説明

画像表示観察システム、光変調器、及び画像表示装置

【課題】簡素な構成で外光による光の明滅を確実に抑止する。
【解決手段】画像信号の入力を受け、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号を出力する信号制御部120と、信号制御部120から出力された信号が入力され、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して交互に表示する表示パネル134と、を備える、画像表示装置100と、画像表示装置100から出力された所定の偏光方向を有する画像とランダム偏光の外光とが入射し、入射した光の偏光の方向を周期的に変化させるスイッチ液晶203と、スイッチ液晶203から出射された光が入射し、所定方向の偏光軸を有する偏光板204と、を有する表示画像鑑賞用メガネ200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示観察システム、光変調器、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時では、例えば下記の特許文献1に記載されているように、1つの画面に対して時分割で複数の映像を表示させ、それと同期したシャッター付メガネを用いることで複数の映像をそれぞれ分離して認識する技術が知られている。また、特許文献2に記載されているように、この技術を利用し、左右の目に相当する視差映像を表示することで立体表示が可能となる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3701355号公報
【特許文献2】特開昭61−227498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの2種類の技術は、ハードウエア的には本質的に同じものであり、表示する映像内容およびシャッターの駆動が異なるだけである。すなわち、左右の目に相対するシャッターを同位相にて開閉すれば複数の映像を選択的に表示することができ、また2枚の映像を視差映像としてシャッターを逆位相で開閉すれば立体映像を表示することができる。
【0005】
ところで、テレビ受像機の垂直同期周波数は、NTSC方式の場合、約60Hz、PALおよびSECAMの場合は50Hzとなっている。このため、シャッター付メガネは、これに同期して60Hzまたは50Hzにて開閉動作を行うことになる。
【0006】
一方、例えば室内の蛍光灯などの外光に用いられる商用電源の周波数も、同じく50Hzまたは60Hzとなっており、インバーター式でない蛍光灯はこの倍の周波数100Hzまたは120Hzで明滅を生じている。
【0007】
この場合、シャッター付メガネのシャッターと蛍光灯をそれぞれ別個に使用している場合は、周波数が高く人の眼に認識されることはないが、シャッター越しに蛍光灯を見ると、シャッターの駆動周波数と蛍光灯のフリッカー周波数の周波数差に起因する光の明滅を感じる。例えば、商用周波数50Hzの環境下で、60Hzの映画信号を見る場合、その周波数の差である20Hzまたは40Hzの光の明滅がシャッターを透過して視認される。この場合、表示画面そのものには明滅を感じないものの、画面の周辺部、例えば蛍光灯によって照明された壁などにおいて認識し易い明滅が感じられ、ユーザが不快に感じる場合がある。
【0008】
また、液晶表示パネルの場合は、垂直方向の上側から線順次に画像が表示される。この場合、液晶の応答速度不足に起因して、画面の上部と下部とで異なる画像が共に表示されてしまい、いわゆるクロストークの発生が懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、簡素な構成で外光による光の明滅を確実に抑止するとともに、クロストークの発生を抑えることが可能な、新規かつ改良された画像表示観察システム、光変調器、及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、画像信号の入力を受け、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号を出力する信号制御部と、前記信号制御部から出力された信号が入力され、前記異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して交互に表示する表示パネルと、を備える、画像表示装置と、前記画像表示装置から出力された所定の偏光方向を有する画像とランダム偏光の外光とが入射し、入射した光の偏光の方向を周期的に変化させる液晶層と、前記液晶層から出射された光が入射し、所定方向の偏光軸を有する偏光板と、を有する光変調器と、を備える、画像表示観察システムが提供される。
【0011】
また、前記画像表示装置は、所定の偏光方向を有する画像を円偏光に変換する1/4λ波長板を有し、前記光変調器は、前記液晶層よりも前記画像表示装置側に配置されて前記円偏光を前記所定の偏光方向に再度変換する1/4λ波長板を備えるものであってもよい。
【0012】
また、前記液晶層は、電圧の印加の有無に応じて入射した光の偏光方向を回転させ、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0013】
また、前記光変調器は、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、前記異なる複数の画像は、右目により視認される右目用画像と、左目により視認される左目用画像であり、前記液晶層は、前記画像表示装置から周期的に出力される前記右目用画像及び前記左目用画像の切り換わりに応じて、前記右目用画像が右目に入射し、前記左目用画像が左目に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0014】
また、前記光変調器は、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、前記異なる複数の画像は、それぞれが異なるユーザによって視認される画像であり、前記画像表示装置から周期的に出力される前記異なる複数の画像の切り換わりに応じて、前記複数の画像の1つが右目及び左目の双方に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、画像表示装置から周期的に出力され、異なる複数の画像のそれぞれが少なくとも2回連続するように構成された所定の偏光方向を有する画像と、ランダム偏光の外光とが入射し、入射した光の偏光の方向を周期的に変化させる液晶層と、前記液晶層から出射された光が入射し、所定方向の偏光軸を有する偏光板と、を備える、光変調器が提供される。
