異常検知装置
【課題】拘束シーンのように複数人が密着して生じる異常を検知するのは困難だった。
【解決手段】互いに姿勢が異なる人物の形状を模した複数の姿勢別人物モデル211と、背景画像210とが予め記憶部21に記憶されている。撮像部20は監視空間を撮像して監視画像を出力し、変化領域抽出部220は背景画像210との比較により監視画像から変化領域を抽出し、姿勢判定部222は姿勢別人物モデル211のうち2以上を重ね合わせた複合形状を変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する。異常判定部223は姿勢判定部222により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する。
【解決手段】互いに姿勢が異なる人物の形状を模した複数の姿勢別人物モデル211と、背景画像210とが予め記憶部21に記憶されている。撮像部20は監視空間を撮像して監視画像を出力し、変化領域抽出部220は背景画像210との比較により監視画像から変化領域を抽出し、姿勢判定部222は姿勢別人物モデル211のうち2以上を重ね合わせた複合形状を変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する。異常判定部223は姿勢判定部222により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析により異常シーンを検知する異常検知装置に関し、特に複数人が関与した異常シーンを検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの機械警備システムは主として閉店後や留守中の警備を担ってきたが、昨今では従業員や家人が居る有人環境においても警備の要請が増えてきた。有人環境での警備のひとつに金庫等を狙った押し込み強盗への対策がある。押し込み強盗においては賊が従業員等の手足をロープや粘着テープで拘束する場合があり、機械警備システムには自由を奪われた被害者に代わって異常事態を失報せず迅速に通報することが望まれる。その一方で有人環境では従業員や家人だけの正常シーンで誤報しないよう、賊と被害者の両者の行動に着目して異常検知を行うことが望ましい。
【0003】
従来技術には、有人環境での異常発生を検知するために2人の行動に着目して画像解析するものがある。例えば特許文献1に記載の監視装置では、監視画像に写った2人の人物について、その形状や距離の時間変化率が大きいときに喧嘩等などの異常を判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−273689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら拘束シーンでは、被害者は脅されるなどして動きが小さくなることが多く、賊も拘束作業する手ないし腕の動きが主であるために動きが小さくなることが多い。そのため喧嘩のように大きな動きを伴わないことが多い拘束シーンを従来技術によって異常検知することが困難であった。
【0006】
また、拘束シーンでは複数人が密着するために複数人の像が一体化して変化領域が1つになってしまうことが多い。そのため、一人ひとりの変化領域を区別することが困難であり、この点からも拘束シーンを従来技術によって異常検知することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、動きが小さく、複数人が密着している異常シーンを誤失報なく検知することのできる異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る異常検知装置は、監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知するものであって、監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した複数の人物モデルを姿勢ごとに予め記憶する記憶部と、背景画像との比較により監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、姿勢ごとの人物モデルのうち2以上を重ね合わせた複合形状を変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記本発明に係る異常検知装置において、前記姿勢は、人物が倒れている倒姿勢と人物が倒れていない非倒姿勢を含み、倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせが異常な組み合わせに設定される。
【0010】
また、本発明の好適な態様において、異常検知装置は、変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定する領域人数判定部、をさらに備え、姿勢判定部は、複合形状を人物数が2以上であると判定された変化領域のみと形状比較する。
【0011】
また、上記本発明の好適な態様において、姿勢判定部は、人物数が2以上であると判定された変化領域を姿勢ごとの人物モデルを当該人物数だけ組み合わせた複合形状と形状比較することができる。
【0012】
別の本発明に係る異常検知装置において、撮像部は、監視空間を一定時間ごとに撮像して監視画像を逐次出力し、異常判定部は、合致の継続回数を計数し、継続回数が所定以上となったときに異常信号を出力する。
【0013】
また、上記本発明に係る異常検知装置において、記憶部は、形状比較の処理を一定時間内に実行可能な反復回数を記憶し、姿勢判定部は、複合形状を反復回数だけランダムに生成し、生成された複合形状の中から最も適合する姿勢の組み合わせを判定する。
【0014】
また、上記本発明に係る異常検知装置において、記憶部は、形状比較の処理を一定時間内に実行可能な反復回数を記憶するとともに、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせを順次記憶し、姿勢判定部は、直前に記憶された姿勢の組み合わせを他の組み合わせよりも多く選んで複合形状を反復回数だけ生成し、生成された複合形状の中から最も適合する姿勢の組み合わせを判定する。
【0015】
また、上記本発明の好適な態様において、撮像部は、監視空間を一定時間ごとに撮像して監視画像を逐次出力し、領域人数判定部は、一定時間ごとに撮像された監視画像から抽出された変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出することにより人物数を判定する。
【0016】
また、上記本発明の好適な態様において、領域人数判定部は、さらに変化領域の分離を検出し、異常判定部は、変化領域の分離が検出されると継続回数の計数を保留するとともに当該変化領域間の距離を計測し、距離が所定距離未満であるときに当該変化領域の統合が検出されると保留を解除し、距離が所定距離以上になると継続回数の計数をリセットする。
【0017】
また、上記本発明の好適な態様において、領域人数判定部は、さらに変化領域の分離を検出し、異常判定部は、変化領域の分離が検出されると継続回数の計数を保留して予め設定された猶予時間内に当該変化領域の統合が検出されると保留を解除し、猶予時間内に当該変化領域の統合が検出されないと継続回数の計数をリセットする。
【0018】
他の本発明に係る異常検知装置は、監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを姿勢の組み合わせごとに予め記憶する記憶部と、背景画像との比較により監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、姿勢の組み合わせごとの複合人物モデルを変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
倒れている者と倒れていない者の形状が一体化した平素は生じにくい変化領域を認識することにより異常検知を行うので、動きの小さな複数人が密着している異常シーンであっても高い確度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】通報システム1の全体構成を表すブロック図である。
【図2】画像センサー2の構成を表すブロック図である。
【図3】立位モデル211Rを例示した図である。
【図4】屈位モデル211Kを例示した図である。
【図5】倒位モデル211Tを例示した図である。
【図6】異常発生時の監視画像を例示した図である。
【図7】姿勢判定部222が変化領域に姿勢別人物モデル211を重ね合わせている処理の様子を例示した図である。
【図8】姿勢判定部222が変化領域に対する姿勢別人物モデル211の適合度を算出している様子を例示した図である。
【図9】異常検知処理のフローチャートである。
【図10】領域人数判定処理のフローチャートである。
【図11】姿勢判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の異常検知装置を含んだ好適な実施形態の一例として、異常検知装置により異常シーンを検知して警備センター等へ通報する通報システム1について説明する。
【0022】
[通報システム1の構成]
図1は通報システム1の全体図である。通報システム1は画像センサー2とコントローラー3とセンター装置5を含んで構成され、画像センサー2が本発明の異常検知装置に相当する。
【0023】
画像センサー2は、金庫6などの重要物が設置された部屋を監視空間とし、当該部屋の天井に設置される。画像センサー2は監視空間にて発生した異常シーンを検知すると異常信号を出力する。
【0024】
画像センサー2は通信線を介してコントローラー3に接続され、コントローラー3は電話回線又はインターネット回線等の広域通信網4を介して警備センター等の遠隔地に設置されたセンター装置5と接続される。画像センサー2が出力した異常信号はコントローラー3を介してセンター装置5に送信される。
【0025】
図2は画像センサー2の構成を示したブロック図である。画像センサー2は撮像部20、記憶部21及び出力部23が制御部22に接続されてなる。
【0026】
撮像部20は、監視カメラであり、監視空間を臨むように設置され、監視空間を所定の時間間隔で撮影する。撮影された監視空間の監視画像は順次、制御部22へ出力される。監視画像が撮像される時間間隔は例えば1/5秒である。以下、この撮像の時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。本実施形態においては、監視空間である部屋の全体を撮像するために、撮像部20は、魚眼レンズを備え、その光軸を鉛直下方に向けて設置される。
【0027】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部21は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部22との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、背景画像210、姿勢別人物モデル211が含まれる。
【0028】
背景画像210は監視空間の背景のみが撮像されている画像である。背景画像210は、異常検知処理に先立って生成され、記憶部21に記憶される。背景画像210には人物像が含まれておらず、背景画像210を監視画像と比較することによって人物が撮像されている領域を変化領域として抽出できる。
【0029】
姿勢別人物モデル211は互いに姿勢の異なる人物像の領域形状を模した形状データを姿勢種別と対応付けたデータであり、予め設定されて記憶される。姿勢別人物モデル211には、人物が倒れている倒姿勢に対応した倒位モデル211Tと、人物が倒れていない非倒姿勢に対応した立位モデル211Rおよび屈位モデル211Kと、が含まれる。拘束シーンにおいて、姿勢種別「倒姿勢(倒位)」は倒された被害者がとる姿勢に相当し、姿勢種別「非倒姿勢(立位及び屈位)」は賊がとる姿勢に相当する。
【0030】
監視画像から抽出された変化領域に姿勢別人物モデル211を当て嵌めることで、監視空間中の人物の姿勢が推定される。
【0031】
立位モデル211Rは立位の人物の領域形状を近似した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において立位モデル211Rは、図3に示すように、長軸長がLR±αLR、短軸長がSR±αSRであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線方向から±αθRの範囲内である楕円で定義される。長軸の基準方向が放射線方向と設定されるのは、光軸を鉛直下方に向けた撮像部20により撮像された監視画像の座標系においては放射線方向が立位の人物の身長方向となるためである。
【0032】
長軸長の基準値LRは平均的な身長に応じて設定され、その変動許容範囲±αLRは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。短軸長の基準値SRは平均的な体の幅に応じて設定され、その変動許容範囲±αSRは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθRは立位の姿勢の個人差を吸収可能な範囲に設定される。
【0033】
