説明

画像形成装置、および画像形成方法

【課題】 文字やグラフィックスの大小により色変換を切り替えてナイキスト周波数に近い小さい文字やパターンなどでも情報の欠落が生じない画像形成装置を提供する。
【解決手段】 印字データを解析して特定のオブジェクトを抽出する抽出部と、前記オブジェクトのサイズを検出する検出部と、前記検出部で検出されたオブジェクトのサイズによって出力色を異ならせる色変換部と、前記指定された出力色にしたがって印字を行うプリンタ部とを備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタの出力画像のうち文字画像にはTrue Type(登録商標)やOpen Type(登録商標)などのアウトラインフォントが使用される。これらの文字を滑らかに再現する手段としてRET(Resolution Enhanced technology)などのスムージング技術が使用されている。この技術は主に2値プリンタの位置制御性を上げ文字や線のジャギーを補正する技術である。
【0003】
しかしながら、近年では多値プリンタの普及により文字や線にもディザパターンや万線などが用いられるようになった。特に薄い色文字や色細線には網点や万線が用いられるため、プリンタエンジンのナイキスト周波数に近い細線だと文字や線が途切れ途切れになり、情報の欠落が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−94397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、文字やグラフィックスの大小により色変換を切り替えてナイキスト周波数に近い小さい文字やパターンなどでも情報の欠落が生じない画像形成装置、および画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の画像形成装置は、印字データを解析して特定のオブジェクトを抽出する抽出部と、前記オブジェクトのサイズを検出する検出部と、前記検出部で検出されたオブジェクトのサイズによって出力色を異ならせる色変換部と、前記指定された出力色にしたがって印字を行うプリンタ部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るMFP構成図。
【図2】MFPの画像処理に係るブロック図。
【図3】オブジェクトの種別とサイズにより色変換の切り替えについて説明するための流れ図。
【図4】各テーブルによる出力色の色度図上の位置関係を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図4を参照して説明する。
(本実施の形態)
【0009】
図1は、本実施形態における、画像認識部125を搭載した画像形成装置としての複合機の電気的接続および制御のための信号の流れを概略的に表すブロック図である。複合機は所謂MFP(Multi Functional Peripheral)100であり、主制御部101、スキャナ部102、プリンタ部103、及び操作パネル104を有する。
【0010】
図1に示す共有バス111は、後述する各CPU(Central Processing Unit)等を接続し、これによりCPUを介したプログラムI/O転送、あるいは周辺デバイスがバスマスタとしてバスを制御し、直接メモリなどにアクセスするバスマスタによるデータ転送が可能である。
【0011】
主制御部101は、メインCPU110、記憶部112、画像処理部116、ページメモリ制御部117、及びページメモリ118を有する。
【0012】
メインCPU110は、主制御部101全体の制御を司るものである。
【0013】
記憶部112は、メインCPU110と後述するプリンタ部103のプリンタCPU130の間で、双方向通信を行い、メインCPU110の制御プログラムや各種データを記憶する。記憶部112は、読み取り専用メモリ(以下ROM)ならびに書き換え可能メモリ(以下RAM)の集合体であり、本実施形態の手順を実施するためのプログラムや固定データとともに、本実施形態の手順を実施する過程で生成されたり変化したりするデータを記憶する。前者は後述するデータROM205などが相当する。
【0014】
画像処理部116は、画像処理を行う。ページメモリ制御部117は、ページメモリ118に対して画像データを記憶させたり、読み出したりするものである。ページメモリ118は、複数ページ分の画像データを記憶できる領域を有し、後述するスキャナ部102からの画像データを圧縮したデータを1ページごとに記憶可能に形成されている。
【0015】
操作パネル104は、各種操作キー141、ソフトキー(タッチパネル)を有する液晶表示部142、及びこれらが接続されたパネルCPU140を有している。パネルCPU140は、メインCPU110に接続される。操作キー141あるいは液晶表示部142のソフトキー等から各種命令が入力され、パネルCPU140からメインCPU110に送信される。
【0016】
画像読取部であるスキャナ部102は、メインCPU110と接続されその制御の下にスキャナ部102の制御を司るスキャナCPU120、制御プログラム及び各種データを記憶されている記憶部122、原稿等を読取るためのCCD等のラインセンサを駆動するCCDドライバ123と、ラインセンサ、露光ランプ及びミラーなどを搭載したキャリッジ(図示せず)を移動する走査モータの回転を制御する走査モータドライバ124、画像認識部125、及び画像補正部126を有する。
【0017】
