説明

画像形成装置

【課題】像保持体の逆回転に伴う、現像部に設けられた接触部材のめくれを抑制する。
【解決手段】感光体ドラム11を矢印A方向に回転させる画像形成動作が終了した後、感光体ドラム11の回転を停止させ、現像位置Pdeにおいて、現像ロール142の外周面上の現像剤層から感光体ドラム11にトナーを転移、付着させる。それから、感光体ドラム11を矢印A方向とは逆の矢印B方向に回転させ、クリーニングブレード162の先端部側に付着した異物の除去を行う。このとき、感光体ドラム11に付着したトナーは、現像ハウジング141に取り付けられた第1シール146と接触するシール位置Pseに到達し、潤滑剤として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、像担持体の回転とともに、その表面上に形成したトナー像を転写材上に転写して後、クリーニングブレードを用いて像担持体上の転写残トナーを除去し、画像形成動作を終了して像担持体の回転を停止させる画像形成装置において、転写日アスの印加停止後であって像担持体の回転停止前に逆回転制御を開始して像担持体を逆回転する制御手段を備えてなる像担持体回転制御装置が存在する(特許文献1参照)。
【0003】
また、他の公報記載の従来技術として、表面に静電潜像が形成される感光体ドラムと、感光体ドラムを正方向および逆方向に回転駆動する感光体ドラム回転駆動手段と、感光体ドラム表面を帯電させる帯電装置と、帯電された感光体ドラム表面に静電潜像を形成する露光装置と、現像ローラを有し現像ローラから感光体ドラム表面にトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置と、現像ローラに現像バイアス電位を供給する現像バイアス供給手段と、感光体ドラム表面のトナーが転写される中間転写媒体と、前記中間転写媒体に転写バイアス電位を供給する転写バイアス供給手段と、回転する感光体ドラムに当接して感光体ドラム表面を清掃するクリーニングブレードと有するクリーニング装置を備え、感光体ドラム回転駆動手段により所定のタイミングで感光体ドラムを逆回転させることによってクリーニングブレードの清掃を行うとともに、現像装置は、感光体ドラムが逆方向に回転する際に、クリーニングブレードと感光体ドラムとの当接部にトナーを供給する機能をもたせるようにした画像形成装置が存在する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−258713号公報
【特許文献2】特開2010−134359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、像保持体の逆回転に伴う、現像部に設けられた接触部材のめくれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、第1の回転方向に回転する像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された前記像保持体を、前記帯電部よりも当該第1の回転方向の下流側において露光して静電潜像を形成する露光部と、前記像保持体と対向する部位に開口が形成され且つ内部にトナーを含む現像剤が収容される現像容器と、当該開口に面した箇所に回転可能に設けられ且つ当該現像容器内の当該現像剤を当該像保持体との対向部に供給する現像剤供給部材と、当該現像剤供給部材よりも前記第1の回転方向の上流側において一端側が当該現像容器に取り付けられるとともに他端側が当該第1の回転方向に沿う向きで当該像保持体と接触し且つ当該現像容器内の当該現像剤の漏出を抑制する接触部材とを有し、当該像保持体に形成された前記静電潜像を、前記露光部よりも当該第1の回転方向の下流側において当該トナーで現像する現像部と、前記像保持体に形成された前記静電潜像を現像して得られるトナー像を、前記現像部よりも前記第1の回転方向の下流側において被転写材に転写する転写部と、前記転写部よりも前記第1の回転方向の下流側且つ前記露光部よりも当該第1の回転方向の上流側において前記像保持体に接触し当該像保持体に付着する付着物を清掃する板状の清掃部材とを含み、前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させた後、当該像保持体を前記第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向に回転させることで、当該像保持体に転移した当該トナーを当該像保持体と前記接触部材との対向部に到達させることを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記帯電部は、前記像保持体に接触する接触帯電部材を備え、前記像保持体の前記第2の回転方向における回転量は、当該像保持体に転移したトナーが当該像保持体と前記接触部材との対向部には到達し且つ当該像保持体と前記接触帯電部材との対向部には到達しない大きさであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させる場合に、当該現像剤供給部材と当該像保持体との間に、当該現像剤供給部材から当該像保持体にトナーが転移する電位差を形成させることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置である。
請求項4記載の発明は、前記電位差は、画像形成動作において前記現像剤供給部材と前記像保持体との間に形成される他の電位差よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
請求項5記載の発明は、前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させる場合に、当該現像剤供給部材の回転が停止していることを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置である。
【0008】
請求項6記載の発明は、第1の回転方向に回転する像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された前記像保持体を、前記帯電部よりも当該第1の回転方向の下流側において露光して静電潜像を形成する露光部と、前記像保持体と対向する部位に開口が形成され且つ内部にトナーを含む現像剤が収容される現像容器と、当該開口に面した箇所に回転可能に設けられ且つ当該現像容器内の当該現像剤を当該像保持体との対向部に供給する現像剤供給部材と、当該現像剤供給部材よりも前記第1の回転方向の上流側において一端側が当該現像容器に取り付けられるとともに他端側が当該第1の回転方向に沿う向きで当該像保持体と接触し且つ当該現像容器内の当該現像剤の漏出を抑制する接触部材とを有し、当該像保持体に形成された前記静電潜像を、前記露光部よりも当該第1の回転方向の下流側において当該トナーで現像する現像部と、前記像保持体に形成された前記静電潜像を現像して得られるトナー像を、前記現像部よりも前記第1の回転方向の下流側において被転写材に転写する転写部と、前記転写部よりも前記第1の回転方向の下流側且つ前記露光部よりも当該第1の回転方向の上流側において前記像保持体に接触し当該像保持体に付着する付着物を清掃する板状の清掃部材とを含み、前記像保持体を前記第1の回転方向に回転させ、前記帯電部、前記露光部、前記現像部および前記転写部によって当該像保持体に形成したトナー像を前記被