説明

画像表示装置

【課題】輝度を損なうことなくクロストークを低減させ、高品位な3次元画像を表示する画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、光源からの入射光を変調する画像表示素子と、第1の偏光を透過し第1の偏光とは異なる第2の偏光を反射する特性を有し、画像表示素子からの画像光を合成して投射光学系に導く偏光分離素子と、偏光分離素子の投射光学系側に配置された位相差板とを有し、位相差板は、位相差板の面法線方向及び面内方向とは異なる方向の光学軸を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に3次元画像を表示する投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直交する偏光を利用して3次元画像を表示する液晶プロジェクタ(投射型画像表示装置)が提案されている。このような液晶プロジェクタは、右目用画像と左目用画像を互いに異なる偏光状態で同一のスクリーンに同時に投射する。観察者は、偏光板や円偏光板等の検光手段を用いてそれぞれの画像がそれぞれの目に入るように観察することで、3次元画像を観察することができる。
【0003】
特許文献1には、1台の液晶プロジェクタ内に右目用と左目用の画像表示素子をそれぞれ配置し、これらの画像表示素子を異なる偏光で照射して各々の画像光を偏光分離素子で合成して投射することで、3次元画像を表示する液晶プロジェクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−122430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の液晶プロジェクタでは、偏光板の検光軸と画像の偏光軸がずれる場合がある。偏光軸とは、直線偏光の振動する方向、又は、楕円偏光の楕円長軸方向である。偏光板の検光軸と画像の偏光軸がずれると、一定の右目用画像が左目に入って左目用画像が右目に入る、クロストークと呼ばれる現象が生じる。その結果、3次元画像の品位が低下し、観察者は立体感を得にくくなる。特に、プリズム型の偏光分離素子を用いた液晶プロジェクタでは、偏光分離素子に入射する光束の大きさや入射方位に依存してクロストークが発生し、表示画像の品位が大きく低下する可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、輝度を損なうことなくクロストークを低減させ、高品位な3次元画像を表示する投射型画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての投射型画像表示装置は、光源からの入射光を変調する画像表示素子と、第1の偏光を透過し該第1の偏光とは異なる第2の偏光を反射する特性を有し、前記画像表示素子からの画像光を合成して投射光学系に導く偏光分離素子と、前記偏光分離素子の投射光学系側に配置された位相差板とを有し、前記位相差板は、該位相差板の面法線方向及び面内方向とは異なる方向の光学軸を有する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、輝度を損なうことなくクロストークを低減させ、高品位な3次元画像を表示する画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図2】従来例における3次元画像の観察モデルを示す図である。
【図3】光線の偏光分離又は合成時における偏光軸の傾きの説明図である。
【図4】実施例1における3次元画像の観察モデルを示す図である。
【図5】実施例1における他の投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図6】実施例2における投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図7】実施例2における他の投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図8】実施例3における投射型画像表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1における投射型画像表示装置(画像表示装置)について説明する。図1は、本実施例における投射型画像表示装置100(反射型液晶画像投射装置)の概略構成図である。投射型画像表示装置100は、光源1、照明光学系3、偏光分離素子4、位相差板5R、5L、画像表示素子6R、6L(反射型画像表示素子)、位相差板8、及び、投射光学系10を備えて構成される。投射型画像表示装置100は、異なる偏光成分を用いて左目用画像及び右目用画像を生成して立体画像を表示する。
