説明

発光デバイスの基板のエッチング

【課題】発光デバイスの製造において、基板を介して抽出される光の量を増大させる。
【解決手段】本発明にかかる発光デバイスの製造には、発光デバイスの基板をエッチングすることが含まれる。このエッチングは、基板を介して抽出される光の量を増大させるのに十分な、水溶液エッチングとすることができる。このエッチングは、炭化ケイ素基板の直接水溶液エッチングとすることができる。このエッチングは、基板を切断することに起因するダメージなどの、基板に対するその他の処理によって生じるダメージを取り除くことができる。このエッチングは、基板内の炭化ケイ素のアモルファス領域を取り除くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオードなどの半導体発光デバイスは、様々な用途に広く用いられている。当業者には周知のように、半導体発光デバイスは、通電することによってコヒーレント光及び/またはインコヒーレント光を発するように構成されている、1つ以上の半導体層を有する半導体発光素子を含む。同じく当業者には周知のように、発光ダイオードまたはレーザーダイオードは、一般に、マイクロエレクトロニクス基板上にダイオード領域を有する。このマイクロエレクトロニクス基板は、例えば、ガリウムヒ素、ガリウム燐、それらの合金化合物、炭化ケイ素、及び/または、サファイアで形成される。LEDにおける技術革新は、可視スペクトル及びそれ以上のスペクトルをカバーすることができる、高性能かつ機械的に丈夫な光源をもたらしている。これらの特性は、固体素子の潜在的な高耐用性に加えて、様々な新しいディスプレイの応用を可能にし、かつ、LEDを、揺ぎ無いものとなった白熱灯や蛍光灯と競合する地位に置くだろう。
【0003】
特許文献1には、第1及び第2の対向する面を有する基板を備え、所定の波長帯で光学的放射(optical radiation)を通し、横断面において、第1の面から第2の面に向かって基板に伸びる、複数のペデスタル(pedestal)を定義するようにパターン形成される発光ダイオードが記載されている。第2の面上のダイオード領域は、ダイオード領域に電圧が印加されると、基板に向けて所定の波長帯で光を発するように構成されている。基板と反対側に位置する、ダイオード領域上のマウンティングサポート(mounting support)は、ダイオード領域に電圧が印加されると、ダイオード領域から基板に向けて発せられる光が、第1の面から発せられるように、ダイオード領域をサポートするように構成される。基板の第1の面は、その中に、基板において複数の三角形のペデスタルを定義する複数の溝(groove)を有することができる。溝は、台形の(tapered)側壁、及び/または傾いた底面(beveled floor)を有することができる。基板の第1の面はまた、そこに、数多く並んだビアホール(via hole)を備えることもできる。ビアホールは、台形の(tapered)側壁、及び/または底面(floor)を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0123164号明細書
【特許文献2】米国特許第5,912,477号明細書
【特許文献3】米国特許第6,201,262号明細書
【特許文献4】米国特許第6,187,606号明細書
【特許文献5】米国特許第6,120,600号明細書
【特許文献6】米国特許第5,912,477号明細書
【特許文献7】米国特許第5,739,554号明細書
【特許文献8】米国特許第5,631,190号明細書
【特許文献9】米国特許第5,604,135号明細書
【特許文献10】米国特許第5,523,589号明細書
【特許文献11】米国特許第5,416,342号明細書
【特許文献12】米国特許第5,393,993号明細書
【特許文献13】米国特許第5,338,944号明細書
【特許文献14】米国特許第5,210,051号明細書
【特許文献15】米国特許第5,027,168号明細書
【特許文献16】米国特許第4,966,862号明細書
【特許文献17】米国特許第4,918,497号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2003/0006418号明細書
【特許文献19】米国特許出願第10/659,241号明細書
【特許文献20】米国特許第6,214,107号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chapter 4, “Process Technology for Silicon Carbide Devices” by Carl-Mikael Zetterling(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GaP(ガリウム燐)発光デバイスでは、発光デバイスは通常、二段階の切断(sawing)ステップを用いてシングレーションされる(singulated)。GaP素子のメサ(mesa)を定義するために、一連の幅の広い鋸刃による切断(saw cuts)は、GaP素子のウェハ内においてなされ、次いでその切断部は、GaP水溶液エッチング剤(aqueous etchant)を用いてエッチングされ、切断のダメージが取り除かれる。次の切断は、より薄い鋸刃を用いて行われ、GaP素子がシングレーションされる(singulate)。
