説明

異方性導電フィルム

【課題】3列千鳥配列バンプを有する半導体チップを配線基板の電極に、最低溶融粘度[η]が1.0×10〜1.0×10Pa・secである異方性導電フィルムを使用して異方性導電接続する際、3列千鳥配列の長手方向の中央部近辺のバンプについて、その長手方向の両側のバンプと同じように熱圧着時に潰れるようにすることにより、異方性導電接続箇所の導通抵抗値を増大させないようにする。
【解決手段】導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルムは、回復率が10〜46%の導電性粒子を使用する。また、異方性導電フィルムの最低溶融粘度を[η]とし、最低溶融粘度を示す温度Tより60℃低い温度Tにおける溶融粘度を[η]としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足する。
1.0×10Pa・sec≦[η]≦1.0×10Pa・sec (1)
1<[η]/[η]≦30 (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルム、それを利用した接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルムは、半導体チップを配線基板に実装する際に利用されており、配線基板の実装密度の増大に伴って、半導体チップのバンプ配列も高密度化している。そのような半導体チップの高密度のバンプ配列の例として、半導体チップのバンプ形成面の周縁部に2列の千鳥状にバンプ配列することが挙げられる。
【0003】
このようなファインピッチの千鳥配列のバンプを有する半導体チップを、異方性導電フィルムを介して配線基板に各バンプ間で導通抵抗を相違させないように確実に接続するためには、圧着領域に導電性粒子を十分に存在せしめつつ、過剰の絶縁性接着剤を圧着領域から排除することが要請されている。
【0004】
従来、このような要請に応ずるために、異方性導電フィルムの最低溶融粘度[η]と、最低溶融粘度を示す温度Tより30℃低い温度Tにおける溶融粘度[η]との関係に着目し、最低溶融粘度[η]を1.0×10〜1.0×10Pa・secとし、且つ[η]/[η]の比を1(1を含まず)〜3とすることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−32657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体チップのバンプ配列の更なる高密度化のため、半導体チップのバンプ形成面の周縁部にバンプを3列の千鳥状に配列することが実施されるようになっている。このような3列千鳥バンプ配列の半導体チップに特許文献1の技術を適用した場合、2列千鳥配列のバンプに比べて、絶縁性接着剤の溶融物が圧着領域から排除されにくく、3列千鳥配列の長手方向の中央部近辺に滞留し、その結果、3列千鳥配列の長手方向の中央部近辺の導電性粒子が長手方向の両側の導電性粒子に比べて潰れにくくなり、異方性導電接続箇所を視覚的に観察できるような場合には異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察できず、結果的に異方性導電接続箇所の導通抵抗値が高くなるという問題があった。
【0007】
また、配線基板の電極として、周囲に形成された保護膜に対して凹んだ位置に形成された電極パッドを適用した場合には、保護膜とバンプとの距離が、バンプと電極パッドとの間の距離よりも短くなるため、保護膜とバンプとの間に挟持された導電性粒子がスペーサーとなって、バンプと電極パッドとの間に挟持された導電性粒子が熱圧着時に潰れにくくなり、異方性導電接続箇所を視覚的に観察できるような場合には、前述した3列千鳥配列の場合と同様に、異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察できず、異方性導電接続箇所の導通抵抗値が高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上の問題を解決しようとするものであり、3列千鳥配列バンプを有する半導体チップを配線基板の電極に、最低溶融粘度[η]が1.0×10〜1.0×10Pa・secである異方性導電フィルムを使用して異方性導電接続する際、3列千鳥配列の長手方向の中央部近辺の導電性粒子について、長手方向の両側の導電性粒子に比べて潰れにくくならないようにし、換言すれば、異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察できるようにし、異方性導電接続箇所の導通抵抗値を増大させないようにすることを目的とする。また、周囲に形成された保護膜に対して凹んだ位置に形成された配線基板の電極パッドに対し、半導体チップを最低溶融粘度[η]が1.0×10〜1.0×10Pa・secである異方性導電フィルムを使用して異方性導電接続する際、バンプと電極パッドとの間に挟持された導電性粒子が熱圧着時に潰れにくくならないようにし、換言すれば、異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察できるようにし、異方性導電接続箇所の導通抵抗値を増大させないようにすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、導電性粒子の塑性変形の程度を示す回復率に着目し、回復率が大きすぎると導電性粒子が潰れにくくなって導通抵抗値が増大する傾向があり、逆に回復率が小さすぎても、導電性粒子がバンプや電極へ食い込みにくくなって導通抵抗値が増大する傾向があることを見出した。しかも、導電性粒子の回復率を特定の範囲に設定することを前提にしたときに、異方性導電フィルムの最低溶融粘度[η]と、最低溶融粘度を示す温度Tより低い温度Tにおける溶融粘度[η]との関係に着目したところ、一般に、バンプが押し込み易くなる異方性導電フィルムの溶融粘度となる温度が、特許文献1の場合と異なり、最低溶融粘度を示す温度Tよりも60℃低い温度であることを発見し、更に、その温度における溶融粘度の最低溶融粘度に対する比を検討したところ、その比が30以下であると、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続するための異方性導電フィルムであって、導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルムにおいて、
導電性粒子の回復率が10〜46%であり、
異方性導電フィルムの最低溶融粘度を[η]とし、最低溶融粘度を示す温度Tより60℃低い温度Tにおける溶融粘度を[η]としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする異方性導電フィルムを提供する。
【0011】
【数1】