【0012】
光源1から照射される照明光束2は、照明光学系3を通過して偏光分離素子4に入射する。偏光分離素子4は、光源1から入射する入射光束のうち一方の偏光(第1の偏光、例えばP偏光)を透過し、それと直交する他方の偏光(第2の偏光、例えばS偏光)を入射方向(x軸方向)とは異なる方向(z軸方向)へ反射する。本実施例における偏光分離素子4として、例えばP偏光又はS偏光を透過又は反射する偏光ビームスプリッタ(PBS)が用いられる。本実施例では、偏光分離素子4を透過した偏光をL偏光、偏光分離素子4で反射した偏光をR偏光という。L偏光は、位相差板5Lを通過した後、画像表示素子6Lに入射する。R偏光は、位相差板5Rを通過した後、画像表示素子6Rに入射する。位相差板5R、5Lは、画像表示素子6R、6Lや偏光分離素子4により生じる位相ずれを補正する。画像表示素子6Lは、偏光分離素子4を透過した第1の偏光を変調して反射する。画像表示素子6Rは、偏光分離素子4で反射した第2の偏光を変調して反射する。このように、画像表示素子6R、6Lは、入射光のうち表示画像に応じて偏光状態を変え、画像光として反射する。
【0013】
画像表示素子6R、6Lで反射した画像光は、再び偏光分離素子4に入射する。画像表示素子6Rで反射した画像光は偏光分離素子4を透過し、画像表示素子6Lで反射した画像光は偏光分離素子4で反射する。このように、互いに直交する偏光状態を有する2つの画像光は合成され、1つの方向(z軸方向)に向かう。なお本実施例において、偏光分離素子4は入射偏光の分離と合成の両方の機能を有するが、その特性は同じであり、いずれの機能として用いられる場合にも偏光分離素子というものとする。
【0014】
合成された画像光7R、7Lは、位相差板8を介して投射光学系10に入射し、スクリーンに投射される。このように、投射光学系10は、画像表示素子6R、6Lから偏光分離素子4を介して得られた画像光を投射する。このとき、投射光学系10は、例えば画像表示素子6Rにより表示される画像を右目用画像、画像表示素子6Lにより表示される画像を左目用画像となるようにしてスクリーンに表示する。そして、適切な検光手段を用いて各々の画像光を観察者の各々の目に導くことにより、観察者は3次元画像を観察することができる。
【0015】
図1に示されるように、投射型画像表示装置100には、偏光分離素子4の入出射面のうち投射光学系10と対向する側の面(出射面)の近傍に、位相差板8が配置されている。すなわち位相差板8は、偏光分離素子4と投射光学系10との間に配置されている。位相差板8は、その主面が偏光分離素子4の出射面と平行に配置されている。また位相差板8は、面法線(位相差板8の主面の法線)に対して傾斜した光学軸を有する。すなわち、位相差板8は、位相差板8の面法線方向及び面内方向(位相差板8の主面内の方向)とは異なる方向の光学軸を有する。このため位相差板8は、光学軸が面内方向又は面法線方向を向いている通常の波長板とは異なる。位相差板8は、偏光分離素子4に斜入射した光線を偏光分離又は合成する際に生じる偏光軸のずれを補償して、3次元画像を表示する際に生じるクロストークを低減する。以下、その原理について詳述する。
【0016】
まず、図2を参照して、位相差板8が存在しない従来の構成において、3次元画像表示時にクロストークが発生する原因を説明する。図2(a)は、従来の構成における偏光分離素子4及び投射光学系10の周囲を示す概略図である。画像表示素子6R、6Lにより変調された右目用画像光7R及び左目用画像光7Lが偏光分離素子4により合成され、投射光学系10により投射される。ここで、図2(a)には光線を一本の直線で示しているが、一般的に投射される光はz軸方向を中心としてある立体角を有して出射する光束である。また、偏光の状態は、入射角度や入射方位の違いにより異なる。
【0017】
