異方性ポリマー・フィルムおよびその生成方法
本発明は、一般に、有機化学の分野に関し、詳細には異方性ポリマー・フィルムに関する。より詳細には、本発明は、マイクロエレクトロニクス、光学、通信、コンピュータ技術、およびその他の関連分野のための材料に関する。本発明は、異方性ポリマー・フィルム、およびこれを生成する方法を提供し、このフィルムは、基材と、非共有ポリマー材料の異方性層とを含んでいる。異方性層は、一般組成(I)の混合物を含み、ここで、Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、iは、1からKまでの範囲内の整数であり、P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、Aは、分子結合基であり、nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、Bは、複素環分子系の溶解性を確実にする分子基であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN、−NH2、−NHCOCH3、および−CONH2を含むリストからの置換基であり、zは、0、1、2、3、または4であり、Stは、スティッカとして働く分子基であり、Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、Spは、ストッパとして働く分子基であり、Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、前記結合基は、主に、ポリマー・フィルムの異方性光学特性が確実になるように配向されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機化学の分野に関し、詳細には異方性ポリマー・フィルムに関する。より詳細には、本発明は、マイクロエレクトロニクス、光学、通信、コンピュータ技術、およびその他の関連分野のための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術の開発は、新しい材料の生成を必要とし、特に、所望の異方性を有する光学的、電子的、およびその他の要素を作製するための基礎をもたらすポリマーの生成を必要とする。特殊な種類のポリマーは、超分子ポリマーにより代表され(例えば、非特許文献1参照)、構造粒子(モノマー)が、水素結合(H結合)、複素結合、およびアレーン−アレーン結合などの非共有結合によって結び付けられる。モノマーは、典型的には有機染料の自己組織化円盤状分子であり、様々な置換イオン基を含有している。水溶液中で、そのような円盤状分子は、リオトロピック液晶の形成と共に凝集を示す。
【0003】
超分子ポリマー組成物の形成におけるH結合型の分子間結合の重要な役割は、例えば特許文献1に記載されている。そのような結合は、隣接するポリマー鎖の官能基同士の相互作用の結果として現れる。
【0004】
特許文献2は、超分子ポリマー・マトリックスをベースにしたフィルムを得る方法を開示する。開示された方法によれば、初期溶液は、置換基中に重合性基を含有する円盤状置換多環式化合物と、液晶化合物との混合物を含む。基材は、配向ポリマー材料で作製される。開示された処理およびその後の冷却の後、ポリマー・マトリックスおよび液晶化合物を含むフィルムが形成される。2成分混合物の変換により、保護層を有するマトリックス・ポリマー系が形成され、最終的なフィルムで液晶特性が維持される。しかし、有機溶媒の使用(系の成分に対して個々に溶媒を選択する必要がある)、および必要とされる高温および/または紫外線処理によって、前述の重合工程が技術的に複雑になり、環境的にも安全ではない。
【0005】
新しい性質を有する、変性した異方性の薄い結晶フィルムを得るために将来有望な種類の別の化合物は、平面分子構造を有する変性させた水溶性の二色性有機染料によって提供される。そのような材料をベースにした薄い結晶フィルムを製造する工程は、従来技術に固有の欠点を有していない。その製造工程は下記の段階を含む。第1の段階では、水溶性染料がリオトロピック液晶相を形成する。この相は、二色性染料の円盤状分子からなるカラム凝集体を含む(例えば、非特許文献2参照)。これらの分子は、希釈溶液中でも凝集することが可能である(例えば、非特許文献3参照)。第2の段階では、剪断を有するリオトロピック液晶相(インクまたはペーストの形をとる)を適用することにより、分子カラムが剪断方向に整列する。適用された液晶の高チキソトロピーにより、剪断誘発状態において高い分子秩序がもたらされ、剪断動作の終了後に確実にその秩序が保存される。この工程の第3の段階では、溶媒(水)の蒸発によって単一方向の結晶化が生じ、このとき、事前に配向された液晶相から有機固体結晶フィルムが形成される。そのような薄い結晶フィルム(TCF)は、屈折率および吸収率の高い光学異方性を特徴とし、並外れた偏光子の性質を示し(例えば、非特許文献4に、より詳細に記述されているように)、液晶ディスプレーでの商業的な用途に使用することができる(例えば、非特許文献5参照)。
【0006】
この技術を使用して製造された異方性TCFの適用例は、高湿度環境に限られる。前記フィルムは、さらに2価または3価の金属イオンを含有する溶液で処理してもよい。この処理の結果、不溶性TCFが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1300447号明細書
【特許文献2】米国特許第5730900号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】エル.ブランドベルド(L.Brandveld),Supramolecular Polymers,Chem.Rev.,101,4071−4097(2001)
【非特許文献2】ピー.イエーら(P.Yeh et al.),Molecular Crystalline Thin Film E−Polarizer,Mol.Mater.,14(2000)
【非特許文献3】ジェイ.ライドン(J.Lydon),Chromonics,in:Handbook of Liquid Crystals,pp.981−1007(1998)
【非特許文献4】ユー エー.ボボロフ(Yu.A.Bobrov),J.Opt.Technol.,66,547(1999)
【非特許文献5】エル.イグナトフら(L.Ignatov et al).,Society for Information Display,Int.Symp.(Long Beach,California,May 16−18),Digest of Technical Papers,31,834−838(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、第1の態様では、環境要因に関して高い機械的強度および加水分解安定性を含む改善された加工特性を有する異方性ポリマー・フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この異方性ポリマー・フィルムは、基材と、非共有ポリマー材料の異方性層とを含む。異方性層は、一般組成(I)
【0011】
【数1】
の混合物を含む(ここで、Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、iは、1からKまでの範囲内の整数であり、P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、AおよびBは、分子基であり、但し、Aは、結合基であり、Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN −NH2、−NHCOCH3、および−CONH2を含むリストからの置換基であり、zは、0、1、2、3、または4であり、Stは、スティッカとして働く分子基であり、Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、Spは、ストッパとして働く分子基であり、Pyは、0から1までの範囲内の実数である)。前記結合基は、その大部分が、ポリマー・フィルムが確実に異方性になるように配向されている
本発明はさらに、開示された性質を有する異方性ポリマー・フィルムを製造するための方法を提供する。したがって、第2の態様では、本発明は、(i)基材を調製する工程、および(ii)(a)一般組成(II)
【0012】
【数2】
の反応混合物を調製する段階(ここで、Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、iは、1からKまでの範囲内の整数であり、P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、AおよびBは、分子基であり、但し、Aは、結合基であり、Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN、−NH2、−NHCOCH3、および−CONH2を含むリストからの置換基であり、zは、0、1、2、3、または4であり、Stは、スティッカとして働く分子基であり、Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、Spは、ストッパとして働く分子基であり、Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、Solは、溶媒である)、(b)反応混合物の液体層を基材上に適用する段階、および(c)乾燥させる段階を含むカスケード重合工程を用いて、基材上に非共有結合ポリマー材料の固体層を形成する工程を含む方法を提供する。
【0013】
(I)および(II)中の係数Piは、混合物中の複素環式分子系Hetiの割合を示す、重み乗数である。係数PxおよびPyは、それぞれ、混合物中の(任意の種類の)複素環式分子系当たりのスティッカ分子およびストッパ分子の量を示す重み乗数である。
【0014】
異方性ポリマー・フィルムは、2種の中心成分、複素環式分子系および分子結合基を含有することができる。これらは、異方性ポリマー・フィルムの3次元網状構造が構成される出発試薬として定義される。さらに、スティッカおよびストッパを含むその他の補助成分を、任意選択で存在させてもよい。スティッカの重要な特徴は、その結合部位の数および配向(配位数および配位幾何形状)である。遷移金属イオンは、異方性ポリマー・フィルムの製造において用途の広いスティッカとして利用することができる。金属およびその酸化状態に応じて、配位数は2から6に及んでよく、直線状、TまたはY字形、4面体、平面4角形、錐形4角形、3方両錐形、8面体、3角柱状、および5方両錐形でもよい様々な幾何形状の不等軸粒子(ポリマー粒子)を生み出す。スティッカは、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択することができ、スティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、およびCu2+を含むリストから選択されることが好ましい。
【0015】
ストッパは、1個の結合基を有するポリマー・フィルム成分である。これらの成分は、重合中の不等軸粒子のサイズを制限しようとするものである。これらは、不等軸粒子の周縁上に配置され、重合工程を停止させる。適切なストッパは、1個の結合基、例えば1個のカルボン酸基を有する有機化合物を含む。
【0016】
本発明の全体的な説明を行ってきたが、単なる例示を目的に記載されかつ下記の添付の特許請求の範囲を限定するものではない特定の好ましい実施形態を参照することによって、かつ図面を参照することによって、さらなる理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】線状ポリマー鎖の構造の、いくつかの実施形態を示す図。
【図2】平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の構造を示す図。
【図3】3個の結合基を有する親液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図4】図3に示される複素環式分子系および結合基によって形成された、平らな不等軸粒子の構造を示す図。
【図5】異方性ポリマー・フィルムの形成工程を示す図。
【図6】4個の結合基を有する親液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図7】図6に示される複素環式分子系および結合基によって形成された、平らな不等軸粒子の構造を示す図。
【図8】2個の結合基を有する疎液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図9】図8に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の概略図。
【図10】2個の結合基を有する疎液性リボン状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物の、概略図。
【図11】図10に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の構造を示す図。
【図12】2個の結合基を有する親液性リボン状複素環式分子系を含む有機化合物の概略図。
【図13】図12に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、異方性層が下記のカスケード重合工程によって生成される。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、分子結合基Aは、異方的に分極可能である。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が酸結合基であり、酸結合基は、好ましくはCOO−、SO3−、HPO3−、PO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が塩基結合基であり、塩基結合基は、好ましくはNHR、NR2、CONHCONH2、CONH2、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、但し、基Rはアルキルまたはアリールである。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基を含むリストから選択され、アリール基は、フェニル、ベンジル、およびナフチル基を含むリストから選択される。好ましいアルキルおよびアリール基を以下に列挙する。
【0019】
アルキル基:
一般式:CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)。
【0020】
例:
メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)、プロピル(C3H7−)、ブチル(C4H9−)、i−ブチル((CH3)2CHCH2−)、s−ブチル(CH3CH(CH2CH3)−、t−ブチル((CH3)3C−)、i−プロピル(C3H7)
アリール基:
例:
フェニル(C6H5−)、ベンジル(C7H7−)、ナフチル(C10H7−)。
【0021】
開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、少なくとも1個の結合基が相補基である。
水または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとを含むリストから選択することができる。有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの組合せを含むリストから選択することができる(但し、R2およびR3は、独立に、上記にて定義された水素、アルキル、およびアリールから選択される)。
【0022】
開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系が、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択されるヘテロ原子を含む。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、ほぼ平らである。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記複素環分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、親液性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、疎液性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、2個以上の結合基を有する。複素環式分子系は、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸を有することが好ましい(但し、kは3以上の数である)。
【0023】
構造1〜5に該当する一般構造式を有するピラジンまたは/およびイミダゾール環を備え、大部分が平面状である複素環式分子系の例を、表1に示す。
【0024】
【表1】
有機化合物の別の実施形態では、複素環式分子系は、水素結合を形成することが可能なイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環を含むオリゴマーである。そのような、構造6〜15に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状である複素環式分子系の例を表2に示す(但し、nは1から20の数である)。
【0025】
【表2】
有機化合物のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、テトラピロール系大環状分子である。そのような、構造16から21に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表3に示す(但し、Mは金属原子または2個のプロトンを示す)。
【0026】
【表3】
有機化合物のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、リーレン断片を含む。そのような、構造22〜39に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表4に示す。
【0027】
【表4】
開示された異方性ポリマー・フィルムの1つの好ましい実施形態では、有機化合物がオリゴフェニル誘導体である。構造40〜46に該当する一般構造式を有するオリゴフェニル誘導体の例を、表5に示す。
【0028】
【表5】
本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、結合基を介して複素環式分子系同士の間に形成された強力な非共有化学結合によって形成された、不等軸粒子を含む。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、不等軸粒子は、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、結合基によって、平らな不等軸粒子の形成が確実になる。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、平らな不等軸粒子は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、不等軸粒子は、鎖、針、カラム、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、不等軸粒子は、結合部位に結合して、Dp−Ap型の供与体−受容体結合を形成する(但し、Dpはプロトン供与体であり、Apはプロトン受容体である)。本発明のさらに別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムがさらに、結合基を介して不等軸粒子間の強力なおよび弱い非共有化学結合によって形成された3次元網状構造を含み、前記強力な非共有化学結合型は、好ましくは配位結合、イオン結合、またはイオン−双極子相互作用、多重H結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、前記弱い非共有化学結合型は、好ましくは単一H結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を含み、前記超分子は結合部位に結合されている。本発明の別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、隣接する複素環式分子系の間でπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を含み、前記超分子は、結合基に結合されている。異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、カラム状超分子が基材平面内に配列されている。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向けられている。開示された本発明のさらに別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択されたスティッカを含み、好ましくはスティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物を含むリストから選択される。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、異方性導電率を有する。別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、異方性機械的特性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記異方性層が、異方性磁化率を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、異方性層は一般に、可視スペクトル範囲(約390nmから770nm)で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、異方性層は一般に、可視スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、可視スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近紫外スペクトル範囲(約300nmから390nm)で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である。さらに別の実施形態では、異方性層は、紫外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近赤外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、近赤外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、基材がポリマーで作製される。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材がガラスで作製される。さらに別の実施形態では、開示された異方性ポリマー・フィルムは、可視スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる基材を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、基材は、近紫外スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材は、近赤外スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、異方性層が基材の表面に適用され、基材の裏面は、反射防止または防眩膜で被覆される。さらに別の実施形態では、異方性層が基材の表面に適用され、反射層が基材の裏面に適用される。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、基材が鏡面または拡散反射体である。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材が反射偏光子である。開示された本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、さらに基材の表面に適用された平坦化層を含む。