記憶部21には、立位モデル211Rとして予め上記のように設定された長軸長LR、短軸長SR、長軸長の変動許容範囲±αLR、短軸長の変動許容範囲±αSR、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθRの各数値が姿勢種別「立位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LR,SRは監視画像上の位置ごとに設定し、αLR,αSRはLR,SRに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように立位モデル211Rを設定することにより監視画像上で立位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0034】
屈位モデル211Kは屈んだ姿勢の人物の領域形状を模した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において屈位モデル211Kは、図4に示すように、長軸長がLK±αLK、短軸長がSK±αSKであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線方向から±αθKの範囲内である楕円で定義される。立位モデル211Rの説明で上述したように放射線方向は人物の身長方向に相当する。
【0035】
長軸長の基準値LKはLRの1/2前後に設定され、その変動許容範囲±αLKは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。屈んだ姿勢では膝や腕が前方に突き出すことから短軸長の基準値SKはSRより長めに設定され、その変動許容範囲±αSKは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθKは屈んだ姿勢の個人差を吸収可能な範囲に設定される。
【0036】
記憶部21には、屈位モデル211Kとして予め上記のように設定された長軸長LK、短軸長SK、長軸長の変動許容範囲±αLK、短軸長の変動許容範囲±αSK、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθKの各数値が姿勢種別「屈位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LK、SKは監視画像上の位置ごとに設定し、αLK,αSKはLK,SKに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように屈位モデル211Kを設定することにより監視画像上で屈位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0037】
倒位モデル211Tは倒れている姿勢の人物の領域形状を模した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において倒位モデル211Tは、図5に示すように、長軸長がLT±αLT、短軸長がST±αSTであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線の法線方向から±αθTの範囲内である楕円で定義される。長軸の基準方向が放射線の法線方向と設定されるのは、光軸を鉛直下方に向けた撮像部20により撮像された監視画像の座標系においては放射線の法線方向が倒位の人物の身長方向となるためである。
【0038】
長軸長の基準値LTは平均的な身長に応じて設定され、その変動許容範囲±αLTは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。短軸長の基準値STは平均的な体の幅に応じて設定され、その変動許容範囲±αSTは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθTは立位と混同せぬように0≦αθT<90°−αθRの範囲に設定される。
【0039】
記憶部21には、倒位モデル211Tとして予め上記のように設定された長軸長LT、短軸長ST、長軸長の変動許容範囲±αLT、短軸長の変動許容範囲±αST、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθTの各数値が姿勢種別「倒位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LT、STは監視画像上の位置ごとに設定し、αLT,αSTはLT,STに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように倒位モデル211Tを設定することにより監視画像上で倒位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0040】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control
Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部21からプログラムを読み出して実行することで変化領域抽出部220、領域人数判定部221、姿勢判定部222、異常判定部223として機能する。
【0041】
変化領域抽出部220は、撮像部20から新たに入力された監視画像から変化領域を抽出し、抽出された変化領域の情報を領域人数判定部221及び姿勢判定部222へ出力する。
【0042】
具体的には変化領域抽出部220は公知の背景差分処理又は背景相関処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部220は、監視画像を背景画像と比較して対応する各画素の値の相違度(差又は相関値)を算出し、相違度がしきい値を超える画素を変化画素として検出して互いに隣接する変化画素をまとめ、まとめた領域を変化領域として抽出する。検出のしきい値は事前実験に基づき予め設定される。なお変化領域抽出部220は予め定めた1人分の人物基準サイズに満たない大きさの変化領域を抽出対象から除外する。
【0043】
領域人数判定部221は、変化領域抽出部220により抽出された変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定し、判定した人物数を姿勢判定部222へ出力する。尚、複数の変化領域が抽出されている場合はそれぞれの変化領域に対して人数判定が行なわれる。
【0044】
具体的には、領域人数判定部221は下記A1〜A4の方法で人物数を判定する。
(A1)領域人数判定部221は各変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出し、少なくとも統合後の変化領域の人物数が複数であると判定する。このとき統合された変化領域の数を統合後の変化領域の人物数と判定することもでき、又は統合された変化領域に対して判定されていた人物数を合計して統合後の変化領域の人物数とすることもできる。さらに領域人数判定部221は変化領域の分離をも検出し、分離した変化領域の人物数を減算して分離後の変化領域の人物数を判定することもできる。なお領域人数判定部221は各変化領域の人物数と併せて当該変化領域に統合や分離が検出されたか否かの別も出力する。
(A2)領域人数判定部221は各変化領域の大きさをしきい値判定して人物数を判定する。しきい値は1人分の基準サイズに基づき予め定めておく。例えば変化領域の画素数が、基準サイズの0.8倍以上2×0.8倍未満なら1人、基準サイズの2×0.8倍以上3×0.8倍未満なら2人、基準サイズの3×0.8倍以上4×0.8倍未満なら3人、…というように判定する。なお見かけ上の人物サイズは撮像部20と人物の位置関係により変わるため人物サイズ範囲は監視画像上の位置ごとに設定するのがよい。
(A3)領域人数判定部221は各変化領域における監視画像から頭部形状(楕円やΩ形のエッジ)を検出して検出された頭部形状の数を人物数として判定する。
(A4)領域人数判定部221は各変化領域における監視画像から顔特徴(肌色楕円や顔の部位)を検出して検出された顔特徴の数を人物数として判定する。
本実施形態においては(A1)及び(A2)を選択的に用いる。すなわち領域人数判定部221は、変化領域を追跡して、追跡において新規出現と判定された変化領域の大きさのしきい値判定により人物数を初期判定し、追跡した変化領域の統合及び分離から変動する人物数を判定する。
【0045】
以下、2人以上が含まれると判定された変化領域を複数人領域とも称し、1人だけが含まれると判定された変化領域を1人領域、2人だけが含まれると判定された変化領域を2人領域、3人だけが含まれると判定された変化領域を3人領域などとも称する。
【0046】
姿勢判定部222は、変化領域抽出部220により抽出された各変化領域と、姿勢ごとの姿勢別人物モデル211のうち2以上を重ね合わせた複合形状とを形状比較して適合度を算出し、適合度が適合基準を超える姿勢の組み合わせを判定する。適合度を算出する姿勢別人物モデル211の組み合わせには少なくとも検知する異常シーンを定める姿勢の組み合わせが含まれる。すなわち拘束シーンを検知する本実施形態においては少なくとも倒姿勢と倒姿勢の組み合わせが含まれる。適合度は変化領域と姿勢別人物モデル211の複合形状とが重ならなかった領域の画素数を該複合形状の画素数で除した商を1.0から減ずることによって算出すればよい。なお複数の変化領域が抽出されている場合、姿勢判定部222はそれぞれの変化領域に対して姿勢判定を行なう。
【0047】
拘束シーンのように倒姿勢の人物と非倒姿勢の人物が密接している状況は平素生じにくい。そのため倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせと適合する変化領域があるときは異常シーンが発生している確度が高い。よって各変化領域と適合する姿勢の組み合わせを判定することで密接する複数人が関与した異常シーンを高い確度で検知することができる。
【0048】
姿勢判定部222は姿勢別人物モデル211の組み合わせと適合基準を下記B1〜B3のようにして姿勢判定を行なう。
(B1)姿勢判定部222は、異常シーンを定める姿勢の組み合わせ(特定複合姿勢)について適合度を算出して予め設定された適合判定しきい値と比較し、適合度が適合判定しきい値以上であれば特定複合姿勢と判定し、適合度が適合判定しきい値未満であれば特定複合姿勢ではないと判定する。つまり適合判定しきい値が適合基準となる。
(B2)姿勢判定部222は、特定複合姿勢について適合度を算出するとともに特定複合姿勢以外の姿勢の組み合わせについても適合度を算出し、特定複合姿勢の適合度が特定複合姿勢以外の適合度よりも大きければ特定複合姿勢と判定し、特定複合姿勢の適合度が特定複合姿勢以外の適合度以下であれば特定複合姿勢と判定する。特定複合姿勢の適合度を複数算出する場合はその最大値と比較する。この判定方法は特定複合姿勢以外の適合度を適合基準に動的設定することに相当する。また特定複合姿勢の適合度と特定複合姿勢以外の適合度の中から最大値と対応する姿勢の組み合わせを判定することもこの方法の中のひとつである。
(B3)B2に加えて単独姿勢の適合度も算出して特定複合姿勢の適合度と比較する。
【0049】
これらの方法は、B1,B2,B3の順に計算コストが大きくなり、B1,B2,B3の順に判定精度が高くなる。本実施形態では計算コストの増加を回避するためにB2を採用し、領域人数判定部221の判定結果を参照してことで複合形状の比較対象を複数人領域に限定することで判定精度を担保する。以下、比較対象を複数人領域に限定する処理について説明する。
【0050】
すなわち姿勢判定部222は複合形状を人物数が2以上であると判定された変化領域のみと形状比較を行なう。これにより1人領域に姿勢別人物モデル211の組み合わせが偶然に適合してしまう誤判定を減じることができる。さらにこの限定により姿勢別人物モデル211同士を大きく重複させて組み合わせることが許容可能となるので、賊が被害者に馬乗りになっているときなどに姿勢の組み合わせを誤判定して異常シーンを検知し損ねることを減じることができる。
【0051】
さらに姿勢判定部222は人物数が2以上であると判定された変化領域を姿勢ごとの姿勢別人物モデル211を当該人物数だけ組み合わせた複合形状と形状比較する。この個数限定によって1人領域のみならず複数人領域に対しても、不当な姿勢別人物モデル211の組み合わせが偶然に適合してしまう誤判定を減じることができ、姿勢別人物モデル211同士を大きく重複させて組み合わせることが許容可能となるので、賊が被害者に馬乗りになっているときなどに姿勢の組み合わせを誤判定して異常シーンを検知し損ねることを減じることができる。
【0052】
ここで、各人物がとる姿勢は一定ではない上、人物間の位置関係も一定ではなく、また上述したように人物の姿勢には個人差や体の向きにより生じる誤差等が含まれる。そこで変化領域に対する各姿勢別人物モデル211の重ね合わせは各パラメータを変更しながら探索的に行なわれる。但し、リアルタイムで異常検知を行うために、1時刻で処理が終わるように探索の反復回数Nが予め固定的に規定され(例えば1000回)、或いは1時刻より短い処理時間の予めの規定により探索の反復回数Nが動的に規定される(例えば1/10秒)。このとき、限られた反復回数の中で姿勢判定の結果が局所解に陥ることを防ぐために、パラメータの変更をランダムに行う。
【0053】
探索時に変更されるパラメータについて説明する。
【0054】
第一に、姿勢判定部222は各人物がとる姿勢が一定ではないことに対応して姿勢種別の組み合わせを複数通り試行する。3種類の姿勢が設定されている本実施形態では、1人領域に対しては3通り、2人領域に対しては6通り、3人領域に対しては10通りの組み合わせの中からN回のランダム試行が行なわれる。反復回数N回に対して組み合わせの数は充分に小さいので都度ランダムに変更しても全ての組み合わせが網羅される。
