画像形成装置
【課題】残留電位検知を行う場合にも、光源の耐久性を下げることなく、像担持体(感光体)の露光量に対する潜像電位の特性の変化を検知し、最適な帯電電位・露光パワーを設定する制御を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体201上へ露光する露光手段である光走査装置100と、該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、像担持体の帯電電位を変更する手段202と、露光後の像担持体の電位を検知する電位検知手段203と、電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、を有する画像形成装置において、画像形成時の露光条件(条件A)と、電位検知時の露光条件(条件B)とで、像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替える制御を行う。
【解決手段】像担持体201上へ露光する露光手段である光走査装置100と、該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、像担持体の帯電電位を変更する手段202と、露光後の像担持体の電位を検知する電位検知手段203と、電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、を有する画像形成装置において、画像形成時の露光条件(条件A)と、電位検知時の露光条件(条件B)とで、像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替える制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関し、特に光走査方法及び画像形成方法に特徴を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置では、ある所定のタイミング(電源投入時や所定時間,または所定枚数毎)に、像担持体である感光体上に潜像パターンを潜像電位を変化させながら露光し、潜像電位を電位計で検知し、その潜像を現像したトナーパターンを光学的な濃度センサ(以下、Pセンサと記述する場合がある)により検知を行って、常に狙いの画像濃度が得られる様に調整する画像濃度制御が実用化されている。
また、画像濃度制御を行うタイミングでは、感光体の露光量に対する潜像電位の特性(以下光減衰特性と記述する場合がある)が変化したことを検知し、検知結果をフィードバックして最適な帯電電位や露光パワー等を設定する制御が行われている。
【0003】
一例として特許文献1(特許第4248228号公報)に示されている感光体の光減衰特性が変化したことを補正する方法を挙げる。
露光装置のレーザー制御部を介して半導体レーザーのレーザー発光パワーを最大光量となるように制御し、電位計の出力値を取り込むことにより感光体ドラムの残留電位を検出する。なお、本来は帯電・露光・現像・転写・クリーニング・除電プロセスを経た後の電位を残留電位と呼ぶが、ここではシステムの構成上、電位計が露光・現像間にあるため、除電プロセスの代わりに、最大光量を露光し、露光後の電位を残留電位として検出している。
そして、その残留電位が0でない時には、帯電電位Vd、露光電位VL、現像バイアスVBに対してその残留電位Vr分の補正を行って目標電位とする。
【0004】
その後、各色並行して感光体ドラムの帯電装置による帯電電位Vdが上記目標電位になるように電源回路を調整し、レーザー制御部を介して半導体レーザーにおけるレーザー発光パワーを感光体ドラムの表面電位VLが上記目標電位になるように調整し、かつ、黒現像装置、シアン現像装置、マゼンタ現像装置、イエロー現像装置の各現像バイアス電位VBがそれぞれ上記目標電位になるように電源回路を調整する。
【0005】
ここで、例えばチタニルフタロシアニン結晶を用いた感光体の光減衰特性は、図9〜図11に示すように使用環境・静電疲労・膜厚によって特性が異なる。実機内ではクリーニングブレードによる膜削れや静電疲労・使用環境が全て異なってくるため、上記電位制御により感光体の露光量に対する潜像電位の特性の変化を検知し、作像条件にフィードバックすることは重要なことである。
【0006】
しかしながら、半導体レーザーの発光パワーを必要以上に高くすることは、レーザーの耐久性にとっては好ましくないものである。また、高生産を狙ってプロセス線速が上がると残留電位を検知するためのレーザーの出力もさらに高く設定する必要があり、レーザーにとって負担が大きいものとなる。
【0007】
また、近年では高生産性・高画質化(高密度書込み)が求められており、その両立が課題となっている。その手法としてポリゴンスキャナを高回転化させることが考えられるが、この方法では、ポリゴンスキャナにおける騒音の増大、消費電力の増大、及び耐久性の低下を生じてしまう。
【0008】
また、高生産性と高密度化を両立させる他の手法として光源から射出される光束のマルチビーム化がある。そこで、近年では垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の2次元アレイを用いる方式が使用されつつある。この方式では、消費電力が従来の端面発光レーザに比べて一桁程度小さく、より多くの光源(発光部)を容易に二次元的に集積することが可能である。本方式によるマルチビーム化により、高生産性(高プロセス線速)対応が可能な他、ポリゴンスキャナの回転数も下げられるというメリットがある反面、面発光レーザーアレイは発光出力が低く、出力を上げると劣化しやすいという課題がある。
【0009】
ここで、残留電位が基準値となるような光をあてなければならない理由について説明する。
画像形成装置が必要なベタ濃度を得るためには、図9に示す画像濃度測定結果(Pパターンで電位・付着量を検知し、算出した現像γ・現像開始電圧Vk)から、必要な現像ポテンシャルを得られる作像条件(帯電電位・現像バイアス・露光パワーの組み合わせ)を設定する必要がある。
【0010】
(1)しかしながら、図10に示すように、環境によって、同じ帯電電位、同じ露光パワー(図は露光エネルギーが横軸であるが、露光パワーと読み変えてもよい)でも感光体の表面電位が異なることがある(この図では数十ボルトであるが、感光体の構成によっては100V以上異なることもある)。
【0011】
(2)また、長時間帯電・露光を繰り返すと(簡単に言い換えると何十万枚も作像すると)、感光体が帯電や露光の繰り返しで特性が劣化する。それを試験したのが図11である。図11の意味するところは、たくさん作像すると、感光体が劣化(静電疲労)して同じ帯電電位で同じ露光パワーを設定しても、感光体の表面電位が下がりにくくなるということである。
【0012】
(3)さらに、長時間作像を繰り返すと、転写されないで残ったトナーを感光体からクリーニングする感光体クリーニングブレードが、トナーだけでなく、感光体の表面も少しずつ削っていく。それにより感光体の表面の厚さ(感光体膜厚と呼ぶ)が減ってくる。その時の特性を表したのが図12である。膜厚が変化しても、同じ帯電電位で同じ露光パワーを設定した時に感光体表面電位が変わるということを図12は意味している(実際には、35μm→17μmに変化する前に交換してしまう)。
【0013】
上記の(1)〜(3)の理由により、所定の露光パワーで、どの位感光体の特性が変わったか検知する必要がある。そこで、検知した感光体表面電位が高い場合、帯電電位を高くして、必要な現像ポテンシャルを設定できる条件に設定する等の制御を行う。なぜ、強い光を当てているかと言うと、設定した帯電電位で露光パワーを大きくした場合、どの位の現像ポテンシャルを設定できるかを求めるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、前述した残留電位検知を行う場合にも、光源の耐久性を下げることなく、像担持体(感光体)の露光量に対する潜像電位の特性の変化を検知し、最適な帯電電位・露光パワーを設定する制御を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、像担持体上へ露光する露光手段である光走査装置と、該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、前記像担持体の帯電電位を変更する手段と、露光後の前記像担持体の電位を検知する電位検知手段と、該電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、を有する画像形成装置において、画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、前記像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることを特徴とする(請求項1)。
【0016】
第2の解決手段は、第1の解決手段の画像形成装置において、前記条件Aに比べ前記条件Bでは、前記光走査装置による走査線の重なりが大きくなることを特徴とする(請求項2)。
また、第3の解決手段は、第2の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行うことを特徴とする(請求項3)。
また、第4の解決手段は、第2の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいことを特徴とする(請求項4)。
【0017】
第5の解決手段は、第1〜第4のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記像担持体の回転速度(副走査速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする(請求項5)。
また、第6の解決手段は、第1〜第5のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数の偏向反射面を有する偏向手段によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする(請求項6)。
【0018】
第7の解決手段は、第1〜第6のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有することを特徴とする(請求項7)。
また、第8の解決手段は、第7の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設けることを特徴とする(請求項8)。
【0019】
第9の解決手段は、第1〜第8のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置により前記像担持体上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きいことを特徴とする(請求項9)。
また、第10の解決手段は、第9の解決手段の画像形成装置において、前記電位検知用光源の発光領域は、前記画像用光源の発光領域に比べて大きいことを特徴とする(請求項10)。
【0020】
第11の解決手段は、第9または第10の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxBの方が大きいことを特徴とする(請求項11)。
また、第12の解決手段は、第9〜第11のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方が大きいことを特徴とする(請求項12)。
さらに第13の解決手段は、第1〜第12のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置の光源は2次元アレイの発光部を有する面発光レーザーであることを特徴とする(請求項13)。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像形成装置においては、画像形成時の露光条件(条件A)と、電位検知時の露光条件(条件B)とで、像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることにより、少ない光出力でも像担持体の帯電電位が飽和するようにすることができ、電位検知手段により残留電位を測定することができるため、光源の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのプリンタの概略構成図である。
【図2】光走査装置の構成例を示す概略構成図である。
【図3】画像形成装置の制御系の一例を示すブロック図である。
【図4】書込制御駆動部の一例を示すブロック図である。
【図5】光走査装置による隣接走査、飛越走査、多重露光走査の分類を示す図である。
【図6】多重露光走査の種類(1)、(2)を示す図である。
【図7】VCSELからなる半導体レーザーアレイ上の2次元アレイ配置された光源の位置座標を示す図である。
【図8】相反則不軌についての説明図である。
【図9】画像濃度測定結果の一例を示す図である。
【図10】感光体の光減衰特性の環境依存性の一例を示す図である。
【図11】感光体の静電疲労特性の一例を示す図である。
【図12】感光体の光減衰特性の膜厚依存性を示す図である。
【図13】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態としてのカラープリンタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのプリンタ200の概略構成例を示す。