【0029】
本発明による異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、疎液性複素環式分子系が、配位結合を介して結合されている。この場合、2重荷電亜鉛陽イオンが、塩基を共有する四方両錐形を表す八面体の中心に生ずる。正方形のベースの角部は、隣接する複素環式分子系に属する結合基の酸素イオンに結合し、一方、錐体の頂点は、所与の実施形態おける反応混合物の溶媒である水の酸素原子と結合することができる。ポリマー・フィルムにおいて、配位結合によって結合されるそのような複素環式分子系の存在は、異方性物理的特性をこのフィルムにもたらす。
【0030】
カスケード重合工程を含む、本発明の方法の1つの可能な実施形態の詳細な記述を、以下に示す。
第1の工程では、反応混合物を、適切な溶媒に溶解した3成分、(1)複素環式分子系(Heti)、(2)St型分子(スティッカ)、および(3)Sp型分子(ストッパ)を使用して調製する。前記複素環式分子系(Heti)は、複素環式分子系の溶解性を確実にする3個以上の分子結合基Aおよび分子基Bを含む。結合基は、隣接する複素環式分子系の結合基と共に、およびスティッカ(St)と共に、配位結合、イオン結合、H結合、およびπ−π相互作用を含めた様々なタイプの化学結合を形成し、それによって、複素環式分子系を重合させることが可能になる。これらの化学結合のそれぞれは、結合エネルギーによって決定される特定の強度を特徴とする。配位およびイオン結合は、結合エネルギーが450kJ/モル程度のいわゆる強力な化学結合に属する。配位およびイオン結合よりも非常に低い結合エネルギー(典型的には10〜40kJ/モル)を有する単一H結合は、弱い結合に分類される。配位およびイオン結合よりも結合エネルギーが5〜10倍小さい、比較的低い強度を有するH結合は、これらの結合とファン・デル・ワールス相互作用との間の中間の位置を占める。後者の相互作用は、分子を固相および液相で一纏めに保持する。しかし、5〜10個の単一H結合を含む多重H結合は、強力であるとみなされるべきである。
【0031】
反応混合物中のストッパの数は、事前に設定された重合度(n)が確実になるように選択される。互いに反対側に位置付けられた2個の結合基を有する複素環式分子系の場合、重合は、両端からストッパによって結合された直鎖をもたらす。結合基の役割は、例えば、1つの複素環式分子系(Het1)では2個のカルボキシ基COOHによって、またその他の複素環式分子系(Het2)では2個のNHR基(但し、基Rは、水素、アルキル、およびアリールを含むリストから選択される)によって果たされ得る。結合基の間の非共有化学結合は、破断または回復を示すことができる。このような理由により、ポリマー鎖は反応混合物との動的平衡状態で生じ、それによってこれらの鎖は破断され、次いで再構築され得る。このように、線状ポリマー鎖は、結合基の不安定性に基づき、反応混合物と平衡な状態で生ずる。結合の破断および回復の過程は弱い接触(H結合)を伴い、一方、強力な結合(配位、イオン、および多重H結合)は強力な不等軸粒子(反応混合物の動的粒子)の形成に好都合である。そのようなポリマー構造は、不安定と呼ばれることになる。結合基は、所与の複素環式分子系が2個の結合基を有し、かつスティッカが3個の結合基を有することを条件に、平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の形成を確実にする。そのようなスティッカの例は、3個のカルボキシ基を有するベンゼン分子(トリメシン酸、TMA)
【0032】
【化1】
によって提供される。
【0033】
複素環式分子系は、例えば、ビピリジル(Bipy)によって表すことができる。Bipyの結合基は、複素環式分子系の平面内に、破断および回復を示すことができる不安定な非共有化学結合を形成する。
【0034】
【化2】
そのような分子の重合の結果、不安定で平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)が形成される。
【0035】
開示された本発明の1つの可能な実施形態では、異なる複素環式分子系に属する同一の結合基が、これらの系の間に非共有化学結合を形成する。そのような結合基を、自己結合的または相補的と呼ぶ。
【0036】
重合度は、一方では、反応混合物が基材上に都合良く適用されるために十分高い粘度を有することができるように、また他方では、動的粒子(直鎖、平らな構造)が、技術的工程における後続の段階でその配向を可能にする寸法を有することができるように選択される。
【0037】
スティッカの機能は、結合基と配位結合を形成することが可能な金属(アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属など)によって発揮される。配位結合は、配位化合物に典型的な化学結合の一種である。この種の結合は、共通の結合分子軌道の形成を伴う、スティッカ分子(供与体)の占有軌道から中心原子(受容体)の空軌道への電子密度移動を特徴とする。
【0038】
結合基間のイオン結合は、反対の電荷を有するイオンのクーロン引力の結果として形成される。イオン結合を有する化合物の周知の例は、塩化ナトリウムによって提供され、ナトリウム陽イオン(Na+)は、1個の電子を失いかつネオンの安定な電子配置を獲得したナトリウム原子を表し、塩化物イオン(Cl−)は、1個の電子と結合しかつアルゴンの安定な電子配置を獲得した塩素原子である。この化合物の化学式(NaCl)は、これらイオンの安定性と、分子の電気的中和性の状態によって決定される。例えば、周期表の第1族の金属は1価の陽イオンを形成し(言い換えれば、イオン価+1を有する)、第2族の金属は2価のイオン(イオン価+2を有する)を形成する。これと同様に、例えばハロゲン(第7族の元素)には1個の電子が結合し、1価の陰イオン(イオン価−1を有する)を形成し、酸素およびその類似体は、2個の電子を受け容れることができ、不活性ガスの電子構造を有する2価の陰イオン(イオン価−2を有する)を形成する。イオン性塩の組成は、その陽イオンおよび陰イオンのイオン価によって決定され、その分子の電気的中性の条件に従わなければならない。イオン間(例えば、Na+とCl−との間)のクーロン力によって、各イオンは隣接する対イオンを引き付け、したがって規則的な環境が生成される。反対の極性に帯電したイオン間のクーロン引力は、原子価力とも呼ばれる。各ナトリウムイオンが6個の最近接塩素イオンに取り囲まれている(即ち、配位数6を有する)塩化ナトリウムでは、イオン価+1がこれらの近接イオン間で分割され、したがって、ナトリウムと隣接する塩素との間の各化学結合は、強度が1/6のイオン結合とみなすことができる。同様に、各塩素原子の負の原子価−1は、最近接ナトリウムイオンとの6つのイオン結合の間に割り当てられる(それぞれ、1/6の強度)。無機化学で極めて重要なものである原子価の規則によれば、各陰イオンを対象とするイオン価の合計は、このイオンのイオン価に厳密に(またはほぼ)等しくなければならない。
【0039】
結合基は、H結合によっても結合することができる。H結合とは、ある分子(RAH)の水素含有基(AH)と別分子(BR’)の原子(B)との間の相互作用を示唆する。この相互作用の結果、分子間H結合(H...B)を有する安定な錯体(RAH...BR’)が形成され、この水素原子は、RAとBR’断片とを連結する橋の役割を果たす。分子RAH中の原子Hは正に帯電しているので、分子BR’の負の電位の値が最も大きい部位に最も強力に引き付けられる。そのような部位は、通常、原子Bの非共有電子対(UEP)の局所化領域に生ずる。このような理由によって、分子BR’は、UEP軸がA−H結合の方向とほぼ一致するように、分子RAHに対して頻繁に配向するようになる。パウリの原理によって、同じスピンを有する電子は互いに「近寄らず」、その結果、RAH...BR’錯体中で近付いてくる原子(HおよびB)の核間の空間で、電子密度が低下する。その結果、H+およびB+核は、自由原子の場合の類似する核よりも低い程度にまで、電子によってスクリーニングされる。これらの核は同じ符号の電荷を保持するので、互いに近付くと強力な反発力を示す。同時に、各分子(RAHおよびBR’)の電子殻は、別の分子の静電場で変形を示す。この変形は、各分子において誘起双極子モーメント(それぞれ、PRAHおよびPBR’)を引き起こす。明らかに、RAH...BR’錯体中でH結合がより強力になるにつれ、相互に作用する分子RAHとBR’との間の電子密度の再分布がより顕著になり、分子の誘起双極子モーメントがより大きくなる。
【0040】
水素原子Hでの電位が高くなるにつれ、AH基によって形成されるH結合はより強力になる。この理由により、分子RAH中の原子Aおよび置換基が最も強力に負に帯電している場合は、最も強力なH結合が形成される。H結合の形成中に原子Bがプロトン受容体になる能力も、分子BR’中のこの原子の静電電位によってほとんど決定される。プロトン供与体による最も強力なH結合は、アミン、アルシン、ホスフィン、および硫化物の酸化物の酸素(O)原子によって、また、アミンの窒素(N)原子によって形成される。H結合を検出するための信用性ある手法は、分光法(IR分光測光法、ラマン分光法)によって提供される。H結合に関与するAH基のスペクトル特性は、そのような結合が存在しない場合に観察されるものとは著しく異なっている。さらに、構造調査の結果が、B原子とH原子との間の距離がそれらのファン・デル・ワールス半径の合計よりも小さいことを示す場合、H結合の形成は高い信頼性で確立されることが一般に認められる。このように、問題となっているポリマー・フィルム中のH結合の主な配向(等方的分布)は、フィルム内の偏光赤外線の吸収を調査することによって、明らかにすることができる。
【0041】
対応する断片での電子殻の変形の結果誘起された双極子モーメントPRAHおよびPBR’は、H結合に沿って配向し、反対の方向を向いていることがほぼ確実である。この方法で変形された殻内の電子密度は、遠隔分子RAHおよびBR’の場合よりも高くなると予測される。この理由により、O...H型のH結合の酸素原子での特定の電子密度は、共役炭素系の場合よりも明らかに高い。このタイプのH結合では、酸素の全電荷がプロトンの電荷に等しいか、またはプロトンの電荷に近くなければならない。
【0042】
配位および/またはイオン(原子価)相互作用によって結合された場合、結合基は、互いに安定な非共有化学結合を形成する。これらの結合は、1つのイオンから別のイオンに向けられ(イオン相互作用の場合)、またはスティッカ(供与体)から中心原子(受容体)に向けられる(配位結合の場合)。この理由により、導電率、機械的強度、屈折率、および磁化率などのポリマー・フィルムの物理的性質に対するそのような配向結合基の局所的な寄与も異方的になる。したがって、この工程の後続の段階で基材上に適用された反応混合物における、結合基の全てまたは大部分に与えられた異方的配向は、得られるフィルムを異方性にする。
【0043】
結合基間の強力な(配位、多重H結合、およびイオン)化学結合によって、反応混合物中に安定な不等軸粒子(動的粒子)が形成される。これらの不等軸粒子は、カラム状(円盤状分子が堆積した場合)、リボン(分子が1方向に配列され、2つ以上の化学結合によって互いに結合した場合)、薄層(分子が平らな系を形成する場合)を含む様々な形状を有することができる。不等軸粒子は、押出しによって基材上に反応混合物を適用する過程において、流体力学的流れによってその有効な配向をもたらすために、十分大きくなければならない。単一H結合およびその他の弱い接触も、不等軸粒子間に、またこれらの粒子と溶媒分子との間に形成することができる。H結合およびその他のタイプの弱い結合による反応混合物の飽和は、ゲル形成をもたらすことができる。そのような反応ゲル混合物は、薄い(50から80nmの厚さの)異方性ポリマー・フィルムを得るために使用することができる。
【0044】
反応混合物は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびその他の溶媒で調製することができる。
第2の段階では、反応混合物を基材上に適用する。開示された方法の1実施形態では、反応混合物を、不等軸粒子の同時配向を伴う押出しによって適用する。配向度は、流体力学的流動速度、温度、重合度、およびいくつかのその他の技術的パラメータに左右され、これらは、適用されるポリマー・フィルムにおいて結合基(したがって、不等軸粒子)の好ましい配向が得られるように選択されなければならない。追加の配向動作は、適用された溶液に偏光赤外線を照射することによって得ることができる。結合基は、不等軸粒子間の弱い結合(例えば、単一水素結合)が、ダイを介した溶液押出し過程で破壊されるように、次いで基材上で回復するように選択される。同時に、強力な結合(配位、イオン、および多重H結合)は押出し中に破壊されず、不等軸粒子の安定性が確実になる。強力なおよび弱い結合のこの挙動は、一方では適用中の反応混合物の粘度の低下をもたらし(この方法を容易にする)、他方では不等軸粒子を保持し、基材上での流体力学的流れによってその配向を可能にする。適用後、規則的に配置された不等軸粒子間の弱い結合(特に、単一H結合)が回復する。さらに、これらの回復された結合は、得られるポリマー層の物理的特性の異方性に寄与する異方的配向も獲得する。同時に、適用された層で弱い結合(H結合を含む)が回復することにより、付加的な弾性がこの層に与えられ、流体力学的流れの剪断動作の停止後に、設定された秩序の不等軸粒子の安定性が増大し、適用された層の重合に関与する後続の段階(乾燥)の過程で、異方性フィルム上の基材表面の変形動作が低減する。
【0045】
開示された工程の最終段階は、適用された層の乾燥であり、これは室温の空気中で行うことができる。
得られた異方性ポリマー・フィルムを水に不溶にさせる、乾燥層の特殊な処理からなる追加の段階を、開示された工程に導入することもできる。この追加の処理は、結合基のタイプに依存する。SO3H基の場合、フィルムはバリウム塩(例えば、BaCl2)の溶液で処理されるが、スルホンおよびカルボキシ基を含有するフィルムは、BaCl2およびHClの混合物で処理される。追加の処理によって、ある割合のH結合が破壊され、したがってポリマー・フィルムの異方性度が低下することに留意すべきである。しかし、その総量に対して破壊されるH結合の相対的な割合は制御することができる。後続の溶媒除去(乾燥)の工程は、相対湿度40〜70%において、室温の緩慢な条件下で最長約1時間にわたって行われるか、または時間節約のために約20から60℃の温度範囲に加熱することによって行われる。
【0046】
開示された本発明の1実施形態では、前記方法はさらに、前記結合基の大部分を配列するために、堆積された液体層上に外部アライメント動作を適用する段階を含む。開示された方法の別の実施形態では、堆積およびアライメント段階を同時に実施する。開示された方法の1実施形態では、分子結合基Aが異方的に分極可能である。開示された方法の別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が酸結合基であり、酸結合基は、好ましくはCOO−、SO3−、HPO3−、PO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された方法のさらに別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が塩基結合基であり、塩基結合基は、好ましくはCONHCONH2、NHR、NR2、CONH2、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される(但し、基Rは以下に定義される水素、アルキル、およびアリールを含むリストから選択される)。開示された方法のさらに別の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基を含むリストから選択され、アリール基は、フェニル、ベンジル、およびナフチル基を含むリストから選択される。好ましいアルキル基は、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)を有する。
【0047】
開示された方法の1実施形態では、少なくとも1個の結合基が相補基である。
水中または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択することができる。有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択することができる(但し、R2およびR3は、上記にて定義された、水素、アルキル、およびアリールから選択される)。
【0048】
開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、部分的にまたは完全に共役している。開示された方法のさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系は、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択されるヘテロ原子を含む。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、ほとんど平らである。この方法のさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。開示された方法の1実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、3個以上の結合基を有する。複素環式分子系は、好ましくは、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸を有する(但し、kは3以上の数である)。
【0049】
構造1〜5に該当する一般構造式を有するピラジンまたは/およびイミダゾール環を備え、大部分が平面状である複素環式分子系の例を、表1に示す。
この方法の別の実施形態では、複素環式分子系は、水素結合を形成することが可能なイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環を含むオリゴマーである。そのような、構造6〜12に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状である複素環式分子系の例を表2に示す(但し、nは1から20の数である)。この方法のさらに別の実施形態では、複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である。そのような、構造13から18に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表3に示す(但し、Mは金属原子または2個のプロトンを示す)。この方法のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、リーレン断片を含む。そのような、構造19〜36に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表4に示す。開示された方法の好ましい実施形態では、有機化合物がオリゴフェニル誘導体である。構造37〜43に該当する一般構造式を有するオリゴフェニル誘導体の例を、表5に示す。
【0050】
この方法の1実施形態では、段階(a)が、強力な非共有化学結合を介した結合基により、有機分子から不等軸粒子を形成する工程をさらに含む。この方法の別の実施形態では、不等軸粒子は、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する。この方法のさらに別の実施形態では、結合基は、平らな不等軸粒子の形成を確実にする。この方法のさらに別の実施形態では、平らな不等軸粒子は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。この方法の1実施形態では、不等軸粒子は、鎖、針、カラム、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。この方法の別の実施形態では、段階(b)がさらに、結合部位を介して不等軸粒子を結合する工程を含み、それによって、Dp−Ap型の供与体−受容体結合が形成される(但し、Dpはプロトンの供与体であり、Apはプロトンの受容体である)。この方法のさらに別の実施形態では、段階(b)がさらに、強力なおよび弱い非共有化学結合を介した結合基により、不等軸粒子から3次元網状構造を形成する工程をさらに含み、前記強力な非共有化学結合型は、好ましくは配位結合、イオン結合、またはイオン−双極子相互作用、多重H結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、前記弱い非共有化学結合型は、好ましくは単一H結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された方法の1実施形態では、段階(a)がさらに、隣接する複素環式分子系間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を形成する工程を含み、前記超分子は、結合部位により結合される。開示された方法の別の実施形態では、段階(a)がさらに、隣接する複素環式分子系間でのπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を形成する工程を含み、前記超分子は、結合基により結合されている。開示された方法の1実施形態では、カラム状超分子が基材平面内に配列される。開示された方法の別の実施形態では、カラム状超分子の長軸が基材平面に対して垂直に向けられている。開示された方法のさらに別の実施形態では、スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択され、好ましくはスティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物を含むリストから選択される。開示された方法の1実施形態では、適用された液体層のアライメントが、機械的動作を介して行われる。これは、ナイフ、円筒状ワイパ、平板(適用された層表面に平行に、またはこの表面に対してある角度をなして配向される)、スロット・ダイ、または任意のその他のアライメント装置を含む、様々なタイプの1つまたは複数のアライメント装置の指向的機械運動によって実現される。開示された方法の別の実施形態では、堆積された液体層への機械的動作は、スロット・ダイ機械、押出し機械、または成型機械を使用することによって行われる。この方法のさらに別の実施形態では、押出し中の反応混合物の流体力学的流れの速度は、弱い結合の破壊によって前記混合物の粘度の低下をもたらす。開示された方法の1実施形態では、適用された層への外部アライメント動作は、層上の少なくとも1つのアライメント・ツールの指向的機械的並進によって行われ、基材表面からアライメント・ツールの縁部または平面までの距離は、所望のフィルム厚が得られるように設定される。この方法の別の実施形態では、アライメント・ツールは加熱される。開示された方法の1実施形態では、反応混合物中での複素環式分子系、結合基、およびスティッカの濃度は、反応混合物のチキソトロピーが得られるように選択される。