レーザー光で切断された発光ダイオードをドライエッチングする技術は、特許文献2に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる一実施形態は、発光デバイスの製造方法を提供する。この発光デバイスは、エッチング水溶液を用いて炭化ケイ素基板の第2の面を直接エッチングし、基板を処理することによって生じた基板のダメージを受けた部分を取り除くことによって、第1及び第2の対向する面を有する炭化ケイ素基板、及び、この基板の第1の面上の発光素子を備える。炭化ケイ素基板の第2の面のダメージを受けた部分は、基板を切断すること(sawing)、基板をラッピング(lapping)すること、基板を磨くこと(polishing)、基板へのインプランテーション(implantation)、及び/または、基板をレーザー処理することによって生じることがある。
【0008】
本発明にかかる一実施形態では、炭化ケイ素基板の第2の面を直接エッチングすることは、ウェハからの発光デバイスのシングレーション(singulation)の後で実行される。本発明にかかる別の実施形態では、炭化ケイ素基板の第2の面を直接エッチングすることは、ウェハからの発光デバイスのシングレーションの前に行われる。
【0009】
本発明にかかる一実施形態では、水溶液エッチング(aqueous etch)は、KOH:KFe(CN)を含む。
【0010】
さらに、本発明にかかる一実施形態では、炭化ケイ素基板の第2の面を直接エッチングすることは、炭化ケイ素基板の炭素で覆われた面(carbon-faced surface)をエッチングすること、及び/または、炭化ケイ素基板の炭素で覆われていない面(non-carbon-faced surface)をエッチングすることを含む。炭素で覆われた面は、基板の側壁であることもある。
【0011】
本発明にかかる一実施形態では、炭化ケイ素基板の第2の面を直接エッチングすることは、炭化ケイ素基板の第2の面に対して斜めになっている面を直接エッチングすることを含む。
【0012】
さらに、本発明にかかる一実施形態では、発光デバイスの光出力は、発光デバイスの基板をエッチング水溶液を用いてエッチングし、発光デバイスの基板の光吸収領域(light absorption region)を取り除くことによって増大する。光吸収領域は、発光デバイスの製造過程で基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域に一致することがある。例えば、基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域は、基板内の切断溝(saw groove)に一致することがある。基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域は、基板の、ラップされた(lapped)、磨かれた、及び/または、レーザー処理された領域であることもある。
【0013】
本発明にかかる一実施形態では、基板は、炭化ケイ素基板である。さらに、基板をエッチングすることは、炭化ケイ素基板の炭素で覆われた面をエッチングすること、及び/または、炭化ケイ素基板の炭素で覆われていない面をエッチングすることを含む。
【0014】
本発明にかかるさらに他の実施形態では、基板はサファイア基板である。
【0015】
本発明にかかる一実施形態では、基板をエッチングすることは、発光デバイスのシングレーションの後で行われる。水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)を含む。水溶液エッチングは、少なくとも約50分間行われる。水溶液エッチングは、低くとも約80度の温度で行われる。さらに、基板をエッチングすることは、基板を直接エッチングすることによって行うこともできる。
【0016】
本発明にかかる、さらに他の実施形態では、発光デバイスの製造は、基板から抽出される光の量を増やすのに十分なエッチング条件(etching parameters)を有する水溶液エッチングを使用して、発光デバイスの基板をエッチングすることを含む。基板のエッチングは、基板をエッチングして、発光デバイスの製造過程において基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域の、少なくとも一部を取り除くことを含むことができる。基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域は、基板内の切断溝に一致することがある。基盤を処理することによってダメージを受けた基板の領域は、ラップされ、磨かれ、インプラントされ、及び/または、レーザー処理された基板の領域に一致することもある。
【0017】
