説明

画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置

【課題】動画像情報の復号処理に過大な負荷をかけることなく特殊再生を可能とする画像情報記録装置、画像情報再生装置、及び当該画像情報記録装置で符号化された動画像情報を通常の再生装置で再生可能とする画像情報変換装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置によれば、画像パケットにピクチャタイプに応じたパケット識別子を割当て、さらに識別子マスクを有する再生速度情報を情報パケットに記述して記録し、再生時には識別子マスクを用いて識別子照合を行うことで、再生に必要な画像パケットのみを復号する。よって、復号部が通常速度に対応した復号処理能力しか備えていない場合でも、円滑な特殊再生が可能となる。また、本発明に係る画像情報変換装置によれば、画像情報記録装置で記録された動画像情報を通常の再生機器で再生可能なように変換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像情報を通常速度とは異なる速度で再生可能とする画像情報記録装置、画像情報再生装置、及び画像情報変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今のデジタル技術の発展により動画像をデジタル情報として記録することが可能となり、それに伴い小型軽量なデジタル撮影装置が開発され広く一般に普及した。これら動画像をデジタル化して記録する際には、記録する情報量の低減のため取得した動画像情報を圧縮符号化した後に記録媒体等に記録することが一般的である。これら圧縮符号化の方式としては、MPEG−2(Moving Picture E×perts Group)ビデオ規格(ISO/IEC 13818−2)に代表される圧縮符号化方式が標準化され普及している[非特許文献1]。
【0003】
上記のMPEG−2ビデオ規格では映像を構成する各画像(ピクチャ)をピクチャ単位で圧縮符号化して情報量の低減を図る圧縮符号化方式である。そして、MPEG−2ビデオ規格で圧縮符号化されたピクチャの種類としては、一枚のピクチャを静止画像としてピクチャ内符号化したIピクチャ(intra−coded picture)と、過去のピクチャを参照ピクチャとしてピクチャ間予測を行い符号化したPピクチャ(predictive−coded picture)と、過去及び未来のピクチャを参照ピクチャとしてピクチャ間予測を行い符号化したBピクチャ(bidiretionally predictive−coded picture)との3種類のピクチャタイプがある。
【0004】
また、上記の圧縮符号化方式をさらに進歩させた、MPEG−4 AVC規格(ISO/IEC 14496−10 Advanced Video Coding)も実用化されている[非特許文献2]。前述のMPEG−2ビデオ規格では基本的にIピクチャとPピクチャとを参照ピクチャとして用いBピクチャを参照ピクチャとすることはなかったが、MPEG−4 AVC規格ではBピクチャも参照ピクチャとして用いることが可能となり、MPEG−2ビデオ規格よりもさらに高能率な圧縮符号化を実現している。
【0005】
これら、MPEG−2ビデオ規格やMPEG−4 AVC規格で符号化された画像情報列であるビデオストリームはMPEG−2システム規格(ISO/IEC 13818−1)により音声情報列であるオーディオストリームと多重化されることが一般的である[非特許文献3]。
【0006】
そして近年、記録された動画像情報を通常の再生速度とは異なる速度で特殊再生することが要求されており、よって動画像情報を再生する画像情報再生装置には特殊再生を可能とする機能が求められている。
【0007】
MPEG−2システム規格で多重化された動画像情報を特殊再生する場合、多重化ストリーム中のビデオデータ(画像パケット)にランダムアクセスし、特殊再生に必要なピクチャの画像パケットのみを復号し再生する方法が考えられる。ここで、下記[特許文献1]では、多重化ストリームとは別に作成されたランダムアクセスのための情報を用いて、特殊再生に必要な画像パケットへのランダムアクセスを容易に行う方法が開示されている。
【0008】
【非特許文献1】Information Technology−Generic Coding of Moving Pictures and Associated Audio:Video(ITU−T Rec. H.262 | ISO/IEC 13818−2) 1995年
【0009】
【非特許文献2】Information Technology−Coding of audio−Visual objects − Part10:Advanced Video Coding(ITU−T Rec. H.264 | ISO/IEC 14496−10 AVC) 2003年
【非特許文献3】Information Technology−Generic Coding of Moving Pictures and Associated Audio: System(ITU−T Rec. H.262 | ISO/IEC 13818−1) 1995年
【特許文献1】特開2004−221918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、[特許文献1]に開示された発明によるランダムアクセスはIピクチャのみであるため、Iピクチャのみの極めて限定的な特殊再生しかできないという問題点がある。また、Iピクチャ以外のピクチャを用いて特殊再生を行う場合、MPEG−2ビデオ規格のようなフレーム間予測を用いた符号化方式では、Iピクチャ以外のピクチャを復号するために参照ピクチャの復号が必要不可欠であり、このため復号部には通常再生時以上の高い復号処理能力が要求される。このような、通常再生よりも高い復号処理能力が求められる上記の特殊再生方法は、現在の動画像の高精細化とそれに伴う動画像情報の増大化をふまえればより復号処理に大きな負担を掛けるものであり、復号処理能力の面からは好適とはいえない。よって、復号処理に過大な負荷のかからない特殊再生方法とそれを達成するための画像情報記録装置、画像情報再生装置の実現が望まれる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、符号化された動画像情報の復号処理に過大な負荷をかけることなく円滑な特殊再生を可能とする画像情報記録装置、画像情報再生装置、及び当該画像情報記録装置で符号化された動画像情報を通常の再生装置にて再生可能とする画像情報変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1)動画像情報をパケット化し多重化ストリームとして記録する画像情報記録装置において、
