説明

異方導電膜貼付装置

【課題】コンパクトな本体サイズでありながら、種々の形状・大きさの基板に柔軟に対応可能で、この基板の複数個所に同時に異方導電膜を貼り付けることにより、貼付工程のタクトタイムを低減することのできる異方導電膜貼付装置を提供する。
【解決手段】セパレータと異方導電膜とが積層された異方導電テープTを供給するテープ供給部Pと、異方導電テープTのセパレータ側を押圧して、異方導電膜のみをワークWの所定位置に貼り付けるテープ圧着部Qを備えた異方導電膜貼付装置において、貼付けヘッド1,1’を有する圧着ユニットQu1,Qu2が、異方導電膜の貼り付け方向に沿って複数個配設され、各貼付けヘッド1,1’の間隔が調節可能に設定されているとともに、異方導電テープTが巻回されたリールRを装着保持するリール装着部を備えるテープ供給ユニットPu1,Pu2が、上記貼付けヘッド1,1’ごとに独立して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にチップやモジュール等を実装するのに用いられる異方導電膜(ACF)を、基板上の所定位置に貼り付けるための貼付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示パネルの周縁部に形成されたタブに駆動用ICを搭載する場合など、電子回路基板にチップ状の電子部品やモジュール等を実装する場合は、基板の所定位置に異方導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)を貼り付け、この異方導電膜上に電子部品等を載せた後に、基板側と電子部品等の電極間の位置合わせを行なってから仮圧着を行ない、その後圧着ツールにて加熱圧着(本圧着)して、これらの間を電気的に接続する方法が用いられている。(例えば、特許文献1等を参照。)
【0003】
なお、本発明では、「異方性導電」,「異方導電性」,「異方性導電性」等を「異方導電(Anisotropic Conductive)」と同じ意味として扱う。また、本発明における「異方導電テープ」とは、ベースフィルムまたはセパレータ等の基材の上に、上記「異方導電膜」(あるいは「異方導電フィルム」,「異方導電層」,「異方導電樹脂」,「異方導電体」等)が積層された状態のものを言い、積層フィルム,積層シート等の形態の中で、特に幅狭で帯状のものを「テープ」と呼ぶ。ただし、これらに構成上の違いはない(特許文献2等を参照)。
【0004】
従来、この異方導電テープ(ACFテープ)をワーク(電子回路基板等)の所定位置に貼り付けて異方導電膜を転写する方法としては、カッタ等で所定長さに切断した異方導電テープを貼り付け、軽く圧着した後セパレータのみを剥がして異方導電膜を残す方法や、セパレータ上の異方導電膜の不要部分(貼り付けに関与しない部分)をカッタ等を用いて切断(ハーフカット)し、不要部分をセパレータから分離除去した状態で、テープを上記基板に貼付けツール(貼付けローラまたは貼付けヘッド)で圧着する方法が用いられている(特許文献3等を参照)。
【0005】
なお、異方導電テープは高価であるため、この不要部分の無駄をなくすべく、異方導電テープのセパレータ側から、貼付けヘッドを圧力単独または圧力と加熱を併用して押し当て、異方導電膜を切断すると同時に基板に転写するようにした装置も提案されている(特許文献4〜5等を参照)。
【0006】
一方、異方導電テープは、通常、125mmφまたは250mmφのリールに巻回された形でテープ製造メーカーより提供されることから、貼付装置の上記貼付けヘッドの近傍(たいていの場合は貼付けヘッドの上方)には、このリールを回転自在に軸支する異方導電テープ供給手段(供給装置)が設けられており、多数のガイドローラ等からなるテープ供給経路によって、上記リールから引き出された異方導電テープが、貼付けヘッドと基板との間に供給されるように構成されている。
【0007】
また、使用中のリール上の異方導電テープの残量が少なくなった場合には、センサ等により、リールの巻き芯近くのテープ(テープの終端近傍)に設けられたエンドマークが検出され、異方導電テープの供給と貼付装置の動作が停止する(特許文献6等を参照)。そして、リールを新しいものに交換(付け替え)し、この未使用リールから異方導電テープを引き出して(「口出し」して)上記テープ供給経路に導通させ、正常な異方導電膜が上記貼付けヘッドの位置に来るまで新しい異方導電テープの開始端部を破棄した後、貼付装置の運転が再開される(特許文献7等を参照)。
【0008】
