説明

画像処理装置

【課題】並び替え処理部における待ち時間を解消することにより、デコードの所要時間を短縮することが可能な画像処理装置を得る。
【解決手段】並び替え処理部3は、復号処理部1によって処理された後の複数のHP成分を、第1の予測方向に対応する第1のテーブルTAHPH、及び、第2の予測方向に対応する第2のテーブルTAHPVの一方を、HP成分の予測方向に応じて選択して用いて並び替える。並び替え処理部3は、復号処理部1から入力されたLP成分に対して逆予測処理を行う逆予測処理部10と、逆予測処理部10による逆予測処理後のLP成分に基づいて、HP成分の予測方向を求める処理部11と、処理部11によって求められたHP成分の予測方向に基づいて、第1のテーブルTAHPH及び第2のテーブルTAHPVの一方を選択する選択部12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、HD Photoにおけるデコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、JPEGよりも高画質で、JPEG2000よりも回路構成及び演算処理が簡素化された静止画ファイルフォーマットとして、マイクロソフト社よりHD Photo(又はJPEG XR)が提案されている。
【0003】
HD Photoにおけるエンコーダは、色変換部、プレフィルタ、周波数変換部、量子化部、予測部、及び符号化部を備えて構成されている。
【0004】
周波数変換部は、入力された画素信号に対して所定の周波数変換処理(PCT)を実行することにより、ハイパス(以下「HP」)成分、ローパス(以下「LP」)成分、及び直流(以下「DC」)成分の周波数データ(係数データ)を出力する。縦16画素×横16画素の1個のマクロブロック内には、輝度Y、色差U、及び色差Vの各々毎に、HP成分の240個の周波数データと、LP成分の15個の周波数データと、DC成分の1個の周波数データとが含まれる。
【0005】
量子化部は、周波数変換部から入力された各成分の周波数データのうち、量子化係数で規定される桁数に相当する下位データをそれぞれ削除することにより、量子化後の周波数データ(HP成分、LP成分、及びDC成分)を出力する。
【0006】
符号化部は、予測部から入力された各成分の周波数データを、上位側の桁範囲内の上位データ(NORMAL DATA)と、下位側の桁範囲内の下位データ(FLEX BIT)とに分割する。そして、符号化部は、各成分のNORMAL DATAに対して、エントロピー符号化処理をそれぞれ実行して出力する。また、符号化部は、各成分のFLEX BITを、エントロピー符号化することなく出力する。
【0007】
また、HD Photoにおけるデコーダは、色逆変換部、ポストフィルタ、周波数逆変換部、逆量子化部、逆予測部、及び復号部を備えて構成されている。デコーダは、エンコーダにおける処理と逆順序の処理を実行することによって、符号化された周波数データから画素信号を復元する。
【0008】
なお、HD Photoの詳細については、例えば下記非特許文献1に開示されており、JPEG XRの詳細については、例えば下記非特許文献2又は下記非特許文献3に開示されている。
【0009】
【非特許文献1】"HD Photo -Photographic Still Image File Format", [online], 2006年11月7日, Microsoft Corporation, [2007年10月10日検索], インターネット<URL: http://www.microsoft.com/whdc/xps/hdphotodpk.mspx>
【非特許文献2】"Coding of Still Pictures -JBIG JPEG", [online], 19 December 2007, ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG1 N 4392, [2008年3月4日検索], インターネット<URL: http://www.itscj.ipsj.or.jp/sc29/open/29view/29n9026t.doc>
【非特許文献3】"Coding of Still Pictures -JBIG JPEG", [online], 14 September 2008, ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG1 N 4739, [2008年9月17日検索], インターネット<URL: http://www.itscj.ipsj.or.jp/sc29/open/29view/29n9749t.doc>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図14は、HD Photoにおけるデコーダの構成の一部を示すブロック図である。処理部501,502には、符号化された複数の周波数データを含むデータストリームが入力される。処理部501は、NORMAL DATAを復号する。処理部502は、FLEX BITを復号する。処理部503は、処理部501から入力されたデータのうち、LP成分の15個のデータの並び替え処理(Adaptive Scan)を実行する。また、処理部503は、処理部501から入力されたデータのうち、ブロック毎に、HP成分の15個のデータの並び替え処理を実行する。具体的には、非零データの出現頻度を示すテーブルを用いて、非零データの出現頻度が低くなるものほど後方に位置するように、データの並び替えが実行される。ここで、LP成分に関しては、1個のテーブルが準備されている。また、HP成分に関しては、そのマクロブロックのHP成分の予測方向が左方向である場合に用いられるテーブル(以下「左方向用テーブル」と称す)と、上方向である場合に用いられるテーブル(以下「上方向用テーブル」と称す)との、合計2個のテーブルが準備されている。
【0011】
処理部503による処理後のデータは、記憶部504に記憶される。また、処理部502による処理後のデータは、記憶部505に記憶される。
【0012】
処理部506は、記憶部504,505から読み出したデータに対して、各サブブロック内での複数のブロックの並び替え処理、及び、NORMAL DATAとFLEX BITとの結合処理を実行する。
【0013】
処理部507は、処理部506から入力されたデータに対して、逆予測処理を実行する。DC成分に関する予測値は、エッジの有無に応じて、左のマクロブロックのDC成分の値、上のマクロブロックのDC成分の値、又は、左のマクロブロックのDC成分の値と上のマクロブロックのDC成分の値との平均値となる。
【0014】
LP成分に関する予測値は、DC成分の予測方向に応じて、左のマクロブロックのLP成分の値、上のマクロブロックのLP成分の値、又はゼロ(つまり予測しない)となる。ここで、LP成分に関する予測は、特定のデータ(YUV444の色空間の場合は、マクロブロック内の最上行の3個のデータと最左列の3個のデータ)についてのみ行われる。LP成分の予測のために必要なデータは、記憶部508に記憶されている。
【0015】
HP成分に関する予測値は、LP成分の上記特定のデータの値に応じて、左のブロックのHP成分の値、上のブロックのHP成分の値、又はゼロとなる。LP成分と同様に、HP成分に関する予測は、特定のデータ(YUV444の色空間の場合は、各ブロック内の最上行の3個のデータと最左列の3個のデータ)についてのみ行われる。
【0016】
処理部507においてHP成分の予測方向が求まると、その予測方向に関する情報は、データS100として処理部503に通知される。処理部503は、データS100に基づいて、左方向用テーブル及び上方向用テーブルの一方を選択する。
【0017】
