説明

画像形成装置

【課題】第1現像スリーブ21Yや第2現像スリーブ51Yの表面に対するトナー付着に起因する現像濃度ムラを抑えつつ、層厚規制部材25Yの電極部材に対するトナー固着を従来よりも抑える。
【解決手段】第1現像スリーブ21Y、第2現像スリーブ51Yのそれぞれについて、スリーブ表面における回転方向の全域のうち、前回の現像領域通過時に、回転軸線方向における面積率が所定値を超える静電潜像の現像に寄与した箇所を、層厚規制部材25Yとの対向位置に進入させるタイミングでは、層厚規制部材25Yに対するドクタバイアス(電源150から出力される電圧)の印加を中断する処理を実施するように、電源150、制御部200、リレー回路201などからなる電圧印加手段を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びキャリアを含有する現像剤により、潜像担持体上の潜像を現像してトナー像を得る複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、潜像担持体たる感光体の表面上に担持した静電潜像を、次のように現像してトナー像を得る。即ち、現像装置内において、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を撹拌部材によって撹拌する。この撹拌部材の近傍には、回転可能な非磁性パイプからなる現像スリーブと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラとを具備している。そして、撹拌部材によって撹拌している現像剤を、マグネットローラの磁力によって現像スリーブ表面に担持しながら、現像スリーブの回転により、感光体と対向する現像領域に搬送する。このとき、現像スリーブ表面に所定の間隙を介して対向しているドクターブレードにより、現像スリーブ表面上における現像剤の層厚を所定の厚みに規制する。現像領域に搬送された現像剤は、感光体の静電潜像と、現像スリーブ表面との電位差による現像ポテンシャルの作用により、現像剤から感光体の静電潜像に転移して現像に寄与する。
【0003】
このようにして感光体の表面上に形成されたトナー像は、感光体から直接あるいは中間転写体を介して記録紙に転写された後、定着装置によって記録紙の表面に定着せしめられる。定着装置は、記録紙の表面に定着ローラを押し付けながら記録紙を加熱して、トナー像を記録紙表面に定着させる。
【0004】
かかる構成の画像形成装置においては、高画質化を図る狙いから、粉砕法による比較的大粒径のトナーの代わりに、重合法などによる小粒径トナーが主流になりつつある。また、定着温度をより引き下げて省エネルギー化を図る狙いから、低温定着トナーを採用することもある。
【0005】
ところが、小粒径トナーや低温定着トナーは、現像剤担持体としての現像スリーブに対して比較的強い吸着力を発揮することから、次のような不具合を引き起こし易い。即ち、感光体の周面のうち、紙間対応領域など、比較的大きな非画像部が形成されている箇所が現像領域に進入すると、その非画像部と、現像スリーブ表面との間には、トナーを非画像部側から現像スリーブ側に静電移動させる非現像ポテンシャルが強く作用する。すると、現像スリーブ上に担持されている現像剤層の厚み方向において、現像スリーブ表面の近くに位置している現像剤中のトナーが現像スリーブ表面に移動して付着する。反転現像方式では、トナーが現像バイアスと同極性に帯電しているため、そのようにして現像スリーブ表面に付着すると、トナーの電荷によって現像スリーブ表面の電位を現像バイアスよりも高い値にする。このようにして現像バイアスよりも高い値になった現像スリーブ表面が、回転によって再び現像領域に進入すると、感光体の静電潜像との間に本来よりも大きな現像ポテンシャルを作用させることから、静電潜像を本来よりも濃い濃度で現像してしまう。これに対し、前の周回の現像領域において、ある程度の大きさの静電潜像と対向した現像スリーブ表面は、トナーを付着させておらず、現像バイアスとほぼ同じ表面電位になっているため、次の周回で静電潜像を正常な濃度で現像する。以上のように、現像スリーブ表面に対するトナー付着の有無により、静電潜像を本来よりも濃い濃度で現像したり、正常な濃度で現像したりすることで、画像濃度ムラを引き起こしてしまう。
【0006】
特許文献1に記載の画像形成装置においては、現像スリーブ表面に対するトナー付着に起因する不具合を解消するために、上述したドクターブレードとして導電性材料からなるものを用いている。そして、そのドクターブレードに対してトナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧を印加するか、あるいはそのドクターブレードを接地する。これにより、現像領域に進入する直前のスリーブ表面とドクターブレードとの間にトナーをスリーブ側からドクターブレード側に移動させる電界を形成することで、現像スリーブ表面に付着しているトナーを現像剤中に戻す。こうすることで、前の周回の現像領域で現像スリーブ表面にトナー付着を引き起こしても、次の周回でその現像スリーブ表面を再び現像領域に進入させる前にトナー付着を解消して、トナー付着に起因する画像濃度ムラの発生を回避することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドクターブレードと現像スリーブとの間に形成した電界により、トナーをドクターブレードに静電的に押し付けることで、ドクターブレードに対してトナーを固着させ易くなる。ドクターブレードに対するトナー固着が発生すると、現像剤の層厚の規制ムラによる現像濃度ムラを引き起こしてしまう。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現像剤担持体の表面に対するトナー付着に起因する現像濃度ムラを抑えつつ、ドクターブレード等の電極部材に対するトナー固着を従来よりも抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、現像スリーブ表面において、その回転軸線方向におけるある箇所にトナー付着を引き起こしても、その箇所が記録紙に対応しない箇所である場合には、トナー付着に起因する現像濃度過多を発生させることがないことに着目した。例えば、記録紙としてのハガキを長手方向に沿って搬送しながらそのハガキに画像を出力する場合、現像スリーブの回転軸線方向における全域のうち、ハガキの短手方向の寸法である100[mm]の箇所だけが記録対応箇所(以下、記録対応スリーブ箇所という)となる。