このプリンタ200は、カールソンプロセスを用いて、トナー像を記録媒体である普通紙(用紙)上に転写することにより、画像を印刷するプリンタである。このプリンタ200は、図1に示すように、潜像の書込手段である光走査装置100、像担持体である感光体201、帯電手段である帯電チャージャ202、電位検知手段である電位センサ203、現像手段である現像装置204、潜像を現像したトナーパターンを光学的に検知する濃度センサ(以下、Pセンサと言う)214、クリーニング手段であるクリーニング装置205、用紙を収納する給紙トレイ206、用紙を給紙する給紙コロ207、レジストローラ対208、転写手段である転写装置211、定着手段である定着装置209、排紙ローラ212、排紙トレイ210、及びこれらを収容するハウジング220等を備えている。
【0024】
前記ハウジング220は略直方体状で、+X方向側及び−X方向側の側壁に、内部空間と連通する開口が形成されている。
前記光走査装置100は、ハウジング220の内部上方に配置され、画像情報に基づいて変調した光ビームを主走査方向(図1におけるY方向)へ偏向することにより、感光体201の表面を走査する。なお、光走査装置100の構成例については後述する。
【0025】
前記感光体201は、その表面に光ビームが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円筒状の部材であり、光走査装置100の下方にY方向(主走査方向)を長手方向として配置され、不図示の回転駆動機構により図1における時計回り(図1の矢印に示される方向)に回転されている。そして、その周囲には、図1における略12時(上側)の位置に帯電チャージャ202が配置され、略2時の位置に電位センサ203が配置され、略3時の位置に現像装置204が配置され、略4時の位置にPセンサ214が配置され、略6時の位置に転写装置211が配置され、9時〜10時の間の位置にクリーニング装置205が配置されている。
【0026】
前記帯電チャージャ202は、感光体201の表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、感光体201の表面を所定の電圧で帯電させる。
前記電位センサ203は、光走査装置100の露光によりパッチ状の潜像パターンが形成された感光体201上の領域と対向するように設置され、露光後の感光体ドラム200上の残留電位を検知する。
前記現像装置204は、黒色画像成分のトナーが充填されたカートリッジと、感光体201とは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジに充填されたトナーを現像ローラを介して感光体201の表面に供給する。
前記Pセンサ214は、潜像を現像したトナーパターンが形成された感光体201上の領域と対向するように設置され、トナーパターンの濃度を光学的に検知する。
【0027】
前記クリーニング装置205は、クリーニングケースと、該クリーニングケースの開口部に設置されY軸方向を長手方向とする長方形状のクリーニングブレードを備え、該クリーニングブレードの一端が感光体201の表面に接するように配置されている。感光体201の表面に吸着されたトナーは、感光体201の回転に伴いクリーニングブレードにより剥離され、クリーニングケースの内部に回収される。
前記転写装置211は、転写チャージャあるいは転写ローラからなり、感光体201の表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、帯電チャージャ202とは逆極性の電圧が印加されている。
【0028】
前記給紙トレイ206は、ハウジング220の+X方向側の側壁に形成された開口から+X方向側に端部が突出した状態で配置され、外部から供給される用紙213を複数枚収容することが可能となっている。また、給紙トレイ206に代えて、多段の給紙カセットを用いることもできる。
前記給紙コロ207は、給紙トレイ206から用紙213を1枚ずつ取り出し、1対の回転ローラから構成されるレジストローラ対208を介して、感光体201と転写装置211によって形成される隙間に導出する。
【0029】
前記定着装置209は、加熱ローラと加圧ローラから構成され、用紙213を加熱するとともに加圧し、排紙ローラ212へ導出する。
前記排紙ローラ212は、1対の回転ローラなどから構成され、ハウジング220の−X方向側の側壁に形成された開口から−X方向側に端部が突出した状態で配置された排紙トレイ210に対し、定着装置209から送られる用紙213を排紙し、順次スタックする。
【0030】
次に光走査装置100の構成例について、光走査装置100の概略構成を示す図2を参照して説明する。光走査装置100は、画像データに基づいて変調された複数のレーザ光で、感光体201表面の書込み領域を走査することにより、書込み領域上に画素に対応した点を主走査方向に連続して形成することで、複数の走査線を形成する装置である。この光走査装置100は、図2に示されるように、光源10、光源10の+X方向側に順次配置されたカップリングレンズ11、アパーチャ部材12、線像形成レンズ13、反射ミラー14、該反射ミラー14の−Y方向側に配置された光偏向器であるポリゴンミラー15、該ポリゴンミラー15の+X方向側に順次配置された第1走査レンズ16及び第2走査レンズ17、同期信号検知用の同期検知センサ18a,18bを備えている。
【0031】
前記カップリングレンズ11は、屈折率が1.5程度のレンズであり、光源(例えばVCSEL)10に形成された2次元アレイの発光部からそれぞれ射出された光ビームを、略平行光に整形するとともに、射出側の焦点位置に一旦集光させる。
【0032】
前記アパーチャ部材12は、例えばY方向(主走査方向)の幅が5.5mm、Z方向(副走査方向)の幅が1.18mmの矩形状の開口を有し、該開口中心がカップリングレンズ11の焦点位置又はその近傍に位置するように配置されている。
【0033】
前記線像形成レンズ13は、第1面がZ方向(副走査方向)に屈折力を有し、第2面がY方向(主走査方向)に屈折力を有するアナモルフィックレンズであり、アパーチャ部材12を通過した光ビームを反射ミラー14を介して、ポリゴンミラー15の偏向面へ集光する。また、前記線像形成レンズ13としては、Z方向(副走査方向)に屈折力を有するシリンドリカルレンズ等を用いてもよい。
【0034】
前記ポリゴンミラー15は、例えば上面が半径7mmの円に内接する正方形である4角柱状の部材である。このポリゴンミラー15の4つの側面には偏向面が形成され、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転している。これにより、ポリゴンミラー15に入射した光ビームはY方向(主走査方向)に走査される。なお、図2の例では、ポリゴンミラー15は4角柱状としたが、これに限るものではなく、5角、6角、・・等の多角柱状であっても良い。
【0035】
前記第1走査レンズ16は、光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー15により、一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、Y方向(主走査方向)に対して等速移動させる。
前記第2走査レンズ17は、Z方向(副走査方向)に正の屈折率を有するレンズである。この第2走査レンズ17は、長手方向をY方向として配置され、入射する光ビームを感光体201の表面に結像する。
【0036】
上述のように構成された光走査装置100においては、光源10と感光体201までの光路上に配置された光学素子からなる光学系の、主走査方向(Y方向)の横倍率βmの絶対値は、副走査方向の横倍率βsの絶対値よりも大きくなっている。
【0037】
次に、上述のように構成されたプリンタ200の制御系について説明する。図3は画像形成装置の制御系の一例を示すブロック図である。
画像形成装置の制御系における制御装置230は、主として、マイクロコンピュータ等からなり演算制御処理を行う中央演算処理装置(CPU)231と、演算制御処理のための基礎プログラムやその処理のためのデータを蓄積したROMと種々のセンサ、カウンタ、タイマー等のデータを取り込むためのRAMとを有するメモリ232と、I/Oインターフェイス233,234と、図示しない制御回路等を備えている。そして、制御装置230は、I/Oインターフェイス233を介して、操作表示部(操作パネル)235からの入力信号や、定着温度を検知する定着温度検知センサ236、機内の温度・湿度を検知する温・湿度センサ237、現像装置204のカートリッジ内のトナー残量を検知するカートリッジセンサ238、現像装置204のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ239、感光体上の露光部の残留電位を検知する電位センサ203、感光体上の画像濃度を検知するPセンサ214、作像回数カウンタ240、放置時間タイマー241等の各種入力装置からの入力信号を制御装置内に取り込むとともに、I/Oインターフェイス233を介して、感光体201を回転駆動する感光体駆動部242、帯電チャージャ202の駆動や帯電バイアスを制御する帯電制御駆動部243、光走査装置100の駆動や書込みを制御する書込制御駆動部244、現像装置204の現像ローラの駆動や現像バイアス等を制御する現像制御駆動部245、現像装置204のトナー補給を制御するトナー補給駆動部246、給紙コロ207やレジストローラ対を駆動する給紙駆動部247、転写装置211の駆動や転写バイアスを制御する転写制御駆動部248、定着装置209の駆動や温度を制御する定着制御駆動部249、排紙ローラ212を駆動する排紙駆動部250等に出力信号(制御信号)を送信し、各部の動作を制御する。
【0038】
次に光走査装置100の書込制御駆動部244の一例を図4に示す。
書込制御駆動部244は、一例として図4に示されるように、画素クロック生成回路251、画像処理回路252、書込制御回路253、及び光源駆動回路254などを有している。また、図示していないが、ポリゴンミラー15を回転駆動するモータの制御回路を有している。
なお、図4における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0039】
画素クロック生成回路251は、図2の光走査装置において走査開始位置を検知する同期検知センサ18aの出力信号と、走査終了位置を検知する同期検知センサ18bの出力信号とから、各検知センサ18a,18bの間を光束が走査するのに要した時間を求め、その時間に予め設定されている数のパルスが収まるように周波数を設定し、該周波数の画素クロック信号PCLKを生成する。ここで生成された画素クロック信号PCLKは、画像処理回路252及び書込制御回路253に供給される。また、同期検知センサの出力信号は、同期信号として書込制御回路253に出力される。
【0040】
画像処理回路252は、プリンタの制御装置230を介して上位装置(パーソナルコンピュータや原稿読取装置(スキャナ)等)から受信した画像情報をラスター展開するとともに、所定の中間調処理などを行った後、画素クロック信号PCLKを基準とした各画素の階調を表す画像データを発光部毎に作成する。そして、画像処理回路252は、同期検知センサ18aの出力信号に基づいて走査開始を検出すると、画素クロック信号PCLKに同期して画像データを書込制御回路253に出力する。
書込制御回路253は、画像処理回路252からの画像データ、画素クロック生成回路251からの画素クロック信号PCLK及び同期信号に基づいてパルス変調信号を生成する。
光源駆動回路254は、書込制御回路253からのパルス変調信号に基づいて光源(VCSEL)10の2次元アレイの各発光部を駆動する。
また、図示しないモータ制御回路は、ポリゴンミラー15の回転速度を制御し、主走査方向の書込速度を制御する。
【0041】
次に、上述のように構成されたプリンタ200の動作について説明する。上位装置(パーソナルコンピュータや原稿読取装置(スキャナ)等)からの画像情報を受信すると、感光体駆動部242により感光体201の回転駆動が開始され、書込制御駆動部244からの画像情報に基づく変調データにより光走査装置100が駆動され、光源10からは、画像情報に基づいて変調された複数本の光ビームが射出される。この光ビームは、アパーチャ部材12を経由して線像形成レンズ13によりポリゴンミラー15の偏向面に集光されると、ポリゴンミラー15によってY方向(主走査方向)に走査される。そして、光ビームは、第1走査レンズ16へ入射することにより偏向速度が調整されたのち、第2走査レンズ17を介して感光体201の表面に集光される。
【0042】
一方、感光体201の表面は、帯電制御駆動部243により駆動制御された帯電チャージャ202によって所定の電圧の帯電バイアスで帯電されることにより、電荷が一定の電荷密度で分布している。そして、上記のポリゴンミラー15により走査された光ビームにより、感光体201が走査されると、感光体201の書込み領域には、電荷の分布により規定される複数の走査線が形成され、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0043】
感光体201の表面に静電潜像が形成されると、現像制御駆動部245により駆動制御された現像装置203の現像ローラにより、感光体201の表面にトナーが供給される。このとき現像装置203の現像ローラは感光体201と逆極性の電圧の現像バイアスにより帯電しているため、現像ローラに付着したトナーは感光体201と同極性に帯電されている。したがって、感光体201の表面のうち電荷が分布している部分にはトナーが付着せず、走査された部分にのみトナーが付着することにより、感光体201の表面に静電潜像が可視化されたトナー像が形成される。そして、このトナー像の形成にタイミングを合わせて、給紙駆動部247により給紙コロ207、レジストローラ対208が駆動され、給紙トレイ206の用紙213が転写部に給紙、搬送される。そして、転写制御駆動部248により転写バイアスが駆動制御された転写装置211により用紙213にトナー像が転写された後、定着制御駆動部249により駆動制御された定着装置209により定着されることで、用紙上に画像として定着される。このようにして画像が形成された用紙213は、排紙駆動部250により駆動された排紙ローラ212により排紙され、順次排紙トレイ210にスタックされる。
