説明

画像形成装置および吸排気システム

【課題】帯電器への異物の付着による帯電器の帯電機能の低下を防止し、高品位の画像を継続して形成できるようにする。
【解決手段】画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム3と、静電潜像をトナーにより現像する現像器と、感光体ドラム3表面をコロナ放電により帯電させる帯電器5とを備える。さらに、トナーとしてトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーを使用し、帯電器5として鋸歯形状の放電電極を有する鋸歯帯電器を使用し、気体流生成手段を備える。気体流生成手段は、画像形成装置の外部から吸気して帯電器5内に送風し、帯電器5内の気体を画像形成装置の外部に排気して、画像形成装置の外部から帯電器5内への気体の流れおよび帯電器5内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体を帯電させる鋸歯帯電器を備えた画像形成装置および吸排気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置における帯電方式としてコロナ帯電方式が従来から用いられている。
【0003】
このコロナ帯電方式は、コロナ放電で発生したイオンを感光体等の静電潜像担持体表面に導いて帯電させる帯電方式である。このため、帯電を繰り返し行うことにより、コロナ放電時に発生するO、NOxや、トナー、紙粉等がコロナ帯電器近傍に浮遊し、コロナ帯電器に帯電ムラが発生し、画像不良が発生するという問題が生じる。
【0004】
例えば、コロナ帯電器の一種である鋸歯帯電器の場合、放電針の先端にO、NOx等の異物が付着し、その部分で放電不良及び帯電ムラが発生し、静電潜像担持体の帯電不良、さらには画像不良が発生する。これは、コロナ帯電器によるコロナ放電では、発生したO、NOx、および画像形成装置内で浮遊するトナー、紙粉等の浮遊物を含む気体を集塵しながら放電してしまうためである。
【0005】
そこで、特許文献1では、像担持体近傍に浮遊するO、NOx等を排気する排気手段が画像形成装置に設けられている。
【0006】
また、特許文献2では、帯電手段に向けてエアーを吹き付ける吹き入れファンと、該帯電手段近傍のエアーを吸引する吸引ファンとが画像形成装置に設けられている。
【特許文献1】特開平09−026731(1997年1月28日公開)
【特許文献2】特開2000−206841(2000年7月28日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、トナーには帯電性や流動性を付与するための外添剤としてシリカが添加されている。このシリカは、使用しているうちに湿気によって帯電特性が低下するという不具合がある。そこで、シリカはトリメチルシリル基を有する疎水化処理剤により表面が疎水化処理されている。
【0008】
このようなシリカが添加されたトナーを使用するととともに、帯電器として鋸歯帯電器を使用した場合、2万枚程度の印刷を行うと、鋸歯電極の先端に綿埃状の異物が付着し始める。その後、この綿埃は印刷を重ねるにしたがって綿帽子状に成長する。
【0009】
鋸歯帯電器がこのような状態になると、電界強度が大幅に低下し、帯電不良が発生する。特に、30枚/分以上の速度で印刷を行う高速機では、鋸歯帯電器に大電流を流して感光体の帯電を円滑に行う必要があり、電界強度の低下による帯電不良の影響が顕著となる。
【0010】
なお、鋸歯電極の先端に付着する綿埃状の異物の一つとしては機内を浮遊する上記疎水化処理剤が考えられる。すなわち、トリメチルシリル基を有する疎水化処理剤は融点が低く、トナーを加熱して記録紙に定着させる定着工程において蒸発し、機内を浮遊して鋸歯電極に付着することが考えられる。あるいは、現像器内においてトナーを攪拌した際に、トナーから飛散して機内を浮遊し、鋸歯電極に付着することが考えられる。
【0011】
しかしながら、特許文献1では、像担持体近傍に浮遊するO、NOx等を取り除くために排気手段が設けられているだけであるので、十分にO、NOx等を取り除き、また鋸歯電極への綿埃状の異物の付着を阻止することができない。
【0012】
また、特許文献2では、同文献に記載の図1に示すように、吹き入れファンと吸引ファンとが近接して配置された構成となっている。このため、吸引ファンF2によって一次帯電器2近傍の気体を吸引したとしても、すぐ近くに設けられた吹き入れファンF1によってその気体を一部含む気体が一次帯電器2近傍に吹き付けられることになる。このため、一次帯電器2の使用頻度が増加すればするほど、該一次帯電器2近傍にはOおよびNOxや上記異物等が蓄積されることになり、一次帯電器2による帯電不良を適切に解消することができない。
【0013】
したがって、本発明は、帯電手段の使用頻度が増加しても、帯電手段への異物の付着による帯電手段の帯電機能の低下を防止し、高品位の画像を形成し続けることのできる画像形成装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像をトナーにより現像する現像器と、前記像担持体表面をコロナ放電により帯電させる帯電器とを備えた画像形成装置において、前記トナーとしてトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーを使用するとともに、前記帯電器として鋸歯形状の放電電極を有する鋸歯帯電器を備え、画像形成装置の外部から吸気して前記帯電器内に送風するとともに前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排気することにより、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる気体流生成手段を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の吸排気システムは、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像をトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーにより現像する現像器と、鋸歯形状の放電電極からのコロナ放電により前記像担持体表面を帯電させる鋸歯帯電器とを有する画像形成装置に備えられ、画像形成装置の外部から吸気して前記帯電器内に送風するとともに前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排気することにより、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる気体流生成手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、気体流生成手段は、吸気および排気によって、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせるので、帯電器内の気体を常に画像形成装置外部の気体と換気することができる。