図2(b)は、投射される画像光の出射角度による偏光軸方向の違いを示す図である。偏光軸とは、直線偏光の振動する方向又は楕円偏光の楕円長軸方向である。図2(b)において、9つの矢印の組は、それぞれの画像光7R、7Lの、各出射方位における偏光軸の方向を示している。また、9つの矢印の組のうち中央に位置する矢印の組は、z軸と平行に進行する光線の偏光状態を示し、周辺の矢印の組は、各方位からz軸に対して斜入射した場合の偏光状態を示している。中央に位置する矢印の組、すなわちz軸と平行に出射する画像光7R、7Lの偏光軸は、x軸又はy軸と略平行な偏光状態となっている。一方、周辺の矢印の組み、すなわちz軸に対し角度を持って出射する画像光の偏光軸は、x軸又はy軸から傾いている。
【0018】
続いて、図3を参照して、斜入射時における偏光の振る舞いについて説明する。図3は、光線の偏光分離又は合成時における偏光軸の傾きの説明図であり、z軸方向に平行入射する光線と、z軸方向以外のある1つの方位から斜入射する光線を示している。偏光分離素子4は、偏光分離面4aに入射する光線をP偏光とS偏光に分離する素子である。P偏光及びS偏光の振動方向は、偏光分離面4aと入射光線の関係により決定される。z軸に平行入射する光線に対する入射面はxz面であり、P偏光はx軸と平行、S偏光はy軸と平行となる。一方、斜入射の場合、図3に示されるようにP偏光及びS偏光の入射面Hはxz面に対して傾斜する。その結果、特に入射角度の大きな領域では、偏光軸が傾斜した状態でスクリーンに投射される。
【0019】
観察者は、左右の目で異なる検光手段、例えばx軸と平行な偏光を透過する偏光板11R、及び、y軸と平行な偏光を透過する偏光板11Lを用いて、図2(b)に示される状態の画像光を観察する。このとき、偏光板11Rに入射する偏光のうち左目用画像光7Lは偏光板11Rにより除去され、偏光板11Lを入射する偏光のうち右目用画像光7Rは偏光板11Lにより除去される。その結果、各々の目に対応する画像を各々の目に導くことができ、観察者は3次元画像を観察することが可能となる。しかしながら、z軸と略平行な光線に対しては精度良く検光できるものの、入射角度の大きな領域の光に対しては偏光板11R、11Lで充分に他方の画像をカットすることができない。このため、図2(c)に示されるように、画像光7Rだけを取り込みたい場合に画像光7Lが混入する。また、図2(d)に示されるように、画像光7Lを取り込みたい場合に画像光7Rが混入してしまう。その結果、左右の目に対応した画像の分離が充分に行われず、表示される3次元画像の品位が低下する。
【0020】
しかも上記構成のように、1台の投射型画像表示装置100において偏光分離素子4を用いて左右画像を合成する場合、例えば一方の不要な偏光を除去するために一方の偏光をカットする偏光板を挿入すると、それと同一の偏光を持つ画像光も除去される。このため、単に偏光板を用いて斜入射部の不要光のみを除去する構成を採用することはできない。
【0021】
そこで本実施例では、図4(a)に示されるように、偏光分離素子4と投射光学系10との間に位相差板8が配置されている。位相差板8は、面法線(位相差板8の主面の法線)に対して傾斜した光学軸8Dを有する。位相差板8の光学軸8Dはxy面に対して傾斜しているため、位相差板8に入射する光線の角度や方位に応じて位相差が変化する。本実施例では、偏光分離面4aで偏光分離される際に生じる非対称な偏光軸のずれに合わせて、位相差板8の光学軸8Dの傾斜角度を適切に選択する。このため、前述の偏光分離時に生じる偏光軸の傾きを入射角度や入射方位に合わせて補正することができる。
【0022】
位相差板8は、その光学軸8Dと面法線とのなす角度(鋭角側の角度)を55度以上75度以下の範囲に設定することが好ましい。また、その角度を60度以上70度以下の範囲に設定するとより好ましい。また、光学軸8Dの方向は、偏光分離面4aの法線方向と位相差板8の面法線(z軸方向)とを含む面(図中のxz面)に平行であるように配置されることが好ましい。このような配置により、偏光分離面4aとの対称性が保たれ、適切な補正を行うことが可能となる。
【0023】
また、位相差板8は、その主面(基板面)に垂直に入射する偏光に対して、略1/2波長の位相差を付与するように選択することが好ましい。また、1/2波長の位相差となる波長λは、入射光線の波長帯域内のある波長となるように選択されることが好ましい。なお、略1/2波長とは、厳密に1/2波長である場合だけでなく、実質的1/2波長であると評価できる波長を含み、このような波長でも本実施例の効果を得ることができる。位相差板8は、位相差板8を透過する光の波長帯域の中心波長λにおいて、位相差板8の屈折率異方性の差Δnと位相差板の異方性媒質の厚みdとの積を位相差Δn・dとする。このとき、位相差Δn・dを0.35λ以上0.65λ以下の範囲に設定することが好ましい。また、位相差Δn・dを0.45以上0.55以下の範囲に設定するとより好ましい。