【0016】
また、前記画像表示装置から出力された画像は、所定の偏光方向を有する画像が円偏光に変換されたものであり、前記液晶層よりも前記画像表示装置側に配置されて、前記円偏光を前記所定の偏光方向に再度変換する1/4λ波長板を備えるものであってもよい。
【0017】
また、前記液晶層は、電圧の印加の有無に応じて入射した光の偏光方向を回転させ、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0018】
また、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、前記異なる複数の画像は、右目により視認される右目用画像と、左目により視認される左目用画像であり、前記液晶層は、前記画像表示装置から周期的に出力される前記右目用画像及び前記左目用画像の切り換わりに応じて、前記右目用画像が右目に入射し、前記左目用画像が左目に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0019】
また、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、前記異なる複数の画像は、それぞれが異なるユーザによって視認される画像であり、前記画像表示装置から周期的に出力される異なる複数の画像の切り換わりに応じて、前記複数の画像の1つが右目及び左目の双方に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御するものであってもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、画像信号の入力を受け、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号を出力する信号制御部と、前記信号制御部から出力された信号が入力され、前記異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して交互に表示する表示パネルと、前記異なる複数の画像の偏光を円偏光に変換する1/4λ波長板と、を備え、前記円偏光を所定の偏光方向に変換する1/4λ波長板を液晶層の前面に備えて前記液晶層によるシャッター動作を行う光変調器に対して、前記異なる複数の画像を出力する、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡素な構成で外光による光の明滅を確実に抑止するとともに、クロストークの発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る立体画像表示観察システムの構成を示す模式図である。
【図2】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】画像表示装置に表示される映像と、液晶シャッターの開閉を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る2度書き込みの原理と、液晶シャッターの開閉を示すタイミングチャートである。
【図5】屋内の照明に用いられる蛍光灯(外光)と液晶シャッターの関係について説明するための特性図である。
【図6】本実施形態に係る映像表示システムの具体的構成を詳細に示す模式図である。
【図7】図4の構成から+1/4波長板114及び−1/4波長板202を取り除いた構成を示す模式図である。
【図8】複数ユーザに対して異なる映像を提供するシステム(Dual View)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.映像表示システムの全体構成
2.画像表示装置の構成例
3.本実施形態による2度書き込みの例
4.蛍光灯などの外光によるフリッカの発生要因について
5.本実施形態の映像表示システムの具体的構成
6.異なる複数の画像を周期的に表示するシステムへの適用
【0025】
[1.映像表示システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る立体画像表示観察システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステムはLCDから構成される画像表示装置100と、表示画像鑑賞用メガネ(光変調器)200とを備える。画像表示装置100は、表示パネルを駆動する駆動回路と、駆動回路より垂直同期信号を受けて表示画像鑑賞用メガネ200に信号を発する発信機と、を備え、倍速駆動ができるものである。表示画像鑑賞用メガネ200は、画像表示装置100の発信機から送信された信号を受信する機能を有し、受信した信号に基づいて、表示パネルに表示された映像に合わせてシャッターを開閉して映像を選択する液晶シャッター200a,200bを備える。
【0026】
画像表示装置100は、例えば時分割式の立体映像ディスプレイ装置であり、左眼用映像及び右眼用映像を非常に短い周期で画面全体に交互にディスプレイする。また、画像表示装置100は、左眼用映像及び右眼用映像のディスプレイ周期に同期して左眼及び右眼に映像を分離して提供する。画像表示装置100は、例えば、フィールド毎に右目用画像Rと左目用画像Lを交互に表示する。表示画像鑑賞用メガネ200には、レンズに相当する部分に一対の液晶シャッター200a,200bが設けられている。液晶シャッター200a,200bは、画像表示装置100のフィールド毎の画像切り換えに同期して交互に開閉動作を行う。すなわち、画像表示装置100に右目用の画像Aが表示されるフィールドでは、左目用の液晶シャッター200bが閉鎖状態となり、右目用の液晶シャッターが開放状態200aとなる。また、左目用の画像Bが表示されるフィールドでは、これと逆の動作を行う。このように、画像表示装置100は、画像A及び画像Bを非常に短い周期で画面全体に交互にディスプレイすると同時に、画像A及び画像Bのディスプレイ周期に同期して左眼及び右眼に映像を分離して提供する。
【0027】
このような動作により、鑑賞用メガネ200を掛けて画像表示装置100を見るユーザの右目には画像Aのみが、また、左目には画像Bのみが入射される。このため、鑑賞者の目の内部で右目用と左目用の画像が合成され、画像表示装置100に表示される画像が立体的に認識される。また、画像表示装置100は通常の2次元画像を表示することもでき、この場合、画像Aと画像Bの切り換えは行われない。
【0028】
[2.画像表示装置の構成例]