前記動画像情報を再生するときの再生速度を複数設定する再生速度設定部12と、
前記再生速度に対応する配列順に前記動画像情報の各ピクチャをMPEGビデオ規格に準拠したピクチャタイプの符号化データとなるように符号化する符号化部14と、
前記符号化データに割り当てるパケット識別子を前記再生速度の設定数に応じて設定する識別子設定部15と、
前記パケット識別子を照合する際のマスク処理に用いる識別子マスクを前記再生速度に応じて設定するとともに、当該識別子マスクを有する再生速度情報を前記再生速度ごとに作成する速度情報作成部16と、
前記符号化データに前記パケット識別子をピクチャタイプに応じて割り当てて画像パケット化するとともに、画像パケットを認識するためのビデオ識別子を記録した識別子情報を有するシステムデータに前記再生速度情報を記述して情報パケット化し、前記画像パケットと前記情報パケットとを含む多重化ストリームを生成する多重化部18と、
前記多重化ストリームを所定の記録媒体1に記録する記録部19と、
を有することを特徴とする画像情報記録装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)上記(1)記載の画像情報記録装置50で記録された多重化ストリームを記録媒体1から読み出す読出部22と、
読み出された前記多重化ストリームに多重化された画像パケットのパケット識別子を取得する識別子取得部32と、
後段の識別子照合部39の指示に基づき前記多重化ストリーム中の各パケットを振分けることで、情報パケットをシステムデータ解析部36に出力し、所定のパケット識別子を有する画像パケットを復号部28に出力するデータ振分け部34と、
前記データ振分け部34で振分けられた画像パケットを復号する復号部28と、
前記データ振分け部34で振分けられた前記情報パケットから前記識別子情報と前記再生速度情報とを取得するシステムデータ解析部36と、
前記多重化ストリームの再生可能速度を前記再生速度情報から取得し、当該再生可能速度の中から前記多重化ストリームの再生速度を選択する再生速度選択部24と、
前記再生速度選択部24で選択された再生速度と対応した前記再生速度情報から前記識別子マスクを取得する識別子マスク取得部38と、
前記識別子取得部32で取得された画像パケットのパケット識別子と前記識別子情報に記録されたビデオ識別子とに対し、画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子との照合に関与するビットのみに前記識別子マスクによる前記再生速度に応じたマスク処理を施した上で照合を行い、マスク処理の施されるビットの範囲が前記識別子マスクによって変化することで、前記再生速度の再生に必要な画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子とを適合させて画像パケットとして認識させ、パケット識別子を有する画像パケットに対し前記復号部28への振分け指示を行うとともに、前記情報パケットに対し所定の振分け指示を行う識別子照合部39と、
を有することを特徴とする画像情報再生装置60を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)上記(1)記載の画像情報記録装置50で記録された多重化ストリームを記録媒体1から読み出す読出部22aと、
読み出された前記多重化ストリームに多重化された画像パケットのパケット識別子を取得する識別子取得部32aと、
後段の識別子照合部39aの指示に基づき、前記多重化ストリーム中の情報パケットをシステムデータ解析部36aに出力し、所定のパケット識別子を有する画像パケットを識別子書換部44に出力し、情報パケット及び画像パケットを除いたパケットを多重化部18aに出力するデータ振分け部34aと、
前記データ振分け部34aで振分けられた前記情報パケットから前記識別子情報と前記再生速度情報とを取得するとともに、当該情報パケットを再生速度情報除去部42に出力するシステムデータ解析部36aと、
通常の再生速度と対応した前記再生速度情報から前記識別子マスクを取得する識別子マスク取得部38aと、
前記識別子取得部32aで取得された画像パケットのパケット識別子と前記識別子情報に記録されたビデオ識別子とに対し、画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子との照合に関与するビットのみに前記識別子マスクによる通常再生に応じたマスク処理を施した上で照合を行い、通常再生に必要な画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子とを適合させて画像パケットとして認識させ、適合したパケット識別子を有する画像パケットに対し識別子書換部44への振分け指示を行うとともに、前記情報パケットに対し所定の振分け指示を行う識別子照合部39aと、
前記データ振分け部34aで振分けられた画像パケットのパケット識別子を前記ビデオ識別子に書換える識別子書換部44と、
前記システムデータ解析部36aから出力された前記情報パケットから前記再生速度情報を除去する再生速度情報除去部42と、
前記識別子書換部44により識別子が書換えられた画像パケットと、前記再生速度情報除去部42により再生速度情報が除去された情報パケットと、前記データ振分け部34aで振分けられたパケットと、を多重化して多重化ストリームを生成する多重化部18aと、
前記多重化部18aで生成された多重化ストリームを所定の記録媒体1aに記録する記録部19aと、
を有することを特徴とする画像情報変換装置70を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置によれば、
画像パケットに再生速度に応じたパケット識別子を割り当てることで、特殊再生に必要な画像パケットのみを選別して復号処理を行うことが可能となり、通常再生と同等の複合処理能力で円滑な特殊再生を行うことができる。
