説明

画像形成装置

【課題】像担持体の線速が変化してもローラ上のトナー層の厚みを一定にできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、像担持体である感光体ドラム135の線速に応じて定められた第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差が同じであるデータを予め記憶している電圧記憶部205と、線速制御部201によって制御された感光体ドラム135の線速に応じて、電圧記憶部205に記憶されている第1及び第2の直流電圧を選択して、第1のローラ用電源部61に選択した第1の直流電圧を第1のローラに印加させると共に第2のローラ用電源部63に選択した第2の直流電圧を第2のローラに印加させる電圧選択制御をする電圧制御部203と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置で実行される静電潜像の現像に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は現像ローラと称されるローラから感光体ドラムのような像担持体にトナーを供給することによって、像担持体に形成された静電潜像を現像する。タッチダウン現像は電子写真技術で用いられる現像方式の一つである。タッチダウン現像では以下のプロセスにより静電潜像を現像する。
【0003】
磁気ローラには直流電圧又は直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が印加されており、2成分現像剤により構成される磁気ブラシが形成されている。この磁気ブラシから2成分現像方式によりトナーが現像ローラに供給されて、現像ローラ上にトナー層が形成される。現像ローラには直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が印加されており、現像ローラ上のトナー層からトナーを飛翔させて像担持体にトナーを供給し、これにより像担持体に形成されている静電潜像が現像される。
【0004】
現像終了後に現像ローラ上のトナー層を新たなトナー層に変えるために、現像ローラ及び磁気ローラに印加する直流電圧を変化させて現像ローラ上のトナー層を磁気ブラシで回収する技術が提案されている(特許文献1(段落0037)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−280357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成装置によって形成された画像の画質を評価する場合にベタ画像とハーフ画像が用いられる。ベタ画像とは用紙の一定領域において、全面にトナーが載っている状態の画像である。ハーフ画像とはドット画像であり、例えば4ドットに1回トナーを供給して形成された画像である。
【0007】
静電潜像が現像されることにより、像担持体にはトナー画像が形成される。現像ローラに印加する直流電圧の大きさによって、像担持体に形成されるトナー画像が影響を受ける。現像ローラに印加する直流電圧が低ければ、トナー画像を構成するトナーは現像ローラに印加されている交流電圧の影響をより受けて、像担持体と現像ローラの間において、トナーが像担持体上で再配列する。この結果、滑らかなハーフ画像を得ることができる。しかし、像担持体の線速が高くなれば、現像ローラから像担持体にトナーを供給する効率が低下(すなわち現像性が低下)するので、ベタ画像の画質が低下する。
【0008】
現像ローラに印加する直流電圧を高くした場合、現像性が向上するので良好なベタ画像を得ることができる。しかし、静電潜像には大粒径のトナーが優先して供給されるので、ハーフ画像についてはムラが多くなる。
【0009】
現像ローラ上のトナー層の厚みを大きくすれば、現像ローラに印加する直流電圧を高くすることなく、現像性を向上させることができる。しかしながら、現像ローラ上に複数のトナー層を重ねることによって、現像ローラ上のトナー層の厚みを大きくするので、トナー層毎に現像性に差が生じ、その結果、ムラの多い画像になる。
【0010】
以上説明したように、現像ローラに印加する直流電圧は画質に影響を与えるので、像担持体の線速が変化すれば、それに応じて変える必要がある。すなわち、像担持体の線速が高くなれば、現像性を確保するために現像ローラに印加する直流電圧を大きくする。一方、像担持体の線速が低くなれば、像担持体にトナーが過剰に供給されないように現像ローラに印加する直流電圧を低くする必要がある。像担持体の線速は記録する用紙が、厚紙の方が普通紙に比べて低く設定されている。
【0011】
タッチダウン現像では磁気ローラ及び現像ローラの両方に直流電圧を印加している。これらの直流電圧の電圧差によって現像ローラ上にトナー層を形成している。現像ローラ上のトナー層は厚みが小さければ現像性が低下し、一方、大きければムラの多い画像となる。したがって、感光体ドラムの線速が変化しても現像ローラ上のトナー層の厚みが一定であることが望ましい。上記特許文献1は現像終了後に現像ローラ及び磁気ローラに印加する直流電圧を変化させて、現像ローラ上のトナー層を磁気ブラシで回収する技術であり、像担持体の線速については考慮されていない。