本発明の一実施形態では、基板は、炭化ケイ素基板である。基板をエッチングすることは、炭化ケイ素基板の炭素の面をエッチングすること、及び/または、炭化ケイ素基板の炭素でない面をエッチングすることを含むことができる。基板の炭素の面は、基板の炭素で覆われた側壁であることもある。
【0018】
本発明にかかる一実施形態では、基板はサファイア基板である。
【0019】
本発明にかかる一実施形態では、基板から抽出される光の量を増やすのに十分な基板のエッチングは、発光デバイスのシングレーションの後で行われる。水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)を含む。水溶液エッチングは、少なくとも約50分間行われる。水溶液エッチングはまた、低くとも約80度の温度で行われる。基板から抽出される光の量を増やすのに十分な基板のエッチングは、基板を直接エッチングすることを含む。
【0020】
本発明にかかる他の一実施形態では、発光デバイスを製造することは、水溶液エッチングを使用して発光デバイスの炭化ケイ素基板をエッチングして、発光デバイスの炭化ケイ素基板の表面からアモルファス炭化ケイ素の少なくとも一部を取り除くことを含む。アモルファス炭化ケイ素は、発光デバイスの製造過程において基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域に一致することもある。基板を処理することによってダメージを受けた基板の領域は、基板内の切断溝、ラップされ、磨かれ、インプラントされ、及び/または、レーザー処理された基板の領域に一致することもある。
【0021】
本発明にかかるさらに他の実施形態では、発光デバイスの炭化ケイ素基板をエッチングして、炭化ケイ素基板の表面からアモルファス炭化ケイ素の少なくとも一部を取り除くことは、発光デバイスのシングレーションの後で行われる。
【0022】
水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)を含むことができる。水溶液エッチングは、少なくとも約50分間行われる。水溶液エッチングは、低くとも約80度の温度で行われる。発光デバイスの炭化ケイ素基板をエッチングして、炭化ケイ素基板の表面からアモルファス炭化ケイ素の少なくとも一部を取り除くことは、基板を直接エッチングすることによって実施されることができる。
【0023】
本発明にかかるさらに他の実施形態では、発光デバイスを製造することは、発光デバイスの炭化ケイ素基板を切断すること(sawing)、及び、発光デバイスの炭化ケイ素基板の少なくとも一部の切断面(sawn surface)をエッチングすることを含む。少なくとも一部の切断面をエッチングすることは、炭化ケイ素基板の炭素の面(carbon face)をエッチングすること、及び/または、炭化ケイ素基板の炭素でない面(non-carbon face)をエッチングすることを含む。
【0024】
本発明にかかる一実施形態では、少なくとも一部の切断面をエッチングすることは、発光デバイスのシングレーションの後で行われる。少なくとも一部の切断面をエッチングすることは、基板の水溶液エッチングを行うことによって実施することもできる。水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)を含むことができる。水溶液エッチングは、少なくとも約50分間実施されることができる。水溶液エッチングは、低くとも約80度の温度で実施されることができる。少なくとも一部の切断面をエッチングすることは、少なくとも一部の切断面を直接エッチングすることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる、製造ステップを示す流れ図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる、製造ステップを示す流れ図である。
【図3A】本発明の実施形態にかかる、エッチングする前の発光デバイスの断面図である。
【図3B】本発明の実施形態にかかる、エッチングした後の発光デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明を以下に、より詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で実施され、ここで示すものに限定されると解釈するべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全なものとなるように、及び、本発明の趣旨が当業者に十分に伝えられるように提供されるものである。レイヤ及び領域の大きさ、及び、相対的な大きさは、明確さを強調することもある。本明細書を通して、同様の符号は、同様の要素を表す。本明細書において、用語「及び/または」は、1つ以上の関連する項目(item)の、いずれか、及び全ての組み合わせを含む。本明細書において、第1、第2などの用語が様々な要素、コンポーネント、領域、レイヤ、及び/または、セクションを表すために使用されるかもしれないが、これらの要素、コンポーネント、領域、レイヤ、及び/または、セクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことは理解されるだろう。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、レイヤ、または、セクションを、別の領域、レイヤ、または、セクションと区別するために使用されるだけである。したがって、ここで述べる第1の要素、コンポーネント、領域、レイヤ、または、セクションは、本発明の開示を逸脱しない範囲で、第2の要素、コンポーネント、領域、レイヤ、または、セクションと呼ぶことができる。