それ以外の箇所は、現像には寄与しない。よって、100[mm]の記録対応スリーブ箇所でトナー付着が発生していなければ、それ以外の箇所でトナー付着が発生していても、トナー付着に起因する現像濃度過多は発生しないのである。出力画像の面積によっては、現像領域を通過した記録対応スリーブ箇所のほぼ全体において、トナー付着を発生させない場合がある。例えば、写真サイズの用紙の全面に写真画像を出力したり、ハガキのほぼ全面に写真画像を出力したりする場合である。これらのケースでは、現像領域において、記録対応スリーブ箇所のほぼ全体に感光体の静電潜像を対向させて現像ポテンシャルを作用させるので、トナーを殆ど付着させないのである。このような記録対応スリーブ箇所は、トナー付着を解消するための処理が必要ないので、その記録対応スリーブ箇所がドクターブレードとの対向位置を通過する際には、ブレードに対する電圧の印加やブレード接地を中断しても何ら差し障りはない。
【0010】
そこで、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、現像剤担持体の表面に担持したトナー及びキャリアを含有する現像剤を前記現像剤担持体の表面無端移動に伴って前記潜像担持体に対向する現像領域に搬送して、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像手段と、前記潜像担持体上のトナー像を、直接あるいは中間転写体を介して記録部材に転写する転写手段と、前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触するように前記現像手段内に配設された電極部材にトナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧を印加する電圧印加手段とを備える画像形成装置において、前記現像剤担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前回の現像領域通過時に、無端移動方向と直交する方向における面積率が所定値を超える潜像の現像に寄与した箇所を、前記電極部材との対向位置に進入させるタイミングでは、前記電極部材に対する前記逆極性の電圧の印加を中断する処理を実施するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、現像剤担持体の表面に担持したトナー及びキャリアを含有する現像剤を前記現像剤担持体の表面無端移動に伴って前記潜像担持体に対向する現像領域に搬送して、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像手段と、前記潜像担持体上のトナー像を、直接あるいは中間転写体を介して記録部材に転写する転写手段と、前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触するように前記現像手段内に配設された電極部材とアースとの接続状態を入切する接地入切手段とを備える画像形成装置において、前記現像剤担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前回の現像領域通過時に、前記潜像担持体の前記無端移動方向と直交する方向における面積率が所定値を超える潜像の現像に寄与した箇所を、前記電極部材との対向位置に進入させるタイミングでは、前記電極部材とアースとを切断する処理を実施するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触しながら、その現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を前記現像手段に設け、この層厚規制部材を導電性の材料で構成して前記電極部材として機能させたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記電極部材に対して前記逆極性の電圧を印加していないタイミングでは、前記電極部材を電気的にフロート状態にすることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記逆極性の電圧として、絶対値が10[V]以上の電圧を印加するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、前記転写手段による転写工程を経た後の潜像担持体表面に付着している転写残トナーを除去する除去手段と、前記除去手段によって除去されたトナーを前記現像手段内に戻してリサイクルするリサイクル手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明においては、現像剤担持体の表面における無端移動方向の全領域のうち、前回の現像領域通過時に、潜像担持体の前記無端移動方向と直交する方向における面積率が所定値を超える潜像の現像に寄与した箇所は、写真サイズの用紙の全面に出力される写真画像の現像に寄与した箇所と同様に、そのほぼ全体に渡ってトナー付着を発生させていないものである。このような箇所に対しては、既に説明したように、電極部材に対する電圧印加や、電極部材とアースとの電気接続による付着トナーの除去処理を省略しても、何ら差し障りない。そこで、その箇所を電極部材との対向位置に進入させるタイミングでは、電極部材に対する電圧印加を中断するか、あるいは、電極部材とアースとを切断する。これにより、電極部材に対して電圧を印加している時間や、電極部材をアースに接続している時間を従来よりも低減することで、電極部材に対するトナー固着を従来よりも抑えることができる。現像剤担持体の表面に対するトナー付着に起因する現像濃度過多の発生を抑えつつ、よって、電極部材に対するトナー固着を従来よりも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図2】同プリンタのY用のトナー像形成部における感光体及び現像装置をそれぞれ部分的に示す拡大部分構成図。
【図3】同プリンタにおける感光体の表面電位と、現像バイアスとの関係を説明するためのグラフ。
【図4】現像スリーブの表面上のトナー付着濃度と、現像スリーブの表面電位との関係を示すグラフ。
【図5】、従来のプリンタにおいて、記録紙の全面にベタ画像を出力する全面ベタ印刷を行ったときにおける記録紙の位置と画像濃度との関係を示すグラフ。
