説明

画像形成方法

【課題】注入帯電方式におけるアモルファスシリコン感光体の画像流れを防止し、高耐久かつ良好な画像を出力可能な画像形成方法の提供。
【解決手段】シリコン原子を母体とする非単結晶材料で構成された光導電層を有し、表面の体積抵抗が108Ω・cm以上1015Ω・cm以下である感光体表面に接触して、該感光体との接触部に体積抵抗104Ω・cm以上1010Ω・cm以下の帯電磁性粒子を介在させて、かつ感光体に対して周速差をもって移動して該感光体を帯電し、該感光体上に静電潜像を形成し、トナーをトナー担持体に担持させて、該トナー担持体から該感光体表面に該トナーを供して該静電潜像を現像してトナー像を形成し、現像されたトナー像を転写材に転写させる画像形成方法において、一次粒子が立方体状及び/又は直方体状の粒子形状かつ一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下である無機粉体研磨粒子が、帯電装置内に導電粒子に対して0.01質量%以上8質量%以下存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真画像形成方法に関する。より詳しくは電子写真感光体を用い、感光体を帯電する帯電工程と、感光体の帯電面に静電潜像を形成する情報書き込み工程と、現像剤担持体に担持させた現像剤によって感光体の静電潜像をトナー像として現像する現像工程と、感光体のトナー像を感光体と被転写部材間に電界を作用させて被転写部材側に転写させる転写工程とを有する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置や静電記録装置等に用いられる画像形成方法において、電子写真感光体・静電記録誘電体等の感光体上に潜像を形成する方法についても様々な方法が知られている。
【0003】
例えば、電子写真法では、潜感光体としての光導電性物質を利用した感光体上を所要の極性・電位に一様に帯電処理した後に、画像パターン露光を施すことにより電気的潜像を形成し、トナーを現像して顕像化し、これを紙等の転写媒体に転写・定着する方法が一般的である。
【0004】
近年、複写機、プリンタおよびファクシミリなどの出力端末をすべてかね備え、ネットワークに対応した複合機が、市場で広く受け入れられている。
【0005】
このようなネットワーク対応の出力端末として、電子写真システムが広く受け入れられる反面、大きな問題の一つとして本体のデューティサイクル(Duty Cycle)が挙げられる。デューティサイクル(Duty Cycle)とは、作業員によるメンテナンスを要することなく、本体が正常に稼動し続ける限界枚数のことである。
【0006】
このデューティサイクルを律速している最大の要因の一つに、感光体ドラムの寿命を挙げることができる。感光体ドラムの寿命を長寿命化することができれば、廃棄物の減少、すなわち消耗品の減少や、消耗品の長寿命化や、信頼性の向上を図ることができる。そして、環境保護の観点から、このような技術の開発が求められている。
【0007】
このような中、感光体として、次第にアモルファスシリコン(a−Si)感光体が、多用されてきている。このアモルファスシリコン感光体は、そのビッカース硬度が500以上(500Kg/m以上、JIS規格)と非常に硬く、耐久性、耐熱性、環境安定性にも優れている。そのため、特に高信頼性が要求される高速機においては、必要不可欠になってきている。(例えば、特許文献1参照。)
【0008】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、これらの装置において、感光体の表面に付着して画質に影響を及ぼすのはトナーに限らない。
【0009】
すなわち、感光体の表面に付着して画質に影響を及ぼすのは、転写材として多くの場合利用される紙片から発生する微細な紙粉や、これから析出する有機質成分や、装置内における高圧部材の存在に起因して発生するコロナ生成物などである。
【0010】
そして、これらの微細な紙粉、有機質成分またはコロナ生成物が、感光体の表面に付着して異物となり、特に高湿環境化において低抵抗化して、鮮明な静電潜像の形成を妨げ、これが画質の劣化を招来する要因と考えられている。
【0011】
上記した画像の劣化現象は、特にシラン類のグロー放電分解によって成膜構成するアモルファスシリコン(非晶質シリコン)感光体の場合に発生しやすいことが知られている。
【0012】
潜像担持体を所要の極性・電位に一様に帯電処理(除電処理も含む)する帯電装置としては前述したようにコロナ帯電器(コロナ放電器)がよく使用されている。コロナ帯電器は非接触型の帯電装置であり、ワイヤ電極等の放電電極と該放電電極を囲むシールド電極を備え、放電開口部を被帯電体である像担持体に対向させて非接触に配設し、放電電極とシールド電極に高圧を印加することにより生じる放電電流(コロナシャワー)に像担持体面をさらすことで像担持体面を所定に帯電させるものである。
【0013】
近年では、潜像担持体等の被帯電体の帯電装置として、コロナ帯電器に比べて低オゾン・低電力等の利点があることから接触帯電装置が多く提案され、また実用化されている。
【0014】
接触帯電装置は、像担持体等の被帯電体に、ローラ型(帯電ローラ)、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型等の導電性の帯電部材(接触帯電部材・接触帯電器)を接触させ、この接触帯電部材に所定の帯電バイアスを印加して被帯電体面を所定の極性・電位に帯電させるものである。
【0015】
接触帯電の帯電機構(帯電のメカニズム、帯電原理)には、放電帯電機構と直接注入帯電機構 の2種類の帯電機構が混在しており、どちらが支配的であるかにより各々の特性が現れる。
【0016】
放電帯電機構
接触帯電部材と被帯電体との微小間隙に生じる放電現象により被帯電体表面が帯電する機構である。放電帯電機構は接触帯電部材と被帯電体に一定の放電閾値を有するため、帯電電位より大きな電圧を接触帯電部材に印加する必要がある。また、コロナ帯電器に比べれば発生量は格段に少ないが、放電生成物を生じることが原理的に避けられないため、オゾンなど活性イオンによる弊害は避けられない。
【0017】
直接注入帯電機構
接触帯電部材から被帯電体に直接に電荷が注入されることで被帯電体表面が帯電する系である。直接帯電、あるいは注入帯電、あるいは電荷注入帯電とも称される。より詳しくは、中抵抗の接触帯電部材が被帯電体表面に接触して、放電現象を介さずに、つまり放電を基本的に用いないで被帯電体表面に直接電荷注入を行うものである。よって、接触帯電部材への印加電圧が放電閾値以下の印加電圧であっても、被帯電体を印加電圧相当の電位に帯電することができる。この帯電系はイオンの発生を伴わないため放電生成物による弊害は生じない。しかし、直接注入帯電であるため、接触帯電部材の被帯電体への接触性が帯電性に大きく効いてくる。そこでより高い頻度で被帯電体に接触する構成をとるため、接触帯電部材はより密な接触点を持つ、被帯電体との速度差を多く持つ等の構成が必要となる。(例えば、特許文献2参照。)
この注入帯電機構を主に利用して感光体表面を帯電させることにより、放電生成物を減らし、放電生成物による感光体の劣化を抑制することができる。
【0018】
【特許文献1】特開昭60−67951号公報
【特許文献2】特開平8−106200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記した画像形成装置においては、次のような課題があった。
すなわち、上記したような、主に注入帯電機構により帯電させることで放電生成物の生成は減少するが、わずかながらに放電現象も起きており、表面抵抗が低抵抗化しやすいアモルファスシリコン感光体においては、画像流れ現象が発生する場合がある。さらに、放電生成物の発生する個所は帯電装置に限らず、現像・転写前帯電・転写工程等高圧が印加される個所においても放電生成物が発生する。
【0020】
また、放電発生源以外に画像流れを発生させる要因として、トナーあるいはほとんどの場合に転写材として用いられる紙から発生する微細な紙粉が感光体表面に固着した場合、放電生成物によって変質されやすくこれが吸湿して低抵抗化し、画像流れが発生する。