また、本発明に係る画像情報変換装置によれば、本発明に係る画像情報記録装置で記録された動画像情報を通常の再生装置で再生可能な動画像情報に変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る画像情報記録装置の実施の一形態を示すブロック図である。図2は、本発明に係る画像情報記録装置及び画像情報再生装置におけるMPEG-2ビデオ規格での記録再生を説明する図である。図3は、本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置に用いるパケット識別子の例を示す図である。図4は、本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置に用いる再生速度情報を示す図である。図5は、本発明に係る画像情報記録装置及び画像情報再生装置におけるMPEG−4 AVC規格での記録再生を説明する図である。図6は、本発明に係る画像情報再生装置の実施の一形態を示すブロック図である。図7は、本発明に係る画像情報変換装置の実施の一形態を示すブロック図である。尚、図1、図6、図7において、本発明に直接関係のないブロックに関しては記載及び説明を省略するものとする。また、以下の記述において、画像パケットの識別子をパケット識別子と記載し、多重化ストリームに多重化されている全てのパケットの識別子を包括して示す場合及び画像パケット以外のパケットの識別子を示す場合には単に識別子と記載して両者を区別する。
【0015】
先ず、本発明に係る画像情報記録装置の一実施の形態を図1を用いて説明する。
【0016】
図1に示す画像情報記録装置50の再生速度設定部12は、画像情報記録装置50で記録した動画像情報を再生する際の再生速度を通常再生を含めて複数設定する。この再生速度の設定は、ユーザによるタッチパネルや所定のボタン操作などによる指示動作、もしくは画像情報記録装置50に予め設定されている再生速度の選択等により行われる。そして、再生速度設定部12は、設定された複数の再生速度を、符号化部14、識別子設定部15、及び再生速度情報作成部16に出力する。
【0017】
符号化部14は、動画像情報取得部11で取得したデジタル信号化された動画像情報の各ピクチャを、MPEGビデオ規格に準拠し、さらに再生速度設定部12で設定された複数の再生速度に対応した配列順となるようにピクチャタイプ(Iピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャ)を選択して符号化し各ピクチャごとの符号化データを作成する。そして、作成された符号化データを多重化部18に出力する。
【0018】
識別子設定部15は、再生速度設定部12で設定された再生速度の設定数に応じて前記符号化データに割り当てる複数のパケット識別子を設定し、多重化部18に出力する。
【0019】
また、再生速度情報作成部16は、再生速度設定部12で設定された再生速度ごとに所定の再生速度情報を作成する。
【0020】
尚、上記の符号化部14、識別子設定部15、再生速度情報作成部16の詳細な動作は後に詳述する。
【0021】
多重化部18は、符号化部14で作成された各ピクチャの符号化データに対し、そのピクチャタイプに応じて識別子設定部15で設定されたパケット識別子を割り当てた上でパケット化し画像パケットを作成する。また、多重化部18は、再生速度情報作成部16で作成された再生速度情報を動画像情報のシステムデータの一つであるPMT(Program Map Table)中の記述子(Descriptor)に書き込んだ上でパケット化し情報パケットを作成する。さらに、多重化部18は、これら画像パケットと情報パケットとオーディオストリーム等の画像情報に付随するデータとを多重化して多重化ストリームを作成し記録部19に出力する。尚、PMTには多重化ストリーム中の画像パケットの識別に用いる一般的なビデオ識別子と各パケットを識別するための各パケットの識別子が記録された識別子情報を含んでいる。ただし、この識別子情報には識別子設定部15で設定されたパケット識別子は記録されていない。
【0022】
記録部19は、多重化部18で作成された多重化ストリームを、DVD(Digital Versatile Disc)−R、DVD−RW等の光情報記録媒体、ハードディスク、半導体メモリ等の所定の記録媒体1に記録する。
【0023】
次に、本発明に係る画像情報記録装置50の特に符号化部14、識別子設定部15、再生速度情報作成部16の動作を詳細に説明する。
【0024】
図2は、再生速度設定部12で設定された再生速度が通常再生、3倍速および12倍速の特殊再生である場合の、MPEG-2ビデオ規格に準拠して圧縮符号化したときの各ピクチャのピクチャタイプとその配列等を示したものである。ここで、図2(a)は、動画像情報取得部11で取得される動画像情報の各ピクチャを取得順に示したものである。尚、図2(a)は、後述する画像情報再生装置60で通常再生する際の再生ピクチャも同時に示している。また、図2(b)、(c)は、後述する画像情報再生装置60で3倍速および12倍速で特殊再生する際の再生ピクチャをそれぞれ示している。また、図2(d)は、図2(a)に示す各ピクチャを符号化部14において符号化する際の符号化順とそのピクチャタイプの配列を示したものである。また、図2(e)は、図2(d)に示したピクチャの符号化データにそれぞれ割り当てるパケット識別子を示したものである。尚、図2(a)〜(d)、及び後述する図5(a)〜(g)に示す各ピクチャに記載されたナンバーの先頭のI、P、BはそれぞれIピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャを示し、続く数字はピクチャの取得順序を示すものとする。
【0025】
図2に示すように、再生速度設定部12で設定された再生速度が通常再生、3倍速および12倍速の場合、画像情報記録装置50の符号化部14は、図2(a)〜(c)に示すように、Iピクチャを12周期とし且つIピクチャとPピクチャとが3周期となるように各ピクチャの圧縮符号化を行う。そして、図2(d)に示すように、参照ピクチャとなるIピクチャが先頭となるように各ピクチャの符号化データ(画像パケット)を配列する。尚、再生速度設定部12で設定する特殊再生速度が3倍速および15倍速であれば、符号化部14はIピクチャを15周期とし且つIピクチャとPピクチャとが3周期となるように各ピクチャの圧縮符号化を行う。また、再生速度設定部12で設定する特殊再生速度が4倍速および16倍速であれば、符号化部14はIピクチャを16周期とし且つIピクチャとPピクチャとが4周期となるように各ピクチャの圧縮符号化を行う。ただし、本発明はピクチャタイプを選択して特殊再生を行うものであるから、再生速度設定部12で設定可能な再生速度の設定数は、圧縮符号化時のピクチャタイプの種類の数を超えることはできない。
【0026】