【0055】
第二に、姿勢判定部222は人物間の位置関係が一定ではないことに対応して各姿勢別人物モデル211の配置の組み合わせを複数通り試行する。各姿勢別人物モデル211は当該モデルの少なくとも一部が嵌合の対象とする変化領域と重なるように配置すればよい。具体的には嵌合の対象とする変化領域内に各姿勢別人物モデル211の重心をランダムに設定する。
【0056】
第三に、姿勢判定部222は個人差や体の向きにより生じる誤差に対応して各姿勢別人物モデル211の形状、傾きを変動許容範囲でランダムに微小変更する。形状の変更は長軸長と短軸長を独立して変更することにより行われる。傾きの変更は偏位角を変更することにより行われる。
【0057】
また、連続する時刻において各人は前時刻と同じ姿勢である確率が最も高いことに着目し、前時刻の複数人領域と同定された複数人領域に対して前時刻と同じ姿勢別人物モデル211の組み合わせを選ぶ回数を他の組み合わせよりも多くする。例えばN回のうちN/2回をランダム選択せずに前時刻と同じ組み合わせを固定選択し、残りのN/2回をランダム選択する。こうすることで反復回数に限りがある中で正解確率の高い姿勢別人物モデル211の組み合わせに対して配置変更、形状変更、傾き変更の回数が増えて高い適合度を算出することが可能となる。
【0058】
図6,7,8を参照して姿勢判定の処理の様子を説明する。
【0059】
図6は拘束シーンを撮像した監視画像8の一例である。人物80及び人物82は賊、人物81は被害者である。×印の交点は画像中心83を表している。
【0060】
図7は、変化領域抽出部220により図6の監視画像8から抽出された変化領域90に対し、姿勢判定部222が姿勢別人物モデル211の嵌合を行なっている様子を示したものである。ただし図6の監視画像8の一部領域84に相当する部分だけを示している。×印の交点は図6と同じ画像中心83を表している。
【0061】
図7の例において、変化領域90は領域人数判定部221により3人領域と判定されたものとする。また図7の例は、姿勢判定部222が反復処理の中で立位モデル211Rと屈位モデル211Kと倒位モデル211Tを各1つ計3つの組み合わせを設定したときの様子である。
【0062】
姿勢判定部222は、変化領域90内にランダム座標を設定して立位モデル211Rの重心位置PRとし、重心位置PRに応じた長軸長LRと短軸長SRを記憶部21から読み出すとともに許容範囲αLR,αSR,αθRを読み出し、±αLRの範囲でΔLRをランダムに設定し、±αSRの範囲でΔSRをランダムに設定し、±αθRの範囲でΔθRをランダムに設定する。姿勢判定部222は、画像中心83と重心位置PRを結ぶ放射線から重心位置PRを中心にΔθRだけ回転した直線を長軸として求め、重心位置PRを中心とし長軸長LR+ΔLR、短軸長SR+ΔSRの楕円を算出する。
【0063】
同様に、姿勢判定部222は、屈位モデル211Kの重心位置PKを変化領域90内にランダム設定するとともに、変動量ΔLK,ΔSK,ΔθKをそれぞれ±αLK,±αSK,±αθKの範囲でランダムに設定し、画像中心83と重心位置PKを結ぶ放射線から重心位置PKを中心にΔθKだけ回転した直線を長軸とし重心位置PKを中心とする長軸長LK+ΔLK、短軸長SK+ΔSKの楕円を算出する。
【0064】
さらに同様に、姿勢判定部222は、倒位モデル211Tの重心位置PTを変化領域90内にランダム設定するとともに、変動量ΔLT,ΔST,ΔθTをそれぞれ±αLT,±αST,±αθTの範囲でランダムに設定し、画像中心83と重心位置PTを結ぶ放射線の重心位置PKを通る法線を求め、当該法線から重心位置PTを中心にΔθTだけ回転した直線を長軸とし重心位置PTを中心とする長軸長LT+ΔLT、短軸長ST+ΔSTの楕円を算出する。
【0065】
3人領域90に重ねあわせる3つの姿勢別人物モデル211が決定すると、姿勢判定部222はこれらを組み合わせた複合形状91と3人領域90との間で一致しない部分(図8の網掛け部分)の画素数を複合形状91の画素数で除した商を1.0から減じて適合度を求める。
こうして算出された適合度が適合基準を満たすと、3人領域90は立位と屈位と倒位が組み合わされた姿勢と判定される。
【0066】
異常判定部223は、姿勢判定部222による姿勢判定結果を参照し、姿勢判定結果が予め設定された異常な姿勢の組み合わせと合致するときに異常シーンが発生していると判定して異常信号を出力部23に出力する。拘束シーンを異常シーンとして判定するために、異常判定部223には倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせが異常な姿勢の組み合わせとして予め設定されている。
【0067】
このとき異常判定部223は、異常判定の確度を高めるために、各変化領域に検知カウンタを設定して異常な姿勢の組み合わせとの合致の継続回数を計数し、継続回数が予め設定された通報しきい値以上となったときに異常信号を出力する。
【0068】
また拘束作業中の賊が体勢を変えるなどして賊の変化領域と被害者の変化領域が一時的に分離することがある。このときに検知カウンタをリセットしてしまうとその分だけ通報が遅れてしまうため、異常判定部223は一時的な分離を許容して合致の継続回数を計数する。具体的には異常判定部223は領域人数判定部221にて分離が検出された変化領域に対して猶予条件を設定して継続回数の計数を保留し、猶予条件を満たす間に当該変化領域の再統合が検出されれば保留を解除して継続回数の計数を再開し、猶予条件を満たす間に当該変化領域の再統合が検出されなければ継続回数の計数をリセットする。
【0069】
猶予条件のひとつは変化領域間の距離であり、異常判定部223は分離が検出された変化領域間の距離を算出して距離しきい値(例えば2m相当)と比較し、距離が距離しきい値未満なら猶予条件を満たすと判定し、距離が距離しきい値以上なら猶予条件を満たさないと判定する。
【0070】
猶予条件のもうひとつは時間であり、異常判定部223は分離が検出された変化領域にタイマーを設定して予め設定された猶予時間(例えば5秒)と比較し、猶予時間未満なら猶予条件を満たすと判定し、猶予時間が経過すると猶予条件を満たさないと判定する。
【0071】
出力部23は異常信号を画像センサー2の外部へ出力する通信手段である。出力部23は異常判定部223から異常信号が入力されると、当該異常信号をコントローラー3へ出力する。
【0072】
[通報システム1の動作]
以下、画像センサー2の動作を中心に通報システム1の動作を説明する。図9は画像センサー2が行う異常検知処理の全体フロー図である。
【0073】
電源が投入されると、各部が初期化され動作を開始する(S1)。初期化には起動直後の監視画像を制御部22の変化領域抽出部220が背景画像210として記憶部21に記憶させる処理を含む。
【0074】
撮像部20は監視空間を撮像するたびに監視画像を出力し、制御部22はこれを取得する(S2)。以下、最新の監視画像が入力された時刻を現時刻、最新の監視画像を現画像と呼ぶ。
【0075】
制御部22の変化領域抽出部220は現画像を背景画像210と比較して変化領域を抽出する(S3)。抽出された変化領域の情報は制御部22の領域人数判定部221と異常判定部223に入力され、各部による領域情報生成処理が行われる(S4)。すなわち、領域人数判定部221は各変化領域に含まれる人物数を判定し、異常判定部223は変化領域の分離猶予判定を行なう。ただし、後述する人物情報がない場合はステップS4の処理をスキップする。
【0076】
図10を参照して領域情報生成処理を説明する。
【0077】
まず、領域人数判定部221は現時刻に抽出された変化領域と一時刻前に抽出された変化領域の対応付けを行なう(S400)。この対応付け処理はいわゆる人物追跡処理である。そのために領域人数判定部221は、変化領域における監視画像の色ヒストグラムやテクスチャなどの画像特徴及び変化領域の重心位置、人物IDからなる人物情報を記憶部21に記憶させ、現時刻に抽出された変化領域における現画像の画像特徴及び現時刻に抽出された変化領域の重心位置を記憶されている人物情報と比較することにより画像特徴が類似し重心位置が移動可能範囲内である変化領域同士を同一人物による領域であるとして対応付ける。
【0078】
このとき領域人数判定部221は、画像上で人物同士が重なることを考慮し、重心位置が移動可能範囲内であることを条件に多対1の対応付けを許容する。多対1の対応付けにより複数の人物IDが対応付けられた変化領域に対しては統合を検出したとして人物情報にその旨を表す統合フラグを設定する。
【0079】
また領域人数判定部221は、人物同士の重なりが解消されることも考慮し、重心位置が移動可能範囲内であることを条件に1対多の対応付けも許容する。1対多の対応付けを行なった変化領域に対しては分離を検出したとして人物情報にその旨を表す分離フラグを設定する。
【0080】
尚、移動可能範囲が視野外を含み、類似する変化領域が無い人物情報は消失したとして削除される。また、いずれの人物情報とも類似しない変化領域は新規出現したとしてその画像特徴と重心位置からなる人物情報に新たな人物IDと新規出現フラグを付与して記憶部21に追記される。
【0081】
対応付けがなされると制御部22は、各変化領域を順次注目領域に設定してステップS401からS415のループ処理を行う。
【0082】
変化領域のループ処理において領域人数判定部221は、まず注目領域のフラグを参照して現時刻において新規出現した変化領域か否かを確認する(S402)。新規出現領域であれば注目領域の大きさをしきい値処理してその人物数を初期化し(S402にてYES→S403)、次の変化領域の処理へと進む。
【0083】
注目領域が新規出現領域でなければ領域人数判定部221及び異常判定部223は、注目領域のフラグを参照して現時刻において統合が検出された変化領域か否かを確認する(S402にてNO→S404)。注目領域に統合が検出されたのであれば領域人数判定部221はその人物IDの数を人物数として計数する(S404にてYES→S405)。統合後の変化領域の人物数は統合前の各変化領域に設定されていた人物数の合算値となる。また異常判定部223は猶予対象に設定されていればそれを設定解除する(S406にてYES→S407)。猶予対象に設定されていなければ(S406にてNO)、ステップS407は省略される。その後、処理は次の変化領域の処理へと進められる。
【0084】
一方、注目領域が新規出現領域でも現時刻に統合した領域でもなければ、異常判定部223は注目領域のフラグを参照して現時刻において分離が検出された変化領域か否かを確認する(S404にてNO→S408)。注目領域に分離が検出されたのであれば、領域人数判定部221はその人物IDの数を人物数として計数する(S408にてYES→S409)。分離後の各変化領域の人物数は分離前の変化領域に設定されていた人物数より少なくなる。また異常判定部223は注目領域を猶予対象に設定する(S410)。すなわち異常判定部223は注目領域の人物情報に猶予フラグと分離元の人物IDと猶予時間に対応する時刻数を記録する。その後、処理は次の変化領域の処理へと進められる。
【0085】
注目領域が新規出現領域でも現時刻に統合又は分離した領域でもなければ、異常判定部223は注目領域のフラグを参照して猶予対象であるか否かを確認する(S408にてNO→S411)。
【0086】
注目領域が猶予対象であれば、異常判定部223は当該領域が猶予条件を未だに満たしているか否かを確認する(S411にてYES→S412)。すなわち異常判定部223は、注目領域の重心位置と同じ分離元が設定されている変化領域の重心位置との距離を算出して距離しきい値と比較し、当該領域の猶予時間を1だけ減算して減算後の猶予時間を0と比較する。距離が距離しきい値未満且つ猶予時間が0より大きければ猶予条件を満たしているとして猶予対象の設定は継続される(S412にてYES)。他方、距離が距離しきい値以上又は猶予時間が0以下になれば猶予条件を満たしていないとして異常判定部223は注目領域に対する猶予対象の設定を解除し、注目領域の検知カウンタをリセットする(S412にてNO→S413,S414)。
【0087】
ステップS401からS415のループ処理を全ての変化領域に対して終えると(S415にてYES)、領域情報生成処理は終了し、処理は図9のステップS5へ進められる。
【0088】
図9に戻り、制御部22はステップS4にて2以上の人物数が判定された変化領域(複数人領域)があるか否かを確認し(S5)、複数人領域がひとつも設定されていなければ現時刻の処理を終えて新たな監視画像の入力を待つ(S5にてNO→S2)。
【0089】
他方、複数人領域が判定されている場合(S5にてYES)、制御部22は各複数人領域を順次処理対象に設定してステップS6〜S13のループ処理を行う。複数人領域のループ処理においては、まず制御部22の姿勢判定部222が処理対象の複数人領域に対して姿勢判定処理を行う(S7)。
【0090】
図11を参照して姿勢判定処理を説明する。
【0091】
姿勢判定部222は、姿勢別人物モデル211の当て嵌めを1000回繰り返して各当て嵌めの適合度を算出し、最も当て嵌まる姿勢の組み合わせを判定する。
【0092】