【0021】
このように、画像流れを招聘する要因としては帯電装置だけでなく、様々な装置・部材が関与し、特にアモルファスシリコン感光体を用いた場合に問題となりやすい。
【0022】
また感光体表面を接触帯電ブラシにて帯電させる場合には、帯電ブラシにアモルファスシリコン感光体表面上に蓄積した流れ起因物質が付着・蓄積して、帯電能の低下や画像流れ等による画像不良を引き起こす。
【0023】
そこで本発明の目的は、上記した課題を解決すべく、高硬度のアモルファスシリコン感光体において長期的に画像流れが発生せず、フィルミングによる画像劣化のない優れた耐久性能を有し、良好な画像を出力可能な画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは鋭意検討の結果、アモルファスシリコン感光体表面に対して帯電装置での摺擦研磨を行うことにより、上記課題を解決する方法を見出した。
【0025】
具体的には以下のような画像形成方法を用いることで、画像流れの発生しない高品質かつ長寿命の画像形成を行うことが出来る。
【0026】
(1)シリコン原子を母体とする非単結晶材料で構成された光導電層を有し、表面の体積抵抗が108Ω・cm以上1015Ω・cm以下である電子写真感光体表面に接触して、該電子写真感光体との接触部に体積抵抗104Ω・cm以上1010Ω・cm以下の帯電磁性粒子を介在させて、かつ電子写真感光体に対して周速差をもって移動して該電子写真感光体を帯電する帯電工程と、該帯電工程により帯電された該電子写真感光体の表面に露光によって静電潜像を形成する露光工程と、トナーをトナー担持体に担持させて、該トナー担持体から該電子写真感光体表面に該トナーを供して形成した該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、該現像工程により形成された電子写真感光体の表面のトナー像を転写材に転写させる転写工程とを有する画像形成方法において、一次粒子が立方体状及び/又は直方体状の粒子形状であってかつ一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下、である無機粉体研磨粒子が、帯電装置内に導電粒子に対して0.01質量%以上8質量%以下存在することを特徴とする画像形成方法。
【0027】
(2)前記無機粉体研磨粒子がトナーに外添されており、現像装置から帯電装置に供給して該帯電磁性粒子に付着させることを特徴とする1記載の画像形成方法。
【0028】
(3)非画像形成時に前記無機粉体研磨粒子を画像比率に応じて帯電装置内の研磨粒子と同極性の電圧を帯電装置に印加して研磨粒子の吐き出しを行うことを特徴とする2記載の画像形成方法。
【0029】
(4)前記無機粉体研磨粒子の体積抵抗が該帯電磁性粒子の体積抵抗の10-3倍以上10倍以下であることを特徴とする1〜3記載の画像形成方法。
【0030】
(5)前記無機粉体研磨粒子がチタン酸ストロンチウムまたはチタン酸バリウムまたはチタン酸カルシウムであることを特徴とする1〜4記載の画像形成方法。
【0031】
(6)前記帯電磁性粒子がフェライト粒子であることを特徴とする1〜5記載の画像形成方法。
【0032】
(7)前記帯電磁性粒子と前記無機粉体研磨粒子とを摩擦させた場合に、該無機粉体研磨粒子はトナー粒子と逆極性に帯電することを特徴とする1〜6記載の画像形成方法。
【0033】
(8)電子写真感光体に接触する弾性体により転写残トナーを感光体からクリーニングする工程をさらに有し、前記無機粉体研磨粒子の一次粒子の平均粒径が30nm以上300nm以下であることを特徴とする1〜6記載の画像形成方法。
【0034】
(9)前記電子写真感光体上の転写残トナーを現像手段に戻して再度現像に利用することを特徴とする1〜8の画像形成方法。
【0035】
(10)前記電子写真感光体の表面粗さをRz、溝間隔をSm、該帯電磁性粒子の平均粒径をDとしたとき、以下の式:
2×D/3 ≦ Sm/Rz
を満たすことを特徴とする1〜9記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、アモルファスシリコン感光体表面を帯電装置で摺擦して上記課題を解決するに際し、注入帯電装置に立方体状及び/又は直方体状の研磨粒子(以下直方体状研磨剤)を適正量添加し、感光体表面粗さ・形状と、帯電磁性粒子粒径、研磨粒子粒径・形状を適切に組み合わせることによって、画像流れを防止でき、高画質・長寿命の画像形成を行うことができる。
【0037】
さらには、感光体表面だけでなく導電粒子表面についても摺擦して放電生成物等の汚染物質を除去でき、帯電装置寿命を延ばすことが可能となる。
【0038】
また、小径の研磨粒子がスペーサ粒子として機能することで、帯電磁性粒子とトナーの接触によるトナーの劣化抑制・感光体上からのトナーの回収性能向上が達成され、クリーニング工程を有しないクリーナレス機構においてはトナー再利用を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
<画像形成工程>
図1に本発明に係る画像形成装置の一例を示す。なお、同図は、デジタル方式の複写機の概略構成を示す縦断面図である。同図に示す複写機は、感光体としてドラム型の電子写真感光体101を備えている。この感光体101は、駆動手段(不図示)によって矢印方向に回転駆動される。感光体101の周囲には、その回転方向に沿ってほぼ順に、一次帯電手段である帯電ローラ102、露光手段103、現像器(現像手段)104、転写帯電器(転写手段)105が配設されている。さらに、転写材111の搬送方向(矢印方向)の転写帯電器105の下流側(同図中の左側)には、定着器106が配設されている。感光体101表面は、一次帯電器102により帯電される。次いで、露光手段103から発せられるレーザ光により、イメージ露光が行なわれ、レーザ光照射部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。感光体101上の静電潜像は、現像器104の帯電したトナーによって現像される。現像された感光体101上のトナー像は、矢印方向に搬送される転写材111に、転写帯電器105によって転写される。トナー像転写後の転写材111は定着器106に搬送され、ここで加熱・加圧を受けて、表面にトナー像が定着される。転写後に感光体に残った転写残トナーは現像装置に回収されて再度現像に供される。
【0040】
<注入帯電装置>
注入帯電方式は、中抵抗の接触帯電部材で、中抵抗の表面抵抗を持つ感光体の電荷注入層に電荷を充電して帯電を行うものである。
図1中の帯電装置102は感光体101に当接された接触帯電部材としての導電磁気ブラシであり、外径16mmの非磁性導電帯電スリーブと、これに内包されるマグネットロールと、帯電スリーブ上での帯電磁性粒子とによって構成され、マグネットロールは固定され、帯電スリーブが回転駆動可能となっている。帯電スリーブ表面でのマグネットによる磁束密度は800×10-4T(テスラ)である。帯電磁性粒子を帯電スリーブ上に厚さ1mm長手幅220mmでコートして感光体101との間に幅約5mmの帯電ニップを形成し、感光体と接触させる。このスリーブには帯電バイアス印加電源から−700VのDC帯電バイアスが印加されていて、感光体101の帯電面がほぼ−700Vに一様に帯電される。
【0041】
均一かつ十分な帯電性能を得るために、順方向では帯電スリーブの回転数が感光体に対して周速比100%以上が好ましいが、逆方向ではブラシ停止状態より少し帯電スリーブを回転させればよい。
【0042】
ここで、接触帯電部材である磁気ブラシの帯電磁性粒子としては、(1)樹脂とマグネタイト等の磁性粉体を混練して粒子に成型したもの、もしくはこれに抵抗値調節のために導電カーボン等を混ぜたもの、(2)焼結したマグネタイト、フェライト、もしくはこれらを還元または酸化処理して抵抗値を調節したもの、(3)上記の帯電磁性粒子を抵抗調整をしたコート材(フェノール樹脂にカーボンを分散したもの等)でコートまたはNi等の金属でメッキ処理して体積抵抗値を適当な値にしたもの、等が考えられる。これら帯電磁性粒子の体積抵抗値としては、高すぎると感光体に電荷が均一に注入できず、微小な帯電不良によるカブリ画像となってしまう。反対に、低すぎると感光体表面にピンホールがあったとき、ピンホールに電流が集中して帯電電圧が降下し感光体表面を帯電することができず、帯電ニップ状の帯電不良となる。通常、帯電磁性粒子の体積抵抗値は、低い印加電圧(1V以上100V以下)で1〜2点測定されているが、帯電磁性粒子の体積抵抗値は電圧に依存するため、不具合が生じてしまうことがある。