識別子設定部15は、前述のように再生速度設定部12で設定した再生速度の設定数に応じてパケット識別子を設定する。そして、多重化部18は各ピクチャの符号化データに識別子設定部15で設定されたパケット識別子をピクチャタイプに応じて割り当てる。図2の例では、特殊再生速度が3倍速および12倍速の2つの例を示しているため、識別子設定部15は、図3(a)に示すように、通常再生と2つの特殊再生速度に対応する3つのパケット識別子、即ち第1識別子0×1000、第2識別子0×1001、第3識別子0×1002を設定する。そして、多重化部18は、図2(e)に示すように、Iピクチャに第1識別子0×1000を、Pピクチャに第2識別子0×1001を、Bピクチャに第3識別子0×1002を、それぞれ割り当てた上でパケット化し、画像パケットとして多重化する。尚、第1識別子0×1000はビデオ識別子と同等なものである。
【0027】
また、画像情報記録装置50の再生速度情報作成部16は再生速度設定部12で設定された再生速度ごとに再生速度情報を作成する。ここで、再生速度情報作成部16で作成される再生速度情報の例を図4(a)に示す。再生速度情報は、図4(a)に示されるように、再生速度のエントリーNo.であるentry_numと、各エントリーの再生速度が低速再生であるか高速(通常)再生であるかを示すspeed_flagと、再生速度を示すspeedと、識別子の照合時にマスク処理を施して画像パケットの選別を行うためのpid_mask(識別子マスク)とから構成される。尚、図4(a)中のreservedは記述子に記述する際のビット数を調整するものである。
【0028】
次に、図2の例で作成される再生速度情報の各値等を図4(b)に示す。図2の例においては、再生速度は通常再生と3倍速と12倍速の3種類であるから、再生速度情報作成部16が作成する再生速度情報はentry_num1〜3の3つとなる。ここで、entry_num1の再生速度情報を通常再生とすれば、entry_num1のspeedは1となる、そしてこのときのpid_maskを0×0003とする。また、entry_num2の再生速度情報を3倍速の特殊再生とすれば、entry_num2のspeedは3となる、そしてこのときのpid_maskを0×0001とする。また、entry_num3の再生速度情報を12倍速の特殊再生とすれば、entry_num3のspeedは12となる、そしてこのときのpid_maskを0×0000とする。尚、entry_num1〜3は通常の再生速度もしくは高速の再生速度のため、speed_flagは0となる。これらの再生速度情報は、多重化部18でPMT中の記述子に書き込まれた上でパケット化され情報パケットとして多重化される。
【0029】
次に、MPEG−4 AVC規格を用いた例を説明する。図5は、再生速度設定部12で設定された再生速度が通常再生及び、1/4倍速、1/2倍速、3倍速、12倍速の特殊再生である場合の、MPEG−4 AVC規格に準拠して圧縮符号化したときの各ピクチャのピクチャタイプとその配列等を示したものである。尚、本発明を用いて1/4倍速の特殊再生を達成するためには、画像情報記録装置50で記録する動画像情報は通常の4倍の撮影速度で撮影する必要がある。ここで、図5(a)は、動画像情報取得部11で取得される動画像情報の各ピクチャを取得順に示したものである。尚、図5(a)は、後述する画像情報再生装置60で1/4倍速の特殊再生する際の再生ピクチャも同時に示している。また、図5(b)〜(e)は、後述する画像情報再生装置60で1/2倍速、通常再生、3倍速、12倍速で再生する際の再生ピクチャをそれぞれ示している。また、図5(f)は、各ピクチャの参照ピクチャの構成を示している。また、図5(g)は、図5(a)に示す各ピクチャを符号化部14において符号化する際の符号化順とそのピクチャタイプの配列を示したものである。また、図5(h)は、図5(g)に示したピクチャの符号化データにそれぞれ割り当てるパケット識別子を示したものである。
【0030】
再生速度設定部12で設定された再生速度が12倍速、3倍速、通常再生、1/2倍速、1/4倍速、である場合、画像情報記録装置50の符号化部14は、図5(a)〜(e)に示されるように、Iピクチャが48周期となるように、またPピクチャがIピクチャ間で12周期となるように、またIピクチャまたはPピクチャを参照ピクチャとして用いるBピクチャ(図5におけるピクチャB4、B8)(以後、第1Bピクチャと称する。)を参照ピクチャ間(Iピクチャ−Pピクチャ間、もしくはPピクチャ−Pピクチャ間)で4周期となるように、また少なくとも一方の参照ピクチャに第1Bピクチャを用いるBピクチャ(図5におけるピクチャB2、B6、B10)(以後、第2Bピクチャと称する。)を参照ピクチャ間(Iピクチャ−第1Bピクチャ間、Pピクチャ−第1Bピクチャ間、第1Bピクチャ−第1Bピクチャ間)で2周期となるように、また少なくとも一方の参照ピクチャに第2Bピクチャを用いるBピクチャ(図5(a)におけるピクチャB1、B3、B5、B7、B9)(以後、第3Bピクチャと称する。)が2周期となるように、各ピクチャの圧縮符号化を行う。そして、図5(g)に示すようにそれぞれのピクチャの符号化データを配列する。この各ピクチャの配列の周期は図2同様、再生速度設定部12で設定された再生速度によって変化する。
【0031】
そして、識別子設定部15は再生速度設定部12で設定される再生速度の設定数に応じてパケット識別子を設定する。図5の例では、設定される再生速度の設定数が通常再生を含めて5つの例を示しているため、識別子設定部15は、図3(b)に示すように、5つのパケット識別子として第1〜第5識別子を設定する。そして多重化部18は、識別子設定部15で設定されたパケット識別子を、図5(h)に示すように、Iピクチャに第1識別子0×1000を、Pピクチャに第2識別子0×1001を、第1Bピクチャに第3識別子0×1002を、第2Bピクチャに第4識別子0×1004を、第3Bピクチャに第5識別子0×1008を、ピクチャタイプに応じてそれぞれ割り当てた上でパケット化し、画像パケットとして多重化する。
【0032】
また、画像情報記録装置50の再生速度情報作成部16は、上記の5つの再生速度の対応した、図4(c)に示すような、5つの再生速度情報を作成する。ここで、entry_num1を通常再生の再生速度情報とすれば、entry_num1のspeedは1となり、そしてこのときのpid_maskを0×0003とする。また、entry_num2を3倍速の再生速度情報とすれば、entry_num2のspeedは3となり、そしてこのときのpid_maskを0×0001とする。また、entry_num3を12倍速の再生速度情報とすれば、entry_num3のspeedは12となり、そしてこのときのpid_maskを0×0000とする。また、entry_num4を1/2倍速の再生速度情報とすれば、entry_num4のspeed_flagは低速再生を示す1、speedは2となり、そしてこのときのpid_maskを0×0007とする。また、entry_num5を1/4倍速の再生速度情報とすれば、entry_num5のspeed_flagは低速再生を示す1、speedは4となり、そしてこのときのpid_maskを0×000Fとする。これらの再生速度情報は、多重化部18でPMT中の記述子に書き込まれた上でパケット化され情報パケットとして多重化される。