本発明の一実施形態は、発光デバイスの基板の、少なくとも1つのダメージを受けた面をエッチングして、そのダメージを受けた面の少なくとも一部を取り除くことによって、発光デバイスを製造する方法を提供する。作業のいかなる特定の理論によっても拘束されることはないが、発光デバイスの光吸収領域は、デバイスをシングレーションする(singulate)、及び/または、デバイスの光抽出機構を創出することなどのために、デバイスを切断すること、ラッピングすること、磨くこと、インプラントすること、及び/または、レーザー処理することなどの、発光デバイス上で実施される作業を処理することによって生じることがあると考えられる。光吸収領域は、デバイスの基板及び/またはレイヤの処理の結果として、デバイスの基板及び/またはレイヤへのダメージから生じることがある。したがって、発光デバイスのダメージを受けた面をエッチングすることによって、光吸収領域の一部または全部が取り除かれ、デバイスから抽出される光を増加させることができる。
【0027】
本発明の実施形態は、発光ダイオード、レーザーダイオード、及び/または、その他の半導体デバイスなどの、半導体発光デバイスを製造するのに適している。ここで、その他の半導体デバイスは、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、及び/または、その他の半導体材料を含むことができる1つ以上の半導体層、サファイア、ケイ素、炭化ケイ素、及び/または、その他のマイクロ電子基板を含むことができる基板、並びに、金属及び/またはその他の導電層を含むことができる1つ以上の接触層(contact layer)を備える。一実施形態においては、紫外線、青色及びまたは緑色のLEDを提供することができる。
【0028】
例えば、発光デバイスは、本件特許出願人(米ノースカロライナ州ダラム在)によって製造、販売されているデバイスなどの、窒化ガリウムベースのLED、または、炭化ケイ素基板上に形成されたレーザーダイオードとすることができる。本発明は、特許文献3〜17に記載のLED及び/またはレーザーダイオードに使用するのに適している。その他の好適なLED及び/またはレーザーダイオードは、特許文献18や特許文献1に記載されている。さらに、特許文献19に記載されているような、リンで表面を覆われた(phosphor coated)LEDも、本発明の実施形態に用いるのに適している。LED及び/またはレーザーダイオードは、基板を介して光の放射が生じるように機能するように構成されることができる。そのような実施形態においては、基板は、例えば上述の特許文献1に記載されているように、デバイスの光出力を高めるように形成されることができる。
【0029】
図1に、本発明の一実施形態による発光デバイスを製造する方法を示す。図1に見られるように、発光デバイスの基板は、発光デバイスの製造において処理される(ブロック100)。この処理は、基板内に光吸収領域を作り出し、動作中に、基板内において少なくとも一部の光がその光吸収領域によって吸収されてしまう。上述したように、この光吸収領域は、基板を処理することに起因する基板へのダメージから生じることがある。例えば、基板の処理は、形成されている基盤のアモルファス領域(amorphous region)をもたらすことがある。
【0030】
次いで処理された基板は、水溶液エッチングでエッチングされる(ブロック110)。このエッチングは、基板を処理することに起因する光吸収領域及び/またはダメージを受けた領域の一部または全てを取り除くことができる。例えば、基板を処理することによってアモルファス領域が生じた場合、そのアモルファス領域の一部または全てを取り除くことができる。基板を処理した後に発光デバイスの基板をエッチングすることによって、発光デバイスの光出力を増大させることができる。例えば、以下に説明するように、窒化ガリウムベースの発光素子を備える炭化ケイ素基板では、発光デバイスの光出力は、デバイスが発光デバイスの基板において光抽出機構を実現するように切断された後に、基板を水溶液エッチングすることで増大することがわかっている。
【0031】