【0043】
ピンホールリークは帯電部材への高電圧印加時の体積抵抗値で決まる。具体的には、感光体上のピンホールがニップ部に来たとき、ピンホール部の感光体基板のアースと帯電部材の帯電磁性粒子に印加される電圧の差がピンホール部の帯電磁性粒子に印加されるので、この時に過剰に電流が流れないようにすることが好ましい。よってそのためには帯電部材に印加される最大印加電圧Vmax(V)での帯電磁性粒子の体積抵抗値を1×104 Ω以上にすることが望ましい。なぜならVmax(V)での帯電磁性粒子の体積抵抗値を1×104 Ωより小さくするとVmax(V)においてリークが生じてしまう。
【0044】
一方、帯電不良については帯電部材への低電圧印加時の体積抵抗値で決まる。注入帯電方式は、図2に示すように帯電部材と感光体が接触開始してから接触時間が経過すると感光体電位(Vd)が帯電部材の印加電圧(Vdc)に近付いてゆく。具体的には感光体電位を、初め0Vとすると時間t=0では、Vd=0V、Vdc=−700Vなので実質帯電磁性粒子にかかる電圧(Vdc−Vd)は、−700Vである。よってこの時は、700V印加時の帯電磁性粒子の体積抵抗が帯電性を決める。そして、ある程度時間が経過した、t=t1 では、Vd=−500V、Vdc=−700Vなので実質帯電磁性粒子にかかる電圧は、−200Vである。この時は−200V印加時の帯電磁性粒子の体積抵抗が帯電性を決める。というように、実質帯電磁性粒子にかかる電圧は、感光体電位(Vd)が帯電部材印加電圧(Vdc)に近付けば近付くほど、小さくなってゆき、そのときどきの帯電磁性粒子の体積抵抗が帯電性を決めている。1Vを印加したときの帯電磁性粒子の体積抵抗が1×1010 Ωより高いと、一定の帯電時間内に帯電磁性粒子から感光体に電荷を渡せなくなり、帯電不良となってしまうために帯電磁性粒子の体積抵抗は、1×1010 Ω以下とするのが良い。この低電圧側での体積抵抗値は、この注入帯電方式において重要な特性であり、従来の接触帯電部材では、微小なギャップに対して放電を行なって感光体を帯電していたために、感光体電位と帯電部材との電位差として放電閾値以上が必要であったのでここまで低い電圧での体積抵抗値は問題にならなかった。
【0045】
帯電部材に印加する電圧としては直流電圧のみでもよいし、直流交流成分重畳電圧でもよい。交流成分としては、注入帯電方法の場合、装置のプロセススピードにもよるが100Hz〜10kHz程度の周波数で、印加交流成分のピークピーク間電圧は1000V程度以下が好ましい。1000Vを越えると、印加電圧に対して感光体電位が得られてしまうので、潜像面が電位的に波打ち、かぶりや濃度薄を生じることがある。
【0046】
放電を用いる帯電方法の場合は交流成分としては、装置のプロセススピードにもよるが100Hz〜10kHz程度の周波数で、印加交流成分のピークピーク間電圧は1000V程度以上で、放電開始電圧の2倍以上が好ましい。印加する交流成分の波形はサイン波、矩形波、鋸波等が使用できる。
【0047】
本発明において、電荷を感光体に直接注入させることにより帯電を行う方法のためには電荷注入層を有した感光体を用いなければならない。
【0048】
帯電部材として帯電磁性粒子を用いた磁気ブラシを使用し、DC電圧のみを印加した場合、放電開始電圧が存在するために、放電による感光体への電位が印加電圧まで帯電されず、それだけ帯電部材と、感光体との間で電位差が大きくなり、帯電部材である帯電磁性粒子も感光体上に漏れてしまいやすい傾向にあるので、注入帯電方法を用いた方が好ましい。
【0049】
また、放電による帯電では、放電生成物により感光体表面がダメージを受け、劣化あるいは高温高湿下での画像流れを生じ易いという問題点があり、その点でも注入帯電方法を用いた方が好ましい。
【0050】
本発明は、従来では低抵抗の接触帯電部材を用いないと生じなかった電荷注入による良好な帯電性と、低抵抗の接触帯電部材では防止することのできなかった感光体上のピンホールによるリークという特性を同時に満足し、十分な電位収束性を得るために、電荷注入層を有した感光体に接触して、注入により帯電を行う接触帯電部材の帯電磁性粒子よりなる磁気ブラシの体積抵抗値が、104Ωcm以上1010Ωcm以下の範囲中にある接触帯電部材を用いたものである。
【0051】
帯電部材である磁気ブラシと感光体を十分に接触させることによって帯電性も向上し、また転写残トナーの帯電器内への取り込み性も向上し、帯電器内に混入したトナーを感光体上に吐き出させる機会も増すことから、磁気ブラシは感光体に対して収速差をもって移動させることが好ましい。
【0052】
帯電部材に用いられる帯電磁性粒子の体積平均粒径は10μm以上60μm以下が好ましい。10μmより小さいと、感光体への磁気ブラシの付着が生じやすく、また磁気ブラシとしたときの帯電磁性粒子の搬送性に劣る。60μmを越えると帯電磁性粒子と感光体との接触点が減少し注入帯電方法の帯電一様性が劣化する傾向にある。さらに好ましくは、帯電磁性粒子の体積平均粒径は15μm以上40μm以下である。
【0053】
また、帯電磁性粒子を保持する保持部材と感光体との間隙は0.2mm以上2mm以下の範囲が好ましい。該間隙が0.2mmより小さいと帯電磁性粒子がその間隙を通りにくくなり、スムーズに保持部材上を帯電磁性粒子が搬送されずに帯電不良や、ニップ部に帯電磁性粒子が過剰に溜り、感光体への付着が生じやすくなり、2mm以上では感光体と帯電磁性粒子のニップ幅を広く形成しにくいので好ましくない。さらに好ましくは該間隙は0.2mm以上1mm以下、さらには0.3mm以上0.7mm以下が好ましい。
【0054】
本発明に係わる帯電磁性粒子としては、磁気によって穂立ちさせて、この磁気ブラシを感光体に接触させて帯電させるために、この材質としてはたとえば鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性を示す元素を含む合金あるいは化合物、また酸化処理、還元処理などを行って体積抵抗値を調整したたとえば組成調整したフェライト、水素還元処理したZn−Cuフェライトなどが用いられる。フェライトの体積抵抗値を上記のような範囲に収めるには、金属の組成を調整することにより達成される。
【0055】
本発明に用いられる接触帯電部材として用いる磁気ブラシを構成する帯電磁性粒子は抵抗調整等を行う目的で表面層を有した形態でもよい。表面層の形態は、該帯電磁性粒子の表面を蒸着膜や、導電性樹脂膜、導電性顔料分散樹脂膜等でコートしたものである。この表面層は必ずしも該帯電磁性粒子を完全に被覆する必要は無く、本発明の効果が得られる範囲で該帯電磁性粒子が露出していても良い。つまり表面層が不連続に形成されていても良い。
【0056】
帯電磁性粒子の被覆用に用いられる結着樹脂としては、スチレン、クロルスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体などが挙げられる。特に代表的な結着樹脂としては、導電性微粒子の分散性やコート層としての成膜性、生産性という点などから、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。さらにポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0057】
フッ素樹脂としては、たとえばポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフロオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどと、他のモノマーが共重合した溶媒可溶の共重合体が挙げられる。