図15は、図14に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。(A)は、記憶部504,505にデータが書き込まれる期間を示しており、(B)は、処理部507において逆予測処理が実行される期間を示している。図15では、連続する2個のマクロブロック(第0マクロブロック及び第1マクロブロック)に関する動作のみを示している。
【0018】
図15に示すように、第0マクロブロックのLP成分のデータLP0の書き込みが完了してから、第0マクロブロックのHP成分のデータHP0Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグT100が生じている。同様に、第1マクロブロックのLP成分のデータLP1の書き込みが完了してから、第1マクロブロックのHP成分のデータHP1Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグT101が生じている。この原因は、処理部507において、LP成分のデータに対する逆予測処理が完了してHP成分の予測方向が求まるまでは、処理部503において、左方向用テーブル及び上方向用テーブルの選択を行うことができないからである。
【0019】
このように、図14に示した構成によると、後段の逆予測処理部(処理部507)においてHP成分の予測方向が求まるまで、前段の並び替え処理部(処理部503)は、HP成分のデータの並び替え処理の開始を待つ必要がある。そのため、並び替え処理部における待ち時間に起因して、デコーダ全体の処理が遅延するという問題がある。
【0020】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、並び替え処理部における待ち時間を解消することにより、デコードの所要時間を短縮することが可能な画像処理装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、第1の周波数成分の第1のデータと、第2の周波数成分の第2のデータとを復号する復号処理部と、前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第1の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第1のテーブル、及び、第2の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第2のテーブルの一方を、第2のデータの予測方向に応じて選択して用いて並び替える、並び替え処理部と、前記並び替え処理部によって処理された後の第1のデータ及び第2のデータに対して逆予測処理を行う逆予測処理部とを備え、第2のデータの予測方向を求めるためには、逆予測処理後の第1のデータが必要であり、前記並び替え処理部は、前記復号処理部から入力された第1のデータに対して逆予測処理を行う第1の処理部と、前記第1の処理部によって逆予測処理が行われた第1のデータに基づいて、第2のデータの予測方向を求める第2の処理部と、前記第2の処理部によって求められた第2のデータの予測方向に基づいて、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルの一方を選択する第3の処理部とを有することを特徴とするものである。
【0022】
第1の態様に係る画像処理装置によれば、並び替え処理部は、自身が有する第1の処理部によって、第1のデータに対する逆予測処理を行い、自身が有する第2の処理部によって、第2のデータの予測方向を求める。従って、後段の逆予測処理部において第2のデータの予測方向が求まることを待つことなく、並び替え処理部は、自身で求めた第2のデータの予測方向に基づいて、第1のテーブル及び第2のテーブルの一方を選択することができる。つまり、後段の逆予測処理部において第2のデータの予測方向が求まることを待つことなく、第2のデータに対する並び替え処理を開始することができる。その結果、並び替え処理部における待ち時間が解消されるため、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。
【0023】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、第1の態様に係る画像処理装置において特に、第1のデータの逆予測処理を行うためには、第1のデータの予測方向に関する情報が必要であり、当該情報は、前記逆予測処理部から前記第1の処理部に入力されることを特徴とするものである。
【0024】
第2の態様に係る画像処理装置によれば、第1のデータの予測方向に関する情報は、逆予測処理部から第1の処理部に入力される。従って、並び替え処理部は、第1のデータの予測方向を求めるための回路を、自らが有する必要はない。その結果、並び替え処理部の回路規模を削減することができる。
【0025】
本発明の第3の態様に係る画像処理装置は、第1の態様に係る画像処理装置において特に、第1のデータの逆予測処理を行うためには、第1のデータの予測方向に関する情報が必要であり、前記並び替え処理部は、第1のデータの予測方向を求める第4の処理部をさらに有することを特徴とするものである。
【0026】
第3の態様に係る画像処理装置によれば、並び替え処理部は、第1のデータの予測方向に関する情報を逆予測処理部から入手するのではなく、自身が有する第4の処理部によって第1のデータの予測方向を求める。従って、逆予測処理部によって第1のデータの予測方向が求まることを待つことなく、第1のデータに対する逆予測処理を開始することができる。その結果、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。また、後段の逆予測処理部から第1のデータの予測方向に関する情報を入手するためのタイミング調整等が不要となる。
【0027】
本発明の第4の態様に係る画像処理装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る画像処理装置において特に、第1のデータの逆予測処理を行うためには、前記並び替え処理部によって前回処理されたマクロブロック内の特定の第1のデータが必要であり、前記並び替え処理部は、その特定の第1のデータを記憶する記憶部をさらに有することを特徴とするものである。
【0028】
第4の態様に係る画像処理装置によれば、並び替え処理部は、前回処理したマクロブロック内の特定の第1のデータを逆予測処理部から入手するのではなく、自身が有する記憶部に、その特定の第1のデータを記憶している。従って、逆予測処理部においてその特定の第1のデータが求まることを待つことなく、現在の処理対象のマクロブロックに関して、第1のデータに対する逆予測処理を開始することができる。その結果、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。しかも、前回処理したマクロブロックは、現在処理対象のマクロブロックに対して、同一行で隣接するマクロブロックである。従って、前回処理されたマクロブロック内の特定の第1のデータの個数はさほど多くない(HD Photoにおけるローパス成分のデータに関しては3個)ため、記憶部を追加することに起因する並び替え処理部の回路規模の増大を、最小限に抑えることができる。
【0029】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係る画像処理装置において特に、第1のデータの逆予測処理を行うためには、前記並び替え処理部によって前回よりも前に処理されたマクロブロック内の特定の第1のデータが必要であり、その特定の第1のデータは、前記逆予測処理部から前記第1の処理部に入力されることを特徴とするものである。
【0030】
第5の態様に係る画像処理装置によれば、並び替え処理部において逆予測処理を行うために必要な特定の第1のデータは、逆予測処理部から並び替え処理部に入力される。従って、並び替え処理部は、特定の第1のデータを記憶しておくための記憶部を、自らが有する必要はない。その結果、並び替え処理部の回路規模を削減することができる。しかも、特定の第1のデータは、並び替え処理部によって前回よりも前に処理されたマクロブロックに関するデータであるため、逆予測処理部においてすでに求まっている。従って、並び替え処理部は、特定の第1のデータを待ち時間なく逆予測処理部から入手することができる。
