説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】認証プリントジョブを実行する場合等においてファーストプリントタイムを短縮する。
【解決手段】画像形成装置1に、画像データGDに基づいて当該画像データGDの領域における画像の位置を算出する算出比較部46と、前記画像を記録紙に形成する画像形成手段(露光装置6等)と、前記記録紙に形成された画像を予め設定された定着温度で定着する定着手段と、前記定着手段に前記記録紙を搬送するカセット給紙ローラ8と、前記記録紙の搬送方向において前記画像が存在しない距離が大きい側から前記記録紙が前記定着手段に搬送されるように、前記算出比較部46による算出結果に基づいて画像データGDを回転する画像回転部49と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MFP等の画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成を行う画像形成装置、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリのほか、複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼称される多機能機等が会社等のオフィスで使用されている。
【0003】
画像形成装置の性能の向上と並行して付加機能の開発が絶え間なく続けられており、既に様々な付加機能が提案されている。例えば、プリント信号を受けると、加熱源による加熱動作を開始させるとともにプリント手段のプリント動作を開始させ、定着手段の温度が定着可能温度になるのとは独立にプリント動作を行うことによって、最初の複写物が排出されるのに必要な時間であるファーストプリントタイムの短縮および省エネルギー化を実現することが可能な画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、近年では、情報のセキュリティ性が重要視されてきており、画像形成装置によって認証プリントジョブを実行することが一般的になりつつある。認証プリントジョブとは、端末装置等からプリントジョブを画像形成装置に送信したユーザが、当該画像形成装置に設けられた認証装置に対して所定の認証操作を行って、認証処理が成功した場合に、当該プリントジョブの実行を開始するジョブである。認証プリントジョブはセキュアプリントジョブと呼ばれることもある。
【特許文献1】特開平5−35150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像形成装置は、認証プリントジョブを実行する際にファーストプリントタイムの短縮を実現するものではない。認証プリントジョブを実行する場合には、ユーザは画像形成装置の前に立っていることが多いので、待ち時間を短縮するために、プリント出力までの時間を短縮することが重要となる。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、認証プリントジョブを実行する場合等においてファーストプリントタイムを短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る画像形成装置は、画像データに基づいて当該画像データの領域における画像の位置を算出する第1算出手段と、前記画像を記録紙に形成する画像形成手段と、前記記録紙に形成された画像を予め設定された定着温度で定着する定着手段と、前記定着手段に前記記録紙を搬送する搬送手段と、前記記録紙の搬送方向において前記画像が存在しない距離が大きい側から前記記録紙が前記定着手段に搬送されるように、前記第1算出手段による算出結果に基づいて前記画像データを回転する画像回転手段と、を有する。
【0008】
好ましくは、画像形成装置は、前記画像データに係るプリントジョブを取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記プリントジョブが、プリントジョブを外部から入力したユーザの認証に成功したときに実行する認証プリントジョブである場合に、前記ユーザによる所定の操作に基づいて認証を行う認証手段と、を有し、前記画像回転手段は、前記認証手段によって前記ユーザの認証が成功したと判定された場合に、前記第1算出手段による算出結果に基づいて前記画像データを回転する。
【0009】
または、画像形成装置は、前記定着手段の現在の温度が前記定着温度に達する時刻、および前記記録紙に形成された画像の先端部が当該時刻に前記定着手段に到達するのに必要な時間を算出し、算出した当該時刻および当該必要な時間に基づいて、前記搬送手段による前記記録紙の搬送を開始すべき時刻を算出する第2算出手段と、前記第2算出手段によって算出された、搬送を開始すべき時刻になったときに、前記搬送手段を駆動する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、認証プリントジョブを実行する場合等においてファーストプリントタイムを短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略の構成の例を示す図、図2は画像形成装置1の機能的構成の例を示す図、図3は画像位置の検出方法の例を説明するための図、図4はファーストプリントタイムの短縮を説明するための図、図5は画像を回転する処理を説明するための図である。
