説明

画像測定装置、画像測定方法及び画像測定装置用のプログラム

【課題】 ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる画像測定装置を提供する。
【解決手段】 ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手段と、ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを保持する測定設定データ記憶手段と、ワーク画像及び輪郭情報を位置合わせし、ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出手段と、算出された誤差を公差と比較し、良否判定を行う誤差判定手段と、抽出されたエッジ及び良否判定の結果をワーク画像上に表示する測定結果表示手段により構成される。測定結果表示手段は、誤差が不良と判定されたエッジ位置について、誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像測定装置、画像測定方法及び画像測定装置用のプログラムに係り、さらに詳しくは、ワークを撮影したワーク画像内のエッジを検出することにより、ワークの寸法を測定する画像測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像測定装置は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、ワーク画像内のエッジを検出することにより、ワークの寸法を測定する装置である(例えば、特許文献1から3)。通常、ワークは、X,Y及びZ軸方向に移動可能な可動ステージ上に載置される。可動ステージをZ軸方向に移動させることにより、ワーク画像のピント合わせが行われ、X,Y軸方向に移動させることにより、ワークの視野内への位置調整が行われる。
【0003】
ワーク画像は、可動ステージのZ軸方向の位置に関わらず、ワークに対して極めて正確な相似形であることから、画像上で距離や角度を判定することにより、ワーク上における実際の寸法を検知することができる。ワークの寸法測定では、ワーク画像のエッジ抽出が行われる。エッジ抽出は、ワーク画像の輝度変化を解析してエッジ点を検出し、検出した複数のエッジ点について、例えば、直線や円弧などの幾何学図形をフィッティングさせることにより行われ、ワークと背景との境界を示すエッジが求められる。或いは、ワークの輪郭形状が複雑な形状からなる場合などには、CAD(Computer Aided Design)を用いて作成されたワークの輪郭情報と、ワーク画像から抽出したエッジ点群とを直接に比較することにより、エッジ位置の乖離度合いを示す誤差が測定される。
【0004】
従来の画像測定装置には、ワーク画像から抽出したエッジ点をCADにより作成された輪郭位置に沿って表示するものがある。ワーク画像から抽出したエッジ点を輪郭位置に沿って表示すれば、ワークの輪郭が設計値に対してどの程度ずれているのかを容易に把握することができるが、エッジ点とワーク画像との対応関係を把握することはできなかった。一般に、光学式の測定器では、測定対象物に埃やごみが付着した場合、照明の当て方が不適切であった場合、ステージ上に傷があった場合などに、エッジ点を誤抽出してしまうということが考えられる。この様な場合、ワークのエッジ位置に沿って誤差が識別できるとともに、誤差が公差範囲外となるエッジ位置について、ワーク画像との対応関係を把握できれば、ワークが実際に変形しているのか、或いは、エッジ点の誤抽出であるのかを容易に判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300124号公報
【特許文献2】特開2009−300125号公報
【特許文献3】特開2010−19667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる画像測定装置、画像測定方法及び画像測定装置用のプログラムを提供することを目的とする。特に、誤差が公差範囲外となるエッジ位置のうち、設計値から大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる画像測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明による画像測定装置は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する画像測定装置であって、上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手段と、上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを保持する測定設定データ記憶手段と、上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出手段と、算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定手段と、抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示する測定結果表示手段とを備え、上記測定結果表示手段が、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示するように構成される。
【0008】