まず姿勢判定部222は姿勢種別を設定する。姿勢判定部222は、繰り返し回数が500回に達しているかを確認するとともに(S600)、処理対象の複数人領域について1時刻前の判定結果が記憶部21に記憶されているかを確認し(S601)、500回未満であり且つ記録がある場合は記録されている処理対象の複数人領域に対して1時刻前の姿勢種別を設定する(S600にてNO→S601にてYES→S602)。一方、500回以上の場合(S600にてYES)又は500回未満であるが記録がない場合(S600にてNO→S601にてNO)、姿勢判定部222は処理対象の複数人領域に対して図9のステップS4にて判定された人物数と同数の姿勢種別をランダムに設定する(S603)。本実施形態においては立位・屈位・倒位の3種類の中から姿勢種別が設定される。
【0093】
次に姿勢判定部222はステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別に対してランダムに複数領域内の座標値を設定する(S604)。当該座標値が各姿勢種別の姿勢別人物モデル211を配置する際の重心位置となる。
【0094】
続いて姿勢判定部222はステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別に対してその傾きを許容範囲内でランダムに設定する(S605)。前述したように許容範囲は姿勢種別ごとに定められており、その範囲は立位であれば±αθR、屈位であれば±αθK、倒位であれば±αθTである。
【0095】
続いて姿勢判定部222はステップS602又はS603にて選択された各姿勢種別に対してその形状と大きさすなわち長軸長と短軸長を許容範囲内でランダムに設定する(S606)。前述したように許容範囲は姿勢種別ごとに定められており、その範囲は立位であればLR±αLR、屈位であればLK±αLK、倒位であればLT±αLTである。
【0096】
こうして各姿勢別人物モデル211のパラメータが決まると、姿勢判定部222はこれらのパラメータに従って姿勢別人物モデル211を重ね合わせた複合形状を算出し、複数人領域に対する複合形状の適合度を算出し(S607)、算出された適合度が最大値であるか否かを確認する(S608)。なお最大値の初期値は負値としておけばよい。
【0097】
算出された適合度が最大値であれば、ステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別、各姿勢種別と対応してステップS604にて設定された配置、各姿勢種別と対応してステップS605にて設定された傾き、各姿勢種別と対応してステップS606にて設定された形状及び大きさ(長軸長と短軸長)、及びステップS607にて算出された適合度を記憶部21に記憶させる(S608にてYES→S609)。これにより最大適合度は更新される。
他方、算出された適合度が最大値でなければ(S608にてNO)、ステップS609はスキップされ、最大適合度は更新されない。
【0098】
以上ステップS600からのS609の試行は規定回数の1000回に達するまで繰り返される(S610にてNO→S600)。試行回数が1000回に達すると(S610にてYES)、姿勢判定処理は終了し、処理は図9のステップS7へ進められる。姿勢判定処理の終了時点で、処理対象の変化領域に最も適合する姿勢の組み合わせに関する情報が記憶部21に保持されている。なお最大適合度が予め設定された基準値(例えば0.5)に満たない場合は姿勢判定不能であるとして判定を保留してもよい。
【0099】
図9に戻り、制御部22の異常判定部223は、ステップS7にて最も適合度が高いとされた姿勢種別の組み合わせが倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせであるか否かを判定する(S8)。姿勢種別の組み合わせが該当する組み合わせでなければ異常判定部223は処理対象の検知カウントを1だけ減少させる(S8にてNO→S9)。ただし0未満となった検知カウントは0に補正される。
【0100】
他方、ステップS7にて最も適合度が高いとされた姿勢種別の組み合わせが倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせであれば(S8にてYES)、異常判定部223は、現画像と一時刻前の監視画像とのフレーム間差分処理を行ってフレーム間差分画像を生成するとともにステップS7にて適合が判定された姿勢別人物モデル211間の重複領域を求め、当該重複領域におけるフレーム間差分画像の画素値を総和して予め設定された動き検出しきい値と比較することで重複領域における動きを検出する(S10)。ここで検出する動きは拘束行為を行なっている賊の手の動きである。フレーム間差分値の総和が動き検出しきい値未満であれば(S11にてNO)、検知カウントはキープされる。他方、フレーム間差分値の総和が動き検出しきい値以上であれば(S11にてYES)、異常判定部223は、動きありとして検知カウントを1だけ増加させる(S12)。
【0101】
こうして全ての複数人領域に対してステップS6〜S13の処理が行われると(S13にてYES)、異常判定部223は各複数人領域の検知カウントが通報閾値より大きくなったか否かを確認する(S13)。いずれかの検知カウントが通報閾値より大きければ(S13にてYES)、異常判定部223は異常シーンが発生したとして異常信号を生成して出力部23に出力する(S14)。異常信号は出力部23からコントローラー3、広域通信網4を経由してセンター装置5へ送信され、異常信号を受信したセンター装置5は異常発生を警備センターに常駐している管制員に報知する。異常発生を確認した管制員は警察への通報や警備員の派遣といった対処を行なう。いずれの検知カウントも通報閾値未満であれば(S14にてNO)、ステップS15は省略される。
【0102】
以上の処理を終えると、処理はステップS2へ戻され、次時刻の監視画像に対する処理が行われる。
【0103】
なお、上記実施形態においては拘束シーンを検知する例を示したが、本発明が検知可能なシーンは拘束シーンに限らない。例えば別の実施形態においては、倒れている急病人とそれを救護している救護者からなる救護シーン、或いは倒れている被害者とそれを攻撃する加害者からなる暴行シーンなどを検知することも可能である。
【0104】
また、上記実施形態においては倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせを異常な姿勢の組み合わせとして設定する例を示したが、別の実施形態においては別の異常な姿勢の組み合わせを設定することもできる。例えば、ホールドアップ姿勢をとる被害者とこれに密着した立位の賊とが関与する脅迫シーンの検知に用いることができる。この場合、記憶部21には姿勢別人物モデル211として少なくともY字型の形状を表すホールドアップ姿勢モデルと立位モデル211Rとを記憶させておく。
【0105】
また、上記実施形態においては撮像部20を鉛直下方に向けた例を示したが、撮像部20が斜め下方に向けた別の実施形態においては、監視画像のY軸方向を立位モデル211R及び屈位モデル211Kの長軸の基準方向、監視画像のX軸方向を倒位モデル211Tの長軸の基準方向とすることができる。
【0106】
また、上記実施形態においては、姿勢別人物モデル211はそれぞれ1人分の領域形状を近似し、姿勢判定部222はこれらを都度重ね合わせて複合形状を作成する例を示した。別の実施形態においては予め作成した複合形状を姿勢別人物モデル211として記憶しておくこともできる。この場合、記憶部21は姿勢別人物モデル211として、予め、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを重ね合わせた姿勢種別の符号の組み合わせと対応付けて記憶する。このとき、同じ姿勢種別の組み合わせであっても重ね合わせの配置や傾き、形状がそれぞれ異ならせたバリエーションを複数作成して記憶しておく。そして、姿勢判定部222は、複合人物モデルをランダムに及び一時刻前の組み合わせを優先して反復回数だけ読み出して変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢種別の組み合わせを判定する。
【符号の説明】
【0107】
1・・・通報システム、2・・・画像センサー、3・・・コントローラー、4・・・広域通信網、5・・・センター装置、6・・・金庫、8・・・監視画像、20・・・撮像部、21・・・記憶部、22・・・制御部、23・・・出力部、90・・・変化領域、91・・・複合形状、210・・・背景画像、211・・・姿勢別人物モデル、211R・・・立位モデル、211K・・・屈位モデル、211T・・・倒位モデル、220・・・変化領域抽出部、221・・・領域人数判定部、222・・・姿勢判定部、223・・・異常判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析により異常シーンを検知する異常検知装置に関し、特に複数人が関与した異常シーンを検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの機械警備システムは主として閉店後や留守中の警備を担ってきたが、昨今では従業員や家人が居る有人環境においても警備の要請が増えてきた。有人環境での警備のひとつに金庫等を狙った押し込み強盗への対策がある。押し込み強盗においては賊が従業員等の手足をロープや粘着テープで拘束する場合があり、機械警備システムには自由を奪われた被害者に代わって異常事態を失報せず迅速に通報することが望まれる。その一方で有人環境では従業員や家人だけの正常シーンで誤報しないよう、賊と被害者の両者の行動に着目して異常検知を行うことが望ましい。
【0003】
従来技術には、有人環境での異常発生を検知するために2人の行動に着目して画像解析するものがある。例えば特許文献1に記載の監視装置では、監視画像に写った2人の人物について、その形状や距離の時間変化率が大きいときに喧嘩等などの異常を判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−273689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら拘束シーンでは、被害者は脅されるなどして動きが小さくなることが多く、賊も拘束作業する手ないし腕の動きが主であるために動きが小さくなることが多い。そのため喧嘩のように大きな動きを伴わないことが多い拘束シーンを従来技術によって異常検知することが困難であった。
【0006】
また、拘束シーンでは複数人が密着するために複数人の像が一体化して変化領域が1つになってしまうことが多い。そのため、一人ひとりの変化領域を区別することが困難であり、この点からも拘束シーンを従来技術によって異常検知することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、動きが小さく、複数人が密着している異常シーンを誤失報なく検知することのできる異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る異常検知装置は、監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知するものであって、監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した複数の人物モデルを姿勢ごとに予め記憶する記憶部と、背景画像との比較により監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、姿勢ごとの人物モデルのうち2以上を重ね合わせた複合形状を変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記本発明に係る異常検知装置において、前記姿勢は、人物が倒れている倒姿勢と人物が倒れていない非倒姿勢を含み、倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせが異常な組み合わせに設定される。
【0010】
また、本発明の好適な態様において、異常検知装置は、変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定する領域人数判定部、をさらに備え、姿勢判定部は、複合形状を人物数が2以上であると判定された変化領域のみと形状比較する。
【0011】
また、上記本発明の好適な態様において、姿勢判定部は、人物数が2以上であると判定された変化領域を姿勢ごとの人物モデルを当該人物数だけ組み合わせた複合形状と形状比較することができる。
【0012】
別の本発明に係る異常検知装置において、撮像部は、監視空間を一定時間ごとに撮像して監視画像を逐次出力し、異常判定部は、合致の継続回数を計数し、継続回数が所定以上となったときに異常信号を出力する。
【0013】
また、上記本発明に係る異常検知装置において、記憶部は、形状比較の処理を一定時間内に実行可能な反復回数を記憶し、姿勢判定部は、複合形状を反復回数だけランダムに生成し、生成された複合形状の中から最も適合する姿勢の組み合わせを判定する。
【0014】
また、上記本発明に係る異常検知装置において、記憶部は、形状比較の処理を一定時間内に実行可能な反復回数を記憶するとともに、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせを順次記憶し、姿勢判定部は、直前に記憶された姿勢の組み合わせを他の組み合わせよりも多く選んで複合形状を反復回数だけ生成し、生成された複合形状の中から最も適合する姿勢の組み合わせを判定する。