転写材に転写し、当該像保持体を前記清掃部材で清掃する画像形成動作と、当該像保持体の回転を停止させ、回転を停止させた当該像保持体に当該現像部からトナーを転移させた後、当該像保持体を当該第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向に回転させることで、当該清掃部材の端部に付着した異物を取り除くとともに当該像保持体に転移したトナーを当該像保持体と前記接触部材との対向部に供給する供給動作と、を実行させることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項7記載の発明は、前記帯電部は、前記像保持体の外周面に接触する接触帯電部材を備え、前記供給動作において、前記像保持体の前記第2の回転方向における回転量は、当該像保持体に転移したトナーが当該像保持体と前記接触部材との対向部には到達し且つ当該像保持体と前記接触帯電部材との対向部には到達しない大きさであることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置である。
請求項8記載の発明は、前記像保持体を前記第1の回転方向に回転させる場合に前記現像剤供給部材を一方の回転方向に回転させ、当該像保持体を前記第2の回転方向に回転させる場合に当該現像剤供給部材を当該一方とは逆向きとなる他方の回転方向に回転させ、当該像保持体の回転を停止させる場合に当該現像剤供給部材の回転を停止させる共通の回転駆動部をさらに備えることを特徴とする請求項6または7記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、像保持体の逆回転に伴う、現像部に設けられた接触部材のめくれを抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、接触帯電部材に対するトナーの付着を抑制することができる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、より簡易にトナーを転移させることができる。
請求項4記載の発明によれば、電位差を他の電位差と同じにしてトナーを転移させた場合と比較して、像保持体に転移させるトナーの量を低減することができる。
請求項5記載の発明によれば、現像剤供給部材を回転させながらトナーを転移させた場合と比較して、像保持体に転移させるトナーの量を低減することができる。
請求項6記載の発明によれば、像保持体の逆回転に伴う、現像部に設けられた接触部材のめくれを抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、接触帯電部材に対するトナーの付着を抑制することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、像保持体および現像剤供給部材の駆動構成をより簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における複写機の概略構成を示す図である。
【図2】プロセスカートリッジを含む画像形成部の構成の一例を示す断面図である。
【図3】画像形成部の要部を拡大した図である。
【図4】実施の形態1における画像形成部の制御系の構成の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1における、画像形成動作終了前後での画像形成部の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】(a)は画像形成期間における感光体ドラム上での主走査方向位置と感光体電位との関係の一例を示す図であり、(b)は待機準備期間のうちの停止期間における感光体ドラム上での主走査方向位置と感光体電位との関係の一例を示す図である。
【図7】実施の形態2における画像形成部の制御系の構成の一例を示す図である。
【図8】実施の形態2における、画像形成動作終了前後での画像形成部の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態が適用された複写機1の概略構成を示す図である。この複写機1は、被転写材の一例としての用紙Pに画像を形成する画像形成装置2と、画像形成装置2の上方に配置され、図示しない原稿に形成された画像を読み取る画像読み取り装置3とを備えている。また、画像形成装置2は、画像の形成および用紙Pに対する画像の転写を行う画像形成部10と、用紙Pに転写された画像の定着を行う定着部20と、画像形成部10に対し用紙Pの供給を行う用紙供給部30とを備えている。
【0013】
画像形成部10は、回転可能に設けられた感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12と、帯電装置12によって帯電された感光体ドラム11を露光する露光装置13と、帯電装置12および露光装置13によって感光体ドラム11に形成された静電潜像をトナーで現像する現像装置14と、現像装置14によって感光体ドラム11に現像された画像(トナー像)を用紙Pに転写する転写装置15と、転写装置15による転写後の感光体ドラム11に付着する異物をクリーニングするクリーニング装置16とを備えている。本実施の形態では、画像形成部10を構成する各要素のうち、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14およびクリーニング装置16を一体化し、画像形成装置2に対して取り付けおよび取り外しが可能なプロセスカートリッジ100としている。また、プロセスカートリッジ100は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)などで構成され、プロセスカートリッジ100の種類を示す情報や、感光体ドラム11の回転数など、プロセスカートリッジ100の使用状況に関する情報を格納するためのメモリ18をさらに備えている。これに対し、画像形成装置2には読み出し/書き込み装置70が取り付けられており、画像形成装置2にプロセスカートリッジ100が取り付けられた場合には、この読み出し/書き込み装置70が、メモリ18に対する情報の書き込みおよびメモリ18からの情報の読み出しを行う。
【0014】
定着部20は、接触配置される一対の回転部材にて構成されており、画像が転写された用紙Pを、この一対の回転部材を介して加熱・加圧することで、用紙Pに画像を定着する。
【0015】
用紙供給部30は、例えば異なる大きさ、異なる向きあるいは異なる紙質を有する複数種の用紙Pの画像形成部10への供給を可能とするために、3つの給紙部すなわち第1給紙部31、第2給紙部32および第3給紙部33を有している。これら第1給紙部31〜第3給紙部33は、画像形成装置2の垂直方向に重ねて配置されており、第1給紙部31が上段に、第3給紙部33が下段に、第2給紙部32が中段に、それぞれ位置している。
【0016】
これら第1給紙部31〜第3給紙部33は共通の構成を有している。すなわち、第1給紙部31〜第3給紙部33は、それぞれ、上部に開口が形成され且つ内部に用紙Pを収容する用紙収容部41と、用紙収容部41に収容される複数の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出す繰り出しロール42と、繰り出しロール42によって繰り出された用紙Pを一枚ずつに捌く捌き機構43とを備えている。
【0017】