この様な構成によれば、誤差の良否判定の結果をワーク画像上に表示する際に、誤差が不良と判定されたエッジ位置について、誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差が数値表示されるので、誤差が公差範囲外となるエッジ位置のうち、設計値から大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる。また、ワーク画像から抽出したエッジが誤差の良否判定結果とともにワーク画像上に表示されるので、ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる。
【0009】
第2の本発明による画像測定装置は、上記構成に加え、上記測定結果表示手段が、上記誤差が公差範囲外となる領域を含む一定区間において、上記誤差の大きさが最大となるエッジ位置の誤差を上記代表値として数値表示するように構成される。この様な構成によれば、エッジ上の一定区間内で設計値から最も大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる。
【0010】
第3の本発明による画像測定装置は、上記構成に加え、上記測定結果表示手段が、上記誤差の大きさが最大となるエッジ位置に関連付けて誤差の数値表示を行うように構成される。この様な構成によれば、設計値から大きく逸脱したエッジ位置を容易に識別することができる。
【0011】
第4の本発明による画像測定装置は、上記構成に加え、上記測定結果表示手段が、上記輪郭位置を含む公差範囲を上記ワーク画像上に表示するように構成される。この様な構成によれば、ワークの輪郭が設計値に対してどの程度ずれているのか、或いは、エッジ位置が公差範囲内であるか否かを容易に把握することができる。
【0012】
第5の本発明による画像測定装置は、上記構成に加え、同一ワークの異なる部位がそれぞれ撮影された2以上の撮影画像を連結し、1つの上記ワーク画像を生成する連結画像生成手段を備えて構成される。この様な構成によれば、測定対象とするワークに対して視野が狭い場合に、撮影倍率を下げなくても、ワークの広い範囲について、エッジ位置の誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる。
【0013】
第6の本発明による画像測定方法は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する画像測定方法であって、上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出ステップと、上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを記憶する測定設定データ記憶ステップと、上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出ステップと、算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定ステップと、抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示するとともに、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する測定結果表示ステップとからなる。
【0014】
第7の本発明による画像測定装置用のプログラムは、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための画像測定装置用のプログラムであって、上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手順と、上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを記憶する測定設定データ記憶手順と、上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出手順と、算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定手順と、抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示するとともに、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する測定結果表示手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による画像測定装置、画像測定方法及び画像測定装置用のプログラムでは、誤差の良否判定の結果をワーク画像上に表示する際に、誤差が不良と判定されたエッジ位置について、誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差が数値表示されるので、誤差が公差範囲外となるエッジ位置のうち、設計値から大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる。また、ワーク画像から抽出したエッジが誤差の良否判定結果とともにワーク画像上に表示されるので、ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態による画像測定装置100の一構成例を示した斜視図である。
【図2】図1の画像測定装置100における測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10の垂直面による切断面の様子が示されている。
【図3】図1の画像測定装置100の動作の一例を示したフローチャートである。