【0044】
以上、本発明に係る画像形成装置及び光走査装置の一実施形態を説明したが、本発明に係る画像形成装置の光走査装置100においては、光源10として、例えば垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の2次元アレイを用いている。このため光走査装置100のマルチビーム化、光源の高密度集積が容易になっている。
【0045】
一方、一般的に画像形成装置内では感光体の残留電位検知、およびそれに応じた電子写真プロセスの調整が不可欠である。
例えば図1に示すような構成の画像形成装置では、装置の構成上、残留電位の検知手段(図1に示す電位センサ203)は書込露光の下流側に設置しなければならないため、光走査装置100による露光により感光体201に潜像パターンを形成し、電位センサ203で残留電位Vrを検知する。
そして画像形成装置の制御装置230は、その残留電位Vrに応じて各部を制御し、帯電電位Vd、露光部電位VL、現像バイアスVBに対してその残留電位Vr分の補正を行って目標電位とする。
すなわち制御装置230は、感光体201の帯電チャージャ202による帯電電位Vdが上記目標電位になるように帯電制御駆動部243の電源回路を調整し、書込制御駆動部244を介して光源(VCSEL)10における発光パワーを感光体201の表面電位(露光部電位)VLが上記目標電位になるように調整し、かつ、現像装置204の現像バイアス電位VBが上記目標電位になるように現像制御駆動部245の電源回路を調整する。
以上のようにして、画像濃度制御を行うタイミングでは、感光体の露光量に対する潜像電位の特性(光減衰特性)が変化したことを検知し、検知結果をフィードバックして最適な帯電電位、露光パワー、現像バイアス等を設定する制御が行われている。
【0046】
ところで、上記のように電位センサ203で残留電位を検知するためには、感光体ドラム201の帯電電位を飽和させるために、光走査装置100の光源10であるVCSELは高出力発振が必要になる。
しかし、前述したように、VCSELは、安定動作する光量範囲が小さいため、高出力を得ることが困難であるという課題がある。
そのため高出力発振による光源の寿命の低下を引き起こす。また、VCSEL自体のばらつきや、光走査装置内部の光学系のばらつきを考慮してNDフィルタなどの調光部材を必要とし、コストアップと装置の複雑化、大型化を招く。
【0047】
そこで本発明においては、前記制御装置230によって露光手段である光走査装置100による露光条件を変更する。すなわち、制御装置230は、図3に示した書込制御駆動部244や、感光体駆動部242等を制御し、画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位センサ203による電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、感光体201上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替える。(第1の解決手段)
このように、条件Aと条件Bとで、走査速度、走査線形成の遅延時間、ビームスポット径などを変更することにより、少ない光出力でも感光体201の帯電電位が飽和するようにすることができ、電位センサ203で残留電位を測定することができる。
【0048】
具体的には、ビームの重なり具合を変更し、相反則不軌による帯電効果の上昇を利用し、帯電電位を増加させる。または、走査速度を変更し、積分光量を増加させる。
以上の解決方法により、光源10であるVCSELを長寿命化し、故障率を低減することができる。また、NDフィルタなどの調光素子を用いることなくコストダウンを図ることができる。
【0049】
ここで、相反則不軌について図8を参照して説明する。
まず、露光エネルギー密度がEeのときの潜像深さを測定する(図8(c)に示す条件A)。なお、ここで述べる潜像深さとは、帯電電位とボトム電位との差を指す(図8(b)に示すVpv)。
次に、1/2の露光エネルギー密度1/2×Eeで遅延時間Tを与えて、2回照射し、潜像電位深さを測定する(図8(c)に示す条件B)。
【0050】
条件Aと条件Bでの潜像深さ変化量ΔVpvを算出する。1回露光で、露光エネルギー密度をα×Eeとしたときに露光エネルギー密度係数αを変えたときの潜像深さを測定する(図8(d)に示すVpv)。α=1のとき、露光エネルギー密度は、2回露光のときの総露光エネルギー密度と同じになる。
【0051】
露光エネルギー密度係数αを変えたときの潜像深さ変化量が図8(d)のΔVpvとなるときの係数βを算出する。すなわち、2回露光で遅延時間Tの場合、1/2×β×Eeで露光すれば、Eeで1回露光したときと、同じ潜像深さが形成されることになる。ちなみに、2回露光の方が潜像電位が深くなるので、β≦1である。
【0052】
このようにして、複数回露光で遅延時間が生じている場合と1回露光の潜像状態を揃えることが可能となる。また、3回以上の複数回露光でも同様に算出することができる。
上記のような効果があるため、これを利用して電位センサ203による残留電位検知を行う。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
先ず本発明の一実施例として、前記制御装置230は、書込制御駆動部244や感光体駆動部242等を制御し、前記条件Aに比べ前記条件Bでは、光走査装置100による走査線の重なりが大きくなるように制御する。(第2の解決手段)
異なる走査間、すなわち感光体201の同一箇所を複数回露光されるときのビームスポットの重なり方が異なることで相反則不軌の効果が異なる。これにより積分光量が一定であってもより表面電位の変化を大きくすることができるため、少ない光量でも電位センサ203による残留電位検知が行える。
【0054】
より具体的には、本実施例では、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、書込制御駆動部244により駆動を制御し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行う。(第3の解決手段)
あるいは、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、書込制御駆動部244により駆動を制御し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいようにする。(第4の解決手段)
【0055】
ここで、隣接走査ではビームスポットの重なりが小さく、相反則不軌の効果は小さい。飛越走査または多重露光走査とすることにより感光体上でのビームスポットの重なりは増え、相反則不軌の効果により少ない光量でも残留電位検知が行える。
なお、多重露光走査は、複数回の走査で、同じ位置に走査線を形成する走査方法であり、飛越走査は、ある走査で形成された複数走査線の間に、次の走査で走査線を形成する走査方法であり(例えば本発明者らの先願である特許文献2(特開2008−275711号公報)の実施例に記載された方式等がある)、隣接走査は、走査線を副走査方向に順次走査する通常の走査方法である。
【0056】
また、条件Aと条件Bとをともに飛越走査・多重露光走査とした場合であっても、条件Aでの重複走査領域Saよりも条件Bでの重複走査領域Sbを大きくすることにより、感光体201上の単位面積当たりの走査回数が増加し、相反則不軌の効果がより大きなものとなる(同じ光量でも、表面電位がより下がりやすく、残留電位が測定可能になる)。
【0057】
以下、より具体的に説明する。
図5に、光走査装置100による隣接走査、飛越走査、多重露光走査の分類を示す。
まず、隣接走査と飛越走査、多重露光走査の違いについて述べる。なお、図5において、実線がM回目の走査線、破線がM+1回目の走査線である。
複数ビームを感光体201の被走査面に走査して画像形成する場合、図5に示すように、隣接走査では、走査間の境目のわずかな部分しか重なりがない。そのため、その境目の部分だけ相反則不軌が起こり、他の部分と濃度が変わる。
飛越走査と多重露光走査は共に、走査間のビームスポットが重複するため全領域で相反則不軌が起こり、積分光量に対する感光体の電位変化量が増大する。
【0058】
・飛越走査と多重露光走査の違い
書込を行う際には、多重露光走査ではM回目の走査線とM+1回目の走査線の一部が重なるようにして同一箇所を走査するため、走査速度を一定としたときに実質の書込密度が低下するのに対し、飛越走査ではM回目の走査線の間にM+1回目の走査線が走査されるため、走査位置が常に異なるため、書込密度は低下しない。
【0059】
ここで、図6に多重露光走査の場合の種類(1)、(2)を示す。
図6においては、各走査が区別できるように主走査方向にずらしているが、本来は各走査線は主走査方向には一致している。
図6の(1)と(2)とを比較して、(2)は(1)よりも重なりが大きくなっている。副走査方向の移動量が小さくなるとこのようにすることができる。
図6の(1)の場合は、2回の走査によって同一箇所が走査されるが、(2)の場合は、3回の走査によって同一箇所が遅延時間を持って露光されるため、さらに相反則不軌の効果が大きくなり、残留電位を測定するための露光には、レーザーの光出力はさらに小さくても可能となる。なお、飛越走査も同様に副走査方向の移動量を小さくすると、重複回数を増やすことができる。
【0060】
通常の画像形成においては、隣接走査や飛越走査を用いて書込走査を行うことが望ましい。
多重露光走査は、上述したとおり、書込密度が低下または画像形成速度が低下するため、望ましくない。ただし、多重露光走査が最もビームスポットの重複が大きいため、相反則不軌は最も大きく現れ、光源の光出力に対する感光体の電位変化の効率が最も向上する。そのため書込では隣接走査、残留電位検知の際には飛越走査または多重露光走査を行うことが望ましい。
【0061】
また、図6に示すように、多重露光により重複する領域を、残留電位検知時に増えるように設定することで、さらに相反則不軌の効果は大きくなる。
図6の(1)では、走査1と走査2では重なる走査線の数が3本であるが、(2)では5本となり、重なる面積はその分増加している。例えば、画像形成の書込走査の際には図6の(1)の状態で走査を行い(重なる領域Sa)、残留電位検知の際には(2)で走査する(重なる領域Sb>Sa)ことにより、感光体の電位を飽和させるための光出力を低減することができる。
【0062】
(実施例2)
次に、上記のような重なりの状態の変化を作ることは、副走査速度、すなわち感光体表面の移動速度を変更することで可能となる。
具体的には、感光体駆動部242により感光体201の回転速度を制御して、感光体201の回転速度(副走査速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くする。(第5の解決手段)
このように感光体201の回転速度を制御して副走査速度を遅くすることで、実施例1の重なりの状態とすることができる。
【0063】
図6の(1)と(2)を比較すると、(1)は走査1と走査2の間で走査線3本分だけ副走査に移動している。(2)は2本分だけ移動するので、重なりが変わっている。つまり、残留電位検知の際に、感光体駆動部242で感光体201の回転速度を変更し、2/3にしている。速度変更はこの値でなくても、自由に設定することができる。光源10の光出力が不足している分、及び相反則不軌の効果を考慮した分だけ、速度を変更すればよい。その際、1走査線単位で見た場合は、重なりにむらができるため濃度むらが発生するが、潜像電位検知用に感光体ドラム201上に形成される例えば正方形状の静電潜像パターンは、40mm角程度で作成され、これを電位センサ203で検知するため、微小な差は平均化されて検知され、問題とならない。
【0064】
例えば、光源10の光出力Pが電子写真システム上必要な残留検知露光出力P’に対してP’/P=1.17で足りなかった場合、従来は光源の光出力をさらに高くしていた。しかし、これにより寿命が短くなっていたが、本発明では感光体ドラム201の回転速度を書込時に対して電位検知時で1/1.17にすれば、相反則不軌を考慮しなくても光出力は十分になる。相反則不軌の効果によりさらに有利になるため、1/1.12程度の減速でも十分である。
【0065】
(実施例3)
上記のように感光体201の回転速度(副走査速度)を変更してもまだ光源10の光量が不足する場合がある。例えば、電子写真プロセス上、感光体ドラム201の回転速度を変えすぎると特性が変化する場合や、電位検知に時間がかかる場合や、低コスト化のために寿命保障期間を短くして歩留まりを向上させる場合や、書込時に光出力を高く設定しているため相対的に光出力を上げられない場合、といったケースがある。
【0066】
そこで、このような場合には、光走査装置100は、複数の偏向反射面を有する偏向手段(ポリゴンミラー)15によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度(ポリゴンミラー15の回転速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くする。(第6の解決手段)
すなわち、残留電位検知時に光走査装置100による主走査速度を低下させることにより、潜像電位計測用の静電潜像パターンを形成する際に単位面積当たりの露光時間が増加するため、少ない光量でも表面電位がより下がりやすくなり、光出力を一定に保ったままでも、感光体201の表面電位を飽和させることができるようになる。
【0067】
(実施例4)