【図6】実施形態に係るプリンタにおける感光体及び現像装置を電圧印加手段とともに示す拡大部分構成図。
【図7】同プリンタにおける各種機器のオンオフタイミングを説明するためのタイミングチャート。
【図8】同プリンタにおいて、記録紙Pの全面にベタ画像を出力する全面ベタ印刷を行ったときにおける記録紙の位置と画像濃度との関係を示すグラフ。
【図9】同プリンタにおけるドクタバイアスの値と、画像先端部の画像濃度増加分(△ID)との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラーレーザープリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。このプリンタは、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(以下、Y,M,C,Kと記す)の各色のトナー像を形成するための4つのトナー像形成部を備えている。
【0014】
同図において、Y用のトナー像形成部、及びM用のトナー像形成部は、Y,M用の光書込ユニット10YMの下方に配設されている。また、C用のトナー像形成部、及びK用のトナー像形成部は、C,K用の光書込ユニット10CKの下方に配設されている。
【0015】
Y,M用の光書込ユニット10YMは、レーザーダイオード等からなる光源、正六面体のポリゴンミラー、これを回転駆動するためのポリゴンモータ、fθレンズ、レンズ、反射ミラー等を有している。そして、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて駆動される光源から射出したレーザー光を、ポリゴンミラー面で反射させてポリゴンミラーの回転に伴って偏向せしめながら、Y用のトナー像形成部の感光体3Yや、M用のトナー像形成部の感光体3Mの表面に到達させる。これにより、Y用の感光体3Yの表面にY用の静電潜像を書き込む。また、M用の感光体3Mの表面にM用の静電潜像を書き込む。Y,M用の光書込ユニット10YMについて説明したが、C,K用の光書込ユニット10CKも同様にして、C用の感光体3CやK用の感光体3Kに静電潜像を書き込む。
【0016】
Y,M,C,K用のトナー像形成部は、使用するトナーの色が互いに異なっている点の他は、ほぼ同様の構成になっている。Yトナー像を形成するためのY用のトナー像形成部について説明すると、これは、感光体3Y、一様帯電装置4Y、ドラムクリーニング装置5Y、現像装置20Y、図示しない除電ランプ等を有している。
【0017】
図中反時計回り方向に回転駆動されるドラム状の感光体3Yの周りには、一様帯電装置4Y、ドラムクリーニング装置5Y、図示しない除電ランプ等が配設されている。感光体3Yは、アルミ等の素管に有機感光層が被覆されたものである。
【0018】
一様帯電装置4Yは、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体3Yの表面をコロナチャージによって例えば負極性に一様帯電せしめる。
【0019】
図2は、Y用のトナー像形成部における感光体3Y及び現像装置20Yをそれぞれ部分的に示す拡大部分構成図である。同図の現像装置20Yにおいて、第1現像スリーブ21Yや第2現像スリーブ51Yを収容している現像室26Yは、感光体3Yと対向する側の壁に開口を有しており、そこからそれら現像スリーブの周面の一部を露出させている。それら現像スリーブは、それぞれ図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられる非磁性パイプからなる。第1現像スリーブ21Y,第2現像スリーブ51Yの内部には、スリーブに連れ回らないように固定されたマグネットローラ22Y,52Yが配設されている。磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとを含むY現像剤は、現像剤室26Yに隣接する図示しない撹拌室内で撹拌搬送されてYトナーの摩擦帯電が促されながら、第1現像スリーブ21Yや第2現像スリーブ51Yの表面に担持されて現像に使用される。
【0020】
同図において、第1現像スリーブ21Yや第2現像スリーブ51Yは、それぞれ感光体3Yの図中左側方に位置している。そして、第1現像スリーブ21Yは第2現像スリーブ51Yの上方に位置している。感光体3Yは、図中反時計回り方向に回転駆動されているので、感光体3Yの表面は、まず、第1現像スリーブ21Yに対向する第1現像領域を通過した後、第2現像スリーブ51Yに対向する第2現像領域を通過する。第1現像領域と第2現像領域とは連続しておらず、それら領域の間には、第1現像スリーブ21Yと、第2現像スリーブ51Yと、感光体3Yとに囲まれる空間が存在している。以下、この空間を「3面対向空間」という。
【0021】
第1現像スリーブ21Yは、図中反時計回り方向に回転駆動され、感光体3Yに対向する第1現像領域では、自らの表面を感光体3Yの表面とは逆方向に移動させる。これに対し、第1現像スリーブ21Yの下方に位置している第2現像スリーブ51Yは、図中時計回り方向に回転駆動され、感光体3Yに対向する第2現像領域では、自らの表面を感光体3Yの表面と同じ方向に移動させる。第1現像スリーブ21Yの表面と第2現像スリーブ51Yの表面とが対向している位置では、それら表面がともに図中左側から右側に向けて移動して感光体3Yに近づいていく。そして、「3面対向空間」に至ると、それぞれの表面は互いに遠ざかるように移動する。第1現像スリーブ21Yの表面は第1現像領域に向けて移動するのに対し、第2現像スリーブ51の表面は、第2現像領域に向けて移動する。この際、「3面対向空間」に配設された層厚規制部材25Yにより、第1現像スリーブ21Yの表面上に担持されている現像剤の層厚が規制されるとともに、第2現像スリーブ51Yの表面上に担持されている現像剤の層厚が規制される。「3面対向空間」内では、2つの現像スリーブの表面が互いに遠ざかる方向に移動することで、1つの層厚規制部材25Yによって2つの現像スリーブ上における現像剤の層厚を同時に規制することが可能になっている。
【0022】
第1現像スリーブ21Yと感光体3Yとが対向する第1現像領域では、図示しない電源から出力される負極性の現像バイアスが印加される第1現像スリーブ21Yと、感光体3Y上の静電潜像との間に、負極性のYトナーをスリーブ側から潜像側に静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、第2現像スリーブ51Yと感光体3Yとが対向する第2現像領域においても、図示しない電源から出力される負極性の現像バイアスが印加される第2現像スリーブ51と、感光体3Y上の静電潜像との間に現像ポテンシャルが作用する。