【0015】
また、上記本発明の好適な態様において、撮像部は、監視空間を一定時間ごとに撮像して監視画像を逐次出力し、領域人数判定部は、一定時間ごとに撮像された監視画像から抽出された変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出することにより人物数を判定する。
【0016】
また、上記本発明の好適な態様において、領域人数判定部は、さらに変化領域の分離を検出し、異常判定部は、変化領域の分離が検出されると継続回数の計数を保留するとともに当該変化領域間の距離を計測し、距離が所定距離未満であるときに当該変化領域の統合が検出されると保留を解除し、距離が所定距離以上になると継続回数の計数をリセットする。
【0017】
また、上記本発明の好適な態様において、領域人数判定部は、さらに変化領域の分離を検出し、異常判定部は、変化領域の分離が検出されると継続回数の計数を保留して予め設定された猶予時間内に当該変化領域の統合が検出されると保留を解除し、猶予時間内に当該変化領域の統合が検出されないと継続回数の計数をリセットする。
【0018】
他の本発明に係る異常検知装置は、監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを姿勢の組み合わせごとに予め記憶する記憶部と、背景画像との比較により監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、姿勢の組み合わせごとの複合人物モデルを変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、姿勢判定部により判定された姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
倒れている者と倒れていない者の形状が一体化した平素は生じにくい変化領域を認識することにより異常検知を行うので、動きの小さな複数人が密着している異常シーンであっても高い確度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】通報システム1の全体構成を表すブロック図である。
【図2】画像センサー2の構成を表すブロック図である。
【図3】立位モデル211Rを例示した図である。
【図4】屈位モデル211Kを例示した図である。
【図5】倒位モデル211Tを例示した図である。
【図6】異常発生時の監視画像を例示した図である。
【図7】姿勢判定部222が変化領域に姿勢別人物モデル211を重ね合わせている処理の様子を例示した図である。
【図8】姿勢判定部222が変化領域に対する姿勢別人物モデル211の適合度を算出している様子を例示した図である。
【図9】異常検知処理のフローチャートである。
【図10】領域人数判定処理のフローチャートである。
【図11】姿勢判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の異常検知装置を含んだ好適な実施形態の一例として、異常検知装置により異常シーンを検知して警備センター等へ通報する通報システム1について説明する。
【0022】
[通報システム1の構成]
図1は通報システム1の全体図である。通報システム1は画像センサー2とコントローラー3とセンター装置5を含んで構成され、画像センサー2が本発明の異常検知装置に相当する。
【0023】
画像センサー2は、金庫6などの重要物が設置された部屋を監視空間とし、当該部屋の天井に設置される。画像センサー2は監視空間にて発生した異常シーンを検知すると異常信号を出力する。
【0024】
画像センサー2は通信線を介してコントローラー3に接続され、コントローラー3は電話回線又はインターネット回線等の広域通信網4を介して警備センター等の遠隔地に設置されたセンター装置5と接続される。画像センサー2が出力した異常信号はコントローラー3を介してセンター装置5に送信される。
【0025】
図2は画像センサー2の構成を示したブロック図である。画像センサー2は撮像部20、記憶部21及び出力部23が制御部22に接続されてなる。
【0026】
撮像部20は、監視カメラであり、監視空間を臨むように設置され、監視空間を所定の時間間隔で撮影する。撮影された監視空間の監視画像は順次、制御部22へ出力される。監視画像が撮像される時間間隔は例えば1/5秒である。以下、この撮像の時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。本実施形態においては、監視空間である部屋の全体を撮像するために、撮像部20は、魚眼レンズを備え、その光軸を鉛直下方に向けて設置される。
【0027】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部21は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部22との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、背景画像210、姿勢別人物モデル211が含まれる。
【0028】
背景画像210は監視空間の背景のみが撮像されている画像である。背景画像210は、異常検知処理に先立って生成され、記憶部21に記憶される。背景画像210には人物像が含まれておらず、背景画像210を監視画像と比較することによって人物が撮像されている領域を変化領域として抽出できる。
【0029】
姿勢別人物モデル211は互いに姿勢の異なる人物像の領域形状を模した形状データを姿勢種別と対応付けたデータであり、予め設定されて記憶される。姿勢別人物モデル211には、人物が倒れている倒姿勢に対応した倒位モデル211Tと、人物が倒れていない非倒姿勢に対応した立位モデル211Rおよび屈位モデル211Kと、が含まれる。拘束シーンにおいて、姿勢種別「倒姿勢(倒位)」は倒された被害者がとる姿勢に相当し、姿勢種別「非倒姿勢(立位及び屈位)」は賊がとる姿勢に相当する。
【0030】
監視画像から抽出された変化領域に姿勢別人物モデル211を当て嵌めることで、監視空間中の人物の姿勢が推定される。
【0031】
立位モデル211Rは立位の人物の領域形状を近似した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において立位モデル211Rは、図3に示すように、長軸長がLR±αLR、短軸長がSR±αSRであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線方向から±αθRの範囲内である楕円で定義される。長軸の基準方向が放射線方向と設定されるのは、光軸を鉛直下方に向けた撮像部20により撮像された監視画像の座標系においては放射線方向が立位の人物の身長方向となるためである。
【0032】
長軸長の基準値LRは平均的な身長に応じて設定され、その変動許容範囲±αLRは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。短軸長の基準値SRは平均的な体の幅に応じて設定され、その変動許容範囲±αSRは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθRは立位の姿勢の個人差を吸収可能な範囲に設定される。
【0033】
記憶部21には、立位モデル211Rとして予め上記のように設定された長軸長LR、短軸長SR、長軸長の変動許容範囲±αLR、短軸長の変動許容範囲±αSR、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθRの各数値が姿勢種別「立位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LR,SRは監視画像上の位置ごとに設定し、αLR,αSRはLR,SRに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように立位モデル211Rを設定することにより監視画像上で立位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0034】
屈位モデル211Kは屈んだ姿勢の人物の領域形状を模した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において屈位モデル211Kは、図4に示すように、長軸長がLK±αLK、短軸長がSK±αSKであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線方向から±αθKの範囲内である楕円で定義される。立位モデル211Rの説明で上述したように放射線方向は人物の身長方向に相当する。
【0035】
長軸長の基準値LKはLRの1/2前後に設定され、その変動許容範囲±αLKは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。屈んだ姿勢では膝や腕が前方に突き出すことから短軸長の基準値SKはSRより長めに設定され、その変動許容範囲±αSKは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθKは屈んだ姿勢の個人差を吸収可能な範囲に設定される。
【0036】
記憶部21には、屈位モデル211Kとして予め上記のように設定された長軸長LK、短軸長SK、長軸長の変動許容範囲±αLK、短軸長の変動許容範囲±αSK、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθKの各数値が姿勢種別「屈位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LK、SKは監視画像上の位置ごとに設定し、αLK,αSKはLK,SKに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように屈位モデル211Kを設定することにより監視画像上で屈位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0037】
倒位モデル211Tは倒れている姿勢の人物の領域形状を模した姿勢別人物モデル211である。本実施形態において倒位モデル211Tは、図5に示すように、長軸長がLT±αLT、短軸長がST±αSTであり、長軸方向が監視画像の中心からの放射線の法線方向から±αθTの範囲内である楕円で定義される。長軸の基準方向が放射線の法線方向と設定されるのは、光軸を鉛直下方に向けた撮像部20により撮像された監視画像の座標系においては放射線の法線方向が倒位の人物の身長方向となるためである。
【0038】
長軸長の基準値LTは平均的な身長に応じて設定され、その変動許容範囲±αLTは体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。短軸長の基準値STは平均的な体の幅に応じて設定され、その変動許容範囲±αSTは体の向きにより生じる誤差や体格の個人差により生じる誤差等を吸収可能な範囲に設定される。長軸の偏位角の変動許容範囲±αθTは立位と混同せぬように0≦αθT<90°−αθRの範囲に設定される。
【0039】
記憶部21には、倒位モデル211Tとして予め上記のように設定された長軸長LT、短軸長ST、長軸長の変動許容範囲±αLT、短軸長の変動許容範囲±αST、長軸の偏位角の変動許容範囲±αθTの各数値が姿勢種別「倒位」の符号と対応付けて記憶される。尚、人物の像の大きさは撮像部20と人物の位置関係により変わるため、LT、STは監視画像上の位置ごとに設定し、αLT,αSTはLT,STに対する一定比率の長さに設定するのがよい。以上のように倒位モデル211Tを設定することにより監視画像上で倒位とみなせる範囲の人物の形状と傾きが定義される。
【0040】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control
Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部21からプログラムを読み出して実行することで変化領域抽出部220、領域人数判定部221、姿勢判定部222、異常判定部223として機能する。
【0041】
変化領域抽出部220は、撮像部20から新たに入力された監視画像から変化領域を抽出し、抽出された変化領域の情報を領域人数判定部221及び姿勢判定部222へ出力する。
【0042】
具体的には変化領域抽出部220は公知の背景差分処理又は背景相関処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部220は、監視画像を背景画像と比較して対応する各画素の値の相違度(差又は相関値)を算出し、相違度がしきい値を超える画素を変化画素として検出して互いに隣接する変化画素をまとめ、まとめた領域を変化領域として抽出する。検出のしきい値は事前実験に基づき予め設定される。なお変化領域抽出部220は予め定めた1人分の人物基準サイズに満たない大きさの変化領域を抽出対象から除外する。
【0043】
領域人数判定部221は、変化領域抽出部220により抽出された変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定し、判定した人物数を姿勢判定部222へ出力する。尚、複数の変化領域が抽出されている場合はそれぞれの変化領域に対して人数判定が行なわれる。
【0044】
具体的には、領域人数判定部221は下記A1〜A4の方法で人物数を判定する。