【0012】
画像形成装置1は、タンデム方式の転写部を持ち、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを順次重ね合わせることによってカラー画像を形成するものである。なお、図1においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応した各構成部をそれぞれa、b、c、dで識別している。
【0013】
画像形成装置1は、図1に示すように、露光装置6による露光によって感光体3上に形成される静電潜像を、現像装置4によって現像し、得られたトナー像を一次転写ローラ(図示せず)によって中間転写ベルト2に転写し、さらに記録紙に転写するように構成されている。
【0014】
すなわち、画像形成装置1には、Y、M、C、Kの4色のカートリッジ(イメージングユニット)28が、タンデム配列で配置されており、これらのカートリッジ28で形成された各色のトナー像(トナー画像)が、中間転写ベルト2上に重ねられて転写され合成される。
【0015】
各カートリッジ28は、ドラム形状の感光体3の近傍に、現像装置4、帯電装置5および露光装置6等が配置されて構成されている。感光体3の表面は、帯電装置5によって所定の電圧(帯電電位)V0に帯電され、露光装置6からの露光によって静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像バイアス電圧Vdcが印加された現像ローラにより、静電潜像の電位と現像バイアス電圧Vdcとの電位ギャップΔVに現像ローラから帯電したトナーが供給されることによってトナー像となり、顕像化される。
【0016】
感光体3の表面に顕像化されたトナー像は、一次転写ローラによって中間転写ベルト2に1次転写される。中間転写ベルト2上のトナー像は、二次転写ローラ11によって、記録媒体収納部16からカセット給紙ローラ8により搬送された記録紙に2次転写される。なお、カセット給紙ローラ8により搬送された記録紙はタイミングローラ10によって、必要に応じて一旦停止される。また、二次転写ローラ11の近傍には記録紙の除電を行う除電布30が設けられている。さらに、手差しによって記録紙を供給する場合に、当該記録紙をタイミングローラ10へ搬送する手差し給紙ローラ9が設けられている。
【0017】
記録紙上に二次転写されたトナー像は定着ローラ12aによって定着される。定着ローラ12aに対向し接触するように加圧ローラ12bが設けられている。また、定着ローラ12aの近傍には、当該定着ローラ12aの表面温度を検出する温度センサTSが設けられ、定着ローラ12aの内部には当該定着ローラ12aを加熱する定着ヒータTHが設けられている。なお、定着ローラ12aの上流側には定着ループセンサ27が設けられている。
【0018】
定着後の記録紙は、排紙ローラ13によって排紙トレー上に排出されるか、両面搬送経路29へ搬送される。両面搬送経路29は上記のタイミングローラ10に通じる経路につながっている。両面搬送経路29には、両面搬送ローラ14a、14bが設けられており、両面搬送モータ22がこれらの両面搬送ローラ14a、14bを駆動することで、両面搬送経路29上の記録紙がタイミングローラ10へ搬送される。
【0019】
上で述べた2次転写で転写しきれずに中間転写ベルト2上に残留しているトナー(転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ7によって除去され回収される。つまり、2次転写の後で、中間転写ベルトクリーナ7によって中間転写ベルト2の表面が清掃される。なお、中間転写ベルトクリーナ7として、本実施形態では、中間転写ベルト2に対して圧接と離間との間を移動可能に設けられたクリーニングブレード方式のものを用いるが、これ以外に、中間転写ベルト2に対して印加される電圧がオンオフ制御されるブラシ方式のもの等、種々の方式または機構のものを用いることが可能である。転写残トナーは、廃トナーボックス15に回収される。
【0020】
カートリッジ28の上方には、攪拌羽26を動作させることでトナーを補給するトナーボトル25が設けられている。また、攪拌羽26a、26bを動作させるトナー補給モータ23および攪拌羽26c、26dを動作させるトナー補給モータ24が設けられている。また、カラーPCモータ17、メインモータ18、定着モータ19、カラー現像モータ20、および現像モータ21が設けられている。
【0021】
画像形成装置1は、図2に示すように、主な機能的構成として、画像処理部42およびエリアテーブル43によって構成される画像制御部44、算出比較部46、認証部47、画像回転部49、レーザダイオード(LD)駆動部50、全体制御部51、ならびにタイマ部52を含む。
【0022】