【0024】
位相差板8を設けることにより、図2(b)に示されるような入射角度の大きな領域での偏光軸の傾きを補正し、画像光7Rをx軸方向、画像光7Lをy軸方向とそれぞれ平行な方向に近づけることができる。その結果、図4(c)、(d)に示されるように、偏光板11R、11Lで検光した後の偏光状態は、それぞれ、画像光7R、7Lのみとなり、クロストークのない高品位の3次元画像を表示することができる。
【0025】
本実施例の位相差板8は、例えばサファイアや水晶等の異方性結晶材料を、その光学軸が面法線から傾斜するように切り出すか、又は研磨する等の方法で作成することができる。また、1軸延伸、2軸延伸した高分子フィルムを2つのクサビ基板で挟んだ構造や、基板を傾斜させて真空蒸着することにより形成された異方性膜を備えた構造、又は、液晶分子を所望の角度へ配向させて得られた構造でも同様の特性が得られる。なお、本実施例の位相差板8は、上記方法により製造されたものに限定されるものではない。
【0026】
以上、本実施例の投射型画像表示装置100について説明したが、偏光分離素子4を用いて画像を合成する投射型画像表示装置であれば、画像表示素子の種類や光学系の構成に限定されるものではない。例えば、本実施例は、図5に示されるような透過型の画像表示素子13R、13Lを用いた投射型画像表示装置200にも適用可能である。投射型画像表示装置200は、照明光のうち2つの直交する偏光成分を、偏光分離素子9により異なる方向へ透過又は反射させて分離した後、各偏光成分をそれぞれミラー12R、12Lで反射させて画像表示素子13R、13Lへ導く。画像表示素子13R、13Lは、表示画像に応じて入射光の偏光状態を変えて透過する。なお、2つの画像表示素子13R、13Lから、異なる偏光状態の画像光を偏光分離素子4で合成する際に、前述のような課題が生じる。この場合にも、図1と同様に、面法線方向から傾いた光学軸を持つ位相差板8を偏光分離素子の出側に配置することにより、本実施例の効果を得ることができる。勿論これは一例であり、他の構成や上記以外の画像表示素子を用いてもよい。
【0027】
また、投射光学系10を有する投射型画像表示装置について説明したが、投射光学系10が筐体に対して交換可能な形態(画像表示装置)であっても本発明の効果を得ることができる。この場合、位相差板8は偏光分離素子9と投射光学系10の取り付け部との間に配置される。
【0028】
図1において、偏光分離面4aはz軸方向に対して45度となるように配置されているが、本実施例はこれに限定されるものではない。このとき、位相差板8は偏光分離素子4の投射光学系10側の出射面と平行となるように配置することが好ましい。
【0029】
また、位相差板8以外の位相差板を任意に光学系に追加してもよい。例えば、位相差板8に隣接して配置され、面法線と平行な方向を向いた光学軸を有する位相差板(第2の位相差板)を設けることにより、更に漏れ光を低減することができる。この位相差板は、面法線方向に対して斜めに入射する光線に対し、入射角度に応じた位相差を与える。位相差板8とは正負逆の屈折率異方性を有する第2の位相差板を用いることにより、各入射角度に対する偏光状態を補正して、使用する入射角度範囲において更に高い位相補償効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施例では、画像光の偏光状態を異なる偏光状態へ変調する偏光変調素子を任意に追加してもよい。偏光変調素子としては、出射偏光の状態を直線偏光から円偏光へと変換する1/4波長板や直線偏光の振動方向を任意に変える1/2波長板等の位相差板、又は、時間的に偏光状態を変えて出射する液晶を用いた偏光変調部材等が用いられる。このとき、偏光変調素子は位相差板8よりも出射側に配置することが好ましい。すなわち、偏光変調素子は偏光分離素子4と投射光学系10との間に配置され、位相差板8は偏光分離素子4と偏光変調素子との間に配置されることが好ましい。
【0031】