【0012】
ここで、導電性粒子の回復率(%)とは、粒子径Aの導電性粒子に1gの荷重をかけて変形させた後、荷重を取り除いた時の導電性粒子の粒子径をBとした時に以下の式で定義される物性である。
【0013】
【数2】

【0014】
また、溶融粘度は、回転式レオメータ(例えば、TA Instruments社)を用い、所定の測定条件(昇温速度 10℃/分;測定圧力 5g一定; 使用測定プレート直径 8mm)で測定して得られた値である。

【0015】
また、本発明は、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続することにより接続構造体を製造する方法において、
配線基板の電極上に上述の本発明の異方性導電フィルムを仮貼りし、
仮貼りされた異方性導電フィルムに半導体チップをそのバンプ側から仮設置し、
仮設置された半導体チップを加熱ボンダーにより加熱加圧することにより、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続し、異方性導電フィルムを熱硬化させる製造方法、及びその製造方法により製造された接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の異方性導電フィルムは、所定の回復率を示す導電性粒子を使用し、しかも異方性導電フィルムの最低溶融粘度を[η]とし、最低溶融粘度を示す温度Tより60℃低い温度Tにおける溶融粘度を[η]としたときに、前述の式(1)及び(2)を満足するので、3列千鳥配列のバンプを有する半導体チップと配線基板の電極とを異方性導電接続した場合に、3列千鳥配列の長手方向の中央部近辺の導電性粒子について、長手方向の両側の導電性粒子と同じように熱圧着時に潰れるようにすることができ、異方性導電接続箇所を視覚的に観察できるような場合には、異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察でき、結果的に異方性導電接続箇所の導通抵抗値を増大させないようにできる。
【0017】
また、配線基板の電極として、周囲に形成された保護膜に対して凹んだ位置に形成された電極パッドを適用した場合、バンプと電極パッドとの間に挟持された導電性粒子が熱圧着時に潰れにくくならないようになり、異方性導電接続箇所を視覚的に観察できるような場合には、前述した3列千鳥配列の場合と同様に、異方性導電接続箇所に導電性粒子の均一な圧痕の発現を観察できず、異方性導電接続箇所の導通抵抗値を増大させないようにできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続するための、導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルムであって、
導電性粒子の回復率が10〜46%であり、
異方性導電フィルムの最低溶融粘度を[η]とし、最低溶融粘度を示す温度Tより60℃低い温度Tにおける溶融粘度を[η]としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする異方性導電フィルムである。
【0019】
【数3】