画像形成装置1に備えられているCPUがRAMまたはROMに格納されているプログラムを実行することによって、上記の画像制御部44、算出比較部46、認証部47、画像回転部49、全体制御部51、およびタイマ部52の全部またはその一部が機能的に実現されている。このようなプログラムは、当該プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体BT1や半導体メモリ等の記録媒体BT2を含む可搬型の記録媒体BTからインストールすることが可能である。また、ネットワークを介してサーバからプログラムをダウンロードすることも可能である。
【0023】
また、画像制御部44、算出比較部46、認証部47、画像回転部49、全体制御部51、およびタイマ部52の全体または一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などとしてLSI化され、ファームウェアまたはハードウェアによって実現されることもある。
【0024】
画像処理部42は、LANなどの通信回線に接続されたインタフェース部40によって受信されたプリントジョブに係る画像データGD、または読み取り部(スキャナ)41によって原稿が読み取られて生成された画像データGDを取得する。画像処理部42は、取得した画像データGDを感光体3に画像を書き込むためのレーザ信号に変換する。また、画像処理部42は画像データGDから認証プリントジョブであることを示す情報の有無を判別し、認証プリントジョブであることを示す情報が存在する場合には、操作パネル48の液晶ディスプレイ等からなる表示部にユーザIDの入力要求の画面を表示させる。認証部47はユーザにより入力されたユーザIDとデータベースに予め登録されている情報とを比較してユーザ認証を行う。なお、認証プリントジョブとは、端末装置等からプリントジョブを画像形成装置1に送信したユーザが、当該画像形成装置1に対して所定の認証操作(例えばユーザID等の入力操作)を行って、認証処理が成功した場合に、当該プリントジョブの実行を開始するジョブである。
【0025】
エリアテーブル43は、画像処理部42によって変換されたレーザ信号をカウントし、カウントしたレーザ信号をドットカウントとして蓄積する。つまり、ドットカウントは、記録紙に形成される色ドット(オンドット)の個数であり、したがって、記録紙に転写されるトナーの量を示すものである。
【0026】
ここで、エリアテーブル43は上記ドットカウントを記憶する15個のエリア(エリア1〜6およびエリア11〜19)を有する。本実施形態では、A3サイズの記録紙の全体領域を短辺(297mm)方向に6等分し、長辺(420mm)方向に9等分した場合に、エリア1〜6の各々は6等分された各領域のドットカウントをそれぞれ記憶し、エリア11〜19の各々は9等分された各領域のドットカウントをそれぞれ記憶する。
【0027】
画像制御部44にはハードディスク45が接続されている。ハードディスク45は各頁ごとの画像データGDおよび上記ドットカウントなどを保存する。
【0028】
算出比較部46は記録紙の端部と画像端部との距離などを算出する。画像回転部49は算出比較部46による算出比較結果に基づいて画像データGDを回転する。詳細は後で述べる。
【0029】
レーザダイオード駆動部50は、画像回転部49による回転後の画像に係る画像データGDに基づいてレーザダイオードの駆動信号を生成し、生成した駆動信号によって露光装置6のレーザダイオードを駆動する。全体制御部51は、タイマ部52による時間の計測に基づいてカセット給紙ローラ8、定着ヒータTH、その他の構成部の動作を制御する。
【0030】
図3に示すように、A4サイズの記録紙S上にトナーが転写されている領域、つまり、画像が形成されている領域である画像領域GRが存在する。図3では、記録紙S上に形成される画像を正立の状態で見ると、画像領域GRは全体領域の左上方向に偏って存在している。
【0031】
同図のエリアデータ1は、各エリア1〜6ごとに転写されているトナー量(ドットカウント)のヒストグラムを示している。本例では、エリア2、3、4にトナーが転写されていることがわかる。なお、ドットカウントを検出する代わりに、コンデンサにオンデータを蓄積しておき、その放電時間を測定することによってオンデータの数(量)を算出してもよいし、画像処理する際にソフトウエアでオンデータの数を測定するなど、種々の公知の方法を用いてもよい。
【0032】
また、同図のエリアデータ2は、各エリア11〜19ごとに転写されているトナー量(ドットカウント)のヒストグラムを示している。本例では、エリア12、13、14、15、16にトナーが転写されていることがわかる。
【0033】
エリアデータ1およびエリアデータ2の各ヒストグラムにはそれぞれ閾値K、Lが設定されている。本実施形態では、ドットカウントが上記の閾値K、L以下である場合には、転写されているトナー量が十分少ないので、定着する必要がないエリアであると判断される。なお、厳密には、トナー量(転写量)そのものを検出することは困難であるので、感光体3へのレーザ露光量と、トナーの現像量と、トナー量(転写量)とは等しいと言い難いが、レーザ露光量から現像効率を考慮して変換した値を現像量とし、転写効率を考慮して当該現像量を変換した値をトナー量(転写量)として用いてもよい。
【0034】
