説明

画像形成装置の故障診断方法および装置

【課題】
複数の画像形成装置で生じた故障に関する情報を利用し、適切な故障診断を行うことのできる画像形成装置の故障診断方法および装置を提供する。
【解決手段】
複数の画像形成装置1(1−1〜1−n)のそれぞれで発生した故障に関する故障情報を管理装置2で収集して統合し、該統合した故障情報を画像形成装置1(1−1〜1−n)のそれぞれに配布し、画像形成装置1(1−1〜1−n)のそれぞれが、該配布された故障情報に基づいて故障診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の故障診断方法および装置に関し、特に、複数の画像形成装置を管理している際に、それぞれの画像形成装置での故障診断を補助する画像形成装置の故障診断方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複合機等の画像形成装置は、部品の経年劣化や摩耗等により異常が生じ、故障状態となることがある。故障の多くは、該当する部品を交換することで正常な状態に回復することが可能であるが、部品交換等を行う際には、その交換対象となる部品の特定を作業者の経験に基づく推測で行うことが多かった。
【0003】
しかしながら、作業者の経験に頼った推測では、交換する部品の特定が適切であるとは限らないため、近年では、平常時に出力される部品の状態情報と異常時に出力される状態情報とに基づいて、故障診断を行う故障診断装置等が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−28363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置に生じる故障は、部品の経年劣化や摩耗等に起因するものが多い。したがって、同じ機種の画像形成装置であれば、同様の使用状態で、同様の異常が発生することが考えられる。
【0005】
しかしながら、従来の故障診断装置では、対象となる画像形成装置の情報にのみ基づいて故障診断を行っている。
【0006】
そこで、本発明は、複数の画像形成装置で生じた故障に関する情報を利用し、適切な故障診断を行うことのできる画像形成装置の故障診断方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、複数の画像形成装置を管理する管理装置に管理されるそれぞれの画像形成装置が実行する画像形成装置の故障診断方法であって、複数の画像形成装置のそれぞれで発生した故障に関する故障情報を管理装置で収集して統合し、該統合した故障情報を前記画像形成装置のそれぞれに配布し、前記画像形成装置のそれぞれが、該配布された故障情報に基づいて故障診断を行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記画像形成装置は、該画像形成装置の使用状態を管理するとともに、該使用状態に応じた故障の発生確率を前記故障情報として前記管理装置に提供し、前記管理装置から故障上として配布された故障の発生確率を前記使用状態に応じて重み付けし、該重み付けした発生確率に基づいて故障診断を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記管理装置は、前記画像形成装置の交換用部品の出庫情報に基づいて前記故障情報を変更し、該変更した故障情報を前記画像形成装置に配布することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記管理装置は、前記画像形成装置とネットワークを介して接続され、該ネットワークを介して前記故障情報の収集と配布とを行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、複数の画像形成装置を管理する管理装置に管理される画像形成装置で故障診断を実行する画像形成装置の故障診断装置において、画像形成装置で発生した故障に関する故障情報を記憶する故障情報記憶手段と、前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を前記画像形成装置に提供する故障情報提供手段と、前記管理装置が複数の画像形成装置のそれぞれから収集して統合した故障情報を取得する故障情報取得手段と、前記故障情報取得手段が取得した故障情報で前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を更新する故障情報更新手段と、前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報に基づいて、前記画像形成装置の故障を診断する故障診断手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記画像形成装置の使用状態を管理する使用状態管理手段と、前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を、前記使用状態管理手段で管理されている使用状態に応じた故障情報に変換する第1の故障情報変換手段と、前記更新情報取得手段が取得した故障情報を、前記使用状態管理手段で管理されている使用状態に応じて重み付けした故障情報に変換する第2の故障情報変換手段とをさらに具備し、前記故障情報提供手段は、前記第1の故障情報変換手段が変換した故障情報を前記管理装置に提供し、前記故障情報更新手段は、前記第2の故障情報変換手段が変換した故障情報で前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を更新することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項5または6の発明において、前記故障情報取得手段は、画像形成装置の交換用部品の出庫情報に基づいて変更された故障情報を前記管理装置から取得することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項5乃至7のいずれかの発明において、前記故障情報提供手段は、ネットワークを介して前記管理装置に故障情報を提供し、前記故障情報取得手段は、前記ネットワークを介して前記管理装置から故障情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の画像形成装置のそれぞれで発生した故障に関する故障情報を管理装置で収集して統合し、該統合した故障情報を前記画像形成装置のそれぞれに配布し、前記画像形成装置のそれぞれが、該配布された故障情報に基づいて故障診断を行うように構成したので、適切な故障情報に基づいて故障診断を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置の故障診断方法および装置の一実施の形態について、添付図面を参照して、詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明を適用した画像形成装置を含むネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。同図に示すネットワークシステムでは、複数の画像形成装置1(1−1〜1−n)と、これらを管理する管理装置2とがネットワーク3を介して接続されている。なお、ネットワーク3は、単一のネットワークである必要はなく、例えば、インターネットや電話回線を利用したネットワーク等を含んだものであってもよい。