【0017】
ここで、トナーには帯電性や流動性を付与するための外添剤としてシリカが添加されており、このシリカはトリメチルシリル基を有する疎水化処理剤により表面が疎水化処理されている。したがって、画像形成装置の内部には上記疎水化処理剤が浮遊し、この疎水化処理剤により帯電器の鋸歯電極の先端に異物(例えば綿帽子状に成長する異物)が生じ易くなる。また、帯電器はコロナ放電方式であるから、帯電器の動作によりOやNOx等が発生する。
【0018】
しかしながら、本発明の構成では、気体流生成手段による帯電器に対しての上記換気機能により、画像形成装置の内部に浮遊する疎水化処理剤並びにOやNOx等が帯電器内において浮遊することを防止できる。したがって、帯電器の使用頻度が増加しても、帯電器の放電電極に疎水化処理剤並びにO、NOx等の浮遊物が蓄積されにくくなるので、帯電器における帯電不良(帯電ムラ)の発生を低減することができ、この結果、帯電ムラによる画像劣化のない高品位の画像を形成し続けることが可能となる。
【0019】
上記の画像形成装置において、前記気体流生成手段は、前記気体の流れを生じさせる送風機と、画像形成装置の外部から吸気された気体を前記帯電器内に導く吸気ダクトと、前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に導く排気ダクトとを備えている構成としてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、気体流生成手段は送風機と吸気ダクトと排気ダクトとを備えているので、画像形成装置の外部の気体を効率よく帯電器内に導入し、かつ帯電器内の気体を効率よく画像形成装置の外部に排出することができる。これにより、少ないエネルギーによって帯電器の帯電不良を低減させることが可能となる。
【0021】
上記の画像形成装置において、前記送風機は、前記吸気ダクトに設けられた吸気ファンと、前記排気ダクトに設けられた排気ファンとを備えている構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、吸気ダクトに吸気ファンを備え、排気ダクトに排気ファンを備えているので、吸気と排気の風速を適宜制御することが可能となる。
【0023】
上記の画像形成装置において、前記帯電器は、前記放電電極を3方向から囲む断面コ字形のチャージャケースを有し、前記チャージャケースの一端部に前記吸気ダクトの端部が接続され、前記チャージャケースの他端部に前記排気ダクトの端部が接続されている構成としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、チャージャケースを有する帯電器に対して、画像形成装置の外部の気体を帯電器内に導入する動作と帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排出する動作とをさらに効率よく行うことができる。
【0025】
上記の画像形成装置において、前記帯電器内への吸気の風速は前記帯電器内からの排気の風速よりも速くなるように設定されている構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、帯電器内への吸気の風速が帯電器内からの排気の風速よりも速くなっているので、画像形成装置の外部から導入された気体が帯電器内から溢れる状態となる。これにより、画像形成装置の内部で発生した疎水化処理剤並びにO、NOx等の浮遊物が帯電器内に侵入することを確実に防止でき、それら浮遊物が帯電器の放電電極に蓄積されて帯電不良が発生する事態をさらに確実に防止することができる。
【0027】
上記の画像形成装置は、1個の前記像担持体に対して前記帯電器が複数個配置されている構成としてもよい。
【0028】
本発明の気体流発生手段を備えた構成は、1個の像担持体に対して帯電器が複数個配置されている画像形成装置に対しても好適に用いることができる。このような画像形成装置とは、像担持体表面を高速で帯電させる必要のある高速印刷装置が挙げられる。
【0029】
上記の画像形成装置は、前記像担持体を複数個備え、これら各像担持体にそれぞれ前記帯電器が配置されている構成としてもよい。
【0030】
本発明の気体流発生手段を備えた構成は、像担持体を複数個備え、これら各像担持体にそれぞれ帯電器が配置されている画像形成装置に対しても好適に用いることができる。このような画像形成装置とは、カラー画像を形成するために各インク毎に像担持体が設けられたタンデム方式の画像形成装置が挙げられる。
【0031】
上記の画像形成装置において、前記像担持体の表面に残留するトナーを回収するクリーニング装置を備え、前記帯電器は前記クリーニング装置よりも低い位置に配置されている構成としてもよい。
【0032】
本発明の気体流発生手段を備えた構成は、帯電器がクリーニング装置よりも低い位置に配置されている画像形成装置、すなわちクリーニング中に飛散したトナー、クリーニング装置から漏れたトナー、あるいはトナーから飛散した外添剤等の浮遊物が帯電器に侵入し易い構成に対して好適に用いることができる。
【0033】
上記の画像形成装置において、前記帯電器は前記現像器よりも低い位置に配置されている構成としてもよい。
【0034】
本発明の気体流発生手段を備えた構成は、帯電器が現像器よりも低い位置に配置されている画像形成装置、すなわち現像中に飛散したトナー、現像器から漏れたトナー、あるいはトナーから飛散した外添剤等の浮遊物が帯電器に侵入し易い構成に対して好適に用いることができる。
【0035】
上記の画像形成装置において、前記帯電器内の気圧は前記帯電器の周囲の気圧より高くなっている構成としてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、帯電器内の気圧が帯電器の周囲の気圧より高くなっているので、画像形成装置の内部で発生した疎水化処理剤並びにO、NOx等の浮遊物が帯電器内に侵入することを確実に防止でき、それら浮遊物が帯電器の放電電極に蓄積されて帯電不良が発生する事態をさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る画像形成装置は、以上のように、前記トナーとしてトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーを使用するとともに、前記帯電器として鋸歯形状の放電電極を有する鋸歯帯電器を備え、画像形成装置の外部から吸気して前記帯電器内に送風するとともに前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排気することにより、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる気体流生成手段を備えている構成である。
【0038】