また、用紙供給部30には、第1給紙部31〜第3給紙部33から供給される用紙Pを、画像形成装置2の下方から上方に向けて搬送するための搬送経路Rが設けられている。この搬送経路Rは、画像形成部10および定着部20を通過するように構成されている。そして、搬送経路Rには、第3給紙部33から供給される用紙Pを搬送する搬送ロール44、第2給紙部32および第3給紙部33から供給される用紙Pを搬送する搬送ロール45、第1給紙部31〜第3給紙部33から供給される用紙Pを搬送するとともに画像形成部10に対する用紙Pの供給時期の調整を行うレジストレーションロール46、定着部20を通過した用紙Pを機外に排出するための搬送を行う排出ロール47が設けられている。そして、画像形成装置2の上部には、排出ロール47を介して排出される定着済の用紙Pを積載する用紙積載部2aが設けられている。
【0018】
また、画像形成装置2は、画像読み取り装置3や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から画像データを受信する受信部400と、画像形成装置2の動作を制御する制御部500と、受信した画像データに画像処理を施して露光装置13に出力する画像処理部600とを備えている。さらに、画像形成装置2は、表示パネルや各種ボタン等で構成されユーザからの指示を受け付けるユーザインタフェース(UI)700を備えている。そして、制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive)(いずれも図示せず)により構成されている。CPUは各種処理プログラムを実行するものであり、ROMには各種プログラム、各種テーブル、パラメータ等が記憶されており、RAMはCPUによる各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。
【0019】
図2は、上述したプロセスカートリッジ100を含む画像形成部10の構成の一例を示す断面図である。なお、図2には、プロセスカートリッジ100の構成要素を実線で示しており、露光装置13および転写装置15については2点鎖線で示している。また、図3は、図2に示す画像形成部10の要部を拡大した図である。
【0020】
像保持体の一例としての感光体ドラム11は、金属製の薄肉の円筒形ドラムの外周面に感光層を形成したものからなり、感光層は負の帯電極性を有する材料で構成されている。なお、感光体ドラム11を構成する円筒形ドラムは接地されている。また、本実施の形態の感光体ドラム11は、用紙Pに画像を形成する画像形成動作において、矢印A方向(図中時計回り方向)に回転するようになっている。さらに、本実施の形態の感光体ドラム11は、矢印Aで示す方向とは逆となる矢印B方向(図中反時計回り方向)にも回転できるようになっている。そして、感光体ドラム11は、後述する共通駆動モータ61(図4参照)によって回転駆動される。なお、本実施の形態では、矢印A方向が第1の回転方向に、矢印B方向が第2の回転方向に、それぞれ対応している。
【0021】
また、本実施の形態の画像形成部10では、感光体ドラム11の周囲に、矢印A方向に沿って、帯電装置12、露光装置13、現像装置14、転写装置15およびクリーニング装置16が配置されている。
【0022】
帯電部の一例としての帯電装置12は、例えば円柱状の帯電ロールにて構成されており、その表面が、感光体ドラム11の回転方向と交差する主走査方向に沿って、感光体ドラム11の外周面に接触するように配置されている。なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と帯電ロールとの接触部を帯電位置Pchと呼ぶ。この帯電ロールは、感光体ドラム11の外周面から駆動力を受けて回転するように構成されている。そして、接触帯電部材の一例としての帯電ロールは、例えばゴム材等で構成されており、後述する帯電電源62(図4参照)によって負極性の帯電バイアスが印加されるようになっている。
【0023】
露光部の一例としての露光装置13は、例えば後述する光源駆動部63(図4参照)にて駆動される光源(図示せず)から、画像データに応じたビームBmを感光体ドラム11の外周面に出射する。そして、本実施の形態の露光装置13は、帯電装置12によって帯電された感光体ドラム11の外周面のうち、トナー像を形成すべき位置に光照射を行うことで静電潜像を形成している。なお、以下の説明においては、露光装置13による感光体ドラム11上でのビームBmの照射部位を露光位置Pexと呼ぶ。
【0024】
現像部の一例としての現像装置14は、感光体ドラム11の外周面に対向する開口が形成され且つ内部にはトナーおよびキャリアを含む現像剤(図示せず)が収容される現像容器の一例としての現像ハウジング141と、この現像ハウジング141の開口に面した箇所に回転可能に配置される現像ロール142とを備えている。ここで、現像ロール142は、感光体ドラム11とは非接触に配置されている。なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と現像ロール142との対向部を現像位置Pdeと呼ぶ。また、現像ハウジング141内であって、感光体ドラム11からみて現像ロール142の背面下側には、感光体ドラム11の軸方向に沿って配置される第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144が設けられている。そして、第1攪拌搬送部材143と第2攪拌搬送部材144との間には、これら第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144を仕切る仕切り壁が設けられている。この仕切り壁は、現像ハウジング141と一体的に形成されている。なお、第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144の軸方向両端側には仕切り壁を設けておらず、第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144によって、現像ハウジング141内を現像剤が循環搬送されるようになっている。また、現像ロール142の図中右斜め上方には、現像ハウジング141に取り付けられ、現像ロール142に付着する現像剤の層厚さを規制する層厚規制部材145が設けられている。
【0025】
本実施の形態の現像装置14では、現像剤として、黒に着色されたトナーと磁性を有するキャリアとを含む、所謂2成分現像剤を用いている。また、この現像剤において、キャリアは正の帯電極性を有しており、トナーは負の帯電極性を有している。
【0026】
現像剤供給部材の一例としての現像ロール142は、回転可能に配設される中空状の現像スリーブ142aと、現像スリーブ142aの内側に固定的に配設されると共に、内部には複数の磁極(図示せず)が配列される磁石ロール142bとを有している。この現像スリーブ142aは、用紙Pに画像を形成する画像形成動作において、矢印C方向(図中反時計回り方向)に回転するようになっている。また、本実施の形態の現像スリーブ142aは、矢印C方向とは逆となる矢印D方向にも回転できるようになっている。そして、現像スリーブ142aは、後述する共通駆動モータ61(図4参照)によって回転駆動されるようになっている。さらに、現像スリーブ142aは、例えばSUS等の金属にて構成されており、後述する現像電源64(図4参照)によって現像バイアスが印加されるようになっている。なお、本実施の形態では、矢印C方向が一方の回転方向に、矢印D方向が他方の回転方向に、それぞれ対応している。