上記構成のスキャナ部102において、複合機100の従来周知の原稿自動送り装置(図示せず)もしくは原稿台(図示せず)に原稿をセットし、操作パネル104に設置された操作キー141もしくは液晶表示部142のソフトキーにて原稿の読み取りを指示する。
【0018】
画像の読み取り命令をパネルCPU140が検知すると、共有バス111を介してメインCPU110に読み取り命令が送信され、スキャナ部102のスキャナCPU120よりCCDドライバ123、走査モータドライバ124に動作命令が与えられて読み取り動作を実行する。読み取った画像データは、ページメモリ118に格納される。
【0019】
画像処理部116は、本実施形態の画像処理プロセスを実行するもので、前記スキャナ部102のラインセンサにより読み取り、ページメモリ118に格納された画像データの処理を実行したり、クライアント端末などから与えられたデータに所望の処理を実行したりする。なお、この画像処理の詳細については図3を参照して後述する。
【0020】
画像補正部126は、ラインセンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、ラインメモリを有し、フィルタリング処理等をする。
【0021】
図1に示すプリンタ部103は、例えば、従来周知の構成を有しており、プリンタCPU130、記憶部132、定着制御部133、レーザドライバ134、ポリゴンモータドライバ135、搬送制御部136、プロセス制御部137を有する。なお、以下に説明する周知構成については、図示しない。
【0022】
プリンタCPU130は、メインCPUと接続されその制御の下にプリンタ部103全体の制御を司る。
記憶部131は、制御プログラム及び各種データを記憶する。
レーザドライバ133は、周知の半導体レーザ発信器を駆動し、読み取った原稿の画像データに基づいてレーザ光を制御する。
【0023】
ポリゴンモータドライバ134は、ポリゴンミラーを有する周知のレーザ露光装置のポリゴンモータを駆動し、半導体レーザ発信器からのレーザ光を回転するポリゴンミラーにより走査する。
【0024】
搬送制御部135は、各種ローラの駆動モータを制御して、周知の用紙カセットに収容されている記録媒体を用紙カセットから用紙搬送路に沿っての搬送を制御する。
【0025】
プロセス制御部136は、周知の帯電用帯電器、現像器および転写用帯電器を制御する。帯電用帯電器は、例えばドラム状の感光体の表面を帯電させ、前記ポリゴンミラーにより走査されるレーザ光により読み取った原稿画像の静電潜像を感光体に形成する。現像器はトナーを収容しており、感光体の静電潜像をトナーにより可視画像(トナー画像)に現像する。転写用帯電器は、前記用紙カセットから用紙搬送路を介して供給される記録媒体に感光体上のトナー画像を転写する。
【0026】
次に、色変換選択処理について説明する。図2は画像処理部112および処理に関連する周辺部の電気的接続を示す図である。この図に示すように、パーソナルコンピュータ(以下PC)200にてアプリケーション201を用いて作成したファイルにプリンタドライバ202を用いてプリンタ用言語に変換し、ローカルエリアネットワーク(以下LAN)などのネット回線を介してMFPもしくはプリンタ(以下まとめてMFP)に送られる。
【0027】
図1に示すMFP100に送られたデータは画像処理部116内の抽出部203にて解析され、文字、図形、通常画像の3種類のオブジェクトに判別され、文字、図形のみ検出部204にてサイズの検出対象とし、文字および図形のサイズを確定する。オブジェクトの種別と文字や図形のサイズに従ってCPU110を介して記憶部112に格納された色変換テーブルの参照領域を切り替えて、色変換部205にてそれぞれに適した色変換を実行する。更に、色変換をされたデータは、プリンタ部103に出力される。
【0028】
図3は最適な色変換テーブル選択を実行するフローチャートの一例である。PC200からデータを受信し(300)、オブジェクトの種類を判別する。まず、オブジェクトが文字か否か(301)の判断を行い、対象オブジェクトが文字でなければ(301:N)、さらにオブジェクトが図形か否か(302)の判断を行う。ここで対象オブジェクトが図形でもなければ(302:N)、オブジェクト対象は通常画像として輝度を忠実に再現可能な色変換テーブルを選択するべくテーブル番号NTBLに0をセットする(303)。
【0029】
オブジェクトが文字、もしくは図形であると判断がなされた場合はさらにそのサイズにしたがって使用するテーブルの選択を行う。対象が文字である場合(301:Y)、まず
文字サイズが2ポイント以下であるか否か(304)の判断を行う。ここで、文字が2ポイントより大きいと判断された場合(304:N)、さらにそのサイズが8ポイント以下であるか否か(305)の判断を行う。これらの判定で文字サイズが2ポイント以下であるならば(304:Y)、テーブル番号NTBLに3をセットし(306)、2ポイントより大きく8ポイント以下であるならば(305:Y)、テーブル番号NTBLに2をセットし(307)、8ポイントを超える場合は(305:N)、テーブル番号NTBLに1をセットする(308)。
【0030】
さらにオブジェクトが図形である場合(302:Y)、線幅が0.25ポイント以上であるか否か(309)の判断を行う。ここで、図形の線幅が0.25ポイントを超えるならば(309:Y)、文字サイズが8ポイントを超える場合と同様にテーブル番号NTBLに1をセットする(308)。一方、0.25ポイント以下である場合(309:N)は、テーブル番号NTBLに4をセットする。
【0031】
以上、選択されたテーブル番号に従った色変換を実行する(311)。
【0032】