したがって、気体流生成手段による換気機能により、画像形成装置の内部に浮遊する疎水化処理剤並びにOやNOx等が帯電器内において浮遊することを防止できる。これにより、帯電器の使用頻度が増加しても、帯電器の放電電極に疎水化処理剤並びにO、NOx等の浮遊物が蓄積されにくくなるので、帯電器における帯電不良(帯電ムラ)の発生を低減することができ、この結果、帯電ムラによる画像劣化のない高品位の画像を形成し続けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の一実施の形態について説明すれば、以下の通りである。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置Aの構成を示す説明図である。ここでは、画像形成装置Aとして、外部から入力された画像データあるいは原稿読取りにより得られた画像データに基づいて、シート(記録用紙)に多色あるいは単色の画像を形成するレーザプリンタを例に説明する。
【0040】
同図に示すように、画像形成装置Aは、露光ユニット1、現像装置2(2a,2b,2c,2d)、感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)、帯電器5(5a,5b,5c,5d)、クリーナユニット4(4a,4b,4c,4d)、中間転写ベルトユニット8、定着ユニット12、シート搬送路S、給紙カセット10および排紙トレイ15等を備えている。
【0041】
画像形成装置Aにおいて扱われるカラー画像の画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。したがって、現像装置2(2a,2b,2c,2d)、感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)、帯電器5(5a,5b,5c,5d)、クリーナユニット4(4a,4b,4c,3d)は、各色に応じた4種類の潜像を形成するように、それぞれ4個ずつ設けられている。なお、上記a〜dの符号は、aがブラックに、bがシアンに、cがマゼンタに、dがイエローに対応し、これら符号にて区別された上記の各手段により、4つの画像ステーションが構成されている。
【0042】
画像ステーションにおいて、感光体ドラム3は、画像形成装置Aの上部に配置されている。帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。この帯電器5としては、図2に示すような、チャージャー型のもが使用される。この帯電器5の詳細については後述する。
【0043】
露光ユニット1には、図2に示すようにレーザ照射部および反射ミラーを備えた、レーザスキャニングユニット(LSU)を用いる手法のほかに、発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いる手法もある。露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。
【0044】
各現像装置2は、各感光体ドラム3上に形成された静電潜像をK,C,M,Yのトナーにより顕像化するものである。クリーナユニット4は、現像および画像転写工程後に感光体ドラム3の表面に残留しているトナーを除去し、回収するものである。各現像装置2において使用するトナーは、トリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーである。
【0045】
感光体ドラム3の上方には中間転写ベルトユニット8が配置されている。この中間転写ベルトユニット8は、中間転写ローラ6(6a,6b,6c,6d)、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73、および中間転写ベルトクリーニングユニット9を備えている。
【0046】
中間転写ローラ6、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73等は、中間転写ベルト7を張架し、矢印B方向に回転駆動させるものである。
【0047】
中間転写ローラ6は、中間転写ベルトユニット8の中間転写ベルトテンション機構73における中間転写ローラ取付部に回転可能に支持されている。この中間転写ローラ6は、感光体ドラム3のトナー像を中間転写ベルト7上に転写するための転写バイアスを与えるものである。
【0048】
中間転写ベルト7は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている。中間転写ベルト7上には、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像が順次重ねて転写されることにより、カラーのトナー像(多色トナー像)が形成される。この中間転写ベルト7は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0049】
感光体ドラム3から中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7の裏側に接触している中間転写ローラ6によって行われる。中間転写ローラ6には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ6は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとして形成され、表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われている。この導電性の弾性材により、中間転写ローラ6は中間転写ベルト7に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施の形態では、転写電極としてローラ形状のもの(中間転写ローラ6)を使用しているが、これ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0050】
上述のように各感光体ドラム3上の静電潜像は各色相に応じたトナーにより顕像化されてそれぞれトナー像となり、これらトナー像は中間転写ベルト7上において積層される。このように、積層されたトナー像は中間転写ベルト7の回転によって、搬送されて来た用紙と中間転写ベルト7との接触位置に移動し、この位置に配置されている転写ローラ11によって用紙上に転写される。この場合、中間転写ベルト7と転写ローラ11は所定ニップで互いに圧接されるとともに、転写ローラ11にはトナー像を用紙に転写させるための電圧が印加される。この電圧は、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧である。
【0051】
上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ11もしくは中間転写ベルト駆動ローラ71の何れか一方は金属等の硬質材料からなり、他方は弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ等)からなる。
【0052】