さらに別の手段として、電位検知用の光源を別に設けてもよい。すなわち、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有する構成とすると良い(第7の解決手段)。
このように残留電位を検出するための専用の光源を設けることにより、感光体上の露光量の総和が上がるため、光源一つ当りの光出力は小さくてもよくなる。
【0068】
また、光走査装置100が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設ける。(第8の解決手段)
これにより副走査方向により広い領域を走査することができるようになり、走査線間の重なりをより大きくすることができる。なお、電位検知に用いられる露光の際には、画像形成用のビームに要求される光学特性は必要ないため、電位検知用光源を副走査方向にずらした位置(光軸から離れた位置)に配置して光学特性が劣化しても問題はない。
【0069】
具体的な実施例を図7に示す。図7はVCSELからなる半導体レーザーアレイ上の2次元アレイ配置された光源の位置座標を示している。黒色の四角形(■)は電位検知用光源の位置座標、白色の四角形(□)は画像形成用光源の位置座標である。通常の画像形成時には、書込制御駆動部244は、画像形成用光源(□)によって静電潜像の書込みを行う。また、電位検知用光源(■)は感光体201の残留電位の検知のためにのみ用いる。なお、電位センサ203により残留電位を検知する際は、電位検知用光源(■)のみではなく、画像形成用光源(□)と電位検知用光源(■)の両方を用いる。これにより、副走査方向により広い領域を走査することができるようになり、走査線間の重なりをより大きくすることができる。
また、電位検知用光源(■)は特別な駆動は必要ないため、簡単な回路で構成しても良いし、画像形成用光源(□)と共用の回路としてコストダウンを図っても良い。
【0070】
図7に示すように、電位検知用光源(■)は、画像形成用光源(□)よりも副走査方向にずらして、画像形成用光源(□)の外側に配置することが望ましい。その理由は、光学系の光軸(図7の座標の主走査(Y)方向と副走査(Z)方向の0位置が交差する位置で紙面に垂直な方向)に近い方が光学特性を確保するのが容易であるため、画像形成用光源(□)は光軸に近い位置に配置し、特性をある程度劣化させてもかまわない電位検知用光源(■)については、光軸から離れた位置に配置するのである。
図7では、副走査(Z)方向に対して電位検知用光源(■)は画像形成用光源(□)の外側(図7のY=0,Z=0の位置にある光軸から副走査(Z)方向に離れている位置)にあるが、これは異なる走査間での重なりが大きくなるようにし、相反則不軌の効果を大きくするためである。ただし、光源が増えることで1つ当りの必要な光出力が低減できるので、主走査方向に対して外側に配置してもよい。
【0071】
また、このように光軸から離れた光源は、光学系の収差の影響が出やすいため、ビームスポット径が大きくなりやすい。
すなわち、光走査装置100により感光体201上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きい。このようにビームスポット径が大きくなることで、隣接走査、飛越走査、多重露光走査のいずれであっても走査線間のビームの重なりがさらに大きくなるため、相反則不軌の効果はより大きくなる。(第9の解決手段)
【0072】
(実施例5)
電位検知用の光源のビームスポット径を大きくする方法は他にもある。
一例としては、電位検知用光源(■)の発光領域を、画像形成用光源(□)の発光領域に比べて大きくする。(第10の解決手段)
なお、ここでは、光源からの出射光束の近視野像(NFP(Near Field Pattern))における最大強度の1/e2の値となる範囲を光源の発光領域と定義する。
【0073】
例えばNFPを大きくすると、本発明者らの先願である特許文献3(特開2008−209803号公報)に記載のように、光走査装置内の走査光学系の倍率の分だけ感光体上のビームスポット径(像面でのビームスポット径)が大きくなる。そのため、走査線間の重なりをより大きくすることができる。
また、VCSELについて言うと、本発明者らの先願である特許文献4(特開2008−209675号公報)の図26および段落[0049]に記載のように、酸化層116の大きさを変更すると、NFPが変化する。また表面付近に追加構造を設けることで、NFPの制御が可能である。
【0074】
本実施例では、これらを利用して、上記の画像形成用光源(□)では発光領域を小さく(NFPを小さく)、電位検知用光源(■)では発光領域を大きく(NFPを大きく)設定することで、画像形成用光源(□)のビームスポット径は精細な画像形成のため小さく、電位検知用光源(■)では電位検知と全体出力向上のためにビームスポット径を大きくすることができる。
【0075】
なお、上記の実施例では電位検知用光源を画像形成用光源と同一のレーザーアレイ上として説明したが、別体のレーザーダイオード(LD)を用いてもよい。別体のLDでは、書込用光源に対してさらに高出力のものを用いることができる。
【0076】
(実施例6)
ビームスポット径を大きくする他の方法としては、ビームウエスト位置をデフォーカスさせることが挙げられる。すなわち、光走査装置100によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxB の方を大きくする。(第11の解決手段)
具体的には、光源位置や光学素子の位置を光軸方向に移動可能な移動機構を設け、電位検知時に光源位置や光学素子の位置を変えることで、デフォーカスすることが可能である。
また、可変焦点レンズ(液体により焦点位置の変更が可能な素子(例えば軟質な透明樹脂内に液体を充填したレンズ等))によっても可能である。
【0077】
また、さらに別の方法として、ビームウエスト径を変化させる方法がある。すなわち、光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方を大きくする。(第12の解決手段)
具体例としては、走査光学系の中の偏向手段(ポリゴンミラー)15の近傍に配置された線状に光束を結像させる素子(例えばアナモルフィックレンズ等の線像形成レンズ13)を、光軸に対して副走査方向(Z方向)に移動する移動機構を設けることで、ビームスポット径を大きくすることができる。または、上記の素子を光軸を回転中心として回転する機構を設けることで、同様にビームスポット径を大きくすることができる。
【0078】
以上、本発明に係る画像形成装置の実施形態及び実施例について説明したが、上記の実施形態及び実施例では、光走査装置100が単色の画像形成装置(プリンタ)に用いられる場合について説明した。しかし、画像形成装置の別の例としては、カラー画像に対応し、複数の感光体を備えるタンデム型のカラープリンタであっても良い。以下にカラープリンタの一例を示す。
【0079】
(実施例7)
図13はタンデム型のカラープリンタの一例を示す概略構成図である。図13に示すタンデム型のカラープリンタは、ブラック(K)用の感光体K1、帯電器K2、現像器K4、クリーニング手段K5、及び転写用帯電手段K6と、シアン(C)用の感光体C1、帯電器C2、現像器C4、クリーニング手段C5、及び転写用帯電手段C6と、マゼンダ(M)用の感光体M1、帯電器M2、現像器M4、クリーニング手段M5、及び転写用帯電手段M6と、イエロー(Y)用の感光体Y1、帯電器Y2、現像器Y4、クリーニング手段Y5、及び転写用帯電手段Y6と、光走査装置900と、転写ベルト901と、定着手段902などを備えている。図13の構成例の場合、光走査装置900は、各色毎に面発光レーザーからなる光源10と光学系を備えている。なお、偏向手段であるポリゴンミラーは共通で用いることができ、各色毎の光源からの光ビームを共通のポリゴンミラーで振り分け走査するようになっている。なお、各像担持体に対する光走査方法や書込制御等は前述の実施例1〜6と同様である。
【0080】
また、図示していないが、各感光体Y1,M1,C1,K1に対して、光走査装置900による露光部と現像器Y4,M4,C4,K4の間には、電位センサが設置されており、前述の実施例と同様に、感光体表面の電位の検知を行うことができるようになっている。そして、電位センサの電位検知結果によって画像濃度を制御する。
【0081】
各感光体Y1,M1,C1,K1は、図11中の矢印の方向に回転し、回転順にそれぞれ帯電器Y2,M2,C2,K2、現像器Y4,M4,C4,K4、転写用帯電手段Y6,M6,C6,K6、クリーニング手段Y5,M5,C5,K5が配置されている。各帯電器Y2,M2,C2,K2は、対応する感光体Y1,M1,C1,K1の表面を均一に帯電する。この帯電器Y2,M2,C2,K2によって帯電された感光体表面に光走査装置900により光ビームが照射され、前述した走査が行われることにより感光体Y1,M1,C1,K1に静電潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像器Y4,M4,C4,K4により感光体表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写用帯電手段Y6,M6,C6,K6により、図示しない給紙部から給紙、搬送されてきた図示しない用紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着手段901により用紙に画像が定着される。
【0082】
なお、以上に示した実施形態及び実施例では、画像形成装置として単色またはカラーのプリンタを例に挙げたが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機としても良い。
【符号の説明】
【0083】
10:光源
11:カップリングレンズ
12:アパーチャ部材
13:線像形成レンズ
14:反射ミラー
15:ポリゴンミラー(偏向手段)
16:第1走査レンズ
17:第2走査レンズ
18a,18b:同期検知センサ
100:光走査装置
200:プリンタ(画像形成装置)
201:感光体(像担持体)
202:帯電チャージャ(帯電手段)
203:電位センサ(電位検知手段)
204:現像装置(現像手段)
205:クリーニング装置(クリーニング手段)
206:給紙トレイ
207:給紙コロ
208:レジストローラ対
209:定着装置(定着手段)
210:排紙トレイ
211:転写装置(転写手段)
212:排紙ローラ
213:用紙(記録媒体)
214:濃度センサ(Pセンサ)
230:制御装置
231:演算処理装置(CPU)
232:メモリ(ROM,RAM)
233,234:I/Oインターフェイス
235:操作表示部(操作パネル)
236:定着温度検知センサ
237:温・湿度センサ
238:カートリッジセンサ
239:トナー濃度センサ
240:作像回数カウンタ
241:放置時間タイマー
242:感光体駆動部
243:帯電制御駆動部
244:書込制御駆動部
245:現像制御駆動部
246:トナー補給駆動部
247:給紙駆動部
248:転写制御駆動部
249:定着制御駆動部
250:排紙駆動部
251:画素クロック生成回路
252:画像処理回路
253:書込制御回路
254:光源駆動回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特許第4248228号公報
【特許文献2】特開2008−275711号公報
【特許文献3】特開2008−209803号公報
【特許文献4】特開2008−209675号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関し、特に光走査方法及び画像形成方法に特徴を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置では、ある所定のタイミング(電源投入時や所定時間,または所定枚数毎)に、像担持体である感光体上に潜像パターンを潜像電位を変化させながら露光し、潜像電位を電位計で検知し、その潜像を現像したトナーパターンを光学的な濃度センサ(以下、Pセンサと記述する場合がある)により検知を行って、常に狙いの画像濃度が得られる様に調整する画像濃度制御が実用化されている。
また、画像濃度制御を行うタイミングでは、感光体の露光量に対する潜像電位の特性(以下光減衰特性と記述する場合がある)が変化したことを検知し、検知結果をフィードバックして最適な帯電電位や露光パワー等を設定する制御が行われている。
【0003】
一例として特許文献1(特許第4248228号公報)に示されている感光体の光減衰特性が変化したことを補正する方法を挙げる。
露光装置のレーザー制御部を介して半導体レーザーのレーザー発光パワーを最大光量となるように制御し、電位計の出力値を取り込むことにより感光体ドラムの残留電位を検出する。なお、本来は帯電・露光・現像・転写・クリーニング・除電プロセスを経た後の電位を残留電位と呼ぶが、ここではシステムの構成上、電位計が露光・現像間にあるため、除電プロセスの代わりに、最大光量を露光し、露光後の電位を残留電位として検出している。
そして、その残留電位が0でない時には、帯電電位Vd、露光電位VL、現像バイアスVBに対してその残留電位Vr分の補正を行って目標電位とする。
【0004】
その後、各色並行して感光体ドラムの帯電装置による帯電電位Vdが上記目標電位になるように電源回路を調整し、レーザー制御部を介して半導体レーザーにおけるレーザー発光パワーを感光体ドラムの表面電位VLが上記目標電位になるように調整し、かつ、黒現像装置、シアン現像装置、マゼンタ現像装置、イエロー現像装置の各現像バイアス電位VBがそれぞれ上記目標電位になるように電源回路を調整する。
【0005】
ここで、例えばチタニルフタロシアニン結晶を用いた感光体の光減衰特性は、図9〜図11に示すように使用環境・静電疲労・膜厚によって特性が異なる。実機内ではクリーニングブレードによる膜削れや静電疲労・使用環境が全て異なってくるため、上記電位制御により感光体の露光量に対する潜像電位の特性の変化を検知し、作像条件にフィードバックすることは重要なことである。