【図4】図1の画像測定装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図5】図1の画像測定装置100における測定時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図6】図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、ワーク全体の様子を捉えたワーク画像1が示されている。
【図8】図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、図7のワークの一部を捉えたワーク画像1が示されている。
【図9】図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の他の一例を示した図である。
【図10】図1の画像測定装置100における制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<画像測定装置>
図1は、本発明の実施の形態による画像測定装置100の一構成例を示した斜視図である。この画像測定装置100は、可動ステージ12上の検出エリア13内に配置された複数のワークを異なる撮影倍率で撮影し、その撮影画像を解析して各ワークの寸法を自動測定する測定器であり、測定ユニット10、制御ユニット20、キーボード31及びマウス32からなる。ワークは、その形状や寸法が測定される測定対象物である。
【0018】
測定ユニット10は、ワークに検出光を照射し、その透過光又は反射光を受光して撮影画像を生成する光学系ユニットであり、ディスプレイ11、可動ステージ12、XY位置調整つまみ14a、Z位置調整つまみ14b、電源スイッチ15及び測定開始スイッチ16が設けられている。
【0019】
ディスプレイ11は、撮影画像や測定結果を表示画面11a上に表示する表示装置である。可動ステージ12は、測定対象とするワークを載置するための載置台であり、検出光を透過させる検出エリア13が設けられている。検出エリア13は、透明ガラスからなる円形状の領域である。この可動ステージ12は、検出光の光軸に平行なZ軸方向と、光軸に垂直なXYの各軸方向とに移動させることができる。
【0020】
XY位置調整つまみ14aは、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に移動させるための操作部である。Z位置調整つまみ14bは、可動ステージ12をZ軸方向に移動させるための操作部である。電源スイッチ15は、測定ユニット10及び制御ユニット20の電源をオンするための操作部であり、測定開始スイッチ16は、ワークに対する測定を開始させるための操作部である。
【0021】
制御ユニット20は、測定ユニット10による撮影や画面表示を制御し、撮影画像を解析してワークの寸法を測定するコントローラであり、キーボード31及びマウス32が接続されている。電源投入後、検出エリア13内に複数のワークを適当に配置して測定開始スイッチ16を操作すれば、各ワークについてその寸法が自動的に測定される。
【0022】
<測定ユニット>
図2は、図1の画像測定装置100における測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10を垂直面により切断した場合の切断面の様子が示されている。この測定ユニット10は、筐体40内部が、Z駆動部41、XY駆動部42、撮像素子43,44、透過照明ユニット50、リング照明ユニット60、同軸落射照明用光源71、受光レンズユニット80により構成されている。
【0023】
Z駆動部41は、制御ユニット20からの駆動信号に基づいて、可動ステージ12をZ軸方向に移動させ、ワークのZ軸方向の位置を調整するZ位置調整手段である。XY駆動部42は、制御ユニット20からのXY駆動信号に基づいて、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に移動させ、ワークのXY平面内の位置を調整するXY位置調整手段である。
【0024】
透過照明ユニット50は、可動ステージ12上に載置されたワークに対し、検出光を下側から照射するための照明装置であり、透過照明用光源51、ミラー52及び光学レンズ53からなる。透過照明用光源51から出射された検出光は、ミラー52により反射され、光学レンズ52を介して出射される。この検出光は、可動ステージ12を透過し、その透過光の一部は、ワークにより遮断され、他の一部が受光レンズユニット80に入射する。
【0025】
リング照明ユニット60は、可動ステージ12上のワークに対し、検出光を上側から照射するための照明装置であり、受光レンズユニット80を取り囲むリング状の光源からなる。同軸落射照明用光源71は、可動ステージ12上のワークに対し、検出光を上側から照射するための光源であり、ワークに対する照射光の光軸とワークによる反射光の光軸とが同軸となるように、ハーフミラー72が配置されている。ワークの照明方法としては、透過照明、リング照明又は同軸落射照明のいずれかを選択的に切り替えることができる。
【0026】
受光レンズユニット80は、受光レンズ81,84,86、ハーフミラー82、絞り板83及び85からなる光学系であり、透過照明ユニット50からの透過光と、検出光のワークによる反射光とを受光して撮像素子43及び44に結像させる。受光レンズ81は、可動ステージ12側に配置された光学レンズであり、当該可動ステージ12の上面に対向させて配置されている。受光レンズ84は、撮像素子43側に配置された光学レンズであり、当該撮像素子43に対向させて配置されている。また、受光レンズ86は、撮像素子44側に配置された光学レンズであり、当該撮像素子44に対向させて配置されている。