【0012】
本発明は、像担持体の線速が変化してもローラ上のトナー層の厚みを一定にできる画像形成装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の一の局面に係る画像形成装置は、2成分現像剤を担持しながら回転することにより2成分現像剤を搬送する第1のローラと、前記第1のローラと対向する対向箇所で前記第1のローラから2成分現像剤中のトナーが供給され、供給されたトナーによって形成されたトナー層を担持しながら回転することによりトナーを搬送する第2のローラと、を含む現像装置と、前記第2のローラと対向する対向箇所で前記第2のローラからトナーが供給される像担持体と、前記第1のローラに第1の直流電圧を印加する第1のローラ用電源部と、前記第2のローラに第2の直流電圧を印加する第2のローラ用電源部と、前記像担持体の線速を制御する線速制御部と、前記像担持体の線速に応じて定められた前記第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において前記第1の直流電圧と前記第2の直流電圧の電圧差が同じであるデータを予め記憶している電圧記憶部と、前記線速制御部によって制御された前記像担持体の線速に応じて、前記電圧記憶部に記憶されている前記第1及び第2の直流電圧を選択して、前記第1のローラ用電源部に選択した前記第1の直流電圧を前記第1のローラに印加させると共に前記第2のローラ用電源部に選択した前記第2の直流電圧を前記第2のローラに印加させる電圧選択制御をする電圧制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、像担持体の線速に応じて定められた第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差が同じであるデータを予め記憶し、このデータを基にして第1及び第2の直流電圧を選択している。したがって、像担持体の線速が変化しても、第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差を同じにできるので、第2のローラ上のトナー層の厚みを一定にすることができる。
【0015】
上記構成において、前記電圧制御部は、複数の用紙に画像を連続して記録する連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が変化させられる場合に前記電圧選択制御をする、ようにすることができる。
【0016】
この構成は、連続印刷時に本発明を適用したものである。
【0017】
上記構成において、前記電圧制御部は、前記連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が低くされる場合、前記第1の直流電圧を低くした後に、前記第2の直流電圧を低くする前記電圧選択制御をし、前記連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が高くされる場合、前記第2の直流電圧を高くした後に、前記第1の直流電圧を高くする前記電圧選択制御をする、ようにすることができる。
【0018】
この構成によれば、第1及び第2の直流電圧を低くする電圧選択制御及び高くする電圧選択制御のいずれにおいても、制御期間において第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差を、電圧記憶部に記憶されている第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差より小さくすることができる。したがって、制御期間に上記電圧差が大きくなることで、第2のローラ上のトナー層が厚くなりすぎることを防ぐことができる。また、制御期間に上記電圧差を小さくできるので、第2のローラ上のトナー層が薄くなり、トナー層の回収が容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、像担持体の線速が変化してもローラ上のトナー層の厚みを一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】上記画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】上記画像形成装置に備えられた一組の感光体ドラムと現像装置の断面を示す図である。
【図4】第2のローラ用電源部の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係る電圧選択制御を説明するフローチャートである。
【図6】感光体ドラムの線速が400mm/secから200mm/secになった場合における電圧選択制御のタイムチャートである。
