋境界の右端MRを求める。N=0から開始して、N=NT、(NT=0〜Kmax)について、ステップB4で左端が設定されていないN(すなわち、ML=−1のときのN)は飛ばして、右端(M=Kmax)からMの減少方向について、順次に有効部分領域テーブルGの要素G(M,N)における1(有効部分領域表示)を探索し、1がKc個以上(Kcは定数)連続する部分の最初のMの値MRをそのときのNについての指紋領域の右端とする。以上により、部分領域指紋境界情報{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}が求まる。
【0094】
ステップB6(各画素ごとの指紋境界情報):
部分領域指紋境界情報{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}から、画素ごとの指紋境界情報を求める。画素ごとの指紋境界情報を{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}で表し、これは、各YTの値について、XL≦X≦XRが指紋領域の意味である。
【0095】
部分領域指紋境界情報により、N=0〜Kmaxにおいて、
K・N≦Y≦K・N+KmaxのY=YTについて、
XL=K・ML
XR=K・MR
として、各画素ごとの指紋境界情報{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}を求める。(手順B終り)
【0096】
図10は、指紋の有効部分領域テーブルの一例である。なお、以後、単に指紋境界情報というときには、各画素ごとの指紋境界情報{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}を意味する。また、背景分離については、ステップB2〜B6の代替として、簡単には、画像全体を指紋領域として扱う手段も可能である。
【0097】
(5)近似的中心点を求める手段
指紋画像の近似的中心点では、画像10の中心(〔Xh/2],[Yh/2])又はその近くの点を近似的中心点(XC,YC)と見なす手段がある。
また、このほかの任意の公知の近似的中心点を求める手段を用いてもよい。
【0098】
(6)細線化手段
細線化は、画像の大部分の線幅を1画素にする処理のことである。細線化手段には、任意の細線化方法(例えば、従来の技術で述べたごとき公知の細線化方法)を用いてよい。
【0099】
(7)細め処理手段
細め処理は、画像の大部分の線幅を規定の線幅以下にすることである。細め処理は、二値化の段階で黒画素の全画素に対する比率(又は白画素の全画素に対する比率、又は黒画素と白画素の比率)を一定化することによって近似的に実現できるので、これも細め処理手段の1つと見なす。
【0100】
更に、二値画像の線幅を細めるのには、次の方法がある。
1画素以上の黒画素の集合を画像の線として扱う。線幅指定値の保持方法は任意であり、細め処理手段の入力情報とすることも、細め処理手段の中で保持することも可能である。線幅指定値は、1つの細め処理手段の中で1つ以上保持してもよい。本実施の形態では、細め処理の手段を、線幅指定値に応じて、使い分けることができる。線幅指定値に依存した細め処理手段の例を以下に示す。
【0101】
(a)大部分の線幅を1画素とするための細め処理(線幅指定値が1画素)
二値画像の線幅を細める手段(又は濃淡画像を二値化し、かつ線幅を細める手段)であり、公知の方法(例えば、大部分の線幅を1画素とすることのできる細線化方法)を用いることができる。また、濃淡画像を直接に二値化及び細線化する方法もある。
【0102】
(b)大部分の線について線幅指定値以下に細めるための細め処理(線幅指定値が任意の数値)
公知の方法を基にして実現できる。例えば、次のごとき手段がある。
i)画像を構成する線(本実施の形態では指紋線である黒画素に相当)の外側から線の要素を1画素ずつ削除する1画面分の処理を、大部分の線幅が1画素になるまで反復する細線化方法の場合、細線化の処理では、
{(元の二値画像の最大の線幅)−(線幅指定値)}/(1画面分の処理で各線幅ごとに削除される画素数の概算値)
となるように反復回数を定めておけばよい。
【0103】
ii)画像を構成する線の要素の中心から黒画素を残す細線化方法の場合
任意の直線と画像の線が交わる部分の線分上の黒画素について、該線分の中心を含む線幅指定値以下の画素を残す(線分幅が線幅指定値以上の場合は線分の中点を中心として線幅指定値分の黒画素を残し、線分幅が線幅指定値未満の線分上の黒画素はすべて残す)ことにより実現できる。
【0104】
本実施の形態では、登録指紋画像と検査指紋画像について、細め処理を行う場合の線幅指定値は任意に指定できるが、入力される画像の線の品質や特性、細め処理の線幅指定値に対する性能、画像処理装置1に要求される性能などから定める必要がある。登録指紋画像と検査指紋画像のそれぞれの細め処理における線幅指定値の差を大きくすれば、両画像の位置ずれには強くなるが、差を大きくしすぎると、照合精度の低下が生じることがある。登録指紋の細め画像の線幅は小さい方が、黒画素数が少なくなるため、登録情報に必要なメモリ量を小さくできる。これらのことを勘案すると、例えば、次のいずれかの指定が有効な場合がある。
【0105】
(a)登録指紋画像の細め処理では線幅指定値を1画素とし、検査指紋画像の細め処理では線幅指定値をもとのままとする場合を含めて、2画素以上の適当な値とする。
(b)登録指紋画像の細め処理の線幅指定値を、検査指紋画像の細め処理の線幅指定値よりも小さい値とする条件で、適当に選択する。
(c)登録指紋画像の細め処理では線幅指定値を1画素とし、検査指紋画像の線幅は、二値化のときの黒画素の比率で調整する。(以下の例では、この場合を主として記述する。)
【0106】
(8)登録画像の登録情報の登録処理手段
指紋情報の登録処理は、登録指紋として画像メモリ4の画像10に入力されて、細め処理までの処理がなされた結果である画像10にある登録指紋変更画像RthからサブテンプレートRT(0)及び非サブテンプレートRB(0)を抽出し、それぞれのファイルに格納する処理である。指紋情報の登録処理を行う手順を、手順Rに示す。手順Rの入力情報は、登録指紋のサブテンプレート及び非サブテンプレートのファイル名、登録指紋変更画像Rth、登録指紋の指紋境界情報、及び登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)である。手順Rの出力情報は、サブテンプレートRT(0)のファイル、及び非サブテンプレートRB(0)のファイルである。
【0107】
(手順R)
ステップR1(サブテンプレートRT(0)の作成):
登録指紋変更画像Rthから、指紋領域内にあり、かつサブテンプレートRT(0)の範囲にある黒画素アドレスを抽出して、サブテンプレートRT(0)のファイルを作成する。RT(0)の格納ファイルには、登録指紋近似的中心点(XRC,YRC)も格納する。
【0108】
ステップR2(非サブテンプレートRB(0)の作成):
登録指紋変更画像Rthから、サブテンプレートRT(0)外かつ指紋領域FA内にある黒画素アドレスを抽出して、非サブテンプレートRB(0)のファイルを作成する。
なお、サブテンプレート及び非サブテンプレートの各ファイルのデータの格納形式は任意である。例えば、データ圧縮してファイルに格納し、利用時にデータ伸長を行ってもよい。
【0109】
ステッフR3:
ステップR3a(汗腺ホールのファイルRSaの作成):
汗腺ホールのチェックを行うことを選択する場合には、本ステップを実行する。登録指紋で、あらかじめ定めた領域について、一定以上の大きさの汗腺によるホール(隆線が黒画素となるようにした二値画像では白画素集合によるホール)があるアドレスを、ホール探索手段により、規定個数求めて、その中心アドレスを汗腺ホールのファイルに記録する。
【0110】
ステップR3b(非汗腺ホールのファイルRSbの作成):
非汗腺ホールのチェックを行うことを選択する場合には、本ステップを実行する。登録指紋で、あらかじめ定めた領域について、一定以上の大きさの汗腺がないアドレスを、非ホール探索手段により、規定個数求めて、その中心アドレスを非汗腺ホールのファイルに記録する。(手順R終り)
【0111】
(9)ホール探索手段(手順WS)
ホールの一例を図11(a)に示す。例えば、ホールは次の手順WHにより検出できる。
(手順WH)
ステップWH1:
画像のホールを探索する候補アドレスについて、順次に調べ、任意の白画素アドレスAを選択する。候補アドレスは、例えば、全部の画素、n個(n=2,3,4等)おきの画素などの選択が可能である。
【0112】
ステップWH2:
アドレスAの白画素に連結した周辺の画素に、規定の数の連結した白画素集合AAが存在するかどうかを調べ、存在しないときは手順WHを最初から再実行し、存在するときはステップWH3に行く。
ステップWH3:
白画素集合AAの周辺が連結した黒画素により囲まれているかどうかを調べ、囲まれていないときは、手順WHを最初から再実行し、囲まれているときは白画素アドレスAをホールのアドレスとする。
ステップWH4:
本手順WHを、探索対象とするすべての候補アドレスについて反復する。(手順WH終り)
【0113】
(10)非ホール探索手段(手順NWH)
非ホールの一例を図11(b)に示す。非ホールは、例えば次の手順NWHにより検出できる。
(手順NWH)
ステップNWH1:
画像の非ホールを探索する候補のアドレスについて、順次に調べ、任意の黒画素アドレスBを選択する。候補アドレスは、例えば、全部の画素、n個(n=2,3,4等)おきの画素などの選択が可能である。
【0114】
ステップNWH2:
アドレスBの黒画素に連結した周辺の画素に、規定の数の連結した黒画素集合BBが存在するかどうかを調べ、存在しないときは手順NWHを最初から再実行し、存在するときは、黒画素アドレスBを非ホールのアドレスとする。
ステップNWH3:
本手順NWHを、探索対象とするすべての候補のアドレスについて反復する。
(手順NWH終り)
【0115】
(11)画像データの記憶手段
各黒画素のアドレス(X,Y)をそのままファイルに格納する場合、必要な格納記憶量は、次のようになる。
格納記憶量=黒画素数・(X座標の単位記憶量+Y座標の単位記憶量)
登録指紋画像は、サブテンプレート及び非サブテンプレートのそれぞれについてファイルに記憶する必要がある。二値画像の黒画素アドレスをそのまま記憶する場合よりも格納データ量を少なくするために、処理量を大きく増加することなく、データ量を圧縮してファイルに記憶する手段の例を次に示す。
【0116】
画素集合が、4×4画素の場合を述べる。任意の代表画素P0について、4×4画素集合が図3(b)に示されている。P0〜P15は、各画素の黒画素と白画素の区分をビットで表示して、Q=P15||P14||P13||…||P7||P6||P5||P4||P3||P2||Pl||P0により(||は連結を表す)、各周辺画素の黒画素と白画素の状態を2バイトの画素集合コードQ,(16進数で0000〜FFFF)で表示できる。次に、代表画素P0=(X0,Y0)との相対位置による画素アドレス(X,Y)を図3(b)により次に示す。
【0117】
P1:X=X0−1,Y=Y0
P2:X=X0−2,Y=Y0
P3:X=X0−3,Y=Y0
P4:X=X0, Y=Y0−1
P5:X=X0−1,Y=Y0−1
P6:X=X0−2,Y=Y0−1
P7:X=X0−3,Y=Y0−1
P8:X=X0, Y=Y0−2
P9:X=X0−1,Y=Y0−2
P10:X=X0−2,Y=Y0−2
P11:X=X0−3,Y=Y0−2
P12:X=X0, Y=Y0−3
P13:X=X0−1,Y=Y0−3
P14:X=X0−2,Y=Y0−3
P15:X=X0−3,Y=Y0−3
【0118】
登録指紋画像データの圧縮処理は、登録指紋画像データの(X,Y)座標である(X=0〜Xh,Y=0〜Yh)を次の形式に変換する処理である。指紋有効領域内について、4つおきの各Y座標ごとに4つおきの各X座標を代表画素とし、4×4画素集合の範囲に黒画素が存在するかどうかをチェックし、黒画素が存在するときにだけ、代表画素X座標と画素集合コードを記憶する。
【0119】
Xアドレス部分は、4画素おきに指定されるために、下2ビットは、画素集合形状識別子として使用できる。これを利用して、画素集合コードは、半分(下半分、上半分、または左半分)がすべて白画素のとき、それぞれ残り半分(前述の順序に対応して、上半分、下半分、右半分)の1バイトで、部分的画素集合として表す。
【0120】
(a)画素集合形状識別子がビット表示で「11」のとき
画素集合コードは2バイトで表す。
(すなわち、Pl5||Pl4||…||Pl||P0)。
(b)画素集合形状識別子がビット表示で「10」のとき
画素集合コードは上半分の1バイトで表す。
(すなわち、Pl5||P14||P13||P12||Pl0||P9||P8)。
【0121】
(c)画素集合形状識別子がビット表示で「01」のとき
画素集合コードは下半分の1バイトで表す。
(すなわち、P7||P6||P5||P4||P3||P2||Pl||P0)。
(d)画素集合形状識別子がビット表示で「00」のとき
画素集合コードは右半分の1バイトで表す。
(すなわち、P13||P12||P9||P8||P5||P4||P1||P0)。
【0122】
ここで、画素集合コードが1バイトのとき、省略部分の画素はすべて白画素である。画素集合コードが1バイトの場合に、画素集合形状識別子用の2ビットを含むXアドレス部分を、真のXアドレスにするには、画素集合形状識別子フラグ用のビット部分を0にすることにより実現できる。
すなわち、圧縮時は、細線化画像データの(X,Y)座標(すなわち、X=0〜Xh,Y=0〜Yh)を次の形式に変換する。4つおきの各Y座標ごとに4つおきの各X座標を代表画素とし、4×4画素集合の範囲に黒画素が存在するかどうかをチェックし、黒画素が存在するときにだけ、代表画素X座標と画素集合コードを記憶する。このとき、二値画像を記憶する手段の例を手順Gに示す。
【0123】
(手順G)
ステップG1:
Xアドレス部分により、4×4画素集合を順次に選択する。
全画素(P15〜P0)がすべて白画素かどうかを調べる。すべて白画素のとき、この4×4画素集合は飛ばして、次の4×4画素集合に行き、ステップG1を最初から実行する。すべて白画素ではないとき、ステップG2に行く。
ステップG2:
上半分(P15〜P8)がすべて白画素かどうかを調べる。上半分がすべて白画素ではないとき、ステップG3に行く。上半分がすべて白画素のとき、下半分(P7〜P0)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「01」とする。
【0124】
ステップG3:
下半分(P7〜P0)がすべて白画素かどうかを調べる。下半分(P7〜P0)がすべて白画素でないとき、ステップG4に行く。下半分(P7〜P0)がすべて白画素のとき、上半分(P15〜P8)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「10」とする。
ステップG4:
左半分(P15,P14,P11,P10,P7,P6,P3,P2)がすべて白画素かどうかを調べる。左半分がすべて白画素でないとき、ステップG5に行く。左半分がすべて白画素のとき、右半分(P13||P12||P9||P8||P5||P4||Pl||P0)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「00」とする。
【0125】
ステップG5:
4×4画素集合を2バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットはそのまま(ピットパターンの「11」)とする。
ステップG6:
この1つの画素集合コードとXアドレスに対する処理を終了する。
ステッフG7:
各Xアドレスごとに、すべての4×4画素集合について、ステップG1〜G6を反復する。
【0126】
ステッフG8:
二値画像のファイル格納形式を、
Y座標=Ys,格納Xアドレス部分の組数,
{(代表画素AsのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BsのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…}
…
【0127】
Y座標=3+4j,格納xアドレス部分の組数,
{(代表画素AjのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BjのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…}
…
【0128】
Y=Ye=格納Xアドレス部分の組数
{(代表画素Ahのxアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BhのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…},{終了表示記号}
として、二値画像を記憶する。(手順G終り)
【0129】
ここで、格納Xアドレス部分の組数は、そのときのY座標に対応して格納される画素集合コード数を表している。格納Xアドレス部分の組数が0のY座標などは設定しないで詰める。画素がすべて白画素の4×4画素集合は記録しない。画素集合コードは、1バイトの場合と2バイトの場合があり、Xアドレス部分の下2ビットで区別する。なお、格納Xアドレス部分の組数の代わりに、各Y座標値ごとに(代表画素Xアドレス部分、画素集合コード)の組の終了記号を付加してもよい。
【0130】
図12(a)は、4×4画素集合の小領域に画像メモリを分割した場合の例である。図12(b)は、4×4画素集合の上半分の例である。図12(c)は、4×4画素集合の下半分の例である。図12(d)は、4×4画素集合の右半分の例である。なお、画像メモリを小領域に分割するときの小領域の大きさは、4×4画素集合の場合を述べたが、任意に設定でき、そのときの小領域内の分割方法も任意に設定してよい。
また、手順Gにより圧縮された二値画像データの形式をもとの(X,Y)形式に戻すには、手順Gの逆の処理を行えばよい。
【0131】
(12)登録画像と検査画像の照合処理手段
照合処理は、検査指紋変更画像の黒画素集合のおのおのの黒画素と、登録指紋変更画像に関する登録情報としてメモリ6に格納されている黒画素集合のおのおのの黒画素との一致性を調べる処理である。
登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の位置合わせのための座標軸の回転及び平行移動による座標変換は、いずれか一方の画像について行えばよいが、本実施の形態では、登録指紋変更画像の方が、細め処理の線幅指定値が小さいために、黒画素数が少なくなることを想定して、登録指紋変更画像を移動して検査指紋変更画像に合わせる。照合処理の概要を次に述べる。
【0132】
(a)サブテンプレートの照合
サブテンプレートの照合は、登録指紋のサブテンプレートRT(0)について、登録指紋変更画像の黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とが最も良く一致する位置を求める処理である。すなわち、まず、登録指紋変更画像のサブテンプレートRT(0)について、登録指紋の近似的中心点を検査指紋の近似的中心点と一致させたときのサブテンプレートRT(0,H,V)を、登録指紋変更画像の座標軸の平行移動により求める。次に、中心近傍で、サブテンプレートRT(0,H,V)の座標軸を、回転、及び上下左右に平行移動したときに、検査指紋変更画像と、黒画素が最も多く一致するときの登録指紋変更画像のサブテンプレートRT(S,H,V)の変換角度Sと平行移動量(水平移動量H,垂直移動量V)を求める(S,H,Vは整数)。
【0133】
(b)非サブテンプレートの照合と、テンプレートの照合
非サブテンプレートの照合は、サブテンプレートの照合で得られた登録指紋変更画像のRT(S,H,V)のS,H,Vにより、登録指紋変更画像のRB(0)の黒画素アドレスの座標変換を行って、黒画素アドレスを求め、検査指紋変更画像の黒画素アドレスとの一致性を調べ、登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の一致性に関する情報を出力する処理である。すなわち、まず、サブテンプレートの照合により得られた登録指紋変更画像のサブテンプレートの座標軸の角度回転量S,水平移動量H,及び垂直移動量Vを用いて、登録指紋の非サブテンプレートRB(0)の黒画素の座標変換を行ってRB(S,H,V)を得る。次に、登録指紋変更画像のRB(S,H,V)の黒画素と、検査指紋変更画像の黒画素の一致性を調べる。この結果により、登録指紋変更画像と検査指紋変更画像のテンプレート全体の一致率が求まる。
【0134】
(c)不一致部分の黒画素数のチェックを行う。
(d)汗腺によるチェックを行うことを選択しているときには、そのチェックを実施する。
(e)以上の結果により、登録指紋と検査指紋の一致性を最終判定する。
以上の照合処理の概要に基づき、照合処理を行う手順を手順Cに示す。手順Cの入力情報は、登録指紋変更画像のサブテンプレート及び非サブテンプレート、検査指紋変更画像、及び検査指紋の近似的中心点である。手順Cの出力情報は、照合結果である。
【0135】
(手順C)
ステップC0:
照合のときの登録画像情報の移動の最大総範囲を、回転角度方向が区間[Smin,Smax]、水平方向が区間[Hmin,Hmax]、垂直方向が[Vmin,Vmax]であるとする。少なくとも1つの移動方向の区間を1つ以上の部分区間に分割して、
Smin={Smin(Is):Is=1,2,・・・,Js}
Smax={Smax(Is):Is=1,2,・・・,Js}
Hmin={Hmin(Ih):Ih=1,2,・・・,Jh}
Hmax={Hmax(Ih):Ih=1,2,・・・,Jh}
Vmin={Vmin(Iv):Iv=1,2,・・・,Jv}
Vmax={Vmax(Iv):Iv=1,2,・・・,Jv}
とする。
【0136】
ここで、
区間[Smin,Smax],区間[Smin(1),Smax(1)],区間[Smin(2),Smax(2)],・・・,及び区間[Smin(Js),Smax(Js)]の和集合である。
区間[Hmin,Hmax],区間[Hmin(1),Hmax(1)],区間[Hmin(2),Hmax(2)],・・・,及び区間[Hmin(Jh),Hmax(Jh)]の和集合である。
区間[Vmin,Vmax],区間[Vmin(1),Vmax(1)],区間[Vmin(2),Vmax(2)],・・・,及び区間[Vmin(Jv),Vmax(Jv)]の和集合である。
【0137】