中間転写ベルト7と感光体ドラム3との接触により中間転写ベルト7に付着したトナー、および中間転写ベルト7から用紙へのトナー像の転写の際に転写されずに中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット9によって除去され回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット9には、中間転写ベルト7に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられている。このクリーニングブレードが接触する部分の中間転写ベルト7は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ72にて支持されている。
【0053】
給紙カセット10は、画像形成に使用するシート、例えば記録用紙を蓄積しておくためのものであり、画像形成部および露光ユニット1の下側に設けられている。一方、画像形成装置Aの上部に設けられている排紙トレイ15は、印刷済みのシートをフェイスダウンで載置するためのものである。
【0054】
また、画像形成装置Aには、給紙カセット10のシートおよび手差しトレイ20のシートを転写ローラ11や定着ユニット12を経由させて排紙トレイ15に送るためのシート搬送路Sが設けられている。このシート搬送路Sにおける給紙カセット10から排紙トレイ15までの部分には、ピックアップローラ16、レジストローラ14、転写ローラ11を備えた転写部、定着ユニット12および搬送ローラ25等が配されている。
【0055】
搬送ローラ25は、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、シート搬送路Sに沿って複数設けられている。ピックアップローラ16は、給紙カセット10の端部に備えられ、給紙カセット10からシートを1枚づつシート搬送路Sに供給する呼び込みローラである。レジストローラ14は、シート搬送路Sを搬送されているシートを一旦保持し、感光体ドラム3上のトナー像の先端とシートの先端とを合わせるタイミングでシートを転写部に搬送するものである。
【0056】
定着ユニット12は、ヒートローラ31および加圧ローラ32等を備え、これらヒートローラ31および加圧ローラ32はシートを挟んで回転する。ヒートローラ31は、所定の定着温度となるように制御部(図示せず)によって制御される。この制御部は温度検出器(図示せず)からの検出信号に基づいてヒートローラ31を制御する。ヒートローラ31は、加圧ローラ33とともにシートを熱圧着することにより、シートに転写されている各色トナー像を溶融・混合・圧接させ、シートに対して熱定着させる。なお、多色トナー像(各色トナー像)を定着後のシートは、複数の搬送ローラ25によってシート搬送路Sの反転排紙経路に搬送され、反転された状態(多色トナー像を下側に向けた状態)にて、排紙トレイ15上に排出される。
【0057】
次に、各部での処理を含み、シート搬送路Sによるシート搬送動作について説明する。画像形成装置Aには、上記のように、予めシートを収納する給紙カセット10、および少数枚の印字を行う場合等に使用される手差しトレイ20が配置されている。これら両者には各々前記ピックアップローラ16(16−1,16−2)が配置され、これらピックアップローラ16はシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する。
【0058】
(片面印字の場合)
給紙カセット10から搬送されるシートは、シート搬送路S中の搬送ローラ25−1によってレジストローラ14まで搬送され、このレジストローラ14によりシートの先端と中間転写ベルト7上の積層されたトナー像の先端とを整合するタイミングで転写部に搬送される。転写部ではシート上にトナー像が転写され、このトナー像は定着ユニット12にてシート上に定着される。その後、シートは、搬送ローラ25−2を経て排紙ローラ25−3から排紙トレイ15上に排出される。
【0059】
また、手差しトレイ20から搬送されるシートは、複数の搬送ローラ25(25−6,25−5,25−4)によってレジストローラ14まで搬送される。それ以降は給紙カセット10から供給されるシートと同様の経過を経て排紙トレイ15に排出される。
【0060】
(両面印字の場合)
上記のようにして片面印字が終了し、定着ユニット12を通過したシートは、後端が排紙ローラ25−3にてチャックされる。次に、シートは、排紙ローラ25−3が逆回転することによって搬送ローラ25−7,25−8に導かれ、レジストローラ14を経て裏面印字が行われた後に、排紙トレイ15に排出される。
【0061】
ここで、帯電器5について、図3および図4を参照しながら以下に説明する。なお、図2に示す画像形成装置Aに備えられた4つの帯電器(5a〜5d)は同じ構成であるので、以下では区別をせずに帯電器5として説明する。
【0062】
図3は、帯電器5およびその周辺の構成を模式的に表した断面図である。帯電器5は、コロナ放電方式の帯電器であり、円筒状の感光体ドラム3の長手方向(図3において紙面垂直方向)の長さとほぼ等しい長さを有し、感光体ドラム3に沿って設置されている。
【0063】
帯電器5は、電荷を発生させる電荷発生部50、電荷発生部50と感光体ドラム3との間に介在する網目状のグリッド電極54、および電荷発生部50にグリッド電極54を固定するグリッド電極保持部材55を有している。
【0064】
電荷発生部50は、チャージャケース51、放電電極53、および放電電極53をチャージャケース51に固定する放電電極保持部材52を有している。チャージャケース51は断面コ字形に形成され、開口部が感光体ドラム3と対向するように配置されている。
【0065】
グリッド電極保持部材55および放電電極保持部材52は絶縁性の部材であり、電荷発生部50とグリッド電極54との間、および放電電極53とチャージャケース51との間を絶縁している。
【0066】
グリッド電極54およびチャージャケース51には、第1DC電源56が接続されており、アース電位に対して電位差Vg(Vg<0)の電圧が印加されている。また、放電電極53には、第2DC電源57が接続されており、アース電位に対して電位差Vc(Vc<Vg<0)の電圧が印加されている。これにより、チャージャケース51と放電電極53との間に電界が発生し、この電界により大気が電離して放電電極53の周辺に負電荷(マイナスイオン)が発生する。発生した負電荷は、グリッド電極54に引きつけられて広がりながら感光体ドラム3側へ移動し、グリッド電極54を通過したものが感光体ドラム3の表面に達する。
【0067】
感光体ドラム3の表面は、非露光時には半導電性を有し、露光時には導電性を有する部材から成っている。上記のようにして感光体ドラム3の表面に達した負電荷により感光体ドラム3の表面が初期化帯電され、所定の初期化帯電電位VOとなる。そして、初期化帯電された感光体ドラム3の表面が露光されると、その部分(明部)が導電性を有するようになり、負電荷がアースに移動する。負電荷が移動した部分は電位が正方向に変化し、明部電位VEとなる。感光体ドラム3の表面における負電荷が存在する部分と存在しない部分、つまり初期化帯電電位VOの部分と明部電位VEの部分とにより静電潜像が形成される。
【0068】
