説明

異方性導電フィルム及びそれを用いた接続構造体の製造方法

【課題】高い接続信頼性を得ることができる異方性導電フィルム及びそれを用いた接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリブタジエン粒子と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを配合した絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなり、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sである異方性導電フィルム2をガラス基板1の端子電極上に配置し、異方性導電フィルム2上に、フレキシブルプリント基板3の端子電極を配置し、当該フレキシブルプリント基板側から加熱ツールを用いて押圧し、端子電極間を電気的に接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された異方性導電フィルム及びそれを用いた接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板とフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)とを接合するFOG(Film on Glass)接合が実施されている(例えば、特許文献1参照。)。この実装方法は、ガラス基板の接続端子とフレキシブルプリント基板の接続端子とを異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して対向させ、加熱ツールを用いて異方性導電フィルムを加熱硬化しつつ接続端子を押圧することにより、両接続端子を電気的に接続するものである。
【0003】
【特許文献1】特許第3477367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレキシブルプリント基板は、ガラス基板に比べて線膨張係数が大きいため、高い実装精度で接合させることが困難であった。例えば、フレキシブルプリント基板に一般的に用いられるポリイミド樹脂の線膨張係数(10〜40×10−6/℃)は、ガラスの線膨張係数(約8.5×10−6/℃)よりも大きく、フレキシブルプリント基板の拡張のし易さが、接続信頼性を損ねていた。
【0005】
具体的には、熱圧着の際、フレキシブルプリント基板に加熱ヘッドを早い速度で接触・押圧させると、配線パターン間隔が十分に拡張する前に異方性導電フィルムによる硬化反応が開始してしまい、配線パターン間隔がずれた状態で接合されてしまう。一方、フレキシブルプリント基板に加熱ツールを遅い速度で接触・押圧させると、異方性導電フィルムが流動する前に硬化してしまい、接続端子間が開いた状態で接合されてしまう。
【0006】
また、熱圧着の際、異方性導電フィルムとガラス基板との界面部分や異方性導電フィルムとフレキシブルプリント基板との界面部分に生じる内部応力が接着強度を低下させていた。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高い接続信頼性を得ることができる異方性導電フィルム及びそれを用いた接続構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者は、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、応力緩和剤としてポリブタジエン粒子を添加し、最低溶融粘度を300〜1000Pa・sとすることにより、高い接続信頼性が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明に係る異方性導電性フィルムは、ポリブタジエン粒子と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを配合した絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなり、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る接続構造体の製造方法は、所定間隔で端子電極が形成されたガラス配線板と、当該所定間隔よりも狭い間隔で端子電極が形成されたフレキシブルプリント配線板とを、異方性導電フィルムを用いて接続する接続構造体の製造方法において、ポリブタジエン粒子と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを配合した絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなり、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sである異方性導電フィルムをガラス基板の端子電極上に配置する配置工程と、上記異方性導電フィルム上に、フレキシブルプリント基板の端子電極を配置し、当該フレキシブルプリント基板側から加熱ツールを用いて押圧し、端子電極間を電気的に接続させる接続工程とを有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る接続構造体は、ガラス配線板の端子電極とフレキシブルプリント配線板の端子電極とが異方性導電フィルムを介して接合されてなる接続構造体において、上記異方性導電フィルムの最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異方性導電フィルムの最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることにより、熱圧着の際の流動性が最適となる。また、ポリブタジエン粒子が大きく弾性変形することによって、異方性導電フィルムとガラス基板との界面部分や異方性導電フィルムとフレキシブルプリント基板との界面部分に生じる内部応力が吸収されるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。
【0014】
本発明の具体例として示す異方性導電フィルムは、絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなるものである。
【0015】
導電性粒子は、例えば、ニッケル、金、銅等の金属粒子、樹脂粒子に金めっき等を施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したもの等を用いることができる。ここで、導電性粒子の平均粒径は、導通信頼性の観点から、1〜20μmとすることが好ましい。また、絶縁性接着剤樹中への導電粒子の分散量は、導通信頼性及び絶縁信頼性の観点から、2〜50重量%とすることが好ましい。
【0016】
絶縁性接着樹脂は、応力緩和剤と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを、溶剤に溶解して得られる。
【0017】