【0023】
一方、第1現像領域において、第1現像スリーブ21Yと感光体3Y上の非画像部(一様帯電地肌部)との間には、負極性のMトナーを地肌部側からスリーブ側に静電移動させる非現像ポテンシャルが作用する。また、第2現像領域においても、第2現像スリーブ51Yと感光体3Y上の非画像部との間に、非現像ポテンシャルが作用する。
【0024】
図3は、感光体3Yの表面電位と、現像バイアスとの関係を説明するためのグラフである。現像スリーブの表面電位は、現像バイアスとほぼ同じ値になるので、概ね−600[V]となる。同図に記載されている感光体地肌部とは、感光体3Yの全域のうち、一様帯電装置4Yによって一様帯電せしめらたまま、光書込や除電が施されていない部分のことを表している。感光体地肌部電位は、図示のように例えば−950[V]である。感光体地肌部に対する光書込によって形成された画像部は、その電位を−100[V]程度まで減衰させている。現像スリーブの表面電位は、感光体画像部(静電潜像)よりも500[V]高いので、現像領域においては、マイナス極性に帯電しているトナー粒子Tに対して、500[V]の現像ポテンシャルが作用する。
【0025】
第1現像スリーブ21Y上のY現像剤中のYトナーや、第2現像スリーブ51Y上のY現像剤中のYトナーは、それぞれ現像ポテンシャルの作用によってスリーブ上から離脱して感光体3Yの静電潜像上に転移する。この転移により、感光体3Y上の静電潜像がYトナー像に現像される。なお、感光体3Y上のYトナー像は、後述する転写ユニット70の中間転写ベルト71上に中間転写される。
【0026】
現像装置20Yは、透磁率センサからなる図示しないトナー濃度センサを有している。このトナー濃度センサは、現像装置20Yの図示しない撹拌室に収容されているY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。現像剤の透磁率は、現像剤のトナー濃度と良好な相関を示すため、トナー濃度センサはトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しないトナー補給制御部に送られる。このトナー補給制御部は、RAM等の記憶手段を備えており、その中にY用のトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるM用Vtrefや、他の現像装置に搭載されたトナー濃度センサからの出力電圧の目標値であるM,C,K用のVtrefのデータを格納している。Y用の現像装置20Yについては、Y用のトナー濃度センサからの出力電圧の値とY用のVtrefを比較し、図示しないYトナー濃度補給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。そして、これにより、補給用のYトナーを現像装置20Yの剤回収室内に補給する。このようにしてYトナー補給装置の駆動が制御(トナー補給制御)されることで、現像に伴ってYトナー濃度を低下させたY現像剤に適量のYトナーが補給され、現像装置20Y内のY現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。なお、現像装置20M,C,Kについても、同様のトナー補給制御が実施される。
【0027】
現像によって感光体3Yの表面上に形成されたYトナー像は、先に示した図1において、後述する中間転写ベルト71のおもて面に転写される。転写工程を経た感光体3Yの表面には、中間転写ベルト71上に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、ドラムクリーニング装置5Yによって除去される。このようにして転写残トナーが除去された感光体3Yの表面は、図示しない除電ランプによって除電された後、一様帯電装置4Yによって再び一様帯電せしめられる。
【0028】
Y用のトナー像形成部について詳しく説明したが、M,C,K用のトナー像形成部においても、同様のプロセスによって感光体3M,C,Kの表面にM,C,Kトナー像が形成される。
【0029】
互いに水平方向に並ぶように配設されたY,M,C,K用のトナー像形成部の図中下方には、転写ユニット70が配設されている。この転写ユニット70は、無端状の中間転写ベルト71のループ内側に配設された複数のローラによって中間転写ベルト71を張架している。そして、それらローラのうちの1つである駆動ローラ72の回転駆動によって中間転写ベルト71を図中時計回り方向に無端移動せしめる。このようにして無端移動せしめられる中間転写ベルト71は、その上側の張架面のおもて面をY,M,C,K用の感光体3Y,M,C,Kにそれぞれ当接させており、これによってY,M,C,K用の1次転写ニップを形成している。
【0030】
中間転写ベルト71のループ内側に配設された複数のローラのうち、4つは、それぞれY,M,C,K用の1次転写ローラ75Y,M,C,Kとして機能している。これら1次転写ローラ75Y,M,C,Kは、Y,M,C,K用の1次転写ニップの裏側でベルト裏面に当接しながら、中間転写ベルト71を感光体3Y,M,C,Kに向けて押し付けている。そして、1次転写ローラ75Y,M,C,Kには、それぞれトナーの帯電極性とは逆極性の1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップ内には、トナーを感光体3Y,M,C,K側からベルトおもて面側に静電移動させる転写電界が形成される。
【0031】
各色の感光体3Y,M,C,K上に形成されたY,M,C,Kトナー像は、各色の1次転写ニップにおいて、ニップ圧や転写電界の影響によって感光体側からベルトおもて面側に移動して中間転写ベルト71上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト71上には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0032】