【0027】
また、現像装置14は、現像ハウジング141に設けられた開口に面した箇所のうち、現像位置Pdeよりも矢印A方向の上流側において現像ハウジング141に取り付けられた第1シール146と、現像位置Pdeよりも矢印A方向の下流側において現像ハウジング141に取り付けられた第2シール147とをさらに備えている。これら第1シール146および第2シール147は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等をフィルム状に成形したもので構成されており、それぞれが主走査方向に沿って伸びる矩形状の形状を有している。
【0028】
接触部材の一例としての第1シール146は、その長手方向の一端側が現像ハウジング141に固定されている。また、第1シール146は、その長手方向の一端側から他端側に向かう方向が矢印A方向に沿うように現像ハウジング141に取り付けられている。そして、第1シール146の少なくとも一部が、感光体ドラム11の外周面と接触するようになっている。なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と第1シール146との接触部をシール位置Pseと呼ぶ。一方、第2シール147も、その長手方向の一端側が現像ハウジング141に固定されている。また、第2シール147は、その長手方向の一端側から他端側に向かう方向が、矢印C方向に逆らうように現像ハウジング141に取り付けられている。そして、第2シール147の少なくとも一部が、現像ロール142(より具体的には現像スリーブ142a)の外周面と接触するようになっている。
【0029】
転写部の一例としての転写装置15は、例えば円柱状の転写ロールにて構成されており、その表面が、主走査方向に沿って、感光体ドラム11の外周面と接触するように配置されている。なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と転写ロールとの対向部を転写位置Ptrと呼ぶ。そして、搬送経路Rは、転写位置Ptrを通過するように設けられている。この転写ロールも、感光体ドラム11の外周面から直接あるいは用紙Pを介して駆動力を受けて回転するように構成されている。そして、転写ロールは、例えばゴム材等で構成されており、後述する転写電源65(図4参照)によって正極性の転写バイアスが印加される。
【0030】
クリーニング装置16は、感光体ドラム11の外周面に対向する開口が形成され且つ内部には空間が形成されるクリーナハウジング161と、このクリーナハウジング161の開口に面した箇所に配置されるクリーニングブレード162とを備えている。清掃部材の一例としてのクリーニングブレード162は、例えばポリウレタンゴム等を矩形状且つ板状に成形したもので構成されている。クリーニングブレード162は、その長手方向の一端側がクリーナハウジング161に固定されている。また、クリーニングブレード162は、その長手方向の一端側から他端側に向かう方向が、矢印A方向に逆らうようにクリーナハウジング161に取り付けられている。そして、クリーニングブレード162の長手方向他端側が、感光体ドラム11の外周面と接触するようになっている。なお、以下の説明においては、感光体ドラム11とクリーニングブレード162との接触部をクリーニング位置Pclと呼ぶ。
【0031】
また、クリーニング装置16は、クリーナハウジング161の内部に設けられ、クリーニングブレード162によって感光体ドラム11の外周面から掻き取られた異物を、図示しない回収容器に向けて搬送する搬送部材163をさらに備えている。なお、クリーニングブレード162によって掻き取られる異物としては、転写装置15による転写において、用紙Pに転写されずに感光体ドラム11の外周面に残留するトナー(残トナー)や、用紙Pから感光体ドラム11の外周面に転移してきた紙粉等が挙げられる。
【0032】
また、クリーニング装置16は、クリーナハウジング161に設けられた開口に面した箇所のうち、クリーニング位置Pclよりも矢印A方向の上流側においてクリーナハウジング161に取り付けられたクリーナシール164をさらに備えている。このクリーナシール164は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等をフィルム状に成形したもので構成されており、主走査方向に沿って伸びる矩形状の形状を有している。クリーナシール164は、その長手方向の一端側がクリーナハウジング161に固定されている。また、クリーナシール164は、その長手方向の一端側から他端側に向かう方向が、矢印A方向に沿うようにクリーナハウジング161に取り付けられている。そして、クリーナシール164の少なくとも一部が、感光体ドラム11の外周面と接触するようになっている。
【0033】
そして、本実施の形態では、プロセスカートリッジ100ひいては画像形成装置2の小型化を図るために、プロセスカートリッジ100における帯電装置12と現像装置14との間隔を狭めている。このため、露光装置13から出射されるビームBmは、帯電装置12と現像装置14との間の狭い空間を通って、感光体ドラム11に照射されるようになっている。
【0034】
図4は、本実施の形態における画像形成部10の制御系の構成の一例を示す図である。
制御部500は、感光体ドラム11および現像装置14に設けられた現像スリーブ142aをともに回転駆動する共通の回転駆動部の一例としての共通駆動モータ61、帯電装置12に設けられた帯電ロールに帯電バイアスを供給する帯電電源62、露光装置13に設けられた光源を駆動する光源駆動部63、現像装置14に設けられた現像スリーブ142aに現像バイアスを供給する現像電源64、そして転写装置15に設けられた転写ロールに転写バイアスを供給する転写電源65に、それぞれ制御信号を出力するようになっている。また、ここでは画像形成部10の制御系を示しているために図示はしていないが、制御部500は、これ以外に、定着部20や用紙供給部30を構成する各部にも制御信号を出力している。
【0035】
本実施の形態では、上述したように、感光体ドラム11および現像スリーブ142aの回転駆動を、共通駆動モータ61にて一括して行っている。これにより、共通駆動モータ61の正回転に伴って感光体ドラム11が矢印A方向(図2参照)に回転するときには、現像スリーブ142aが矢印C方向(図2参照)に回転する。また、共通駆動モータ61の逆回転に伴って感光体ドラム11が矢印B方向(図2参照)に回転するときには、現像スリーブ142aが矢印D方向(図2参照)に回転する。さらに、共通駆動モータ61が回転を停止した場合には、感光体ドラム11および現像スリーブ142aの両者が、ともに回転を停止する。したがって、感光体ドラム11が矢印A方向に回転し且つ現像スリーブ142aが矢印C方向に回転する場合、および、感光体ドラム11が矢印B方向に回転し且つ現像スリーブ142aが矢印D方向に回転する場合、のそれぞれにおいて、感光体ドラム11および現像スリーブ142aは、両者が対向する現像位置において同方向に回転することになる。また、感光体ドラム11が矢印A方向に回転し且つ現像スリーブ142aが矢印C方向に回転する場合、および、感光体ドラム11が矢印B方向に回転し且つ現像スリーブ142aが矢印D方向に回転する場合、のそれぞれにおいて、現像スリーブ142aの周速度は感光体ドラム11の周速度よりも高速(例えば2倍)に設定される。