【0058】
また、シリコーン樹脂としては、たとえば信越シリコーン社製KR271、KR282、KR311、KR255、KR155(ストレートシリコーンワニス)、KR211、KR212、KR216、KR213、KR217、KR9218(変性用シリコーンワニス)、SA−4、KR206、KR5206(シリコーンアルキッドワニス)、ES1001、ES1001N、ES1002T、ES1004(シリコーンエポキシワニス)、KR9706(シリコーンアクリルワニス)、KR5203、KR5221(シリコーンポリエステルワニス)や東レシリコーン社製のSR2100、SR2101、SR2107、SR2110、SR2108、SR2109、SR2400、SR2410、SR2411、SH805、SH806A、SH840等が用いられる。
【0059】
また、抵抗調整のために導電性顔料を分散させた樹脂被膜を形成させてもよい。本発明に係わる導電性微粒子としては、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、金、銀等の金属あるいは酸化鉄、フェライト、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化チタン等の金属酸化物さらにはカーボンブラック等の電子伝導性の導電粉が挙げられ、さらにイオン導電剤として、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0060】
また、環境による抵抗変化を制御するという点からは帯電磁性粒子表面を親水基と疎水基を有する化合物であるカップリング剤で表面を被覆し疎水化処理を行ってもよい。カップリング剤の場合、極薄い被膜(分子レベルで)を帯電磁性粒子表面に形成するので、帯電磁性粒子の体積抵抗値に与える影響が少なく、帯電磁性粒子であるコアの抵抗さえ調整すれば、被覆層への抵抗調整の処理は行わなくても構わない。
【0061】
カップリング剤としてはチタネート系、アルミニウム系、シラン系カップリング剤等が挙げられ、トナーの摩擦帯電極性を制御するために、アミノ基やフッ素などの様々な官能基を導入してもよい。
【0062】
<電子写真感光体>
帯電磁性粒子が注入帯電に用いられる場合、本発明において用いられる電子写真感光体は、支持体より最も離れた層、即ち表面層として電荷注入層を有する。この電荷注入層の体積抵抗値は、十分な帯電性が得られ、また、画像流れを起こしにくくするために、1×108 Ωcm以上1×1015Ωcm以下であることが好ましく、特には画像流れの点から1×1010Ωcm以上1×1015Ωcm以下、更に環境変動なども考慮すると、1×1012Ωcm以上1×1015Ωcm以下であることが好ましい。電荷注入層の体積抵抗値が1×108 Ωcm未満では高湿環境で帯電電荷が表面方向に保持されないため画像流れを生じ易くなることがあり、一方1×1015Ωcmを越えると帯電部材からの帯電電荷を十分注入、保持できず、帯電不良を生じる傾向にある。このような機能層を感光体表面に設けることによって、帯電部材から注入された帯電電荷を保持する役割を果たし、更に光露光時にこの電荷を感光体支持体に逃がす役割を果たし、残留電位を低減させる。また、本発明に係わる帯電部材と感光体を用いることでこのような構成をとることによって、帯電開始電圧Vthが小さく、感光体帯電電位を帯電部材に印加する電圧のほとんど90%以上に収束させることが可能になった。
【0063】
アモルファスシリコン感光体を用いる場合には、感光層と注入層とを兼用することができ、注入層が上記の体積抵抗率の範囲内であれば導電フィラーを入れなくとも良い。
【0064】
図3に本発明におけるアモルファスシリコン電子写真感光体の一例を示す。
本例の電子写真感光体は、例えばAl、ステンレス等の導電性材料からなる基体301上に、光導電層302および表面保護層303を順次積層したものである(図3(a)参照)。
【0065】
なお、これら層の他に、下部電荷注入阻止層304、上部電荷注入阻止層305、電荷注入層、反射防止層などの種々の機能層を必要に応じて設けることもできる。例えば、下部電荷注入阻止層304、上部電荷注入阻止層305などを設け、ドーパントとして周期律表13族元素および15族元素など選択することにより、正帯電、負帯電と言った帯電極性の制御も可能となる(図3(b)参照)。
【0066】
本発明に用いる基体の形状は電子写真感光体の駆動方式などに応じ所望のものとしてよい。基体材質としては上記Alやステンレスのような導電性材料を使用するのが一般的であるが、例えば各種のプラスチックやセラミックス等の導電性を有しないものに、これら導電性材料を蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。光導電層302としては、例えばシリコン原子と、水素原子またはハロゲン原子を含む非晶質材料(「a−Si(H,X)」とも略記する)が代表的なものとして挙げられる。また、光導電層302の層厚としては特に限定されないが、製造コストなどを考慮すると15〜50μm程度が適当である。更に、特性を向上させるために、下部光導電層306と上部光導電層307の様に複数の層構成にしても良い(図3(b)参照)。
【0067】
表面保護層303は、一般的にシリコン原子を母体とし、炭素原子と、必要に応じて水素原子またはハロゲン原子を含有する非単結晶(好ましくは非晶質)材料a−SiC(H,X)、シリコン原子を母体とし、窒素原子と、必要に応じて水素原子またはハロゲン原子を含有する非単結晶(好ましくは非晶質)材料a−SiN(H,X)、または炭素原子を母体とし、必要に応じて水素原子またはハロゲン原子を含有する非単結晶炭素(好ましくは非晶質炭素)a−C(H,X)等により形成される。
【0068】
また、光導電層302と表面保護層303の界面を連続的に変化させ、反射防止層を設け、当該部分の界面反射を抑制させるように制御しても良い。
【0069】
感光体のビッカース硬度は、JIS規格 B7774 による測定方法により測定される。ビッカース硬度が500kg/m2 以上であると十分に硬く、前記した微細な表面形状を長期的に保つことができる。一方、ビッカース硬度が500kg/m2 未満であると、磨耗・キズの成長が早く、表面形状を保つのが難しくなる。
【0070】
<研磨粒子>
本発明者らが鋭意検討を行った結果、一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下であり、粒子形状が概略立方体または直方体である直方体状結晶である無機微粉体を感光体表面と帯電接触部材との間に介在させて摺擦することで高硬度感光体における放電生成物質、紙粉、トナー等の付着物を除去でき、画像流れや感光体上への異物の融着を防止できることを見出した。
【0071】
本発明において用いる研磨粒子は直方体状の結晶を持つものが好ましい。直方体状研磨粒子の中でも更に好ましいものは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムであるが、チタン酸ストロンチウムが特に好ましい。
【0072】
本発明において使用される直方体状研磨粒子は一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下であるものが好ましい。直方体状研磨粒子の平均粒径が30nm未満では帯電磁性粒子や感光体表面に研磨粒子が付着しやすく研磨効果が不十分であり、一方、500nmを超えても接触面積の低下により研磨効果が不十分である。
【0073】
また、画像形成方法においてクリーニングブレードを用いたクリーニング工程を有する場合には、直方体状研磨粒子の平均粒径が300nmを超えると感光体に傷が入りやすいので適さない。
【0074】
なお、本発明における直方体状研磨粒子の粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定して求めた。粒径は一次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2で求めた。
【0075】