次に、画像表示装置100の構成について説明する。図2は、画像表示装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、画像表示装置100は、映像信号制御部120、シャッター制御部122、エミッタ124、タイミング制御部126、バックライト制御部128、ゲートドライバ130、データドライバ132、液晶表示パネル134を備える。液晶表示パネル134の背後には、バックライト(面光源)136が配置されている。
【0029】
液晶表示パネル134は、液晶層、液晶層を挟んで対向する透明電極、カラーフィルタ等から構成されている。映像信号制御部120には、右目用の画像A及び左目用の画像Bを表示するための映像信号が入力される。映像信号制御部120は、液晶表示パネル134に右目用の画像Aと左目用の画像Bを交互に表示させるため、左右映像信号を交互に出力する。また、映像信号制御部120は、入力された左右映像信号に基づいて、後述する2度書き込みを行うため、右目用映像信号と左目用映像信号のそれぞれについて、同じ信号が2つ連続するように変換を行う。
【0030】
タイミング制御部126には、映像信号制御部120で変換された右目用映像信号及び左目用映像信号が入力される。タイミング制御部126は、入力された右目用映像信号及び左目用映像信号を液晶表示パネル134へ入力するための信号に変換し、ゲートドライバ130およびデータドライバ132の動作に用いられるパルス信号を生成する。
【0031】
タイミング制御部126で変換された信号は、ゲートドライバ130とデータドライバ132のそれぞれに入力される。ゲートドライバ130およびデータドライバ132は、タイミング制御部126で生成されたパルス信号を受け、入力された信号に基づいて液晶表示パネル134の各画素を発光させる。これにより、液晶表示パネル134に映像が表示される。
【0032】
また、映像信号制御部120は、右目用映像信号及び左目用映像信号の切り換わりのタイミングを示すタイミング信号をシャッター制御部122へ送る。シャッター制御部122は、映像信号制御部120から送られたタイミング信号に基づいて、エミッタ124を発光させる駆動信号をエミッタ124へ送る。ここで、エミッタ124を発光させる駆動信号は、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを含む信号であり、シャッター制御部122は、映像信号制御部120から送られたタイミング信号により、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを制御する。エミッタ124は、シャッター制御部122から送られた駆動信号に基づいて、左右の液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを示す光信号を鑑賞用メガネ200に対して送信する。なお、エミッタ124を発光させる駆動信号は、画像A及び画像Bの切り換わりのタイミングを含むものとして、開口期間は表示画像鑑賞用メガネ200側で保持している値を使用しても良い。
【0033】
表示画像鑑賞用メガネ200は、詳細は省略するが、光信号を受信するセンサを備えている。光信号を受信した鑑賞用メガネ200は、光信号によって指示された液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングに同期して、液晶シャッター200a,200bの開閉動作を交互に行う。
【0034】
また、シャッター制御部122は、左右の映像の切り換わりのタイミングを示すタイミング信号をバックライト制御部128へ送る。バックライト制御部128は、入力されたタイミング信号に基づいて、バックライト136を点灯させるための制御信号を出力する。バックライト136は、バックライト制御部128から入力された制御信号に基づいて点灯を行う。
【0035】
なお、画像表示装置100としては、液晶表示装置を例示するが、CRT、PDP、ELなどテレビの垂直同期周波数の整数倍の表示が行えるデバイスであれば、これに限定されるものではない。
【0036】
表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは、例えばTN液晶による液晶シャッターで構成されており、電圧をON/OFFすることにより光の透過/非透過を選択できるものである。
【0037】
図3は、画像表示装置100に表示される映像と、液晶シャッター200a,200bの開閉を示すタイミングチャートである。図3に示すように、画像表示装置100に表示される映像を右目用の画像A、左目用の画像Bの2種類とし、観測者は、液晶シャッター200aが開いている間に画像Aを視認し、液晶シャッター200bが開いている間に画像Bを視認するものとする。表示させる映像ソースとしては、例えばPALの50Hzとする。
【0038】
図3に示すように、先ず、画像Aが画像表示装置100に表示され始め、液晶の応答時間が経過して画像Aが完全に表示された時点で、液晶シャッター200aが開状態となる。これにより、観測者の右目は画像Aを認識する。次に、画像表示装置100に画像Bが表示され始めると、液晶シャッター200aは閉状態となり、画像Bの液晶シャッター200aの透過が遮断(ブロック)される。
【0039】
次に、画像Bが完全に表示されると、液晶シャッター200bが開状態となり、観測者の左目は画像Bを認識する。このようにして、観測者は画像Aと画像Bを交互に視認することにより、画像Aと画像Bとの視差により立体映像を視認することができる。
【0040】
液晶シャッター200a,200bのそれぞれの開放時間は、画像表示装置100および液晶シャッター200a,200bの応答速度によって決定され、本実施形態では、一例として5msとしている。液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングは、画像表示装置100の特性によって決定されるものであり、実際の開閉タイミング、画像A、Bの表示方法は適宜調整することができる。
【0041】
以上のように、画像A,Bを1つの画像表示装置100に交互に表示し、それと同期して表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bを開閉することで、観測者は立体映像を視認することができる。
【0042】
[3.本実施形態による2度書き込みの例]
ところで、本実施形態のように画像表示装置100の表示パネルを液晶表示パネルから構成した場合、液晶表示パネルでは垂直方向の上側から線順次に画像が表示される。この場合、液晶の応答速度不足に起因して、画面の上部と下部とで右目用の画像Aと左目用の画像Bが共に表示されてしまい、いわゆるクロストークの発生が懸念される。このため、本実施形態では、液晶の応答速度の不足に起因するクロストークの発生、及び輝度不足等を解消するため、液晶パネルの駆動周波数を高め、左右の画像の1フレームを液晶表示パネル132に2度表示させる(書き込む)という手法を採用している。