【0051】
増大した機械的強度および改善された物理的特性、特に高温高湿の条件下での安定性は、複素環式分子系および結合基と相互に作用することが可能な無機塩および水溶性有機化合物で、フィルムを処理することによって得ることができる。開示された工程による後続の好ましい追加の段階は、層を不溶性形態に変換するために、無機塩の水溶液で、非共有ポリマー材料により得られた固体層を処理することである。この目的のために、例えば、濃度が5から30%の範囲にあり、最適な範囲は10〜20%にある塩化バリウム(BaCl2)の溶液を使用することが可能である。この処理中に、Ba2+イオンはNH4+イオンに置き換えられ、不溶性の有機硫酸バリウムが形成される。フィルムの細孔および構造欠陥に部分的に浸透する可能性のある未反応の硫酸バリウムを、引き続き水で洗浄することによって除去する。次いでフィルムは、室温または20から70℃の範囲の高温の空気中で、その温度に応じて最長約20分間乾燥させることが好ましい。得られる異方性ポリマー・フィルムは未処理のフィルムに比べ、環境要因に対する高い安定性、改善された機械的性質、およびより良好な光学特性を有する。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態は、異方性ポリマー・フィルムの不溶性を確実にするために、固体層の追加の処理をさらに含む、前記フィルムを得るための方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、コーティングがゲルを使用して作製される方法を提供する。この方法のさらに別の実施形態では、コーティングが粘性液相を使用して作製される。開示された方法の1実施形態では、溶媒が水である。開示された方法の1実施形態では、溶媒は、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、メタノール、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ピリジン、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、酢酸、エタノール、塩化メチレン、またはこれらの組合せを含むリストから選択される。この方法の1実施形態では、溶媒の量は、流体力学的流れを用いて液体層を適用するのに必要な反応混合物の粘度を提供する。この方法のさらに別の実施形態では、反応混合物の粘度は、2Pa・sを超過しない。この方法の別の実施形態では、不等軸粒子は1μm以上の長さ寸法を有する。
【0053】
本発明をより容易に理解できるようにするために、本発明の例示を目的とするものであるが範囲を限定するものではない下記の図を参照されたい。
図1は、本発明による異方性フィルム用の線状ポリマー鎖の、いくつかの可能な実施形態を示す。具体的には、鎖は、酸結合基(A11およびA21)間の非共有化学結合の形成を介して、互いに反対に位置付けられた2個の結合基を有する同じ種類の複素環式分子系(Het1)から、図1aに示すように形成することができ、このとき2個の分子ストッパ基(Sp)が、ポリマー鎖がその両端からの伸張を終結させている。この実施形態では、重合度nは、成長しているポリマー鎖と反応混合物との間の動的平衡に依存する。この平衡の状態は、温度、ストッパおよび複素環式分子系の濃度、圧力、および反応混合物の何らかのその他のパラメータによって決定される。重合度は、ストッパの濃度が低下すると共に上昇する。しかし、ストッパの濃度がゼロになりまたは無くなる傾向がある場合、重合度を制限するその他のメカニズムが動作し始める。約1μmの鎖長で前述の動的平衡に対応したストッパ濃度を有する反応混合物を使用することが好都合である。別の実施形態では(図1b)、線状ポリマー鎖は異なる2種類の複素環式分子系(Het1およびHet2)から形成され、それらはそれぞれ互いに反対に位置づけられ、かつそれらの基(A11−A12、A22−A11、およびA21−A12)の間の相互作用によって結合された2個の酸結合基を有している。カルボキシ基(−COOH)の場合、これらの接触は、1つのカルボキシ基のヒドロキシ基OHと別の基の酸素イオンとの間のH結合である。本発明の別の実施形態は、酸(A11)および塩基(B11)結合基間の相互作用によって結合された複素環式分子系から形成された線状ポリマー鎖を用いる(図1c)。さらに別の実施形態では(図1d)、線状ポリマー鎖は、スティッカおよび酸結合基間に形成された配位結合によって形成される。スティッカの役割は、例えば亜鉛陽イオン(Zn2+)によって果たされ、一方、酸結合基はカルボキシ基(COOH)によって表すことができる。さらに別の実施形態は、スティッカ(St)および酸(A11)および塩基(B11)結合基間に配位結合が形成された線状ポリマー鎖によって提供される。
【0054】
図2は、3個の結合基を有するスティッカと2個の結合基を有する複素環式分子系とによって形成された平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の構造を示す。この場合、可能なスティッカはTMA(3個のカルボキシ基を有するベンゼン環を含む)であり、可能な複素環式分子系はビピリジル(Bipy)である。
【0055】
図3は、平らな円盤状複素環式分子系および3個の結合基を含む有機化合物を概略的に示す。結合基の位置は、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される。複素環式分子系は、その平面に対して垂直に向けられた3次対称軸を有する。所与の複素環式分子系は、ヘテロ原子として働く窒素陽イオン(N+)を含有する。その結果、複素環式分子系の平面内に電気的双極子が形成され、この系に親液性が与えられる。反応混合物の調製の過程で、複素環式分子系および結合基は、隣接する複素環式分子系の結合基間の非共有化学結合によって、平らな不等軸粒子(動的粒子)を形成する。基材に反応混合物を適用する間、弱い非共有結合の崩壊のためにこれらの平らな不等軸粒子のある割合が破壊される。この破壊によって反応混合物の粘度が低下し、流体力学的流れによるその配向が促進する。不等軸粒子の平面は、複素環式分子系の親液性により、基材平面(xOy)に平行に配向され、効果的なホメオトロピック配向をもたらす。次いで、不等軸粒子中の崩壊した非共有化学結合が回復する。
【0056】
図4は、平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の、1つの可能な構造を概略的に示す。開示された本発明のこの実施形態では、非共有結合が、1つの複素環式分子系の陽イオン(N+)と隣接する系の陰イオン(O−)との間に形成される。結合基がカルボキシ基によって表される場合、2つのタイプ、即ち(i)ヘテロ原子と酸結合基との間の非共有結合、および(ii)2個の酸結合基間のH結合という弱い結合を組み合わせた、異なる構造の平らな不等軸粒子が可能である。不等軸粒子の寸法は、1μmを超えないことが好ましい。
【0057】
図5は、そのような不等軸粒子の基材上への適用を示し、平らなポリマー粒子が層ごとに堆積されており、基材の平面内で任意に配向されている。図5は、不等軸粒子(3)を含有する反応混合物を適用することによる異方性層(1)の基材(2)上への形成を概略的に示す。これらの不等軸粒子は、堆積の過程で部分的に破壊された非共有化学結合(5)によって結合された複素環式分子系(4)を含む。したがって、開示された方法により作製されたポリマーは、異方性物理的特性を有する。これらの特性は、フィルムの平面内で等方的であり、垂直方向での特性とは異なる。したがって、本発明で開示されたポリマー・フィルムは、異方性導電率、異方性機械的特性、電磁放射線の異方的吸収、異方性磁化率、およびその他の異方性物理的特性を有することができる。
【0058】
図6は、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される4個の結合基を有する円盤状複素環式分子系を含む分子系を概略的に示す。所与の複素環式分子系は、その平面に対して垂直に向けられた4次対称軸を有する。1実施形態では、この分子系は親液性を有する。反応混合物の調製中、複素環式分子系は、隣接する系の結合基間の非共有結合によって、平らな不等軸粒子を形成する。等方的反応混合物が基材上に適用される場合、前記不等軸粒子は、弱い非共有結合の崩壊により部分的に破壊される。複素環式分子系の平面は、複素環式分子系の親液性により、基材平面(xOy)に平行に配向され、効果的なホメオトロピック配向をもたらす。次いで平らな等軸粒子は、複素環式分子系の結合基の非共有側方相互作用によって回復する。
【0059】
図7は、平らな不等軸粒子の断片を示す。図からわかるように、結合基は、大部分が不等軸粒子の平面内に配向されている。本発明の1つの可能な実施形態では、これらの結合基はH結合を形成する。開示された本発明により製作された、そのような構造を有するポリマー・フィルムは、異方性物理的特性を有する。
【0060】
図8は、円盤状複素環式分子系と、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される2個の結合基を含有する有機化合物を概略的に示す。1実施形態では、これら分子系は疎液性であり、反応混合物中でカラム状超分子(または分子積層体)の構成を有する不等軸粒子を形成する。反応混合物が、図9に示すように基材上に適用される場合、前記超分子(6)は、コーティング方向(Ox)に垂直な平面および基材(2)の平面に垂直な平面に配向する。隣接する複素環式分子系の結合基は、線状ポリマー鎖(7)を形成し、その大部分はOy方向に配向している。図9に示される、本発明による異方性フィルムの実施形態では、結合基が、Oy方向に配列されたH結合を形成する。
【0061】
図10は、疎液性を保有するリボン状複素環式分子系と、負電荷−δを保持する酸素によって示される2個の末端結合基とを含む有機化合物を、概略的に示す。複素環式分子系の縦方向のサイズ(荷電酸素間の距離)は、横方向のサイズを超過する。反応混合物では、そのような分子系が、図11に示されるカラム状超分子(または分子積層体)を形成する。本発明の1実施形態では、超分子の長さが約1μmである。反応混合物が、押出しなどの採用された方法のいずれかによって基材(2)上に適用される場合、前記超分子(6)は、コーティング方向(Ox)に垂直な平面および基材(2)の平面に垂直な平面に沿って配向される。図11は、線状ポリマー鎖(7)がOy方向に配向された場合を示す。所与の実施形態では、これらの鎖は、近接する超分子の隣接複素環式分子系に属する結合基の間のH結合によって形成される。これらの結合基、したがってH結合は、大部分がOy方向に配向している。1実施形態では、複素環式分子系がカルボキシル結合基を含有し、前記H結合は、1つのカルボキシ基のヒドロキシ基OHと、隣接する基の酸素イオンとの間で形成される。H結合の主にOy方向の配向により、これらの結合はさらに、この方向での所与のポリマー・フィルムの異方性物理的特性に寄与する。基材上に位置する近接ポリマー鎖は、近接する超分子に関わる隣接複素環式分子系の間のπ−π相互作用によって結合される。この相互作用は弱いため、Ox方向でのポリマー・フィルムの物理的特性は、OyおよびOz方向の場合と異なることになる。したがって、本発明で開示されるポリマー・フィルムは、等方性物理的特性(電導率、機械的強度、電磁放射線の吸収、磁化率など)を有することができ、これらは3軸(Ox、Oy、およびOz)に沿って著しく異なる。
【0062】
本発明の別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、互いに反対に位置付けられた2個の結合基を有するとともに(図12参照)長いリボン状の構成を示し、親液性を有し、かつ2個の末端結合基を有する複素環式分子系を含有する有機化合物をベースとする。反応混合物中で、そのような分子系は、図13に示されるような長手方向に結合基を備えた線状ポリマー鎖の構成を有する等軸粒子を形成する。反応混合物を、例えば押出しによって基材(2)上に適用する場合、前記線状ポリマー鎖(7)、したがって結合基は、コーティング方向(Ox)に沿って配向する。図13は、ポリマー・フィルムが、H結合を形成することが可能な結合基を有する線状鎖(7)からなる1実施形態を概略的に示す。複素環式分子系の親液性により、その平面は、基材(xOy平面)に対して平行に配向する。この実施形態によるポリマー・フィルムは異方性であり、その物理的特性は、3軸(Ox、Oy、およびOz)に沿って実質的に異なっている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機化学の分野に関し、詳細には異方性ポリマー・フィルムに関する。より詳細には、本発明は、マイクロエレクトロニクス、光学、通信、コンピュータ技術、およびその他の関連分野のための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術の開発は、新しい材料の生成を必要とし、特に、所望の異方性を有する光学的、電子的、およびその他の要素を作製するための基礎をもたらすポリマーの生成を必要とする。特殊な種類のポリマーは、超分子ポリマーにより代表され(例えば、非特許文献1参照)、構造粒子(モノマー)が、水素結合(H結合)、複素結合、およびアレーン−アレーン結合などの非共有結合によって結び付けられる。モノマーは、典型的には有機染料の自己組織化円盤状分子であり、様々な置換イオン基を含有している。水溶液中で、そのような円盤状分子は、リオトロピック液晶の形成と共に凝集を示す。
【0003】
超分子ポリマー組成物の形成におけるH結合型の分子間結合の重要な役割は、例えば特許文献1に記載されている。そのような結合は、隣接するポリマー鎖の官能基同士の相互作用の結果として現れる。
【0004】
特許文献2は、超分子ポリマー・マトリックスをベースにしたフィルムを得る方法を開示する。開示された方法によれば、初期溶液は、置換基中に重合性基を含有する円盤状置換多環式化合物と、液晶化合物との混合物を含む。基材は、配向ポリマー材料で作製される。開示された処理およびその後の冷却の後、ポリマー・マトリックスおよび液晶化合物を含むフィルムが形成される。2成分混合物の変換により、保護層を有するマトリックス・ポリマー系が形成され、最終的なフィルムで液晶特性が維持される。しかし、有機溶媒の使用(系の成分に対して個々に溶媒を選択する必要がある)、および必要とされる高温および/または紫外線処理によって、前述の重合工程が技術的に複雑になり、環境的にも安全ではない。
【0005】
新しい性質を有する、変性した異方性の薄い結晶フィルムを得るために将来有望な種類の別の化合物は、平面分子構造を有する変性させた水溶性の二色性有機染料によって提供される。そのような材料をベースにした薄い結晶フィルムを製造する工程は、従来技術に固有の欠点を有していない。その製造工程は下記の段階を含む。第1の段階では、水溶性染料がリオトロピック液晶相を形成する。この相は、二色性染料の円盤状分子からなるカラム凝集体を含む(例えば、非特許文献2参照)。これらの分子は、希釈溶液中でも凝集することが可能である(例えば、非特許文献3参照)。第2の段階では、剪断を有するリオトロピック液晶相(インクまたはペーストの形をとる)を適用することにより、分子カラムが剪断方向に整列する。適用された液晶の高チキソトロピーにより、剪断誘発状態において高い分子秩序がもたらされ、剪断動作の終了後に確実にその秩序が保存される。この工程の第3の段階では、溶媒(水)の蒸発によって単一方向の結晶化が生じ、このとき、事前に配向された液晶相から有機固体結晶フィルムが形成される。そのような薄い結晶フィルム(TCF)は、屈折率および吸収率の高い光学異方性を特徴とし、並外れた偏光子の性質を示し(例えば、非特許文献4に、より詳細に記述されているように)、液晶ディスプレーでの商業的な用途に使用することができる(例えば、非特許文献5参照)。
【0006】
この技術を使用して製造された異方性TCFの適用例は、高湿度環境に限られる。前記フィルムは、さらに2価または3価の金属イオンを含有する溶液で処理してもよい。この処理の結果、不溶性TCFが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1300447号明細書
【特許文献2】米国特許第5730900号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】エル.ブランドベルド(L.Brandveld),Supramolecular Polymers,Chem.Rev.,101,4071−4097(2001)
【非特許文献2】ピー.イエーら(P.Yeh et al.),Molecular Crystalline Thin Film E−Polarizer,Mol.Mater.,14(2000)
【非特許文献3】ジェイ.ライドン(J.Lydon),Chromonics,in:Handbook of Liquid Crystals,pp.981−1007(1998)
【非特許文献4】ユー エー.ボボロフ(Yu.A.Bobrov),J.Opt.Technol.,66,547(1999)
【非特許文献5】エル.イグナトフら(L.Ignatov et al).,Society for Information Display,Int.Symp.(Long Beach,California,May 16−18),Digest of Technical Papers,31,834−838(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、第1の態様では、環境要因に関して高い機械的強度および加水分解安定性を含む改善された加工特性を有する異方性ポリマー・フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この異方性ポリマー・フィルムは、基材と、非共有ポリマー材料の異方性層とを含む。異方性層は、一般組成(I)
【0011】
【数1】
の混合物を含む(ここで、Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、iは、1からKまでの範囲内の整数であり、P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、AおよびBは、分子基であり、但し、Aは、結合基であり、Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN −NH2、−NHCOCH3、および−CONH2を含むリストからの置換基であり、zは、0、1、2、3、または4であり、Stは、スティッカとして働く分子基であり、Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、Spは、ストッパとして働く分子基であり、Pyは、0から1までの範囲内の実数である)。前記結合基は、その大部分が、ポリマー・フィルムが確実に異方性になるように配向されている
本発明はさらに、開示された性質を有する異方性ポリマー・フィルムを製造するための方法を提供する。したがって、第2の態様では、本発明は、(i)基材を調製する工程、および(ii)(a)一般組成(II)
【0012】
【数2】
の反応混合物を調製する段階(ここで、Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、iは、1からKまでの範囲内の整数であり、P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、AおよびBは、分子基であり、但し、Aは、結合基であり、Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN、−NH2、−NHCOCH3、および−CONH2を含むリストからの置換基であり、zは、0、1、2、3、または4であり、Stは、スティッカとして働く分子基であり、Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、Spは、ストッパとして働く分子基であり、Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、Solは、溶媒である)、(b)反応混合物の液体層を基材上に適用する段階、および(c)乾燥させる段階を含むカスケード重合工程を用いて、基材上に非共有結合ポリマー材料の固体層を形成する工程を含む方法を提供する。
【0013】
(I)および(II)中の係数Piは、混合物中の複素環式分子系Hetiの割合を示す、重み乗数である。係数PxおよびPyは、それぞれ、混合物中の(任意の種類の)複素環式分子系当たりのスティッカ分子およびストッパ分子の量を示す重み乗数である。
【0014】
異方性ポリマー・フィルムは、2種の中心成分、複素環式分子系および分子結合基を含有することができる。これらは、異方性ポリマー・フィルムの3次元網状構造が構成される出発試薬として定義される。さらに、スティッカおよびストッパを含むその他の補助成分を、任意選択で存在させてもよい。スティッカの重要な特徴は、その結合部位の数および配向(配位数および配位幾何形状)である。遷移金属イオンは、異方性ポリマー・フィルムの製造において用途の広いスティッカとして利用することができる。金属およびその酸化状態に応じて、配位数は2から6に及んでよく、直線状、TまたはY字形、4面体、平面4角形、錐形4角形、3方両錐形、8面体、3角柱状、および5方両錐形でもよい様々な幾何形状の不等軸粒子(ポリマー粒子)を生み出す。スティッカは、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択することができ、スティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、およびCu2+を含むリストから選択されることが好ましい。
【0015】
ストッパは、1個の結合基を有するポリマー・フィルム成分である。これらの成分は、重合中の不等軸粒子のサイズを制限しようとするものである。これらは、不等軸粒子の周縁上に配置され、重合工程を停止させる。適切なストッパは、1個の結合基、例えば1個のカルボン酸基を有する有機化合物を含む。
【0016】