直方体状研磨粒子をトナーに外添する場合、高湿環境下での該無機微粉体の吸湿による現像プロセスへの影響、たとえばトナー帯電量の低下などを防ぐため、本発明の直方体状研磨粒子の比表面積は45m2/g以下であることが好ましい。直方体状研磨粒子の比表面積を45m2/g以下にすることで該無機微粉体の表面に吸着する水の絶対量を少なく押さえられるため、摩擦帯電で付与されるトナー帯電への影響を小さくできる。
【0076】
なお本発明の比表面積はオートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いてBET多点法を用いて算出した。
【0077】
本発明で用いる直方体状研磨粒子は、たとえば硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンスラリーのpHを調整して得たチタニアゾルの分散液にストロンチウムの水酸化物を添加して、反応温度まで加温することで合成することができる。
【0078】
該含水酸化チタンスラリーのpHは0.5以上1.0以下とすることで、良好な結晶化度および粒径のチタニアゾルが得られる。
【0079】
また、チタニアゾル粒子に吸着しているイオンを除去する目的で、該チタニアゾルの分散液にたとえば水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を添加することが好ましい。このときナトリウムイオン等を含水酸化チタン表面に吸着させないために、該スラリーのpHを7以上にしないことが好ましい。
【0080】
また反応温度は60℃〜100℃程度が好ましく、所望の粒度分布を得るためには昇温速度を30℃/時間以下にすることが好ましく、反応時間は3時間以上7時間以下であることが好ましい。
【0081】
このようにして作製された無機粒子は粒子形状が概略立方体または直方体のペロブスカイト型結晶として得ることが出来る。粒子形状が概略立方体または直方体であると感光体表面との接触面積を大きくすることができ、その立体の稜線による良好な掻き取り性を得ることが出来る。さらにその粒径と立体の稜線および角を感光体表面形状にあわせて効果的に利用することで特に感光体が磨耗しにくい場合の微細な凹凸への付着物の堆積を防止できる。
【0082】
さらに感光体への付着物を取り去ると同時に、帯電装置内においても帯電磁性粒子のリフレッシュ化に寄与して帯電能の低下や画像流れを防止することができる。
【0083】
本発明における直方体状研磨粒子の体積抵抗は、帯電磁性粒子の体積抵抗の10-3倍以上10倍以下であることが望ましい。直方体状研磨粒子の体積抵抗が磁気ブラシの体積抵抗の10-3倍以上10倍以下であると、帯電磁性粒子に付着した際にも体積抵抗の違いによる帯電ムラが発生しにくい。
【0084】
本発明の直方体状研磨粒子の電子顕微鏡写真(倍率2万倍)の一例を図4に示す。
また、本発明における研磨粒子は、帯電装置内での帯電磁性粒子との摩擦帯電において使用するトナーと逆極性に帯電するのが望ましい。トナーと逆極性に帯電することで、帯電バイアスによる帯電装置からのトナーの吐き出しと研磨剤の保持を制御しやすく、特にクリーナレスシステムにおいてトナーの劣化が抑制できる。
【0085】
<トナー>
本発明のトナーの製造方法は特に限定されず、懸濁重合法、乳化重合法、会合重合法、混錬粉砕法などが用いられる。
【0086】
以下に混練粉砕法におけるトナーの製造方法について説明する。
本発明の粉砕法トナーに用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等を単独または混合して使用できるが、中でもスチレン−アクリル、スチレン−メタクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0087】
また本発明の粉砕法トナーを正帯電性に制御する場合は、脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩;アミン及びポリアミン系化合物;高級脂肪酸の金属塩;アセチルアセトン金属錯体;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート等の荷電制御剤を添加する。また、負帯電性に制御する場合は、有機金属錯体、キレート化合物が有効で、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体を荷電制御剤として用いることができる。荷電制御剤の使用量は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。
【0088】
本発明の粉砕法トナーには、必要に応じて離型剤を添加することができる。離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスまたはその酸化物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪族エステルを主成分とするワックスまたは、その一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。また、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族ビスアミド類;ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンなどのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化物なども離型剤として用いることができる。離型剤の添加量は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
【0089】
本発明の粉砕法トナーに用いられる着色剤としては、公知の染顔料、例えばカーボンブラック、グラファイト、ニグロシン、モノアゾ染料の金属錯体、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、レーキレッド、ローダミンレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、ベンジンイエロー等が挙げられる。着色剤の添加量は結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0090】
次に非磁性トナーの場合は、これらの結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等を、磁性トナーの場合は上記着色剤の替わりに磁性体を、または必要に応じて着色剤と磁性体をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して、樹脂類を互いに相溶せしめた中に荷電制御剤、着色剤を分散または溶解せしめ、冷却固化後、機械的に所望の粒度に微粉砕し、さらに分級によって粒度分布をシャープにする。あるいは、冷却固化後、ジェット気流下でターゲットに衝突させて得られた微粉砕物を、熱または機械的衝撃力によって球形化する。
【0091】
このようにして得られた着色粒子に、比表面積100m2/g以上350m2/g以下の微粒子を外添する。該微粒子は無機粒子としては、珪素、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、鉄、ジルコニウム等の金属酸化物;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム等の金属塩;カオリン等の粘土鉱物;アパタイト等のリン酸化合物;炭化珪素、窒化珪素等の珪素化合物;カーボンブラックやグラファイト等の炭素粉末が挙げられる。また有機粒子や複合粒子としては、ポリアミド樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、ウレタン粒子、メラミン−ホルムアルデヒド粒子、アクリル粒子等の樹脂粒子;ゴム、ワックス、脂肪酸系化合物、樹脂等と金属、金属酸化物、塩、カーボンブラック等の無機粒子とからなる複合粒子;ポリ弗化エチレン、ポリ弗化ビニリデン等のフッ素樹脂;弗化カーボン等のフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステル等の脂肪酸誘導体;硫化モリブデン、アミノ酸及びアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0092】