以後、ステップC1から、
{区間[Smin(1),Smax(1)]、区間[Smin(2),Smax(2)]、・・・、区間[Smin(Js),Smax(Js)]}、
{区間[Hmin(1),Hmx(1)]、区間[Hmin(2),Hmax(2)]、・・・、区間[Hmin(Jh),Hmax(Jh)〕}、及び、
{区間[Vmin(1),Vmax(1)]、区間[Vmin(2),Vmax(2)]、・・・、区間[Vmin(Jv),Vmax(Jv)]}のすべてについて、選択した部分位置合わせ区間を順次実行して行き、任意の位置合わせ区間において、一致と判定できたとき、または、以後の照合は放棄して不一致と判定できるときに、照合処理を終了する。
【0138】
ステップC1(サブテンプレートの照合):
ステップCla〜ステップCldを実行する。
ステップCla:
サブテンプレートRT(0)をファイルからメモリ6に格納する。次に、サブテンプレートRT(0),S=Smin(Is)〜Smax(Is),(Sの増加刻み幅Ks)、H=Hmin(Ih)〜Hmax(Ih),(Hの増加刻み幅Kh)、及びV=Vmin(Iv)〜Vmax(Iv),(Vの増加刻み幅Kv)を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Kra,(Kra≧1)として、後述の画像一致性チェック補助手順(手順W)を実行する。
この結果、S,H,Vをそれぞれ、Smin(Js)〜Smax(Js),Hmin(Jh)〜Hmax(Jh),Vmin(Jv)〜Vmax(Jv)について、増加の刻み幅Ks,Kh,Kvで変更し、準最適なS,H,Vの値であるSa,Ha,Vaを求める。
【0139】
ステップC1b:
S,H,Vについて、それぞれの移動範囲として、
S:(Sa−Dsb)〜(Sa+Dsb),増加刻み幅Ksb
H:(Ha−Dhb)〜(Ha+Dhb),増加刻み幅Khb
V:(Va−Dvb)〜(Va+Dvb),増加刻み幅Kvb
を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krb,(Krb≧1)として、手順Wを実行し、準最適な{S,H,V}の値である{Sb,Hb,Vb}を求める。
ここで、Dsb,Dhb,Dvbは、移動範囲を定めるための定数である(備考C(1)参照)。
【0140】
ステップClc:
S,H,Vをそれぞれ、
S:(Sb−Dsc)〜(Sb+Dsc),増加刻み幅Ksb
H:(Hb−Dhc)〜(Hb+Dhc),増加刻み幅Khb
V:(Vb−Dvc)〜(Vb+Dvc),増加刻み幅Kvb
を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krc,(Krc≧1)として、手順Wを実行し、準最適な{S,H,V}の値である{Sc,Hc,Vc}を求める。
ここで、Dsc,Dhc,Dvcは、移動範囲を定めるための定数である。
【0141】
ステップC1d:
S,H,Vをそれぞれ,
S=Sc,Dsd=0,増加刻み幅Ksd=0
H=Hc,Dhd=0,増加刻み幅Khd=0
V=Vc,Dvd=0,増加刻み幅Kvd=0
により、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krd,(Krd=1)として、手順Wを実行し、最適な{S,H,V}の値を求める。ここで、Dsd,Dhd,Dvdは、移動範囲を定めるための定数である。この結果、サブテンプレート一致率T1が最大となる最適な{S,H,V}の各値と、サブテンプレート一致率T1=Nlm/Nlcを得る。
【0142】
次に、あらかじめ定めた定数Tk1について、
T1≧Tk1
であれば登録指紋と検査指紋はサブテンプレートの照合で一致と判定して、ステップC2に行き、
T1<Tk1
であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0143】
また、Tm1を1〜m番目までの部分位置合わせ区間におけるT1の最大値とするとき、Tm1<Tmk1(j)であるときは、この部分位置合わせ区間の以後の処理、及び残った部分位置合わせ区間についての照合処理は実行しても一致となる可能性が低いために実行せず、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
ここで、Tmk1(j),(j=1,2,…,m)は、上記の判定が可能なように、あらかじめ定めた定数である。
【0144】
ステップC2(非サブテンプレートの照合、およびテンプレートの照合):
非サブテンプレートRB(0),及びステップC1により得られた最適な{S,H,V}を入力情報として、画像一致性チェック補助手順(手順W)を実行する。この結果、N2m,N2cを得て、ステップC1の結果も用いて、テンプレート一致率T2=(Nlm+N2m)/(Nlc+N2c)を得る。
【0145】
T2≧Tk2
であれば、登録指紋と検査指紋は一致と判定してステップC3に行き、
T2<Tk2
であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の区間の処理を最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0146】
ステップC3(不一致部分の照合):
登録指紋の黒画素と検査指紋の黒画素の、不一致性について調べて、検査指紋変更画像の不一致部分の黒画素が多すぎる場合を除く必要がある。このため、登録指紋変更画像の線幅に検査指紋二値画像の線幅を合わせたときの不一致部分の黒画素の比率を近似的に求めて判定するために、ステップC3a〜ステップC3bの処理を行う。
【0147】
ステップC3a:
RT(0)及びRB(0)の範囲から、{S,H,V}の変換後の登録指紋変更画像の照合対象領域の近似的な範囲を求める。座標(X,Y)から変換後の範囲の座標(X’,Y’)は、手順Wと同様に、次式で行う。
X’=(X−XRC)・cos(S)+(Y−YRC)・sin(S)+XTC−H
Y’=−(X−XRC)・sin(S)+(Y−YRC)・cos(S)+YTC−V
ここで、cos(・)、sin(・)は三角関数を表す。
【0148】
ステップC3b:
座標変換後の照合対象領域(すなわち、RT(S,H,V)とRB(S,H,V)の和集合)の検査指紋変更画像の黒画素数Tnwを計数する。すなわち、
Tnw=検査指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域の総黒画素数
である。このとき、検査指紋変更画像の線幅をwとすると、これを登録指紋変更画像の線幅(線幅λ)にした場合の総黒画素数Tncは、近似的に、
Tnc=Tnw/(w/λ)
である。
【0149】
ここで、登録指紋変更画像の線幅が細線化により1画素となっているときは、検査指紋変更画像も細線化して検査指紋変更画像の照合対象領域の黒画素数Tnwを求めてもよく、その場合は、W=λ=1である。また、
Nlm+N2m=登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域内の一致黒画素数
Nlc+N2c=登録指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域内の総黒画素数は、すでに求まっている。
【0150】
このとき、黒画素の不一致の度合いとして、例えば、不一致部分率を、
Tz=(Tnc−Nlm−N2m)/(Nlc+N2c)
とし、
|Tz|≦Tkc
の場合、登録指紋と検査指紋は不一致部分率について合格と判定し、そうでないときは不一致と判定する。
【0151】
不一致黒画素の許容率を表す定数であり、小さいほど厳しい条件となる。(通常はTz≧0であるので、Tz≧0のときとTz<0のときとで、それぞれ異なるTkcの値を用いて、Tz<0のときを、Tz≧0のときよりも厳しくしてもよい。)
不一致のときは、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0152】
ステップC4(汗腺の部分照合):
照合精度の向上のため、選択的に、本ステップC4のステップC4aとステップC4bの少なくとも一方を追加することができる。
ステップC4a(汗腺によるホールのチェック):
ホールのアドレスを最適な{S,H,V}で変換したアドレスについて、検査指紋変更画像のそれらのアドレスに汗腺(指紋の隆線部分が二値化で黒画素となる画像では1つ以上の白画素により構成される穴となる)があるかどうかをチェックする。このときのチェックする白画素集合の大きさは、パラメータ定数とする。次に、
T4a=(ホールアドレス一致数)/(登録ホールアドレス総数)
を求めて、
T4a≧Tk4a
であるとき、汗腺のホールのチェックは合格とする。
【0153】
ステップC4(非ホールのチェック):
非ホールアドレスを最適な{S,H,V}で変換したアドレスについて、検査指紋変更画像のそれらのアドレスに汗腺がないことをチェックする。このときのチェックする白画素集合の大きさは、パラメータ定数とする。次に、
T4b=(非ホールアドレス一致数)/(登録非ホールアドレス総数)
を求めて、
T4b≧Tk4b
であるとき、非ホールのチェックは合格とする。ここで、Tk4bは、しきい値の定数である。
【0154】
ステップC5(最終判定):
実行した部分位置合わせ区間について、サブテンプレート一致率、テンプレート一致率、不一致部分率、汗腺チェックのうちの、選択して実行したすべてについて合格のとき、登録指紋と検査指紋は一致と判定し、手順Cを終了する。不合格であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。(手順C終り)
【0155】
図13は手順Cに基づく照合処理の概略の流れ図の一例である。なお、図13は、回転角度方向Sの区間だけを分割して部分位置合わせ区間を構成する例を記述している。
図14は、照合処理における不一致部分のチェックの説明図の一例であり、検査指紋変更画像の線幅を登録指紋変更画像の線幅と一致させたときの一致部分と不一致部分の関係を説明している。
【0156】
備考C(1):ステップClaにおける第1の移動刻み幅である増加刻み幅(Ks,Kh,Kv)の各値を粗い値として比較的大きい範囲を調べ、ステップClaで得られた{S,H,V}の準最適値を含む比較的小さい範囲をステップClbにおける第2の移動刻み幅である増加刻み幅(Ksb,Khb,Kvb)の各値を細かい値として調べることにより、位置合わせにおける移動の範囲を大きくしたときに、すべてに細かい増加刻み幅を用いる場合よりも処理量の削減を図ることができる。
【0157】
手順CのステップC1(3段階の多段階化)において、第1,2段階では移動の各値の増加刻み幅を1よりも大きくすることができ、第2、第3段階では前段階で定まったS,H,Vの準最適値を基点として、前段の線幅等により定まる範囲で照合を行えばよく、かつ第1、第2段階では登録情報の黒画素を、登録情報黒画素探索増加刻み幅Krを2以上とすることにより一定個数飛び越して用いる飛び越しにより、登録指紋の黒画素数を限定できるため、照合の処理量(位置合わせ探索回数にほぼ比例)を削減できる。各移動範囲の最大値と最小値(Smin,Smax,Hmin,Hmax,Vmin,Vmax)は指紋入力時の指の最大許容移動範囲などにより定めておく。ステップCldは、ステップC1でのT1の確定のためにある。
【0158】
ここで、次の性質がある。移動範囲は大きいほど探索回数が大きくなる。増加刻み幅は小さいほど探索回数が大きくなる。途中段階での増加刻み幅は、各段階の直前段階、及び直後段階の増加刻み幅を考慮して定める。最後の段階以外は、飛び越し探索が可能である。移動範囲、増加刻み幅、及び飛び越し探索の設定が不適当であると、誤認識が生じ易くなる。
ステップC3bでは、検査指紋変更画像の線幅を登録指紋変更画像の線幅に近似して、不一致部分率を求めたが、登鋒指紋変更画像の線幅を検査指紋変更画像の線幅に近似して、不一致部分率を求めることも可能である。
【0159】
(13)画像一致性チェック補助手順
画像一致性チェック補助手順(手順W)の処理概要は次のとおりである。登録指紋についてのサブテンプレートRT(0)又は非サブテンプレートRB(0)の各画素アドレス(XR,YR)について、登録指紋(XR,YR)の近似的中心点(XRC,YRC)を、検査指紋(XT,YT)の近似的中心点(XTC,YTC)と一致させるように平行移動する。次に、登録指紋の座標軸を回転し、変換後の黒画素アドレス(XR@,YR@)が、検査指紋変更画像の指紋領域内で黒画素かどうかを調べ、平行移動も行う。
【0160】
RT(S,H,V)の場合は、S,H,Vの各値における一致率T1が最大となるときのS,H,V,及びT1,Nlm,Nlcを求める。RB(S,H,V)については、S,H,Vがそれぞれただ1つの場合である。なお、T1とT2,NlmとN2m,NlcとN2cは、手順Wでは、ほぼ同様に扱えるため、T、Nm、Ncと呼ぶ。
【0161】
手順Wの入力情報は、登録指紋変更画像の指定部分(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)の黒画素アドレス集合、座標軸の角度変換量S(最小値,最大値,増加刻み幅)、登録指紋変更画像の座標軸の水平移動量H(最小値,最大値,増加刻み幅),登録指紋の座標軸の垂直移動量V(最小値,最大値,増加刻み幅)、検査指紋変更画像、及び登録指紋黒画素飛び越し探索の飛び越し数J等である。ここで、移動範囲は、全体区間または部分区間である。
【0162】
登録情報黒画素探索増加刻み幅Krは、登録指紋変更画像黒画素と検査指紋変更黒画素の照合のときに、登録指紋変更画像黒画素を探索する増分を指定するものであり、例えばKr=1のときは、すべての登録指紋変更画像黒画素が探索され、Kr=2のときは、1つおきに登録指紋変更画像黒画素が探索される。
手順Wの出力情報は、入力情報について、登録指紋の最適座標軸回転角度S、最適座標軸水平移動量H、最適座標軸垂直移動量V、指定領域(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)の登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の一致黒画素数Nm,指定領域の登録指紋変更画像の総黒画素数Nc,及び一致率Tである。
【0163】
図15は、照合処理における画像一致性チェック補助手順(手順W)の概略の流れ図の一例である。手順Wの処理手順の一例を次に示す。
(手順W)
ステップW1(角度Sの選択):
角度Sを入力情報により、指定された区間について、Sの最小値から最大値まで、Sの増加刻み幅で順に選択し、ステップW2へ行く。(すなわち、Sの最小値がSmin(Is)、最大値がSmax(Is)、増加刻み幅がKsのときは、S=Smin(Is),Smin(Is)+Ks,…,Smax(Is)まで変化させる。)
【0164】
ステップW2(角度Sによる座標変換):
入力された登録指紋変更画像の黒画素集合(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)について、登録情報黒画素探索増加刻み幅Krにより探索される対象の黒画素アドレス(XR,YR)に対して、
(a)S=0のとき
XR@=XR−XRC+XTC
YR@=YR−YRC+YTC
とする。
【0165】
(b)S≠0のとき
入力された登録指紋変更画像の黒画素集合(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)についてのすべての黒画素アドレス(XR,YR)に対して、登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)を検査指紋の近似的中心点(XTC,YTC)に合わせる平行移動の後に、(XTC,YTC)を中心とする角度Sの座標軸回転を行う。このことは、
XR@=(XR−XRC)・cos(S)+(YR−YRC)・sin(S)+XTC
YR@=−(XR−XRC)・sin(S)+(YR−YRC)・cos(S)+YTC
により行える。これにより、H=V=0のときの新登録指紋のすべての黒画素アドレス(XR@,YR@)の集合を求める。
【0166】
以上により、登録指紋の近似的中心(XRC,YRC)を中心に登録指紋の座標軸をS度回転し、かつ水平移動量H=垂直移動量V=0としたときの新登録指紋のすべての黒画素アドレス(XR@,YR@)の集合が求まる。
【0167】
ステップW3(一致率Tの計算):
ステップW3a:
一致黒画素数カウンタNm及び登録指紋変更画像総黒画素数カウンタNcを、それぞれ0に初期設定する。
ステップW3b:
(XR@,YR@)の集合の各アドレスについて、検査指紋変更画像を調べ、
(a)指紋領域内の黒画素であれば、一致黒画素数カウンタNmに1を加算し、かつ登録指紋黒画素数カウンタNcにも1を加算する。
(b)指紋領域内の白画素又は指紋領域外(黒画素でも白画素でもない扱い)であれば、登録指紋黒画素数カウンタNcに1を加算する。
ここで、サブテンプレートの照合処理では、このときの{S,H,V}についての照合の途中放棄が可能かどうかを調べる。
【0168】
すなわち、調べる登録指紋情報は黒画素アドレスの集合であるから、これを探索順にk個の連続区間に区分し、区間i(i=1,2,…,k)の終了ごとに、
カウンタNc=Nci
となったとして、このときのNmをNmi,(i=1,2,…,k)とすると、S,H,Vの値により定まるパターンの途中までの一致の度合いは、Nmi/Nciであるから、定数{Tci;i=1,2,…,k}について、
Nmi/Nci<Tci,(i=1,2,…,k)
(Tci及びkは定数。備考W(1)参照。)の場合は、以後のチェックをしても見込みないので、そのときのS,H,Vは、途中放棄して、次のS,H,Vの値に行くために、ステップW4に行く。
【0169】
次の処理(照合時の近傍画素探索)を選択的に行うことができる。(この近傍画素探索の処理は、サブテンプレートRTの各段階ごとに、また、非サブテンプレートRBについて、それぞれ選択して適用可能である。)
任意の画像内アドレス(Aとする)の登録指紋変更画像の黒画素が検査指紋変更画像のアドレスAで黒画素のとき、完全一致と呼ぶ。
【0170】
任意の画像内アドレス(Aとする)の登録指紋変更画像の黒画素が検査指紋変更画像の同じアドレスAでは白画素のときに、検査指紋変更画像のアドレスAの近傍アドレスを調べて、黒画素があるときは、アドレスAの登録指紋変更画像の黒画素は、検査指紋変更画像の黒画素と一致(完全一致と区別する必要があるときは、近傍一致と呼ぶ)と判定する。このとき、登録指紋変更画像の黒画素が照合のときに、検査指紋変更画像の同じアドレスの近傍一致の黒画素を2度以上は参照しないようにし、かつ、検査指紋変更画像の同じアドレスの完全一致の黒画素を2度以上は参照しないようにする。このために、次の操作を行う。
【0171】
検査指紋変更画像をメモリの作業域に退避しておく。完全一致または近傍一致によって、登録指紋変更画像の黒画素と一致と判定した検査指紋変更画像の黒画素は、画像メモリの画素値を黒画素と白画素の輝度値以外の中間値(一例としては、黒画素の輝度が0、白画素の輝度が255のときは、完全一致の輝度がBa(黒画素と白画素の輝度以外の値であり、例えば50)、近傍一致の輝度がBb(例えば、100))に変更する。登録指紋変更画像黒画素の検査指紋変更画像黒画素に対する照合では、同じ画像内アドレスの完全一致の検査指紋の黒画素を2度は参照しないようにすることを、すでに参照した画像メモリは中間値となっていることから、チェックする。1つの{S,H,V}の組による登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の照合が終了時には、検査指紋変更画像を作業域の退避情報により、元の状態に戻す。
【0172】
ステップW3c:
(XR@,YR@)の集合のすべてのアドレスについて、ステップW3bを終了した場合かつ、入力がサブテンプレートRT(0)の場合は、
T=Nm/Nc
を計算する。そして、このときの{S,H,V}について、Nm,Nc,Tを記憶する。
【0173】
ステップW4(HとVによる平行移動):
H=V=0のときの新登録指紋黒画素アドレス集合(X@,Y@)について、H,V格納域に設定されているH,Vを順に選択(H=V=0のときは,すでにステップW3で計算ずみ)し、Hの最小値から最大値まで、及びVの最小値から最大値まで、順次に各増加刻み幅で変化させたとき(すなわち、Hの最小値がHmin、最大値がHmax、増加刻み幅がKhのときは、H=Hmin(Ih),Hmin(Ih)+Kh,…,により最大Hmax(Ih)まで変化させる。Vの最小値がVmin(Iv)、最大値がVmax(Iv)、増加刻み幅がKvのときは、V=Vmin(Iv),Vmin(Iv)+Kv,…,により最大Vmaxまで変化させる)、個々の{S,H,V}について、(X@−H,Y@−V)が平行移動後の新登録指紋黒画素アドレス集合となるので、個々の{S,H,V}の組み合わせについて、ステップW3と同じ処理を行う。
【0174】
ステップW5(未処理のSのチェック):
未処理のSの値があるとき,ステップW1に行く。
未処理のSの値がないとき,ステップW6に行く。
ステップW6(最大の一致率の判定):
サブテンプレートRT(0)のときは、Sの各値と、H=Hmin〜Hmax,V=Vmin〜Vmax,の変化による各{S,H,V}について、T=Nm/Ncが最大となるときのS,H,V,及びT,Nm,Ncを求め、出力情報とする。S,H,Vがそれぞれ1つだけ入力されている場合にも、T,Nm,Ncを出力情報とする。(手順W終り)
【0175】
図16は、照合処理における近傍画素探索の説明図の一例であり、図16(a)は、登録指紋の登録情報の黒画素アドレスAについて、検査指紋変更画像のアドレスAが黒画素のときは登録指紋変更画像黒画素アドレスAと検査指紋変更画像黒画素アドレスAは完全一致であり、また、検査指紋変更画像アドレスAが黒画素でないときは、例えば、検査指紋変更画像アドレスBが黒画素であれば、登録指紋変更画像黒画素アドレスAと検査指紋変更画像アドレスAは近傍一致となることを表している。また、図16(b)は、完全一致と近傍一致の相互関係であり、一度、完全一致または近傍一致として参照された検査指紋変更画像の黒画素は、別の登録指紋変更画像の黒画素アドレスから重複して完全一致または近傍一致として扱われることのないように重複チェックを行うべきであることを示している。
【0176】
すなわち、登録指紋変更画像黒画素aは検査指紋変更画像黒画素dと完全一致であり、登録指紋指紋変更画像黒画素bは検査指紋変更画像黒画素eと近傍一致であり、登録指紋変更画像黒画素cは検査指紋変更画像とは不一致であり、完全一致のチェックおよび近傍一致のチェックのときに、すでに照合された黒画素dまたは黒画素eを、重複して一致とすることはしないことを示している。