【0027】
絞り板83及び受光レンズ84は、撮影倍率の低い低倍側結像部であり、その中心軸を光学レンズ53及び受光レンズ81と一致させて配置されている。一方、絞り板85及び受光レンズ86は、撮影倍率の高い高倍側結像部であり、ワークからの検出光はハーフミラー82を介して入射される。受光レンズ81,84及び86は、ワークの光軸方向(Z軸方向)の位置が変化しても、像の大きさを変化させない性質を有し、テレセントリックレンズと呼ばれる。
【0028】
撮像素子43は、受光レンズユニット80により形成される低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率用のイメージセンサである。撮像素子44は、受光レンズユニット80により形成される高倍率視野内のワークを高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率用のイメージセンサである。高倍率視野は、低倍率視野よりも狭い視野であり、低倍率視野内に形成される。
【0029】
撮像素子43,44は、いずれもCCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)などの半導体素子からなる。
【0030】
この寸法測定装置100では、可動ステージ12の検出エリア13内であれば、ワークをどこに配置しても、低倍率視野で捉えられる。また、低倍率視野内に配置されたワークは、低倍率画像を解析して可動ステージ12をXY平面内で移動させることにより、高倍率視野内へ案内され、高倍率で撮影される。この寸法測定装置100では、低倍率視野及び高倍率視野が略同心であり、低倍率画像と高倍率画像とを同時に取得することができる。
【0031】
<画像測定装置の動作>
図3のステップS101〜S103は、図1の画像測定装置100の動作の一例を示したフローチャートである。この画像測定装置100では、その動作が3つのプロセス、すなわち、測定設定データの作成(ステップS101)、測定の実行(ステップS102)及び測定結果の表示(ステップS103)からなる。
【0032】
測定設定データは、測定の実行に必要な情報であり、特徴量を示す特徴量情報、測定箇所や測定種別を示す情報、測定箇所ごとの設計値や公差を示す情報などからなる。特徴量情報は、ワーク画像を解析してワークの位置や姿勢を検出するための位置決め用の情報であり、所定のマスターデータに基づいて設定される。なお、特徴量情報、測定箇所や測定種別を示す情報が高倍率画像に基づいて設定されたものである場合には、その旨を示す識別情報が測定設定データとして保持される。
【0033】
測定設定データは、制御ユニット20において作成される。或いは、PC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理端末において作成された測定設定データを制御ユニット20に転送して用いるような構成であっても良い。測定処理は、この様な測定設定データに基づいて実行される。そして、測定結果の表示処理は、測定によって得られた寸法値などをディスプレイ11上に表示することにより行われる。
【0034】
<測定設定データの作成>
図4のステップS201〜S203は、図1の画像測定装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示したフローチャートである。この図には、制御ユニット20において測定設定データを作成する場合が示されている。
【0035】
測定設定データの作成処理は、3つの処理手順、すなわち、設計データの入力(ステップS201)と、特徴量の設定(ステップS202)と、設計値及び公差の修正(ステップS203)からなる。設計データの入力ステップは、マスターピースなどの所定の基準物を撮影した撮影画像、或いは、CADにより作成されたCADデータを入力し、入力された設計データから後述する輪郭比較のための輪郭情報を取得するステップである。なお、輪郭情報は、マスターピースを撮影した画像を設計データとして用いる場合、その画像のエッジ点の集合であり、CADデータを設計データとして用いる場合には、CADデータの設計値が輪郭情報に相当する。
【0036】
入力した設計データに、輪郭比較を実行する範囲や、比較される各輪郭に公差が予め設定されている場合は、設計データの入力とともにこれらの情報も入力され、測定設定データとして設定される。
【0037】
ステップS202において、特徴量は、入力された設計データから自動的に抽出されるが、ユーザが特徴量を抽出する範囲を設定することにより、特徴量の設定が実行されるようにしても良い。
【0038】
続いて、ステップS203において、必要に応じて、ユーザは、輪郭比較を実行する範囲や公差の修正を行うことができる。上記ステップを実行することにより、設計データの輪郭比較範囲、設計値である輪郭比較範囲内の輪郭情報、各輪郭位置の公差を含む測定設定データが生成され、記憶される。
【0039】
<輪郭比較>
図5のステップS301〜S308は、図1の画像測定装置100における測定時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、可動ステージ12上に配置されたワークを撮影してワーク画像を取得し、測定設定データの特徴量情報に基づいてワーク画像を解析することにより、ワークの位置決めが行われる(ステップS301)。
【0040】
このワークの位置決めは、特徴量情報に基づくパターンマッチングなどの手法を用いて、ワーク画像内におけるワークの位置及び姿勢を検出することにより行われる。例えば、正規化相関サーチによる方法や、単純に基準座標を設計データと一致させることにより、ワーク画像及び設計データ間の位置合わせが行われる。