【0043】
図4は、本実施形態による2度書き込みの原理と、液晶シャッター200a,200bの開閉を示すタイミングチャートであって、右目用画像Aと左目用画像Bのそれぞれを240[Hz]の駆動周波数で表示した場合を示している。図4において、1回の書き込みにより右目用画像A又は左目用画像Bが表示される時間は、1/240[Hz]=4.2[ms]である。
【0044】
図4(A)は、液晶表示パネル132の下辺(Y=0)から上辺(Y=Y0)に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。また、図4(B)は、液晶表示パネル132のバックライト134が発光している様子を示している。図4(B)に示すように、本実施形態では、バックライト134は常時点灯しているが、バックライト制御部128の制御により、液晶シャッター200a,200bのオープン期間に合わせてバックライト134を点灯させても良い。
【0045】
図4(C)は、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを示している。また、図4(D)は、液晶シャッター200a,200bの開閉により、鑑賞用メガネ200を掛けたユーザの右目に右目用画像Rが入射し、左目に左目用画像Lが入射している状態を示している。
【0046】
図4(A)に示すように、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t20からt21までの4.2[ms]間に左目用画像Lが書き込まれ、続けて時刻t21からのt22までの4.2[ms]間に再び左目用画像Lが書き込まれる。ここで、時刻t20からt21の間に書き込まれる左目用画像Lと時刻t21からのt22の間に書き込まれる左目用画像Lは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。オーバードライブ等の処理としては、例えば、2回目の書き込みにおいて実際の信号レベルと1回目の映像信号レベル(ドライブ量)との比較を行い、1回目の書き込みでは到達しなかった輝度値の補正を行う処理や、揺り戻し現象の補正等の処理が挙げられる。また、1回目の書き込みにおいてもオーバードライブをすることができる。これらの処理はタイミング制御部126で行うことができ、タイミング制御部126は、オーバードライブ等の処理による輝度補正部としても機能する。また、1回目に書き込まれる左目用画像Lと2回目に書き込まれる左目用画像Lとの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0047】
そして、左目用画像Bを2回書き込んだ後に右目用画像Aが書き込まれる。右目用画像Rについても、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t22からt23までの4.2[ms]間に右目用画像Aが書き込まれ、続けて時刻t23からのt24までの4.2[ms]間に再び右目用画像Aが書き込まれる。時刻t22からt23の間に書き込まれる右目用画像Rと時刻t23からのt24の間に書き込まれる右目用画像Rは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。また、1回目に書き込まれる右目用画像Aと2回目に書き込まれる右目用画像Aとの間、または左目用画像Bと右目用画像Aの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0048】
一般に液晶表示装置は、その応答時間が比較的遅いため、書き込み時間が短時間であると、各画素が所望の輝度に達しない。このため、駆動周波数を高くして右目用画像Aと左目用画像Bを交互に書き込むと、1回の書き込み時間(=4.2ms)が短くなり、1回目の書き込み後にしか所望の輝度に到達しないため、画面上辺と下辺の両方が所望の輝度に達しているタイミングが存在しない。
【0049】
本実施形態では、右目用画像Aと左目用画像Bをそれぞれ2度に渡って書き込みしているため、2回目の書き込み時には、1回目に既に同じ画像を書き込んでいることから、所望の輝度を保持することができ、従って、画面の上辺と下辺の両方で所望の輝度に達した状態を実現できる。
【0050】
そして、図4(A)において、時刻t22の時点では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、左目用画像Lの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図4(C)及び図4(D)に示すように、時刻t22を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ液晶シャッター200bを開口させることで、ユーザの左目には左目用画像Lのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。なお、クロストークと輝度はトレードオフの関係にあるので、どちらを優先するかによってシャッターオープン期間は適宜設定できる。
【0051】
同様に、右目用画像Rにおいても、図4(A)に示す時刻t24の時点では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、右目用画像Aの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図4(C)及び図4(D)に示すように、時刻t24を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ液晶シャッター200aを開口させることで、ユーザの右目には右目用画像Rのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。
【0052】
上述のように、液晶の駆動周波数を高めると、1回目の書き込み時には、書き込み終了時に画面下部では所望の輝度に到達しないため、液晶表示パネル132の過渡応答中である1回目の書き込み時の少なくとも一部区間では、液晶シャッター200a,200bは閉じられる。より詳細には、右目用画像A又は左目用画像Bが表示されている約8.4msのうち、少なくとも50%に相当する4.2msの区間では、液晶シャッター200a,200bは閉じられる。これにより、1回目の書き込みによる過渡応答中の映像がユーザに視認されることを回避できる。また、クロストークを抑えるため、液晶シャッター200a,200bの双方が閉じている区間が設けられる。