中間転写ベルト71のループ内側に配設された下部ローラ73に対する掛け回し箇所には、2次転写バイアスローラ76がベルトおもて面側から当接しており、これによって2次転写ニップが形成されている。この2次転写バイアスローラ76には、図示しない電源や配線からなる電圧印加手段によって2次転写バイアスが印加されている。これにより、2次転写バイアスローラ76と、接地された下部ローラ73との間には2次転写電界が形成されている。中間転写ベルト71上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って2次転写ニップに進入する。
【0033】
プリンタの筺体の下部には、第1給紙カセット91,第2給紙カセット92が配設されており、それぞれは記録紙Pを複数枚重ねた記録紙束の状態で収容している。第1給紙カセット91,第2給紙カセット92は、一番上の記録紙Pを所定のタイミングで給紙路93に送り出す。送り出された記録紙Pは、給紙路の末端に配設されたレジストローラ対80のローラ間に挟み込まれる。
【0034】
レジストローラ対80は、給紙カセットから送られてきた記録紙Pをローラ間に挟み込むために両ローラを回転駆動させているが、記録紙Pの先端を挟み込むとすぐに両ローラの回転駆動を停止させる。そして、記録紙Pを中間転写ベルト71上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップでは、中間転写ベルト71上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0035】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト71表面に付着している2次転写残トナーは、クリーニングバックアップローラ74との間に中間転写ベルト71を挟み込んでいるベルトクリーニング装置77によってベルト表面から除去される。
【0036】
2次転写ニップから排出された記録紙Pは、搬送ベルトユニット81によって定着装置82に送られる。定着装置82は、定着ベルトユニット83と、加圧ローラ87とを有している。また、定着ベルトユニット83は、無端状の定着ベルト84と、これのループ内に配設された加熱ローラ85及びニップ裏側ローラ86とを具備している。定着ベルト84は、そのループ内側の加熱ローラ85及びニップ裏側ローラ86にそれぞれ掛け回された状態で、ニップ裏側ローラ86の図中時計回り方向の回転駆動に伴って図中時計回り方向に無端移動せしめられる。加熱ローラ85は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包しており、自らの表面に掛け回している定着ベルト84を加熱する。定着ベルト84のループ外側に配設された加圧ローラ87は、定着ベルト84におけるニップ裏側ローラ86に対する掛け回し箇所にベルトおもて面側から当接して定着ニップを形成している。
【0037】
定着装置82内に送られた記録紙Pは、定着ニップ内に挟み込まれる。そして、ニップ内で加圧及び加熱されることで、その表面にフルカラー画像が定着せしめられる。その後、記録紙Pは、定着装置82を通過すると、排紙ローラ対88を経て機外へと排出される。
【0038】
先に示した図3において、−600[V]の現像バイアスが印加される現像スリーブの表面は、感光体地肌部(−950V)よりも350[V]低い。このため、現像領域において、感光体地肌部と現像スリーブとの間には、350[V]の非現像ポテンシャルが作用する。感光体地肌部だけが現像領域に進入しているときなどには、その非現像ポテンシャルがスリーブ表面に広範囲に渡って作用するため、現像剤層のスリーブ表面に近い場所から、トナーがスリーブ表面に転移、付着する現象が発生する。すると、現像スリーブの表面付近の電位が、トナーの電荷によって現像バイアスよりも高くなって、現像ポテンシャルが本来の500[V]よりも大きくなることがある。このような現像ポテンシャルの状態では、感光体の画像部に本来よりも多くのトナーが付着して、現像濃度過多が発生する。
【0039】
図4は、現像スリーブの表面上のトナー付着濃度と、現像スリーブの表面電位との関係を示すグラフである。このグラフは、次のような実験の結果に基づいて作成されたものである。即ち、まず、全面地肌部とした感光体と、表面を白色に塗装した現像スリーブとを回転させて、現像スリーブの表面に対するトナー付着を意図的に発生させる。次に、感光体や現像スリーブの駆動を停止した後、現像装置をプリンタから取り外す。更に、現像装置から現像スリーブを取り外す。この際、現像スリーブをマグネットローラから分離して、現像剤をスリーブ表面上から静かに除去する。そして、現像スリーブの表面のトナー付着濃度を反射濃度計によって測定した後、表面電位計によって現像スリーブの表面電位を測定する。感光体や現像スリーブの回転時間を変更して、それぞれの回転時間で同様の測定を繰り返す。そして、得られた測定値に基づいて、図4のグラフを作成した。
【0040】
図示のように、現像スリーブの表面上のトナー付着濃度が高くなるほど、即ち、スリーブ表面に対するトナー付着量が多くなるほど、現像スリーブの表面電位が高くなることがわかる。トナー付着濃度によっては、表面電位が100[−V]よりも高くなっている。現像バイアスを印加していない状態において、トナーの電荷量だけで、現像スリーブの表面電位が100[−V]よりも高くなるのである。実機においては、現像スリーブの表面に付着したトナーがこのように表面電位を引き上げることで、現像スリーブの表面電位が現像バイアスよりも高くなる。これにより、通常よりも大きな現像ポテンシャルが作用して、現像濃度過多が発生するのである。
【0041】
図5は、従来のプリンタにおいて、記録紙Pの全面にベタ画像を出力する全面ベタ印刷を行ったときにおける記録紙の位置と画像濃度との関係を示すグラフである。図示のように、全面ベタ画像を出力すると、記録紙の先端部(搬送方向の先頭部)の画像濃度が、後端側の画像濃度よりも濃くなる。その先端部の紙搬送方向の長さは、現像スリーブの周長とほぼ同じである。
【0042】