【0020】
本発明においては、導電性粒子として、回復率が10〜46%、好ましくは15〜35%のものを使用する。回復率が10%未満であると、それ自体、潰れやすい反面、半導体チップのバンプや配線基板の電極へ食い込み難くなるため、導通抵抗値が増大する傾向があり、回復率が46%を超えると、反発力が強すぎて潰れにくくなり、やはり導通抵抗値が増大する傾向がある。
【0021】
また、本発明においては、[η]/[η]の比を30以下とするが、これはその比が30を超えると千鳥配列バンプの内外樹脂の粘度差により、十分な接続ができなくなるからである。また、[η]は[η]よりも必ず大きな値であるので、[η]/[η]の比は1を超える数値である。好ましい比の範囲は、上述した粘度差の観点から、以下の式(3)の範囲である。
【0022】
【数4】

【0023】
本発明の異方性導電材料の最低溶融粘度[η]が1.0×10〜1.0×10Pa・secである理由は、最低溶融粘度がこの範囲を下回ると気泡が発生しやすくなり、この範囲を上回ると実装時に高圧が必要となるからである。
【0024】
また、本発明の異方性導電材料においては、最低溶融粘度を示す温度Tは、低すぎると実装時に配線までバンプが接触する時に硬化してしまい、十分な接続が出来なくなり、高すぎると実装時に長時間が必要となるので、好ましくは90〜120℃、より好ましくは90〜100℃である。
【0025】
本発明の異方性導電材料を構成する導電性粒子としては、従来の異方性導電材料において用いられているものを適宜選択して使用することができる。例えば、金、ニッケル、半田等の金属粒子、ベンゾグアナミン樹脂をNi/Au薄膜で被膜した金属被覆樹脂粒子、これらの表面に絶縁樹脂薄膜で被覆した絶縁被覆導電性粒子等が挙げられる。これらの粒径としては、一般に1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0026】
本発明の異方性導電材料を構成する絶縁性接着剤としても、従来の異方性導電材料において用いられているものを適宜選択して使用することができる。例えば、絶縁性接着剤は、フェノキシ樹脂等の成膜性樹脂、液状又は固体エポキシ樹脂等の硬化成分、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等の硬化剤、シランカップリング剤、必要に応じてトルエンなどの有機溶剤等、更に顔料、防錆剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。
【0027】
本発明の異方性導電フィルムは、以上の成分を常法に従って混合し、フィルム状に加工して製造することができる。
【0028】
本発明の異方性導電材料の最低溶融粘度及び[η]/[η]の比を所定範囲にすることは、成膜性樹脂や硬化成分、硬化剤等の種類やそれらの含有量、導電性粒子の種類、粒径や含有量、溶剤の種類や含有量等を適宜選択することにより調整することができる。特に、有機フィラーを配合することにより調整することが好ましい。このような有機フィラーとしては、ブタジエン共重合体、アクリル共重合体、スチレン共重合体等の絶縁性樹脂フィラーが例示される。A−B型またはA−B−A型ブロック共重合体は、重合性樹脂成分に対する相溶性セグメントと非相溶性セグメントがA−B型またはA−B−A型ブロック共重合体を形成したものである。このようなブロック共重合体としては、特にスチレン−アクリルブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−酢酸ビニルブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。これらのスチレン系ブロック共重合体の中でも、スチレンの共重合組成比が20wt%以上のものが、分散性と粘度のバランスの観点から、最も好ましい。なお、これらスチレン系ブロック共重合体には、任意の範囲でエポキシ基やカルボキシル基を導入してもよく、また、このようなブロック共重合体として、市販品を用いることもできる。
【0029】
このような絶縁性樹脂フィラーの粒径としては、小さすぎると分散が困難となり、大きすぎると配線上における導電性粒子による接続に対する悪影響が大きいため、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0030】
以上説明した本発明の異方性導電フィルムは、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続して接続構造体を製造する方法に好ましく適用することができる。この製造方法は、配線基板の電極上に前述の本発明の異方性導電フィルムを仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに半導体チップをそのバンプ側から仮設置し、仮設置された半導体チップを加熱ボンダーにより加熱加圧することにより、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続し、異方性導電フィルムを熱硬化させることを特徴とする製造方法である。また、この製造方法により製造された接続構造体も本発明の一部である。
【0031】
半導体チップとして、2列又は3列の千鳥配列のバンプを有するものを使用することが、本発明の異方性導電フィルムの特性を十分に生かすことができる点で好ましい。
【0032】
なお、このような接続構造体を構成する配線基板としても、従来より異方性導電フィルムが適用されているものが射程範囲にあり、フレキシブル配線基板、ガラスエポキシ配線基板、積層配線基板、ディスプレイ用透明ガラス又は樹脂配線基板等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0034】