(A1)領域人数判定部221は各変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出し、少なくとも統合後の変化領域の人物数が複数であると判定する。このとき統合された変化領域の数を統合後の変化領域の人物数と判定することもでき、又は統合された変化領域に対して判定されていた人物数を合計して統合後の変化領域の人物数とすることもできる。さらに領域人数判定部221は変化領域の分離をも検出し、分離した変化領域の人物数を減算して分離後の変化領域の人物数を判定することもできる。なお領域人数判定部221は各変化領域の人物数と併せて当該変化領域に統合や分離が検出されたか否かの別も出力する。
(A2)領域人数判定部221は各変化領域の大きさをしきい値判定して人物数を判定する。しきい値は1人分の基準サイズに基づき予め定めておく。例えば変化領域の画素数が、基準サイズの0.8倍以上2×0.8倍未満なら1人、基準サイズの2×0.8倍以上3×0.8倍未満なら2人、基準サイズの3×0.8倍以上4×0.8倍未満なら3人、…というように判定する。なお見かけ上の人物サイズは撮像部20と人物の位置関係により変わるため人物サイズ範囲は監視画像上の位置ごとに設定するのがよい。
(A3)領域人数判定部221は各変化領域における監視画像から頭部形状(楕円やΩ形のエッジ)を検出して検出された頭部形状の数を人物数として判定する。
(A4)領域人数判定部221は各変化領域における監視画像から顔特徴(肌色楕円や顔の部位)を検出して検出された顔特徴の数を人物数として判定する。
本実施形態においては(A1)及び(A2)を選択的に用いる。すなわち領域人数判定部221は、変化領域を追跡して、追跡において新規出現と判定された変化領域の大きさのしきい値判定により人物数を初期判定し、追跡した変化領域の統合及び分離から変動する人物数を判定する。
【0045】
以下、2人以上が含まれると判定された変化領域を複数人領域とも称し、1人だけが含まれると判定された変化領域を1人領域、2人だけが含まれると判定された変化領域を2人領域、3人だけが含まれると判定された変化領域を3人領域などとも称する。
【0046】
姿勢判定部222は、変化領域抽出部220により抽出された各変化領域と、姿勢ごとの姿勢別人物モデル211のうち2以上を重ね合わせた複合形状とを形状比較して適合度を算出し、適合度が適合基準を超える姿勢の組み合わせを判定する。適合度を算出する姿勢別人物モデル211の組み合わせには少なくとも検知する異常シーンを定める姿勢の組み合わせが含まれる。すなわち拘束シーンを検知する本実施形態においては少なくとも倒姿勢と倒姿勢の組み合わせが含まれる。適合度は変化領域と姿勢別人物モデル211の複合形状とが重ならなかった領域の画素数を該複合形状の画素数で除した商を1.0から減ずることによって算出すればよい。なお複数の変化領域が抽出されている場合、姿勢判定部222はそれぞれの変化領域に対して姿勢判定を行なう。
【0047】
拘束シーンのように倒姿勢の人物と非倒姿勢の人物が密接している状況は平素生じにくい。そのため倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせと適合する変化領域があるときは異常シーンが発生している確度が高い。よって各変化領域と適合する姿勢の組み合わせを判定することで密接する複数人が関与した異常シーンを高い確度で検知することができる。
【0048】
姿勢判定部222は姿勢別人物モデル211の組み合わせと適合基準を下記B1〜B3のようにして姿勢判定を行なう。
(B1)姿勢判定部222は、異常シーンを定める姿勢の組み合わせ(特定複合姿勢)について適合度を算出して予め設定された適合判定しきい値と比較し、適合度が適合判定しきい値以上であれば特定複合姿勢と判定し、適合度が適合判定しきい値未満であれば特定複合姿勢ではないと判定する。つまり適合判定しきい値が適合基準となる。
(B2)姿勢判定部222は、特定複合姿勢について適合度を算出するとともに特定複合姿勢以外の姿勢の組み合わせについても適合度を算出し、特定複合姿勢の適合度が特定複合姿勢以外の適合度よりも大きければ特定複合姿勢と判定し、特定複合姿勢の適合度が特定複合姿勢以外の適合度以下であれば特定複合姿勢と判定する。特定複合姿勢の適合度を複数算出する場合はその最大値と比較する。この判定方法は特定複合姿勢以外の適合度を適合基準に動的設定することに相当する。また特定複合姿勢の適合度と特定複合姿勢以外の適合度の中から最大値と対応する姿勢の組み合わせを判定することもこの方法の中のひとつである。
(B3)B2に加えて単独姿勢の適合度も算出して特定複合姿勢の適合度と比較する。
【0049】
これらの方法は、B1,B2,B3の順に計算コストが大きくなり、B1,B2,B3の順に判定精度が高くなる。本実施形態では計算コストの増加を回避するためにB2を採用し、領域人数判定部221の判定結果を参照してことで複合形状の比較対象を複数人領域に限定することで判定精度を担保する。以下、比較対象を複数人領域に限定する処理について説明する。
【0050】
すなわち姿勢判定部222は複合形状を人物数が2以上であると判定された変化領域のみと形状比較を行なう。これにより1人領域に姿勢別人物モデル211の組み合わせが偶然に適合してしまう誤判定を減じることができる。さらにこの限定により姿勢別人物モデル211同士を大きく重複させて組み合わせることが許容可能となるので、賊が被害者に馬乗りになっているときなどに姿勢の組み合わせを誤判定して異常シーンを検知し損ねることを減じることができる。
【0051】
さらに姿勢判定部222は人物数が2以上であると判定された変化領域を姿勢ごとの姿勢別人物モデル211を当該人物数だけ組み合わせた複合形状と形状比較する。この個数限定によって1人領域のみならず複数人領域に対しても、不当な姿勢別人物モデル211の組み合わせが偶然に適合してしまう誤判定を減じることができ、姿勢別人物モデル211同士を大きく重複させて組み合わせることが許容可能となるので、賊が被害者に馬乗りになっているときなどに姿勢の組み合わせを誤判定して異常シーンを検知し損ねることを減じることができる。
【0052】
ここで、各人物がとる姿勢は一定ではない上、人物間の位置関係も一定ではなく、また上述したように人物の姿勢には個人差や体の向きにより生じる誤差等が含まれる。そこで変化領域に対する各姿勢別人物モデル211の重ね合わせは各パラメータを変更しながら探索的に行なわれる。但し、リアルタイムで異常検知を行うために、1時刻で処理が終わるように探索の反復回数Nが予め固定的に規定され(例えば1000回)、或いは1時刻より短い処理時間の予めの規定により探索の反復回数Nが動的に規定される(例えば1/10秒)。このとき、限られた反復回数の中で姿勢判定の結果が局所解に陥ることを防ぐために、パラメータの変更をランダムに行う。
【0053】
探索時に変更されるパラメータについて説明する。
【0054】
第一に、姿勢判定部222は各人物がとる姿勢が一定ではないことに対応して姿勢種別の組み合わせを複数通り試行する。3種類の姿勢が設定されている本実施形態では、1人領域に対しては3通り、2人領域に対しては6通り、3人領域に対しては10通りの組み合わせの中からN回のランダム試行が行なわれる。反復回数N回に対して組み合わせの数は充分に小さいので都度ランダムに変更しても全ての組み合わせが網羅される。
【0055】
第二に、姿勢判定部222は人物間の位置関係が一定ではないことに対応して各姿勢別人物モデル211の配置の組み合わせを複数通り試行する。各姿勢別人物モデル211は当該モデルの少なくとも一部が嵌合の対象とする変化領域と重なるように配置すればよい。具体的には嵌合の対象とする変化領域内に各姿勢別人物モデル211の重心をランダムに設定する。
【0056】
第三に、姿勢判定部222は個人差や体の向きにより生じる誤差に対応して各姿勢別人物モデル211の形状、傾きを変動許容範囲でランダムに微小変更する。形状の変更は長軸長と短軸長を独立して変更することにより行われる。傾きの変更は偏位角を変更することにより行われる。
【0057】
また、連続する時刻において各人は前時刻と同じ姿勢である確率が最も高いことに着目し、前時刻の複数人領域と同定された複数人領域に対して前時刻と同じ姿勢別人物モデル211の組み合わせを選ぶ回数を他の組み合わせよりも多くする。例えばN回のうちN/2回をランダム選択せずに前時刻と同じ組み合わせを固定選択し、残りのN/2回をランダム選択する。こうすることで反復回数に限りがある中で正解確率の高い姿勢別人物モデル211の組み合わせに対して配置変更、形状変更、傾き変更の回数が増えて高い適合度を算出することが可能となる。
【0058】
図6,7,8を参照して姿勢判定の処理の様子を説明する。
【0059】
図6は拘束シーンを撮像した監視画像8の一例である。人物80及び人物82は賊、人物81は被害者である。×印の交点は画像中心83を表している。
【0060】
図7は、変化領域抽出部220により図6の監視画像8から抽出された変化領域90に対し、姿勢判定部222が姿勢別人物モデル211の嵌合を行なっている様子を示したものである。ただし図6の監視画像8の一部領域84に相当する部分だけを示している。×印の交点は図6と同じ画像中心83を表している。
【0061】
図7の例において、変化領域90は領域人数判定部221により3人領域と判定されたものとする。また図7の例は、姿勢判定部222が反復処理の中で立位モデル211Rと屈位モデル211Kと倒位モデル211Tを各1つ計3つの組み合わせを設定したときの様子である。
【0062】
姿勢判定部222は、変化領域90内にランダム座標を設定して立位モデル211Rの重心位置PRとし、重心位置PRに応じた長軸長LRと短軸長SRを記憶部21から読み出すとともに許容範囲αLR,αSR,αθRを読み出し、±αLRの範囲でΔLRをランダムに設定し、±αSRの範囲でΔSRをランダムに設定し、±αθRの範囲でΔθRをランダムに設定する。姿勢判定部222は、画像中心83と重心位置PRを結ぶ放射線から重心位置PRを中心にΔθRだけ回転した直線を長軸として求め、重心位置PRを中心とし長軸長LR+ΔLR、短軸長SR+ΔSRの楕円を算出する。
【0063】
同様に、姿勢判定部222は、屈位モデル211Kの重心位置PKを変化領域90内にランダム設定するとともに、変動量ΔLK,ΔSK,ΔθKをそれぞれ±αLK,±αSK,±αθKの範囲でランダムに設定し、画像中心83と重心位置PKを結ぶ放射線から重心位置PKを中心にΔθKだけ回転した直線を長軸とし重心位置PKを中心とする長軸長LK+ΔLK、短軸長SK+ΔSKの楕円を算出する。
【0064】
さらに同様に、姿勢判定部222は、倒位モデル211Tの重心位置PTを変化領域90内にランダム設定するとともに、変動量ΔLT,ΔST,ΔθTをそれぞれ±αLT,±αST,±αθTの範囲でランダムに設定し、画像中心83と重心位置PTを結ぶ放射線の重心位置PKを通る法線を求め、当該法線から重心位置PTを中心にΔθTだけ回転した直線を長軸とし重心位置PTを中心とする長軸長LT+ΔLT、短軸長ST+ΔSTの楕円を算出する。
【0065】
3人領域90に重ねあわせる3つの姿勢別人物モデル211が決定すると、姿勢判定部222はこれらを組み合わせた複合形状91と3人領域90との間で一致しない部分(図8の網掛け部分)の画素数を複合形状91の画素数で除した商を1.0から減じて適合度を求める。
こうして算出された適合度が適合基準を満たすと、3人領域90は立位と屈位と倒位が組み合わされた姿勢と判定される。
【0066】
異常判定部223は、姿勢判定部222による姿勢判定結果を参照し、姿勢判定結果が予め設定された異常な姿勢の組み合わせと合致するときに異常シーンが発生していると判定して異常信号を出力部23に出力する。拘束シーンを異常シーンとして判定するために、異常判定部223には倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせが異常な姿勢の組み合わせとして予め設定されている。
【0067】
このとき異常判定部223は、異常判定の確度を高めるために、各変化領域に検知カウンタを設定して異常な姿勢の組み合わせとの合致の継続回数を計数し、継続回数が予め設定された通報しきい値以上となったときに異常信号を出力する。
【0068】
また拘束作業中の賊が体勢を変えるなどして賊の変化領域と被害者の変化領域が一時的に分離することがある。このときに検知カウンタをリセットしてしまうとその分だけ通報が遅れてしまうため、異常判定部223は一時的な分離を許容して合致の継続回数を計数する。具体的には異常判定部223は領域人数判定部221にて分離が検出された変化領域に対して猶予条件を設定して継続回数の計数を保留し、猶予条件を満たす間に当該変化領域の再統合が検出されれば保留を解除して継続回数の計数を再開し、猶予条件を満たす間に当該変化領域の再統合が検出されなければ継続回数の計数をリセットする。
【0069】
猶予条件のひとつは変化領域間の距離であり、異常判定部223は分離が検出された変化領域間の距離を算出して距離しきい値(例えば2m相当)と比較し、距離が距離しきい値未満なら猶予条件を満たすと判定し、距離が距離しきい値以上なら猶予条件を満たさないと判定する。
【0070】
猶予条件のもうひとつは時間であり、異常判定部223は分離が検出された変化領域にタイマーを設定して予め設定された猶予時間(例えば5秒)と比較し、猶予時間未満なら猶予条件を満たすと判定し、猶予時間が経過すると猶予条件を満たさないと判定する。
【0071】