また本発明のトナーは少なくとも着色剤と結着樹脂よりなる着色粒子に、比表面積100m2/g以上350m2/g以下の微粒子を添加して作製される。これはトナーに適度な流動性と帯電性を付与するために必要であり、該微粒子の比表面積が100m2/g未満の場合、十分な流動性が得られず好ましくない。また該微粒子の比表面積が350m2/gを超えると特に低湿環境下で帯電が高くなりすぎて感光体へのフィルミングを発生しやすくなるため好ましくない。本発明のトナーを用いる現像方法は特に限定されないが、たとえば上記製造方法により製造された非磁性トナーをキャリアと混合して用いる二成分現像方法、キャリアを用いず非磁性トナーのみを用いる非磁性一成分現像方法、磁性トナーを用いる磁性一成分現像方法などが挙げられる。
【0093】
<帯電磁性粒子と感光体表面形状の関係>
本発明では図5に示すように、感光体表面503を直方体状研磨粒子502が付着した帯電磁性粒子501により矢印方向に摺擦する画像形成方法を用いるものである。しかしながら、感光体表面は微細な粗さを有していることがあり、本発明者らの検討によれば、その場合粗さによる凹部分が小さく、帯電磁気ブラシの帯電磁性粒子が入れない大きさであると研磨粒子が担持された帯電磁性粒子による感光体表面の研磨がおこなわれにくく、研磨効果が発現しにくいことが判明した。
【0094】
図6に感光体表面603と帯電粒子601との接触個所の拡大模式図を示す。図6から明らかなように感光体表面603の粗さに対して帯電粒子601の曲率が十分に小さくないと、感光体表面603の粗さの凹部まで研磨粒子602で摺擦することができず、研磨できない部分が多くなる。
【0095】
検討の結果、感光体の表面粗さと帯電磁性粒子との関係を調べた結果、感光体の表面粗さをRz、溝間隔をSm、帯電磁性粒子の平均粒径をDとしたとき、以下の式:
2×D/3 ≦ Sm/Rz
を満たすと良い結果をもたらすことがわかった。
上記式を満たすことにより、研磨剤を担持した帯電磁性粒子による研磨及び注入帯電が効率よく行われる。
【0096】
<研磨剤の帯電磁性粒子への付着方法>
研磨剤の帯電磁性粒子への付着は、帯電磁性粒子に研磨剤をあらかじめ外添しておく方法に加えて、他に供給手段を設ける方法がある。
【0097】
帯電磁性粒子に研磨剤をあらかじめ外添しておき、そのまま使用する方法が最も簡便であるが、供給手段を設ける方法では、研磨剤の減少を抑制したり、新しい研磨剤を供給して研磨性能を長期にわたって維持させたりすることが可能で、帯電磁性粒子の使用寿命をさらに向上させることができる。
【0098】
研磨剤を供給する手段として最も簡便な方法としては、トナーに研磨剤を外添しておき、転写残トナーとして感光体上に残ったトナーに付着した研磨剤が帯電装置に到達した際に、研磨剤を帯電装置内に取り込むという方法である。この方法によれば新たな研磨剤供給部材を設ける必要がない。ただし、古くなった研磨剤が帯電装置内から排出する工夫が必要であることと、出力する画像比率の大小によっては帯電装置内への研磨剤供給量が一定にならない可能性があるために、帯電装置内の研磨剤量を制御する必要がある。例えば、紙間等の非画像形成時に帯電装置から研磨剤を吐き出すバイアスを印加して静電的に排出する方法や、帯電スリーブの回転速度を大きくさせて機械的に排出させる方法等がある。吐き出しバイアスを印加する場合は、研磨剤の帯電極性と同極性のDCバイアスを印加するのが好ましく、画像流れが悪化しない範囲でACバイアスを重畳しても良い。
【0099】
<感光体作製例>
VHF帯を用いた高周波プラズマCVD法による電子写真装置用感光体の製造装置を用い、表面を切削して粗さを持たせたψ30のアルミニウムシリンダー上に、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるa−Si系感光体を作製した。切削条件を変えてシリンダー基体表面形状の異なる感光体A〜Fを得た。得られた感光体のビッカース硬度(JIS規格)は1200Kg/m2であった。表面の表面粗さRz(μm)及び溝間隔Sm(μm)の値を表1に示す。感光体表面粗さは、キーエンス製カラーレーザー顕微鏡VK−8500にて計測した。
【0100】
【表1】

【0101】
<帯電部材製造例>
Fe23 :51.2モル%
CuO:24.4モル%
ZnO:24.4モル%
上記材料をボールミルにて粉砕、混合し、分散剤および結着剤と水を加えスラリーとした後、スプレードライヤーにより造粒操作を行い、適宜、分級した後に1120℃にて焼成を行った。
【0102】
得られた帯電磁性粒子を解砕処理の後、分級を行い、体積平均粒径が30、50、60μmである帯電磁性粒子A、B、Cを得た。帯電磁性粒子A、B、Cの体積抵抗値はそれぞれ4×107 Ωcm、1×107 Ωcm、8×10 Ωcmであった。
【0103】
<直方体状研磨粒子の製造例>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。次に、該含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.65に調整してチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを4.5に調整し上澄み液の電気伝導度が70μS/cmになるまで洗浄をくり返した。
【0104】
該含水酸化チタンに対し、0.97倍モル量のSr(OH)2・8H2Oを加えてSUS製反応容器に入れ、窒素ガス置換した。さらにSrTiO3換算で0.1mol/リットル以上2.0mol/リットル以下になるように蒸留水を加えた。
【0105】
窒素雰囲気中で該スラリーを83℃まで5〜30℃/時間で昇温し、83℃に到達してから3〜7時間反応を行った。反応後室温まで冷却し、上澄み液を除去した後純水で洗浄をくり返した。
【0106】
さらに窒素雰囲気下、上記スラリーをスラリーの固形分に対して6.5質量%のステアリン酸(炭素数18)ナトリウムを溶解した水溶液中に入れ、撹拌しながら、硫酸亜鉛水溶液を滴下して、ペロブスカイト型結晶表面にステアリン酸亜鉛を析出させた。この表面処理により粒子の帯電性が変化し、帯電磁性粒子Aと摩擦帯電させて帯電極性を測定したところ、+12.2μC/gの正極帯電であった。また粉体の体積抵抗は1.8×108Ω・cmであった。
【0107】
該スラリーを純水でくり返し洗浄した後ヌッチェで濾過し、得られたケーキを乾燥してステアリン酸亜鉛で表面処理したチタン酸ストロンチウムを得た。
【0108】
上記スラリーの昇温速度および反応時間を変化させて、平均粒径の異なる種々のチタン酸ストロンチウムA、B、C,Dを得た。得られたチタン酸ストロンチウムは、一次粒子の平均径がそれぞれ75、110、165、190nmでいずれも800nm以上の凝集体の含有率が0.5個数%であった。また粒子形状が概略立方体または直方体であるものの含有率は80個数%以上であった。
【0109】
<着色粒子製造例>
スチレンアクリル樹脂 100部
カーボンブラック 8部
サリチル酸金属化合物 5部
パラフィンワックス 2部
上記材料を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、二軸押し出し混練機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後、分級して平均粒径7μmの着色粒子を得た。
着色粒子100質量部に対して、シリカ100質量部にジメチルシリコーンオイル20質量部で表面処理した疎水性シリカ(BET=220m2/g)1.0質量部をヘンシェルミキサーFM10Bにて、回転数:66S-1、時間:3分の条件で外添してトナーAを得た。
着色粒子100質量部に対して、シリカ100質量部にジメチルシリコーンオイル20質量部で表面処理した疎水性シリカ(BET=220m2/g)1.0質量部と、直方体状研磨粒子B1.0質量部とをヘンシェルミキサーFM10Bにて、回転数:66S-1、時間:3分の条件で外添してトナーBを得た。