図4(A)、(B)に示すように、画像データGDに基づく画像をA4サイズの記録紙Sに印刷する場合に、当該記録紙Sに形成される画像の画像領域GRの位置を変えることで、ファーストプリントタイムが異なってくる。なお、ファーストプリントタイムとは、最初の複写物が排紙トレー上に排出されるまでの時間である。
【0035】
すなわち、図4(A)において、画像形成装置1がスリープモード中(例えば、定着ローラ12aの温度が画像形成装置1の設置環境と同じ30℃である場合)において、時刻t1でプリント指示があると、定着ヒータTHがオンされ、定着ローラ12aの温度が上昇していく。
【0036】
ここで、定着ローラ12aの温度が例えば200℃になったときに記録紙Sの画像領域GRの定着を開始する場合、つまり、定着温度が200℃である場合を考えると、定着ローラ12aの温度上昇と時間との関係を示す上昇カーブZCの傾きから、定着ローラ12aの温度が200℃に達する時刻t4を算出することができる。なお、t4の算出方法は、上記のように環境に応じた上昇カーブZCの関数を用いてもよいし、テーブル(マップ)を用いてもよい。
【0037】
すると、1枚目の記録紙Sの画像領域GRの先端部が、上記の時刻t4に、ニップ部(定着ローラ12aおよび加圧ローラ12b間の接触部)に到達するのに必要な時間Tを、記録紙Sの搬送速度や搬送距離等に基づいて算出することができる。
【0038】
このように算出した時刻t4および時間Tから、記録紙Sの給紙を開始する時刻t3(=t4−T)を算出することが可能となる。なお、記録紙Sはタイミングローラ10によって必要に応じて一旦停止されるので、実際には上記の時刻t3よりも前に給紙が開始される。
【0039】
一方、図4(B)において、画像領域GRの画像を、記録紙Sの中心(全体領域の中心)を基準として時計回りに180度回転させた場合には、200℃で定着するために1枚目の記録紙Sの画像領域GRの先端部が時刻t4にニップ部に到達する必要があることは上記と同じであっても、上記の時刻t3よりも前の時刻である時刻t2において記録紙Sの給紙を開始することが可能となる。
【0040】
すなわち、記録紙Sを、画像領域GRが存在しない距離X2(>X1)の大きい側からニップ部に搬送することによって、画像領域GRの定着が終了したあとに記録紙Sが定着ローラ12aを通過し終わるまでの時間を短縮することができる。したがって、ファーストプリントタイムを短縮することが可能となる。
【0041】
一方、図4(A)の例では、画像領域GRが存在しない距離X2の大きい側が搬送方向に対して後方側にある、つまり、画像領域GRが存在しない距離X1の小さい側から記録紙Sが搬送されるので、画像領域GRの定着が終了したあとに記録紙Sが定着ローラ12aを通過し終わるまでの時間は図4(B)の例よりも長くなってしまう。その結果、ファーストプリントタイムを短縮することができない。
【0042】
次に、上で述べたように、本実施形態において画像データGDを回転する方法について説明する。なお、以下では、A4サイズの記録紙Sを縦方向に通紙する、いわゆるA4プリンタである画像形成装置1(A3サイズの記録紙Sを通紙できないもの)を例として説明する。
【0043】
図5(A)に示すような、例えば2ページ構成の画像データGDに係る画像領域GR1、GR2(正立状態で図示)がある場合に、画像領域GR1、GR2の画像をA4サイズの記録紙Sに画像を形成する方法として、第1制御モードおよび第2制御モードの2つの制御モードがある。
【0044】
第1制御モードでは、定着ヒータTHに通電する時間は比較的短くなるものの、つまり、省エネルギー化を実現することができるものの、ファーストプリントタイムは比較的長くなる。これに対して、第2制御モードでは、定着ヒータTHに通電する時間は比較的長くなるものの、ファーストプリントタイムは比較的短くなる。
【0045】
図5(B)の第1制御モードにおいては、画像領域GR1、GR2の画像に対する定着性能を保証する範囲の長さはA2+B2であるが、一般的に定着ヒータTHとしてハロゲンランプ等を使用すると、定着ローラ12aの温度を一定に保つためにはある程度の時間が必要になることから、A2+A3+C+B1+B2の和である長さL1の分(搬送区間)を搬送する時間においては、定着ローラ12aの温度を所定温度に保つのが一般的である。
【0046】
すなわち、長さL1の分を搬送するのに必要な搬送時間の間、定着ローラ12aの温度を保持する必要がある。なお、Cは第1頁に係る記録紙Sと第2頁に係る記録紙Sとの間隔であり、L1は337mm+Cである。
【0047】
これに対して、図5(C)の第2制御モードでは、上記と同じように求めると、長さL2(=467mm+C)の分(搬送区間)を搬送する時間においては、定着ローラ12aの温度を所定温度に保つ必要がある。
【0048】
ここで、長さA1が例えば20mmであり、長さA3が例えば107mmである場合には、画像領域GRが存在しない領域が大きい側からニップ部に搬送する制御モードである第2制御モードの方がファーストプリントタイムを短縮することができる。
【0049】
本実施形態では、ファーストプリントタイムの短縮が要求される認証プリントジョブを実行する場合には第2制御モードが選択される。つまり、算出比較部46は、上記のL1およびL2を算出することなく、図5(C)のように、A1とA3との比較を行う。認証プリントジョブ以外の例えば通常のプリントジョブを実行する場合には第1制御モードが選択される。