上記の帯電器5の放電電極53は、図4に示すように、鋸歯状に形成されたものであり、該鋸歯の先端部53aから放電が行われる。すなわち、帯電器5は、放電電極53が鋸歯形状をなす鋸歯帯電器である。
【0069】
ここで、トナーには帯電性や流動性を付与するための外添剤としてシリカが添加されており、このシリカはトリメチルシリル基を有する疎水化処理剤により表面が疎水化処理されている。したがって、画像形成装置の内部には上記疎水化処理剤が浮遊し、この疎水化処理剤により帯電器の鋸歯電極の先端に異物(例えば綿帽子状に成長する異物)が生じ易くなる。また、一般に、コロナ放電では、イオン発生時に、OやNOx等が生じる。放電回数が多くなれば、帯電器5の先端部53aへのOやNOxの蓄積も多くなる。帯電器5の先端部53aに上記の付着物(蓄積物)が生じた場合には放電が十分にできなくなり、帯電器5による感光体ドラム3への帯電ムラ(チャージムラ)が発生する虞がある。また、帯電器5付近には、上記のもの以外に、トナーや紙粉も浮遊しており、これらトナーや紙粉が帯電器5の先端部53aに付着しても、該帯電器5の帯電性能を低下させる。
【0070】
そこで、本実施の形態では、図1に示すように、吸気および排気によって、帯電器5内(チャージャケース51内)に像担持体である感光体ドラム3の長手方向(感光体ドラム3の軸方向)への気体(空気)の流れ(気体流)を生じさせる構成としている。これにより、帯電器5のコロナ放電によって発生し、帯電器5内(チャージャケース51内)に浮遊しているOやNOxおよびその他の浮遊物を気体の流れによって帯電器5内(チャージャケース51内)から排出することができるので、常に、最適な帯電状態を維持することが可能となる。
【0071】
上記気体の流れは、図5に示すような吸排気システム60(気体流生成手段)によって実現することが可能となる。
【0072】
図5は、帯電器5に対する吸排気システム60の概要を示す図であり、図6は、図5に示す吸排気システム60におけるXX線矢視断面図である。なお、図6では、帯電器5内の放電電極53等を省略し、チャージャケース51のみを表示している。
【0073】
上記吸排気システム60は、図5に示すように、帯電器5(5a〜5d)の長手方向に、気体の流れを発生させるために、各チャージャケース51の両端部にダクト(61、62)が設けられている。帯電器5における吸気側には、画像形成装置Aの外部の気体を取り込むための吸気ダクト61が設けられ、帯電器5における排気側には、該帯電器5内の気体を画像形成装置Aの外部に排出するための排気ダクト62が設けられている。
【0074】
すなわち、上記吸排気システム60は、帯電器5内(チャージャケース51内)に画像形成装置Aの外部からの気体を導くための吸気ダクト61と、帯電器5内(チャージャケース51内)の気体を画像形成装置Aの外部に排気するための排気ダクト62とを有する構成となっている。そして、画像形成装置Aの外部からの吸気と画像形成装置Aの外部への排気とを適切に行うために、吸気ダクト61の吸気側の端部は、画像形成装置Aの筐体に形成されている吸気口(図示せず)付近に達しており、排気ダクト62の排気側の端部は、画像形成装置Aの筐体に形成されている排気口(図示せず)付近に達している。上記の吸気口と排気口は、画像形成装置Aの筐体における例えば互いに対向する一対の壁部の一方と他方に形成されている。
【0075】
上記吸気ダクト61の吸気側端部には、外部からの気体を取り込むための吸気ファン63が設けられている。この吸気ダクト61は、各帯電器5のチャージャケース51に対して、接続用ダクト61a〜61dを介して接続されている。上記吸気ファン63としては、例えばミネベア株式会社製の型番:BG0703−B054のファンを使用可能である。
【0076】
一方、上記排気ダクト62の排気側端部には、オゾンフィルタ64を介して、各帯電器5からの気体を排気するための排気ファン65が設けられている。この排気ダクト62は、各帯電器5のチャージャケース51に対して接続用ダクト62a〜62dを介して接続されている。上記排気ファン65としては、例えば日本電産株式会社製の型番:D10F−24PMのファンを使用可能である。
【0077】
上記構成の吸排気システム60では、まず、吸気ファン63によって画像形成装置Aの外部から取り込まれた気体が、吸気ダクト61から各接続用ダクト61a〜61dを介して、各帯電器5に流れ込む。次に、各帯電器5に流れ込んだ気体は、排気ファン65によって、各接続用ダクト62a〜62dを介して、排気ダクト62に向かって引き込まれる。その後、オゾンフィルタ64を通過して該排気ファン65から画像形成装置Aの外部に排出される。このオゾンフィルタ64では、帯電器5内で発生したOを吸着するようになっている。
【0078】
ここで、吸排気システム60においては、各帯電器5内(チャージャケース51内)を通過する気体の速度、すなわち風速を適切に設定することで、OやNOx等を確実に取り除くことが可能となる。この風速は、吸気ファン63、排気ファン65のファンの回転数によって制御することができる。これら風速の最適値に関する実験については後述する。
【0079】
上記の吸気ファン63、排気ファン65のファンの回転数は、図7に示す制御装置100によって制御されている。
【0080】
上記制御装置100には、吸気ファン63を回転させる吸気ファン駆動モータ(第1モータ)101と、排気ファン65を回転させる排気ファン駆動モータ(第2モータ)102と、上記第1モータの回転数を設定する第1モータ回転数設定部103と、上記第2モータの回転数を設定する第2モータ回転数設定部104とが接続されている。
【0081】
つまり、上記第1モータ回転数設定部103および第2モータ回転数設定部104によって、吸気ファン駆動モータ101および排気ファン駆動モータ102の回転数を設定することで、吸排気システムにおける帯電器5内の風速が設定される。
【0082】
なお、帯電初期の状態と、時間が経過した後の状態では、OやNOxおよびその他の浮遊物の蓄積量、すなわち浮遊物の浮遊量が異なるので、帯電器5内の風速も一定でなくてもよい。つまり、OやNOxおよびその他の浮遊物の浮遊量が少ないときには風速は小さく、OやNOxおよびその他の浮遊物の浮遊量が多いときには風速を大きくすることにより、状況に応じてOやNOxおよびその他の浮遊物を適切に帯電器5内から排気することが可能となる。
【0083】
具体的には、各帯電器5内に、Oの濃度を検出するオゾン濃度検出センサ105、NOxの濃度を検出するNOx濃度検出センサ106を設けて、これら各センサからの検出値に応じて、第1モータ回転数設定部103、第2モータ回転数設定部104における各モータの回転数を設定すればよい。
【0084】
このように、帯電器5内のO濃度やNOx濃度に応じて各モータの回転数を制御すれば、モータの回転による騒音を低減できるとともに、各モータで消費される電力を低減ができるという効果を奏する。
【0085】
例えば、吸気ファン63が風速アップに伴って騒音が大きくなるような場合であっても、一時的に風速アップをするだけですむので、常に同じ風速で吸気ファン63を回転させる場合よりも全体として騒音を低くすることができる。