出力部23は異常信号を画像センサー2の外部へ出力する通信手段である。出力部23は異常判定部223から異常信号が入力されると、当該異常信号をコントローラー3へ出力する。
【0072】
[通報システム1の動作]
以下、画像センサー2の動作を中心に通報システム1の動作を説明する。図9は画像センサー2が行う異常検知処理の全体フロー図である。
【0073】
電源が投入されると、各部が初期化され動作を開始する(S1)。初期化には起動直後の監視画像を制御部22の変化領域抽出部220が背景画像210として記憶部21に記憶させる処理を含む。
【0074】
撮像部20は監視空間を撮像するたびに監視画像を出力し、制御部22はこれを取得する(S2)。以下、最新の監視画像が入力された時刻を現時刻、最新の監視画像を現画像と呼ぶ。
【0075】
制御部22の変化領域抽出部220は現画像を背景画像210と比較して変化領域を抽出する(S3)。抽出された変化領域の情報は制御部22の領域人数判定部221と異常判定部223に入力され、各部による領域情報生成処理が行われる(S4)。すなわち、領域人数判定部221は各変化領域に含まれる人物数を判定し、異常判定部223は変化領域の分離猶予判定を行なう。ただし、後述する人物情報がない場合はステップS4の処理をスキップする。
【0076】
図10を参照して領域情報生成処理を説明する。
【0077】
まず、領域人数判定部221は現時刻に抽出された変化領域と一時刻前に抽出された変化領域の対応付けを行なう(S400)。この対応付け処理はいわゆる人物追跡処理である。そのために領域人数判定部221は、変化領域における監視画像の色ヒストグラムやテクスチャなどの画像特徴及び変化領域の重心位置、人物IDからなる人物情報を記憶部21に記憶させ、現時刻に抽出された変化領域における現画像の画像特徴及び現時刻に抽出された変化領域の重心位置を記憶されている人物情報と比較することにより画像特徴が類似し重心位置が移動可能範囲内である変化領域同士を同一人物による領域であるとして対応付ける。
【0078】
このとき領域人数判定部221は、画像上で人物同士が重なることを考慮し、重心位置が移動可能範囲内であることを条件に多対1の対応付けを許容する。多対1の対応付けにより複数の人物IDが対応付けられた変化領域に対しては統合を検出したとして人物情報にその旨を表す統合フラグを設定する。
【0079】
また領域人数判定部221は、人物同士の重なりが解消されることも考慮し、重心位置が移動可能範囲内であることを条件に1対多の対応付けも許容する。1対多の対応付けを行なった変化領域に対しては分離を検出したとして人物情報にその旨を表す分離フラグを設定する。
【0080】
尚、移動可能範囲が視野外を含み、類似する変化領域が無い人物情報は消失したとして削除される。また、いずれの人物情報とも類似しない変化領域は新規出現したとしてその画像特徴と重心位置からなる人物情報に新たな人物IDと新規出現フラグを付与して記憶部21に追記される。
【0081】
対応付けがなされると制御部22は、各変化領域を順次注目領域に設定してステップS401からS415のループ処理を行う。
【0082】
変化領域のループ処理において領域人数判定部221は、まず注目領域のフラグを参照して現時刻において新規出現した変化領域か否かを確認する(S402)。新規出現領域であれば注目領域の大きさをしきい値処理してその人物数を初期化し(S402にてYES→S403)、次の変化領域の処理へと進む。
【0083】
注目領域が新規出現領域でなければ領域人数判定部221及び異常判定部223は、注目領域のフラグを参照して現時刻において統合が検出された変化領域か否かを確認する(S402にてNO→S404)。注目領域に統合が検出されたのであれば領域人数判定部221はその人物IDの数を人物数として計数する(S404にてYES→S405)。統合後の変化領域の人物数は統合前の各変化領域に設定されていた人物数の合算値となる。また異常判定部223は猶予対象に設定されていればそれを設定解除する(S406にてYES→S407)。猶予対象に設定されていなければ(S406にてNO)、ステップS407は省略される。その後、処理は次の変化領域の処理へと進められる。
【0084】
一方、注目領域が新規出現領域でも現時刻に統合した領域でもなければ、異常判定部223は注目領域のフラグを参照して現時刻において分離が検出された変化領域か否かを確認する(S404にてNO→S408)。注目領域に分離が検出されたのであれば、領域人数判定部221はその人物IDの数を人物数として計数する(S408にてYES→S409)。分離後の各変化領域の人物数は分離前の変化領域に設定されていた人物数より少なくなる。また異常判定部223は注目領域を猶予対象に設定する(S410)。すなわち異常判定部223は注目領域の人物情報に猶予フラグと分離元の人物IDと猶予時間に対応する時刻数を記録する。その後、処理は次の変化領域の処理へと進められる。
【0085】
注目領域が新規出現領域でも現時刻に統合又は分離した領域でもなければ、異常判定部223は注目領域のフラグを参照して猶予対象であるか否かを確認する(S408にてNO→S411)。
【0086】
注目領域が猶予対象であれば、異常判定部223は当該領域が猶予条件を未だに満たしているか否かを確認する(S411にてYES→S412)。すなわち異常判定部223は、注目領域の重心位置と同じ分離元が設定されている変化領域の重心位置との距離を算出して距離しきい値と比較し、当該領域の猶予時間を1だけ減算して減算後の猶予時間を0と比較する。距離が距離しきい値未満且つ猶予時間が0より大きければ猶予条件を満たしているとして猶予対象の設定は継続される(S412にてYES)。他方、距離が距離しきい値以上又は猶予時間が0以下になれば猶予条件を満たしていないとして異常判定部223は注目領域に対する猶予対象の設定を解除し、注目領域の検知カウンタをリセットする(S412にてNO→S413,S414)。
【0087】
ステップS401からS415のループ処理を全ての変化領域に対して終えると(S415にてYES)、領域情報生成処理は終了し、処理は図9のステップS5へ進められる。
【0088】
図9に戻り、制御部22はステップS4にて2以上の人物数が判定された変化領域(複数人領域)があるか否かを確認し(S5)、複数人領域がひとつも設定されていなければ現時刻の処理を終えて新たな監視画像の入力を待つ(S5にてNO→S2)。
【0089】
他方、複数人領域が判定されている場合(S5にてYES)、制御部22は各複数人領域を順次処理対象に設定してステップS6〜S13のループ処理を行う。複数人領域のループ処理においては、まず制御部22の姿勢判定部222が処理対象の複数人領域に対して姿勢判定処理を行う(S7)。
【0090】
図11を参照して姿勢判定処理を説明する。
【0091】
姿勢判定部222は、姿勢別人物モデル211の当て嵌めを1000回繰り返して各当て嵌めの適合度を算出し、最も当て嵌まる姿勢の組み合わせを判定する。
【0092】
まず姿勢判定部222は姿勢種別を設定する。姿勢判定部222は、繰り返し回数が500回に達しているかを確認するとともに(S600)、処理対象の複数人領域について1時刻前の判定結果が記憶部21に記憶されているかを確認し(S601)、500回未満であり且つ記録がある場合は記録されている処理対象の複数人領域に対して1時刻前の姿勢種別を設定する(S600にてNO→S601にてYES→S602)。一方、500回以上の場合(S600にてYES)又は500回未満であるが記録がない場合(S600にてNO→S601にてNO)、姿勢判定部222は処理対象の複数人領域に対して図9のステップS4にて判定された人物数と同数の姿勢種別をランダムに設定する(S603)。本実施形態においては立位・屈位・倒位の3種類の中から姿勢種別が設定される。
【0093】
次に姿勢判定部222はステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別に対してランダムに複数領域内の座標値を設定する(S604)。当該座標値が各姿勢種別の姿勢別人物モデル211を配置する際の重心位置となる。
【0094】
続いて姿勢判定部222はステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別に対してその傾きを許容範囲内でランダムに設定する(S605)。前述したように許容範囲は姿勢種別ごとに定められており、その範囲は立位であれば±αθR、屈位であれば±αθK、倒位であれば±αθTである。
【0095】
続いて姿勢判定部222はステップS602又はS603にて選択された各姿勢種別に対してその形状と大きさすなわち長軸長と短軸長を許容範囲内でランダムに設定する(S606)。前述したように許容範囲は姿勢種別ごとに定められており、その範囲は立位であればLR±αLR、屈位であればLK±αLK、倒位であればLT±αLTである。
【0096】
こうして各姿勢別人物モデル211のパラメータが決まると、姿勢判定部222はこれらのパラメータに従って姿勢別人物モデル211を重ね合わせた複合形状を算出し、複数人領域に対する複合形状の適合度を算出し(S607)、算出された適合度が最大値であるか否かを確認する(S608)。なお最大値の初期値は負値としておけばよい。
【0097】
算出された適合度が最大値であれば、ステップS602又はS603にて設定された各姿勢種別、各姿勢種別と対応してステップS604にて設定された配置、各姿勢種別と対応してステップS605にて設定された傾き、各姿勢種別と対応してステップS606にて設定された形状及び大きさ(長軸長と短軸長)、及びステップS607にて算出された適合度を記憶部21に記憶させる(S608にてYES→S609)。これにより最大適合度は更新される。
他方、算出された適合度が最大値でなければ(S608にてNO)、ステップS609はスキップされ、最大適合度は更新されない。
【0098】
以上ステップS600からのS609の試行は規定回数の1000回に達するまで繰り返される(S610にてNO→S600)。試行回数が1000回に達すると(S610にてYES)、姿勢判定処理は終了し、処理は図9のステップS7へ進められる。姿勢判定処理の終了時点で、処理対象の変化領域に最も適合する姿勢の組み合わせに関する情報が記憶部21に保持されている。なお最大適合度が予め設定された基準値(例えば0.5)に満たない場合は姿勢判定不能であるとして判定を保留してもよい。
【0099】
図9に戻り、制御部22の異常判定部223は、ステップS7にて最も適合度が高いとされた姿勢種別の組み合わせが倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせであるか否かを判定する(S8)。姿勢種別の組み合わせが該当する組み合わせでなければ異常判定部223は処理対象の検知カウントを1だけ減少させる(S8にてNO→S9)。ただし0未満となった検知カウントは0に補正される。
【0100】
他方、ステップS7にて最も適合度が高いとされた姿勢種別の組み合わせが倒姿勢と非倒姿勢を同時に含む組み合わせであれば(S8にてYES)、異常判定部223は、現画像と一時刻前の監視画像とのフレーム間差分処理を行ってフレーム間差分画像を生成するとともにステップS7にて適合が判定された姿勢別人物モデル211間の重複領域を求め、当該重複領域におけるフレーム間差分画像の画素値を総和して予め設定された動き検出しきい値と比較することで重複領域における動きを検出する(S10)。ここで検出する動きは拘束行為を行なっている賊の手の動きである。フレーム間差分値の総和が動き検出しきい値未満であれば(S11にてNO)、検知カウントはキープされる。他方、フレーム間差分値の総和が動き検出しきい値以上であれば(S11にてYES)、異常判定部223は、動きありとして検知カウントを1だけ増加させる(S12)。
【0101】
こうして全ての複数人領域に対してステップS6〜S13の処理が行われると(S13にてYES)、異常判定部223は各複数人領域の検知カウントが通報閾値より大きくなったか否かを確認する(S13)。いずれかの検知カウントが通報閾値より大きければ(S13にてYES)、異常判定部223は異常シーンが発生したとして異常信号を生成して出力部23に出力する(S14)。異常信号は出力部23からコントローラー3、広域通信網4を経由してセンター装置5へ送信され、異常信号を受信したセンター装置5は異常発生を警備センターに常駐している管制員に報知する。異常発生を確認した管制員は警察への通報や警備員の派遣といった対処を行なう。いずれの検知カウントも通報閾値未満であれば(S14にてNO)、ステップS15は省略される。
【0102】
以上の処理を終えると、処理はステップS2へ戻され、次時刻の監視画像に対する処理が行われる。
【0103】
なお、上記実施形態においては拘束シーンを検知する例を示したが、本発明が検知可能なシーンは拘束シーンに限らない。例えば別の実施形態においては、倒れている急病人とそれを救護している救護者からなる救護シーン、或いは倒れている被害者とそれを攻撃する加害者からなる暴行シーンなどを検知することも可能である。
【0104】
また、上記実施形態においては倒姿勢と非倒姿勢の組み合わせを異常な姿勢の組み合わせとして設定する例を示したが、別の実施形態においては別の異常な姿勢の組み合わせを設定することもできる。例えば、ホールドアップ姿勢をとる被害者とこれに密着した立位の賊とが関与する脅迫シーンの検知に用いることができる。この場合、記憶部21には姿勢別人物モデル211として少なくともY字型の形状を表すホールドアップ姿勢モデルと立位モデル211Rとを記憶させておく。