【0050】
図6は画像形成装置1による画像形成処理の全体的な流れの例を説明するフローチャート、図7はプリントスタート判断処理の流れの例を説明するフローチャート、図8は承認処理の流れの例を説明するフローチャート、図9は第1制御モード処理の流れの例を説明するフローチャート、図10は第2制御モード処理の流れの例を説明するフローチャート、図11は給紙制御処理の流れの例を説明するフローチャート、図12は温調制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0051】
図6に示すように、まず、画像制御部44にリセットがかかりプログラムの実行が開始されると、画像制御部44や周辺回路等の初期設定が行われる(#1)。
【0052】
以下、順に、プリントスタート判断処理(#2)、第1制御モード処理(#3)、第2制御モード処理(#4)、給紙制御処理(#5)、温調制御処理(#6)、およびその他の処理(#7)が実施される。なお、プリントスタート判断処理(#2)、第1制御モード処理(#3)、第2制御モード処理(#4)、給紙制御処理(#5)、および温調制御処理(#6)の詳細な内容については順次後で述べる。
【0053】
#7の処理が終了すると、所定時間が経過したか否かが判別される(#8)。この場合、図2のタイマ部52によって計測される基準時間の経過(#8でYes)を待って1ルーチンが終了する。なお、基準時間は例えば10msに設定されており、画像形成装置1を制御する他のタイマ類は当該基準時間の倍数でカウントされる。
【0054】
プリントスタート判断処理の手順は、図7に示す通りである。すなわち、図7において、まず、ジョブが認証プリントジョブであるか否かが判別される(#11)。認証プリントジョブでない場合(#11でNo)、つまり、ジョブが通常のプリントジョブ等である場合には、第1制御モードの実行が開始される(#12)。
【0055】
これに対して、ジョブが認証プリントジョブである場合には(#11でYes)、承認処理が実行される(#13)。承認処理の手順は、図8に示す通りである。
【0056】
すなわち、図8において、まず、ユーザによる操作パネル48のテンキー等の操作によって例えば4桁のユーザIDの全桁が入力されたか否かが判別される(#21)。なお、テンキー等による入力の代わりに、指紋認証や静脈認証等の認証システムを用いてもよい。
【0057】
4桁のユーザIDが入力されると(#21でYes)、入力されたユーザIDとデータベース(DB)に予め登録された情報とが認証部47によって比較され(#22)、入力されたユーザIDと同じ情報が登録されていると(#23でYes)、承認される(#24)。一方、入力されたユーザIDと同じ情報が登録されていない場合には(#23でNo)、未承認とされる。
【0058】
図7に戻って、上記のように承認されると(#14でYes)、第2制御モードの実行が開始される(#15)。
【0059】
第1制御モード処理の手順は、図9に示す通りである。すなわち、図9において、第1制御モード処理の開始として(#31でYes)、まず、算出比較部46によって定着性能保証エリア、つまり、図5(B)のように、A2+A3+C+B1+B2が算出され、当該算出結果がL1として保持される(#32)。次に、算出比較部46によって、図5(C)のように、A2+A1+C+B3+B2が算出され、当該算出結果がL2として保持される(#33)。
【0060】
そして、L1がL2以下である場合には(#34でYes)、画像回転部49によって画像が画像データGDの全体領域の中心を基準として時計回りに270度回転される(#35)。一方、L1がL2よりも大きい場合には(#34でNo)、画像が90度回転される(#36)。これにより、定着性能保証エリアの小さい方を選択し、省エネルギー化を実現する。
【0061】
第2制御モード処理の手順は、図10に示す通りである。すなわち、図10において、第2制御モード処理の開始として(#41でYes)、まず、図5(A)のように、算出比較部46によってA1とA3との長さが比較され、A3がA1以下である場合には(#42でYes)、画像が270度回転される(#43)。一方、A3がA1よりも大きい場合には(#42でNo)、画像が90度回転される(#44)。このように、記録紙Sの先端部から画像領域GRの画像の先端部までの距離が長い方の側から記録紙Sを定着ローラ12aのニップ部に供給することによって、上で述べたように給紙開始のタイミングを早めることができる。画像データGDの回転によって、記録紙S上における画像の位置および姿勢が適切になるとともに、通紙方向について、画像の存在しない距離の大きい側から記録紙Sが定着ローラ12aに搬入される。したがって、ファーストプリントタイムの短縮を実現することができる。なお、画像データGDの回転角度θは、元の画像データGDの方向、記録紙Sの方向などに応じて異なることがある。
【0062】