なお、近傍一致と判定するための探索範囲としては、例えば、4近傍や8近傍があり、入力時の画像の歪の状況などを考慮して、設定することができる。
【0177】
備考W(1):ステップw3bにおけるTci,(i=1,2,…,k)の値は、0≦Tci≦1であるが、例えば次のように定める。登録指紋変更画像の全黒画素数をNcとすると、Nci/Nc,(i=1,2,…,k)は処理の進行状況を表しており、とり得る範囲は0≦Nci/Nc≦1である。Nciが増加してNcに近づくに従って、Nmi/Nciは、このときに調べている{S,H,V}に対しての一致率であるNm/Ncに近づくから、TciはNciが大きいほど大きく設定することができる。
【0178】
Tciは大きいほど途中放棄の範囲が広くなり、処理量の削減効果が大きくなるが、反面誤認識も発生しやすくなるので、適当な値を設定する必要がある。kの設定値により、その計算の最大回数が定まる。照合の途中放棄が1回行われれば、以後はそのときの{S,H,V}の値についての以後の途中放棄可否の計算は不要である。Tciの具体的な数値は、対象とする画像の特性に依存して定める必要がある。また、照合の途中放棄の範囲を定める条件式は、途中までの一致の度合いを定めるものであれば、手順Wで示した例に限定されない。
【0179】
備考W(2):ステップW2の式は次の意味である。ステップW2において、アドレス(XR,YR)のすべてについて、登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)を検査指紋の近似的中心点(XTC,YTC)に一致させる平行移動後の新アドレスは、
XR#=XR−(XRC−XTC)
YR#=YR−YRC−YTC)
であり、(XR#,YR#)が新アドレスとなる。次に、(XTC,YTC)を中心とする角度Sの座標軸回転を行う。
【0180】
このことは、
XR@=(XR#一XTC)・cos(S)+(YR#−YTC)・sin(S)+XTC=(XR−XRC)・cos(S)+(YR−YRC)・sin(S)+XTC
YR@=−(XR#−XTC)・sin(S)+(YR#−YTC)・cos(S)+YTC=−(XR−XRC)・sin(S)+(YR−YRC)・cos(S)+YTC
により求めることができる。ここで、三角関数sin(・),COS(・)の値は、あらかじめ角度Sの変動の範囲の値を保持しておいてよい。
【0181】
(14)登録処理と照合処理の流れ
図17は、指紋の登録処理、及び照合処理の概略の流れ図の一例である。登録処理は、指紋の登録情報を画像処理装置1のメモリ6に登録する処理である。照合処理は検査指紋と登録指紋の一致性を判定する処理である。指紋の入力から、登録又は照合までの流れの概要を以下の手順Zに示す。
【0182】
(手順Z)
ステップZA1〜ステップZA5は、登録処理と照合処理に共通な処理である。
ステップZA1:
指紋を画像入力装置2から、画像メモリ4に入力する。
ステップZA2:
画像メモリ4の画像10にある指紋の濃淡画像の平滑化を行う。
【0183】
ステップZA3:
画像10を手順Bにより二値化と背景分離を行う。
ここで、二値化後に、二値画像上のノイズを削減するために、二値画像に対して平滑化と二値化を行ってもよい。
ステップZA4:画像10にある指紋画像の近似的中心点を求める。(ステップZA1〜ステップZA4終り)
【0184】
以後の処理は、登録処理と照合処理で分かれる。
ステップZR1〜ステップZR2は、登録処理の場合であり、登録指紋の登録情報をメモリ6に登録する。
ステップZR1:
画像10にある登録指紋二値画像(第1画像)に指紋領域内で細め処理を行い、登録指紋変更画像(第1変更画像)を得る。
ステップZR2:
登録指紋の登録情報の処理(手順R)を行う。(ステップZR1〜ステップZR2終り)
【0185】
ステップZC1〜ステップZC2は、照合処理の場合であり、登録指紋と検査指紋の照合を行う。
ステップZC1:
画像10にある検査指紋二値画像(第2画像)に黒画素比率一定化または細め処理を行い、検査指紋変更画像(第2変更画像)を得る。黒画素比率一定化は、ステップZA3で行っている場合には、重複して行う必要はない。
ステップZC2:
照合処理(手順C、手順W)により、登録指紋と検査指紋の一致性を判定する。(ステップZC1〜ステップZC2終り)
【0186】
画像の登録処理では、複数の画像を順次に入力して保持し、それらの画像について、照合を行い、最も一致率のよい画像を登録画像とすることができる。図18は、複数の入力画像から最良の登録指紋を選択して行う登録の処理の概略の流れ図の一例である。その手順の例を手順RRに示す。
【0187】
(手順RR)
ステップRR1:
指紋画像を画像メモリに入力し、入力された指紋画像をファイルに格納する。
この操作を規定数繰り返す。
(ここでは、規定数が3個の場合を述べる。それぞれの指紋画像のファイル名を、例えば、z1,z2,z3とする。)
【0188】
ステップRR2:
入力された複数の指紋について、次の組み合わせで照合を行い、一致のとき、それぞれのテンプレート一致率T3をメモリに記憶する。
途中、1つでも照合不一致が発生時は、登録処理は打ち切り、ステップRR1から再実行する。
登録指紋z1と検査指紋z2の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q12とする。
【0189】
登録指紋zlと検査指紋z3の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q13とする。
登録指紋z2と検査指紋z1の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q21とする。
登録指紋z2と検査指紋z3の照合を行い、最終判定が一致、のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q23とする。
【0190】
登録指紋z3と検査指紋z1の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q31とする。
登録指紋z3と検査指紋z2の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q32とする。
最終判定が一致する数は、規定条件以上でなければならない(例えば、上述のように6回の照合処理を行うときは、例えば、4個以上などの規定条件を設けることができる)。
【0191】
次に、各入力画像についての平均一致率を求める。例えば、すべてが一致した場合には、
z1については、平均一致率Ql=(Q12+Q13)/2とする。
z2については、平均一致率Q2=(Q21+Q23)/2とする。
z3については、平均一致率Q3=(Q31+Q32)/2とする。
【0192】
ステップRR3:
平均一致率Qi={Q1,Q2,Q3}の内で最大のQiを求め、そのiに対応する指紋ziの登録情報で登録する。(手順RR終り)
【0193】
ここで、1つの指紋を登録するときの入力画像の数は1以上の任意の値に設定可能である。入力画像数を多くする方が、質のよい画像を登録指紋画像として選定できる可能性が高まるが、その反面、登録処理量は多くなるので、それらの兼ね合いを考慮して入力画像数を定める。入力画像の相互間の照合における組み合わせの選択は、上記の如くすべての組み合わせでなく、一部分の組み合わせを選定してもよい。登録する指紋画像を選択するための手段は、上記の平均一致率に限定されるものではなく、別の式を用いてもよい。
【0194】
(15)1対Nの照合
これまでに記述した実施の形態の照合は、1つの検査指紋と1つの登録指紋の登録情報が一致するかどうかを判定することであった。これを、1つの検査指紋が、任意数の登録情報の中の少なくとも1つと一致するかどうかを判定するには、1つの検査指紋と1つの登録情報が一致するかどうかの判定を、各登録情報に対して順次行い、一致するまで行えばよいことは明らかである。しかし、その方法では、登録情報の数が多くなると、照合処理量が多くなるという欠点がある。
任意数の登録情報の中から、1つの検査指紋と一致する1つの登録情報を見つければよいときには、次の手順NAを実行することができる。図19は、1対Nの照合に係わる説明図と概略の流れ図の一例である。検査指紋と登録情報の関係を図19(a)に示す。概略の流れ図を図19(b)に示す。
【0195】
[手順NA]
{S,H,V}の位置合わせ区間を1回目、2回目、…n回目で、分割範囲に区分しておく。ここで、元の{S,H,V}範囲は、すべての分割範囲の和集合である。分割範囲は、部分位置合わせ区間とは独立に設定してもよいし、部分位置合わせ区間を利用してもよい。分割範囲の簡単な例は、第1回目は、一致する場合が多い範囲(例えば、{S=0,H=Hmin〜Hmax,V=Vmin〜Vmax}の部分位置合わせ区間)を選択し、第2回目は、第1回目以外の分割範囲とすることである。
【0196】
(手順NA)
ステップNA1:
検査指紋を入力する。
ステップNA2:
分割範囲を順次に選択する。
第1回目の分割範囲に対する照合では、検査指紋と登録情報(i=1,2,・・・,n)の照合を、1回目の{S,H,V}範囲について行うことを、一致する登録情報が発見できるまで行う。第1回目の照合で、対象とするすべての登録情報の中から一致する登録情報を発見できなかつたときには、第2回目の照合に行く。
【0197】
第2回目の分割範囲に対する照合では、検査指紋と登録情報(i=1,2,・・・,n)の照合を、2回目の{S,H,V}範囲について行うことを、一致する登録情報が発見できるまで行う。第2回目の照合で、対象とするすべての登録情報の中から一致する登録情報を発見できなかつたときには、第3回目の照合に行く。
以下同様に、一致する登録指紋画像を発見できるまで、照合処理を行う。一致する登録指紋画像を発見できたときは、そこで終了する。一致する登録指紋画像を発見できないときは、最後の分割範囲まで処理を行って終了する。(手順NA終り)
検査指紋と一致する登録情報は、この手段により、一致する登録情報を発見できるまでの照合処理量を、削減することができる。
【0198】
(16)不一致部分率の代替
照合処理のところで述べた不一致部分率の判定の代替に次の手段を用いることも可能である。
登録用の二値画像と検査用の二値画像を照合する場合に、該登録用二値画像の登録情報と、該登録用二値画像の黒白を反転した画像(反転登録画像)の登録情報も別に登録しておき、検査用の二値画像と登録情報の一致性を照合し、更に、検査用の二値画像の反転画像と反転登録画像の登録情報の一致性を照合し、これら2つの照合の最終判定が、共に一致であるときに、登録用の二値画像と検査用の二値画像は、一致であると判定して、不一致の度合い(例えば不一致部分率)によるチェックを省略する。ただし、この手段を選択するときは、不一致部分率の計算を省略できる反面、登録情報が増加すること、及び照合時間が増加するという欠点が生じる。登録に係わる処理の手順を手順RVRに示す。照合に係わる処理の手順を手順RVMに示す。
【0199】
(手順RVR)
ステップRVR1:
登録指紋の登録処理を行い、登録情報を登録する。
ステップRVR2:
登録指紋を二値化するときに白画素と黒画素を反転し、その二値画像(反転二値登録画像と呼ぶ)についての登録処理を行い、登録指紋の反転登録情報を登録する。(手順RVR終り)
【0200】
(手順RVM)
ステップRVM1:
検査指紋と登録情報の照合処理を行う。ここで、不一致部分率のチェックは省略する。
ステップRVM2:
検査指紋を二値化するときに、白画素と黒画素を反転し、その二値画像(反転二値検査画像と呼ぶ)と登録指紋の反転登録情報との照合処理を行う。ここで、不一致部分率のチェックは省略する。(手順RVM終り)
【0201】
図20は、反転画像も用いるときの登録処理と照合処理の概略の流れ図の一例であり、図20(a)は、登録に係わる処理の概略の流れ図、図20(b)は、照合に係わる処理の概略の流れ図を表している。
【0202】
(17)拡張または変形
本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、例えば、次のような拡張又は変形に対しても適用が可能である。画像の入力方法、平滑化の処理、二値化の処理、背景分離の処理、補正処理、近似的中心点を求める処理、細め処理、及び照合処理における一致率、不一致部分率の計算式などについては、本実施の形態に限定されるものではなく、他の方法(例えば、公知の方法)を用いる変形、拡張、又は部分的省略が可能である。X座標とY座標の設定方法は、任意である。位置合わせは、回転のずれが無視できるほど小さいときは、可能性のある平行移動だけの位置ずれで調べて、最も一致率がよいときの一致率により判定してもよい。
【0203】
手順WのステップW2において、XR@とYR@を求める式は、回転と平行移動を行える変換であれば使用可能であり、本実施の形態に限定されるものではない。例えば、
XR@=XR・cos(S)+YR・sin(S)
YR@=−XR・sin(S)+YR・cos(S)
を用いることもできる。また、座標変換又は幾何学的変換の使い方は自由である。サブテンプレートの回転や平行移動を行った値を登録情報として追加することにより、照合のための処理量を削減できる(この場合、メモリ量は増加する)。
【0204】
本実施の形態では、画像が指紋の場合を述べたが、画像が線により構成されていると見なせる場合には、本発明を適用できる。サブテンプレートと非サブテンプレートの区分は、自由であり、両者を区分しないこと、又はより多くの区分を設けるなどの拡張がある。
また、請求項に示した手段は、1つ以上を個々に選択して、任意の画像処理を行う装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の一実施の形態に係る指紋の識別システムの一構成例を示す図である。
【図2】画像メモリ及びメモリの使用例を説明する図である。
【図3】画素集合の一例を示す図である。
【図4】指紋領域について、サブテンプレートと非サブテンプレートの区分の例を示す図である。
【図5】画像の入力と有効性を連続して確認して、画像を確定する手順INの流れの概略を示す図である。
【図6】画像の処理範囲の変換の一例を説明する図である。
【図7】画像の部分領域への分割の一例であり、部分領域の輝度平均値の変換を説明する図である。
【図8】輝度が微少変動な部分領域における二値化処理の概略の流れ一例を示す図である。
【図9】部分領域に分割された二値画像について、二値化の黒画素の比率を一定化するための処理の概略の一例を示す図である。
【図10】指紋の有効部分領域テーブルの一例を示す図である。
【図11】ホール(白画素の集合)と非ホールの一例を説明する図である。
【図12】二値画像のメモリ形式から圧縮形式への変換の一例を説明する図である。
【図13】手順Cに基づく照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図14】照合処理における不一致部分のチェックの一例を説明する図である。
【図15】照合処理における画像一致性チェック補助手順(手順W)の概略の流れの一例を示す図である。
【図16】照合処理における近傍画素探索の一例を説明する図である。
【図17】指紋の登録処理、及び照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図18】複数の入力画像から最良の登録指紋を選択して行う登録の処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図19】1対Nの照合に係わる説明図と概略の流れの一例を示す図である。
【図20】白黒反転画像も用いるときの登録処理と照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0206】
1…画像処理装置、2…画像入力装置、3…A/D変換器、4…画像メモリ、5…中央処理装置(CPU)、6…メモリ、7…撮像装置、10,11…画像、12…プログラム及びデータ、13…指紋の登録情報。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル化された画像(指紋、印影、図形、文字など)の解析や認識等のための画像処理を画像処理装置(すなわち、電子計算機、電子交換機、通信制御装置、ICカード、画像認識装置、画像照合装置、画像検査装置などにおけるハードウェア及び/又はソフトウェア)により行う場合、性能向上(照合精度向上、処理量削減,データ量削減)のための画像処理の手段を1つ以上備える画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象とする画像の例として、画像が指紋の場合を説明する。指紋は、指の隆線の紋様である。なお、谷線(隆線と隆線の間)は隆線で定まるので、隆線の代わりに谷線の描く紋様を指紋として用いてもよい。指紋として扱う線を指紋線と呼ぶ。本人確認のための指紋の入力装置は、撮像装置(例えば、CCD(電荷結合素子)カメラ)から入力する方式として、プリズム方式(例えば、非特許文献1参照)、及びホログラム方式(例えば、非特許文献2参照)などがある。
【0003】
撮像装置から入力されたアナログ情報の指紋画像は、A/D(アナログ/ディジタル)変換器により、ディジタル化された指紋の濃淡画像に変換される。この指紋の濃淡画像は、画像メモリの画素のアドレスである座標(X,Y)と、画像メモリの各画素アドレスの構成要素である画素の輝度により表される。X軸、Y軸の設定方法は任意である。指紋の凹凸を直接に二値画像に変換して、指紋画像としてもよい。
【0004】
指紋の濃淡画像は、平滑化や隆線の方向などにより補正を行える。指紋の特徴を表す特徴点としては、端点、分岐点、交差点がある。ディジタル化された指紋の濃淡画像の特徴点は、指紋画像を二値化し、更に細線化して、特徴点を表す画素の範囲(例えば、特徴点を中心とする3×3個の画素集合)のパターンと同じパターンが細線化画像に存在することにより検出できる(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
指紋の照合において、あらかじめ照合のための情報をメモリに登録しておく指紋を登録指紋(登録画像または登録指紋画像)、登録指紋との一致性を照合する指紋を検査指紋(検査画像または検査指紋画像)と呼ぶ。登録指紋と検査指紋の照合方式として、特徴点を用いる方式、隆線の方向を用いる方式、及び登録指紋と検査指紋の原画像同士のパターンマッチングによる方式などが知られている。細線化画像同士のパターンマッチングによる方式として、特許文献1には、登録指紋の細線化画像と検査指紋の細線化画像の重ね合わせによる照合方式が記述されている。
【0006】
平滑化は、指紋画像の雑音の影響を減らすための処理であり、例えば、任意の画素の近傍画素の値を用いる局所加重平均フィルタがあり、非特許文献4などに述べられている。
【0007】
二値画像の細線化は、線の対象とする種類の画素について、大部分(大部分とは、半分以上から全部までの意味とし、理想的には全部)の線幅を1画素とすることであり、対象とする種類の画素は、黒画素又は白画素のいずれか一方を選択できるが、黒画素として以後記述する。濃淡画像を二値化して、二値画像の細線化を行う方式として、黒画素の集合内で、外側にある黒画素を、黒画素の連結性(4連結又は8連結)を保持して順次に削除して行くヒルディッチ(Hilditch)の細線化方式などがある(例えば、非特許文献5、6、7参照)。非特許文献8においても濃淡画像又は二値画像の細線化方式が述べられている。
【0008】
濃淡画像を二値化して、二値画像にする方式は、例えば非特許文献9などに述べられている。二値化の方法として、P一タイル法が知られており、これは、二値化した後の対象画素(黒画素と白画素のいずれか一方)の全体の画素数に対する割合が、あらかじめ定めた値と等しくなるように、二値化のしきい値を定める方法であるが(例えば、非特許文献10参照)、この方法は、画像を部分領域に分割して二値化する場合には直接に適用できない。
【0009】
指紋の入力では、検査指紋と登録指紋で、位置ずれ(回転および平行移動)が生じるので、検査指紋と登録指紋の照合では、両指紋についての位置合わせが必要となる。位置合わせ方式(回転と平行移動)としては、隆線方向を用いる方式、代表特徴点と周辺特徴点による方式、平行移動のみを可能な範囲について試行錯誤し、最も一致数の多い場合を最終設定位置とする方式などが知られている。位置合わせのときに必要な座標変換や幾何学的変換の公式は、例えば、非特許文献11に述べられている。
【0010】
照合のときの位置合わせにおいて、指紋画像の近似的中心点を求めることが有用である。特許文献2では、隆線の勾配が急な方向を逐次に探索して中心点を求める方式が述べられている。非特許文献12においては、長方形の各辺の平行線との交点数を用いて、逐次に中心位置に接近する方式が述べられている。非特許文献13においては、走査線ごとに通過する隆線数を計数して線数の分布を求めている。
【0011】
非特許文献14では、登録指紋の細線化画像(又は細め処理を行った画像)から取得した黒画素と検査指紋の二値画像(又は細め処理を行った画像)の照合による方式を提案しており、その方式では、二値画像同士で照合を行う方式よりも処理量及びメモリ量が削減されている。
【0012】
登録情報のメモリヘの保存では、記憶量をできるだけ少なくする必要がある。本発明では、細め処理された二値画像(線図形)を登録情報として記憶する必要がある。線図形の記憶方法として、非特許文献15が知られているが、指紋のような複雑な場合への適用は困難である。
【0013】
【特許文献1】特開昭63−132386号公報、「指紋照合方法」.
【特許文献2】特公昭58−55548号公報、「図形中心位置決定方法」.
【非特許文献1】清水ほか著「プリズムを用いた指紋情報検出方法−全反射法と光路分離法の比較−」、電子通信学会論文誌、Vol.J68−D、No.3、pp.414−415(1985年).
【非特許文献2】井垣ほか著「ホログラフィック指紋センサを用いた個人照合装置」、電子情報通信学会技術研究報告、PRU87−31、pp.27−33、(1987年).
【非特許文献3】笹川ほか著「低品質画像への対応能力を高めた個人確認用指紋照合装置」、電子情報通信学会論文誌,Vol.J72−D−ll,No.5,pp.707−714(1990年).
【非特許文献4】高木・下田(監修)「画像解析ハンドブック」、pp.538−548、東京大学出版会(1991年).
【非特許文献5】田村(監修)「コンピュータ画像処理入門」、総研出版、pp.80−83(1985年).