なお、複数のリールを装着部に予めセットしておき、これらの配置を入れ換えてリール交換を行なう場合もある。複数リールの配置交換を行なう手段としては、上下あるいは左右に設置された支軸にそれぞれリールをセットし、これらを切り替えて使用する方法(特許文献7)や、2つのリールを背中合わせにセットし、180°反転させて切り替える方法(特許文献8等)、あるいは、上記リールをカセットに収め、このカセットをチェンジャ等により自動交換する方法などが提案されている(特許文献9〜10等を参照)。
【0009】
また、未使用リールのテープ開始端をチャック手段により把持し、このチャック手段を予め決められたパターンに沿って移動させることにより、異方導電テープの開始端を上記テープ供給経路に自動的に導通させる方法も提案されている(特許文献8)。
【0010】
ところで、テレビやパソコン,携帯電話等のディスプレイへの利用による液晶表示パネルの生産拡大は言うに及ばず、生産効率の向上や軽量化等のために、種々の電子機器において、上記異方導電(ACF)テープを用いた電子部品の実装技術が使われ始めており、異方導電膜の貼り付け作業工程の効率化や多品種(多サイズ)対応,スピードアップ,コストダウン等の要望が大きくなってきている。
【特許文献1】特開平5−323348号公報
【特許文献2】特開2002−324432号公報
【特許文献3】特開平6−6019号公報
【特許文献4】特開平10−310743号公報
【特許文献5】特開2001−171897号公報
【特許文献6】特開2001−284005号公報
【特許文献7】特開2005−336447号公報
【特許文献8】特開平7−65648号公報
【特許文献9】特開平7−65648号公報
【特許文献10】特開2006−96556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような従来のシングル貼付けヘッドの異方導電膜貼付装置では、益々大型化する液晶パネル等への対応が難しく、異方導電膜の貼付個所が増えれば増えるほど、貼付作業のタクトタイム(サイクルタイム)が直線的に増大してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、この問題を解決すべく、貼付装置の台数を増やすという選択がまず考えられるが、貼付装置の台数を増やすには、設置するための工場内に広いスペースを確保せねばならず、ライン(工程)が長大となるため、製品のハンドリングや工程管理,メンテナンス面でのロスが生じてしまう。
【0013】
また、貼付装置を並べて台数を増やした場合、人間の動く動線を考慮すると、1人の作業員でテープ(リール)補給や管理・メンテナンスできる装置の台数には限りがあるため、作業人員の増加、ひいては製品のコストアップになってしまう可能性もある。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、コンパクトな本体サイズでありながら、種々の形状・大きさの基板に柔軟に対応可能で、この基板の複数個所に同時に異方導電膜を貼り付けることにより、貼付工程のタクトタイムを低減することのできる異方導電膜貼付装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明の異方導電膜貼付装置は、装置本体内に搬入された基板を所定の位置に移動させて位置決めする基板位置決め手段と、上記位置決めされた基板の所定の部位に、セパレータと異方導電膜とが積層された異方導電テープを、その異方導電膜の面が上記基板に対峙する向きとなるよう供給する異方導電テープ供給手段と、上記異方導電テープをセパレータ側から押圧して異方導電膜のみを基板上に転写して貼り付ける貼付けヘッドとを備えた異方導電膜貼付装置であって、上記貼付けヘッドが、異方導電膜の貼り付け方向に沿って複数個配設され、各貼付けヘッドの間隔が調節可能に設定されているとともに、上記異方導電テープ供給手段が、異方導電テープが巻回されたリールを装着保持するリール装着部を備え、この異方導電テープ供給手段が、上記貼付けヘッドごとに独立して設けられている構成をとる。
【0016】
本発明の異方導電膜貼付装置は、複数の貼付けヘッドを1台の貼付装置に内蔵することによって、従来の貼付装置のように、マシン台数やライン長を増加させることなく、異方導電膜の貼付工程のタクトタイムを低減するとともに、今後の液晶パネルの大型化や多品種・少量生産への対応を考慮して、これら貼付けヘッド間の間隔(ピッチ)を調節できる構成としたものである。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明の異方導電膜貼付装置は、異方導電テープを基板の所定位置に押し当てて転写する貼付けヘッドが、異方導電膜の貼り付け方向に沿って複数個配設されていることから、1ステップの動作で2つ以上の指定個所に異方導電膜を同時に転写することができる。したがって、本発明の異方導電膜貼付装置は、その設置スペースを増大させることなく、貼付作業のタクトタイムを低減することができる。