【0031】
本発明の第6の態様に係る画像処理装置は、データストリームに含まれる、第1の周波数成分の第1のデータと、第2の周波数成分の第2のデータとを復号する復号処理部と、前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第1の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第1のテーブルを用いて並び替える、第1の並び替え処理部と、前記第1の並び替え処理部による処理と並行して、前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第2の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第2のテーブルを用いて並び替える、第2の並び替え処理部と、第1のデータ及び第2のデータに対して逆予測処理を行う逆予測処理部とを備え、前記逆予測処理部による、第1のデータに対する逆予測処理によって、第2のデータの予測方向が求まり、当該第2のデータの予測方向に基づいて、前記第1の並び替え処理部及び前記第2の並び替え処理部の一方が選択され、選択された前記第1の並び替え処理部又は前記第2の並び替え処理部によって処理された第2のデータが、前記逆予測処理部に入力されることを特徴とするものである。
【0032】
第6の態様に係る画像処理装置によれば、第1の予測方向に対応する第1のテーブルを用いて並び替えを行う第1の並び替え処理部と、第2の予測方向に対応する第2のテーブルを用いて並び替えを行う第2の並び替え処理部とを備える。そして、第1の並び替え処理部による並び替え処理と、第2の並び替え処理部による並び替え処理とが並行して行われ、後に逆予測処理部によって第2のデータの予測方向が求まると、第1及び第2の並び替え処理部のうちの正しい一方が選択される。従って、後段の逆予測処理部において第2のデータの予測方向が求まることを待つことなく、第1及び第2の並び替え処理部による第2のデータに対する並び替え処理を開始することができる。その結果、第1及び第2の並び替え処理部における待ち時間が解消されるため、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。
【0033】
本発明の第7の態様に係る画像処理装置は、第6の態様に係る画像処理装置において特に、前記逆予測処理部によって求められた第2のデータの予測方向に関する情報は、前記復号処理部に通知され、前記復号処理部は、当該情報に基づいて、次のマクロブロックに関する、データストリームにおける復号処理の開始位置を決定することを特徴とするものである。
【0034】
現在処理対象のマクロブロックにおける第2のデータの予測方向に応じて、第2のデータのデータ長が異なる。つまり、現在処理対象のマクロブロックにおける第2のデータの予測方向に応じて、次回の処理対象のマクロブロックに関する、データストリームにおける復号処理の開始位置が異なる。第7の態様に係る画像処理装置によれば、逆予測処理部において求められた第2のデータの予測方向に関する情報は復号処理部に通知され、復号処理部は、当該情報に基づいて、次のマクロブロックに関する、データストリームにおける復号処理の開始位置を決定する。従って、復号処理部は、データストリームにおける適切な位置から、次のマクロブロックに関する復号処理を開始することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、並び替え処理部における待ち時間が解消されるため、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。なお、以下では、本発明をHD Photoにおけるデコーダに適用する例について述べるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。また、以下では、YUV444の色空間を例にとり説明するが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。
【0037】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るデコーダの構成の一部を示すブロック図である。図1の接続関係で示すように、デコーダは、復号処理部1,2、並び替え処理部3、記憶部4,5,8、結合処理部6、及び逆予測処理部7を備えて構成されている。
【0038】
復号処理部1,2には、図示しないエンコーダによって符号化された複数の周波数データを含むデータストリームD1が入力される。
【0039】
図2は、1個のマクロブロックに関するデータストリームD1の構成を示す図である。(A)には、データストリームD1の全体を示しており、(B)には、輝度Yに関するDC成分のデータの構成を示しており、(C)には、輝度Yに関するLP成分のデータの構成を示しており、(D)には、輝度Yに関するHP成分のデータの構成を示している。
【0040】
図2の(A)を参照して、データストリームD1は、輝度Yに関するDC成分の1個のデータ、色差Uに関するDC成分の1個のデータ、色差Vに関するDC成分の1個のデータ、輝度Yに関するLP成分の15個のデータ、色差Uに関するLP成分の15個のデータ、色差Vに関するLP成分の15個のデータ、輝度Yに関するHP成分の240個(15個×16ブロック)のデータ、色差Uに関するHP成分の240個のデータ、及び色差Vに関するHP成分の240個のデータが、この順に並んだ構成を有している。
【0041】
図2の(B)を参照して、輝度Yに関するDC成分のデータは、1個のNORMAL DATAの後ろに1個のFLEX BITが並んだ構成を有している。図2の(C)を参照して、輝度Yに関するLP成分のデータは、15個のNORMAL DATAの後ろに15個のFLEX BITが並んだ構成を有している。図2の(D)を参照して、輝度Yに関するHP成分のデータは、1個のブロック内の15個のNORMAL DATAの後ろにそのブロック内の15個のFLEX BITが並んだ構成が、16個並んだ構成を有している。
【0042】
図1を参照して、復号処理部1は、NORMAL DATAを復号(エントロピー復号)する。また、復号処理部2は、FLEX BITを復号する。
【0043】
並び替え処理部3は、復号処理部1から入力されたデータD2のうち、LP成分の15個のデータの並び替え処理(以下「Adaptive Scan」と称す)を実行する。また、並び替え処理部3は、復号処理部501から入力されたデータD2のうち、ブロック毎に、HP成分の15個のデータのAdaptive Scanを実行する。具体的には、非零データの出現頻度を示すテーブルを用いて、非零データの出現頻度が低くなるものほど後方に位置するように、データD2の並び替えが実行される。
【0044】
図3は、並び替え処理部3によるAdaptive Scanを示す図である。(A)は、15個のデータの位置に割り当てられたindex値を示しており、(B)は、テーブルTAの一例を示しており、(C)は、並び替え処理部3に入力される15個のデータと、並び替え処理部3から出力される15個のデータとを示している。
【0045】
図3の(B)を参照して、テーブルTAにおいては、あるindex値に対応する位置のデータの値がゼロでない場合(つまり非零データである場合)に、そのindex値に対応するcount値が「1」ずつインクリメントされる。そして、count値の小さいindex値ほど後方に位置するように、テーブルTA内でのindex値の並び替えが行われる。
【0046】