【0036】
なお、以下の説明においては、感光体ドラム11の矢印A方向への回転を正転と称し、矢印B方向への回転を逆転と称する。また、現像スリーブ142aの矢印C方向への回転を正転と称し、矢印D方向への回転を逆転と称する。
【0037】
では、図1に示す画像形成装置2が実行する画像形成動作の概略について説明する。
図示しないパーソナルコンピュータあるいは画像読み取り装置3から出力される画像データを受信部400が受信すると、制御部500は、画像形成装置2を構成する画像形成部10、定着部20および用紙供給部30に対し制御信号を出力することで、画像形成動作を実行させる。なお、受信部400が受信した画像データは画像処理部600に出力され、画像処理部600において画像処理が施された後、露光装置13に出力される。
【0038】
画像形成動作の実行に際して、画像形成部10では、矢印A方向に回転(正転)する感光体ドラム11に対し、帯電装置12を用いた帯電、露光装置13を用いた露光、現像装置14を用いた現像を順次行う。その結果、感光体ドラム11にはトナー像すなわち画像が形成される。
【0039】
また、用紙供給部30では、画像形成の対象となる用紙Pが収容される第1給紙部31〜第3給紙部33のいずれかより、用紙Pの供給動作を行う。そして、供給された用紙Pは、その搬送方向先端がレジストレーションロール46に到達する位置まで搬送された後、一旦停止する。その後、レジストレーションロール46が回転を開始し、正転する感光体ドラム11上の画像が転写位置に到達する時期に合わせて、用紙Pを転写位置に到達させる。
【0040】
続いて、画像形成部10では、転写装置15が、搬送されてくる用紙Pに対し、感光体ドラム11上の画像の転写を行う。
そして、画像が転写された用紙Pは、定着部20において定着処理を受け、用紙積載部2aに排出される。
【0041】
次に、上述した画像形成動作における画像形成部10の動作について、図1〜図4を参照しつつ説明を行う。
画像形成部10では、共通駆動モータ61が正転を開始することによって、感光体ドラム11が矢印A方向への回転(正転)を開始し、且つ、現像装置14の現像ロール142に設けられた現像スリーブ142aが矢印C方向への回転(正転)を開始する。なお、現像装置14では、第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144も、現像スリーブ142aとともに回転を開始する。また、感光体ドラム11が正転を開始するのに伴い、帯電装置12に設けられた帯電ロールおよび転写装置15に設けられた転写ロールも連れ回りを開始する。さらに、帯電電源62から帯電装置12(帯電ロール)に対し、帯電バイアスの供給が開始される。さらにまた、光源駆動部63から露光装置13に対し、画像データに応じたビームBmの出力指示がなされる。また、現像電源64から現像装置14の現像スリーブ142aに対し、現像バイアスの供給が開始される。さらに、転写電源65から転写装置15(転写ロール)に対し、転写バイアスの供給が開始される。
【0042】
そして、画像形成部10では、以下の手順によって画像の形成が行われる。
まず、帯電装置12の帯電ロールと接触する帯電位置Pchを通過した感光体ドラム11の感光層は、全面にわたって帯電電位VHに帯電される。なお、この例における帯電電位VHは、例えば−700V程度である。
次に、露光装置13からのビームBmが照射される露光位置Pexを通過した感光体ドラム11の感光層は、照射対象とならなかった領域(背景領域)が帯電電位VHに維持される一方、照射対象となった領域(画像領域)が露光電位VLになる。このようにして、露光位置Pexを通過した感光体ドラム11の感光層には、帯電電位VHの背景領域と露光電位VLの画像領域とを含む静電潜像が形成される。なお、この例における露光電位VLは、例えば−100V程度である。
【0043】
続いて、静電潜像が形成された感光体ドラム11の感光層は、現像装置14に設けられた第1シール146と対向するシール位置Pseを通過した後、現像装置14に設けられた現像ロール142(より具体的には現像スリーブ142a)と対向する現像位置Pdeに到達する。
【0044】
現像装置14では、画像形成動作の開始に伴って第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144が回転しており、現像ハウジング141内で現像剤の攪拌搬送が行われている。この攪拌搬送により、現像剤を構成するトナーおよびキャリアは互いに摩擦し合うことになり、トナーが負極性に、キャリアが正極性に、それぞれ帯電する。その結果、攪拌搬送される現像剤において、キャリアに対しトナーが静電吸着した状態となる。そして、攪拌搬送される現像剤が現像ロール142との対向部に搬送されると、磁石ロール142bに設けられた磁極と現像剤に含まれるキャリアとの間に働く磁力により、一部のキャリアが現像ロール142側に転移する。このとき、現像ロール142側に転移するキャリアにはトナーが静電吸着しているため、結果として現像剤が現像ロール142側に転移することになり、現像スリーブ142aの外周面に現像剤による現像剤層が形成される。現像スリーブ142aに形成された現像剤層は、現像スリーブ142aの正転に伴って層厚規制部材145との対向部を通過する際、その厚さが予め決められた厚さに規制され、感光体ドラム11と対向する現像ハウジング141の開口に運ばれる。なお、層厚規制部材145によって規制された現像剤は、重力によって第1攪拌搬送部材143側に戻される。
【0045】
また、現像装置14では、画像形成動作の開始に伴って、現像スリーブ142aに対し現像電源64から現像バイアスVBとして第1現像バイアスVB1が印加されている。第1現像バイアスVB1は、帯電電位VHと露光電位VLとの間の大きさ(例えば−400V)に設定されている。このような設定を行うことにより、現像位置Pdeにおいて、現像スリーブ142a上の現像剤層から、感光体ドラム11上の画像領域(露光電位VLとなっている領域)にトナーが静電的に転移し、静電潜像を現像して可視像化する。すなわち、この例では反転現像方式によってトナー像の現像が行われる。なお、このときのトナーの挙動については後述する。また、この例では、現像スリーブ142aの周速度が、感光体ドラム11の周速度よりも高速に設定されているため、現像位置Pdeにおいて現像に必要なトナー量が確保されやすくなっている。その後、現像位置Pdeを通過した現像スリーブ142a上の現像剤層は、現像スリーブ142aの正転に伴って第2シール147との対向部を通過し、現像ハウジング141内に戻される。そして、現像ハウジング141内に戻された現像スリーブ142a上の現像剤層は、磁石ロール142bに設けられた磁極によって形成される反発磁界により、現像ロール142上から離脱して現像ハウジング141内に落下し、再び第1攪拌搬送部材143および第2攪拌搬送部材144によって攪拌搬送され、次の現像を待つこととなる。
【0046】
次に、現像位置Pdeを通過することによって画像が形成された感光体ドラム11の感光層は、転写装置15に設けられた転写ロールと対向する転写位置Ptrに到達する。