ここで本実施例の効果を見積もるため、図2(a)に示される従来の構成において、偏光分離素子4で合成されて図2(c)の偏光板11Rを透過した後の画像光7Rと画像光7Lとの比を計算した。この比が大きいほど画像光とノイズ光が分離されてクロストークが少ないことを意味する。入射光束は立体角1度を考慮し、z軸に略平行に入射する場合(中心領域)と、斜入射の場合として入射角度7度での各方位からの平均値(斜入射領域)の2つの場合について行った。このとき、中心領域において7R:7Lは約1500:1となり高い消光比を示す。しかし、斜入射領域では7R:7Lは約100:1となり、中心付近に比べて1桁程度消光比が低い。これは、斜入射領域では偏光軸の傾き量が増大するため、出射偏光の偏光軸と偏光板11Rの検光軸(x軸方向と平行な偏光を吸収又は反射)との角度ずれが増大したためである。
【0032】
これに対し、図4(a)に示される構成で、位相差板8としてサファイア基板を配置した場合の上記と同様の計算結果を以下に示す。なお、サファイア基板の厚みや光学軸がz軸方向と成す角度(鋭角側の角度)の最適値は、入射角度や偏光分離素子のプリズム屈折率に依存する。計算では、偏光分離素子4のプリズムの屈折率を1.8とし、サファイア基板の厚みは40μm、光学軸の角度は62度として計算した。このとき、中心領域において7R:7Lは約3000:1、斜入射領域でも約2000:1となった。従来例に比べて消光比が向上しており、本実施例の効果が確認できる。
【0033】
以上のように、本実施例の投射型画像表示装置によれば、入射角度が高い領域でも高い消光比を保つことができる。このため、輝度を落とすことなく表示画像のクロストークを大きく低減することができ、高品位な3次元画像を表示することができる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2における投射型画像表示装置(画像表示装置)について説明する。図6は、本実施例における投射型画像表示装置300の概略構成図である。なお、本実施例において、実施例1と重複する部位については省略して説明する。
【0034】
投射型画像表示装置300は、光源1からの照明光2を照明光学系3で整えた後、ダイクロイックミラー14、15、16、及び、ミラー12を用いて、青、緑、赤色の波長帯域ごとに光線を分離している。以下、青色をB、緑色をG、赤色をRとそれぞれ略す。帯域ごとに分離された光は、それぞれの帯域に対応した偏光分離素子4b、4g、4rにより2つの異なる偏光へ分離される。偏光分離素子4で反射した偏光は、位相差板5Rb、5Rg、5Rrを通過して、右目用の画像表示素子6Rb、6Rg,6Rrへ入射する。偏光分離素子4を透過した偏光は、位相差板5Lb、5Rb、5Rrを通過して、左目用の画像表示素子6Lb、6Lg、6Lrへ入射する。画像表示素子6R、6L(r、g、bは省略)により偏光状態が変化して画像光となった光は、再び各偏光分離素子に入射することで、偏光状態の異なる2つの画像光7R、7Lが合成され、合成プリズム17側へ出射される。その後、合成プリズム17によりB,G,Rの各帯域の画像光が合成され、投射光学系10により投射される。
【0035】
本実施例の投射型画像表示装置300では、各色に対応した画像表示素子を用いることで、色情報を時間的に分割して表示する必要がない。このため、画像が明るく、動画表示時においても高品位の3次元映像を表示することができる。また偏光分離素子4b、4g、4rは、それぞれ、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nm程度の帯域幅で動作すればよく、実施例1の偏光分離素子に比べて容易に製造可能である。
【0036】
また、投射型画像表示装置300においては、位相差板8が合成プリズム17の出射側に配置されている。このような配置により、各帯域用の偏光分離素子4b、4g、4rで生じる偏光軸のずれを1枚の位相差板で補償できる。また、偏光分離素子4b、4g、4rと合成プリズム17との間に、各帯域に最適化した位相差板8を配置してもよい。
【0037】
また、各色に対応した画像表示素子を用いる構成として、例えば、図7に示されるような投射型画像表示装置400を採用することもできる。投射型画像表示装置400は、1つの偏光分離素子4、2つの合成プリズム17R、17L(クロスダイクロイックミラー)、及び、6枚の画像表示素子6Rb、6Rg、6Rr、6Lb、6Lg、6Lr(反射型画像表示素子)を備えて構成される。また、透過型の画像表示素子を用いた構成や、その他の画像表示素子を用いてもよい。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3における投射型画像表示装置(画像表示装置)について説明する。図8は、本実施例における投射型画像表示装置500の概略構成図である。なお、実施例1、2と重複する部位については説明を省略する。