このように、現像濃度過多を引き起こす画像先端部の長さが、現像スリーブの周長とほぼ同じなるのは、次に説明する理由による。即ち、理解を容易にするために、1本の現像スリーブだけで現像を行う場合を想定してみる。プリントジョブが開始されると、感光体の駆動と、現像スリーブの駆動とがそれぞれ開始された後、感光体の表面が一様帯電装置との対向位置で帯電され始める。また、現像スリーブには現像バイアスが印加される。その後、しばらくの間は、現像領域に対して感光体の地肌部だけを進入させながら、現像バイアスを印加する状態が続く。これにより、現像スリーブは、全周に渡ってトナー付着を引き起こした状態になる。次に、感光体の全面ベタの静電潜像先端部が現像領域に進入すると、その静電潜像先端部に対向する現像スリーブ箇所はトナー付着を引き起こしている。ここで言う全面ベタとは、感光体の全面に渡って形成するベタ部を意味するものではない。感光体の回転軸線方向における全域のうち、記録紙に対応する領域の全てに渡って、ベタ部が形成される状態を意味している。感光体における全面ベタの静電潜像の先端部は、現像スリーブ表面に対するトナー付着に起因して、本来よりも濃い濃度で現像される。このとき、現像領域において、現像スリーブ表面に現像ポテンシャルを作用させることから、自らが濃く現像されることと引き替えに、現像スリーブ表面に付着したトナーを現像剤中に引き戻す。このため、現像領域で全面ベタの静電潜像の先端部に対向した現像スリーブ箇所は、トナーを殆ど付着させていない状態に改善される。すると、次の周回では、静電潜像を正常な濃度で現像する。この結果、全面ベタの画像における先端から現像スリーブ周長分の箇所だけが、現像濃度過多になる。
【0043】
1本の現像スリーブだけで現像を行う場合を想定して説明したが、2本の現像スリーブの場合も同様である。2本の現像スリーブのうち、感光体回転方向のより上流側にある方の現像スリーブでは、1本の場合と全く同様の現象が起こる。全面ベタの静電潜像の先端が現像領域を進入した時点から、現像スリーブがちょうと1周した時点で、現像スリーブ表面に対するトナー付着が全周に渡って解消されるのである。そして、このことは、下流側にある方の現像スリーブでも変わらない。1本目の現像スリーブによる現像領域に対して全面ベタの静電潜像の先端部が進入しても、自らと感光体とが対向する現像領域にその静電潜像が進入してくるまでは、表面に対するトナー付着を起こし続ける。そして、自らの現像領域に静電潜像の先端が進入した時点から、自らがちょうど1周した時点で、その全周に渡るトナー付着が解消される。よって、静電潜像の先端から後端側にかけての現像スリーブ1周分の箇所は、1本目の現像スリーブによる現像領域と、2本目の現像スリーブによる現像領域とでそれぞれ、本来よりも濃い濃度で現像される。これに対し、現像スリーブ1周分よりも後端側の箇所は、それが現像領域に進入する際には既にスリーブ表面に対するトナー付着が解消されている。このため、1本目の現像スリーブによる現像領域と、2本目の現像スリーブによる現像領域とでそれぞれ、正常な濃度で現像される。
【0044】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図6は、同プリンタにおける感光体3Y及び現像装置20Yを電圧印加手段とともに示す拡大部分構成図である。同図において、層厚規制部材25Yは、金属等の導電性材料からなる。電極部材としての層厚規制部材25Yには、電圧印加手段が接続されている。この電圧印加手段は、電源150と、CPUやRAMなどから構成される制御部200と、リレー回路201とから主に構成されている。
【0045】
電圧印加手段の電源150は、トナーの正規帯電極性とは逆極性、即ち、本例ではプラス極性の電圧を出力するものである。電源150から出力されたプラス極性の電圧は、リレー回路201を介して層厚規制部材25Yに印加される。リレー回路201は、制御部200からの制御信号に基づいて、電源150と、層厚規制部材25Yとの間の電気接点を入切する。よって、電源150から電圧が出力されていても、リレー回路201の電気接点が「切」になっている場合には、層厚規制部材25Yに対してプラス極性の電圧は印加されない。
【0046】
制御部200は、現像スリーブの表面における回転方向の全領域のうち、前回の現像領域通過時に、回転軸線方向における記録対応スリーブ箇所での面積率が所定値を超える静電潜像の現像に寄与した箇所を、層厚規制部材25Yとの対向位置に進入させるタイミングでは、電源150から層厚規制部材25Yに対する電圧の印加を中断するように、リレー回路201の接点を切る処理を実施する。前述の所定値としては、90[%]を採用しているが、これよりも高くあるいは低く設定してもよい。
【0047】
本プリンタでは、現像スリーブとして、感光体3Yの回転方向におけるより上流側の位置に配設された第1現像スリーブ21Yと、より下流側の位置に配設された第2現像スリーブ51Yとが設けられているのに対し、層厚規制部材25Yが1つだけしか設けられていない。このため、第1現像スリーブ21Yと第2現像スリーブ51Yとの両方について、前述の箇所を層厚規制部材25Yとの対向位置に進入させるときに、前述の接点を切るようになっている。何れか一方の現像スリーブにおける前述の箇所が前記対向位置に進入するときであっても、そのときにもう一方の現像スリーブにおける前述の箇所が前記対向位置に進入しない場合には、前記接点は入れたままにする。なお、2つの現像スリーブについてそれぞれ、専用の層厚規制部材を設ける場合には、それぞれについて、電圧の入切を個別に制御する。
【0048】
図7は、本プリンタにおける各種機器のオンオフタイミングを説明するためのタイミングチャートである。同図では、記録紙に対する全面ベタの写真画像を2枚連続で出力する場合における各種機器のオンオフタイミングを示している。本プリンタは、感光体及び現像装置の組み合わせとして、Y,M,C,K用の4つ組合せを有しているが、それぞれにおける各種機器のオンオフタイミングは同様である。
【0049】
プリントジョブが開始されると、まず、プロセスモータの駆動がONされる。プロセスモータは、感光体や現像装置など、トナー像形成部の各機器の共通の駆動源となっているモータである。プロセスモータの駆動がONされると、感光体や現像スリーブが回転駆動される。
【0050】
プロセスモータの駆動がONされると、その後すぐに、帯電バイアスや現像バイアスの出力がONされる。帯電バイアスは、一様帯電装置のコロナチャージを駆動するためのバイアスである。帯電バイアスの出力がONされることで、一様帯電装置による感光体の一様帯電処理が開始する。また、現像バイアスは、既に述べた通り、現像スリーブに印加されるバイアスである。なお、図6に示した電源150からの出力電圧のオンオフタイミングは、現像バイアスと同じである。しかし、電源150からの出力電圧がオンになっても、リレー回路201が接点を切っている状態では、層厚規制部材には電圧が印加されない。
【0051】