図3の(C)を参照して、並び替え処理部3には、index値が「0」である位置から順番に、15個のデータが入力される。並び替え処理部3は、入力された15個のデータの順序がテーブルTAにおけるindex値の順序と等しくなるように、15個のデータを並び替える。これにより、並び替え処理部3から出力されるデータにおいては、非零データの出現頻度が低くなるデータほど後方に位置することとなる。
【0047】
ここで、LP成分に関しては、1個のテーブル(図7,8に示すテーブルTALP)が準備されている。また、HP成分に関しては、そのマクロブロックのHP成分の予測方向が左方向である場合に用いられるテーブル(テーブルTAHPH)と、上方向である場合に用いられるテーブル(テーブルTAHPV)との、合計2個のテーブルが準備されている。なお、HP成分の予測方向が無しである場合(つまり予測しない場合)には、テーブルTAHPHが用いられる。
【0048】
図1を参照して、並び替え処理部3から出力されたデータD4は、記憶部4に入力され、記憶部4内で一時的に記憶される。また、復号処理部2から出力されたデータD3は、記憶部5に入力され、記憶部5内で一時的に記憶される。
【0049】
結合処理部6は、記憶部4,5からデータD4,D3をそれぞれ読み出し、NORMAL DATAであるデータD4とFLEX BITであるデータD3とを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータD5を生成する。また、結合処理部6は、HP成分のデータD4,D3に関しては、1個のマクロブロック内の16個のブロックを所定の順序で並び替える処理を行う。
【0050】
逆予測処理部7は、データD5に対して逆予測処理を実行する。逆予測処理は、DC成分、LP成分、及びHP成分の順序で行われる。
【0051】
図4は、DC成分に関する逆予測処理を示す図である。図4には、4個のマクロブロックMB1〜MB4に対応する4個のDC成分のデータ101〜104を示している。現在の処理対象のデータ(差分データ)は、右下のマクロブロックMB4のデータ104であるとする。なお、データ104の逆予測処理に必要な、逆予測処理後のデータ101〜103は、データD7として記憶部8に記憶されている。
【0052】
逆予測処理部7は、輝度Y及び色差U,Vのそれぞれに関して、データ101とデータ103との差の絶対値を求め、輝度Yの絶対値に所定値(例えば「4」)を乗じた後、3つの絶対値を加算することにより、水平方向のエッジの判定値を求める。同様に、輝度Y及び色差U,Vのそれぞれに関して、データ101とデータ102との差の絶対値を求め、輝度Yの絶対値に所定値(例えば「4」)を乗じた後、3つの絶対値を加算することにより、垂直方向のエッジの判定値を求める。そして、逆予測処理部7は、水平方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、垂直方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を上方向とする。この場合、予測値はデータ102の値となる。また、逆予測処理部7は、垂直方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、水平方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を左方向とする。この場合、予測値はデータ103の値となる。また、逆予測処理部7は、上記のいずれの場合にも該当しない場合には、データ102の値とデータ103の値との平均値を、予測値とする。
【0053】
逆予測処理部7は、差分データであるデータ104の値に、上記で求めた予測値を加算することにより、逆予測処理後のデータ104を得る。
【0054】
なお、画素平面の左上角に位置するマクロブロックに関しては、上方向に隣接するマクロブロック及び左方向に隣接するマクロブロックが存在しないため、予測処理は実行されない。また、画素平面の左端の列に位置するマクロブロックに関しては、左方向に隣接するマクロブロックが存在しないため、予測方向は上方向となる。また、画素平面の上端の行に位置するマクロブロックに関しては、上方向に隣接するマクロブロックが存在しないため、予測方向は左方向となる。
【0055】
図5は、LP成分に関する逆予測処理を示す図である。図5には、図4に対応させて、4個のマクロブロックMB1〜MB4に対応する、合計60個のLP成分のデータを示している。現在の処理対象のデータは、右下のマクロブロックMB4のデータ207〜212(差分データ)であるとする。なお、データ207〜212の逆予測処理に必要な、逆予測処理後のデータ201〜206は、データD7として記憶部8に記憶されている。
【0056】
マクロブロックMB4のDC成分のデータ104(図4参照)に関する予測方向が上方向であり、かつ、LP成分に関する量子化係数がマクロブロックMB4とマクロブロックMB2とで等しい場合は、予測方向は上方向となる。この場合、各データ201,202,203の値が、各データ207,208,209に関する予測値となる。また、この場合、マクロブロックMB4内のその他の12個のデータに関しては、予測処理は実行されない。
【0057】
マクロブロックMB4のDC成分のデータ104に関する予測方向が左方向であり、かつ、LP成分に関する量子化係数がマクロブロックMB4とマクロブロックMB3とで等しい場合は、予測方向は左方向となる。この場合、各データ204,205,206の値が、各データ210,211,212に関する予測値となる。また、この場合、マクロブロックMB4内のその他の12個のデータに関しては、予測処理は実行されない。
【0058】
上記のいずれの場合にも該当しない場合には、マクロブロックMB4内のいずれのデータに関しても、予測処理は実行されない。つまり予測値はゼロとなる。
【0059】
逆予測処理部7は、差分データであるデータ207〜209又はデータ210〜212の値に、上記で求めた予測値を加算することにより、逆予測処理後のデータ207〜212を得る。
【0060】
図6は、HP成分に関する逆予測処理を示す図である。図6には、1つのマクロブロックMB4に対応する、合計240個のHP成分の周波数データを示している。現在の処理対象のデータは、左から2列目かつ上から2行目のブロックに含まれるデータ307〜312(差分データ)であるとする。
【0061】
図5を参照して、逆予測処理部7は、輝度Yに関する、逆予測処理後のデータ207〜209と、色差U,Vのそれぞれに関する、逆予測処理後のデータ207との全てを加算することにより、水平方向のエッジの判定値を求める。同様に、輝度Yに関する、逆予測処理後のデータ210〜212と、色差U,Vのそれぞれに関する、逆予測処理後のデータ210との全てを加算することにより、垂直方向のエッジの判定値を求める。
【0062】
そして、逆予測処理部7は、水平方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、垂直方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を左方向とする。この場合、図6を参照して、各データ304,305,306の値が、各データ310,311,312に関する予測値となる。また、この場合、そのブロック内のその他の12個のデータに関しては、予測処理は実行されない。
【0063】
また、逆予測処理部7は、垂直方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、水平方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を上方向とする。この場合、各データ301,302,303の値が、各データ307,308,309に関する予測値となる。また、この場合、そのブロック内のその他の12個のデータに関しては、予測処理は実行されない。
【0064】