【0041】
次に、位置及び姿勢の検出結果と測定設定データに基づいて、輪郭比較を行う範囲を特定し(ステップS302)、比較範囲内に存在するエッジを抽出する(ステップS303)。エッジ抽出の方法としては、画像の輝度値を用いる方法、輝度値の1次微分を用いる方法、輝度値の2次微分を用いる方法などを利用することができる。
【0042】
ここでは、ワークの位置決め後にエッジ抽出を行う場合を説明したが、ワーク画像から抽出されたエッジ点を用いてワーク画像及び設計データ間の位置合わせを行うような構成であっても良い。エッジ点を用いた位置合わせの方法としては、一般化ハフ変換による方法や幾何学ハッシング、幾何学相関サーチによる方法などを利用することができる。
【0043】
次に、抽出した各エッジ位置と、各エッジ位置に対応する設計データの輪郭情報(設計値)とを比較し、誤差を算出する(ステップS304,S305)。設計値との誤差は、幾何学的に計算される。すなわち、設計データの輪郭情報が曲線として与えられている場合、誤差は、エッジ位置と曲線の法線方向の距離として規定することができる。また、輪郭情報が基準座標として与えられている場合には、XYの各座標軸方向の距離として算出することができる。
【0044】
続いて、このとき算出された誤差と、測定設定データに含まれる公差とを比較し(ステップS306)、各エッジ位置ごとに良否の判定を行う(ステップS307)。この様に、予め入力した設計データの輪郭情報と、ワーク画像から抽出したエッジ位置とを比較することにより、各エッジ位置ごとに設計データとの誤差を算出することができる。なお、本実施例では、各エッジ位置ごとに設計データとの誤差を算出することとしたが、エッジ位置を間引いて一部のエッジ位置についてのみ誤差を算出するようにしても良い。
【0045】
<良否判定結果の表示>
図6のステップS401〜S404は、図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示したフローチャートである。図5のフローチャートに示した複数のワークに対する測定が終了すると、ワーク画像から抽出されたエッジと、エッジ位置ごとの誤差の良否判定の結果とを測定結果としてワーク画像上に表示する処理を開始する。
【0046】
まず、誤差が公差範囲外となることにより不良と判定されたエッジ位置が存在するか否かを特定し、存在すれば、誤差の大きさ(絶対値)が極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する(ステップS401,S402)。このとき、表示対象とするエッジ位置の誤差は、誤差が公差範囲外となる領域を含むエッジ上の所定区間において、誤差の大きさが最大となるエッジ位置の誤差であり、当該区間内の誤差の代表値として表示される。
【0047】
次に、ワーク画像から抽出されたエッジをワークの輪郭形状を示す所定の形状線を用いて表示する(ステップS403)。この形状線は、誤差が公差範囲内であるか、或いは、公差範囲外であるかを識別することが可能な表示態様で表示される。具体的には、エッジ位置の誤差が公差範囲内となる形状線と、公差範囲外となる形状線とは、異なる色で表示される。例えば、誤差が公差範囲内となる形状線は、緑色で表示され、公差範囲外となる形状線は、赤色で表示される。
【0048】
次に、設計データの輪郭位置を含む公差範囲をワーク画像上に表示する(ステップS404)。なお、輪郭位置や公差範囲の表示態様は、識別可能であれば良い。また、ステップS402からステップS404までの各処理手順を実行する順序は、任意である。
【0049】
図7は、図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、ワーク全体の様子を捉えたワーク画像1が示されている。この図には、低倍率視野内のワークを低倍率で撮影したワーク画像1が示されている。このワークは、複雑な輪郭形状を有する薄い平板状の部材からなる。また、ワーク画像1は、透過照明時に撮影された撮影画像である。
【0050】
誤差の良否判定の結果は、この様なワーク画像1上に表示される。すなわち、ワーク画像1から抽出されたエッジを示す形状線2を当該ワーク画像1上に重畳させるとともに、誤差が公差範囲内となるエッジ上の良好区間と、公差範囲外となる不良区間とを識別可能とするために、形状線2が色分けして表示される。
【0051】
この例では、エッジ位置A1からエッジ位置A2までの区間が、誤差が公差範囲外となる不良区間であり、不良区間内で誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差が数値表示されている。具体的には、誤差の不良区間を一定の区間長からなる複数の判定区間に細分し、各判定区間について、判定区間内において誤差の大きさが最大となるエッジ位置の誤差が数値表示される。
【0052】
ここでは、誤差が極大となる2つのエッジ位置が抽出され、誤差の測定値(極大値)を示す数値「0.742」、「0.651」が、それぞれ当該エッジ位置に関連付けて表示されている。なお、エッジ位置A1からエッジ位置A2までの不良区間以外の区間は、誤差が公差範囲内となる良好区間である。
【0053】
図8は、図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、図7のワークの一部を捉えたワーク画像1が示されている。この図には、高倍率視野内のワークを高倍率で撮影したワーク画像1が示されている。
【0054】