【0033】
以上のことから、画像情報記録装置50で記録される多重化ストリーム中には、ピクチャタイプに応じてパケット識別子が割り当てられた画像パケットと再生速度情報が書き込まれた情報パケットとが含まれることとなる。
【0034】
次に、本発明に係る画像情報再生装置の一実施の形態の構成及び動作を図6を用いて説明する。
【0035】
図6に示す本発明に係る画像情報再生装置60の読出部22は、画像情報記録装置50によって記録された多重化ストリームを記録媒体1から読出して識別子取得部32に出力する。
【0036】
識別子取得部32は、読出部22によって読み出された多重化ストリーム中の各パケットの識別子を取得して識別子照合部39に出力する。
【0037】
識別子照合部39は識別子取得部32で取得された識別子を予め記録されているPAT(Program Association Table)の識別子と照合し、一致したパケットをシステムデータ解析部36に振分けるようデータ振分け部34に指示する。尚、PATとは、MPEG-2システム規格、MPEG−4 AVC規格等に準拠した情報パケットの一つである。
【0038】
データ振分け部34は識別子照合部39の指示を受けて、PATの識別子を有する情報パケット、即ちPATそのものをシステムデータ解析部36に出力する。
【0039】
システムデータ解析部36は、データ振分け部34から出力されたPATを解析してPMTの識別子を取り出し識別子照合部39に出力する。
【0040】
識別子照合部39はシステムデータ解析部36からのPMTの識別子と、識別子取得部32からの各パケットの識別子とを照合し、一致したパケットをシステムデータ解析部36に振分けるようデータ振分け部34に指示する。
【0041】
データ振分け部34は識別子照合部39の指示を受けて、PMTの識別子を有する情報パケット、即ちPMTそのものをシステムデータ解析部36に出力する。
【0042】
システムデータ解析部36はデータ振分け部34から出力されたPMTを解析し、ビデオ識別子、オーディオストリームの識別子、及びその他の識別子が記録された識別子情報を取り出して識別子照合部39に出力する。
【0043】
また、システムデータ解析部36は、動画像情報を記録する際に再生速度情報作成部16で作成された再生速度情報をPMTから取り出して識別子マスク取得部38に出力する。
【0044】
画像情報再生装置60の再生速度選択部24は、識別子マスク取得部38に出力された再生速度情報から再生速度設定部12で設定された再生速度を取得して、これを再生可能速度として図示しない表示部等に表示し、記録媒体1に記録された動画像情報の再生速度を再生可能速度の中からユーザ等に選択させ、その再生速度を識別子マスク取得部38に出力する。
【0045】
識別子マスク取得部38は、再生速度選択部24で選択された再生速度に対応する再生速度情報からpid_maskを取得して識別子照合部39に出力する。
【0046】
識別子照合部39は、識別子取得部32から得られる各パケットの識別子とシステムデータ解析部36で取得された識別子情報とを照合する。このとき、画像パケットを識別する際には、識別子取得部32から得られる各パケットの識別子と識別子情報のビデオ識別子とに対し識別子マスク取得部38から取得したpid_maskによるマスク処理を施した上で識別子の照合を行う。そして、マスク処理が施された上で、画像パケットのパケット識別子と識別子情報のビデオ識別子とが適合した場合、識別子照合部39はその適合したパケットのみを画像パケットとして認識し、復号部28に出力するようデータ振分け部34に指示する。また、識別子取得部32からのパケットの識別子が識別子情報中のビデオ識別子以外の識別子と適合した場合、識別子照合部39はその適合した識別子を有するパケットをそれぞれの処理部7に出力するようデータ振分け部34に指示する。
【0047】
データ振分け部34は識別子照合部39に指示された画像パケットを復号部28に出力する。また、識別子照合部39の指示に基づきその他の識別子を有するパケットをそれぞれの処理部7に出力する。
【0048】
復号部28に出力された画像パケットは、周知の手法により復号されて再生画像信号となり、モニタ等の表示手段等により動画像として表示される。また、処理部7に出力されたパケットは、処理部7においてそれぞれのパケットに応じた処理がなされる。例えば、オーディオストリームのパケットの場合は、処理部7において処理された後、動画像の音声としてスピーカ等の音声出力手段で出力される。
【0049】
尚、識別子設定部15で設定するパケット識別子、pid_mask、及び、その他のパケットの識別子は、pid_maskがパケット識別子とビデオ識別子との照合にのみ関与するよう適切に設定する。これにより、パケット識別子以外の識別子を有するパケットは、識別子照合部39の指示によりそれぞれの処理部7に適切に振分けられる。
【0050】
次に、識別子照合部39による画像パケットの識別動作を詳細に説明する。
【0051】
先ず、図2のMPEG-2ビデオ規格を用いた例で説明する。前述のように、識別子照合部39は識別子マスク取得部38から再生速度選択部24で選択された再生速度に応じたpid_maskを取得して、このpid_maskによるマスク処理を施した上で、各パケットの識別子とビデオ識別子との照合を行う。尚、識別子情報に記録されたビデオ識別子は通常用いられる0×1000として説明を行う。
【0052】
