説明

発光ダイオードパッケージ

【課題】高効率の放熱が可能であり、かつ安定した色変換および透過光量を確保できるLEDパッケージを提供することにある。
【解決手段】LEDチップ20を覆うケース部材30の内部に冷媒Rが封入されている。そして、冷媒R中に蛍光体Pが分散されている。このような構成によれば、発熱するLEDチップ20とその周囲に存在する冷媒Rとの間で熱交換が起こり、冷媒Rに熱対流が生じる。そして、この熱対流に乗って熱がケース部材30まで伝えられ、ケース部材30を介して大気中に放散される。これにより、高効率の放熱が可能となる。また、熱対流により蛍光体Pの冷媒R中での分散が均一化されるから、安定した色変換および透過光量を確保できる。さらに、製造工程において蛍光体Pの均一な分散のために特別な対応策を講じる必要がないため、製造工程を簡素化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、基板上に搭載された発光ダイオード(LED)チップを樹脂で封止してパッケージ化されていることが一般的である。特に、白色発光ダイオードとして、青色の光を発する青色発光ダイオードのチップを使用するとともに、封止樹脂中にこのチップからの光により励起されて青色の補色である黄色の蛍光を発する蛍光体を分散しておき、青色発光ダイオードからの青色と蛍光体からの黄色を混色することによって白色光を発光させるものが開発されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−196645公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年の発光ダイオードはハイパワー化によって単位面積あたりの発熱量が増大している。しかし、チップの周囲が樹脂で封止されていると、発生した熱が容易に放熱されず、熱応力によってチップと基板との接続部分にクラック等が生じてしまうおそれがある。
【0004】
さらに、製造工程において、ある程度粘度の高い樹脂中へ蛍光体を均一に分散させることが難しいこと、樹脂中へ蛍光体を分散させてから硬化させるまでの間に樹脂内において蛍光体が沈降してしまうこと等の理由で、蛍光体の分散は不均一となりがちであり、安定した色変換および透過光量を確保しにくいという問題があった。
また、使用される封止樹脂が熱や紫外線によって劣化し、黄変や透光性減衰を惹起し、発光ダイオードパッケージの初期性能の寿命を短くしているという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高効率の放熱が可能であり、かつ安定した色変換および透過光量を確保できる発光ダイオードパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光ダイオードパッケージは、基板と、前記基板上に実装された発光ダイオードチップと、前記基板上に設けられて前記発光ダイオードチップを覆うものであって、前記発光ダイオードチップからの光を透過可能な透光部を備えるケース部材と、前記ケース部材の内部に封入されるとともに、前記発光ダイオードチップからの光を受けて蛍光を放つ蛍光体が分散された液状の冷媒と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光ダイオードチップを覆うケース部材の内部に冷媒が封入されている。そして、冷媒中に蛍光体が分散されている。このような構成によれば、発熱する発光ダイオードチップとその周囲に存在する冷媒との間で熱交換が起こり、冷媒に熱対流が生じる。そして、この熱対流に乗って熱がケース部材まで伝えられ、ケース部材を介して大気中に放散される。これにより、高効率の放熱が可能となる。また、熱対流により蛍光体の冷媒中での分散が均一化されるから、安定した色変換および透過光量を確保できる。さらに、製造工程において蛍光体の均一な分散のために特別な対応策を講じる必要がないため、製造工程を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明を具体化したLEDパッケージ1を示す。このLEDパッケージ1は、白色LEDパッケージであって、プリント基板10(本発明の基板に該当する)にLEDチップ20を実装し、LEDチップ20の周囲をケース部材30で封止した構造のものである。
【0010】
プリント基板10は、絶縁層11の両面に所定の導体回路が形成された周知の構造のものであって、LEDチップ20の外形よりも一回り大きく形成されている。導体回路の一部はランド12とされている。表裏のランド12のうち、LEDチップ20が搭載される側の面(図1の上面)に設けられた表面側ランド12Aは、LEDチップ20に設けられた電極23との接続のためのものである。一方、これとは逆側の面(図1の下面)に設けられた裏面側ランド12Bは、外部基板(図示せず)との接続のためのものである。表面側ランド12Aと裏面側ランド12Bとの間は、絶縁層11に貫通形成されたビアホール13によって電気的に接続されている。また、裏面側ランド12B上には、外部基板(図示せず)との接続のための基板側バンプ14が形成されている。