このワーク画像1では、エッジ位置A1からエッジ位置A2までの不良区間において、誤差が極大となるエッジ位置の誤差の測定値5の他、設計データの輪郭位置を含む公差範囲が、輪郭線3、公差ライン4a及び4bを用いて表示されている。
【0055】
輪郭線3は、輪郭位置(設計値)を示す。また、一方の公差ライン4aは、公差の上限値を示す線(図形)であり、他方の公差ライン4bは、公差の下限値を示す線である。輪郭線3上の位置から輪郭線3の法線方向の変位量がエッジ位置の誤差として規定される。この例では、公差範囲内の領域を示す公差ゾーンが、輪郭線3に沿って形成され、ワークや形状線2と識別可能に表示されている。具体的には、公差ゾーンが、ワークや形状線2と異なる色で表示されている。
【0056】
この様に判定区間内における誤差の代表値を数値表示することにより、設計値から大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる。また、ワーク画像から抽出されたエッジを示す形状線2が誤差の良否判定結果とともにワーク画像1上に表示されるので、ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像1との対応関係を容易に把握することができる。従って、ワークが実際に変形しているのか、或いは、エッジ点の誤抽出であるのかを容易に判別することができる。
【0057】
図9は、図1の画像測定装置100における良否判定結果の表示時の動作の他の一例を示した図であり、誤差が極大となるエッジ位置の誤差を当該エッジ位置に関連付けて表示する他の表示態様が示されている。
【0058】
この図では、エッジ位置A1からエッジ位置A2までの不良区間において、誤差が極大となる2つのエッジ位置に対し、それぞれ記号「a」、「b」をエッジ位置近傍に付加し、これらの記号を識別情報として対応する誤差の測定値が一覧表示されている。この様な誤差の測定値の一覧表は、ワーク画像1上に表示しても良いし、或いは、ワーク画像1とは別個に表示しても良い。
【0059】
<制御ユニット>
図10は、図1の画像測定装置100における制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。この制御ユニット20は、測定設定データ記憶部21、ワーク画像記憶部23、エッジ抽出部24、誤差算出部25、誤差判定部26、測定結果表示部27及び連結画像生成部28により構成される。
【0060】
測定設定データ記憶部21には、ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データが保持される。ワーク画像記憶部23には、測定ユニット10から取得した撮影画像又はワーク画像が保持される。エッジ抽出部24は、ワーク画像からエッジを抽出する。
【0061】
誤差算出部25は、ワーク画像と測定設定データの輪郭情報とを位置合わせし、ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する輪郭位置との変位量を示す誤差を算出し、誤差判定部26へ出力する。誤差判定部26は、誤差算出部25により算出された誤差を対応する測定設定データの公差と比較し、良否判定を行う。
【0062】
測定結果表示部27は、エッジ抽出部24により抽出されたエッジと、誤差判定部26による良否判定の結果をワーク画像上に表示するとともに、誤差が不良と判定されたエッジ位置について、誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示するための画面データを生成し、測定ユニット10へ出力する。
【0063】
具体的には、誤差が公差範囲外となる領域を含む所定の判定区間において、誤差の大きさが最大となるエッジ位置の誤差が数値表示される。判定区間は、誤差の不良区間を細分したものであっても良いし、誤差が公差範囲内であるか否かに関わらず、ワーク画像から抽出されたエッジの全周を均等に分割したものでも良い。
【0064】
この様な判定区間の区間長は、ユーザが任意に指定することができるようにしても良いし、或いは、固定であっても良い。或いは、判定区間の区間長をエッジの周囲長や形状から自動的に決定するような構成であっても良い。
【0065】
また、誤差の大きさが極大となるエッジ位置が判定区間内で多数抽出された場合に、誤差の測定値が連続して表示されないようにして視認性を向上させるために、表示対象とするエッジ位置を絞り込んでも良い。例えば、誤差の大きさが極大となり、かつ、誤差の大きさが所定の閾値を越えるエッジ位置に絞り込むことが考えられる。或いは、ノイズを除去するために、誤差の大きさが極大となり、かつ、周囲のエッジ位置と誤差が離れすぎていないエッジ位置に絞り込んでも良い。或いは、誤差の大きさが極大となり、かつ、周囲のエッジ位置において、誤差の大きさが極小となるエッジ位置の誤差との差分が大きいエッジ位置に絞り込むことも考えられる。
【0066】
測定結果表示部27では、輪郭位置を含む公差範囲をワーク画像上に表示する。連結画像生成部28は、測定対象とするワークに対して視野が狭い場合に、撮影倍率を下げなくても、ワークの広い範囲について、エッジ位置の誤差を識別できるようにするために、同一ワークの異なる部位がそれぞれ撮影された複数の撮影画像を連結し、1つのワーク画像を生成する。
【0067】
本実施の形態によれば、誤差の良否判定の結果をワーク画像1上に表示する際に、誤差が不良と判定されたエッジ位置について、誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差が数値表示されるので、誤差が公差範囲外となるエッジ位置のうち、設計値から大きく逸脱したエッジ位置の誤差を容易に識別することができる。また、ワーク画像1から抽出したエッジが誤差の良否判定結果とともにワーク画像1上に表示されるので、ワークのエッジ位置に沿って誤差を識別することができるとともに、ワーク画像との対応関係を容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ワーク画像