【図7】感光体ドラムの線速が200mm/secから400mm/secになった場合における電圧選択制御のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンタである。画像形成装置1は用紙貯留部110、画像形成部130及び定着部160を備える。
【0022】
用紙貯留部110は画像形成装置1の最下部に配置されており、用紙Pの束を貯留することができる用紙トレイ111を備える。用紙トレイ111は画像形成装置1に差し込んで装着される。用紙Pを補給するときは画像形成装置1から用紙トレイ111を引き出す。用紙トレイ111に貯留された用紙Pの束において、最上位の用紙Pがピックアップローラ113の駆動により、用紙搬送路115へ向けて繰り出される。用紙Pは用紙搬送路115を通って、画像形成部130へ搬送される。
【0023】
画像形成部130は搬送されてきた用紙Pにトナー画像を形成する。画像形成部130はトナー画像を転写ベルト131に転写する順番に従ってタンデムに配置された、マゼンタ用ユニット133M、シアン用ユニット133C、イエロー用ユニット133Y、ブラック用ユニット133Bkを備える。これらのユニットは同様の構成を有しており、マゼンタ用ユニット133Mを例にして説明する。
【0024】
マゼンタ用ユニット133Mは感光体ドラム135を備える。感光体ドラム135の周りには帯電器137、露光装置139、現像装置141及びクリーナ143が配置されている。帯電器137は感光体ドラム135の周面を一様に帯電させる。露光装置139はパソコン等から送信された画像データの中でマゼンタデータに対応する光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム135の周面に照射する。これにより、感光体ドラム135の周面にはマゼンタデータに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム135の周面に現像装置141からマゼンタトナーを供給することにより、周面にはマゼンタデータに対応するトナー画像が形成される。
【0025】
転写ベルト131は感光体ドラム135と1次転写ローラ145により挟まれた状態でD方向(時計周り)に動くことができる。マゼンタデータに対応するトナー画像は感光体ドラム135から転写ベルト131に転写される。感光体ドラム135の周面に残っているマゼンタトナーはクリーナ143によって除去される。以上がマゼンタ用ユニット133Mの説明である。
【0026】
転写ベルト131にはマゼンタデータに対応するトナー画像が転写され、このトナー画像に重ねてシアンデータに対応するトナー画像が転写され、同様に、イエローデータに対応するトナー画像、ブラックデータに対応するトナー画像が重ねて転写される。これにより転写ベルト131にカラーのトナー画像が形成される。このカラーのトナー画像は2次転写ローラ149によって、先ほど説明した用紙貯留部110から搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0027】
カラーのトナー画像が転写された用紙Pは定着部160に送られる。定着部160は加熱ローラ161と加圧ローラ163を備える。これらのローラによってカラーのトナー画像が転写された用紙Pが挟まれる。これにより、カラーのトナー画像に熱と圧力が加えられて、カラーのトナー画像を用紙Pに定着させる。用紙Pは排紙部169に排紙される。
【0028】
図2は図1に示す画像形成装置1の電気的な構成を示すブロック図である。画像形成装置1は用紙貯留部110、画像形成部130、定着部160、制御部200、操作表示部300、第1のローラ用電源部61及び第2のローラ用電源部63がバスによって相互に接続された構成を有する。用紙貯留部110、画像形成部130及び定着部160に関しては図1で説明しているので、説明を省略する。
【0029】
制御部200はMPU(Micro Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。MPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(パソコンから送信された画像データ等)を一時的に記憶する。
【0030】
操作表示部300には操作キー及び表示画面が設けられている。表示画面には各種の操作及び動作の内容等が表示される。
【0031】
線速制御部201は像担持体の一例である感光体ドラム135の線速を制御する。感光体ドラム135の線速は例えば記録する用紙に応じて変えられる。例えば、用紙が普通紙であれば400mm/secにされ、厚紙であれば普通紙の場合の半分の速度(半速)である200mm/secにされる。線速制御部201の機能は制御部200及びモータMにより実現される。
【0032】