【0018】
また、これら各貼付けヘッドが、互いの間の間隔が調節可能なように構成されていることから、電子回路基板の大型化等による貼付個所の増加や位置の変更、あるいは、様々な貼付位置が指定された多様なサイズの回路基板へ、柔軟に対応することが可能となる。したがって、本発明の異方導電膜貼付装置は、異方導電膜を貼り付ける基板の品種変更に応じた設定(セッティング)変更に要するアイドルタイムも短縮することができる。
【0019】
特に、上記リール装着部が、所定の配置交換手段を介して複数設けられ、同時に装着保持された複数のリールの配置を順次入れ換えできるように形成されているとともに、所定の配置において、いずれかのリール装着部が、上記貼付けヘッドに異方導電テープを供給可能な供給位置に位置決めされ、他のリール装着部のいずれかが、リールの付け替えが可能な待機位置に位置決めされるようになっている場合には、この貼付装置の管理者(作業者)は、装置の稼働(ランニング)中であっても、使用中のリールに手を触れることなく、使用済みの空リールを取り外し、異方導電テープが巻回された新たなリールに交換することができる。
【0020】
また、そのなかでも、特に、上記異方導電テープ供給手段が、上記配置交換手段としての回転軸と、この回転軸を挟んで背中合わせに配設された2個のリール装着部とからなり、上記回転軸を180°回転させることによって、一方のリール装着部が上記供給位置に、他方のリール装着部が上記待機位置に配置されるようになっている場合には、供給手段の水平方向における必要設置面積が小さく、各貼付けヘッドの上方にコンパクトに配設することが可能になる。したがって、本発明の異方導電膜貼付装置は、複数の貼付けヘッドに対応する同数の異方導電テープ供給手段を設けた場合でも、装置本体サイズの増大が抑えられ、この貼付装置自身をコンパクトに構成することができる。
【0021】
ここで、上記供給位置で使用中のリールの異方導電テープの残量が少なくなった時、この残余少量テープの終端部近傍をテープ把持部材で把持するとともに終端部側のテープを切断し、上記残余少量テープの終端部を固定した状態で上記回転軸を180°回転させて、当該残余少量テープの終端部に、上記待機位置に待機していたリールから引き出した未使用の異方導電テープの開始端部を近接させ、これら終端部と開始端部とを重ね合わせて接合した後、上記テープ把持部材の把持を解除して、上記貼付けヘッドへの異方導電テープの供給を再開するように構成した場合は、複雑な手順や装置を用いることなく、上記テープ供給経路および貼付けヘッドに、新たな未使用リールからの異方導電テープを自動で供給できるようになる。したがって、本発明の異方導電膜貼付装置は、リール交換後に異方導電テープをテープ供給経路に沿って手動で貼付けヘッドまで引き回す場合に比べ、大幅な手間の軽減と時間短縮を実現することができる。
【0022】
また、本発明の貼付装置における異方導電テープの交換・接続方法は、手順がシンプルで、かつ、デリケートな異方導電テープをあまり揺り動かさないことから、先に述べたような、新たなリールのテープ先端をチャック手段により把持し、このチャック手段を予め決められたパターンに沿って移動させて、異方導電テープをテープ供給経路に自動的に導通させる方法(特許文献8等)と比べても、確実で素早いテープ交換が可能で、異方導電膜貼付装置の運転再開までのアイドルタイムを短縮することができる。なお、本発明の貼付装置における異方導電テープの交換・接続方法には、「口出し」のために引き出して破棄する(無駄になる)テープの分量が少ないという利点もある。
【0023】
そして、上記残余少量の異方導電テープの終端部と上記未使用の異方導電テープの開始端部との接合を、これらテープの重複部位への超音波の照射による融着によって行なう場合は、上記各テープ間の接続(融着)を、当該テープのセパレータを構成する樹脂の組成に関わらず、素早く短時間で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態における異方導電膜貼付装置の本体内の概略構成図であり、図2は、この異方導電膜貼付装置における異方導電膜の貼付手順を説明する図である。なお、貼付装置内(および工程内)における基板の流れ方向をx方向、このx方向に直交する装置内の奥行き方向をy方向、装置の上下(天地)方向をz方向として説明する。