【0018】
ここで、画像形成装置1について説明する。図2は、画像形成装置1の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、RAM(Random Access Memory)11、NVM(Non Volatile Memory)12、通信装置13、複数のセンサ14(14−1〜14−p)、複数の駆動部15(15−1〜15−q)を具備して構成される。
【0019】
CPU10は、プログラムに基づいて動作し、他の各部の制御や画像変換処理等を行って、画像形成装置1に画像成形動作を行わせる。RAM11は、一時的にデータを記憶するメモリであり、画像データを記憶したり、CPU10が動作する際の作業領域として利用される。NVM12は、不揮発性のメモリであり、CPU10を動作させるためのプログラムや、画像生成装置1の使用状態、故障情報等を記憶する。通信装置13は、ネットワーク3とのインタフェイスであり、ネットワーク3を介して各種データの送受信を行う。センサ14は、それぞれ、画像形成装置1の各部の状態を検出するもので、例えば、時間、電流値、振動、音、温度、湿度、光量等を検出する。駆動部15は、それぞれ、画像形成装置1を動作させるためお構成であり、例えば、モータ、ソレノイド、ローラ、光源等である。
【0020】
次に、画像形成装置1の動作を説明する。図3は、画像形成装置1の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像形成装置1は、故障診断部100と、故障情報管理部101、使用状態情報管理部102、故障情報加工部103、故障情報送受信部104を具備して構成される。なお、図3においては、本発明を適用した画像形成装置1に関係する機能部のみを示している。
【0021】
故障診断部100は、NVM12に記憶されているプログラムに基づいてCPU10が動作することにより実現するもので、画像形成装置1に発生した異常の状態から故障個所の診断を行う。この診断は、例えば、ベイジアンネットワーク(Bayesian Network)に基づいて行われる。この診断に用いるベイジアンネットワークは、例えば、図4に示すように表現することができるもので、電流やタイミング時間、温度、湿度等のセンサ14が検出した値が異常であった場合に、その原因となる駆動部15を特定するものである。この駆動部15の特定に際しては、故障情報管理部101が管理している故障の確率を示す故障情報が利用される。なお、センサ14が検出した値(観測データ)が異常であるか否かの判断は、例えば、図5に示すように閾値に基づいて判断する。
【0022】
故障情報管理部101は、NVM12の領域の一部を利用して実現するもので、故障情報を記憶する。故障情報は、画像形成装置1における故障確率を表すデータであり、故障診断部100がベイジアンネットワークに基づいて診断を行う場合には、各ノード(図4において矢印で結ばれているもの)に割り当てる故障確率である。
【0023】
使用状態情報管理部102は、NVM12の領域の一部を利用して実現するもので、画像形成装置1の使用状態を示す使用状態情報を管理する。使用状態情報は、画像形成装置1の使用時間や画像形成枚数等の情報である。
【0024】
故障情報加工部103は、NVM12に記憶されているプログラムに基づいてCPU10が動作することにより実現するもので、故障情報の加工を行う。故障情報加工部103が行う故障情報の加工には、2通りの処理があり、1つは、故障情報管理部101が管理している故障情報を複数の画像形成装置1で共用できる情報に加工する処理で、もう1つの処理は、複数の画像形成装置1で共用できる故障情報を、故障情報管理部101で管理する情報(自機用の情報)に加工する処理である。これらの加工処理は、使用状態情報管理部102が管理している使用状態情報を利用して行う。例えば、複数の画像形成装置1で共用できる情報への加工は、故障情報管理部101で管理する故障情報と使用状態情報に基づいて、画像形成装置1の単位使用時間当たりの故障確率や、単位画像形成枚数当たりの故障確率等の使用状態に依存しない故障確率を算出することで行う。また、自機用の故障情報への加工は、使用状態に依存しない故障確率に対して、使用状態情報に基づく重み付けを行うことで行う。
【0025】
故障情報送受信部104は、通信装置13により実現するもので、故障情報加工部103が加工した故障情報を管理装置2へ送信するとともに、管理装置2から配信される故障情報を受信して故障情報管理部103へ渡す処理を行う。
【0026】
続いて、故障情報の流れについて説明する。図6は、故障情報の流れを示した図である。故障情報管理部101が管理する故障情報201は、故障情報加工部103により、複数の画像形成装置1で共用化できる使用状態に非依存の故障情報202に加工されて、管理装置2へ送信される。なお、故障情報管理部101が管理する故障情報201は、その初期値として、各構成部品の平均故障間隔(MTBF)等を利用することができる。
【0027】
管理装置2では、複数の画像形成装置1から送信された故障情報202に対して、統計処理を行う等して、複数の故障情報202を故障情報203に統合する。また、この処理に際しては、管理装置2では、画像形成装置1の交換部品の出庫状況210を加味するようにすることもできる。これは、交換部品の出庫状況が故障の発生に関連しているためである。
【0028】
管理装置2で生成された故障情報203は、画像形成装置1へ配信され、故障情報加工部103で、当該画像形成装置1に適合した故障情報204に加工され、故障情報管理部101に記憶される。これにより、画像形成装置1では、他の画像形成装置1の故障情報を反映した故障情報を利用することが可能となり、より的確な故障診断を行うことができる。その結果、作業者の経験が浅い場合であっても、質の高い故障診断を行うことが可能となる。