【非特許文献6】田村著「多面的画像処理とそのソフトウェア・システムに関する研究」、電子技術総合研究所研究報告,pp.25−64、835号(1984年2月)
【非特許文献7】森ほか著「画像認識の基礎[1]」、pp.65−71、オーム社(1986年).
【非特許文献8】小林著「画像の細線化と特徴点抽出」、信学技報、PRU90−149、pp.33−38(1991年).
【非特許文献9】森ほか著「画像認識の基礎[1]」、PP.37−47、オーム社(1986年).
【非特許文献10】高木・下田(監修)「画像解析ハンドブック(東京大学出版会、1991年発行)」の503ページの記述.
【非特許文献11】プラストックほか著、郡山訳「コンピュータグラフィックス」、pp.84−88、マグロウヒルブック(1987年).
【非特許文献12】伊藤ほか著「中心点に着目した指紋画像の一分類法」、信学技報、PRU89−79、pp.15−22(1989年).
【非特許文献13】「指紋照合における基準点抽出に関する一検討」、昭和62年電子情報通信学会情報・システム部門全国大会、No.125.
【非特許文献14】小林著「指紋画像の照合方式の考察」、信学技報、PRU91−45、電子情報通信学会、pp.25−30(1991年7月).
【非特許文献15】フリーマンのチェーン符号による方法(例えば安居院・中嶋著「画像情報処理」、pp.113−114、森北出版(1991年).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
画像の解析や認識の性能を向上するために、処理量の削減、認識精度の向上、及び登録情報量の削減を図る。
例えば、従来、指紋画像の照合で、処理量の大きい処理は、指紋線の復元、細線化、及び照合の位置合わせである。画像の特徴点(端点、分岐点、交差点)による照合方式では、指紋線の復元のための処理量が大きく、かつ特徴点が不明確な場合や特徴点数が少ない場合の照合が困難である。登録指紋と検査指紋の原画像同士のパターンマッチングによる照合方式では、押捺時の指紋の隆線の幅には、指の圧力や乾燥状態により変動があるために、誤識別が発生しやすく、しかも、登録情報の格納のための記憶量が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする二値画像の2つの画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する手段を備えることを特徴としている。
【0016】
また、請求項2に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、分割された部分位置合わせ区間ごとに順次に照合処理を行って最終判定が最初に一致と判定できたときに、残った部分位置合わせ区間における照合は行わずに、両画像は一致と判定する手段を備えることを特徴としている。
【0017】
また、請求項3に記載の構成にあっては、黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、各部分位置合わせ区間内の1つの移動位置についての照合で、一方の画像の対象画素の集合を連続に分離して順次に他方の画像の対象画素との一致性を調べる場合に、各分離された対象画素集合のチェック終了ごとに、該分離された対象画素集合ごとの一致度チェック条件により途中までの一致の度合いを判定し、不一致であるときは、該移動位置での照合は不一致であると判定し、該移動位置についての残りの部分についての照合を放棄する手段を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項4に記載の構成にあっては、二値画像である登録画像と検査画像に対して、登録画像に細め処理を行った画像から登録情報を作成する手段と、検査画像の黒画素数の全体画素数に対する比率を黒画素比率規定条件内に設定する手段と、登録情報と検査画像の一致の度合いが一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段と、登録情報と検査画像の不一致の度合いが不一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段を備え、照合における一致性の判定として、一致の度合いが一致度規定条件内にあり、かつ不一致の度合いが不一致度規定条件内にあることを、登録画像と検査画像の一致性判定で合格するために必要な条件とする手段を備えることを特徴としている。
【0019】
また、請求項5に記載の構成にあっては、二値画像である検査画像と登録画像について、検査画像の黒画素と登録画像の黒画素を比較する照合処理手段の実行中に、登録画像の任意のアドレスAが黒画素であり、検査画像のアドレスAは白画素のときに、検査画像のアドレスAの近傍の規定範囲のアドレスを調べて黒画素があるときは、登録画像のアドレスAの黒画素は検査画像の黒画素と近似的に一致と判定し、かつ、以後の該検査画像と該登録画像の照合において、検査画像の近似的に一致と判定した黒画素が、登録画像のアドレスA以外の黒画素と重複して一致と判定することを排除する手段を備えることを特徴としている。
【0020】
また、請求項6に記載の構成にあっては、複数の画像を入力して保持する手段を備え、任意の2つの画像の照合を行う手段を備え、入力された複数の画像について、規定の組み合わせで順次に2つを選択して一方を登録画像、他方を検査画像として照合を行って一致の度合いを記憶して行き,最も一致の度合いが良好と判定できたときの登録画像を、入力された複数の画像の内の登録画像として選択する手段を備えることを特徴としている。
【0021】
また、請求項7に記載の構成にあっては、任意数N個(N≧2)の登録画像の中から、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を発見するための照合処理を実行する場合に、登録画像と検査画像の位置合わせ区間については、元の位置合わせ区間はすべての分割範囲の和集合であるように分離し、1つの検査画像とN個の登録画像の照合を、位置合わせの各分割範囲について行うことを、1つの検査画像と一致する1つの登録画像が発見できるまで順次に行う手段を備えることを特徴としている。
【0022】
また、請求項8に記載の構成にあっては、2つの二値画像について、登録画像に対する登録処理手段の実行中に、登録画像の登録情報と、該登録画像の輝度を反転した画像である反転登録画像の登録情報を登録しておく手段を備え、次に、照合処理手段の実行中に、検査画像と登録画像による登録情報とを照合し、該検査画像の輝度を反転した画像である反転検査画像と、反転登録画像による登録情報とを照合し、これら2つの照合結果が、共に合格であることを、登録画像と検査画像は一致であると判定するために必要な条件とする手段を備えることを特徴としている。
【0023】
〔作用〕
画像処理の性能向上のための画像の品質向上は、二値化された画像の歪補正の手段(請求項5を参照)、黒画素の比率の一定化と一致の度合い及び不一致の度合いを照合の条件とすることによる手段(請求項4を参照)、入力された1つ以上の画像の相互の照合により得られる最良の画像を登録する手段(請求項6参照)、を選択的に利用することより解決する。
【0024】
画像処理の性能向上のための照合の処理量の削減は、部分位置合わせ区間を最初からm個(m≧1,mはあらかじめ定めた定数)まで照合して、その間の最大の一致の度合いが規定値以下のときは、不一致と判定する手段(請求項1を参照)、照合の一致性の判定を部分位置合わせ区間ごとに順次に行い、一致と判定できたときには全体でも一致と判定し、以後の部分位置合わせ区間については照合は行わない手段(請求項2を参照)、照合の一致性の判定を部分位置合わせ区間ごとに順次に行い、部分位置合わせ区間内の途中で一致の度合いが規定以上でないと判定できたときには、その部分位置合わせ区間内の残りの部分についての照合は行わないで次の部分位置合わせ区間の処理に行く手段(請求項3を参照)、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を任意数の登録画像の中から発見する処理を行う場合の照合処理量を削減するために位置合わせ区間を分割範囲に分割して照合を行うことを各登録画像との照合に順次に適用する手段(請求項7を参照)、を必要に応じて選択的に用いることにより、解決する。
【0025】
画像処理の性能向上のために照合で不一致の度合い(不一致部分率)の計算を不要としたい場合には、反転画像の情報も反転登録情報とし、照合時には反転登録画像登録情報と反転検査画像との照合も行う手段により解決する(請求項8を参照)。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、請求項と実施の形態で述べた1つ以上の手段を選択して適用することにより、画像処理の性能を向上できる効果がある。
【0027】
請求項1とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、最初からm番目(m=1,2,…)までの部分位置合わせ区間について照合した段階で、全体の位置合わせ区間の照合が不一致であると判定できる場合があるので、照合の処理量を削減できる効果がある。
請求項2とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、部分位置合わせ区間を単位とする照合で、全体での照合も一致と判定できる場合があるので、照合の処理量を削減できる効果がある。
【0028】
請求項3とその実施の形態で記述した照合に係わる手段では、部分位置合わせ区間内での1つの移動位置についての不一致判定を、登録情報の黒画素集合の途中までの照合で放棄できる場合があり、かつこのチェックは黒画素集合の分割の境界だけで行えばよいのでチェックによるオーバヘッドもなく、照合の処理量を削減できる効果がある。
請求項4において示した手段を実行する装置では、入力される濃淡画像の変動に対して、検査画像の黒画素の比率を一定化できるので、照合の判定の確実性を高める効果がある。
【0029】
請求項5とその実施の形態で記述した照合手段では、画像の歪による変動に対して、登録画像の黒画素の近傍の情報もチェックするので、画像の線の歪変動に対処できる効果がある。
請求項6とその実施の形態で記述した登録処理に係わる手段では、複数の入力画像の内から、登録画像としたときに最良の画像を選択できるので、照合のときの一致性を向上できる効果がある。
【0030】
請求項7とその実施の形態で記述した照合処理に係わる手段では、位置合わせの移動範囲を分割範囲に分割して照合を行うことを、各登録画像との照合に順次に適用することにより、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を、任意数の登録画像の中から発見する処理を行う照合処理量を、削減できる効果がある。
請求項8において示した手段を選択する場合では、不一致部分率の計算を省略できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
実施の形態として、画像が指紋(指紋画像と呼ぶことがある)である場合を述べる。図1は、指紋の識別システムの一構成例である。画像入力装置2から入力された指紋は、画像処理装置1において処理される。画像処理装置1は、ディジタル化された指紋の濃淡画像、二値画像、及び各種の処理を行った画像を必要時に格納するための画像メモリ4、1つ以上のCPUである中央処理装置5、及びプログラム、データ、データの集合であるファイルなどの情報の記憶のためのメモリ6を備えている。メモリ6に特性の異なる記憶装置(例えば、半導体メモリと磁気ディスク)が混在する場合には、それらの相互間における情報の移動は、必要に応じてハードウェアやソフトウェアで行うものとする。
【0032】
画像メモリ4とメモリ6は、格納情報による区分であり、同じ記憶装置で実現してもよい。画像入力装置2は、撮像装置7を備えている。A/D変換器3は、アナログ情報をディジタル情報に変換する(ここで、直接にディジタル画像が得られる種類の画像入力装置を用いる場合は、A/D変換器は不要である)。ディジタル化された指紋の濃淡画像である指紋画像を格納する画像メモリ4における画素アドレスは、X座標とY座標により(X,Y)と表す。画素アドレス(X,Y)を、画素(X,Y)、もしくは、単に、(X,Y)と表すことがある。1つの画像を格納する画像メモリ4の部分を画面と呼ぶ。画像メモリ4は、1つ以上の画面を持つことができる。画素アドレスを、単に、アドレスと呼ぶことがある。
【0033】
画像メモリ4の各画面は、画素で構成され、その全部の画素アドレスの範囲を0≦X≦Xh、0≦Y≦Yhとすると、この画素アドレスの範囲内で更に指定された処理範囲が処理の対象となる。画素アドレスや画素数を含む計算により、画素アドレスや画素数に小数点以下の数が発生する場合には、小数点以下を切り捨て、四捨五入、又は切り上げのいずれかにより処理する。画素の値は輝度で表わされる。輝度のどの部分が隆線となるかは、画像入力装置2の処理方式と画像処理装置1における画像の処理とに依存し、いずれの場合でも隆線に対応する輝度の特性を画像処理装置1に事前に設定しておくことにより処理が可能である。
【0034】
1つ以上の画素の集合を画素集合と呼ぶ。指紋の識別において、画像処理装置1のメモリ6に登録するために画像入力装置2から入力される指紋の画像を登録指紋(登録画像または登録指紋画像)、検査のために画像入力装置2から入力される指紋の画像を検査指紋(検査画像または検査指紋画像)と呼ぶ。黒画素と白画素に二値化された画像において、指紋線としては、黒画素と白画素のいずれか一方を対象画素の種類として選定でき、それらの内のいずれかが隆線と谷線にそれぞれ対応していればよい。本実施の形態では、黒画素を指紋線として扱う。
【0035】
細線化は、大部分の線幅が1画素となるようにする処理のことであるが、本実施の形態では、元の二値画像の黒画素による画像に含まれるように黒画素集合の線幅を部分的又は全体的に細めることを細め処理と呼び、細め処理の結果得られる画像を細め画像と呼ぶ。したがって、細線化は、本実施の形態における細め処理の1つの形態である。なお、線幅は、任意の線の縁の点を定めたときに、その線内を通って他の縁に達する最小距離(画素数)と定義する。したがって、線幅は、線の縁の位置ごとに定まる。
【0036】
図2(a)は、画像メモリ4に格納される画像のデータの状況を示している。画像10の画面には、画像入力装置2から入力された画像から得られてディジタル化された画像(二値画像又は濃淡画像)を格納する。画像11の画面には、例えば入力時の画像を格納しておき、画像10の処理に利用できる。処理手段の選定により、画像11が不要な場合もあり、その場合には、画像メモリ4は、画像10だけでよい。画像メモリ4からメモリ6に画像を転写してメモリ6で画像処理を行ってもよい。図2(b)は、メモリ6に格納されるデータ等の状況を示しており、プログラム及びデータ12には、本実施の形態を実現するためのプログラム及びデータを格納し、登録情報13には、登録指紋画像の登録情報をファイルに格納して保存する。
【0037】
画像の画素には、輝度があり、輝度に対応した値を定めておく。画素アドレス(X,Y)における輝度をf(X,Y)で表す。画像入力方式に依存して、画像メモリ4に設定された濃淡画像を二値化して得られる場合と、画像メモリ4に直接に二値画像が設定される場合とがある。
【0038】
濃淡画像は、画素の輝度が複数存在する画像であり、その輝度の変動範囲は任意の濃淡画像を本発明の対象とすることができるが、説明の便宜上、本実施の形態では、数値例を記述する場合には、輝度は0から255までとし、輝度0が最も輝度が低い状態(黒)であり、輝度255が最も輝度が高い状態(白)であり、黒と白の輝度の中間値も連続して存在しえるとする。
【0039】
二値画像は、黒画素と白画素のみで表わされるが、黒画素と白画素のそれぞれの輝度に対応した値を定めておくものとする。黒画素が輝度の高い部分であるか低い部分であるかは、対象とする画像とその入力方法などにより定まるものであり、いずれの場合に対応させてもよい。本実施の形態では、輝度の値を考慮する必要のある場合(例えば、輝度に関連した数値例の記述)には、二値画像では、黒画素の輝度は0、白画素の輝度は255の場合を例として記述する。
【0040】
画像メモリ4に格納する画像の論理的な原点及び座標軸は、物理的な画像メモリ4の画素の位置と独立に定めることができる。X軸とY軸の設定は自由であるが、説明の便宜上、X方向は左から右(すなわち、Xの増加方向)に水平方向、Y方向は上から下(すなわち、Yの増加方向)に垂直方向とする。
1つ以上の画素の集合を画素集合と呼ぶ。図3(a)は3×3画素(すなわち、3×3個の画素)による画素集合(3×3画素集合)の例であり、図3(b)は4×4画素による画素集合(4×4画素集合)の例、図3(c)は4×3画素による画素集合(4×3画素集合)の例である。
図3(a)において、画素{Pl,P3,P5,P7}をP0の4近傍画素と呼び、画素{P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8}をP0の8近傍画素と呼ぶ。
【0041】
本発明の実施の形態で、除算は、分母が0でないときにだけ行うこととする。主な用語と記法の定義を次に示す。ただし、これらの記法の一部は、実施の形態に現れない場合もある。
[m]:任意の数mの小数点以下切り捨てを表す。
||:任意の2つの数のそのままの値による連結を表す。例えば、1||0||1=101である。
〜:任意の2つの数(または記号)について、a〜bは、aからbまでの意味とし、かつ、a,bは共に該範囲に含まれることとする。
f(X,Y):画素のアドレス(X,Y)における輝度である。
【0042】
FA:指紋領域である。指紋境界は、指紋領域内として扱う。
(XC,YC):指紋の近似的中心点のアドレスである。
(XRC,YRC):登録指紋の近似的中心点のアドレスである。
(XTC,YTC):検査指紋の近似的中心点のアドレスである。
Rth:登録指紋画像(濃淡画像又は二値画像)から得られる登録指紋二値画像(第1画像)に、少なくとも細め処理を行うことにより得られた登録指紋変更画像である。
【0043】
Tth:検査指紋画像(濃淡画像又は二値画像)から得られる検査指紋二値画像(第2画像)に、少なくとも黒画素の比率の調整または細め処理を行った検査指紋変更画像である。
RA:登録指紋変更画像Rthにおける指紋領域内にある全部の黒画素のアドレス(X,Y)の集合である。RAは、RT(0)、RB(0)、及び非使用指紋領域内黒画素の和集合である。
【0044】
RT(0):RT(0)は、RAの部分集合である。RT(0)は,RAの小領域として、1つ以上の任意の数の分離した画素集合の領域を指定できる。
RT(0)をサブテンプレートと呼ぶ。サブテンプレートを抽出する画像の部分をサブテンプレート部分と呼ぶことがある。サブテンプレートは、画像の位置合わせに用いる(図4参照)。
【0045】
RB(0):RB(0)は、RAの部分集合であり、1つ以上の任意の数の分離した画素集合の領域を指定できる。RB(0)を非サブテンプレートと呼ぶ。非サブテンプレートを抽出する画像の部分を非サブテンプレート部分と呼ぶことがある。非サブテンプレートは、画像の位置合わせに用いない。RT(0)とRB(0)は重複しないように設定する(図4参照)。
【0046】
RT(S):登録指紋変更画像の座標軸を、任意に定めた点を中心にS度回転させたときのサブテンプレートRT(0)の黒画素のアドレス(X,Y)の集合である。
RT(S,H,V):登録指紋変更画像の座標軸を、任意の点(例えば、登録指紋の近似的中心点)を中心にS度回転後、水平移動H、垂直移動Vを行った後の座標軸におけるサブテンプレートRT(0)のアドレスの集合である。RT(0,0,0)=RT(0)、RT(S,0,0)=RT(S)である。(なお、移動位置を指定するS,H,Vの一組の値により、登録指紋変更画像を座標変換により移動した1つのパターンが定まる。)
【0047】
RB(S,H,V):登録指紋変更画像の座標軸を、任意の点(例えば、登録指紋の近似的中心点)を中心にS度回転後、水平移動H、垂直移動Vを行った後の座標軸における非サブテンプレートRB(0)のアドレスの集合である。RB(0,0,0)=RB(0)、RB(S,0,0)=RB(S)である。
Nlm:サブテンプレート一致黒画素数であり、登録指紋変更画像のサブテンプレートの黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とで一致した黒画素数を表す。
【0048】
Nlc:サブテンプレート総黒画素数であり、登録指紋変更画像のサブテンプレートの総黒画素数を表す。
N2m:非サブテンプレート一致黒画素数であり、登録指紋変更画像の非サブテンプレートの黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とで一致した黒画素数を表す。
N2c:非サブテンプレート総黒画素数であり、登録指紋変更画像の非サブテンプレートの総黒画素数を表す。
Nm:Nlm又はN2mを表す。カウンタNmは、Nmの計算のための計数器の値である。
Nc:Nlc又はN2cを表す。カウンタNcは、Ncの計算のための計数器の値である。
【0049】
部分領域:画像を複数の部分に分割したときの個々の領域である。
区間[a,b]:任意の値a,bについて、aからbまでの両端を含む区間を表す。
位置合わせ区間:2つの画像の位置合わせのために画像を移動する範囲(各方向別の移動区間の集合)を表し、{回転移動区間,水平移動区間,垂直移動区間}で構成される。
【0050】
部分位置合わせ区間:位置合わせ区間を1つ以上の部分集合に分けたときの個々の位置合わせ区間である。全体の位置合わせ区間は、1つ以上の部分位置合わせ区間の和集合である。
移動位置:1組の{回転移動位置,水平移動位置、垂直移動位置}で表される位置である。
登録指紋(登録画像):登録指紋画像、または登録指紋変更画像。
検査指紋(検査画像):検査指紋画像、または検査指紋変更画像。
しきい値:評価値としきい値の大小の比較により何らかの判定を行うための定数値。評価値ごとにしきい値の定め方は異なる。
【0051】
図4は、画像メモリ4における画像10において、指紋境界により定まる指紋領域と、サブテンプレートRT(0)を抽出する部分及び非サブテンプレートRB(0)を抽出する部分の関係の例を表している。例1〜例3は、サブテンプレート部分と非サブテンプレート部分の例である。
【0052】
指紋画像の処理を行うための手段を以下に述べる。なお、各手段の手順におけるステップで、その次に行う処理の記述がない場合は、直後のステップに進むものとする。各手段で用いる定数は、画像処理装置1及び画像入力装置2における種々の条件を考慮して、静的または動的に適切な値を設定することとする。各ステップとそれらが連動した処理の実現は、処理の内容が同じであれば、変形可能である。
【0053】
(1)画像入力装置から画像メモリヘの入力確定契機の設定手段