着色粒子100質量部に対して、シリカ100質量部にジメチルシリコーンオイル20質量部で表面処理した疎水性シリカ(BET=220m2/g)1.2質量部と、直方体状研磨粒子B1.0質量部とをヘンシェルミキサーFM10Bにて、回転数:66S-1、時間:3分の条件で外添してトナーCを得た。
これらのトナーを帯電磁性粒子Aと摩擦帯電させたところ、トナーA、B、Cそれぞれ−20.0μC/g、−18.0μC/g、−21.0μC/gの負極帯電であった。
【0110】
<画像形成システム構成>
本実施例における画像形成システムの構成は、前述したトナーA〜Cを現像剤とし、感光体A〜Fを像担持体とし、帯電磁性粒子A〜Cを電荷注入媒体とし、直方体研磨粒子A〜Dを帯電装置内に含有させる構成とした。直方体研磨粒子が表面に担持された帯電粒子は帯電装置内に感光体と約500μmの間隙をもって設けられた帯電スリーブに磁力により担持される。さらに帯電磁性粒子は約180μmのギャップで近接されたブレードにより層厚規制されて感光体との間隙部に搬送される。この帯電磁性粒子の磁気ブラシが感光体の回転に対して約120%の周速比でカウンター方向に回転して感光体表面を摺擦して感光体に注入帯電を行うと同時に、感光体表面を研磨してリフレッシュさせる。
ブレードによる感光体クリーニング工程を有さない場合には転写残トナーは帯電装置内に取り込まれて帯電磁性粒子との摩擦帯電によりネガに帯電されて感光体上に放出され、その後に現像装置で回収されて現像に再利用される。
【0111】
<評価方法>
画像流れの評価は温度30℃湿度85%RHの環境下でキヤノン製デジタルカラーコピアCP2150を黒カートリッジのみアモルファスシリコン感光体用に帯電装置、露光装置を改造した画像形成装置にて5%画像の10万枚の画出しを行ない、10万枚画出し後に本体電源を切ってから、同環境にて36時間放置した後のデジタルハーフトーン画像および5ポイント文字画像を評価することにより行った。評価結果は以下のようにランク分けした。
◎ :画像流れ無し
○ :ハーフトーンハイライト飛びが僅かにあるが、文字は問題なし
△ :文字のラインが若干細くなっているが十分読める
× :ハーフトーンハイライトが完全に飛び、文字もボケて読めない
【0112】
帯電ムラの耐久性評価は温度23℃湿度5%RHの環境下でキヤノン製デジタルカラーコピアCP2150を黒カートリッジのみアモルファスシリコン感光体用に改造した画像形成装置にて5%画像にて10万枚の画出しを行ない、そのときの画像がさつきの評価をすることにより行った。
画像がさつきの評価は出力されたハーフトーン画像を観察し、以下の基準で評価した。
◎ :がさつき無し
○ :若干がさつきがあるが、目立たない
× :がさつきがあり、画像で目立つ
【0113】
現像耐久性は温度30℃湿度80%RHの環境下でキヤノン製デジタルカラーコピアCP2150を黒カートリッジのみアモルファスシリコン感光体用に改造した画像形成装置にて5%画像にて10万枚の画出しを行ない、そのときのベタ画像について以下の基準にて評価した。
◎ :初期に対して画像濃度低下ほとんど無し
○ :初期に対して画像濃度低下が0.2未満(見た目でわからないレベル)
△ :初期に対して画像濃度低下が0.2以上0.4未満(薄目だが問題無し)
× :初期に対して画像濃度低下が0.4以上(明らかに薄いと認識)
【0114】
帯電装置耐久性は温度25℃湿度50%RHの環境下でキヤノン製デジタルカラーコピアCP2150を黒カートリッジのみアモルファスシリコン感光体用に改造した画像形成装置にて5%画像にて10万枚の画出しを行ない、そのときの帯電装置により帯電された感光体表面電位について以下の基準にて評価した。
◎ :初期に対して電位低下5V未満
○ :初期に対して電位低下5V以上10V未満
△ :初期に対して電位低下10V以上30V未満(わずかにかぶり悪化)
× :初期に対して電位低下30V以上(画像濃度低下、かぶり悪化)
【0115】
(実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−9)
帯電磁性粒子Aに対し、流動性付与の為のシリカ0.1質量%及び直方体状研磨粒子B及びDをターボミルにて混合して外添した。研磨剤の外添量を変化させて画像流れと帯電ムラについて評価した結果を表2および表3に示す。像担持体として感光体A、トナーは現像剤Aを使用した。また、不定形の一次平均粒径190nmのチタン酸ストロンチウムを帯電磁性粒子と混合した場合の評価結果を比較として表4に示す。
なお、感光体の電位は背景部電位が−450V、画像部(書き込み部電位)が−50Vとなるよう、帯電印加電圧および感光体露光強度を設定した。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
表2、表3、及び表4の結果からわかるように、直方体状の研磨粒子においては、不定形の研磨粒子を使用した場合に対して画像流れ防止、現像劣化抑止の効果が見られる。直方体形状あるいは立方体形状の研磨剤が注入帯電装置内に0.01質量%以上8質量%以下存在することで画像流れがなく、帯電性能の耐久性が高い画像形成を行える。帯電磁性粒子に対して研磨剤の量が少なすぎると画像流れに対する効果が無い。逆に研磨剤が多すぎても画像流れに対する効果が無く、帯電性能も低下していた。帯電装置を調査したところ、磁気ブラシ穂が短くなっていた。研磨粒子が導電粒子表面に多く存在する為に導電粒子間の磁気拘束力が低下して磁気ブラシ穂の形成を阻害しているものと思われる。
【0120】
帯電磁性粒子の劣化も直方体状研磨粒子の存在により抑制され、帯電装置の耐久性が向上する。
【0121】
さらに、研磨粒子のスペーサ効果により帯電装置内からの転写残トナーの吐き出しがスムーズに行われ、帯電装置内で現像剤が劣化することなく現像装置へ回収・再利用が行われるため、転写残トナー回収・再利用による現像性低下が抑えられる。また、転写残トナーを現像装置で回収して再利用する際にも帯電装置における現像剤の劣化を抑止でき、トナー消費の低減と画質を両立できる。
【0122】
(実施例2−1〜2−18)
<トナーに研磨粒子を外添して帯電装置に供給する例>
本実施例はトナーに研磨剤を外添することにより、帯電装置に供給して帯電装置で有効に機能させるものである。トナーに外添された研磨剤は画像形成中もしくは非画像形成時の感光体回転の間に感光体に移動して感光体上から帯電装置に移動する。
トナーは前述した長方体状研磨粒子Bを外添したトナーBを用いた。帯電装置内の帯電磁性粒子は30μm、50μm、60μmの異なる粒径の帯電磁性粒子A、B、Cを用いた。感光体A〜F、および帯電磁性粒子A〜Cを用いて画像形成評価を実施した結果を表5に示す。
なお、感光体の電位は背景部電位が−450V、画像部(書き込み部電位)が−50Vとなるよう、帯電印加電圧および感光体露光強度を設定した。
【0123】
帯電装置中の無機粉体の量は画像比率×転写効率(温湿度センサー計測値より決定)から計算し、帯電磁性粒子に対して2.0質量%となるように制御した。無機粉体の量の制御方法は、非画像形成時における研磨粒子吐き出しバイアス印加時間を変化させることによって行った。すなわち、画像比率の高い画像が続いたときにはバイアス印加を長く、また画像比率が低いときにはバイアス印加時間が短くなるようにした。
【0124】
本実施例においては帯電装置内において直方体状研磨剤が+極性に帯電しているため、バイアスは+極性のDCバイアスを帯電装置に印加することで帯電装置からの吐き出しが促進されて帯電装置内の直方体状研磨粒子が減じることとなる。温度25℃湿度50%の環境下での連続画像形成後において、黒トナーの使用される画像比率が2%、10%、50%、80%の時にそれぞれ10msec、30msec、130msec、205msecの間、+50VのDC印加を行うように設定した。
【0125】
【表5】

【0126】