2 形状線
3 輪郭線
4a,4b 公差ライン
5 誤差の測定値
10 測定ユニット
11 ディスプレイ
11a 表示画面
12 可動ステージ
13 検出エリア
14a XY位置調整つまみ
14b Z位置調整つまみ
15 電源スイッチ
16 測定開始スイッチ
20 制御ユニット
21 測定設定データ記憶部
23 ワーク画像記憶部
24 エッジ抽出部
25 誤差算出部
26 誤差判定部
27 測定結果表示部
28 連結画像生成部
31 キーボード
32 マウス
40 筐体
41 Z駆動部
42 XY駆動部
43,44 撮像素子
50 透過照明ユニット
51 透過照明用光源
52 ミラー
53 光学レンズ
60 リング照明ユニット
71 同軸落射照明用光源
72 ハーフミラー
80 受光レンズユニット
81,84,86 受光レンズ
82 ハーフミラー
83,85 絞り板
100 画像測定装置
A1,A2 エッジ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する画像測定装置において、
上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを保持する測定設定データ記憶手段と、
上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出手段と、
算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定手段と、
抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示する測定結果表示手段とを備え、
上記測定結果表示手段は、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示することを特徴とする画像測定装置。
【請求項2】
上記測定結果表示手段は、上記誤差が公差範囲外となる領域を含む一定区間において、上記誤差の大きさが最大となるエッジ位置の誤差を数値表示することを特徴とする請求項1に記載の画像測定装置。
【請求項3】
上記測定結果表示手段は、上記誤差の大きさが最大となるエッジ位置に関連付けて誤差の数値表示を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像測定装置。
【請求項4】
上記測定結果表示手段は、上記輪郭位置を含む公差範囲を上記ワーク画像上に表示することを特徴とする請求項3に記載の画像測定装置。
【請求項5】
同一ワークの異なる部位がそれぞれ撮影された2以上の撮影画像を連結し、1つの上記ワーク画像を生成する連結画像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像測定装置。
【請求項6】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する画像測定方法において、
上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出ステップと、
上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを記憶する測定設定データ記憶ステップと、
上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出ステップと、
算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定ステップと、
抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示するとともに、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する測定結果表示ステップとからなることを特徴とする画像測定方法。
【請求項7】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための画像測定装置用のプログラムにおいて、
上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手順と、
上記ワークの輪郭情報及び輪郭位置の公差を含む測定設定データを記憶する測定設定データ記憶手順と、
上記ワーク画像及び上記輪郭情報を位置合わせし、上記ワーク画像上のエッジ位置とこのエッジ位置に対応する上記輪郭位置との変位量を示す誤差を算出する誤差算出手順と、
算出された上記誤差を上記公差と比較し、良否判定を行う誤差判定手順と、
抽出されたエッジ及び上記良否判定の結果を上記ワーク画像上に表示するとともに、上記誤差が不良と判定されたエッジ位置について、上記誤差の大きさが極大となるエッジ位置の誤差を数値表示する測定結果表示手順とを実行させることを特徴とする画像測定装置用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32323(P2012−32323A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173393(P2010−173393)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】