【0026】
本実施形態における異方導電膜貼付装置は、ワークW(液晶パネル,電子回路基板等)に、異方導電膜を介在させてチップ状電子部品やモジュール等を実装する工程(ライン)の一部に組み込まれて配置されているものであり、工程全体としては、ローダー→基板洗浄装置→異方導電膜貼付装置(ACF転写)→チップ圧着装置(COGあるいはFPCの仮圧着,本圧着)→検査装置(AOI)→アンローダーの順に構成されている。なお、異方導電膜貼付装置も1台ではなく、工程中に複数台が連続して設置されている場合が多い。
【0027】
まず、異方導電膜貼付装置の動作(ワークフロー)について説明する。
図2において、異方導電膜貼付装置は、工程の上流側(図示左方)に位置する洗浄装置(図示省略)で洗浄されたワークWを、搬送ア−ムを用いて装置本体内に取り込み(A→B位置)、xy二方向に移動可能でかつz方向のθ軸回りに回転可能な吸着パッド付き移動ステージに移載した後(B位置)、複数のカメラ等を用いて異方導電膜の貼り付け位置を確認・記憶してから(C位置)、その位置情報に合わせて、貼り付けポジション(D位置)で上記ワークWの所定位置に、異方導電膜の貼り付け(転写)を行なう。
【0028】
なお、貼り付けポジション(図2のD位置)においても、図示しないカメラ等による貼り付け位置の確認および基板の位置決めが行なわれている。そして、移動ステージのxy方向への移動あるいはθ軸回りの回転を繰り返して、ワークWの縦横の端縁に設定された複数の指定個所に、異方導電膜が何度かに分けて貼り付けされる。また、上記異方導電膜の貼り付け(複数台の貼付装置がある場合は本機の担当範囲のみ)が完了したワークW(図2のE位置)は、工程の下流側(図示右方)に位置する別の異方導電膜貼付装置あるいはチップ圧着装置等の搬送ア−ム(本例においては搬送アーム#2)によって、次のステップへと搬出されて行くこととなる(図2のF位置)。
【0029】
つぎに、異方導電膜貼付装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態における異方導電膜貼付装置の本体内を操作(制御)パネル側から見た図であり、その操作パネル側(紙面表側)を装置の手前側、後述するリール交換などのために開閉可能な作業用パネルのある側(紙面裏側)を装置の奥側として説明する。なお、先に述べたような、ワークWを工程の上流側(図示左方)から装置本体内に搬入し、工程の下流側(図示右方)に搬出する搬送アームは図示を省略している。また、貼付に使用される異方導電(ACF)テープは、その厚みを強調して図示している。
【0030】
この異方導電膜貼付装置は、リールR(図におけるR1〜R4の総称:以下同じ)に巻回された形でメーカーから出荷される異方導電テープT(図におけるT1〜T4の総称:以下同じ)を装着保持するテープ供給部Pと、異方導電テープをワークWに押し付ける圧着部Qと、異方導電膜を貼り付けるべきワークWを所定位置に移動させて位置決めするステージS(基板位置決め手段)と、ワークWを搬入・搬出するための搬送手段、および、これら各部および手段を統合的にコントロールする制御手段と電源部等から構成されている。
【0031】
異方導電テープTをワークWに押し付ける圧着部Qは、図3の要部拡大図に示すように、それぞれ貼付けヘッド1および1’を備える2組の圧着ユニットQu(第1圧着ユニットQu1および第2圧着ユニットQu2の総称:以下同じ)からなる。なお、図のように、2組の圧着ユニットQu1およびQu2は、これらの中央を挟んで線対称(鏡像)関係にあり、ほぼ同時に作動する。
【0032】
各圧着ユニットQu1,Qu2は、上記貼付けヘッド1,1’と、これら貼付けヘッド1,1’を上下に移動させるシリンダ2,2’とを備えており、所定位置に位置決めされた上記ワークWと各貼付けヘッド1,1’の間に供給された異方導電テープT1,T3を、後述するシリコンテープを介してセパレータ側から押圧することにより、セパレータに積層された異方導電膜のみをワークWの指定個所に転写する。
【0033】
また、圧着ユニットQu1およびQu2は、異方導電膜の貼付方向(図示左右:x方向)に沿って配設されており、その一方の圧着ユニット(本例においてはQu2)が上記貼付方向にスライドできるように形成されていることから、各貼付けヘッド1,1’間の異方導電膜の貼付方向の間隔を調整することが可能である。
【0034】