【0086】
以下に、上記構成の画像形成装置Aにおける帯電器5近傍に設けられた吸排気システム60における風速と帯電ムラとの関係について、後述の各実験例を参照しながら説明する。
【0087】
まず、この実験に使用した吸排気システム内の風速を計測するための装置について、図8および図9に基づいて説明する。ここでは、帯電器5内部の風速と、吸排気システムを構成する吸気ダクト61と排気ダクト62内の風速を計測する。
【0088】
図8に示すように、帯電器5、吸気ダクト61および排気ダクト62には、風速を検出するためのセンサ201が設けられている。このセンサ201による検出値は、処理部202に入力され、所定の処理が施された後、モニタ203に風速を示す情報が表示される。
【0089】
上記センサ201は、図9に示すように、筒部201a内にプロペラ形状の回転部201bが設けられた構造となっており、筒部201aすなわち帯電器5内部の風速を計測するものである。つまり、センサ201は、筒部201aを通過する気体によって回転する回転部201bからの電気信号を、風速を検出した検出値として処理部202に出力するようになっている。
【0090】
このセンサ201としては、例えばAshburn Mess- und Regelugstechnik GmbH製の型番がTHERM 2285-2のセンサを使用可能である。
【0091】
以下の説明において、帯電ムラ(以下、チャージムラと称する)の程度を判断するための記号について、図10を参照しながら説明する。
【0092】
図10では、「○」は、スジが全く発生していない状態を示し、「○△」は、薄いスジが数本発生している状態を示し、「△」は、薄いスジが全体的に発生している状態を示し、「△×」は、濃いスジが発生している状態を示し、「×」は濃いスジが全体的に発生している状態を示している。なお、これらのチャージムラは、印刷サンプルとして16階調パターンを用紙に印刷したものを目視によって判断した。上記の「△」になったときをチャージムラが発生したものと判断して、以下にこの実験結果について説明する。
【0093】
図11〜図13には、吸排気システム内における風速差(吸気側と排気側との差)とチャージムラの△レベルに到達するまで印刷枚数(以下、チャージムラ到達枚数と称する)との関係について示す。
【0094】
図11は、吸排気システム内の吸気部(吸気ダクト61側)の風速と、排気部(排気ダクト62側)の風速と、帯電器5(MC)内の風速と、チャージムラ到達枚数とを計測した結果を示した表である。ここでは、ブラックトナーのみでのA4サイズ原稿の4枚連続マルチの繰り返しによる実写AGING試験を行った。印刷に使用する基準原稿は、5%帯パターンを使用した。評価基準は、チャージムラが「△」レベルに到達したときの発生枚数とした。また、排気部の風速を一定(2.12m/s)とし、吸気部の風速を変化させて、MC内に風速差を生じさせている。
【0095】
図11に示す結果から、帯電器5(MC)内の風速が速い程、チャージムラ到達枚数が多くなることが分かる。つまり、帯電器5(MC)内の風速が速い程、チャージムラが生じにくくなっていることが分かる。帯電器5(MC)内の風速とは、チャージャケース51内をチャージャケース51の長手方向に流れる気体流の速度である。
【0096】
上記のMC内の風速をx(m/s)、チャージムラ到達枚数(所定の基準により形成された画像が帯電不良であると判定されるまでの画像枚数)をy(千枚)として、図11に示す結果をグラフにすると図12に示すようなグラフになる。ここで、所定の基準とは、前記した図10に示す基準であり、この場合は、△である。
【0097】
図12に示すグラフから近似式を求めると、y=12.0e1.4xとなる。そして、グラフからMC内の風速とチャージムラ到達枚数との好ましい関係を示す範囲は、y≦12.0e1.4xで示される範囲(グラフの右下の範囲)となる。
【0098】
また、MC内が乱流であるとも考えられるので、その場合、上記の関係式を変更する必要がある。すなわち、図11に示すMC内の風速それぞれに、1.75乗をした結果を、x’(m/s)として表せばよい。このx’とチャージムラ到達枚数yとの関係は、図13に示すようなグラフとなる。このグラフから近似式を求めると、y=47.4x’+7.2となる。そして、グラフからx’とチャージムラ到達枚数との好ましい関係を示す範囲は、y≦47.4x’+7.2で示される範囲(グラフの右下の範囲)となる。
【0099】
以上の結果から、帯電器5内の風速が大きくなればチャージムラが発生しにくくなることが分かる。
【0100】
ここで、図11に示す結果から、吸気部の風速を排気部の風速の1.9倍以上、4.2倍以下の範囲になるように、吸気部と排気部との風速を設定するのが好ましいことが分かる。つまり、吸気部の風速が4.00m/sで、排気部の風速が2.12m/sのとき、吸気部の風速は排気部の風速の約1.9倍となる。また、吸気部の風速が8.92m/sで、排気部の風速が2.12m/sのとき、吸気部の風速は排気部の風速の約4.2倍となる。また、吸気部の風速は排気部の風速の約4.2倍よりも大きくなれば、初期のチャージムラが発生する。つまり、この初期からのチャージムラは、初期状態からチャージムラが発生している状態をいい、放電部への異物付着によるものではなく、風速があまりにも大きくなりすぎることにより発生する。即ち、風速による影響を受けて、帯電器のグリッド部に振動が加わるため、感光体への帯電制御が不安定になり、感光体長手方向に電位バラツキが発生し、実使用に耐えられない濃淡ムラが現れる。
【0101】
また、MC内の気体流の風速は、以下に示す理由によって、1m/sec以上、2.5m/sec未満になるように設定されているのが好ましい。これは、MC内の気体流の風速が1m/sec未満では、殆ど効果(帯電ムラを低減させるという効果)が現れず、また2.5m/sec以上では、初期から帯電ムラが発生するからである。
【0102】
ここで、本願発明における吸排気システムの吸気部の風速、排気部の風速とを種々設定して実験を行った結果を示す。
【0103】
図14に示す実験No.1は、現状のプロセス(吸気ダクト61および排気ダクト62を用いないプロセス)により排気風速だけを規定し、チャージムラ到達枚数を測定したものである。なお、プロセス速度は高(225mm/s)と低(167mm/s)の2種類とする。この点は以下の実験No.2〜実験No.6まで同じである。この実験No.1では、何れのプロセス速度においても、チャージムラ到達枚数は10kであった。
【0104】
また、実験No.2〜実験No.5では、図1に示す吸排気システムを用いて、排気風速を2.21m/sと一定にし、吸気風速を0m/s、4m/s、6m/s、8.92/と徐々に速くしてチャージムラ到達枚数を測定したものである。これら実験のうち、実用化レベルのチャージムラ到達枚数である約30kを越えるものは、実験No.4.実験No.5であった。
【0105】
実験No.5では、何れのプロセス速度においても、チャージムラ到達枚数は79k以上あること分かった。そして、実験No.2〜実験No.5のうち、最も好ましい吸気風速と排気風速との関係を持っているのは実験No.5であることが分かった。