画像入力装置2から画像メモリ4に入力される画像10は、撮像装置7の対象物(すなわち、対象が指紋の場合には、画像入力装置2に入力する指)の移動により変化するため、画像メモリ4の画像10を確定する契機を定める必要がある。このための処理の方法には、
(a)画像入力装置2から画像処理装置1に対して、信号により画像の確定契機を通知する方法、
(b)利用者が、画像処理装置1に画像の確定契機を指示する方法、又は、
(c)画像処理装置1が、画像の確定契機を、画像メモリ4の画像10の状態を調べて定める方法、
がある。ここでは、(c)の方法の例を示す。
【0054】
指紋の濃淡画像が正しく入力された状態では、輝度平均値は、一定の範囲の値になり、かつこの状態が連続するときに安定した画像が得られる。このことを利用して、入力を確定する画像の品質を高めるために、画像のあらかじめ定めた画素集合(例えば、画像の全領域、又は1つ以上の部分領域)について輝度平均値を求めて、該輝度平均値が規定条件内にあるときに、該画像は有効な画像であると判定し、このことを連続して規定回数以上確認できたときに最後に仮に固定した画像メモリ4の画像を確定する。
以上のことに基づく画像入力確定契機の設定手段の例を手順INに示す。
【0055】
(手順lN)
ステップIN1:
カウンタFaを0に初期化する。
ステップIN2:
画像入力処理を開始し、画像メモリの画像を仮に固定する。
ステップIN3:
画像の規定領域内について規定領域輝度平均値Eavを求め、この規定領域輝度平均値が規定条件内であれば有効な画像であると判定してステップIN4に行き、規定条件外であれば無効な画像であると判定してステップIN1に行く。ここで、
規定領域輝度平均値Eav=(規定領域内の画素の輝度の和)/(規定領域内の全画素数)であり、
Eavの規定条件は、EL≦Eav≦EHである。
EL,EHは定数であり、対象とする画像が入力された場合の輝度の変動範囲を考慮して定める。
【0056】
なお、規定領域が複数あるときは、個々の規定領域について規定領域輝度平均値が規定条件内であるかどうかを調べて、有効な規定領域数がしきい値以上であるときに有効な画像であると判定する。
ステップIN4:
Faに1を加算する。
ステップIN5:
Faは規定値Fatかどうかを調べ、規定値であれば、ステップIN6に行く。規定値未満であれば、ステップIN2に行く。定数Fatの値は、入力される画像が安定するまでの最短の回数を考慮して設定する。
【0057】
ステップIN6:
画像メモリの画像を確定する。(手順IN終り)
図5は、画像の入力と有効性を連続して確認して、画像を確定する手順INの流れ図の概略である。
【0058】
(2)画像変換手段
画像入力装置2から画像処理装置1に入力される画像について、処理対象とする画素数は、認識精度を落とさない範囲で、少ないほうが性能の向上を図れる。
例えば、画像メモリの画素数が、処理対象とする画素数よりも大きい場合(数値例としては、画像メモリ4の画素数が、640×480画素(X=0〜639,Y=0〜479)であり、処理対象とする画素数が256×240画素(X=0〜255,Y=0〜239)であるような場合)には、画像を画像メモリ4に入力してから入力対象とする画像の範囲を調べ、画像の部分集合を抽出して仮画像とし、更に、仮画像から必要な処理対象とする画素数に合った小画像を抽出して、小画像を新たに通常の処理対象の画像とする。このための画像変換手段の例を、手順ETに示す。
【0059】
(画像変換手順ET)
ステップET1(小画像のX方向の範囲抽出):
ステップETla〜ステップETldを実行する。
ステップETla(黒画素の存在する仮画像左端のX座票を決定):
KaをX方向の増加幅とする(例えば、Ka=1)。
u=0,Ka,2Ka,3Ka,…,の順に、仮画像左端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0060】
X=u,のときのY方向で抽出したY座標(Y=0,Ja,2Ja,…)の輝度の合計値GA(u)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像左端のX座標とする。例えば、画像入力のない状態では、画像はすべて高い輝度を有する場合とすると、JaをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、ここで、GA(u)<GAであることを確認できたとき、このときのuを仮画像左端のX座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GA(u+Ka)<GAである条件を追加してもよい。)定数GAは、二値化したときに黒画素があることのしきい値であり、Y方向で抽出した画素の輝度の合計値が、黒画素が含まれていると見なせる最小の値に近い値となるように、輝度を考慮して定める。
【0061】
ステップET1b(黒画素の存在する仮画像右端のX座標を決定):
v=Xh,Xh−Ka,Xh−2Ka,Xh−3Ka,…,の順に、仮画像右端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0062】
X=v,のときのY方向で抽出したY座標(Y=0,Ja,2Ja,…)の輝度の合計値GA(v)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのvを仮画像右端のX座標とする。例えばJaをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GA(v)<GAであることを確認できたときに、そのときのvの値を仮画像右端のX座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GA(v−Ka)<GAである条件を追加してもよい。)
【0063】
ステップETlc(仮画像の左端と右端に対する中点のX座標のWxを決定):
仮画像の左端と右端に対する中点のX座標のWxを、次の式により決定する。
Wx=(u+v)/2
【0064】
ステップET1d(小画像を抽出するための開始X座標を決定)
小画像の開始X座標Xaを、
Xa=Wx−XL/2
により定める。XLは、小画像のX方向の画素数である。ここで、小画像領域の大きさを一定化するために、Xa<0のときは、Xa=0とし、Xa+XL−1>Xhのときは、Xa=Xh−XLとする。
【0065】
ステップET2(小画像のY方向の範囲抽出):
ここでは、ステップET2a〜ステップET2dで、ステップET1と同様な処理をY方向に対して行い、小画像のY座標範囲を求める。
ステップET2a(黒画素の存在する仮画像上端のY座標を決定):
KbをY方向の増加幅とする(例えば、Kb=1)。
u=0,Kb,2Kb,3Kb,…,の順に、仮画像上端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0066】
Y=u,のときのX方向で抽出したX座標(Y=0,Jb,2Jb,…)の輝度の合計値GB(u)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像左端のX座標とする。例えば、JbをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GB(u)<GBであることを確認できたとき、このときのuを仮画像上端のY座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GB(u+Kb)<GBであることを条件として追加してもよい。)ここで、GBは、黒画素があることのしきい値であり、X方向で抽出した画素の輝度の合計値が、黒画素が含まれていると見なせる最小の値に近い値となるように、輝度を考慮して定める。
【0067】
ステップET2b(黒画素の存在する仮画像下端のY座標を決定):
v=Yh,Yh−Kb,Yh−2Kb,Yh−3Kb,…,の順に、仮画像下端が見つかるまで、次の処理を進める。
【0068】
Y=v,のときのX方向で抽出したX座標(X=0,Jb,2Jb,…)の輝度の合計値GB(v)を求め、黒画素相当の輝度の存在を最初に確認できたときのuを仮画像下端のX座標とする。例えば、JbをY方向の増加幅(例えば、Ja=1)とし、GB(v)<GBであることを確認できたときに、そのときのvの値を仮画像下端のY座標とする。
(ここで、確実性を増すために、更に、GB(v−Kb)<GBである条件を追加してもよい。)
【0069】
ステップET2c(仮画像の上端と下端に対する中点のY座標のWyを決定):
仮画像の上端と下端に対する中点のY座標のWyを、次の式により決定する。
Wy=(u+v)/2
ステップET2d(小画像を抽出するための開始Y座標を決定):
小画像の開始Y座標Ybを、
Yb=Wy−YL/2
により定める。YLは、小画像のY方向の画素数である。ここで、小画像領域の大きさを一定化するために、Yb<0のときは、Yb=0とし、Yb+YL−1>Yhのときは、Yb=Yh−YLとする。
【0070】
ステップET3(処理対象画素を抽出):
X=Xa+XL−1まで、かつ、Y=Ybから
Y=Yb+YL−1まで
の範囲を処理対象の小画像とする。
ステップET4(小画像を、通常の画像とする):
小画像の範囲を、通常の画像として扱うための変換を必要に応じて行う。
例えば、原点の設定、画像の設定場所等の変換である。(ステップET終り)
【0071】
図6は画像の処理範囲の変換の説明図の一例であり、画像メモリに設定された画像と、仮画像、小画像の例を示している。なお、手順ETにおいて、X方向またはY方向の一方のみを実行し、他方は固定の範囲とすることも可能である。画像メモリの画像をそのまま処理対象の画像とする場合には、手順ETによる変換は不要である。
【0072】
(3)平滑化手段
平滑化は、指紋画像の雑音の影響を減らすための処理である。平滑化の処理は、公知の方法を用いることができる。例えば、おのおのの画素の近傍画素の値を用いる局所加重平均フィルタなどを用いることができる。
画像メモリ4に直接に二値画像を入力できる場合には、平滑化は省略できる。二値画像を平滑化したときには、画像は濃淡画像となるので、再度、二値化を行う必要がある。
【0073】
(4)二値化手段と背景分離手段
二値化は、濃淡画像を二値画像に変換する処理である。背景分離は、画像メモリ4における画像10の指紋画像の有効な範囲を明確化する処理である。二値化と背景分離を行う手順の例を手順Bに述べる。手順Bの入力情報は、入力画像情報である。手順Bの出力情報は、出力画像の二値画像、及び指紋境界情報である。画像メモリ4に直接に二値画像を入力できる種類の画像入力装置を用いる場合には、二値化(ステップB1)は省略して、背景分離だけを実行する。その反対に、二値化だけ必要であって、背景分離が不要な場合は、ステップB1のみを実行すればよい。
【0074】
(手順B)
Kを部分領域のX方向の長さを表す定数とする。
部分領域のY方向の長さは、部分領域のX方向の長さと異なってもよいが、以下では簡単のために等しい場合を記述する。
L=(Xh+1)/K
とする。ここでは、Lが整数となるようにKを選択する。一般的には、部分領域の長さを、部分領域ごとに可変とすることが可能である。次に、
【0075】
Kmax=((Xh+1)/K)−1
とする。画像10について、部分領域を一意に識別するための部分領域アドレスを各部分領域の先頭の画素アドレスとする。任意の画素アドレス(X,Y)は、部分領域アドレスJ(M,N)では、M=[X/K]、かつN=[Y/K]である。したがって、部分領域アドレスJ(M,N)に対応する画素アドレス(X,Y)は、
X=K・M,(M=0,1,2,…,Kmax)
Y=K・N,(N=0,1,2,…,Kmax)
により求まる。
【0076】
ステップB1(二値化):
ステップB1a:
M=0,1,2,…,Kmax
N=0,1,2,…,Kmax
について、以下の処理を行う。各部分領域J(M,N)ごとに、個々の部分領域ごとに、部分領域内のすべての画素の輝度平均値Bav(M,N)を、
Bav(M,N)=(部分領域内の画素の輝度の和)/(部分領域内の画素数)
により求める。ここで、
X=K・M(M=0〜Kmax)
Y=K・N(N=0〜Kmax)
における(M,N)は、画像10の範囲を対象とする。
【0077】
すなわち、画像の範囲が、
0≦X≦Xh
0≦Y≦Yh
のときは、
M=0〜[Xh/K]
N=0〜〔Yh/K]
の範囲を対象とする。このとき、
画像10の部分領域の総数=([Xh/K]+1)・([Yh/K〕+1)となる。また、
全体の画像の輝度平均値=(全体の画像の輝度の和)/(全体の画像の画素数)である。
【0078】
ステップBlb:
部分領域の境界により生じる不連続性を減らすために、部分領域相互間の変換を行う。すなわち、
M=1〜([Xh/K]−1)
N=1〜([Yh/K]−1)
について、
Cav(M,N)=(A0・Bav(M,N)+A1・Bav(M+1,N)+A2・Bav(M+1,N−1)+A3・Bav(M,N−1)+A4・Bav(M−1,N−1)+A5・Bav(M−1,N)+A6・Bav(M−1,N+1)+A7・Bav(M,N+1)+A8・Bav(M+1,N+1))/(A0+A1+A2+A3+A4+A5+A6+A7+A8)とする。
【0079】
A0,Al,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8は定数であり、部分領域の相互の関係を考慮して定める。例えば、
A0=Al=A2=A3=A4=A5=A6=A7=A8=1とすることができる。
各(M,N)についてのCav(M,N)は、メモリの作業域に格納しておく。
次に、
M=1〜([Xh/K]−1)
N=1〜([Yh/K]−1)について、
Bav(M,N)=Cav(M,N)とすることにより、各部分領域の輝度平均値Bav(M,N)を、部分領域(M,N)の相互の関係により、変更することができる。
【0080】
図7は、部分領域(M,N)とその部分領域の輝度平均値Bav(M,N)との関係の一例である。ここで、部分領域の相互の関係による部分領域輝度平均値の変更方法は、上記の方法に限定されない。例えば、相互関係として用いる部分領域の数を増加したり、減少したり、又は、上述のCav(M,N)の式を変形したりすることが可能である。
【0081】
ステップB1c:
(a)各部分領域について、Bav(X,Y)を求めた部分領域の画素(X,Y)の輝度f(X,Y)について、二値化のしきい値Tを、
T:部分領域輝度平均値+D+Da
ここで、Dは部分領域輝度平均値の補正のための定数である(例えば、D=0とする)。Daは変数(初期値は例えば、Da=0)であり、後述する。
【0082】
このときの部分領域(M,N)についての(X,Y),すなわち,
K・M≦X≦K・(M+1)−1
K・N≦Y≦K・(N+1)−1
の範囲の(X,Y)について輝度f(X,Y)が、
f(X,Y)≧Tのとき、(X,Y)を白画素に設定する(ただし、白と黒を反転するときは黒画素に設定する)。
f(X,Y)<Tのとき、(X,Y)を黒画素に設定する(ただし、白と黒を反転するときは白画素に設定する)。
【0083】
以上が、部分領域輝度平均値をしきい値の要素とする二値化の手段である。部分領域内に輝度が高い画素がかなりの数で存在し、かつ、輝度変化が少ない部分領域では、輝度平均値が高い値となるために、二値化した結果として、その部分領域内の多くの画素が黒画素になることがある。この対策として、輝度平均値が高く、かつ輝度変化が微少な部分領域は、上述の二値化しきい値でなく、あらかじめ定めた規定のしきい値で二値化する。このための具体的な手順を以下に示す。
【0084】
原画像(濃淡画像)の各部分領域ごとに、
Bav(・,・)≦Bm
のときは、前述の輝度平均値をしきい値とする二値化を行う。
Bav(・,・)>Bm
(Bmは輝度平均値が高い値かどうかを判定するための値であり、例えば、輝度の180〜255を輝度が高いとみなす場合には、Bm=180)のときは、任意の1つの部分領域内の各画素について、
G=|(部分領域の輝度平均値)−(部分領域内の各画素の輝度)|
のGの値の最大値をGmaxとして、その値を求め、その結果、Gmax≦Bsmallの場合(Bsmallは、輝度変化幅の上限である。例えば、0〜9までの輝度変化を輝度変化が微少と見なすときは、Bsma11=10とする。)、その部分領域の画素は輝度変化が少ないと見なせるので、その部分領域は規定の二値化しきい値T=Bg(例えば、Bgは、全体の画像の輝度平均値、又は固定の値)で二値化する。
この手順を原画像のすべての部分領域について、反復する。図8は、輝度が微少変動な部分領域における二値化処理の概略の流れ図の一例である。
【0085】
次の処理として、画像の入力時の状況により、画像の輝度状態が異なるので、部分領域の黒画素についての全画素に対する比率を求め、規定範囲外のときは、Daの値を変更して、再度、二値化する処理を、規定回数(1回以上)反復する。二値化のしきい値を最適化する手順は、次のとおりである。全有効部分領域黒画素比率Rbwを、
Rbw=(すべての部分領域内の黒画素数)/(すべての部分領域内の総画素数)
とする。
【0086】
Rbw1≦Rbw≦Rbw2
のときは、黒画素比率が正常なため、二値化を終了できる。
Rbw>Rbw2
のときは、黒画素数を減らすために、Tを減少させる。すなわち、Daを(Da−Da1)で置き換える。
Rbw<Rbw1
のときは、黒画素数を増加するために、Tを増加させる。すなわち、Daを(Da+Da1)で置き換える。
【0087】
Rbw1とRbw2は、黒画素比率の一定化のための定数であり、例えば、黒画素比率を40%〜45%の間の値にしたいときは、Rbw1=0.40,Rbw2=0.45とする。ここで、Da1は、二値化のしきい値の増減のための定数である(例えば、Da1=1)。二値化で、黒画素の比率を求め、規定範囲外のときは、二値化のしきい値Tの値を変更して二値化する処理を規定回数反復する。規定回数反復しても黒画素の比率が規定範囲外のときは、例えば、処理を打ち切って、画像入力の最初から処理を行う。
【0088】
ここで、Da1は、黒画素比率が規定範囲になるための処理時間を短縮し、かつ黒画素比率が規定範囲内になる確率を高めるために、異なる値を複数利用することができる。図9は、部分領域に分割された二値画像について、二値化の黒画素比率を一定化するための処理の一例であり、Daを変化させるための定数群として、Da1,Da2,Da3,(例えば、Da1=3,Da2=2,Da3=1)を用いている。Dai,(i=1,2,…)は、任意の個数の定数で構成することができ、適当にこの定数群の個数と値を設定することにより、Rbwの値が規定範囲に収束する可能性と収束速度を向上できる。なお、図9におけるAlp,A2p,A3p,Alm,A2m,A3mは、処理の選択のために処理途中で動的に変更されるパラメータである。
【0089】
ステップB2(有効部分領域の表示):
ステップB1の結果により得られた二値画像に対して、部分領域輝度平均値を再度求める。次に、
部分領域アドレスIMN=([X/K],[Y/K])
(部分領域アドレスは,各部分領域の先頭アドレスである)
X=K・M,(M=0,1,2,…,Kmax)
Y=K・N,(N=0,1,2,…,Kmax)
について、部分領域輝度平均処理手段により求めた輝度平均値Bav(X,Y)により、各部分領域ごとに、有効か無効かを判定する。
【0090】
すなわち,BL≦Bav(X,Y)≦BH
であるときに、その部分領域が有効部分領域であると判定し、有効部分領域テーブルY(M,N)に有効表示を設定する。
Y(M,N)={1:有効部分領域のとき。0:無効部分領域のとき。}
ここで、BL及びBHは、有効部分領域と無効部分領域を区分するための定数である。
【0091】
ステップB3(有効部分領域の数の検査):
Y(M,N)により、YT=有効部分領域の数を計数し、YT≧YC(YCは、例えば、部分領域総数×しきい比率定数値とする。)であるときは、ステップB4に行く。YT<YCであるときは、有効部分領域数不足と見なして、本手順を異常で終了する。
【0092】
ステップB4(部分領域単位の指紋境界の左端):
部分領域指紋境界情報を{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}で表す。各N=NTの値について、ML≦M≦MRが部分領域単位の指紋領域である。
このステップでは、部分領域単位に、指紋境界の左端MLを求める。N=0から開始して、N=NT,(NT=0〜Kmax)について、次の処理を行う。左端(M=0)からMの増加方向について、順次に有効部分領域テーブルGの要素G(M,N)における1(有効部分領域表示)を探索し、1がKc個以上(Kcは、部分領域の指紋境界を判定するための、1以上の定数)連続する部分の最初のMの値MLをそのときのNについての指紋領域の左端とする。M=0〜Kmaxで1(有効領域表示)が連続してKc個以上発見できないときは、そのNの値は、すべてのMについて非指紋領域であり、非指紋領域のNTでは、ML=MR=−1とする。
【0093】
ステップB5(部分領域ごとの指紋境界の右端)
このステップでは、部分領域単位に、指紋境界の右端MRを求める。N=0から開始して、N=NT、(NT=0〜Kmax)について、ステップB4で左端が設定されていないN(すなわち、ML=−1のときのN)は飛ばして、右端(M=Kmax)からMの減少方向について、順次に有効部分領域テーブルGの要素G(M,N)における1(有効部分領域表示)を探索し、1がKc個以上(Kcは定数)連続する部分の最初のMの値MRをそのときのNについての指紋領域の右端とする。以上により、部分領域指紋境界情報{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}が求まる。
【0094】
ステップB6(各画素ごとの指紋境界情報):
部分領域指紋境界情報{(NT,ML,MR),NT=0〜Kmax}から、画素ごとの指紋境界情報を求める。画素ごとの指紋境界情報を{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}で表し、これは、各YTの値について、XL≦X≦XRが指紋領域の意味である。
【0095】
部分領域指紋境界情報により、N=0〜Kmaxにおいて、
K・N≦Y≦K・N+KmaxのY=YTについて、
XL=K・ML
XR=K・MR
として、各画素ごとの指紋境界情報{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}を求める。(手順B終り)
【0096】
図10は、指紋の有効部分領域テーブルの一例である。なお、以後、単に指紋境界情報というときには、各画素ごとの指紋境界情報{(YT,XL,XR),YT=0〜Yh}を意味する。また、背景分離については、ステップB2〜B6の代替として、簡単には、画像全体を指紋領域として扱う手段も可能である。
【0097】
(5)近似的中心点を求める手段
指紋画像の近似的中心点では、画像10の中心(〔Xh/2],[Yh/2])又はその近くの点を近似的中心点(XC,YC)と見なす手段がある。
また、このほかの任意の公知の近似的中心点を求める手段を用いてもよい。
【0098】
(6)細線化手段