本発明の一実施形態では、基板は、炭化ケイ素基板である。本発明の他の実施形態では、基板はサファイア基板である。炭化ケイ素基板の処理は、炭化ケイ素基板を切断して、例えば、炭化ケイ素基板において光抽出機構を実現すること、及び/または、複数の発光デバイスを有するウェハから発光デバイスをシングレーションすることを含むことができる。炭化ケイ素基板の処理は、基板をレーザー処理して、例えばレーザー切断、機構のパターン形成(feature patterning)、及び/または、発光デバイスのシングレーションを提供することも含む。炭化ケイ素基板の処理はまた、基板をラッピング(lapping)すること及び/または磨くこと(polishing)も含む。炭化ケイ素基板の処理はさらに、炭化ケイ素基板におけるインプランテーション(implantation)も含む。炭化ケイ素基板の処理は、基板上で発光素子を形成する前、その間、またはその後に生じることもある。
【0032】
基板のエッチングは、基板をエッチングすることができる、適切ないかなるエッチング技術で実現されてもよい。基板が炭化ケイ素である本発明の一実施形態では、エッチングは、炭化ケイ素をエッチングすることができるいかなるエッチングでもよい。水溶液エッチング(aqueous etch)は、シングレーションの前または後に、マルチウェハ方式で実行することができ、したがって、商業生産に拡大するのにより適している(amenable)。本発明の一実施形態では、エッチングは、水溶液エッチングである。例えば、エッチングは、KOH:KFe(CN)によるエッチングとすることもできる。適切なエッチング液は、GaPエッチング液として、マサチューセッツ州ローリー(Rowley)在のTransene Corporationにより提供される。サファイアに対する適切なエッチング液は、例えば、HPO及び/またはHPO:HSOの混合物を含むことがある。
【0033】
一実施形態では、炭化ケイ素は直接エッチングされる(directly etched)。本明細書では、直接エッチングすることは、炭化ケイ素をエッチングして、炭化ケイ素の、酸化物などの他の物質への第1の変換を行わないで、炭化ケイ素を取り除くことである。一実施形態では、光吸収領域は、まず、酸化物へ変換され、次いでその酸化物が取り除かれる。犠牲となる酸化物を使用して、ダメージを受けた炭化ケイ素を取り除く技術は周知であり、これ以上説明は行わない(非特許文献1または特許文献20参照)。ダメージを受けた部分の除去に犠牲的な酸化物を使用することは実際には難しく、炭化ケイ素を酸化するために通常利用される高い温度のために、デバイスがシングレーションの後にエッチングされる部分は、デバイスに付着しているブルーテープ(blue tape)またはその他のキャリア(carrier)を溶かすことがある。
【0034】
エッチングが行われる特定の条件は、使用されるエッチング剤、ダメージを生じさせた処理の性質、光吸収領域またはダメージを受けた領域の特性、及び/または、除去される基板の材料の量によって決まる。そのような条件は、例えば、異なるエッチング条件(例えば、時間及び/または温度)を使用して同じように処理したデバイスの光出力を実験的に判定すること、及び、光出力に基づいてエッチング条件を選択することなどによって、特定の処理作業に選ばれる。しかしながら、基板が炭化ケイ素である本発明の実施形態では、ダメージは基板を切断することによって生じ、エッチングはKOH:KFe(CN)で実行され、エッチングは低くとも約80℃の温度で、例えば、約80から90℃で、少なくとも約50分間、例えば、約50分から1時間行われる。その他の時間及び/または温度も用いることができる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に記載される特定の例示的なエッチング条件に限定されるべきではない。
【0035】
本発明の一実施形態では、エッチングは、炭化ケイ素基板の炭素の面及び/または炭化ケイ素基板の炭素でない面をエッチングする。エッチングは、発光素子が形成される基板の面の反対側の基板の面に対して斜めになっている基板の面もエッチングする。本明細書において、斜めとは基準面に対して平行でない面のことをいう。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る製造ステップを示す流れ図である。図2に示されるように、発光デバイスの基板は切断され、光抽出機構(light extraction features)が提供され、かつ/または、ウェハ上のデバイスがシングレーションされる(ブロック200)。この処理は、基板において光吸収領域を作り出し、動作中に、基板の光吸収領域によって、基板内で少なくとも一部の光が吸収される。上述したように、この光吸収領域は、基板を切断したことに起因する基板へのダメージによって生じる。例えば、基板の切断は、形成される基板のアモルファス領域を生じさせる。
【0037】