また、逆予測処理部7は、上記のいずれの場合にも該当しない場合には、そのブロック内のいずれのデータに関しても、予測処理を実行しない。つまり予測値はゼロとなる。
【0065】
逆予測処理部7は、差分データであるデータ307〜309又はデータ310〜312の値に、上記で求めた予測値を加算することにより、逆予測処理後のデータ307〜312を得る。
【0066】
図1を参照して、逆予測処理部7による逆予測処理後のデータD6は、図示しない逆量子化部に入力される。
【0067】
図7は、並び替え処理部3の第1の構成例を示すブロック図である。図7の接続関係で示すように、並び替え処理部3は、逆予測処理部10、処理部11,13、選択部12、及び記憶部14を備えて構成されている。記憶部14には、テーブルTALP,TAHPH,TAHPVが記憶されている。逆予測処理部10は、結合部20、記憶部21、加算部22、及び処理部23を有して構成されている。
【0068】
処理部13には、図1に示した復号処理部1からデータD2が入力される。処理部13は、DC成分のデータD2をそのまま出力する。また、処理部13は、LP成分の15個のデータD2に対して、テーブルTALPを用いてAdaptive Scanを実行する。また、処理部13は、各ブロックのHP成分の15個のデータD2に対して、テーブルTAHPH及びテーブルTAHPVの一方を用いてAdaptive Scanを実行する。ここで、テーブルTAHPH,TAHPVの一方を選択するためには、現在の処理対象のマクロブロックに関する、HP成分の予測方向についての情報が必要である。並び替え処理部3は、その情報を、後段の逆予測処理部7(図1参照)から入手するのではなく、以下のようにして自ら生成する。以下の説明では、図5を参照して、現在の処理対象のマクロブロックがマクロブロックMB4であるものとする。
【0069】
並び替え処理部3における前回の処理対象のマクロブロックMB3(つまり逆予測処理部7における現在の処理対象のマクロブロック)に関する、DC成分の逆予測処理後のデータ103(図4参照)が、データD20(図1に示したデータD8の一部)として、逆予測処理部7から処理部23に入力される。また、データ103とともに、データ101,102が、逆予測処理部7から処理部23に入力される。データ101,102は記憶部8に記憶されており、逆予測処理部7は、記憶部8からデータ101,102を読み出して、処理部23に入力する。なお、処理部23が直接的に記憶部8からデータ101,102を読み出しても良い。また、逆予測処理部10内にラインメモリを配置し、データ101,102をそのラインメモリ内に記憶しておき、処理部23がそのラインメモリからデータ101,102を読み出しても良い。
【0070】
処理部23は、データ101〜103に基づいて、上述の逆予測処理部7と同様の手法によって、DC成分に関する予測方向を求める。つまり、処理部23は、輝度Y及び色差U,Vのそれぞれに関して、データ101とデータ103との差の絶対値を求め、輝度Yの絶対値に所定値(例えば「4」)を乗じた後、3つの絶対値を加算することにより、水平方向のエッジの判定値を求める。同様に、輝度Y及び色差U,Vのそれぞれに関して、データ101とデータ102との差の絶対値を求め、輝度Yの絶対値に所定値(例えば「4」)を乗じた後、3つの絶対値を加算することにより、垂直方向のエッジの判定値を求める。そして、処理部23は、水平方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、垂直方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を上方向とする。また、処理部23は、垂直方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、水平方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、予測方向を左方向とする。
【0071】
次に、処理部23は、上述の逆予測処理部7と同様の手法によって、LP成分に関する予測方向を求める。つまり、処理部23は、DC成分に関する予測方向が上方向であり、かつ、LP成分に関する量子化係数が現在の処理対象のマクロブロックMB4とその上のマクロブロックMB2とで等しい場合は、LP成分に関する予測方向を上方向とする。また、処理部23は、DC成分に関する予測方向が左方向であり、かつ、LP成分に関する量子化係数が現在の処理対象のマクロブロックMB4とその左のマクロブロックMB3とで等しい場合は、LP成分に関する予測方向を左方向とする。また、処理部23は、上記のいずれの場合にも該当しない場合には、予測方向は無し(つまり予測しない)とする。
【0072】
処理部23によって求められたLP成分の予測方向に関する情報は、データD13として加算部22に入力される。
【0073】
図8は、並び替え処理部3の第2の構成例を示すブロック図である。図7の構成では、逆予測処理部7から処理部23にデータ101〜103が入力され、DC成分及びLP成分に関する予測方向を処理部23によって求めた。これに対し、図8の構成では、処理部23が省略され、逆予測処理部7がデータ101〜103に基づいてDC成分及びLP成分に関する予測方向を求める。そして、LP成分の予測方向に関する情報が、データD13として逆予測処理部7から加算部22に入力される。その他の構成及び動作は図7と同様である。
【0074】
図7を参照して、結合部20には、データD10,D11が入力される。データD10は、Adaptive Scan後のデータ207〜212(図5参照)に関するNORMAL DATAであり、データD11は、データ207〜212に関するFLEX BITである。結合部20は、NORMAL DATAとFLEX BITとを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータ207〜212を生成する。データ207〜212は、データD12として加算部22に入力される。
【0075】
記憶部21には、マクロブロックMB4の左のマクロブロックMB3(つまり並び替え処理部3において前回処理したマクロブロック)における、特定のデータ204〜206が記憶されている。記憶部21に記憶されているデータ204〜206は、差分データではなく、逆予測処理後のデータである必要がある。
【0076】
マクロブロックMB3に関するLP成分についての予測方向が左方向以外である場合は、結合部20から出力されたデータ204〜206が、そのまま逆予測処理後のデータ204〜206となる。一方、マクロブロックMB3に関するLP成分についての予測方向が左方向である場合は、結合部20から出力されたデータ204〜206に、マクロブロックMB3の左のマクロブロック内の対応データ(つまりデータ204〜206と同一位置の逆予測処理後のデータ)を加算したものが、逆予測処理後のデータ204〜206となる。なお、逆予測処理後の対応データは、この時点では逆予測処理部7においてすでに求まっている。従って、並び替え処理部3は、逆予測処理部7からそのデータを入手することが可能である。
【0077】
記憶部21に記憶されているデータ204〜206は、データD14として加算部22に入力される。
【0078】
また、マクロブロックMB4の上のマクロブロックMB2(つまり前回よりも前に処理したマクロブロック)における、逆予測処理後の特定のデータ201〜203が、データD15(図1に示したデータD8の一部)として、逆予測処理部7から加算部22に入力される。逆予測処理後のデータ201〜203は記憶部8に記憶されており、逆予測処理部7は、記憶部8からデータ201〜203を読み出して、加算部22に入力する。なお、加算部22が直接的に記憶部8からデータ201〜203を読み出しても良い。また、逆予測処理部10内にラインメモリを配置し、データ201〜203をそのラインメモリ内に記憶しておき、加算部22がそのラインメモリからデータ201〜203を読み出しても良い。