【0006】
しかしながら、半導体レーザーの発光パワーを必要以上に高くすることは、レーザーの耐久性にとっては好ましくないものである。また、高生産を狙ってプロセス線速が上がると残留電位を検知するためのレーザーの出力もさらに高く設定する必要があり、レーザーにとって負担が大きいものとなる。
【0007】
また、近年では高生産性・高画質化(高密度書込み)が求められており、その両立が課題となっている。その手法としてポリゴンスキャナを高回転化させることが考えられるが、この方法では、ポリゴンスキャナにおける騒音の増大、消費電力の増大、及び耐久性の低下を生じてしまう。
【0008】
また、高生産性と高密度化を両立させる他の手法として光源から射出される光束のマルチビーム化がある。そこで、近年では垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の2次元アレイを用いる方式が使用されつつある。この方式では、消費電力が従来の端面発光レーザに比べて一桁程度小さく、より多くの光源(発光部)を容易に二次元的に集積することが可能である。本方式によるマルチビーム化により、高生産性(高プロセス線速)対応が可能な他、ポリゴンスキャナの回転数も下げられるというメリットがある反面、面発光レーザーアレイは発光出力が低く、出力を上げると劣化しやすいという課題がある。
【0009】
ここで、残留電位が基準値となるような光をあてなければならない理由について説明する。
画像形成装置が必要なベタ濃度を得るためには、図9に示す画像濃度測定結果(Pパターンで電位・付着量を検知し、算出した現像γ・現像開始電圧Vk)から、必要な現像ポテンシャルを得られる作像条件(帯電電位・現像バイアス・露光パワーの組み合わせ)を設定する必要がある。
【0010】
(1)しかしながら、図10に示すように、環境によって、同じ帯電電位、同じ露光パワー(図は露光エネルギーが横軸であるが、露光パワーと読み変えてもよい)でも感光体の表面電位が異なることがある(この図では数十ボルトであるが、感光体の構成によっては100V以上異なることもある)。
【0011】
(2)また、長時間帯電・露光を繰り返すと(簡単に言い換えると何十万枚も作像すると)、感光体が帯電や露光の繰り返しで特性が劣化する。それを試験したのが図11である。図11の意味するところは、たくさん作像すると、感光体が劣化(静電疲労)して同じ帯電電位で同じ露光パワーを設定しても、感光体の表面電位が下がりにくくなるということである。
【0012】
(3)さらに、長時間作像を繰り返すと、転写されないで残ったトナーを感光体からクリーニングする感光体クリーニングブレードが、トナーだけでなく、感光体の表面も少しずつ削っていく。それにより感光体の表面の厚さ(感光体膜厚と呼ぶ)が減ってくる。その時の特性を表したのが図12である。膜厚が変化しても、同じ帯電電位で同じ露光パワーを設定した時に感光体表面電位が変わるということを図12は意味している(実際には、35μm→17μmに変化する前に交換してしまう)。
【0013】
上記の(1)〜(3)の理由により、所定の露光パワーで、どの位感光体の特性が変わったか検知する必要がある。そこで、検知した感光体表面電位が高い場合、帯電電位を高くして、必要な現像ポテンシャルを設定できる条件に設定する等の制御を行う。なぜ、強い光を当てているかと言うと、設定した帯電電位で露光パワーを大きくした場合、どの位の現像ポテンシャルを設定できるかを求めるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、前述した残留電位検知を行う場合にも、光源の耐久性を下げることなく、像担持体(感光体)の露光量に対する潜像電位の特性の変化を検知し、最適な帯電電位・露光パワーを設定する制御を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、像担持体上へ露光する露光手段である光走査装置と、該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、前記像担持体の帯電電位を変更する手段と、露光後の前記像担持体の電位を検知する電位検知手段と、該電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、を有する画像形成装置において、画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、前記像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることを特徴とする(請求項1)。
【0016】
第2の解決手段は、第1の解決手段の画像形成装置において、前記条件Aに比べ前記条件Bでは、前記光走査装置による走査線の重なりが大きくなることを特徴とする(請求項2)。
また、第3の解決手段は、第2の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行うことを特徴とする(請求項3)。
また、第4の解決手段は、第2の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいことを特徴とする(請求項4)。
【0017】
第5の解決手段は、第1〜第4のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記像担持体の回転速度(副走査速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする(請求項5)。
また、第6の解決手段は、第1〜第5のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数の偏向反射面を有する偏向手段によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする(請求項6)。
【0018】
第7の解決手段は、第1〜第6のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有することを特徴とする(請求項7)。
また、第8の解決手段は、第7の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設けることを特徴とする(請求項8)。
【0019】
第9の解決手段は、第1〜第8のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置により前記像担持体上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きいことを特徴とする(請求項9)。
また、第10の解決手段は、第9の解決手段の画像形成装置において、前記電位検知用光源の発光領域は、前記画像用光源の発光領域に比べて大きいことを特徴とする(請求項10)。
【0020】
第11の解決手段は、第9または第10の解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxBの方が大きいことを特徴とする(請求項11)。
また、第12の解決手段は、第9〜第11のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方が大きいことを特徴とする(請求項12)。
さらに第13の解決手段は、第1〜第12のいずれか一つの解決手段の画像形成装置において、前記光走査装置の光源は2次元アレイの発光部を有する面発光レーザーであることを特徴とする(請求項13)。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像形成装置においては、画像形成時の露光条件(条件A)と、電位検知時の露光条件(条件B)とで、像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることにより、少ない光出力でも像担持体の帯電電位が飽和するようにすることができ、電位検知手段により残留電位を測定することができるため、光源の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのプリンタの概略構成図である。
【図2】光走査装置の構成例を示す概略構成図である。
【図3】画像形成装置の制御系の一例を示すブロック図である。
【図4】書込制御駆動部の一例を示すブロック図である。
【図5】光走査装置による隣接走査、飛越走査、多重露光走査の分類を示す図である。
【図6】多重露光走査の種類(1)、(2)を示す図である。
【図7】VCSELからなる半導体レーザーアレイ上の2次元アレイ配置された光源の位置座標を示す図である。
【図8】相反則不軌についての説明図である。
【図9】画像濃度測定結果の一例を示す図である。
【図10】感光体の光減衰特性の環境依存性の一例を示す図である。
【図11】感光体の静電疲労特性の一例を示す図である。
【図12】感光体の光減衰特性の膜厚依存性を示す図である。
【図13】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態としてのカラープリンタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのプリンタ200の概略構成例を示す。
このプリンタ200は、カールソンプロセスを用いて、トナー像を記録媒体である普通紙(用紙)上に転写することにより、画像を印刷するプリンタである。このプリンタ200は、図1に示すように、潜像の書込手段である光走査装置100、像担持体である感光体201、帯電手段である帯電チャージャ202、電位検知手段である電位センサ203、現像手段である現像装置204、潜像を現像したトナーパターンを光学的に検知する濃度センサ(以下、Pセンサと言う)214、クリーニング手段であるクリーニング装置205、用紙を収納する給紙トレイ206、用紙を給紙する給紙コロ207、レジストローラ対208、転写手段である転写装置211、定着手段である定着装置209、排紙ローラ212、排紙トレイ210、及びこれらを収容するハウジング220等を備えている。
【0024】
前記ハウジング220は略直方体状で、+X方向側及び−X方向側の側壁に、内部空間と連通する開口が形成されている。
前記光走査装置100は、ハウジング220の内部上方に配置され、画像情報に基づいて変調した光ビームを主走査方向(図1におけるY方向)へ偏向することにより、感光体201の表面を走査する。なお、光走査装置100の構成例については後述する。
【0025】
前記感光体201は、その表面に光ビームが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円筒状の部材であり、光走査装置100の下方にY方向(主走査方向)を長手方向として配置され、不図示の回転駆動機構により図1における時計回り(図1の矢印に示される方向)に回転されている。そして、その周囲には、図1における略12時(上側)の位置に帯電チャージャ202が配置され、略2時の位置に電位センサ203が配置され、略3時の位置に現像装置204が配置され、略4時の位置にPセンサ214が配置され、略6時の位置に転写装置211が配置され、9時〜10時の間の位置にクリーニング装置205が配置されている。
【0026】
前記帯電チャージャ202は、感光体201の表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、感光体201の表面を所定の電圧で帯電させる。
前記電位センサ203は、光走査装置100の露光によりパッチ状の潜像パターンが形成された感光体201上の領域と対向するように設置され、露光後の感光体ドラム200上の残留電位を検知する。
前記現像装置204は、黒色画像成分のトナーが充填されたカートリッジと、感光体201とは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジに充填されたトナーを現像ローラを介して感光体201の表面に供給する。
前記Pセンサ214は、潜像を現像したトナーパターンが形成された感光体201上の領域と対向するように設置され、トナーパターンの濃度を光学的に検知する。
【0027】
前記クリーニング装置205は、クリーニングケースと、該クリーニングケースの開口部に設置されY軸方向を長手方向とする長方形状のクリーニングブレードを備え、該クリーニングブレードの一端が感光体201の表面に接するように配置されている。感光体201の表面に吸着されたトナーは、感光体201の回転に伴いクリーニングブレードにより剥離され、クリーニングケースの内部に回収される。
前記転写装置211は、転写チャージャあるいは転写ローラからなり、感光体201の表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、帯電チャージャ202とは逆極性の電圧が印加されている。
【0028】
前記給紙トレイ206は、ハウジング220の+X方向側の側壁に形成された開口から+X方向側に端部が突出した状態で配置され、外部から供給される用紙213を複数枚収容することが可能となっている。また、給紙トレイ206に代えて、多段の給紙カセットを用いることもできる。
前記給紙コロ207は、給紙トレイ206から用紙213を1枚ずつ取り出し、1対の回転ローラから構成されるレジストローラ対208を介して、感光体201と転写装置211によって形成される隙間に導出する。
【0029】
前記定着装置209は、加熱ローラと加圧ローラから構成され、用紙213を加熱するとともに加圧し、排紙ローラ212へ導出する。