本発明の全体的な説明を行ってきたが、単なる例示を目的に記載されかつ下記の添付の特許請求の範囲を限定するものではない特定の好ましい実施形態を参照することによって、かつ図面を参照することによって、さらなる理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】線状ポリマー鎖の構造の、いくつかの実施形態を示す図。
【図2】平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の構造を示す図。
【図3】3個の結合基を有する親液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図4】図3に示される複素環式分子系および結合基によって形成された、平らな不等軸粒子の構造を示す図。
【図5】異方性ポリマー・フィルムの形成工程を示す図。
【図6】4個の結合基を有する親液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図7】図6に示される複素環式分子系および結合基によって形成された、平らな不等軸粒子の構造を示す図。
【図8】2個の結合基を有する疎液性円盤状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物を、概略的に示す図。
【図9】図8に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の概略図。
【図10】2個の結合基を有する疎液性リボン状複素環式分子系(Het)を含む有機化合物の、概略図。
【図11】図10に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の構造を示す図。
【図12】2個の結合基を有する親液性リボン状複素環式分子系を含む有機化合物の概略図。
【図13】図12に示される複素環式分子系および結合基によって基材上に形成された、異方性固体層の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、異方性層が下記のカスケード重合工程によって生成される。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、分子結合基Aは、異方的に分極可能である。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が酸結合基であり、酸結合基は、好ましくはCOO−、SO3−、HPO3−、PO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が塩基結合基であり、塩基結合基は、好ましくはNHR、NR2、CONHCONH2、CONH2、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、但し、基Rはアルキルまたはアリールである。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基を含むリストから選択され、アリール基は、フェニル、ベンジル、およびナフチル基を含むリストから選択される。好ましいアルキルおよびアリール基を以下に列挙する。
【0019】
アルキル基:
一般式:CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)。
【0020】
例:
メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)、プロピル(C3H7−)、ブチル(C4H9−)、i−ブチル((CH3)2CHCH2−)、s−ブチル(CH3CH(CH2CH3)−、t−ブチル((CH3)3C−)、i−プロピル(C3H7)
アリール基:
例:
フェニル(C6H5−)、ベンジル(C7H7−)、ナフチル(C10H7−)。
【0021】
開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、少なくとも1個の結合基が相補基である。
水または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとを含むリストから選択することができる。有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの組合せを含むリストから選択することができる(但し、R2およびR3は、独立に、上記にて定義された水素、アルキル、およびアリールから選択される)。
【0022】
開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系が、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択されるヘテロ原子を含む。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、ほぼ平らである。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記複素環分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、親液性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、疎液性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、2個以上の結合基を有する。複素環式分子系は、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸を有することが好ましい(但し、kは3以上の数である)。
【0023】
構造1〜5に該当する一般構造式を有するピラジンまたは/およびイミダゾール環を備え、大部分が平面状である複素環式分子系の例を、表1に示す。
【0024】
【表1】
有機化合物の別の実施形態では、複素環式分子系は、水素結合を形成することが可能なイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環を含むオリゴマーである。そのような、構造6〜15に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状である複素環式分子系の例を表2に示す(但し、nは1から20の数である)。
【0025】
【表2】
有機化合物のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、テトラピロール系大環状分子である。そのような、構造16から21に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表3に示す(但し、Mは金属原子または2個のプロトンを示す)。
【0026】
【表3】
有機化合物のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、リーレン断片を含む。そのような、構造22〜39に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表4に示す。
【0027】
【表4】
開示された異方性ポリマー・フィルムの1つの好ましい実施形態では、有機化合物がオリゴフェニル誘導体である。構造40〜46に該当する一般構造式を有するオリゴフェニル誘導体の例を、表5に示す。
【0028】
【表5】
本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、結合基を介して複素環式分子系同士の間に形成された強力な非共有化学結合によって形成された、不等軸粒子を含む。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、不等軸粒子は、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、結合基によって、平らな不等軸粒子の形成が確実になる。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、平らな不等軸粒子は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、不等軸粒子は、鎖、針、カラム、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、不等軸粒子は、結合部位に結合して、Dp−Ap型の供与体−受容体結合を形成する(但し、Dpはプロトン供与体であり、Apはプロトン受容体である)。本発明のさらに別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムがさらに、結合基を介して不等軸粒子間の強力なおよび弱い非共有化学結合によって形成された3次元網状構造を含み、前記強力な非共有化学結合型は、好ましくは配位結合、イオン結合、またはイオン−双極子相互作用、多重H結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、前記弱い非共有化学結合型は、好ましくは単一H結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を含み、前記超分子は結合部位に結合されている。本発明の別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、隣接する複素環式分子系の間でπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を含み、前記超分子は、結合基に結合されている。異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、カラム状超分子が基材平面内に配列されている。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向けられている。開示された本発明のさらに別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムはさらに、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択されたスティッカを含み、好ましくはスティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物を含むリストから選択される。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、異方性導電率を有する。別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、異方性機械的特性を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記異方性層が、異方性磁化率を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、異方性層は一般に、可視スペクトル範囲(約390nmから770nm)で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、異方性層は一般に、可視スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、可視スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近紫外スペクトル範囲(約300nmから390nm)で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である。さらに別の実施形態では、異方性層は、紫外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。別の実施形態では、前記異方性層は一般に、近赤外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、前記異方性層は、近赤外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、基材がポリマーで作製される。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材がガラスで作製される。さらに別の実施形態では、開示された異方性ポリマー・フィルムは、可視スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる基材を有する。開示された異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、基材は、近紫外スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる。開示された異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材は、近赤外スペクトル範囲で電磁放射線を透過させる。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、異方性層が基材の表面に適用され、基材の裏面は、反射防止または防眩膜で被覆される。さらに別の実施形態では、異方性層が基材の表面に適用され、反射層が基材の裏面に適用される。異方性ポリマー・フィルムのさらに別の実施形態では、基材が鏡面または拡散反射体である。異方性ポリマー・フィルムの別の実施形態では、基材が反射偏光子である。開示された本発明の1実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、さらに基材の表面に適用された平坦化層を含む。
【0029】
本発明による異方性ポリマー・フィルムの1実施形態では、疎液性複素環式分子系が、配位結合を介して結合されている。この場合、2重荷電亜鉛陽イオンが、塩基を共有する四方両錐形を表す八面体の中心に生ずる。正方形のベースの角部は、隣接する複素環式分子系に属する結合基の酸素イオンに結合し、一方、錐体の頂点は、所与の実施形態おける反応混合物の溶媒である水の酸素原子と結合することができる。ポリマー・フィルムにおいて、配位結合によって結合されるそのような複素環式分子系の存在は、異方性物理的特性をこのフィルムにもたらす。
【0030】
カスケード重合工程を含む、本発明の方法の1つの可能な実施形態の詳細な記述を、以下に示す。
第1の工程では、反応混合物を、適切な溶媒に溶解した3成分、(1)複素環式分子系(Heti)、(2)St型分子(スティッカ)、および(3)Sp型分子(ストッパ)を使用して調製する。前記複素環式分子系(Heti)は、複素環式分子系の溶解性を確実にする3個以上の分子結合基Aおよび分子基Bを含む。結合基は、隣接する複素環式分子系の結合基と共に、およびスティッカ(St)と共に、配位結合、イオン結合、H結合、およびπ−π相互作用を含めた様々なタイプの化学結合を形成し、それによって、複素環式分子系を重合させることが可能になる。これらの化学結合のそれぞれは、結合エネルギーによって決定される特定の強度を特徴とする。配位およびイオン結合は、結合エネルギーが450kJ/モル程度のいわゆる強力な化学結合に属する。配位およびイオン結合よりも非常に低い結合エネルギー(典型的には10〜40kJ/モル)を有する単一H結合は、弱い結合に分類される。配位およびイオン結合よりも結合エネルギーが5〜10倍小さい、比較的低い強度を有するH結合は、これらの結合とファン・デル・ワールス相互作用との間の中間の位置を占める。後者の相互作用は、分子を固相および液相で一纏めに保持する。しかし、5〜10個の単一H結合を含む多重H結合は、強力であるとみなされるべきである。
【0031】
反応混合物中のストッパの数は、事前に設定された重合度(n)が確実になるように選択される。互いに反対側に位置付けられた2個の結合基を有する複素環式分子系の場合、重合は、両端からストッパによって結合された直鎖をもたらす。結合基の役割は、例えば、1つの複素環式分子系(Het1)では2個のカルボキシ基COOHによって、またその他の複素環式分子系(Het2)では2個のNHR基(但し、基Rは、水素、アルキル、およびアリールを含むリストから選択される)によって果たされ得る。結合基の間の非共有化学結合は、破断または回復を示すことができる。このような理由により、ポリマー鎖は反応混合物との動的平衡状態で生じ、それによってこれらの鎖は破断され、次いで再構築され得る。このように、線状ポリマー鎖は、結合基の不安定性に基づき、反応混合物と平衡な状態で生ずる。結合の破断および回復の過程は弱い接触(H結合)を伴い、一方、強力な結合(配位、イオン、および多重H結合)は強力な不等軸粒子(反応混合物の動的粒子)の形成に好都合である。そのようなポリマー構造は、不安定と呼ばれることになる。結合基は、所与の複素環式分子系が2個の結合基を有し、かつスティッカが3個の結合基を有することを条件に、平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の形成を確実にする。そのようなスティッカの例は、3個のカルボキシ基を有するベンゼン分子(トリメシン酸、TMA)
【0032】
【化1】
によって提供される。
【0033】
複素環式分子系は、例えば、ビピリジル(Bipy)によって表すことができる。Bipyの結合基は、複素環式分子系の平面内に、破断および回復を示すことができる不安定な非共有化学結合を形成する。
【0034】
【化2】
そのような分子の重合の結果、不安定で平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)が形成される。
【0035】
開示された本発明の1つの可能な実施形態では、異なる複素環式分子系に属する同一の結合基が、これらの系の間に非共有化学結合を形成する。そのような結合基を、自己結合的または相補的と呼ぶ。
【0036】
重合度は、一方では、反応混合物が基材上に都合良く適用されるために十分高い粘度を有することができるように、また他方では、動的粒子(直鎖、平らな構造)が、技術的工程における後続の段階でその配向を可能にする寸法を有することができるように選択される。
【0037】
スティッカの機能は、結合基と配位結合を形成することが可能な金属(アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属など)によって発揮される。配位結合は、配位化合物に典型的な化学結合の一種である。この種の結合は、共通の結合分子軌道の形成を伴う、スティッカ分子(供与体)の占有軌道から中心原子(受容体)の空軌道への電子密度移動を特徴とする。
【0038】
結合基間のイオン結合は、反対の電荷を有するイオンのクーロン引力の結果として形成される。イオン結合を有する化合物の周知の例は、塩化ナトリウムによって提供され、ナトリウム陽イオン(Na+)は、1個の電子を失いかつネオンの安定な電子配置を獲得したナトリウム原子を表し、塩化物イオン(Cl−)は、1個の電子と結合しかつアルゴンの安定な電子配置を獲得した塩素原子である。この化合物の化学式(NaCl)は、これらイオンの安定性と、分子の電気的中和性の状態によって決定される。例えば、周期表の第1族の金属は1価の陽イオンを形成し(言い換えれば、イオン価+1を有する)、第2族の金属は2価のイオン(イオン価+2を有する)を形成する。これと同様に、例えばハロゲン(第7族の元素)には1個の電子が結合し、1価の陰イオン(イオン価−1を有する)を形成し、酸素およびその類似体は、2個の電子を受け容れることができ、不活性ガスの電子構造を有する2価の陰イオン(イオン価−2を有する)を形成する。イオン性塩の組成は、その陽イオンおよび陰イオンのイオン価によって決定され、その分子の電気的中性の条件に従わなければならない。イオン間(例えば、Na+とCl−との間)のクーロン力によって、各イオンは隣接する対イオンを引き付け、したがって規則的な環境が生成される。反対の極性に帯電したイオン間のクーロン引力は、原子価力とも呼ばれる。各ナトリウムイオンが6個の最近接塩素イオンに取り囲まれている(即ち、配位数6を有する)塩化ナトリウムでは、イオン価+1がこれらの近接イオン間で分割され、したがって、ナトリウムと隣接する塩素との間の各化学結合は、強度が1/6のイオン結合とみなすことができる。同様に、各塩素原子の負の原子価−1は、最近接ナトリウムイオンとの6つのイオン結合の間に割り当てられる(それぞれ、1/6の強度)。無機化学で極めて重要なものである原子価の規則によれば、各陰イオンを対象とするイオン価の合計は、このイオンのイオン価に厳密に(またはほぼ)等しくなければならない。
【0039】
結合基は、H結合によっても結合することができる。H結合とは、ある分子(RAH)の水素含有基(AH)と別分子(BR’)の原子(B)との間の相互作用を示唆する。この相互作用の結果、分子間H結合(H...B)を有する安定な錯体(RAH...BR’)が形成され、この水素原子は、RAとBR’断片とを連結する橋の役割を果たす。分子RAH中の原子Hは正に帯電しているので、分子BR’の負の電位の値が最も大きい部位に最も強力に引き付けられる。そのような部位は、通常、原子Bの非共有電子対(UEP)の局所化領域に生ずる。このような理由によって、分子BR’は、UEP軸がA−H結合の方向とほぼ一致するように、分子RAHに対して頻繁に配向するようになる。パウリの原理によって、同じスピンを有する電子は互いに「近寄らず」、その結果、RAH...BR’錯体中で近付いてくる原子(HおよびB)の核間の空間で、電子密度が低下する。その結果、H+およびB+核は、自由原子の場合の類似する核よりも低い程度にまで、電子によってスクリーニングされる。これらの核は同じ符号の電荷を保持するので、互いに近付くと強力な反発力を示す。同時に、各分子(RAHおよびBR’)の電子殻は、別の分子の静電場で変形を示す。この変形は、各分子において誘起双極子モーメント(それぞれ、PRAHおよびPBR’)を引き起こす。明らかに、RAH...BR’錯体中でH結合がより強力になるにつれ、相互に作用する分子RAHとBR’との間の電子密度の再分布がより顕著になり、分子の誘起双極子モーメントがより大きくなる。
【0040】
水素原子Hでの電位が高くなるにつれ、AH基によって形成されるH結合はより強力になる。この理由により、分子RAH中の原子Aおよび置換基が最も強力に負に帯電している場合は、最も強力なH結合が形成される。H結合の形成中に原子Bがプロトン受容体になる能力も、分子BR’中のこの原子の静電電位によってほとんど決定される。プロトン供与体による最も強力なH結合は、アミン、アルシン、ホスフィン、および硫化物の酸化物の酸素(O)原子によって、また、アミンの窒素(N)原子によって形成される。H結合を検出するための信用性ある手法は、分光法(IR分光測光法、ラマン分光法)によって提供される。H結合に関与するAH基のスペクトル特性は、そのような結合が存在しない場合に観察されるものとは著しく異なっている。さらに、構造調査の結果が、B原子とH原子との間の距離がそれらのファン・デル・ワールス半径の合計よりも小さいことを示す場合、H結合の形成は高い信頼性で確立されることが一般に認められる。このように、問題となっているポリマー・フィルム中のH結合の主な配向(等方的分布)は、フィルム内の偏光赤外線の吸収を調査することによって、明らかにすることができる。
【0041】
対応する断片での電子殻の変形の結果誘起された双極子モーメントPRAHおよびPBR’は、H結合に沿って配向し、反対の方向を向いていることがほぼ確実である。この方法で変形された殻内の電子密度は、遠隔分子RAHおよびBR’の場合よりも高くなると予測される。この理由により、O...H型のH結合の酸素原子での特定の電子密度は、共役炭素系の場合よりも明らかに高い。このタイプのH結合では、酸素の全電荷がプロトンの電荷に等しいか、またはプロトンの電荷に近くなければならない。