なお、この異方導電膜貼付装置の圧着ユニットQu1,Qu2には、図示しないカッタユニットが装着されており、貼付けヘッド1,1’に供給される直前の異方導電テープTの異方導電膜部位のみを、所定長さに切断(ハーフカット)している。したがって、ワークWの所定位置には、所要長さの異方導電膜のみが転写され、押圧(転写)後は、異方導電テープTのセパレータ部位のみが、圧着ユニットQu上部の吸引孔から装置外部の回収箱等へ吸引・回収されることとなる。
【0035】
また、各貼付けヘッド1,1’には、各ヘッド1,1’を保温する保温手段(図示省略)が取り付けられているとともに、それぞれの貼付けヘッド1,1’およびシリンダ2,2’の近傍には、シリコンテープV(V1,V2の総称:以下同じ)を巻回した小リールr(シリコンテープ供給リールr1,r3およびシリコンテープ回収リールr2,r4の総称:以下同じ)が配設されており、図3のように、異方導電テープTとは異なる供給ルートを用いて、シリコンテープVが異方導電テープTと各貼付けヘッド1,1’の間に供給されている。なお、上記シリコンテープVは、異方導電テープTを保護するとともに、これら異方導電テープTとヘッド1,1’の間の離型性を高めるために用いられる。
【0036】
以上の構成により、本実施形態の異方導電膜貼付装置は、ワークWに対し、1ステップの動作で2つ以上の指定個所に異方導電膜を同時に転写することができる。したがって、本発明の異方導電膜貼付装置は、貼付作業のタクトタイムを低減することが可能になる。
【0037】
また、これら各貼付けヘッド1,1’間の間隔が調節可能に構成されていることから、ワークWの大型化等による貼付個所の増加や位置の変更、あるいは、様々な貼付位置が指定された多様なサイズの回路基板へ、柔軟に対応することができる。
【0038】
なお、異方導電テープTのハーフカットを行なうカッタユニットや、各貼付けヘッド1,1’を保温する保温手段等は、特に限定されるものではなく、使用する異方導電テープTの種類や規格、あるいは、貼り付けを行なう基板の種類やサイズ等に応じて使用すればよい。シリコンテープVの使用・不使用や、異方導電テープTの回収方法等も、適宜変更することが可能である。
【0039】
また、本実施形態においては、ワークWの流れ方向(図示x方向)にのみ複数の貼付けヘッド1,1’を有する異方導電膜貼付装置の例を示したが、これらに加えて、基板の流れ方向に直交する方向(図示y方向)にも1つあるいは複数の貼付けヘッドを配置してもよい。
【0040】
ちなみに、本実施形態における異方導電膜貼付装置を用いて、ワークWである液晶表示(LCD)パネルに対し、その周縁部にドライバICをCOG方式等で実装する場合の異方導電膜の転写(Pre−Bonding)条件は、貼付けヘッド1,1’の温度:50〜70℃,圧着圧:約1MPa,1個所あたりの圧着時間:0.7〜1.5秒である。また、タクトタイムは、従来のシングルヘッドの貼付装置に比べ、本実施例のデュアル(ダブル)ヘッドの貼付装置の場合、約1.7倍(時間にして約40%短縮)に向上する。
【0041】
つぎに、上記圧着部Qに異方導電テープTを供給するテープ供給部Pについて説明する。テープ供給部Pにも、上記2組の圧着ユニットQu1およびQu2のそれぞれに対応する2組のテープ供給ユニットPu(第1テープ供給ユニットPu1および第2テープ供給ユニットPu2の総称:以下同じ)が設けられており、各テープ供給ユニットPu1およびPu2は、回転軸3および3’と、この回転軸3および3’を挟んで背中合わせに対向するリール装着部4A,4Bおよび4A’,4B’と、各リール装着部に対応するチャック5A,5Bおよび5A’,5B’とが配置されている。
【0042】
また、テープ供給ユニットPu1,Pu2には、各ユニットに1つずつ、異方導電テープTのエンドマークを検出するセンサ6,6’と、超音波発振器10,10’、テープ終端部把持部材7,7’、テープ終端部用カッタ8,8’、移動ローラ9,9’、テープ融着用受け部材11,11’、テープ開始端部用カッタ12,12’等が設けられている。
【0043】
なお、図3のように、2組のテープ供給ユニットPu1,Pu2も、上記圧着ユニットQu1およびQu2と同様、これらの中央を挟んで線対称(鏡像)関係にある。また、これらテープ供給ユニットPu1,Pu2の中間位置には、上記移動ローラ9,9’、テープ融着用受け部材11,11’、テープ開始端部用カッタ12,12’等を支持するとともに、これらの上記異方導電膜の貼付方向(図示左右方向)への移動を個別に制御するアクチュエータ等を備える支持基台Uが設けられている。
【0044】
図4(a)は、テープ供給ユニットPu1を装置の横方向(ユニットPu2側)から見た図であり、図4(b)は、このテープ供給ユニットPu1を装置の上方から見下ろした図である。なお、これらの図においては、異方導電テープTの図示を省略している。