【0079】
上記の通り、加算部22には、現在の処理対象のマクロブロックMB4に関する、LP成分の予測方向についての情報が、データD13として入力されている。
【0080】
データD13で示される予測方向が左方向である場合には、加算部22は、差分データである各データ210,211,212の値に、逆予測処理後のデータである各データ204,205,206の値をそれぞれ加算する。また、データD13で示される予測方向が上方向である場合には、加算部22は、差分データである各データ207,208,209の値に、逆予測処理後のデータである各データ201,202,203の値をそれぞれ加算する。また、データD13で示される予測方向が無しである場合(つまり予測しない場合)には、加算部22は、データ207〜212に対する加算処理を行わない。以上の結果、逆予測処理後のデータ207〜212が生成され、これらのデータ207〜212は、データD16として処理部11に入力される。
【0081】
処理部11は、データ207〜212に基づいて、上述の逆予測処理部7と同様の手法によって、HP成分に関する予測方向を求める。つまり、処理部11は、輝度Yに関する、逆予測処理後のデータ207〜209と、色差U,Vのそれぞれに関する、逆予測処理後のデータ207との全てを加算することにより、水平方向のエッジの判定値を求める。同様に、処理部11は、輝度Yに関する、逆予測処理後のデータ210〜212と、色差U,Vのそれぞれに関する、逆予測処理後のデータ210との全てを加算することにより、垂直方向のエッジの判定値を求める。そして、処理部11は、水平方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、垂直方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、HP成分に関する予測方向を左方向とする。また、処理部11は、垂直方向のエッジの判定値に所定値(例えば「4」)を乗じた値が、水平方向のエッジの判定値よりも小さい場合には、HP成分に関する予測方向を上方向とする。また、処理部11は、上記のいずれの場合にも該当しない場合には、予測方向は無し(つまり予測しない)とする。
【0082】
処理部11によって求められたHP成分の予測方向に関する情報は、データD17として選択部12に入力される。選択部12は、データD17に基づいて、テーブルTAHPH及びテーブルTAHPVの一方を処理部13に選択させるための選択信号D18を生成する。選択信号D18は処理部13に入力される。データD17で与えられる予測方向が左方向である場合、又は無しである場合には、左方向用のテーブルTAHPHが選択される。また、データD17で与えられる予測方向が上方向である場合には、上方向用のテーブルTAHPVが選択される。
【0083】
第1の実施の形態に係るデコーダ(画像処理装置)によれば、並び替え処理部3は、自身が有する逆予測処理部10によって、LP成分のデータに対する逆予測処理を行い、自身が有する処理部11によって、HP成分に関する予測方向を求める。従って、後段の逆予測処理部7においてHP成分に関する予測方向が求まることを待つことなく、並び替え処理部3は、自身で求めたHP成分に関する予測方向(データD17)に基づいて、テーブルTAHPH及びテーブルTAHPVの一方を選択することができる。従って、処理部13は、後段の逆予測処理部7においてHP成分に関する予測方向が求まることを待つことなく、HP成分のデータD2に対するAdaptive Scanを開始することができる。その結果、並び替え処理部3における待ち時間が解消されるため、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。
【0084】
図9は、図1に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。(A)は、記憶部4,5にデータが書き込まれる期間を示しており、(B)は、逆予測処理部7において逆予測処理が実行される期間を示している。図9に示すように、第1マクロブロックのLP成分のデータLP1の書き込みが完了してから、第1マクロブロックのHP成分のデータHP1Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグは生じていない。同様に、第2マクロブロックのLP成分のデータLP2の書き込みが完了してから、第2マクロブロックのHP成分のデータHP2Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグは生じていない。
【0085】
また、図8に示した構成によれば、LP成分の予測方向に関する情報(データD13)は、逆予測処理部7から逆予測処理部10に入力される。従って、並び替え処理部3は、LP成分の予測方向を求めるための回路(図7の処理部23)を、自らが有する必要はない。その結果、並び替え処理部3の回路規模を削減することができる。
【0086】
また、図7に示した構成によれば、並び替え処理部3は、LP成分の予測方向に関する情報(データD13)を逆予測処理部7から入手するのではなく、自身が有する処理部23によってLP成分の予測方向を求める。従って、逆予測処理部7によってLP成分の予測方向が求まることを待つことなく、LP成分に対する逆予測処理を開始することができる。その結果、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。また、後段の逆予測処理部7からLP成分の予測方向に関する情報を入手するためのタイミング調整等が不要となる。
【0087】
また、第1の実施の形態に係るデコーダによれば、並び替え処理部3は、前回処理したマクロブロックMB3内の特定のデータ204〜206を逆予測処理部7から入手するのではなく、自身が有する記憶部21に、逆予測処理後のデータ204〜206を記憶している。従って、逆予測処理部7において逆予測処理後のデータ204〜206が求まることを待つことなく、現在の処理対象のマクロブロックMB4に関して、LP成分に対する逆予測処理を開始することができる。その結果、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。しかも、前回処理したマクロブロックMB3は、現在の処理対象のマクロブロックMB4に対して、同一行で隣接するマクロブロックである。従って、前回処理されたマクロブロックMB3内のデータ204〜206の個数はさほど多くない(HD PhotoにおけるLP成分のデータに関しては3個)ため、記憶部21を追加することに起因する並び替え処理部3の回路規模の増大を、最小限に抑えることができる。
【0088】
また、第1の実施の形態に係るデコーダによれば、並び替え処理部3において逆予測処理を行うために必要な特定のデータ201〜203は、逆予測処理部7から並び替え処理部3に入力される。従って、並び替え処理部3は、データ201〜203を記憶しておくためのラインメモリを、自らが有する必要はない。その結果、並び替え処理部3の回路規模を削減することができる。しかも、データ201〜203は、並び替え処理部3によって前回よりも前に処理されたマクロブロックに関するデータであるため、逆予測処理部7においてすでに求まっている。従って、並び替え処理部3は、逆予測処理後のデータ201〜203を、待ち時間なく逆予測処理部から入手することができる。
【0089】
<第2の実施の形態>
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るデコーダの構成の一部を示すブロック図である。図10の接続関係で示すように、デコーダは、復号処理部1H,2H、並び替え処理部3H、記憶部4H,5H、復号処理部1V,2V、並び替え処理部3V、記憶部4V,5V、結合処理部6、逆予測処理部7、及び記憶部8を備えて構成されている。