【0106】
また、実験No.6は、排気風速を実験No.2〜実験No.5までの排気風速よりも速く、5.05m/sに設定し、吸気風速は0m/sに設定してチャージムラ到達枚数を測定したものである。この実験No.6では、プロセス速度が遅ければチャージムラ到達枚数が20kになるのに対して、プロセス速度が速ければ、チャージムラ到達枚数が10kになっていることが分かった。
【0107】
上記の実験No.2〜実験No.5までの実験結果から、吸気風速とチャージムラ到達枚数との関係を示すと、図17に示す表になり、その結果をグラフにすると図18に示すものとなる。ここでは、吸気風速がチャージムラ到達枚数に与える影響を示している。つまり、吸気風速が速くなればなるほどチャージムラ到達枚数が多くなる傾向にあることが分かる。
【0108】
続いて、図15に示す実験No.7〜実験No.12までは、実験No.1〜実験No.6までと異なり、カラー画像を形成するプロセス、すなわち帯電器5が4個ある場合のチャージムラ到達枚数の確認のための実験である。従って、各色に対応する帯電器5毎に、排気風速、吸気風速を設定している。
【0109】
実験No.7は、現状のプロセス(吸気ダクト61および排気ダクト62を用いないプロセス)により排気風速だけを規定し、チャージムラ到達枚数を測定したものである。なお、プロセス速度は、カラー現像のときは167mm/sで、モノクロ現像のときは225mm/sである。この点は以下の実験No.8〜実験No.12まで同じである。この実験No.7では、チャージムラ到達枚数は10kであった。
【0110】
また、実験No.8〜実験No.10は、図1に示す吸排気システムを用いて、吸気風速よりも排気風速を速くしてチャージムラ到達枚数を測定したものである。これら実験のうち、実用化レベルのチャージムラ到達枚数である約30kを越えるものはなかった。
【0111】
実験No.11は、実験No.7と同様、現状のプロセス(吸気ダクト61および排気ダクト62を用いないプロセス)により排気風速だけを規定し、チャージムラ到達枚数を測定したものである。
【0112】
実験No.12は、吸気風速、排気風速共に実験No.11と同じであるが、排気効率アップのために、帯電器5のチャージャケース51をウレタンシールで密閉した構造にして、チャージムラ到達枚数を測定したものである。
【0113】
また、図16に示す実験No.13は、図1に示す吸排気システムを用いて、ブラックのみに対応する帯電器5に対して、吸気風速を自然吸気の0.85m/s(吸気ダクト61の吸気ファン63の入口で測定した風速)、排気風速を6.50m/sに設定したときの、チャージムラ到達枚数を測定したものである。この実験No.13では、実用レベルのチャージムラ到達枚数にはならなかった。
【0114】
以上の実験No.6〜13、および実験No.2における実験結果をまとめると図19に示す表のようになる。
【0115】
図19に示す結果からも分かるように、排気風速を吸気風速よりも速くした場合、何れもチャージムラ到達枚数が実用レベル(約30k)に達していなかった。つまり、排気風速を速くするだけでは、帯電器5内の風速を速くできないことが分かる。
【0116】
以上のことから、本実施の形態の画像形成装置の吸排気システム60は、吸気および排気によって、帯電器5内において帯電器5の長手方向に気体の流れを生じさせるので、帯電器5内の気体を常に排気することが可能となる。
【0117】
ここで、画像形成装置の内部には前述のように疎水化処理剤が浮遊している。また、帯電器5はコロナ放電方式であるから、帯電器5が動作するとコロナ放電によりO、NOx等が発生する。このような場合、上記のように帯電器5内にその長手方向に生じている気体の流れによって、上記浮遊物が排気されることになる。
【0118】
これにより、帯電器5の使用頻度(画像形成装置における印刷頻度)が増加しても、帯電器5に上記浮遊物が蓄積されにくくなるので、帯電器5における帯電不良(帯電ムラ)の発生を低減することができ、この結果、帯電ムラによる画像劣化のない高品位の画像を形成し続けることが可能となる。
【0119】
上記吸排気システム60は、帯電器5内(チャージャケース51内)に画像形成装置Aの外部からの気体を導くための吸気ダクト61と、帯電器5内(チャージャケース51内)から気体を画像形成装置Aの外部に排気するための排気ダクト62とを有する構成となっている。このように吸気ダクト61を介して吸気する構成であれば、吸気ダクト61を介して吸気しない構成と比較して、帯電器5内(チャージャケース51内)に効率良く気体を導くことができる。また、排気ダクト62を介して排気する構成であれば、排気ダクト62を介して排気しない構成と比較して、帯電器5内(チャージャケース51内)に存在する気体を効率良く排気することができる。これにより、吸気側の気体の同じ風速、排気側の気体の同じ風速であっても、吸気ダクト61および排気ダクト62を設けたほうが帯電器5内(チャージャケース51内)を流れる気体の風速を高めることができる。従って、少ないエネルギーによって効率良く帯電不良を低減させることが可能となる。
【0120】
さらに、効率良く帯電器5内(チャージャケース51内)を流れる気体の風速を高めるには、上記吸気ダクト61に吸気ファン63を設けると共に、上記排気ダクト62に排気ファン5を設ければよい。
【0121】
なお、吸排気システム60では、吸気ダクト61および排気ダクト62を設けず、上記気体の流れにおける吸気側に吸気ファン63を設けるとともに、上記気体の流れの排気側に排気ファン65を設ける構成としてもよい。
【0122】
この場合にも、吸気ダクトおよび排気ダクトを設けた場合程ではないが、各ファンを設けない場合に比べて、帯電器5内(チャージャケース51内)の気体の風速を高めることができる。
【0123】
また、上記の各種実験から、帯電器5内(チャージャケース51内)における気体の風速を高めるには、上記帯電器5内に気体を導く吸気側の風速を、該帯電器5内から気体を排気する排気側の風速よりも大きく設定するようにすればよい。
【0124】
さらに、上記吸気側の風速は、上記排気側の風速の1.9倍以上4.2倍以下に設定されていることが好ましい。
【0125】
この場合、吸気側の風速が排気側の風速の1.9倍よりも小さくければ、上記帯電器5内の気体の風速を十分に高めることができないので、O等が蓄積され、帯電不良が生じやすくなる。
【0126】
また、吸気側の風速が排気側の風速の4.2倍よりも大きければ、上記帯電器5内の気体の風速が大きくなりすぎて、初期帯電不良が発生しやすくなる。この初期帯電不良とは、初期状態から常に帯電ムラが生じている状態をいう。
【0127】
以上のころから、本実施の形態の画像形成装置においては、帯電器5の使用時間が長くなっても、帯電器5内を浮遊する浮遊物を適切に排出することができるので、帯電ムラの影響のない高品位の画像を形成することが可能となる。
【0128】
このように、本発明は、レーザプリンタ等に好適に用いられ、特に、コロナ放電によりOやNOx等が生じ易い帯電方式を採用している電子写真方式の画像形成装置に用いられる。