給紙制御処理の手順は、図11に示す通りである。すなわち、図11において、まず、全体制御部51によって定着ローラ12aの現在の温度から定着温度(例えば200℃)に達する時刻t4が算出される(#51)。そして、1枚目の記録紙Sの画像領域GRの先端部が時刻t4にニップ部に到達するのに必要な時間Tが全体制御部51によって算出される(#52)。
【0063】
このように算出した時刻t4および時間Tから、記録紙Sの給紙を開始する時刻t3(=t4−T)が算出され、時刻がt3になったときに給紙が開始されるよう全体制御部51によってカセット給紙ローラ8の動作が制御される(#53)。但し、t4−Tが負の値の場合、つまり定着ローラ12aの温度が最初から高い場合等には、即時に給紙が開始される。
【0064】
温調制御処理の手順は、図12に示す通りである。すなわち、図12において、まず、プリントジョブ(プリント指示)があると(#61でYes)、全体制御部51によって定着ヒータTHがオンされ温調制御が開始される(#62)。
【0065】
次に、プリントジョブに係る最終頁の画像領域GRの画像後端部が定着ローラ12aのニップ部を通過し終わると(#63でYes)、全体制御部51によって定着ヒータTHがオフされる(#64)。
【0066】
[本実施形態における効果]
本実施形態では、認証プリントジョブを受信した場合に、画像領域GRが存在しない領域が大きい側からニップ部に搬送されるように画像を回転することによって、画像領域GRの定着が終了したあとに記録紙Sが定着ローラ12aを通過する時間を短縮することができる。これにより、ファーストプリントタイムを短縮することが可能となる。したがって、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0067】
また、本実施形態では、通常のプリントジョブを受信した場合には、上で述べたように、省エネルギー化を重視した印刷を行うことができる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によると、認証プリントジョブを実行する場合等においてファーストプリントタイムを短縮することが可能となる。
【0069】
[他の実施形態]
図13は通紙可能サイズに基づいて制御モードを選択する方法の例を説明するための図である。
【0070】
上記実施形態では、A3サイズの記録紙Sを通紙できない画像形成装置1について説明した。本発明をA3サイズの記録紙Sを通紙可能な画像形成装置で実施する場合には、A4サイズの記録紙Sを縦方向および横方向のどちらでも通紙可能となるので、画像を90度、180度または270度回転することによって、以下のようにファーストプリントタイムの短縮を適切に行うことができる。
【0071】
例えば、第2制御モード(ファーストプリントタイムを短縮するモード)の場合、図13(A)に示すように、記録紙Sの各端部から画像領域GRの各端部までの距離A、B、C、Dをそれぞれ比較する。画像形成装置1がA3サイズの記録紙Sを通紙できないものであれば、図13(B)に示すように縦方向に通紙する方法が選択される。この場合、画像は時計回りに90度回転される。
【0072】
一方、画像形成装置1がA3サイズの記録紙Sを通紙できるものであれば、図13(C)に示すように横方向に通紙する方法が選択される。この場合、画像を180度回転することによって、ファーストプリントタイムの更なる短縮を実現することが可能となる。
【0073】
また、第1制御モード(省エネルギー化を実現するモード)の場合には、上記の第2制御モードと同じように、画像を90度、180度または270度回転することによって、省エネルギー化が最適に実現されたプリントが可能となる。
【0074】
さらに、オプションとしてのステープル、パンチ穴あけ、バインド等の機能を有する排紙装置が備わった画像形成装置に本発明を適用することも可能である。ステープル機能等を有する画像形成装置においては、ステープルを施す記録紙S上の位置(左上部、側部等)やそのときの画像位置等が予め決められていることが多い。したがって、この場合には、認証プリントジョブがある場合でも、画像回転の処理を行わずに通常モード(上記実施形態では、省エネルギー化を実現する第1制御モード)でプリントすることも可能である。
【0075】
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理内容、処理順序等は、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが可能であり、この場合にも上記の特有かつ格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略の構成の例を示す図である。
【図2】画像形成装置の機能的構成の例を示す図である。
【図3】画像位置の検出方法の例を説明するための図である。
【図4】ファーストプリントタイムの短縮を説明するための図である。
【図5】画像を回転する処理を説明するための図である。
【図6】画像形成装置による画像形成処理の全体的な流れの例を説明するフローチャートである。