【0011】
このプリント基板10上に搭載されるLEDチップ20は、青色発光ダイオードのチップであって、例えばサファイア基板、窒化ガリウム基板等の半導体基板21の一面側(図1の下面側)にn型、p型の半導体層の複数を積層した発光素子層22が設けられた周知の構造のものを使用できる。LEDチップ20において発光素子層22が形成された側の面には電極23が形成されており、この電極23上にはチップ側バンプ24が形成されている。
【0012】
このLEDチップ20は、プリント基板10上にフリップチップ実装されており、チップ側バンプ24を介して、電極23とプリント基板10における表面側ランド12Aとが電気的に接続されている。LEDチップ20はチップ側バンプ24の高さ分だけプリント基板10から浮かせて実装されている。
【0013】
なお、1枚のプリント基板10上にはただ1つのLEDチップ20が実装されている。加えて、プリント基板10においてLEDチップ20側の電極23と接続される表面側ランド12A、およびこの表面側ランド12Aとビアホール13を介して接続されて外部基板との接続に使用される裏面側ランド12Bの配列は、電極23の配列と同一とされている。
【0014】
このLEDチップ20は、ケース部材30によって覆われている。ケース部材30は、プリント基板10上にLEDチップ20の外周を囲うように立設される矩形枠状のダム部31を備えている。ダム部31は、例えばダム印刷によってプリント基板10上に形成することができ、その高さはLEDチップ20よりもやや高くされている。なお、ダム部31の材質としては、内部に封入される冷媒R(詳細は後述)の熱による膨張圧に耐えうる程度の剛性を有するものであることが好ましく、例えばシリコンを使用できる。ダム部31の対辺となる2辺を金属製とすれば、放熱性が良好となるので、さらに好ましい。
【0015】
また、ダム部31における天井部の開口には、薄板状の窓板部32(本発明の透光部に該当する)が覆い付けられている。窓板部32の材質としてはLEDチップ20および蛍光体Pからの発光を透過可能なものであることを要し、さらに、放熱効率を考慮すれば、ある程度の熱伝導性を有するものであることが好ましい。具体的には、蛍光体膜、ガラス、インジウム・スズ酸化物(ITO)膜を上側(図1における上側)から順番に積層した板状体等を使用することが好ましい。上側に積層する蛍光体膜としては、蛍光体の粒子を透光性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)に分散して膜状に形成したものを使用することができる。蛍光体膜に使用する蛍光体の材料としては、LEDチップ20から発せられる青色の光によって励起されて黄色の光を発光するものであればよく、例えばYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)系の蛍光体を使用することができる。
【0016】
このケース部材30の内部は、液状の冷媒Rで満たされている。冷媒Rは、絶縁性でLEDチップ20やプリント基板10の材料と反応しない液体であれば特に制限はなく、例えば、住友スリーエム(株)製「フロリナート(登録商標)」、ソルベイソレクシス(株)製「ガルデン(登録商標)」等の不燃性であるフッ素系不活性液を使用できる。
なお、冷媒Rは、沸点150℃以上の液体が好ましく、沸点200℃以上の液体であればさらに好ましい。
【0017】
この冷媒Rには、蛍光体Pの粒子が分散されている。蛍光体Pの材料としては、LEDチップ20から発せられる青色の光によって励起されて黄色の光を発光するものであればよく、例えばYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)系の蛍光体を使用することができる。使用する蛍光体Pの粒子は、粒子径がナノ(nm)スケールの微細なナノ粒子であることが好ましい。粒子の表面で励起が起こるため、表面積が大きいほど効率的な色変換が可能となる。なお、使用する蛍光体Pの粒子径は、100μm以下が好ましい。ナノスケールの微細なナノ粒子であれば更に好適である。
【0018】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
【0019】
このLEDパッケージ1は、基板側バンプ14を介して外部基板等に接続され、使用される。LEDパッケージ1に給電がなされると、LEDチップ20の発光素子層22からは青色の光が発せられる。また、蛍光体Pは、LEDチップ20からの光によって励起され、黄色の光を発する。これら青色の光と黄色の光が混色されることにより、LEDパッケージ1の窓板部32から投光される光は白色となる。
【0020】
LEDチップ20が動作している間、発光素子層22からは熱が発生する。ここで、ケース部材30の内部には冷媒Rが封入されているので、この冷媒RがLEDチップ20から熱を受け取る。本実施形態では、LEDチップ20はチップ側バンプ24の高さ分だけプリント基板10から浮かせて実装されているから、冷媒RがLEDチップ20とプリント基板10との隙間に入り込んで、LEDチップ20における発光素子層22側の面に直接に接触し、冷却する。