再生速度選択部24で選択された再生速度が3倍速の特殊再生の場合、識別子照合部39で取得するpid_maskは0×0001となる。ここで便宜的に、pid_mask及び識別子設定部15で設定されたパケット識別子である第1〜第3識別子の下1桁を2進数化したものを( )内に表記する。この場合、pid_maskの下一桁は(0001)となり、同様に第1識別子は(0000)、第2識別子は(0001)、第3識別子は(0010)となる。識別子照合部39は、pid_maskの”1”のビット(即ち2進数化したpid_mask (0001)の1桁目)をマスクして識別子の照合を行うため、ビデオ識別子は実質的に(000□)(□はマスクされたビット)となり、第1識別子(0000)と第2識別子(0001)は実質的に(000□)となる。よって、ビデオ識別子と第1識別子と第2識別子とが適合し、識別子照合部39はビデオ識別子と第1識別子と第2識別子とを有するIピクチャ、Pピクチャの画像パケットを、画像パケットとして認識して復号部28に振分けるよう指示する。しかしながら、第3識別子(0010)は実質的に(001□)となり実質的なビデオ識別子(000□)とは適合しない。従って、第3識別子を有するBピクチャの画像パケットは画像パケットとして認識されず、データ振分け部34への振分け指示は行われない。よって、このときの再生画像は、図2(b)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャ、Pピクチャのみが再生される3倍速の再生画像となる。
【0053】
また、選択された再生速度が12倍速の場合、pid_maskは0×0000でありマスク処理は施されないため、識別子照合部39はビデオ識別子0×1000と同一の第1識別子0×1000を有するIピクチャの画像パケットのみを画像パケットとして認識し振分け指示を行う。よってこのときの再生画像は、図2(c)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャのみが再生される12倍速の再生画像となる。
【0054】
また、選択された再生速度が通常再生の場合、pid_maskは0×0003となり、識別子照合部39は、pid_maskの”1”のビット(即ち2進数化したpid_mask (0011)の1桁目と2桁目)をマスクして識別子の照合を行う。従って、ビデオ識別子は実質的に(00□□)となり、第1識別子(0000)と第2識別子(0001)と第3識別子(0010)とは実質的に全て(00□□)となる。よって、識別子照合部39は第1識別子(0000)と第2識別子(0001)に加え、第3識別子(0010)を有する画像パケットも画像パケットとして認識し、全ての画像パケットに対し復号部28への振分け指示が行われる。よって、このときの再生画像は、図2(a)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャの全てが揃った通常速度の再生画像となる。
【0055】
次に、図5のMPEG−4 AVC規格を用いた例を説明する。
【0056】
選択された再生速度が12倍速の場合、取得されるpid_maskは0×0000でありマスク処理は施されない。よって、識別子照合部39はビデオ識別子0×1000と同一の第1識別子0×1000を有するIピクチャの画像パケットのみを画像パケットとして認識し、これによる再生画像は、図5(e)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャのみが再生される12倍速の再生画像となる(尚、撮影速度に対しては48倍速であるが、図5の例では4倍速で撮影されているため、図5(e)に示す再生ピクチャは12倍速となる。)。
【0057】
3倍速の再生速度が選択された場合、取得されるpid_maskは0×0001であり、識別子照合部39は2進数化したpid_mask(0001)の”1”のビットをマスクして識別子の照合を行う。従って、ビデオ識別子は実質的に(000□)となり、第1識別子0×1000(実質的に(000□))と第2識別子0×1001(実質的に(000□))とを有するIピクチャ、Pピクチャの画像パケットのみが画像パケットとして認識される。よって、このときの再生画像は、図5(d)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャとPピクチャのみが再生される3倍速の再生画像となる。
【0058】
また、通常の再生速度が選択された場合、取得されるpid_maskは0×0003であり、識別子照合部39は2進数化したpid_mask(0011)の”1”のビットをマスクして識別子の照合を行う。従って、ビデオ識別子は実質的に(00□□)となり、第1識別子(実質的に(00□□))と第2識別子(実質的に(00□□))と第3識別子(実質的に(00□□))を有するI、P、第1Bピクチャの画像パケットのみが画像パケットとして認識される。しかしながら、第4識別子(実質的に(01□□))と第5識別子(実質的に(10□□))とは実質的なビデオ識別子(00□□)とは適合せず、第4識別子と第5識別子とを有する画像パケットは画像パケットとして認識されない。従って、このときの再生画像は、図5(c)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャとPピクチャと第1Bピクチャが再生される通常速度の再生画像となる。
【0059】
また、1/2倍速の特殊再生が選択された場合、取得されるpid_maskは0×0007であり、識別子照合部39は2進数化したpid_mask(0111)の”1”のビットをマスクして識別子の照合を行う。従って、ビデオ識別子は実質的に(0□□□)となり、第5識別子0×1008(下一桁2進数化(1000)、実質的に(1□□□))を有する画像パケット以外の、第1識別子〜第4識別子を有する画像パケットが画像パケットとして認識される。よって、このときの再生画像は、図5(b)の斜線のピクチャ、即ちIピクチャ、Pピクチャ、第1Bピクチャ、及び第2Bピクチャが再生される1/2倍速の再生画像となる。
【0060】
また、1/4倍速の特殊再生が選択された場合、取得されるpid_maskは0×000F(下一桁2進数化(1111))であり、ビデオ識別子は実質的に(□□□□)となり、第1識別子〜第5識別子の全ての画像パケットが画像パケットとして認識される。よって、このときの再生画像は、図5(a)の斜線で示す全てのピクチャが再生される1/4倍速の再生画像となる。
【0061】
尚、図5の例に、通常の撮影速度で取得した動画像情報を適用した場合、再生可能速度は、通常再生に加え、2倍速、4倍速、12倍速、48倍速となる。
【0062】
以上のように画像情報再生装置60は、画像パケットの識別に際して選択された再生速度に対応したpid_maskを取得して、このpid_maskによるマスク処理を施した上で識別子の照合を行うことで、選択された再生速度による再生に必要な画像パケットのみを復号部28に出力する。このため、復号部28が通常速度に対応した復号処理能力しか備えていない場合でも、円滑な特殊再生を実現することができる。
【0063】