細線化は、画像の大部分の線幅を1画素にする処理のことである。細線化手段には、任意の細線化方法(例えば、従来の技術で述べたごとき公知の細線化方法)を用いてよい。
【0099】
(7)細め処理手段
細め処理は、画像の大部分の線幅を規定の線幅以下にすることである。細め処理は、二値化の段階で黒画素の全画素に対する比率(又は白画素の全画素に対する比率、又は黒画素と白画素の比率)を一定化することによって近似的に実現できるので、これも細め処理手段の1つと見なす。
【0100】
更に、二値画像の線幅を細めるのには、次の方法がある。
1画素以上の黒画素の集合を画像の線として扱う。線幅指定値の保持方法は任意であり、細め処理手段の入力情報とすることも、細め処理手段の中で保持することも可能である。線幅指定値は、1つの細め処理手段の中で1つ以上保持してもよい。本実施の形態では、細め処理の手段を、線幅指定値に応じて、使い分けることができる。線幅指定値に依存した細め処理手段の例を以下に示す。
【0101】
(a)大部分の線幅を1画素とするための細め処理(線幅指定値が1画素)
二値画像の線幅を細める手段(又は濃淡画像を二値化し、かつ線幅を細める手段)であり、公知の方法(例えば、大部分の線幅を1画素とすることのできる細線化方法)を用いることができる。また、濃淡画像を直接に二値化及び細線化する方法もある。
【0102】
(b)大部分の線について線幅指定値以下に細めるための細め処理(線幅指定値が任意の数値)
公知の方法を基にして実現できる。例えば、次のごとき手段がある。
i)画像を構成する線(本実施の形態では指紋線である黒画素に相当)の外側から線の要素を1画素ずつ削除する1画面分の処理を、大部分の線幅が1画素になるまで反復する細線化方法の場合、細線化の処理では、
{(元の二値画像の最大の線幅)−(線幅指定値)}/(1画面分の処理で各線幅ごとに削除される画素数の概算値)
となるように反復回数を定めておけばよい。
【0103】
ii)画像を構成する線の要素の中心から黒画素を残す細線化方法の場合
任意の直線と画像の線が交わる部分の線分上の黒画素について、該線分の中心を含む線幅指定値以下の画素を残す(線分幅が線幅指定値以上の場合は線分の中点を中心として線幅指定値分の黒画素を残し、線分幅が線幅指定値未満の線分上の黒画素はすべて残す)ことにより実現できる。
【0104】
本実施の形態では、登録指紋画像と検査指紋画像について、細め処理を行う場合の線幅指定値は任意に指定できるが、入力される画像の線の品質や特性、細め処理の線幅指定値に対する性能、画像処理装置1に要求される性能などから定める必要がある。登録指紋画像と検査指紋画像のそれぞれの細め処理における線幅指定値の差を大きくすれば、両画像の位置ずれには強くなるが、差を大きくしすぎると、照合精度の低下が生じることがある。登録指紋の細め画像の線幅は小さい方が、黒画素数が少なくなるため、登録情報に必要なメモリ量を小さくできる。これらのことを勘案すると、例えば、次のいずれかの指定が有効な場合がある。
【0105】
(a)登録指紋画像の細め処理では線幅指定値を1画素とし、検査指紋画像の細め処理では線幅指定値をもとのままとする場合を含めて、2画素以上の適当な値とする。
(b)登録指紋画像の細め処理の線幅指定値を、検査指紋画像の細め処理の線幅指定値よりも小さい値とする条件で、適当に選択する。
(c)登録指紋画像の細め処理では線幅指定値を1画素とし、検査指紋画像の線幅は、二値化のときの黒画素の比率で調整する。(以下の例では、この場合を主として記述する。)
【0106】
(8)登録画像の登録情報の登録処理手段
指紋情報の登録処理は、登録指紋として画像メモリ4の画像10に入力されて、細め処理までの処理がなされた結果である画像10にある登録指紋変更画像RthからサブテンプレートRT(0)及び非サブテンプレートRB(0)を抽出し、それぞれのファイルに格納する処理である。指紋情報の登録処理を行う手順を、手順Rに示す。手順Rの入力情報は、登録指紋のサブテンプレート及び非サブテンプレートのファイル名、登録指紋変更画像Rth、登録指紋の指紋境界情報、及び登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)である。手順Rの出力情報は、サブテンプレートRT(0)のファイル、及び非サブテンプレートRB(0)のファイルである。
【0107】
(手順R)
ステップR1(サブテンプレートRT(0)の作成):
登録指紋変更画像Rthから、指紋領域内にあり、かつサブテンプレートRT(0)の範囲にある黒画素アドレスを抽出して、サブテンプレートRT(0)のファイルを作成する。RT(0)の格納ファイルには、登録指紋近似的中心点(XRC,YRC)も格納する。
【0108】
ステップR2(非サブテンプレートRB(0)の作成):
登録指紋変更画像Rthから、サブテンプレートRT(0)外かつ指紋領域FA内にある黒画素アドレスを抽出して、非サブテンプレートRB(0)のファイルを作成する。
なお、サブテンプレート及び非サブテンプレートの各ファイルのデータの格納形式は任意である。例えば、データ圧縮してファイルに格納し、利用時にデータ伸長を行ってもよい。
【0109】
ステッフR3:
ステップR3a(汗腺ホールのファイルRSaの作成):
汗腺ホールのチェックを行うことを選択する場合には、本ステップを実行する。登録指紋で、あらかじめ定めた領域について、一定以上の大きさの汗腺によるホール(隆線が黒画素となるようにした二値画像では白画素集合によるホール)があるアドレスを、ホール探索手段により、規定個数求めて、その中心アドレスを汗腺ホールのファイルに記録する。
【0110】
ステップR3b(非汗腺ホールのファイルRSbの作成):
非汗腺ホールのチェックを行うことを選択する場合には、本ステップを実行する。登録指紋で、あらかじめ定めた領域について、一定以上の大きさの汗腺がないアドレスを、非ホール探索手段により、規定個数求めて、その中心アドレスを非汗腺ホールのファイルに記録する。(手順R終り)
【0111】
(9)ホール探索手段(手順WS)
ホールの一例を図11(a)に示す。例えば、ホールは次の手順WHにより検出できる。
(手順WH)
ステップWH1:
画像のホールを探索する候補アドレスについて、順次に調べ、任意の白画素アドレスAを選択する。候補アドレスは、例えば、全部の画素、n個(n=2,3,4等)おきの画素などの選択が可能である。
【0112】
ステップWH2:
アドレスAの白画素に連結した周辺の画素に、規定の数の連結した白画素集合AAが存在するかどうかを調べ、存在しないときは手順WHを最初から再実行し、存在するときはステップWH3に行く。
ステップWH3:
白画素集合AAの周辺が連結した黒画素により囲まれているかどうかを調べ、囲まれていないときは、手順WHを最初から再実行し、囲まれているときは白画素アドレスAをホールのアドレスとする。
ステップWH4:
本手順WHを、探索対象とするすべての候補アドレスについて反復する。(手順WH終り)
【0113】
(10)非ホール探索手段(手順NWH)
非ホールの一例を図11(b)に示す。非ホールは、例えば次の手順NWHにより検出できる。
(手順NWH)
ステップNWH1:
画像の非ホールを探索する候補のアドレスについて、順次に調べ、任意の黒画素アドレスBを選択する。候補アドレスは、例えば、全部の画素、n個(n=2,3,4等)おきの画素などの選択が可能である。
【0114】
ステップNWH2:
アドレスBの黒画素に連結した周辺の画素に、規定の数の連結した黒画素集合BBが存在するかどうかを調べ、存在しないときは手順NWHを最初から再実行し、存在するときは、黒画素アドレスBを非ホールのアドレスとする。
ステップNWH3:
本手順NWHを、探索対象とするすべての候補のアドレスについて反復する。
(手順NWH終り)
【0115】
(11)画像データの記憶手段
各黒画素のアドレス(X,Y)をそのままファイルに格納する場合、必要な格納記憶量は、次のようになる。
格納記憶量=黒画素数・(X座標の単位記憶量+Y座標の単位記憶量)
登録指紋画像は、サブテンプレート及び非サブテンプレートのそれぞれについてファイルに記憶する必要がある。二値画像の黒画素アドレスをそのまま記憶する場合よりも格納データ量を少なくするために、処理量を大きく増加することなく、データ量を圧縮してファイルに記憶する手段の例を次に示す。
【0116】
画素集合が、4×4画素の場合を述べる。任意の代表画素P0について、4×4画素集合が図3(b)に示されている。P0〜P15は、各画素の黒画素と白画素の区分をビットで表示して、Q=P15||P14||P13||…||P7||P6||P5||P4||P3||P2||Pl||P0により(||は連結を表す)、各周辺画素の黒画素と白画素の状態を2バイトの画素集合コードQ,(16進数で0000〜FFFF)で表示できる。次に、代表画素P0=(X0,Y0)との相対位置による画素アドレス(X,Y)を図3(b)により次に示す。
【0117】
P1:X=X0−1,Y=Y0
P2:X=X0−2,Y=Y0
P3:X=X0−3,Y=Y0
P4:X=X0, Y=Y0−1
P5:X=X0−1,Y=Y0−1
P6:X=X0−2,Y=Y0−1
P7:X=X0−3,Y=Y0−1
P8:X=X0, Y=Y0−2
P9:X=X0−1,Y=Y0−2
P10:X=X0−2,Y=Y0−2
P11:X=X0−3,Y=Y0−2
P12:X=X0, Y=Y0−3
P13:X=X0−1,Y=Y0−3
P14:X=X0−2,Y=Y0−3
P15:X=X0−3,Y=Y0−3
【0118】
登録指紋画像データの圧縮処理は、登録指紋画像データの(X,Y)座標である(X=0〜Xh,Y=0〜Yh)を次の形式に変換する処理である。指紋有効領域内について、4つおきの各Y座標ごとに4つおきの各X座標を代表画素とし、4×4画素集合の範囲に黒画素が存在するかどうかをチェックし、黒画素が存在するときにだけ、代表画素X座標と画素集合コードを記憶する。
【0119】
Xアドレス部分は、4画素おきに指定されるために、下2ビットは、画素集合形状識別子として使用できる。これを利用して、画素集合コードは、半分(下半分、上半分、または左半分)がすべて白画素のとき、それぞれ残り半分(前述の順序に対応して、上半分、下半分、右半分)の1バイトで、部分的画素集合として表す。
【0120】
(a)画素集合形状識別子がビット表示で「11」のとき
画素集合コードは2バイトで表す。
(すなわち、Pl5||Pl4||…||Pl||P0)。
(b)画素集合形状識別子がビット表示で「10」のとき
画素集合コードは上半分の1バイトで表す。
(すなわち、Pl5||P14||P13||P12||Pl0||P9||P8)。
【0121】
(c)画素集合形状識別子がビット表示で「01」のとき
画素集合コードは下半分の1バイトで表す。
(すなわち、P7||P6||P5||P4||P3||P2||Pl||P0)。
(d)画素集合形状識別子がビット表示で「00」のとき
画素集合コードは右半分の1バイトで表す。
(すなわち、P13||P12||P9||P8||P5||P4||P1||P0)。
【0122】
ここで、画素集合コードが1バイトのとき、省略部分の画素はすべて白画素である。画素集合コードが1バイトの場合に、画素集合形状識別子用の2ビットを含むXアドレス部分を、真のXアドレスにするには、画素集合形状識別子フラグ用のビット部分を0にすることにより実現できる。
すなわち、圧縮時は、細線化画像データの(X,Y)座標(すなわち、X=0〜Xh,Y=0〜Yh)を次の形式に変換する。4つおきの各Y座標ごとに4つおきの各X座標を代表画素とし、4×4画素集合の範囲に黒画素が存在するかどうかをチェックし、黒画素が存在するときにだけ、代表画素X座標と画素集合コードを記憶する。このとき、二値画像を記憶する手段の例を手順Gに示す。
【0123】
(手順G)
ステップG1:
Xアドレス部分により、4×4画素集合を順次に選択する。
全画素(P15〜P0)がすべて白画素かどうかを調べる。すべて白画素のとき、この4×4画素集合は飛ばして、次の4×4画素集合に行き、ステップG1を最初から実行する。すべて白画素ではないとき、ステップG2に行く。
ステップG2:
上半分(P15〜P8)がすべて白画素かどうかを調べる。上半分がすべて白画素ではないとき、ステップG3に行く。上半分がすべて白画素のとき、下半分(P7〜P0)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「01」とする。
【0124】
ステップG3:
下半分(P7〜P0)がすべて白画素かどうかを調べる。下半分(P7〜P0)がすべて白画素でないとき、ステップG4に行く。下半分(P7〜P0)がすべて白画素のとき、上半分(P15〜P8)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「10」とする。
ステップG4:
左半分(P15,P14,P11,P10,P7,P6,P3,P2)がすべて白画素かどうかを調べる。左半分がすべて白画素でないとき、ステップG5に行く。左半分がすべて白画素のとき、右半分(P13||P12||P9||P8||P5||P4||Pl||P0)を1バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットをビットパターンの「00」とする。
【0125】
ステップG5:
4×4画素集合を2バイトの画素集合コードで表す。Xアドレス部分の下2ビットはそのまま(ピットパターンの「11」)とする。
ステップG6:
この1つの画素集合コードとXアドレスに対する処理を終了する。
ステッフG7:
各Xアドレスごとに、すべての4×4画素集合について、ステップG1〜G6を反復する。
【0126】
ステッフG8:
二値画像のファイル格納形式を、
Y座標=Ys,格納Xアドレス部分の組数,
{(代表画素AsのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BsのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…}
…
【0127】
Y座標=3+4j,格納xアドレス部分の組数,
{(代表画素AjのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BjのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…}
…
【0128】
Y=Ye=格納Xアドレス部分の組数
{(代表画素Ahのxアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
(代表画素BhのXアドレス部分(画素集合形状識別子の2ビットを含む),画素集合コード),
…},{終了表示記号}
として、二値画像を記憶する。(手順G終り)
【0129】
ここで、格納Xアドレス部分の組数は、そのときのY座標に対応して格納される画素集合コード数を表している。格納Xアドレス部分の組数が0のY座標などは設定しないで詰める。画素がすべて白画素の4×4画素集合は記録しない。画素集合コードは、1バイトの場合と2バイトの場合があり、Xアドレス部分の下2ビットで区別する。なお、格納Xアドレス部分の組数の代わりに、各Y座標値ごとに(代表画素Xアドレス部分、画素集合コード)の組の終了記号を付加してもよい。
【0130】
図12(a)は、4×4画素集合の小領域に画像メモリを分割した場合の例である。図12(b)は、4×4画素集合の上半分の例である。図12(c)は、4×4画素集合の下半分の例である。図12(d)は、4×4画素集合の右半分の例である。なお、画像メモリを小領域に分割するときの小領域の大きさは、4×4画素集合の場合を述べたが、任意に設定でき、そのときの小領域内の分割方法も任意に設定してよい。
また、手順Gにより圧縮された二値画像データの形式をもとの(X,Y)形式に戻すには、手順Gの逆の処理を行えばよい。
【0131】
(12)登録画像と検査画像の照合処理手段
照合処理は、検査指紋変更画像の黒画素集合のおのおのの黒画素と、登録指紋変更画像に関する登録情報としてメモリ6に格納されている黒画素集合のおのおのの黒画素との一致性を調べる処理である。
登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の位置合わせのための座標軸の回転及び平行移動による座標変換は、いずれか一方の画像について行えばよいが、本実施の形態では、登録指紋変更画像の方が、細め処理の線幅指定値が小さいために、黒画素数が少なくなることを想定して、登録指紋変更画像を移動して検査指紋変更画像に合わせる。照合処理の概要を次に述べる。
【0132】
(a)サブテンプレートの照合
サブテンプレートの照合は、登録指紋のサブテンプレートRT(0)について、登録指紋変更画像の黒画素と検査指紋変更画像の黒画素とが最も良く一致する位置を求める処理である。すなわち、まず、登録指紋変更画像のサブテンプレートRT(0)について、登録指紋の近似的中心点を検査指紋の近似的中心点と一致させたときのサブテンプレートRT(0,H,V)を、登録指紋変更画像の座標軸の平行移動により求める。次に、中心近傍で、サブテンプレートRT(0,H,V)の座標軸を、回転、及び上下左右に平行移動したときに、検査指紋変更画像と、黒画素が最も多く一致するときの登録指紋変更画像のサブテンプレートRT(S,H,V)の変換角度Sと平行移動量(水平移動量H,垂直移動量V)を求める(S,H,Vは整数)。
【0133】
(b)非サブテンプレートの照合と、テンプレートの照合
非サブテンプレートの照合は、サブテンプレートの照合で得られた登録指紋変更画像のRT(S,H,V)のS,H,Vにより、登録指紋変更画像のRB(0)の黒画素アドレスの座標変換を行って、黒画素アドレスを求め、検査指紋変更画像の黒画素アドレスとの一致性を調べ、登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の一致性に関する情報を出力する処理である。すなわち、まず、サブテンプレートの照合により得られた登録指紋変更画像のサブテンプレートの座標軸の角度回転量S,水平移動量H,及び垂直移動量Vを用いて、登録指紋の非サブテンプレートRB(0)の黒画素の座標変換を行ってRB(S,H,V)を得る。次に、登録指紋変更画像のRB(S,H,V)の黒画素と、検査指紋変更画像の黒画素の一致性を調べる。この結果により、登録指紋変更画像と検査指紋変更画像のテンプレート全体の一致率が求まる。
【0134】
(c)不一致部分の黒画素数のチェックを行う。
(d)汗腺によるチェックを行うことを選択しているときには、そのチェックを実施する。
(e)以上の結果により、登録指紋と検査指紋の一致性を最終判定する。
以上の照合処理の概要に基づき、照合処理を行う手順を手順Cに示す。手順Cの入力情報は、登録指紋変更画像のサブテンプレート及び非サブテンプレート、検査指紋変更画像、及び検査指紋の近似的中心点である。手順Cの出力情報は、照合結果である。
【0135】
(手順C)
ステップC0:
照合のときの登録画像情報の移動の最大総範囲を、回転角度方向が区間[Smin,Smax]、水平方向が区間[Hmin,Hmax]、垂直方向が[Vmin,Vmax]であるとする。少なくとも1つの移動方向の区間を1つ以上の部分区間に分割して、
Smin={Smin(Is):Is=1,2,・・・,Js}
Smax={Smax(Is):Is=1,2,・・・,Js}
Hmin={Hmin(Ih):Ih=1,2,・・・,Jh}
Hmax={Hmax(Ih):Ih=1,2,・・・,Jh}
Vmin={Vmin(Iv):Iv=1,2,・・・,Jv}
Vmax={Vmax(Iv):Iv=1,2,・・・,Jv}
とする。
【0136】
ここで、
区間[Smin,Smax],区間[Smin(1),Smax(1)],区間[Smin(2),Smax(2)],・・・,及び区間[Smin(Js),Smax(Js)]の和集合である。
区間[Hmin,Hmax],区間[Hmin(1),Hmax(1)],区間[Hmin(2),Hmax(2)],・・・,及び区間[Hmin(Jh),Hmax(Jh)]の和集合である。
区間[Vmin,Vmax],区間[Vmin(1),Vmax(1)],区間[Vmin(2),Vmax(2)],・・・,及び区間[Vmin(Jv),Vmax(Jv)]の和集合である。
【0137】
以後、ステップC1から、
{区間[Smin(1),Smax(1)]、区間[Smin(2),Smax(2)]、・・・、区間[Smin(Js),Smax(Js)]}、
{区間[Hmin(1),Hmx(1)]、区間[Hmin(2),Hmax(2)]、・・・、区間[Hmin(Jh),Hmax(Jh)〕}、及び、
{区間[Vmin(1),Vmax(1)]、区間[Vmin(2),Vmax(2)]、・・・、区間[Vmin(Jv),Vmax(Jv)]}のすべてについて、選択した部分位置合わせ区間を順次実行して行き、任意の位置合わせ区間において、一致と判定できたとき、または、以後の照合は放棄して不一致と判定できるときに、照合処理を終了する。
【0138】
ステップC1(サブテンプレートの照合):
ステップCla〜ステップCldを実行する。
ステップCla:
サブテンプレートRT(0)をファイルからメモリ6に格納する。次に、サブテンプレートRT(0),S=Smin(Is)〜Smax(Is),(Sの増加刻み幅Ks)、H=Hmin(Ih)〜Hmax(Ih),(Hの増加刻み幅Kh)、及びV=Vmin(Iv)〜Vmax(Iv),(Vの増加刻み幅Kv)を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Kra,(Kra≧1)として、後述の画像一致性チェック補助手順(手順W)を実行する。
この結果、S,H,Vをそれぞれ、Smin(Js)〜Smax(Js),Hmin(Jh)〜Hmax(Jh),Vmin(Jv)〜Vmax(Jv)について、増加の刻み幅Ks,Kh,Kvで変更し、準最適なS,H,Vの値であるSa,Ha,Vaを求める。
【0139】
ステップC1b:
S,H,Vについて、それぞれの移動範囲として、
S:(Sa−Dsb)〜(Sa+Dsb),増加刻み幅Ksb
H:(Ha−Dhb)〜(Ha+Dhb),増加刻み幅Khb
V:(Va−Dvb)〜(Va+Dvb),増加刻み幅Kvb
を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krb,(Krb≧1)として、手順Wを実行し、準最適な{S,H,V}の値である{Sb,Hb,Vb}を求める。
ここで、Dsb,Dhb,Dvbは、移動範囲を定めるための定数である(備考C(1)参照)。
【0140】
ステップClc:
S,H,Vをそれぞれ、
S:(Sb−Dsc)〜(Sb+Dsc),増加刻み幅Ksb
H:(Hb−Dhc)〜(Hb+Dhc),増加刻み幅Khb
V:(Vb−Dvc)〜(Vb+Dvc),増加刻み幅Kvb
を用い、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krc,(Krc≧1)として、手順Wを実行し、準最適な{S,H,V}の値である{Sc,Hc,Vc}を求める。