【図7】プリントスタート判断処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図8】承認処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図9】第1制御モード処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図10】第2制御モード処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図11】給紙制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図12】温調制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図13】通紙可能サイズに基づいて制御モードを選択する方法の例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0077】
1 画像形成装置
2 中間転写ベルト(画像形成手段)
6 露光装置(画像形成手段)
8 カセット給紙ローラ(搬送手段)
11 二次転写ローラ(画像形成手段)
12a 定着ローラ(定着手段)
42 画像処理部(取得手段)
44 画像制御部
46 算出比較部(第1算出手段)
47 認証部(認証手段)
49 画像回転部(画像回転手段)
51 全体制御部(第2算出手段、制御手段)
GD 画像データ
GR 画像領域
L1、L2 搬送区間
S 記録紙
TH 定着ヒータ
TS 温度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて当該画像データの領域における画像の位置を算出する第1算出手段と、
前記画像を記録紙に形成する画像形成手段と、
前記記録紙に形成された画像を予め設定された定着温度で定着する定着手段と、
前記定着手段に前記記録紙を搬送する搬送手段と、
前記記録紙の搬送方向において前記画像が存在しない距離が大きい側から前記記録紙が前記定着手段に搬送されるように、前記第1算出手段による算出結果に基づいて前記画像データを回転する画像回転手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像データに係るプリントジョブを取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記プリントジョブが、プリントジョブを外部から入力したユーザの認証に成功したときに実行する認証プリントジョブである場合に、前記ユーザによる所定の操作に基づいて認証を行う認証手段と、を有し、
前記画像回転手段は、前記認証手段によって前記ユーザの認証が成功したと判定された場合に、前記第1算出手段による算出結果に基づいて前記画像データを回転する、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着手段の現在の温度が前記定着温度に達する時刻、および前記記録紙に形成された画像の先端部が当該時刻に前記定着手段に到達するのに必要な時間を算出し、算出した当該時刻および当該必要な時間に基づいて、前記搬送手段による前記記録紙の搬送を開始すべき時刻を算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段によって算出された、搬送を開始すべき時刻になったときに、前記搬送手段を駆動する制御手段と、を有する、
請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着手段は、前記画像データが複数頁からなる構成を有する場合に、最初の頁における画像の搬送方向における先端部から、最終の頁における画像の搬送方向における後端部までの連続した搬送区間において加熱され、
前記画像回転手段は、前記取得手段によって取得された前記プリントジョブが前記認証プリントジョブでない通常のプリントジョブであり、かつ、当該通常のプリントジョブに係る画像データが複数頁からなる構成を有する場合に、前記搬送区間が最小となるように、前記第1算出手段による算出結果に基づいて複数の前記画像データを回転する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像データに基づいて当該画像データの領域における画像の位置を算出する第1算出ステップと、
記録紙の搬送方向において前記画像が存在しない距離が大きい側から当該記録紙が定着手段に搬送されるように、前記第1算出ステップにおける算出結果に基づいて前記画像データを回転する画像回転ステップと、
前記回転された前記画像データに基づく画像を記録紙に形成する画像形成ステップと、
前記定着手段に前記画像が形成された記録紙を搬送する搬送ステップと、
前記記録紙に形成された画像を予め設定された定着温度で定着する定着ステップと、
を有することを特徴とする画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−294255(P2009−294255A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145042(P2008−145042)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】