尚、上記の画像情報記録装置50により記録された多重化ストリームは、画像パケットのパケット識別子に通常のビデオ識別子とは異なる識別子設定部15で設定されたパケット識別子が割り当てられているため、このままでは、画像情報再生装置60を備えていない再生機器では再生時に不具合が生じる。よって、次に、画像情報記録装置50により記録された多重化ストリームを画像情報再生装置60を備えていない再生機器で再生可能とする本発明に係る画像情報変換装置の構成及び動作を説明する。
【0064】
図7は、本発明に係る画像情報変換装置の一実施の形態を示すブロック図である。図7に示す画像情報変換装置70の読出部22aは、画像情報記録装置50で記録媒体1に記録された多重化ストリームを読出して識別子取得部32aに出力する。
【0065】
識別子取得部32aは、読出部22aによって読み出された多重化ストリーム中の各パケットの識別子を取得して識別子照合部39aに出力する。
【0066】
識別子照合部39aは識別子取得部32aで取得されたパケットの識別子を予め記録されているPATの識別子と照合し、一致したパケットをシステムデータ解析部36aに振分けるようデータ振分け部34aに指示する。
【0067】
データ振分け部34aは識別子照合部39aの指示を受けて、PATの識別子を有するパケット、即ちPATそのものをシステムデータ解析部36aに出力する。
【0068】
システムデータ解析部36aは、PATを解析してPMTの識別子を取り出し識別子照合部39aに出力する。
【0069】
識別子照合部39aは、識別子取得部32aからの各パケットの識別子とPMTの識別子とを照合し、一致したパケットをシステムデータ解析部36aに振分けるようデータ振分け部34aに指示する。
【0070】
データ振分け部34aは識別子照合部39aの指示を受けて、PMTの識別子を有するパケット、即ちPMTそのものをシステムデータ解析部36aに出力する。
【0071】
システムデータ解析部36aはPMTを解析し、各パケットの識別子が記録された識別子情報を取り出して識別子照合部39aに出力する。また、システムデータ解析部36aは、動画像情報の記録時に再生速度情報作成部16で作成された再生速度情報をPMTから取り出して識別子マスク取得部38aに出力する。さらに、システムデータ解析部36aは再生速度情報を有するPMTを再生速度情報除去部42に出力する。
【0072】
識別子マスク取得部38aはシステムデータ解析部36aからの再生速度情報を参照し通常再生に対応した再生速度情報のpid_maskを取得して、識別子照合部39aに出力する。
【0073】
識別子照合部39aは、画像パケットの識別に際して画像情報再生装置60と同様に、識別子マスク取得部38aから得られた通常再生に対応したpid_maskによるマスク処理を施した上で、識別子取得部32aからの各パケットの識別子とビデオ識別子とを照合する。これにより、識別子照合部39aは、図2、図5の例では第1識別子〜第3識別子を有する画像パケットを画像パケットとして認識し、これらの画像パケットを識別子書換部44に振分けるようデータ振分け部34aに指示する。また、識別子取得部32aからのパケットの識別子が識別子情報中のその他の識別子と適合した場合、識別子照合部39はその適合した識別子を有するパケットを多重化部18aに出力するようデータ振分け部34aに指示する。
【0074】
識別子書換部44はデータ振分け部34aから振分けられた画像パケットのパケット識別子を通常のビデオ識別子、例えば0×1000に書換えた後に多重化部18aに出力する。
【0075】
再生速度情報除去部42は、システムデータ解析部36aから出力されたPMTを受けて、PMTに記述された再生速度情報を除去し、再生速度情報を有さないPMTとして多重化部18aに出力する。
【0076】
多重化部18aは、識別子書換部44で通常のビデオ識別子に書換えられた画像パケットと、再生速度情報除去部42で再生速度情報が除去されたPMTと、データ振分け部34aからの画像パケット以外のパケットとを再多重化して多重化ストリームを作成し、記録部19aに出力する。
【0077】
記録部19aは多重化部18aで再多重化された多重化ストリームを所定の記録媒体1aに記録する。尚、記録媒体1が書換え可能な記録媒体である場合、記録部19aは記録媒体1に再多重化された多重化ストリームを記録しても良い。
【0078】
上記のようにして記録媒体1aに記録された多重化ストリームは、画像パケットの識別子が識別子設定部15で設定されたパケット識別子から通常のビデオ識別子に書換えられ、またPMTの再生速度情報が除去されているため、画像情報再生装置60を備えていない再生機器でも動画像情報を良好に再生することができる。尚、図5の例においては、通常再生に必要ない第5識別子、第6識別子を有するピクチャの符号化データは除去される。
【0079】
以上のことから、本発明に係る画像情報記録装置50、画像情報再生装置60によれば、画像パケットにピクチャタイプに応じたパケット識別子を割当て、さらにpid_maskを有する再生速度情報を情報パケットであるPMTに記述して記録し、再生時には選択された再生速度に対応したpid_maskを用いた識別子照合を行うことで、選択された再生速度に必要な画像パケットのみを復号部28に出力する。このため、復号部28は不必要な画像パケットを復号する必要が無く、よって復号部28が通常速度に対応した復号処理能力しか備えていない場合でも、良好かつ円滑な特殊再生を実現することができる。
【0080】
また、本発明に係る画像情報変換装置70によれば、画像情報記録装置50で記録された動画像情報を、画像情報再生装置60を備えていない再生機器で再生可能なように変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る画像情報記録装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る画像情報記録装置及び画像情報再生装置におけるMPEG-2ビデオ規格での記録再生を説明する図である。
【図3】本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置に用いるパケット識別子の例を示す図である。
【図4】本発明に係る画像情報記録装置、画像情報再生装置及び画像情報変換装置に用いる再生速度情報を示す図である。
【図5】本発明に係る画像情報記録装置及び画像情報再生装置におけるMPEG−4 AVC規格での記録再生を説明する図である。