【0053】
本実施形態では、図4(C)に示すように、右目用の液晶シャッターR(液晶シャッター200a)は、時刻t24を中心とする所定時間(2.1ms)の間だけ開かれる。また、左目用の液晶シャッターL(液晶シャッター200b)は、時刻t22,t26を中心とする所定時間(例えば2.1ms)の間だけ開かれる。
【0054】
時刻t24の時点では、画面下辺においては、右目用画像Aの2回目の書き込みが開始されており、画面上辺においては、右目用画像Aの2回目の書き込みが終了する。従って、時刻t24の時点で液晶シャッター200aを開くことによって、1回目の書き込みによる右目用画像Aがユーザの右目に視認されることがなく、画面下辺から上辺に至る全域において、2回目の書き込みによる右目用画像Aがユーザの右目に視認される。
【0055】
同様に、時刻t22,t26の時点では、画面下辺においては、左目用画像Bの2回目の書き込みが開始されており、画面上辺においては、左目用画像Bの2回目の書き込みが終了する。従って、時刻t22または時刻t26の時点で液晶シャッター200bを開くことによって、1回目の書き込みによる左目用画像Bがユーザの左目に視認されることがない。これにより、画面下辺から上辺に至る全域において、2回目の書き込みによる左目用画像Bがユーザの左目に視認される。
【0056】
このように、1度目の書き込みで所望の輝度に到達し、2度目の書き込みでその輝度を保持することで、画面全体において所望の輝度に到達した映像をユーザに視認させることが可能となる。従って、図4(C)に示す時刻t22,t24,t26の時点において、必要最小限の所定時間(例えば2.1ms)のみ液晶シャッター200a,200bを開くことで、クロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。特に、画面上辺において、右目用画像Aから左目用画像Bへ切り換わるタイミング、または左目用画像Bから右目用画像Aに切り換わるタイミングよりも以前に液晶シャッター200a,200bの開期間を設けることで、クロストークの発生を確実に抑止できる。
【0057】
以上説明したように本実施形態に係る2度書き込みの例によれば、右目用画像Aと左目用画像Bが混ざるクロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態のような2度書きを行わない場合に、液晶が応答する程度の低い周波数で右目用画像Aと左目用画像Bとを交互に表示させた場合は、フリッカ(画面のちらつき)が発生してしまう。フリッカの発生は、例えば右目用画像A又は左目用画像Bの1フレームが表示される駆動周波数を60[Hz]以下とすると発生する。本実施形態では、液晶の駆動周波数を例えば240[Hz]とするため、フリッカの発生を確実に抑えることができる。
【0059】
[4.蛍光灯などの外光によるフリッカの発生要因について]
次に、図5に基づいて、屋内の照明に用いられる蛍光灯(外光)と液晶シャッター200a,200bの関係について説明する。本実施形態では、一例として、蛍光灯を発光させる商用電源の周波数を50Hzとし、NTSC(National Television Standards Committee)信号をベースとした2画面表示でシャッターの開放時間を5msとする。
【0060】
蛍光灯としては、インバーター方式のものではなく、安定器を用いるものとする。蛍光灯は、安定器を用いているため、商用周波数50Hzの2倍である100Hzで振動しており、その周期は10msである。一方、液晶シャッター200a,200bはNTSC方式の垂直同期周波数59.94Hzで交互に開閉するものとし、その周期は16.7msである。すなわち、図5に示すように、液晶シャッター200a,200bは、16.7ms間隔で5msだけ交互に開くものとする。
【0061】
図5は、蛍光灯の輝度(相対強度)と、液晶シャッター200a,200bの透過率(ここでは0〜100%とする)が時間に応じて変化する様子を示している。図5に示すように、蛍光灯の輝度は10ms周期で強度が変化する。また、液晶シャッター200a,200bの透過率は、16.7ms周期でシャッターが開閉することにより周期的に変化する。液晶シャッター200a,200bは、液晶の応答特性に起因して、開き始めから完全に開くまでの間、及び閉じ始めから完全に閉じるまでの間に、応答遅れによる過渡期が存在する。
【0062】
液晶シャッター200a,200bを通過して観測者の眼に届く光量は、蛍光灯の輝度と液晶シャッター200a,200bの透過率の積で表され、相対強度として図5中の斜線部で表すことができる。人の目が感じる光量は図5中に斜線のハッチングが付された各領域の積分値であるが、この値を時間軸に沿って包絡線として描くと、図5中に破線で示すようなうねり波形となる。うねり波形の周波数は、液晶シャッター200a,200bの周波数の2倍と蛍光灯の発光周波数との差分(2x59.94−100=19.88Hz)と、液晶シャッター200a,200bの周波数と蛍光灯の発光周波数との差分(100−59.94=40.06Hz)とが重畳したものとなる。一般的に、人の眼は、50Hz〜60Hz程度以下の明滅を光のちらつきとして認識することから、図5に示すようなうねり波形(50Hz程度)が発生する状況下においては、容易に視認できるフリッカ(光のちらつき)を感じ、観測者に不快な印象を与えることになる。
【0063】
以上のように、蛍光灯などの発光体の光は、それ自体が観測者に視認される場合は周波数が高いためフリッカの要因とはならないが、液晶シャッター200a,200bによるシャッター動作が重畳されると、フリッカとして視認されてしまう。
【0064】
[5.本実施形態の映像表示システムの具体的構成]
以上のようなフリッカを消失させるため、本実施形態は、ランダム偏光と考えられる外光に対し、画像表示装置100から出力される偏光を特定の状態とし、両者の相違を用いてフリッカを消失させる。このように、偏光を用いて分離することで、外光に対しては液晶シャッター200a,200bの機能が実質的に作用せず、画像表示装置100に表示された画像の偏光に対してのみ液晶シャッター200a,200bを機能させることができる。この結果として、蛍光灯を含む外光に対するフリッカを完全に消失させることができる。以下、詳細に説明する。
【0065】
図6は、本実施形態に係る映像表示システムの具体的構成を詳細に示す模式図である。図6に示すように、画像表示装置100においては、映像を表示する液晶表示パネル134を備え、液晶表示パネル134の表示面上に+1/4波長板114を設置している。