転写装置15では、画像形成動作の開始に伴って、転写ロールに対し転写電源65から正極性の転写バイアスが印加されている。このような設定を行うことにより、転写位置Ptrにおいて、感光体ドラム11に形成された画像を構成するトナー(負極性に帯電)は、転写位置Ptrを通過する用紙Pに転移・付着する。
【0047】
その後、転写位置Ptrを通過することによってトナーの転写が完了した感光体ドラム11の感光層は、クリーニング装置16に設けられたクリーナシール164との対向部を通過した後、クリーニング装置16に設けられたクリーニングブレード162と対向するクリーニング位置Pclに到達する。
【0048】
転写位置Ptrを通過した感光体ドラム11の感光層には、用紙Pに転写されなかったトナー(残トナー)や、転写位置Ptrにおいて用紙Pから転移した紙粉等が付着物として付着している。クリーニングブレード162は、クリーニング位置Pclにおいてこのような異物を掻き取り、クリーナハウジング161内に回収する。そして、クリーナハウジング161内に回収された異物は、搬送部材163によって外部に設けられた回収容器(図示せず)に向けて搬送される。
【0049】
そして、クリーニング位置Pclを通過することによって異物のクリーニングが完了した感光体ドラム11の感光層は、再び帯電位置Pchに到達し、以後、上述した手順を繰り返すことにより、画像の形成が行われていくことになる。
【0050】
なお、画像形成動作において、現像装置14では、層厚規制部材145との対向部を通過した現像スリーブ142a上の現像剤層から、トナーが離れて浮遊することがある。本実施の形態では、現像装置14に第1シール146を設けることにより、現像装置14において現像位置Pdeよりも矢印A方向上流側で浮遊するトナーが、帯電装置12側に漏出するのを抑制している。
【0051】
次に、画像形成動作の終了後に、画像形成部10が実行する処理について説明を行う。
図5は、本実施の形態における、画像形成動作の終了前後での画像形成部10の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、図5における初期状態では、上述した画像形成動作が実行されている。したがって、図5における初期状態において、感光体ドラム11および現像ロール142(現像スリーブ142a)は、共通駆動モータ61から受ける駆動力によって正転している。また、図5における初期状態において、帯電装置12(帯電ロール)に対する帯電バイアスの供給、露光装置13に対する露光信号の供給、現像装置14の現像ロール142(現像スリーブ142a)に対する現像バイアスVBの供給、そして、転写装置15(転写ロール)に対する転写バイアスの供給が、それぞれ行われている。なお、このときの現像バイアスVBの大きさは、第1現像バイアスVB1に設定される。
【0052】
時刻t0において、画像形成動作における最後の画像に対応する露光が終了すると、露光信号の供給が停止される。そして、最後の画像の転写が完了した後の時刻t1において、帯電バイアスの供給、現像バイアスVB(第1現像バイアスVB1)の供給および転写バイアスの供給が停止される。なお、時刻t1を経過した後も、共通駆動モータ61が正転を続けることから、感光体ドラム11および現像スリーブ142aは正転を続ける。したがって、時刻t1以降においても、現像スリーブ142aに形成された現像剤層が現像位置Pdeを通過することになるが、このときに現像位置Pdeを通過する感光体ドラム11には帯電および露光が行われておらず、しかも、現像スリーブ142aに対する現像バイアスVBの供給も停止されていることから、現像スリーブ142aから感光体ドラム11へのトナーの転移は生じにくい。
【0053】
次に、時刻t2において共通駆動モータ61が正転を停止することに伴い、感光体ドラム11および現像ロール142がそれぞれ正転を停止する。このとき、現像位置Pdeにおける現像スリーブ142aの表面には、現像剤層が形成されたままとなっている。
【0054】
続いて、時刻t3において、現像バイアスVBが第2現像バイアスVB2に設定される。第2現像バイアスVB2は、感光体ドラム11の感光層の残留電位VR(例えば−50V)と第1現像バイアスVB1(この例では−400V)との間の大きさ(例えば−200V)に設定されている。ここで、残留電位VRは、感光体ドラム11の帯電を終了した後に、感光層の疲労等に伴って感光層に残るようになった電荷によって発生するものである。このような設定を行うことにより、現像位置Pdeにおいて、現像スリーブ142a上の現像剤層から、感光体ドラム11にトナーが静電的に転移・付着し、現像位置Pdeにおける感光体ドラム11には帯状のトナー付着領域が形成される。なお、このときのトナーの挙動については後述する。その後、時刻t4において、現像バイアスVB(第2現像バイアスVB2)の供給が停止される。
【0055】
そして、時刻t5において共通駆動モータ61が逆転を開始することに伴い、感光体ドラム11および現像ロール142がそれぞれ逆転を開始する。その後、時刻t6において、共通駆動モータ61が逆転を停止することに伴い、感光体ドラム11および現像ロール142がそれぞれ逆転を停止する。
【0056】
なお、以下では、時刻t1までを画像形成期間Taと呼び、時刻t1から時刻t6までを待機準備期間Tbと呼び、時刻t6以降を待機期間Tcと呼ぶ。また、待機準備期間Tbのうち、時刻t1から時刻t2までを正転期間Txと呼び、時刻t2から時刻t5までを停止期間Tyと呼び、時刻t5から時刻t6までを逆転期間Tzと呼ぶ。さらに、停止期間Tyのうち、時刻t3から時刻t4までをトナー供給期間Twと呼ぶ。
【0057】
逆転期間Tzにおいて感光体ドラム11が逆転することに伴い、クリーニング装置16では、クリーニングブレード162の先端側に付着した異物あるいはクリーニングブレード162と感光体ドラム11との間に挟み込まれた異物が、クリーニングブレード162から離れていきやすくなる。
【0058】
また、逆転期間Tzにおける感光体ドラム11の外周面の移動距離は、停止期間Ty(より詳細にはトナー供給期間Tw)において、現像位置Pdeに位置する感光体ドラム11に転移・付着した帯状のトナー付着領域が、シール位置Pseには到達し、帯電位置Pchには到達しない大きさに設定される。これに伴い、感光体ドラム11に付着したトナーがシール位置Pseにおいて感光体ドラム11と第1シール146との間に挟み込まれることで、潤滑剤として機能するようになり、両者が互いに滑りやすくなることから、感光体ドラム11の逆転に伴う第1シール146のめくれが生じにくくなる。特に、本実施の形態では、第1シール146の取り付け位置と露光位置Pexとが近づいているために、感光体ドラム11の逆転に伴って第1シール146がめくれてしまった場合に、第1シール146によって露光位置Pexが塞がれてしまう(図3に二点鎖線で示した状態)懸念がある。また、感光体ドラム11に形成された帯状のトナー付着領域を帯電位置Pchまで到達させないようにすることで、トナーによる帯電ロールの汚染が生じにくくなる。
【0059】
次に、画像形成期間Taおよび待機準備期間Tb(より詳細にはトナー供給期間Tw)における、現像位置Pdeでのトナーの挙動について説明を行う。なお、本実施の形態では、画像形成期間Taにおいて画像形成動作が行われ、待機準備期間Tbにおいて供給動作が行われる。