第1のローラ用電源部61及び第2のローラ用電源部63は、直流電圧と交流電圧を重畳させた電圧を現像装置141に供給して、重畳電圧を現像装置141内のローラ等に印加する。これらの電源部により生成される電圧は電圧制御部203によって制御される。電圧記憶部205には感光体ドラム135の線速に応じて定められた直流電圧等のデータが予め記憶されている。電圧制御部203は電圧記憶部205に記憶されている上記データを感光体ドラム135の線速に応じて選択して、第1のローラ用電源部61及び第2のローラ用電源部63を制御する。電圧制御部203及び電圧記憶部205の機能は制御部200により実現される。第1のローラ用電源部61、第2のローラ用電源部63、電圧制御部203及び電圧記憶部205については後で詳細に説明する。
【0033】
次に、現像装置141の構成と動作を説明する。図3は一組の感光体ドラム(像担持体の一例)135と現像装置141の断面を示す図である。現像装置141で用いられる現像剤は2成分現像剤である。2成分現像剤を構成するトナー及びキャリアの図示は省略されている。現像装置141等を構成する要素は厚みを省略して表現しているので、ハッチングは付されていない。
【0034】
現像装置141は第1のローラ11、第2のローラ13、攪拌スクリュー15,17及びこれらを収容する筐体19を備える。
【0035】
攪拌スクリュー15,17は筐体19内の攪拌室21に配置されている。攪拌室21は仕切板23により二つの攪拌空間25,27に分けられている。攪拌空間25に攪拌スクリュー17、攪拌空間27に攪拌スクリュー15が配置されている。攪拌空間25,27には2成分現像剤が収容されている。攪拌スクリュー15,17が回転することにより2成分現像剤が攪拌される。これによりトナーとキャリアが摩擦帯電し、トナーとキャリアが静電気的に結合した状態となる。この状態の2成分現像剤のうち、攪拌空間27に収容されている2成分現像剤が磁力により、第1のローラ11に汲み上げられる。
【0036】
第1のローラ11は磁気ローラと称されており、攪拌スクリュー15と対向して筐体19内に配置されている。第1のローラ11は非回転部29に備えられる周面31とギャップを有した状態で、非回転部29に被さっている。非回転部29は厚肉円筒の形状を有しており、その円筒内にシャフト33が回転可能に配置されている。シャフト33に第1のローラ11が固定されている。第1のローラ11はシャフト33が回転することにより周面31に沿って回転方向R1に回転する。
【0037】
周面31には磁極N1、磁極S1、磁極S2、磁極N2、磁極S3が、第1のローラ11の回転方向R1に沿って配置されている。磁極N1〜N2は極性がN極であり、磁極S1〜S3は極性がS極である。磁極の数が5個の例で説明しているが、奇数であればよい。
【0038】
磁極S2は攪拌スクリュー15と対向して配置されている。上述したトナーとキャリアが静電気的に結合した状態の2成分現像剤は、磁極S2の磁力によって攪拌空間27から汲み上げられて、回転方向R1に回転している第1のローラ11に吸い付けられる。
【0039】
磁極S2に対して回転方向R1の下流側に順に磁極N2、磁極S3、磁極N1、磁極S1が配置されている。これらの磁極の磁力によって、2成分現像剤を磁気ブラシの状態で第1のローラ11に吸い付ける(担持する)ための磁界が形成される。第1のローラ11が磁気ブラシ状態の2成分現像剤を担持しながら回転方向R1に回転することにより、2成分現像剤は磁極N2、磁極S3の上を通過して磁極N1の上に搬送される。この途中でブレード35によって第1のローラ11に担持されている2成分現像剤の厚みが規制される。
【0040】
磁極N1は第1のローラ11と第2のローラ13が対向する対向箇所37に向いて配置されている。磁極N1は対向箇所37に磁界を形成する機能を有する。
【0041】
対向箇所37において、2成分現像剤中のトナーが回転方向R2に回転する第2のローラ13に供給される。詳細には、キャリアが第1のローラ11に吸い付けられた状態で電気力によりトナーだけが第2のローラ13に引き寄せられて、第2のローラ13に吸い付く。
【0042】
第2のローラ13に供給されなかったトナーを含む2成分現像剤は、第1のローラ11に担持されて磁極S1上まで搬送される。磁極S1と磁極S2の磁極間上では磁界が形成されないので、2成分現像剤は第1のローラ11から剥離して、攪拌室21に導かれて再利用される。
【0043】
第2のローラ13について説明する。第2のローラ13は現像ローラと称されており、対向箇所45で感光体ドラム135と対向して配置されている。第2のローラ13は非回転部39に備えられる周面41とギャップを有した状態で、非回転部39に被さっている。非回転部39は厚肉円筒の形状を有しており、その円筒内にシャフト43が回転可能に配置されている。シャフト43に第2のローラ13が固定されている。第2のローラ13はシャフト43が回転することにより周面41に沿って回転方向R2に回転する。回転方向R2は第1のローラ11の回転方向R1と同じ向きであり、本実施形態では時計周りである。
【0044】
第2のローラ13は第1のローラ11と対向する対向箇所37でトナーを吸い付けることにより、第2のローラ13にトナーが供給されて第2のローラ13上にトナー層が形成される。言い換えればトナー層は第1のローラ11に印加される直流電圧(第1の直流電圧)と第2のローラ13に印加される直流電圧(第2の直流電圧)の電圧差を利用して形成される。