【0105】
また、上記実施形態においては撮像部20を鉛直下方に向けた例を示したが、撮像部20が斜め下方に向けた別の実施形態においては、監視画像のY軸方向を立位モデル211R及び屈位モデル211Kの長軸の基準方向、監視画像のX軸方向を倒位モデル211Tの長軸の基準方向とすることができる。
【0106】
また、上記実施形態においては、姿勢別人物モデル211はそれぞれ1人分の領域形状を近似し、姿勢判定部222はこれらを都度重ね合わせて複合形状を作成する例を示した。別の実施形態においては予め作成した複合形状を姿勢別人物モデル211として記憶しておくこともできる。この場合、記憶部21は姿勢別人物モデル211として、予め、互いに姿勢が異なる人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを重ね合わせた姿勢種別の符号の組み合わせと対応付けて記憶する。このとき、同じ姿勢種別の組み合わせであっても重ね合わせの配置や傾き、形状がそれぞれ異ならせたバリエーションを複数作成して記憶しておく。そして、姿勢判定部222は、複合人物モデルをランダムに及び一時刻前の組み合わせを優先して反復回数だけ読み出して変化領域と形状比較して適合度を算出し、適合度が所定基準を超える姿勢種別の組み合わせを判定する。
【符号の説明】
【0107】
1・・・通報システム、2・・・画像センサー、3・・・コントローラー、4・・・広域通信網、5・・・センター装置、6・・・金庫、8・・・監視画像、20・・・撮像部、21・・・記憶部、22・・・制御部、23・・・出力部、90・・・変化領域、91・・・複合形状、210・・・背景画像、211・・・姿勢別人物モデル、211R・・・立位モデル、211K・・・屈位モデル、211T・・・倒位モデル、220・・・変化領域抽出部、221・・・領域人数判定部、222・・・姿勢判定部、223・・・異常判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、
前記監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる前記人物の形状を模した複数の人物モデルを前記姿勢ごとに予め記憶する記憶部と、
前記背景画像との比較により前記監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記姿勢ごとの前記人物モデルのうち2以上を重ね合わせた複合形状を前記変化領域と形状比較して適合度を算出し、前記適合度が所定基準を超える前記姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置において、
前記姿勢は、前記人物が倒れている倒姿勢と前記人物が倒れていない非倒姿勢を含み、
前記倒姿勢と前記非倒姿勢の組み合わせが前記異常な組み合わせに設定された異常検知装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の異常検知装置において、
前記変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定する領域人数判定部、をさらに備え、
前記姿勢判定部は、前記複合形状を前記人物数が2以上であると判定された前記変化領域のみと前記形状比較する異常検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検知装置において、
前記姿勢判定部は、前記人物数が2以上であると判定された変化領域を前記姿勢ごとの前記人物モデルを当該人物数だけ組み合わせた前記複合形状と前記形状比較する異常検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1つに記載の異常検知装置において、
前記撮像部は、前記監視空間を一定時間ごとに撮像して前記監視画像を逐次出力し、
前記異常判定部は、前記合致の継続回数を計数し、前記継続回数が所定以上となったときに前記異常信号を出力する異常検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の異常検知装置において、
前記記憶部は、前記形状比較の処理を前記一定時間内に実行可能な反復回数を記憶し、
前記姿勢判定部は、前記複合形状を前記反復回数だけランダムに生成し、前記生成された複合形状の中から前記最も適合する姿勢の組み合わせを判定する異常検知装置。
【請求項7】
請求項5に記載の異常検知装置において、
前記記憶部は、前記形状比較の処理を前記一定時間内に実行可能な反復回数を記憶するとともに、前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせを順次記憶し、
前記姿勢判定部は、直前に記憶された前記姿勢の組み合わせを他の組み合わせよりも多く選んで前記複合形状を前記反復回数だけ生成し、前記生成された複合形状の中から前記最も適合する姿勢の組み合わせを判定する異常検知装置。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の異常検知装置において、
前記撮像部は、前記監視空間を一定時間ごとに撮像して前記監視画像を逐次出力し、
前記領域人数判定部は、前記一定時間ごとに撮像された監視画像から抽出された前記変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出することにより前記人物数を判定する異常検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載の異常検知装置において、
前記領域人数判定部は、さらに前記変化領域の分離を検出し、
前記異常判定部は、前記変化領域の前記分離が検出されると前記継続回数の計数を保留するとともに当該変化領域間の距離を計測し、前記距離が所定距離未満であるときに当該変化領域の前記統合が検出されると前記保留を解除し、前記距離が前記所定距離以上になると前記継続回数の計数をリセットする異常検知装置。
【請求項10】
請求項8に記載の異常検知装置において、
前記領域人数判定部は、さらに前記変化領域の分離を検出し、
前記異常判定部は、前記変化領域の前記分離が検出されると前記継続回数の計数を保留して予め設定された猶予時間内に当該変化領域の前記統合が検出されると前記保留を解除し、前記猶予時間内に当該変化領域の前記統合が検出されないと前記継続回数の計数をリセットする異常検知装置。
【請求項11】
監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、
前記監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる前記人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを前記姿勢の組み合わせごとに予め記憶する記憶部と、
前記背景画像との比較により前記監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記姿勢の組み合わせごとの前記複合人物モデルを前記変化領域と形状比較して適合度を算出し、前記適合度が所定基準を超える前記姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする異常検知装置。
【請求項1】
監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、
前記監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる前記人物の形状を模した複数の人物モデルを前記姿勢ごとに予め記憶する記憶部と、
前記背景画像との比較により前記監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記姿勢ごとの前記人物モデルのうち2以上を重ね合わせた複合形状を前記変化領域と形状比較して適合度を算出し、前記適合度が所定基準を超える前記姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置において、
前記姿勢は、前記人物が倒れている倒姿勢と前記人物が倒れていない非倒姿勢を含み、
前記倒姿勢と前記非倒姿勢の組み合わせが前記異常な組み合わせに設定された異常検知装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の異常検知装置において、
前記変化領域における人物特徴を分析して当該変化領域に含まれる人物数を判定する領域人数判定部、をさらに備え、
前記姿勢判定部は、前記複合形状を前記人物数が2以上であると判定された前記変化領域のみと前記形状比較する異常検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検知装置において、
前記姿勢判定部は、前記人物数が2以上であると判定された変化領域を前記姿勢ごとの前記人物モデルを当該人物数だけ組み合わせた前記複合形状と前記形状比較する異常検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1つに記載の異常検知装置において、
前記撮像部は、前記監視空間を一定時間ごとに撮像して前記監視画像を逐次出力し、
前記異常判定部は、前記合致の継続回数を計数し、前記継続回数が所定以上となったときに前記異常信号を出力する異常検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の異常検知装置において、
前記記憶部は、前記形状比較の処理を前記一定時間内に実行可能な反復回数を記憶し、
前記姿勢判定部は、前記複合形状を前記反復回数だけランダムに生成し、前記生成された複合形状の中から前記最も適合する姿勢の組み合わせを判定する異常検知装置。
【請求項7】
請求項5に記載の異常検知装置において、
前記記憶部は、前記形状比較の処理を前記一定時間内に実行可能な反復回数を記憶するとともに、前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせを順次記憶し、
前記姿勢判定部は、直前に記憶された前記姿勢の組み合わせを他の組み合わせよりも多く選んで前記複合形状を前記反復回数だけ生成し、前記生成された複合形状の中から前記最も適合する姿勢の組み合わせを判定する異常検知装置。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の異常検知装置において、
前記撮像部は、前記監視空間を一定時間ごとに撮像して前記監視画像を逐次出力し、
前記領域人数判定部は、前記一定時間ごとに撮像された監視画像から抽出された前記変化領域を追跡して当該変化領域の統合を検出することにより前記人物数を判定する異常検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載の異常検知装置において、
前記領域人数判定部は、さらに前記変化領域の分離を検出し、
前記異常判定部は、前記変化領域の前記分離が検出されると前記継続回数の計数を保留するとともに当該変化領域間の距離を計測し、前記距離が所定距離未満であるときに当該変化領域の前記統合が検出されると前記保留を解除し、前記距離が前記所定距離以上になると前記継続回数の計数をリセットする異常検知装置。
【請求項10】
請求項8に記載の異常検知装置において、
前記領域人数判定部は、さらに前記変化領域の分離を検出し、
前記異常判定部は、前記変化領域の前記分離が検出されると前記継続回数の計数を保留して予め設定された猶予時間内に当該変化領域の前記統合が検出されると前記保留を解除し、前記猶予時間内に当該変化領域の前記統合が検出されないと前記継続回数の計数をリセットする異常検知装置。
【請求項11】
監視空間において複数の人物が関与して生じる異常を検知する異常検知装置であって、
前記監視空間を撮像して監視画像を出力する撮像部と、
前記監視空間の背景が撮像された背景画像を記憶するとともに、互いに姿勢が異なる前記人物の形状を模した人物モデルを2以上重ね合わせた複合人物モデルを前記姿勢の組み合わせごとに予め記憶する記憶部と、
前記背景画像との比較により前記監視画像から変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記姿勢の組み合わせごとの前記複合人物モデルを前記変化領域と形状比較して適合度を算出し、前記適合度が所定基準を超える前記姿勢の組み合わせを判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部により判定された前記姿勢の組み合わせが予め設定された異常な組み合わせと合致するときに異常信号を出力する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする異常検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−141686(P2012−141686A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292654(P2010−292654)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
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