基板の少なくとも1つの切断面は、次いでエッチングされる(ブロック210)。エッチングは、基板の処理に起因する光吸収領域及び/またはダメージを受けた領域の一部または全てを取り除くように行われる。例えば、基板の切断がアモルファス領域を生じさせた場合、アモルファス領域の一部または全てを取り除くことができる。基板を切断した後に発光デバイスの基板をエッチングすることは、発光デバイスの光出力を増大させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、切断面のエッチングは、ドライエッチング、及び/または、水溶液エッチング(aqueous etch)である。本発明のある実施形態では、エッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングである。しかしながら、ICPエッチングは通常、ウェハ1つずつ(wafer-by-wafer)に対して行われるため、商業生産の規模に拡大するには困難が生じることがある。水溶液エッチングは、シングレーションの前後で一度に複数のウェハに対して(in a multi-wafer manner)行うことができるため、商業生産の規模に拡大するのに適している。したがって、本発明の一実施形態では、エッチングは水溶液エッチングである。例えば、エッチングは、KOH:KFe(CN)を用いたエッチングとすることができる。好適なエッチング剤は、GaPエッチング液として、マサチューセッツ州ローリー(Rowley)在のTransene Corporationによって提供される。サファイアに対する好適なエッチング剤は、例えば、HPO及び/またはHPO:HSOの混合物を含むことがある。
【0039】
切断された基板のエッチングは、デバイスのシングレーションの前後で行うことができる。本発明の一実施形態では、ブルーテープまたはその他のキャリアはウェハに適用され、ウェハは次いで、デバイスをシングレーションするために切断され、シングレーションされたデバイスは、ブルーテープを残したままエッチングされる。デバイスはまた、上述したように光抽出機構を実現するために切断される(特許文献1参照)。
【0040】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る、エッチングする前の発光デバイス300の断面図である。図3Aに示されているように、発光素子320は、基板310の第1の面312に形成される。上述したように、基板310は、炭化ケイ素基板とすることができ、詳細には、単結晶炭化ケイ素基板である。本発明の一実施形態では、基板310はサファイア基板である。基板310は、基板310の第2の面314の複数の溝によって示されるように、複数の光抽出機構を有して形成される。基板の第2の面314は、基板310の第1の面312の向かい側にある。上述したように、例えば基板310を切断することによって、溝を形成することができる。溝は、基板310の第2の面314に対して斜めになっている面316を含む側壁を有する。本明細書では、基板の側壁は、基板の外縁部及び/または、基板内で終結するまたは基板を介して拡張する、溝または機構の側壁を含む。本発明の一実施形態では、基板310の第2の面314は、炭化ケイ素基板の炭素の面である。このような実施形態では、斜めになっている面316(側壁)は、炭化ケイ素基板の炭素の面(例えば、斜めになっている面316の斜めの部分)だけでなく、炭化ケイ素基板の炭素でない面(例えば、斜めになっている面316の垂直な部分)も含むことがある。
【0041】
基板310の処理の結果、光吸収領域330が、基板310内に形成されることがある。光吸収領域330は、基板310のダメージを受けた領域に一致することがある。本発明の一実施形態では、光吸収領域330は、アモルファス炭化ケイ素の領域である。光吸収領域330は、斜めになっている面316上に図示されているが、基板310の第2の面314上などのその他の面上にも存在することができる。さらに、光吸収領域330は、実質上均一の厚さの連続的な領域として図3Aに示されているが、不連続な、かつ/または、均一でない厚さであることもある。
【0042】
図3Aに示される発光デバイス300は上述のようにエッチングされ、少なくとも一部の光吸収領域330が取り除かれ、図3Bに示されるような発光デバイス300’が実現される。基板310のエッチングは、斜めになっている面316をエッチングし、少なくとも一部の光吸収領域330を取り除く。したがって、エッチングは、炭化ケイ素基板の炭素でない面、及び、炭化ケイ素基板の炭素の面をエッチングすることができる。さらにエッチングは、第2の面314、及び、第2の面314に対して平行な面(溝の底面など)もエッチングすることができ、炭化ケイ素基板の炭素の面も同様にエッチングすることができる。
【0043】
発光デバイス300は、発光デバイス300’の基板から取り出される光の量を増大させ、発光デバイス300の基板310から取り出される光の量より大きくなるのに十分なエッチング条件を使用してエッチングされる。本発明の一実施形態では、エッチングは、基板310から全ての光吸収領域330を取り除くように実施される。しかしながら、光吸収領域330は厚さが均一でないこともあり、かつ/または、光吸収領域330の位置は発光デバイスの光出力に様々な影響を及ぼすこともあるため、光吸収領域330の一部が、エッチング後も基板内に残存することもある。例えば、1時間のエッチングが、4時間のエッチングに対して光出力の99.9%を達成する場合、製造の観点から考えると、たとえ基板310内に一部の光吸収領域330が残存するとしても、4時間のエッチングよりも1時間のエッチングを行う方が有利であることもある。本発明の一実施形態では、全ての光吸収領域330が確実に取り除かれるように、過剰なエッチング(over-etching)を行うこともある。