【0038】
図8に示される投射型画像表示装置500において、光源1から出射された光は、まず偏光変換素子18を通過することにより一様な偏光光19に揃えられる。その後、G帯域のみ反射する特性を有するダイクロイックミラー20により、G偏光2gは反射され、B偏光2b及びR偏光2rは透過する。B偏光2b及びR偏光2rは、偏光板21を透過して偏光度が向上した後、波長選択性位相差板22に入射する。波長選択性位相差板22は、B偏光のみ偏光方向を90°変換させる特性を有し、これによりR偏光の偏光状態は維持したまま、B偏光は90°偏光方向が回転した状態で、偏光分離素子4dに入射する。
【0039】
偏光分離素子4dにより、B偏光2bは反射しR偏光2rは透過して色分離され、それぞれ位相差板5b、5r、及び、画像表示素子6b、6rに入射する。G偏光2gはそのまま偏光分離素子4cに入射し、位相差板5g及び画像表示素子6gに入射する。画像表示素子6g、6b、6rにより偏光状態が変化して画像光となった光7g、7b、7rは、再び偏光分離素子4c、4dに入射し、G偏光7gは反射、B偏光7bは透過、R偏光7rは反射して、それぞれ合成プリズム17側へ導かれる。合成プリズム17により、Gの画像光(G偏光7g)は反射し、B、Rの画像光(B偏光7b、R偏光7r)は透過することで、G、B、Rの画像光が合成されて、投射光学系10によりスクリーンに投影及び結像される。
【0040】
ここで、偏光分離素子4dはRとBの画像光を分離、合成するために用いられる。本実施例の投射型画像表示装置500は、3つの色帯域に対して各画像表示素子が1枚しか配置されておらず、偏光分離素子により左右の目に対応する画像を合成する方式ではない点で、実施例1、2とは異なる。しかし、例えば投射型画像表示装置500を2台用い、かつ、一台の画像光の偏光状態を他方と直交するように異ならせて同じエリアに重ね合わせて投影することにより、観察者は実施例1、2と同様の方法で3次元画像を観察することが可能である。一方の装置の偏光状態を異ならせるには、投射光学系10の手前に光学素子23として1/2波長板や1/4波長板等を配置すればよい。このように、光学系の内部に偏光分離素子4が用いられる場合には、2台で合成する方式であっても、これまでの説明と同様の課題によりクロストークが発生する。特に反射型の画像表示素子を用いる場合、入射光と画像光の分離が必要となるためこのような偏光分離素子が必要となる可能性が高い。その際、偏光分離素子4と投射光学系10との間に、傾斜した光学軸を有する位相差板8を配置することにより、クロストークを低減することができる。
【0041】
また、投射光学系10の手前に、光学素子23として時間的に偏光状態を切り替える液晶シャッタ等の偏光変調素子を配置した場合、1台でも3次元画像の表示が可能となる。この場合、観察者は偏光状態の変調のタイミングと時間的に同期した画像検光手段を用い、左右の目に入る画像を適切に検光することで3次元画像を観察する。この方式を採用した場合でも、色分離光学系の内部に偏光分離素子が用いられていると、偏光分離又は合成時に偏光軸のずれが発生するため、位相差板8による補正が効果的となる。このとき、位相差板8は光学素子23としての偏光変調素子と偏光分離素子4との間の光路に配置することが好ましい。偏光変調素子よりも投射光学系側に位相差板8を配置すると、偏光変調素子の影響を受けて補正効果が低減する可能性がある。
【0042】
また、偏光変調素子による位相ずれの影響を低減するため、特性の異なる位相差板(第2の位相差板)を位相差板8と組み合わせて配置することも有効である。例えば、偏光変調素子が液晶を用いて構成される場合には、第2の位相差板として、液晶と反対の異方性を有し、斜入射時の液晶による位相変化をキャンセルする位相差板を用いることにより、さらに高い位相補償効果を得ることができる。ただしこれは一例であり、第2の位相差板の特性については偏光変調素子に併せて適宜選択すればよい。またその場合、第2の位相差板を偏光変調素子と位相差板8との間に配置することがより好ましい。
【0043】