帯電バイアスや現像バイアスの出力がONされてしばらくすると、1枚目の記録紙に対応する全面ベタ画像のための感光体に対する光書込が開始される。この光書込によって形成される全面ベタの静電潜像の先端は、書込開始からt1[秒]後に、第1現像スリーブ21Yによる第1現像領域の入口に進入する。この進入タイミングからt2[秒]だけ遡った時点で、ドクタバイアスの出力がONされる。ドクタバイアスは、層厚規制部材に印加されるトナーとは逆極性の電圧である。図6に示したように、第1現像スリーブ21Yは、第1現像領域で感光体3Yと逆方向に表面移動するように回転する。そして、層厚規制部材25Yは、第1現像領域よりも感光体回転方向下流側に位置しているため、ドクタバイアスが印加される層厚規制部材25Yとの対向位置でトナー付着が解消されたスリーブ表面箇所が第1現像領域の入口に到達するまでには、ある程度の時間を要する。この時間が、図7に示したt2[秒]なのである。
【0052】
感光体に形成される全面ベタの静電潜像の先端が第1現像領域に進入してから、第1現像スリーブ21Yがちょうど1回転した時点では、第1現像スリーブ21Yの表面の全周が、トナーを付着させていない状態になる。その期間の全てにおいて、現像領域で感光体上の全面ベタの静電潜像を第1現像スリーブ21Yに対向させるからである。しかし、第2現像スリーブ51Yの周方向における一部の箇所は、まだトナーを付着させている状態にある。静電潜像の先端が第1現像領域に進入してから、第2現像領域に進入するまでにタイムラグがあるからである。本プリンタでは、静電潜像の先端が第1現像領域の入口に進入してから、第2現像領域の入口に進入するまでに、t3[秒]のタイムラグがある。そこで、制御部200は、静電潜像の先端が第2現像領域の入口に進入してから、第2現像スリーブ51Yがちょうど1回転した時点で、ドクタバイアスの出力を切る処理を実行する。それ以降のしばらくの間は、第1現像スリーブ21Y、第2現像スリーブ51Yがともに、層厚規制部材との対向位置に対して、全面ベタの静電潜像に寄与した箇所を進入させることにより、その箇所に対しては付着トナーの除去処理を施す必要がないからである。
【0053】
1枚目の記録紙に対応する静電潜像の光書込が終了すると、その後しばらくしてから、2枚目の記録紙に対応する静電潜像の光書込が開始する。それら光書込を連続して実施することはできない。プリンタ内で記録紙を連続搬送する場合には、先行する記録紙の後端と、後続の記録紙の先端とには、どうしてもある程度の間隔をあける必要があるからである。その間隔に対応する感光体領域、即ち、感光体の紙間対応領域の長さを移動させる時間だけ、光書込を停止するのである。
【0054】
2枚目の記録紙に対応する静電潜像の光書込が開始されると、1枚目と同様のタイミングで、ドクタバイアスの印加が開始される。
【0055】
以上の構成の本プリンタにおいては、表面からのトナーの除去処理の必要のないスリーブ箇所を層厚規制部材との対向位置に進入させるタイミングでは、ドクタバイアスの印加を中断することで、層厚規制部材に対するドクタバイアスの印加時間を従来よりも低減する。これにより、層厚規制部材に対するトナー固着を従来よりも抑えることができる。
【0056】
図8は、実施形態に係るプリンタにおいて、記録紙Pの全面にベタ画像を出力する全面ベタ印刷を行ったときにおける記録紙の位置と画像濃度との関係を示すグラフである。本プリンタにおいては、層厚規制部材との対向位置に対して、前回の現像領域通過時に面積率90[%]以上の静電潜像の現像に寄与していない現像スリーブ箇所、即ち、トナー付着を引き起こしている現像スリーブ箇所を進入させるときには、引用文献1に記載の画像形成装置と同様に、ドクタバイアスを層厚規制部材に印加する。これにより、図示のように、画像先端部における現像濃度過多の発生を抑えることができる。
【0057】
図9は、ドクタバイアスの値と、画像先端部の画像濃度増加分(△ID)との関係を示すグラフである。ドクタバイアスとして、+10[V]未満の電圧を採用した場合には、画像先端部の画像濃度過多を十分に抑えることができていないことがわかる。画像濃度過多を抑えるためには、図示のように、ドクタバイアスを+10[V]以上に設定しなければならないことがわかる。そこで、本プリンタにおいては、ドクタバイアスを+10[V]以上の値に設定している。
【0058】
層厚規制部材に対するドクタバイアスの印加を中断しているときには、層厚規制部材を電気的にフロートにしている。これにより、層厚規制部材と現像スリーブ表面との間に、現像スリーブ表面側から層厚規制部材側に向かう電界が形成されるのを回避して、層厚規制部材に対するトナー固着の発生を確実に抑えることができる。
【0059】
本プリンタにおいては、Y,M,C,K用のトナー像形成部にそれぞれ、トナーリサイクル機構を設けている。このトナーリサイクル機構は、ドラムクリーニング装置(例えば5Y)で感光体表面から除去した転写残トナーを、再び現像装置(例えば20Y)に戻してリサイクルするための機構である。感光体上に発生する転写残トナーは、その殆どが平均粒径よりも小さなトナー粒子である。このようなトナー粒子は、平均粒径のトナー粒子に比べて転写され難いからである。よって、トナーリサイクル機構を設けていると、現像装置内のトナーの粒径分布が、新品のトナーの粒径分布よりも小粒径側に偏ってくるため、現像スリーブ表面に対するトナー付着を引き起こし易くなる。
【0060】
次に、実施形態に係るプリンタの変形例について説明する。変形例に係るプリンタでは、図6に示した電源150を設けておらず、リレー回路201をアースに直接接続している。リレー回路201の接点がオンになると、層厚規制部材25Yがアースに接続される。すると、−600[V]の現像バイアスが印加される現像スリーブ21Yの表面と、層厚規制部材25Yとの間に、マイナス極性のトナーをスリーブ側から層厚規制部材側に静電移動させる電界が形成されるので、スリーブ表面に付着したトナーを現像剤中に戻すことができる。
【0061】
これまで、いわゆるタンデム方式によってフルカラー画像を形成するプリンタを例にして説明してきたが、黒専用のトナー像形成手段しか備えていない画像形成装置にも、本発明の適用が可能である。
【0062】
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、現像剤担持体たる現像スリーブ(21Y,51Y)の表面上の現像剤に接触しながら、その現像剤の層厚を規制する層厚規制部材25Yを現像手段たる現像装置20Yに設け、この層厚規制部材25Yを導電性の材料で構成して電極部材として機能させている。かかる構成では、ドクタバイアスを印加するための専用の電極部材を設けることなく、スリーブ表面に付着したトナーの除去処理を行うことができる。