【0045】
第2のローラ13はトナー層を担持しながら回転方向R2に回転することによりトナーを搬送する。そして、対向箇所45においてトナーを感光体ドラム135に形成された静電潜像に供給する。詳しくは、感光体ドラム135は回転方向R2と逆方向の回転方向R3に回転している。第2のローラ13には第2のローラ用電源部63で生成された直流電圧と交流電圧を重畳させた電圧が印加されている。搬送されてきたトナーは上記重畳電圧により第2のローラ13から飛翔し、感光体ドラム135の周面に形成された静電潜像によって引き寄せられて、感光体ドラム135に移動する。これにより、感光体ドラム135の周面の静電潜像が現像され、周面にトナー画像が形成される。
【0046】
感光体ドラム135上にはこれと接触した転写ベルト131が配置されている。転写ベルト131はD方向に動いており、上記トナー画像は転写ベルト131に転写される。
【0047】
上述のように、第1のローラ11で担持された2成分現像剤中のトナーは、対向箇所37で第2のローラ13に供給される。また、第2のローラ13で担持されたトナーは対向箇所45で感光体ドラム135に供給される。これらの供給では対向箇所37及び対向箇所45でトナーを飛翔させて供給するので、第1のローラ11及び第2のローラ13に対して直流電圧と交流電圧を重畳させた電圧が印加される。
【0048】
第1のローラ11に印加される重畳電圧は第1のローラ用電源部61から供給される。第2のローラ13に印加される重畳電圧は第2のローラ用電源部63から供給される。これらの電源部は同じ構成を有するので、第2のローラ用電源部63を例にして説明する。図4は第2のローラ用電源部63の構成を示すブロック図である。
【0049】
第2のローラ用電源部63の一端はコンデンサ67を介して接地されている。第2のローラ用電源部63の他端は出力端となり、第2のローラ13に接続されている。第2のローラ用電源部63は直流電源71と交流電源73を備える。これらの電源71,73は直列に接続されている。直流電源71ではトランス75で発生した交流がダイオード77により整流されて直流が生成される。交流電源73ではトランス79で交流が生成される。直流電源71から出力された直流電圧と交流電源73から出力された交流電圧を重畳した電圧が、第2のローラ13に印加される。これにより、第2のローラ13上のトナー層からトナーが図3に示す対向箇所45で飛翔して、感光体ドラム135に供給される。
【0050】
第2のローラ用電源部63の直流電源71で生成されて第2のローラ13に印加される直流電圧を第2の直流電圧とする。また、第1のローラ用電源部61の直流電源71で生成されて第1のローラ11に印加される直流電圧を第1の直流電圧とする。
【0051】
本実施形態では連続印刷中に感光体ドラム135の線速が変化した場合、第1のローラ(磁気ローラ)11に印加する第1の直流電圧と第2のローラ(現像ローラ)13に印加する第2の直流電圧を変化させている。本実施形態は第1及び第2の直流電圧の変化前と後で第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差を変えないことを一つの特徴とする。
【0052】
連続印刷とは複数の用紙に画像を連続して記録することである。連続印刷中に感光体ドラム135の線速が変化する例として、連続印刷中に用紙を普通紙から厚紙又は厚紙から普通紙に切り替える場合が挙げられる。例えば、普通紙であれば感光体ドラム135の線速を400mm/secとし、厚紙であれば線速を200mm/secとする。これを例にして、上記特徴について説明する。
【0053】
まず、第2のローラ(現像ローラ)13に印加する第2の直流電圧を設定する。ベタ画像よりもハーフ画像の画質を優先した最低限の値である。線速が高くなるにしたがって第2の直流電圧を高く設定する。例えば、線速200mm/secであれば50V、線速400mm/secであれば70Vに設定する。
【0054】
次に、第2の直流電圧と第1のローラ(磁気ローラ)11に印加する第1の直流電圧の電圧差ΔVを設定する。電圧差ΔVは第2のローラ13上に形成されるトナー層の厚みに影響を与えるものであり、ベタ画像の画質等を考慮して決定される。例えば電圧差ΔVを250Vに設定する。
【0055】
電圧差ΔVを設定することにより、第1の直流電圧が決まる。線速200mm/secであれば300V、線速400mm/secであれば320Vとなる。なお、線速が300mm/secであれば、第2の直流電圧が例えば60Vとなるので、第1の直流電圧は310Vとなる。
【0056】
図2及び図3に示す電圧記憶部205は、線速200mm/secの場合に第1の直流電圧を300V、第2の直流電圧を50Vとするデータ及び線速400mm/secの場合に第1の直流電圧を320V、第2の直流電圧を70Vとするデータを予め記憶している。すなわち、電圧記憶部205は感光体ドラム135の線速に応じて定められた第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差ΔVが同じであるデータを予め記憶している。