上記各実施例の投射型画像表示装置によれば、光学軸が面法線方向から傾いた位相差板を偏光分離素子と投射光学系との間に配置することにより、輝度を損なうことなくクロストークのない高品位の3次元画像を表示することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0045】
例えば、本願明細書においては、反射型の画像表示素子を用いているが、この限りではなく、透過型の画像表示素子を用いても構わない。この場合、公知の照明光学系を用いて、光源からの光で画像表示素子を照明しても構わないし、またLED等の光源を画像表示素子の背面側に近接して配置し、出射した画像光をPBSで合成すれば良い。
【符号の説明】
【0046】
4 偏光分離素子
6 画像表示素子
8 位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの入射光を変調する画像表示素子と、
第1の偏光を透過し該第1の偏光とは異なる第2の偏光を反射する特性を有し、前記画像表示素子からの画像光を合成して投射光学系に導く偏光分離素子と、
前記偏光分離素子の投射光学系側に配置された位相差板と、を有し、
前記位相差板は、該位相差板の面法線方向及び面内方向とは異なる方向の光学軸を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記画像表示素子は、前記光源からの前記入射光を変調して反射する反射型画像表示素子であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
光源と、
前記画像表示素子から前記偏光分離素子を介して得られた画像光を投射する投射光学系と、を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記位相差板の主面は、前記偏光分離素子の出射面と平行に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記位相差板の前記光学軸は、前記偏光分離素子の偏光分離面の法線と該位相差板の前記面法線とを含む面に平行であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記偏光分離素子と前記投射光学系との間に配置され、前記画像光の偏光状態を異なる偏光状態へ変調する偏光変調素子を更に有し、
前記位相差板は、前記偏光分離素子と前記偏光変調素子との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記偏光変調素子は、1/4波長板、1/2波長板、又は、液晶を用いた偏光変調素子であることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記偏光分離素子は、P偏光又はS偏光を透過又は反射する偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記位相差板は、該位相差板を透過する光の波長帯域の中心波長λにおいて、該位相差板の屈折率異方性の差Δnと位相差板の異方性媒質の厚みdとの積を位相差Δn・dとしたとき、位相差Δn・dは0.35λ以上0.65λ以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記位相差板の前記光学軸と前記面法線とのなす角度は、55度以上75度以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記位相差板に隣接して配置され、前記面法線と平行な方向に光学軸を有する第2の位相差板を更に有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記第2の位相差板は、前記位相差板とは正負逆の屈折率異方性を有することを特徴とする請求項11に記載の投射型画像表示装置。
【請求項13】
前記画像表示素子から前記偏光分離素子を介して得られた画像光を投射する投射光学系を取り付ける取り付け部を更に有し、
前記位相差板は、前記偏光分離素子と前記取り付け部との間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−137637(P2012−137637A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290326(P2010−290326)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】