【0042】
配位および/またはイオン(原子価)相互作用によって結合された場合、結合基は、互いに安定な非共有化学結合を形成する。これらの結合は、1つのイオンから別のイオンに向けられ(イオン相互作用の場合)、またはスティッカ(供与体)から中心原子(受容体)に向けられる(配位結合の場合)。この理由により、導電率、機械的強度、屈折率、および磁化率などのポリマー・フィルムの物理的性質に対するそのような配向結合基の局所的な寄与も異方的になる。したがって、この工程の後続の段階で基材上に適用された反応混合物における、結合基の全てまたは大部分に与えられた異方的配向は、得られるフィルムを異方性にする。
【0043】
結合基間の強力な(配位、多重H結合、およびイオン)化学結合によって、反応混合物中に安定な不等軸粒子(動的粒子)が形成される。これらの不等軸粒子は、カラム状(円盤状分子が堆積した場合)、リボン(分子が1方向に配列され、2つ以上の化学結合によって互いに結合した場合)、薄層(分子が平らな系を形成する場合)を含む様々な形状を有することができる。不等軸粒子は、押出しによって基材上に反応混合物を適用する過程において、流体力学的流れによってその有効な配向をもたらすために、十分大きくなければならない。単一H結合およびその他の弱い接触も、不等軸粒子間に、またこれらの粒子と溶媒分子との間に形成することができる。H結合およびその他のタイプの弱い結合による反応混合物の飽和は、ゲル形成をもたらすことができる。そのような反応ゲル混合物は、薄い(50から80nmの厚さの)異方性ポリマー・フィルムを得るために使用することができる。
【0044】
反応混合物は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびその他の溶媒で調製することができる。
第2の段階では、反応混合物を基材上に適用する。開示された方法の1実施形態では、反応混合物を、不等軸粒子の同時配向を伴う押出しによって適用する。配向度は、流体力学的流動速度、温度、重合度、およびいくつかのその他の技術的パラメータに左右され、これらは、適用されるポリマー・フィルムにおいて結合基(したがって、不等軸粒子)の好ましい配向が得られるように選択されなければならない。追加の配向動作は、適用された溶液に偏光赤外線を照射することによって得ることができる。結合基は、不等軸粒子間の弱い結合(例えば、単一水素結合)が、ダイを介した溶液押出し過程で破壊されるように、次いで基材上で回復するように選択される。同時に、強力な結合(配位、イオン、および多重H結合)は押出し中に破壊されず、不等軸粒子の安定性が確実になる。強力なおよび弱い結合のこの挙動は、一方では適用中の反応混合物の粘度の低下をもたらし(この方法を容易にする)、他方では不等軸粒子を保持し、基材上での流体力学的流れによってその配向を可能にする。適用後、規則的に配置された不等軸粒子間の弱い結合(特に、単一H結合)が回復する。さらに、これらの回復された結合は、得られるポリマー層の物理的特性の異方性に寄与する異方的配向も獲得する。同時に、適用された層で弱い結合(H結合を含む)が回復することにより、付加的な弾性がこの層に与えられ、流体力学的流れの剪断動作の停止後に、設定された秩序の不等軸粒子の安定性が増大し、適用された層の重合に関与する後続の段階(乾燥)の過程で、異方性フィルム上の基材表面の変形動作が低減する。
【0045】
開示された工程の最終段階は、適用された層の乾燥であり、これは室温の空気中で行うことができる。
得られた異方性ポリマー・フィルムを水に不溶にさせる、乾燥層の特殊な処理からなる追加の段階を、開示された工程に導入することもできる。この追加の処理は、結合基のタイプに依存する。SO3H基の場合、フィルムはバリウム塩(例えば、BaCl2)の溶液で処理されるが、スルホンおよびカルボキシ基を含有するフィルムは、BaCl2およびHClの混合物で処理される。追加の処理によって、ある割合のH結合が破壊され、したがってポリマー・フィルムの異方性度が低下することに留意すべきである。しかし、その総量に対して破壊されるH結合の相対的な割合は制御することができる。後続の溶媒除去(乾燥)の工程は、相対湿度40〜70%において、室温の緩慢な条件下で最長約1時間にわたって行われるか、または時間節約のために約20から60℃の温度範囲に加熱することによって行われる。
【0046】
開示された本発明の1実施形態では、前記方法はさらに、前記結合基の大部分を配列するために、堆積された液体層上に外部アライメント動作を適用する段階を含む。開示された方法の別の実施形態では、堆積およびアライメント段階を同時に実施する。開示された方法の1実施形態では、分子結合基Aが異方的に分極可能である。開示された方法の別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が酸結合基であり、酸結合基は、好ましくはCOO−、SO3−、HPO3−、PO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された方法のさらに別の実施形態では、結合基の少なくとも1個が塩基結合基であり、塩基結合基は、好ましくはCONHCONH2、NHR、NR2、CONH2、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される(但し、基Rは以下に定義される水素、アルキル、およびアリールを含むリストから選択される)。開示された方法のさらに別の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基を含むリストから選択され、アリール基は、フェニル、ベンジル、およびナフチル基を含むリストから選択される。好ましいアルキル基は、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)を有する。
【0047】
開示された方法の1実施形態では、少なくとも1個の結合基が相補基である。
水中または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択することができる。有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらす基Bは、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択することができる(但し、R2およびR3は、上記にて定義された、水素、アルキル、およびアリールから選択される)。
【0048】
開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、部分的にまたは完全に共役している。開示された方法のさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系は、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択されるヘテロ原子を含む。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、ほとんど平らである。この方法のさらに別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。開示された方法の1実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する。開示された方法の別の実施形態では、前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、3個以上の結合基を有する。複素環式分子系は、好ましくは、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸を有する(但し、kは3以上の数である)。
【0049】
構造1〜5に該当する一般構造式を有するピラジンまたは/およびイミダゾール環を備え、大部分が平面状である複素環式分子系の例を、表1に示す。
この方法の別の実施形態では、複素環式分子系は、水素結合を形成することが可能なイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環を含むオリゴマーである。そのような、構造6〜12に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状である複素環式分子系の例を表2に示す(但し、nは1から20の数である)。この方法のさらに別の実施形態では、複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である。そのような、構造13から18に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表3に示す(但し、Mは金属原子または2個のプロトンを示す)。この方法のさらに別の実施形態では、複素環式分子系が、リーレン断片を含む。そのような、構造19〜36に該当する一般構造式を有し、大部分が平面状の複素環式分子系の例を表4に示す。開示された方法の好ましい実施形態では、有機化合物がオリゴフェニル誘導体である。構造37〜43に該当する一般構造式を有するオリゴフェニル誘導体の例を、表5に示す。
【0050】
この方法の1実施形態では、段階(a)が、強力な非共有化学結合を介した結合基により、有機分子から不等軸粒子を形成する工程をさらに含む。この方法の別の実施形態では、不等軸粒子は、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する。この方法のさらに別の実施形態では、結合基は、平らな不等軸粒子の形成を確実にする。この方法のさらに別の実施形態では、平らな不等軸粒子は、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。この方法の1実施形態では、不等軸粒子は、鎖、針、カラム、またはこれらの任意の組合せを含むリストから選択された形を有する。この方法の別の実施形態では、段階(b)がさらに、結合部位を介して不等軸粒子を結合する工程を含み、それによって、Dp−Ap型の供与体−受容体結合が形成される(但し、Dpはプロトンの供与体であり、Apはプロトンの受容体である)。この方法のさらに別の実施形態では、段階(b)がさらに、強力なおよび弱い非共有化学結合を介した結合基により、不等軸粒子から3次元網状構造を形成する工程をさらに含み、前記強力な非共有化学結合型は、好ましくは配位結合、イオン結合、またはイオン−双極子相互作用、多重H結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択され、前記弱い非共有化学結合型は、好ましくは単一H結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。開示された方法の1実施形態では、段階(a)がさらに、隣接する複素環式分子系間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を形成する工程を含み、前記超分子は、結合部位により結合される。開示された方法の別の実施形態では、段階(a)がさらに、隣接する複素環式分子系間でのπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子を形成する工程を含み、前記超分子は、結合基により結合されている。開示された方法の1実施形態では、カラム状超分子が基材平面内に配列される。開示された方法の別の実施形態では、カラム状超分子の長軸が基材平面に対して垂直に向けられている。開示された方法のさらに別の実施形態では、スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンを含むリストから選択され、好ましくはスティッカは、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物を含むリストから選択される。開示された方法の1実施形態では、適用された液体層のアライメントが、機械的動作を介して行われる。これは、ナイフ、円筒状ワイパ、平板(適用された層表面に平行に、またはこの表面に対してある角度をなして配向される)、スロット・ダイ、または任意のその他のアライメント装置を含む、様々なタイプの1つまたは複数のアライメント装置の指向的機械運動によって実現される。開示された方法の別の実施形態では、堆積された液体層への機械的動作は、スロット・ダイ機械、押出し機械、または成型機械を使用することによって行われる。この方法のさらに別の実施形態では、押出し中の反応混合物の流体力学的流れの速度は、弱い結合の破壊によって前記混合物の粘度の低下をもたらす。開示された方法の1実施形態では、適用された層への外部アライメント動作は、層上の少なくとも1つのアライメント・ツールの指向的機械的並進によって行われ、基材表面からアライメント・ツールの縁部または平面までの距離は、所望のフィルム厚が得られるように設定される。この方法の別の実施形態では、アライメント・ツールは加熱される。開示された方法の1実施形態では、反応混合物中での複素環式分子系、結合基、およびスティッカの濃度は、反応混合物のチキソトロピーが得られるように選択される。
【0051】
増大した機械的強度および改善された物理的特性、特に高温高湿の条件下での安定性は、複素環式分子系および結合基と相互に作用することが可能な無機塩および水溶性有機化合物で、フィルムを処理することによって得ることができる。開示された工程による後続の好ましい追加の段階は、層を不溶性形態に変換するために、無機塩の水溶液で、非共有ポリマー材料により得られた固体層を処理することである。この目的のために、例えば、濃度が5から30%の範囲にあり、最適な範囲は10〜20%にある塩化バリウム(BaCl2)の溶液を使用することが可能である。この処理中に、Ba2+イオンはNH4+イオンに置き換えられ、不溶性の有機硫酸バリウムが形成される。フィルムの細孔および構造欠陥に部分的に浸透する可能性のある未反応の硫酸バリウムを、引き続き水で洗浄することによって除去する。次いでフィルムは、室温または20から70℃の範囲の高温の空気中で、その温度に応じて最長約20分間乾燥させることが好ましい。得られる異方性ポリマー・フィルムは未処理のフィルムに比べ、環境要因に対する高い安定性、改善された機械的性質、およびより良好な光学特性を有する。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態は、異方性ポリマー・フィルムの不溶性を確実にするために、固体層の追加の処理をさらに含む、前記フィルムを得るための方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、コーティングがゲルを使用して作製される方法を提供する。この方法のさらに別の実施形態では、コーティングが粘性液相を使用して作製される。開示された方法の1実施形態では、溶媒が水である。開示された方法の1実施形態では、溶媒は、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、メタノール、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ピリジン、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、酢酸、エタノール、塩化メチレン、またはこれらの組合せを含むリストから選択される。この方法の1実施形態では、溶媒の量は、流体力学的流れを用いて液体層を適用するのに必要な反応混合物の粘度を提供する。この方法のさらに別の実施形態では、反応混合物の粘度は、2Pa・sを超過しない。この方法の別の実施形態では、不等軸粒子は1μm以上の長さ寸法を有する。
【0053】
本発明をより容易に理解できるようにするために、本発明の例示を目的とするものであるが範囲を限定するものではない下記の図を参照されたい。
図1は、本発明による異方性フィルム用の線状ポリマー鎖の、いくつかの可能な実施形態を示す。具体的には、鎖は、酸結合基(A11およびA21)間の非共有化学結合の形成を介して、互いに反対に位置付けられた2個の結合基を有する同じ種類の複素環式分子系(Het1)から、図1aに示すように形成することができ、このとき2個の分子ストッパ基(Sp)が、ポリマー鎖がその両端からの伸張を終結させている。この実施形態では、重合度nは、成長しているポリマー鎖と反応混合物との間の動的平衡に依存する。この平衡の状態は、温度、ストッパおよび複素環式分子系の濃度、圧力、および反応混合物の何らかのその他のパラメータによって決定される。重合度は、ストッパの濃度が低下すると共に上昇する。しかし、ストッパの濃度がゼロになりまたは無くなる傾向がある場合、重合度を制限するその他のメカニズムが動作し始める。約1μmの鎖長で前述の動的平衡に対応したストッパ濃度を有する反応混合物を使用することが好都合である。別の実施形態では(図1b)、線状ポリマー鎖は異なる2種類の複素環式分子系(Het1およびHet2)から形成され、それらはそれぞれ互いに反対に位置づけられ、かつそれらの基(A11−A12、A22−A11、およびA21−A12)の間の相互作用によって結合された2個の酸結合基を有している。カルボキシ基(−COOH)の場合、これらの接触は、1つのカルボキシ基のヒドロキシ基OHと別の基の酸素イオンとの間のH結合である。本発明の別の実施形態は、酸(A11)および塩基(B11)結合基間の相互作用によって結合された複素環式分子系から形成された線状ポリマー鎖を用いる(図1c)。さらに別の実施形態では(図1d)、線状ポリマー鎖は、スティッカおよび酸結合基間に形成された配位結合によって形成される。スティッカの役割は、例えば亜鉛陽イオン(Zn2+)によって果たされ、一方、酸結合基はカルボキシ基(COOH)によって表すことができる。さらに別の実施形態は、スティッカ(St)および酸(A11)および塩基(B11)結合基間に配位結合が形成された線状ポリマー鎖によって提供される。
【0054】
図2は、3個の結合基を有するスティッカと2個の結合基を有する複素環式分子系とによって形成された平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の構造を示す。この場合、可能なスティッカはTMA(3個のカルボキシ基を有するベンゼン環を含む)であり、可能な複素環式分子系はビピリジル(Bipy)である。
【0055】
図3は、平らな円盤状複素環式分子系および3個の結合基を含む有機化合物を概略的に示す。結合基の位置は、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される。複素環式分子系は、その平面に対して垂直に向けられた3次対称軸を有する。所与の複素環式分子系は、ヘテロ原子として働く窒素陽イオン(N+)を含有する。その結果、複素環式分子系の平面内に電気的双極子が形成され、この系に親液性が与えられる。反応混合物の調製の過程で、複素環式分子系および結合基は、隣接する複素環式分子系の結合基間の非共有化学結合によって、平らな不等軸粒子(動的粒子)を形成する。基材に反応混合物を適用する間、弱い非共有結合の崩壊のためにこれらの平らな不等軸粒子のある割合が破壊される。この破壊によって反応混合物の粘度が低下し、流体力学的流れによるその配向が促進する。不等軸粒子の平面は、複素環式分子系の親液性により、基材平面(xOy)に平行に配向され、効果的なホメオトロピック配向をもたらす。次いで、不等軸粒子中の崩壊した非共有化学結合が回復する。
【0056】
図4は、平らな不等軸粒子(ポリマー粒子)の、1つの可能な構造を概略的に示す。開示された本発明のこの実施形態では、非共有結合が、1つの複素環式分子系の陽イオン(N+)と隣接する系の陰イオン(O−)との間に形成される。結合基がカルボキシ基によって表される場合、2つのタイプ、即ち(i)ヘテロ原子と酸結合基との間の非共有結合、および(ii)2個の酸結合基間のH結合という弱い結合を組み合わせた、異なる構造の平らな不等軸粒子が可能である。不等軸粒子の寸法は、1μmを超えないことが好ましい。
【0057】
図5は、そのような不等軸粒子の基材上への適用を示し、平らなポリマー粒子が層ごとに堆積されており、基材の平面内で任意に配向されている。図5は、不等軸粒子(3)を含有する反応混合物を適用することによる異方性層(1)の基材(2)上への形成を概略的に示す。これらの不等軸粒子は、堆積の過程で部分的に破壊された非共有化学結合(5)によって結合された複素環式分子系(4)を含む。したがって、開示された方法により作製されたポリマーは、異方性物理的特性を有する。これらの特性は、フィルムの平面内で等方的であり、垂直方向での特性とは異なる。したがって、本発明で開示されたポリマー・フィルムは、異方性導電率、異方性機械的特性、電磁放射線の異方的吸収、異方性磁化率、およびその他の異方性物理的特性を有することができる。
【0058】
図6は、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される4個の結合基を有する円盤状複素環式分子系を含む分子系を概略的に示す。所与の複素環式分子系は、その平面に対して垂直に向けられた4次対称軸を有する。1実施形態では、この分子系は親液性を有する。反応混合物の調製中、複素環式分子系は、隣接する系の結合基間の非共有結合によって、平らな不等軸粒子を形成する。等方的反応混合物が基材上に適用される場合、前記不等軸粒子は、弱い非共有結合の崩壊により部分的に破壊される。複素環式分子系の平面は、複素環式分子系の親液性により、基材平面(xOy)に平行に配向され、効果的なホメオトロピック配向をもたらす。次いで平らな等軸粒子は、複素環式分子系の結合基の非共有側方相互作用によって回復する。
【0059】
図7は、平らな不等軸粒子の断片を示す。図からわかるように、結合基は、大部分が不等軸粒子の平面内に配向されている。本発明の1つの可能な実施形態では、これらの結合基はH結合を形成する。開示された本発明により製作された、そのような構造を有するポリマー・フィルムは、異方性物理的特性を有する。
【0060】
図8は、円盤状複素環式分子系と、負電荷−δを保持する酸素(O−δ)によって示される2個の結合基を含有する有機化合物を概略的に示す。1実施形態では、これら分子系は疎液性であり、反応混合物中でカラム状超分子(または分子積層体)の構成を有する不等軸粒子を形成する。反応混合物が、図9に示すように基材上に適用される場合、前記超分子(6)は、コーティング方向(Ox)に垂直な平面および基材(2)の平面に垂直な平面に配向する。隣接する複素環式分子系の結合基は、線状ポリマー鎖(7)を形成し、その大部分はOy方向に配向している。図9に示される、本発明による異方性フィルムの実施形態では、結合基が、Oy方向に配列されたH結合を形成する。
【0061】