図6(a)は、画像形成期間Taにおける、現像位置Pdeでの感光体ドラム11の主走査方向位置と、感光体ドラム11の電位(感光体電位と呼ぶ)との関係の一例を示している。ここでは、上述したように、感光体ドラム11における帯電電位VHが例えば−700V、露光電位VLが例えば−100V、現像スリーブ142aに供給する第1現像バイアスVB1が例えば−400Vであるものとする。この場合、第1現像バイアスVB1に対し露光電位VLは相対的に正となり、第1現像バイアスVB1に対し帯電電位VHは相対的に負となる。したがって、現像スリーブ142aに保持された負極性のトナーは、相対的に正となる露光電位VLの画像領域へと転移しやすくなる一方、相対的に負となる帯電電位VHの領域背景領域には転移しにくくなる。この例における露光電位VLと現像バイアスVB(第1現像バイアスVB1)との電位差(第1現像電位差VD1という)は300Vとなる。
【0060】
図6(b)は、待機準備期間Tbの停止期間Tyのうちのトナー供給期間Twにおける、現像位置Pdeでの感光体ドラム11の主走査方向位置と、感光体電位との関係の一例を示している。ここでは、上述したように、感光体ドラム11における残留電位VRが例えば−50V、現像スリーブ142aに供給する第2現像バイアスVB2が例えば−200Vであるものとする。この場合、第2現像バイアスVB2に対し残留電位VRは相対的に正となる。したがって、現像スリーブ142aに保持された負極性のトナーは、相対的に正となる残留電位VRの領域すなわち現像位置Pdeに位置する感光体ドラム11側に転移しやすくなる。このとき、現像位置Pdeにおける感光体電位は、主走査方向に沿って残留電位VRとなっているために、現像位置Pdeに位置する感光体ドラム11の外周面には、主走査方向に沿ってトナーが帯状に付着することになる。ただし、この例における残留電位VRと現像バイアスVB(第2現像バイアスVB2)との電位差(第2現像電位差VD2という)は150Vとなり、上述した第1現像電位差VD1よりも小さくなることから、トナーの転移量は画像形成動作のときよりも少なくなる。また、画像形成期間Taでは現像スリーブ142aが回転していたのに対し、トナー供給期間Twでは現像スリーブ142aが停止しているために、現像位置Pdeに対するトナーの供給量が制限されることから、この点でも、トナーの転移量は画像形成動作のときよりも少なくなる。
【0061】
<実施の形態2>
本実施の形態は、実施の形態1とほぼ同様であるが、トナー供給期間Twにおける感光体ドラム11へのトナー供給の手法を、実施の形態1と異ならせたものである。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
図7は、本実施の形態における画像形成部10の制御系の構成の一例を示す図である。
実施の形態1では、共通駆動モータ61を用いて、感光体ドラム11および現像スリーブ142aを一括して駆動していた。これに対し、本実施の形態では、感光体ドラム11を回転駆動する第1駆動モータ61aと、現像スリーブ142aを回転駆動する第2駆動モータ61bとを別々に設けており、制御部500はこれらにそれぞれ制御信号を出力する。
【0063】
そして、画像形成動作においては、これら感光体ドラム11および現像スリーブ142aが別々に駆動されるものの、感光体ドラム11が矢印A方向に正転し、現像スリーブ142aが矢印C方向に正転することになる。
【0064】
では、画像形成動作の終了後に、画像形成部10が実行する処理について説明を行う。
図8は、本実施の形態における、画像形成動作の終了前後での画像形成部10の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、図8における初期状態では、上述した画像形成動作が実行されている。したがって、図8における初期状態において、感光体ドラム11は第1駆動モータ61aから受ける駆動力によって正転し、現像ロール142(現像スリーブ142a)は第2駆動モータ61bから受ける駆動力によって正転している。また、図8における初期状態において、帯電装置12(帯電ロール)に対する帯電バイアスの供給、露光装置13に対する露光信号の供給、現像装置14の現像ロール142(現像スリーブ142a)に対する現像バイアスVBの供給、そして、転写装置15(転写ロール)に対する転写バイアスの供給が、それぞれ行われている。なお、このときの現像バイアスVBの大きさは、第1現像バイアスVB1に設定される。
【0065】
時刻t0において、画像形成動作における最後の画像に対応する露光が終了すると、露光信号の供給が停止される。そして、最後の画像の転写が完了した後の時刻t1において、帯電バイアスの供給、現像バイアスVB(第1現像バイアスVB1)の供給および転写バイアスの供給が停止される。なお、時刻t1を経過した後も、第1駆動モータ61aおよび第2駆動モータ61bが正転を続けることから、感光体ドラム11および現像スリーブ142aは正転を続ける。したがって、時刻t1以降においても、現像スリーブ142aに形成された現像剤層が現像位置Pdeを通過することになるが、このときに現像位置Pdeを通過する感光体ドラム11には帯電および露光が行われておらず、しかも、現像スリーブ142aに対する現像バイアスVBの供給も停止されていることから、現像スリーブ142aから感光体ドラム11へのトナーの転移は生じにくい。
【0066】
続いて、時刻t3において、第2駆動モータ61bが正転を開始することに伴い、現像ロール142が正転を開始する。このとき、第1駆動モータ61aは停止したままであるために感光体ドラム11は回転を停止しており、現像バイアスVBの供給も停止されたままである。このような設定を行うことにより、現像位置Pdeにおいて、現像スリーブ142aに形成された現像剤層が、感光体ドラム11の外周面を擦りながら移動することになり、現像スリーブ142a上の現像剤層から、感光体ドラム11に一部のトナーが物理的に転移・付着し、現像位置Pdeにおける感光体ドラム11には帯状のトナー付着領域が形成される。その後、時刻t4において、第2駆動モータ61bの正転が停止することに伴い、現像ロール142が正転を停止する。
【0067】
そして、時刻t5において第1駆動モータ61aが逆転を開始することに伴い、感光体ドラム11が逆転を開始する。このとき、第2駆動モータ61bは停止したままであるために現像ロール142は回転を停止している。その後、時刻t6において第1駆動モータ61aが逆転を停止することに伴い、現像ロール142が逆転を停止する。
【0068】
本実施の形態においても、逆転期間Tzにおいて感光体ドラム11が逆転することに伴い、クリーニング装置16では、クリーニングブレード162の先端側に付着した異物あるいはクリーニングブレード162と感光体ドラム11との間に挟み込まれた異物が、クリーニングブレード162から離れていきやすくなる。
【0069】
また、本実施の形態においても、逆転期間Tzにおける感光体ドラム11の外周面の移動距離は、停止期間Ty(より詳細にはトナー供給期間Tw)において、現像位置Pdeに位置する感光体ドラム11に転移・付着した帯状のトナー付着領域が、シール位置Pseには到達し、帯電位置Pchには到達しない大きさに設定される。
【0070】
なお、実施の形態1、2では、画像形成動作の終了時に感光体ドラム11の逆転動作を実行させるようにしていたが、これに限られるものではなく、画像形成動作の開始前に行うようにしてもかまわない。