【0063】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、層厚規制部材25Yに対して、トナーとは逆極性の電圧であるドクタバイアスを印加していないタイミングでは、層厚規制部材25Yを電気的にフロート状態にしている。かかる構成では、層厚規制部材と現像スリーブ表面との間に、現像スリーブ表面側から層厚規制部材側に向かう電界が形成されるのを回避して、層厚規制部材に対するトナー固着の発生を確実に抑えることができる。
【0064】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、ドクタバイアスとして、絶対値が10[V]以上の電圧を印加するように、電源150等からなる電圧印加手段を構成しているので、層厚規制部材25Yと現像スリーブとの間に、トナーをスリーブ側から規制部材側に静電移動させる電界を確実に形成することができる。
【0065】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、転写手段たる転写ユニット70による転写工程を経た後の感光体表面に付着している転写残トナーを除去する除去手段たるドラムクリーニング装置5Yと、これによって除去されたトナーを現像装置20Yに戻してリサイクルするリサイクル手段たるトナーリサイクル機構とを設けている。かかる構成では、転写残トナーを現像装置20Yに戻してリサイクルすることで、無駄な廃棄トナーの発生を低減することができる。
【符号の説明】
【0066】
3Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
20Y:現像装置(現像手段)
21Y:第1現像スリーブ(現像剤担持体)
25Y:層厚規制部材(電極部材)
51Y:第2現像スリーブ(現像剤担持体)
70:転写ユニット(転写手段)
150:電源(電圧印加手段の一部)
200:制御部(電圧印加手段の一部)
201:リレー回路(電圧印加手段の一部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2001−228706号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体と、
現像剤担持体の表面に担持したトナー及びキャリアを含有する現像剤を前記現像剤担持体の表面無端移動に伴って前記潜像担持体に対向する現像領域に搬送して、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像手段と、
前記潜像担持体上のトナー像を、直接あるいは中間転写体を介して記録部材に転写する転写手段と、
前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触するように前記現像手段内に配設された電極部材にトナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧を印加する電圧印加手段とを備える画像形成装置において、
前記現像剤担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前回の現像領域通過時に、無端移動方向と直交する方向における面積率が所定値を超える潜像の現像に寄与した箇所を、前記電極部材との対向位置に進入させるタイミングでは、前記電極部材に対する前記逆極性の電圧の印加を中断する処理を実施するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
潜像を担持する潜像担持体と、
現像剤担持体の表面に担持したトナー及びキャリアを含有する現像剤を前記現像剤担持体の表面無端移動に伴って前記潜像担持体に対向する現像領域に搬送して、前記潜像担持体上の潜像を現像する現像手段と、
前記潜像担持体上のトナー像を、直接あるいは中間転写体を介して記録部材に転写する転写手段と、
前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触するように前記現像手段内に配設された電極部材とアースとの接続状態を入切する接地入切手段とを備える画像形成装置において、
前記現像剤担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前回の現像領域通過時に、前記潜像担持体の前記無端移動方向と直交する方向における面積率が所定値を超える潜像の現像に寄与した箇所を、前記電極部材との対向位置に進入させるタイミングでは、前記電極部材とアースとを切断する処理を実施するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記現像剤担持体の表面上の現像剤に接触しながら、その現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を前記現像手段に設け、この層厚規制部材を導電性の材料で構成して前記電極部材として機能させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1の画像形成装置において、
前記電極部材に対して前記逆極性の電圧を印加していないタイミングでは、前記電極部材を電気的にフロート状態にすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1の画像形成装置において、
前記逆極性の電圧として、絶対値が10[V]以上の電圧を印加するように、前記電圧印加手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの画像形成装置において、
前記転写手段による転写工程を経た後の潜像担持体表面に付着している転写残トナーを除去する除去手段と、
前記除去手段によって除去されたトナーを前記現像手段内に戻してリサイクルするリサイクル手段とを設けたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191664(P2011−191664A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59605(P2010−59605)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】