【0044】
以下の実施例は例示を目的として提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0045】
(実施例)
米ノースカロライナ州ダラム在の本件特許出願人による、XB900、XB300、及びXB500発光ダイオードの光出力を、本発明の一実施形態に係るエッチングの前後で測定した。XB900、XB300、及びXB500ダイオードは、炭化ケイ素基板上に形成された窒化ガリウムベースのダイオードである。これらのダイオードは、シングレーションのために切断され、少なくともデバイスの表面に、光抽出機構が形成されている。
【0046】
最初の実験では、XB900発光ダイオードを、KOH:KFe(CN)で、約80から90℃の温度で、約1時間エッチングした。この発光ダイオードを、TO−18ヘッダーで(doming on TO-18 headers)Dymax(UV)内で密閉した。表1は、駆動電流20mAでのデバイスの出力を示している。
【0047】
【表1】

【0048】
表1では、初期値カラムは、単位をミリワット(mW)で測定した、エッチング前のデバイスの光出力である。エッチング後カラムは、単位をmWで測定した、エッチング後のデバイスの光出力である。エッチング後カラム内のNOは、エッチングを行わなかった制御グループ(control group)を示している。(エッチング後/初期値)カラムは、ベアチップ(bare chip)のパーセントゲイン(percent gain)である。Dymax erカラムは、LEDダイスを密閉したDymaxの放射フラックスのmWである。(dymax/初期値)カラムは、密閉した部分に対する、エッチングしていないダイス/チップのパーセントゲインである(エッチングした部分に対してより高い光抽出を示している。)。
【0049】
XB300発光ダイオード、XB500発光ダイオード、及びXB900発光ダイオードもテストした。デバイスの光出力を、KOH:KFe(CN)による、約50分間のエッチングの前後で測定した。ダイオードを、容器封入せずにTO−18ヘッダーに装着した。表2に、実験の結果を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
図1〜3Bに関連して、本発明の様々な実施形態が個々に記載されていることが、当業者には理解できるだろう。しかしながら、図1〜3Bの実施形態の組み合わせ及び一部の組み合わせを、本発明の様々な実施形態によって実現することができる。
【0052】
表1に示されているように、表1のXB900LEDの光出力は、エッチング後に約13〜15%増大した。表2に示されているように、エッチング後に、XB300及びXB900の光出力は約15〜16%増大し、XB500の光出力は約11〜12%増大した。このように、上述した結果を考慮すると、発光ダイオードの基板の本発明に係るエッチングは、ダイオードの基板を介して取り出される光の量を増大させるのに有効であることが明らかである。
【0053】
図面及び明細書において、本発明の実施形態を説明してきた。特有の用語が使用されているが、これらは一般的な、かつ説明を目的とするものであり、限定を目的として使用するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスの光出力を増大させる方法であって、
前記発光デバイスの炭化ケイ素またはサファイア基板の光吸収領域を少なくとも部分的に取り除くために、水溶液エッチングを利用して前記発光デバイスの前記基板をエッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記光吸収領域は、前記発光デバイスの製造過程において前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の領域に対応することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の前記領域は、前記基板内の切断溝に対応することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の前記領域は、前記基板の、ラップされ、磨かれ、インプラントされ、及び/または、レーザー処理された領域に対応することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記基板は、炭化ケイ素基板を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素の面をエッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素でない面をエッチングすることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素の面の側壁をエッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記基板は、サファイア基板を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、基板をエッチングすることは、前記発光デバイスのシングレーションの後に行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)でエッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記水溶液エッチングは、少なくとも約50分間行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記水溶液エッチングは、低くとも約80℃の温度で行われることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、基板をエッチングすることは、前記基板を直接エッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
発光デバイスを製造する方法であって、
水溶液エッチングを使用し、かつ、前記発光デバイスの基板を介して取り出される光の量を増大させるのに十分なエッチング条件を使用して、前記発光デバイスの前記基板をエッチングすることを含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記発光デバイスの製造時に前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の領域の少なくとも一部を取り除くために、前記基板をエッチングすることを含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の前記領域は、前記基板内の切断溝に対応することを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記基板を処理することによってダメージを受けた前記基板の前記領域は、前記基板の、ラップされ、磨かれ、インプラントされ、及び/またはレーザー処理された領域に対応することを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項19】
請求項15に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記基板は、炭化ケイ素基板を備えることを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素の面をエッチングすることを含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素でない面をエッチングすることをさらに含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記炭化ケイ素基板の炭素で覆われた側壁をエッチングすることをさらに含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項23】
請求項15に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記基板は、サファイア基板を備えることを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項24】
請求項15に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記発光デバイスのシングレーションの後に行われることを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記水溶液エッチングは、KOH:KFe(CN)を用いてエッチングすることを含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記水溶液エッチングは、少なくとも約50分間行われることを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の発光デバイスの製造方法であって、前記水溶液エッチングは、低くとも約80℃の温度で行われることを特徴とする発光デバイスの製造方法。
【請求項28】
請求項25に記載の発光デバイスの製造方法であって、基板をエッチングすることは、前記基板を直接エッチングすることを含むことを特徴とする発光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−101055(P2011−101055A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27409(P2011−27409)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2007−504944(P2007−504944)の分割
【原出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】