図10は、疎液性を保有するリボン状複素環式分子系と、負電荷−δを保持する酸素によって示される2個の末端結合基とを含む有機化合物を、概略的に示す。複素環式分子系の縦方向のサイズ(荷電酸素間の距離)は、横方向のサイズを超過する。反応混合物では、そのような分子系が、図11に示されるカラム状超分子(または分子積層体)を形成する。本発明の1実施形態では、超分子の長さが約1μmである。反応混合物が、押出しなどの採用された方法のいずれかによって基材(2)上に適用される場合、前記超分子(6)は、コーティング方向(Ox)に垂直な平面および基材(2)の平面に垂直な平面に沿って配向される。図11は、線状ポリマー鎖(7)がOy方向に配向された場合を示す。所与の実施形態では、これらの鎖は、近接する超分子の隣接複素環式分子系に属する結合基の間のH結合によって形成される。これらの結合基、したがってH結合は、大部分がOy方向に配向している。1実施形態では、複素環式分子系がカルボキシル結合基を含有し、前記H結合は、1つのカルボキシ基のヒドロキシ基OHと、隣接する基の酸素イオンとの間で形成される。H結合の主にOy方向の配向により、これらの結合はさらに、この方向での所与のポリマー・フィルムの異方性物理的特性に寄与する。基材上に位置する近接ポリマー鎖は、近接する超分子に関わる隣接複素環式分子系の間のπ−π相互作用によって結合される。この相互作用は弱いため、Ox方向でのポリマー・フィルムの物理的特性は、OyおよびOz方向の場合と異なることになる。したがって、本発明で開示されるポリマー・フィルムは、等方性物理的特性(電導率、機械的強度、電磁放射線の吸収、磁化率など)を有することができ、これらは3軸(Ox、Oy、およびOz)に沿って著しく異なる。
【0062】
本発明の別の実施形態では、異方性ポリマー・フィルムは、互いに反対に位置付けられた2個の結合基を有するとともに(図12参照)長いリボン状の構成を示し、親液性を有し、かつ2個の末端結合基を有する複素環式分子系を含有する有機化合物をベースとする。反応混合物中で、そのような分子系は、図13に示されるような長手方向に結合基を備えた線状ポリマー鎖の構成を有する等軸粒子を形成する。反応混合物を、例えば押出しによって基材(2)上に適用する場合、前記線状ポリマー鎖(7)、したがって結合基は、コーティング方向(Ox)に沿って配向する。図13は、ポリマー・フィルムが、H結合を形成することが可能な結合基を有する線状鎖(7)からなる1実施形態を概略的に示す。複素環式分子系の親液性により、その平面は、基材(xOy平面)に対して平行に配向する。この実施形態によるポリマー・フィルムは異方性であり、その物理的特性は、3軸(Ox、Oy、およびOz)に沿って実質的に異なっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、非共有結合したポリマー材料の異方性層とからなり、
該異方性層は一般組成(I)
【数1】
(ここで、
Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、
Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、
iは、1からKまでの範囲内の整数であり、
P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、
Aは、分子結合基であり、
nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、
Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN −NH2、−NHCOCH3、および−CONH2からなるリストからの置換基であり、
zは、0、1、2、3、または4であり、
Stは、スティッカとして働く分子基であり、
Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、
Spは、ストッパとして働く分子基であり、
Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、かつ、
前記結合基は、ポリマー・フィルムの異方性光学特性が確実になるように大部分が配向されている)
の混合物からなる異方性ポリマー・フィルム。
【請求項2】
前記異方性層はカスケード重合法によって生成される、請求項1に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項3】
前記結合基の少なくとも1個が酸結合基である、請求項1または2に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1個の酸結合基が、カルボキシル(COO−)、スルホン(SO3−)、およびホスホン(HPO3−およびPO32−)基と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項3に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項5】
前記結合基の少なくとも1個が塩基結合基である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1個の塩基結合基が、NHR、NR2、CONHCONH2、CONH2、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、基Rが、水素、アルキル、およびアリールからなるリストから選択される、請求項5に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項7】
アルキル基が、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nが1から23に等しい)を有する、請求項6に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項8】
アリール基が、フェニル、ベンジル、およびナフチル基からなるリストから選択される、請求項6に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項9】
アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基からなるリストから選択される、請求項6または7に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項10】
少なくとも1個の前記結合基が相補基である、請求項1、2、3、または5のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項11】
分子結合基Aが異方的に分極可能である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項12】
基Bが、水または水混和性溶媒中での複素環式分子系の溶解性を与えるとともに、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとからなるリストから独立に選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項13】
基Bが、有機溶媒中でも複素環式分子系の溶解性を与えるとともに、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せからなるリストから独立に選択され、但し、R2およびR3が、水素、アルキル、およびアリールから選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項14】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項15】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が結合部位として働き、かつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択されるヘテロ原子からなる、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項16】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類の大部分は平らである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項17】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項16に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項18】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項19】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項20】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が3個以上の結合基を有する、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項21】
複素環式分子系が、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸(但し、kは3以上の数)を有する、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項22】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、ピラジンまたは/およびイミダゾール環からなるとともに、構造1〜5からなる群のうち一つの一般構造式を有する、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表1】
【請求項23】
複素環式分子系が、水素結合を形成することが可能なイミダゾールまたは/およびベンズイミダゾール環からなるオリゴマーである、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項24】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造6〜15のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、数nは1から20までの範囲内にある)を有するイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環からなる、請求項23に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表2】
【請求項25】
複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項26】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造16〜21のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するテトラピロール系大環状分子からなる、請求項25に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表3】
【請求項27】
複素環式分子系がリーレン断片からなる、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項28】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造22〜39のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するリーレン断片からなる、請求項27に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表4】
【請求項29】
有機化合物がオリゴフェニル誘導体である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項30】
オリゴフェニル誘導体が、構造40から46の1つに該当する一般構造式を有する、請求項29に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表5】
【請求項31】
前記結合基を介して複素環式分子系間に形成された強力な非共有化学結合によって形成された不等軸粒子をさらに含む、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項32】
前記不等軸粒子が、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する、請求項31に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項33】
前記結合基が平らな不等軸粒子の形成を確実にする、請求項31または32に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項34】
前記不等軸粒子が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項31乃至33のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項35】
前記不等軸粒子が、鎖、針、カラム、またはこれらの組合せからなるリストから選択された構成を有する、請求項31または32に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項36】
不等軸粒子が、Dp−Ap型の供与体−受容体結合(但し、Dpはプロトン供与体であり、Apはプロトン受容体である)を形成する結合部位で結合される、請求項31乃至35のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項37】
前記不等軸粒子間に、結合基を介する強力なおよび弱い非共有化学結合によって形成された3次元網状構造をさらに含む、請求項31乃至36のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項38】
前記強力な非共有化学結合のタイプが、配位結合、イオン結合、イオン−双極子相互作用、多重水素結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項31乃至37のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項39】
前記弱い非共有化学結合のタイプが、単一水素結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項37または38に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項40】
隣接する複素環式分子系の間にπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子をさらに含むとともに、該超分子は結合部位で結合されている、請求項1乃至39のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項41】
隣接する複素環式分子系の間にπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子をさらに含むとともに、該超分子は結合基で結合されている、請求項1乃至40のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項42】
前記カラム状超分子が基材平面内に配列されている、請求項40または41に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項43】
前記カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向けられている、請求項40または41に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項44】
スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンからなるリストから選択される、請求項1乃至43のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項45】
前記スティッカが、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物からなるリストから選択される、請求項44に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項46】
前記異方性層が異方性導電率を有する、請求項1乃至45のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項47】
前記異方性層が異方性機械的性質を有する、請求項1乃至46のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項48】
前記異方性層が異方性磁化率を有する、請求項1乃至47のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項49】
前記異方性層が、一般に、可視スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項50】
前記異方性層が、一般に、可視スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である、請請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項51】
前記異方性層が、可視スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項52】
前記異方性層が、一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項53】
前記異方性層が、一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項54】
前記異方性層が、紫外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項55】
前記異方性層が、一般に、近赤外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至54のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項56】
前記異方性層が、近赤外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至54のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項57】
基材がポリマーで作製される、請求項1乃至56のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項58】
基材がガラスで作製される、請求項1乃至56のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項59】
異方性層が基材の表面に適用され、基材の裏面は反射防止または防眩膜で被覆される、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項60】
異方性層が基材の表面に適用されており、基材の裏面に適用された反射防止膜をさらに含む、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項61】
基材が鏡面または拡散性反射鏡である、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項62】
基材が反射性偏光子である、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項63】
基材の表面に適用された平坦化層をさらに含む、請求項1乃至62のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項64】
(i)基材を作製する段階と、
(ii)(a)一般組成(II)の反応混合物を調製する工程
【数2】
(ここで、
Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、
Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、
iは、1からKまでの範囲内の整数であり、
P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、
Aは、分子結合基であり、
nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、
Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN、−NH2、−NHCOCH3、および−CONH2からなるリストからの置換基であり、
zは、0、1、2、3、または4であり、
Stは、スティッカとして働く分子基であり、
Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、
Spは、ストッパとして働く分子基であり、
Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、
Solは溶媒である)、
(b)基材上に反応混合物の液体層を付着させる工程、および
(c)乾燥させる工程
からなるカスケード重合法を用いて、基材上に非共有的に結合したポリマー材料の固体層を形成する段階と
からなる、異方性ポリマー・フィルムを製造する方法。
【請求項65】
前記結合基の大部分のアライメントを行うために、堆積された液体層に外部アライメント動作を適用する段階をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
堆積およびアライメントの段階が同時に実施される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記分子結合基Aが異方的に分極可能である、請求項64または65に記載の方法。
【請求項68】
前記結合基の少なくとも1個が酸結合基である、請求項64乃至67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1個の酸結合基が、カルボキシル(COO−)、スルホン(SO3−)、およびホスホン(PO32−およびHPO3−)基と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記結合基の少なくとも1個が塩基結合基である、請求項64乃至69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1個の塩基結合基が、CONHCONH2、NHR、NR2、CONH2、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、基Rは、水素、アルキル、およびアリールからなるリストから選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
アルキル基が、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)を有する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