【0090】
復号処理部1H,1Vは、NORMAL DATAを復号する。また、復号処理部2H,2Vは、FLEX BITを復号する。
【0091】
図11は、並び替え処理部3Hの構成を示すブロック図である。並び替え処理部3Hは、処理部13Hと記憶部14Hとを備えて構成されている。記憶部14Hには、テーブルTALP,TAHPHが記憶されている。
【0092】
図12は、並び替え処理部3Vの構成を示すブロック図である。並び替え処理部3Vは、処理部13Vと記憶部14Vとを備えて構成されている。記憶部14Vには、テーブルTALP,TAHPVが記憶されている。
【0093】
図11を参照して、処理部13Hには、図10に示した復号処理部1HからデータD2Hが入力される。処理部13Hは、DC成分のデータD2Hをそのまま出力する。また、処理部13Hは、LP成分の15個のデータD2Hに対して、テーブルTALPを用いてAdaptive Scanを実行する。また、処理部13Hは、LP成分に対するAdaptive Scanが完了すると、それに続けて、各ブロックのHP成分の15個のデータD2Hに対して、テーブルTAHPHを用いてAdaptive Scanを実行する。
【0094】
図12を参照して、処理部13Vには、図10に示した復号処理部1VからデータD2Vが入力される。処理部13Vは、DC成分のデータD2Vをそのまま出力する。また、処理部13Vは、LP成分の15個のデータD2Vに対して、テーブルTALPを用いてAdaptive Scanを実行する。また、処理部13Vは、LP成分に対するAdaptive Scanが完了すると、それに続けて、各ブロックのHP成分の15個のデータD2Vに対して、テーブルTAHPVを用いてAdaptive Scanを実行する。
【0095】
図10を参照して、並び替え処理部3Hから出力されたデータD4Hは、記憶部4Hに入力され、記憶部4H内で一時的に記憶される。また、復号処理部2Hから出力されたデータD3Hは、記憶部5Hに入力され、記憶部5H内で一時的に記憶される。同様に、並び替え処理部3Vから出力されたデータD4Vは、記憶部4Vに入力され、記憶部4V内で一時的に記憶される。また、復号処理部2Vから出力されたデータD3Vは、記憶部5Vに入力され、記憶部5V内で一時的に記憶される。
【0096】
結合処理部6は、DC成分及びLP成分に関するデータD4H,D3Hを記憶部4H,5Hからそれぞれ読み出し、NORMAL DATAであるデータD4HとFLEX BITであるデータD3Hとを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータD5Hを生成する。また、結合処理部6は、DC成分及びLP成分に関するデータD4V,D3Vを記憶部4V,5Vからそれぞれ読み出し、NORMAL DATAであるデータD4VとFLEX BITであるデータD3Vとを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータD5Vを生成する。DC成分及びLP成分に関するデータD5H,D5Vは、逆予測処理部7に入力される。結合処理部6によるDC成分及びLP成分に対するこれらの処理は、並び替え処理部3H,3VによるHP成分に対するAdaptive Scanと並行して実行される。
【0097】
逆予測処理部7において、前回の処理対象のマクロブロックに関するDC成分の逆予測処理が完了すると、現在の処理対象のマクロブロックに関するDC成分の予測方向が求まり、それに応じて、現在の処理対象のマクロブロックに関するLP成分の予測方向が求まる。逆予測処理部7は、LP成分の予測方向に基づいて、LP成分に関する逆予測処理を行う。また、逆予測処理後のLP成分の特定のデータ(図5に示したデータ207〜212)に基づいて、現在の処理対象のマクロブロックに関するHP成分の予測方向を求める。
【0098】
逆予測処理部7は、HP成分の予測方向に関する情報を、データD30として結合処理部6に入力する。
【0099】
データD30で与えられる予測方向が左方向である場合、又は予測方向が無しである場合は、結合処理部6は、HP成分に関するデータD4H,D3Hを記憶部4H,5Hからそれぞれ読み出し、NORMAL DATAであるデータD4HとFLEX BITであるデータD3Hとを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータD5Hを生成する。また、結合処理部6は、HP成分のデータD4H,D3Hに関して、1個のマクロブロック内の16個のブロックを所定の順序で並び替える処理を行う。結合処理部6によって生成されたHP成分に関するデータD5Hは、逆予測処理部7に入力される。なお、この場合には、記憶部4V,5Vから結合処理部6への、HP成分に関するデータD4V,D3Vの読み出しは行われず、HP成分に関するデータD4V,D3Vは記憶部4V,5Vから削除される。
【0100】
また、HP成分に関するデータD4H,D3Hが選択された旨の情報が、データD31として、逆予測処理部7から復号処理部1H,2H,1V,2Vに入力される。復号処理部1H,2H,1V,2Vは、データD31に基づいて、次回の処理対象のマクロブロックに関する、データストリームD1における復号処理の開始点を決定する。具体的には、現在の処理対象のマクロブロックに関して復号処理部2Hが処理した最終ビットの次のビットが、次回の処理対象のマクロブロックに関する復号処理の開始点として決定される。
【0101】
一方、データD30で与えられる予測方向が上方向である場合は、結合処理部6は、HP成分に関するデータD4V,D3Vを記憶部4V,5Vからそれぞれ読み出し、NORMAL DATAであるデータD4VとFLEX BITであるデータD3Vとを結合することにより、上位桁と下位桁とが揃ったデータD5Vを生成する。また、結合処理部6は、HP成分のデータD4V,D3Vに関して、1個のマクロブロック内の16個のブロックを所定の順序で並び替える処理を行う。結合処理部6によって生成されたHP成分に関するデータD5Vは、逆予測処理部7に入力される。なお、この場合には、記憶部4H,5Hから結合処理部6への、HP成分に関するデータD4H,D3Hの読み出しは行われず、HP成分に関するデータD4H,D3Hは記憶部4H,5Hから削除される。
【0102】
また、HP成分に関するデータD4V,D3Vが選択された旨の情報が、データD31として、逆予測処理部7から復号処理部1H,2H,1V,2Vに入力される。復号処理部1H,2H,1V,2Vは、データD31に基づいて、次回の処理対象のマクロブロックに関する、データストリームD1における復号処理の開始点を決定する。具体的には、現在の処理対象のマクロブロックに関して復号処理部2Vが処理した最終ビットの次のビットが、次回の処理対象のマクロブロックに関する復号処理の開始点として決定される。
【0103】
第2の実施の形態に係るデコーダ(画像処理装置)は、テーブルTAHPHを用いてHP成分の並び替えを行う並び替え処理部3Hと、テーブルTAHPVを用いてHP成分の並び替えを行う並び替え処理部3Vとを備えている。そして、並び替え処理部3HによるAdaptive Scanと、並び替え処理部3VによるAdaptive Scanとが並行して行われ、後に逆予測処理部7によってHP成分に関する予測方向が求まると、並び替え処理部3H及び並び替え処理部3Vのうちの正しい一方が選択される。従って、後段の逆予測処理部7においてHP成分の予測方向が求まることを待つことなく、並び替え処理部3H,3VによるHP成分に対するAdaptive Scanを開始することができる。その結果、並び替え処理部3H,3Vにおける待ち時間が解消されるため、デコードの所要時間を短縮することが可能となる。
【0104】
図13は、図10に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。(A)は、記憶部4H,4V,5H,5Vにデータが書き込まれる期間を示しており、(B)は、逆予測処理部7において逆予測処理が実行される期間を示している。図13に示すように、第1マクロブロックのLP成分のデータLP1の書き込みが完了してから、第1マクロブロックのHP成分のデータHP1Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグは生じていない。同様に、第2マクロブロックのLP成分のデータLP2の書き込みが完了してから、第2マクロブロックのHP成分のデータHP2Yの書き込みが開始されるまでの間に、タイムラグは生じていない。
【0105】
また、現在の処理対象のマクロブロックにおけるHP成分の予測方向に応じて、HP成分のデータのデータ長が異なる。つまり、現在の処理対象のマクロブロックにおけるHP成分の予測方向に応じて、次回の処理対象のマクロブロックに関する、データストリームD1における復号処理の開始位置が異なる。第2の実施の形態に係るデコーダによれば、逆予測処理部7において求められたHP成分の予測方向に関する情報(データD31)は復号処理部1H,2H,1V,2Vに通知され、復号処理部1H,2H,1V,2Vは、当該情報に基づいて、次のマクロブロックに関する、データストリームD1における復号処理の開始位置を決定する。従って、復号処理部1H,2H,1V,2Vは、データストリームD1における適切な位置から、次のマクロブロックに関する復号処理を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデコーダの構成の一部を示すブロック図である。
【図2】1個のマクロブロックに関するデータストリームの構成を示す図である。
【図3】並び替え処理部によるAdaptive Scanを示す図である。
【図4】DC成分に関する逆予測処理を示す図である。
【図5】LP成分に関する逆予測処理を示す図である。
【図6】HP成分に関する逆予測処理を示す図である。
【図7】並び替え処理部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図8】並び替え処理部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図9】図1に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るデコーダの構成の一部を示すブロック図である。
【図11】並び替え処理部の構成を示すブロック図である。
【図12】並び替え処理部の構成を示すブロック図である。
【図13】図10に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】HD Photoにおけるデコーダの構成の一部を示すブロック図である。
【図15】図14に示した構成の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1,1H,1V,2,2H,2V 復号処理部
3,3H,3V 並び替え処理部
4,4H,4V,5,5H,5V,8,14,21 記憶部
7,10 逆予測処理部
11,13,13H,13V,23 処理部
12 選択部
TAHPH,TAHPV テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数成分の第1のデータと、第2の周波数成分の第2のデータとを復号する復号処理部と、
前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第1の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第1のテーブル、及び、第2の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第2のテーブルの一方を、第2のデータの予測方向に応じて選択して用いて並び替える、並び替え処理部と、
前記並び替え処理部によって処理された後の第1のデータ及び第2のデータに対して逆予測処理を行う逆予測処理部と
を備え、
第2のデータの予測方向を求めるためには、逆予測処理後の第1のデータが必要であり、
前記並び替え処理部は、
前記復号処理部から入力された第1のデータに対して逆予測処理を行う第1の処理部と、
前記第1の処理部によって逆予測処理が行われた第1のデータに基づいて、第2のデータの予測方向を求める第2の処理部と、
前記第2の処理部によって求められた第2のデータの予測方向に基づいて、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルの一方を選択する第3の処理部と
を有する、画像処理装置。
【請求項2】
第1のデータの逆予測処理を行うためには、第1のデータの予測方向に関する情報が必要であり、
当該情報は、前記逆予測処理部から前記第1の処理部に入力される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
第1のデータの逆予測処理を行うためには、第1のデータの予測方向に関する情報が必要であり、
前記並び替え処理部は、第1のデータの予測方向を求める第4の処理部をさらに有する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
第1のデータの逆予測処理を行うためには、前記並び替え処理部によって前回処理されたマクロブロック内の特定の第1のデータが必要であり、
前記並び替え処理部は、その特定の第1のデータを記憶する記憶部をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
第1のデータの逆予測処理を行うためには、前記並び替え処理部によって前回よりも前に処理されたマクロブロック内の特定の第1のデータが必要であり、
その特定の第1のデータは、前記逆予測処理部から前記第1の処理部に入力される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
データストリームに含まれる、第1の周波数成分の第1のデータと、第2の周波数成分の第2のデータとを復号する復号処理部と、
前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第1の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第1のテーブルを用いて並び替える、第1の並び替え処理部と、
前記第1の並び替え処理部による処理と並行して、前記復号処理部によって処理された後の複数の第2のデータを、第2の予測方向に対応する、非零データの出現頻度を示す第2のテーブルを用いて並び替える、第2の並び替え処理部と、
第1のデータ及び第2のデータに対して逆予測処理を行う逆予測処理部と
を備え、
前記逆予測処理部による、第1のデータに対する逆予測処理によって、第2のデータの予測方向が求まり、
当該第2のデータの予測方向に基づいて、前記第1の並び替え処理部及び前記第2の並び替え処理部の一方が選択され、
選択された前記第1の並び替え処理部又は前記第2の並び替え処理部によって処理された第2のデータが、前記逆予測処理部に入力される、画像処理装置。
【請求項7】
前記逆予測処理部によって求められた第2のデータの予測方向に関する情報は、前記復号処理部に通知され、
前記復号処理部は、当該情報に基づいて、次のマクロブロックに関する、データストリームにおける復号処理の開始位置を決定する、請求項6に記載の画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−114538(P2010−114538A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283763(P2008−283763)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】