応力緩和剤としては、ゴム系の弾性材料であるポリブタジエン粒子を用いる。ポリブタジエンからなるブタジエンゴム(BR)は、アクリルゴム(ACR)、ニトリルゴム(NBR)等に比べて反発弾性が高いため、内部応力を多く吸収することができる。また、硬化阻害を起こさないため、高い接続信頼性を与えることができる。
【0018】
ポリブタジエン粒子の弾性率は、硬化後の絶縁性接着樹脂の弾性率より小さいことが好ましい。具体的には、弾性率が1×10〜1×1010dyn/cmであることが好ましい。応力吸収粒子の弾性率が1×10dyn/cmより小さいと、保持力が低下するという不都合があり、1×1010dyn/cmより大きいと、絶縁性接着樹脂の内部応力を十分に小さくすることができないという不都合がある。
【0019】
また、ポリブタジエン粒子の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)おける発熱ピーク温度は、80〜120℃であることが好ましい。ポリブタジエン粒子の発熱ピーク温度が80℃より小さいと、異方性導電フィルムの製品ライフが低下するという不都合があり、120℃より大きいと、硬化不良が発生するという不都合がある。
【0020】
また、導電性粒子と接続電極間の電気的な接続を十分に確保するため、ポリブタジエン粒子の平均粒径は、導電性粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。具体的には、ポリブタジエン粒子の平均粒径が0.01〜0.5μmであることが好ましい。ポリブタジエン粒子の平均粒径が0.01μmより小さいと、応力を吸収しきれないという不都合があり、0.5μmより大きいと、導電性粒子と接続電極間の電気的な接続が低下する虞がある。
【0021】
また、ポリブタジエン粒子は、カチオン重合性樹脂70重量部に対して5〜35重量部配合されていることが好ましい。配合割合が5重量部よりも小さいと、バインダーに生ずる内部応力を十分に小さくすることができず、35重量部よりも大きいと、フィルムを形成しにくく、また耐熱性が低下するという不都合がある。
【0022】
カチオン重合性樹脂としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等の1官能性エポキシ化合物;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ヒダントインエポキシ等の含複素環エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール−ポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂;芳香族、脂肪族もしくは脂環式のカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;o−アリル−フェノールノボラック化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ビスフェノールAのそれぞれの水酸基のオルト位にアリル基を有するジアリルビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;シッフ系化合物、スチルベン化合物およびアゾベンゼン化合物のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキサンとエピクロルヒドリンとの反応生成物等の含フッ素脂環式、芳香環式エポキシ樹脂等を用いることができる。この中でも、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を単独又は混合して用いることが好ましい。
【0023】
また、カチオン重合性樹脂は、フェノキシ樹脂とエポキシ重合性樹脂とを混合したものであることが好ましい。ここで、フェノキシ樹脂の分子量は、フィルムを形成する観点から、20000〜60000であることが好ましい。フェノキシ樹脂の分子量が20000より小さいと、流動性が大きくなってしまい、フィルム形成性が悪くなる。また、60000より大きいと、流動性不足が生じてしまう。
【0024】
また、エポキシ樹脂は、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。これにより、最適な流動性を有するフィルムを形成することができる。
【0025】
カチオン硬化剤は、カチオン種がエポキシ樹脂末端のエポキシ基を開環させ、エポキシ樹脂同士を自己架橋させる。このようなカチオン硬化剤としては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩等のオニウム塩を挙げることができる。特に、芳香族スルホニウム塩は、低温での反応性に優れ、ポットライフが長いため、カチオン硬化剤として好適である。
【0026】
また、溶剤としては、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。
【0027】
続いて、異方性導電フィルムの作成方法について説明する。先ず、所定のカチオン性樹脂を溶剤に溶解させ、この溶液にポリブタジエン粒子とカチオン硬化剤とを所定量加えて混合する。ポリブタジエン粒子等が混合された溶液に導電性粒子を加えて分散させ、バインダーを調整する。このバインダーを例えばポリエステルフィルム等の剥離フィルム上にコーティングし、乾燥後、カバーフィルムをラミネートして異方性導電フィルムを得る。
【0028】
この異方性導電フィルムは、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることが好ましい。最低溶融粘度が300Pa・s以下であると、絶縁性接着樹脂であるバインダーが流動して接続部分に保持されず、接続強度が悪くなる。また、最低溶融粘度が1000Pa・s以上であると、バインダーの流動性が悪く、接続厚みが導電性粒子の直径よりも大きくなり、接続信頼性が悪くなる。また、最低溶融粘度は、90〜110℃の間で到達することが好ましい。到達温度が90℃より小さいと、流動性が大き過ぎてしまい、110℃よりも大きいと、流動性が不足してしまう。
【0029】
このような異方性導電フィルムによれば、150〜200℃、4〜6秒の熱圧着条件においてガラス基板とフレキシブル基板とを高い信頼性で接続することができる。
【0030】
次に、接続構造体の製造方法について説明する。なお、接続構造体は、ガラス基板とフレキシブル基板とが上述した異方性導電フィルムによって接続されたものである。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態におけるフレキシブルプリント基板とガラス基板とを接合する方法を説明するための上面図である。図1(A)に示すように、ガラス基板1には所定間隔で端子電極が形成されており、フレキシブルプリント基板3にはガラス基板1の所定間隔よりも狭い間隔で端子電極が形成されている。そして、上述した異方性導電フィルム2をガラス基板1の端子電極上に配置し、次いで異方性導電フィルム2上に、フレキシブルプリント基板3の端子電極を配置し、フレキシブルプリント基板3側から加熱ツールを用いて押圧することにより、端子電極間が電気的に接続される。この際、フレキシブルプリント基板3が熱により拡張し、図1(B)に示すように、フレキシブルプリント基板3の端子電極の間隔がガラス基板1の端子電極の間隔とほぼ等しくなる。