【0066】
一方、表示画像鑑賞用メガネ200は、画像表示装置100側から、−1/4波長板202、スイッチ液晶(液晶層)203、偏光板204が配置され、−1/4波長板202、スイッチ液晶203、及び偏光板204によって液晶シャッター200a,200bが構成されている。
【0067】
画像表示装置100がVAモードの液晶表示パネル134を備えるものである場合、映像情報は縦方向の偏光状態にて液晶表示パネル134から出力される。本実施形態による画像表示装置100では、液晶表示パネル134の前面に+1/4波長板114を設置し、+1/4波長板114の遅相軸が縦方向に+45度傾くように設置されている。このため、画像表示装置100から出力される光は、右円偏光となって出力される。
【0068】
一方、蛍光灯を含む各種発光体からの外光については、ランダム偏光として出力され、表示画像鑑賞用メガネ200の−1/4波長板202へ入射する。
【0069】
以上のようにして、画像表示装置100から出力された映像の光と、蛍光灯などの発光体から出力された外光は、互いに異なる偏光状態となり、表示画像鑑賞用メガネ200の表面に設置される−1/4波長板202に入射する。
【0070】
表示画像鑑賞用メガネ200の表面に設置される−1/4波長板202は、その遅相軸が縦方向に−45度傾くように設置されている。このため、画像表示装置100から出力された右円偏光は、−1/4波長板202により再び偏光状態が変換されて縦偏光となり、スイッチ液晶203に入射する。
【0071】
スイッチ液晶203は、例えばネマティック液晶層により構成されており、本実施形態では、ツイスト角90°のツイストネマティック(TN)型液晶を用いるものとする。スイッチ液晶203は、その表裏に1対の透明電極(不図示)を備え、透明電極間に電圧が印加されていない状態では、液晶層の液晶分子が90°ツイストしているため、スイッチ液晶203から出射された光は、ツイストに応じて伝播する偏光方向が90°回転する。
【0072】
スイッチ液晶203よりも観測者側に設置された偏光板204は、横方向の偏光軸を有している。このため、透明電極間に電圧が印加されていない場合、画像表示装置100から出力された光については、−1/4波長板202から出力された縦偏光の光は、液晶のツイストに応じて伝播する偏光方向が90°回転して横方向の偏光となるため、偏光板204を透過する。また、透明電極間にしきい値電圧以上の電圧を印加すると、液晶分子はその長軸を電界方向に向けて配向する。この状態では、液晶分子がツイストしていない状態となるため、画像表示装置100から出力された光は、縦偏光の状態が維持されるため、偏光板204にて吸収(ブロック)される。
【0073】
以上のように、スイッチ液晶203に電圧を印加していない場合は、画像表示装置100から出力された右円偏光は、表示画像鑑賞用メガネ200の−1/4波長板202で縦偏光となり、スイッチ液晶203、および偏光板204を透過して観測者の眼に到達し、観測者によって認識される。一方、スイッチ液晶203に電圧を印加している場合、画像表示装置100から出力された右円偏光は、表示画像鑑賞用メガネ200の−1/4波長板202で縦偏光となるが、スイッチ液晶203にて横偏光となるため、偏光板204にて吸収される。
【0074】
このように、画像表示装置100から出力された光については、液晶シャッター200a,200bは、いわゆるノーマリーホワイトモードで動作する。従って、画像表示装置100から出力された光に対しては、スイッチ液晶203への電圧の印加を周期的に行うことで、表示画像鑑賞用メガネ200による光の透過、吸収を周期的に行うことができる。これにより、表示画像鑑賞用メガネ200は、液晶シャッター200a,200bによるシャッター動作を行うことができる。
【0075】
一方、蛍光灯などの発光体から出力される外光はランダム偏光であり、偏光の向きは特定されていない。このため、外光は、−1/4波長板202を通過した後においてもランダム偏光のままの状態である。また、スイッチ液晶203を透過する際にも、透明電極への電圧の有無に応じて偏光方向が変化した場合、変化しない場合のいずれにおいても、ランダム偏光のままの状態であり、特定の偏光状態とはならない。このため、最終の偏光板204にて透過軸方向(横方向)の振動成分のみ取り出されるが、スイッチ液晶203への電圧の印加の有無に関わらず、常にランダム偏光の横方向の振動成分が偏光板204を通過する。従って、外光に対しては、表示画像鑑賞用メガネ200はシャッター動作を行うことなく、外光は、その横方向の振動成分が常に観測者の眼に視認される。
【0076】
従って、本実施形態の構成によれば、画像表示装置100から出力される光に対してのみシャッター動作を行い、外光に対してはシャッターが機能しない表示画像鑑賞用メガネ200を実現することができる。従って、外光に対しては液晶シャッター200a,200bが実質的に機能しないため、観測者の眼には、表示画像鑑賞用メガネ200へ入射する際の外光がそのままの周波数で視認されることとなり、フリッカの発生を完全に抑止することが可能となる。
【0077】
図7は、図6の構成から+1/4波長板114及び−1/4波長板202を取り除いた構成を示す模式図である。図7の構成においても、画像表示装置100から出力された光は縦偏光の状態でスイッチ液晶203へ入射するため、図6と同様に、画像表示装置100から出力された光に対しては周期的なシャッター動作を行うことができる。また、外光についても、外光はランダム偏光の状態でスイッチ液晶203へ入射し、ランダム偏光の状態で偏光板204へ入射する。このため、外光は、スイッチ液晶203への電圧の印加の有無に関わらず、透過軸方向(横方向)の振動成分が偏光板204を常に通過する。従って、図7の構成においても、外光に対してはシャッターが機能しない表示画像鑑賞用メガネ200を実現することができる。しかし、図7に示す構成では、観測者が首を傾けた場合など、画像表示装置100から出力された光の偏光方向とスイッチ液晶203の液晶の配向の向きが相違してしまうと、シャッターが正常に動作しなくなることが想定できる。この場合、シャッター開の状態で光が透過しなくなったり、逆にシャッター閉の状態で光が透過してしまい、左右の画像が混ざるクロストークが発生する懸念がある。
【0078】
図6に示す構成によれば、画像表示装置100に+1/4波長板114を設けたことにより、画像表示装置100から出力される偏光を円偏光としている。このため、例えば表示画像鑑賞用メガネ200を装着している観測者が首を傾けた場合などにおいても、−1/4波長板202とスイッチ液晶203は一体に傾くため、スイッチ液晶203へ入射する光の偏光方向が変化することはない。従って、表示画像鑑賞用メガネ200の傾きによる影響を抑止することができ、画像表示装置100から出力された光に対して常に正確なシャッター動作を行うことが可能である。