【0057】
電圧制御部203は、線速制御部201によって制御された感光体ドラム135の線速に応じて、電圧記憶部205に記憶されている第1及び第2の直流電圧を選択する。そして、電圧制御部203は、第1のローラ用電源部61に選択した第1の直流電圧を第1のローラ11に印加させると共に第2のローラ用電源部63に選択した第2の直流電圧を第2のローラ13に印加させる電圧選択制御をする。
【0058】
感光体ドラム135の線速と第1及び第2の直流電圧以外の条件は例えば以下の通りである。
【0059】
<感光体ドラム135>
・表面電位:310V
<第1のローラ(磁気ローラ)11>
・バイアス
直流電圧(第1の直流電圧):感光体ドラムの線速に応じて異なる
交流電圧:2.5Kvp-p、デューティ比70%、周波数2.7kHz
・周速:450mm/sec
<第2のローラ(現像ローラ)13>
・バイアス
直流電圧(第2の直流電圧):感光体ドラムの線速に応じて異なる
交流電圧:1.6Kvp-p、デューティ比43%、周波数2.7kHz
・周速:300mm/sec
<2成分現像剤>
・現像剤中のトナー帯電量(Q/m):20μC/g
・トナー粒径(体積平均粒径):7.5μm
・キャリア粒径(重量平均粒径):40μm
【0060】
以上説明した条件を用いた本実施形態に係る電圧選択制御について図5、図6及び図7を用いて説明する。図5は上記電圧選択制御を説明するフローチャートである。図6は感光体ドラム135の線速が400mm/secから200mm/secになった場合における電圧選択制御のタイムチャートである。図7は感光体ドラム135の線速が200mm/secから400mm/secになった場合における電圧選択制御のタイムチャートである。
【0061】
画像形成装置1において連続印刷を開始する(ステップS1)。連続印刷とは複数枚の用紙に画像を連続して記録することである。電圧制御部203は連続印刷中に感光体ドラム135の線速が低く、ここでは400mm/secから200mm/secにされるか判断する(ステップS3)。
【0062】
線速が400mm/secから200mm/secにされる場合(ステップS3でYes)、図6に示すように、電圧制御部203は電圧記憶部205に記憶されているデータの中から線速が200mm/secの場合の第1の直流電圧300V及び第2の直流電圧50Vを選択する。そして、第1のローラ用電源部61を制御して、第1のローラ11に印加する第1の直流電圧を320Vから300Vに低くする。その後、電圧制御部203は第2のローラ用電源部63を制御して、第2のローラ13に印加する第2の直流電圧を70Vから50Vに低くする(ステップS5)。第1の直流電圧を320Vから300Vに低くしてから第2の直流電圧を70Vから50Vに低くするまでの期間を制御期間Tとする。
【0063】
ステップS5の終了後又は、線速が400mm/secから200mm/secにされない場合(ステップS3でNo)、電圧制御部203は連続印刷中に感光体ドラム135の線速が高く、ここでは200mm/secから400mm/secにされるか判断する(ステップS7)。
【0064】
線速が200mm/secから400mm/secにされる場合(ステップS7でYes)、図7に示すように電圧制御部203によって第2のローラ13に印加する第2の直流電圧を50Vから70Vに高くする電圧選択制御がされる。その後、電圧制御部203によって第1のローラ11に印加する第1の直流電圧を300Vから320Vに高くする電圧選択制御がされる(ステップS9)。これらの電圧選択制御の方法はステップS5で説明した電圧選択制御と同様である。第2の直流電圧を50Vから70Vに上げてから第1の直流電圧を300Vから320Vに上げるまでの期間を制御期間Tとする。
【0065】
ステップS9の終了後又は、線速が200mm/secから400mm/secにされない場合(ステップS7でNo)、制御部200は連続印刷が終了したか判断する(ステップS11)。連続印刷が終了していなければ(ステップS11でNo)、ステップS3に戻る。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、感光体ドラム135の線速に応じて定められた第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差ΔVが同じであるデータを電圧記憶部205に予め記憶し、このデータを基にして電圧制御部203は第1及び第2の直流電圧を選択している。
【0067】
したがって、連続印刷中に感光体ドラム135の線速が変化しても、第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差ΔVを同じ(250V)にできるので、第2のローラ(現像ローラ)13上のトナー層の厚みを一定にすることができる。よって、本実施形態によれば現像性を確保しつつムラの少ない画像を形成することができる。