【0045】
図4(a)のように、テープ供給ユニットPu1(Pu2も同様)においては、その基台20の略中央に、ステッピングモータ等により180°往復回転(回動)する回転軸3が配置されており、この回転軸3の上端近傍には、該回転軸3を挟んで背中合わせに対向するように、リール装着部4Aおよび4Bが取り付けられている。
【0046】
さらに、上記回転軸3の下端近傍には、リール装着部4Aに対応するチャック5Aとリール装着部4Bに対応するチャック5Bとが、リール装着部4A,4Bと同様、軸3を挟んで対称となるように配置されているとともに、これらの基部が延設されて上記回転軸3に固定され、図4(b)のように、チャック5Aおよび5Bが、リール装着部4Aおよび4Bに同期して回転するように構成されている。
【0047】
なお、後述する異方導電テープTの終端部の処理に利用されるテープ終端部把持部材7およびテープ終端部用カッタ8は、図4(a)のように、使用しない時は、異方導電テープTの走行に支障のない位置まで引き込まれており、異方導電テープT同士の接合時にのみ、2点鎖線で示すように、図示左方に移動(前進)するように構成されている。
【0048】
つぎに、以上のような構成のテープ供給ユニットPuにおけるリールRの交換方法、および、異方導電テープTの終端部に別の新たな異方導電テープTの開始端部を接合する方法について説明する。なお、テープ供給ユニットPu1とPu2とは同様の構成であるため、第1テープ供給ユニットPu1についてのみ説明する。
【0049】
図5(a)〜(c),図6(a)〜(c)および図7(a)〜(c)は、このテープ供給ユニットPu1における異方導電テープT同士の接合方法を、段階を追って順に説明する図であり、それぞれ、以下に述べるテープ接合手順のSTEP1〜STEP9に相当する。
【0050】
まず、図5(a)は、テープ供給ユニットPu1の一方のリール装着部4Aが、上記圧着ユニットQu1(貼付けヘッド1)に異方導電テープT1を供給可能な供給位置(図示右側)に位置決めされ、このリール装着部4Aに装着保持された「使用中」のリールR1の異方導電テープT1の残り量が少なくなった状態を示している。この時、残余少量となった異方導電テープT1の終端部近傍に形成されたエンドマークを、テープ供給ユニットPu1に配設されたセンサ6が検出した時点で、圧着ユニットQu1による異方導電膜の貼り付けと、供給ユニットPu1からの異方導電テープT1の供給が停止される(STEP1)。
【0051】
なお、他方のリール装着部4B(図示左側)には、新たな異方導電テープT2が充分に巻回された交換用のリールR2が予め装着されており、そのテープT2の開始端部がリールR2から引き出され、開始端部近傍の一部(約10〜20cm程度)の異方導電膜を除去した状態(セパレータのみとなった状態)で、上記異方導電テープT2の開始端部が、リール装着部4B用のチャック5Bに把持されている(リール付け替え作業)。
【0052】
そして、上記圧着ユニットQu1の停止が確認されると、通常、異方導電テープT1の走行に支障のない奥側の位置(図4(a)参照)まで引き込まれていたテープ供給ユニットPu1のテープ終端部把持部材7とテープ終端部用カッタ8が、図5(b)のように、装置手前側(紙面表側方向)に前進して、異方導電テープT1の走行位置に位置決めされる(STEP2)。
【0053】
ついで、図5(c)のように、チャック様のテープ終端部把持部材7が、その把持部の間に位置する異方導電テープT1の終端近傍部を把持した後(STEP3)、図6(a)のように、はさみ様のテープ終端部用カッタ8が動作して、上記テープ終端部把持部材7の把持部位よりさらにテープ終端側の異方導電テープT1を切断する(STEP4)。
【0054】
そして、テープ終端部用カッタ8が開くとともに、図6(b)のように、移動ローラ9が、つぎの手順で行なわれるリールR1,R2の配置交換の邪魔にならない位置(図示右方)まで移動する(STEP5)。
【0055】
移動ローラ9の退避が完了すると、制御手段からの指令等によるステッピングモータ等の回転によって、リールR1,R2の配置交換手段である回転軸3が回転を始め、図6(c)のように、180°回転した時点でストップする。この時、回転軸の上端近傍に接続されている各リール装着部4Aおよび4Bの配置が入れ換わり、供給位置(図示右側)にあったリール装着部4Aが、リールRの付け替え可能な待機位置(図示左側)に移動して位置決めされ、反対に、待機位置にあったリール装着部4Bが、圧着ユニットQu1(貼付けヘッド1)に異方導電テープT2を供給可能な供給位置に移動して位置決めされる(STEP6)。