以上のように注入帯電装置内に0.01質量%以上8質量%以下の直方体形状あるいは立方体形状の研磨剤が存在することで画像流れがなく、帯電性能の耐久性が高い画像形成を行える。直方体状研磨粒子が現像装置から供給されることで、研磨剤自体もリフレッシュされやすく、長い期間研磨効果を維持できる。感光体の表面粗さをRz、溝間隔をSm、帯電磁性粒子の平均粒径をDとしたとき、以下の式:
2×D/3 ≦ Sm/Rz
を満たすことでさらに良好な画像流れ防止性能を得ることが可能になる。
【0127】
また、転写残トナーを現像装置で回収して再利用する際にも帯電装置における現像剤の劣化を抑止でき、トナー消費の低減と画質を両立できる。
【0128】
(実施例3−1〜3−18)
<クリーニングブレードを設けた例>
本実施例では、前記した評価機本体の感光体転写工程の後に感光体上の転写残トナーをウレタンゴムブレードにより掻きとってクリーニングする部材を据え付けて評価を行った。キヤノン製デジタルカラーコピアCP2150は感光体クリーニング工程を有さないので、転写工程後注入帯電工程前にクリーニングブレードを新たに取り付けた。ブレードはキヤノン製複写機GP405と同材質のものを用い、クリーニング当接圧は約20mN/mmの線圧、当接角は25°にて取り付けた。このクリーニングブレードにより発生した廃トナーは、搬送ベルトを設けて本体外部に設けられた廃トナーボックスに送られるようにした。
【0129】
現像剤としてトナーCを用いた。研磨粒子はトナーに外添してあり、クリーニングブレードではトナーは塞き止められて除去されるが、外添された研磨粒子の一部がトナーから遊離してクリーニングブレードをすり抜けて帯電装置に供給され研磨工程に供される。
【0130】
実施例2−1〜2−18と同様、帯電装置中の無機粉体の量は画像比率×転写効率(温湿度センサー計測値より決定)から計算し、非画像形成時における研磨粒子吐き出しバイアス印加時間を変化させて帯電磁性粒子に対して2.0%となるよう制御した。
温度25℃湿度50%の環境下での連続画像形成後に、黒トナーの使用される画像比率が2%、10%、50%、80%の時にそれぞれ0msec、15msec、55msec、85msecの間、+50VのDC印加を行うように設定した。感光体の電位は背景部電位が−450V、画像部(書き込み部電位)が−50Vとなるよう、帯電印加電圧および感光体露光強度を設定した。
【0131】
実施例1−1〜1−6と同様、前記評価方法に従って実機画出し評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0132】
【表6】

【0133】
以上のように注入帯電装置内に0.01質量%以上8質量%以下の直方体形状あるいは立方体形状の研磨剤が存在することで画像流れがなく、帯電性能の耐久性が高い画像形成を行える。直方体状研磨粒子が現像装置から供給されることで、研磨剤自体もリフレッシュされやすく、長い期間研磨効果を維持できる。
【0134】
感光体の表面粗さをRz、溝間隔をSm、帯電磁性粒子の平均粒径をDとしたとき、以下の式:
2×D/3 ≦ Sm/Rz
を満たすことでさらに良好な画像流れ防止性能を得ることが可能になる。
【0135】
さらに、独立したトナークリーニング工程を有することで、帯電磁性粒子へのトナー着色粒子の付着等による劣化がさらに低減でき、より長寿命の画像形成が行える。
【0136】
以上の実施例では研磨粒子としてチタン酸ストロンチウムを用いたが、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムでも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明にかかる画像形成装置を示す概略断面図である。
【図2】帯電時間と印加電圧及び帯電電位の関係を表すグラフである。
【図3】本発明における電子写真感光体の断面図である。
【図4】電子顕微鏡による本発明にかかる研磨粒子の拡大写真である。
【図5】帯電磁性粒子上に存在する研磨粒子と感光体表面との接触状態を示す模式図である。
【図6】帯電磁性粒子上に存在する研磨粒子と感光体表面との接触状態を示す拡大模式図である。
【符号の説明】
【0138】
101、感光体
102、帯電ローラ
103、露光装置
104、現像装置
105、転写部材
106、定着装置
111、転写材
501、帯電磁性粒子
502、直方体状研磨粒子
503、感光体表面
601、帯電磁性粒子
602、直方体状研磨粒子
603、感光体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原子を母体とする非単結晶材料で構成された光導電層を有し、表面の体積抵抗が108Ω・cm以上1015Ω・cm以下である電子写真感光体表面に接触して、該電子写真感光体との接触部に体積抵抗104Ω・cm以上1010Ω・cm以下の帯電磁性粒子を介在させて、かつ電子写真感光体に対して周速差をもって移動して該電子写真感光体を帯電する帯電工程と、
該帯電工程により帯電された該電子写真感光体の表面に露光によって静電潜像を形成する露光工程と、
トナーをトナー担持体に担持させて、該トナー担持体から該電子写真感光体表面に該トナーを供して形成した該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、
該現像工程により形成された電子写真感光体の表面のトナー像を転写材に転写させる転写工程とを有する画像形成方法において、
一次粒子が立方体状及び/又は直方体状の粒子形状であってかつ一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下、である無機粉体研磨粒子が、帯電装置内に導電粒子に対して0.01質量%以上8質量%以下存在することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記無機粉体研磨粒子がトナーに外添されており、現像装置から帯電装置に供給して該帯電磁性粒子に付着させることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
非画像形成時に前記無機粉体研磨粒子を画像比率に応じて帯電装置内の研磨粒子と同極性の電圧を帯電装置に印加して研磨粒子の吐き出しを行うことを特徴とする請求項2記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記無機粉体研磨粒子の体積抵抗が該帯電磁性粒子の体積抵抗の10-3倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記無機粉体研磨粒子がチタン酸ストロンチウムまたはチタン酸バリウムまたはチタン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記帯電磁性粒子がフェライト粒子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記帯電磁性粒子と前記無機粉体研磨粒子とを摩擦させた場合に、該無機粉体研磨粒子はトナー粒子と逆極性に帯電することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
電子写真感光体に接触する弾性体により転写残トナーを感光体からクリーニングする工程をさらに有し、前記無機粉体研磨粒子の一次粒子の平均粒径が30nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記電子写真感光体上の転写残トナーを現像手段に戻して再度現像に利用することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記電子写真感光体の表面粗さをRz、溝間隔をSm、前記帯電磁性粒子の平均粒径をDとしたとき、以下の式:
2×D/3 ≦ Sm/Rz
を満たすことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−147944(P2007−147944A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341605(P2005−341605)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】