【0068】
また、ステップS5に示す第1及び第2の直流電圧を低くする制御及びステップS9に示す第1及び第2の直流電圧を高くする制御のいずれにおいても、図6及び図7の制御期間Tにおいて電圧差ΔVを230Vとしている。これは、制御期間Tでの電圧差ΔVが電圧記憶部205に記憶されている電圧差ΔV(250V)より小さくなる制御である。これにより、制御期間Tに上記電圧差ΔVが250Vより大きくなることはないので、第2のローラ13上のトナー層が厚くなりすぎることを防ぐことができる。
【0069】
また、制御期間Tの電圧差ΔVを250Vよりも小さい230Vにすることで、第2のローラ13上のトナー層が薄くなり、第1のローラ11に形成された磁気ブラシによるトナー層の回収が容易となる。そして、上記電圧差ΔVを250Vに上げて制御を終了する。制御期間Tとしては例えば、80msecである。したがって、第2のローラ13上からトナー層を回収した後、第2のローラ13上に新たに一定の厚みのトナー層を短時間で安定して形成することができる。よって、本実施形態によれば感光体ドラム135の線速が変化しても、ハーフ画像及びベタ画像のいずれも良好な画質にすることが可能となる。
【0070】
本実施形態では第1の直流電圧と第2の直流電圧をずらして変化させているが、同時に変化させてもよい。これによっても、連続印刷中に感光体ドラム135の線速が変化した場合に、第1の直流電圧と第2の直流電圧の電圧差ΔVを同じにできるので、第2のローラ13上のトナー層の厚みを一定にすることができる。
【0071】
本実施形態では連続印刷中に感光体ドラム135の線速が変化する場合で説明したが、感光体ドラム135の線速が200mm/secの印刷と400mm/secの印刷を別々に実行する場合も適用できる。
【0072】
本実施形態では画像形成装置1としてプリンタを例に説明したが、コピー機及びこれらの機能を有する複合機にも、本実施形態に係る画像形成装置1を適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
11 第1のローラ
13 第2のローラ
37 対向箇所
45 対向箇所
61 第1のローラ用電源部
63 第2のローラ用電源部
201 電圧制御部
203 線速制御部
135 感光体ドラム(像担持体)
141 現像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分現像剤を担持しながら回転することにより2成分現像剤を搬送する第1のローラと、前記第1のローラと対向する対向箇所で前記第1のローラから2成分現像剤中のトナーが供給され、供給されたトナーによって形成されたトナー層を担持しながら回転することによりトナーを搬送する第2のローラと、を含む現像装置と、
前記第2のローラと対向する対向箇所で前記第2のローラからトナーが供給される像担持体と、
前記第1のローラに第1の直流電圧を印加する第1のローラ用電源部と、
前記第2のローラに第2の直流電圧を印加する第2のローラ用電源部と、
前記像担持体の線速を制御する線速制御部と、
前記像担持体の線速に応じて定められた前記第1及び第2の直流電圧のデータであって、各線速において前記第1の直流電圧と前記第2の直流電圧の電圧差が同じであるデータを予め記憶している電圧記憶部と、
前記線速制御部によって制御された前記像担持体の線速に応じて、前記電圧記憶部に記憶されている前記第1及び第2の直流電圧を選択して、前記第1のローラ用電源部に選択した前記第1の直流電圧を前記第1のローラに印加させると共に前記第2のローラ用電源部に選択した前記第2の直流電圧を前記第2のローラに印加させる電圧選択制御をする電圧制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電圧制御部は、複数の用紙に画像を連続して記録する連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が変化させられる場合に前記電圧選択制御をする、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電圧制御部は、
前記連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が低くされる場合、前記第1の直流電圧を低くした後に、前記第2の直流電圧を低くする前記電圧選択制御をし、前記連続印刷中に前記線速制御部によって前記像担持体の線速が高くされる場合、前記第2の直流電圧を高くした後に、前記第1の直流電圧を高くする前記電圧選択制御をする、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−150216(P2011−150216A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12857(P2010−12857)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】