【0079】
なお、一般的な液晶シャッターは、図7の構成に対して、スイッチ液晶203よりも画像表示装置100側に所定方向の偏光軸を有する偏光板が配置される。この構成では、外光に対して、この偏光板が作用により、外光についても所定の偏光に変換されてスイッチ液晶203に入射する。このため、外光に対しても液晶シャッター200a,200bによるシャッター動作が機能してしまい、上述したようなフリッカ発生の要因となっている。
【0080】
本実施形態における表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは、電圧を加えない場合に光が透過するノーマリーホワイトモードの液晶を例示したが、電圧を加えない場合に光が遮断されるノーマリーブラックモードの液晶を用いることも可能である。この場合は、表示画像鑑賞用メガネ200の開閉におけるコントラストの更なる向上を図ることができる。一方、ノーマリーホワイトモードの液晶を用いた場合は、光透過時の透過率をより高くすることが可能である。
【0081】
また、本実施形態においては、NTSC方式の信号と50Hzの商用周波数との相対関係について説明したが、NTSC方式以外にも、PAL(Phase Alternation by Line)方式、またはSECAM(Sequential Couleur A Memoire)方式と、50Hzまたは60Hzなどの商用周波数との相対関係についても同様である。これらの場合においても、本実施形態の構成によれば、フリッカの発生を確実に抑えることが可能である。
【0082】
従って、本実施形態によれば、映像信号と同期して周期的に開閉するシャッターと、このシャッター開閉周期に近い周期で明暗を繰り返す外光とのうねり現象を大幅に改善することが可能である。外光は蛍光灯に限られるものではなく、LED照明、または各種AV機器の表示器による照明などであっても同様なフリッカが現れるが、本実施形態の構成によりフリッカを確実に抑止できる。これらの外光は、商用周波数ではなく、各装置に固有の周波数を有している場合もあるが、これらの外光に対しても本実施形態の構成によりフリッカを確実に抑えることができる。
【0083】
[6.異なる複数の画像を周期的に表示するシステムへの適用]
上述の例では、立体画像表示観察システムを例示したが、複数ユーザに対して異なる映像を提供するシステムへの適用も可能である。図8は、複数ユーザに対して異なる映像を提供するシステム(Dual View)を示す模式図である。このシステムでは、表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは同じタイミングで開閉動作を行う。画像表示装置100は、例えば時分割式のディスプレイ装置であり、ユーザAに対する映像とユーザBに対する映像を非常に短い周期で画面全体に交互にディスプレイする。
【0084】
この場合、図3において、画像表示装置100に表示される画像をユーザAに対するA、及びユーザBに対する画像Bの2種類とし、2人のユーザのうちの一方のユーザAが画像Aを視認し、他方のユーザBが画像Bを視認するものとする。表示させる映像ソースとしては、例えばPAL方式の50Hzとする。
【0085】
液晶シャッター200a,200bは、画像表示装置100のフィールド毎の画像切り換えに同期して同時に開閉動作を行う。すなわち、図3において、画像AがユーザAに対する画像であり、画像BがユーザBに対する画像であるとすると、画像表示装置100に画像Aが表示されるフィールドでは、ユーザAが装着する表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bが共に開放状態となる。一方、ユーザBが装着する表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは共に閉鎖状態となる。
【0086】
より詳細には、先ず、図3において画像Aが画像表示装置100に表示され始め、液晶の応答時間が経過して画像Aが完全に表示された時点で、ユーザAの液晶シャッター200a,200bが共に開状態となる。これにより、ユーザAは画像Aを視認することができる。次に、画像表示装置100に画像Bが表示され始めると、ユーザAの液晶シャッター200a,200bが共に閉状態となりユーザAの液晶シャッター200a,200bにおいて、画像Bの透過が遮断(ブロック)される。
【0087】
また、画像表示装置100にユーザBに対する画像Bが表示されるフィールドでは、ユーザBが装着する表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bが開放状態となる。一方、ユーザAが装着する表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは閉鎖状態となる。
【0088】
すなわち、画像Bが完全に表示されると、ユーザBの液晶シャッター200a,200bが共に開状態となり、ユーザBは画像Bを認識することができる。一方、ユーザAが装着する表示画像鑑賞用メガネ200の液晶シャッター200a,200bは共に閉鎖状態となるため、ユーザAは画像Bを視認することができない。
【0089】
このように、画像表示装置100は、ユーザAに対する画像A及びユーザBに対する画像Bを非常に短い周期で画面全体に交互にディスプレイし、個々のユーザの液晶シャッター200a,200bを画像A及び画像Bの表示タイミングに同期して開閉する。これにより、ユーザAとユーザBに対して異なる映像を提供することができる。図8の例においても、図4で説明した2度書きの原理により、画像A、画像Bのそれぞれは、同一の画像が少なくとも2回以上連続して表示される。これにより、ユーザが視認する画像Aに画像Bが混ざってしまうことを確実に抑止することができ、また、ユーザが視認する画像Bに画像Aが混ざってしまうことを確実に抑止することができる。なお、図8では、ユーザが2名の場合を例示しているが、ユーザがより多い場合であっても同様に構成することが可能である。上述の例では、2種類の映像を表示させるため、1つの垂直同期期間を2つに分けて表示するが、3つ以上に同期期間を分割することで同時に3つ以上の映像を表示し、より多くのユーザに異なる映像を提供することも可能である。
【0090】