前記排紙ローラ212は、1対の回転ローラなどから構成され、ハウジング220の−X方向側の側壁に形成された開口から−X方向側に端部が突出した状態で配置された排紙トレイ210に対し、定着装置209から送られる用紙213を排紙し、順次スタックする。
【0030】
次に光走査装置100の構成例について、光走査装置100の概略構成を示す図2を参照して説明する。光走査装置100は、画像データに基づいて変調された複数のレーザ光で、感光体201表面の書込み領域を走査することにより、書込み領域上に画素に対応した点を主走査方向に連続して形成することで、複数の走査線を形成する装置である。この光走査装置100は、図2に示されるように、光源10、光源10の+X方向側に順次配置されたカップリングレンズ11、アパーチャ部材12、線像形成レンズ13、反射ミラー14、該反射ミラー14の−Y方向側に配置された光偏向器であるポリゴンミラー15、該ポリゴンミラー15の+X方向側に順次配置された第1走査レンズ16及び第2走査レンズ17、同期信号検知用の同期検知センサ18a,18bを備えている。
【0031】
前記カップリングレンズ11は、屈折率が1.5程度のレンズであり、光源(例えばVCSEL)10に形成された2次元アレイの発光部からそれぞれ射出された光ビームを、略平行光に整形するとともに、射出側の焦点位置に一旦集光させる。
【0032】
前記アパーチャ部材12は、例えばY方向(主走査方向)の幅が5.5mm、Z方向(副走査方向)の幅が1.18mmの矩形状の開口を有し、該開口中心がカップリングレンズ11の焦点位置又はその近傍に位置するように配置されている。
【0033】
前記線像形成レンズ13は、第1面がZ方向(副走査方向)に屈折力を有し、第2面がY方向(主走査方向)に屈折力を有するアナモルフィックレンズであり、アパーチャ部材12を通過した光ビームを反射ミラー14を介して、ポリゴンミラー15の偏向面へ集光する。また、前記線像形成レンズ13としては、Z方向(副走査方向)に屈折力を有するシリンドリカルレンズ等を用いてもよい。
【0034】
前記ポリゴンミラー15は、例えば上面が半径7mmの円に内接する正方形である4角柱状の部材である。このポリゴンミラー15の4つの側面には偏向面が形成され、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転している。これにより、ポリゴンミラー15に入射した光ビームはY方向(主走査方向)に走査される。なお、図2の例では、ポリゴンミラー15は4角柱状としたが、これに限るものではなく、5角、6角、・・等の多角柱状であっても良い。
【0035】
前記第1走査レンズ16は、光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー15により、一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、Y方向(主走査方向)に対して等速移動させる。
前記第2走査レンズ17は、Z方向(副走査方向)に正の屈折率を有するレンズである。この第2走査レンズ17は、長手方向をY方向として配置され、入射する光ビームを感光体201の表面に結像する。
【0036】
上述のように構成された光走査装置100においては、光源10と感光体201までの光路上に配置された光学素子からなる光学系の、主走査方向(Y方向)の横倍率βmの絶対値は、副走査方向の横倍率βsの絶対値よりも大きくなっている。
【0037】
次に、上述のように構成されたプリンタ200の制御系について説明する。図3は画像形成装置の制御系の一例を示すブロック図である。
画像形成装置の制御系における制御装置230は、主として、マイクロコンピュータ等からなり演算制御処理を行う中央演算処理装置(CPU)231と、演算制御処理のための基礎プログラムやその処理のためのデータを蓄積したROMと種々のセンサ、カウンタ、タイマー等のデータを取り込むためのRAMとを有するメモリ232と、I/Oインターフェイス233,234と、図示しない制御回路等を備えている。そして、制御装置230は、I/Oインターフェイス233を介して、操作表示部(操作パネル)235からの入力信号や、定着温度を検知する定着温度検知センサ236、機内の温度・湿度を検知する温・湿度センサ237、現像装置204のカートリッジ内のトナー残量を検知するカートリッジセンサ238、現像装置204のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ239、感光体上の露光部の残留電位を検知する電位センサ203、感光体上の画像濃度を検知するPセンサ214、作像回数カウンタ240、放置時間タイマー241等の各種入力装置からの入力信号を制御装置内に取り込むとともに、I/Oインターフェイス233を介して、感光体201を回転駆動する感光体駆動部242、帯電チャージャ202の駆動や帯電バイアスを制御する帯電制御駆動部243、光走査装置100の駆動や書込みを制御する書込制御駆動部244、現像装置204の現像ローラの駆動や現像バイアス等を制御する現像制御駆動部245、現像装置204のトナー補給を制御するトナー補給駆動部246、給紙コロ207やレジストローラ対を駆動する給紙駆動部247、転写装置211の駆動や転写バイアスを制御する転写制御駆動部248、定着装置209の駆動や温度を制御する定着制御駆動部249、排紙ローラ212を駆動する排紙駆動部250等に出力信号(制御信号)を送信し、各部の動作を制御する。
【0038】
次に光走査装置100の書込制御駆動部244の一例を図4に示す。
書込制御駆動部244は、一例として図4に示されるように、画素クロック生成回路251、画像処理回路252、書込制御回路253、及び光源駆動回路254などを有している。また、図示していないが、ポリゴンミラー15を回転駆動するモータの制御回路を有している。
なお、図4における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0039】
画素クロック生成回路251は、図2の光走査装置において走査開始位置を検知する同期検知センサ18aの出力信号と、走査終了位置を検知する同期検知センサ18bの出力信号とから、各検知センサ18a,18bの間を光束が走査するのに要した時間を求め、その時間に予め設定されている数のパルスが収まるように周波数を設定し、該周波数の画素クロック信号PCLKを生成する。ここで生成された画素クロック信号PCLKは、画像処理回路252及び書込制御回路253に供給される。また、同期検知センサの出力信号は、同期信号として書込制御回路253に出力される。
【0040】
画像処理回路252は、プリンタの制御装置230を介して上位装置(パーソナルコンピュータや原稿読取装置(スキャナ)等)から受信した画像情報をラスター展開するとともに、所定の中間調処理などを行った後、画素クロック信号PCLKを基準とした各画素の階調を表す画像データを発光部毎に作成する。そして、画像処理回路252は、同期検知センサ18aの出力信号に基づいて走査開始を検出すると、画素クロック信号PCLKに同期して画像データを書込制御回路253に出力する。
書込制御回路253は、画像処理回路252からの画像データ、画素クロック生成回路251からの画素クロック信号PCLK及び同期信号に基づいてパルス変調信号を生成する。
光源駆動回路254は、書込制御回路253からのパルス変調信号に基づいて光源(VCSEL)10の2次元アレイの各発光部を駆動する。
また、図示しないモータ制御回路は、ポリゴンミラー15の回転速度を制御し、主走査方向の書込速度を制御する。
【0041】
次に、上述のように構成されたプリンタ200の動作について説明する。上位装置(パーソナルコンピュータや原稿読取装置(スキャナ)等)からの画像情報を受信すると、感光体駆動部242により感光体201の回転駆動が開始され、書込制御駆動部244からの画像情報に基づく変調データにより光走査装置100が駆動され、光源10からは、画像情報に基づいて変調された複数本の光ビームが射出される。この光ビームは、アパーチャ部材12を経由して線像形成レンズ13によりポリゴンミラー15の偏向面に集光されると、ポリゴンミラー15によってY方向(主走査方向)に走査される。そして、光ビームは、第1走査レンズ16へ入射することにより偏向速度が調整されたのち、第2走査レンズ17を介して感光体201の表面に集光される。
【0042】
一方、感光体201の表面は、帯電制御駆動部243により駆動制御された帯電チャージャ202によって所定の電圧の帯電バイアスで帯電されることにより、電荷が一定の電荷密度で分布している。そして、上記のポリゴンミラー15により走査された光ビームにより、感光体201が走査されると、感光体201の書込み領域には、電荷の分布により規定される複数の走査線が形成され、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0043】
感光体201の表面に静電潜像が形成されると、現像制御駆動部245により駆動制御された現像装置203の現像ローラにより、感光体201の表面にトナーが供給される。このとき現像装置203の現像ローラは感光体201と逆極性の電圧の現像バイアスにより帯電しているため、現像ローラに付着したトナーは感光体201と同極性に帯電されている。したがって、感光体201の表面のうち電荷が分布している部分にはトナーが付着せず、走査された部分にのみトナーが付着することにより、感光体201の表面に静電潜像が可視化されたトナー像が形成される。そして、このトナー像の形成にタイミングを合わせて、給紙駆動部247により給紙コロ207、レジストローラ対208が駆動され、給紙トレイ206の用紙213が転写部に給紙、搬送される。そして、転写制御駆動部248により転写バイアスが駆動制御された転写装置211により用紙213にトナー像が転写された後、定着制御駆動部249により駆動制御された定着装置209により定着されることで、用紙上に画像として定着される。このようにして画像が形成された用紙213は、排紙駆動部250により駆動された排紙ローラ212により排紙され、順次排紙トレイ210にスタックされる。
【0044】
以上、本発明に係る画像形成装置及び光走査装置の一実施形態を説明したが、本発明に係る画像形成装置の光走査装置100においては、光源10として、例えば垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の2次元アレイを用いている。このため光走査装置100のマルチビーム化、光源の高密度集積が容易になっている。
【0045】
一方、一般的に画像形成装置内では感光体の残留電位検知、およびそれに応じた電子写真プロセスの調整が不可欠である。
例えば図1に示すような構成の画像形成装置では、装置の構成上、残留電位の検知手段(図1に示す電位センサ203)は書込露光の下流側に設置しなければならないため、光走査装置100による露光により感光体201に潜像パターンを形成し、電位センサ203で残留電位Vrを検知する。
そして画像形成装置の制御装置230は、その残留電位Vrに応じて各部を制御し、帯電電位Vd、露光部電位VL、現像バイアスVBに対してその残留電位Vr分の補正を行って目標電位とする。
すなわち制御装置230は、感光体201の帯電チャージャ202による帯電電位Vdが上記目標電位になるように帯電制御駆動部243の電源回路を調整し、書込制御駆動部244を介して光源(VCSEL)10における発光パワーを感光体201の表面電位(露光部電位)VLが上記目標電位になるように調整し、かつ、現像装置204の現像バイアス電位VBが上記目標電位になるように現像制御駆動部245の電源回路を調整する。
以上のようにして、画像濃度制御を行うタイミングでは、感光体の露光量に対する潜像電位の特性(光減衰特性)が変化したことを検知し、検知結果をフィードバックして最適な帯電電位、露光パワー、現像バイアス等を設定する制御が行われている。
【0046】
ところで、上記のように電位センサ203で残留電位を検知するためには、感光体ドラム201の帯電電位を飽和させるために、光走査装置100の光源10であるVCSELは高出力発振が必要になる。
しかし、前述したように、VCSELは、安定動作する光量範囲が小さいため、高出力を得ることが困難であるという課題がある。
そのため高出力発振による光源の寿命の低下を引き起こす。また、VCSEL自体のばらつきや、光走査装置内部の光学系のばらつきを考慮してNDフィルタなどの調光部材を必要とし、コストアップと装置の複雑化、大型化を招く。
【0047】
そこで本発明においては、前記制御装置230によって露光手段である光走査装置100による露光条件を変更する。すなわち、制御装置230は、図3に示した書込制御駆動部244や、感光体駆動部242等を制御し、画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位センサ203による電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、感光体201上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替える。(第1の解決手段)
このように、条件Aと条件Bとで、走査速度、走査線形成の遅延時間、ビームスポット径などを変更することにより、少ない光出力でも感光体201の帯電電位が飽和するようにすることができ、電位センサ203で残留電位を測定することができる。
【0048】
具体的には、ビームの重なり具合を変更し、相反則不軌による帯電効果の上昇を利用し、帯電電位を増加させる。または、走査速度を変更し、積分光量を増加させる。
以上の解決方法により、光源10であるVCSELを長寿命化し、故障率を低減することができる。また、NDフィルタなどの調光素子を用いることなくコストダウンを図ることができる。
【0049】
ここで、相反則不軌について図8を参照して説明する。