ここで、Dsc,Dhc,Dvcは、移動範囲を定めるための定数である。
【0141】
ステップC1d:
S,H,Vをそれぞれ,
S=Sc,Dsd=0,増加刻み幅Ksd=0
H=Hc,Dhd=0,増加刻み幅Khd=0
V=Vc,Dvd=0,増加刻み幅Kvd=0
により、登録情報黒画素探索増加刻み幅Kr=Krd,(Krd=1)として、手順Wを実行し、最適な{S,H,V}の値を求める。ここで、Dsd,Dhd,Dvdは、移動範囲を定めるための定数である。この結果、サブテンプレート一致率T1が最大となる最適な{S,H,V}の各値と、サブテンプレート一致率T1=Nlm/Nlcを得る。
【0142】
次に、あらかじめ定めた定数Tk1について、
T1≧Tk1
であれば登録指紋と検査指紋はサブテンプレートの照合で一致と判定して、ステップC2に行き、
T1<Tk1
であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0143】
また、Tm1を1〜m番目までの部分位置合わせ区間におけるT1の最大値とするとき、Tm1<Tmk1(j)であるときは、この部分位置合わせ区間の以後の処理、及び残った部分位置合わせ区間についての照合処理は実行しても一致となる可能性が低いために実行せず、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
ここで、Tmk1(j),(j=1,2,…,m)は、上記の判定が可能なように、あらかじめ定めた定数である。
【0144】
ステップC2(非サブテンプレートの照合、およびテンプレートの照合):
非サブテンプレートRB(0),及びステップC1により得られた最適な{S,H,V}を入力情報として、画像一致性チェック補助手順(手順W)を実行する。この結果、N2m,N2cを得て、ステップC1の結果も用いて、テンプレート一致率T2=(Nlm+N2m)/(Nlc+N2c)を得る。
【0145】
T2≧Tk2
であれば、登録指紋と検査指紋は一致と判定してステップC3に行き、
T2<Tk2
であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の区間の処理を最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0146】
ステップC3(不一致部分の照合):
登録指紋の黒画素と検査指紋の黒画素の、不一致性について調べて、検査指紋変更画像の不一致部分の黒画素が多すぎる場合を除く必要がある。このため、登録指紋変更画像の線幅に検査指紋二値画像の線幅を合わせたときの不一致部分の黒画素の比率を近似的に求めて判定するために、ステップC3a〜ステップC3bの処理を行う。
【0147】
ステップC3a:
RT(0)及びRB(0)の範囲から、{S,H,V}の変換後の登録指紋変更画像の照合対象領域の近似的な範囲を求める。座標(X,Y)から変換後の範囲の座標(X’,Y’)は、手順Wと同様に、次式で行う。
X’=(X−XRC)・cos(S)+(Y−YRC)・sin(S)+XTC−H
Y’=−(X−XRC)・sin(S)+(Y−YRC)・cos(S)+YTC−V
ここで、cos(・)、sin(・)は三角関数を表す。
【0148】
ステップC3b:
座標変換後の照合対象領域(すなわち、RT(S,H,V)とRB(S,H,V)の和集合)の検査指紋変更画像の黒画素数Tnwを計数する。すなわち、
Tnw=検査指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域の総黒画素数
である。このとき、検査指紋変更画像の線幅をwとすると、これを登録指紋変更画像の線幅(線幅λ)にした場合の総黒画素数Tncは、近似的に、
Tnc=Tnw/(w/λ)
である。
【0149】
ここで、登録指紋変更画像の線幅が細線化により1画素となっているときは、検査指紋変更画像も細線化して検査指紋変更画像の照合対象領域の黒画素数Tnwを求めてもよく、その場合は、W=λ=1である。また、
Nlm+N2m=登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域内の一致黒画素数
Nlc+N2c=登録指紋変更画像の座標変換後の照合対象領域内の総黒画素数は、すでに求まっている。
【0150】
このとき、黒画素の不一致の度合いとして、例えば、不一致部分率を、
Tz=(Tnc−Nlm−N2m)/(Nlc+N2c)
とし、
|Tz|≦Tkc
の場合、登録指紋と検査指紋は不一致部分率について合格と判定し、そうでないときは不一致と判定する。
【0151】
不一致黒画素の許容率を表す定数であり、小さいほど厳しい条件となる。(通常はTz≧0であるので、Tz≧0のときとTz<0のときとで、それぞれ異なるTkcの値を用いて、Tz<0のときを、Tz≧0のときよりも厳しくしてもよい。)
不一致のときは、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。
【0152】
ステップC4(汗腺の部分照合):
照合精度の向上のため、選択的に、本ステップC4のステップC4aとステップC4bの少なくとも一方を追加することができる。
ステップC4a(汗腺によるホールのチェック):
ホールのアドレスを最適な{S,H,V}で変換したアドレスについて、検査指紋変更画像のそれらのアドレスに汗腺(指紋の隆線部分が二値化で黒画素となる画像では1つ以上の白画素により構成される穴となる)があるかどうかをチェックする。このときのチェックする白画素集合の大きさは、パラメータ定数とする。次に、
T4a=(ホールアドレス一致数)/(登録ホールアドレス総数)
を求めて、
T4a≧Tk4a
であるとき、汗腺のホールのチェックは合格とする。
【0153】
ステップC4(非ホールのチェック):
非ホールアドレスを最適な{S,H,V}で変換したアドレスについて、検査指紋変更画像のそれらのアドレスに汗腺がないことをチェックする。このときのチェックする白画素集合の大きさは、パラメータ定数とする。次に、
T4b=(非ホールアドレス一致数)/(登録非ホールアドレス総数)
を求めて、
T4b≧Tk4b
であるとき、非ホールのチェックは合格とする。ここで、Tk4bは、しきい値の定数である。
【0154】
ステップC5(最終判定):
実行した部分位置合わせ区間について、サブテンプレート一致率、テンプレート一致率、不一致部分率、汗腺チェックのうちの、選択して実行したすべてについて合格のとき、登録指紋と検査指紋は一致と判定し、手順Cを終了する。不合格であれば、実行中の部分位置合わせ区間では登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、次の部分位置合わせ区間の処理をステップC1の最初から実行する。実行する部分位置合わせ区間がないときは、登録指紋と検査指紋は不一致と判定し、手順Cを終了する。(手順C終り)
【0155】
図13は手順Cに基づく照合処理の概略の流れ図の一例である。なお、図13は、回転角度方向Sの区間だけを分割して部分位置合わせ区間を構成する例を記述している。
図14は、照合処理における不一致部分のチェックの説明図の一例であり、検査指紋変更画像の線幅を登録指紋変更画像の線幅と一致させたときの一致部分と不一致部分の関係を説明している。
【0156】
備考C(1):ステップClaにおける第1の移動刻み幅である増加刻み幅(Ks,Kh,Kv)の各値を粗い値として比較的大きい範囲を調べ、ステップClaで得られた{S,H,V}の準最適値を含む比較的小さい範囲をステップClbにおける第2の移動刻み幅である増加刻み幅(Ksb,Khb,Kvb)の各値を細かい値として調べることにより、位置合わせにおける移動の範囲を大きくしたときに、すべてに細かい増加刻み幅を用いる場合よりも処理量の削減を図ることができる。
【0157】
手順CのステップC1(3段階の多段階化)において、第1,2段階では移動の各値の増加刻み幅を1よりも大きくすることができ、第2、第3段階では前段階で定まったS,H,Vの準最適値を基点として、前段の線幅等により定まる範囲で照合を行えばよく、かつ第1、第2段階では登録情報の黒画素を、登録情報黒画素探索増加刻み幅Krを2以上とすることにより一定個数飛び越して用いる飛び越しにより、登録指紋の黒画素数を限定できるため、照合の処理量(位置合わせ探索回数にほぼ比例)を削減できる。各移動範囲の最大値と最小値(Smin,Smax,Hmin,Hmax,Vmin,Vmax)は指紋入力時の指の最大許容移動範囲などにより定めておく。ステップCldは、ステップC1でのT1の確定のためにある。
【0158】
ここで、次の性質がある。移動範囲は大きいほど探索回数が大きくなる。増加刻み幅は小さいほど探索回数が大きくなる。途中段階での増加刻み幅は、各段階の直前段階、及び直後段階の増加刻み幅を考慮して定める。最後の段階以外は、飛び越し探索が可能である。移動範囲、増加刻み幅、及び飛び越し探索の設定が不適当であると、誤認識が生じ易くなる。
ステップC3bでは、検査指紋変更画像の線幅を登録指紋変更画像の線幅に近似して、不一致部分率を求めたが、登鋒指紋変更画像の線幅を検査指紋変更画像の線幅に近似して、不一致部分率を求めることも可能である。
【0159】
(13)画像一致性チェック補助手順
画像一致性チェック補助手順(手順W)の処理概要は次のとおりである。登録指紋についてのサブテンプレートRT(0)又は非サブテンプレートRB(0)の各画素アドレス(XR,YR)について、登録指紋(XR,YR)の近似的中心点(XRC,YRC)を、検査指紋(XT,YT)の近似的中心点(XTC,YTC)と一致させるように平行移動する。次に、登録指紋の座標軸を回転し、変換後の黒画素アドレス(XR@,YR@)が、検査指紋変更画像の指紋領域内で黒画素かどうかを調べ、平行移動も行う。
【0160】
RT(S,H,V)の場合は、S,H,Vの各値における一致率T1が最大となるときのS,H,V,及びT1,Nlm,Nlcを求める。RB(S,H,V)については、S,H,Vがそれぞれただ1つの場合である。なお、T1とT2,NlmとN2m,NlcとN2cは、手順Wでは、ほぼ同様に扱えるため、T、Nm、Ncと呼ぶ。
【0161】
手順Wの入力情報は、登録指紋変更画像の指定部分(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)の黒画素アドレス集合、座標軸の角度変換量S(最小値,最大値,増加刻み幅)、登録指紋変更画像の座標軸の水平移動量H(最小値,最大値,増加刻み幅),登録指紋の座標軸の垂直移動量V(最小値,最大値,増加刻み幅)、検査指紋変更画像、及び登録指紋黒画素飛び越し探索の飛び越し数J等である。ここで、移動範囲は、全体区間または部分区間である。
【0162】
登録情報黒画素探索増加刻み幅Krは、登録指紋変更画像黒画素と検査指紋変更黒画素の照合のときに、登録指紋変更画像黒画素を探索する増分を指定するものであり、例えばKr=1のときは、すべての登録指紋変更画像黒画素が探索され、Kr=2のときは、1つおきに登録指紋変更画像黒画素が探索される。
手順Wの出力情報は、入力情報について、登録指紋の最適座標軸回転角度S、最適座標軸水平移動量H、最適座標軸垂直移動量V、指定領域(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)の登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の一致黒画素数Nm,指定領域の登録指紋変更画像の総黒画素数Nc,及び一致率Tである。
【0163】
図15は、照合処理における画像一致性チェック補助手順(手順W)の概略の流れ図の一例である。手順Wの処理手順の一例を次に示す。
(手順W)
ステップW1(角度Sの選択):
角度Sを入力情報により、指定された区間について、Sの最小値から最大値まで、Sの増加刻み幅で順に選択し、ステップW2へ行く。(すなわち、Sの最小値がSmin(Is)、最大値がSmax(Is)、増加刻み幅がKsのときは、S=Smin(Is),Smin(Is)+Ks,…,Smax(Is)まで変化させる。)
【0164】
ステップW2(角度Sによる座標変換):
入力された登録指紋変更画像の黒画素集合(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)について、登録情報黒画素探索増加刻み幅Krにより探索される対象の黒画素アドレス(XR,YR)に対して、
(a)S=0のとき
XR@=XR−XRC+XTC
YR@=YR−YRC+YTC
とする。
【0165】
(b)S≠0のとき
入力された登録指紋変更画像の黒画素集合(RT(0)又はRB(0)のいずれか一方)についてのすべての黒画素アドレス(XR,YR)に対して、登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)を検査指紋の近似的中心点(XTC,YTC)に合わせる平行移動の後に、(XTC,YTC)を中心とする角度Sの座標軸回転を行う。このことは、
XR@=(XR−XRC)・cos(S)+(YR−YRC)・sin(S)+XTC
YR@=−(XR−XRC)・sin(S)+(YR−YRC)・cos(S)+YTC
により行える。これにより、H=V=0のときの新登録指紋のすべての黒画素アドレス(XR@,YR@)の集合を求める。
【0166】
以上により、登録指紋の近似的中心(XRC,YRC)を中心に登録指紋の座標軸をS度回転し、かつ水平移動量H=垂直移動量V=0としたときの新登録指紋のすべての黒画素アドレス(XR@,YR@)の集合が求まる。
【0167】
ステップW3(一致率Tの計算):
ステップW3a:
一致黒画素数カウンタNm及び登録指紋変更画像総黒画素数カウンタNcを、それぞれ0に初期設定する。
ステップW3b:
(XR@,YR@)の集合の各アドレスについて、検査指紋変更画像を調べ、
(a)指紋領域内の黒画素であれば、一致黒画素数カウンタNmに1を加算し、かつ登録指紋黒画素数カウンタNcにも1を加算する。
(b)指紋領域内の白画素又は指紋領域外(黒画素でも白画素でもない扱い)であれば、登録指紋黒画素数カウンタNcに1を加算する。
ここで、サブテンプレートの照合処理では、このときの{S,H,V}についての照合の途中放棄が可能かどうかを調べる。
【0168】
すなわち、調べる登録指紋情報は黒画素アドレスの集合であるから、これを探索順にk個の連続区間に区分し、区間i(i=1,2,…,k)の終了ごとに、
カウンタNc=Nci
となったとして、このときのNmをNmi,(i=1,2,…,k)とすると、S,H,Vの値により定まるパターンの途中までの一致の度合いは、Nmi/Nciであるから、定数{Tci;i=1,2,…,k}について、
Nmi/Nci<Tci,(i=1,2,…,k)
(Tci及びkは定数。備考W(1)参照。)の場合は、以後のチェックをしても見込みないので、そのときのS,H,Vは、途中放棄して、次のS,H,Vの値に行くために、ステップW4に行く。
【0169】
次の処理(照合時の近傍画素探索)を選択的に行うことができる。(この近傍画素探索の処理は、サブテンプレートRTの各段階ごとに、また、非サブテンプレートRBについて、それぞれ選択して適用可能である。)
任意の画像内アドレス(Aとする)の登録指紋変更画像の黒画素が検査指紋変更画像のアドレスAで黒画素のとき、完全一致と呼ぶ。
【0170】
任意の画像内アドレス(Aとする)の登録指紋変更画像の黒画素が検査指紋変更画像の同じアドレスAでは白画素のときに、検査指紋変更画像のアドレスAの近傍アドレスを調べて、黒画素があるときは、アドレスAの登録指紋変更画像の黒画素は、検査指紋変更画像の黒画素と一致(完全一致と区別する必要があるときは、近傍一致と呼ぶ)と判定する。このとき、登録指紋変更画像の黒画素が照合のときに、検査指紋変更画像の同じアドレスの近傍一致の黒画素を2度以上は参照しないようにし、かつ、検査指紋変更画像の同じアドレスの完全一致の黒画素を2度以上は参照しないようにする。このために、次の操作を行う。
【0171】
検査指紋変更画像をメモリの作業域に退避しておく。完全一致または近傍一致によって、登録指紋変更画像の黒画素と一致と判定した検査指紋変更画像の黒画素は、画像メモリの画素値を黒画素と白画素の輝度値以外の中間値(一例としては、黒画素の輝度が0、白画素の輝度が255のときは、完全一致の輝度がBa(黒画素と白画素の輝度以外の値であり、例えば50)、近傍一致の輝度がBb(例えば、100))に変更する。登録指紋変更画像黒画素の検査指紋変更画像黒画素に対する照合では、同じ画像内アドレスの完全一致の検査指紋の黒画素を2度は参照しないようにすることを、すでに参照した画像メモリは中間値となっていることから、チェックする。1つの{S,H,V}の組による登録指紋変更画像と検査指紋変更画像の照合が終了時には、検査指紋変更画像を作業域の退避情報により、元の状態に戻す。
【0172】
ステップW3c:
(XR@,YR@)の集合のすべてのアドレスについて、ステップW3bを終了した場合かつ、入力がサブテンプレートRT(0)の場合は、
T=Nm/Nc
を計算する。そして、このときの{S,H,V}について、Nm,Nc,Tを記憶する。
【0173】
ステップW4(HとVによる平行移動):
H=V=0のときの新登録指紋黒画素アドレス集合(X@,Y@)について、H,V格納域に設定されているH,Vを順に選択(H=V=0のときは,すでにステップW3で計算ずみ)し、Hの最小値から最大値まで、及びVの最小値から最大値まで、順次に各増加刻み幅で変化させたとき(すなわち、Hの最小値がHmin、最大値がHmax、増加刻み幅がKhのときは、H=Hmin(Ih),Hmin(Ih)+Kh,…,により最大Hmax(Ih)まで変化させる。Vの最小値がVmin(Iv)、最大値がVmax(Iv)、増加刻み幅がKvのときは、V=Vmin(Iv),Vmin(Iv)+Kv,…,により最大Vmaxまで変化させる)、個々の{S,H,V}について、(X@−H,Y@−V)が平行移動後の新登録指紋黒画素アドレス集合となるので、個々の{S,H,V}の組み合わせについて、ステップW3と同じ処理を行う。
【0174】
ステップW5(未処理のSのチェック):
未処理のSの値があるとき,ステップW1に行く。
未処理のSの値がないとき,ステップW6に行く。
ステップW6(最大の一致率の判定):
サブテンプレートRT(0)のときは、Sの各値と、H=Hmin〜Hmax,V=Vmin〜Vmax,の変化による各{S,H,V}について、T=Nm/Ncが最大となるときのS,H,V,及びT,Nm,Ncを求め、出力情報とする。S,H,Vがそれぞれ1つだけ入力されている場合にも、T,Nm,Ncを出力情報とする。(手順W終り)
【0175】
図16は、照合処理における近傍画素探索の説明図の一例であり、図16(a)は、登録指紋の登録情報の黒画素アドレスAについて、検査指紋変更画像のアドレスAが黒画素のときは登録指紋変更画像黒画素アドレスAと検査指紋変更画像黒画素アドレスAは完全一致であり、また、検査指紋変更画像アドレスAが黒画素でないときは、例えば、検査指紋変更画像アドレスBが黒画素であれば、登録指紋変更画像黒画素アドレスAと検査指紋変更画像アドレスAは近傍一致となることを表している。また、図16(b)は、完全一致と近傍一致の相互関係であり、一度、完全一致または近傍一致として参照された検査指紋変更画像の黒画素は、別の登録指紋変更画像の黒画素アドレスから重複して完全一致または近傍一致として扱われることのないように重複チェックを行うべきであることを示している。
【0176】
すなわち、登録指紋変更画像黒画素aは検査指紋変更画像黒画素dと完全一致であり、登録指紋指紋変更画像黒画素bは検査指紋変更画像黒画素eと近傍一致であり、登録指紋変更画像黒画素cは検査指紋変更画像とは不一致であり、完全一致のチェックおよび近傍一致のチェックのときに、すでに照合された黒画素dまたは黒画素eを、重複して一致とすることはしないことを示している。
なお、近傍一致と判定するための探索範囲としては、例えば、4近傍や8近傍があり、入力時の画像の歪の状況などを考慮して、設定することができる。
【0177】
備考W(1):ステップw3bにおけるTci,(i=1,2,…,k)の値は、0≦Tci≦1であるが、例えば次のように定める。登録指紋変更画像の全黒画素数をNcとすると、Nci/Nc,(i=1,2,…,k)は処理の進行状況を表しており、とり得る範囲は0≦Nci/Nc≦1である。Nciが増加してNcに近づくに従って、Nmi/Nciは、このときに調べている{S,H,V}に対しての一致率であるNm/Ncに近づくから、TciはNciが大きいほど大きく設定することができる。
【0178】
Tciは大きいほど途中放棄の範囲が広くなり、処理量の削減効果が大きくなるが、反面誤認識も発生しやすくなるので、適当な値を設定する必要がある。kの設定値により、その計算の最大回数が定まる。照合の途中放棄が1回行われれば、以後はそのときの{S,H,V}の値についての以後の途中放棄可否の計算は不要である。Tciの具体的な数値は、対象とする画像の特性に依存して定める必要がある。また、照合の途中放棄の範囲を定める条件式は、途中までの一致の度合いを定めるものであれば、手順Wで示した例に限定されない。
【0179】
備考W(2):ステップW2の式は次の意味である。ステップW2において、アドレス(XR,YR)のすべてについて、登録指紋の近似的中心点(XRC,YRC)を検査指紋の近似的中心点(XTC,YTC)に一致させる平行移動後の新アドレスは、
XR#=XR−(XRC−XTC)
YR#=YR−YRC−YTC)
であり、(XR#,YR#)が新アドレスとなる。次に、(XTC,YTC)を中心とする角度Sの座標軸回転を行う。
【0180】
このことは、
XR@=(XR#一XTC)・cos(S)+(YR#−YTC)・sin(S)+XTC=(XR−XRC)・cos(S)+(YR−YRC)・sin(S)+XTC
YR@=−(XR#−XTC)・sin(S)+(YR#−YTC)・cos(S)+YTC=−(XR−XRC)・sin(S)+(YR−YRC)・cos(S)+YTC
により求めることができる。ここで、三角関数sin(・),COS(・)の値は、あらかじめ角度Sの変動の範囲の値を保持しておいてよい。
【0181】
(14)登録処理と照合処理の流れ
図17は、指紋の登録処理、及び照合処理の概略の流れ図の一例である。登録処理は、指紋の登録情報を画像処理装置1のメモリ6に登録する処理である。照合処理は検査指紋と登録指紋の一致性を判定する処理である。指紋の入力から、登録又は照合までの流れの概要を以下の手順Zに示す。
【0182】
(手順Z)
ステップZA1〜ステップZA5は、登録処理と照合処理に共通な処理である。
ステップZA1:
指紋を画像入力装置2から、画像メモリ4に入力する。
ステップZA2:
画像メモリ4の画像10にある指紋の濃淡画像の平滑化を行う。
【0183】
ステップZA3:
画像10を手順Bにより二値化と背景分離を行う。
ここで、二値化後に、二値画像上のノイズを削減するために、二値画像に対して平滑化と二値化を行ってもよい。
ステップZA4:画像10にある指紋画像の近似的中心点を求める。(ステップZA1〜ステップZA4終り)