なお、色変換の選択については以下の通りとする。オブジェクトごとの色変換は、以下のようにフォントサイズが小さく、小文字や細線は細くなるほど元の色より一次色または二次色、あるいは黒に近づける。ここで、一次色とはシアン、マゼンタ、イエローを指し、二次色とは赤、緑、青を指す。
【0033】
すなわち、小文字や細線は色空間上で最も近いシアン、マゼンタ、イエロー、赤、緑、青、黒等の色材で再現しうる色立体の最外殻の色に色変換される。つまり文字、細線で小さいものや細いものはできるだけ色数を減らし、その分一次色もしくは二次色になるように変換し、使用する色材のベタに相当する色で再現することで、小文字・細線に途切れやかすれが生じないようにする。また、通常画像については色再現性を重視するべく、輝度、飽和度、色相のいずれも原稿に忠実な中間調を含む色変換とする。
【0034】
次に、文字および図形に対する色変換の具体例を示す。
【0035】
図4は各テーブルによる出力色の色度図上の位置関係を模式的に示した図である。例えば、8ポイントを超えるサイズの文字は色変換テーブル1により例えばCIE1976L*a*b*表色系に代表される均等色差空間において明度を一致させるようにターゲット色を決めて変換される(tbl1)。また、2ポイントを超えかつ8ポイント以下の文字の場合、色変換テーブル2によって8ポイントを超える文字の彩度と明度はそのままでかつ文字色が一次色、二次色または無彩色に相当する色に変換される(tbl2)。さらに、2ポイント以下の文字は色変換テーブル3により大部分の色を出力系の最外郭にあたる一次色または二次色の色に変換される(tbl3)。
【0036】
このようにすることで、文字データのCMYKの値が0または最大値となりスクリーンに依存しない色となる。
【0037】
一方、図形オブジェクトは、線幅が0.25ポイントを超える線および塗りつぶし、線幅が0.25ポイント以下の線の2種類のオブジェクトに分類され、0.25ポイントを超える線と塗りつぶしオブジェクトは8ポイントを超える文字と同様に飽和度を一致させる色変換テーブル1を用いた色変換がなされる。また、線幅が0.25ポイント以下の線は配線図など色分けのために色を変えている場合があるので、ここでは色相角は変えずにガンマを高くかつ明度を下げて出力するべく色変換テーブル4にて処理される(tbl4)。
【0038】
このように、オブジェクトの種類と、文字や図形はさらにそのサイズによって色変換を切り替えることで薄い細線や小文字が途切れやかすれを生じることなく再現可能な画像形成装置の提供が可能になる
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100…複合機(MFP)
103…プリンタ部
110…メインCPU
112…記憶部
116…画像処理部
200…パーソナルコンピュータ
203…抽出部
204…検出部
205…色変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字データを解析して特定のオブジェクトを抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記オブジェクトのサイズを検出する検出部と、
前記検出部で検出されたオブジェクトのサイズによって出力色を異ならせる色変換部と、
前記色変換部により指定された出力色にしたがって印字を行うプリンタ部と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記特定のオブジェクトは文字および図形であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記色変換部は、前記特定のオブジェクトのサイズが所定の値以下である場合には第1の色変換、所定の値より大きい場合には第2の色変換を行うことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記色変換部は、前記特定のオブジェクトのサイズが所定のサイズ以下の場合の出力色の明度は所定のサイズより大きいオブジェクトの出力色の明度よりも低くなるよう色変換出力を設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
印字データを解析して特定のオブジェクトを抽出し、
前記オブジェクトのサイズを検出し、
前記検出部で検出されたオブジェクトのサイズによって出力色を異ならせ、
前記出力色にしたがった色指定にて色変換を行う画像形成方法。
【請求項6】
前記特定のオブジェクトは文字および図形であることを特徴とする請求項5記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記特定のオブジェクトのサイズが所定の値以下である場合には第1の色変換、所定の値より大きい場合には第2の色変換を行うことを特徴とする請求項6記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記特定のオブジェクトのサイズが所定のサイズ以下の場合の出力色の明度は所定のサイズより大きいオブジェクトの出力色の明度よりも低くなるよう色変換出力を設定することを特徴とする請求項7記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253775(P2012−253775A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128469(P2012−128469)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】