まず、露光エネルギー密度がEeのときの潜像深さを測定する(図8(c)に示す条件A)。なお、ここで述べる潜像深さとは、帯電電位とボトム電位との差を指す(図8(b)に示すVpv)。
次に、1/2の露光エネルギー密度1/2×Eeで遅延時間Tを与えて、2回照射し、潜像電位深さを測定する(図8(c)に示す条件B)。
【0050】
条件Aと条件Bでの潜像深さ変化量ΔVpvを算出する。1回露光で、露光エネルギー密度をα×Eeとしたときに露光エネルギー密度係数αを変えたときの潜像深さを測定する(図8(d)に示すVpv)。α=1のとき、露光エネルギー密度は、2回露光のときの総露光エネルギー密度と同じになる。
【0051】
露光エネルギー密度係数αを変えたときの潜像深さ変化量が図8(d)のΔVpvとなるときの係数βを算出する。すなわち、2回露光で遅延時間Tの場合、1/2×β×Eeで露光すれば、Eeで1回露光したときと、同じ潜像深さが形成されることになる。ちなみに、2回露光の方が潜像電位が深くなるので、β≦1である。
【0052】
このようにして、複数回露光で遅延時間が生じている場合と1回露光の潜像状態を揃えることが可能となる。また、3回以上の複数回露光でも同様に算出することができる。
上記のような効果があるため、これを利用して電位センサ203による残留電位検知を行う。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
先ず本発明の一実施例として、前記制御装置230は、書込制御駆動部244や感光体駆動部242等を制御し、前記条件Aに比べ前記条件Bでは、光走査装置100による走査線の重なりが大きくなるように制御する。(第2の解決手段)
異なる走査間、すなわち感光体201の同一箇所を複数回露光されるときのビームスポットの重なり方が異なることで相反則不軌の効果が異なる。これにより積分光量が一定であってもより表面電位の変化を大きくすることができるため、少ない光量でも電位センサ203による残留電位検知が行える。
【0054】
より具体的には、本実施例では、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、書込制御駆動部244により駆動を制御し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行う。(第3の解決手段)
あるいは、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、書込制御駆動部244により駆動を制御し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいようにする。(第4の解決手段)
【0055】
ここで、隣接走査ではビームスポットの重なりが小さく、相反則不軌の効果は小さい。飛越走査または多重露光走査とすることにより感光体上でのビームスポットの重なりは増え、相反則不軌の効果により少ない光量でも残留電位検知が行える。
なお、多重露光走査は、複数回の走査で、同じ位置に走査線を形成する走査方法であり、飛越走査は、ある走査で形成された複数走査線の間に、次の走査で走査線を形成する走査方法であり(例えば本発明者らの先願である特許文献2(特開2008−275711号公報)の実施例に記載された方式等がある)、隣接走査は、走査線を副走査方向に順次走査する通常の走査方法である。
【0056】
また、条件Aと条件Bとをともに飛越走査・多重露光走査とした場合であっても、条件Aでの重複走査領域Saよりも条件Bでの重複走査領域Sbを大きくすることにより、感光体201上の単位面積当たりの走査回数が増加し、相反則不軌の効果がより大きなものとなる(同じ光量でも、表面電位がより下がりやすく、残留電位が測定可能になる)。
【0057】
以下、より具体的に説明する。
図5に、光走査装置100による隣接走査、飛越走査、多重露光走査の分類を示す。
まず、隣接走査と飛越走査、多重露光走査の違いについて述べる。なお、図5において、実線がM回目の走査線、破線がM+1回目の走査線である。
複数ビームを感光体201の被走査面に走査して画像形成する場合、図5に示すように、隣接走査では、走査間の境目のわずかな部分しか重なりがない。そのため、その境目の部分だけ相反則不軌が起こり、他の部分と濃度が変わる。
飛越走査と多重露光走査は共に、走査間のビームスポットが重複するため全領域で相反則不軌が起こり、積分光量に対する感光体の電位変化量が増大する。
【0058】
・飛越走査と多重露光走査の違い
書込を行う際には、多重露光走査ではM回目の走査線とM+1回目の走査線の一部が重なるようにして同一箇所を走査するため、走査速度を一定としたときに実質の書込密度が低下するのに対し、飛越走査ではM回目の走査線の間にM+1回目の走査線が走査されるため、走査位置が常に異なるため、書込密度は低下しない。
【0059】
ここで、図6に多重露光走査の場合の種類(1)、(2)を示す。
図6においては、各走査が区別できるように主走査方向にずらしているが、本来は各走査線は主走査方向には一致している。
図6の(1)と(2)とを比較して、(2)は(1)よりも重なりが大きくなっている。副走査方向の移動量が小さくなるとこのようにすることができる。
図6の(1)の場合は、2回の走査によって同一箇所が走査されるが、(2)の場合は、3回の走査によって同一箇所が遅延時間を持って露光されるため、さらに相反則不軌の効果が大きくなり、残留電位を測定するための露光には、レーザーの光出力はさらに小さくても可能となる。なお、飛越走査も同様に副走査方向の移動量を小さくすると、重複回数を増やすことができる。
【0060】
通常の画像形成においては、隣接走査や飛越走査を用いて書込走査を行うことが望ましい。
多重露光走査は、上述したとおり、書込密度が低下または画像形成速度が低下するため、望ましくない。ただし、多重露光走査が最もビームスポットの重複が大きいため、相反則不軌は最も大きく現れ、光源の光出力に対する感光体の電位変化の効率が最も向上する。そのため書込では隣接走査、残留電位検知の際には飛越走査または多重露光走査を行うことが望ましい。
【0061】
また、図6に示すように、多重露光により重複する領域を、残留電位検知時に増えるように設定することで、さらに相反則不軌の効果は大きくなる。
図6の(1)では、走査1と走査2では重なる走査線の数が3本であるが、(2)では5本となり、重なる面積はその分増加している。例えば、画像形成の書込走査の際には図6の(1)の状態で走査を行い(重なる領域Sa)、残留電位検知の際には(2)で走査する(重なる領域Sb>Sa)ことにより、感光体の電位を飽和させるための光出力を低減することができる。
【0062】
(実施例2)
次に、上記のような重なりの状態の変化を作ることは、副走査速度、すなわち感光体表面の移動速度を変更することで可能となる。
具体的には、感光体駆動部242により感光体201の回転速度を制御して、感光体201の回転速度(副走査速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くする。(第5の解決手段)
このように感光体201の回転速度を制御して副走査速度を遅くすることで、実施例1の重なりの状態とすることができる。
【0063】
図6の(1)と(2)を比較すると、(1)は走査1と走査2の間で走査線3本分だけ副走査に移動している。(2)は2本分だけ移動するので、重なりが変わっている。つまり、残留電位検知の際に、感光体駆動部242で感光体201の回転速度を変更し、2/3にしている。速度変更はこの値でなくても、自由に設定することができる。光源10の光出力が不足している分、及び相反則不軌の効果を考慮した分だけ、速度を変更すればよい。その際、1走査線単位で見た場合は、重なりにむらができるため濃度むらが発生するが、潜像電位検知用に感光体ドラム201上に形成される例えば正方形状の静電潜像パターンは、40mm角程度で作成され、これを電位センサ203で検知するため、微小な差は平均化されて検知され、問題とならない。
【0064】
例えば、光源10の光出力Pが電子写真システム上必要な残留検知露光出力P’に対してP’/P=1.17で足りなかった場合、従来は光源の光出力をさらに高くしていた。しかし、これにより寿命が短くなっていたが、本発明では感光体ドラム201の回転速度を書込時に対して電位検知時で1/1.17にすれば、相反則不軌を考慮しなくても光出力は十分になる。相反則不軌の効果によりさらに有利になるため、1/1.12程度の減速でも十分である。
【0065】
(実施例3)
上記のように感光体201の回転速度(副走査速度)を変更してもまだ光源10の光量が不足する場合がある。例えば、電子写真プロセス上、感光体ドラム201の回転速度を変えすぎると特性が変化する場合や、電位検知に時間がかかる場合や、低コスト化のために寿命保障期間を短くして歩留まりを向上させる場合や、書込時に光出力を高く設定しているため相対的に光出力を上げられない場合、といったケースがある。
【0066】
そこで、このような場合には、光走査装置100は、複数の偏向反射面を有する偏向手段(ポリゴンミラー)15によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度(ポリゴンミラー15の回転速度)を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くする。(第6の解決手段)
すなわち、残留電位検知時に光走査装置100による主走査速度を低下させることにより、潜像電位計測用の静電潜像パターンを形成する際に単位面積当たりの露光時間が増加するため、少ない光量でも表面電位がより下がりやすくなり、光出力を一定に保ったままでも、感光体201の表面電位を飽和させることができるようになる。
【0067】
(実施例4)
さらに別の手段として、電位検知用の光源を別に設けてもよい。すなわち、光走査装置100は、複数光束を射出する光源10を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有する構成とすると良い(第7の解決手段)。
このように残留電位を検出するための専用の光源を設けることにより、感光体上の露光量の総和が上がるため、光源一つ当りの光出力は小さくてもよくなる。
【0068】
また、光走査装置100が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設ける。(第8の解決手段)
これにより副走査方向により広い領域を走査することができるようになり、走査線間の重なりをより大きくすることができる。なお、電位検知に用いられる露光の際には、画像形成用のビームに要求される光学特性は必要ないため、電位検知用光源を副走査方向にずらした位置(光軸から離れた位置)に配置して光学特性が劣化しても問題はない。
【0069】
具体的な実施例を図7に示す。図7はVCSELからなる半導体レーザーアレイ上の2次元アレイ配置された光源の位置座標を示している。黒色の四角形(■)は電位検知用光源の位置座標、白色の四角形(□)は画像形成用光源の位置座標である。通常の画像形成時には、書込制御駆動部244は、画像形成用光源(□)によって静電潜像の書込みを行う。また、電位検知用光源(■)は感光体201の残留電位の検知のためにのみ用いる。なお、電位センサ203により残留電位を検知する際は、電位検知用光源(■)のみではなく、画像形成用光源(□)と電位検知用光源(■)の両方を用いる。これにより、副走査方向により広い領域を走査することができるようになり、走査線間の重なりをより大きくすることができる。
また、電位検知用光源(■)は特別な駆動は必要ないため、簡単な回路で構成しても良いし、画像形成用光源(□)と共用の回路としてコストダウンを図っても良い。
【0070】
図7に示すように、電位検知用光源(■)は、画像形成用光源(□)よりも副走査方向にずらして、画像形成用光源(□)の外側に配置することが望ましい。その理由は、光学系の光軸(図7の座標の主走査(Y)方向と副走査(Z)方向の0位置が交差する位置で紙面に垂直な方向)に近い方が光学特性を確保するのが容易であるため、画像形成用光源(□)は光軸に近い位置に配置し、特性をある程度劣化させてもかまわない電位検知用光源(■)については、光軸から離れた位置に配置するのである。
図7では、副走査(Z)方向に対して電位検知用光源(■)は画像形成用光源(□)の外側(図7のY=0,Z=0の位置にある光軸から副走査(Z)方向に離れている位置)にあるが、これは異なる走査間での重なりが大きくなるようにし、相反則不軌の効果を大きくするためである。ただし、光源が増えることで1つ当りの必要な光出力が低減できるので、主走査方向に対して外側に配置してもよい。
【0071】
また、このように光軸から離れた光源は、光学系の収差の影響が出やすいため、ビームスポット径が大きくなりやすい。
すなわち、光走査装置100により感光体201上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きい。このようにビームスポット径が大きくなることで、隣接走査、飛越走査、多重露光走査のいずれであっても走査線間のビームの重なりがさらに大きくなるため、相反則不軌の効果はより大きくなる。(第9の解決手段)
【0072】
(実施例5)
電位検知用の光源のビームスポット径を大きくする方法は他にもある。
一例としては、電位検知用光源(■)の発光領域を、画像形成用光源(□)の発光領域に比べて大きくする。(第10の解決手段)
なお、ここでは、光源からの出射光束の近視野像(NFP(Near Field Pattern))における最大強度の1/e2の値となる範囲を光源の発光領域と定義する。
【0073】
例えばNFPを大きくすると、本発明者らの先願である特許文献3(特開2008−209803号公報)に記載のように、光走査装置内の走査光学系の倍率の分だけ感光体上のビームスポット径(像面でのビームスポット径)が大きくなる。そのため、走査線間の重なりをより大きくすることができる。