また、本実施の形態では、画像形成動作の終了時に必ず感光体ドラム11の逆転動作を実行させるようにしていたが、これに限られるものではなく、例えば感光体ドラム11の回転数等に基づき、定期的に感光体ドラム11の逆転動作を行わせるようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0071】
2…画像形成装置、10…画像形成部、11…感光体ドラム、12…帯電装置、13…露光装置、14…現像装置、141…現像ハウジング、142…現像ロール、142a…現像スリーブ、142b…磁石ロール、143…第1攪拌搬送部材、144…第2攪拌搬送部材、145…層厚規制部材、146…第1シール、147…第2シール、15…転写装置、16…クリーニング装置、161…クリーナハウジング、162…クリーニングブレード、163…搬送部材、164…クリーナシール、61…共通駆動モータ、61a…第1駆動モータ、62…帯電電源、63…光源駆動部、64…現像電源、65…転写電源、P…用紙、Pch…帯電位置、Pex…露光位置、Pse…シール位置、Pde…現像位置、Ptr…転写位置、Pcl…クリーニング位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転方向に回転する像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電部と、
帯電された前記像保持体を、前記帯電部よりも前記第1の回転方向の下流側において露光して静電潜像を形成する露光部と、
前記像保持体と対向する部位に開口が形成され且つ内部にトナーを含む現像剤が収容される現像容器と、当該開口に面した箇所に回転可能に設けられ且つ当該現像容器内の当該現像剤を当該像保持体との対向部に供給する現像剤供給部材と、当該現像剤供給部材よりも前記第1の回転方向の上流側において一端側が当該現像容器に取り付けられるとともに他端側が当該第1の回転方向に沿う向きで当該像保持体と接触し且つ当該現像容器内の当該現像剤の漏出を抑制する接触部材とを有し、当該像保持体に形成された前記静電潜像を、前記露光部よりも当該第1の回転方向の下流側において当該トナーで現像する現像部と、
前記像保持体に形成された前記静電潜像を現像して得られるトナー像を、前記現像部よりも前記第1の回転方向の下流側において被転写材に転写する転写部と、
前記転写部よりも前記第1の回転方向の下流側且つ前記露光部よりも当該第1の回転方向の上流側において前記像保持体に接触し当該像保持体に付着する付着物を清掃する板状の清掃部材と
を含み、
前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させた後、当該像保持体を前記第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向に回転させることで、当該像保持体に転移した当該トナーを当該像保持体と前記接触部材との対向部に到達させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電部は、前記像保持体に接触する接触帯電部材を備え、
前記像保持体の前記第2の回転方向における回転量は、当該像保持体に転移したトナーが当該像保持体と前記接触部材との対向部には到達し且つ当該像保持体と前記接触帯電部材との対向部には到達しない大きさであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させる場合に、当該現像剤供給部材と当該像保持体との間に、当該現像剤供給部材から当該像保持体にトナーが転移する電位差を形成させることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電位差は、画像形成動作において前記現像剤供給部材と前記像保持体との間に形成される他の電位差よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像保持体の回転を停止させた状態で前記現像剤供給部材から当該像保持体にトナーを転移させる場合に、当該現像剤供給部材の回転が停止していることを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置。
【請求項6】
第1の回転方向に回転する像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電部と、
帯電された前記像保持体を、前記帯電部よりも前記第1の回転方向の下流側において露光して静電潜像を形成する露光部と、
前記像保持体と対向する部位に開口が形成され且つ内部にトナーを含む現像剤が収容される現像容器と、当該開口に面した箇所に回転可能に設けられ且つ当該現像容器内の当該現像剤を当該像保持体との対向部に供給する現像剤供給部材と、当該現像剤供給部材よりも前記第1の回転方向の上流側において一端側が当該現像容器に取り付けられるとともに他端側が当該第1の回転方向に沿う向きで当該像保持体と接触し且つ当該現像容器内の当該現像剤の漏出を抑制する接触部材とを有し、当該像保持体に形成された前記静電潜像を、前記露光部よりも当該第1の回転方向の下流側において当該トナーで現像する現像部と、
前記像保持体に形成された前記静電潜像を現像して得られるトナー像を、前記現像部よりも前記第1の回転方向の下流側において被転写材に転写する転写部と、
前記転写部よりも前記第1の回転方向の下流側且つ前記露光部よりも当該第1の回転方向の上流側において前記像保持体に接触し当該像保持体に付着する付着物を清掃する板状の清掃部材と
を含み、
前記像保持体を前記第1の回転方向に回転させ、前記帯電部、前記露光部、前記現像部および前記転写部によって当該像保持体に形成したトナー像を前記被転写材に転写し、当該像保持体を前記清掃部材で清掃する画像形成動作と、当該像保持体の回転を停止させ、回転を停止させた当該像保持体に当該現像部からトナーを転移させた後、当該像保持体を当該第1の回転方向とは逆向きの第2の回転方向に回転させることで、当該清掃部材の端部に付着した異物を取り除くとともに当該像保持体に転移したトナーを当該像保持体と前記接触部材との対向部に供給する供給動作と、を実行させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電部は、前記像保持体の外周面に接触する接触帯電部材を備え、
前記供給動作において、前記像保持体の前記第2の回転方向における回転量は、当該像保持体に転移したトナーが当該像保持体と前記接触部材との対向部には到達し且つ当該像保持体と前記接触帯電部材との対向部には到達しない大きさであることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像保持体を前記第1の回転方向に回転させる場合に前記現像剤供給部材を一方の回転方向に回転させ、当該像保持体を前記第2の回転方向に回転させる場合に当該現像剤供給部材を当該一方とは逆向きとなる他方の回転方向に回転させ、当該像保持体の回転を停止させる場合に当該現像剤供給部材の回転を停止させる共通の回転駆動部をさらに備えることを特徴とする請求項6または7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−88569(P2012−88569A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235935(P2010−235935)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】