【0056】
なお、回転軸3の下端近傍に接続されている各チャック5A,5Bも、リール装着部4A,4Bに同期して配置が入れ換わるため、新たなリールR2の開始端部(口出し部位)も、上記テープ終端部把持部材7に把持された状態の異方導電テープT1の終端部に、近接した位置に配置される。
【0057】
リール装着部4A,4Bの配置交換が確認されると、図7(a)のように、テープ融着用受け部材11が、新たな異方導電テープT2の開始端部(異方導電膜が除去された部位)を、上記切断された異方導電テープT1の終端部に押し付け、これらを超音波発振器10の発振子との間に挟み込む。そして、超音波発振器10が超音波を所定時間照射することにより、テープT2とテープT1の重なり合った部位が融着・固定される(STEP7)。
【0058】
その後、図7(b)のように、テープ開始端部用カッタ12が移動(図示左方)して、新たな異方導電テープT2における上記融着部位よりさらに開始端側の(余分となった)セパレータを切断し、異方導電テープT1の終端部と異方導電テープT2の開始端部の接合が完了する(STEP8)。
【0059】
つぎに、図7(c)のように、異方導電テープT1の終端部を把持していたテープ終端部把持部材7と、テープ終端部用カッタ8が、装置奥側(紙面裏側方向)に後退して、異方導電テープT2の走行に支障のない位置まで引き込まれるとともに、上記テープ端部同士の融着作業に使用されたテープ融着用受け部材11とテープ開始端部用カッタ12とが、原位置(図示右方)に復帰する。最後に、リールR1,R2の配置交換の邪魔にならない位置(図示右側)まで退避していた移動ローラ9が、原位置(図示左方)に復帰して、新たなリールR2からの異方導電テープT2の供給が開始される(STEP9)。
【0060】
以上のように、本実施形態における異方導電膜貼付装置は、残余少量となったリールR1と新たなリールR2の交換作業と、異方導電テープT1とT2の接続作業を、自動で素早く完了することができる。
【0061】
また、本実施形態における異方導電膜貼付装置は、各圧着ユニットQu1,Qu2に対応する異方導電テープ供給手段(テープ供給ユニットPu1,Pu2)を個別に設けているが、上記リールR交換方式によれば、これらテープ供給ユニットPu1,Pu2の水平方向における必要設置面積が小さく、各貼付けヘッド1,1’の上方にコンパクトに配設することができる。したがって、装置本体サイズの増大が抑えられ、この貼付装置自身をコンパクトに構成することができる。
【0062】
さらに、上記残余少量の異方導電テープT1の終端部と上記未使用の異方導電テープT2の開始端部との接合を、これらテープが重なり合った部位に超音波を照射して融着させることにより行なうことから、上記各異方導電テープT間の接続(融着)を素早くかつ短時間で行なうことができる。
【0063】
ちなみに、残余少量の異方導電テープT1の終端部と未使用の異方導電テープT2の開始端部との接合を、接着テープ等を用いて作業員が手で行なう場合、作業への慣れの程度にもよるが、通常1〜3分の時間を要する。それに対して、本実施形態のように、超音波融着を用いて自動でテープT1の終端部とテープT2の開始端部を接合した場合は、約10秒ほどで終了するため、エンドマーク検出によるリールR停止(貼り付け停止)から約40秒ほどで異方導電膜の貼り付けを再開できる。
【0064】
また、空になったリールR1が、新たなリールRの交換(付け替え)が可能な待機位置に位置決めされるようになっているため、この装置の管理者(作業者)は、装置の稼働(ランニング)中であっても、使用中のリールRに手を触れることなく、自由なタイミングで、使用済みの空リールRを取り外し、異方導電テープTが巻回された新たなリールRに交換することができる。
【0065】
なお、以上の実施形態においては、リールRの配置交換手段として、2つのリール装着部4A,4Bが、回転軸3を挟んで180°反転動作する配置を例を示したが、これらと同様のリール装着部を周方向等配に3個以上配設して、軸の回転により配置を順次入れ換える構成としてもよい。
【0066】
また、リールRの配置交換手段は、軸回りに回転させて配置交換する方法だけではなく、上下あるいは左右に設置された支軸にそれぞれリールをセットして、これらを切り換えて使用する方法でもよい。もちろん、作業員が手で交換する方法でもかまわない。
【0067】