【0032】
本実施の形態においては、加熱ツールの押し込み速度1〜50mm/secとし、150〜200℃、4〜6secの接続条件で、相対峙する電極を加圧方向に電気的に接続することが好ましい。押し込み速度が1mm/secよりも小さいと、バインダーを排除しきれずに導通不良が生じる。
【0033】
このように最低溶融粘度が300〜1000Pa・sである異方性導電フィルムを用いることにより、熱圧着の際の流動性が最適となる。また、ポリブタジエン粒子を配合することにより、接続界面部分に生じる内部応力が吸収されるため、高い接続信頼性を有する接続構造体を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例について、比較例を参照して詳細に説明する。まず、実施例1〜7及び比較例1〜5における異方性導電フィルムの各サンプルを表1に示すように作成した。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例1)
カチオン重合性樹脂として、平均分子量30000のBis−A/Bis−F混合型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER−4210)40重量部、当量190の液状Bis−A型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 YL980)20重量部、及び当量160の液状Bis−F型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER806)10重量部とを混合して用いた。また、応力緩和剤として、ポリブタジエン(レジナス化成社製 RKB)からなる平均粒径0.5μmのブタジエンゴム(BR)粒子5重量部を用いた。また、潜在性硬化剤として、スルホニウム系カチオン硬化剤(三新化学工業社製 SI−60L)5重量部を用いた。そして、カチオン重合性樹脂と、応力緩和剤と、潜在性硬化剤とを、溶剤トルエンに溶解して絶縁性接着樹脂溶液を調整した。
【0037】
そして、この絶縁性接着樹脂溶液80重量部に、導電性粒子として、平均粒径0.5μmのベンゾグアナミン粒子にニッケル−金めっきを施したものを5重量部加えてバインダーとした。
【0038】
さらに、このバインダーを剥離用のPETフィルム上に乾燥後の厚みが25μmになるようにコーティングし、異方性導電フィルムを得た。この異方性導電フィルムを幅2mmのスリット状に切断し、実施例1のサンプルとした。
【0039】
(実施例2)
ブタジエンゴム粒子を10重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0040】
(実施例3)
ブタジエンゴム粒子を20重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0041】
(実施例4)
平均分子量30000のBis−A/Bis−F混合型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER−4210)を20重量部、及び平均分子量20000のBis−F型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER−4007P)を20重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例3と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0042】
(実施例5)
スルホニウム系カチオン硬化剤(三新化学工業社製 SI−60L)を8重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例4と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0043】
(実施例6)
平均分子量60000のBis−A/Bis−F混合型フェノキシ樹脂(東都化成社製 YP−50)を30重量部、及び平均分子量20000のBis−F型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER−4007P)を10重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例4と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0044】
(実施例7)
ブタジエンゴム粒子を35重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0045】
(比較例1)
平均分子量60000のBis−A/Bis−F混合型フェノキシ樹脂(東都化成社製 YP−50)を40重量部とし、応力緩和剤を添加せずにバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0046】
(比較例2)
平均分子量20000のBis−F型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 jER−4007P)を40重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0047】
(比較例3)
スルホニウム系カチオン硬化剤(三新化学工業社製 SI−60L)を2重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例4と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0048】
(比較例4)
平均粒径0.5μmのアクリルゴム(ナガセケムテックス社製 SG600LB)を20重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0049】
(比較例5)
平均粒径0.5μmのニトリルゴム(NBR)粒子(日本ゼオン社製 DN009)を20重量部としてバインダー溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法によって異方性導電フィルムのサンプルを作成した。
【0050】
(測定結果)
表2は、上記サンプルの最低溶融粘度、最低溶融粘度に達する温度、及びDSC(Differential Scanning Calorimeter)におけるピーク温度の測定結果である。最低溶融粘度及び最低溶融粘度に達する温度については、上記サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら溶融粘度測定した。また、DSCのピーク温度については、上記サンプルを所定量秤量し、昇温速度10℃/minとして示差走査熱量計(DSC)から求めた。