【0184】
以後の処理は、登録処理と照合処理で分かれる。
ステップZR1〜ステップZR2は、登録処理の場合であり、登録指紋の登録情報をメモリ6に登録する。
ステップZR1:
画像10にある登録指紋二値画像(第1画像)に指紋領域内で細め処理を行い、登録指紋変更画像(第1変更画像)を得る。
ステップZR2:
登録指紋の登録情報の処理(手順R)を行う。(ステップZR1〜ステップZR2終り)
【0185】
ステップZC1〜ステップZC2は、照合処理の場合であり、登録指紋と検査指紋の照合を行う。
ステップZC1:
画像10にある検査指紋二値画像(第2画像)に黒画素比率一定化または細め処理を行い、検査指紋変更画像(第2変更画像)を得る。黒画素比率一定化は、ステップZA3で行っている場合には、重複して行う必要はない。
ステップZC2:
照合処理(手順C、手順W)により、登録指紋と検査指紋の一致性を判定する。(ステップZC1〜ステップZC2終り)
【0186】
画像の登録処理では、複数の画像を順次に入力して保持し、それらの画像について、照合を行い、最も一致率のよい画像を登録画像とすることができる。図18は、複数の入力画像から最良の登録指紋を選択して行う登録の処理の概略の流れ図の一例である。その手順の例を手順RRに示す。
【0187】
(手順RR)
ステップRR1:
指紋画像を画像メモリに入力し、入力された指紋画像をファイルに格納する。
この操作を規定数繰り返す。
(ここでは、規定数が3個の場合を述べる。それぞれの指紋画像のファイル名を、例えば、z1,z2,z3とする。)
【0188】
ステップRR2:
入力された複数の指紋について、次の組み合わせで照合を行い、一致のとき、それぞれのテンプレート一致率T3をメモリに記憶する。
途中、1つでも照合不一致が発生時は、登録処理は打ち切り、ステップRR1から再実行する。
登録指紋z1と検査指紋z2の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q12とする。
【0189】
登録指紋zlと検査指紋z3の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q13とする。
登録指紋z2と検査指紋z1の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q21とする。
登録指紋z2と検査指紋z3の照合を行い、最終判定が一致、のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q23とする。
【0190】
登録指紋z3と検査指紋z1の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q31とする。
登録指紋z3と検査指紋z2の照合を行い、最終判定が一致のとき、テンプレート一致率T2を求めて、Q32とする。
最終判定が一致する数は、規定条件以上でなければならない(例えば、上述のように6回の照合処理を行うときは、例えば、4個以上などの規定条件を設けることができる)。
【0191】
次に、各入力画像についての平均一致率を求める。例えば、すべてが一致した場合には、
z1については、平均一致率Ql=(Q12+Q13)/2とする。
z2については、平均一致率Q2=(Q21+Q23)/2とする。
z3については、平均一致率Q3=(Q31+Q32)/2とする。
【0192】
ステップRR3:
平均一致率Qi={Q1,Q2,Q3}の内で最大のQiを求め、そのiに対応する指紋ziの登録情報で登録する。(手順RR終り)
【0193】
ここで、1つの指紋を登録するときの入力画像の数は1以上の任意の値に設定可能である。入力画像数を多くする方が、質のよい画像を登録指紋画像として選定できる可能性が高まるが、その反面、登録処理量は多くなるので、それらの兼ね合いを考慮して入力画像数を定める。入力画像の相互間の照合における組み合わせの選択は、上記の如くすべての組み合わせでなく、一部分の組み合わせを選定してもよい。登録する指紋画像を選択するための手段は、上記の平均一致率に限定されるものではなく、別の式を用いてもよい。
【0194】
(15)1対Nの照合
これまでに記述した実施の形態の照合は、1つの検査指紋と1つの登録指紋の登録情報が一致するかどうかを判定することであった。これを、1つの検査指紋が、任意数の登録情報の中の少なくとも1つと一致するかどうかを判定するには、1つの検査指紋と1つの登録情報が一致するかどうかの判定を、各登録情報に対して順次行い、一致するまで行えばよいことは明らかである。しかし、その方法では、登録情報の数が多くなると、照合処理量が多くなるという欠点がある。
任意数の登録情報の中から、1つの検査指紋と一致する1つの登録情報を見つければよいときには、次の手順NAを実行することができる。図19は、1対Nの照合に係わる説明図と概略の流れ図の一例である。検査指紋と登録情報の関係を図19(a)に示す。概略の流れ図を図19(b)に示す。
【0195】
[手順NA]
{S,H,V}の位置合わせ区間を1回目、2回目、…n回目で、分割範囲に区分しておく。ここで、元の{S,H,V}範囲は、すべての分割範囲の和集合である。分割範囲は、部分位置合わせ区間とは独立に設定してもよいし、部分位置合わせ区間を利用してもよい。分割範囲の簡単な例は、第1回目は、一致する場合が多い範囲(例えば、{S=0,H=Hmin〜Hmax,V=Vmin〜Vmax}の部分位置合わせ区間)を選択し、第2回目は、第1回目以外の分割範囲とすることである。
【0196】
(手順NA)
ステップNA1:
検査指紋を入力する。
ステップNA2:
分割範囲を順次に選択する。
第1回目の分割範囲に対する照合では、検査指紋と登録情報(i=1,2,・・・,n)の照合を、1回目の{S,H,V}範囲について行うことを、一致する登録情報が発見できるまで行う。第1回目の照合で、対象とするすべての登録情報の中から一致する登録情報を発見できなかつたときには、第2回目の照合に行く。
【0197】
第2回目の分割範囲に対する照合では、検査指紋と登録情報(i=1,2,・・・,n)の照合を、2回目の{S,H,V}範囲について行うことを、一致する登録情報が発見できるまで行う。第2回目の照合で、対象とするすべての登録情報の中から一致する登録情報を発見できなかつたときには、第3回目の照合に行く。
以下同様に、一致する登録指紋画像を発見できるまで、照合処理を行う。一致する登録指紋画像を発見できたときは、そこで終了する。一致する登録指紋画像を発見できないときは、最後の分割範囲まで処理を行って終了する。(手順NA終り)
検査指紋と一致する登録情報は、この手段により、一致する登録情報を発見できるまでの照合処理量を、削減することができる。
【0198】
(16)不一致部分率の代替
照合処理のところで述べた不一致部分率の判定の代替に次の手段を用いることも可能である。
登録用の二値画像と検査用の二値画像を照合する場合に、該登録用二値画像の登録情報と、該登録用二値画像の黒白を反転した画像(反転登録画像)の登録情報も別に登録しておき、検査用の二値画像と登録情報の一致性を照合し、更に、検査用の二値画像の反転画像と反転登録画像の登録情報の一致性を照合し、これら2つの照合の最終判定が、共に一致であるときに、登録用の二値画像と検査用の二値画像は、一致であると判定して、不一致の度合い(例えば不一致部分率)によるチェックを省略する。ただし、この手段を選択するときは、不一致部分率の計算を省略できる反面、登録情報が増加すること、及び照合時間が増加するという欠点が生じる。登録に係わる処理の手順を手順RVRに示す。照合に係わる処理の手順を手順RVMに示す。
【0199】
(手順RVR)
ステップRVR1:
登録指紋の登録処理を行い、登録情報を登録する。
ステップRVR2:
登録指紋を二値化するときに白画素と黒画素を反転し、その二値画像(反転二値登録画像と呼ぶ)についての登録処理を行い、登録指紋の反転登録情報を登録する。(手順RVR終り)
【0200】
(手順RVM)
ステップRVM1:
検査指紋と登録情報の照合処理を行う。ここで、不一致部分率のチェックは省略する。
ステップRVM2:
検査指紋を二値化するときに、白画素と黒画素を反転し、その二値画像(反転二値検査画像と呼ぶ)と登録指紋の反転登録情報との照合処理を行う。ここで、不一致部分率のチェックは省略する。(手順RVM終り)
【0201】
図20は、反転画像も用いるときの登録処理と照合処理の概略の流れ図の一例であり、図20(a)は、登録に係わる処理の概略の流れ図、図20(b)は、照合に係わる処理の概略の流れ図を表している。
【0202】
(17)拡張または変形
本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、例えば、次のような拡張又は変形に対しても適用が可能である。画像の入力方法、平滑化の処理、二値化の処理、背景分離の処理、補正処理、近似的中心点を求める処理、細め処理、及び照合処理における一致率、不一致部分率の計算式などについては、本実施の形態に限定されるものではなく、他の方法(例えば、公知の方法)を用いる変形、拡張、又は部分的省略が可能である。X座標とY座標の設定方法は、任意である。位置合わせは、回転のずれが無視できるほど小さいときは、可能性のある平行移動だけの位置ずれで調べて、最も一致率がよいときの一致率により判定してもよい。
【0203】
手順WのステップW2において、XR@とYR@を求める式は、回転と平行移動を行える変換であれば使用可能であり、本実施の形態に限定されるものではない。例えば、
XR@=XR・cos(S)+YR・sin(S)
YR@=−XR・sin(S)+YR・cos(S)
を用いることもできる。また、座標変換又は幾何学的変換の使い方は自由である。サブテンプレートの回転や平行移動を行った値を登録情報として追加することにより、照合のための処理量を削減できる(この場合、メモリ量は増加する)。
【0204】
本実施の形態では、画像が指紋の場合を述べたが、画像が線により構成されていると見なせる場合には、本発明を適用できる。サブテンプレートと非サブテンプレートの区分は、自由であり、両者を区分しないこと、又はより多くの区分を設けるなどの拡張がある。
また、請求項に示した手段は、1つ以上を個々に選択して、任意の画像処理を行う装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の一実施の形態に係る指紋の識別システムの一構成例を示す図である。
【図2】画像メモリ及びメモリの使用例を説明する図である。
【図3】画素集合の一例を示す図である。
【図4】指紋領域について、サブテンプレートと非サブテンプレートの区分の例を示す図である。
【図5】画像の入力と有効性を連続して確認して、画像を確定する手順INの流れの概略を示す図である。
【図6】画像の処理範囲の変換の一例を説明する図である。
【図7】画像の部分領域への分割の一例であり、部分領域の輝度平均値の変換を説明する図である。
【図8】輝度が微少変動な部分領域における二値化処理の概略の流れ一例を示す図である。
【図9】部分領域に分割された二値画像について、二値化の黒画素の比率を一定化するための処理の概略の一例を示す図である。
【図10】指紋の有効部分領域テーブルの一例を示す図である。
【図11】ホール(白画素の集合)と非ホールの一例を説明する図である。
【図12】二値画像のメモリ形式から圧縮形式への変換の一例を説明する図である。
【図13】手順Cに基づく照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図14】照合処理における不一致部分のチェックの一例を説明する図である。
【図15】照合処理における画像一致性チェック補助手順(手順W)の概略の流れの一例を示す図である。
【図16】照合処理における近傍画素探索の一例を説明する図である。
【図17】指紋の登録処理、及び照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図18】複数の入力画像から最良の登録指紋を選択して行う登録の処理の概略の流れの一例を示す図である。
【図19】1対Nの照合に係わる説明図と概略の流れの一例を示す図である。
【図20】白黒反転画像も用いるときの登録処理と照合処理の概略の流れの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0206】
1…画像処理装置、2…画像入力装置、3…A/D変換器、4…画像メモリ、5…中央処理装置(CPU)、6…メモリ、7…撮像装置、10,11…画像、12…プログラム及びデータ、13…指紋の登録情報。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする二値画像の2つの画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、
最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、
分割された部分位置合わせ区間ごとに順次に照合処理を行って最終判定が最初に一致と判定できたときに、残った部分位置合わせ区間における照合は行わずに、両画像は一致と判定する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、
各部分位置合わせ区間内の1つの移動位置についての照合で、一方の画像の対象画素の集合を連続に分離して順次に他方の画像の対象画素との一致性を調べる場合に、各分離された対象画素集合のチェック終了ごとに、該分離された対象画素集合ごとの一致度チェック条件により途中までの一致の度合いを判定し、不一致であるときは、該移動位置での照合は不一致であると判定し、該移動位置についての残りの部分についての照合を放棄する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
二値画像である登録画像と検査画像に対して、
登録画像に細め処理を行った画像から登録情報を作成する手段と、
検査画像の黒画素数の全体画素数に対する比率を黒画素比率規定条件内に設定する手段と、
登録情報と検査画像の一致の度合いが一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段と、
登録情報と検査画像の不一致の度合いが不一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段を備え、
照合における一致性の判定として、一致の度合いが一致度規定条件内にあり、かつ不一致の度合いが不一致度規定条件内にあることを、
登録画像と検査画像の一致性判定で合格するために必要な条件とする手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
二値画像である検査画像と登録画像について、検査画像の黒画素と登録画像の黒画素を比較する照合処理手段の実行中に、
登録画像の任意のアドレスAが黒画素であり、検査画像のアドレスAは白画素のときに、検査画像のアドレスAの近傍の規定範囲のアドレスを調べて黒画素があるときは、登録画像のアドレスAの黒画素は検査画像の黒画素と近似的に一致と判定し、かつ、以後の該検査画像と該登録画像の照合において、検査画像の近似的に一致と判定した黒画素が、登録画像のアドレスA以外の黒画素と重複して一致と判定することを排除する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
複数の画像を入力して保持する手段を備え、
任意の2つの画像の照合を行う手段を備え、
入力された複数の画像について、規定の組み合わせで順次に2つを選択して一方を登録画像、他方を検査画像として照合を行って一致の度合いを記憶して行き,最も一致の度合いが良好と判定できたときの登録画像を、入力された複数の画像の内の登録画像として選択する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
任意数N個(N≧2)の登録画像の中から、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を発見するための照合処理を実行する場合に、登録画像と検査画像の位置合わせ区間については、元の位置合わせ区間はすべての分割範囲の和集合であるように分離し、1つの検査画像とN個の登録画像の照合を、位置合わせの各分割範囲について行うことを、1つの検査画像と一致する1つの登録画像が発見できるまで順次に行う手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
2つの二値画像について、
登録画像に対する登録処理手段の実行中に、
登録画像の登録情報と、該登録画像の輝度を反転した画像である反転登録画像の登録情報を登録しておく手段を備え、次に、
照合処理手段の実行中に、
検査画像と登録画像による登録情報とを照合し、
該検査画像の輝度を反転した画像である反転検査画像と、反転登録画像による登録情報とを照合し、
これら2つの照合結果が、共に合格であることを、
登録画像と検査画像は一致であると判定するために必要な条件とする手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする二値画像の2つの画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動区間を複数の部分区間に分離することにより、部分位置合わせ区間を構成し、
最初からm番目(mは正定数)までの部分位置合わせ区間における一致の度合いの最大値が、規定条件外であるときは、以後の部分位置合わせ区間における照合処理は実行せずに、照合は不一致と判定する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、
分割された部分位置合わせ区間ごとに順次に照合処理を行って最終判定が最初に一致と判定できたときに、残った部分位置合わせ区間における照合は行わずに、両画像は一致と判定する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
黒画素と白画素を画像の画素の構成要素とする2つの二値画像について、両画像の位置合わせ後に一致性を調べる照合処理手段において、
位置合わせにおける移動範囲で、少なくとも1つの方向の移動の区間を複数の部分区間に分割して部分位置合わせ区間を構成し、
各部分位置合わせ区間内の1つの移動位置についての照合で、一方の画像の対象画素の集合を連続に分離して順次に他方の画像の対象画素との一致性を調べる場合に、各分離された対象画素集合のチェック終了ごとに、該分離された対象画素集合ごとの一致度チェック条件により途中までの一致の度合いを判定し、不一致であるときは、該移動位置での照合は不一致であると判定し、該移動位置についての残りの部分についての照合を放棄する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
二値画像である登録画像と検査画像に対して、
登録画像に細め処理を行った画像から登録情報を作成する手段と、
検査画像の黒画素数の全体画素数に対する比率を黒画素比率規定条件内に設定する手段と、
登録情報と検査画像の一致の度合いが一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段と、
登録情報と検査画像の不一致の度合いが不一致度規定条件内であるかどうかを判定する手段を備え、
照合における一致性の判定として、一致の度合いが一致度規定条件内にあり、かつ不一致の度合いが不一致度規定条件内にあることを、
登録画像と検査画像の一致性判定で合格するために必要な条件とする手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
二値画像である検査画像と登録画像について、検査画像の黒画素と登録画像の黒画素を比較する照合処理手段の実行中に、
登録画像の任意のアドレスAが黒画素であり、検査画像のアドレスAは白画素のときに、検査画像のアドレスAの近傍の規定範囲のアドレスを調べて黒画素があるときは、登録画像のアドレスAの黒画素は検査画像の黒画素と近似的に一致と判定し、かつ、以後の該検査画像と該登録画像の照合において、検査画像の近似的に一致と判定した黒画素が、登録画像のアドレスA以外の黒画素と重複して一致と判定することを排除する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
複数の画像を入力して保持する手段を備え、
任意の2つの画像の照合を行う手段を備え、
入力された複数の画像について、規定の組み合わせで順次に2つを選択して一方を登録画像、他方を検査画像として照合を行って一致の度合いを記憶して行き,最も一致の度合いが良好と判定できたときの登録画像を、入力された複数の画像の内の登録画像として選択する手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
任意数N個(N≧2)の登録画像の中から、1つの検査画像と一致する1つの登録画像を発見するための照合処理を実行する場合に、登録画像と検査画像の位置合わせ区間については、元の位置合わせ区間はすべての分割範囲の和集合であるように分離し、1つの検査画像とN個の登録画像の照合を、位置合わせの各分割範囲について行うことを、1つの検査画像と一致する1つの登録画像が発見できるまで順次に行う手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
2つの二値画像について、
登録画像に対する登録処理手段の実行中に、
登録画像の登録情報と、該登録画像の輝度を反転した画像である反転登録画像の登録情報を登録しておく手段を備え、次に、
照合処理手段の実行中に、
検査画像と登録画像による登録情報とを照合し、
該検査画像の輝度を反転した画像である反転検査画像と、反転登録画像による登録情報とを照合し、
これら2つの照合結果が、共に合格であることを、
登録画像と検査画像は一致であると判定するために必要な条件とする手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−293900(P2007−293900A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162325(P2007−162325)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【分割の表示】特願2006−201034(P2006−201034)の分割
【原出願日】平成5年5月7日(1993.5.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【分割の表示】特願2006−201034(P2006−201034)の分割
【原出願日】平成5年5月7日(1993.5.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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