【図6】本発明に係る画像情報再生装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る画像情報変換装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1、1a 記録媒体
11 動画像情報取得部
12 再生速度設定部
14 符号化部
15 識別子設定部
16 速度情報作成部
18、18a 多重化部
19、19a 記録部
22、22a 読出部
24 再生速度選択部
28 復号部
32、32a 識別子取得部
34、34a データ振分け部
36、36a システムデータ解析部
38、38a 識別子マスク取得部
39、39a 識別子照合部
42 再生速度情報除去部
44 識別子書換部
50 画像情報記録装置
60 画像情報再生装置
70 画像情報変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像情報をパケット化し多重化ストリームとして記録する画像情報記録装置において、
前記動画像情報を再生するときの再生速度を複数設定する再生速度設定部と、
前記再生速度に対応する配列順に前記動画像情報の各ピクチャをMPEGビデオ規格に準拠したピクチャタイプの符号化データとなるように符号化する符号化部と、
前記符号化データに割り当てるパケット識別子を前記再生速度の設定数に応じて設定する識別子設定部と、
前記パケット識別子を照合する際のマスク処理に用いる識別子マスクを前記再生速度に応じて設定するとともに、当該識別子マスクを有する再生速度情報を前記再生速度ごとに作成する速度情報作成部と、
前記符号化データに前記パケット識別子をピクチャタイプに応じて割り当てて画像パケット化するとともに、画像パケットを認識するためのビデオ識別子を記録した識別子情報を有するシステムデータに前記再生速度情報を記述して情報パケット化し、前記画像パケットと前記情報パケットとを含む多重化ストリームを生成する多重化部と、
前記多重化ストリームを所定の記録媒体に記録する記録部と、
を有することを特徴とする画像情報記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像情報記録装置で記録された多重化ストリームを記録媒体から読み出す読出部と、
読み出された前記多重化ストリームに多重化された画像パケットのパケット識別子を取得する識別子取得部と、
後段の識別子照合部の指示に基づき前記多重化ストリーム中の各パケットを振分けることで、情報パケットをシステムデータ解析部に出力し、所定のパケット識別子を有する画像パケットを復号部に出力するデータ振分け部と、
前記データ振分け部で振分けられた画像パケットを復号する復号部と、
前記データ振分け部で振分けられた前記情報パケットから前記識別子情報と前記再生速度情報とを取得するシステムデータ解析部と、
前記多重化ストリームの再生可能速度を前記再生速度情報から取得し、当該再生可能速度の中から前記多重化ストリームの再生速度を選択する再生速度選択部と、
前記再生速度選択部で選択された再生速度と対応した前記再生速度情報から前記識別子マスクを取得する識別子マスク取得部と、
前記識別子取得部で取得された画像パケットのパケット識別子と前記システムデータ解析部で取得された前記識別子情報に記録されているビデオ識別子とに対し、画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子との照合に関与するビットのみに前記識別子マスクによる前記再生速度に応じたマスク処理を施した上で照合を行い、マスク処理の施されるビットの範囲が前記識別子マスクによって変化することで、前記再生速度の再生に必要な画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子とを適合させて画像パケットとして認識させ、適合したパケット識別子を有する画像パケットに対し前記復号部への振分け指示を行うとともに、前記情報パケットに対し所定の振分け指示を行う識別子照合部と、
を有することを特徴とする画像情報再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像情報記録装置で記録された多重化ストリームを記録媒体から読み出す読出部と、
読み出された前記多重化ストリームに多重化された画像パケットのパケット識別子を取得する識別子取得部と、
後段の識別子照合部の指示に基づき、前記多重化ストリーム中の情報パケットをシステムデータ解析部に出力し、所定のパケット識別子を有する画像パケットを識別子書換部に出力し、情報パケット及び画像パケットを除いたパケットを多重化部に出力するデータ振分け部と、
前記データ振分け部で振分けられた前記情報パケットから前記識別子情報と前記再生速度情報とを取得するとともに、当該情報パケットを再生速度情報除去部に出力するシステムデータ解析部と、
通常の再生速度と対応した前記再生速度情報から前記識別子マスクを取得する識別子マスク取得部と、
前記識別子取得部で取得された画像パケットのパケット識別子と前記識別子情報に記録されたビデオ識別子とに対し、画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子との照合に関与するビットのみに前記識別子マスクによる通常再生に応じたマスク処理を施した上で照合を行い、通常再生に必要な画像パケットのパケット識別子と前記ビデオ識別子とを適合させて画像パケットとして認識させ、適合したパケット識別子を有する画像パケットに対し識別子書換部への振分け指示を行うとともに、前記情報パケットに対し所定の振分け指示を行う識別子照合部と、
前記データ振分け部で振分けられた画像パケットのパケット識別子を前記ビデオ識別子に書換える識別子書換部と、
前記システムデータ解析部から出力された前記情報パケットから前記再生速度情報を除去する再生速度情報除去部と、
前記識別子書換部により識別子が書換えられた画像パケットと、前記再生速度情報除去部により再生速度情報が除去された情報パケットと、前記データ振分け部で振分けられたパケットと、を多重化して多重化ストリームを生成する多重化部と、
前記多重化部で生成された多重化ストリームを所定の記録媒体に記録する記録部と、
を有することを特徴とする画像情報変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−225340(P2009−225340A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70136(P2008−70136)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】