また、VCSELについて言うと、本発明者らの先願である特許文献4(特開2008−209675号公報)の図26および段落[0049]に記載のように、酸化層116の大きさを変更すると、NFPが変化する。また表面付近に追加構造を設けることで、NFPの制御が可能である。
【0074】
本実施例では、これらを利用して、上記の画像形成用光源(□)では発光領域を小さく(NFPを小さく)、電位検知用光源(■)では発光領域を大きく(NFPを大きく)設定することで、画像形成用光源(□)のビームスポット径は精細な画像形成のため小さく、電位検知用光源(■)では電位検知と全体出力向上のためにビームスポット径を大きくすることができる。
【0075】
なお、上記の実施例では電位検知用光源を画像形成用光源と同一のレーザーアレイ上として説明したが、別体のレーザーダイオード(LD)を用いてもよい。別体のLDでは、書込用光源に対してさらに高出力のものを用いることができる。
【0076】
(実施例6)
ビームスポット径を大きくする他の方法としては、ビームウエスト位置をデフォーカスさせることが挙げられる。すなわち、光走査装置100によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxB の方を大きくする。(第11の解決手段)
具体的には、光源位置や光学素子の位置を光軸方向に移動可能な移動機構を設け、電位検知時に光源位置や光学素子の位置を変えることで、デフォーカスすることが可能である。
また、可変焦点レンズ(液体により焦点位置の変更が可能な素子(例えば軟質な透明樹脂内に液体を充填したレンズ等))によっても可能である。
【0077】
また、さらに別の方法として、ビームウエスト径を変化させる方法がある。すなわち、光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方を大きくする。(第12の解決手段)
具体例としては、走査光学系の中の偏向手段(ポリゴンミラー)15の近傍に配置された線状に光束を結像させる素子(例えばアナモルフィックレンズ等の線像形成レンズ13)を、光軸に対して副走査方向(Z方向)に移動する移動機構を設けることで、ビームスポット径を大きくすることができる。または、上記の素子を光軸を回転中心として回転する機構を設けることで、同様にビームスポット径を大きくすることができる。
【0078】
以上、本発明に係る画像形成装置の実施形態及び実施例について説明したが、上記の実施形態及び実施例では、光走査装置100が単色の画像形成装置(プリンタ)に用いられる場合について説明した。しかし、画像形成装置の別の例としては、カラー画像に対応し、複数の感光体を備えるタンデム型のカラープリンタであっても良い。以下にカラープリンタの一例を示す。
【0079】
(実施例7)
図13はタンデム型のカラープリンタの一例を示す概略構成図である。図13に示すタンデム型のカラープリンタは、ブラック(K)用の感光体K1、帯電器K2、現像器K4、クリーニング手段K5、及び転写用帯電手段K6と、シアン(C)用の感光体C1、帯電器C2、現像器C4、クリーニング手段C5、及び転写用帯電手段C6と、マゼンダ(M)用の感光体M1、帯電器M2、現像器M4、クリーニング手段M5、及び転写用帯電手段M6と、イエロー(Y)用の感光体Y1、帯電器Y2、現像器Y4、クリーニング手段Y5、及び転写用帯電手段Y6と、光走査装置900と、転写ベルト901と、定着手段902などを備えている。図13の構成例の場合、光走査装置900は、各色毎に面発光レーザーからなる光源10と光学系を備えている。なお、偏向手段であるポリゴンミラーは共通で用いることができ、各色毎の光源からの光ビームを共通のポリゴンミラーで振り分け走査するようになっている。なお、各像担持体に対する光走査方法や書込制御等は前述の実施例1〜6と同様である。
【0080】
また、図示していないが、各感光体Y1,M1,C1,K1に対して、光走査装置900による露光部と現像器Y4,M4,C4,K4の間には、電位センサが設置されており、前述の実施例と同様に、感光体表面の電位の検知を行うことができるようになっている。そして、電位センサの電位検知結果によって画像濃度を制御する。
【0081】
各感光体Y1,M1,C1,K1は、図11中の矢印の方向に回転し、回転順にそれぞれ帯電器Y2,M2,C2,K2、現像器Y4,M4,C4,K4、転写用帯電手段Y6,M6,C6,K6、クリーニング手段Y5,M5,C5,K5が配置されている。各帯電器Y2,M2,C2,K2は、対応する感光体Y1,M1,C1,K1の表面を均一に帯電する。この帯電器Y2,M2,C2,K2によって帯電された感光体表面に光走査装置900により光ビームが照射され、前述した走査が行われることにより感光体Y1,M1,C1,K1に静電潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像器Y4,M4,C4,K4により感光体表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写用帯電手段Y6,M6,C6,K6により、図示しない給紙部から給紙、搬送されてきた図示しない用紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着手段901により用紙に画像が定着される。
【0082】
なお、以上に示した実施形態及び実施例では、画像形成装置として単色またはカラーのプリンタを例に挙げたが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機としても良い。
【符号の説明】
【0083】
10:光源
11:カップリングレンズ
12:アパーチャ部材
13:線像形成レンズ
14:反射ミラー
15:ポリゴンミラー(偏向手段)
16:第1走査レンズ
17:第2走査レンズ
18a,18b:同期検知センサ
100:光走査装置
200:プリンタ(画像形成装置)
201:感光体(像担持体)
202:帯電チャージャ(帯電手段)
203:電位センサ(電位検知手段)
204:現像装置(現像手段)
205:クリーニング装置(クリーニング手段)
206:給紙トレイ
207:給紙コロ
208:レジストローラ対
209:定着装置(定着手段)
210:排紙トレイ
211:転写装置(転写手段)
212:排紙ローラ
213:用紙(記録媒体)
214:濃度センサ(Pセンサ)
230:制御装置
231:演算処理装置(CPU)
232:メモリ(ROM,RAM)
233,234:I/Oインターフェイス
235:操作表示部(操作パネル)
236:定着温度検知センサ
237:温・湿度センサ
238:カートリッジセンサ
239:トナー濃度センサ
240:作像回数カウンタ
241:放置時間タイマー
242:感光体駆動部
243:帯電制御駆動部
244:書込制御駆動部
245:現像制御駆動部
246:トナー補給駆動部
247:給紙駆動部
248:転写制御駆動部
249:定着制御駆動部
250:排紙駆動部
251:画素クロック生成回路
252:画像処理回路
253:書込制御回路
254:光源駆動回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特許第4248228号公報
【特許文献2】特開2008−275711号公報
【特許文献3】特開2008−209803号公報
【特許文献4】特開2008−209675号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上へ露光する露光手段である光走査装置と、
該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、
前記像担持体の帯電電位を変更する手段と、
露光後の前記像担持体の電位を検知する電位検知手段と、
該電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、
を有する画像形成装置において、
画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、前記像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記条件Aに比べ前記条件Bでは、前記光走査装置による走査線の重なりが大きくなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体の回転速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数の偏向反射面を有する偏向手段によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
前記光走査装置が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置により前記像担持体上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記電位検知用光源の発光領域は、前記画像用光源の発光領域に比べて大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9または10記載の画像形成装置において、
前記光走査装置によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxBの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置の光源は2次元アレイの発光部を有する面発光レーザーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像担持体上へ露光する露光手段である光走査装置と、
該光走査装置の露光パワーを変更する手段および単位面積当りの露光時間を変更する手段と、
前記像担持体の帯電電位を変更する手段と、
露光後の前記像担持体の電位を検知する電位検知手段と、
該電位検知手段の電位検知結果によって画像濃度を制御する手段と、
を有する画像形成装置において、
画像形成時の露光条件(以下、条件Aとする)と、電位検知時の露光条件(以下、条件Bとする)とで、前記像担持体上での単位面積当りの走査回数、主走査速度及び副走査速度、ビームスポット径のうちの少なくとも一つを切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記条件Aに比べ前記条件Bでは、前記光走査装置による走査線の重なりが大きくなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては隣接走査を行い、前記条件Bにおいては飛越走査または多重露光走査を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいても前記条件Bにおいても飛越走査または多重露光走査により書き込み露光を行い、M回目の走査により形成される走査線群とM+1回目の走査による走査線群との重なる領域Sについて、前記条件Aの領域Saよりも、前記条件Bの領域Sbの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記像担持体の回転速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数の偏向反射面を有する偏向手段によって主走査方向に光走査を行い、主走査速度を、前記条件Bにおいて前記条件Aよりも遅くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置は、複数光束を射出する光源を有し、前記条件Aにおいては発光させず、前記条件Bにおいては発光させる電位検知用光源を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
前記光走査装置が有する電位検知用光源は、前記条件Aにおいて発光させる画像用光源よりも、副走査方向にずらした位置に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置により前記像担持体上に形成されるビームスポットの直径をωとしたとき、前記条件Aにおいてのビームスポットの直径ωA よりも、前記条件Bにおいてのビームスポットの直径ωB の方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記電位検知用光源の発光領域は、前記画像用光源の発光領域に比べて大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9または10記載の画像形成装置において、
前記光走査装置によるビームウエスト位置の被走査面に対する光軸方向のずれΔxに関して、前記条件AにおいてのずれΔxA よりも、前記条件BにおいてのずれΔxBの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置による被走査面近傍のビームウエスト径ω0に関して、前記条件Aにおいてのビームウエスト径ω0Aよりも、前記条件Bにおいてのビームウエスト径ω0Bの方が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記光走査装置の光源は2次元アレイの発光部を有する面発光レーザーであることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−13432(P2011−13432A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157012(P2009−157012)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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