【0029】
なお、故障情報の管理装置2への収集や管理装置2からの配信は、任意のタイミングで行うことができるが、通常は、画像形成装置1が待機中である場合などの負荷の少ない状態で実行されることとなる。
【0030】
ところで、上述の説明では、画像形成装置1と管理装置2がネットワーク3を介して接続されている場合を説明したが、画像形成装置1は、管理装置2と通信が不可能な場合であっても、作業者等がメモリ等のメディアに故障情報を格納して収集および配信を行うことで、同様の処理を実行することができる。この場合には、画像形成装置1は、通信装置13に代えて、メディアのリーダライタ若しくはリーダライタとのインタフェイスが配されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を適用した画像形成装置を含むネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置1の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】ベイジアンネットワークの構成例を示した図である。
【図5】観測データに基づく異常検出を説明するための図である。
【図6】故障情報の流れを示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1、1−1〜1−n 画像形成装置
2 管理装置
3 ネットワーク
10 CPU
11 RAM
12 NVM
13 通信装置
14−1〜14−p センサ
15−1〜15−q 駆動部
100 故障診断部
101 故障情報管理部
102 使用状態情報管理部
103 故障情報加工部
104 故障情報送受信部
201 故障情報
202 故障情報
203 故障情報
204 故障情報
210 出庫状況

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成装置を管理する管理装置に管理されるそれぞれの画像形成装置が実行する画像形成装置の故障診断方法であって、
複数の画像形成装置のそれぞれで発生した故障に関する故障情報を管理装置で収集して統合し、該統合した故障情報を前記画像形成装置のそれぞれに配布し、前記画像形成装置のそれぞれが、該配布された故障情報に基づいて故障診断を行うことを特徴とする画像形成装置の故障診断方法。
【請求項2】
前記画像形成装置は、該画像形成装置の使用状態を管理するとともに、該使用状態に応じた故障の発生確率を前記故障情報として前記管理装置に提供し、前記管理装置から故障上として配布された故障の発生確率を前記使用状態に応じて重み付けし、該重み付けした発生確率に基づいて故障診断を行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置の故障診断方法。
【請求項3】
前記管理装置は、前記画像形成装置の交換用部品の出庫情報に基づいて前記故障情報を変更し、該変更した故障情報を前記画像形成装置に配布することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置の故障診断方法。
【請求項4】
前記管理装置は、前記画像形成装置とネットワークを介して接続され、該ネットワークを介して前記故障情報の収集と配布とを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置の故障診断方法。
【請求項5】
複数の画像形成装置を管理する管理装置に管理される画像形成装置で故障診断を実行する画像形成装置の故障診断装置において、
画像形成装置で発生した故障に関する故障情報を記憶する故障情報記憶手段と、
前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を前記画像形成装置に提供する故障情報提供手段と、
前記管理装置が複数の画像形成装置のそれぞれから収集して統合した故障情報を取得する故障情報取得手段と、
前記故障情報取得手段が取得した故障情報で前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を更新する故障情報更新手段と、
前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報に基づいて、前記画像形成装置の故障を診断する故障診断手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置の故障診断装置。
【請求項6】
前記画像形成装置の使用状態を管理する使用状態管理手段と、
前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を、前記使用状態管理手段で管理されている使用状態に応じた故障情報に変換する第1の故障情報変換手段と、
前記更新情報取得手段が取得した故障情報を、前記使用状態管理手段で管理されている使用状態に応じて重み付けした故障情報に変換する第2の故障情報変換手段と
をさらに具備し、
前記故障情報提供手段は、前記第1の故障情報変換手段が変換した故障情報を前記管理装置に提供し、
前記故障情報更新手段は、前記第2の故障情報変換手段が変換した故障情報で前記故障情報記憶手段に記憶されている故障情報を更新する
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置の故障診断装置。
【請求項7】
前記故障情報取得手段は、画像形成装置の交換用部品の出庫情報に基づいて変更された故障情報を前記管理装置から取得することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置の故障診断装置。
【請求項8】
前記故障情報提供手段は、ネットワークを介して前記管理装置に故障情報を提供し、
前記故障情報取得手段は、前記ネットワークを介して前記管理装置から故障情報を取得する
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の画像形成装置の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94098(P2006−94098A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276624(P2004−276624)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】