アリール基が、フェニル、ベンジル、およびナフチル基からなるリストから選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基からなるリストから選択される、請求項71または72に記載の方法。
【請求項75】
前記結合基の少なくとも1個が相補基である、請求項67、68、または70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
基Bが、水または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらすとともに、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項64乃至75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
基Bが、有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらすとともに、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、R2およびR3は、水素、アルキル、およびアリールから選択される、請求項64乃至75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している、請求項64乃至77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択されるヘテロ原子を含有する、請求項64乃至78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類がほぼ平らである、請求項64乃至79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する、請求項64乃至81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する、請求項64乃至81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、3個以上の結合基を有する、請求項64乃至83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
複素環式分子系が、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸(但し、kは3以上の数)を有する、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、ピラジンまたは/およびイミダゾール環からなり、構造1〜5からなる群からの一つの一般構造式を有する、請求項64乃至85のいずれか1項に記載の方法。
【表6】
【請求項87】
複素環式分子系が、水素結合を形成することが可能なイミダゾールまたは/およびベンズイミダゾール環からなるオリゴマーである、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、構造6〜15のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、nは1から20までの範囲の数)を有するイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環からなる、請求項87に記載の方法。
【表7】
【請求項89】
複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、構造16〜21のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するテトラピロール系大環状分子からなる、請求項89に記載の方法。
【表8】
【請求項91】
複素環式分子系がリーレン断片からなる、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造22〜39のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するリーレン断片からなる、請求項91に記載の方法。
【表9】
【請求項93】
有機化合物がオリゴフェニル誘導体である、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
オリゴフェニル誘導体が、構造40から46の1つに該当する一般構造式を有する、請求項93に記載の方法。
【表10】
【請求項95】
段階(a)が、強力な非共有化学結合を介した結合基により、有機分子から不等軸粒子を形成する工程をさらに含む、請求項64乃至94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記結合基の少なくとも1個が、反応混合物に対する不等軸粒子の不安定な平衡をもたらす、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記結合基が平らな不等軸粒子の形成をもたらす、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記不等軸粒子が、鎖、針、プレート、カラム、薄層、およびリボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された構成を有する、請求項95または96に記載の方法。
【請求項99】
段階(b)が、結合部位を介した不等軸粒子の結合をさらに含み、Dp−Ap型の供与体−受容体結合(但し、Dpはプロトンの供与体であり、Apはプロトンの受容体である)が形成される、請求項95乃至98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
段階(b)が、強力なおよび弱い非共有化学結合を介した結合基により、不等軸粒子から3次元網状構造を形成する工程をさらに含む、請求項95乃至99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記強力な非共有化学結合のタイプが、配位結合、イオン結合、イオン−双極子相互作用、多重水素結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項95乃至100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記弱い非共有化学結合のタイプが、単一水素結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
段階(a)が、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子の形成をさらに含み、かつ、該超分子は結合部位で結合される、請求項64乃至102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
段階(a)が、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子の形成をさらに含み、該超分子は結合基で結合される、請求項64乃至102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
カラム状超分子が基材平面内で配列される、請求項103または104に記載の方法。
【請求項106】
カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向いている、請求項103または104に記載の方法。
【請求項107】
スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンからなるリストから選択される、請求項64乃至106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
スティッカが、H+、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、およびCu2+からなるリストから選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
堆積された液体層への外部アライメント動作が、機械的動作を介して行われる、請求項65乃至108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
堆積された液体層への機械的動作が、スロット・ダイ機械、押出し機械、および成型機械からなるリストから選択された装置を使用して行われる、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
押出し中の反応混合物の流体力学的流れの速度が、該混合物の粘度の低下をもたらす、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
堆積された層への外部アライメント動作が、少なくとも1つのアライメント・ツールの層上での機械的並進を使用して行われ、基材表面からアライメント・ツールの縁部または平面までの距離は、所望のフィルム厚が得られるように設定される、請求項65乃至111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記アライメント・ツールが加熱される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
反応混合物中の、複素環式分子系、結合基、およびスティッカの濃度が、反応混合物のチキソトロピーをもたらすように選択される、請求項64乃至113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
異方性ポリマー・フィルムの不溶性を確実にするための、固体層の特殊な処理をさらに含む、請求項64から114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
適用された反応混合物がゲルの形をとる、請求項64乃至115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
適用された反応混合物が粘性のある液体の形をとる、請求項64乃至115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
溶媒が水である、請求項64乃至117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
溶媒が、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、メタノール、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ピリジン、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、酢酸、エタノール、塩化メチレン、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項64乃至117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
溶媒の量が、流体力学的流れを用いて液体層を適用するために必要な粘度を反応混合物にもたらすように制御される、請求項64乃至119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
反応混合物の粘度が2Pa・sを超過しない、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記不等軸粒子が1μm以上の長さ寸法を有する、請求項95乃至121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
基材と、非共有結合したポリマー材料の異方性層とからなり、
該異方性層は一般組成(I)
【数1】
(ここで、
Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、
Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、
iは、1からKまでの範囲内の整数であり、
P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、
Aは、分子結合基であり、
nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、
Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN −NH2、−NHCOCH3、および−CONH2からなるリストからの置換基であり、
zは、0、1、2、3、または4であり、
Stは、スティッカとして働く分子基であり、
Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、
Spは、ストッパとして働く分子基であり、
Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、かつ、
前記結合基は、ポリマー・フィルムの異方性光学特性が確実になるように大部分が配向されている)
の混合物からなる異方性ポリマー・フィルム。
【請求項2】
前記異方性層はカスケード重合法によって生成される、請求項1に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項3】
前記結合基の少なくとも1個が酸結合基である、請求項1または2に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1個の酸結合基が、カルボキシル(COO−)、スルホン(SO3−)、およびホスホン(HPO3−およびPO32−)基と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項3に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項5】
前記結合基の少なくとも1個が塩基結合基である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項6】
前記少なくとも1個の塩基結合基が、NHR、NR2、CONHCONH2、CONH2、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、基Rが、水素、アルキル、およびアリールからなるリストから選択される、請求項5に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項7】
アルキル基が、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nが1から23に等しい)を有する、請求項6に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項8】
アリール基が、フェニル、ベンジル、およびナフチル基からなるリストから選択される、請求項6に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項9】
アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基からなるリストから選択される、請求項6または7に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項10】
少なくとも1個の前記結合基が相補基である、請求項1、2、3、または5のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項11】
分子結合基Aが異方的に分極可能である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項12】
基Bが、水または水混和性溶媒中での複素環式分子系の溶解性を与えるとともに、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとからなるリストから独立に選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項13】
基Bが、有機溶媒中でも複素環式分子系の溶解性を与えるとともに、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せからなるリストから独立に選択され、但し、R2およびR3が、水素、アルキル、およびアリールから選択される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項14】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項15】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が結合部位として働き、かつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択されるヘテロ原子からなる、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項16】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類の大部分は平らである、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項17】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項16に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項18】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項19】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項20】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が3個以上の結合基を有する、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項21】
複素環式分子系が、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸(但し、kは3以上の数)を有する、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項22】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、ピラジンまたは/およびイミダゾール環からなるとともに、構造1〜5からなる群のうち一つの一般構造式を有する、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表1】
【請求項23】
複素環式分子系が、水素結合を形成することが可能なイミダゾールまたは/およびベンズイミダゾール環からなるオリゴマーである、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項24】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造6〜15のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、数nは1から20までの範囲内にある)を有するイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環からなる、請求項23に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表2】
【請求項25】
複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項26】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造16〜21のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するテトラピロール系大環状分子からなる、請求項25に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表3】
【請求項27】
複素環式分子系がリーレン断片からなる、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項28】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造22〜39のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するリーレン断片からなる、請求項27に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表4】
【請求項29】
有機化合物がオリゴフェニル誘導体である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項30】
オリゴフェニル誘導体が、構造40から46の1つに該当する一般構造式を有する、請求項29に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【表5】
【請求項31】
前記結合基を介して複素環式分子系間に形成された強力な非共有化学結合によって形成された不等軸粒子をさらに含む、請求項1乃至30のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項32】
前記不等軸粒子が、不安定な非共有化学結合を形成することが可能な結合基を含有する、請求項31に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項33】
前記結合基が平らな不等軸粒子の形成を確実にする、請求項31または32に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項34】
前記不等軸粒子が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項31乃至33のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項35】
前記不等軸粒子が、鎖、針、カラム、またはこれらの組合せからなるリストから選択された構成を有する、請求項31または32に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項36】
不等軸粒子が、Dp−Ap型の供与体−受容体結合(但し、Dpはプロトン供与体であり、Apはプロトン受容体である)を形成する結合部位で結合される、請求項31乃至35のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項37】
前記不等軸粒子間に、結合基を介する強力なおよび弱い非共有化学結合によって形成された3次元網状構造をさらに含む、請求項31乃至36のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項38】