【0129】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に適用でき、特に、コロナ放電方式を採用した帯電器を備えた画像形成装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、画像形成装置における吸排気システムの構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の構成を示す概略の縦断面図である。
【図3】図2に示した画像形成装置に備えられている帯電器と感光体ドラムとの配置関係を示す概略の模式図である。
【図4】図3に示した帯電器の概略斜視図である。
【図5】図1に示した吸排気システムの全体構造を示す平面図である。
【図6】図5におけるX−X線矢視断面図である。
【図7】図2に示す画像形成装置に備えられた制御装置のブロック図である。
【図8】風速を計測するための装置の概略説明図である。
【図9】図8に示した装置が備える風速センサの正面図である。
【図10】チャージムラの判断基準を示す図である。
【図11】上記吸排気システムにおける各部の風速によって得られたチャージムラ到達枚数の結果を示す図である。
【図12】図11に示した結果に基づいて得られたMC内風速とチャージムラ到達枚数との関係を示すグラフである。
【図13】図11に示した結果に基づいて得られたMC内風速とチャージムラ到達枚数との関係を示すグラフである。
【図14】実験No.1〜実験No.6までの実験結果を示す図である。
【図15】実験No.7〜実験No.12までの実験結果を示す図である。
【図16】実験No.13の実験結果を示す図である。
【図17】実験No.2〜実験No.5における吸気風速とチャージムラ到達枚数との結果を示す図である。
【図18】図17に示した結果から得られた吸気風速とチャージムラ到達枚数とのグラフである。
【図19】実験No.2、実験No.6〜実験No.13までの実験結果の比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
1 露光ユニット
2 現像装置(現像器)
3 感光体ドラム(像担持体)
4 クリーナユニット
5 帯電器
50 電荷発生部
51 チャージャケース
52 放電電極保持部材
53 放電電極
53a 先端部
54 グリッド電極
55 グリッド電極保持部材
56 第1DC電源
57 第2DC電源
60 吸排気システム(気体流生成手段)
61 吸気ダクト
61a〜61d 接続用ダクト
62 排気ダクト
62a〜62d 接続用ダクト
63 吸気ファン
64 オゾンフィルタ
65 排気ファン
100 制御装置(風速制御手段)
101 吸気ファン駆動モータ
102 排気ファン駆動モータ
103 第1モータ回転数設定部
104 第2モータ回転数設定部
105 オゾン濃度検出センサ
106 NOx濃度検出センサ
201 センサ
201a 筒部
201b 回転部
202 処理部
203 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像をトナーにより現像する現像器と、前記像担持体表面をコロナ放電により帯電させる帯電器とを備えた画像形成装置において、
前記トナーとしてトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーを使用するとともに、前記帯電器として鋸歯形状の放電電極を有する鋸歯帯電器を備え、
画像形成装置の外部から吸気して前記帯電器内に送風するとともに前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排気することにより、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる気体流生成手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記気体流生成手段は、前記気体の流れを生じさせる送風機と、画像形成装置の外部から吸気された気体を前記帯電器内に導く吸気ダクトと、前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に導く排気ダクトとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記送風機は、前記吸気ダクトに設けられた吸気ファンと、前記排気ダクトに設けられた排気ファンとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電器は、前記放電電極を3方向から囲む断面コ字形のチャージャケースを有し、前記チャージャケースの一端部に前記吸気ダクトの端部が接続され、前記チャージャケースの他端部に前記排気ダクトの端部が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電器内への吸気の風速は前記帯電器内からの排気の風速よりも速くなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
1個の前記像担持体に対して前記帯電器が複数個配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体を複数個備え、これら各像担持体にそれぞれ前記帯電器が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体の表面に残留するトナーを回収するクリーニング装置を備え、前記帯電器は前記クリーニング装置よりも低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記帯電器は前記現像器よりも低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記帯電器内の気圧は前記帯電器の周囲の気圧より高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像をトリメチルシリル基で表面を疎水化処理したシリカが外添されたトナーにより現像する現像器と、鋸歯形状の放電電極からのコロナ放電により前記像担持体表面を帯電させる鋸歯帯電器とを有する画像形成装置に備えられ、
画像形成装置の外部から吸気して前記帯電器内に送風するとともに前記帯電器内の気体を画像形成装置の外部に排気することにより、画像形成装置の外部から前記帯電器内への気体の流れおよび帯電器内から画像形成装置の外部への気体の流れを生じさせる気体流生成手段を備えていることを特徴とする吸排気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−193233(P2007−193233A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13044(P2006−13044)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】