以上説明したように本実施形態によれば、ランダム偏光と考えられる外光に対し、画像表示装置100から出力される偏光を特定の状態とすることにより、この両者の相違を用いる。このように偏光を用いて画像と外光とを分離することで、外光に対してはシャッター機能が作用せず、表示画面に由来する偏光に対してのみシャッターを機能させることができる。この結果、蛍光灯などを含む外光に対するフリッカーを確実に消失させることができる。また、画像A、画像Bのそれぞれについて、同一の画像を少なくとも2回以上連続して表示することにより、画像Aと画像Bが混ざってユーザに視認されるクロストークの問題を確実に抑止することが可能となる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0092】
100 画像表示装置
114 +1/4波長板
200 表示画像鑑賞用メガネ
202 −1/4波長板
203 スイッチ液晶
204 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号の入力を受け、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号を出力する信号制御部と、前記信号制御部から出力された信号が入力され、前記異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して交互に表示する表示パネルと、を備える、画像表示装置と、
前記画像表示装置から出力された所定の偏光方向を有する画像とランダム偏光の外光とが入射し、入射した光の偏光の方向を周期的に変化させる液晶層と、前記液晶層から出射された光が入射し、所定方向の偏光軸を有する偏光板と、を有する光変調器と、
を備える、画像表示観察システム。
【請求項2】
前記画像表示装置は、所定の偏光方向を有する画像を円偏光に変換する1/4λ波長板を有し、
前記光変調器は、前記液晶層よりも前記画像表示装置側に配置されて前記円偏光を前記所定の偏光方向に再度変換する1/4λ波長板を備える、請求項1に記載の画像表示観察システム。
【請求項3】
前記液晶層は、電圧の印加の有無に応じて入射した光の偏光方向を回転させ、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項1に記載の画像表示観察システム。
【請求項4】
前記光変調器は、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、
前記異なる複数の画像は、右目により視認される右目用画像と、左目により視認される左目用画像であり、
前記液晶層は、前記画像表示装置から周期的に出力される前記右目用画像及び前記左目用画像の切り換わりに応じて、前記右目用画像が右目に入射し、前記左目用画像が左目に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項3に記載の画像表示観察システム。
【請求項5】
前記光変調器は、観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、
前記異なる複数の画像は、それぞれが異なるユーザによって視認される画像であり、
前記画像表示装置から周期的に出力される前記異なる複数の画像の切り換わりに応じて、前記複数の画像の1つが右目及び左目の双方に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項3に記載の画像表示観察システム。
【請求項6】
画像表示装置から周期的に出力され、異なる複数の画像のそれぞれが少なくとも2回連続するように構成された所定の偏光方向を有する画像と、ランダム偏光の外光とが入射し、入射した光の偏光の方向を周期的に変化させる液晶層と、
前記液晶層から出射された光が入射し、所定方向の偏光軸を有する偏光板と、
を備える、光変調器。
【請求項7】
前記画像表示装置から出力された画像は、所定の偏光方向を有する画像が円偏光に変換されたものであり、
前記液晶層よりも前記画像表示装置側に配置されて、前記円偏光を前記所定の偏光方向に再度変換する1/4λ波長板を備える、請求項6に記載の光変調器。
【請求項8】
前記液晶層は、電圧の印加の有無に応じて入射した光の偏光方向を回転させ、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項6に記載の光変調器。
【請求項9】
観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、
前記異なる複数の画像は、右目により視認される右目用画像と、左目により視認される左目用画像であり、
前記液晶層は、前記画像表示装置から周期的に出力される前記右目用画像及び前記左目用画像の切り換わりに応じて、前記右目用画像が右目に入射し、前記左目用画像が左目に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
観測者の右目及び左目の前にそれぞれ配置され、
前記異なる複数の画像は、それぞれが異なるユーザによって視認される画像であり、
前記画像表示装置から周期的に出力される異なる複数の画像の切り換わりに応じて、前記複数の画像の1つが右目及び左目の双方に入射するように、前記偏光板における光の透過及び非透過を制御する、請求項8に記載の光変調器。
【請求項11】
画像信号の入力を受け、異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号を出力する信号制御部と、前記信号制御部から出力された信号が入力され、前記異なる複数の画像のそれぞれを少なくとも2回連続して交互に表示する表示パネルと、
前記異なる複数の画像の偏光を円偏光に変換する1/4λ波長板と、を備え、
前記円偏光を所定の偏光方向に変換する1/4λ波長板を液晶層の前面に備えて前記液晶層によるシャッター動作を行う光変調器に対して、前記異なる複数の画像を出力する、画像表示装置。
【請求項12】
前記異なる複数の画像は、右目により視認される右目用画像と、左目により視認される左目用画像である、請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記異なる複数の画像は、それぞれが異なるユーザによって視認される画像である、請求項11に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−75745(P2011−75745A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225964(P2009−225964)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】