前記強力な非共有化学結合のタイプが、配位結合、イオン結合、イオン−双極子相互作用、多重水素結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項31乃至37のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項39】
前記弱い非共有化学結合のタイプが、単一水素結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項37または38に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項40】
隣接する複素環式分子系の間にπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子をさらに含むとともに、該超分子は結合部位で結合されている、請求項1乃至39のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項41】
隣接する複素環式分子系の間にπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子をさらに含むとともに、該超分子は結合基で結合されている、請求項1乃至40のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項42】
前記カラム状超分子が基材平面内に配列されている、請求項40または41に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項43】
前記カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向けられている、請求項40または41に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項44】
スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンからなるリストから選択される、請求項1乃至43のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項45】
前記スティッカが、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、およびこれらの混合物からなるリストから選択される、請求項44に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項46】
前記異方性層が異方性導電率を有する、請求項1乃至45のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項47】
前記異方性層が異方性機械的性質を有する、請求項1乃至46のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項48】
前記異方性層が異方性磁化率を有する、請求項1乃至47のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項49】
前記異方性層が、一般に、可視スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項50】
前記異方性層が、一般に、可視スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である、請請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項51】
前記異方性層が、可視スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至48のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項52】
前記異方性層が、一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項53】
前記異方性層が、一般に、近紫外スペクトル範囲で透明な1軸位相差層である、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項54】
前記異方性層が、紫外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至51のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項55】
前記異方性層が、一般に、近赤外スペクトル範囲で透明な2軸位相差層である、請求項1乃至54のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項56】
前記異方性層が、近赤外スペクトル範囲で異方性光吸収を示す、請求項1乃至54のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項57】
基材がポリマーで作製される、請求項1乃至56のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項58】
基材がガラスで作製される、請求項1乃至56のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項59】
異方性層が基材の表面に適用され、基材の裏面は反射防止または防眩膜で被覆される、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項60】
異方性層が基材の表面に適用されており、基材の裏面に適用された反射防止膜をさらに含む、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項61】
基材が鏡面または拡散性反射鏡である、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項62】
基材が反射性偏光子である、請求項50乃至58のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項63】
基材の表面に適用された平坦化層をさらに含む、請求項1乃至62のいずれか1項に記載の異方性ポリマー・フィルム。
【請求項64】
(i)基材を作製する段階と、
(ii)(a)一般組成(II)の反応混合物を調製する工程
【数2】
(ここで、
Hetiは、i番目の種類の複素環式分子系であり、
Kは、混合物中の異なる種類の複素環式分子系の数であり、かつ1、2、3、4、5、または6に等しく、
iは、1からKまでの範囲内の整数であり、
P1、P2、...、PKは、0から1までの範囲内の実数であり、かつP1+P2+...+PK=1の条件に従い、
Aは、分子結合基であり、
nは、2、3、4、5、6、7、または8であり、
Bは、複素環式分子系の溶解性を確実にする分子基であり、
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8であり、
R1は、−CH3、−C2H5、−NO2、−Cl、−Br、−F、−CF3、−CN、−CNS、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3、−OCN、−SCN、−NH2、−NHCOCH3、および−CONH2からなるリストからの置換基であり、
zは、0、1、2、3、または4であり、
Stは、スティッカとして働く分子基であり、
Pxは、0から1までの範囲内の実数であり、
Spは、ストッパとして働く分子基であり、
Pyは、0から1までの範囲内の実数であり、
Solは溶媒である)、
(b)基材上に反応混合物の液体層を付着させる工程、および
(c)乾燥させる工程
からなるカスケード重合法を用いて、基材上に非共有的に結合したポリマー材料の固体層を形成する段階と
からなる、異方性ポリマー・フィルムを製造する方法。
【請求項65】
前記結合基の大部分のアライメントを行うために、堆積された液体層に外部アライメント動作を適用する段階をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
堆積およびアライメントの段階が同時に実施される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記分子結合基Aが異方的に分極可能である、請求項64または65に記載の方法。
【請求項68】
前記結合基の少なくとも1個が酸結合基である、請求項64乃至67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1個の酸結合基が、カルボキシル(COO−)、スルホン(SO3−)、およびホスホン(PO32−およびHPO3−)基と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記結合基の少なくとも1個が塩基結合基である、請求項64乃至69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1個の塩基結合基が、CONHCONH2、NHR、NR2、CONH2、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、基Rは、水素、アルキル、およびアリールからなるリストから選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
アルキル基が、一般式CH3(CH2)n−またはCnH2n+1−(但し、nは1から23に等しい)を有する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
アリール基が、フェニル、ベンジル、およびナフチル基からなるリストから選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、s−ブチル、およびt−ブチル基からなるリストから選択される、請求項71または72に記載の方法。
【請求項75】
前記結合基の少なくとも1個が相補基である、請求項67、68、または70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
基Bが、水または水混和性溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらすとともに、COO−、SO3−、HPO3−、およびPO32−と、これらの任意の組合せとからなるリストから選択される、請求項64乃至75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
基Bが、有機溶媒中で複素環式分子系の溶解性をもたらすとともに、CONHCONH2、CONR2R3、SO2NR2R3、CO2R2、R2、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択され、但し、R2およびR3は、水素、アルキル、およびアリールから選択される、請求項64乃至75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、部分的にまたは完全に共役している、請求項64乃至77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、結合部位として働きかつ窒素、酸素、硫黄、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択されるヘテロ原子を含有する、請求項64乃至78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類がほぼ平らである、請求項64乃至79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、円盤、プレート、薄層、リボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された形を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が親液性を有する、請求項64乃至81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が疎液性を有する、請求項64乃至81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記複素環式分子系の少なくとも1種類が、3個以上の結合基を有する、請求項64乃至83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
複素環式分子系が、複素環式分子系の平面に対して垂直に向けられたk次(Ck)対称軸(但し、kは3以上の数)を有する、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、ピラジンまたは/およびイミダゾール環からなり、構造1〜5からなる群からの一つの一般構造式を有する、請求項64乃至85のいずれか1項に記載の方法。
【表6】
【請求項87】
複素環式分子系が、水素結合を形成することが可能なイミダゾールまたは/およびベンズイミダゾール環からなるオリゴマーである、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、構造6〜15のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、nは1から20までの範囲の数)を有するイミダゾールおよび/またはベンズイミダゾール環からなる、請求項87に記載の方法。
【表7】
【請求項89】
複素環式分子系がテトラピロール系大環状分子である、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であるとともに、構造16〜21のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するテトラピロール系大環状分子からなる、請求項89に記載の方法。
【表8】
【請求項91】
複素環式分子系がリーレン断片からなる、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
複素環式分子系が、ほぼ平面状であり、構造22〜39のいずれか1つまたは複数に該当する一般構造式(但し、Mは金属原子を示しまたは2個のプロトンを示す)を有するリーレン断片からなる、請求項91に記載の方法。
【表9】
【請求項93】
有機化合物がオリゴフェニル誘導体である、請求項64乃至84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
オリゴフェニル誘導体が、構造40から46の1つに該当する一般構造式を有する、請求項93に記載の方法。
【表10】
【請求項95】
段階(a)が、強力な非共有化学結合を介した結合基により、有機分子から不等軸粒子を形成する工程をさらに含む、請求項64乃至94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記結合基の少なくとも1個が、反応混合物に対する不等軸粒子の不安定な平衡をもたらす、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記結合基が平らな不等軸粒子の形成をもたらす、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記不等軸粒子が、鎖、針、プレート、カラム、薄層、およびリボン、またはこれらの任意の組合せからなるリストから選択された構成を有する、請求項95または96に記載の方法。
【請求項99】
段階(b)が、結合部位を介した不等軸粒子の結合をさらに含み、Dp−Ap型の供与体−受容体結合(但し、Dpはプロトンの供与体であり、Apはプロトンの受容体である)が形成される、請求項95乃至98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
段階(b)が、強力なおよび弱い非共有化学結合を介した結合基により、不等軸粒子から3次元網状構造を形成する工程をさらに含む、請求項95乃至99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記強力な非共有化学結合のタイプが、配位結合、イオン結合、イオン−双極子相互作用、多重水素結合、ヘテロ原子を介した相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項95乃至100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記弱い非共有化学結合のタイプが、単一水素結合、双極子−双極子相互作用、陽イオン−π相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、π−π相互作用、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
段階(a)が、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子の形成をさらに含み、かつ、該超分子は結合部位で結合される、請求項64乃至102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
段階(a)が、隣接する複素環式分子系の間のπ−π相互作用を介して形成されたカラム状超分子の形成をさらに含み、該超分子は結合基で結合される、請求項64乃至102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
カラム状超分子が基材平面内で配列される、請求項103または104に記載の方法。
【請求項106】
カラム状超分子の長軸が、基材平面に対して垂直に向いている、請求項103または104に記載の方法。
【請求項107】
スティッカが、水素、塩基、アルカリ金属、遷移金属、白金族金属、および希土類金属のイオンからなるリストから選択される、請求項64乃至106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
スティッカが、H+、NH4+、Na+、K+、Li+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Zr4+、Ce4+、Y3+、Yb3+、Gd3+、Er3+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、およびCu2+からなるリストから選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
堆積された液体層への外部アライメント動作が、機械的動作を介して行われる、請求項65乃至108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
堆積された液体層への機械的動作が、スロット・ダイ機械、押出し機械、および成型機械からなるリストから選択された装置を使用して行われる、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
押出し中の反応混合物の流体力学的流れの速度が、該混合物の粘度の低下をもたらす、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
堆積された層への外部アライメント動作が、少なくとも1つのアライメント・ツールの層上での機械的並進を使用して行われ、基材表面からアライメント・ツールの縁部または平面までの距離は、所望のフィルム厚が得られるように設定される、請求項65乃至111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記アライメント・ツールが加熱される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
反応混合物中の、複素環式分子系、結合基、およびスティッカの濃度が、反応混合物のチキソトロピーをもたらすように選択される、請求項64乃至113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
異方性ポリマー・フィルムの不溶性を確実にするための、固体層の特殊な処理をさらに含む、請求項64から114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
適用された反応混合物がゲルの形をとる、請求項64乃至115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
適用された反応混合物が粘性のある液体の形をとる、請求項64乃至115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
溶媒が水である、請求項64乃至117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
溶媒が、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、メタノール、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ピリジン、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、酢酸、エタノール、塩化メチレン、およびこれらの任意の組合せからなるリストから選択される、請求項64乃至117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
溶媒の量が、流体力学的流れを用いて液体層を適用するために必要な粘度を反応混合物にもたらすように制御される、請求項64乃至119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
反応混合物の粘度が2Pa・sを超過しない、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記不等軸粒子が1μm以上の長さ寸法を有する、請求項95乃至121のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−500622(P2010−500622A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524232(P2009−524232)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003123
【国際公開番号】WO2008/020213
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(508189717)クリスオプティクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003123
【国際公開番号】WO2008/020213
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(508189717)クリスオプティクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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