参考例1(導電性粒子の調製)
ジビニルベンゼン、スチレン、ブチルメタクリレートの混合比を調整したモノマー溶液に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを投入し、得られた混合液を高速で均一に撹拌しながら加熱することによりモノマーの重合反応を行い、それにより微粒子分散液を得た。この微粒子分散液から微粒子をろ別し、減圧乾燥することにより微粒子の凝集体であるブロック体を得た。更に、このブロック体を粉砕することにより、平均粒子径3.0μmのスチレン系樹脂粒子を得た。
【0035】
得られた平均粒子径3μmのスチレン系樹脂粒子(5g)に、パラジウム触媒を浸漬法により担持させた。次いで、このスチレン系樹脂粒子に対し、硫酸ニッケル六水和物、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン及び硝酸タリウムから調製された無電解ニッケルメッキ液(pH12、メッキ液温50℃)を用いて無電解ニッケルメッキを行い、ニッケルメッキ層(金属層)が表面に形成されたニッケル被覆樹脂粒子を導電性粒子として得た。得られた導電性粒子の平均粒子径は3〜4μmの範囲であった。ここで、無電解メッキ時間をコントロールすることにより表1に示す回復率の異なる各実施例及び比較例で使用した導電性粒子をそれぞれ調製した。
【0036】
参考例2(最低溶融粘度調整用のスチレン系ブロック共重合体の調製)
温度計、窒素導入管、撹拌機及びコンデンサーを備えたガラス製反応器に、水300質量部、部分鹸化ポリビニルアルコール(ゴーセーノールKH−17、日本合成化学工業社製)の1%水溶液15質量部及びハイドロキシアパタイトの10%水分散液(スーパータイト10、日本化学工業社製)15質量部を仕込んだ。ポリメリックペルオキシド類0.5質量部を前記水溶液に室温下で1時間分散させた後に酢酸ビニル30質量部を仕込み、反応器内に窒素を導入しながら、撹拌下60℃で2時間重合(第一段重合)を行った。その後、室温まで冷却し、反応器にスチレン70質量部を仕込み、室温で撹拌を1時間行った。更に、反応器に窒素を導入しながら、80℃で8時間撹拌し、90℃で30分間重合を行った。(第二段重合)。その後、反応混合物を室温まで冷却して沈殿物として重合物を得た。得られた重合物を5%塩酸130質量部で洗浄し、続いて水で洗浄して濾別した。得られた重合物を乾燥することにより白色粒子状のスチレン系ブロック共重合体を85%の収率で得た。このブロック共重合体中の、スチレンと酢酸ビニルの共重合組成比は70:30であった。
【0037】
実施例1〜6、比較例1〜2
表1の成分(質量部)を、遊星撹拌機を用いて均一に混合することで塗料を調製し、その塗料を剥離フィルムに塗布し、80℃で5分間プリベークすることで異方性導電フィルムを作成した。なお、導電性粒子の配合量は、粒子密度50000個/mmとなるようにした。得られた異方性導電フィルムについて、以下に説明するように溶融粘度と導通抵抗とを測定し、更に異方性導電接続に適用した際の圧痕を観察した。
【0038】
<溶融粘度測定>
異方性導電フィルムの溶融粘度を、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用い、昇温速度 10℃/分;測定圧力 5g一定;使用測定プレート直径 8mmという条件で測定した。得られた最低溶融粘度[η](Pa・sec)を表1に示す。また、Tから60℃低い温度Tにおける溶融粘度[η](Pa・sec)を測定し、[η]/[η]を計算し、得られた結果を表1に示す。
【0039】
<導通抵抗測定>
異方性導電フィルムを、周縁部に3列千鳥配置された金バンプを有する試験用半導体チップ(バンプサイズ 1800μm、バンプ高さ 15μm、外側バンプ列と中央バンプ列及び中央バンプ列と内側バンプ列間のそれぞれの距離 20μm、各列内のバンプ間の距離 20μm)と、対応するガラス基板との間に挟持させ、加熱加圧ヘッドにて200℃で圧力 60MPaで5秒間の加熱加圧を行った。その際の外側バンプと中央バンプ列との導通抵抗(Ω)を常法に従って測定し、以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0040】
ランク 基準
AA: 導通抵抗値が3Ω未満
A: 導通抵抗値が3Ω以上10Ω未満
B: 導通抵抗値が10Ω以上30Ω未満
C: 導通抵抗値が30Ω以上
【0041】
<圧痕の観察>
導通抵抗測定に供した熱圧着サンプルのガラス基板側から、異方性導電フィルムの異方性導電接続部における、3列千鳥配列バンプの長手方向の中央位置、バンプ列の長手方向の全長Lの0.1L及び0.9Lの位置の3カ所を倍率10倍で顕微鏡観察し、圧痕の均一性について以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0042】
ランク 基準
AA: 3つの観察位置についてそれぞれ10ヶ所観察した結果、いずれの観察位置においても9ヶ所以上で圧痕が観察された場合
A: 3つの観察位置についてそれぞれ10ヶ所観察した結果、いずれかの観察位置において7ヶ所又は8ヶ所で圧痕が観察され、それ以外では9ヶ所以上で圧痕が観察された場合
B: 3つの観察位置についてそれぞれ10ヶ所観察した結果、いずれの観察位置において5ヶ所又は6ヶ所で圧痕が観察され、それ以外では9ヶ所以上で圧痕が観察された場合
C: 3つの観察位置についてそれぞれ10ヶ所観察した結果、いずれかの観察位置で圧痕が観察できたのが5箇所未満であった場合
【0043】
【表1】