さらに、残余少量の異方導電テープT1の終端部と未使用の異方導電テープT2の開始端部とを接合する方法も、超音波融着の代わりに、その他の加熱方法による融着や、接着剤や接着テープなどによる接着等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態における異方導電膜貼付装置の概略構成図である。
【図2】異方導電膜貼付装置内における基板の移動を説明する図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】(a)はテープ供給ユニットを装置の横方向から見た図であり、(b)はテープ供給ユニットを装置の上方から見下ろした図である。
【図5】(a)〜(c)は、テープ終端部とテープ開始端部の接合手順を説明する図であり、それぞれ手順STEP1〜3に相当する図である。
【図6】(a)〜(c)は、テープ終端部とテープ開始端部の接合手順を説明する図であり、それぞれ手順STEP4〜6に相当する図である。
【図7】(a)〜(c)は、テープ終端部とテープ開始端部の接合手順を説明する図であり、それぞれ手順STEP7〜9に相当する図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1’ 貼付けヘッド
P テープ供給部
Pu1,Pu2 テープ供給ユニット
Q 圧着部
Qu1,Qu2 圧着ユニット
1,R2,R3,R4 リール
S ステージ
1,T2,T3,T4 異方導電テープ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に搬入された基板を所定の位置に移動させて位置決めする基板位置決め手段と、上記位置決めされた基板の所定の部位に、セパレータと異方導電膜とが積層された異方導電テープを、その異方導電膜の面が上記基板に対峙する向きとなるよう供給する異方導電テープ供給手段と、上記異方導電テープをセパレータ側から押圧して異方導電膜のみを基板上に転写して貼り付ける貼付けヘッドとを備えた異方導電膜貼付装置であって、上記貼付けヘッドが、異方導電膜の貼り付け方向に沿って複数個配設され、各貼付けヘッドの間隔が調節可能に設定されているとともに、上記異方導電テープ供給手段が、異方導電テープが巻回されたリールを装着保持するリール装着部を備え、この異方導電テープ供給手段が、上記貼付けヘッドごとに独立して設けられていることを特徴とする異方導電膜貼付装置。
【請求項2】
上記異方導電テープ供給手段には、上記リール装着部が、所定の配置交換手段を介して複数設けられ、同時に装着保持された複数のリールの配置を順次入れ換えできるように形成されているとともに、所定の配置において、いずれかのリール装着部が、上記貼付けヘッドに異方導電テープを供給可能な供給位置に位置決めされ、他のリール装着部のいずれかが、リールの付け替えが可能な待機位置に位置決めされるようになっている請求項1記載の異方導電膜貼付装置。
【請求項3】
上記異方導電テープ供給手段が、上記配置交換手段としての回転軸と、この回転軸を挟んで背中合わせに配設された2個のリール装着部とからなり、上記回転軸を180°回転させることによって、一方のリール装着部が上記供給位置に、他方のリール装着部が上記待機位置に配置されるようになっている請求項2記載の異方導電膜貼付装置。
【請求項4】
上記供給位置で使用中のリールの異方導電テープの残量が少なくなった時、この残余少量テープの終端部近傍をテープ把持部材で把持するとともに終端部側のテープを切断し、上記残余少量テープの終端部を固定した状態で上記回転軸を180°回転させて、当該残余少量テープの終端部に、上記待機位置に待機していたリールから引き出した未使用の異方導電テープの開始端部を近接させ、これら終端部と開始端部とを重ね合わせて接合した後、上記テープ把持部材の把持を解除して、上記貼付けヘッドへの異方導電テープの供給を再開するようになっている請求項3記載の異方導電膜貼付装置。
【請求項5】
上記残余少量の異方導電テープの終端部と上記未使用の異方導電テープの開始端部との接合が、これらテープの重複部位への超音波の照射による融着によって行なわれるようになっている請求項4記載の異方導電膜貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−114194(P2010−114194A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284240(P2008−284240)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(508066566)有限会社共同設計企画 (3)
【Fターム(参考)】