【0021】
LEDチップ20の周囲に存在する冷媒Rは熱を受け取って温まり、これにより、冷媒Rに熱対流が生じる。そして、この熱対流に乗って熱がケース部材30まで伝えられ、ケース部材30を介して大気中に放散される。これにより、高効率の放熱が可能となる。この放熱により、LEDチップ20で発生した熱が電極を通じて基板側に伝熱されていた現象が軽減される。
【0022】
また、この熱対流に乗って蛍光体Pの粒子は冷媒Rの全体に均一に拡散する。これにより、蛍光体Pによる色変換、および青色光との混色が、LEDパッケージ1の内部全体で均一に行われる。また、冷媒Rを透過して外部に放出される光の光量が、LEDパッケージ1の内部全体で平均化される。これにより、LEDパッケージ1から発せられる光の量及び色の分布が安定する。
【0023】
また、1枚のプリント基板10上にはただ1つのLEDチップ20が実装されている。加えて、プリント基板10においてLEDチップ20側の電極23と接続される表面側ランド12A、およびこの表面側ランド12Aとビアホール13を介して接続されて外部基板との接続に使用される裏面側ランド12Bの配列は、LEDチップ20側の電極23の配列と同一とされている。これにより、LEDパッケージ1の実装面積をチップサイズに近いサイズにまで小型化でき、LEDパッケージ1をLEDチップ20と同様に取り扱うことができる。また、外部基板側のランド構造を、LEDチップ20を直接に実装する場合とLEDパッケージ1を実装する場合とで変更する必要がないから、設計を汎用化できる。表面側ランド12A及び裏面側ランド12Bの配列は、LEDチップ20側の電極23の配列と同一であることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0024】
以上のように、本実施形態のLEDパッケージ1においては、LEDチップ20を覆うケース部材30の内部に冷媒Rが封入されている。そして、冷媒R中に蛍光体Pが分散されている。このような構成によれば、発熱するLEDチップ20とその周囲に存在する冷媒Rとの間で熱交換が起こり、冷媒Rに熱対流が生じる。そして、この熱対流に乗って熱がケース部材30まで伝えられ、ケース部材30を介して大気中に放散される。これにより、高効率の放熱が可能となる。また、熱対流により蛍光体Pの冷媒R中での分散が均一化されるから、安定した色変換および透過光量を確保できる。さらに、製造工程において蛍光体Pの均一な分散のために特別な対応策を講じる必要がないため、製造工程を簡素化できる。
【0025】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)LEDパッケージとして、上記実施形態では青色発光ダイオードのチップ20とYAG系の蛍光体Pとの組み合わせによる白色LEDパッケージを例示したが、LEDチップ20と蛍光体Pとの組み合わせには特に制限はなく、いかなる組み合わせであっても良い。
【0026】
(2)上記実施形態では、プリント基板10は絶縁層11の両面に所定の導体回路が形成された単層の基板であったが、複数の絶縁性基板と導体層とが積層された多層プリント配線板であっても構わない。プリント基板10は、ガラス基板あるいはセラミックス基板に貫通電極を設けた構造であれば、放熱効果が高く、機械剛性も向上するため、更に好適である。
【0027】
(3)上記実施形態では、LEDパッケージ1は1枚のプリント基板10上にはただ1つのLEDチップ20が実装されているものであったが、例えば2つ以上の発光ダイオードチップがケース部材中に封入されていても構わない。
【0028】
(4)上記実施形態では、蛍光体として1種類が使用されていたが、2種以上の互いに異なる蛍光を発する蛍光体が冷媒中に分散されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】LEDパッケージの概略側断面図
【符号の説明】
【0030】
1…LEDパッケージ
10…プリント基板(基板)
20…LEDチップ
30…ケース部材
32…窓板部(透光部)
P…蛍光体
R…冷媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装された発光ダイオードチップと、
前記基板上に設けられて前記発光ダイオードチップを覆うものであって、前記発光ダイオードチップからの光を透過可能な透光部を備えるケース部材と、
前記ケース部材の内部に封入されるとともに、前記発光ダイオードチップからの光を受けて蛍光を放つ蛍光体が分散された液状の冷媒と、
を備える発光ダイオードパッケージ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−4689(P2008−4689A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171478(P2006−171478)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(591074091)株式会社野田スクリーン (17)
【Fターム(参考)】