【0044】
表1から解るように、実施例1〜6の異方性導電材料の場合、使用した導電性粒子の回復率が10〜46%の範囲内にあり、最低溶融粘度[η]も1.0×10〜1.0×10Pa・secの範囲内にあり、しかも[η]/[η]の比が30以下であるので、3列千鳥配置された外側バンプと中央バンプのそれぞれの導通抵抗及び圧痕均一性についてC評価がなかった。
【0045】
それに対し、比較例1及び2の異方性導電材料の場合、使用した導電性粒子の回復率が46%を超えていたため、導通抵抗がC評価であり、特に比較例2の場合には、圧痕均一性評価もC評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の異方性導電フィルムは、半導体チップを配線基板に異方性導電接続する際に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続するための異方性導電フィルムであって、導電性粒子が絶縁性接着剤に分散されてなる異方性導電フィルムにおいて、
導電性粒子の回復率が10〜46%であり、
異方性導電フィルムの最低溶融粘度を[η]とし、最低溶融粘度を示す温度Tより60℃低い温度Tにおける溶融粘度を[η]としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする異方性導電フィルム。
【数1】

【請求項2】
式(3)を満足する請求項1記載の異方性導電フィルム。
【数2】

【請求項3】
半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続することにより接続構造体を製造する方法において、
配線基板の電極上に請求項1記載の異方性導電フィルムを仮貼りし、
仮貼りされた異方性導電フィルムに半導体チップをそのバンプ側から仮設置し、
仮設置された半導体チップを加熱ボンダーにより加熱加圧することにより、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを異方性導電接続し、異方性導電フィルムを熱硬化させる製造方法。
【請求項4】
半導体チップとして、2列又は3列の千鳥配列のバンプを有するものを使用する請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の製造方法により製造された接続構造体。

【公開番号】特開2011−103307(P2011−103307A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−8813(P2011−8813)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】