【0051】
【表2】

【0052】
(評価結果)
次に、上記サンプルをガラス基板の端子電極上に配置し、次いでサンプルに、フレキシブルプリント基板(2層、厚さ38μm、銅回路8μm)の端子電極を配置し、フレキシブルプリント基板側から加熱ツールを用いて押圧し、フレキシブルプリント基板とガラス基板とを圧着させた。そして、加熱ツールの押し込み速度の影響について、導通抵抗及び接着強度を評価した。このときの熱圧着条件は、170℃、3.5MPa、4secであった。
【0053】
表3は、加熱ツールの押し込み速度に対する導通抵抗及び接着強度の評価結果を示すものである。導通抵抗については、圧着後、両基板の端子電極間の抵抗を測定した。また、接着強度については、熱圧着後、ガラス基板からフレキシブルプリント基板を90°方向に引き剥がすときの接着力を測定した。
【0054】
また、表4は、接続信頼性の評価結果を示すものである。接続信頼性は、170℃、3.5MPa、4sec、加熱ツールの押し込み速度30mm/secの熱圧着条件で接続された接続構造体を温度85℃、相対湿度85%〜温度45℃相対湿度90%の条件下で1000時間エージング処理後、導通抵抗及び接着強度を測定して評価した。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
(フレキシブル基板の伸縮)
また、表5は、加熱ツールの押し込み速度に対するフレキシブルプリント基板の収縮率を示すものである。ここでは、実施例3,4のサンプルを用いてフレキシブルプリント基板(東レ・デュポン社製 カプトンEN)とガラス基板(コーニング社製 コーニング1737F)とを接合させた接続構造体について、フレキシブルプリント基板の伸縮率を測定した。フレキシブルプリント基板の伸縮率は、2次元測長機を用いて、熱圧着前後のフレキシブルプリント基板の長さを測定して算出した。なお、フレキシブルプリント基板及びガラス基板の熱膨張係数は、それぞれ16×10−6/℃及び3.7×10−6/℃あった。
【0058】
【表5】

【0059】
以上の結果より、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sである異方性導電フィルムは、加熱ツールの押し込み速度1〜50mm/sec、150〜200℃、4〜6secの熱圧着条件において流動性が最適であることが分かる。また、ポリブタジエン粒子が配合されていることにより、内部応力を吸収し、高い接着強度を持つことが分かる。
【0060】
例えば、実施例1〜7のサンプルを用いた接続構造体は、加熱ツールを170℃、3.5MPa、4sec、押し込み速度1〜50mm/secの範囲において、優れた導通抵抗及び接着強度を示した。
【0061】
一方、比較例1〜5のサンプルは、最低溶融粘度が最適でないので、高い接続信頼性を示す結果を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態におけるフレキシブルプリント基板とガラス基板とを接合する方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ガラス基板、 2 異方性導電フィルム、 3 フレキシブルプリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエン粒子と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを配合した絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなり、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項2】
上記最低溶融粘度が90〜110℃で到達することを特徴とする請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
上記ポリブタジエン粒子が、上記カチオン重合樹脂70重量部に対して5〜35重量部配合されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
上記ポリブタジエン粒子の弾性率が、1×10〜1×1010dyn/cmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
上記ポリブタジエン粒子の平均粒径が、0.01〜0.5μmであることを特徴とする請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
上記カチオン重合性樹脂が、フェノキシ樹脂とエポキシ重合性樹脂とを混合したものであり、上記フェノキシ樹脂の分子量が、20000〜60000であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の異方導電性フィルム。
【請求項7】
上記エポキシ重合性樹脂が、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項6記載の異方導電性フィルム。
【請求項8】
示差走査熱量計おける発熱ピーク温度が、昇温速度10℃/minにおいて110〜120℃であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の異方導電性フィルム。
【請求項9】
所定間隔で端子電極が形成されたガラス配線板と、当該所定間隔よりも狭い間隔で端子電極が形成されたフレキシブルプリント配線板とを、異方性導電フィルムを用いて接続する接続構造体の製造方法において、
ポリブタジエン粒子と、カチオン重合性樹脂と、カチオン硬化剤とを配合した絶縁性接着樹脂に導電性粒子が分散されてなり、最低溶融粘度が300〜1000Pa・sである異方性導電フィルムをガラス基板の端子電極上に配置する配置工程と、
上記異方性導電フィルム上に、フレキシブルプリント基板の端子電極を配置し、当該フレキシブルプリント基板側から加熱ツールを用いて押圧し、端子電極間を電気的に接続させる接続工程とを有する接続構造体の製造方法。
【請求項10】
上記接続工程では、加熱ツールを1〜50mm/secの速度で、150〜200℃、4〜6sec押圧することを特徴とする請求項9記載の接続構造体の製造方法。
【請求項11】
ガラス配線板の端子電極とフレキシブルプリント配線板の端子電極とが異方性導電フィルムを介して接合されてなる接続構造体において、
上記異方性導電フィルムの最低溶融粘度が300〜1000Pa・sであることを特徴とする接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−54377(P2009−54377A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218863(P2007−218863)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】